第四十三帖 紅梅

匂宮と紅梅大納言家の物語

注釈番号
注釈見出し
注釈

第一章 紅梅大納言家の物語 娘たちの結婚を思案


第一段 按察使大納言家の家族

1.1.1 注釈1 【そのころ】 『集成』は「漠然と時を指定する書き方。物語の冒頭の形式「今は昔」「昔」などに准ずるもので、後の橋姫、宿木、手習に同じ書き出しが見られる」。『完訳』は「語り出しの常套句。後文から、前巻より三、四年後と分る」。『新大系』は「匂宮巻と同じころで、夕霧右大臣の時代。「その比」で始まる巻として、他に橋姫・宿木・手習巻があり、続篇物語の際立った特徴。前帖に対して全く新しい人間関係の提示の際の常套句」と注す。
1.1.1 注釈2 【さしつぎよ】 「よ」間投助詞。語り手の口吻。
1.1.1 注釈3 【童より】 「賢木」巻に初登場、以後、「行幸」「夕霧」巻にも登場。
1.1.1 注釈4 【御おぼえ】 帝の御信望。
1.1.2 注釈5 【もとよりのは】 系図不詳の人。
1.1.2 注釈6 【後の太政大臣】 鬚黒。彼の太政大臣への昇進と死去の年月は不明。
1.1.2 注釈7 【式部卿宮にて】 祖父の式部卿宮が引き取って、宮家の姫君として、の意。
1.1.2 注釈8 【故兵部卿親王に】 蛍兵部卿宮に。
1.1.3 注釈9 【二人のみぞ】 大君(麗景殿女御)と中の君。
1.1.3 注釈10 【男君一人】 大夫の君と呼称される。
1.1.3 注釈11 【故宮の】 故蛍兵部卿宮と真木柱姫君との間に。
1.1.3 注釈12 【女君一所】 宮の御方と呼称される。
1.1.3 注釈13 【うるはしうもあらぬ心ばへ】 『集成』は「きれい事では割り切れぬ思い」。『完訳』は「公正に物事を処理できぬ身びいき。嫉妬し不信を抱き合う」と注す。
1.1.3 注釈14 【わが御方ざまに苦しかるべきことをも】 連れ子の宮の御方に関する事。

第二段 按察使大納言家の三姫君

1.2.2 注釈15 【父宮のおはせぬ心苦しきやうなれど】 宮の御方には父螢兵部卿宮がいない気の毒さ。
1.2.2 注釈16 【こなたかなたの御宝物】 父蛍宮や母方の曾祖父式部卿宮から贈られた宝物。
1.2.3 注釈17 【内裏、春宮より】 今上帝(朱雀院の皇子)と東宮(今上の第一皇子、母明石の中宮)。以下「何の本意かはあらむ」まで、紅梅大納言の心中。
1.2.4 注釈18 【兵部卿宮の、さも思したらば】 紅梅大納言の心中。
1.2.4 注釈19 【この若君を】 紅梅大納言と真木柱の子、大夫の君。大君や中君とは異腹の兄弟。
1.2.4 注釈20 【内裏にてなど見つけたまふ時は】 主語は匂宮。
1.2.5 注釈21 【せうとを見て】 以下「大納言に申せよ」まで、匂宮の詞。姉にも逢いたい、の意。大夫の君には異腹の姉の大君(東宮の麗景殿女御)、中君と同父の姉の宮の御方とがいる。匂宮は連れ子の宮の御方に関心がある。
1.2.5 注釈22 【いとかひあり】 紅梅大納言の心中。匂宮が中君に関心を寄せているものと思い喜ぶ。しかし、匂宮は宮の御方に関心がある。
1.2.6 注釈23 【人に劣らむ宮仕ひよりは】 以下「宮の御さまなり」まで、紅梅大納言の詞。
1.2.7 注釈24 【春宮の御ことをいそぎたまひて】 大君の東宮への入内。
1.2.7 注釈25 【春日の神の御ことわりも】 以下「慰めのこともあらなむ」まで、紅梅大納言の心中。藤原氏から皇后が立后するという神託。
1.2.7 注釈26 【故大臣の、院の女御】 紅梅大納言の父、故太政大臣の娘の冷泉帝の弘徽殿女御は、源氏の養女の秋好中宮に立后された悔しい思いがある。
1.2.8 注釈27 【北の方添ひて】 紅梅大納言の北の方、真木柱。継母が後見。

