| 帖 | 章.段.行 | テキストLineNo | ローマ字LineNo | 本文 | ひらがな |
| 01 | 桐壺 |
| 01 | 1 | 69 | 41 | 第一章 光る源氏前史の物語 |
| 01 | 1.4 | 86 | 59 | 第四段 母御息所の死去 |
| 01 | 1.4.2 | 88 | 61 |
年ごろ、常の篤しさになりたまへれば、御目馴れて、「なほしばしこころみよ」とのみのたまはするに、日々に重りたまひて、ただ五、六日のほどにいと弱うなれば、母君泣く泣く奏して、まかでさせたてまつりたまふ。 |
としごろ、つねのあづしさになりたまへれば、おほんめなれて、"なほしばしこころみよ。"とのみのたまはするに、ひびにおもりたまひて、ただいつかむいかのほどにいとよわうなれば、ははぎみなくなくそうして、まかでさせたてまつりたまふ。 |
| 01 | 2 | 101 | 74 | 第二章 父帝悲秋の物語 |
| 01 | 2.3 | 133 | 107 | 第三段 命婦帰参 |
| 01 | 2.3.1 | 134 | 108 |
命婦は、「まだ大殿籠もらせたまはざりける」と、あはれに見たてまつる。御前の壺前栽のいとおもしろき盛りなるを御覧ずるやうにて、忍びやかに心にくき限りの女房四、五人さぶらはせたまひて、御物語せさせたまふなりけり。 |
みゃうぶは、"まだおほとのごもらせたまはざりける。"と、あはれにみたてまつる。おまへのつぼせんざいのいとおもしろきさかりなるをごらんずるやうにて、しのびやかにこころにくきかぎりのにょうばうしごにんさぶらはせたまひて、おほんものがたりせさせたまふなりけり。 |
| 01 | 3 | 149 | 124 | 第三章 光る源氏の物語 |
| 01 | 3.8 | 198 | 175 | 第八段 源氏、成人の後 |
| 01 | 3.8.1 | 199 | 176 |
大人になりたまひて後は、ありしやうに御簾の内にも入れたまはず。御遊びの折々、琴笛の音に聞こえかよひ、ほのかなる御声を慰めにて、内裏住みのみ好ましうおぼえたまふ。五、六日さぶらひたまひて、大殿に二、三日など、絶え絶えにまかでたまへど、ただ今は幼き御ほどに、罪なく思しなして、いとなみかしづききこえたまふ。 |
おとなになりたまひてのちは、ありしやうにみすのうちにもいれたまはず。おほんあそびのをりをり、ことふえのねにきこえかよひ、ほのかなるおほんこゑをなぐさめにて、うちずみのみこのましうおぼえたまふ。いつかむいかさぶらひたまひて、おほいどのにふつかみかなど、たえだえにまかでたまへど、ただいまはをさなきおほんほどに、つみなくおぼしなして、いとなみかしづききこえたまふ。 |
| 02 | 帚木 |
| 02 | 3 | 209 | 189 | 第三章 空蝉の物語 |
| 02 | 3.4 | 308 | 290 | 第四段 それから数日後 |
| 02 | 3.4.1 | 309 | 291 |
さて、五、六日ありて、この子率て参れり。こまやかにをかしとはなけれど、なまめきたるさまして、あて人と見えたり。召し入れて、いとなつかしく語らひたまふ。童心地に、いとめでたくうれしと思ふ。いもうとの君のことも詳しく問ひたまふ。さるべきことは答へ聞こえなどして、恥づかしげにしづまりたれば、うち出でにくし。されど、いとよく言ひ知らせたまふ。 |
さて、いつかむいかありて、このこゐてまゐれり。こまやかにをかしとはなけれど、なまめきたるさまして、あてびととみえたり。めしいれて、いとなつかしくかたらひたまふ。わらはごこちに、いとめでたくうれしとおもふ。いもうとのきみのこともくはしくとひたまふ。さるべきことはいらへきこえなどして、はづかしげにしづまりたれば、うちいでにくし。されど、いとよくいひしらせたまふ。 |
