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First updated 09/20/1996(ver.1-1)<BR>⏎
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cd3:210-12Last updated 09/09/2010(ver.2-2)<BR>⏎
渋谷栄一校訂(C)<BR>⏎
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9-10<ADDRESS>Last updated 09/09/2010(ver.2-2)<BR>⏎
渋谷栄一校訂(C)</ADDRESS>⏎
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d172<P>⏎
text0173 <H4>第一章 光る源氏前史の物語</H4>69 
text0174 <A NAME="in11">[第一段 父帝と母桐壺更衣の物語]</A><BR>70 
d175<P>⏎
cd6:576-81 いづれの御時にか、女御更衣あまたさぶらひたまひけるなかに、いとやむごとなき際にはあらぬが、すぐれて時めきたまふありけり。<BR>⏎
<P>⏎
 はじめより我はと思ひ上がりたまへる御方がた、めざましきものにおとしめ嫉みたまふ。同じほど、それより下臈の更衣たちは、ましてやすからず。朝夕の宮仕へにつけても、人の心をのみ動かし、恨みを負ふ積もりにやありけむ、いと篤しくなりゆき、もの心細げに里がちなるを、いよいよあかずあはれなるものに思ほして、人の<A HREF="#k01">そしりをも</A><A NAME="t01">え</A>憚らせたまはず、世のためしにもなりぬべき御もてなしなり。<BR>⏎
<P>⏎
 上達部、上人なども、あいなく目を側めつつ、「いとまばゆき人の御おぼえなり。唐土にも、かかる事の起こりにこそ、世も乱れ、悪しかりけれ」と、やうやう天の下にもあぢきなう、人のもてなやみぐさになりて、楊貴妃の例も引き出でつべくなりゆくに、いとはしたなきこと多かれど、かたじけなき御心ばへのたぐひなきを頼みにてまじらひたまふ。<BR>⏎
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71-75 いづれの御時にか、女御更衣あまたさぶらひたまひけるなかに、いとやむごとなき際にはあらぬが、すぐれて時めきたまふありけり。<BR>⏎
 はじめより我はと思ひ上がりたまへる御方がた、めざましきものにおとしめ嫉みたまふ。同じほど、それより下臈の更衣たちは、ましてやすからず。<BR>⏎
朝夕の宮仕へにつけても、人の心をのみ動かし、恨みを負ふ積もりにやありけむ、いと篤しくなりゆき、もの心細げに里がちなるを、いよいよあかずあはれなるものに思ほして、人の<A HREF="#k01">そしりをも</A><A NAME="t01">え</A>憚らせたまはず、世のためしにもなりぬべき御もてなしなり。<BR>⏎
 上達部、上人なども、あいなく目を側めつつ、「いとまばゆき人の御おぼえなり。<BR>⏎
唐土にも、かかる事の起こりにこそ、世も乱れ、悪しかりけれ」と、やうやう天の下にもあぢきなう、人のもてなやみぐさになりて、楊貴妃の例も引き出でつべくなりゆくに、いとはしたなきこと多かれど、かたじけなき御心ばへのたぐひなきを頼みにてまじらひたまふ。<BR>⏎
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text0184 <A NAME="in12">[第二段 御子誕生(一歳)]</A><BR>77 
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d191<P>⏎
ci2:392-93 かしこき御蔭をば頼みきこえながら、落としめ疵を求めたまふ人は多く、わが身はか弱くものはかなきありさまにて、なかなかなるもの思ひをぞしたまふ。御局は桐壺なり。あまたの御方がたを過ぎさせたまひて、ひまなき御前渡りに、人の御心を尽くしたまふも、げにことわりと見えたり。参う上りたまふにも、あまりうちしきる折々は、打橋、渡殿のここかしこの道に、あやしきわざをしつつ、御送り迎への人の衣の裾、堪へがたく、まさなきこともあり。またある時には、え避らぬ馬道の戸を鎖しこめ、こなたかなた心を合はせて、はしたなめわづらはせたまふ時も多かり。事にふれて数知らず苦しきことのみまされば、いといたう思ひわびたるを、いとどあはれと御覧じて、後涼殿にもとよりさぶらひたまふ更衣の曹司を他に移させたまひて、上局に賜はす。その恨みましてやらむ方なし。<BR>⏎
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81-83 かしこき御蔭をば頼みきこえながら、落としめ疵を求めたまふ人は多く、わが身はか弱くものはかなきありさまにて、なかなかなるもの思ひをぞしたまふ。<BR>⏎
御局は桐壺なり。あまたの御方がたを過ぎさせたまひて、ひまなき御前渡りに、人の御心を尽くしたまふも、げにことわりと見えたり。参う上りたまふにも、あまりうちしきる折々は、打橋、渡殿のここかしこの道に、あやしきわざをしつつ、御送り迎への人の衣の裾、堪へがたく、まさなきこともあり。またある時には、え避らぬ馬道の戸を鎖しこめ、こなたかなた心を合はせて、はしたなめわづらはせたまふ時も多かり。<BR>⏎
  
事にふれて数知らず苦しきことのみまされば、いといたう思ひわびたるを、いとどあはれと御覧じて、後涼殿にもとよりさぶらひたまふ更衣の曹司を他に移させたまひて、上局に賜はす。その恨みましてやらむ方なし。<BR>⏎
text0194 <A NAME="in13">[第三段 若宮の御袴着(三歳)]</A><BR>84 
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d197<P>⏎
text0198 <A NAME="in14">[第四段 母御息所の死去]</A><BR>86 
d199<P>⏎
ci2:3100-101 その年の夏、御息所、はかなき心地にわづらひて、まかでなむとしたまふを、暇さらに許させたまはず。年ごろ、常の篤しさになりたまへれば、御目馴れて、「なほしばしこころみよ」とのみのたまはするに、日々に重りたまひて、ただ五六日のほどにいと弱うなれば、母君泣く泣く奏して、まかでさせたてまつりたまふ。かかる折にも、あるまじき恥もこそと心づかひして、御子をば留めたてまつりて、忍びてぞ出でたまふ。<BR>⏎
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87-89 その年の夏、御息所、はかなき心地にわづらひて、まかでなむとしたまふを、暇さらに許させたまはず。<BR>⏎
年ごろ、常の篤しさになりたまへれば、御目馴れて、「なほしばしこころみよ」とのみのたまはするに、日々に重りたまひて、ただ五六日のほどにいと弱うなれば、母君泣く泣く奏して、まかでさせたてまつりたまふ。<BR>⏎
  
かかる折にも、あるまじき恥もこそと心づかひして、御子をば留めたてまつりて、忍びてぞ出でたまふ。<BR>⏎
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d1107<P>⏎
cd2:1108-109 「限りとて別るる道の悲しきに<BR>⏎
  いかまほしきは命なりけり<BR>⏎
93 「限りとて別るる道の悲しきに<BR>  いかまほしきは命なりけり<BR>⏎
d1111<P>⏎
cd2:1112-113 と息も絶えつつ、聞こえまほしげなることはありげなれど、いと苦しげにたゆげなれば、かくながら、ともかくもならむを御覧じはてむと思し召すに、「今日始むべき祈りども、さるべき人びとうけたまはれる、今宵より」と、聞こえ急がせば、わりなく思ほしながらまかでさせたまふ。<BR>⏎
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95 と息も絶えつつ、聞こえまほしげなることはありげなれど、いと苦しげにたゆげなれば、かくながら、ともかくもならむを御覧じはてむと思し召すに、「今日始むべき祈りども、さるべき人びとうけたまはれる、今宵より」と、聞こえ急がせば、わりなく思ほしながらまかでさせたまふ。<BR>⏎
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text01118 <A NAME="in15">[第五段 故御息所の葬送]</A><BR>98 
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d1121<P>⏎
cd2:1122-123 内裏より御使あり。三位の位贈りたまふよし、勅使来てその宣命読むなむ、悲しきことなりける。女御とだに言はせずなりぬるが、あかず口惜しう思さるれば、いま一階の位をだにと、贈らせたまふなりけり。これにつけても憎みたまふ人びと多かり。もの思ひ知りたまふは、様容貌などのめでたかりしこと、心ばせのなだらかにめやすく、憎みがたかりしことなど、今ぞ思し出づる。さま悪しき御もてなしゆゑこそ、すげなう嫉みたまひしか、人柄のあはれに情けありし御心を、主上の女房なども恋ひしのびあへり。<A HREF="#no1">なくてぞ</A><A NAME="te1">と</A>は、かかる折にやと見えたり。<BR>⏎
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100 内裏より御使あり。三位の位贈りたまふよし、勅使来てその宣命読むなむ、悲しきことなりける。女御とだに言はせずなりぬるが、あかず口惜しう思さるれば、いま一階の位をだにと、贈らせたまふなりけり。これにつけても憎みたまふ人びと多かり。もの思ひ知りたまふは、様容貌などのめでたかりしこと、心ばせのなだらかにめやすく、憎みがたかりしことなど、今ぞ思し出づる。さま悪しき御もてなしゆゑこそ、すげなう嫉みたまひしか、人柄のあはれに情けありし御心を、主上の女房なども恋ひしのびあへり。<A HREF="#no1">なくてぞ</A><A NAME="te1">と</A>は、かかる折にやと見えたり。<BR>⏎
text01124 <H4>第二章 父帝悲秋の物語</H4>101 
text01125 <A NAME="in21">[第一段 父帝悲しみの日々]</A><BR>102 
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text01129 <A NAME="in22">[第二段 靫負命婦の弔問]</A><BR>104 
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cd2:1137-138 とてげにえ堪ふまじく泣いたまふ。<BR>⏎
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108 とてげにえ堪ふまじく泣いたまふ。<BR>⏎
d1140<P>⏎
cd2:1141-142 とてややためらひて、仰せ言伝へきこゆ。<BR>⏎
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110 とてややためらひて、仰せ言伝へきこゆ。<BR>⏎
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cd2:1145-146 とて御文奉る。<BR>⏎
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112 とて御文奉る。<BR>⏎
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cd5:2151-155 などこまやかに書かせたまへり。<BR>⏎
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 「宮城野の露吹きむすぶ風の音に<BR>⏎
  小萩がもとを思ひこそやれ」<BR>⏎
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115-116 などこまやかに書かせたまへり。<BR>⏎
 「宮城野の露吹きむすぶ風の音に<BR>  小萩がもとを思ひこそやれ」<BR>⏎
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c2158-159 「命長さの、いとつらう思うたまへ知らるるに、<A HREF="#no4">松の思はむこと</A><A NAME="te4">だ</A>に、恥づかしう思うたまへはべれば、百敷に行きかひはべらむことは、ましていと憚り多くなむ。かしこき仰せ言をたびたび承りながら、みづからはえなむ思ひたまへたつまじき。若宮は、いかに思ほし知るにか、参りたまはむことをのみなむ思し急ぐめれば、ことわりに悲しう見たてまつりはべるなど、うちうちに思うたまふるさまを奏したまへ。ゆゆしき身にはべれば、かくておはしますも、忌ま忌ましうかたじけなくなむ」<BR>⏎
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118-119 「命長さの、いとつらう思うたまへ知らるるに、<A HREF="#no4">松の思はむこと</A><A NAME="te4">だ</A>に、恥づかしう思うたまへはべれば、百敷に行きかひはべらむことは、ましていと憚り多くなむ。かしこき仰せ言をたびたび承りながら、みづからはえなむ思ひたまへたつまじき。<BR>⏎
若宮は、いかに思ほし知るにか、参りたまはむことをのみなむ思し急ぐめれば、ことわりに悲しう見たてまつりはべるなど、うちうちに思うたまふるさまを奏したまへ。ゆゆしき身にはべれば、かくておはしますも、忌ま忌ましうかたじけなくなむ」<BR>⏎
d1161<P>⏎
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cd2:1168-169 と言ひもやらずむせかへりたまふほどに、夜も更けぬ。<BR>⏎
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124 と言ひもやらずむせかへりたまふほどに、夜も更けぬ。<BR>⏎
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cd3:1174-176 「鈴虫の声の限りを尽くしても<BR>⏎
  長き夜あかずふる涙かな」<BR>⏎
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127 「鈴虫の声の限りを尽くしても<BR>  長き夜あかずふる涙かな」<BR>⏎
d1178<P>⏎
cd2:1179-180 「いとどしく虫の音しげき浅茅生に<BR>⏎
  露置き添ふる雲の上人<BR>⏎
129 「いとどしく虫の音しげき浅茅生に<BR>  露置き添ふる雲の上人<BR>⏎
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cd2:1185-186 若き人びと、悲しきことはさらにも言はず、内裏わたりを朝夕にならひて、いとさうざうしく、主上の御ありさまなど思ひ出できこゆれば、とく参りたまはむことをそそのかしきこゆれど、「かく忌ま忌ましき身の添ひたてまつらむも、いと人聞き憂かるべし、また見たてまつらでしばしもあらむは、いとうしろめたう」思ひきこえたまひて、すがすがともえ参らせたてまつりたまはぬなりけり。<BR>⏎
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132 若き人びと、悲しきことはさらにも言はず、内裏わたりを朝夕にならひて、いとさうざうしく、主上の御ありさまなど思ひ出できこゆれば、とく参りたまはむことをそそのかしきこゆれど、「かく忌ま忌ましき身の添ひたてまつらむも、いと人聞き憂かるべし、また見たてまつらでしばしもあらむは、いとうしろめたう」思ひきこえたまひて、すがすがともえ参らせたてまつりたまはぬなりけり。<BR>⏎
text01187 <A NAME="in23">[第三段 命婦帰参]</A><BR>133 
d1188<P>⏎
c2189-190 命婦は、「まだ大殿籠もらせたまはざりける」と、あはれに見たてまつる。御前の壺前栽のいとおもしろき盛りなるを御覧ずるやうにて、忍びやかに心にくき限りの女房四五人さぶらはせたまひて、御物語せさせたまふなりけり。このごろ、明け暮れ御覧ずる長恨歌の御絵、亭子院の描かせたまひて、伊勢、貫之に詠ませたまへる、大和言の葉をも、唐土の詩をも、ただその筋をぞ、枕言にせさせたまふ。いとこまやかにありさま問はせたまふ。あはれなりつること忍びやかに奏す。御返り御覧ずれば、<BR>⏎
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134-135 命婦は、「まだ大殿籠もらせたまはざりける」と、あはれに見たてまつる。御前の壺前栽のいとおもしろき盛りなるを御覧ずるやうにて、忍びやかに心にくき限りの女房四五人さぶらはせたまひて、御物語せさせたまふなりけり。<BR>⏎
このごろ、明け暮れ御覧ずる長恨歌の御絵、亭子院の描かせたまひて、伊勢、貫之に詠ませたまへる、大和言の葉をも、唐土の詩をも、ただその筋をぞ、枕言にせさせたまふ。いとこまやかにありさま問はせたまふ。あはれなりつること忍びやかに奏す。御返り御覧ずれば、<BR>⏎
d1192<P>⏎
cd3:1193-195 荒き風ふせぎし蔭の枯れしより<BR>⏎
 小萩がうへぞ静心なき」<BR>⏎
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137  荒き風ふせぎし蔭の枯れしより<BR>  小萩がうへぞ静心なき」<BR>⏎
d1197<P>⏎
d1199<P>⏎
cd7:4200-206 などのたまはす。かの贈り物御覧ぜさす。「亡き人の住処尋ね出でたりけむしるしの釵ならましかば」と思ほすもいとかひなし。<BR>⏎
<P>⏎
 「尋ねゆく幻もがなつてにても<BR>⏎
  魂のありかをそこと知るべく」<BR>⏎
<P>⏎
 絵に描ける楊貴妃の容貌は、いみじき絵師といへども、筆限りありければいとにほひ少なし。<A HREF="#no6">大液芙蓉未央柳</A><A NAME="te6">も</A>、げに通ひたりし容貌を、唐めいたる装ひはうるはしうこそ<A HREF="#k04">ありけめ</A><A NAME="t04">、</A>なつかしうらうたげなりしを思し出づるに、花鳥の色にも音にもよそふべき方ぞなき。朝夕の言種に、「<A HREF="#no7">翼をならべ、枝を交はさむ</A><A NAME="te7">」と</A>契らせたまひしに、かなはざりける命のほどぞ、尽きせず恨めしき。<BR>⏎
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140-143 などのたまはす。かの贈り物御覧ぜさす。「亡き人の住処尋ね出でたりけむしるしの釵ならましかば」と思ほすも いとかひなし。<BR>⏎
 「尋ねゆく幻もがなつてにても<BR>  魂のありかをそこと知るべく」<BR>⏎
 絵に描ける楊貴妃の容貌は、いみじき絵師といへども、筆限りありければいとにほひ少なし。<A HREF="#no6">大液芙蓉未央柳</A><A NAME="te6">も</A>、げに通ひたりし容貌を、唐めいたる装ひはうるはしうこそ<A HREF="#k04">ありけめ</A><A NAME="t04">、</A>なつかしうらうたげなりしを思し出づるに、花鳥の色にも音にもよそふべき方ぞなき。<BR>⏎
 
朝夕の言種に、「<A HREF="#no7">翼をならべ、枝を交はさむ</A><A NAME="te7">」と</A>契らせたまひしに、かなはざりける命のほどぞ、尽きせず恨めしき。<BR>⏎
d1208<P>⏎
cd7:4209-215 「雲の上も涙にくるる秋の月<BR>⏎
  いかですむらむ浅茅生の宿」<BR>⏎
<P>⏎
 思し召しやりつつ、<A HREF="#no8">灯火をかかげ尽くして起き</A><A NAME="te8">お</A>はします。右近の司の宿直奏の声聞こゆるは、丑になりぬるなるべし。人目を思して、夜の御殿に入らせたまひても、まどろませたまふことかたし。朝に起きさせたまふとても、<A HREF="#no9">「明くるも知らで」</A><A NAME="te9">と</A>思し出づるにも、なほ朝政は怠らせたまひぬべかめり。<BR>⏎
<P>⏎
 ものなども聞こし召さず、朝餉のけしきばかり触れさせたまひて、大床子の御膳などは、いと遥かに思し召したれば、陪膳にさぶらふ限りは、心苦しき御気色を見たてまつり嘆く。すべて近うさぶらふ限りは、男女、「いとわりなきわざかな」と言ひ合はせつつ嘆く。「さるべき契りこそはおはしましけめ。そこらの人の誹り、恨みをも憚らせたまはず、この御ことに触れたることをば、道理をも失はせたまひ、今はた、かく世の中のことをも、思ほし捨てたるやうになりゆくは、いとたいだいしきわざなり」と、人の朝廷の例まで引き出で、ささめき嘆きけり。<BR>⏎
<P>⏎
145-148 「雲の上も涙にくるる秋の月<BR>  いかですむらむ浅茅生の宿」<BR>⏎
 思し召しやりつつ、<A HREF="#no8">灯火をかかげ尽くして起き</A><A NAME="te8">お</A>はします。右近の司の宿直奏の声聞こゆるは、丑になりぬるなるべし。人目を思して、夜の御殿に入らせたまひても、まどろませたまふことかたし。<BR>⏎
 
朝に起きさせたまふとても、<A HREF="#no9">「明くるも知らで」</A><A NAME="te9">と</A>思し出づるにも、なほ朝政は怠らせたまひぬべかめり。<BR>⏎
 ものなども聞こし召さず、朝餉のけしきばかり触れさせたまひて、大床子の御膳などは、いと遥かに思し召したれば、陪膳にさぶらふ限りは、心苦しき御気色を見たてまつり嘆く。すべて近うさぶらふ限りは、男女、「いとわりなきわざかな」と言ひ合はせつつ嘆く。「さるべき契りこそはおはしましけめ。そこらの人の誹り、恨みをも憚らせたまはず、この御ことに触れたることをば、道理をも失はせたまひ、今はた、かく世の中のことをも、思ほし捨てたるやうになりゆくは、いとたいだいしきわざなり」と、人の朝廷の例まで引き出で、ささめき嘆きけり。<BR>⏎
text01216 <H4>第三章 光る源氏の物語</H4>149 
text01217 <A NAME="in31">[第一段 若宮参内(四歳)]</A><BR>150 
d1218<P>⏎
d1220<P>⏎
d1223<P>⏎
text01224 <A NAME="in32">[第二段 読書始め(七歳)]</A><BR>154 
d1225<P>⏎
d1227<P>⏎
d1229<P>⏎
d1231<P>⏎
text01232 <A NAME="in33">[第三段 高麗人の観相、源姓賜わる]</A><BR>158 
d1233<P>⏎
d1235<P>⏎
d1237<P>⏎
d1239<P>⏎
d1241<P>⏎
c1242 帝かしこき御心に、倭相を仰せて、思しよりにける筋なれば、今までこの君を親王にもなさせたまはざりけるを、「相人はまことにかしこかりけり」と思して、「無品の親王の外戚の寄せなきにては漂はさじ。わが御世もいと定めなきを、ただ人にて朝廷の御後見をするなむ、行く先も頼もしげなめること」と思し定めて、いよいよ道々の才を習はさせたまふ。<BR>⏎
163 帝かしこき御心に、倭相を仰せて、思しよりにける筋なれば、今までこの君を親王にもなさせたまはざりけるを、「相人はまことにかしこかりけり」と思して、「無品の親王の外戚の寄せなきにては漂はさじ。わが御世もいと定めなきを、ただ人にて朝廷の御後見をするなむ、行く先も頼もしげなめること」と思し定めて、いよいよ道々の才を習はさせたまふ。<BR>⏎
d1244<P>⏎
text01245 <A NAME="in34">[第四段 先帝の四宮(藤壺)入内]</A><BR>165 
c2246-247<P> 年月に添へて、御息所の御ことを思し忘るる折なし。「慰むや」と、さるべき人びと参らせたまへど、「なずらひに思さるるだにいとかたき世かな」と、疎ましうのみよろづに思しなりぬるに、先帝の四の宮の、御容貌すぐれたまへる聞こえ高くおはします、母后世になくかしづききこえたまふを、主上にさぶらふ典侍は、先帝の御時の人にて、かの宮にも親しう参り馴れたりければ、いはけなくおはしましし時より見たてまつり、今もほの見たてまつりて、「亡せたまひにし御息所の御容貌に似たまへる人を、三代の宮仕へに伝はりぬるに、え見たてまつりつけぬを、后の宮の姫宮こそ、いとようおぼえて生ひ出でさせたまへりけれ。ありがたき御容貌人になむ」と奏しけるに、「まことにや」と、御心とまりて、ねむごろに聞こえさせたまひけり。<BR>⏎
<P>⏎
166-167 年月に添へて、御息所の御ことを思し忘るる折なし。「慰むや」と、さるべき人びと参らせたまへど、「なずらひに思さるるだにいとかたき世かな」と、疎ましうのみよろづに思しなりぬるに、先帝の四の宮の、御容貌すぐれたまへる聞こえ高くおはします、母后世になくかしづききこえたまふを、主上にさぶらふ典侍は、先帝の御時の人にて、かの宮にも親しう参り馴れたりければ、いはけなくおはしましし時より見たてまつり、今もほの見たてまつりて、<BR>⏎
 
「亡せたまひにし御息所の御容貌に似たまへる人を、三代の宮仕へに伝はりぬるに、え見たてまつりつけぬを、后の宮の姫宮こそ、いとようおぼえて生ひ出でさせたまへりけれ。ありがたき御容貌人になむ」と奏しけるに、「まことにや」と、御心とまりて、ねむごろに聞こえさせたまひけり。<BR>⏎
d1249<P>⏎
cd4:3250-253 心細きさまにておはしますに、「ただわが女皇女たちの同じ列に思ひきこえむ」と、いとねむごろに聞こえさせたまふ。さぶらふ人びと、御後見たち、御兄の兵部卿の親王など、「かく心細くておはしまさむよりは、内裏住みせさせたまひて、御心も慰むべく」など思しなりて、参らせたてまつりたまへり。<BR>⏎
<P>⏎
 藤壺と聞こゆ。げに御容貌ありさま、あやしきまでぞおぼえたまへる。これは人の御際まさりて、思ひなしめでたく、人もえおとしめきこえたまはねば、うけばりて飽かぬことなし。かれは人の許しきこえざりしに、御心ざしあやにくなりしぞかし。思し紛るとはなけれど、おのづから御心移ろひて、こよなう思し慰むやうなるも、あはれなるわざなりけり。<BR>⏎
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169-171 心細きさまにておはしますに、「ただわが女皇女たちの同じ列に思ひきこえむ」と、いとねむごろに聞こえさせたまふ。さぶらふ人びと、御後見たち、御兄の兵部卿の親王など、「かく心細くておはしまさむよりは、内裏住みせさせたまひて、御心も慰むべく」など思しなりて、参らせたてまつりたまへり。<BR>⏎
 藤壺と聞こゆ。げに御容貌ありさま、あやしきまでぞおぼえたまへる。これは人の御際まさりて、思ひなしめでたく、人もえおとしめきこえたまはねば、うけばりて飽かぬことなし。<BR>⏎
 
かれは人の許しきこえざりしに、御心ざしあやにくなりしぞかし。思し紛るとはなけれど、おのづから御心移ろひて、こよなう思し慰むやうなるも、あはれなるわざなりけり。<BR>⏎
text01254 <A NAME="in35">[第五段 源氏、藤壺を思慕]</A><BR>172 
d1255<P>⏎
d1257<P>⏎
d1259<P>⏎
d1261<P>⏎
d1263<P>⏎
text01264 <A NAME="in36">[第六段 源氏元服(十二歳)]</A><BR>177 
d1266<P>⏎
d1268<P>⏎
cd2:1269-270 おはします殿の東の廂、東向きに椅子立てて、冠者の御座、引入の大臣の御座、御前にあり。申の時にて源氏参りたまふ。角髪結ひたまへるつらつき、顔のにほひ、さま変へたまはむこと惜しげなり。大蔵卿、蔵人仕うまつる。いと清らなる御髪を削ぐほど、心苦しげなるを、主上は、「御息所の見ましかば」と、思し出づるに、堪へがたきを、心強く念じかへさせたまふ。<BR>⏎
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180 おはします殿の東の廂、東向きに椅子立てて、冠者の御座、引入の大臣の御座、御前にあり。申の時にて 源氏参りたまふ。角髪結ひたまへるつらつき、顔のにほひ、さま変へたまはむこと惜しげなり。大蔵卿、蔵人仕うまつる。いと清らなる御髪を削ぐほど、心苦しげなるを、主上は、「御息所の見ましかば」と、思し出づるに、堪へがたきを、心強く念じかへさせたまふ。<BR>⏎
d1272<P>⏎
c2273-274 引入の大臣の皇女腹にただ一人かしづきたまふ御女、春宮よりも御けしきあるを、思しわづらふことありける、この君に奉らむの御心なりけり。内裏にも、御けしき賜はらせたまへりければ、「さらばこの折の後見なかめるを、添ひ臥しにも」ともよほさせたまひければ、さ思したり。<BR>⏎
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182-183 引入の大臣の皇女腹にただ一人かしづきたまふ御女、春宮よりも御けしきあるを、思しわづらふことありける、この君に奉らむの御心なりけり。<BR>⏎
 
内裏にも、御けしき賜はらせたまへりければ、「さらばこの折の後見なかめるを、添ひ臥しにも」ともよほさせたまひければ、さ思したり。<BR>⏎
d1276<P>⏎
d1278<P>⏎
d1280<P>⏎
cd3:1281-283 「いときなき初元結ひに長き世を<BR>⏎
  契る心は結びこめつや」<BR>⏎
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187 「いときなき初元結ひに長き世を<BR>  契る心は結びこめつや」<BR>⏎
d1285<P>⏎
cd3:1286-288 「結びつる心も深き元結ひに<BR>⏎
  濃き紫の色し褪せずは」<BR>⏎
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189 「結びつる心も深き元結ひに<BR>  濃き紫の色し褪せずは」<BR>⏎
d1290<P>⏎
d1292<P>⏎
d1294<P>⏎
text01295 <A NAME="in37">[第七段 源氏、左大臣家の娘(葵上)と結婚]</A><BR>193 
d1296<P>⏎
d1298<P>⏎
d1300<P>⏎
d1302<P>⏎
d1304<P>⏎
text01305 <A NAME="in38">[第八段 源氏、成人の後]</A><BR>198 
d1306<P>⏎
cd2:1307-308 大人になりたまひて後は、ありしやうに御簾の内にも入れたまはず。御遊びの折々、琴笛の音に聞こえかよひ、ほのかなる御声を慰めにて、内裏住みのみ好ましうおぼえたまふ。五六日さぶらひたまひて、大殿に二三日など、絶え絶えにまかでたまへど、ただ今は幼き御ほどに、罪なく思しなして、いとなみかしづききこえたまふ。<BR>⏎
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199 大人になりたまひて後は、ありしやうに御簾の内にも入れたまはず。御遊びの折々、琴笛の音に聞こえかよひ、ほのかなる御声を慰めにて、内裏住みのみ好ましうおぼえたまふ。五六日さぶらひたまひて、大殿に二三日など、絶え絶えにまかでたまへど、ただ今は幼き御ほどに、罪なく思しなして、いとなみかしづききこえたまふ。<BR>⏎
d1310<P>⏎
d1312<P>⏎
d1314<P>⏎
d1316<P>⏎
d1318<P>⏎
cd14:12319-332 <A NAME="in41">【出典】<BR>⏎
</A><a name="no1">出典1</a><A NAME="in41"> ある時はありのすさびに憎かりき亡くてぞ人は恋しかりける(源氏釈所引-出典未詳)</A><a href="#te1">(戻)</a><A NAME="in41"><BR>⏎
</A><a name="
no2">出典2</a><A NAME="in41"> むば玉の闇の現は定かなる夢にいくらもまさらざりけり(古今集恋三-六四七 読人しらず)</A><a href="#te2">(戻)</a><A NAME="in41"><BR>⏎
</A><a name="
no3">出典3</a><A NAME="in41"> 訪ふ人もなき宿なれど来る春は八重葎にもさはらざりけり(古今六帖二-一三〇六 読人しらず)</A><a href="#te3">(戻)</a><A NAME="in41"><BR>⏎
</A><a name="
no4">出典4</a><A NAME="in41"> いかでなほありと知らせじ高砂の松の思はむことも恥づかし(古今六帖五-三〇五七 読人しらず)</A><a href="#te4">(戻)</a><A NAME="in41"><BR>⏎
</A><a name="
no5">出典5</a><A NAME="in41"> 人の親の心は闇にあらねども子を思ふ道に惑ひぬるかな(後撰集雑一-一一〇二 藤原兼輔)</A><a href="#te5">(戻)</a><A NAME="in41"><BR>⏎
</A><a name="
no6">出典6</a><A NAME="in41"> 大液芙蓉未央柳 対此如何不涙垂(白氏文集巻十二 長恨歌)</A><a href="#te6">(戻)</a><A NAME="in41"><BR>⏎
</A><a name="
no7">出典7</a><A NAME="in41"> 在天願作比翼鳥 在地願為連理枝(白氏文集巻十二 長恨歌)</A><a href="#te7">(戻)</a><A NAME="in41"><BR>⏎
</A><a name="
no8">出典8</a><A NAME="in41"> 夕殿蛍飛思悄然 秋灯挑尽未能眠(白氏文集巻十二 長恨歌)</A><a href="#te8">(戻)</a><A NAME="in41"><BR>⏎
</A><a name="
no9">出典9</a><A NAME="in41"> 春宵苦短日高起 従此君王不早朝(白氏文集巻十二 長恨歌)</A>玉簾明くるも知らで寝しものを夢にも見じと思ひけるかな(伊勢集-五五)<A HREF="#te9">(戻)</A><BR>⏎

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 <a name="in42">【校訂】<BR>⏎
【校訂方針】明融臨模本の原態復元を目指して本文校訂した。よって本行本文と一筆と思われる訂正跡は採用したが、それ以外の後世の訂正跡は無視した。<BR>⏎
205-216 <A NAME="in41">【出典】</A><BR>⏎
<A NAME="no1">出典1</A> ある時はありのすさびに憎かりき亡くてぞ人は恋しかりける(源氏釈所引-出典未詳)<A HREF="#te1">(戻)</A><BR>⏎
<
A NAME="no2">出典2</A> むば玉の闇の現は定かなる夢にいくらもまさらざりけり(古今集恋三-六四七 読人しらず)<A HREF="#te2">(戻)</A><BR>⏎
<
A NAME="no3">出典3</A> 訪ふ人もなき宿なれど来る春は八重葎にもさはらざりけり(古今六帖二-一三〇六 読人しらず)<A HREF="#te3">(戻)</A><BR>⏎
<
A NAME="no4">出典4</A> いかでなほありと知らせじ高砂の松の思はむことも恥づかし(古今六帖五-三〇五七 読人しらず)<A HREF="#te4">(戻)</A><BR>⏎
<
A NAME="no5">出典5</A> 人の親の心は闇にあらねども子を思ふ道に惑ひぬるかな(後撰集雑一-一一〇二 藤原兼輔)<A HREF="#te5">(戻)</A><BR>⏎
<
A NAME="no6">出典6</A> 大液芙蓉未央柳 対此如何不涙垂(白氏文集巻十二 長恨歌)<A HREF="#te6">(戻)</A><BR>⏎
<
A NAME="no7">出典7</A> 在天願作比翼鳥 在地願為連理枝(白氏文集巻十二 長恨歌)<A HREF="#te7">(戻)</A><BR>⏎
<
A NAME="no8">出典8</A> 夕殿蛍飛思悄然 秋灯挑尽未能眠(白氏文集巻十二 長恨歌)<A HREF="#te8">(戻)</A><BR>⏎
<
A NAME="no9">出典9</A> 春宵苦短日高起 従此君王不早朝(白氏文集巻十二 長恨歌)玉簾明くるも知らで寝しものを夢にも見じと思ひけるかな(伊勢集-五五)<A HREF="#te9">(戻)</A><BR>⏎
 <A NAME="in42">【校訂】</A><BR>⏎
【校訂方針】明融臨模本の原態復元を目指して本文校訂した。よって本行本文と一筆と思われる訂正跡は採用したが、それ以外の後世の訂正跡は無視した。<BR>⏎
c1334</a><A NAME="k01">校訂1</A> そしりをも--そしりをも(も/#も)<A HREF="#t01">(戻)</A><BR>⏎
218<A NAME="k01">校訂1</A> そしりをも--そしりをも(も/#も)<A HREF="#t01">(戻)</A><BR>⏎
d1338
d1346</p>⏎
i1232
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First updated 09/20/1996(ver.1-1)<BR>⏎
8<BODY>⏎
cd3:210-12Last updated 11/16/2011(ver.2-6)<BR>⏎
渋谷栄一校訂(C)<BR>⏎
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9-10<ADDRESS>Last updated 11/16/2011(ver.2-6)<BR>⏎
渋谷栄一校訂(C)</ADDRESS>⏎
i013
d141<P>⏎
c147<LI>女性論、左馬頭の結論---<A HREF="#in14">「今は、ただ品にもよらじ。容貌をばさらにも言はじ</A>⏎
44<LI>女性論、左馬頭の結論---<A HREF="#in14">「今は、ただ品にもよらじ。容貌をばさらにも言はじ</A>⏎
d163<P>⏎
d166<P>⏎
text0267 <H4>第一章 雨夜の品定めの物語</H4>62 
text0268 <A NAME="in11">[第一段 長雨の時節]</A><BR>63 
d169<P>⏎
c270-71 光る源氏、名のみことことしう、言ひ消たれたまふ咎多かなるに、いとどかかる好きごとどもを、末の世にも聞き伝へて、軽びたる名をや流さむと、忍びたまひける隠ろへごとをさへ、語り伝へけむ人のもの言ひさがなさよ。さるはいといたく世を憚り、まめだちたまひけるほど、なよびかにをかしきことはなくて、交野少将には笑はれたまひけむかし。<BR>⏎
<P>⏎
64-65 光る源氏、名のみことことしう、言ひ消たれたまふ咎多かなるに、いとどかかる好きごとどもを、末の世にも聞き伝へて、軽びたる名をや流さむと、忍びたまひける隠ろへごとをさへ、語り伝へけむ人のもの言ひさがなさよ。<BR>⏎
 
さるはいといたく世を憚り、まめだちたまひけるほど、なよびかにをかしきことはなくて、交野少将には笑はれたまひけむかし。<BR>⏎
d173<P>⏎
text0274 <A NAME="in12">[第二段 宮中の宿直所、光る源氏と頭中将]</A><BR>67 
d175<P>⏎
d177<P>⏎
d179<P>⏎
d181<P>⏎
d183<P>⏎
d185<P>⏎
cd2:186-87 と許したまはねば、<BR>⏎
<P>⏎
73 と許したまはねば、<BR>⏎
d189<P>⏎
d191<P>⏎
d193<P>⏎
d195<P>⏎
d197<P>⏎
d199<P>⏎
cd8:4100-107 とうめきたる気色も恥づかしげなれば、いとなべてはあらねど、われ思し合はすることやあらむ、うちほほ笑みて、<BR>⏎
<P>⏎
 「その片かどもなき人は、あらむや」とのたまへば、<BR>⏎
<P>⏎
 「いとさばかりならむあたりには、誰れかはすかされ寄りはべらむ。取るかたなく口惜しき際と、優なりとおぼゆばかりすぐれたるとは、数等しくこそはべらめ。人の品高く生まれぬれば、人にもてかしづかれて、隠るること多く、自然にそのけはひこよなかるべし。中の品になむ、人の心々、おのがじしの立てたるおもむきも見えて、分かるべきことかたがた多かるべき。下のきざみといふ際になれば、ことに耳たたずかし」<BR>⏎
<P>⏎
 とていと隈なげなる気色なるも、ゆかしくて、<BR>⏎
<P>⏎
80-83 とうめきたる気色も恥づかしげなれば、いとなべてはあらねど、われ思し合はすることやあらむ、うちほほ笑みて、<BR>⏎
 「その片かどもなき人は、あらむや」とのたまへば、<BR>⏎
 「いとさばかりならむあたりには、誰れかはすかされ寄りはべらむ。取るかたなく口惜しき際と、優なりとおぼゆばかりすぐれたるとは、数等しくこそはべらめ。人の品高く生まれぬれば、人にもてかしづかれて、隠るること多く、自然にそのけはひこよなかるべし。中の品になむ、人の心々、おのがじしの立てたるおもむきも見えて、分かるべきことかたがた多かるべき。下のきざみといふ際になれば、ことに耳たたずかし」<BR>⏎
 とていと隈なげなる気色なるも、ゆかしくて、<BR>⏎
d1109<P>⏎
d1111<P>⏎
text02112 <A NAME="in13">[第三段 左馬頭、藤式部丞ら女性談義に加わる]</A><BR>86 
d1113<P>⏎
c1114 「なり上れども、もとよりさるべき筋ならぬは、世人の思へることも、さは言へど、なほことなり。また元はやむごとなき筋なれど、世に経るたづき少なく、時世に移ろひて、おぼえ衰へぬれば、心は心としてこと足らず、悪ろびたることども出でくるわざなめれば、とりどりにことわりて、中の品にぞ置くべき。<BR>⏎
87 「なり上れども、もとよりさるべき筋ならぬは、世人の思へることも、さは言へど、なほことなり。また元はやむごとなき筋なれど、世に経るたづき少なく、時世に移ろひて、おぼえ衰へぬれば、心は心としてこと足らず、悪ろびたることども出でくるわざなめれば、とりどりにことわりて、中の品にぞ置くべき。<BR>⏎
d1116<P>⏎
d1118<P>⏎
c1119 「すべてにぎははしきによるべきななり」とて、笑ひたまふを、<BR>⏎
90 「すべてにぎははしきによるべきななり」とて、笑ひたまふを、<BR>⏎
d1121<P>⏎
d1123<P>⏎
cd2:1124-125 さて世にありと人に知られず、<A HREF="#k05">さびしく</A><A NAME="t05">あ</A>ばれたらむ葎の門に、思ひの外にらうたげならむ人の閉ぢられたらむこそ、限りなくめづらしくはおぼえめ。いかではたかかりけむと、思ふより違へることなむ、あやしく心とまるわざなる。<BR>⏎
<P>⏎
93 さて世にありと人に知られず、<A HREF="#k05">さびしく</A><A NAME="t05">あ</A>ばれたらむ葎の門に、思ひの外にらうたげならむ人の閉ぢられたらむこそ、限りなくめづらしくはおぼえめ。いかではたかかりけむと、思ふより違へることなむ、あやしく心とまるわざなる。<BR>⏎
d1127<P>⏎
d1129<P>⏎
cd4:2130-133 とて式部を見やれば、わが妹どものよろしき聞こえあるを思ひてのたまふにや、とや心得らむ、ものも言はず。<BR>⏎
<P>⏎
 「いでや上の品と<A HREF="#k06">思ふ</A><A NAME="t06">に</A>だに難げなる世を」と、君は思すべし。白き御衣どもの<A HREF="#k07">なよらか</A><A NAME="t07">な</A>るに、直衣ばかりをしどけなく着なしたまひて、紐なども<A HREF="#k08">うち</A><A NAME="t08">捨</A>てて、添ひ臥したまへる御火影、いとめでたく、女にて見たてまつらまほし。この御ためには上が上を選り出でても、なほ飽くまじく見えたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
96-97 とて式部を見やれば、わが妹どものよろしき聞こえあるを思ひてのたまふにや、とや心得らむ、ものも言はず。<BR>⏎
 「いでや上の品と<A HREF="#k06">思ふ</A><A NAME="t06">に</A>だに難げなる世を」と、君は思すべし。白き御衣どもの<A HREF="#k07">なよらか</A><A NAME="t07">な</A>るに、直衣ばかりをしどけなく着なしたまひて、紐なども<A HREF="#k08">うち</A><A NAME="t08">捨</A>てて、添ひ臥したまへる御火影、いとめでたく、女にて見たてまつらまほし。この御ためには上が上を選り出でても、なほ飽くまじく見えたまふ。<BR>⏎
d1135<P>⏎
c2136-137 「おほかたの世につけて見るには咎なきも、わがものとうち頼むべきを選らむに、多かる中にも、えなむ思ひ定むまじかりける。男の朝廷に仕うまつり、はかばかしき世のかためとなるべきも、まことの器ものとなるべきを取り出ださむには、かたかるべしかし。されど賢しとても、一人二人世の中をまつりごちしるべきならねば、上は下に輔けられ、下は上になびきて、こと広きに譲ろふらむ。<BR>⏎
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99-100 「おほかたの世につけて見るには咎なきも、わがものとうち頼むべきを選らむに、多かる中にも、えなむ思ひ定むまじかりける。男の朝廷に仕うまつり、はかばかしき世のかためとなるべきも、まことの器ものとなるべきを取り出ださむには、かたかるべしかし。<BR>⏎
 
されど賢しとても、一人二人世の中をまつりごちしるべきならねば、上は下に輔けられ、下は上になびきて、こと広きに譲ろふらむ。<BR>⏎
d1139<P>⏎
cd2:1140-141 かならずしもわが思ふにかなはねど、見そめつる契りばかりを捨てがたく思ひとまる人は、ものまめやかなりと見え、さて保たるる女のためも、<A HREF="#k09">心にくく</A><A NAME="t09">推</A>し量らるるなり。されど何か、世のありさまを見たまへ集むるままに、心に及ばずいとゆかしきこともなしや。君達の上なき御選びには、ましていかばかりの人かは足らひたまはむ。<BR>⏎
<P>⏎
102 かならずしもわが思ふにかなはねど、見そめつる契りばかりを捨てがたく思ひとまる人は、ものまめやかなりと見え、さて保たるる女のためも、<A HREF="#k09">心にくく</A><A NAME="t09">推</A>し量らるるなり。されど何か、世のありさまを見たまへ集むるままに、心に及ばずいとゆかしきこともなしや。君達の上なき御選びには、ましていかばかりの人かは足らひたまはむ。<BR>⏎
d1143<P>⏎
cd8:4144-151 事が中に、なのめなるまじき人の後見の方は、もののあはれ知り過ぐし、はかなきついでの情けあり、をかしきに進める方なくてもよかるべしと見えたるに、またまめまめしき筋を立てて耳はさみがちに美さうなき家刀自の、ひとへにうちとけたる後見ばかりをして。<BR>⏎
<P>⏎
 朝夕の出で入りにつけても、公私の人のたたずまひ、善き悪しきことの、目にも耳にもとまるありさまを、疎き人に、わざとうちまねばむやは。<A HREF="#k10">近くて</A><A NAME="t10">見</A>む人の聞きわき思ひ知るべからむに語りも合はせばやと、うちも笑まれ、涙もさしぐみ、もしはあやなきおほやけ<A HREF="#k11">腹立たしく</A><A NAME="t11">、</A>心ひとつに思ひあまること<A HREF="#k12">など</A><A NAME="t12">多</A>かるを、何にかは聞かせむと思へば、うちそむかれて、人知れぬ思ひ出で笑ひもせられ、『あはれ』とも、うち独りごたるるに、『何ごとぞ』など、あはつかにさし仰ぎ<A HREF="#k13">ゐたらむ</A><A NAME="t13">は</A>、いかがは口惜しからぬ。<BR>⏎
<P>⏎
 ただひたふるに子めきて柔らかならむ人を、とかくひきつくろひてはなどか見ざらむ。心もとなくとも、直し所ある心地すべし。げにさし向ひて見むほどは、さてもらうたき方に罪ゆるし見るべきを、立ち離れてさるべきことをも言ひやり、をりふしにし出でむわざのあだ事にもまめ事にも、わが心と思ひ得ることなく深きいたりなからむは、いと口惜しく頼もしげなき咎や、なほ苦しからむ。常はすこしそばそばしく心づきなき人の、をりふしにつけて出でばえするやうもありかし」<BR>⏎
<P>⏎
 など隈なきもの言ひも、定めかねていたくうち嘆く。<BR>⏎
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104-107 事が中に、なのめなるまじき人の後見の方は、もののあはれ知り過ぐし、はかなきついでの情けあり、をかしきに進める方なくてもよかるべしと見えたるに、またまめまめしき筋を立てて耳はさみがちに美さうなき家刀自の、ひとへにうちとけたる後見ばかりをして。<BR>⏎
 朝夕の出で入りにつけても、公私の人のたたずまひ、善き悪しきことの、目にも耳にもとまるありさまを、疎き人に、わざとうちまねばむやは。<A HREF="#k10">近くて</A><A NAME="t10">見</A>む人の聞きわき思ひ知るべからむに語りも合はせばやと、うちも笑まれ、涙もさしぐみ、もしはあやなきおほやけ<A HREF="#k11">腹立たしく</A><A NAME="t11">、</A>心ひとつに思ひあまること<A HREF="#k12">など</A><A NAME="t12">多</A>かるを、何にかは聞かせむと思へば、うちそむかれて、人知れぬ思ひ出で笑ひもせられ、『あはれ』とも、うち独りごたるるに、『何ごとぞ』など、あはつかにさし仰ぎ<A HREF="#k13">ゐたらむ</A><A NAME="t13">は</A>、いかがは口惜しからぬ。<BR>⏎
 ただひたふるに子めきて柔らかならむ人を、とかくひきつくろひてはなどか見ざらむ。心もとなくとも、直し所ある心地すべし。げにさし向ひて見むほどは、さてもらうたき方に罪ゆるし見るべきを、立ち離れてさるべきことをも言ひやり、をりふしにし出でむわざのあだ事にもまめ事にも、わが心と思ひ得ることなく深きいたりなからむは、いと口惜しく頼もしげなき咎や、なほ苦しからむ。常はすこしそばそばしく心づきなき人の、をりふしにつけて出でばえするやうもありかし」<BR>⏎
 など隈なきもの言ひも、定めかねていたくうち嘆く。<BR>⏎
text02152 <A NAME="in14">[第四段 女性論、左馬頭の結論]</A><BR>108 
d1153<P>⏎
c2154-155 「今は、ただ品にもよらじ。容貌をばさらにも言はじ。いと口惜しくねぢけがましきおぼえだになくは、ただひとへにものまめやかに、静かなる心のおもむきならむよるべをぞ、つひの頼み所には思ひおくべかりける。あまりのゆゑよし心ばせうち添へたらむをば、よろこびに思ひ、すこし後れたる方あらむをも、あながちに求め加へじ。うしろやすくのどけき所だに強くは、うはべの情けは、おのづからもてつけつべきわざをや。<BR>⏎
<P>⏎
109-110 「今は、ただ品にもよらじ。容貌をばさらにも言はじ。いと口惜しくねぢけがましきおぼえだになくは、ただひとへにものまめやかに、静かなる心のおもむきならむよるべをぞ、つひの頼み所には思ひおくべかりける。<BR>⏎
 
あまりのゆゑよし心ばせうち添へたらむをば、よろこびに思ひ、すこし後れたる方あらむをも、あながちに求め加へじ。うしろやすくのどけき所だに強くは、うはべの情けは、おのづからもてつけつべきわざをや。<BR>⏎
d1157<P>⏎
ci5:6158-162 童にはべりし時、女房などの物語読みしを聞きて、いとあはれに悲しく、心深きことかなと、涙をさへなむ落としはべりし。今思ふには、いと軽々しく、ことさらびたることなり。心ざし深からむ男をおきて、見る目の前につらきことありとも、人の心を見知らぬやうに逃げ隠れて、人をまどはし、心を見むとするほどに、長き世のもの思ひになる、いとあぢきなきことなり。『心深しや』など、ほめたてられて、あはれ進みぬれば、やがて尼になりぬかし。思ひ立つほどは、いと心澄めるやうにて、世に返り見すべくも思へらず。『いで、あな悲し。かくはた思しなりにけるよ』などやうに、あひ知れる人来とぶらひ、ひたすらに憂しとも思ひ離れぬ男、聞きつけて涙落とせば、使ふ人、古御達など、『君の御心は、あはれなりけるものを。あたら御身を』など言ふ。みづから額髪をかきさぐりて、あへなく心細ければ、うちひそみぬかし。忍ぶれど涙こぼれそめぬれば、折々ごとにえ念じえず、悔しきこと多かめるに、仏もなかなか心ぎたなしと、見たまひつべし。<A HREF="#no4">濁りにしめるほどよりも</A><A NAME="te4">、</A>なま浮かびにては、かへりて悪しき道にも漂ひぬべくぞおぼゆる。絶えぬ宿世浅からで、尼にもなさで尋ね取りたらむも、やがてあひ添ひて、とあらむ折もかからむきざみをも、見過ぐしたらむ仲こそ、契り深くあはれならめ、我も人も、うしろめたく心おかれじやは。<BR>⏎
<P>⏎
 またなのめに移ろふ方<A HREF="#k15">あらむ人を恨みて、気色ばみ背かむ、はたをこがましかりなむ。心は移ろふ方</A><A NAME="t15">あ</A>りとも、見そめし心ざしいとほしく思はば、さる方のよすがに思ひてもありぬべきに、さやうならむたぢろきに、絶えぬべきわざなり。<BR>⏎
<P> すべてよろづのことなだらかに、怨ずべきことをば見知れるさまにほのめかし、恨むべからむふしをも憎からずかすめなさば、それにつけて、あはれもまさりぬべし。多くは、わが心も見る人からをさまりもすべし。あまりむげにうちゆるべ見放ちたるも、心安くらうたきやうなれど、おのづから軽き方にぞおぼえはべるかし。<A HREF="#no5">繋がぬ舟の浮きたる例も</A><A NAME="te5">、</A>げにあやなし。さははべらぬか」<BR>⏎
<P>⏎
112-117 童にはべりし時、女房などの物語読みしを聞きて、いとあはれに悲しく、心深きことかなと、涙をさへなむ落としはべりし。今思ふには、いと軽々しく、ことさらびたることなり。<BR>⏎
 
心ざし深からむ男をおきて、見る目の前につらきことありとも、人の心を見知らぬやうに逃げ隠れて、人をまどはし、心を見むとするほどに、長き世のもの思ひになる、いとあぢきなきことなり。<BR>⏎
 
『心深しや』など、ほめたてられて、あはれ進みぬれば、やがて尼になりぬかし。思ひ立つほどは、いと心澄めるやうにて、世に返り見すべくも思へらず。『いで、あな悲し。かくはた思しなりにけるよ』などやうに、あひ知れる人来とぶらひ、ひたすらに憂しとも思ひ離れぬ男、聞きつけて涙落とせば、使ふ人、古御達など、『君の御心は、あはれなりけるものを。あたら御身を』など言ふ。みづから額髪をかきさぐりて、あへなく心細ければ、うちひそみぬかし。忍ぶれど涙こぼれそめぬれば、折々ごとにえ念じえず、悔しきこと多かめるに、仏もなかなか心ぎたなしと、見たまひつべし。<A HREF="#no4">濁りにしめるほどよりも</A><A NAME="te4">、</A>なま浮かびにては、かへりて悪しき道にも漂ひぬべくぞおぼゆる。<BR>⏎
 