第三段 宮の御方の魅力

1.3.1 注釈28 【西の御方は】 中君。
1.3.1 注釈29 【一つに慣らひたまひて】 姉の大君と一緒にいることに慣れていた。
1.3.1 注釈30 【東の姫君も】 宮の御方。継母の真木柱と先夫蛍兵部卿宮との間の娘、連れ子。
1.3.1 注釈31 【こなたを師のやうに】 宮の御方を師匠のようにして。
1.3.1 注釈32 【誰れも】 大君や中君をさす。
1.3.2 注釈33 【もの恥ぢを世の常ならずしたまひて】 主語は宮の御方。以下、宮の御方の性格描写が続く。
1.3.3 注釈34 【わが方ざまをのみ思ひ急ぐやうなるも、心苦しなど思して】 主語は紅梅大納言。
1.3.4 注釈35 【さるべからむさまに】 以下「仕うまつらめ」まで、紅梅大納言の詞。
1.3.6 注釈36 【さらにさやうの】 以下「過ぐしたまはなむ」まで、母北の方真木柱の詞。
1.3.6 注釈37 【世にあらむ限りは】 自分が生きているうちは。
1.3.6 注釈38 【世を背く方にても】 宮の御方が。『集成』は「出家して尼になるなりして、それなりに、人の物笑いになるような、軽はずみな失態を犯すことなくお過しになってほしいものです。つまらぬ男と浮き名の立つようなことはあってほしくない、と言う。父兵部卿の宮がいないというひけ目が、母にも適当な縁組を断念させているのであろう」と注す。
1.3.7 注釈39 【御心ばせの思ふやうなることをぞ】 宮の御方のすぐれた性質をいう。
1.3.8 注釈40 【いづれも分かず親がりたまへど】 紅梅大納言は実子も連れ子も同じように扱う。
1.3.9 注釈41 【上おはせぬほどは】 以下「心憂くこそ」まで、紅梅大納言の詞。母上は大君と共に宮中にいる。
1.3.10 注釈42 【この君に、えしも】 以下「ありぬべかめり」まで、紅梅大納言の心中。
1.3.10 注釈43 【世の中の広きうちは】 『集成』は「この広い世間の内は、気を許せないものなのだ。どんな強敵がいるか分らない、意」。『完訳』は「世間付き合いの多い宮中では。後宮には予測しがたい、すぐれた妃の出現しがちなことを危ぶむ」と注す。

第四段 按察使大納言の音楽談義

1.4.1 注釈44 【月ごろ、何となく】 以下「御琴参れ」まで、紅梅大納言の詞。
1.4.1 注釈45 【琵琶を心に入れてはべる】 中君は宮の御方から琵琶を習っている。『源氏物語』では琵琶は皇族の血を引く人がよく弾く楽器として登場。源典侍、明石御方、蛍兵部卿宮、宇治大君など。
1.4.2 注釈46 【うちとけても遊ばさねど】 主語は、あなた宮の御方。敬語表現。
1.4.2 注釈47 【昔おぼえはべる】 『集成』は「昔の世の音色そのままと思われます。昔の名手にも劣らないと、ほめる。尚古思想である」。『完訳』は「往年の琵琶の第一人者は宮の御方の実父蛍宮。ここはそれを回顧しない」と注す。
1.4.3 注釈48 【この御琴の音こそ】 あなたの琴の音色は。琴は総称、琵琶をさす。
1.4.5 注釈49 【隠れたてまつるも】 紅梅大納言に対しての敬意。
1.4.5 注釈50 【さぶらふ人さへかくもてなすが、やすからぬ】 紅梅大納言の詞。『完訳』は「宮の御方への当てつけがましい言葉」と注す。