| 06 | 末摘花 |
| 06 | 1 | 44 | 30 | 第一章 末摘花の物語 |
| 06 | 1.10 | 263 | 254 | 第十段 正月七日夜常陸宮邸に泊まる |
| 06 | 1.10.11 | 274 | 265 |
と、うち誦じて出でたまふを、見送りて添ひ臥したまへり。口おほひの側目より、なほ、かの末摘花、いとにほひやかにさし出でたり。見苦しのわざやと思さる。 |
と、うちずじていでたまふを、みおくりてそひふしたまへり。くちおほひのそばめより、なほ、かのすゑつむはな、いとにほひやかにさしいでたり。みぐるしのわざやとおぼさる。 |
| 10 | 賢木 |
| 10 | 5 | 330 | 305 | 第五章 藤壺の物語 法華八講主催と出家 |
| 10 | 5.2 | 338 | 313 | 第二段 十二月十日過ぎ、藤壺、法華八講主催の後、出家す |
| 10 | 5.2.2 | 340 | 315 |
初めの日は、先帝の御料。次の日は、母后の御ため。またの日は、院の御料。五巻の日なれば、上達部なども、世のつつましさをえしも憚りたまはで、いとあまた参りたまへり。今日の講師は、心ことに選らせたまへれば、「薪こる」ほどよりうちはじめ、同じう言ふ言の葉も、いみじう尊し。親王たちも、さまざまの捧物ささげてめぐりたまふに、大将殿の御用意など、なほ似るものなし。常におなじことのやうなれど、見たてまつるたびごとに、めづらしからむをば、いかがはせむ。 |
はじめのひは、せんだいのごれう。つぎのひは、ははきさきのおほんため。またのひは、ゐんのごれう。ごかんのひなれば、かんだちめなども、よのつつましさをえしもはばかりたまはで、いとあまたまゐりたまへり。けふのかうじは、こころことにえらせたまへれば、"たきぎこる"ほどよりうちはじめ、おなじういふことのはも、いみじうたふとし。みこたちも、さまざまのほうもちささげてめぐりたまふに、だいしゃうどののおほんよういなど、なほにるものなし。つねにおなじことのやうなれど、みたてまつるたびごとに、めづらしからんをば、いかがはせん。 |
| 22 | 玉鬘 |
| 22 | 3 | 214 | 187 | 第三章 玉鬘の物語 玉鬘、右近と椿市で邂逅 |
| 22 | 3.6 | 276 | 250 | 第六段 三条、初瀬観音に祈願 |
| 22 | 3.6.2 | 278 | 253 |
「大悲者には、異事も申さじ。あが姫君、大弐の北の方、ならずは、当国の受領の北の方になしたてまつらむ。三条らも、随分に栄えて、返り申しは仕うまつらむ」 |
"だいひさには、ことごともまうさじ。あがひめぎみ、だいにのきたのかた、ならずは、たうごくのずりゃうのきたのかたになしたてまつらん。さんでうらも、ずいぶんにさかえて、かへりまうしはつかうまつらん。" |
| 22 | 4 | 322 | 297 | 第四章 光る源氏の物語 玉鬘を養女とする物語 |
| 22 | 4.1 | 323 | 298 | 第一段 右近、六条院に帰参する |
| 22 | 4.1.10 | 333 | 308 |
大殿油など参りて、うちとけ並びおはします御ありさまども、いと見るかひ多かり。女君は、二十七、八にはなりたまひぬらむかし、盛りにきよらにねびまさりたまへり。すこしほど経て見たてまつるは、「また、このほどにこそ、にほひ加はりたまひにけれ」と見えたまふ。 |
おほとなぶらなどまゐりて、うちとけならびおはしますおほんありさまども、いとみるかひおほかり。をんなぎみは、にじふしちはちにはなりたまひぬらんかし、さかりにきよらにねびまさりたまへり。すこしほどへてみたてまつるは、"また、このほどにこそ、にほひくははりたまひにけれ。"とみえたまふ。 |