絶えぬ宿世浅からで、尼にもなさで尋ね取りたらむも、やがてあひ添ひて、とあらむ折もかからむきざみをも、見過ぐしたらむ仲こそ、契り深くあはれならめ、我も人も、うしろめたく心おかれじやは。<BR>⏎
 またなのめに移ろふ方<A HREF="#k15">あらむ人を恨みて、気色ばみ背かむ、はたをこがましかりなむ。心は移ろふ方</A><A NAME="t15">あ</A>りとも、見そめし心ざしいとほしく思はば、さる方のよすがに思ひてもありぬべきに、さやうならむたぢろきに、絶えぬべきわざなり。<BR>⏎
 すべてよろづのことなだらかに、怨ずべきことをば見知れるさまにほのめかし、恨むべからむふしをも憎からずかすめなさば、それにつけて、あはれもまさりぬべし。多くは、わが心も見る人からをさまりもすべし。あまりむげにうちゆるべ見放ちたるも、心安くらうたきやうなれど、おのづから軽き方にぞおぼえはべるかし。<A HREF="#no5">繋がぬ舟の浮きたる例も</A><A NAME="te5">、</A>げにあやなし。さははべらぬか」<BR>⏎
d1164<P>⏎
d1166<P>⏎
d1168<P>⏎
d1170<P>⏎
d1172<P>⏎
d1174<P>⏎
d1176<P>⏎
d1178<P>⏎
cd2:1179-180 とて近くゐ寄れば、君も目覚ましたまふ。中将いみじく信じて、頬杖をつきて向かひゐたまへり。法の師の世のことわり説き聞かせむ所の心地するも、かつはをかしけれど、かかるついでは、おのおの睦言もえ忍びとどめずなむありける。<BR>⏎
<P>⏎
126 とて近くゐ寄れば、君も目覚ましたまふ。中将いみじく信じて、頬杖をつきて向かひゐたまへり。法の師の世のことわり説き聞かせむ所の心地するも、かつはをかしけれど、かかるついでは、おのおの睦言もえ忍びとどめずなむありける。<BR>⏎
text02181 <H4>第二章 女性体験談</H4>127 
text02182 <A NAME="in21">[第一段 女性体験談(左馬頭、嫉妬深い女の物語)]</A><BR>128 
d1183<P>⏎
cd2:1184-185 「はやうまだいと下臈にはべりし時、あはれと思ふ人はべりき。聞こえさせつるやうに、容貌などいとまほにも<A HREF="#k18">はべらざり</A><A NAME="t18">し</A>かば、若きほどの好き心には、この人をとまりにとも思ひとどめはべらず、よるべとは思ひながら、さうざうしくて、とかく紛れはべりしを、もの怨じをいたくしはべりしかば、心づきなく、いとかからで、おいらかならましかばと思ひつつ、あまりいと許しなく疑ひはべりしもうるさくて、かく数ならぬ身を見も放たで、などかくしも思ふらむと、心苦しき折々も<A HREF="#k19">はべりて</A><A NAME="t19">、</A>自然に心をさめらるるやうになむはべりし。<BR>⏎
<P>⏎
129 「はやうまだいと下臈にはべりし時、あはれと思ふ人はべりき。聞こえさせつるやうに、容貌などいとまほにも<A HREF="#k18">はべらざり</A><A NAME="t18">し</A>かば、若きほどの好き心には、この人をとまりにとも思ひとどめはべらず、よるべとは思ひながら、さうざうしくて、とかく紛れはべりしを、もの怨じをいたくしはべりしかば、心づきなく、いとかからで、おいらかならましかばと思ひつつ、あまりいと許しなく疑ひはべりしもうるさくて、かく数ならぬ身を見も放たで、などかくしも思ふらむと、心苦しき折々も<A HREF="#k19">はべりて</A><A NAME="t19">、</A>自然に心をさめらるるやうになむはべりし。<BR>⏎
d1187<P>⏎
d1189<P>⏎
d1191<P>⏎
d1193<P>⏎
d1195<P>⏎
d1197<P>⏎
cd2:1198-199 『手を折りてあひ見しことを数ふれば<BR>⏎
  これひとつやは君が憂きふし<BR>⏎
136 『手を折りてあひ見しことを数ふれば<BR>  これひとつやは君が憂きふし<BR>⏎
d1201<P>⏎
d1203<P>⏎
cd5:2204-208 『憂きふしを心ひとつに数へきて<BR>⏎
  こや君が手を別るべきをり』<BR>⏎
<P>⏎
 など言ひしろひはべりしかど、まことには変るべきこととも思ひたまへずながら、日ごろ経るまで消息も遣はさず、あくがれまかり歩くに、<A HREF="#k22">臨時の祭</A><A NAME="t22">の</A>調楽に、夜更けていみじう霙降る夜、これかれまかりあかるる所にて、思ひめぐらせば、なほ家路と思はむ方はまたなかりけり。<BR>⏎
<P>⏎
139-140 『憂きふしを心ひとつに数へきて<BR>  こや君が手を別るべきをり』<BR>⏎
 など言ひしろひはべりしかど、まことには変るべきこととも思ひたまへずながら、日ごろ経るまで消息も遣はさず、あくがれまかり歩くに、<A HREF="#k22">臨時の祭</A><A NAME="t22">の</A>調楽に、夜更けていみじう霙降る夜、これかれまかりあかるる所にて、思ひめぐらせば、なほ家路と思はむ方はまたなかりけり。<BR>⏎
d1210<P>⏎
d1212<P>⏎
cd2:1213-214 さりとも、絶えて思ひ放つやうはあらじと思うたまへて、とかく言ひはべりしを、背きもせずと、尋ねまどはさむとも隠れ忍びず、かかやかしからず答へつつ、ただ『ありしながらは、えなむ見過ぐすまじき。あらためてのどかに思ひならばなむ、あひ見るべき』など言ひしを、さりともえ思ひ離れじと思ひたまへしかば、しばし懲らさむの心にて、『しかあらためむ』とも言はず、いたく<A HREF="#no6">綱引きて</A><A NAME="te6">見</A>せしあひだに、いといたく思ひ嘆きて、はかなくなりはべりにしかば、<A HREF="#no7">戯れにくく</A><A NAME="te7">な</A>むおぼえはべりし。<BR>⏎
<P>⏎
143 さりとも、絶えて思ひ放つやうはあらじと思うたまへて、とかく言ひはべりしを、背きもせずと、尋ねまどはさむとも隠れ忍びず、かかやかしからず答へつつ、ただ『ありしながらは、えなむ見過ぐすまじき。あらためてのどかに思ひならばなむ、あひ見るべき』など言ひしを、さりともえ思ひ離れじと思ひたまへしかば、しばし懲らさむの心にて、『しかあらためむ』とも言はず、いたく<A HREF="#no6">綱引きて</A><A NAME="te6">見</A>せしあひだに、いといたく思ひ嘆きて、はかなくなりはべりにしかば、<A HREF="#no7">戯れにくく</A><A NAME="te7">な</A>むおぼえはべりし。<BR>⏎
d1216<P>⏎
cd6:3217-222 とていとあはれと思ひ出でたり。中将、<BR>⏎
<P>⏎
 「その織女の裁ち縫ふ方をのどめて、長き契りにぞあえまし。げにその龍田姫の錦には、またしくものあらじ。はかなき花紅葉といふも、をりふしの色あひつきなく、はかばかしからぬは、露のはえなく消えぬるわざなり。さあるにより、難き世とは定めかねたるぞや」<BR>⏎
<P>⏎
 と言ひはやしたまふ。<BR>⏎
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145-147 とていとあはれと思ひ出でたり。中将、<BR>⏎
 「その織女の裁ち縫ふ方をのどめて、長き契りにぞあえまし。げにその龍田姫の錦には、またしくものあらじ。はかなき花紅葉といふも、をりふしの色あひつきなく、はかばかしからぬは、露のはえなく消えぬるわざなり。さあるにより、難き世とは定めかねたるぞや」<BR>⏎
 と言ひはやしたまふ。<BR>⏎
text02223 <A NAME="in22">[第二段 左馬頭の体験談(浮気な女の物語)]</A><BR>148 
d1224<P>⏎
cd2:1225-226 「さてまた同じころ、まかり通ひし所は、人も立ちまさり心ばせまことにゆゑありと見えぬべく、うち詠み、走り書き、掻い弾く爪音、手つき口つき、みなたどたどしからず、見聞きわたりはべりき。見る目もこともなくはべりしかば、このさがな者を、うちとけたる方にて、時々隠ろへ<A HREF="#k23">見はべり</A><A NAME="t23">し</A>ほどは、こよなく心とまりはべりき。この人亡せて後、いかがはせむ、あはれながらも過ぎぬるはかひなくて、しばしばまかり馴るるには、すこしまばゆく艶に好ましきことは、目につかぬ所あるに、うち頼むべくは見えず、かれがれにのみ見せはべるほどに、忍びて心交はせる人ぞありけらし。<BR>⏎
<P>⏎
149 「さてまた同じころ、まかり通ひし所は、人も立ちまさり心ばせまことにゆゑありと見えぬべく、うち詠み、走り書き、掻い弾く爪音、手つき口つき、みなたどたどしからず、見聞きわたりはべりき。見る目もこともなくはべりしかば、このさがな者を、うちとけたる方にて、時々隠ろへ<A HREF="#k23">見はべり</A><A NAME="t23">し</A>ほどは、こよなく心とまりはべりき。この人亡せて後、いかがはせむ、あはれながらも過ぎぬるはかひなくて、しばしばまかり馴るるには、すこしまばゆく艶に好ましきことは、目につかぬ所あるに、うち頼むべくは見えず、かれがれにのみ見せはべるほどに、忍びて心交はせる人ぞありけらし。<BR>⏎
d1228<P>⏎
d1230<P>⏎
d1232<P>⏎
d1234<P>⏎
cd3:1235-237 『琴の音も月もえならぬ宿ながら<BR>⏎
  つれなき人をひきやとめける<BR>⏎
<P>⏎
154 『琴の音も月もえならぬ宿ながら<BR>  つれなき人をひきやとめける<BR>⏎
d1239<P>⏎
cd5:2240-244 『木枯に吹きあはすめる笛の音を<BR>⏎
  ひきとどむべき言の葉ぞなき』<BR>⏎
<P>⏎
 となまめき交はすに、憎くなるをも知らで、また箏の琴を盤渉調に調べて、今めかしく掻い弾きたる爪音、かどなきにはあらねど、まばゆき心地なむしはべりし。ただ時々うち語らふ宮仕へ人などの、あくまでさればみ好きたるは、さても見る限りはをかしくもありぬべし。時々にても、さる所にて忘れぬよすがと思ひたまへむには、頼もしげなくさし過ぐいたりと心おかれて、その夜のことにことつけてこそ、まかり絶えにしか。<BR>⏎
<P>⏎
156-157 『木枯に吹きあはすめる笛の音を<BR>  ひきとどむべき言の葉ぞなき』<BR>⏎
 となまめき交はすに、憎くなるをも知らで、また箏の琴を盤渉調に調べて、今めかしく掻い弾きたる爪音、かどなきにはあらねど、まばゆき心地なむしはべりし。ただ時々うち語らふ宮仕へ人などの、あくまでさればみ好きたるは、さても見る限りはをかしくもありぬべし。時々にても、さる所にて忘れぬよすがと思ひたまへむには、頼もしげなくさし過ぐいたりと心おかれて、その夜のことにことつけてこそ、まかり絶えにしか。<BR>⏎
d1246<P>⏎
d1248<P>⏎
d1250<P>⏎
text02251 <A NAME="in23">[第三段 頭中将の体験談(常夏の女の物語)]</A><BR>161 
d1252<P>⏎
d1255<P>⏎
d1257<P>⏎
d1259<P>⏎
cd6:3260-265 「さてその文の言葉は」と問ひたまへば、<BR>⏎
 「いさやことなることもなかりきや。<BR>⏎
<P>⏎
 『山がつの垣ほ荒るとも折々に<BR>⏎
  あはれはかけよ撫子の露』<BR>⏎
<P>⏎
166-168 「さてその文の言葉は」と問ひたまへば、<BR>⏎
 「いさやことなることもなかりきや。<BR>⏎
 『山がつの垣ほ荒るとも折々に<BR>  あはれはかけよ撫子の露』<BR>⏎
d1267<P>⏎
cd3:1268-270 『咲きまじる色はいづれと分かねども<BR>⏎
  なほ<A HREF="#k30">常夏に</A><A NAME="t30">し</A>くものぞなき』<BR>⏎
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170 『咲きまじる色はいづれと分かねども<BR>  なほ<A HREF="#k30">常夏に</A><A NAME="t30">し</A>くものぞなき』<BR>⏎
d1272<P>⏎
cd3:1273-275 『うち払ふ袖も露けき常夏に<BR>⏎
  あらし吹きそふ秋も来にけり』<BR>⏎
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172 『うち払ふ袖も露けき常夏に<BR>  あらし吹きそふ秋も来にけり』<BR>⏎
d1277<P>⏎
d1279<P>⏎
d1281<P>⏎
cd2:1282-283 さればかのさがな者も、思ひ出である方に忘れがたけれど、さしあたりて見むにはわづらはしくよ、よくせずは、飽きたきこともありなむや。琴の音すすめけむかどかどしさも、好きたる罪重かるべし。この心もとなきも、疑ひ添ふべければ、いづれとつひに思ひ定めずなりぬるこそ。世の中や、ただかくこそ。とりどりに比べ苦しかるべき。このさまざまのよき限りをとり具し、難ずべきくさはひまぜぬ人は、いづこにかはあらむ。吉祥天女を思ひかけむとすれば、法気づき、くすしからむこそ、またわびしかりぬべけれ」とて、皆笑ひぬ。<BR>⏎
<P>⏎
176 さればかのさがな者も、思ひ出である方に忘れがたけれど、さしあたりて見むにはわづらはしくよ、よくせずは、飽きたきこともありなむや。琴の音すすめけむかどかどしさも、好きたる罪重かるべし。この心もとなきも、疑ひ添ふべければ、いづれとつひに思ひ定めずなりぬるこそ。世の中や、ただかくこそ。とりどりに比べ苦しかるべき。このさまざまのよき限りをとり具し、難ずべきくさはひまぜぬ人は、いづこにかはあらむ。吉祥天女を思ひかけむとすれば、法気づき、くすしからむこそ、またわびしかりぬべけれ」とて、皆笑ひぬ。<BR>⏎
text02284 <A NAME="in24">[第四段 式部丞の体験談(畏れ多い女の物語)]</A><BR>177 
d1285<P>⏎
d1287<P>⏎
d1289<P>⏎
d1291<P>⏎
cd4:3292-295 「まだ文章生にはべりし時、かしこき女の例をなむ見たまへし。かの馬頭の申したまへるやうに、公事をも言ひあはせ、私ざまの世に住まふべき心おきてを思ひめぐらさむ方もいたり深く、才の際なまなまの博士恥づかしく、すべて口あかすべくなむはべらざりし。<BR>⏎
<P>⏎
 それはある博士のもとに学問などしはべるとて、まかり通ひしほどに、主人のむすめども多かりと聞きたまへて、はかなきついでに言ひ寄りてはべりしを、親聞きつけて、盃持て出でて、<A HREF="#no11">『わが両つの途歌ふを聴け』</A><A NAME="te11">と</A>なむ、聞こえごちはべりしかど、をさをさうちとけてもまからず、かの親の心を憚りて、さすがにかかづらひはべりしほどに、いとあはれに思ひ後見、寝覚の語らひにも、身の才つき、朝廷に仕うまつるべき道々しきことを教へて、いときよげに消息文にも仮名といふもの書きまぜず、むべむべしく言ひまはしはべるに、おのづからえまかり絶えで、その者を師としてなむ、わづかなる腰折文作ることなど習ひはべりしかば、今にその恩は忘れはべらねど、なつかしき妻子とうち頼まむには、無才の人、なま悪ろならむ振る舞ひなど見えむに、恥づかしくなむ見えはべりし。まいて君達の御ため、はかばかしく<A HREF="#k31">したたか</A><A NAME="t31">な</A>る御後見は、何にかせさせたまはむ。はかなし、口惜し、とかつ見つつも、ただわが心につき、宿世の引く方はべるめれば、男しもなむ、仔細なきものははべめる」<BR>⏎
<P>⏎
181-183 「まだ文章生にはべりし時、かしこき女の例をなむ見たまへし。かの馬頭の申したまへるやうに、公事をも言ひあはせ、私ざまの世に住まふべき心おきてを思ひめぐらさむ方もいたり深く、才の際なまなまの博士恥づかしく、すべて口あかすべくなむはべらざりし。<BR>⏎
 それはある博士のもとに学問などしはべるとて、まかり通ひしほどに、主人のむすめども多かりと聞きたまへて、はかなきついでに言ひ寄りてはべりしを、親聞きつけて、盃持て出でて、<A HREF="#no11">『わが両つの途歌ふを聴け』</A><A NAME="te11">と</A>なむ、聞こえごちはべりしかど、をさをさうちとけてもまからず、かの親の心を憚りて、さすがにかかづらひはべりしほどに、いとあはれに思ひ後見、寝覚の語らひにも、身の才つき、朝廷に仕うまつるべき道々しきことを教へて、いときよげに消息文にも仮名といふもの書きまぜず、むべむべしく言ひまはしはべるに、おのづからえまかり絶えで、その者を師としてなむ、わづかなる腰折文作ることなど習ひはべりしかば、今にその恩は忘れはべらねど、なつかしき妻子とうち頼まむには、無才の人、なま悪ろならむ振る舞ひなど見えむに、恥づかしくなむ見えはべりし。<BR>⏎
 
まいて君達の御ため、はかばかしく<A HREF="#k31">したたか</A><A NAME="t31">な</A>る御後見は、何にかせさせたまはむ。はかなし、口惜し、とかつ見つつも、ただわが心につき、宿世の引く方はべるめれば、男しもなむ、仔細なきものははべめる」<BR>⏎
d1297<P>⏎
cd2:1298-299 「さていと久しくまからざりしに、もののたよりに立ち寄りてはべれば、常のうちとけゐたる方にははべらで、心やましき物越しにてなむ逢ひてはべる。ふすぶるにやと、をこがましくも、またよきふしなりとも思ひたまふるに、このさかし人はた、軽々しきもの怨じすべきにもあらず、世の道理を思ひとりて恨みざりけり。<BR>⏎
<P>⏎
185 「さていと久しくまからざりしに、もののたよりに立ち寄りてはべれば、常のうちとけゐたる方にははべらで、心やましき物越しにてなむ逢ひてはべる。ふすぶるにやと、をこがましくも、またよきふしなりとも思ひたまふるに、このさかし人はた、軽々しきもの怨じすべきにもあらず、世の道理を思ひとりて恨みざりけり。<BR>⏎
d1301<P>⏎
d1303<P>⏎
cd2:1304-305 といとあはれにむべむべしく言ひはべり。答へに何とかは。ただ『承りぬ』とて、立ち出ではべるに、さうざうしくやおぼえけむ、<BR>⏎
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188 といとあはれにむべむべしく言ひはべり。答へに何とかは。ただ『承りぬ』とて、立ち出ではべるに、さうざうしくやおぼえけむ、<BR>⏎
d1307<P>⏎
cd2:1308-309 『ささがにのふるまひしるき夕暮れに<BR>⏎
  ひるま過ぐせといふがあやなさ<BR>⏎
190 『ささがにのふるまひしるき夕暮れに<BR>  ひるま過ぐせといふがあやなさ<BR>⏎
d1311<P>⏎
cd5:2312-316 と言ひも果てず走り出ではべりぬるに、追ひて、<BR>⏎
<P>⏎
 『逢ふことの夜をし隔てぬ仲ならば<BR>⏎
  ひる間も何かまばゆからまし』<BR>⏎
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192-193 と言ひも果てず走り出ではべりぬるに、追ひて、<BR>⏎
 『逢ふことの夜をし隔てぬ仲ならば<BR>  ひる間も何かまばゆからまし』<BR>⏎
d1318<P>⏎
cd2:1319-320 と<A HREF="#k32">しづしづと</A><A NAME="t32">申</A>せば、君達あさましと思ひて、「嘘言」とて笑ひたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
195 と<A HREF="#k32">しづしづと</A><A NAME="t32">申</A>せば、君達あさましと思ひて、「嘘言」とて笑ひたまふ。<BR>⏎
d1322<P>⏎
d1324<P>⏎
d1326<P>⏎
d1328<P>⏎
d1330<P>⏎
d1332<P>⏎
d1334<P>⏎
d1336<P>⏎
d1338<P>⏎
cd4:2339-342 よろづのことに、などかは、さてもとおぼゆる折から、時々、思ひわかぬばかりの心にては、よしばみ情け立たざらむなむ目やすかるべき。<BR>⏎
<P>⏎
 すべて心に知れらむことをも、知らず顔にもてなし、言はまほしからむことをも、一つ二つのふしは過ぐすべくなむあべかりける」<BR>⏎
<P>⏎
205-206 よろづのことに、などかは、さてもとおぼゆる折から、時々、思ひわかぬばかりの心にては、よしばみ情け立たざらむなむ目やすかるべき。<BR>⏎
 すべて心に知れらむことをも、知らず顔にもてなし、言はまほしからむことをも、一つ二つのふしは過ぐすべくなむあべかりける」<BR>⏎
d1344<P>⏎
d1346<P>⏎
text02347 <H4>第三章 空蝉の物語</H4>209 
text02348 <A NAME="in31">[第一段 天気晴れる]</A><BR>210 
d1349<P>⏎
d1351<P>⏎
cd2:1352-353 おほかたの気色、人のけはひも、けざやかにけ高く、乱れたるところまじらず、なほこれこそは、かの人びとの捨てがたく取り出でしまめ人には頼まれぬべけれ、と思すものから、あまりうるはしき御ありさまの、とけがたく恥づかしげに思ひしづまりたまへるをさうざうしくて、中納言の君、中務などやうの、おしなべたらぬ若人どもに、戯れ言などのたまひつつ、<A HREF="#k35">暑さに</A><A NAME="t35">乱</A>れたまへる御ありさまを、見るかひありと思ひきこえたり。<BR>⏎
<P>⏎
212 おほかたの気色、人のけはひも、けざやかにけ高く、乱れたるところまじらず、なほこれこそは、かの人びとの捨てがたく取り出でしまめ人には頼まれぬべけれ、と思すものから、あまりうるはしき御ありさまの、とけがたく恥づかしげに思ひしづまりたまへるをさうざうしくて、中納言の君、中務などやうの、おしなべたらぬ若人どもに、戯れ言などのたまひつつ、<A HREF="#k35">暑さに</A><A NAME="t35">乱</A>れたまへる御ありさまを、見るかひありと思ひきこえたり。<BR>⏎
d1355<P>⏎
d1358<P>⏎
c1359 「さかし例は忌みたまふ方なりけり」<BR>⏎
216 「さかし例は忌みたまふ方なりけり」<BR>⏎
d1361<P>⏎
d1363<P>⏎
d1365<P>⏎
d1367<P>⏎
d1369<P>⏎
d1371<P>⏎
cd2:1372-373 と下に嘆くを聞きたまひて、<BR>⏎
<P>⏎
223 と下に嘆くを聞きたまひて、<BR>⏎
d1375<P>⏎
cd2:1376-377 「げによろしき御座所にも」とて、人走らせやる。いと忍びて、ことさらにことことしからぬ所をと、急ぎ出でたまへば、大臣にも聞こえたまはず、御供にも睦ましき限りしておはしましぬ。<BR>⏎
<P>⏎
225 「げによろしき御座所にも」とて、人走らせやる。いと忍びて、ことさらにことことしからぬ所をと、急ぎ出でたまへば、大臣にも聞こえたまはず、御供にも睦ましき限りしておはしましぬ。<BR>⏎
text02378 <A NAME="in32">[第二段 紀伊守邸への方違へ]</A><BR>226 
d1379<P>⏎
d1381<P>⏎
cd4:3382-385 人びと、渡殿より出でたる泉にのぞきゐて、酒呑む。主人も肴求むと、<A HREF="#no12">こゆるぎのいそぎ</A><A NAME="te12">あ</A>りくほど、君はのどやかに眺めたまひて、かの中の品に<A HREF="#k38">取り出でて</A><A NAME="t38">言</A>ひし、この並ならむかしと思し出づ。<BR>⏎
<P>⏎
 思ひ上がれる気色に聞きおきたまへる女なれば、ゆかしくて耳とどめたまへるに、この西面にぞ人のけはひする。衣の音なひはらはらとして、若き声どもにくからず。さすがに忍びて、笑ひなどする<A HREF="#k39">けはひ</A><A NAME="t39">、</A>ことさらびたり。格子を上げたりけれど、守、「心なし」とむつかりて下しつれば、火灯したる透影、障子の上より漏りたるに、やをら寄りたまひて、「見ゆや」と思せど、隙もなければ、しばし聞きたまふに、この近き母屋に集ひゐたるなるべし、うちささめき言ふことどもを聞きたまへば、わが御上なるべし。<BR>⏎
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228-230 人びと、渡殿より出でたる泉にのぞきゐて、酒呑む。主人も肴求むと、<A HREF="#no12">こゆるぎのいそぎ</A><A NAME="te12">あ</A>りくほど、君はのどやかに眺めたまひて、かの中の品に<A HREF="#k38">取り出でて</A><A NAME="t38">言</A>ひし、この並ならむかしと思し出づ。<BR>⏎
 思ひ上がれる気色に聞きおきたまへる女なれば、ゆかしくて耳とどめたまへるに、この西面にぞ人のけはひする。衣の音なひはらはらとして、若き声どもにくからず。さすがに忍びて、笑ひなどする<A HREF="#k39">けはひ</A><A NAME="t39">、</A>ことさらびたり。<BR>⏎
 
格子を上げたりけれど、守、「心なし」とむつかりて下しつれば、火灯したる透影、障子の上より漏りたるに、やをら寄りたまひて、「見ゆや」と思せど、隙もなければ、しばし聞きたまふに、この近き母屋に集ひゐたるなるべし、うちささめき言ふことどもを聞きたまへば、わが御上なるべし。<BR>⏎
cd2:1387-388 「されどさるべき隈には、よくこそ、隠れ歩きたまふなれ」<BR>⏎
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232 「されどさるべき隈には、よくこそ、隠れ歩きたまふなれ」<BR>⏎
d1390<P>⏎
d1392<P>⏎
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cd2:1399-400 主人の子ども、をかしげにてあり。童なる、殿上のほどに御覧じ馴れたるもあり。伊予介の子もあり。あまたある中に、いとけはひあてはかにて、十二三ばかりなるもあり。<BR>⏎
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238 主人の子ども、をかしげにてあり。童なる、殿上のほどに御覧じ馴れたるもあり。伊予介の子もあり。あまたある中に、いとけはひあてはかにて、十二三ばかりなるもあり。<BR>⏎
d1402<P>⏎
cd2:1403-404 「これは故衛門督の末の子にて、いとかなしくしはべりけるを、幼きほどに後れはべりて、姉なる人のよすがに、かくてはべるなり。才などもつきはべりぬべく、けしうははべらぬを、殿上なども思ひたまへかけながら、すがすがしうはえ交じらひはべらざめる」と申す。<BR>⏎
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240 「これは故衛門督の末の子にて、いとかなしくしはべりけるを、幼きほどに後れはべりて、姉なる人のよすがに、かくてはべるなり。才などもつきはべりぬべく、けしうははべらぬを、殿上なども思ひたまへかけながら、すがすがしうはえ交じらひはべらざめる」と申す。<BR>⏎
d1406<P>⏎
d1408<P>⏎
d1410<P>⏎
d1412<P>⏎
d1414<P>⏎
d1416<P>⏎
d1418<P>⏎
d1420<P>⏎
cd2:1421-422 「皆下屋におろしはべりぬるを、えやまかりおりあへざらむ」と聞こゆ。<BR>⏎
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249 「皆下屋におろしはべりぬるを、えやまかりおりあへざらむ」と聞こゆ。<BR>⏎
d1424<P>⏎
text02425 <A NAME="in33">[第三段 空蝉の寝所に忍び込む]</A><BR>251 
d1426<P>⏎
cd2:1427-428 君は、とけても寝られたまはず、いたづら臥しと思さるるに御目覚めて、この北の障子のあなたに人のけはひするを、「こなたやかくいふ人の隠れたる方ならむ、あはれや」と御心とどめて、やをら起きて立ち聞きたまへば、ありつる子の声にて、<BR>⏎
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252 君は、とけても寝られたまはず、いたづら臥しと思さるるに御目覚めて、この北の障子のあなたに人のけはひするを、「こなたやかくいふ人の隠れたる方ならむ、あはれや」と御心とどめて、やをら起きて立ち聞きたまへば、ありつる子の声にて、<BR>⏎
d1430<P>⏎
cd4:2431-434 とかれたる声のをかしきにて言へば、<BR>⏎
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 「ここにぞ臥したる。客人は寝たまひぬるか。いかに近からむと思ひつるを、されどけ遠かりけり」<BR>⏎
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254-255 とかれたる声のをかしきにて言へば、<BR>⏎
 「ここにぞ臥したる。客人は寝たまひぬるか。いかに近からむと思ひつるを、されどけ遠かりけり」<BR>⏎
d1436<P>⏎
d1438<P>⏎
d1440<P>⏎
cd2:1441-442 とねぶたげに言ひて、顔ひき入れつる声す。「ねたう心とどめても問ひ聞けかし」とあぢきなく思す。<BR>⏎
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259 とねぶたげに言ひて、顔ひき入れつる声す。「ねたう心とどめても問ひ聞けかし」とあぢきなく思す。<BR>⏎
d1444<P>⏎
cd2:1445-446 とて灯かかげなどすべし。女君は、ただこの障子口筋交ひたるほどにぞ臥したるべき。<BR>⏎
<P>⏎
261 とて灯かかげなどすべし。女君は、ただこの障子口筋交ひたるほどにぞ臥したるべき。<BR>⏎
d1448<P>⏎
d1450<P>⏎
d1452<P>⏎
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d1456<P>⏎
d1458<P>⏎
d1460<P>⏎
cd2:1461-462 <A HREF="#k41">と</A><A NAME="t41"></A>いとやはらかにのたまひて、鬼神も荒だつまじきけはひなれば、はしたなく、「ここに人」とも、えののしらず。心地はた、<A HREF="#k42">わびしく</A><A NAME="t42">、</A>あるまじきことと思へば、あさましく、<BR>⏎
<P>⏎
269 <A HREF="#k41">と</A><A NAME="t41"></A>いとやはらかにのたまひて、鬼神も荒だつまじきけはひなれば、はしたなく、「ここに人」とも、えののしらず。心地はた、<A HREF="#k42">わびしく</A><A NAME="t42">、</A>あるまじきことと思へば、あさましく、<BR>⏎
d1465<P>⏎
d1467<P>⏎
cd2:1468-469 とていと小さやかなれば、かき抱きて障子のもと出でたまふにぞ、求めつる中将だつ人来あひたる。<BR>⏎
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273 とていと小さやかなれば、かき抱きて障子のもと出でたまふにぞ、求めつる中将だつ人来あひたる。<BR>⏎
d1471<P>⏎
d1473<P>⏎
d1475<P>⏎
cd6:3476-481 とてかくおし立ちたまへるを、深く情けなく憂しと思ひ入りたるさまも、げにいとほしく、心恥づかしきけはひなれば、<BR>⏎
<P>⏎
 「その際々を、まだ知らぬ、初事ぞや。なかなか、おしなべたる列に思ひなしたまへるなむうたてありける。おのづから聞きたまふやうもあらむ。あながちなる好き心は、さらにならはぬを。さるべきにや、げにかくあはめられたてまつるも、ことわりなる心まどひを、みづからもあやしきまでなむ」<BR>⏎
<P>⏎
 などまめだちてよろづにのたまへど、いとたぐひなき御ありさまの、いよいようちとけきこえむことわびしければ、すくよかに心づきなしとは見えたてまつるとも、さる方の言ふかひなきにて過ぐしてむと思ひて、つれなくのみもてなしたり。人柄のたをやぎたるに、強き心をしひて加へたれば、なよ竹の心地して、さすがに折るべくもあらず。<BR>⏎
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277-279 とてかくおし立ちたまへるを、深く情けなく憂しと思ひ入りたるさまも、げにいとほしく、心恥づかしきけはひなれば、<BR>⏎
 「その際々を、まだ知らぬ、初事ぞや。なかなか、おしなべたる列に思ひなしたまへるなむうたてありける。おのづから聞きたまふやうもあらむ。あながちなる好き心は、さらにならはぬを。さるべきにや、げにかくあはめられたてまつるも、ことわりなる心まどひを、みづからもあやしきまでなむ」<BR>⏎
 などまめだちてよろづにのたまへど、いとたぐひなき御ありさまの、いよいようちとけきこえむことわびしければ、すくよかに心づきなしとは見えたてまつるとも、さる方の言ふかひなきにて過ぐしてむと思ひて、つれなくのみもてなしたり。人柄のたをやぎたるに、強き心をしひて加へたれば、なよ竹の心地して、さすがに折るべくもあらず。<BR>⏎
d1483<P>⏎
cd6:3484-489 「などかく疎ましきものにしも思すべき。おぼえなきさまなるしもこそ、契りあるとは思ひたまはめ。むげに世を思ひ知らぬやうに、おぼほれたまふなむ、いとつらき」と恨みられて、<BR>⏎
<P>⏎
 「いとかく憂き身のほどの定まらぬ、<A HREF="#no14">ありしながらの身にて</A><A NAME="te14">、</A>かかる御心ばへを見ましかば、あるまじき我が頼みにて、見直したまふ<A HREF="#no15">後瀬をも</A><A NAME="te15">思</A>ひたまへ慰めましを、いとかう仮なる浮き寝のほどを思ひはべるに、たぐひなく思うたまへ惑はるるなり。よし今は<A HREF="#no16">見きとなかけそ</A><A NAME="te16">」</A><BR>⏎
<P>⏎
 とて思へるさま、げにいとことわりなり。おろかならず契り慰めたまふこと多かるべし。<BR>⏎
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281-283 「などかく疎ましきものにしも思すべき。おぼえなきさまなるしもこそ、契りあるとは思ひたまはめ。むげに世を思ひ知らぬやうに、おぼほれたまふなむ、いとつらき」と恨みられて、<BR>⏎
 「いとかく憂き身のほどの定まらぬ、<A HREF="#no14">ありしながらの身にて</A><A NAME="te14">、</A>かかる御心ばへを見ましかば、あるまじき我が頼みにて、見直したまふ<A HREF="#no15">後瀬をも</A><A NAME="te15">思</A>ひたまへ慰めましを、いとかう仮なる浮き寝のほどを思ひはべるに、たぐひなく思うたまへ惑はるるなり。よし今は<A HREF="#no16">見きとなかけそ</A><A NAME="te16">」</A><BR>⏎
 とて思へるさま、げにいとことわりなり。おろかならず契り慰めたまふこと多かるべし。<BR>⏎
d1491<P>⏎
d1494<P>⏎
d1496<P>⏎
d1498<P>⏎
d1500<P>⏎
d1502<P>⏎
c1503 とてうち泣きたまふ気色、いとなまめきたり。<BR>⏎
291 とてうち泣きたまふ気色、いとなまめきたり。<BR>⏎
d1505<P>⏎
cd3:1506-508 「つれなきを恨みも果てぬしののめに<BR>⏎
  とりあへぬまでおどろかすらむ」<BR>⏎
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293 「つれなきを恨みも果てぬしののめに<BR>  とりあへぬまでおどろかすらむ」<BR>⏎
d1510<P>⏎
cd3:1511-513 「身の憂さを嘆くにあかで明くる夜は<BR>⏎
  とり重ねてぞ音もなかれける」<BR>⏎
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295 「身の憂さを嘆くにあかで明くる夜は<BR>  とり重ねてぞ音もなかれける」<BR>⏎
d1515<P>⏎
d1517<P>⏎
d1519<P>⏎
cd2:1520-521 殿に帰りたまひても、とみにもまどろまれたまはず。またあひ見るべき方なきを、ましてかの人の思ふらむ心の中、いかならむと、心苦しく思ひやりたまふ。「すぐれたることはなけれど、めやすくもてつけてもありつる中の品かな。隈なく見集めたる人の言ひしことは、げに」と思し合はせられけり。<BR>⏎
<P>⏎
299 殿に帰りたまひても、とみにもまどろまれたまはず。またあひ見るべき方なきを、ましてかの人の思ふらむ心の中、いかならむと、心苦しく思ひやりたまふ。「すぐれたることはなけれど、めやすくもてつけてもありつる中の品かな。隈なく見集めたる人の言ひしことは、げに」と思し合はせられけり。<BR>⏎
d1523<P>⏎
cd2:1524-525 「かのありし中納言の子は、得させてむや。らうたげに見えしを。身近く使ふ人にせむ。主上にも我奉らむ」とのたまへば、<BR>⏎
<P>⏎
301 「かのありし中納言の子は、得させてむや。らうたげに見えしを。身近く使ふ人にせむ。主上にも我奉らむ」とのたまへば、<BR>⏎
d1527<P>⏎
d1529<P>⏎
d1531<P>⏎
d1533<P>⏎
d1535<P>⏎
d1537<P>⏎
text02538 <A NAME="in34">[第四段 それから数日後]</A><BR>308 
d1539<P>⏎
cd2:1540-541 さて五六日ありて、この子率て参れり。こまやかにをかしとはなけれど、なまめきたるさまして、あて人と見えたり。召し入れて、いとなつかしく語らひたまふ。童心地に、いとめでたくうれしと思ふ。いもうとの君のことも詳しく問ひたまふ。さるべきことは答へ聞こえなどして、恥づかしげにしづまりたれば、うち出でにくし。されどいとよく言ひ知らせたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
309 さて六日ありて、この子率て参れり。こまやかにをかしとはなけれど、なまめきたるさまして、あて人と見えたり。召し入れて、いとなつかしく語らひたまふ。童心地に、いとめでたくうれしと思ふ。いもうとの君のことも詳しく問ひたまふ。さるべきことは答へ聞こえなどして、恥づかしげにしづまりたれば、うち出でにくし。されどいとよく言ひ知らせたまふ。<BR>⏎
d1543<P>⏎
cd2:1544-545 「見し夢を逢ふ夜ありやと嘆くまに<BR>⏎
  目さへあはでぞころも経にける<BR>⏎
311 「見し夢を逢ふ夜ありやと嘆くまに<BR>  目さへあはでぞころも経にける<BR>⏎
d1547<P>⏎
cd2:1548-549 など目も及ばぬ御書きざまも、霧り塞がりて、心得ぬ宿世うち添へりける<A HREF="#k45">身を</A><A NAME="t45">思</A>ひ続けて臥し<A HREF="#k46">たまへり</A><A NAME="t46">。</A><BR>⏎
<P>⏎
313 など目も及ばぬ御書きざまも、霧り塞がりて、心得ぬ宿世うち添へりける<A HREF="#k45">身を</A><A NAME="t45">思</A>ひ続けて臥し<A HREF="#k46">たまへり</A><A NAME="t46">。</A><BR>⏎
d1551<P>⏎
d1553<P>⏎
d1555<P>⏎
cd2:1556-557 「違ふべくものたまはざりしものを。いかがさは申さむ」<BR>⏎
<P>⏎
317 「違ふべくものたまはざりしものを。いかがさは申さむ」<BR>⏎
d1559<P>⏎
cd2:1560-561 「いでおよすけたることは言はぬぞよき。さはな参りたまひそ」と<A HREF="#k47">むつかられ</A><A NAME="t47">て</A>、<BR>⏎
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319 「いでおよすけたることは言はぬぞよき。さはな参りたまひそ」と<A HREF="#k47">むつかられ</A><A NAME="t47">て</A>、<BR>⏎
d1563<P>⏎
d1565<P>⏎
d1567<P>⏎
d1569<P>⏎
d1571<P>⏎
d1573<P>⏎
d1575<P>⏎
cd2:1576-577 「あこは知らじな。その伊予の翁よりは、先に見し人ぞ。されど頼もしげなく頚細しとて、ふつつかなる後見まうけて、かく侮りたまふなめり。さりとも、あこはわが子にてをあれよ。この頼もし人は、行く先短かりなむ」<BR>⏎
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327 「あこは知らじな。その伊予の翁よりは、先に見し人ぞ。されど頼もしげなく頚細しとて、ふつつかなる後見まうけて、かく侮りたまふなめり。さりとも、あこはわが子にてをあれよ。この頼もし人は、行く先短かりなむ」<BR>⏎
d1579<P>⏎
d1581<P>⏎
cd2:1582-583 御文は常にあり。されどこの子もいと幼し、心よりほかに散りもせば、軽々しき名さへとり添へむ、身のおぼえをいとつきなかるべく思へば、めでたきこともわが身からこそと思ひて、うちとけたる御答へも聞こえず。ほのかなりし御けはひありさまは、「げになべてにやは」と、思ひ出できこえぬにはあらねど、「をかしきさまを見えたてまつりても、何にかはなるべき」など、思ひ返すなりけり。<BR>⏎
<P>⏎
330 御文は常にあり。されどこの子もいと幼し、心よりほかに散りもせば、軽々しき名さへとり添へむ、身のおぼえをいとつきなかるべく思へば、めでたきこともわが身からこそと思ひて、うちとけたる御答へも聞こえず。ほのかなりし御けはひありさまは、「げになべてにやは」と、思ひ出できこえぬにはあらねど、「をかしきさまを見えたてまつりても、何にかはなるべき」など、思ひ返すなりけり。<BR>⏎
d1585<P>⏎
d1587<P>⏎
d1589<P>⏎
d1591<P>⏎
d1593<P>⏎
cd2:1594-595 とて渡殿に、中将といひしが局したる隠れに、移ろひぬ。<BR>⏎
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336 とて渡殿に、中将といひしが局したる隠れに、移ろひぬ。<BR>⏎
d1597<P>⏎
d1599<P>⏎
cd4:2600-603 「かくけしからぬ<A HREF="#k50">心ばへ</A><A NAME="t50">は</A>、つかふものか。幼き人のかかること言ひ伝ふるは、いみじく忌むなるものを」と言ひおどして、「『心地悩ましければ、人びと避けずおさへさせてなむ』と聞こえさせよ。あやしと誰も誰も見るらむ」<BR>⏎
<P>⏎
 と言ひ放ちて、心の中には、「いとかく品定まりぬる身のおぼえならで、過ぎにし親の御けはひとまれるふるさとながら、たまさかにも待ちつけたてまつらば、をかしうもやあらまし。しひて思ひ知らぬ顔に見消つも、いかにほど知らぬやうに思すらむ」と、心ながらも、胸いたく、さすがに思ひ乱る。「とてもかくても、今は言ふかひなき宿世なりければ、無心に心づきなくて止みなむ」と思ひ果てたり。<BR>⏎
<P>⏎
339-340 「かくけしからぬ<A HREF="#k50">心ばへ</A><A NAME="t50">は</A>、つかふものか。幼き人のかかること言ひ伝ふるは、いみじく忌むなるものを」と言ひおどして、「『心地悩ましければ、人びと避けずおさへさせてなむ』と聞こえさせよ。あやしと誰も誰も見るらむ」<BR>⏎
 と言ひ放ちて、心の中には、「いとかく品定まりぬる身のおぼえならで、過ぎにし親の御けはひとまれるふるさとながら、たまさかにも待ちつけたてまつらば、をかしうもやあらまし。しひて思ひ知らぬ顔に見消つも、いかにほど知らぬやうに思すらむ」と、心ながらも、胸いたく、さすがに思ひ乱る。「とてもかくても、今は言ふかひなき宿世なりければ、無心に心づきなくて止みなむ」と思ひ果てたり。<BR>⏎
d1605<P>⏎
cd2:1606-607 「帚木の心を知らで園原の<BR>⏎
  道にあやなく惑ひぬるかな<BR>⏎
342 「帚木の心を知らで園原の<BR>  道にあやなく惑ひぬるかな<BR>⏎
d1609<P>⏎
d1611<P>⏎
cd2:1612-613 「数ならぬ伏屋に生ふる名の憂さに<BR>⏎
  あるにもあらず消ゆる帚木」<BR>⏎
345 「数ならぬ伏屋に生ふる名の憂さに<BR>  あるにもあらず消ゆる帚木」<BR>⏎
d1615<P>⏎
d1617<P>⏎
d1619<P>⏎
d1621<P>⏎
d1623<P>⏎
d1625<P>⏎
cd2:1626-627 「よしあこだに、な捨てそ」<BR>⏎
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352 「よしあこだに、な捨てそ」<BR>⏎
d2629-630
<P>⏎
text02631 <a name="in41">【出典】<BR>354 
c1632</a><A NAME="no1">出典1</A> 春日野の若紫の摺衣忍ぶの乱れ限り知られず(古今六帖五-三三〇九)<A HREF="#te1">(戻)</A><BR>⏎
355<A NAME="no1">出典1</A> 春日野の若紫の摺衣忍ぶの乱れ限り知られず(古今六帖五-三三〇九)<A HREF="#te1">(戻)</A><BR>⏎
d1650
text02651<p> <a name="in42">【校訂】<BR>373 
c1652【校訂方針】明融臨模本の原態復元を目指して本文校訂した。よって本行本文と一筆と思われる訂正跡は採用したが、それ以外の後世の訂正跡は無視した。<BR>⏎
374【校訂方針】明融臨模本の原態復元を目指して本文校訂した。よって本行本文と一筆と思われる訂正跡は採用したが、それ以外の後世の訂正跡は無視した。<BR>⏎
c1654</a><A NAME="k01">校訂1</A> 心よく--心き(き/$)よく<A HREF="#t01">(戻)</A><BR>⏎
376<A NAME="k01">校訂1</A> 心よく--心き(き/$)よく<A HREF="#t01">(戻)</A><BR>⏎
d1704</p>⏎
d1712</p>⏎
i1436
diffsrc/original/text03.htmlsrc/modified/text03.html
cd4:38-11<body background="wallppr063.gif">First updated 09/20/1996(ver.1-1)<BR>⏎
Last updated 
11/23/2010(ver.2-3)<BR>⏎
渋谷栄一校訂(C)<BR>⏎
<P
>⏎
8-10<BODY>⏎
<
ADDRESS>Last updated 11/23/2010(ver.2-3)<BR>⏎
渋谷栄一校訂(C)</ADDRESS>⏎
i013
d126
d136<P>⏎
text0337 <H4>光る源氏十七歳夏の物語</H4>34 
text0338 <A NAME="in11">[第一段 空蝉の物語]</A><BR>35 
d139<P>⏎
cd2:140-41 寝られたまはぬままには、「我は、かく人に憎まれてもならはぬを、今宵なむ、初めて憂しと世を思ひ知りぬれば、恥づかしくて、ながらふまじうこそ、思ひなりぬれ」などのたまへば、涙をさへこぼして臥したり。いとらうたしと思す。手さぐりの、細く小さきほど、髪のいと長からざりしけはひのさまかよひたるも、思ひなしにやあはれなり。あながちにかかづらひたどり寄らむも、人悪ろかるべく、まめやかにめざましと思し明かしつつ、例のやうにものたまひまつはさず。夜深う出でたまへば、この子はいといとほしく、さうざうしと思ふ。<BR>⏎
<P>⏎
36 寝られたまはぬままには、「我は、かく人に憎まれてもならはぬを、今宵なむ、初めて憂しと世を思ひ知りぬれば、恥づかしくて、ながらふまじうこそ、思ひなりぬれ」などのたまへば、涙をさへこぼして臥したり。いとらうたしと思す。手さぐりの、細く小さきほど、髪のいと長からざりしけはひのさまかよひたるも、思ひなしにやあはれなり。あながちにかかづらひたどり寄らむも、人悪ろかるべく、まめやかにめざましと思し明かしつつ、例のやうにものたまひまつはさず。夜深う出でたまへば、この子はいといとほしく、さうざうしと思ふ。<BR>⏎
d143<P>⏎
d145<P>⏎
text0346 <A NAME="in12">[第二段 源氏、再度、紀伊守邸へ]</A><BR>39 
d148<P>⏎
d150<P>⏎
d152<P>⏎
d154<P>⏎
d156<P>⏎
cd2:157-58 「なぞかう暑きに、この格子は下ろされたる」と問へば、<BR>⏎
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45 「なぞかう暑きに、この格子は下ろされたる」と問へば、<BR>⏎
d160<P>⏎
d162<P>⏎
d164<P>⏎
text0365 <A NAME="in13">[第三段 空蝉と軒端荻、碁を打つ]</A><BR>49 
d166<P>⏎
d168<P>⏎
d171<P>⏎
d173<P>⏎
cd2:174-75 「いでこのたびは負けにけり。隅のところ、いでいで」と指をかがめて、「十、<A HREF="#k03">二十</A><A NAME="t03">、</A>三十、四十」など<A HREF="#k04">かぞふる</A><A NAME="t04">さ</A>ま、<A HREF="#no2">伊予の湯桁もたどたどしかるまじう</A><A NAME="te2">見</A>ゆ。すこし品おくれたり。<BR>⏎
<P>⏎
54 「いでこのたびは負けにけり。隅のところ、いでいで」と指をかがめて、「十、<A HREF="#k03">二十</A><A NAME="t03">、</A>三十、四十」など<A HREF="#k04">かぞふる</A><A NAME="t04">さ</A>ま、<A HREF="#no2">伊予の湯桁もたどたどしかるまじう</A><A NAME="te2">見</A>ゆ。すこし品おくれたり。<BR>⏎
d177<P>⏎
d179<P>⏎
d181<P>⏎
d183<P>⏎
d185<P>⏎
cd2:186-87 「さて今宵もや帰してむとする。いとあさましう、からうこそあべけれ」とのたまへば、<BR>⏎
<P>⏎
60 「さて今宵もや帰してむとする。いとあさましう、からうこそあべけれ」とのたまへば、<BR>⏎
d189<P>⏎
d191<P>⏎
d193<P>⏎
d195<P>⏎
cd2:196-97 「静まりぬなり。入りて、さらばたばかれ」とのたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
65 「静まりぬなり。入りて、さらばたばかれ」とのたまふ。<BR>⏎
d199<P>⏎
d1101<P>⏎
d1103<P>⏎
cd2:1104-105 さかしされどもをかしく思せど、「見つとは知らせじ、いとほし」と思して、夜更くることの心もとなさをのたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
69 さかしされどもをかしく思せど、「見つとは知らせじ、いとほし」と思して、夜更くることの心もとなさをのたまふ。<BR>⏎
d1107<P>⏎
d1109<P>⏎
d1111<P>⏎
text03112 <A NAME="in14">[第四段 空蝉逃れ、源氏、軒端荻と契る]</A><BR>73 
d1113<P>⏎
d1115<P>⏎
d1117<P>⏎
d1120<P>⏎
d1122<P>⏎
cd2:1123-124 「人知りたることよりも、かやうなるは、あはれも添ふこととなむ、昔人も言ひける。あひ思ひたまへよ。つつむことなきにしもあらねば、身ながら心にもえまかすまじくなむありける。またさるべき人びとも許されじかしと、かねて胸いたくなむ。忘れで待ちたまへよ」など、なほなほしく語らひたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
79 「人知りたることよりも、かやうなるは、あはれも添ふこととなむ、昔人も言ひける。あひ思ひたまへよ。つつむことなきにしもあらねば、身ながら心にもえまかすまじくなむありける。またさるべき人びとも許されじかしと、かねて胸いたくなむ。忘れで待ちたまへよ」など、なほなほしく語らひたまふ。<BR>⏎
d1126<P>⏎
cd2:1127-128 「なべて人に知らせばこそあらめ、この小さき上人に伝へて聞こえむ。気色なくもてなしたまへ」<BR>⏎
<P>⏎
81 「なべて人に知らせばこそあらめ、この小さき上人に伝へて聞こえむ。気色なくもてなしたまへ」<BR>⏎
d1130<P>⏎
d1132<P>⏎
d1134<P>⏎
d1136<P>⏎
d1138<P>⏎
cd2:1139-140 「夜中に、こはなぞ外歩かせたまふ」<BR>⏎
<P>⏎
87 「夜中に、こはなぞ外歩かせたまふ」<BR>⏎
d1142<P>⏎
d1144<P>⏎
cd2:1145-146 とて君を押し出でたてまつるに、暁近き月、隈なくさし出でて、ふと人の影見えければ、<BR>⏎
<P>⏎
90 とて君を押し出でたてまつるに、暁近き月、隈なくさし出でて、ふと人の影見えければ、<BR>⏎
d1148<P>⏎
d1150<P>⏎
d1152<P>⏎
d1154<P>⏎
d1156<P>⏎
d1158<P>⏎
cd4:2159-162 と憂ふ。答へも聞かで、<BR>⏎
<P>⏎
 「あな腹々。今聞こえむ」とて過ぎぬるに、からうして出でたまふ。なほかかる歩きは軽々しくあやしかりけりと、いよいよ思し懲りぬべし。<BR>⏎
<P>⏎
97-98 と憂ふ。答へも聞かで、<BR>⏎
 「あな腹々。今聞こえむ」とて過ぎぬるに、からうして出でたまふ。なほかかる歩きは軽々しくあやしかりけりと、いよいよ思し懲りぬべし。<BR>⏎
text03163 <A NAME="in15">[第五段 源氏、空蝉の脱ぎ捨てた衣を持って帰る]</A><BR>99 
d1164<P>⏎
d1166<P>⏎
cd6:3167-172 「いと深う憎みたまふべかめれば、身も憂く思ひ果てぬ。などかよそにても、なつかしき答へばかりはしたまふまじき。伊予介に劣りける身こそ」<BR>⏎
<P>⏎
 など心づきなしと思ひてのたまふ。ありつる小袿を、さすがに、御衣の下に引き入れて、大殿籠もれり。小君を御前に臥せて、よろづに恨み、かつは語らひたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
 「あこはらうたけれど、つらきゆかりにこそ、え思ひ果つまじけれ」<BR>⏎
<P>⏎
101-103 「いと深う憎みたまふべかめれば、身も憂く思ひ果てぬ。などかよそにても、なつかしき答へばかりはしたまふまじき。伊予介に劣りける身こそ」<BR>⏎
 など心づきなしと思ひてのたまふ。ありつる小袿を、さすがに、御衣の下に引き入れて、大殿籠もれり。小君を御前に臥せて、よろづに恨み、かつは語らひたまふ。<BR>⏎
 「あこはらうたけれど、つらきゆかりにこそ、え思ひ果つまじけれ」<BR>⏎
d1174<P>⏎
d1176<P>⏎
cd3:1177-179 「空蝉の身をかへてける木のもとに<BR>⏎
  なほ人がらのなつかしきかな」<BR>⏎
<P>⏎
106 「空蝉の身をかへてける木のもとに<BR>  なほ人がらのなつかしきかな」<BR>⏎
d1181<P>⏎
d1183<P>⏎
d1185<P>⏎
cd2:1186-187 とて恥づかしめたまふ。左右に苦しう思へど、かの御手習取り出でたり。さすがに、取りて見たまふ。かのもぬけを、いかに<A HREF="#no3">伊勢をの海人のしほなれてや</A><A NAME="te3">、</A>など思ふもただならず、いとよろづに乱れて。<BR>⏎
<P>⏎
110 とて恥づかしめたまふ。左右に苦しう思へど、かの御手習取り出でたり。さすがに、取りて見たまふ。かのもぬけを、いかに<A HREF="#no3">伊勢をの海人のしほなれてや</A><A NAME="te3">、</A>など思ふもただならず、いとよろづに乱れて。<BR>⏎
d1189<P>⏎
d1191<P>⏎
cd4:1192-195 「空蝉の羽に置く露の木隠れて<BR>⏎
  忍び忍びに濡るる袖かな」<BR>⏎