第二章 匂兵部卿の物語 宮の御方に執心


第一段 按察使大納言、匂宮に和歌を贈る

2.1.1 注釈51 【若君】 紅梅大納言と真木柱の子、宮の御方の異父弟。
2.1.1 注釈52 【麗景殿に】 紅梅大納言の大君。
2.1.2 注釈53 【譲りきこえて】 以下「聞こえよ」まで、紅梅大納言の詞。若君への伝言。「譲りきこえ」の相手は、大君に付き添っている北の方。
2.1.2 注釈54 【笛すこし】 以下「若き笛を」まで、紅梅大納言の詞。
2.1.2 注釈55 【かたはらいたしや】 『完訳』は「卑下しながらも自慢する」と注す。
2.1.2 注釈56 【若き笛を】 「を」間投助詞、詠嘆の気持ち。
2.1.3 注釈57 【双調吹かせたまふ】 「せ」使役の助動詞。紅梅大納言が若君に。
2.1.4 注釈58 【けしうはあらずなりゆくは】 以下「掻き合はせさせたまへ」まで、紅梅大納言の詞、後半は宮の御方への詞。
2.1.4 注釈59 【このわたりにて】 宮の御方をさす。
2.1.5 注釈60 【皮笛、ふつつかに馴れたる声して】 主語は紅梅大納言。口笛を吹く。
2.1.6 注釈61 【御前の花】 以下「知る人ぞ知る」まで、大納言の若君(大夫の君)への詞。
2.1.6 注釈62 【知る人ぞ知る】 『源氏釈』は「君ならで誰にか見せむ梅の花色をも香をも知る人ぞ知る」(古今集春上、三八、紀友則)を指摘。
2.1.6 注釈63 【あはれ、光る源氏】 以下「とこそおぼえはべれ」まで、大納言の詞。
2.1.7 注釈64 【この宮たちを】 匂宮や薫。
2.1.7 注釈65 【なほたぐひあらじ】 源氏をさす。
2.1.10 注釈66 【ついでの忍びがたきにや】 語り手の推測。
2.1.11 注釈67 【いかがはせむ】 以下「聞こえをかさむかし」まで、大納言の詞。
2.1.12 注釈68 【心ありて風の匂はす園の梅に--まづ鴬の訪はずやあるべき】 大納言の詠歌。『完訳』は「「梅」は大納言の中の君、「鴬」は匂宮。二人の縁組を望む歌」と注す。『河海抄』は「あらたまの年行きかへり春立たばまづ我が家戸に鴬は鳴け」(万葉集二十、大伴家持)を指摘。『休聞抄』は「花の香を風の便りにたぐへてぞ鴬誘ふしるべにやせむ」(古今集春上、一三、紀友則)を指摘。

第二段 匂宮、若君と語る

2.2.1 注釈69 【殿上人あまた御送りに参る中に】 殿上人が匂宮を送る。
2.2.1 注釈70 【見つけたまひて】 匂宮が若君を。
2.2.2 注釈71 【昨日は、など】 以下「参りつるぞ」まで、匂宮の詞。
2.2.3 注釈72 【疾くまかではべりにし】 以下「参りつるや」まで、若君の詞。
2.2.5 注釈73 【内裏ならで】 以下「集まる所ぞ」まで、匂宮の詞。
2.2.5 注釈74 【心やすき所にも】 匂宮の私邸の二条院。
2.2.7 注釈75 【春宮には】 以下「人悪ろかめり」まで、匂宮の詞。
2.2.9 注釈76 【まつはさせたまひしこそ】 以下「御前にはしも」まで、若君の詞。 【たまひし】-給し大御横陽池肖柏本と三条西
2.2.11 注釈77 【我をば、人げなしと】 以下「語らひきこえよ」まで、匂宮の詞。主語は大君。
2.2.11 注釈78 【思ひ離れたるとな】 「とな」は、「と」格助詞、引用の意と「な」終助詞、詠嘆の意。
2.2.11 注釈79 【古めかしき同じ筋にて、東と聞こゆなるは】 『集成』は「世間にもてはやされぬ同じ宮家で、「東」とか、申し上げる方は」。『完訳』は「わたしと同じ古めかしい皇族筋の、東の君と申し上げるというお方が」と訳す。
2.2.12 注釈80 【この花を】 紅梅。
2.2.13 注釈81 【怨みてのちならましかば】 匂宮の心。『異本紫明抄』は「恨みての後さへ人のつらからばいかにいひてかねをもなかまし」(拾遺集恋五、九八五、読人しらず)を引歌として指摘。
2.2.15 注釈82 【園に匂へる紅の】 以下「咲きけるかな」まで、匂宮の詞。『異本紫明抄』は「紅に色をばかへて梅の花香にぞことごと匂はざりける」(後撰集春上、四四、躬恒)。『源注拾遺』は「梅の花香はことごとに匂はねど薄く濃くこそ色は咲きけれ」(後拾遺集春上、五四、清原元輔)を引歌として指摘する。