| 38 | 鈴虫 |
| 38 | 1 | 57 | 36 | 第一章 女三の宮の物語 持仏開眼供養 |
| 38 | 1.3 | 82 | 62 | 第三段 持仏開眼供養執り行われる |
| 38 | 1.3.1 | 83 | 63 |
例の、親王たちなども、いとあまた参りたまへり。御方々より、我も我もと営み出でたまへる捧物のありさま、心ことに、所狭きまで見ゆ。七僧の法服など、すべておほかたのことどもは、皆紫の上せさせたまへり。綾のよそひにて、袈裟の縫目まで、見知る人は、世になべてならずとめでけりとや。むつかしうこまかなることどもかな。 |
れいの、みこたちなども、いとあまたまゐりたまへり。おほんかたがたより、われもわれもといとなみいでたまへるほうもちのありさま、こころことに、ところせきまでみゆ。しちそうのほふぶくなど、すべておほかたのことどもは、みなむらさきのうへせさせたまへり。あやのよそひにて、けさのぬひめまで、みしるひとは、よになべてならずとめでけりとや。むつかしうこまかなることどもかな。 |
| 40 | 御法 |
| 40 | 1 | 61 | 38 | 第一章 紫の上の物語 死期間近き春から夏の物語 |
| 40 | 1.2 | 67 | 44 | 第二段 二条院の法華経供養 |
| 40 | 1.2.3 | 70 | 47 |
内裏、春宮、后の宮たちをはじめたてまつりて、御方々、ここかしこに御誦経、捧物などばかりのことをうちしたまふだに所狭きに、まして、そのころ、この御いそぎを仕うまつらぬ所なければ、いとこちたきことどもあり。「いつのほどに、いとかくいろいろ思しまうけけむ。げに、石上の世々経たる御願にや」とぞ見えたる。 |
うち、とうぐう、きさいのみやたちをはじめたてまつりて、おほんかたがた、ここかしこにみずきゃう、ほうもちなどばかりのことをうちしたまふだにところせきに、まして、そのころ、このおほんいそぎをつかうまつらぬところなければ、いとこちたきことどもあり。"いつのほどに、いとかくいろいろおぼしまうけけん。げに、いそのかみのよよへたるおほんがんにや。"とぞみえたる。 |
| 46 | 椎本 |
| 46 | 2 | 118 | 102 | 第二章 薫の物語 秋、八の宮死去す |
| 46 | 2.3 | 141 | 125 | 第三段 薫、弁の君から昔語りを聞き、帰京 |
| 46 | 2.3.2 | 143 | 127 |
「三の宮いとゆかしう思いたるものを」と、心のうちには思ひ出でつつ、「わが心ながら、なほ人には異なりかし。さばかり御心もて許いたまふことの、さしもいそがれぬよ。もて離れて、はたあるまじきこととは、さすがにおぼえず。かやうにてものをも聞こえ交はし、折ふしの花紅葉につけて、あはれをも情けをも通はすに、憎からずものしたまふあたりなれば、宿世異にて、他ざまにもなりたまはむは」、さすがに口惜しかるべう、領じたる心地しけり。 |
"さんのみやいとゆかしうおぼいたるものを。"と、こころのうちにはおもひいでつつ、"わがこころながら、なほひとにはことなりかし。さばかりみこころもてゆるいたまふことの、さしもいそがれぬよ。もてはなれて、はたあるまじきこととは、さすがにおぼえず。かやうにてものをもきこえかはし、をりふしのはなもみぢにつけて、あはれをもなさけをもかよはすに、にくからずものしたまふあたりなれば、すくせことにて、ほかざまにもなりたまはんは"、さすがにくちをしかるべう、りゃうじたるここちしけり。 |
| 47 | 総角 |
| 47 | 4 | 377 | 365 | 第四章 中の君の物語 匂宮と中の君、朝ぼらけの宇治川を見る |