<P>⏎
113 「空蝉の羽に置く露の木隠れて<BR>  忍び忍びに濡るる袖かな」<BR>⏎
text03196 <a name="in21">【出典】<BR>114 
c1197</a><A NAME="no1">出典1</A> 夕闇は道たどたどし月待ちて帰れわが背子そのまにも見む(古今六帖一-三七一 大宅娘女)<A HREF="#te1">(戻)</A><BR>⏎
115<A NAME="no1">出典1</A> 夕闇は道たどたどし月待ちて帰れわが背子そのまにも見む(古今六帖一-三七一 大宅娘女)<A HREF="#te1">(戻)</A><BR>⏎
d1201
text03202<p> <a name="in22">【校訂】<BR>119 
c1204</a><A NAME="k01">校訂1</A> 御消息も--御消息(息/+も)<A HREF="#t01">(戻)</A><BR>⏎
121<A NAME="k01">校訂1</A> 御消息も--御消息(息/+も)<A HREF="#t01">(戻)</A><BR>⏎
d1212</p>⏎
d1219</p>⏎
i1138
diffsrc/original/text04.htmlsrc/modified/text04.html
cd4:38-11<body background="wallppr063.gif">First updated 09/20/1996(ver.1-1)<BR>⏎
Last updated 09/
09/2010(ver.2-2)<BR>⏎
渋谷栄一校訂(C)<BR>⏎
<P
>⏎
8-10<BODY>⏎
<
ADDRESS>Last updated 09/09/2010(ver.2-2)<BR>⏎
渋谷栄一校訂(C)</ADDRESS>⏎
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i014
d137<P>⏎
d145<P>⏎
d148<P>⏎
d161<P>⏎
d164<P>⏎
d167<P>⏎
d170<P>⏎
text0471 <H4>第一章 夕顔の物語 夏の物語</H4>62 
text0472 <A NAME="in11">[第一段 源氏、五条の大弐乳母を見舞う]</A><BR>63 
d173<P>⏎
d175<P>⏎
c276-77 御車入るべき門は鎖したりければ、人して惟光召させて、待たせたまひけるほど、むつかしげなる大路のさまを見わたしたまへるに、この家のかたはらに、桧垣といふもの新しうして、上は半蔀四五間ばかり上げわたして、簾などもいと白う涼しげなるに、をかしき額つきの透影、あまた見えて覗く。立ちさまよふらむ下つ方思ひやるに、あながちに丈高き心地ぞする。いかなる者の集へるならむと、やうかはりて思さる。<BR>⏎
<P>⏎
65-66 御車入るべき門は鎖したりければ、人して惟光召させて、待たせたまひけるほど、むつかしげなる大路のさまを見わたしたまへるに、この家のかたはらに、桧垣といふもの新しうして、上は半蔀四五間ばかり上げわたして、簾などもいと白う涼しげなるに、をかしき額つきの透影、あまた見えて覗く。<BR>⏎
 
立ちさまよふらむ下つ方思ひやるに、あながちに丈高き心地ぞする。いかなる者の集へるならむと、やうかはりて思さる。<BR>⏎
d179<P>⏎
d181<P>⏎
d183<P>⏎
d185<P>⏎
d187<P>⏎
d189<P>⏎
d191<P>⏎
d194<P>⏎
d196<P>⏎
d198<P>⏎
d1100<P>⏎
d1102<P>⏎
d1104<P>⏎
cd2:1105-106 「惜しげなき身なれど、捨てがたく思うたまへつることは、ただかく御前にさぶらひ、御覧ぜらるることの変りはべりなむことを口惜しく思ひたまへ、たゆたひしかど、忌むことのしるしによみがへりてなむ、かく渡りおはしますを、見たまへはべりぬれば、今なむ阿弥陀仏の御光も、心清く待たれはべるべき」<BR>⏎
<P>⏎
81 「惜しげなき身なれど、捨てがたく思うたまへつることは、ただかく御前にさぶらひ、御覧ぜらるることの変りはべりなむことを口惜しく思ひたまへ、たゆたひしかど、忌むことのしるしによみがへりてなむ、かく渡りおはしますを、見たまへはべりぬれば、今なむ阿弥陀仏の御光も、心清く待たれはべるべき」<BR>⏎
d1108<P>⏎
cd4:2109-112 「日ごろ、おこたりがたくものせらるるを、安からず嘆きわたりつるに、かく世を離るるさまにものしたまへば、いとあはれに口惜しうなむ。命長くて、なほ位高くなど見なしたまへ。さてこそ、九品の上にも、障りなく生まれたまはめ。この世にすこし恨み残るは、悪ろきわざとなむ聞く」など、涙ぐみてのたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
 かたほなるをだに、乳母やうの思ふべき人は、あさましうまほに見なすものを、ましていと面立たしう、なづさひ仕うまつりけむ身も、いたはしうかたじけなく思ほゆべかめれば、すずろに涙がちなり。<BR>⏎
<P>⏎
83-84 「日ごろ、おこたりがたくものせらるるを、安からず嘆きわたりつるに、かく世を離るるさまにものしたまへば、いとあはれに口惜しうなむ。命長くて、なほ位高くなど見なしたまへ。さてこそ、九品の上にも、障りなく生まれたまはめ。この世にすこし恨み残るは、悪ろきわざとなむ聞く」など、涙ぐみてのたまふ。<BR>⏎
 かたほなるをだに、乳母やうの思ふべき人は、あさましうまほに見なすものを、ましていと面立たしう、なづさひ仕うまつりけむ身も、いたはしうかたじけなく思ほゆべかめれば、すずろに涙がちなり。<BR>⏎
d1114<P>⏎
d1116<P>⏎
d1118<P>⏎
cd2:1119-120 となむこまやかに語らひたまひて、おし拭ひたまへる袖のにほひも、いと<A HREF="#k02">所狭き</A><A NAME="t02">ま</A>で薫り満ちたるに、げによに思へば、おしなべたらぬ人の御宿世ぞかしと、尼君をもどかしと見つる子ども、皆うちしほたれけり。<BR>⏎
<P>⏎
88 となむこまやかに語らひたまひて、おし拭ひたまへる袖のにほひも、いと<A HREF="#k02">所狭き</A><A NAME="t02">ま</A>で薫り満ちたるに、げによに思へば、おしなべたらぬ人の御宿世ぞかしと、尼君をもどかしと見つる子ども、皆うちしほたれけり。<BR>⏎
d1122<P>⏎
cd3:1123-125 「心あてにそれかとぞ見る白露の<BR>⏎
  光そへたる夕顔の花」<BR>⏎
<P>⏎
90 「心あてにそれかとぞ見る白露の<BR>  光そへたる夕顔の花」<BR>⏎
d1127<P>⏎
d1129<P>⏎
d1131<P>⏎
cd6:3132-137 「この五六日ここにはべれど、病者のことを思うたまへ扱ひはべるほどに、隣のことはえ聞きはべらず」<BR>⏎
<P>⏎
 などはしたなやかに聞こゆれば、<BR>⏎
<P>⏎
 「憎しとこそ思ひたれな。されどこの扇の、尋ぬべきゆゑありて見ゆるを。なほこのわたりの心知れらむ者を召して問へ」<BR>⏎
<P>⏎
94-96 「この五六日ここにはべれど、病者のことを思うたまへ扱ひはべるほどに、隣のことはえ聞きはべらず」<BR>⏎
 などはしたなやかに聞こゆれば、<BR>⏎
 「憎しとこそ思ひたれな。されどこの扇の、尋ぬべきゆゑありて見ゆるを。なほこのわたりの心知れらむ者を召して問へ」<BR>⏎
d1139<P>⏎
d1141<P>⏎
cd5:2142-146 「さらばその宮仕人ななり。したり顔にもの馴れて言へるかな」と、「めざましかるべき際にやあらむ」と思せど、さして聞こえかかれる心の、憎からず過ぐしがたきぞ、例の、この方には重からぬ御心なめるかし。御畳紙にいたうあらぬさまに書き変へたまひて、<BR>⏎
<P>⏎
 「寄りてこそそれかとも見めたそかれに<BR>⏎
  ほのぼの見つる花の夕顔」<BR>⏎
<P>⏎
99-100 「さらばその宮仕人ななり。したり顔にもの馴れて言へるかな」と、「めざましかるべき際にやあらむ」と思せど、さして聞こえかかれる心の、憎からず過ぐしがたきぞ、例の、この方には重からぬ御心なめるかし。御畳紙にいたうあらぬさまに書き変へたまひて、<BR>⏎
 「寄りてこそそれかとも見めたそかれに<BR>  ほのぼの見つる花の夕顔」<BR>⏎
d1148<P>⏎
d1150<P>⏎
d1152<P>⏎
d1154<P>⏎
d1156<P>⏎
d1158<P>⏎
text04159 <A NAME="in12">[第二段 数日後、夕顔の宿の報告]</A><BR>107 
d1160<P>⏎
d1162<P>⏎
d1164<P>⏎
cd2:1165-166 など聞こえて、近く参り寄りて聞こゆ。<BR>⏎
<P>⏎
110 など聞こえて、近く参り寄りて聞こゆ。<BR>⏎
d1170<P>⏎
d1172<P>⏎
cd4:2173-176 おぼえこそ重かるべき御身のほどなれど、御よはひのほど、人のなびきめできこえたるさまなど思ふには、好きたまはざらむも、情けなくさうざうしかるべしかし、人のうけひかぬほどにてだに、なほさりぬべきあたりのことは、このましうおぼゆるものを、と思ひをり。<BR>⏎
<P>⏎
 「もし見たまへ得ることもやはべると、はかなきついで作り出でて、消息など遣はしたりき。書き馴れたる手して、口とく返り事などしはべりき。いと口惜しうはあらぬ若人どもなむはべるめる」<BR>⏎
<P>⏎
115-116 おぼえこそ重かるべき御身のほどなれど、御よはひのほど、人のなびきめできこえたるさまなど思ふには、好きたまはざらむも、情けなくさうざうしかるべしかし、人のうけひかぬほどにてだに、なほさりぬべきあたりのことは、このましうおぼゆるものを、と思ひをり。<BR>⏎
 「もし見たまへ得ることもやはべると、はかなきついで作り出でて、消息など遣はしたりき。書き馴れたる手して、口とく返り事などしはべりき。いと口惜しうはあらぬ若人どもなむはべるめる」<BR>⏎
d1178<P>⏎
d1180<P>⏎
cd2:1181-182 かの下が下と、人の思ひ捨てし住まひなれど、その中にも、思ひのほかに口惜しからぬを見つけたらばと、めづらしく思ほすなりけり。<BR>⏎
<P>⏎
119 かの下が下と、人の思ひ捨てし住まひなれど、その中にも、思ひのほかに口惜しからぬを見つけたらばと、めづらしく思ほすなりけり。<BR>⏎
text04183 <H4>第二章 空蝉の物語</H4>120 
text04184 <A NAME="in21">[第一段 空蝉の夫、伊予国から上京す]</A><BR>121 
d1185<P>⏎
cd6:3186-191 さてかの空蝉のあさましくつれなきを、この世の人には違ひて思すに、おいらかならましかば、心苦しき過ちにてもやみぬべきを、いとねたく、負けてやみなむを、心にかからぬ折なし。かやうの並々までは思ほしかからざりつるを、ありし「雨夜の品定め」の後、いぶかしく思ほしなる品々あるに、いとど隈なくなりぬる御心なめりかし。<BR>⏎
<P>⏎
 うらもなく待ちきこえ顔なる片つ方人を、あはれと思さぬにしもあらねど、つれなくて聞きゐたらむことの恥づかしければ、「まづこなたの心見果てて」と思すほどに、伊予介上りぬ。<BR>⏎
<P>⏎
 まづ急ぎ参れり。舟路のしわざとて、すこし黒みやつれたる旅姿、いとふつつかに心づきなし。されど人もいやしからぬ筋に、容貌などねびたれど、きよげにて、ただならず、気色よしづきてなどぞありける。<BR>⏎
<P>⏎
122-124 さてかの空蝉のあさましくつれなきを、この世の人には違ひて思すに、おいらかならましかば、心苦しき過ちにてもやみぬべきを、いとねたく、負けてやみなむを、心にかからぬ折なし。かやうの並々までは思ほしかからざりつるを、ありし「雨夜の品定め」の後、いぶかしく思ほしなる品々あるに、いとど隈なくなりぬる御心なめりかし。<BR>⏎
 うらもなく待ちきこえ顔なる片つ方人を、あはれと思さぬにしもあらねど、つれなくて聞きゐたらむことの恥づかしければ、「まづこなたの心見果てて」と思すほどに、伊予介上りぬ。<BR>⏎
 まづ急ぎ参れり。舟路のしわざとて、すこし黒みやつれたる旅姿、いとふつつかに心づきなし。されど人もいやしからぬ筋に、容貌などねびたれど、きよげにて、ただならず、気色よしづきてなどぞありける。<BR>⏎
d1193<P>⏎
cd4:2194-197 「ものまめやかなる大人を、かく思ふも、げにをこがましく、うしろめたきわざなりや。げにこれぞ、なのめならぬ片は<A HREF="#k06">なべかり</A><A NAME="t06">け</A>る」と、馬頭の諌め思し出でて、いとほしきに、「つれなき心はねたけれど、人のためは、あはれ」と思しなさる。<BR>⏎
<P>⏎
 「娘をばさるべき人に預けて、北の方をば率て下りぬべし」と、聞きたまふに、ひとかたならず心あわたたしくて、「今一度はえあるまじきことにや」と、小君を語らひたまへど、人の心を合せたらむことにてだに、軽らかにえしも紛れたまふまじきを、まして似げなきことに思ひて、今さらに見苦しかるべし、と思ひ離れたり。<BR>⏎
<P>⏎
126-127 「ものまめやかなる大人を、かく思ふも、げにをこがましく、うしろめたきわざなりや。げにこれぞ、なのめならぬ片は<A HREF="#k06">なべかり</A><A NAME="t06">け</A>る」と、馬頭の諌め思し出でて、いとほしきに、「つれなき心はねたけれど、人のためは、あはれ」と思しなさる。<BR>⏎
 「娘をばさるべき人に預けて、北の方をば率て下りぬべし」と、聞きたまふに、ひとかたならず心あわたたしくて、「今一度はえあるまじきことにや」と、小君を語らひたまへど、人の心を合せたらむことにてだに、軽らかにえしも紛れたまふまじきを、まして似げなきことに思ひて、今さらに見苦しかるべし、と思ひ離れたり。<BR>⏎
d1199<P>⏎
d1201<P>⏎
text04202 <H4>第三章 六条の貴婦人の物語 初秋の物語</H4>130 
text04203 <A NAME="in31">[第一段 霧深き朝帰りの物語]</A><BR>131 
d1204<P>⏎
d1206<P>⏎
cd2:1207-208 六条わたりにも、とけがたかりし御気色をおもむけ聞こえたまひて後、ひき返し、なのめならむはいとほしかし。されどよそなりし御心惑ひのやうに、あながちなる事はなきも、いかなることにかと見えたり。<BR>⏎
<P>⏎
133 六条わたりにも、とけがたかりし御気色をおもむけ聞こえたまひて後、ひき返し、なのめならむはいとほしかし。されどよそなりし御心惑ひのやうに、あながちなる事はなきも、いかなることにかと見えたり。<BR>⏎
d1210<P>⏎
d1212<P>⏎
d1214<P>⏎
cd4:2215-218 見返りたまひて、隅の間の高欄に、しばしひき据ゑたまへり。うちとけたらぬもてなし、髪の下がりば、めざましくも、と見たまふ。<BR>⏎
<P>⏎
 「咲く花に移るてふ名はつつめども<BR>⏎
  折らで過ぎ憂き今朝の朝顔<BR>⏎
137-138 見返りたまひて、隅の間の高欄に、しばしひき据ゑたまへり。うちとけたらぬもてなし、髪の下がりば、めざましくも、と見たまふ。<BR>⏎
 「咲く花に移るてふ名はつつめども<BR>  折らで過ぎ憂き今朝の朝顔<BR>⏎
d1220<P>⏎
cd7:3221-227 とて手をとらへたまへれば、いと馴れてとく、<BR>⏎
<P>⏎
 「朝霧の晴れ間も待たぬ気色にて<BR>⏎
  花に心を止めぬとぞ見る」<BR>⏎
<P>⏎
 とおほやけごとにぞ聞こえなす。<BR>⏎
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140-142 とて手をとらへたまへれば、いと馴れてとく、<BR>⏎
 「朝霧の晴れ間も待たぬ気色にて<BR>  花に心を止めぬとぞ見る」<BR>⏎
 とおほやけごとにぞ聞こえなす。<BR>⏎
d1229<P>⏎
cd4:2230-233 大方に、うち見たてまつる人だに、心とめたてまつらぬはなし。物の情け知らぬ山がつも、花の蔭には、なほやすらはまほしきにや、この御光を見たてまつるあたりは、ほどほどにつけて、我がかなしと思ふ女を、仕うまつらせばやと願ひ、もしは口惜しからずと思ふ妹など持たる人は、卑しきにても、なほこの御あたりにさぶらはせむと、思ひ寄らぬはなかりけり。<BR>⏎
<P>⏎
 ましてさりぬべきついでの御言の葉も、なつかしき御気色を見たてまつる人の、すこし物の心思ひ知るは、いかがはおろかに思ひきこえむ。明け暮れうちとけてしもおはせぬを、心もとなきことに思ふべかめり。<BR>⏎
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144-145 大方に、うち見たてまつる人だに、心とめたてまつらぬはなし。物の情け知らぬ山がつも、花の蔭には、なほやすらはまほしきにや、この御光を見たてまつるあたりは、ほどほどにつけて、我がかなしと思ふ女を、仕うまつらせばやと願ひ、もしは口惜しからずと思ふ妹など持たる人は、卑しきにても、なほこの御あたりにさぶらはせむと、思ひ寄らぬはなかりけり。<BR>⏎
 ましてさりぬべきついでの御言の葉も、なつかしき御気色を見たてまつる人の、すこし物の心思ひ知るは、いかがはおろかに思ひきこえむ。明け暮れうちとけてしもおはせぬを、心もとなきことに思ふべかめり。<BR>⏎
text04234 <H4>第四章 夕顔の物語(2) 仲秋の物語</H4>146 
text04235 <A NAME="in41">[第一段 源氏、夕顔の宿に忍び通う]</A><BR>147 
d1236<P>⏎
d1238<P>⏎
d1240<P>⏎
ci2:3241-242 一日、前駆追ひて渡る車のはべりしを、覗きて、童女の急ぎて、『右近の君こそ、まづ物見たまへ。中将殿こそ、これより渡りたまひぬれ』と言へば、またよろしき大人出で来て、『あなかま』と、手かくものから、『いかでさは知るぞ、いで見む』とて、はひ渡る。打橋だつものを道にてなむ通ひはべる。急ぎ来るものは、衣の裾を物に引きかけて、よろぼひ倒れて、橋よりも落ちぬべければ、『いで、この葛城の神こそ、さがしうしおきたれ』と、むつかりて、物覗きの心も冷めぬめりき。『君は、御直衣姿にて、御随身どももありし。なにがし、くれがし』と数へしは、頭中将の随身、その小舎人童をなむ、しるしに言ひはべりし」など聞こゆれば、<BR>⏎
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150-152 一日、前駆追ひて渡る車のはべりしを、覗きて、童女の急ぎて、『右近の君こそ、まづ物見たまへ。中将殿こそ、これより渡りたまひぬれ』と言へば、またよろしき大人出で来て、『あなかま』と、手かくものから、『いかでさは知るぞ、いで見む』とて、はひ渡る。<BR>⏎
 
打橋だつものを道にてなむ通ひはべる。急ぎ来るものは、衣の裾を物に引きかけて、よろぼひ倒れて、橋よりも落ちぬべければ、『いで、この葛城の神こそ、さがしうしおきたれ』と、むつかりて、物覗きの心も冷めぬめりき。<BR>⏎
 
『君は、御直衣姿にて、御随身どももありし。なにがし、くれがし』と数へしは、頭中将の随身、その小舎人童をなむ、しるしに言ひはべりし」など聞こゆれば、<BR>⏎
d1244<P>⏎
cd4:2245-248 とのたまひて、「もしかのあはれに忘れざりし人にや」と、思ほしよるも、いと知らまほしげなる御気色を見て、<BR>⏎
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 「私の懸想もいとよくしおきて、案内も残るところなく見たまへおきながら、ただ我れどちと知らせて、物など言ふ若きおもとのはべるを、そらおぼれしてなむ、隠れ<A HREF="#k09">まかり</A><A NAME="t09">歩</A>く。いとよく隠したりと思ひて、小さき子どもなどのはべるが言誤りしつべきも、言ひ紛らはして、また人なきさまを強ひてつくりはべる」など、語りて笑ふ。<BR>⏎
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154-155 とのたまひて、「もしかのあはれに忘れざりし人にや」と、思ほしよるも、いと知らまほしげなる御気色を見て、<BR>⏎
 「私の懸想もいとよくしおきて、案内も残るところなく見たまへおきながら、ただ我れどちと知らせて、物など言ふ若きおもとのはべるを、そらおぼれしてなむ、隠れ<A HREF="#k09">まかり</A><A NAME="t09">歩</A>く。いとよく隠したりと思ひて、小さき子どもなどのはべるが言誤りしつべきも、言ひ紛らはして、また人なきさまを強ひてつくりはべる」など、語りて笑ふ。<BR>⏎
d1250<P>⏎
d1252<P>⏎
d1254<P>⏎
d1256<P>⏎
c1257 「懸想人のいとものげなき足もとを、見つけられてはべらむ時、からくも<A HREF="#k10">あるべきかな</A><A NAME="t10">」</A>とわぶれど、人に知らせたまはぬままに、かの夕顔のしるべせし随身ばかり、さては顔むげに知るまじき童一人ばかりぞ、率ておはしける。「もし思ひよる気色もや」とて、隣に中宿をだにしたまはず。<BR>⏎
160 「懸想人のいとものげなき足もとを、見つけられてはべらむ時、からくも<A HREF="#k10">あるべきかな</A><A NAME="t10">」</A>とわぶれど、人に知らせたまはぬままに、かの夕顔のしるべせし随身ばかり、さては顔むげに知るまじき童一人ばかりぞ、率ておはしける。「もし思ひよる気色もや」とて、隣に中宿をだにしたまはず。<BR>⏎
d1259<P>⏎
cd2:1260-261 かかる筋は、まめ人の乱るる折もあるを、いとめやすくしづめたまひて、人のとがめきこゆべき振る舞ひはしたまはざりつるを、あやしきまで、今朝のほど、昼間の隔ても、おぼつかなくなど、思ひわづらはれたまへば、かつはいともの狂ほしく、さまで心とどむべきことのさまにもあらずと、いみじく思ひさましたまふに、人のけはひ、いとあさましくやはらかにおほどきて、もの深く重き方はおくれて、ひたぶるに若びたるものから、世をまだ知らぬにもあらず。いとやむごとなきにはあるまじ、いづくにいとかうしもとまる心ぞ、と返す返す思す。<BR>⏎
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162 かかる筋は、まめ人の乱るる折もあるを、いとめやすくしづめたまひて、人のとがめきこゆべき振る舞ひはしたまはざりつるを、あやしきまで、今朝のほど、昼間の隔ても、おぼつかなくなど、思ひわづらはれたまへば、かつはいともの狂ほしく、さまで心とどむべきことのさまにもあらずと、いみじく思ひさましたまふに、人のけはひ、いとあさましくやはらかにおほどきて、もの深く重き方はおくれて、ひたぶるに若びたるものから、世をまだ知らぬにもあらず。いとやむごとなきにはあるまじ、いづくにいとかうしもとまる心ぞ、と返す返す思す。<BR>⏎
d1263<P>⏎
text04264 <A NAME="in42">[第二段 八月十五夜の逢瀬]</A><BR>164 
d1265<P>⏎
d1267<P>⏎
d1269<P>⏎
cd12:6270-281 「いざいと心安き所にて、のどかに聞こえむ」<BR>⏎
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 など語らひたまへば、<BR>⏎
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 「なほあやしう。かくのたまへど、世づかぬ御もてなしなれば、もの恐ろしくこそあれ」<BR>⏎
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 といと若びて言へば、「げに」と、ほほ笑まれたまひて、<BR>⏎
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 「げにいづれか狐なるらむな。ただはかられたまへかし」<BR>⏎
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 となつかしげにのたまへば、女もいみじくなびきて、さもありぬべく思ひたり。「世になく、かたはなることなりとも、ひたぶるに従ふ心は、いとあはれげなる人」と見たまふに、なほかの頭中将の常夏疑はしく、語りし心ざま、まづ思ひ出でられたまへど、「忍ぶるやうこそは」と、あながちにも問ひ出でたまはず。<BR>⏎
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167-172 「いざいと心安き所にて、のどかに聞こえむ」<BR>⏎
 など語らひたまへば、<BR>⏎
 「なほあやしう。かくのたまへど、世づかぬ御もてなしなれば、もの恐ろしくこそあれ」<BR>⏎
 といと若びて言へば、「げに」と、ほほ笑まれたまひて、<BR>⏎
 「げにいづれか狐なるらむな。ただはかられたまへかし」<BR>⏎
 となつかしげにのたまへば、女もいみじくなびきて、さもありぬべく思ひたり。「世になく、かたはなることなりとも、ひたぶるに従ふ心は、いとあはれげなる人」と見たまふに、なほかの頭中将の常夏疑はしく、語りし心ざま、まづ思ひ出でられたまへど、「忍ぶるやうこそは」と、あながちにも問ひ出でたまはず。<BR>⏎
d1284<P>⏎
cd2:1285-286 「あはれいと寒しや」<BR>⏎
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175 「あはれいと寒しや」<BR>⏎
d1288<P>⏎
cd2:1289-290 など言ひ交はすも聞こゆ。<BR>⏎
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177 など言ひ交はすも聞こゆ。<BR>⏎
d1292<P>⏎
cd4:2293-296 艶だち気色ばまむ人は、消えも入りぬべき住まひのさまなめりかし。されどのどかに、つらきも憂きもかたはらいたきことも、思ひ入れたるさまならで、我がもてなしありさまは、いとあてはかにこめかしくて、またなくらうがはしき隣の用意なさを、いかなる事とも聞き知りたるさまならねば、なかなか、恥ぢかかやかむよりは、罪許されてぞ見えける。<BR>⏎
<P>⏎
 ごほごほと鳴る神よりもおどろおどろしく、踏み轟かす唐臼の音も枕上とおぼゆる。「あな耳かしかまし」と、これにぞ思さるる。何の響きとも聞き入れたまはず、いとあやしうめざましき音なひとのみ聞きたまふ。くだくだしきことのみ多かり。<BR>⏎
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179-180 艶だち気色ばまむ人は、消えも入りぬべき住まひのさまなめりかし。されどのどかに、つらきも憂きもかたはらいたきことも、思ひ入れたるさまならで、我がもてなしありさまは、いとあてはかにこめかしくて、またなくらうがはしき隣の用意なさを、いかなる事とも聞き知りたるさまならねば、なかなか、恥ぢかかやかむよりは、罪許されてぞ見えける。<BR>⏎
 ごほごほと鳴る神よりもおどろおどろしく、踏み轟かす唐臼の音も枕上とおぼゆる。「あな耳かしかまし」と、これにぞ思さるる。何の響きとも聞き入れたまはず、いとあやしうめざましき音なひとのみ聞きたまふ。くだくだしきことのみ多かり。<BR>⏎
d1298<P>⏎
cd4:2299-302 白き袷、薄色のなよよかなるを重ねて、はなやかならぬ姿、いとらうたげにあえかなる心地して、そこと取り立ててすぐれたることもなけれど、細やかにたをたをとして、ものうち言ひたるけはひ、「あな心苦し」と、ただいとらうたく見ゆ。心ばみたる方をすこし添へたらば、と見たまひながら、なほうちとけて見まほしく思さるれば、<BR>⏎
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 「いざただこのわたり近き所に、心安くて明かさむ。かくてのみは、いと苦しかりけり」とのたまへば、<BR>⏎
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182-183 白き袷、薄色のなよよかなるを重ねて、はなやかならぬ姿、いとらうたげにあえかなる心地して、そこと取り立ててすぐれたることもなけれど、細やかにたをたをとして、ものうち言ひたるけはひ、「あな心苦し」と、ただいとらうたく見ゆ。心ばみたる方をすこし添へたらば、と見たまひながら、なほうちとけて見まほしく思さるれば、<BR>⏎
 「いざただこのわたり近き所に、心安くて明かさむ。かくてのみは、いと苦しかりけり」とのたまへば、<BR>⏎
d1304<P>⏎
cd2:1305-306 といとおいらかに言ひてゐたり。この世のみならぬ契りなどまで頼めたまふに、うちとくる心ばへなど、あやしくやう変はりて、世馴れたる人ともおぼえねば、人の思はむ所もえ憚りたまはで、右近を召し出でて、随身を召させたまひて、御車引き入れさせたまふ。このある人びとも、かかる御心ざしのおろかならぬを見知れば、おぼめかしながら、頼みかけきこえたり。<BR>⏎
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185 といとおいらかに言ひてゐたり。この世のみならぬ契りなどまで頼めたまふに、うちとくる心ばへなど、あやしくやう変はりて、世馴れたる人ともおぼえねば、人の思はむ所もえ憚りたまはで、右近を召し出でて、随身を召させたまひて、御車引き入れさせたまふ。このある人びとも、かかる御心ざしのおろかならぬを見知れば、おぼめかしながら、頼みかけきこえたり。<BR>⏎
d1308<P>⏎
cd5:2309-313 「かれ聞きたまへ。この世とのみは思はざりけり」と、あはれがりたまひて、<BR>⏎
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 「優婆塞が行ふ道をしるべにて<BR>⏎
  来む世も深き契り違ふな」<BR>⏎
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187-188 「かれ聞きたまへ。この世とのみは思はざりけり」と、あはれがりたまひて、<BR>⏎
 「優婆塞が行ふ道をしるべにて<BR>  来む世も深き契り違ふな」<BR>⏎
d1315<P>⏎
cd5:2316-320 「前の世の契り知らるる身の憂さに<BR>⏎
  行く末かねて頼みがたさよ」<BR>⏎
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 かやうの筋なども、さるは心もとなかめり。<BR>⏎
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190-191 「前の世の契り知らるる身の憂さに<BR>  行く末かねて頼みがたさよ」<BR>⏎
 かやうの筋なども、さるは心もとなかめり。<BR>⏎
text04321 <A NAME="in43">[第三段 なにがしの院に移る]</A><BR>192 
d1322<P>⏎
d1324<P>⏎
d1326<P>⏎
d1328<P>⏎
cd3:1329-331  いにしへもかくやは人の惑ひけむ<BR>⏎
  我がまだ知らぬしののめの道<BR>⏎
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196  いにしへもかくやは人の惑ひけむ<BR>  我がまだ知らぬしののめの道<BR>⏎
d1333<P>⏎
d1335<P>⏎
cd2:1336-337 「山の端の心も知らで行く月は<BR>⏎
  うはの空にて影や絶えなむ<BR>⏎
199 「山の端の心も知らで行く月は<BR>  うはの空にて影や絶えなむ<BR>⏎
d1339<P>⏎
cd2:1340-341 とてもの恐ろしうすごげに思ひたれば、「かのさし集ひたる住まひの慣らひならむ」と、をかしく思す。<BR>⏎
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201 とてもの恐ろしうすごげに思ひたれば、「かのさし集ひたる住まひの慣らひならむ」と、をかしく思す。<BR>⏎
d1343<P>⏎
d1345<P>⏎
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d1349<P>⏎
d1351<P>⏎
d1353<P>⏎
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cd4:2356-359 顔はなほ隠したまへれど、女のいとつらしと思へれば、「げにかばかりにて隔てあらむも、ことのさまに違ひたり」と思して、<BR>⏎
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 「夕露に紐とく花は玉鉾の<BR>⏎
  たよりに見えし縁にこそありけれ<BR>⏎
209-210 顔はなほ隠したまへれど、女のいとつらしと思へれば、「げにかばかりにて隔てあらむも、ことのさまに違ひたり」と思して、<BR>⏎
 「夕露に紐とく花は玉鉾の<BR>  たよりに見えし縁にこそありけれ<BR>⏎
d1361<P>⏎
d1363<P>⏎
cd5:2364-368 「光ありと見し夕顔のうは露は<BR>⏎
  たそかれ時のそら目なりけり」<BR>⏎
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 とほのかに言ふ。をかしと思しなす。げにうちとけたまへるさま、世になく、所から、まいてゆゆしきまで見えたまふ。<BR>⏎
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213-214 「光ありと見し夕顔のうは露は<BR>  たそかれ時のそら目なりけり」<BR>⏎
 とほのかに言ふ。をかしと思しなす。げにうちとけたまへるさま、世になく、所から、まいてゆゆしきまで見えたまふ。<BR>⏎
d1370<P>⏎
d1372<P>⏎
cd2:1373-374 「よしこれも<A HREF="#no12">我からなめり</A><A NAME="te12">」</A>と、怨みかつは語らひ、暮らしたまふ。<BR>⏎
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217 「よしこれも<A HREF="#no12">我からなめり</A><A NAME="te12">」</A>と、怨みかつは語らひ、暮らしたまふ。<BR>⏎
d1376<P>⏎
d1378<P>⏎
cd2:1379-380 「内裏に、いかに求めさせたまふらむを、いづこに尋ぬらむ」と、思しやりて、かつは「あやしの心や。六条わたりにも、いかに思ひ乱れたまふらむ。恨みられむに、苦しう、ことわりなり」と、いとほしき筋は、まづ思ひきこえたまふ。何心もなきさしむかひを、あはれと思すままに、「あまり心深く、見る人も苦しき御ありさまを、すこし取り捨てばや」と、思ひ比べられたまひける。<BR>⏎
<P>⏎
220 「内裏に、いかに求めさせたまふらむを、いづこに尋ぬらむ」と、思しやりて、かつは「あやしの心や。六条わたりにも、いかに思ひ乱れたまふらむ。恨みられむに、苦しう、ことわりなり」と、いとほしき筋は、まづ思ひきこえたまふ。何心もなきさしむかひを、あはれと思すままに、「あまり心深く、見る人も苦しき御ありさまを、すこし取り捨てばや」と、思ひ比べられたまひける。<BR>⏎
text04381 <A NAME="in44">[第四段 夜半、もののけ現われる]</A><BR>221 
d1382<P>⏎
d1384<P>⏎
cd4:2385-388 「己がいとめでたしと見たてまつるをば、尋ね思ほさで、かくことなることなき人を率ておはして、時めかしたまふこそ、いとめざましくつらけれ」<BR>⏎
<P>⏎
 とてこの御かたはらの人をかき起こさむとす、と見たまふ。<BR>⏎
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223-224 「己がいとめでたしと見たてまつるをば、尋ね思ほさで、かくことなることなき人を率ておはして、時めかしたまふこそ、いとめざましくつらけれ」<BR>⏎
 とてこの御かたはらの人をかき起こさむとす、と見たまふ。<BR>⏎
d1390<P>⏎
d1392<P>⏎
d1394<P>⏎
cd2:1395-396 「あな若々し」と、うち笑ひたまひて、手をたたきたまへば、山彦の答ふる声、いとうとまし。<A HREF="#k24">人え聞き</A><A NAME="t24">つ</A>けで参らぬに、この女君、いみじくわななきまどひて、いかさまにせむと思へり。汗もしとどになりて、我かの気色なり。<BR>⏎
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228 「あな若々し」と、うち笑ひたまひて、手をたたきたまへば、山彦の答ふる声、いとうとまし。<A HREF="#k24">人え聞き</A><A NAME="t24">つ</A>けで参らぬに、この女君、いみじくわななきまどひて、いかさまにせむと思へり。汗もしとどになりて、我かの気色なり。<BR>⏎
d1398<P>⏎
cd4:2399-402 「我人を起こさむ。手たたけば、山彦の答ふる、いとうるさし。ここにしばし、近く」<BR>⏎
<P>⏎
 とて右近を引き寄せたまひて、西の妻戸に出でて、戸を押し開けたまへれば、渡殿の火も消えにけり。<BR>⏎
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230-231 「我人を起こさむ。手たたけば、山彦の答ふる、いとうるさし。ここにしばし、近く」<BR>⏎
 とて右近を引き寄せたまひて、西の妻戸に出でて、戸を押し開けたまへれば、渡殿の火も消えにけり。<BR>⏎
d1404<P>⏎
d1406<P>⏎
cd2:1407-408 「さぶらひつれど、仰せ言もなし。暁に御迎へに参るべきよし申してなむ、まかではべりぬる」と聞こゆ。このかう申す者は、滝口なりければ、弓弦いとつきづきしくうち鳴らして、「火あやふし」と言ふ言ふ、預りが<A HREF="#k25">曹司</A><A NAME="t25">の</A>方に去ぬなり。内裏を思しやりて、「名対面は過ぎぬらむ、滝口の宿直奏し、今こそ」と、推し量りたまふは、まだいたう更けぬにこそは。<BR>⏎
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234 「さぶらひつれど、仰せ言もなし。暁に御迎へに参るべきよし申してなむ、まかではべりぬる」と聞こゆ。このかう申す者は、滝口なりければ、弓弦いとつきづきしくうち鳴らして、「火あやふし」と言ふ言ふ、預りが<A HREF="#k25">曹司</A><A NAME="t25">の</A>方に去ぬなり。内裏を思しやりて、「名対面は過ぎぬらむ、滝口の宿直奏し、今こそ」と、推し量りたまふは、まだいたう更けぬにこそは。<BR>⏎
d1410<P>⏎
cd2:1411-412 「こはなぞ。あなもの狂ほしの物怖ぢや。荒れたる所は、狐などやうのものの、人を脅やかさむとて、け恐ろしう思はするならむ。まろあれば、さやうのものには脅されじ」とて、引き起こしたまふ。<BR>⏎
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236 「こはなぞ。あなもの狂ほしの物怖ぢや。荒れたる所は、狐などやうのものの、人を脅やかさむとて、け恐ろしう思はするならむ。まろあれば、さやうのものには脅されじ」とて、引き起こしたまふ。<BR>⏎
d1414<P>⏎
d1416<P>⏎
d1418<P>⏎
d1420<P>⏎
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d1424<P>⏎
cd4:2425-428 とて召し寄せて見たまへば、ただこの枕上に、夢に見えつる容貌したる女、面影に見えて、ふと<A HREF="#k26">消え</A><A NAME="t26">失</A>せぬ。<BR>⏎
<P>⏎
 「昔の物語などにこそ、かかることは聞け」と、いとめづらかにむくつけけれど、まづ「この人いかになりぬるぞ」と思ほす心騒ぎに、身の上も知られたまはず、添ひ臥して、「やや」と、おどろかしたまへど、ただ冷えに冷え入りて、息は疾く絶え果てにけり。言はむかたなし。頼もしく、いかにと言ひ触れたまふべき人もなし。法師などをこそは、かかる方の頼もしきものには思すべけれど。さこそ強がりたまへど、若き御心にて、いふかひなくなりぬるを見たまふに、やるかたなくて、つと抱きて、<BR>⏎
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243-244 とて召し寄せて見たまへば、ただこの枕上に、夢に見えつる容貌したる女、面影に見えて、ふと<A HREF="#k26">消え</A><A NAME="t26">失</A>せぬ。<BR>⏎
 「昔の物語などにこそ、かかることは聞け」と、いとめづらかにむくつけけれど、まづ「この人いかになりぬるぞ」と思ほす心騒ぎに、身の上も知られたまはず、添ひ臥して、「やや」と、おどろかしたまへど、ただ冷えに冷え入りて、息は疾く絶え果てにけり。言はむかたなし。頼もしく、いかにと言ひ触れたまふべき人もなし。法師などをこそは、かかる方の頼もしきものには思すべけれど。さこそ強がりたまへど、若き御心にて、いふかひなくなりぬるを見たまふに、やるかたなくて、つと抱きて、<BR>⏎
d1430<P>⏎
d1432<P>⏎
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d1438<P>⏎
d1440<P>⏎
d1442<P>⏎
cd8:4443-450 「ここにいとあやしう、物に襲はれたる人のなやましげなるを、ただ今、惟光朝臣の宿る所にまかりて、急ぎ参るべきよし言へ、と仰せよ。なにがし阿闍梨、そこにものするほどならば、ここに来べきよし、忍びて言へ。かの尼君などの聞かむに、おどろおどろしく言ふな。かかる歩き許さぬ人なり」<BR>⏎
<P>⏎
 など物のたまふやうなれど、胸塞がりて、この人を空しくしなしてむことのいみじく思さるるに添へて、大方のむくむくしさ、たとへむ方なし。<BR>⏎
<P>⏎
 夜中も過ぎにけむかし、風のやや荒々しう吹きたるは。まして松の響き、木深く聞こえて、気色ある鳥のから声に鳴きたるも、<A HREF="#no13">「梟」はこれにや</A><A NAME="te13">と</A>おぼゆ。うち思ひめぐらすに、こなたかなた、けどほく疎ましきに、人声はせず、「などてかくはかなき宿りは取りつるぞ」と、悔しさもやらむ方なし。<BR>⏎
<P>⏎
 右近は、物もおぼえず、君につと添ひたてまつりて、わななき死ぬべし。「またこれもいかならむ」と、心そらにて捉へたまへり。我一人さかしき人にて、思しやる方ぞなきや。<BR>⏎
<P>⏎
252-255 「ここにいとあやしう、物に襲はれたる人のなやましげなるを、ただ今、惟光朝臣の宿る所にまかりて、急ぎ参るべきよし言へ、と仰せよ。なにがし阿闍梨、そこにものするほどならば、ここに来べきよし、忍びて言へ。かの尼君などの聞かむに、おどろおどろしく言ふな。かかる歩き許さぬ人なり」<BR>⏎
 など物のたまふやうなれど、胸塞がりて、この人を空しくしなしてむことのいみじく思さるるに添へて、大方のむくむくしさ、たとへむ方なし。<BR>⏎
 夜中も過ぎにけむかし、風のやや荒々しう吹きたるは。まして松の響き、木深く聞こえて、気色ある鳥のから声に鳴きたるも、<A HREF="#no13">「梟」はこれにや</A><A NAME="te13">と</A>おぼゆ。うち思ひめぐらすに、こなたかなた、けどほく疎ましきに、人声はせず、「などてかくはかなき宿りは取りつるぞ」と、悔しさもやらむ方なし。<BR>⏎
 右近は、物もおぼえず、君につと添ひたてまつりて、わななき死ぬべし。「またこれもいかならむ」と、心そらにて捉へたまへり。我一人さかしき人にて、思しやる方ぞなきや。<BR>⏎
d1452<P>⏎
cd2:1453-454 <A HREF="#k27">からうして</A><A NAME="t27">、</A>鶏の声はるかに聞こゆるに、「命をかけて、何の契りに、かかる目を見るらむ。我が心ながら、かかる筋に、おほけなくあるまじき心の報いに、かく来し方行く先の例となりぬべきことはあるなめり。忍ぶとも、世にあること隠れなくて、内裏に聞こし召さむをはじめて、人の思ひ言はむこと、よからぬ童べの口ずさびになるべきなめり。ありありて、をこがましき名をとるべきかな」と、思しめぐらす。<BR>⏎
<P>⏎
257 <A HREF="#k27">からうして</A><A NAME="t27">、</A>鶏の声はるかに聞こゆるに、「命をかけて、何の契りに、かかる目を見るらむ。我が心ながら、かかる筋に、おほけなくあるまじき心の報いに、かく来し方行く先の例となりぬべきことはあるなめり。忍ぶとも、世にあること隠れなくて、内裏に聞こし召さむをはじめて、人の思ひ言はむこと、よからぬ童べの口ずさびになるべきなめり。ありありて、をこがましき名をとるべきかな」と、思しめぐらす。<BR>⏎
text04455 <A NAME="in45">[第五段 源氏、二条院に帰る]</A><BR>258 
d1456<P>⏎
cd6:3457-462 からうして、惟光朝臣参れり。夜中、暁といはず、御心に従へる者の、今宵しもさぶらはで、召しにさへおこたりつるを、憎しと思すものから、召し入れて、のたまひ出でむことのあへなきに、ふとも物言はれたまはず。右近、大夫のけはひ聞くに、初めよりのこと、うち思ひ出でられて泣くを、君もえ堪へたまはで、我一人さかしがり抱き持たまへりけるに、この人に息をのべたまひてぞ、悲しきことも思されけるとばかり、いといたく、えもとどめず泣きたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
 ややためらひて、「ここにいとあやしきことのあるを、あさましと言ふにもあまりてなむ<A HREF="#k28">ある</A><A NAME="t28">。</A>かかるとみの事には、誦経などをこそはすなれとて、その事どももせさせむ。願なども立てさせむとて、<A HREF="#k29">阿闍梨</A><A NAME="t29">も</A>のせよ、と言ひつるは」とのたまふに、<BR>⏎
<P>⏎
 「昨日、山へまかり上りにけり。まづいとめづらかなることにもはべるかな。かねて例ならず御心地ものせさせたまふことやはべりつらむ」<BR>⏎
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259-261 からうして、惟光朝臣参れり。夜中、暁といはず、御心に従へる者の、今宵しもさぶらはで、召しにさへおこたりつるを、憎しと思すものから、召し入れて、のたまひ出でむことのあへなきに、ふとも物言はれたまはず。右近、大夫のけはひ聞くに、初めよりのこと、うち思ひ出でられて泣くを、君もえ堪へたまはで、我一人さかしがり抱き持たまへりけるに、この人に息をのべたまひてぞ、悲しきことも思されけるとばかり、いといたく、えもとどめず泣きたまふ。<BR>⏎
 ややためらひて、「ここにいとあやしきことのあるを、あさましと言ふにもあまりてなむ<A HREF="#k28">ある</A><A NAME="t28">。</A>かかるとみの事には、誦経などをこそはすなれとて、その事どももせさせむ。願なども立てさせむとて、<A HREF="#k29">阿闍梨</A><A NAME="t29">も</A>のせよ、と言ひつるは」とのたまふに、<BR>⏎
 「昨日、山へまかり上りにけり。まづいとめづらかなることにもはべるかな。かねて例ならず御心地ものせさせたまふことやはべりつらむ」<BR>⏎
d1464<P>⏎
d1466<P>⏎
cd6:4467-472 「この院守などに聞かせむことは、いと便なかるべし。この人一人こそ睦しくもあらめ、おのづから物言ひ漏らしつべき眷属も立ちまじりたらむ。まづこの院を出でおはしましね」と言ふ。<BR>⏎
<P>⏎
 「さてこれより人少ななる所はいかでかあらむ」とのたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
 「げにさぞはべらむ。かの故里は、女房などの、悲しびに堪へず、泣き惑ひはべらむに、隣しげく、とがむる里人多くはべらむに、おのづから聞こえはべらむを、山寺こそ、なほかやうのこと、おのづから行きまじり、物紛るることはべらめ」と、思ひまはして、「昔見たまへし女房の、尼にてはべる東山の辺に、移したてまつらむ。惟光が父の朝臣の乳母にはべりし者の、みづはぐみて住みはべるなり。辺りは、人しげきやうにはべれど、いとかごかにはべり」<BR>⏎
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264-267 「この院守などに聞かせむことは、いと便なかるべし。この人一人こそ睦しくもあらめ、おのづから物言ひ漏らしつべき眷属も立ちまじりたらむ。まづこの院を出でおはしましね」と言ふ。<BR>⏎
 「さてこれより人少ななる所はいかでかあらむ」とのたまふ。<BR>⏎
 「げにさぞはべらむ。かの故里は、女房などの、悲しびに堪へず、泣き惑ひはべらむに、隣しげく、とがむる里人多くはべらむに、おのづから聞こえはべらむを、山寺こそ、なほかやうのこと、おのづから行きまじり、物紛るることはべらめ」と、思ひまはして、<BR>⏎
 