第三段 匂宮、宮の御方を思う

2.3.1 注釈83 【今宵は宿直なめり。やがてこなたにを】 匂宮の詞。若君の装束を見ていう。
2.3.3 注釈84 【この花の主人は、など春宮には移ろひたまはざりし】 匂宮の詞。『集成』は「大納言は、中の君を(私でなく)どうして東宮にさし上げる気におなりでなかったのだろう。「花」は紅梅(中の君)、その「主人(あるじ)」は、大納言と見るべきであろう」。『完訳』は「宮の御方はなぜ東宮に参らないのか」と注す。『河海抄』は「春来てぞ人もとひける山里は花こそやどの主人なりけれ」(拾遺集雑春、一〇一五、右衛門督公任)。『孟津抄』は「東風吹かば匂ひおこせよ梅の花主人なしとて春を忘るな」(拾遺集雑春、一〇〇六、菅原道真)「菊の露わかゆばかりに袖濡れて花の主人に千代は譲らむ」(紫式部集)を引歌として指摘。「花」「移ろふ」は縁語。
2.3.4 注釈85 【知らず。心知らむ人になどこそ、聞きはべりしか】 若君の返事。『源氏釈』は「あたら夜の月と花とを同じくは心知れらむ人に見せばや」(後撰集春下、一〇三、源信明)。『花鳥余情』は「色も香もまづ我が宿の梅をこそ心知れらむ人は見に来め」(信明集)を引歌として指摘する。
2.3.5 注釈86 【わが方ざまに】 実の娘本意に、の意。
2.3.7 注釈87 【花の香に誘はれぬべき身なりせば--風のたよりを過ぐさましやは】 匂宮の大納言の贈歌への返歌。『集成』は「一応卑下して見せた体。贈歌と同じ『古今集』の歌(花の香を風のたよりにたぐへてぞ鴬さそふしるべにはやる)による」。『完訳』は「不似合いな自分だからとして断った歌」と注す。
2.3.8 注釈88 【なほ今は、翁どもに】 以下「忍びやかに」まで、匂宮の詞。こっそりと宮の御方にわたりをつけてほしい、意。
2.3.8 注釈89 【東のをば】 宮の御方をさす。
2.3.9 注釈90 【なかなか異方の姫君は】 異腹の大君、中君をさす。
2.3.9 注釈91 【いと重りかにあらまほしう】 宮の御方の性質をさす。
2.3.9 注釈92 【かひあるさまにて見たてまつらばや】 若君の心。宮の御方と匂宮の結婚を望む。
2.3.9 注釈93 【春宮の御方】 紅梅大納言の大君。麗景殿女御。
2.3.9 注釈94 【この宮をだに、気近くて見たてまつらばや】 若君の心中。匂宮を姉宮の御方の婿君として拝したい、意。