| 47 | 4.3 | 401 | 389 | 第三段 女房たちと大君の思い |
| 47 | 4.3.8 | 409 | 397 |
とうしろめたくて、見出だして臥したまへり。「恥づかしげならむ人に見えむことは、いよいよかたはらいたく、今一、二年あらば、衰へまさりなむ。はかなげなる身のありさまを」と、御手つきの細やかにか弱く、あはれなるをさし出でても、世の中を思ひ続けたまふ。 |
とうしろめたくて、みいだしてふしたまへり。"はづかしげならんひとにみえんことは、いよいよかたはらいたく、いまひととせふたとせあらば、おとろへまさりなん。はかなげなるみのありさまを。"と、おほんてつきのこまやかにかよわく、あはれなるをさしいでても、よのなかをおもひつづけたまふ。 |
| 49 | 宿木 |
| 49 | 3 | 284 | 257 | 第三章 中君の物語 匂宮と六の君の婚儀 |
| 49 | 3.7 | 353 | 327 | 第七段 匂宮と六の君の結婚第三夜の宴 |
| 49 | 3.7.3 | 356 | 330 |
宵すこし過ぐるほどにおはしましたり。寝殿の南の廂、東に寄りて御座参れり。御台八つ、例の御皿など、うるはしげにきよらにて、また、小さき台二つに、花足の御皿なども、今めかしくせさせたまひて、餅参らせたまへり。めづらしからぬこと書きおくこそ憎けれ。 |
よひすこしすぐるほどにおはしましたり。しんでんのみなみのひさし、ひんがしによりておましまゐれり。みだいやつ、れいのおほんさらなど、うるはしげにきよらにて、また、ちひさきだいふたつに、けそくのさらなども、いまめかしくせさせたまひて、もちひまゐらせたまへり。めづらしからぬことかきおくこそにくけれ。 |
| 51 | 浮舟 |
| 51 | 3 | 358 | 323 | 第三章 浮舟と薫の物語 薫と浮舟、宇治橋の和歌を詠み交す |
| 51 | 3.2 | 370 | 335 | 第二段 明石中宮からと薫の見舞い |
| 51 | 3.2.12 | 382 | 347 |
かしこには、石山も停まりて、いとつれづれなり。御文には、いといみじきことを書き集めたまひて遣はす。それだに心やすからず、「時方」と召しし大夫の従者の、心も知らぬしてなむやりける。 |
かしこには、いしやまもとまりて、いとつれづれなり。おほんふみには、いといみじきことをかきあつめたまひてつかはす。それだにこころやすからず、"ときかた"とめししたいふのずさの、こころもしらぬしてなんやりける。 |
| 53 | 手習 |
| 53 | 3 | 310 | 275 | 第三章 浮舟の物語 中将、浮舟に和歌を贈る |
| 53 | 3.8 | 433 | 399 | 第八段 母尼君、琴を弾く |
| 53 | 3.8.5 | 438 | 404 |
「いで、主殿のくそ、東取りて」 |
"いで、とのもりのくそ、あづまとりて。" |
| 53 | 4 | 458 | 424 | 第四章 浮舟の物語 浮舟、尼君留守中に出家す |
| 53 | 4.7 | 543 | 510 | 第七段 浮舟、僧都に出家を懇願 |
| 53 | 4.7.6 | 549 | 516 |
「まだ、いと行く先遠げなる御ほどに、いかでかひたみちにしかば、思し立たむ。かへりて罪あることなり。思ひ立ちて、心を起こしたまふほどは強く思せど、年月経れば、女の御身といふもの、いとたいだいしきものになむ」 |
"まだ、いとゆくさきとほげなるおほんほどに、いかでかひたみちにしかば、おぼしたたん。かへりてつみあることなり。おもひたちて、こころをおこしたまふほどはつよくおぼせど、としつきふれば、をんなのみといふもの、いとたいだいしきものになん。" |