「昔見たまへし女房の、尼にてはべる東山の辺に、移したてまつらむ。惟光が父の朝臣の乳母にはべりし者の、みづはぐみて住みはべるなり。辺りは、人しげきやうにはべれど、いとかごかにはべり」<BR>⏎
d1474<P>⏎
d1476<P>⏎
cd6:3477-482 「はや御馬にて、二条院へおはしまさむ。人騒がしくなりはべらぬほどに」<BR>⏎
<P>⏎
 とて右近を添へて乗すれば、徒歩より、君に馬はたてまつりて、くくり引き上げなどして、かつはいとあやしく、おぼえぬ送りなれど、御気色のいみじきを見たてまつれば、身を捨てて行くに、君は物もおぼえたまはず、我かのさまにて、おはし着きたり。<BR>⏎
<P>⏎
 人びと、「いづこより、おはしますにか。なやましげに見えさせたまふ」など言へど、御帳の内に入りたまひて、胸をおさへて思ふに、いといみじければ、「などて乗り添ひて行かざりつらむ。生き返りたらむ時、いかなる心地せむ。見捨てて行きあかれにけりと、つらくや思はむ」と、心惑ひのなかにも、思ほすに、御胸せきあぐる心地したまふ。御頭も痛く、身も熱き心地して、いと苦しく、惑はれたまへば、「かくはかなくて、我もいたづらになりぬるなめり」と思す。<BR>⏎
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270-272 「はや御馬にて、二条院へおはしまさむ。人騒がしくなりはべらぬほどに」<BR>⏎
 とて右近を添へて乗すれば、徒歩より、君に馬はたてまつりて、くくり引き上げなどして、かつはいとあやしく、おぼえぬ送りなれど、御気色のいみじきを見たてまつれば、身を捨てて行くに、君は物もおぼえたまはず、我かのさまにて、おはし着きたり。<BR>⏎
 人びと、「いづこより、おはしますにか。なやましげに見えさせたまふ」など言へど、御帳の内に入りたまひて、胸をおさへて思ふに、いといみじければ、「などて乗り添ひて行かざりつらむ。生き返りたらむ時、いかなる心地せむ。見捨てて行きあかれにけりと、つらくや思はむ」と、心惑ひのなかにも、思ほすに、御胸せきあぐる心地したまふ。御頭も痛く、身も熱き心地して、いと苦しく、惑はれたまへば、「かくはかなくて、我もいたづらになりぬるなめり」と思す。<BR>⏎
d1484<P>⏎
c2485-486 「乳母にてはべる者の、この五月のころほひより、重くわづらひはべりしが、頭剃り忌むこと受けなどして、そのしるしにや、よみがへりたりしを、このごろ、またおこりて、弱くなむなりにたる、『今一度、とぶらひ見よ』と申したりしかば、いときなきよりなづさひし者の、今はのきざみに、つらしとや思はむ、と思うたまへてまかれりしに、その家なりける下人の、病しけるが、にはかに出であへで亡くなりにけるを、怖ぢ憚りて、日を暮らしてなむ取り出ではべりけるを、聞きつけはべりしかば、神事なるころ、いと不便なること、と思うたまへかしこまりて、え参らぬなり。この暁より、しはぶき病みにやはべらむ、頭いと痛くて苦しくはべれば、いと無礼にて聞こゆること」<BR>⏎
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274-275 「乳母にてはべる者の、この五月のころほひより、重くわづらひはべりしが、頭剃り忌むこと受けなどして、そのしるしにや、よみがへりたりしを、このごろ、またおこりて、弱くなむなりにたる、『今一度、とぶらひ見よ』と申したりしかば、いときなきよりなづさひし者の、今はのきざみに、つらしとや思はむ、と思うたまへてまかれりしに、<BR>⏎
その家なりける下人の、病しけるが、にはかに出であへで亡くなりにけるを、怖ぢ憚りて、日を暮らしてなむ取り出ではべりけるを、聞きつけはべりしかば、神事なるころ、いと不便なること、と思うたまへかしこまりて、え参らぬなり。この暁より、しはぶき病みにやはべらむ、頭いと痛くて苦しくはべれば、いと無礼にて聞こゆること」<BR>⏎
d1488<P>⏎
cd2:1489-490 「さらばさるよしをこそ奏しはべらめ。昨夜も、御遊びに、かしこく求めたてまつらせたまひて、御気色悪しくはべりき」と聞こえたまひて、立ち返り、「いかなる行き触れにかからせたまふぞや。述べやらせたまふことこそ、まことと思うたまへられね」<BR>⏎
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277 「さらばさるよしをこそ奏しはべらめ。昨夜も、御遊びに、かしこく求めたてまつらせたまひて、御気色悪しくはべりき」と聞こえたまひて、立ち返り、「いかなる行き触れにかからせたまふぞや。述べやらせたまふことこそ、まことと思うたまへられね」<BR>⏎
d1492<P>⏎
cd4:2493-496 「かくこまかにはあらで、ただおぼえぬ穢らひに触れたるよしを、奏したまへ。いとこそたいだいしくはべれ」<BR>⏎
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 とつれなくのたまへど、心のうちには、言ふかひなく悲しきことを思すに、御心地も悩ましければ、人に目も見合せたまはず。蔵人弁を召し寄せて、まめやかにかかるよしを奏せさせたまふ。大殿などにも、かかることありて、え参らぬ御消息など聞こえたまふ。<BR>⏎
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279-280 「かくこまかにはあらで、ただおぼえぬ穢らひに触れたるよしを、奏したまへ。いとこそたいだいしくはべれ」<BR>⏎
 とつれなくのたまへど、心のうちには、言ふかひなく悲しきことを思すに、御心地も悩ましければ、人に目も見合せたまはず。蔵人弁を召し寄せて、まめやかにかかるよしを奏せさせたまふ。大殿などにも、かかることありて、え参らぬ御消息など聞こえたまふ。<BR>⏎
text04497 <A NAME="in46">[第六段 十七日夜、夕顔の葬送]</A><BR>281 
d1498<P>⏎
d1500<P>⏎
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d1506<P>⏎
d1508<P>⏎
cd4:2509-512 「それなむ、またえ生くまじくはべるめる。我も後れじと惑ひはべりて、今朝は谷に落ち入りぬとなむ見たまへつる。『かの故里人に告げやらむ』と申せど、『しばし、思ひしづめよ、と。ことのさま思ひめぐらして』となむ、こしらへおきはべりつる」<BR>⏎
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 と語りきこゆるままに、いといみじと思して、<BR>⏎
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287-288 「それなむ、またえ生くまじくはべるめる。我も後れじと惑ひはべりて、今朝は谷に落ち入りぬとなむ見たまへつる。『かの故里人に告げやらむ』と申せど、『しばし、思ひしづめよ、と。ことのさま思ひめぐらして』となむ、こしらへおきはべりつる」<BR>⏎
 と語りきこゆるままに、いといみじと思して、<BR>⏎
d1514<P>⏎
d1516<P>⏎
d1518<P>⏎
cd2:1519-520 「さらぬ法師ばらなどにも、皆言ひなすさま異にはべる」<BR>⏎
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292 「さらぬ法師ばらなどにも、皆言ひなすさま異にはべる」<BR>⏎
d1522<P>⏎
cd2:1523-524 ほの聞く女房など、「あやしく、何ごとならむ、穢らひのよしのたまひて、内裏にも参りたまはず、またかくささめき嘆きたまふ」と、ほのぼのあやしがる。<BR>⏎
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294 ほの聞く女房など、「あやしく、何ごとならむ、穢らひのよしのたまひて、内裏にも参りたまはず、またかくささめき嘆きたまふ」と、ほのぼのあやしがる。<BR>⏎
d1526<P>⏎
d1528<P>⏎
d1530<P>⏎
d1532<P>⏎
d1534<P>⏎
cd2:1535-536 「さ思されむは、いかがせむ。はやおはしまして、夜更けぬ先に帰らせおはしませ」<BR>⏎
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300 「さ思されむは、いかがせむ。はやおはしまして、夜更けぬ先に帰らせおはしませ」<BR>⏎
d1538<P>⏎
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d1542<P>⏎
cd2:1543-544 辺りさへすごきに、板屋のかたはらに堂建てて行へる尼の住まひ、いとあはれなり。御燈明の影、ほのかに透きて見ゆ。その屋には、女一人泣く声のみして、外の方に、法師ばら二三人物語しつつ、わざとの声立てぬ念仏ぞする。寺々の初夜も、みな行ひ果てて、いとしめやかなり。清水の方ぞ、光多く見え、人のけはひもしげかりける。この尼君の子なる大徳の声尊くて、経うち読みたるに、涙の残りなく思さる。<BR>⏎
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304 辺りさへすごきに、板屋のかたはらに堂建てて行へる尼の住まひ、いとあはれなり。御燈明の影、ほのかに透きて見ゆ。その屋には、女一人泣く声のみして、外の方に、法師ばら二三人物語しつつ、わざとの声立てぬ念仏ぞする。寺々の初夜も、みな行ひ果てて、いとしめやかなり。清水の方ぞ、光多く見え、人のけはひもしげかりける。この尼君の子なる大徳の声尊くて、経うち読みたるに、涙の残りなく思さる。<BR>⏎
d1546<P>⏎
d1548<P>⏎
cd6:3549-554 と声も惜しまず、泣きたまふこと、限りなし。<BR>⏎
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 大徳たちも、誰とは知らぬに、あやしと思ひて、皆涙落としけり。<BR>⏎
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 右近を、「いざ二条へ」とのたまへど、<BR>⏎
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307-309 と声も惜しまず、泣きたまふこと、限りなし。<BR>⏎
 大徳たちも、誰とは知らぬに、あやしと思ひて、皆涙落としけり。<BR>⏎
 右近を、「いざ二条へ」とのたまへど、<BR>⏎
d1556<P>⏎
d1558<P>⏎
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d1562<P>⏎
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cd4:2565-568 道いと露けきに、いとどしき朝霧に、いづこともなく惑ふ心地したまふ。ありしながらうち臥したりつるさま、うち交はしたまへりしが、我が御紅の御衣の着られたりつるなど、いかなりけむ契りにかと道すがら思さる。御馬にも、はかばかしく乗りたまふまじき御さまなれば、また惟光添ひ助けておはしまさするに、堤のほどにて、御馬よりすべり下りて、いみじく御心地惑ひければ、<BR>⏎
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 「かかる道の空にて、はふれぬべきにやあらむ。さらにえ行き着くまじき心地なむする」<BR>⏎
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315-316 道いと露けきに、いとどしき朝霧に、いづこともなく惑ふ心地したまふ。ありしながらうち臥したりつるさま、うち交はしたまへりしが、我が御紅の御衣の着られたりつるなど、いかなりけむ契りにかと道すがら思さる。御馬にも、はかばかしく乗りたまふまじき御さまなれば、また惟光添ひ助けておはしまさするに、堤のほどにて、御馬よりすべり下りて、いみじく御心地惑ひければ、<BR>⏎
 「かかる道の空にて、はふれぬべきにやあらむ。さらにえ行き着くまじき心地なむする」<BR>⏎
d1570<P>⏎
cd2:1571-572 君も、しひて御心を起こして、心のうちに仏を念じたまひて、またとかく助けられたまひてなむ、二条院へ帰りたまひける。<BR>⏎
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318 君も、しひて御心を起こして、心のうちに仏を念じたまひて、またとかく助けられたまひてなむ、二条院へ帰りたまひける。<BR>⏎
d1574<P>⏎
cd2:1575-576 まことに、臥したまひぬるままに、いといたく苦しがりたまひて、二三日になりぬるに、むげに弱るやうにしたまふ。内裏にも、聞こしめし、嘆くこと限りなし。御祈り、方々に隙なくののしる。祭、祓、修法など、言ひ尽くすべくもあらず。世にたぐひなくゆゆしき御ありさまなれば、世に長くおはしますまじきにやと、天の下の人の騷ぎなり。<BR>⏎
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320 まことに、臥したまひぬるままに、いといたく苦しがりたまひて、二三日になりぬるに、むげに弱るやうにしたまふ。内裏にも、聞こしめし、嘆くこと限りなし。御祈り、方々に隙なくののしる。祭、祓、修法など、言ひ尽くすべくもあらず。世にたぐひなくゆゆしき御ありさまなれば、世に長くおはしますまじきにやと、天の下の人の騷ぎなり。<BR>⏎
d1578<P>⏎
d1580<P>⏎
d1582<P>⏎
cd2:1583-584 と忍びやかにのたまひて、弱げに泣きたまへば、言ふかひなきことをばおきて、「いみじく惜し」と思ひきこゆ。<BR>⏎
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324 と忍びやかにのたまひて、弱げに泣きたまへば、言ふかひなきことをばおきて、「いみじく惜し」と思ひきこゆ。<BR>⏎
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text04589 <A NAME="in47">[第七段 忌み明ける]</A><BR>327 
d1590<P>⏎
d1592<P>⏎
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cd2:1595-596 「なほいとなむあやしき。などてその人と知られじとは、隠いたまへりしぞ。まことに海人の子なりとも、さばかりに思ふを知らで、隔てたまひしかばなむ、つらかりし」とのたまへば、<BR>⏎
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330 「なほいとなむあやしき。などてその人と知られじとは、隠いたまへりしぞ。まことに海人の子なりとも、さばかりに思ふを知らで、隔てたまひしかばなむ、つらかりし」とのたまへば、<BR>⏎
d1598<P>⏎
cd8:7599-606 「あいなかりける心比べどもかな。我は、しか隔つる心もなかりき。ただかやうに人に許されぬ振る舞ひをなむ、まだ慣らはぬことなる。内裏に諌めのたまはするをはじめ、つつむこと多かる<A HREF="#k36">身</A><A NAME="t36">に</A>て、はかなく人にたはぶれごとを言ふも、所狭う、取りなしうるさき身のありさまになむあるを、はかなかりし夕べより、あやしう心にかかりて、あながちに見たてまつりしも、かかるべき契りこそはものしたまひけめと思ふも、あはれになむ。またうち<A HREF="#k37">返し</A><A NAME="t37">、</A>つらうおぼゆる。かう長かるまじきにては、などさしも心に染みて、あはれとおぼえたまひけむ。なほ詳しく語れ。今は、何ごとを隠すべきぞ。七日七日に仏描かせても、誰が為とか、心のうちにも思はむ」とのたまへば、<BR>⏎
<P>⏎
 「何か隔てきこえさせはべらむ。自ら、忍び過ぐしたまひしことを、亡き御うしろに、口さがなくやは、と思うたまふばかりになむ。<BR>⏎
<P>⏎
 親たちは、はや亡せたまひにき。三位中将となむ聞こえし。いとらうたきものに思ひきこえたまへりしかど、我が身のほどの心もとなさを思すめりしに、命さへ堪へたまはずなりにしのち、はかなきもののたよりにて、頭中将なむ、まだ少将にものしたまひし時、見初めたてまつらせたまひて、三年ばかりは、志あるさまに通ひたまひしを、去年の秋ごろ、かの右の大殿より、いと恐ろしきことの聞こえ参で来しに、物怖ぢをわりなくしたまひし御心に、せむかたなく思し怖ぢて、西の京に、御乳母住みはべる所になむ、はひ隠れたまへりし。それもいと見苦しきに、住みわびたまひて、山里に移ろひなむと思したりしを、今年よりは塞がりける方にはべりければ、違ふとて、あやしき所にものしたまひしを、見あらはされたてまつりぬることと、思し嘆くめりし。世の人に似ず、ものづつみをしたまひて人に物思ふ気色を見えむを、恥づかしきものにしたまひて、つれなくのみもてなして、御覧ぜられたてまつりたまふめりしか」<BR>⏎
<P>⏎
 と語り出づるに、「さればよ」と、思しあはせて、いよいよあはれまさりぬ。<BR>⏎
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332-338 「あいなかりける心比べどもかな。我は、しか隔つる心もなかりき。ただかやうに人に許されぬ振る舞ひをなむ、まだ慣らはぬことなる。内裏に諌めのたまはするをはじめ、つつむこと多かる<A HREF="#k36">身</A><A NAME="t36">に</A>て、はかなく人にたはぶれごとを言ふも、所狭う、取りなしうるさき身のありさまになむあるを、はかなかりし夕べより、あやしう心にかかりて、あながちに見たてまつりしも、かかるべき契りこそはものしたまひけめと思ふも、あはれになむ。またうち<A HREF="#k37">返し</A><A NAME="t37">、</A>つらうおぼゆる。<BR>⏎
 
かう長かるまじきにては、などさしも心に染みて、あはれとおぼえたまひけむ。なほ詳しく語れ。今は、何ごとを隠すべきぞ。七日七日に仏描かせても、誰が為とか、心のうちにも思はむ」とのたまへば、<BR>⏎
 「何か隔てきこえさせはべらむ。自ら、忍び過ぐしたまひしことを、亡き御うしろに、口さがなくやは、と思うたまふばかりになむ。<BR>⏎
 親たちは、はや亡せたまひにき。三位中将となむ聞こえし。いとらうたきものに思ひきこえたまへりしかど、我が身のほどの心もとなさを思すめりしに、命さへ堪へたまはずなりにしのち、はかなきもののたよりにて、頭中将なむ、まだ少将にものしたまひし時、見初めたてまつらせたまひて、三年ばかりは、志あるさまに通ひたまひしを、<BR>⏎
去年の秋ごろ、かの右の大殿より、いと恐ろしきことの聞こえ参で来しに、物怖ぢをわりなくしたまひし御心に、せむかたなく思し怖ぢて、西の京に、御乳母住みはべる所になむ、はひ隠れたまへりし。それもいと見苦しきに、住みわびたまひて、山里に移ろひなむと思したりしを、今年よりは塞がりける方にはべりければ、違ふとて、あやしき所にものしたまひしを、見あらはされたてまつりぬることと、思し嘆くめりし。<BR>⏎
 
世の人に似ず、ものづつみをしたまひて人に物思ふ気色を見えむを、恥づかしきものにしたまひて、つれなくのみもてなして、御覧ぜられたてまつりたまふめりしか」<BR>⏎
 と語り出づるに、「さればよ」と、思しあはせて、いよいよあはれまさりぬ。<BR>⏎
d1608<P>⏎
d1610<P>⏎
cd4:2611-614 「さていづこにぞ。人にさとは知らせで、我に得させよ。あとはかなく、いみじと思ふ御形見に、いとうれしかるべくなむ」とのたまふ。「かの中将にも伝ふべけれど、言ふかひなきかこと負ひなむ。とざまかうざまにつけて、育まむに咎あるまじきを。そのあらむ乳母などにも、ことざまに言ひなして、ものせよかし」など語らひたまふ。<BR>⏎
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 「さらばいとうれしくなむはべるべき。かの西の京にて生ひ出でたまはむは、心苦しくなむ。はかばかしく扱ふ人なしとて、かしこに」など聞こゆ。<BR>⏎
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341-342 「さていづこにぞ。人にさとは知らせで、我に得させよ。あとはかなく、いみじと思ふ御形見に、いとうれしかるべくなむ」とのたまふ。「かの中将にも伝ふべけれど、言ふかひなきかこと負ひなむ。とざまかうざまにつけて、育まむに咎あるまじきを。そのあらむ乳母などにも、ことざまに言ひなして、ものせよかし」など語らひたまふ。<BR>⏎
 「さらばいとうれしくなむはべるべき。かの西の京にて生ひ出でたまはむは、心苦しくなむ。はかばかしく扱ふ人なしとて、かしこに」など聞こゆ。<BR>⏎
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d1618<P>⏎
c2619-620 「十九にやなりたまひけむ。右近は、亡くなりにける御乳母の捨て置きてはべりければ、三位の君のらうたがりたまひて、かの御あたり去らず、生ほしたてたまひしを思ひたまへ出づれば、いかでか世にはべらむずらむ。<A HREF="#no15">いとしも人にと</A><A NAME="te15">、</A>悔しくなむ。ものはかなげにものしたまひし人の御心を、頼もしき人にて、年ごろならひはべりけること」と聞こゆ。<BR>⏎
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345-346 「十九にやなりたまひけむ。右近は、亡くなりにける御乳母の捨て置きてはべりければ、三位の君のらうたがりたまひて、かの御あたり去らず、生ほしたてたまひしを思ひたまへ出づれば、いかでか世にはべらむずらむ。<BR>⏎
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A HREF="#no15">いとしも人にと</A><A NAME="te15">、</A>悔しくなむ。ものはかなげにものしたまひし人の御心を、頼もしき人にて、年ごろならひはべりけること」と聞こゆ。<BR>⏎
d1622<P>⏎
d1624<P>⏎
d1626<P>⏎
cd5:2627-631 「見し人の煙を雲と眺むれば<BR>⏎
  夕べの空もむつましきかな」<BR>⏎
<P>⏎
 <A HREF="#k38">と</A><A NAME="t38">独</A>りごちたまへど、えさし答へも聞こえず。かやうにておはせましかば、と思ふにも、胸塞がりておぼゆ。耳かしかましかりし砧の音を、思し出づるさへ恋しくて、「<A HREF="#no16">正に長き夜</A><A NAME="te16">」</A>とうち誦じて、臥したまへり。<BR>⏎
<P>⏎
350-351 「見し人の煙を雲と眺むれば<BR>  夕べの空もむつましきかな」<BR>⏎
 <A HREF="#k38">と</A><A NAME="t38">独</A>りごちたまへど、えさし答へも聞こえず。かやうにておはせましかば、と思ふにも、胸塞がりておぼゆ。耳かしかましかりし砧の音を、思し出づるさへ恋しくて、「<A HREF="#no16">正に長き夜</A><A NAME="te16">」</A>とうち誦じて、臥したまへり。<BR>⏎
text04632 <H4>第五章 空蝉の物語(2)</H4>352 
text04633 <A NAME="in51">[第一段 紀伊守邸の女たちと和歌の贈答]</A><BR>353 
d1634<P>⏎
cd6:3635-640 かの伊予の家の小君、参る折あれど、ことにありしやうなる言伝てもしたまはねば、憂しと思し果てにけるを、いとほしと思ふに、かくわづらひたまふを聞きて、さすがにうち嘆きけり。遠く下りなどするを、さすがに心細ければ、思し忘れぬるかと、試みに、<BR>⏎
<P>⏎
 「<A HREF="#k39">承り</A><A NAME="t39">、</A>悩むを、言に出でては、えこそ<BR>⏎
<P>⏎
 問はぬをもなどかと問はでほどふるに<BR>⏎
 いかばかりかは思ひ乱るる<BR>⏎
354-356 かの伊予の家の小君、参る折あれど、ことにありしやうなる言伝てもしたまはねば、憂しと思し果てにけるを、いとほしと思ふに、かくわづらひたまふを聞きて、さすがにうち嘆きけり。遠く下りなどするを、さすがに心細ければ、思し忘れぬるかと、試みに、<BR>⏎
 「<A HREF="#k39">承り</A><A NAME="t39">、</A>悩むを、言に出でては、えこそ<BR>⏎
  問はぬをもなどかと問はでほどふるに<BR>  いかばかりかは思ひ乱るる<BR>⏎
d1642<P>⏎
d1644<P>⏎
d1646<P>⏎
cd2:1647-648 空蝉の世は憂きものと知りにしを<BR>⏎
 <A HREF="#k40">また</A><A NAME="t40">言</A>の葉にかかる命よ<BR>⏎
360  空蝉の世は憂きものと知りにしを<BR>  <A HREF="#k40">また</A><A NAME="t40">言</A>の葉にかかる命よ<BR>⏎
d1650<P>⏎
cd2:1651-652 と御手もうちわななかるるに、乱れ書きたまへる、いとどうつくしげなり。なほかのもぬけを忘れたまはぬを、いとほしうもをかしうも思ひけり。<BR>⏎
<P>⏎
362 と御手もうちわななかるるに、乱れ書きたまへる、いとどうつくしげなり。なほかのもぬけを忘れたまはぬを、いとほしうもをかしうも思ひけり。<BR>⏎
d1654<P>⏎
cd5:2655-659 かの片つ方は、蔵人少将をなむ通はす、と聞きたまふ。「あやしや。いかに思ふらむ」と、少将の心のうちもいとほしく、またかの人の気色もゆかしければ、小君して、「死に返り思ふ心は、知りたまへりや」と言ひ遣はす。<BR>⏎
<P>⏎
 「ほのかにも軒端の荻を結ばずは<BR>⏎
  露のかことを何にかけまし」<BR>⏎
<P>⏎
364-365 かの片つ方は、蔵人少将をなむ通はす、と聞きたまふ。「あやしや。いかに思ふらむ」と、少将の心のうちもいとほしく、またかの人の気色もゆかしければ、小君して、「死に返り思ふ心は、知りたまへりや」と言ひ遣はす。<BR>⏎
 「ほのかにも軒端の荻を結ばずは<BR>  露のかことを何にかけまし」<BR>⏎
d1661<P>⏎
d1663<P>⏎
cd5:2664-668 「ほのめかす風につけても下荻の<BR>⏎
  半ばは霜にむすぼほれつつ」<BR>⏎
<P>⏎
 手は悪しげなるを、紛らはしさればみて書いたるさま、品なし。火影に見し顔、思し出でらる。「うちとけで向ひゐたる人は、え疎み果つまじきさまもしたりしかな。何の心ばせありげもなく、さうどき誇りたりしよ」と思し出づるに、憎からず。なほ<A HREF="#no18">「こりずまに、またもあだ名立ちぬべき」</A><A NAME="te18">御心の</A>すさびなめり。<BP>⏎
<P>⏎
368-369 「ほのめかす風につけても下荻の<BR>  半ばは霜にむすぼほれつつ」<BR>⏎
 手は悪しげなるを、紛らはしさればみて書いたるさま、品なし。火影に見し顔、思し出でらる。「うちとけで向ひゐたる人は、え疎み果つまじきさまもしたりしかな。何の心ばせありげもなく、さうどき誇りたりしよ」と思し出づるに、憎からず。なほ<A HREF="#no18">「こりずまに、またもあだ名立ちぬべき」</A><A NAME="te18">御心の</A>すさびなめり。<BR>⏎
text04669 <H4>第六章 夕顔の物語(3)</H4>370 
text04670 <A NAME="in61">[第一段 四十九日忌の法要]</A><BR>371 
d1671<P>⏎
d1673<P>⏎
d1675<P>⏎
d1677<P>⏎
d1679<P>⏎
d1681<P>⏎
d1683<P>⏎
cd3:1684-686 「泣く泣くも今日は我が結ふ下紐を<BR>⏎
  いづれの世にかとけて見るべき」<BR>⏎
<P>⏎
378 「泣く泣くも今日は我が結ふ下紐を<BR>  いづれの世にかとけて見るべき」<BR>⏎
d1688<P>⏎
cd2:1689-690 <A HREF="#k44">かの</A><A NAME="t44">夕</A>顔の宿りには、いづ方にと思ひ惑へど、そのままにえ尋ねきこえず。右近だに訪れねば、あやしと思ひ嘆きあへり。確かならねど、けはひをさばかりにやと、ささめきしかば、惟光をかこちけれど、いとかけ離れ、気色なく言ひなして、なほ同じごと好き歩きければ、いとど夢の心地して、「もし受領の子どもの好き好きしきが、頭の君に怖ぢきこえて、やがて率て下りにけるにや」とぞ、思ひ寄りける。<BR>⏎
<P>⏎
380 <A HREF="#k44">かの</A><A NAME="t44">夕</A>顔の宿りには、いづ方にと思ひ惑へど、そのままにえ尋ねきこえず。右近だに訪れねば、あやしと思ひ嘆きあへり。確かならねど、けはひをさばかりにやと、ささめきしかば、惟光をかこちけれど、いとかけ離れ、気色なく言ひなして、なほ同じごと好き歩きければ、いとど夢の心地して、「もし受領の子どもの好き好きしきが、頭の君に怖ぢきこえて、やがて率て下りにけるにや」とぞ、思ひ寄りける。<BR>⏎
d1692<P>⏎
d1694<P>⏎
text04695 <H4>第七章 空蝉の物語(3)</H4>383 
text04696 <A NAME="in71">[第一段 空蝉、伊予国に下る]</A><BR>384 
d1697<P>⏎
cd5:2698-702 伊予介、神無月の朔日ごろに下る。女房の下らむにとて、たむけ心ことにせさせたまふ。また内々にもわざとしたまひて、こまやかにをかしきさまなる櫛、扇多くして、幣などわざとがましくて、かの小袿も遣はす。<BR>⏎
<P>⏎
 「逢ふまでの形見ばかりと見しほどに<BR>⏎
  ひたすら袖の朽ちにけるかな」<BR>⏎
<P>⏎
385-386 伊予介、神無月の朔日ごろに下る。女房の下らむにとて、たむけ心ことにせさせたまふ。また内々にもわざとしたまひて、こまやかにをかしきさまなる櫛、扇多くして、幣などわざとがましくて、かの小袿も遣はす。<BR>⏎
 「逢ふまでの形見ばかりと見しほどに<BR>  ひたすら袖の朽ちにけるかな」<BR>⏎
d1704<P>⏎
d1706<P>⏎
cd11:4707-717 「蝉の羽もたちかへてける夏衣<BR>⏎
  かへすを見てもねは泣かれけり」<BR>⏎
<P>⏎
 「思へど、あやしう人に似ぬ心強さにても、ふり離れぬるかな」と思ひ続けたまふ。今日ぞ冬立つ日なりけるも、しるくうちしぐれて、空の気色いとあはれなり。眺め暮らしたまひて、<BR>⏎
<P>⏎
 「過ぎにしも今日別るるも二道に<BR>⏎
  行く方知らぬ秋の暮かな」<BR>⏎
<P>⏎
 なほかく人知れぬことは苦しかりけりと、思し知りぬらむかし。かやうのくだくだしきことは、あながちに隠ろへ忍びたまひしもいとほしくて、みな漏らしとどめたるを、「など帝の御子ならむからに、見む人さへ、かたほならずものほめがちなる」と、作りごとめきてとりなす人ものしたまひければなむ。<A HREF="#k47">あまり</A><A NAME="t47">もの</A>言ひさがなき罪、さりどころなく。<BR>⏎

<P>⏎
389-392 「蝉の羽もたちかへてける夏衣<BR>  かへすを見てもねは泣かれけり」<BR>⏎
 「思へど、あやしう人に似ぬ心強さにても、ふり離れぬるかな」と思ひ続けたまふ。今日ぞ冬立つ日なりけるも、しるくうちしぐれて、空の気色いとあはれなり。眺め暮らしたまひて、<BR>⏎
 「過ぎにしも今日別るるも二道に<BR>  行く方知らぬ秋の暮かな」<BR>⏎
 なほかく人知れぬことは苦しかりけりと、思し知りぬらむかし。かやうのくだくだしきことは、あながちに隠ろへ忍びたまひしもいとほしくて、みな漏らしとどめたるを、「など帝の御子ならむからに、見む人さへ、かたほならずものほめがちなる」と、作りごとめきてとりなす人ものしたまひければなむ。<A HREF="#k47">あまり</A><A NAME="t47">もの</A>言ひさがなき罪、さりどころなく。<BR>⏎
text04718 <a name="in81">【出典】<BR>393 
c1719</a><A NAME="no1">出典1</A> 世の中はいづれかさして我がならむ行きとまるをぞ宿と定むる(古今集雑下-九八七 読人しらず)<A HREF="#te1">(戻)</A><BR>⏎
394<A NAME="no1">出典1</A> 世の中はいづれかさして我がならむ行きとまるをぞ宿と定むる(古今集雑下-九八七 読人しらず)<A HREF="#te1">(戻)</A><BR>⏎
cd2:1723-724<A NAME="no5">出典5</A> 老いぬれば去らぬ別れもなくもがないよいよ見まくほしき君かな(古今集雑上-九〇〇 在原業平の母)<BR>⏎
 世の中にさらぬ別れのなくもがな千代もと嘆く人の子のため(古今集雑下-九〇一 在原業平)<A HREF="#te5">(戻)</A><BR>⏎
398<A NAME="no5">出典5</A> 老いぬれば去らぬ別れもなくもがないよいよ見まくほしき君かな(古今集雑上-九〇〇 在原業平の母)<BR>世の中にさらぬ別れのなくもがな千代もと嘆く人の子のため(古今集雑下-九〇一 在原業平)<A HREF="#te5">(戻)</A><BR>⏎
d1738
text04739<p> <a name="in82">【校訂】<BR>412 
c1741</a><A NAME="k01">校訂1</A> らうがはしき--らうる(る/$か<朱>)はしき<A HREF="#t01">(戻)</A><BR>⏎
414<A NAME="k01">校訂1</A> らうがはしき--らうる(る/$か<朱>)はしき<A HREF="#t01">(戻)</A><BR>⏎
d1788</p>⏎
d1795</p>⏎
i1470
diffsrc/original/text05.htmlsrc/modified/text05.html
cd2:18-9<body background="wallppr063.gif">⏎
First updated 9/20/1996(ver.1-1)<BR>⏎
8<BODY>⏎
cd3:210-12Last updated 9/11/2010(ver.2-2)<BR>⏎
渋谷栄一校訂(C)<BR>⏎
<P
>⏎
9-10<ADDRESS>Last updated 9/11/2010(ver.2-2)<BR>⏎
渋谷栄一校訂(C)</ADDRESS>⏎
d114<P>⏎
i014
d144<P>⏎
d167<P>⏎
d170<P>⏎
text0571 <H4>第一章 紫上の物語 若紫の君登場、三月晦日から初夏四月までの物語</H4>65 
text0572 <A NAME="in11">[第一段 三月晦日、加持祈祷のため、北山に出向く]</A><BR>66 
d173<P>⏎
ci2:374-75 瘧病に<A HREF="#k01">わづらひ</A><A NAME="t01">た</A>まひて、よろづにまじなひ加持など参らせたまへど、しるしなくて、あまたたびおこりたまひければ、ある人、「北山になむ、なにがし寺といふ所に、かしこき行ひ人はべる。去年の夏も世におこりて、人びとまじなひわづらひしを、やがてとどむるたぐひ、あまたはべりき。<A HREF="#k02">ししこらかし</A><A NAME="t02">つ</A>る時はうたてはべるを、とくこそ試みさせたまはめ」など<A HREF="#k03">聞こゆれば</A><A NAME="t03">、</A>召しに遣はしたるに、「老いかがまりて、室の外にもまかでず」と申したれば、「いかがはせむ。いと忍びてものせむ」とのたまひて、御供にむつましき四五人ばかりして、まだ暁におはす。<BR>⏎
<P>⏎
67-69 瘧病に<A HREF="#k01">わづらひ</A><A NAME="t01">た</A>まひて、よろづにまじなひ加持など参らせたまへど、しるしなくて、あまたたびおこりたまひければ、ある人、<BR>⏎
 
「北山になむ、なにがし寺といふ所に、かしこき行ひ人はべる。去年の夏も世におこりて、人びとまじなひわづらひしを、やがてとどむるたぐひ、あまたはべりき。<A HREF="#k02">ししこらかし</A><A NAME="t02">つ</A>る時はうたてはべるを、とくこそ試みさせたまはめ」<BR>⏎
 
など<A HREF="#k03">聞こゆれば</A><A NAME="t03">、</A>召しに遣はしたるに、「老いかがまりて、室の外にもまかでず」と申したれば、「いかがはせむ。いと忍びてものせむ」とのたまひて、御供にむつましき四五人ばかりして、まだ暁におはす。<BR>⏎
d177<P>⏎
d179<P>⏎
cd4:280-83 「あなかしこや。一日、召しはべりしにやおはしますらむ。今は、この世のことを思ひたまへねば、験方の行ひも捨て忘れてはべるを、いかでかうおはしましつらむ」<BR>⏎
<P>⏎
 とおどろき騒ぎ、うち笑みつつ見たてまつる。いと尊き大徳なりけり。さるべきもの作りて、すかせたてまつり、加持など参るほど、日高くさし上がりぬ。<BR>⏎
<P>⏎
72-73 「あなかしこや。一日、召しはべりしにやおはしますらむ。今は、この世のことを思ひたまへねば、験方の行ひも捨て忘れてはべるを、いかでかうおはしましつらむ」<BR>⏎
 とおどろき騒ぎ、うち笑みつつ見たてまつる。いと尊き大徳なりけり。さるべきもの作りて、すかせたてまつり、加持など参るほど、日高くさし上がりぬ。<BR>⏎
text0584 <A NAME="in12">[第二段 山の景色や地方の話に気を紛らす]</A><BR>74 
d185<P>⏎
d187<P>⏎
d189<P>⏎
d191<P>⏎
cd2:192-93 「これなむなにがし僧都の、二年籠もりはべる方にはべるなる」<BR>⏎
<P>⏎
78 「これなむなにがし僧都の、二年籠もりはべる方にはべるなる」<BR>⏎
d195<P>⏎
d197<P>⏎
cd2:199-100 「僧都は、よもさやうには、据ゑたまはじを」<BR>⏎
<P>⏎
82 「僧都は、よもさやうには、据ゑたまはじを」<BR>⏎
d1102<P>⏎
d1104<P>⏎
d1106<P>⏎
d1108<P>⏎
d1110<P>⏎
d1112<P>⏎
d1114<P>⏎
cd8:5115-122 「これはいと浅くはべり。人の国などにはべる海、山のありさまなどを御覧ぜ<A HREF="#k05">させて</A><A NAME="t05">は</A>べらば、いかに御絵いみじうまさらせたまはむ。富士の山、なにがしの嶽」<BR>⏎
<P>⏎
 など語りきこゆるもあり。また西国のおもしろき浦々、磯の上を言ひ続くるもありて、よろづに<A HREF="#k06">紛らはし</A><A NAME="t06">き</A>こゆ。<BR>⏎
<P>⏎
 「近き所には、播磨の明石の浦こそ、なほことにはべれ。何の至り深き隈はなけれど、ただ海の面を見わたしたるほどなむ、あやしく異所に似ず、<A HREF="#k07">ゆほびかなる</A><A NAME="t07">所</A>にはべる。<BR>⏎
<P>⏎
 かの国の前の守、新発意の、女かしづきたる家、いといたしかし。大臣の後にて、出で立ちもすべかりける人の、世のひがものにて、交じらひもせず、近衛の中将を捨てて、申し賜はれりける<A HREF="#k08">司</A><A NAME="t08">な</A>れど、かの国の人にもすこしあなづられて、『何の面目にてか、また都にも帰らむ』と言ひて、頭も下ろしはべりにけるを、すこし奥まりたる山住みもせで、さる海づらに出でゐたる、ひがひがしきやうなれど、げにかの国のうちに、さも人の籠もりゐぬべき所々はありながら、深き里は、人離れ心すごく、若き妻子の思ひわびぬべきにより、かつは心をやれる住まひになむはべる。<BR>⏎
<P>⏎
90-94 「これはいと浅くはべり。人の国などにはべる海、山のありさまなどを御覧ぜ<A HREF="#k05">させて</A><A NAME="t05">は</A>べらば、いかに御絵いみじうまさらせたまはむ。富士の山、なにがしの嶽」<BR>⏎
 など語りきこゆるもあり。また西国のおもしろき浦々、磯の上を言ひ続くるもありて、よろづに<A HREF="#k06">紛らはし</A><A NAME="t06">き</A>こゆ。<BR>⏎
 「近き所には、播磨の明石の浦こそ、なほことにはべれ。何の至り深き隈はなけれど、ただ海の面を見わたしたるほどなむ、あやしく異所に似ず、<A HREF="#k07">ゆほびかなる</A><A NAME="t07">所</A>にはべる。<BR>⏎
 かの国の前の守、新発意の、女かしづきたる家、いといたしかし。大臣の後にて、出で立ちもすべかりける人の、世のひがものにて、交じらひもせず、近衛の中将を捨てて、申し賜はれりける<A HREF="#k08">司</A><A NAME="t08">な</A>れど、<BR>⏎
 
かの国の人にもすこしあなづられて、『何の面目にてか、また都にも帰らむ』と言ひて、頭も下ろしはべりにけるを、すこし奥まりたる山住みもせで、さる海づらに出でゐたる、ひがひがしきやうなれど、げにかの国のうちに、さも人の籠もりゐぬべき所々はありながら、深き里は、人離れ心すごく、若き妻子の思ひわびぬべきにより、かつは心をやれる住まひになむはべる。<BR>⏎
d1124<P>⏎
cd4:3125-128 「さてその女は」と、問ひたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
 「けしうはあらず、容貌、心ばせなどはべるなり。代々の国の司など、用意ことにして、さる心ばへ見すなれど、さらにうけひかず。『我が身のかくいたづらに沈めるだにあるを、この人ひとりにこそあれ、思ふさまことなり。もし我に後れてその志とげず、この思ひおきつる宿世違はば、海に入りね』と、常に<A HREF="#k10">遺言</A><A NAME="t10">し</A>おきてはべるなる」<BR>⏎
<P>⏎
96-98 「さてその女は」と、問ひたまふ。<BR>⏎
 「けしうはあらず、容貌、心ばせなどはべるなり。代々の国の司など、用意ことにして、さる心ばへ見すなれど、さらにうけひかず。<BR>⏎
 
『我が身のかくいたづらに沈めるだにあるを、この人ひとりにこそあれ、思ふさまことなり。もし我に後れてその志とげず、この思ひおきつる宿世違はば、海に入りね』と、常に<A HREF="#k10">遺言</A><A NAME="t10">し</A>おきてはべるなる」<BR>⏎
d1130<P>⏎
d1133<P>⏎
d1135<P>⏎
cd2:1137-138 「さてたたずみ寄るならむ」<BR>⏎
<P>⏎
104 「さてたたずみ寄るならむ」<BR>⏎
d1140<P>⏎
cd2:1141-142 「いでさ言ふとも、田舎びたらむ。幼くよりさる所に生ひ出でて、古めいたる親にのみ従ひたらむは」<BR>⏎
<P>⏎
106 「いでさ言ふとも、田舎びたらむ。幼くよりさる所に生ひ出でて、古めいたる親にのみ従ひたらむは」<BR>⏎
d1144<P>⏎
d1146<P>⏎
d1148<P>⏎
cd2:1149-150 「何心ありて、海の底まで深う思ひ入るらむ。<A HREF="#no1">底の「みるめ」も、</A><a href="#k11">もの</a><a name="t11">む</a><A HREF="#no1">つかしう</A>」<BR>⏎
<P>⏎
110 「何心ありて、海の底まで深う思ひ入るらむ。<A HREF="#no1">底の「みるめ」も、</A><A HREF="#k11">もの</A><A NAME="t11">む</A>つかしう」<BR>⏎
d1152<P>⏎
d1154<P>⏎
d1156<P>⏎
d1158<P>⏎
d1160<P>⏎
d1162<P>⏎
text05163 <A NAME="in13">[第三段 源氏、若紫の君を発見す]</A><BR>117 
d1164<P>⏎
d1166<P>⏎
d1168<P>⏎
d1170<P>⏎
cd2:1171-172 とて尼君の見上げたるに、すこしおぼえたるところあれば、「子なめり」と見たまふ。<BR>⏎
<P>⏎
121 とて尼君の見上げたるに、すこしおぼえたるところあれば、「子なめり」と見たまふ。<BR>⏎
d1174<P>⏎
cd2:1175-176 とていと口惜しと思へり。このゐたる大人、<BR>⏎
<P>⏎
123 とていと口惜しと思へり。このゐたる大人、<BR>⏎
d1178<P>⏎
cd2:1179-180 とて立ちて行く。<A HREF="#k17">髪ゆるるかに</A><A NAME="t17">い</A>と長く、めやすき人なめり。少納言の乳母とこそ人言ふめるは、この子の後見なるべし。<BR>⏎
<P>⏎
125 とて立ちて行く。<A HREF="#k17">髪ゆるるかに</A><A NAME="t17">い</A>と長く、めやすき人なめり。少納言の乳母とこそ人言ふめるは、この子の後見なるべし。<BR>⏎
cd4:2182-185 「いであな幼や。言ふかひなうものしたまふかな。おのがかく今日明日におぼゆる命をば、何とも思したらで、雀慕ひたまふほどよ。罪得ることぞと、常に聞こゆるを、心憂く」とて、「こちや」と言へば、ついゐたり。<BR>⏎
<P>⏎
 つらつきいとらうたげにて、眉のわたりうちけぶり、いはけなくかいやりたる額つき、髪ざし、いみじううつくし。「ねびゆかむさまゆかしき人かな」と、目とまりたまふ。さるは「限りなう心を尽くしきこゆる人に、いとよう似たてまつれるが、<A HREF="#k18">まもらるる</A><A NAME="t18">な</A>りけり」と、思ふにも涙ぞ落つる。<BR>⏎
<P>⏎
127-128 「いであな幼や。言ふかひなうものしたまふかな。おのがかく今日明日におぼゆる命をば、何とも思したらで、雀慕ひたまふほどよ。罪得ることぞと、常に聞こゆるを、心憂く」とて、「こちや」と言へば、ついゐたり。<BR>⏎
 つらつきいとらうたげにて、眉のわたりうちけぶり、いはけなくかいやりたる額つき、髪ざし、いみじううつくし。「ねびゆかむさまゆかしき人かな」と、目とまりたまふ。さるは「限りなう心を尽くしきこゆる人に、いとよう似たてまつれるが、<A HREF="#k18">まもらるる</A><A NAME="t18">な</A>りけり」と、思ふにも涙ぞ落つる。<BR>⏎
d1188<P>⏎
cd5:2189-193 とていみじく泣くを見たまふも、すずろに悲し。幼心地にも、さすがにうちまもりて、伏目になりてうつぶしたるに、こぼれかかりたる髪、つやつやとめでたう見ゆ。<BR>⏎
<P>⏎
 「生ひ立たむありかも知らぬ若草を<BR>⏎
  おくらす露ぞ消えむそらなき」<BR>⏎
<P>⏎
131-132 とていみじく泣くを見たまふも、すずろに悲し。幼心地にも、さすがにうちまもりて、伏目になりてうつぶしたるに、こぼれかかりたる髪、つやつやとめでたう見ゆ。<BR>⏎
 「生ひ立たむありかも知らぬ若草を<BR>  おくらす露ぞ消えむそらなき」<BR>⏎
d1195<P>⏎
cd3:1196-198 「初草の生ひ行く末も知らぬまに<BR>⏎
  いかでか露の消えむとすらむ」<BR>⏎
<P>⏎
134 「初草の生ひ行く末も知らぬまに<BR>  いかでか露の消えむとすらむ」<BR>⏎
d1200<P>⏎
d1202<P>⏎
d1204<P>⏎
cd4:2205-208 「この世に、ののしりたまふ光る源氏、かかるついでに見たてまつりたまはむや。世を捨てたる法師の心地にも、いみじう世の憂へ忘れ、齢延ぶる人の御ありさまなり。いで御消息聞こえむ」<BR>⏎
<P>⏎
 とて立つ音すれば、帰りたまひぬ。<BR>⏎
<P>⏎
138-139 「この世に、ののしりたまふ光る源氏、かかるついでに見たてまつりたまはむや。世を捨てたる法師の心地にも、いみじう世の憂へ忘れ、齢延ぶる人の御ありさまなり。いで御消息聞こえむ」<BR>⏎
 とて立つ音すれば、帰りたまひぬ。<BR>⏎
text05209 <A NAME="in14">[第四段 若紫の君の素性を聞く]</A><BR>140 
d1210<P>⏎
cd2:1211-212 「あはれなる人を見つるかな。かかれば、この好き者どもは、かかる歩きをのみして、よくさるまじき人をも見つくるなりけり。たまさかに立ち出づるだに、かく思ひのほかなることを見るよ」と、をかしう思す。「さてもいとうつくしかりつる児かな。何人ならむ。かの人の御代はりに、明け暮れの慰めにも見ばや」と思ふ心、深うつきぬ。<BR>⏎
<P>⏎
141 「あはれなる人を見つるかな。かかれば、この好き者どもは、かかる歩きをのみして、よくさるまじき人をも見つくるなりけり。たまさかに立ち出づるだに、かく思ひのほかなることを見るよ」と、をかしう思す。「さてもいとうつくしかりつる児かな。何人ならむ。かの人の御代はりに、明け暮れの慰めにも見ばや」と思ふ心、深うつきぬ。<BR>⏎
d1214<P>⏎
d1216<P>⏎
d1218<P>⏎
cd4:2219-222 すなはち、僧都参りたまへり。法師なれど、いと心恥づかしく人柄もやむごとなく、世に思はれたまへる人なれば、軽々しき御ありさまを、はしたなう思す。かく籠もれるほどの御物語など聞こえたまひて、「同じ柴の庵なれど、すこし涼しき水の流れも御覧ぜさせむ」と、せちに聞こえたまへば、かのまだ見ぬ人びとにことことしう言ひ聞かせつるを、つつましう思せど、あはれなりつるありさまもいぶかしくて、おはしぬ。<BR>⏎
<P>⏎
 げにいと心ことによしありて、同じ木草をも植ゑなしたまへり。月もなきころなれば、遣水に篝火ともし、<A HREF="#k20">灯籠</A><A NAME="t20">な</A>ども参りたり。南面いと清げにしつらひたまへり。そらだきもの、いと心にくく薫り出で、名香の香など匂ひみちたるに、君の御追風いとことなれば、内の人びとも心づかひすべかめり。<BR>⏎
<P>⏎
145-146 すなはち、僧都参りたまへり。法師なれど、いと心恥づかしく人柄もやむごとなく、世に思はれたまへる人なれば、軽々しき御ありさまを、はしたなう思す。かく籠もれるほどの御物語など聞こえたまひて、「同じ柴の庵なれど、すこし涼しき水の流れも御覧ぜさせむ」と、せちに聞こえたまへば、かのまだ見ぬ人びとにことことしう言ひ聞かせつるを、つつましう思せど、あはれなりつるありさまもいぶかしくて、おはしぬ。<BR>⏎
 げにいと心ことによしありて、同じ木草をも植ゑなしたまへり。月もなきころなれば、遣水に篝火ともし、<A HREF="#k20">灯籠</A><A NAME="t20">な</A>ども参りたり。南面いと清げにしつらひたまへり。そらだきもの、いと心にくく薫り出で、名香の香など匂ひみちたるに、君の御追風いとことなれば、内の人びとも心づかひすべかめり。<BR>⏎
d1224<P>⏎
d1226<P>⏎
d1228<P>⏎
d1230<P>⏎
d1232<P>⏎
d1234<P>⏎
cd8:4235-242 など申したまふ。「さらばその子なりけり」と思しあはせつ。「親王の御筋にて、かの人にもかよひきこえたるにや」と、いとどあはれに見まほし。「人のほどもあてにをかしう、なかなかの<A HREF="#k24">さかしら</A><A NAME="t24">心</A>なく、うち語らひて、心のままに教へ生ほし立てて見ばや」と思す。<BR>⏎
<P>⏎
 「いとあはれにものしたまふことかな。それはとどめたまふ形見もなきか」<BR>⏎
<P>⏎
 と幼かりつる行方の、なほ確かに知らまほしくて、問ひたまへば、<BR>⏎
<P>⏎
 「亡くなりはべりしほどにこそ、はべりしか。それも女にてぞ。それにつけて物思ひのもよほしになむ、齢の末に思ひたまへ嘆きはべるめる」と聞こえたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
153-156 など申したまふ。「さらばその子なりけり」と思しあはせつ。「親王の御筋にて、かの人にもかよひきこえたるにや」と、いとどあはれに見まほし。「人のほどもあてにをかしう、なかなかの<A HREF="#k24">さかしら</A><A NAME="t24">心</A>なく、うち語らひて、心のままに教へ生ほし立てて見ばや」と思す。<BR>⏎
 「いとあはれにものしたまふことかな。それはとどめたまふ形見もなきか」<BR>⏎
 と幼かりつる行方の、なほ確かに知らまほしくて、問ひたまへば、<BR>⏎
 「亡くなりはべりしほどにこそ、はべりしか。それも女にてぞ。それにつけて物思ひのもよほしになむ、齢の末に思ひたまへ嘆きはべるめる」と聞こえたまふ。<BR>⏎
d1244<P>⏎
d1246<P>⏎
d1248<P>⏎
cd2:1249-250 とすくよかに言ひて、ものごはきさましたまへれば、若き御心に恥づかしくて、えよくも聞こえたまはず。<BR>⏎
<P>⏎
160 とすくよかに言ひて、ものごはきさましたまへれば、若き御心に恥づかしくて、えよくも聞こえたまはず。<BR>⏎
d1252<P>⏎
cd4:3253-256 君は、心地もいと悩ましきに、雨すこしうちそそき、山風ひややかに吹きたるに、滝のよどみもまさりて、音高う聞こゆ。すこしねぶたげなる<A HREF="#k26">読経</A><A NAME="t26">の</A>絶え絶えすごく聞こゆるなど、<A HREF="#k27">すずろ</A><A NAME="t27">な</A>る人も、所からものあはれなり。まして思しめぐらすこと多くて、まどろませたまはず。初夜と言ひしかども、夜もいたう更けにけり。内にも、人の寝ぬけはひしるくて、いと忍びたれど、数珠の脇息に引き鳴らさるる音ほの聞こえ、なつかしううちそよめく音なひ、あてはかなりと聞きたまひて、ほどもなく近ければ、外に立てわたしたる屏風の中を、すこし引き開けて、扇を鳴らしたまへば、<A HREF="#k28">おぼえなき</A><A NAME="t28">心</A>地すべかめれど、聞き知らぬやうにやとて、ゐざり出づる人あなり。すこし退きて、<BR>⏎
<P>⏎
 「あやし<A HREF="#k29">ひが耳</A><A NAME="t29">に</A>や」とたどるを、聞きたまひて、<BR>⏎
<P>⏎
162-164 君は、心地もいと悩ましきに、雨すこしうちそそき、山風ひややかに吹きたるに、滝のよどみもまさりて、音高う聞こゆ。すこしねぶたげなる<A HREF="#k26">読経</A><A NAME="t26">の</A>絶え絶えすごく聞こゆるなど、<A HREF="#k27">すずろ</A><A NAME="t27">な</A>る人も、所からものあはれなり。まして思しめぐらすこと多くて、まどろませたまはず。<BR>⏎
 