第四段 按察使大納言と匂宮、和歌を贈答

2.4.1 注釈95 【これは、昨日の御返りなれば見せたてまつる】 『集成』は「心進まぬながら、の気持」と注す。
2.4.2 注釈96 【ねたげにものたまへるかな】 以下「見所少なくやならまし」まで、大納言の詞。
2.4.2 注釈97 【あまり好きたる方にすすみたまへるを】 『集成』は「あまりに風流好みの度が過ぎていらっしゃるのを」。『完訳』は「あまりに好色がましくいらっしゃるのを」と訳す。
2.4.2 注釈98 【あだ人とせむに】 『集成』は「粋人と申しても」。『完訳』は「好色人の資格も」と注す。
2.4.3 注釈99 【今日も参らせたまふに】 大納言が若君を匂宮のもとへ。
2.4.4 注釈100 【本つ香の匂へる君が袖触れば--花もえならぬ名をや散らさむ】 大納言から匂宮への贈歌。「花」は娘の中君を喩える。『花鳥余情』は「元の香のあるだにあるを梅の花いとど匂ひの遥かなるかな」(兼輔集)を引歌として指摘する。
2.4.6 注釈101 【まことに】 以下「あるにや」まで、匂宮の心中。
2.4.7 注釈102 【花の香を匂はす宿に訪めゆかば--色にめづとや人の咎めむ】 匂宮の返歌。
2.4.8 注釈103 【心やましと思ひゐたまへり】 主語は大納言。『集成』は「不満に思っていられる」。『完訳』は「もどかしいお気持でいらっしゃる」と訳す。
2.4.9 注釈104 【北の方まかでたまひて】 真木柱。継娘の大君に付き添っていた。
2.4.10 注釈105 【若君の】 以下「見えざりしを」まで、北の方の詞。
2.4.10 注釈106 【宮の、いと思ほし寄りて】 東宮がすばやく気がついて、の意。
2.4.10 注釈107 【兵部卿宮に】 以下「我をばすさめたり」まで、東宮の詞を引用。
2.4.10 注釈108 【ここに、御消息やありし】 こちらから匂宮に手紙を差し上げなかったか、の意。
2.4.12 注釈109 【さかし】 以下「さることぞかし」まで、大納言の詞。
2.4.12 注釈110 【晴れまじらひしたまはむ女などは、さはえしめぬかな】 『完訳』は「晴れがましい宮廷勤めをなさるような女なども、あんなにはたきしめられない。やや不審の行文」と注す。
2.4.13 注釈111 【源中納言は】 薫。
2.4.14 注釈112 【梅は生ひ出でけむ根こそあはれなれ】 『集成』は「(芳香のある)梅は、生い出たものとねざしがゆかしく思われることです。薫の前世の因縁ということから、梅はどうしてあれほどの芳香あるのだろうか、と言う」と注す。『完訳』は「梅は生き立ちの素姓が殊勝ですね」と訳す。

第五段 匂宮、宮の御方に執心

2.5.1 注釈113 【人に見え、世づきたらむありさまは、さらに」と思し離れたり】 『完訳』は「結婚して世間並に暮すのは。連れ子のきびしい状況に置かれてもいるが、控え目すぎる性格からも結婚には無関心」と注す。
2.5.2 注釈114 【世の人も、時に寄る心ありてにや】 「にや」語り手の推測を介在させた句。
2.5.2 注釈115 【さし向ひたる御方々には】 両親揃っている姫君たちの意。大納言の大君・中君には継母ではあるが二親揃っている。しかし宮の御方は連れ子で片親であるという文脈。『集成』は「現に父君のいらっしゃる姫君たちには」。『完訳』は「本妻腹の御方々には」と訳す。
2.5.2 注釈116 【御ふさひの方に】 「ふさひ」は、ふさわしい意。
2.5.3 注釈117 【大納言の君、深く心かけきこえたまひて】 『集成』は「夫の大納言は。以下、匂宮の文通のことを知っての北の方(真木柱)の思い。それで「大納言の君」という」と注す。
2.5.4 注釈118 【ひき違へて】 以下「かひなげなること」まで、北の方の詞。
2.5.6 注釈119 【何かは、人の】 以下「見えさせたまふに」まで、北の方の心中。匂宮と宮の御方を許す気持ち。
2.5.6 注釈120 【八の宮の姫君にも】 宇治八の宮の中君。『新大系』は「桐壺院の第八皇子であることが橋姫巻で紹介される。ここで唐突にも「八の宮の姫君」に匂宮が通うことが記されていることで、当巻の成立・巻序・年立などでさまざまな問題を生む」と注す。
2.5.6 注釈121 【まめやかには思ほし絶えたるを】 主語は北の方。
2.5.6 注釈122 【かたじけなきばかりに】 『完訳』は「匂宮の高貴な身が畏れ多いとだけ。体よく断る口実である」と注す。
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