初夜と言ひしかども、夜もいたう更けにけり。内にも、人の寝ぬけはひしるくて、いと忍びたれど、数珠の脇息に引き鳴らさるる音ほの聞こえ、なつかしううちそよめく音なひ、あてはかなりと聞きたまひて、ほどもなく近ければ、外に立てわたしたる屏風の中を、すこし引き開けて、扇を鳴らしたまへば、<A HREF="#k28">おぼえなき</A><A NAME="t28">心</A>地すべかめれど、聞き知らぬやうにやとて、ゐざり出づる人あなり。すこし退きて、<BR>⏎
 「あやし<A HREF="#k29">ひが耳</A><A NAME="t29">に</A>や」とたどるを、聞きたまひて、<BR>⏎
d1258<P>⏎
d1260<P>⏎
d1262<P>⏎
cd5:2263-267 「げにうちつけなりとおぼめきたまはむも、道理なれど、<BR>⏎
<P>⏎
  初草の若葉の上を見つるより<BR>⏎
  旅寝の袖も露ぞ乾かぬ<BR>⏎
<P>⏎
168-169 「げにうちつけなりとおぼめきたまはむも、道理なれど、<BR>⏎
  初草の若葉の上を見つるより<BR>  旅寝の袖も露ぞ乾かぬ<BR>⏎
d1269<P>⏎
cd2:1270-271 「さらにかやうの御消息、うけたまはり<A HREF="#k31">わくべき</A><A NAME="t31">人</A>もものしたまはぬさまは、しろしめしたりげなるを。誰れにかは」と聞こゆ。<BR>⏎
<P>⏎
171 「さらにかやうの御消息、うけたまはり<A HREF="#k31">わくべき</A><A NAME="t31">人</A>もものしたまはぬさまは、しろしめしたりげなるを。誰れにかは」と聞こゆ。<BR>⏎
d1273<P>⏎
d1275<P>⏎
cd5:2276-280 「あな今めかし。この君や、世づいたるほどにおはするとぞ、思すらむ。さるにては、かの『若草』を、いかで聞いたまへる<A HREF="#k33">ことぞ」と</A><A NAME="t33">、</A>さまざまあやしきに、心乱れて、久しうなれば、情けなしとて、<BR>⏎
<P>⏎
 「枕結ふ今宵ばかりの露けさを<BR>⏎
  深山の苔に比べざらなむ<BR>⏎
<P>⏎
174-175 「あな今めかし。この君や、世づいたるほどにおはするとぞ、思すらむ。さるにては、かの『若草』を、いかで聞いたまへる<A HREF="#k33">ことぞ」と</A><A NAME="t33">、</A>さまざまあやしきに、心乱れて、久しうなれば、情けなしとて、<BR>⏎
 「枕結ふ今宵ばかりの露けさを<BR>  深山の苔に比べざらなむ<BR>⏎
d1282<P>⏎
d1284<P>⏎
d1286<P>⏎
d1288<P>⏎
cd4:2289-292 「げに若やかなる人こそうたてもあらめ、まめやかにのたまふ、かたじけなし」<BR>⏎
<P>⏎
 とてゐざり寄りたまへり。<BR>⏎
<P>⏎
180-181 「げに若やかなる人こそうたてもあらめ、まめやかにのたまふ、かたじけなし」<BR>⏎
 とてゐざり寄りたまへり。<BR>⏎
d1294<P>⏎
cd4:2295-298 とておとなおとなしう、恥づかしげなるにつつまれて、とみにもえうち出でたまはず。<BR>⏎
<P>⏎
 「げに思ひたまへ寄りがたきついでに、かくまでのたまはせ、聞こえさするも、いかが」とのたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
183-184 とておとなおとなしう、恥づかしげなるにつつまれて、とみにもえうち出でたまはず。<BR>⏎
 「げに思ひたまへ寄りがたきついでに、かくまでのたまはせ、聞こえさするも、いかが」とのたまふ。<BR>⏎
d1300<P>⏎
d1302<P>⏎
cd2:1303-304 「みなおぼつかなからずうけたまはるものを、所狭う思し憚らで、思ひたまへ寄るさまことなる心のほどを、御覧ぜよ」<BR>⏎
<P>⏎
187 「みなおぼつかなからずうけたまはるものを、所狭う思し憚らで、思ひたまへ寄るさまことなる心のほどを、御覧ぜよ」<BR>⏎
d1306<P>⏎
cd2:1307-308 「よしかう聞こえそめはべりぬれば、いと頼もしうなむ」とて、おし立てたまひつ。<BR>⏎
<P>⏎
189 「よしかう聞こえそめはべりぬれば、いと頼もしうなむ」とて、おし立てたまひつ。<BR>⏎
d1310<P>⏎
cd5:2311-315 「吹きまよふ深山おろしに夢さめて<BR>⏎
  涙もよほす滝の音かな」<BR>⏎
<P>⏎
 「さしぐみに袖ぬらしける山水に<BR>⏎
  澄める心は騒ぎやはする<BR>⏎
191-192 「吹きまよふ深山おろしに夢さめて<BR>  涙もよほす滝の音かな」<BR>⏎
 「さしぐみに袖ぬらしける山水に<BR>  澄める心は騒ぎやはする<BR>⏎
d1317<P>⏎
text05318 <A NAME="in15">[第五段 翌日、迎えの人々と共に帰京]</A><BR>194 
d1319<P>⏎
d1321<P>⏎
d1323<P>⏎
d1325<P>⏎
d1327<P>⏎
d1329<P>⏎
d1331<P>⏎
cd3:1332-334  宮人に行きて語らむ山桜<BR>⏎
  風よりさきに来ても見るべく」<BR>⏎
<P>⏎
201  宮人に行きて語らむ山桜<BR>  風よりさきに来ても見るべく」<BR>⏎
d1336<P>⏎
cd3:1337-339 「優曇華の花待ち得たる心地して<BR>⏎
  深山桜に目こそ移らね」<BR>⏎
<P>⏎
203 「優曇華の花待ち得たる心地して<BR>  深山桜に目こそ移らね」<BR>⏎
d1341<P>⏎
d1343<P>⏎
cd5:2344-348 「奥山の松のとぼそをまれに開けて<BR>⏎
  まだ見ぬ花の顔を見るかな」<BR>⏎
<P>⏎
 とうち泣きて見たてまつる。聖、御まもりに、独鈷たてまつる。見たまひて、僧都、聖徳太子の百済より得たまへりける金剛子の数珠の、玉の装束したる、やがてその国より入れたる筥の、唐めいたるを、透きたる袋に入れて、五葉の枝に付けて、紺瑠璃の壺どもに、御薬ども入れて、藤、桜などに付けて、所につけたる御贈物ども、ささげたてまつりたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
206-207 「奥山の松のとぼそをまれに開けて<BR>  まだ見ぬ花の顔を見るかな」<BR>⏎
 とうち泣きて見たてまつる。聖、御まもりに、独鈷たてまつる。見たまひて、僧都、聖徳太子の百済より得たまへりける金剛子の数珠の、玉の装束したる、やがてその国より入れたる筥の、唐めいたるを、透きたる袋に入れて、五葉の枝に付けて、紺瑠璃の壺どもに、御薬ども入れて、藤、桜などに付けて、所につけたる御贈物ども、ささげたてまつりたまふ。<BR>⏎
d1350<P>⏎
d1352<P>⏎
cd2:1353-354 「ともかくも、ただ今は、聞こえむかたなし。もし御志あらば、いま四五年を過ぐしてこそは、ともかくも」とのたまへば、「さなむ」と同じさまにのみあるを、本意なしと思す。<BR>⏎
<P>⏎
210 「ともかくも、ただ今は、聞こえむかたなし。もし御志あらば、いま四五年を過ぐしてこそは、ともかくも」とのたまへば、「さなむ」と同じさまにのみあるを、本意なしと思す。<BR>⏎
d1356<P>⏎
cd3:1357-359 「夕まぐれほのかに花の色を見て<BR>⏎
  今朝は霞の立ちぞわづらふ」<BR>⏎
<P>⏎
212 「夕まぐれほのかに花の色を見て<BR>  今朝は霞の立ちぞわづらふ」<BR>⏎
d1361<P>⏎
cd5:2362-366 「まことにや花のあたりは立ち憂きと<BR>⏎
  霞むる空の気色をも見む」<BR>⏎
<P>⏎
 とよしある手の、いとあてなるを、うち捨て書いたまへり。<BR>⏎
<P>⏎
214-215 「まことにや花のあたりは立ち憂きと<BR>  霞むる空の気色をも見む」<BR>⏎
 とよしある手の、いとあてなるを、うち捨て書いたまへり。<BR>⏎
d1368<P>⏎
d1370<P>⏎
d1372<P>⏎
d1374<P>⏎
cd2:1375-376 「これただ御手一つあそばして、同じうは、山の鳥もおどろかしはべらむ」<BR>⏎
<P>⏎
220 「これただ御手一つあそばして、同じうは、山の鳥もおどろかしはべらむ」<BR>⏎
d1378<P>⏎
d1380<P>⏎
cd4:2381-384 飽かず口惜しと、言ふかひなき法師、童べも、涙を落としあへり。まして内には、年老いたる尼君たちなど、まださらにかかる人の御ありさまを見ざりつれば、「この世のものともおぼえたまはず」と聞こえあへり。僧都も、<BR>⏎
<P>⏎
 「あはれ何の契りにて、かかる御さまながら、いとむつかしき日本の末の世に生まれたまへらむと見るに、いとなむ悲しき」とて、目おしのごひたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
223-224 飽かず口惜しと、言ふかひなき法師、童べも、涙を落としあへり。まして内には、年老いたる尼君たちなど、まださらにかかる人の御ありさまを見ざりつれば、「この世のものともおぼえたまはず」と聞こえあへり。僧都も、<BR>⏎
 「あはれ何の契りにて、かかる御さまながら、いとむつかしき日本の末の世に生まれたまへらむと見るに、いとなむ悲しき」とて、目おしのごひたまふ。<BR>⏎
d1386<P>⏎
d1388<P>⏎
cd2:1389-390 「さらばかの人の御子になりておはしませよ」<BR>⏎
<P>⏎
227 「さらばかの人の御子になりておはしませよ」<BR>⏎
d1392<P>⏎
text05393 <A NAME="in16">[第六段 内裏と左大臣邸に参る]</A><BR>229 
d1394<P>⏎
d1396<P>⏎
d1398<P>⏎
d1400<P>⏎
cd2:1401-402 「御迎へにもと思ひたまへつれど、忍びたる御歩きに、いかがと思ひ憚りてなむ。のどやかに一二日うち休みたまへ」とて、「やがて御送り仕うまつらむ」と申したまへば、さしも思さねど、引かされてまかでたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
233 「御迎へにもと思ひたまへつれど、忍びたる御歩きに、いかがと思ひ憚りてなむ。のどやかに一二日うち休みたまへ」とて、「やがて御送り仕うまつらむ」と申したまへば、さしも思さねど、引かされてまかでたまふ。<BR>⏎
d1404<P>⏎
d1406<P>⏎
d1408<P>⏎
d1410<P>⏎
d1412<P>⏎
d1414<P>⏎
cd8:4415-422 と<A HREF="#k48">後目に</A><A NAME="t48">見</A>おこせたまへるまみ、いと恥づかしげに、気高ううつくしげなる御容貌なり。<BR>⏎
<P>⏎
 「まれまれは、あさましの<A HREF="#k49">御こと</A><A NAME="t49">や</A>。訪はぬ、など言ふ際は、異にこそはべるなれ。心憂くものたまひなすかな。世とともにはしたなき御もてなしを、もし思し直る折もやと、とざまかうさまに<A HREF="#k50">試みきこゆるほど</A><A NAME="t50">、</A>いとど思ほし疎むなめりかし。よしや命だに」<BR>⏎
<P>⏎
 とて夜の御座に入りたまひぬ。女君、ふとも入りたまはず、聞こえわづらひたまひて、うち嘆きて臥したまへるも、なま心づきなきにやあらむ、ねぶたげにもてなして、<A HREF="#k51">とかう</A><A NAME="t51">世</A>を思し乱るること多かり。<BR>⏎
<P>⏎
 この若草の生ひ出でむほどのなほゆかしきを、「似げないほどと思へりしも、道理ぞかし。言ひ寄りがたきことにもあるかな。いかにかまへて、ただ心やすく迎へ取りて、明け暮れの慰めに見む。兵部卿宮は、いとあてになまめいたまへれど、匂ひやかになどもあらぬを、いかでかの一族におぼえたまふらむ。ひとつ后腹なればにや」など思す。ゆかりいとむつましきに、いかでかと、深うおぼゆ。<BR>⏎
<P>⏎
240-243 と<A HREF="#k48">後目に</A><A NAME="t48">見</A>おこせたまへるまみ、いと恥づかしげに、気高ううつくしげなる御容貌なり。<BR>⏎
 「まれまれは、あさましの<A HREF="#k49">御こと</A><A NAME="t49">や</A>。訪はぬ、など言ふ際は、異にこそはべるなれ。心憂くものたまひなすかな。世とともにはしたなき御もてなしを、もし思し直る折もやと、とざまかうさまに<A HREF="#k50">試みきこゆるほど</A><A NAME="t50">、</A>いとど思ほし疎むなめりかし。よしや命だに」<BR>⏎
 とて夜の御座に入りたまひぬ。女君、ふとも入りたまはず、聞こえわづらひたまひて、うち嘆きて臥したまへるも、なま心づきなきにやあらむ、ねぶたげにもてなして、<A HREF="#k51">とかう</A><A NAME="t51">世</A>を思し乱るること多かり。<BR>⏎
 この若草の生ひ出でむほどのなほゆかしきを、「似げないほどと思へりしも、道理ぞかし。言ひ寄りがたきことにもあるかな。いかにかまへて、ただ心やすく迎へ取りて、明け暮れの慰めに見む。兵部卿宮は、いとあてになまめいたまへれど、匂ひやかになどもあらぬを、いかでかの一族におぼえたまふらむ。ひとつ后腹なればにや」など思す。ゆかりいとむつましきに、いかでかと、深うおぼゆ。<BR>⏎
text05423 <A NAME="in17">[第七段 北山へ手紙を贈る]</A><BR>244 
d1424<P>⏎
d1426<P>⏎
d1428<P>⏎
d1430<P>⏎
cd3:1431-433 「面影は身をも<A HREF="#k52">離れず</A><A NAME="t52">山</A>桜<BR>⏎
  心の限りとめて来しかど<BR>⏎
<P>⏎
248 「面影は身をも<A HREF="#k52">離れず</A><A NAME="t52">山</A>桜<BR>  心の限りとめて来しかど<BR>⏎
d1435<P>⏎
d1437<P>⏎
cd7:3438-444 「あなかたはらいたや。いかが聞こえむ」と、思しわづらふ。<BR>⏎
<P>⏎
 「ゆくての御ことは、なほざりにも思ひたまへなされしを、ふりはへさせたまへるに、聞こえさせむかたなくなむ。まだ<A HREF="#no6">「難波津」</A><A NAME="te6">を</A>だに、はかばかしう続けはべらざめれば、かひなくなむ。さても<BR>⏎

<P
>⏎
  嵐吹く尾の上の桜散らぬ間を<BR>⏎
  心とめけるほどのはかなさ<BR>⏎
251-253 「あなかたはらいたや。いかが聞こえむ」と、思しわづらふ。<BR>⏎
 「ゆくての御ことは、なほざりにも思ひたまへなされしを、ふりはへさせたまへるに、聞こえさせむかたなくなむ。まだ<A HREF="#no6">「難波津」</A><A NAME="te6">を</A>だに、はかばかしう続けはべらざめれば、かひなくなむ。さても<BR>⏎
  嵐吹く尾の上の桜散らぬ間を<BR>  心とめけるほどのはかなさ<BR>⏎
cd11:3446-456</A>⏎
<p><A HREF="#k54"> と</A></p>⏎
<P
><A NAME="t54">あ</A>り。僧都の御返りも同じさまなれば、口惜しくて、二三日ありて、惟光をぞたてまつれたまふ。<BR>⏎

<P>⏎
 「少納言の乳母と言ふ人あべし。尋ねて、詳しう語らへ」などのたまひ知らす。「さもかからぬ隈なき御心かな。さばかりいはけなげなりしけはひを」と、まほならねども、見しほどを思ひやるもをかし。<BR>⏎

<P>⏎
 わざとかう御文あるを、僧都もかしこまり聞こえたまふ。少納言に消息して会ひたり。詳しく、思しのたまふさま、おほかたの御ありさまなど語る。言葉多かる人にて、つきづきしう言ひ続くれど、「いとわりなき御ほどを、いかに思すにか」と、ゆゆしうなむ、誰も誰も思しける。<BR>⏎

<P>⏎
255-257 と</A><A NAME="t54">あ</A>り。僧都の御返りも同じさまなれば、口惜しくて、二三日ありて、惟光をぞたてまつれたまふ。<BR>⏎
 「少納言の乳母と言ふ人あべし。尋ねて、詳しう語らへ」などのたまひ知らす。「さもかからぬ隈なき御心かな。さばかりいはけなげなりしけはひを」と、まほならねども、見しほどを思ひやるもをかし。<BR>⏎
 わざとかう御文あるを、僧都もかしこまり聞こえたまふ。少納言に消息して会ひたり。詳しく、思しのたまふさま、おほかたの御ありさまなど語る。言葉多かる人にて、つきづきしう言ひ続くれど、「いとわりなき御ほどを、いかに思すにか」と、ゆゆしうなむ、誰も誰も思しける。<BR>⏎
d2458-459
<P>⏎
cd4:1460-463 「<A HREF="#no7">あさか山浅くも人を思はぬに</A><BR>⏎
  <A NAME="te7">な</A>ど山の井のかけ離るらむ」<BR>⏎

<P>⏎
259 「<A HREF="#no7">あさか山浅くも人を思はぬに</A><BR>  <A NAME="te7">な</A>ど山の井のかけ離るらむ」<BR>⏎
d2465-466
<P>⏎
cd4:1467-470 「<A HREF="#no8">汲み初めてくやし</A><A NAME="te8">と</A>聞きし山の井の<BR>⏎
  浅きながらや影を見るべき」<BR>⏎

<P>⏎
261 「<A HREF="#no8">汲み初めてくやし</A><A NAME="te8">と</A>聞きし山の井の<BR>  浅きながらや影を見るべき」<BR>⏎
d2472-473
<P>⏎
d3475-477
<P>⏎

text05478<H4>第二章 藤壺の物語 夏の密通と妊娠の苦悩物語</H4>264 
text05479 <A NAME="in21">[第一段 夏四月の短夜の密通事件]</A><BR>265 
d1480<P>⏎
d1482<P>⏎
cd10:6483-492 いかがたばかりけむ、いとわりなくて見たてまつるほどさへ、現とはおぼえぬぞ、わびしきや。宮も、あさましかりしを思し出づるだに、世とともの御もの思ひなるを、さてだにやみなむと深う思したるに、いと憂くて、いみじき御気色なるものから、なつかしうらうたげに、さりとてうちとけず、心深う恥づかしげなる御もてなしなどの、なほ人に似させたまはぬを、「などかなのめなることだにうち交じりたまはざりけむ」と、つらうさへぞ思さるる。何ごとをかは聞こえ尽くしたまはむ。<A HREF="#no9">くらぶの山に</A><A NAME="te9">宿</A>りも取らまほしげなれど、あやにくなる短夜にて、あさましう、なかなかなり。<BR>⏎
<P>⏎
 「見てもまた逢ふ夜まれなる夢のうちに<BR>⏎
  やがて紛るる我が身ともがな」<BR>⏎
<P>⏎
 とむせかへりたまふさまも、さすがにいみじければ、<BR>⏎
<P>⏎
 「世語りに人や伝へむたぐひなく<BR>⏎
  憂き身を覚めぬ夢になしても」<BR>⏎
<P>⏎
267-272 いかがたばかりけむ、いとわりなくて見たてまつるほどさへ、現とはおぼえぬぞ、わびしきや。<BR>⏎
 
宮も、あさましかりしを思し出づるだに、世とともの御もの思ひなるを、さてだにやみなむと深う思したるに、いと憂くて、いみじき御気色なるものから、なつかしうらうたげに、さりとてうちとけず、心深う恥づかしげなる御もてなしなどの、なほ人に似させたまはぬを、「などかなのめなることだにうち交じりたまはざりけむ」と、つらうさへぞ思さるる。<BR>⏎
 
何ごとをかは聞こえ尽くしたまはむ。<A HREF="#no9">くらぶの山に</A><A NAME="te9">宿</A>りも取らまほしげなれど、あやにくなる短夜にて、あさましう、なかなかなり。<BR>⏎
 「見てもまた逢ふ夜まれなる夢のうちに<BR>  やがて紛るる我が身ともがな」<BR>⏎
 とむせかへりたまふさまも、さすがにいみじければ、<BR>⏎
 「世語りに人や伝へむたぐひなく<BR>  憂き身を覚めぬ夢になしても」<BR>⏎
d1494<P>⏎
cd2:1495-496 殿におはして、泣き寝に臥し暮らしたまひつ。御文なども、例の、御覧じ入れぬよしのみあれば、常のことながらも、つらういみじう思しほれて、内裏へも参らで、二三日籠もりおはすれば、また「いかなるにか」と、<A HREF="#k56">御心</A><A NAME="t56">動</A>かせたまふべかめるも、恐ろしうのみおぼえたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
274 殿におはして、泣き寝に臥し暮らしたまひつ。御文なども、例の、御覧じ入れぬよしのみあれば、常のことながらも、つらういみじう思しほれて、内裏へも参らで、二三日籠もりおはすれば、また「いかなるにか」と、<A HREF="#k56">御心</A><A NAME="t56">動</A>かせたまふべかめるも、恐ろしうのみおぼえたまふ。<BR>⏎
text05497 <A NAME="in22">[第二段 妊娠三月となる]</A><BR>275 
d1498<P>⏎
d1500<P>⏎
d1503<P>⏎
d1505<P>⏎
d1507<P>⏎
d1509<P>⏎
d1511<P>⏎
d1513<P>⏎
d1515<P>⏎
d1517<P>⏎
text05518 <A NAME="in23">[第三段 初秋七月に藤壺宮中に戻る]</A><BR>286 
d1519<P>⏎
cd2:1520-521 七月になりてぞ参りたまひける。めづらしうあはれにて、いとどしき御思ひのほど限りなし。すこしふくらかになりたまひて、うちなやみ、面痩せたまへる、はたげに似るものなくめでたし。<BR>⏎
<P>⏎
287 七月になりてぞ参りたまひける。めづらしうあはれにて、いとどしき御思ひのほど限りなし。すこしふくらかになりたまひて、うちなやみ、面痩せたまへる、はたげに似るものなくめでたし。<BR>⏎
d1523<P>⏎
text05524 <H4>第三章 紫上の物語(2) 若紫の君、源氏の二条院邸に盗み出される物語</H4>289 
text05525 <A NAME="in31">[第一段 紫の君、六条京極の邸に戻る]</A><BR>290 
d1526<P>⏎
d1528<P>⏎
d1530<P>⏎
d1532<P>⏎
cd2:1533-534 「あはれのことや。とぶらふべかりけるを。などかさなむとものせざりし。入りて消息せよ」<BR>⏎
<P>⏎
294 「あはれのことや。とぶらふべかりけるを。などかさなむとものせざりし。入りて消息せよ」<BR>⏎
d1536<P>⏎
d1538<P>⏎
d1540<P>⏎
d1542<P>⏎
d1544<P>⏎
d1546<P>⏎
d1548<P>⏎
d1550<P>⏎
d1552<P>⏎
cd2:1553-554 「いとかたじけなきわざにもはべるかな。この君だに、かしこまりも聞こえたまつべきほどならましかば」<BR>⏎
<P>⏎
304 「いとかたじけなきわざにもはべるかな。この君だに、かしこまりも聞こえたまつべきほどならましかば」<BR>⏎
d1556<P>⏎
cd4:2557-560 「何か浅う思ひ<A HREF="#k65">たまへむこと</A><A NAME="t65">ゆ</A>ゑ、かう好き好きしきさまを見えたてまつらむ。いかなる契りにか、見たてまつりそめしより、あはれに思ひきこゆるも、あやしきまで、この世のことにはおぼえはべらぬ」などのたまひて、「かひなき心地のみしはべるを、かのいはけなうものしたまふ御一声、いかで」とのたまへば、<BR>⏎
<P>⏎
 「いでやよろづ思し知らぬさまに、大殿籠もり入りて」<BR>⏎
<P>⏎
306-307 「何か浅う思ひ<A HREF="#k65">たまへむこと</A><A NAME="t65">ゆ</A>ゑ、かう好き好きしきさまを見えたてまつらむ。いかなる契りにか、見たてまつりそめしより、あはれに思ひきこゆるも、あやしきまで、この世のことにはおぼえはべらぬ」などのたまひて、「かひなき心地のみしはべるを、かのいはけなうものしたまふ御一声、いかで」とのたまへば、<BR>⏎
 「いでやよろづ思し知らぬさまに、大殿籠もり入りて」<BR>⏎
d1562<P>⏎
d1564<P>⏎
d1566<P>⏎
cd6:3567-572 「いさ『見しかば心地の悪しさなぐさみき』とのたまひしかばぞかし」<BR>⏎
<P>⏎
 とかしこきこと聞こえたりと思してのたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
 いとをかしと聞いたまへど、人びとの苦しと思ひたれば、聞かぬやうにて、まめやかなる御とぶらひを聞こえ置きたまひて、帰りたまひぬ。「げに言ふかひなのけはひや。さりとも、いとよう教へてむ」と思す。<BR>⏎
<P>⏎
311-313 「いさ『見しかば心地の悪しさなぐさみき』とのたまひしかばぞかし」<BR>⏎
 とかしこきこと聞こえたりと思してのたまふ。<BR>⏎
 いとをかしと聞いたまへど、人びとの苦しと思ひたれば、聞かぬやうにて、まめやかなる御とぶらひを聞こえ置きたまひて、帰りたまひぬ。「げに言ふかひなのけはひや。さりとも、いとよう教へてむ」と思す。<BR>⏎
d1574<P>⏎
cd2:1575-576 「いはけなき鶴の一声聞きしより<BR>⏎
  葦間になづむ舟ぞえならぬ<BR>⏎
315 「いはけなき鶴の一声聞きしより<BR>  葦間になづむ舟ぞえならぬ<BR>⏎
d1578<P>⏎
cd2:1579-580 <A NAME="te10">と</A>ことさら幼く書きなしたまへるも、いみじうをかしげなれば、「やがて御手本に」と、人びと聞こゆ。少納言ぞ聞こえたる。<BR>⏎
<P>⏎
317 <A NAME="te10">と</A>ことさら幼く書きなしたまへるも、いみじうをかしげなれば、「やがて御手本に」と、人びと聞こゆ。少納言ぞ聞こえたる。<BR>⏎
d1582<P>⏎
d1584<P>⏎
cd5:2585-589 秋の夕べは、まして心のいとまなく思し乱るる人の御あたりに心をかけて、あながちなるゆかりも尋ねまほしき心もまさりたまふなるべし。「消えむ空なき」とありし夕べ思し出でられて、恋しくも、また見ば劣りやせむと、さすがにあやふし。<BR>⏎
<P>⏎
 「<A HREF="#no11">手に摘みていつしかも見む紫の</A><BR>⏎
  <A NAME="te11">根</A>にかよひける野辺の若草」<BR>⏎
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320-321 秋の夕べは、まして心のいとまなく思し乱るる人の御あたりに心をかけて、あながちなるゆかりも尋ねまほしき心もまさりたまふなるべし。「消えむ空なき」とありし夕べ思し出でられて、恋しくも、また見ば劣りやせむと、さすがにあやふし。<BR>⏎
 「<A HREF="#no11">手に摘みていつしかも見む紫の</A><BR>  <A NAME="te11">根</A>にかよひける野辺の若草」<BR>⏎
text05590 <A NAME="in32">[第二段 尼君死去し寂寥と孤独の日々]</A><BR>322 
d1591<P>⏎
d1593<P>⏎
d1595<P>⏎
d1597<P>⏎
d1599<P>⏎
d1601<P>⏎
d1603<P>⏎
cd4:2604-607 「何かかう繰り返し聞こえ知らする心のほどを、つつみたまふらむ。その言ふかひなき御心のありさまの、あはれにゆかしうおぼえたまふも、契りことになむ、心ながら思ひ知られける。なほ人伝てならで、聞こえ知らせばや。<BR>⏎
<P>⏎
  あしわかの浦にみるめはかたくとも<BR>⏎
  こは立ちながらかへる波かは<BR>⏎
329-330 「何かかう繰り返し聞こえ知らする心のほどを、つつみたまふらむ。その言ふかひなき御心のありさまの、あはれにゆかしうおぼえたまふも、契りことになむ、心ながら思ひ知られける。なほ人伝てならで、聞こえ知らせばや。<BR>⏎
  あしわかの浦にみるめはかたくとも<BR>  こは立ちながらかへる波かは<BR>⏎
d1609<P>⏎
cd4:2610-613 「げにこそいとかしこけれ」とて、<BR>⏎
<P>⏎
 「寄る波の心も知らでわかの浦に<BR>⏎
  玉藻<A HREF="#k69">なびかむ</A><A NAME="t69">ほ</A>どぞ浮きたる<BR>⏎
332-333 「げにこそいとかしこけれ」とて、<BR>⏎
 「寄る波の心も知らでわかの浦に<BR>  玉藻<A HREF="#k69">なびかむ</A><A NAME="t69">ほ</A>どぞ浮きたる<BR>⏎
d1615<P>⏎
d1617<P>⏎
d1619<P>⏎
d1621<P>⏎
d1623<P>⏎
d1625<P>⏎
cd2:1626-627 とて寄りおはしたる御声、いと<A HREF="#k71">らうたし</A><A NAME="t71">。</A><BR>⏎
<P>⏎
340 とて寄りおはしたる御声、いと<A HREF="#k71">らうたし</A><A NAME="t71">。</A><BR>⏎
d1629<P>⏎
d1631<P>⏎
d1633<P>⏎
d1635<P>⏎
d1637<P>⏎
d1639<P>⏎
cd2:1640-641 とて押し寄せたてまつりたれば、何心もなくゐたまへるに、手をさし入れて探りたまへれば、なよらかなる御衣に、髪はつやつやとかかりて、末のふさやかに探りつけられたる、いとうつくしう思ひ<A HREF="#k72">やらる</A><A NAME="t72">。</A>手をとらへたまへれば、うたて例ならぬ人の、かく近づきたまへるは、恐ろしうて、<BR>⏎
<P>⏎
347 とて押し寄せたてまつりたれば、何心もなくゐたまへるに、手をさし入れて探りたまへれば、なよらかなる御衣に、髪はつやつやとかかりて、末のふさやかに探りつけられたる、いとうつくしう思ひ<A HREF="#k72">やらる</A><A NAME="t72">。</A>手をとらへたまへれば、うたて例ならぬ人の、かく近づきたまへるは、恐ろしうて、<BR>⏎
d1643<P>⏎
cd2:1644-645 とて強ひて引き入りたまふにつきてすべり入りて、<BR>⏎
<P>⏎
349 とて強ひて引き入りたまふにつきてすべり入りて、<BR>⏎
d1647<P>⏎
d1649<P>⏎
cd4:2650-653 「いであなうたてや。ゆゆしうもはべるかな。聞こえさせ知らせたまふとも、さらに何のしるしもはべらじものを」とて、苦しげに思ひたれば、<BR>⏎
<P>⏎
 「さりとも、かかる御ほどをいかがはあらむ。なほただ世に知らぬ心ざしのほどを見果てたまへ」とのたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
352-353 「いであなうたてや。ゆゆしうもはべるかな。聞こえさせ知らせたまふとも、さらに何のしるしもはべらじものを」とて、苦しげに思ひたれば、<BR>⏎
 「さりとも、かかる御ほどをいかがはあらむ。なほただ世に知らぬ心ざしのほどを見果てたまへ」とのたまふ。<BR>⏎
d1655<P>⏎
cd4:2656-659 「いかでかう人少なに心細うて、過ぐしたまふらむ」<BR>⏎
<P>⏎
 とうち泣いたまひて、いと見棄てがたきほどなれば、<BR>⏎
<P>⏎
355-356 「いかでかう人少なに心細うて、過ぐしたまふらむ」<BR>⏎
 とうち泣いたまひて、いと見棄てがたきほどなれば、<BR>⏎
d1661<P>⏎
cd2:1662-663 とていと馴れ顔に御帳のうちに入りたまへば、あやしう思ひのほかにもと、あきれて、誰も誰もゐたり。乳母は、うしろめたなうわりなしと<A HREF="#k73">思へど</A><A NAME="t73">、</A>荒ましう聞こえ騒ぐべきならねば、うち嘆きつつゐたり。<BR>⏎
<P>⏎
358 とていと馴れ顔に御帳のうちに入りたまへば、あやしう思ひのほかにもと、あきれて、誰も誰もゐたり。乳母は、うしろめたなうわりなしと<A HREF="#k73">思へど</A><A NAME="t73">、</A>荒ましう聞こえ騒ぐべきならねば、うち嘆きつつゐたり。<BR>⏎
d1665<P>⏎
cd4:2666-669 「いざたまへよ。をかしき絵など多く、雛遊びなどする所に」<BR>⏎
<P>⏎
 と心につくべきことをのたまふけはひの、いとなつかしきを、幼き心地にも、いといたう怖ぢず、さすがに、むつかしう寝も入らずおぼえて、身じろき臥したまへり。<BR>⏎
<P>⏎
360-361 「いざたまへよ。をかしき絵など多く、雛遊びなどする所に」<BR>⏎
 と心につくべきことをのたまふけはひの、いとなつかしきを、幼き心地にも、いといたう怖ぢず、さすがに、むつかしう寝も入らずおぼえて、身じろき臥したまへり。<BR>⏎
d1671<P>⏎
c1672 「げにかう、おはせざらましかば、いかに心細からまし」<BR>⏎
363 「げにかう、おはせざらましかば、いかに心細からまし」<BR>⏎
d1674<P>⏎
d1676<P>⏎
d1678<P>⏎
d1680<P>⏎
d1682<P>⏎
cd2:1683-684 とてかい撫でつつ、かへりみがちにて出でたまひぬ。<BR>⏎
<P>⏎
369 とてかい撫でつつ、かへりみがちにて出でたまひぬ。<BR>⏎
d1686<P>⏎
cd8:3687-694 「朝ぼらけ霧立つ空のまよひにも<BR>⏎
  行き過ぎがたき<A HREF="#no13">妹が門</A><A NAME="te13">か</A>な」<BR>⏎
<P>⏎
 と二返りばかり歌ひたるに、よしある下仕ひを出だして、<BR>⏎
<P>⏎
 「立ちとまり霧のまがきの過ぎうくは<BR>⏎
  草のとざしにさはりしもせじ」<BR>⏎
<P>⏎
371-373 「朝ぼらけ霧立つ空のまよひにも<BR>  行き過ぎがたき<A HREF="#no13">妹が門</A><A NAME="te13">か</A>な」<BR>⏎
 と二返りばかり歌ひたるに、よしある下仕ひを出だして、<BR>⏎
 「立ちとまり霧のまがきの過ぎうくは<BR>  草のとざしにさはりしもせじ」<BR>⏎
d1696<P>⏎
d1698<P>⏎
d1700<P>⏎
cd2:1701-702 「かかる所には、いかでかしばしも幼き人の過ぐしたまはむ。なほかしこに渡したてまつりてむ。何の所狭きほどにもあらず。乳母は、曹司などしてさぶらひなむ。君は、若き人びとあれば、もろともに遊びて、いとようものしたまひなむ」などのたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
377 「かかる所には、いかでかしばしも幼き人の過ぐしたまはむ。なほかしこに渡したてまつりてむ。何の所狭きほどにもあらず。乳母は、曹司などしてさぶらひなむ。君は、若き人びとあれば、もろともに遊びて、いとようものしたまひなむ」などのたまふ。<BR>⏎
d1704<P>⏎
d1706<P>⏎
d1708<P>⏎
d1710<P>⏎
cd4:2711-714 とてげにいといたう面痩せたまへれど、いとあてにうつくしく、なかなか見えたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
 「何かさしも思す。今は世に亡き人の御ことはかひなし。おのれあれば」<BR>⏎
<P>⏎
382-383 とてげにいといたう面痩せたまへれど、いとあてにうつくしく、なかなか見えたまふ。<BR>⏎
 「何かさしも思す。今は世に亡き人の御ことはかひなし。おのれあれば」<BR>⏎
d1716<P>⏎
d1718<P>⏎
d1720<P>⏎
d1722<P>⏎
d2724-725
<P>⏎
cd5:1729-733</A>⏎
<p><A HREF="#k78">
 など</A></p>⏎
<P><
A NAME="t78">言</A>ふも、それをば何とも思したらぬぞ、あさましきや。<BR>⏎

<P>⏎
392 など</A><A NAME="t78">言</A>ふも、それをば何とも思したらぬぞ、あさましきや。<BR>⏎
d2735-736
<P>⏎
d2738-739
<P>⏎
d2741-742
<P>⏎
d2744-745
<P>⏎
d2747-748
<P>⏎
d2750-751
<P>⏎
cd3:1752-754 と言少なに言ひて、をさをさあへしらはず、もの縫ひいとなむけはひなどしるければ、参りぬ。<BR>⏎

<P>⏎
399 と言少なに言ひて、をさをさあへしらはず、もの縫ひいとなむけはひなどしるければ、参りぬ。<BR>⏎
text05755 <A NAME="in33">[第三段 源氏、紫の君を盗み取る]</A><BR>400 
d2756-757
<P>⏎
d2759-760
<P>⏎
cd3:1761-763 参りたれば、召し寄せてありさま問ひたまふ。しかしかなど聞こゆれば、口惜しう思して、「かの宮に渡りなば、わざと迎へ出でむも、好き好きしかるべし。幼き人を盗み出でたりと、もどき<A HREF="#k84">おひ</A><A NAME="t84">な</A>む。そのさきに、しばし人にも口固めて、渡してむ」と思して、<BR>⏎

<P>⏎
402 参りたれば、召し寄せてありさま問ひたまふ。しかしかなど聞こゆれば、口惜しう思して、「かの宮に渡りなば、わざと迎へ出でむも、好き好きしかるべし。幼き人を盗み出でたりと、もどき<A HREF="#k84">おひ</A><A NAME="t84">な</A>む。そのさきに、しばし人にも口固めて、渡してむ」と思して、<BR>⏎
d2765-766
<P>⏎
d2768-769
<P>⏎
d2771-772
<P>⏎
d2774-775
<P>⏎
d2777-778
<P>⏎
cd6:2779-784 「ここにおはします」と言へば、<BR>⏎

<P>⏎
 「幼き人は、御殿籠もりてなむ。などかいと夜深うは出でさせたまへる」と、もののたよりと思ひて言ふ。<BR>⏎

<P>⏎
408-409 「ここにおはします」と言へば、<BR>⏎
 「幼き人は、御殿籠もりてなむ。などかいと夜深うは出でさせたまへる」と、もののたよりと思ひて言ふ。<BR>⏎
d2786-787
<P>⏎
d2789-790
<P>⏎
cd3:1791-793 とてうち笑ひてゐたり。君、入りたまへば、いとかたはらいたく、<BR>⏎

<P>⏎
412 とてうち笑ひてゐたり。君、入りたまへば、いとかたはらいたく、<BR>⏎
d2795-796
<P>⏎
cd6:2797-802 「まだおどろいたまはじな。いで御目覚ましきこえむ。かかる朝霧を知らでは、寝るものか」<BR>⏎

<P>⏎
 とて入りたまへば、「や」とも、え聞こえず。<BR>⏎

<P>⏎
414-415 「まだおどろいたまはじな。いで御目覚ましきこえむ。かかる朝霧を知らでは、寝るものか」<BR>⏎
 とて入りたまへば、「や」とも、え聞こえず。<BR>⏎
d2804-805
<P>⏎
d2807-808
<P>⏎
cd3:1809-811 「いざたまへ。宮の御使にて参り来つるぞ」<BR>⏎

<P>⏎
418 「いざたまへ。宮の御使にて参り来つるぞ」<BR>⏎
d2813-814
<P>⏎
cd6:2815-820 「あな心憂。まろも同じ人ぞ」<BR>⏎

<P>⏎
 とてかき抱きて出でたまへば、大輔、少納言など、「こはいかに」と聞こゆ。<BR>⏎

<P>⏎
420-421 「あな心憂。まろも同じ人ぞ」<BR>⏎
 とてかき抱きて出でたまへば、大輔、少納言など、「こはいかに」と聞こゆ。<BR>⏎
d2822-823
<P>⏎
d2825-826
<P>⏎
d2828-829
<P>⏎
cd3:1830-832 「よし後にも人は参りなむ」とて、御車寄せさせたまへば、あさましう、いかさまにと思ひあへり。<BR>⏎

<P>⏎
425 「よし後にも人は参りなむ」とて、御車寄せさせたまへば、あさましう、いかさまにと思ひあへり。<BR>⏎
d2834-835
<P>⏎
d2837-838
<P>⏎
cd6:2840-845 「なほいと夢の心地しはべるを、いかにしはべるべきことにか」と、やすらへば、<BR>⏎

<P>⏎
 「そは心<A HREF="#k89">ななり</A><A NAME="t89">。</A>御自ら渡したてまつりつれば、帰りなむとあらば、送りせむかし」<BR>⏎

<P>⏎
429-430 「なほいと夢の心地しはべるを、いかにしはべるべきことにか」と、やすらへば、<BR>⏎
 「そは心<A HREF="#k89">ななり</A><A NAME="t89">。</A>御自ら渡したてまつりつれば、帰りなむとあらば、送りせむかし」<BR>⏎
d2847-848
<P>⏎
d2850-851
<P>⏎
d2853-854
<P>⏎
d2856-857
<P>⏎
d2859-860
<P>⏎
d2862-863
<P>⏎
d2865-866
<P>⏎
d2868-869
<P>⏎
cd3:1870-872 かく人迎へたまへりと、聞く人、「誰れならむ。<A HREF="#k92">おぼろけ</A><A NAME="t92">に</A>はあらじ」と、ささめく。御手水、御粥など、こなたに参る。日高う寝起きたまひて、<BR>⏎

<P>⏎
439 かく人迎へたまへりと、聞く人、「誰れならむ。<A HREF="#k92">おぼろけ</A><A NAME="t92">に</A>はあらじ」と、ささめく。御手水、御粥など、こなたに参る。日高う寝起きたまひて、<BR>⏎
d2874-875
<P>⏎
d2877-878
<P>⏎
d2880-881
<P>⏎
cd6:2882-887 「かう心憂くなおはせそ。すずろなる人は、かうはありなむや。女は心柔らかなるなむよき」<BR>⏎

<P>⏎
 など今より教へきこえたまふ。<BR>⏎

<P>⏎
443-444 「かう心憂くなおはせそ。すずろなる人は、かうはありなむや。女は心柔らかなるなむよき」<BR>⏎
 など今より教へきこえたまふ。<BR>⏎
d2889-890
<P>⏎
d2892-893
<P>⏎
cd10:3894-903 東の対に渡りたまへるに、立ち出でて、庭の木立、池の方など覗きたまへば、霜枯れの前栽、絵に描けるやうにおもしろくて、見も知らぬ四位、五位こきまぜに、隙なう出で入りつつ、「げにをかしき所かな」と思す。御屏風どもなど、いとをかしき絵を見つつ、慰めておはするもはかなしや。<BR>⏎

<P>⏎
 君は、二三日、内裏へも参りたまはで、この人をなつけ語らひきこえたまふ。やがて本にと思すにや、手習、絵などさまざまに書きつつ、見せたてまつりたまふ。いみじうをかしげに書き集めたまへり。<A HREF="#no15">「武蔵野と言へばかこたれぬ」</A><A NAME="te15">と</A>、紫の紙に書いたまへる墨つきの、いとことなるを取りて見ゐたまへり。すこし小さくて、<BR>⏎

<P>⏎
 「ねは見ねどあはれとぞ思ふ武蔵野の<BR>⏎
  露分けわぶる草のゆかりを」<BR>⏎

<P>⏎
447-449 東の対に渡りたまへるに、立ち出でて、庭の木立、池の方など覗きたまへば、霜枯れの前栽、絵に描けるやうにおもしろくて、見も知らぬ四位、五位こきまぜに、隙なう出で入りつつ、「げにをかしき所かな」と思す。御屏風どもなど、いとをかしき絵を見つつ、慰めておはするもはかなしや。<BR>⏎
 君は、二三日、内裏へも参りたまはで、この人をなつけ語らひきこえたまふ。やがて本にと思すにや、手習、絵などさまざまに書きつつ、見せたてまつりたまふ。いみじうをかしげに書き集めたまへり。<A HREF="#no15">「武蔵野と言へばかこたれぬ」</A><A NAME="te15">と</A>、紫の紙に書いたまへる墨つきの、いとことなるを取りて見ゐたまへり。すこし小さくて、<BR>⏎
 「ねは見ねどあはれとぞ思ふ武蔵野の<BR>  露分けわぶる草のゆかりを」<BR>⏎
cd6:3905-910 「いで君も書いたまへ」とあれば、<BR>⏎
 「まだようは書かず」<BR>⏎

<P>⏎
 とて見上げたまへるが、何心なくうつくしげなれば、うちほほ笑みて、<BR>⏎

451-453 「いで君も書いたまへ」とあれば、<BR>⏎
 「まだようは書かず」<BR>⏎
 とて見上げたまへるが、何心なくうつくしげなれば、うちほほ笑みて、<BR>⏎
d2912-913
<P>⏎
d2915-916
<P>⏎
cd7:2917-923 「かこつべきゆゑを知らねばおぼつかな<BR>⏎
  いかなる草のゆかりなるらむ」<BR>⏎

<P>⏎
 と<A HREF="#k95">いと</A><A NAME="t95">若</A>けれど、生ひ先見えて、ふくよかに書いたまへり。故尼君のにぞ<A HREF="#k96">似たり</A><A NAME="t96">け</A>る。「今めかしき手本習はば、いとよう書いたまひてむ」と見たまふ。<BR>⏎

<P>⏎
456-457 「かこつべきゆゑを知らねばおぼつかな<BR>  いかなる草のゆかりなるらむ」<BR>⏎
 と<A HREF="#k95">いと</A><A NAME="t95">若</A>けれど、生ひ先見えて、ふくよかに書いたまへり。故尼君のにぞ<A HREF="#k96">似たり</A><A NAME="t96">け</A>る。「今めかしき手本習はば、いとよう書いたまひてむ」と見たまふ。<BR>⏎
d2925-926
<P>⏎
cd3:1927-929 かのとまりにし人びと、宮渡りたまひて、尋ねきこえたまひけるに、聞こえやる方なくてぞ、わびあへりける。「しばし人に知らせじ」と君ものたまひ、少納言も思ふことなれば、せちに口固めやりたり。ただ「行方も知らず、少納言が率て隠しきこえたる」とのみ聞こえさするに、宮も言ふかひなう思して、「故尼君も、かしこに渡りたまはむことを、いとものしと思したりしことなれば、乳母の、いとさし過ぐしたる心ばせのあまり、おいらかに渡さむを、便なし、などは言はで、心にまかせ、率てはふらかしつるなめり」と、泣く泣く帰りたまひぬ。「もし聞き出でたてまつらば、告げよ」とのたまふも、わづらはしく。僧都の御もとにも、尋ねきこえたまへど、あとはかなくて、あたらしかりし御容貌など、恋しく悲しと思す。<BR>⏎

<P>⏎
459 かのとまりにし人びと、宮渡りたまひて、尋ねきこえたまひけるに、聞こえやる方なくてぞ、わびあへりける。「しばし人に知らせじ」と君ものたまひ、少納言も思ふことなれば、せちに口固めやりたり。ただ「行方も知らず、少納言が率て隠しきこえたる」とのみ聞こえさするに、宮も言ふかひなう思して、「故尼君も、かしこに渡りたまはむことを、いとものしと思したりしことなれば、乳母の、いとさし過ぐしたる心ばせのあまり、おいらかに渡さむを、便なし、などは言はで、心にまかせ、率てはふらかしつるなめり」と、泣く泣く帰りたまひぬ。「もし聞き出でたてまつらば、告げよ」とのたまふも、わづらはしく。僧都の御もとにも、尋ねきこえたまへど、あとはかなくて、あたらしかりし御容貌など、恋しく悲しと思す。<BR>⏎
d2931-932
<P>⏎
d2934-935
<P>⏎
d2937-938
<P>⏎
cd3:1939-941 <A HREF="#k98">さかしら</A><A NAME="t98">心</A>あり、何くれとむつかしき筋になりぬれば、わが心地もすこし違ふふしも出で来やと、心おかれ、人も恨みがちに、思ひのほかのこと、おのづから出で来るを、いとをかしきもてあそびなり。女などはた、かばかりになれば、心やすくうちふるまひ、隔てなきさまに臥し起きなどは、えしも<A HREF="#k99">すまじき</A><A NAME="t99">を</A>、これはいとさまかはりたるかしづきぐさなりと、思ほいためり。<BR>⏎

<P>⏎
463 <A HREF="#k98">さかしら</A><A NAME="t98">心</A>あり、何くれとむつかしき筋になりぬれば、わが心地もすこし違ふふしも出で来やと、心おかれ、人も恨みがちに、思ひのほかのこと、おのづから出で来るを、いとをかしきもてあそびなり。女などはた、かばかりになれば、心やすくうちふるまひ、隔てなきさまに臥し起きなどは、えしも<A HREF="#k99">すまじき</A><A NAME="t99">を</A>、これはいとさまかはりたるかしづきぐさなりと、思ほいためり。<BR>⏎
text05942 <a name="in81">【出典】<BR>464 
c1943</a><A NAME="no1">出典1</A> 海人の住む底のみるめも恥づかしく磯に生ひたるわかめをぞ摘む(出典未詳、源氏釈所引)<A HREF="#te1">(戻)</A><BR>⏎
465<A NAME="no1">出典1</A> 海人の住む底のみるめも恥づかしく磯に生ひたるわかめをぞ摘む(出典未詳、源氏釈所引)<A HREF="#te1">(戻)</A><BR>⏎
cd2:1946-947<A NAME="no4">出典4</A> 君をいかで思はむ人に忘らせて訪はぬはつらきものと知らせむ(出典未詳、源氏釈所引)<BR>⏎
忘れねと言ひしにかなふ君なれど問はぬはつらきものにぞありける(後撰集恋五-九二八 本院のくら)<A HREF="#te4">(戻)</A><BR>⏎
468<A NAME="no4">出典4</A> 君をいかで思はむ人に忘らせて訪はぬはつらきものと知らせむ(出典未詳、源氏釈所引)<BR>忘れねと言ひしにかなふ君なれど問はぬはつらきものにぞありける(後撰集恋五-九二八 本院のくら)<A HREF="#te4">(戻)</A><BR>⏎
d1959
text05960<p> <a name="in82">【校訂】<BR>480 
c1962</a><A NAME="k01">校訂1</A> わづらひ--わ(わ/+つ<朱>)らひ<A HREF="#t01">(戻)</A><BR>⏎
482<A NAME="k01">校訂1</A> わづらひ--わ(わ/+つ<朱>)らひ<A HREF="#t01">(戻)</A><BR>⏎
c1996<A NAME="k35">校訂35</A> がらも聞こしめしひがめたることな--(/+からもきこしめしひかめたる事な)<A HREF="#t35">(戻)</A><BR>⏎
516<A NAME="k35">校訂35</A> がらも聞こしめしひがめたることな--(/+からもきこしめしひかめたる事な)<A HREF="#t35">(戻)</A><BR>⏎
d11061</p>⏎
d11068</p>⏎
i0591
diffsrc/original/text06.htmlsrc/modified/text06.html
cd5:38-12<body background="wallppr063.gif">⏎
First updated 9/20/1996(ver.1-1)<BR>⏎
Last Updated 9/
11/2009(ver.2-3)<BR>⏎
渋谷栄一校訂(C)<BR>⏎
<P
>⏎
8-10<BODY>⏎
<ADDRESS>Last Updated 9/11/2009(ver.2-3)<BR>⏎
渋谷栄一校訂(C)</ADDRESS>⏎
d114<P>⏎
i014
d130<P>⏎
d232-33

d147<P>⏎
d149<P>⏎
d152<P>⏎
text0653 <H4>第一章 末摘花の物語</H4>44 
text0654 <A NAME="in11">[第一段 亡き夕顔追慕]</A><BR>45 
d155<P>⏎
d157<P>⏎
c158 いかでことことしきおぼえはなく、いとらうたげならむ人の、つつましきことなからむ、見つけてしがなと、こりずまに思しわたれば、すこしゆゑづきて聞こゆるわたりは、御耳とどめたまはぬ隈なきに、さてもやと、思し寄るばかりのけはひあるあたりにこそ、一行をもほのめかしたまふめるに、なびききこえずもて離れたるは、をさをさあるまじきぞ、いと目馴れたるや。<BR>⏎
47 いかでことことしきおぼえはなく、いとらうたげならむ人の、つつましきことなからむ、見つけてしがなと、こりずまに思しわたれば、すこしゆゑづきて聞こゆるわたりは、御耳とどめたまはぬ隈なきに、さてもやと、思し寄るばかりのけはひあるあたりにこそ、一行をもほのめかしたまふめるに、なびききこえずもて離れたるは、をさをさあるまじきぞ、いと目馴れたるや。<BR>⏎
d160<P>⏎
cd2:161-62 かの空蝉を、ものの折々には、ねたう思し出づ。荻の葉も、さりぬべき風のたよりある時は、おどろかしたまふ折もあるべし。火影の乱れたりしさまは、またさやうにても見まほしく思す。おほかた名残なきもの忘れをぞ、えしたまはざりける。<BR>⏎
<P>⏎
49 かの空蝉を、ものの折々には、ねたう思し出づ。荻の葉も、さりぬべき風のたよりある時は、おどろかしたまふ折もあるべし。火影の乱れたりしさまは、またさやうにても見まほしく思す。おほかた名残なきもの忘れをぞ、えしたまはざりける。<BR>⏎
text0663 <A NAME="in12">[第二段 故常陸宮の姫君の噂]</A><BR>50 
d164<P>⏎
d166<P>⏎
d168<P>⏎
d170<P>⏎
d172<P>⏎
d176<P>⏎
d178<P>⏎
d180<P>⏎
text0681 <A NAME="in13">[第三段 新春正月十六日の夜に姫君の琴を聴く]</A><BR>60 
d182<P>⏎
d184<P>⏎
cd6:385-90 「いとかたはらいたきわざかな。ものの音澄むべき夜のさまにもはべらざめるに」と聞こゆれど、<BR>⏎
<P>⏎
 「なほあなたにわたりて、ただ一声も、もよほしきこえよ。むなしくて帰らむが、ねたかるべきを」<BR>⏎
<P>⏎
 とのたまへば、うちとけたる住み処に据ゑたてまつりて、うしろめたうかたじけなしと思へど、寝殿に参りたれば、まだ格子もさながら、梅の香をかしきを見出だしてものしたまふ。よき折かなと思ひて、<BR>⏎
<P>⏎
62-64 「いとかたはらいたきわざかな。ものの音澄むべき夜のさまにもはべらざめるに」と聞こゆれど、<BR>⏎
 「なほあなたにわたりて、ただ一声も、もよほしきこえよ。むなしくて帰らむが、ねたかるべきを」<BR>⏎
 とのたまへば、うちとけたる住み処に据ゑたてまつりて、うしろめたうかたじけなしと思へど、寝殿に参りたれば、まだ格子もさながら、梅の香をかしきを見出だしてものしたまふ。よき折かなと思ひて、<BR>⏎
d192<P>⏎
d194<P>⏎
cd2:195-96 とて召し寄するも、あいなう、いかが聞きたまはむと、胸つぶる。<BR>⏎
<P>⏎
67 とて召し寄するも、あいなう、いかが聞きたまはむと、胸つぶる。<BR>⏎
d198<P>⏎
d1100<P>⏎
d1102<P>⏎
d1104<P>⏎
cd2:1105-106 とていたうもそそのかさで帰りたれば、<BR>⏎
<P>⏎
72 とていたうもそそのかさで帰りたれば、<BR>⏎
d1108<P>⏎
d1110<P>⏎
d1112<P>⏎
d1114<P>⏎
cd6:3115-120 「いでやいとかすかなるありさまに思ひ消えて、心苦しげにものしたまふめるを、うしろめたきさまにや」<BR>⏎
<P>⏎
 と言へば、「げにさもあること。にはかに我も人もうちとけて語らふべき人の際は、際とこそあれ」など、あはれに思さるる人の御ほどなれば、<BR>⏎
<P>⏎
 「なほさやうのけしきをほのめかせ」と、語らひたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
77-79 「いでやいとかすかなるありさまに思ひ消えて、心苦しげにものしたまふめるを、うしろめたきさまにや」<BR>⏎
 と言へば、「げにさもあること。にはかに我も人もうちとけて語らふべき人の際は、際とこそあれ」など、あはれに思さるる人の御ほどなれば、<BR>⏎
 「なほさやうのけしきをほのめかせ」と、語らひたまふ。<BR>⏎
d1122<P>⏎
d1124<P>⏎
d1126<P>⏎
d1128<P>⏎
d1130<P>⏎
d1132<P>⏎
d1134<P>⏎
d1136<P>⏎
cd3:1138-140  もろともに大内山は出でつれど<BR>⏎
  入る方見せぬいさよひの月」<BR>⏎
<P>⏎
89  もろともに大内山は出でつれど<BR>  入る方見せぬいさよひの月」<BR>⏎
d1142<P>⏎
cd4:1144-147 「里わかぬかげをば見れどゆく月の<BR>⏎
  いるさの山を誰れか尋ぬる」<BR>⏎

<P>⏎
92 「里わかぬかげをば見れどゆく月の<BR>  いるさの山を誰れか尋ぬる」<BR>⏎
cd5:1150-154</A>⏎
<p><A HREF="#k03"> と</A></p>⏎
<P
><A NAME="t03"></A>おし返しいさめたてまつる。かうのみ見つけらるるを、ねたしと思せど、かの撫子はえ尋ね知らぬを、重き功に、御心のうちに思し出づ。<BR>⏎

<P>⏎
95 と</A><A NAME="t03"></A>おし返しいさめたてまつる。かうのみ見つけらるるを、ねたしと思せど、かの撫子はえ尋ね知らぬを、重き功に、御心のうちに思し出づ。<BR>⏎
text06155 <A NAME="in14">[第四段 頭中将とともに左大臣邸へ行く]</A><BR>96 
d2156-157
<P>⏎
d2159-160
<P>⏎
d2162-163
<P>⏎
d2165-166
<P>⏎
cd3:1167-169 君たちは、ありつる琴の音を思し出でて、あはれげなりつる住まひのさまなども、やう変へてをかしう思ひつづけ、「あらましごとに、いとをかしうらうたき人の、さて年月を重ねゐたらむ時、見そめて、いみじう心苦しくは、人にももて騒がるばかりや、わが心もさま悪しからむ」などさへ、中将は思ひけり。この君のかう気色ばみありきたまふを、「まさにさては、過ぐしたまひてむや」と、なまねたう危ふがりけり。<BR>⏎

<P>⏎
100 君たちは、ありつる琴の音を思し出でて、あはれげなりつる住まひのさまなども、やう変へてをかしう思ひつづけ、「あらましごとに、いとをかしうらうたき人の、さて年月を重ねゐたらむ時、見そめて、いみじう心苦しくは、人にももて騒がるばかりや、わが心もさま悪しからむ」などさへ、中将は思ひけり。この君のかう気色ばみありきたまふを、「まさにさては、過ぐしたまひてむや」と、なまねたう危ふがりけり。<BR>⏎
d2171-172
<P>⏎
d2174-175
<P>⏎
cd9:3176-184 と憂ふれば、「さればよ、言ひ寄りにけるをや」と、ほほ笑まれて、<BR>⏎

<P>⏎
 「いさ見むとしも思はねばにや、見るとしもなし」<BR>⏎

<P>⏎
 と答へたまふを、「<A HREF="#k05">人わきしける</A><A NAME="t05">」</A>と思ふに、いとねたし。<BR>⏎

<P>⏎
103-105 と憂ふれば、「さればよ、言ひ寄りにけるをや」と、ほほ笑まれて、<BR>⏎
 「いさ見むとしも思はねばにや、見るとしもなし」<BR>⏎
 と答へたまふを、「<A HREF="#k05">人わきしける</A><A NAME="t05">」</A>と思ふに、いとねたし。<BR>⏎
d2186-187
<P>⏎
d2189-190
<P>⏎
cd4:2191-194 「いでやさやうにをかしき方の<A HREF="#no3">御笠宿り</A><A NAME="te3">に</A>は、<A HREF="#k07">えしもや</A><A NAME="t07">と</A>、つきなげにこそ見えはべれ。ひとへにものづつみし、ひき入りたる方はしも、ありがたうものしたまふ人になむ」<BR>⏎
 と見るありさま語りきこゆ。「らうらうじう、かどめきたる心はなきなめり。いと子めかしうおほどかならむこそ、らうたくはあるべけれ」と思し忘れず、のたまふ。<BR>⏎

<P>⏎
108-109 「いでやさやうにをかしき方の<A HREF="#no3">御笠宿り</A><A NAME="te3">に</A>は、<A HREF="#k07">えしもや</A><A NAME="t07">と</A>、つきなげにこそ見えはべれ。ひとへにものづつみし、ひき入りたる方はしも、ありがたうものしたまふ人になむ」<BR>⏎
 と見るありさま語りきこゆ。「らうらうじう、かどめきたる心はなきなめり。いと子めかしうおほどかならむこそ、らうたくはあるべけれ」と思し忘れず、のたまふ。<BR>⏎
d2196-197
<P>⏎
text06198 <A NAME="in15">[第五段 秋八月二十日過ぎ常陸宮の姫君と逢う]</A><BR>111 
d2199-200
<P>⏎
d2202-203
<P>⏎
d2205-206
<P>⏎
cd6:2207-212 といとものしと思ひてのたまへば、いとほしと思ひて、<BR>⏎

<P>⏎
 「もて離れて、似げなき御事とも、おもむけはべらず。ただおほかたの御ものづつみのわりなきに、<A HREF="#k08">手を</A><A NAME="t08">え</A>さし出でたまはぬとなむ見たまふる」と聞こゆれば、<BR>⏎

<P>⏎
114-115 といとものしと思ひてのたまへば、いとほしと思ひて、<BR>⏎
 「もて離れて、似げなき御事とも、おもむけはべらず。ただおほかたの御ものづつみのわりなきに、<A HREF="#k08">手を</A><A NAME="t08">え</A>さし出でたまはぬとなむ見たまふる」と聞こゆれば、<BR>⏎
cd5:2214-218 など語らひたまふ。<BR>⏎

<P>⏎
 なほ世にある人のありさまを、おほかたなるやうにて聞き集め、耳とどめたまふ癖のつきたまへるを、さうざうしき宵居<A HREF="#k10">など</A><A NAME="t10">、</A>はかなきついでに、さる人こそとばかり聞こえ出でたりしに、かくわざとがましうのたまひわたれば、「なまわづらはしく、女君の御ありさまも、世づかはしく、よしめきなどもあらぬを、なかなかなる導きに、いとほしき事や見えむなむ」と思ひけれど、君のかうまめやかにのたまふに、「聞き入れざらむも、ひがひがしかるべし。父親王おはしける折にだに、旧りにたるあたりとて、おとなひきこゆる人もなかりけるを、まして今は浅茅分くる人も跡絶えたるに」。<BR>⏎

117-118 など語らひたまふ。<BR>⏎
 なほ世にある人のありさまを、おほかたなるやうにて聞き集め、耳とどめたまふ癖のつきたまへるを、さうざうしき宵居<A HREF="#k10">など</A><A NAME="t10">、</A>はかなきついでに、さる人こそとばかり聞こえ出でたりしに、かくわざとがましうのたまひわたれば、「なまわづらはしく、女君の御ありさまも、世づかはしく、よしめきなどもあらぬを、なかなかなる導きに、いとほしき事や見えむなむ」と思ひけれど、君のかうまめやかにのたまふに、「聞き入れざらむも、ひがひがしかるべし。父親王おはしける折にだに、旧りにたるあたりとて、おとなひきこゆる人もなかりけるを、まして今は浅茅分くる人も跡絶えたるに」。<BR>⏎
d2220-221
<P>⏎
cd3:1222-224 命婦は、「さらばさりぬべからむ折に、物越しに聞こえたまはむほど、御心につかずは、さても止みねかし。またさるべきにて、仮にもおはし通はむを、とがめたまふべき人なし」など、あだめきたるはやり心はうち思ひて、父君にも、かかる事なども言はざりけり。<BR>⏎

<P>⏎
120 命婦は、「さらばさりぬべからむ折に、物越しに聞こえたまはむほど、御心につかずは、さても止みねかし。またさるべきにて、仮にもおはし通はむを、とがめたまふべき人なし」など、あだめきたるはやり心はうち思ひて、父君にも、かかる事なども言はざりけり。<BR>⏎
d2226-227
<P>⏎
cd6:2228-233 月やうやう出でて、荒れたる籬のほどうとましくうち眺めたまふに、琴そそのかされて、ほのかにかき鳴らしたまふほど、けしうはあらず。「すこしけ近う今めきたる気をつけ<A HREF="#k11">ばや」とぞ</A><A NAME="t11">、</A>乱れたる心には、心もとなく思ひゐたる。人目しなき所なれば、心やすく入りたまふ。命婦を呼ばせたまふ。今しもおどろき顔に、<BR>⏎

<P>⏎
 「いとかたはらいたきわざかな。しかしかこそ、おはしましたなれ。常にかう恨みきこえたまふを、心にかなはぬ由をのみ、いなびきこえはべれば、『みづからことわりも聞こえ知らせむ』と、のたまひわたるなり。いかが聞こえ返さむ。なみなみのたはやすき御ふるまひならねば、心苦しきを。物越しにて、聞こえたまはむこと、聞こしめせ」<BR>⏎

<P>⏎
122-123 月やうやう出でて、荒れたる籬のほどうとましくうち眺めたまふに、琴そそのかされて、ほのかにかき鳴らしたまふほど、けしうはあらず。「すこしけ近う今めきたる気をつけ<A HREF="#k11">ばや」とぞ</A><A NAME="t11">、</A>乱れたる心には、心もとなく思ひゐたる。人目しなき所なれば、心やすく入りたまふ。命婦を呼ばせたまふ。今しもおどろき顔に、<BR>⏎
 「いとかたはらいたきわざかな。しかしかこそ、おはしましたなれ。常にかう恨みきこえたまふを、心にかなはぬ由をのみ、いなびきこえはべれば、『みづからことわりも聞こえ知らせむ』と、のたまひわたるなり。いかが聞こえ返さむ。なみなみのたはやすき御ふるまひならねば、心苦しきを。物越しにて、聞こえたまはむこと、聞こしめせ」<BR>⏎
d2235-236
<P>⏎
d2238-239
<P>⏎
cd3:1240-242 とて奥ざまへゐざり入りたまふさま、いとうひうひしげなり。うち笑ひて、<BR>⏎

<P>⏎
126 とて奥ざまへゐざり入りたまふさま、いとうひうひしげなり。うち笑ひて、<BR>⏎
d2244-245
<P>⏎
d2248-249
<P>⏎
cd9:3251-259 などいとよく言ひなして、二間の際なる障子、手づからいと強く鎖して、御茵うち置きひきつくろふ。<BR>⏎

<P>⏎
 いとつつましげに思したれど、かやうの人にもの言ふらむ心ばへなども、夢に知りたまはざりければ、命婦のかう言ふを、あるやうこそはと思ひてものしたまふ。乳母だつ老い人などは、曹司に入り臥して、夕まどひしたるほどなり。若き人、二三人あるは、世にめでられたまふ御ありさまを、ゆかしきものに思ひきこえて、心げさうしあへり。よろしき御衣たてまつり変へ、つくろひきこゆれば、正身は、何の心げさうもなくておはす。<BR>⏎

<P>⏎
 <A HREF="#k12">男は</A><A NAME="t12">、</A>いと尽きせぬ御さまを、うち忍び用意したまへる御けはひ、いみじうなまめきて、「見知らむ人にこそ見せめ、栄えあるまじきわたりを、あないとほし」と、命婦は思へど、ただおほどかにものしたまふをぞ、「うしろやすう、さし過ぎたることは見えたてまつりたまはじ」と思ひける。「わが常に責められたてまつる罪さりごとに、心苦しき人の御もの思ひや出でこむ」など、やすからず思ひゐたり。<BR>⏎

<P>⏎
131-133 などいとよく言ひなして、二間の際なる障子、手づからいと強く鎖して、御茵うち置きひきつくろふ。<BR>⏎
 いとつつましげに思したれど、かやうの人にもの言ふらむ心ばへなども、夢に知りたまはざりければ、命婦のかう言ふを、あるやうこそはと思ひてものしたまふ。乳母だつ老い人などは、曹司に入り臥して、夕まどひしたるほどなり。若き人、二三人あるは、世にめでられたまふ御ありさまを、ゆかしきものに思ひきこえて、心げさうしあへり。よろしき御衣たてまつり変へ、つくろひきこゆれば、正身は、何の心げさうもなくておはす。<BR>⏎
 <A HREF="#k12">男は</A><A NAME="t12">、</A>いと尽きせぬ御さまを、うち忍び用意したまへる御けはひ、いみじうなまめきて、「見知らむ人にこそ見せめ、栄えあるまじきわたりを、あないとほし」と、命婦は思へど、ただおほどかにものしたまふをぞ、「うしろやすう、さし過ぎたることは見えたてまつりたまはじ」と思ひける。「わが常に責められたてまつる罪さりごとに、心苦しき人の御もの思ひや出でこむ」など、やすからず思ひゐたり。<BR>⏎
d2261-262
<P>⏎
cd2:1263-264 「いくそたび君がしじまに<A HREF="#k13">まけ</A><A NAME="t13">ぬ</A>らむ<BR>⏎
  ものな言ひそと言はぬ頼みに<BR>⏎
135 「いくそたび君がしじまに<A HREF="#k13">まけ</A><A NAME="t13">ぬ</A>らむ<BR>  ものな言ひそと言はぬ頼みに<BR>⏎
d2266-267
<P>⏎
d2269-270
<P>⏎
cd4:1271-274 「鐘つきてとぢめむことはさすがにて<BR>⏎
  答へまうきぞかつはあやなき」<BR>⏎

<P>⏎
138 「鐘つきてとぢめむことはさすがにて<BR>  答へまうきぞかつはあやなき」<BR>⏎
cd4:1277-280  言はぬをも言ふにまさると知りながら<BR>⏎
  おしこめたるは苦しかりけり」<BR>⏎

<P>⏎
141  言はぬをも言ふにまさると知りながら<BR>  おしこめたるは苦しかりけり」<BR>⏎
d2283-284
<P>⏎
cd3:1285-287 命婦、「あなうたて。たゆめたまへる」と、いとほしければ、知らず顔にて、わが方へ往にけり。この若人ども、はた世にたぐひなき御ありさまの音聞きに、罪ゆるしきこえて、おどろおどろしうも嘆かれず、ただ思ひもよらずにはかにて、さる御心もなきをぞ、思ひける。<BR>⏎

<P>⏎
144 命婦、「あなうたて。たゆめたまへる」と、いとほしければ、知らず顔にて、わが方へ往にけり。この若人ども、はた世にたぐひなき御ありさまの音聞きに、罪ゆるしきこえて、おどろおどろしうも嘆かれず、ただ思ひもよらずにはかにて、さる御心もなきをぞ、思ひける。<BR>⏎
d2289-290
<P>⏎
d2292-293
<P>⏎
text06294 <A NAME="in16">[第六段 その後、訪問なく秋が過ぎる]</A><BR>147 
d2295-296
<P>⏎
d2298-299
<P>⏎
c5305-309 といそがしげなれば、<BR>⏎
 「さらば<A HREF="#k17">もろともに</A><A NAME="t17">」</A><BR>⏎
 とて御粥、強飯召して、客人にも参りたまひて、引き続けたれど、一つにたてまつりて、<BR>⏎
 「なほいとねぶたげなり」<BR>⏎
 ととがめ出でつつ、<BR>⏎
154-158 といそがしげなれば、<BR>⏎
 「さらば<A HREF="#k17">もろともに</A><A NAME="t17">」</A><BR>⏎
 とて御粥、強飯召して、客人にも参りたまひて、引き続けたれど、一つにたてまつりて、<BR>⏎
 「なほいとねぶたげなり」<BR>⏎
 ととがめ出でつつ、<BR>⏎
cd3:1311-313 とぞ恨みきこえたまふ。<BR>⏎

<P>⏎
160 とぞ恨みきこえたまふ。<BR>⏎
cd7:2315-321 かしこには、文をだにと、いとほしく思し出でて、夕つ方ぞありける。雨降り出でて、ところせくもあるに、笠宿りせむと、はた思されずやありけむ。かしこには、待つほど過ぎて、命婦も、「いといとほしき御さまかな」と、心憂く思ひけり。正身は、御心のうちに恥づかしう思ひたまひて、今朝の御文の暮れぬれど、なかなか、咎とも思ひわきたまはざりけり。<BR>⏎

<P>⏎
 「夕霧の晴るるけしきもまだ見ぬに<BR>⏎
  いぶせさそふる宵の雨かな<BR>⏎

<P>⏎
162-163 かしこには、文をだにと、いとほしく思し出でて、夕つ方ぞありける。雨降り出でて、ところせくもあるに、笠宿りせむと、はた思されずやありけむ。かしこには、待つほど過ぎて、命婦も、「いといとほしき御さまかな」と、心憂く思ひけり。正身は、御心のうちに恥づかしう思ひたまひて、今朝の御文の暮れぬれど、なかなか、咎とも思ひわきたまはざりけり。<BR>⏎
 「夕霧の晴るるけしきもまだ見ぬに<BR>  いぶせさそふる宵の雨かな<BR>⏎
cd8:3324-331 「なほ聞こえさせたまへ」<BR>⏎
 とそそのかしあへれど、いとど思ひ乱れたまへるほどにて、え型のやうにも続けたまはねば、「夜更けぬ」とて、侍従ぞ、例の教へきこゆる。<BR>⏎

<P>⏎
 「晴れぬ夜の月待つ里を思ひやれ<BR>⏎
  同じ心に眺めせずとも」<BR>⏎

<P>⏎
166-168 「なほ聞こえさせたまへ」<BR>⏎
 とそそのかしあへれど、いとど思ひ乱れたまへるほどにて、え型のやうにも続けたまはねば、「夜更けぬ」とて、侍従ぞ、例の教へきこゆる。<BR>⏎
 「晴れぬ夜の月待つ里を思ひやれ<BR>  同じ心に眺めせずとも」<BR>⏎
d2333-334
<P>⏎
d2337-338
<P>⏎
d2340-341
<P>⏎
d2343-344
<P>⏎
d2346-347
<P>⏎
text06348 <A NAME="in17">[第七段 冬の雪の激しく降る日に訪問]</A><BR>175 
d2349-350
<P>⏎
c1354 など泣きぬばかり思へり。「心にくくもてなして止みなむと思へりしことを、くたいてける、心もなくこの人の思ふらむ」をさへ思す。正身の、ものは言はで、思しうづもれたまふらむさま、思ひやりたまふも、いとほしければ、<BR>⏎
179 など泣きぬばかり思へり。「心にくくもてなして止みなむと思へりしことを、くたいてける、心もなくこの人の思ふらむ」をさへ思す。正身の、ものは言はで、思しうづもれたまふらむさま、思ひやりたまふも、いとほしければ、<BR>⏎
c1356 とほほ笑みたまへる、若ううつくしげなれば、我もうち笑まるる心地して、「わりなの、人に恨みられたまふ御齢や。思ひやり少なう、御心のままならむも、ことわり」と思ふ。<BR>⏎
181 とほほ笑みたまへる、若ううつくしげなれば、我もうち笑まるる心地して、「わりなの、人に恨みられたまふ御齢や。思ひやり少なう、御心のままならむも、ことわり」と思ふ。<BR>⏎
d2358-359
<P>⏎
d2361-362
<P>⏎
cd3:1363-365 されどみづからは見えたまふべくもあらず。几帳など、いたく損なはれたるものから、年経にける立ちど変はらず、おしやりなど乱れねば、心もとなくて、御達四五人ゐたり。御台、秘色やうの唐土のものなれど、人悪ろきに、何のくさはひもなくあはれげなる、まかでて人びと食ふ。<BR>⏎

<P>⏎
184 されどみづからは見えたまふべくもあらず。几帳など、いたく損なはれたるものから、年経にける立ちど変はらず、おしやりなど乱れねば、心もとなくて、御達四五人ゐたり。御台、秘色やうの唐土のものなれど、人悪ろきに、何のくさはひもなくあはれげなる、まかでて人びと食ふ。<BR>⏎
d2367-368
<P>⏎
c2369-370 「あはれさも寒き年かな。<A HREF="#no5">命長ければ</A><A NAME="te5">、</A>かかる世にもあふものなりけり」<BR>⏎
 とてうち泣くもあり。<BR>⏎
186-187 「あはれさも寒き年かな。<A HREF="#no5">命長ければ</A><A NAME="te5">、</A>かかる世にもあふものなりけり」<BR>⏎
 とてうち泣くもあり。<BR>⏎
cd3:1372-374 とて<A HREF="#no6">飛び立ちぬべく</A><A NAME="te6">ふ</A>るふもあり。<BR>⏎

<P>⏎
189 とて<A HREF="#no6">飛び立ちぬべく</A><A NAME="te6">ふ</A>るふもあり。<BR>⏎
d2377-378
<P>⏎
d2380-381
<P>⏎
cd3:1382-384 いとど愁ふなりつる雪、かきたれいみじう降りけり。空の気色はげしう、風吹き荒れて、大殿油消えにけるを、ともしつくる人もなし。かのものに襲はれし折思し出でられて、荒れたるさまは劣らざめるを、ほどの狭う、人気のすこしあるなどに慰めたれど、すごううたていざとき心地する夜のさまなり。<BR>⏎

<P>⏎
193 いとど愁ふなりつる雪、かきたれいみじう降りけり。空の気色はげしう、風吹き荒れて、大殿油消えにけるを、ともしつくる人もなし。かのものに襲はれし折思し出でられて、荒れたるさまは劣らざめるを、ほどの狭う、人気のすこしあるなどに慰めたれど、すごううたていざとき心地する夜のさまなり。<BR>⏎
d2386-387
<P>⏎
text06388 <A NAME="in18">[第八段 翌朝、姫君の醜貌を見る]</A><BR>195 
d2389-390
<P>⏎
cd3:1393-395 と恨みきこえたまふ。まだほの暗けれど、雪の光にいとどきよらに若う見えたまふを、老い人ども笑みさかえて見たてまつる。<BR>⏎

<P>⏎
198 と恨みきこえたまふ。まだほの暗けれど、雪の光にいとどきよらに若う見えたまふを、老い人ども笑みさかえて見たてまつる。<BR>⏎
d2398-399
<P>⏎
d2401-402
<P>⏎
cd3:1403-405 まづ居丈の高く、を背長に見えたまふに、「さればよ」と、胸つぶれぬ。うちつぎて、あなかたはと見ゆるものは、鼻なりけり。ふと目ぞとまる。普賢菩薩の乗物とおぼゆ。あさましう高うのびらかに、先の方すこし垂りて色づきたること、ことのほかにうたてあり。色は雪恥づかしく白うて真青に、額つきこよなうはれたるに、なほ下がちなる面やうは、おほかたおどろおどろしう長きなるべし。痩せたまへること、いとほしげにさらぼひて、肩のほどなどは、いたげなるまで衣の上まで見ゆ。「何に残りなう見あらはしつらむ」と思ふものから、めづらしきさまのしたれば、さすがに、うち<A HREF="#k20">見やられ</A><A NAME="t20">た</A>まふ。<BR>⏎

<P>⏎
202 まづ居丈の高く、を背長に見えたまふに、「さればよ」と、胸つぶれぬ。うちつぎて、あなかたはと見ゆるものは、鼻なりけり。ふと目ぞとまる。普賢菩薩の乗物とおぼゆ。あさましう高うのびらかに、先の方すこし垂りて色づきたること、ことのほかにうたてあり。色は雪恥づかしく白うて真青に、額つきこよなうはれたるに、なほ下がちなる面やうは、おほかたおどろおどろしう長きなるべし。痩せたまへること、いとほしげにさらぼひて、肩のほどなどは、いたげなるまで衣の上まで見ゆ。「何に残りなう見あらはしつらむ」と思ふものから、めづらしきさまのしたれば、さすがに、うち<A HREF="#k20">見やられ</A><A NAME="t20">た</A>まふ。<BR>⏎
d2407-408
<P>⏎
cd2:1409-410 聴し色のわりなう上白みたる一襲、なごりなう黒き袿重ねて、表着には黒貂の皮衣、いときよらに香ばしきを着たまへり。古代のゆゑづきたる御装束なれど、なほ若やかなる女の御よそひには、似げなうおどろおどろしきこと、いともてはやされたり。されどげにこの皮なうて、はた寒からましと見ゆる御顔ざまなるを、心苦しと見たまふ。<BR>⏎

204 聴し色のわりなう上白みたる一襲、なごりなう黒き袿重ねて、表着には黒貂の皮衣、いときよらに香ばしきを着たまへり。古代のゆゑづきたる御装束なれど、なほ若やかなる女の御よそひには、似げなうおどろおどろしきこと、いともてはやされたり。されどげにこの皮なうて、はた寒からましと見ゆる御顔ざまなるを、心苦しと見たまふ。<BR>⏎
d2412-413
<P>⏎
d2415-416
<P>⏎
cd4:1417-420 「朝日さす軒の垂氷は解けながら<BR>⏎
  などかつららの結ぼほるらむ」<BR>⏎

<P>⏎
207 「朝日さす軒の垂氷は解けながら<BR>  などかつららの結ぼほるらむ」<BR>⏎
d2422-423
<P>⏎
cd3:1424-426 御車寄せたる中門の、いといたうゆがみよろぼひて、夜目にこそ、しるきながらもよろづ隠ろへたること多かりけれ、いとあはれにさびしく荒れまどへるに、松の雪のみ暖かげに降り積める、山里の心地して、ものあはれなるを、「かの人びとの言ひし葎の門は、かうやうなる所なりけむかし。げに心苦しくらうたげならむ人をここに据ゑて、うしろめたう恋しと思はばや。あるまじきもの思ひは、それに紛れなむかし」と、「思ふやうなる住みかに合はぬ御ありさまは、取るべきかたなし」と思ひながら、「我ならぬ人は、まして見忍びてむや。わがかうて見馴れけるは、故親王のうしろめたしとたぐへ置きたまひけむ魂のしるべなめり」とぞ思さるる。<BR>⏎

<P>⏎
209 御車寄せたる中門の、いといたうゆがみよろぼひて、夜目にこそ、しるきながらもよろづ隠ろへたること多かりけれ、いとあはれにさびしく荒れまどへるに、松の雪のみ暖かげに降り積める、山里の心地して、ものあはれなるを、「かの人びとの言ひし葎の門は、かうやうなる所なりけむかし。げに心苦しくらうたげならむ人をここに据ゑて、うしろめたう恋しと思はばや。あるまじきもの思ひは、それに紛れなむかし」と、「思ふやうなる住みかに合はぬ御ありさまは、取るべきかたなし」と思ひながら、「我ならぬ人は、まして見忍びてむや。わがかうて見馴れけるは、故親王のうしろめたしとたぐへ置きたまひけむ魂のしるべなめり」とぞ思さるる。<BR>⏎
d2428-429
<P>⏎
d2431-432
<P>⏎
cd2:1433-434 「降りにける頭の雪を見る人も<BR>⏎
  劣らず濡らす朝の袖かな<BR>⏎
212 「降りにける頭の雪を見る人も<BR>  劣らず濡らす朝の袖かな<BR>⏎
d2436-437
<P>⏎
d2439-440
<P>⏎
d2442-443
<P>⏎
d2445-446
<P>⏎
d2448-449
<P>⏎
text06450 <A NAME="in19">[第九段 歳末に姫君から和歌と衣箱が届けられる]</A><BR>218 
d2451-452
<P>⏎
d2454-455
<P>⏎
c1457 とほほ笑みて聞こえやらぬを、<BR>⏎
221 とほほ笑みて聞こえやらぬを、<BR>⏎
c2459-460 「いかがは。みづからの愁へは、かしこくとも、まづこそは。これはいと聞こえさせにくくなむ」<BR>⏎
 といたう言籠めたれば、<BR>⏎
223-224 「いかがは。みづからの愁へは、かしこくとも、まづこそは。これはいと聞こえさせにくくなむ」<BR>⏎
 といたう言籠めたれば、<BR>⏎
d2462-463
<P>⏎
c2465-466 「ましてこれは取り隠すべきことかは」<BR>⏎
 とて取りたまふも、胸つぶる。<BR>⏎
227-228 「ましてこれは取り隠すべきことかは」<BR>⏎
 とて取りたまふも、胸つぶる。<BR>⏎
d2468-469
<P>⏎
cd4:1470-473 「唐衣君が心のつらければ<BR>⏎
  袂はかくぞそぼちつつのみ」<BR>⏎

<P>⏎
230 「唐衣君が心のつらければ<BR>  袂はかくぞそぼちつつのみ」<BR>⏎
d2475-476
<P>⏎
cd3:1477-479 「これをいかでかは、かたはらいたく思ひたまへざらむ。されど朔日の御よそひとて、わざとはべるめるを、はしたなうは<A HREF="#k25">え返し</A><A NAME="t25">はべら</A>ず。ひとり引き籠めはべらむも、人の御心違ひはべるべければ、御覧ぜさせてこそは」と聞こゆれば、<BR>⏎

<P>⏎
232 「これをいかでかは、かたはらいたく思ひたまへざらむ。されど朔日の御よそひとて、わざとはべるめるを、はしたなうは<A HREF="#k25">え返し</A><A NAME="t25">はべら</A>ず。ひとり引き籠めはべらむも、人の御心違ひはべるべければ、御覧ぜさせてこそは」と聞こゆれば、<BR>⏎
c1481 と</A><A NAME="t26">の</A>たまひて、ことにもの言はれたまはず。「さてもあさましの口つきや。これこそは手づからの御ことの限りなめれ。侍従こそとり直すべかめれ。また筆のしりとる博士ぞなかべき」と、言ふかひなく思す。心を尽くして詠み出でたまひつらむほどを思すに、<BR>⏎
234 と</A><A NAME="t26">の</A>たまひて、ことにもの言はれたまはず。「さてもあさましの口つきや。これこそは手づからの御ことの限りなめれ。侍従こそとり直すべかめれ。また筆のしりとる博士ぞなかべき」と、言ふかひなく思す。心を尽くして詠み出でたまひつらむほどを思すに、<BR>⏎
cd3:1483-485 とほほ笑みて見たまふを、命婦、面赤みて見たてまつる。<BR>⏎

<P>⏎
236 とほほ笑みて見たまふを、命婦、面赤みて見たてまつる。<BR>⏎
d2487-488
<P>⏎
cd2:1489-490 「なつかしき色ともなしに何にこの<BR>⏎
  すゑつむ花を袖に触れけむ<BR>⏎
238 「なつかしき色ともなしに何にこの<BR>  すゑつむ花を袖に触れけむ<BR>⏎
d2492-493
<P>⏎
cd5:2494-498 など書きけがしたまふ。花のとがめを、<A HREF="#k27">なほ</A><A NAME="t27">あ</A>るやうあらむと、思ひ合はする折々の、月影などを、いとほしきものから、をかしう思ひなりぬ。<BR>⏎

<P>⏎
 「紅のひと花衣うすくとも<BR>⏎
  ひたすら朽す名をし立てずは<BR>⏎
240-241 など書きけがしたまふ。花のとがめを、<A HREF="#k27">なほ</A><A NAME="t27">あ</A>るやうあらむと、思ひ合はする折々の、月影などを、いとほしきものから、をかしう思ひなりぬ。<BR>⏎
 「紅のひと花衣うすくとも<BR>  ひたすら朽す名をし立てずは<BR>⏎
d2500-501
<P>⏎
c1502 といといたう馴れてひとりごつを、よきにはあらねど、「かうやうのかいなでにだにあらましかば」と、返す返す口惜し。人のほどの心苦しきに、名の朽ちなむはさすがなり。人びと参れば、<BR>⏎
243 といといたう馴れてひとりごつを、よきにはあらねど、「かうやうのかいなでにだにあらましかば」と、返す返す口惜し。人のほどの心苦しきに、名の朽ちなむはさすがなり。人びと参れば、<BR>⏎
cd3:1504-506 とうちうめきたまふ。「何に御覧ぜさせつらむ。我さへ心なきやうに」と、いと恥づかしくて、やをら下りぬ。<BR>⏎

<P>⏎
245 とうちうめきたまふ。「何に御覧ぜさせつらむ。我さへ心なきやうに」と、いと恥づかしくて、やをら下りぬ。<BR>⏎
cd3:1509-511 とて投げたまへり。女房たち、何ごとならむと、ゆかしがる。<BR>⏎

<P>⏎
248 とて投げたまへり。女房たち、何ごとならむと、ゆかしがる。<BR>⏎
d2513-514
<P>⏎
cd4:2515-518 と歌ひすさびて出でたまひぬるを、命婦は「いとをかし」と思ふ。心知らぬ人びとは、<BR>⏎
 「なぞ<A HREF="#k28">御ひとりゑみは」と</A><A NAME="t28">、</A>とがめあへり。<BR>⏎

<P>⏎
250-251 と歌ひすさびて出でたまひぬるを、命婦は「いとをかし」と思ふ。心知らぬ人びとは、<BR>⏎
 「なぞ<A HREF="#k28">御ひとりゑみは」と</A><A NAME="t28">、</A>とがめあへり。<BR>⏎
c1520 「あながちなる御ことかな。このなかにはにほへる鼻もなかめり」<BR>⏎
253 「あながちなる御ことかな。このなかにはにほへる鼻もなかめり」<BR>⏎
cd3:1522-524 など心も得ず言ひしろふ。<BR>⏎

<P>⏎
255 など心も得ず言ひしろふ。<BR>⏎
d2526-527
<P>⏎
cd4:1528-531 「逢はぬ夜をへだつるなかの衣手に<BR>⏎
  重ねていとど見もし見よとや」<BR>⏎

<P>⏎
257 「逢はぬ夜をへだつるなかの衣手に<BR>  重ねていとど見もし見よとや」<BR>⏎
d2533-534
<P>⏎
d2536-537
<P>⏎
cd3:1540-542 など口々に言ふ。姫君も、おぼろけならでし出でたまひつるわざなれば、ものに書きつけて置きたまへりけり。<BR>⏎

<P>⏎
262 など口々に言ふ。姫君も、おぼろけならでし出でたまひつるわざなれば、ものに書きつけて置きたまへりけり。<BR>⏎
text06543 <A NAME="in110">[第十段 正月七日夜常陸宮邸に泊まる]</A><BR>263 
d2544-545
<P>⏎
d2547-548
<P>⏎
d2550-551
<P>⏎
d2553-554
<P>⏎
d2556-557
<P>⏎
d2559-560
<P>⏎
d2562-563
<P>⏎
c1566 と</A><A HREF="#k33">からうして</A><A NAME="t33">わ</A>ななかし出でたり。<BR>⏎
272 と</A><A HREF="#k33">からうして</A><A NAME="t33">わ</A>ななかし出でたり。<BR>⏎
cd4:1568-571 と</A>うち誦じて出でたまふを、見送りて添ひ臥したまへり。口おほひの側目より、なほかの末摘花、いとにほひやかにさし出でたり。見苦しのわざやと思さる。<BR>⏎

<P>⏎

274 と</A>うち誦じて出でたまふを、見送りて添ひ臥したまへり。口おほひの側目より、なほかの末摘花、いとにほひやかにさし出でたり。見苦しのわざやと思さる。<BR>⏎
text06572<H4>第二章 若紫の物語</H4>275 
text06573 <A NAME="in21">[第一段 紫の君と鼻を赤く塗って戯れる]</A><BR>276 
d1574<P>⏎
cd2:1575-576 二条院におはしたれば、紫の君、いともうつくしき片生ひにて、「紅はかうなつかしきもありけり」と見ゆるに、無紋の桜の細長、なよらかに着なして、何心もなくてものしたまふさま、いみじうらうたし。古代の祖母君の御なごりにて、歯黒めも<A HREF="#k34">まだしかり</A><A NAME="t34">け</A>るを、ひきつくろはせたまへれば、眉のけざやかになりたるも、うつくしうきよらなり。「心から<A HREF="#k35">などか</A><A NAME="t35"></A>かう憂き世を見あつかふらむ。かく心苦しきものをも見てゐたらで」と、思しつつ、例の、もろともに雛遊びしたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
277 二条院におはしたれば、紫の君、いともうつくしき片生ひにて、「紅はかうなつかしきもありけり」と見ゆるに、無紋の桜の細長、なよらかに着なして、何心もなくてものしたまふさま、いみじうらうたし。古代の祖母君の御なごりにて、歯黒めも<A HREF="#k34">まだしかり</A><A NAME="t34">け</A>るを、ひきつくろはせたまへれば、眉のけざやかになりたるも、うつくしうきよらなり。「心から<A HREF="#k35">などか</A><A NAME="t35"></A>かう憂き世を見あつかふらむ。かく心苦しきものをも見てゐたらで」と、思しつつ、例の、もろともに雛遊びしたまふ。<BR>⏎
d1578<P>⏎
c1579 「まろがかくかたはになりなむ時、いかならむ」とのたまへば、<BR>⏎
279 「まろがかくかたはになりなむ時、いかならむ」とのたまへば、<BR>⏎
c1581 とてさもや染みつかむと、あやふく思ひたまへり。そら拭ごひをして、<BR>⏎
281 とてさもや染みつかむと、あやふく思ひたまへり。そら拭ごひをして、<BR>⏎
c1583 といとまめやかにのたまふを、いといとほしと思して、寄りて拭ごひたまへば、<BR>⏎
283 といとまめやかにのたまふを、いといとほしと思して、寄りて拭ごひたまへば、<BR>⏎
cd2:1585-586 と戯れたまふさま、いとをかしき妹背と見えたまへり。<BR>⏎
<P>⏎
285 と戯れたまふさま、いとをかしき妹背と見えたまへり。<BR>⏎
d1588<P>⏎
cd2:1589-590 「紅の花ぞあやなくうとまるる<BR>⏎
  梅の立ち枝はなつかしけれど<BR>⏎
287 「紅の花ぞあやなくうとまるる<BR>  梅の立ち枝はなつかしけれど<BR>⏎
d1592<P>⏎
c1593 とあいなくうちうめかれたまふ。<BR>⏎
289 とあいなくうちうめかれたまふ。<BR>⏎
d2595-596
<P>⏎
text06597 <a name="in31">【出典】<BR>291 
c1598</a><A NAME="no1">出典1</A> 欣然得三友 三友者為誰 琴罷*挙酒 酒罷*吟詩 三友逓相引 循環無已時(白氏文集巻六二-二九八五 北窓三友 *「すなはち」)<A HREF="#te1">(戻)</A><BR>⏎
292<A NAME="no1">出典1</A> 欣然得三友 三友者為誰 琴罷*挙酒 酒罷*吟詩 三友逓相引 循環無已時(白氏文集巻六二-二九八五 北窓三友 *「すなはち」)<A HREF="#te1">(戻)</A><BR>⏎
d1612
text06613<p> <a name="in32">【校訂】<BR>306 
c1615</a><A NAME="k01">校訂1</A> 内裏に--(/+うちに)<A HREF="#t01">(戻)</A><BR>⏎
308<A NAME="k01">校訂1</A> 内裏に--(/+うちに)<A HREF="#t01">(戻)</A><BR>⏎
d1651</p>⏎
d1658</p>⏎
i0354
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First updated 9/20/1996(ver.1-1)<BR>⏎
8<BODY>⏎
cd3:210-12Last updated 9/20/2010(ver.2-2)<BR>⏎
渋谷栄一校訂(C)<BR>⏎
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9-10<ADDRESS>Last updated 9/20/2010(ver.2-2)<BR>⏎
渋谷栄一校訂(C)</ADDRESS>⏎
d114<P>⏎
i014
d136<P>⏎
d166<P>⏎
d168<P>⏎
d171<P>⏎
text0772 <H4>第一章 藤壺の物語 源氏、藤壺の御前で青海波を舞う</H4>65 
text0773 <A NAME="in11">[第一段 御前の試楽]</A><BR>66 
d174<P>⏎
d176<P>⏎
d178<P>⏎
cd2:179-80 入り方の日かげ、さやかにさしたるに、楽の声まさり、もののおもしろきほどに、同じ舞の足踏み、おももち、世に見えぬさまなり。詠などしたまへるは、「これや仏の御迦陵頻伽の声ならむ」と聞こゆ。おもしろくあはれなるに、帝涙を拭ひたまひ、上達部親王たちも、みな泣きたまひぬ。詠はてて、袖うちなほしたまへるに、待ちとりたる楽のにぎははしきに、顔の色あひまさりて、常よりも光ると見えたまふ。<BR>⏎
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69 入り方の日かげ、さやかにさしたるに、楽の声まさり、もののおもしろきほどに、同じ舞の足踏み、おももち、世に見えぬさまなり。詠などしたまへるは、「これや仏の御迦陵頻伽の声ならむ」と聞こゆ。おもしろくあはれなるに、帝涙を拭ひたまひ、上達部親王たちも、みな泣きたまひぬ。詠はてて、袖うちなほしたまへるに、待ちとりたる楽のにぎははしきに、顔の色あひまさりて、常よりも光ると見えたまふ。<BR>⏎
d182<P>⏎
c185 と聞こえたまへば、あいなう、御いらへ聞こえにくくて、<BR>⏎
73 と聞こえたまへば、あいなう、御いらへ聞こえにくくて、<BR>⏎
d188<P>⏎
text0789 <A NAME="in12">[第二段 試楽の翌日、源氏藤壺と和歌を贈答]</A><BR>76 
d190<P>⏎
d193<P>⏎
cd3:194-96  もの思ふに立ち舞ふべくもあらぬ身の<BR>⏎
  袖うち振りし心知りきや<BR>⏎
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79  もの思ふに立ち舞ふべくもあらぬ身の<BR>  袖うち振りし心知りきや<BR>⏎
d199<P>⏎
cd3:1100-102 「唐人の袖振ることは遠けれど<BR>⏎
  立ち居につけてあはれとは見き<BR>⏎
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82 「唐人の袖振ることは遠けれど<BR>  立ち居につけてあはれとは見き<BR>⏎
d1105<P>⏎
text07106 <A NAME="in13">[第三段 十月十余日、朱雀院へ行幸]</A><BR>85 
d1107<P>⏎
d1109<P>⏎
d1111<P>⏎
d1113<P>⏎
d1115<P>⏎
d1117<P>⏎
d1119<P>⏎
d1121<P>⏎
text07122 <A NAME="in14">[第四段 葵の上、源氏の態度を不快に思う]</A><BR>93 
d1123<P>⏎
cd2:1124-125 宮は、そのころまかでたまひぬれば、例の、隙もやとうかがひありきたまふをことにて、大殿には騒がれたまふ。いとどかの若草たづね取りたまひてしを、「二条院には人迎へ<A HREF="#k04">たまふ</A><A NAME="t04">な</A>り」と人の聞こえければ、いと心づきなしと思いたり。<BR>⏎
<P>⏎
94 宮は、そのころまかでたまひぬれば、例の、隙もやとうかがひありきたまふをことにて、大殿には騒がれたまふ。いとどかの若草たづね取りたまひてしを、「二条院には人迎へ<A HREF="#k04">たまふ</A><A NAME="t04">な</A>り」と人の聞こえければ、いと心づきなしと思いたり。<BR>⏎
d1127<P>⏎
text07128 <H4>第二章 紫の物語 源氏、紫の君に心慰める</H4>96 
text07129 <A NAME="in21">[第一段 紫の君、源氏を慕う]</A><BR>97 
d1130<P>⏎
cd2:1131-132 幼き人は、見ついたまふ<A HREF="#k06">ままに</A><A NAME="t06">、</A>いとよき心ざま、容貌にて、何心もなくむつれまとはしきこえたまふ。「しばし殿の内の人にも誰れと知らせじ」と思して、なほ離れたる対に、御しつらひ二なくして、我も明け暮れ入りおはして、よろづの御ことどもを教へきこえたまひ、手本書きて習はせなどしつつ、ただほかなりける御むすめを迎へたまへらむやうにぞ思したる。<BR>⏎
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98 幼き人は、見ついたまふ<A HREF="#k06">ままに</A><A NAME="t06">、</A>いとよき心ざま、容貌にて、何心もなくむつれまとはしきこえたまふ。「しばし殿の内の人にも誰れと知らせじ」と思して、なほ離れたる対に、御しつらひ二なくして、我も明け暮れ入りおはして、よろづの御ことどもを教へきこえたまひ、手本書きて習はせなどしつつ、ただほかなりける御むすめを迎へたまへらむやうにぞ思したる。<BR>⏎
d1134<P>⏎
d1136<P>⏎
cd2:1137-138 二三日内裏にさぶらひ、大殿にもおはする折は、いといたく<A HREF="#k07">屈し</A><A NAME="t07">な</A>どしたまへば、心苦しうて、母なき子持たらむ心地して、歩きも静心なくおぼえたまふ。僧都は、かくなむ、と聞きたまひて、あやしきものから、うれしとなむ思ほしける。かの御法事などしたまふにも、いかめしうとぶらひきこえたまへり。<BR>⏎
<P>⏎
101 二三日内裏にさぶらひ、大殿にもおはする折は、いといたく<A HREF="#k07">屈し</A><A NAME="t07">な</A>どしたまへば、心苦しうて、母なき子持たらむ心地して、歩きも静心なくおぼえたまふ。僧都は、かくなむ、と聞きたまひて、あやしきものから、うれしとなむ思ほしける。かの御法事などしたまふにも、いかめしうとぶらひきこえたまへり。<BR>⏎
text07139 <A NAME="in22">[第二段 藤壺の三条宮邸に見舞う]</A><BR>102 
d1140<P>⏎
d1142<P>⏎
d1144<P>⏎
d1146<P>⏎
d1148<P>⏎
cd2:1149-150 などすくすくしうて出でたまひぬ。命婦も、たばかりきこえむかたなく、宮の御けしきも、ありしよりは、いとど憂きふしに思しおきて、心とけぬ御けしきも、恥づかしくいとほしければ、何のしるしもなくて、過ぎゆく。「はかなの契りや」と思し乱るること、かたみに尽きせず。<BR>⏎
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107 などすくすくしうて出でたまひぬ。命婦も、たばかりきこえむかたなく、宮の御けしきも、ありしよりは、いとど憂きふしに思しおきて、心とけぬ御けしきも、恥づかしくいとほしければ、何のしるしもなくて、過ぎゆく。「はかなの契りや」と思し乱るること、かたみに尽きせず。<BR>⏎
text07151 <A NAME="in23">[第三段 故祖母君の服喪明ける]</A><BR>108 
d1152<P>⏎
cd2:1153-154 少納言は、「おぼえずをかしき世を見るかな。これも故尼上の、この御ことを思して、御行ひにも祈りきこえたまひし仏の御しるしにや」とおぼゆ。「大殿、いとやむごとなくておはします。ここかしこあまたかかづらひたまふをぞ、まことに大人びたまはむほどは、むつかしきこともや」とおぼえける。されどかくとりわきたまへる御おぼえのほどは、いと頼もしげなりかし。<BR>⏎
<P>⏎
109 少納言は、「おぼえずをかしき世を見るかな。これも故尼上の、この御ことを思して、御行ひにも祈りきこえたまひし仏の御しるしにや」とおぼゆ。「大殿、いとやむごとなくておはします。ここかしこあまたかかづらひたまふをぞ、まことに大人びたまはむほどは、むつかしきこともや」とおぼえける。されどかくとりわきたまへる御おぼえのほどは、いと頼もしげなりかし。<BR>⏎
d1156<P>⏎
text07157 <A NAME="in24">[第四段 新年を迎える]</A><BR>111 
d1158<P>⏎
cd3:2160-162 「今日よりは大人しくなりたまへりや」<BR>⏎
 とてうち笑みたまへる、いとめでたう愛敬づきたまへり。いつしか、雛をし据ゑて、そそきゐたまへる。三尺の御厨子一具に、品々しつらひ据ゑて、また小さき屋ども作り集めて、たてまつりたまへるを、ところせきまで遊びひろげたまへり。<BR>⏎
<P>⏎
113-114 「今日よりは大人しくなりたまへりや」<BR>⏎
 とてうち笑みたまへる、いとめでたう愛敬づきたまへり。いつしか、雛をし据ゑて、そそきゐたまへる。三尺の御厨子一具に、品々しつらひ据ゑて、また小さき屋ども作り集めて、たてまつりたまへるを、ところせきまで遊びひろげたまへり。<BR>⏎
cd4:3164-167 とていと大事と思いたり。<BR>⏎
 「げにいと心なき人のしわざにもはべるなるかな。今つくろはせはべらむ。今日は<A HREF="#k10">言忌</A><A NAME="t10">し</A>て、な泣いたまひそ」<BR>⏎
 とて出でたまふけしき、ところせきを、人びと端に出でて見たてまつれば、姫君も立ち出でて見たてまつりたまひて、雛のなかの源氏の君つくろひ立てて、内裏に参らせなどしたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
116-118 とていと大事と思いたり。<BR>⏎
 「げにいと心なき人のしわざにもはべるなるかな。今つくろはせはべらむ。今日は<A HREF="#k10">言忌</A><A NAME="t10">し</A>て、な泣いたまひそ」<BR>⏎
 とて出でたまふけしき、ところせきを、人びと端に出でて見たてまつれば、姫君も立ち出でて見たてまつりたまひて、雛のなかの源氏の君つくろひ立てて、内裏に参らせなどしたまふ。<BR>⏎
cd2:1169-170<P> など少納言聞こゆ。御遊びにのみ心入れたまへれば、恥づかしと思はせたてまつらむとて言へば、心のうちに、「我は、さは夫まうけてけり。この人びとの夫とてあるは、醜くこそあれ。我はかくをかしげに若き人をも持たりけるかな」と、今ぞ思ほし知りける。さはいへど、御年の数添ふしるしなめりかし。かく幼き御けはひの、ことに触れてしるければ、殿のうちの人びとも、あやしと思ひけれど、いとかう世づかぬ御添臥ならむとは思はざりけり。<BR>⏎
<P>⏎
120 など少納言聞こゆ。御遊びにのみ心入れたまへれば、恥づかしと思はせたてまつらむとて言へば、心のうちに、「我は、さは夫まうけてけり。この人びとの夫とてあるは、醜くこそあれ。我はかくをかしげに若き人をも持たりけるかな」と、今ぞ思ほし知りける。さはいへど、御年の数添ふしるしなめりかし。かく幼き御けはひの、ことに触れてしるければ、殿のうちの人びとも、あやしと思ひけれど、いとかう世づかぬ御添臥ならむとは思はざりけり。<BR>⏎
text07171 <H4>第三章 藤壺の物語(二) 二月に男皇子を出産</H4>121 
text07172 <A NAME="in31">[第一段 左大臣邸に赴く]</A><BR>122 
d1173<P>⏎
d1177<P>⏎
d1179<P>⏎
d1181<P>⏎
c1182 「これは内宴などいふこともはべるなるを、さやうの折にこそ」<BR>⏎
128 「これは内宴などいふこともはべるなるを、さやうの折にこそ」<BR>⏎
cd3:2184-186 「それはまされるもはべり。これはただ目馴れぬさまなればなむ」<BR>⏎
 とてしひてささせたてまつりたまふ。げによろづにかしづき立てて見たてまつりたまふに、生けるかひあり、「たまさかにても、かからむ人を出だし入れて見むに、ますことあらじ」と見えたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
130-131 「それはまされるもはべり。これはただ目馴れぬさまなればなむ」<BR>⏎
 とてしひてささせたてまつりたまふ。げによろづにかしづき立てて見たてまつりたまふに、生けるかひあり、「たまさかにても、かからむ人を出だし入れて見むに、ますことあらじ」と見えたまふ。<BR>⏎
text07187 <A NAME="in32">[第二段 二月十余日、藤壺に皇子誕生]</A><BR>132 
d1188<P>⏎
c1189 参座しにとても、あまた所も歩きたまはず、内裏春宮一院ばかり、さては藤壺の三条の宮にぞ参りたまへる。<BR>⏎
133 参座しにとても、あまた所も歩きたまはず、内裏春宮一院ばかり、さては藤壺の三条の宮にぞ参りたまへる。<BR>⏎
cd2:1192-193 と人びとめできこゆるを、宮、几帳の隙より、ほの見たまふにつけても、思ほすことしげかりけり。<BR>⏎
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136 と人びとめできこゆるを、宮、几帳の隙より、ほの見たまふにつけても、思ほすことしげかりけり。<BR>⏎
d1195<P>⏎
d1197<P>⏎
d1199<P>⏎
c1200 主上の、いつしかとゆかしげに思し召したること、限りなし。かの人知れぬ御心にも、いみじう心もとなくて、人まに参りたまひて、<BR>⏎
140 主上の、いつしかとゆかしげに思し召したること、限りなし。かの人知れぬ御心にも、いみじう心もとなくて、人まに参りたまひて、<BR>⏎
cd2:1204-205 とて見せたてまつりたまはぬも、ことわりなり。さるはいとあさましう、めづらかなるまで写し取りたまへるさま、違ふべくもあらず。宮の、御心の鬼にいと苦しく、「人の見たてまつるも、あやしかりつるほどのあやまりを、まさに人の思ひとがめじや。さらぬはかなきことをだに、疵を求むる世に、いかなる名のつひに漏り出づべきにか」と思しつづくるに、身のみぞいと心憂き。<BR>⏎
<P>⏎
144 とて見せたてまつりたまはぬも、ことわりなり。さるはいとあさましう、めづらかなるまで写し取りたまへるさま、違ふべくもあらず。宮の、御心の鬼にいと苦しく、「人の見たてまつるも、あやしかりつるほどのあやまりを、まさに人の思ひとがめじや。さらぬはかなきことをだに、疵を求むる世に、いかなる名のつひに漏り出づべきにか」と思しつづくるに、身のみぞいと心憂き。<BR>⏎
c1207 「などかうしもあながちにのたまはすらむ。今、おのづから見たてまつらせたまひてむ」<BR>⏎
146 「などかうしもあながちにのたまはすらむ。今、おのづから見たてまつらせたまひてむ」<BR>⏎
cd4:2210-213 とて泣いたまふさまぞ、心苦しき。<BR>⏎
<P>⏎
 「いかさまに昔結べる契りにて<BR>⏎
  この世にかかるなかの隔てぞ<BR>⏎
149-150 とて泣いたまふさまぞ、心苦しき。<BR>⏎
 「いかさまに昔結べる契りにて<BR>  この世にかかるなかの隔てぞ<BR>⏎
d1215<P>⏎
d1218<P>⏎
cd2:1219-220 「見ても思ふ見ぬはたいかに嘆くらむ<BR>⏎
  こや世の人の<A HREF="#no1">まどふてふ闇</A><BR>⏎
154 「見ても思ふ見ぬはたいかに嘆くらむ<BR>  こや世の人の<A HREF="#no1">まどふてふ闇</A><BR>⏎
d1222<P>⏎
c1223 と忍びて聞こえけり。<BR>⏎
156 と忍びて聞こえけり。<BR>⏎
d1225<P>⏎
text07226 <A NAME="in33">[第三段 藤壺、皇子を伴って四月に宮中に戻る]</A><BR>158 
d1227<P>⏎
d1229<P>⏎
cd3:2231-233 「御子たち、あまたあれど、そこをのみなむ、かかるほどより明け暮れ見し。されば思ひわたさるるにやあらむ。いとよくこそおぼえたれ。いと小さきほどは、皆かくのみあるわざにやあらむ」<BR>⏎
 とていみじくうつくしと思ひきこえさせたまへり。<BR>⏎
<P>⏎
161-162 「御子たち、あまたあれど、そこをのみなむ、かかるほどより明け暮れ見し。されば思ひわたさるるにやあらむ。いとよくこそおぼえたれ。いと小さきほどは、皆かくのみあるわざにやあらむ」<BR>⏎
 とていみじくうつくしと思ひきこえさせたまへり。<BR>⏎
d1235<P>⏎
d1237<P>⏎
cd3:1238-240 「<A HREF="#no2">よそへつつ見る</A><A NAME="te2">に</A>心はなぐさまで<BR>⏎
  露けさまさる撫子の花<BR>⏎
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165 「<A HREF="#no2">よそへつつ見る</A><A NAME="te2">に</A>心はなぐさまで<BR>  露けさまさる撫子の花<BR>⏎
d1245<P>⏎
cd5:2246-250 「袖濡るる露のゆかりと思ふにも<BR>⏎
  なほ疎まれぬ大和撫子」<BR>⏎
<P>⏎
 とばかりほのかに書きさしたるやうなるを、よろこびながらたてまつれる、「例のことなれば、しるしあらじかし」と、くづほれて眺め臥したまへるに、胸うち騒ぎて、いみじくうれしきにも涙落ちぬ。<BR>⏎
<P>⏎
170-171 「袖濡るる露のゆかりと思ふにも<BR>  なほ疎まれぬ大和撫子」<BR>⏎
 とばかりほのかに書きさしたるやうなるを、よろこびながらたてまつれる、「例のことなれば、しるしあらじかし」と、くづほれて眺め臥したまへるに、胸うち騒ぎて、いみじくうれしきにも涙落ちぬ。<BR>⏎
text07251 <A NAME="in34">[第四段 源氏、紫の君に心を慰める]</A><BR>172 
d1252<P>⏎
c2259-260 「あな憎。かかること口馴れたまひにけりな。<A HREF="#no6">みるめに飽くは</A><A NAME="te6">、</A>まさなきことぞよ」<BR>⏎
 とて人召して、御琴取り寄せて弾かせたてまつりたまふ。<BR>⏎
179-180 「あな憎。かかること口馴れたまひにけりな。<A HREF="#no6">みるめに飽くは</A><A NAME="te6">、</A>まさなきことぞよ」<BR>⏎
 とて人召して、御琴取り寄せて弾かせたてまつりたまふ。<BR>⏎
c1262 とて平調におしくだして調べたまふ。かき合はせばかり弾きて、さしやりたまへれば、え怨じ果てず、いとうつくしう弾きたまふ。<BR>⏎
182 とて平調におしくだして調べたまふ。かき合はせばかり弾きて、さしやりたまへれば、え怨じ果てず、いとうつくしう弾きたまふ。<BR>⏎
d1264<P>⏎
d1270<P>⏎
cd3:2271-273 「我も、一日も見たてまつらぬはいと苦しうこそ<A HREF="#k15">あれど</A><A NAME="t15">、</A>幼くおはするほどは、心やすく思ひきこえて、まづくねくねしく怨むる人の心破らじと思ひて、<A HREF="#k16">むつかしければ</A><A NAME="t16">、</A>しばしかくもありくぞ。おとなしく見なしては、他へもさらに行くまじ。人の怨み負はじなど思ふも、世に長うありて、思ふさまに見えたてまつらむと思ふぞ」<BR>⏎
<P>⏎
 などこまごまと語らひきこえたまへば、さすがに恥づかしうて、ともかくもいらへきこえたまはず。やがて御膝に寄りかかりて、寝入りたまひぬれば、いと心苦しうて、<BR>⏎
189-190 「我も、一日も見たてまつらぬはいと苦しうこそ<A HREF="#k15">あれど</A><A NAME="t15">、</A>幼くおはするほどは、心やすく思ひきこえて、まづくねくねしく怨むる人の心破らじと思ひて、<A HREF="#k16">むつかしければ</A><A NAME="t16">、</A>しばしかくもありくぞ。おとなしく見なしては、他へもさらに行くまじ。人の怨み負はじなど思ふも、世に長うありて、思ふさまに見えたてまつらむと思ふぞ」<BR>⏎
 などこまごまと語らひきこえたまへば、さすがに恥づかしうて、ともかくもいらへきこえたまはず。やがて御膝に寄りかかりて、寝入りたまひぬれば、いと心苦しうて、<BR>⏎
cd4:3278-281 「さらば寝たまひねかし」<BR>⏎
 と危ふげに思ひ<A HREF="#k17">たまへれば</A><A NAME="t17">、</A>かかるを見捨てては、いみじき道なりとも、おもむきがたくおぼえたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
 かやうにとどめられたまふ折々なども多かるを、おのづから漏り聞く人、大殿に聞こえければ、<BR>⏎
195-197 「さらば寝たまひねかし」<BR>⏎
 と危ふげに思ひ<A HREF="#k17">たまへれば</A><A NAME="t17">、</A>かかるを見捨てては、いみじき道なりとも、おもむきがたくおぼえたまふ。<BR>⏎
 かやうにとどめられたまふ折々なども多かるを、おのづから漏り聞く人、大殿に聞こえければ、<BR>⏎
cd2:1285-286 などさぶらふ人びとも聞こえあへり。<BR>⏎
<P>⏎
201 などさぶらふ人びとも聞こえあへり。<BR>⏎
cd5:3288-292 「いとほしく、大臣の思ひ嘆かる<A HREF="#k18">なることも、げにものげなかりしほどを、おほなおほなかくものしたる心を、さばかりのことたどらぬほどにはあらじを。などか情けなくはもてなすなるらむ」<BR>⏎
 と</A><A NAME="t18"></A>のたまはすれど、かしこまりたるさまにて、御いらへも聞こえたまはねば、「心ゆかぬなめり」と、いとほしく思し召す。<BR>⏎
<P>⏎
 「さるは好き好きしううち乱れて、この見ゆる女房にまれ、またこなたかなたの人びとなど、なべてならずなども見え聞こえざめるを、いかなるもののくまに隠れありきて、かく人にも怨みらるらむ」とのたまはす。<BR>⏎
<P>⏎
203-205 「いとほしく、大臣の思ひ嘆かる<A HREF="#k18">なることも、げにものげなかりしほどを、おほなおほなかくものしたる心を、さばかりのことたどらぬほどにはあらじを。などか情けなくはもてなすなるらむ」<BR>⏎
 と</A><A NAME="t18"></A>のたまはすれど、かしこまりたるさまにて、御いらへも聞こえたまはねば、「心ゆかぬなめり」と、いとほしく思し召す。<BR>⏎
 「さるは好き好きしううち乱れて、この見ゆる女房にまれ、またこなたかなたの人びとなど、なべてならずなども見え聞こえざめるを、いかなるもののくまに隠れありきて、かく人にも怨みらるらむ」とのたまはす。<BR>⏎
text07293 <H4>第四章 源典侍の物語 老女との好色事件</H4>206 
text07294 <A NAME="in41">[第一段 源典侍の風評]</A><BR>207 
d1295<P>⏎
cd4:2296-299 帝の御年、ねびさせたまひぬれど、かうやうの方、え過ぐさせたまはず、采女、女蔵人などをも、容貌、心あるをば、ことにもてはやし思し召したれば、よしある宮仕へ人多かるころなり。はかなきことをも言ひ触れたまふには、もて離るることもありがたきに、目馴るるにやあらむ、「げにぞあやしう好いたまはざめる」と、試みに戯れ事を聞こえかかりなどする折あれど、情けなからぬほどにうち<A HREF="#k19">いらへて</A><A NAME="t19">、</A>まことには乱れたまはぬを、「まめやかにさうざうし」と思ひきこゆる人もあり。<BR>⏎
<P>⏎
 年いたう老いたる典侍、人もやむごとなく、心ばせあり、あてにおぼえ高くはありながら、いみじうあだめいたる心ざまにて、そなたには重からぬあるを、「かうさだ過ぐるまで、などさしも乱るらむ」と、いぶかしくおぼえたまひければ、戯れ事言ひ触れて試みたまふに、似げなくも思はざりける。あさまし、と思しながら、さすがにかかるもをかしうて、ものなどのたまひてけれど、人の漏り聞かむも、古めかしきほどなれば、つれなくもてなしたまへるを、女は、いとつらしと思へり。<BR>⏎
<P>⏎
208-209 帝の御年、ねびさせたまひぬれど、かうやうの方、え過ぐさせたまはず、采女、女蔵人などをも、容貌、心あるをば、ことにもてはやし思し召したれば、よしある宮仕へ人多かるころなり。はかなきことをも言ひ触れたまふには、もて離るることもありがたきに、目馴るるにやあらむ、「げにぞあやしう好いたまはざめる」と、試みに戯れ事を聞こえかかりなどする折あれど、情けなからぬほどにうち<A HREF="#k19">いらへて</A><A NAME="t19">、</A>まことには乱れたまはぬを、「まめやかにさうざうし」と思ひきこゆる人もあり。<BR>⏎
 年いたう老いたる典侍、人もやむごとなく、心ばせあり、あてにおぼえ高くはありながら、いみじうあだめいたる心ざまにて、そなたには重からぬあるを、「かうさだ過ぐるまで、などさしも乱るらむ」と、いぶかしくおぼえたまひければ、戯れ事言ひ触れて試みたまふに、似げなくも思はざりける。あさまし、と思しながら、さすがにかかるもをかしうて、ものなどのたまひてけれど、人の漏り聞かむも、古めかしきほどなれば、つれなくもてなしたまへるを、女は、いとつらしと思へり。<BR>⏎
text07300 <A NAME="in42">[第二段 源氏、源典侍と和歌を詠み交わす]</A><BR>210 
d1301<P>⏎
d1303<P>⏎
cd5:2306-310 とて何くれとのたまふも、似げなく、人や見つけむと苦しきを、女はさも思ひたらず、<BR>⏎
<P>⏎
 「君し来ば<A HREF="#no9">手なれの駒に</A><A NAME="te9">刈</A>り飼はむ<BR>⏎
  盛り過ぎたる下葉なりとも」<BR>⏎
<P>⏎
214-215 とて何くれとのたまふも、似げなく、人や見つけむと苦しきを、女はさも思ひたらず、<BR>⏎
 「君し来ば<A HREF="#no9">手なれの駒に</A><A NAME="te9">刈</A>り飼はむ<BR>  盛り過ぎたる下葉なりとも」<BR>⏎
d1312<P>⏎
cd2:1313-314 「<A HREF="#no10">笹分けば</A><A NAME="te10">人</A>やとがめむいつとなく<BR>⏎
  駒なつくめる森の木隠れ<BR>⏎
217 「<A HREF="#no10">笹分けば</A><A NAME="te10">人</A>やとがめむいつとなく<BR>  駒なつくめる森の木隠れ<BR>⏎
d1316<P>⏎
c1317 とて立ちたまふを、ひかへて、<BR>⏎
219 とて立ちたまふを、ひかへて、<BR>⏎
c2320-321 「いま聞こえむ。思ひながらぞや」<BR>⏎
 とて引き放ちて出でたまふを、せめておよびて、「<A HREF="#no12">橋柱</A><A NAME="te12">」</A>と怨みかくるを、主上は御袿果てて、御障子より覗かせたまひけり。「似つかはしからぬあはひかな」と、いとをかしう思されて、<BR>⏎
222-223 「いま聞こえむ。思ひながらぞや」<BR>⏎
 とて引き放ちて出でたまふを、せめておよびて、「<A HREF="#no12">橋柱</A><A NAME="te12">」</A>と怨みかくるを、主上は御袿果てて、御障子より覗かせたまひけり。「似つかはしからぬあはひかな」と、いとをかしう思されて、<BR>⏎
cd2:1323-324 とて笑はせたまへば、内侍は、なままばゆけれど、憎からぬ人ゆゑは、<A HREF="#no13">濡衣</A><A NAME="te13">を</A>だに着まほしがるたぐひもあなればにや、いたうもあらがひきこえさせず。<BR>⏎
<P>⏎
225 とて笑はせたまへば、内侍は、なままばゆけれど、憎からぬ人ゆゑは、<A HREF="#no13">濡衣</A><A NAME="te13">を</A>だに着まほしがるたぐひもあなればにや、いたうもあらがひきこえさせず。<BR>⏎
d1327<P>⏎
text07328 <A NAME="in43">[第三段 温明殿付近で密会中、頭中将に発見され脅される]</A><BR>228 
d1329<P>⏎
d1331<P>⏎
c1333 <A NAME="te14">と</A>声はいとをかしうて歌ふぞ、すこし心づきなき。「鄂州にありけむ昔の人も、かくやをかしかりけむ」と、耳とまりて聞きたまふ。弾きやみて、いといたう思ひ乱れたるけはひなり。君、「<A HREF="#no15">東屋</A><A NAME="te15">」</A>を忍びやかに歌ひて寄りたまへるに、<BR>⏎
231 <A NAME="te14">と</A>声はいとをかしうて歌ふぞ、すこし心づきなき。「鄂州にありけむ昔の人も、かくやをかしかりけむ」と、耳とまりて聞きたまふ。弾きやみて、いといたう思ひ乱れたるけはひなり。君、「<A HREF="#no15">東屋</A><A NAME="te15">」</A>を忍びやかに歌ひて寄りたまへるに、<BR>⏎
cd12:5335-346 とうち添へたるも、例に違ひたる心地ぞする。<BR>⏎
<P>⏎
 「立ち濡るる人しもあらじ東屋に<BR>⏎
  うたてもかかる雨そそきかな」<BR>⏎
<P>⏎
 とうち嘆くを、我ひとりしも聞き負ふまじけれど、「うとましや、何ごとをかくまでは」と、おぼゆ。<BR>⏎
<P>⏎
 「人妻はあなわづらはし東屋の<BR>⏎
  真屋のあまりも馴れじとぞ思ふ」<BR>⏎
<P>⏎
 とてうち過ぎなまほしけれど、「あまりはしたなくや」と思ひ返して、人に従へば、すこしはやりかなる戯れ言など言ひかはして、これもめづらしき心地ぞしたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
233-237 とうち添へたるも、例に違ひたる心地ぞする。<BR>⏎
 「立ち濡るる人しもあらじ東屋に<BR>  うたてもかかる雨そそきかな」<BR>⏎
 とうち嘆くを、我ひとりしも聞き負ふまじけれど、「うとましや、何ごとをかくまでは」と、おぼゆ。<BR>⏎
 「人妻はあなわづらはし東屋の<BR>  真屋のあまりも馴れじとぞ思ふ」<BR>⏎
 とてうち過ぎなまほしけれど、「あまりはしたなくや」と思ひ返して、人に従へば、すこしはやりかなる戯れ言など言ひかはして、これもめづらしき心地ぞしたまふ。<BR>⏎
d1348<P>⏎
cd4:2350-353<P> 「あなわづらはし。出でなむよ。<a href="#k23">蜘蛛</a><a name="t23">の</a><A HREF="#no16">ふるまひは、しるかり</A><A NAME="te16">つ</A>らむものを。心憂く、すかしたまひけるよ」<BR>⏎
<P>⏎
 とて直衣ばかりを取りて、屏風のうしろに入りたまひぬ。中将、をかしきを念じて、引きたてまつる屏風のもとに寄りて、ごほごほとたたみ寄せて、おどろおどろしく騒がすに、内侍は、ねびたれど、いたくよしばみなよびたる人の、先々もかやうにて、心動かす折々ありければ、ならひて、いみじく心あわたたしきにも、「この君をいかにしきこえぬるか」とわびしさに、ふるふふるふつとひかへたり。「誰れと知られで出でなばや」と思せど、しどけなき姿にて、冠などうちゆがめて走らむうしろで思ふに、「いとをこなるべし」と、思しやすらふ。<BR>⏎
<P>⏎
240-241 「あなわづらはし。出でなむよ。<A HREF="#k23">蜘蛛</A><A NAME="t23">の</A><A HREF="#no16">ふるまひは、しるかり</A><A NAME="te16">つ</A>らむものを。心憂く、すかしたまひけるよ」<BR>⏎
 とて直衣ばかりを取りて、屏風のうしろに入りたまひぬ。中将、をかしきを念じて、引きたてまつる屏風のもとに寄りて、ごほごほとたたみ寄せて、おどろおどろしく騒がすに、内侍は、ねびたれど、いたくよしばみなよびたる人の、先々もかやうにて、心動かす折々ありければ、ならひて、いみじく心あわたたしきにも、「この君をいかにしきこえぬるか」とわびしさに、ふるふふるふつとひかへたり。「誰れと知られで出でなばや」と思せど、しどけなき姿にて、冠などうちゆがめて走らむうしろで思ふに、「いとをこなるべし」と、思しやすらふ。<BR>⏎
cd3:2356-358 と向ひて手をするに、ほとほと笑ひぬべし。好ましう若やぎてもてなしたるうはべこそ、さてもありけれ、五十七八の人の、うちとけてもの言ひ騒げるけはひ、えならぬ二十の若人たちの御なかにてもの怖ぢしたる、いとつきなし。かうあらぬさまにもてひがめて、恐ろしげなるけしきを見すれど、なかなかしるく見つけたまひて、「我と知りて、ことさらにするなりけり」と、をこになりぬ。「その人なめり」と見たまふに、いとをかしければ、太刀抜きたるかひなをとらへて、いといたうつみたまへれば、ねたきものから、え堪へで笑ひぬ。<BR>⏎
<P>⏎
 「まことは<A HREF="#k24">うつし心</A><A NAME="t24">か</A>とよ。戯れにくしや。いでこの直衣着む」<BR>⏎
244-245 と向ひて手をするに、ほとほと笑ひぬべし。好ましう若やぎてもてなしたるうはべこそ、さてもありけれ、五十七八の人の、うちとけてもの言ひ騒げるけはひ、えならぬ二十の若人たちの御なかにてもの怖ぢしたる、いとつきなし。かうあらぬさまにもてひがめて、恐ろしげなるけしきを見すれど、なかなかしるく見つけたまひて、「我と知りて、ことさらにするなりけり」と、をこになりぬ。「その人なめり」と見たまふに、いとをかしければ、太刀抜きたるかひなをとらへて、いといたうつみたまへれば、ねたきものから、え堪へで笑ひぬ。<BR>⏎
 「まことは<A HREF="#k24">うつし心</A><A NAME="t24">か</A>とよ。戯れにくしや。いでこの直衣着む」<BR>⏎
cd5:3360-364 「さらばもろともにこそ」<BR>⏎
 とて中将の帯をひき解きて脱がせたまへば、脱がじとすまふを、とかくひきしろふほどに、ほころびはほろほろと絶えぬ。中将、<BR>⏎
<P>⏎
 「つつむめる名や漏り出でむ引きかはし<BR>⏎
  かくほころぶる中の衣に<BR>⏎
247-249 「さらばもろともにこそ」<BR>⏎
 とて中将の帯をひき解きて脱がせたまへば、脱がじとすまふを、とかくひきしろふほどに、ほころびはほろほろと絶えぬ。中将、<BR>⏎
 「つつむめる名や漏り出でむ引きかはし<BR>  かくほころぶる中の衣に<BR>⏎
d1366<P>⏎
d1368<P>⏎
cd3:1369-371 「隠れなきものと知る知る夏衣<BR>⏎
  着たるを薄き心とぞ見る」<BR>⏎
<P>⏎
252 「隠れなきものと知る知る夏衣<BR>  着たるを薄き心とぞ見る」<BR>⏎
d1373<P>⏎
text07374 <A NAME="in44">[第四段 翌日、源氏と頭中将と宮中で応酬しあう]</A><BR>254 
d1375<P>⏎
d1377<P>⏎
cd2:1378-379 「恨みてもいふかひぞなきたちかさね<BR>⏎
  引きてかへりし波のなごりに<BR>⏎
256 「恨みてもいふかひぞなきたちかさね<BR>  引きてかへりし波のなごりに<BR>⏎
d1381<P>⏎
d1383<P>⏎
cd3:1384-386 「荒らだちし波に心は騒がねど<BR>⏎
  寄せけむ磯をいかが恨みぬ」<BR>⏎
<P>⏎
259 「荒らだちし波に心は騒がねど<BR>  寄せけむ磯をいかが恨みぬ」<BR>⏎
cd9:4389-397 中将、宿直所より、「これまづ綴ぢつけさせたまへ」とて、おし包みておこせたるを、「いかで取りつらむ」と、心やまし。「この帯を得ざらましかば」と思す。その色の紙に包みて、<BR>⏎
<P>⏎
 「なか絶えばかことや負ふと危ふさに<BR>⏎
  <A HREF="#no19">はなだの帯を取りて</A><A NAME="te19">だ</A>に見ず」<BR>⏎
<P>⏎
 とてやりたまふ。立ち返り、<BR>⏎
<P>⏎
 「君にかく引き取られぬる帯なれば<BR>⏎
  かくて絶えぬるなかとかこたむ<BR>⏎
262-265 中将、宿直所より、「これまづ綴ぢつけさせたまへ」とて、おし包みておこせたるを、「いかで取りつらむ」と、心やまし。「この帯を得ざらましかば」と思す。その色の紙に包みて、<BR>⏎
 「なか絶えばかことや負ふと危ふさに<BR>  <A HREF="#no19">はなだの帯を取りて</A><A NAME="te19">だ</A>に見ず」<BR>⏎
 とてやりたまふ。立ち返り、<BR>⏎
 「君にかく引き取られぬる帯なれば<BR>  かくて絶えぬるなかとかこたむ<BR>⏎
d1400<P>⏎
c2403-404 とていとねたげなるしり目なり。<BR>⏎
 「などてかさしもあらむ。立ちながら帰りけむ人こそ、いとほしけれ。まことは、憂しや、世の中よ」<BR>⏎
270-271 とていとねたげなるしり目なり。<BR>⏎
 「などてかさしもあらむ。立ちながら帰りけむ人こそ、いとほしけれ。まことは、憂しや、世の中よ」<BR>⏎
d1406<P>⏎
cd4:2407-410 <A HREF="#k27">さて</A><A NAME="t27"></A>そののち、ともすればことのついでごとに、言ひ迎ふるくさはひなるを、いとどものむつかしき人ゆゑと、思し知るべし。女は、なほいと艶に怨みかくるを、わびしと思ひありきたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
 中将は、妹の君にも聞こえ出でず、ただ「さるべき折の脅しぐさにせむ」とぞ思ひける。やむごとなき御腹々の親王たちだに、主上の御もてなしのこよなきにわづらはしがりて、いとことにさりきこえたまへるを、この中将は、「さらにおし消たれきこえじ」と、はかなきことにつけても、思ひいどみきこえたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
273-274 <A HREF="#k27">さて</A><A NAME="t27"></A>そののち、ともすればことのついでごとに、言ひ迎ふるくさはひなるを、いとどものむつかしき人ゆゑと、思し知るべし。女は、なほいと艶に怨みかくるを、わびしと思ひありきたまふ。<BR>⏎
 中将は、妹の君にも聞こえ出でず、ただ「さるべき折の脅しぐさにせむ」とぞ思ひける。やむごとなき御腹々の親王たちだに、主上の御もてなしのこよなきにわづらはしがりて、いとことにさりきこえたまへるを、この中将は、「さらにおし消たれきこえじ」と、はかなきことにつけても、思ひいどみきこえたまふ。<BR>⏎
d1412<P>⏎
text07413 <H4>第五章 藤壺の物語(三) 秋、藤壺は中宮、源氏は宰相となる</H4>276 
text07414 <A NAME="in51">[第一段 七月に藤壺女御、中宮に立つ]</A><BR>277 
d1415<P>⏎
cd3:2416-418 七月にぞ后ゐたまふめりし。源氏の君、宰相になりたまひぬ。帝下りゐさせたまはむの御心づかひ近うなりて、この若宮を坊に、と思ひきこえさせたまふに、御後見したまふべき人おはせず。御母方の、みな親王たちにて、源氏の公事しりたまふ筋ならねば、母宮をだに動きなきさまにしおきたてまつりて、強りにと思すになむありける。<BR>⏎
<P>⏎
 弘徽殿、いとど御心動きたまふ、ことわりなり。されど<BR>⏎
278-279 七月にぞ后ゐたまふめりし。源氏の君、宰相になりたまひぬ。帝下りゐさせたまはむの御心づかひ近うなりて、この若宮を坊に、と思ひきこえさせたまふに、御後見したまふべき人おはせず。御母方の、みな親王たちにて、源氏の公事しりたまふ筋ならねば、母宮をだに動きなきさまにしおきたてまつりて、強りにと思すになむありける。<BR>⏎
 弘徽殿、いとど御心動きたまふ、ことわりなり。されど<BR>⏎
cd12:5420-431 とぞ聞こえさせたまひける。「げに春宮の御母にて二十余年になりたまへる女御をおきたてまつりては、引き越したてまつりたまひがたきことなりかし」と、例の、やすからず世人も聞こえけり。<BR>⏎
<P>⏎
 参りたまふ夜の<A HREF="#k29">御供に</A><A NAME="t29">、宰相</A>君も仕うまつりたまふ。同じ宮と聞こゆるなかにも、后腹の皇女、玉光りかかやきて、たぐひなき御おぼえにさへものしたまへば、人もいとことに思ひかしづききこえたり。ましてわりなき御心には、御輿のうちも思ひやられて、いとど及びなき心地したまふに、すずろはしきまでなむ。<BR>⏎
<P>⏎
 「尽きもせぬ心の闇に暮るるかな<BR>⏎
  雲居に人を見るにつけても」<BR>⏎
<P>⏎
 とのみ独りごたれつつ、ものいとあはれなり。<BR>⏎
<P>⏎
 皇子は、およすけたまふ月日に従ひて、いと見たてまつり分きがたげなるを、宮、いと苦し、と思せど、思ひ寄る人なきなめりかし。げにいかさまに作り変へてかは、劣らぬ御ありさまは、世に出でものしたまはまし。月日の光の空に通ひたるやうに、ぞ世人も思へる。<BR>⏎

<P>⏎
281-285 とぞ聞こえさせたまひける。「げに春宮の御母にて二十余年になりたまへる女御をおきたてまつりては、引き越したてまつりたまひがたきことなりかし」と、例の、やすからず世人も聞こえけり。<BR>⏎
 参りたまふ夜の<A HREF="#k29">御供に</A><A NAME="t29">、宰相</A>君も仕うまつりたまふ。同じ宮と聞こゆるなかにも、后腹の皇女、玉光りかかやきて、たぐひなき御おぼえにさへものしたまへば、人もいとことに思ひかしづききこえたり。ましてわりなき御心には、御輿のうちも思ひやられて、いとど及びなき心地したまふに、すずろはしきまでなむ。<BR>⏎
 「尽きもせぬ心の闇に暮るるかな<BR>  雲居に人を見るにつけても」<BR>⏎
 とのみ独りごたれつつ、ものいとあはれなり。<BR>⏎
 皇子は、およすけたまふ月日に従ひて、いと見たてまつり分きがたげなるを、宮、いと苦し、と思せど、思ひ寄る人なきなめりかし。げにいかさまに作り変へてかは、劣らぬ御ありさまは、世に出でものしたまはまし。月日の光の空に通ひたるやうに、ぞ世人も思へる。<BR>⏎
text07432 <a name="in61">【出典】<BR>286 
c1433</a><A NAME="no1">出典1</A> 人の親の心は闇にあらねども子を思ふ道に惑ひぬるかな(後撰集雑一-一一)<A HREF="#te1">(戻)</A><BR>⏎
287<A NAME="no1">出典1</A> 人の親の心は闇にあらねども子を思ふ道に惑ひぬるかな(後撰集雑一-一一)<A HREF="#te1">(戻)</A><BR>⏎
d1453
text07454<p> <a name="in62">【校訂】<BR>307 
c1456</a><A NAME="k01">校訂1</A> 神無月の--神な月(月/+の<朱>)<A HREF="#t01">(戻)</A><BR>⏎
309<A NAME="k01">校訂1</A> 神無月の--神な月(月/+の<朱>)<A HREF="#t01">(戻)</A><BR>⏎
c1473<A NAME="k18">校訂18</A> なることも、げにものげなかりしほどを、おほなおほなかくものしたる心を、さばかりのことたどらぬほどにはあらじを。などか情けなくはもてなすなるらむ」と--*なるなと<A HREF="#t18">(戻)</A><BR>⏎
326<A NAME="k18">校訂18</A> なることも、げにものげなかりしほどを、おほなおほなかくものしたる心を、さばかりのことたどらぬほどにはあらじを。などか情けなくはもてなすなるらむ」と--*なるなと<A HREF="#t18">(戻)</A><BR>⏎
d1485</p>⏎
d1492</p>⏎
i1347
diffsrc/original/text08.htmlsrc/modified/text08.html
cd2:18-9<body background="wallppr063.gif">⏎
First updated 9/20/1996(ver.1-1)<BR>⏎
8<BODY>⏎
cd3:210-12Last updated 4/21/2009(ver.2-2)<BR>⏎
渋谷栄一校訂(C)<BR>⏎
<P
>⏎
9-10<ADDRESS>Last updated 4/21/2009(ver.2-2)<BR>⏎
渋谷栄一校訂(C)</ADDRESS>⏎
d114<P>⏎
i014
d134<P>⏎
d143<P>⏎
d146<P>⏎
text0847 <H4> 朧月夜の君物語 春の夜の出逢いの物語</H4>41 
text0848 <A NAME="in11">[第一段 二月二十余日、紫宸殿の桜花の宴]</A><BR>42 
d149<P>⏎
cd4:250-53 如月の二十日あまり、南殿の桜の宴せさせたまふ。后春宮の御局、左右にして、参う上りたまふ。弘徽殿の女御、中宮のかくておはするを、をりふしごとにやすからず思せど、物見にはえ過ぐしたまはで、参りたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
 日いとよく晴れて、空のけしき、鳥の声も、心地よげなるに、親王たち、上達部よりはじめて、その道のは皆、探韻賜はりて文つくりたまふ。宰相中将、「春といふ文字賜はれり」と、のたまふ声さへ、例の、人に異なり。次に頭中将、人の目移しも、ただならずおぼゆべかめれど、いとめやすくもてしづめて、声づかひなど、ものものしくすぐれたり。さての人びとは、皆臆しがちに鼻白める多かり。地下の人は、まして春宮の御才かしこくすぐれておはします、かかる方にやむごとなき人多くものしたまふころなるに、恥づかしく、はるばると曇りなき庭に立ち出づるほど、はしたなくて、やすきことなれど、苦しげなり。年老いたる博士どもの、なりあやしくやつれて、例馴れたるも、あはれに、さまざま御覧ずるなむ、をかしかりける。<BR>⏎
<P>⏎
43-44 如月の二十日あまり、南殿の桜の宴せさせたまふ。后春宮の御局、左右にして、参う上りたまふ。弘徽殿の女御、中宮のかくておはするを、をりふしごとにやすからず思せど、物見にはえ過ぐしたまはで、参りたまふ。<BR>⏎
 日いとよく晴れて、空のけしき、鳥の声も、心地よげなるに、親王たち、上達部よりはじめて、その道のは皆、探韻賜はりて文つくりたまふ。宰相中将、「春といふ文字賜はれり」と、のたまふ声さへ、例の、人に異なり。次に頭中将、人の目移しも、ただならずおぼゆべかめれど、いとめやすくもてしづめて、声づかひなど、ものものしくすぐれたり。さての人びとは、皆臆しがちに鼻白める多かり。地下の人は、まして春宮の御才かしこくすぐれておはします、かかる方にやむごとなき人多くものしたまふころなるに、恥づかしく、はるばると曇りなき庭に立ち出づるほど、はしたなくて、やすきことなれど、苦しげなり。年老いたる博士どもの、なりあやしくやつれて、例馴れたるも、あはれに、さまざま御覧ずるなむ、をかしかりける。<BR>⏎
d155<P>⏎
d158<P>⏎
d160<P>⏎
cd3:161-63 「おほかたに花の姿を見ましかば<BR>⏎
  つゆも心のおかれましやは」<BR>⏎
<P>⏎
49 「おほかたに花の姿を見ましかば<BR>  つゆも心のおかれましやは」<BR>⏎
d165<P>⏎
text0866 <A NAME="in12">[第二段 宴の後、朧月夜の君と出逢う]</A><BR>51 
d167<P>⏎
cd2:169-70 上達部おのおのあかれ、后春宮帰らせたまひぬれば、のどやかになりぬるに、月いと明うさし出でてをかしきを、源氏の君、酔ひ心地に、見過ぐしがたくおぼえたまひければ、「上の人びともうち休みて、かやうに思ひかけぬほどに、もしさりぬべき隙もやある」と、藤壺わたりを、わりなう忍びてうかがひありけど、語らふべき戸口も鎖してければ、うち嘆きて、なほあらじに、弘徽殿の細殿に立ち寄りたまへれば、三の口開きたり。<BR>⏎
<P>⏎
53 上達部おのおのあかれ、后春宮帰らせたまひぬれば、のどやかになりぬるに、月いと明うさし出でてをかしきを、源氏の君、酔ひ心地に、見過ぐしがたくおぼえたまひければ、「上の人びともうち休みて、かやうに思ひかけぬほどに、もしさりぬべき隙もやある」と、藤壺わたりを、わりなう忍びてうかがひありけど、語らふべき戸口も鎖してければ、うち嘆きて、なほあらじに、弘徽殿の細殿に立ち寄りたまへれば、三の口開きたり。<BR>⏎
d173<P>⏎
d175<P>⏎
cd11:777-87 「あなむくつけ。こは誰そ」とのたまへど、<BR>⏎
「何か疎ましき」とて、<BR>⏎
<P>⏎
 「深き夜のあはれを知るも入る月の<BR>⏎
  おぼろけならぬ契りとぞ思ふ」<BR>⏎
<P>⏎
 とてやをら抱き下ろして、戸は押し立てつ。あさましきにあきれたるさま、いとなつかしうをかしげなり。わななくわななく、<BR>⏎
 「ここに人」<BR>⏎
 とのたまへど、<BR>⏎
 「まろは皆人に許されたれば、召し寄せたりとも、なんでふことかあらむ。ただ忍びてこそ」<BR>⏎
<P>⏎
58-64 「あなむくつけ。こは誰そ」とのたまへど、<BR>⏎
「何か疎ましき」とて、<BR>⏎
 「深き夜のあはれを知るも入る月の<BR>  おぼろけならぬ契りとぞ思ふ」<BR>⏎
 とてやをら抱き下ろして、戸は押し立てつ。あさましきにあきれたるさま、いとなつかしうをかしげなり。わななくわななく、<BR>⏎
 「ここに人」<BR>⏎
 とのたまへど、<BR>⏎
 「まろは皆人に許されたれば、召し寄せたりとも、なんでふことかあらむ。ただ忍びてこそ」<BR>⏎
d189<P>⏎
c290-91 らうたしと見たまふに、ほどなく明けゆけば、心あわたたし。女は、ましてさまざまに思ひ乱れたるけしきなり。<BR>⏎
 「なほ名のりしたまへ。いかでか、聞こゆべき。かうてやみなむとは、さりとも思されじ」<BR>⏎
66-67 らうたしと見たまふに、ほどなく明けゆけば、心あわたたし。女は、ましてさまざまに思ひ乱れたるけしきなり。<BR>⏎
 「なほ名のりしたまへ。いかでか、聞こゆべき。かうてやみなむとは、さりとも思されじ」<BR>⏎
d193<P>⏎
cd3:194-96 「憂き身世にやがて消えなば尋ねても<BR>⏎
  草の原をば問はじとや思ふ」<BR>⏎
<P>⏎
69 「憂き身世にやがて消えなば尋ねても<BR>  草の原をば問はじとや思ふ」<BR>⏎
d199<P>⏎
cd4:2100-103 「いづれぞと露のやどりを分かむまに<BR>⏎
  小笹が原に風もこそ吹け<BR>⏎
<P>⏎
 わづらはしく思すことならずは、何かつつまむ。もしすかいたまふか」<BR>⏎
72-73 「いづれぞと露のやどりを分かむまに<BR>  小笹が原に風もこそ吹け<BR>⏎
 わづらはしく思すことならずは、何かつつまむ。もしすかいたまふか」<BR>⏎
d1105<P>⏎
c1107 「さもたゆみなき御忍びありきかな」<BR>⏎
76 「さもたゆみなき御忍びありきかな」<BR>⏎
d1109<P>⏎
cd4:2110-113 「をかしかりつる人のさまかな。女御の御おとうとたちにこそはあらめ。まだ世に馴れぬは、五六の君ならむかし。帥宮の北の方、頭中将のすさめぬ四の君などこそ、よしと聞きしか。なかなかそれならましかば、今すこしをかしからまし。六は春宮にたてまつらむとこころざしたまへるを、いとほしうもあるべいかな。わづらはしう、尋ねむほどもまぎらはし、さて絶えなむとは思はぬけしきなりつるを、いかなれば、言通はすべきさまを教へずなりぬらむ」<BR>⏎
<P>⏎
 などよろづに思ふも、心のとまるなるべし。かうやうなるにつけても、まづ「かのわたりのありさまの、こよなう奥まりたるはや」と、ありがたう思ひ比べられたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
78-79 「をかしかりつる人のさまかな。女御の御おとうとたちにこそはあらめ。まだ世に馴れぬは、五六の君ならむかし。帥宮の北の方、頭中将のすさめぬ四の君などこそ、よしと聞きしか。なかなかそれならましかば、今すこしをかしからまし。六は春宮にたてまつらむとこころざしたまへるを、いとほしうもあるべいかな。わづらはしう、尋ねむほどもまぎらはし、さて絶えなむとは思はぬけしきなりつるを、いかなれば、言通はすべきさまを教へずなりぬらむ」<BR>⏎
 などよろづに思ふも、心のとまるなるべし。かうやうなるにつけても、まづ「かのわたりのありさまの、こよなう奥まりたるはや」と、ありがたう思ひ比べられたまふ。<BR>⏎
text08114 <A NAME="in13">[第三段 桜宴の翌日、昨夜の女性の素性を知りたがる]</A><BR>80 
d1115<P>⏎
d1117<P>⏎
d1119<P>⏎
cd2:1121-122 「いかにして、いづれと知らむ。父大臣など聞きて、ことごとしうもてなさむも、いかにぞや。まだ人のありさまよく見さだめぬほどは、わづらはしかるべし。さりとて、知らであらむ、はたいと口惜しかるべければ、いかにせまし」と、思しわづらひて、つくづくとながめ臥したまへり。<BR>⏎
<P>⏎
84 「いかにして、いづれと知らむ。父大臣など聞きて、ことごとしうもてなさむも、いかにぞや。まだ人のありさまよく見さだめぬほどは、わづらはしかるべし。さりとて、知らであらむ、はたいと口惜しかるべければ、いかにせまし」と、思しわづらひて、つくづくとながめ臥したまへり。<BR>⏎
d1124<P>⏎
cd3:1125-127 「世に知らぬ心地こそすれ有明の<BR>⏎
  月のゆくへを空にまがへて」<BR>⏎
<P>⏎
86 「世に知らぬ心地こそすれ有明の<BR>  月のゆくへを空にまがへて」<BR>⏎
d1129<P>⏎
text08130 <A NAME="in14">[第四段 紫の君の理想的成長ぶり、葵の上との夫婦仲不仲]</A><BR>88 
d1131<P>⏎
d1133<P>⏎
d1135<P>⏎
c1137 「<A HREF="#no2">やはらかに寝る</A><a href="#k02">夜</a><a name="t02">は</a><A HREF="#no2">なくて</A><A NAME="te2">」</A><BR>⏎
92 「<A HREF="#no2">やはらかに寝る<A HREF="#k02">夜</A><A NAME="t02">は</A>なくて</A><A NAME="te2">」</A><BR>⏎
d1139<P>⏎
cd2:1140-141 「ここらの齢にて、明王の御代、四代をなむ見はべりぬれど、このたびのやうに、文ども警策に、舞物の音どもととのほりて、齢延ぶることなむはべらざりつる。道々のものの上手ども多かるころほひ、詳しうしろしめし、ととのへさせたまへるけなり。<A HREF="#no3">翁もほとほと舞ひ出でぬべき</A><A NAME="te3">心</A>地なむしはべりし」<BR>⏎
<P>⏎
94 「ここらの齢にて、明王の御代、四代をなむ見はべりぬれど、このたびのやうに、文ども警策に、舞物の音どもととのほりて、齢延ぶることなむはべらざりつる。道々のものの上手ども多かるころほひ、詳しうしろしめし、ととのへさせたまへるけなり。<A HREF="#no3">翁もほとほと舞ひ出でぬべき</A><A NAME="te3">心</A>地なむしはべりし」<BR>⏎
d1143<P>⏎
d1145<P>⏎
d1147<P>⏎
d1149<P>⏎
text08150 <A NAME="in15">[第五段 三月二十余日、右大臣邸の藤花の宴]</A><BR>99 
d1151<P>⏎
cd2:1152-153 かの有明の君は、はかなかりし夢を思し出でて、いともの嘆かしうながめたまふ。春宮には、卯月ばかりと思し定めたれば、いとわりなう思し乱れたるを、男も、尋ねたまはむにあとはかなくはあらねど、いづれとも知らで、ことに許したまはぬあたりにかかづらはむも、人悪く思ひわづらひたまふに、弥生の二十余日、右の大殿の弓の結に、上達部親王たち多く集へたまひて、やがて藤の宴したまふ。<BR>⏎
<P>⏎
100 かの有明の君は、はかなかりし夢を思し出でて、いともの嘆かしうながめたまふ。春宮には、卯月ばかりと思し定めたれば、いとわりなう思し乱れたるを、男も、尋ねたまはむにあとはかなくはあらねど、いづれとも知らで、ことに許したまはぬあたりにかかづらはむも、人悪く思ひわづらひたまふに、弥生の二十余日、右の大殿の弓の結に、上達部親王たち多く集へたまひて、やがて藤の宴したまふ。<BR>⏎
d1155<P>⏎
d1157<P>⏎
cd3:1158-160 「わが宿の花しなべての色ならば<BR>⏎
  何かはさらに君を待たまし」<BR>⏎
<P>⏎
103 「わが宿の花しなべての色ならば<BR>  何かはさらに君を待たまし」<BR>⏎
d1165<P>⏎
d1167<P>⏎
d1169<P>⏎
d1171<P>⏎
c2173-174 とて妻戸の御簾を引き着たまへば、<BR>⏎
 「あなわづらはし。よからぬ人こそ、やむごとなきゆかりはかこちはべるなれ」<BR>⏎
112-113 とて妻戸の御簾を引き着たまへば、<BR>⏎
 「あなわづらはし。よからぬ人こそ、やむごとなきゆかりはかこちはべるなれ」<BR>⏎
d1176<P>⏎
d1178<P>⏎
c1180 とうちおほどけたる声に言ひなして、寄りゐたまへり。<BR>⏎
117 とうちおほどけたる声に言ひなして、寄りゐたまへり。<BR>⏎
d1183<P>⏎
cd2:1184-185 「梓弓いるさの山に惑ふかな<BR>⏎
  ほの見し月の影や見ゆると<BR>⏎
120 「梓弓いるさの山に惑ふかな<BR>  ほの見し月の影や見ゆると<BR>⏎
d1187<P>⏎
cd5:2188-192 と推し当てにのたまふを、え忍ばぬなるべし。<BR>⏎
<P>⏎
 「心いる方ならませば弓張の<BR>⏎
  月なき空に迷はましやは」<BR>⏎
<P>⏎
122-123 と推し当てにのたまふを、え忍ばぬなるべし。<BR>⏎
 「心いる方ならませば弓張の<BR>  月なき空に迷はましやは」<BR>⏎
d2194-195
<P>⏎
text08196 <a name="in21">【出典】<BR>125 
c1197</a><A NAME="no1">出典1</A> 照りもせず曇りもはてぬ春の夜の朧月夜にしくものぞなき(新古今集春上-五五 大江千里)<A HREF="#te1">(戻)</A><BR>⏎
126<A NAME="no1">出典1</A> 照りもせず曇りもはてぬ春の夜の朧月夜にしくものぞなき(新古今集春上-五五 大江千里)<A HREF="#te1">(戻)</A><BR>⏎
d1202
text08203<p> <a name="in22">【校訂】<BR>131 
c1205</a><A NAME="k01">校訂1</A> わびしとお--わひしとお(わひしとお/$)わひしと<A HREF="#t01">(戻)</A><BR>⏎
133<A NAME="k01">校訂1</A> わびしとお--わひしとお(わひしとお/$)わひしと<A HREF="#t01">(戻)</A><BR>⏎
d1208</p>⏎
d1216</p>⏎
i0147
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cd2:18-9<body background="wallppr063.gif">⏎
First updated 9/20/1996(ver.1-1)<BR>⏎
8<BODY>⏎
cd3:210-12Last updated 9/20/2010(ver.2-3)<BR>⏎
渋谷栄一校訂(C)<BR>⏎
<P
>⏎
9-10<ADDRESS>Last updated 9/20/2010(ver.2-3)<BR>⏎
渋谷栄一校訂(C)</ADDRESS>⏎
d114<P>⏎
i014
d140<P>⏎
d165<P>⏎
d168<P>⏎
text0969 <H4>第一章 六条御息所の物語 御禊見物の車争いの物語</H4>63 
text0970 <A NAME="in11">[第一段 朱雀帝即位後の光る源氏]</A><BR>64 
d171<P>⏎
d173<P>⏎
cd2:174-75 今は、ましてひまなう、ただ人のやうにて添ひおはしますを、今后は心やましう思すにや、内裏にのみさぶらひたまへば、立ち並ぶ人なう心やすげなり。折ふしに従ひては、御遊びなどを好ましう、世の響くばかりせさせたまひつつ、今の御ありさましもめでたし。ただ春宮をぞいと恋しう思ひきこえたまふ。御後見のなきを、うしろめたう思ひきこえて、大将の君によろづ聞こえつけたまふも、かたはらいたきものから、うれしと思す。<BR>⏎
<P>⏎
66 今は、ましてひまなう、ただ人のやうにて添ひおはしますを、今后は心やましう思すにや、内裏にのみさぶらひたまへば、立ち並ぶ人なう心やすげなり。折ふしに従ひては、御遊びなどを好ましう、世の響くばかりせさせたまひつつ、今の御ありさましもめでたし。ただ春宮をぞいと恋しう思ひきこえたまふ。御後見のなきを、うしろめたう思ひきこえて、大将の君によろづ聞こえつけたまふも、かたはらいたきものから、うれしと思す。<BR>⏎
d177<P>⏎
cd2:180-81 など御けしき悪しければ、わが御心地にも、げにと思ひ知らるれば、かしこまりてさぶらひたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
70 など御けしき悪しければ、わが御心地にも、げにと思ひ知らるれば、かしこまりてさぶらひたまふ。<BR>⏎
d184<P>⏎
c185 またかく院にも聞こし召し、のたまはするに、人の御名も、わがためも、好色がましういとほしきに、いとどやむごとなく、心苦しき筋には思ひきこえたまへど、まだ表はれては、わざともてなしきこえたまはず。<BR>⏎
73 またかく院にも聞こし召し、のたまはするに、人の御名も、わがためも、好色がましういとほしきに、いとどやむごとなく、心苦しき筋には思ひきこえたまへど、まだ表はれては、わざともてなしきこえたまはず。<BR>⏎
d187<P>⏎
cd2:188-89 かかることを聞きたまふにも、朝顔の姫君は、「いかで人に似じ」と深う思せば、はかなきさまなりし御返りなども、をさをさなし。さりとて、人憎く、はしたなくはもてなしたまはぬ御けしきを、君も、「なほことなり」と思しわたる。<BR>⏎
<P>⏎
75 かかることを聞きたまふにも、朝顔の姫君は、「いかで人に似じ」と深う思せば、はかなきさまなりし御返りなども、をさをさなし。さりとて、人憎く、はしたなくはもてなしたまはぬ御けしきを、君も、「なほことなり」と思しわたる。<BR>⏎
d191<P>⏎
text0992 <A NAME="in12">[第二段 新斎院御禊の見物]</A><BR>77 
d193<P>⏎
cd2:194-95 そのころ、斎院も下りゐたまひて、<A HREF="#k01">后腹の</A><A NAME="t01">女</A>三宮ゐたまひぬ。帝后と、ことに思ひきこえたまへる宮なれば、筋ことになりたまふを、いと苦しう思したれど、こと宮たちのさるべきおはせず。儀式など、常の神わざなれど、いかめしうののしる。祭のほど、限りある公事に添ふこと多く、見所こよなし。人からと見えたり。<BR>⏎
<P>⏎
78 そのころ、斎院も下りゐたまひて、<A HREF="#k01">后腹の</A><A NAME="t01">女</A>三宮ゐたまひぬ。帝后と、ことに思ひきこえたまへる宮なれば、筋ことになりたまふを、いと苦しう思したれど、こと宮たちのさるべきおはせず。儀式など、常の神わざなれど、いかめしうののしる。祭のほど、限りある公事に添ふこと多く、見所こよなし。人からと見えたり。<BR>⏎
d198<P>⏎
cd2:1103-104 とてにはかにめぐらし仰せたまひて、見たまふ。<BR>⏎
<P>⏎
85 とてにはかにめぐらし仰せたまひて、見たまふ。<BR>⏎
d1106<P>⏎
c2107-108 「これはさらに、さやうにさし退けなどすべき御車にもあらず」<BR>⏎
 と口ごはくて、手触れさせず。<A HREF="#k03">いづかたにも</A><A NAME="t03">、</A>若き者ども酔ひ過ぎ、立ち騒ぎたるほどのことは、えしたためあへず。おとなおとなしき御前の人びとは、「かくな」など言へど、えとどめあへず。<BR>⏎
87-88 「これはさらに、さやうにさし退けなどすべき御車にもあらず」<BR>⏎
 と口ごはくて、手触れさせず。<A HREF="#k03">いづかたにも</A><A NAME="t03">、</A>若き者ども酔ひ過ぎ、立ち騒ぎたるほどのことは、えしたためあへず。おとなおとなしき御前の人びとは、「かくな」など言へど、えとどめあへず。<BR>⏎
d1113<P>⏎
c1114 つひに御車ども立て続けつれば、ひとだまひの奥におしやられて、物も見えず。心やましきをばさるものにて、かかるやつれをそれと知られぬるが、いみじうねたきこと、限りなし。榻などもみな押し折られて、すずろなる車の筒にうちかけたれば、またなう人悪ろく、くやしう、「何に、来つらむ」と思ふにかひなし。物も見で帰らむとしたまへど、通り出でむ隙もなきに、<BR>⏎
93 つひに御車ども立て続けつれば、ひとだまひの奥におしやられて、物も見えず。心やましきをばさるものにて、かかるやつれをそれと知られぬるが、いみじうねたきこと、限りなし。榻などもみな押し折られて、すずろなる車の筒にうちかけたれば、またなう人悪ろく、くやしう、「何に、来つらむ」と思ふにかひなし。物も見で帰らむとしたまへど、通り出でむ隙もなきに、<BR>⏎
d1117<P>⏎
cd7:3118-124 げに常よりも好みととのへたる車どもの、我も我もと乗りこぼれたる下簾の隙間どもも、さらぬ顔なれど、ほほ笑みつつ後目にとどめたまふもあり。大殿のは、しるければ、まめだちて渡りたまふ。御供の人びとうちかしこまり、心ばへありつつ渡るを、おし消たれたるありさま、こよなう思さる。<BR>⏎
<P>⏎
 「影をのみ御手洗川のつれなきに<BR>⏎
  身の憂きほどぞ<A HREF="#k05">いとど</A><A NAME="t05">知</A>らるる」<BR>⏎
<P>⏎
 と涙のこぼるるを、人の見るもはしたなけれど、目もあやなる御さま、容貌の、「いとどしう出でばえを見ざらましかば」と思さる。<BR>⏎
<P>⏎
96-98 げに常よりも好みととのへたる車どもの、我も我もと乗りこぼれたる下簾の隙間どもも、さらぬ顔なれど、ほほ笑みつつ後目にとどめたまふもあり。大殿のは、しるければ、まめだちて渡りたまふ。御供の人びとうちかしこまり、心ばへありつつ渡るを、おし消たれたるありさま、こよなう思さる。<BR>⏎
 「影をのみ御手洗川のつれなきに<BR>  身の憂きほどぞ<A HREF="#k05">いとど</A><A NAME="t05">知</A>らるる」<BR>⏎
 と涙のこぼるるを、人の見るもはしたなけれど、目もあやなる御さま、容貌の、「いとどしう出でばえを見ざらましかば」と思さる。<BR>⏎
d1126<P>⏎
cd2:1128-129 ましてここかしこにうち忍びて通ひたまふ所々は、人知れずのみ数ならぬ嘆きまさるも、多かり。<BR>⏎
<P>⏎
101 ましてここかしこにうち忍びて通ひたまふ所々は、人知れずのみ数ならぬ嘆きまさるも、多かり。<BR>⏎
c2132-133 とゆゆしく思したり。姫君は、年ごろ聞こえわたりたまふ御心ばへの世の人に似ぬを、<BR>⏎
 「なのめならむにてだにあり。ましてかうしもいかで」<BR>⏎
104-105 とゆゆしく思したり。姫君は、年ごろ聞こえわたりたまふ御心ばへの世の人に似ぬを、<BR>⏎
 「なのめならむにてだにあり。ましてかうしもいかで」<BR>⏎
d1135<P>⏎
cd3:2137-139 「なほあたら重りかにおはする人の、ものに情けおくれ、すくすくしきところつきたまへるあまりに、みづからはさしも思さざりけめども、かかる仲らひは情け交はすべきものとも思いたらぬ御おきてに従ひて、次々よからぬ人のせさせたるならむかし。御息所は、心ばせの<A HREF="#k06">いと</A><A NAME="t06">恥</A>づかしく、よしありておはするものを、いかに思し憂じにけむ」<BR>⏎
 といとほしくて、参うでたまへりけれど、斎宮のまだ本の宮におはしませば、榊の憚りにことつけて、心やすくも対面したまはず。ことわりとは思しながら、「なぞやかくかたみにそばそばしからでおはせかし」と、うちつぶやかれたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
108-109 「なほあたら重りかにおはする人の、ものに情けおくれ、すくすくしきところつきたまへるあまりに、みづからはさしも思さざりけめども、かかる仲らひは情け交はすべきものとも思いたらぬ御おきてに従ひて、次々よからぬ人のせさせたるならむかし。御息所は、心ばせの<A HREF="#k06">いと</A><A NAME="t06">恥</A>づかしく、よしありておはするものを、いかに思し憂じにけむ」<BR>⏎
 といとほしくて、参うでたまへりけれど、斎宮のまだ本の宮におはしませば、榊の憚りにことつけて、心やすくも対面したまはず。ことわりとは思しながら、「なぞやかくかたみにそばそばしからでおはせかし」と、うちつぶやかれたまふ。<BR>⏎
text09140 <A NAME="in13">[第三段 賀茂祭の当日、紫の君と見物]</A><BR>110 
d1141<P>⏎
c1146 とて御髪の常よりもきよらに見ゆるを、かきなでたまひて、<BR>⏎
115 とて御髪の常よりもきよらに見ゆるを、かきなでたまひて、<BR>⏎
c5148-152 とて暦の博士召して、時問はせなどしたまふほどに、<BR>⏎
 「まづ女房出でね」<BR>⏎
 とて童の姿どものをかしげなるを御覧ず。いとらうたげなる髪どものすそ、はなやかに削ぎわたして、浮紋の表の袴にかかれるほど、けざやかに見ゆ。<BR>⏎
 「君の御髪は、我削がむ」とて、「うたて所狭うもあるかな。いかに生ひやらむとすらむ」<BR>⏎
 と削ぎわづらひたまふ。<BR>⏎
117-121 とて暦の博士召して、時問はせなどしたまふほどに、<BR>⏎
 「まづ女房出でね」<BR>⏎
 とて童の姿どものをかしげなるを御覧ず。いとらうたげなる髪どものすそ、はなやかに削ぎわたして、浮紋の表の袴にかかれるほど、けざやかに見ゆ。<BR>⏎
 「君の御髪は、我削がむ」とて、「うたて所狭うもあるかな。いかに生ひやらむとすらむ」<BR>⏎
 と削ぎわづらひたまふ。<BR>⏎
cd5:2154-158 とて削ぎ果てて、「千尋」と祝ひきこえたまふを、少納言、「あはれにかたじけなし」と見たてまつる。<BR>⏎
<P>⏎
 「はかりなき千尋の底の海松ぶさの<BR>⏎
  生ひゆくすゑは我のみぞ見む」<BR>⏎
<P>⏎
123-124 とて削ぎ果てて、「千尋」と祝ひきこえたまふを、少納言、「あはれにかたじけなし」と見たてまつる。<BR>⏎
 「はかりなき千尋の底の海松ぶさの<BR>  生ひゆくすゑは我のみぞ見む」<BR>⏎
d1160<P>⏎
cd5:2161-165 「千尋ともいかでか知らむ定めなく<BR>⏎
  満ち干る潮ののどけからぬに」<BR>⏎
<P>⏎
 とものに書きつけておはするさま、らうらうじきものから、若うをかしきを、めでたしと思す。<BR>⏎
<P>⏎
126-127 「千尋ともいかでか知らむ定めなく<BR>  満ち干る潮ののどけからぬに」<BR>⏎
 とものに書きつけておはするさま、らうらうじきものから、若うをかしきを、めでたしと思す。<BR>⏎
c1168 とやすらひたまふに、よろしき女車の、いたう乗りこぼれたるより、扇をさし出でて、人を招き寄せて、<BR>⏎
130 とやすらひたまふに、よろしき女車の、いたう乗りこぼれたるより、扇をさし出でて、人を招き寄せて、<BR>⏎
d1173<P>⏎
cd2:1174-175 「はかなしや人のかざせる葵ゆゑ<BR>⏎
  神の許しの今日を待ちける<BR>⏎
135 「はかなしや人のかざせる葵ゆゑ<BR>  神の許しの今日を待ちける<BR>⏎
d1177<P>⏎
d1179<P>⏎
cd3:1180-182 「かざしける心ぞあだにおもほゆる<BR>⏎
  八十氏人になべて逢ふ日を」<BR>⏎
<P>⏎
138 「かざしける心ぞあだにおもほゆる<BR>  八十氏人になべて逢ふ日を」<BR>⏎
d1184<P>⏎
cd3:1185-187 「悔しくもかざしけるかな名のみして<BR>⏎
  人だのめなる草葉ばかりを」<BR>⏎
<P>⏎
140 「悔しくもかざしけるかな名のみして<BR>  人だのめなる草葉ばかりを」<BR>⏎
d1190<P>⏎
text09191 <H4>第二章 葵の上の物語 六条御息所がもののけとなってとり憑く物語</H4>143 
text09192 <A NAME="in21">[第一段 車争い後の六条御息所]</A><BR>144 
d1193<P>⏎
d1195<P>⏎
cd2:1198-199 と<A HREF="#k09">聞こえ</A><A NAME="t09">か</A>かづらひたまへば、定めかねたまへる御心もや慰むと、立ち出でたまへりし御禊河の荒かりし瀬に、いとどよろづいと憂く思し入れたり。<BR>⏎
<P>⏎
148 と<A HREF="#k09">聞こえ</A><A NAME="t09">か</A>かづらひたまへば、定めかねたまへる御心もや慰むと、立ち出でたまへりし御禊河の荒かりし瀬に、いとどよろづいと憂く思し入れたり。<BR>⏎
d1201<P>⏎
cd2:1202-203 もののけ、生すだまなどいふもの多く出で来て、さまざまの名のりするなかに、人にさらに移らず、ただみづからの御身につと添ひたるさまにて、ことにおどろおどろしうわづらはしきこゆることもなけれど、また片時離るる折もなきもの一つあり。いみじき験者どもにも従はず、執念きけしき、おぼろけのものにあらずと見えたり。<BR>⏎
<P>⏎
150 もののけ、生すだまなどいふもの多く出で来て、さまざまの名のりするなかに、人にさらに移らず、ただみづからの御身につと添ひたるさまにて、ことにおどろおどろしうわづらはしきこゆることもなけれど、また片時離るる折もなきもの一つあり。いみじき験者どもにも従はず、執念きけしき、おぼろけのものにあらずと見えたり。<BR>⏎
d1207<P>⏎
d1210<P>⏎
text09211 <A NAME="in22">[第二段 源氏、御息所を旅所に見舞う]</A><BR>156 
d1212<P>⏎
d1215<P>⏎
cd2:1217-218 など語らひきこえたまふ。常よりも心苦しげなる御けしきを、ことわりに、あはれに見たてまつりたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
160 など語らひきこえたまふ。常よりも心苦しげなる御けしきを、ことわりに、あはれに見たてまつりたまふ。<BR>⏎
d1222<P>⏎
d1225<P>⏎
cd2:1226-227 「袖濡るる恋路とかつは知りながら<BR>⏎
  おりたつ田子のみづからぞ憂き<BR>⏎
166 「袖濡るる恋路とかつは知りながら<BR>  おりたつ田子のみづからぞ憂き<BR>⏎
d1229<P>⏎
d1232<P>⏎
cd3:1233-235  浅みにや人はおりたつわが方は<BR>⏎
  身もそぼつまで深き恋路を<BR>⏎
<P>⏎
170  浅みにや人はおりたつわが方は<BR>  身もそぼつまで深き恋路を<BR>⏎
d1238<P>⏎
text09239 <A NAME="in23">[第三段 葵の上に御息所のもののけ出現する]</A><BR>173 
d1240<P>⏎
d1244<P>⏎
d1246<P>⏎
c2247-248 「あな心憂や。げに<A HREF="#no6">身を捨ててや</A>、<A NAME="te6">往</A>にけむ」と、うつし心ならずおぼえたまふ折々もあれば、「さならぬことだに、人の御ためには、よさまのことをしも言ひ出でぬ世なれば、ましてこれは、いとよう言ひなしつべきたよりなり」と思すに、いと<A HREF="#k11">名だたしう</A><A NAME="t11">、</A><BR>⏎
 「ひたすら世に亡くなりて、後に怨み残すは世の常のことなり。それだに、人の上にては、罪深うゆゆしきを、うつつのわが身ながら、さる疎ましきことを言ひつけらるる宿世の憂きこと。すべてつれなき人にいかで心もかけきこえじ」<BR>⏎
178-179 「あな心憂や。げに<A HREF="#no6">身を捨ててや</A>、<A NAME="te6">往</A>にけむ」と、うつし心ならずおぼえたまふ折々もあれば、「さならぬことだに、人の御ためには、よさまのことをしも言ひ出でぬ世なれば、ましてこれは、いとよう言ひなしつべきたよりなり」と思すに、いと<A HREF="#k11">名だたしう</A><A NAME="t11">、</A><BR>⏎
 「ひたすら世に亡くなりて、後に怨み残すは世の常のことなり。それだに、人の上にては、罪深うゆゆしきを、うつつのわが身ながら、さる疎ましきことを言ひつけらるる宿世の憂きこと。すべてつれなき人にいかで心もかけきこえじ」<BR>⏎
d1250<P>⏎
text09251 <A NAME="in24">[第四段 斎宮、秋に宮中の初斎院に入る]</A><BR>181 
d1252<P>⏎
d1254<P>⏎
d1256<P>⏎
cd2:1260-261 とて近き御几帳のもとに入れたてまつりたり。むげに限りのさまにものしたまふを、聞こえ置かまほしきこともおはするにやとて、大臣も宮もすこし<A HREF="#k13">退き</A><A NAME="t13">た</A>まへり。加持の僧ども、声しづめて法華経を誦みたる、いみじう尊し。<BR>⏎
<P>⏎
187 とて近き御几帳のもとに入れたてまつりたり。むげに限りのさまにものしたまふを、聞こえ置かまほしきこともおはするにやとて、大臣も宮もすこし<A HREF="#k13">退き</A><A NAME="t13">た</A>まへり。加持の僧ども、声しづめて法華経を誦みたる、いみじう尊し。<BR>⏎
cd4:3263-266 「あないみじ。心憂きめを見せたまふかな」<BR>⏎
 とてものも聞こえたまはず泣きたまへば、例はいとわづらはしう恥づかしげなる御まみを、いとたゆげに見上げて、うちまもりきこえたまふに、涙のこぼるるさまを見たまふは、いかがあはれの浅からむ。<BR>⏎
<P>⏎
 あまりいたう泣きたまへば、「心苦しき親たちの御ことを思し、またかく見たまふにつけて、口惜しうおぼえたまふにや」と思して、<BR>⏎
189-191 「あないみじ。心憂きめを見せたまふかな」<BR>⏎
 とてものも聞こえたまはず泣きたまへば、例はいとわづらはしう恥づかしげなる御まみを、いとたゆげに見上げて、うちまもりきこえたまふに、涙のこぼるるさまを見たまふは、いかがあはれの浅からむ。<BR>⏎
 あまりいたう泣きたまへば、「心苦しき親たちの御ことを思し、またかく見たまふにつけて、口惜しうおぼえたまふにや」と思して、<BR>⏎
cd8:5268-275 と慰めたまふに、<BR>⏎
 「いであらずや。身の上のいと苦しきを、しばしやすめたまへと聞こえむとてなむ。かく参り来むともさらに思はぬを、もの思ふ人の魂は、げにあくがるるものになむありける」<BR>⏎
 となつかしげに言ひて、<BR>⏎
<P>⏎
 「嘆きわび空に乱るるわが魂を<BR>⏎
  結びとどめよしたがへのつま」<BR>⏎
<P>⏎
 とのたまふ声けはひ、その人にもあらず、変はりたまへり。「いとあやし」と思しめぐらすに、ただかの御息所なりけり。あさましう、人のとかく<A HREF="#k14">言ふ</A><A NAME="t14">を</A>、よからぬ者どもの言ひ<A HREF="#k15">出づる</A><A NAME="t15">こ</A>とも、聞きにくく思して、のたまひ消つを、目に見す見す、「世には、かかることこそはありけれ」と、疎ましうなりぬ。「あな心憂」と思されて、<BR>⏎
193-197 と慰めたまふに、<BR>⏎
 「いであらずや。身の上のいと苦しきを、しばしやすめたまへと聞こえむとてなむ。かく参り来むともさらに思はぬを、もの思ふ人の魂は、げにあくがるるものになむありける」<BR>⏎
 となつかしげに言ひて、<BR>⏎
 「嘆きわび空に乱るるわが魂を<BR>  結びとどめよしたがへのつま」<BR>⏎
 とのたまふ声けはひ、その人にもあらず、変はりたまへり。「いとあやし」と思しめぐらすに、ただかの御息所なりけり。あさましう、人のとかく<A HREF="#k14">言ふ</A><A NAME="t14">を</A>、よからぬ者どもの言ひ<A HREF="#k15">出づる</A><A NAME="t15">こ</A>とも、聞きにくく思して、のたまひ消つを、目に見す見す、「世には、かかることこそはありけれ」と、疎ましうなりぬ。「あな心憂」と思されて、<BR>⏎
d1278<P>⏎
text09279 <A NAME="in25">[第五段 葵の上、男子を出産]</A><BR>200 
d1280<P>⏎
d1283<P>⏎
c1284 多くの人の心を尽くしつる日ごろの名残、すこしうちやすみて、「今はさりとも」と思す。御修法などは、またまた始め添へさせたまへど、まづは興あり、めづらしき御かしづきに、皆人ゆるべり。<BR>⏎
203 多くの人の心を尽くしつる日ごろの名残、すこしうちやすみて、「今はさりとも」と思す。御修法などは、またまた始め添へさせたまへど、まづは興あり、めづらしき御かしづきに、皆人ゆるべり。<BR>⏎
d1286<P>⏎
cd2:1288-289 あやしう、我にもあらぬ御心地を思しつづくるに、御衣なども、ただ芥子の香に染み返りたるあやしさに、御ゆする参り、御衣着替へなどしたまひて、<A HREF="#k16">試み</A><A NAME="t16">た</A>まへど、なほ同じやうにのみあれば、わが身ながらだに疎ましう思さるるに、まして人の言ひ思はむことなど、人にのたまふべきことならねば、心ひとつに思し嘆くに、いとど御心変はりもまさりゆく。<BR>⏎
<P>⏎
206 あやしう、我にもあらぬ御心地を思しつづくるに、御衣なども、ただ芥子の香に染み返りたるあやしさに、御ゆする参り、御衣着替へなどしたまひて、<A HREF="#k16">試み</A><A NAME="t16">た</A>まへど、なほ同じやうにのみあれば、わが身ながらだに疎ましう思さるるに、まして人の言ひ思はむことなど、人にのたまふべきことならねば、心ひとつに思し嘆くに、いとど御心変はりもまさりゆく。<BR>⏎
d1291<P>⏎
cd3:2292-294 いたうわづらひたまひし人の御名残ゆゆしう、心ゆるびなげに、誰も思したれば、ことわりにて、御歩きもなし。なほいと悩ましげにのみしたまへば、例のさまにてもまだ対面したまはず。若君のいとゆゆしきまで見えたまふ御ありさまを、<A HREF="#k17">今から</A><A NAME="t17">、</A>いとさまことにもてかしづききこえたまふさま、おろかならず、ことあひたる心地して、大臣もうれしういみじと思ひきこえたまへるに、ただこの御心地おこたり果てたまはぬを、心もとなく思せど、「さばかりいみじかりし名残にこそは」と思して、いかでかは<A HREF="#k18">さのみ</A><A NAME="t18">は</A>心をも惑はしたまはむ。<BR>⏎
<P>⏎
 若君の御まみのうつくしさなどの、春宮にいみじう似たてまつりたまへるを、見たてまつりたまひても、まづ恋しう思ひ出でられさせたまふに、忍びがたくて、参りたまはむとて、<BR>⏎
208-209 いたうわづらひたまひし人の御名残ゆゆしう、心ゆるびなげに、誰も思したれば、ことわりにて、御歩きもなし。なほいと悩ましげにのみしたまへば、例のさまにてもまだ対面したまはず。若君のいとゆゆしきまで見えたまふ御ありさまを、<A HREF="#k17">今から</A><A NAME="t17">、</A>いとさまことにもてかしづききこえたまふさま、おろかならず、ことあひたる心地して、大臣もうれしういみじと思ひきこえたまへるに、ただこの御心地おこたり果てたまはぬを、心もとなく思せど、「さばかりいみじかりし名残にこそは」と思して、いかでかは<A HREF="#k18">さのみ</A><A NAME="t18">は</A>心をも惑はしたまはむ。<BR>⏎
 若君の御まみのうつくしさなどの、春宮にいみじう似たてまつりたまへるを、見たてまつりたまひても、まづ恋しう思ひ出でられさせたまふに、忍びがたくて、参りたまはむとて、<BR>⏎
cd8:6296-303 と恨みきこえたまへれば、<BR>⏎
 「げにただひとへに艶にのみあるべき御仲にもあらぬを、いたう衰へたまへりと言ひながら、物越にてなどあべきかは」<BR>⏎
 とて臥したまへる所に、御座近う参りたれば、入りてものなど聞こえたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
 御いらへ、時々聞こえたまふも、なほいと弱げなり。されどむげに亡き人と思ひきこえし御ありさまを思し出づれば、夢の心地して、ゆゆしかりしほどのことどもなど聞こえたまふついでにも、かのむげに息も絶えたるやうにおはせしが、引き返し、つぶつぶとのたまひしことども思し出づるに、心憂ければ、<BR>⏎
 「いさや聞こえまほしきこといと多かれど、まだいとたゆげに思しためればこそ」<BR>⏎
 とて「御湯参れ」などさへ、扱ひきこえたまふを、いつならひたまひけむと、人びとあはれ がりきこゆ。<BR>⏎
<P>⏎
211-216 と恨みきこえたまへれば、<BR>⏎
 「げにただひとへに艶にのみあるべき御仲にもあらぬを、いたう衰へたまへりと言ひながら、物越にてなどあべきかは」<BR>⏎
 とて臥したまへる所に、御座近う参りたれば、入りてものなど聞こえたまふ。<BR>⏎
 御いらへ、時々聞こえたまふも、なほいと弱げなり。されどむげに亡き人と思ひきこえし御ありさまを思し出づれば、夢の心地して、ゆゆしかりしほどのことどもなど聞こえたまふついでにも、かのむげに息も絶えたるやうにおはせしが、引き返し、つぶつぶとのたまひしことども思し出づるに、心憂ければ、<BR>⏎
 「いさや聞こえまほしきこといと多かれど、まだいとたゆげに思しためればこそ」<BR>⏎
 とて「御湯参れ」などさへ、扱ひきこえたまふを、いつならひたまひけむと、人びとあはれがりきこゆ。<BR>⏎
d1305<P>⏎
d1307<P>⏎
cd2:1308-309 など聞こえおきたまひて、いときよげにうち装束きて出でたまふを、常よりは目とどめて、見出だして臥したまへり。<BR>⏎
<P>⏎
219 など聞こえおきたまひて、いときよげにうち装束きて出でたまふを、常よりは目とどめて、見出だして臥したまへり。<BR>⏎
text09310 <A NAME="in26">[第六段 秋の司召の夜、葵の上死去する]</A><BR>220 
d1311<P>⏎
d1313<P>⏎
d1316<P>⏎
c1317 御もののけのたびたび取り入れたてまつりしを思して、御枕などもさながら、二三日見たてまつりたまへど、やうやう変はりたまふことどものあれば、限り、と思し果つるほど、誰も誰もいといみじ。<BR>⏎
224 御もののけのたびたび取り入れたてまつりしを思して、御枕などもさながら、二三日見たてまつりたまへど、やうやう変はりたまふことどものあれば、限り、と思し果つるほど、誰も誰もいといみじ。<BR>⏎
d1320<P>⏎
text09321 <A NAME="in27">[第七段 葵の上の葬送とその後]</A><BR>227 
d1322<P>⏎
d1326<P>⏎
d1329<P>⏎
cd3:1330-332 「のぼりぬる煙はそれとわかねども<BR>⏎
  なべて雲居のあはれなるかな」<BR>⏎
<P>⏎
233 「のぼりぬる煙はそれとわかねども<BR>  なべて雲居のあはれなるかな」<BR>⏎
cd7:5334-340 「などてつひにはおのづから見直したまひてむと、のどかに思ひて、なほざりのすさびにつけても、つらしとおぼえられたてまつりけむ。世を経て、疎く恥づかしきものに思ひて過ぎ果てたまひぬる」<BR>⏎
 など悔しきこと多く、思しつづけらるれど、かひなし。にばめる御衣たてまつれるも、夢の心地して、「われ先立たましかば、深くぞ染めたまはまし」と、思すさへ、<BR>⏎
<P>⏎
 「限りあれば薄墨衣浅けれど<BR>⏎
  涙ぞ袖を淵となしける」<BR>⏎
<P>⏎
 とて念誦したまへるさま、いとどなまめかしさまさりて、経忍びやかに誦みたまひつつ、「法界三昧普賢大士」とうちのたまへる、行ひ馴れたる法師よりはけなり。若君を見たてまつりたまふにも、「<A HREF="#no10">何に忍ぶの</A>」<A NAME="te10">と</A>、いとど露けけれど、「かかる形見さへなからましかば」と、思し慰む。<BR>⏎
235-239 「などてつひにはおのづから見直したまひてむと、のどかに思ひて、なほざりのすさびにつけても、つらしとおぼえられたてまつりけむ。世を経て、疎く恥づかしきものに思ひて過ぎ果てたまひぬる」<BR>⏎
 など悔しきこと多く、思しつづけらるれど、かひなし。にばめる御衣たてまつれるも、夢の心地して、「われ先立たましかば、深くぞ染めたまはまし」と、思すさへ、<BR>⏎
 「限りあれば薄墨衣浅けれど<BR>  涙ぞ袖を淵となしける」<BR>⏎
 とて念誦したまへるさま、いとどなまめかしさまさりて、経忍びやかに誦みたまひつつ、<BR>⏎
 
「法界三昧普賢大士」とうちのたまへる、行ひ馴れたる法師よりはけなり。若君を見たてまつりたまふにも、「<A HREF="#no10">何に忍ぶの</A>」<A NAME="te10">と</A>、いとど露けけれど、「かかる形見さへなからましかば」と、思し慰む。<BR>⏎
d1342<P>⏎
cd2:1343-344 <A HREF="#k23">はかなう</A><A NAME="t23">過</A>ぎゆけば、御わざのいそぎなどせさせたまふも、思しかけざりしことなれば、尽きせずいみじうなむ。なのめにかたほなるをだに、人の親はいかが思ふめる、ましてことわりなり。また類ひおはせぬをだに、さうざうしく思しつるに、袖の上の玉の砕けたりけむよりも、あさましげなり。<BR>⏎
<P>⏎
241 <A HREF="#k23">はかなう</A><A NAME="t23">過</A>ぎゆけば、御わざのいそぎなどせさせたまふも、思しかけざりしことなれば、尽きせずいみじうなむ。なのめにかたほなるをだに、人の親はいかが思ふめる、ましてことわりなり。また類ひおはせぬをだに、さうざうしく思しつるに、袖の上の玉の砕けたりけむよりも、あさましげなり。<BR>⏎
d1346<P>⏎
d1349<P>⏎
d1351<P>⏎
cd2:1353-354  人の世をあはれと聞くも露けきに<BR>⏎
  後るる袖を思ひこそやれ<BR>⏎
247  人の世をあはれと聞くも露けきに<BR>  後るる袖を思ひこそやれ<BR>⏎
d1356<P>⏎
d1360<P>⏎
cd3:2361-363 「こよなうほど経はべりにけるを、思ひたまへおこたらずながら、つつましきほどは、さらば思し知るらむやとてなむ。<BR>⏎
  とまる身も消えしもおなじ露の世に<BR>⏎
  心置くらむほどぞはかなき<BR>⏎
252-253 「こよなうほど経はべりにけるを、思ひたまへおこたらずながら、つつましきほどは、さらば思し知るらむやとてなむ。<BR>⏎
  とまる身も消えしもおなじ露の世に<BR>  心置くらむほどぞはかなき<BR>⏎
d1365<P>⏎
d1367<P>⏎
d1369<P>⏎
cd6:3370-375 「なほいと限りなき身の憂さなりけり。かやうなる聞こえありて、院にもいかに思さむ。故前坊の、同じき御はらからと言ふなかにも、いみじう思ひ交はしきこえさせたまひて、この斎宮の御ことをも、ねむごろに聞こえつけ<A HREF="#k25">させ</A><A NAME="t25">た</A>まひしかば、『その御代はりにも、やがて見たてまつり<A HREF="#k26">扱はむ</A><A NAME="t26">』</A>など、常にのたまはせて、『やがて内裏住みしたまへ』と、たびたび聞こえさせたまひしをだに、いとあるまじきこと、と思ひ離れにしを、かく心よりほかに若々しきもの思ひをして、つひに憂き名をさへ流し果てつべきこと」<BR>⏎
<P>⏎
 と思し乱るるに、なほ例のさまにもおはせず。<BR>⏎
<P>⏎
 さるはおほかたの世につけて、心にくくよしある聞こえありて、昔より名高くものしたまへば、野の宮の御移ろひのほどにも、をかしう今めきたること多くしなして、「殿上人どもの好ましきなどは、朝夕の露分けありくを、そのころの役になむする」など聞きたまひても、大将の君は、「ことわりぞかし。ゆゑは飽くまでつきたまへるものを。もし世の中に飽き果てて下りたまひなば、さうざうしくもあるべきかな」と、さすがに思されけり。<BR>⏎
<P>⏎
257-259 「なほいと限りなき身の憂さなりけり。かやうなる聞こえありて、院にもいかに思さむ。故前坊の、同じき御はらからと言ふなかにも、いみじう思ひ交はしきこえさせたまひて、この斎宮の御ことをも、ねむごろに聞こえつけ<A HREF="#k25">させ</A><A NAME="t25">た</A>まひしかば、『その御代はりにも、やがて見たてまつり<A HREF="#k26">扱はむ</A><A NAME="t26">』</A>など、常にのたまはせて、『やがて内裏住みしたまへ』と、たびたび聞こえさせたまひしをだに、いとあるまじきこと、と思ひ離れにしを、かく心よりほかに若々しきもの思ひをして、つひに憂き名をさへ流し果てつべきこと」<BR>⏎
 と思し乱るるに、なほ例のさまにもおはせず。<BR>⏎
 さるはおほかたの世につけて、心にくくよしある聞こえありて、昔より名高くものしたまへば、野の宮の御移ろひのほどにも、をかしう今めきたること多くしなして、「殿上人どもの好ましきなどは、朝夕の露分けありくを、そのころの役になむする」など聞きたまひても、大将の君は、「ことわりぞかし。ゆゑは飽くまでつきたまへるものを。もし世の中に飽き果てて下りたまひなば、さうざうしくもあるべきかな」と、さすがに思されけり。<BR>⏎
text09376 <A NAME="in28">[第八段 三位中将と故人を追慕する]</A><BR>260 
d1377<P>⏎
c1379 「あないとほしや。祖母殿の上、ないたう軽めたまひそ」<BR>⏎
262 「あないとほしや。祖母殿の上、ないたう軽めたまひそ」<BR>⏎
d1381<P>⏎
d1383<P>⏎
c2387-388 とうちひとりごちて、頬杖つきたまへる御さま、「女にては、見捨てて亡くならむ魂かならずとまりなむかし」と、色めかしき心地に、うちまもられつつ、近うついゐたまへれば、しどけなくうち乱れたまへるさまながら、紐ばかりをさし直したまふ。<BR>⏎
 これは今すこしこまやかなる夏の御直衣に、紅のつややかなるひき重ねて、やつれたまへるしも、見ても飽かぬ心地ぞする。<BR>⏎
268-269 とうちひとりごちて、頬杖つきたまへる御さま、「女にては、見捨てて亡くならむ魂かならずとまりなむかし」と、色めかしき心地に、うちまもられつつ、近うついゐたまへれば、しどけなくうち乱れたまへるさまながら、紐ばかりをさし直したまふ。<BR>⏎
 これは今すこしこまやかなる夏の御直衣に、紅のつややかなるひき重ねて、やつれたまへるしも、見ても飽かぬ心地ぞする。<BR>⏎
d1390<P>⏎
cd2:1391-392 「雨となりしぐるる空の浮雲を<BR>⏎
  いづれの方とわきて眺めむ<BR>⏎
271 「雨となりしぐるる空の浮雲を<BR>  いづれの方とわきて眺めむ<BR>⏎
d1394<P>⏎
cd5:2395-399 と独り言のやうなるを、<BR>⏎
<P>⏎
 「見し人の雨となりにし雲居さへ<BR>⏎
  いとど時雨にかき暮らすころ」<BR>⏎
<P>⏎
273-274 と独り言のやうなるを、<BR>⏎
 「見し人の雨となりにし雲居さへ<BR>  いとど時雨にかき暮らすころ」<BR>⏎
d1401<P>⏎
d1403<P>⏎
d1405<P>⏎
d1407<P>⏎
cd2:1408-409 「草枯れのまがきに残る撫子を<BR>⏎
  別れし秋のかたみとぞ見る<BR>⏎
279 「草枯れのまがきに残る撫子を<BR>  別れし秋のかたみとぞ見る<BR>⏎
d1411<P>⏎
cd9:4412-420 と聞こえたまへり。げに何心なき御笑み顔ぞ、いみじううつくしき。宮は、吹く風につけてだに、木の葉よりけにもろき御涙は、ましてとりあへたまはず。<BR>⏎
<P>⏎
 「今も見てなかなか袖を朽たすかな<BR>⏎
  <A HREF="#no13">垣ほ荒れにし大和撫子</A><A NAME="te13">」</A><BR>⏎
<P>⏎
 なほいみじうつれづれなれば、朝顔の宮に、「今日のあはれは、さりとも見知りたまふらむ」と推し量らるる御心ばへなれば、暗きほどなれど、聞こえたまふ。絶え間遠けれど、さのものとなりにたる御文なれば、咎なくて御覧ぜさす。空の色したる唐の紙に、<BR>⏎
<P>⏎
 「わきてこの暮こそ袖は露けけれ<BR>⏎
  もの思ふ秋はあまた経ぬれど<BR>⏎
281-284 と聞こえたまへり。げに何心なき御笑み顔ぞ、いみじううつくしき。宮は、吹く風につけてだに、木の葉よりけにもろき御涙は、ましてとりあへたまはず。<BR>⏎
 「今も見てなかなか袖を朽たすかな<BR>  <A HREF="#no13">垣ほ荒れにし大和撫子</A><A NAME="te13">」</A><BR>⏎
 なほいみじうつれづれなれば、朝顔の宮に、「今日のあはれは、さりとも見知りたまふらむ」と推し量らるる御心ばへなれば、暗きほどなれど、聞こえたまふ。絶え間遠けれど、さのものとなりにたる御文なれば、咎なくて御覧ぜさす。空の色したる唐の紙に、<BR>⏎
 「わきてこの暮こそ袖は露けけれ<BR>  もの思ふ秋はあまた経ぬれど<BR>⏎
d1422<P>⏎
d1425<P>⏎
cd4:2426-429 「秋霧に立ちおくれぬと聞きしより<BR>⏎
  しぐるる空もいかがとぞ思ふ」<BR>⏎
<P>⏎
 とのみほのかなる墨つきにて、思ひなし心にくし。<BR>⏎
288-289 「秋霧に立ちおくれぬと聞きしより<BR>  しぐるる空もいかがとぞ思ふ」<BR>⏎
 とのみほのかなる墨つきにて、思ひなし心にくし。<BR>⏎
d1431<P>⏎
cd2:1432-433 「つれなながら、さるべき折々のあはれを過ぐしたまはぬ、これこそ、かたみに情けも見果つべきわざなれ。なほゆゑづきよしづきて、人目に見ゆばかりなるは、あまりの難も出で来けり。対の姫君を、さは生ほし立てじ」と思す。「つれづれにて恋しと思ふらむかし」と、忘るる折なけれど、ただ女親なき子を、置きたらむ心地して、見ぬほど、うしろめたく、「いかが思ふらむ」とおぼえぬぞ、心やすきわざなりける。<BR>⏎
<P>⏎
291 「つれなながら、さるべき折々のあはれを過ぐしたまはぬ、これこそ、かたみに情けも見果つべきわざなれ。なほゆゑづきよしづきて、人目に見ゆばかりなるは、あまりの難も出で来けり。対の姫君を、さは生ほし立てじ」と思す。「つれづれにて恋しと思ふらむかし」と、忘るる折なけれど、ただ女親なき子を、置きたらむ心地して、見ぬほど、うしろめたく、「いかが思ふらむ」とおぼえぬぞ、心やすきわざなりける。<BR>⏎
d1436<P>⏎
cd2:1437-438 「かうこの日ごろ、ありしよりけに、誰も誰も紛るるかたなく、<A HREF="#no16">見なれ見なれて</A>、<A NAME="te16">え</A>しも常にかからずは、恋しからじや。いみじきことをばさるものにて、ただうち思ひめぐらすこそ、耐へがたきこと多かりけれ」<BR>⏎
<P>⏎
294 「かうこの日ごろ、ありしよりけに、誰も誰も紛るるかたなく、<A HREF="#no16">見なれ見なれて</A>、<A NAME="te16">え</A>しも常にかからずは、恋しからじや。いみじきことをばさるものにて、ただうち思ひめぐらすこそ、耐へがたきこと多かりけれ」<BR>⏎
d1440<P>⏎
d1442<P>⏎
cd2:1443-444 と聞こえもやらず。あはれと見わたしたまひて、<BR>⏎
<P>⏎
297 と聞こえもやらず。あはれと見わたしたまひて、<BR>⏎
d1446<P>⏎
c1447 とて灯をうち眺めたまへるまみの、うち濡れたまへるほどぞ、めでたき。<BR>⏎
299 とて灯をうち眺めたまへるまみの、うち濡れたまへるほどぞ、めでたき。<BR>⏎
d1451<P>⏎
cd4:2453-456 などみな心長かるべきことどもをのたまへど、「いでやいとど待遠にぞなりたまはむ」と思ふに、いとど心細し。<BR>⏎
<P>⏎
 大殿は、人びとに、際々ほど置きつつ、はかなきもてあそびものども、またまことにかの御形見なるべきものなど、わざとならぬさまに取りなしつつ、皆配らせたまひけり。<BR>⏎
<P>⏎
304-305 などみな心長かるべきことどもをのたまへど、「いでやいとど待遠にぞなりたまはむ」と思ふに、いとど心細し。<BR>⏎
 大殿は、人びとに、際々ほど置きつつ、はかなきもてあそびものども、またまことにかの御形見なるべきものなど、わざとならぬさまに取りなしつつ、皆配らせたまひけり。<BR>⏎
text09457 <A NAME="in29">[第九段 源氏、左大臣邸を辞去する]</A><BR>306 
d1458<P>⏎
d1461<P>⏎
d1465<P>⏎
cd3:2468-470<P> 「齢のつもりには、さしもあるまじきことにつけてだに、涙もろなるわざにはべるを、まして干る世なう思ひたまへ惑はれはべる心を、えのどめはべらねば、人目も、いと乱りがはしう、心弱きさまにはべるべければ、院などにも参りはべらぬなり。ことのついでには、さやうにおもむけ奏せさせたまへ。いくばくもはべるまじき老いの末に、うち捨てられたるが、つらうもはべるかな」<BR>⏎
<P>⏎
 とせめて思ひ静めてのたまふけしき、いとわりなし。君も、たびたび鼻うちかみて、<BR>⏎
314-315 「齢のつもりには、さしもあるまじきことにつけてだに、涙もろなるわざにはべるを、まして干る世なう思ひたまへ惑はれはべる心を、えのどめはべらねば、人目も、いと乱りがはしう、心弱きさまにはべるべければ、院などにも参りはべらぬなり。ことのついでには、さやうにおもむけ奏せさせたまへ。いくばくもはべるまじき老いの末に、うち捨てられたるが、つらうもはべるかな」<BR>⏎
 とせめて思ひ静めてのたまふけしき、いとわりなし。君も、たびたび鼻うちかみて、<BR>⏎
cd2:1472-473 「さらば時雨も隙なくはべるめるを、暮れぬほどに」と、そそのかしきこえたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
317 「さらば時雨も隙なくはべるめるを、暮れぬほどに」と、そそのかしきこえたまふ。<BR>⏎
d1475<P>⏎
d1477<P>⏎
cd4:2478-481 とても泣きたまひぬ。<BR>⏎
<P>⏎
 「いと浅はかなる人びとの嘆きにもはべるなるかな。まことにいかなりともと、のどかに思ひたまへつるほどは、おのづから御目離るる折もはべりつらむを、なかなか今は、何を頼みにてかはおこたりはべらむ。今御覧じてむ」<BR>⏎
<P>⏎
320-321 とても泣きたまひぬ。<BR>⏎
 「いと浅はかなる人びとの嘆きにもはべるなるかな。まことにいかなりともと、のどかに思ひたまへつるほどは、おのづから御目離るる折もはべりつらむを、なかなか今は、何を頼みにてかはおこたりはべらむ。今御覧じてむ」<BR>⏎
cd10:4485-494 と空を仰ぎて眺めたまふ。よそ人に見たてまつりなさむが、惜しきなるべし。「<A HREF="#no18">旧き枕故き衾、誰と共にか</A><A NAME="te18">」</A>とある所に、<BR>⏎
<P>⏎
 「なき魂ぞいとど悲しき寝し床の<BR>⏎
  あくがれがたき心ならひに」<BR>⏎
<P>⏎
 また「霜の花白し」とある所に、<BR>⏎
<P>⏎
 「君なくて<A HREF="#no19">塵つもりぬる常夏</A><A NAME="te19">の</A><BR>⏎
  露うち払ひいく夜寝ぬらむ」<BR>⏎
<P>⏎
325-328 と空を仰ぎて眺めたまふ。よそ人に見たてまつりなさむが、惜しきなるべし。「<A HREF="#no18">旧き枕故き衾、誰と共にか</A><A NAME="te18">」</A>とある所に、<BR>⏎
 「なき魂ぞいとど悲しき寝し床の<BR>  あくがれがたき心ならひに」<BR>⏎
 また「霜の花白し」とある所に、<BR>⏎
 「君なくて<A HREF="#no19">塵つもりぬる常夏</A><A NAME="te19">の</A><BR>  露うち払ひいく夜寝ぬらむ」<BR>⏎
d1496<P>⏎
cd4:2498-501 「いふかひなきことをばさるものにて、かかる悲しき類ひ、世になくやはと、思ひなしつつ、契り長からで、かく心を惑はすべくてこそはありけめと、かへりてはつらく、前の世を思ひやりつつなむ、覚ましはべるを、ただ日ごろに添へて、恋しさの堪へがたきと、この大将の君の、今はとよそになりたまはむなむ、飽かずいみじく思ひたまへらるる。一日、二日も<A HREF="#k32">見え</A><A NAME="t32">た</A>まはず、かれがれにおはせしをだに、飽かず胸いたく思ひはべりしを、朝夕の光失ひては、いかでかながらふべからむ」<BR>⏎
<P>⏎
 と御声もえ忍びあへたまはず泣いたまふに、御前なるおとなおとなしき人など、いと悲しくて、さとうち泣きたる、そぞろ寒き夕べのけしきなり。<BR>⏎
<P>⏎
331-332 「いふかひなきことをばさるものにて、かかる悲しき類ひ、世になくやはと、思ひなしつつ、契り長からで、かく心を惑はすべくてこそはありけめと、かへりてはつらく、前の世を思ひやりつつなむ、覚ましはべるを、ただ日ごろに添へて、恋しさの堪へがたきと、この大将の君の、今はとよそになりたまはむなむ、飽かずいみじく思ひたまへらるる。一日、二日も<A HREF="#k32">見え</A><A NAME="t32">た</A>まはず、かれがれにおはせしをだに、飽かず胸いたく思ひはべりしを、朝夕の光失ひては、いかでかながらふべからむ」<BR>⏎
 と御声もえ忍びあへたまはず泣いたまふに、御前なるおとなおとなしき人など、いと悲しくて、さとうち泣きたる、そぞろ寒き夕べのけしきなり。<BR>⏎
cd2:1504-505 とておのおの、「あからさまにまかでて、参らむ」と言ふもあれば、かたみに別れ惜しむほど、<A HREF="#k34">おのがじし</A><A NAME="t34">あ</A>はれなることども多かり。<BR>⏎
<P>⏎
335 とておのおの、「あからさまにまかでて、参らむ」と言ふもあれば、かたみに別れ惜しむほど、<A HREF="#k34">おのがじし</A><A NAME="t34">あ</A>はれなることども多かり。<BR>⏎
cd2:1508-509 と心苦しげに思し召して、御前にて物など参らせたまひて、とやかくやと思し扱ひきこえさせたまへるさま、あはれにかたじけなし。<BR>⏎
<P>⏎
338 と心苦しげに思し召して、御前にて物など参らせたまひて、とやかくやと思し扱ひきこえさせたまへるさま、あはれにかたじけなし。<BR>⏎
c1512 と御消息聞こえたまへり。<BR>⏎
341 と御消息聞こえたまへり。<BR>⏎
cd2:1514-515 とて<A HREF="#k36">さらぬ</A><A NAME="t36">折</A>だにある御けしき取り添へて、いと心苦しげなり。無紋の表の御衣に、鈍色の御下襲、纓巻きたまへるやつれ姿、はなやかなる御装ひよりも、なまめかしさまさりたまへり。<BR>⏎
<P>⏎
343 とて<A HREF="#k36">さらぬ</A><A NAME="t36">折</A>だにある御けしき取り添へて、いと心苦しげなり。無紋の表の御衣に、鈍色の御下襲、纓巻きたまへるやつれ姿、はなやかなる御装ひよりも、なまめかしさまさりたまへり。<BR>⏎
d1517<P>⏎
text09518 <H4>第三章 紫の君の物語 新手枕の物語</H4>345 
text09519 <A NAME="in31">[第一段 源氏、紫の君と新手枕を交わす]</A><BR>346 
d1520<P>⏎
d1523<P>⏎
c2526-527 とて小さき御几帳ひき上げて見たてまつりたまへば、<A HREF="#k37">うちそばみ</A><A NAME="t37">て</A><A HREF="#k38">笑ひ</A><A NAME="t38">た</A>まへる御さま、飽かぬところなし。<BR>⏎
 「火影の御かたはらめ、頭つきなど、<A HREF="#k39">ただ</A><A NAME="t39"></A>かの心尽くしきこゆる人に、違ふところなくなりゆくかな」<BR>⏎
351-352 とて小さき御几帳ひき上げて見たてまつりたまへば、<A HREF="#k37">うちそばみ</A><A NAME="t37">て</A><A HREF="#k38">笑ひ</A><A NAME="t38">た</A>まへる御さま、飽かぬところなし。<BR>⏎
 「火影の御かたはらめ、頭つきなど、<A HREF="#k39">ただ</A><A NAME="t39"></A>かの心尽くしきこゆる人に、違ふところなくなりゆくかな」<BR>⏎
d1529<P>⏎
cd2:1532-533 と語らひきこえたまふを、少納言はうれしと聞くものから、なほ危ふく思ひきこゆ。「やむごとなき忍び所多うかかづらひたまへれば、またわづらはしきや立ち代はりたまはむ」と思ふぞ、憎き心なるや。<BR>⏎
<P>⏎
356 と語らひきこえたまふを、少納言はうれしと聞くものから、なほ危ふく思ひきこゆ。「やむごとなき忍び所多うかかづらひたまへれば、またわづらはしきや立ち代はりたまはむ」と思ふぞ、憎き心なるや。<BR>⏎
d1536<P>⏎
cd2:1538-539 姫君の、何ごともあらまほしうととのひ果てて、いとめでたうのみ見えたまふを、似げなからぬほどに、はた見なしたまへれば、けしきばみたることなど、折々聞こえ試みたまへど、見も知りたまはぬけしきなり。<BR>⏎
<P>⏎
360 姫君の、何ごともあらまほしうととのひ果てて、いとめでたうのみ見えたまふを、似げなからぬほどに、はた見なしたまへれば、けしきばみたることなど、折々聞こえ試みたまへど、見も知りたまはぬけしきなり。<BR>⏎
d1541<P>⏎
c1542 人びと、「いかなればかくおはしますならむ。御心地の例ならず思さるるにや」と見たてまつり嘆くに、君は渡りたまふとて、御硯の箱を、御帳のうちにさし入れておはしにけり。<BR>⏎
362 人びと、「いかなればかくおはしますならむ。御心地の例ならず思さるるにや」と見たてまつり嘆くに、君は渡りたまふとて、御硯の箱を、御帳のうちにさし入れておはしにけり。<BR>⏎
d1544<P>⏎
cd4:2545-548 「あやなくも隔てけるかな夜をかさね<BR>⏎
  さすがに馴れし夜の衣を」<BR>⏎
<P>⏎
 と書きすさびたまへるやうなり。「かかる御心おはすらむ」とは、かけても思し寄らざりしかば、<BR>⏎
364-365 「あやなくも隔てけるかな夜をかさね<BR>  さすがに馴れし夜の衣を」<BR>⏎
 と書きすさびたまへるやうなり。「かかる御心おはすらむ」とは、かけても思し寄らざりしかば、<BR>⏎
cd2:1550-551 とあさましう思さる。<BR>⏎
<P>⏎
367 とあさましう思さる。<BR>⏎
c5554-558 とて覗きたまへば、いよいよ御衣ひきかづきて臥したまへり。人びとは<A HREF="#k42">退きつつ</A><A NAME="t42">さ</A>ぶらへば、寄りたまひて、<BR>⏎
 「などかくいぶせき御もてなしぞ。思ひのほかに<A HREF="#k43">心憂く</A><A NAME="t43">こ</A>そおはしけれな。人もいかにあやしと思ふらむ」<BR>⏎
 とて御衾をひきやりたまへれば、汗におしひたして、額髪もいたう濡れたまへり。<BR>⏎
 「あなうたて。これはいとゆゆしきわざぞよ」<BR>⏎
 とてよろづにこしらへきこえたまへど、まことに、いとつらしと思ひたまひて、つゆの御いらへもしたまはず。<BR>⏎
370-374 とて覗きたまへば、いよいよ御衣ひきかづきて臥したまへり。人びとは<A HREF="#k42">退きつつ</A><A NAME="t42">さ</A>ぶらへば、寄りたまひて、<BR>⏎
 「などかくいぶせき御もてなしぞ。思ひのほかに<A HREF="#k43">心憂く</A><A NAME="t43">こ</A>そおはしけれな。人もいかにあやしと思ふらむ」<BR>⏎
 とて御衾をひきやりたまへれば、汗におしひたして、額髪もいたう濡れたまへり。<BR>⏎
 「あなうたて。これはいとゆゆしきわざぞよ」<BR>⏎
 とてよろづにこしらへきこえたまへど、まことに、いとつらしと思ひたまひて、つゆの御いらへもしたまはず。<BR>⏎
d1561<P>⏎
text09562 <A NAME="in32">[第二段 結婚の儀式の夜]</A><BR>377 
d1563<P>⏎
c3566-568 とうちほほ笑みてのたまふ御けしきを、心とき者にて、ふと思ひ寄りぬ。惟光、たしかにも承らで、<BR>⏎
 「げに愛敬の初めは、日選りして聞こし召すべきことにこそ。さても子の子はいくつか仕うまつらすべうはべらむ」<BR>⏎
 とまめだちて申せば、<BR>⏎
380-382 とうちほほ笑みてのたまふ御けしきを、心とき者にて、ふと思ひ寄りぬ。惟光、たしかにも承らで、<BR>⏎
 「げに愛敬の初めは、日選りして聞こし召すべきことにこそ。さても子の子はいくつか仕うまつらすべうはべらむ」<BR>⏎
 とまめだちて申せば、<BR>⏎
d1571<P>⏎
d1573<P>⏎
c3575-577 「これ忍びて参らせたまへ」<BR>⏎
 とて香壺の筥を一つ、さし入れたり。<BR>⏎
 「たしかに、御枕上に参らすべき祝ひの物にはべる。あなかしこ。あだにな」<BR>⏎
387-389 「これ忍びて参らせたまへ」<BR>⏎
 とて香壺の筥を一つ、さし入れたり。<BR>⏎
 「たしかに、御枕上に参らすべき祝ひの物にはべる。あなかしこ。あだにな」<BR>⏎
c1580 とて取れば、<BR>⏎
392 とて取れば、<BR>⏎
d1583<P>⏎
d1585<P>⏎
cd4:3586-589 少納言は、「いとかうしもや」とこそ思ひきこえさせつれ、あはれにかたじけなく、思しいたらぬことなき御心ばへを、まづうち泣かれぬ。<BR>⏎
 「さてもうちうちにのたまはせよな。かの人も、いかに思ひつらむ」<BR>⏎
 と<A HREF="#k45">ささめき</A><A NAME="t45">あ</A>へり。<BR>⏎
<P>⏎
396-398 少納言は、「いとかうしもや」とこそ思ひきこえさせつれ、あはれにかたじけなく、思しいたらぬことなき御心ばへを、まづうち泣かれぬ。<BR>⏎
 「さてもうちうちにのたまはせよな。かの人も、いかに思ひつらむ」<BR>⏎
 と<A HREF="#k45">ささめき</A><A NAME="t45">あ</A>へり。<BR>⏎
d1593<P>⏎
c1596 など大臣のたまふに、「いと憎し」と、思ひきこえたまひて、<BR>⏎
404 など大臣のたまふに、「いと憎し」と、思ひきこえたまひて、<BR>⏎
cd2:1598-599 と参らせたてまつらむことを思しはげむ。<BR>⏎
<P>⏎
406 と参らせたてまつらむことを思しはげむ。<BR>⏎
cd3:2601-603 「何かはかばかり<A HREF="#k46">短かめる</A><A NAME="t46">世</A>に。かくて思ひ定まりなむ。人の怨みも負ふまじかりけり」<BR>⏎
 といとど危ふく思し懲りにたり。<BR>⏎
<P>⏎
408-409 「何かはかばかり<A HREF="#k46">短かめる</A><A NAME="t46">世</A>に。かくて思ひ定まりなむ。人の怨みも負ふまじかりけり」<BR>⏎
 といとど危ふく思し懲りにたり。<BR>⏎
d1605<P>⏎
d1608<P>⏎
text09609 <A NAME="in33">[第三段 新年の参賀と左大臣邸へ挨拶回り]</A><BR>413 
d1610<P>⏎
d1613<P>⏎
cd2:1614-615 若君見たてまつりたまへば、こよなうおよすけて、笑ひがちにおはするも、あはれなり。まみ口つき、ただ春宮の御同じさまなれば、「人もこそ見たてまつりとがむれ」と見たまふ。<BR>⏎
<P>⏎
416 若君見たてまつりたまへば、こよなうおよすけて、笑ひがちにおはするも、あはれなり。まみ口つき、ただ春宮の御同じさまなれば、「人もこそ見たてまつりとがむれ」と見たまふ。<BR>⏎
c1621 とていみじくし尽くしたまへるものども、また重ねてたてまつれたまへり。かならず今日たてまつるべき、と思しける御下襲は、色も織りざまも、世の常ならず、心ことなるを、かひなくやはとて、着替へたまふ。来ざらましかば、口惜しう思さましと、心苦し。御返りに、<BR>⏎
422 とていみじくし尽くしたまへるものども、また重ねてたてまつれたまへり。かならず今日たてまつるべき、と思しける御下襲は、色も織りざまも、世の常ならず、心ことなるを、かひなくやはとて、着替へたまふ。来ざらましかば、口惜しう思さましと、心苦し。御返りに、<BR>⏎
d1623<P>⏎
cd3:1624-626  あまた年今日改めし色衣<BR>⏎
  着ては涙ぞふる心地する<BR>⏎
<P>⏎
424  あまた年今日改めし色衣<BR>  着ては涙ぞふる心地する<BR>⏎
d1629<P>⏎
cd3:1630-632 「新しき年ともいはずふるものは<BR>⏎
  ふりぬる人の涙なりけり」<BR>⏎
<P>⏎
427 「新しき年ともいはずふるものは<BR>  ふりぬる人の涙なりけり」<BR>⏎
d2634-635
<P>⏎
text09636 <a name="in41">【出典】<BR>429 
c1637</a><A NAME="no1">出典1</A> 我を思ふ人を思はぬ報いにや我が思ふ人の我を思はぬ(古今集雑体-一〇四一 読人しらず)<A HREF="#te1">(戻)</A><BR>⏎
430<A NAME="no1">出典1</A> 我を思ふ人を思はぬ報いにや我が思ふ人の我を思はぬ(古今集雑体-一〇四一 読人しらず)<A HREF="#te1">(戻)</A><BR>⏎
d1659
text09660<p> <a name="in42">【校訂】<BR>452 
c1662</a><A NAME="k01">校訂1</A> 后腹の--きさきはし(し/$ら<朱>)の<A HREF="#t01">(戻)</A><BR>⏎
454<A NAME="k01">校訂1</A> 后腹の--きさきはし(し/$ら<朱>)の<A HREF="#t01">(戻)</A><BR>⏎
d1708</p>⏎
d1715</p>⏎
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First updated 9/20/1996(ver.1-1)<BR>⏎
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cd3:210-12Last updated 9/20/2010(ver.2-3)<BR>⏎
渋谷栄一校訂(C)<BR>⏎
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9-10<ADDRESS>Last updated 9/20/2010(ver.2-3)<BR>⏎
渋谷栄一校訂(C)</ADDRESS>⏎
d114<P>⏎
i014
d146<P>⏎
d193<P>⏎
d196<P>⏎
text1097 <H4>第一章 六条御息所の物語 秋の別れと伊勢下向の物語</H4>91 
text1098 <A NAME="in11">[第一段 六条御息所、伊勢下向を決意]</A><BR>92 
d199<P>⏎
d1101<P>⏎
d1103<P>⏎
d1105<P>⏎
text10106 <A NAME="in12">[第二段 野の宮訪問と暁の別れ]</A><BR>96 
d1107<P>⏎
d1109<P>⏎
d1111<P>⏎
cd2:1112-113 むつましき御前、十余人ばかり、<A HREF="#k03">御随身</A><A NAME="t03">、</A>ことことしき姿ならで、いたう忍びたまへれど、ことにひきつくろひたまへる御用意、いとめでたく見えたまへば、御供なる好き者ども、所からさへ身にしみて思へり。御心にも、「などて今まで立ちならさざりつらむ」と、過ぎぬる方、悔しう思さる。<BR>⏎
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99 むつましき御前、十余人ばかり、<A HREF="#k03">御随身</A><A NAME="t03">、</A>ことことしき姿ならで、いたう忍びたまへれど、ことにひきつくろひたまへる御用意、いとめでたく見えたまへば、御供なる好き者ども、所からさへ身にしみて思へり。御心にも、「などて今まで立ちならさざりつらむ」と、過ぎぬる方、悔しう思さる。<BR>⏎
d1115<P>⏎
d1118<P>⏎
c2120-121 とまめやかに聞こえたまへば、人びと、<BR>⏎
 「げにいとかたはらいたう」<BR>⏎
104-105 とまめやかに聞こえたまへば、人びと、<BR>⏎
 「げにいとかたはらいたう」<BR>⏎
d1123<P>⏎
cd2:1124-125 などあつかひきこゆれば、「いさや。ここの人目も見苦しう、かの思さむことも、若々しう、<A HREF="#k06">出で</A><A NAME="t06">ゐ</A>むが、今さらにつつましきこと」と思すに、いともの憂けれど、情けなうもてなさむにもたけからねば、とかくうち嘆き、やすらひて、ゐざり出でたまへる御けはひ、いと心にくし。<BR>⏎
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107 などあつかひきこゆれば、「いさや。ここの人目も見苦しう、かの思さむことも、若々しう、<A HREF="#k06">出で</A><A NAME="t06">ゐ</A>むが、今さらにつつましきこと」と思すに、いともの憂けれど、情けなうもてなさむにもたけからねば、とかくうち嘆き、やすらひて、ゐざり出でたまへる御けはひ、いと心にくし。<BR>⏎
c1127 とて上りゐたまへり。<BR>⏎
109 とて上りゐたまへり。<BR>⏎
d1131<P>⏎
cd2:1132-133 「神垣は<A HREF="#no4">しるしの杉</A><A NAME="te4">も</A>なきものを<BR>⏎
  いかにまがへて折れる榊ぞ」<BR>⏎
113 「神垣は<A HREF="#no4">しるしの杉</A><A NAME="te4">も</A>なきものを<BR>  いかにまがへて折れる榊ぞ」<BR>⏎
d1135<P>⏎
cd2:1136-137 「<A HREF="#no5">少女子が</A><A NAME="te5">あ</A>たりと思へば<A HREF="#no6">榊葉の<BR>⏎
  香を</A><A NAME="te6">な</A>つかしみとめてこそ折れ」<BR>⏎
115 「<A HREF="#no5">少女子が</A><A NAME="te5">あ</A>たりと思へば<A HREF="#no6">榊葉の<BR>  香を</A><A NAME="te6">な</A>つかしみとめてこそ折れ」<BR>⏎
d1139<P>⏎
cd2:1141-142 また心のうちに、「いかにぞや、疵ありて」、思ひきこえたまひにし後、はたあはれもさめつつ、かく御仲も隔たりぬるを、めづらしき御対面の昔おぼえたるに、「あはれ」と、思し乱るること限りなし。来し方、行く先、思し続けられて、心弱く泣きたまひぬ。<BR>⏎
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118 また心のうちに、「いかにぞや、疵ありて」、思ひきこえたまひにし後、はたあはれもさめつつ、かく御仲も隔たりぬるを、めづらしき御対面の昔おぼえたるに、「あはれ」と、思し乱るること限りなし。来し方、行く先、思し続けられて、心弱く泣きたまひぬ。<BR>⏎
d1144<P>⏎
d1146<P>⏎
d1148<P>⏎
cd2:1150-151 「暁の別れはいつも露けきを<BR>⏎
  こは世に知らぬ秋の空かな」<BR>⏎
123 「暁の別れはいつも露けきを<BR>  こは世に知らぬ秋の空かな」<BR>⏎
d1153<P>⏎
cd3:2154-156 風、いと冷やかに吹きて、松虫の鳴きからしたる声も、折知り顔なるを、さして思ふことなきだに、聞き過ぐしがたげなるに、ましてわりなき御心惑ひどもに、なかなか、こともゆかぬにや。<BR>⏎
 「おほかたの秋の別れも悲しきに<BR>⏎
  鳴く音な添へそ野辺の松虫」<BR>⏎
125-126 風、いと冷やかに吹きて、松虫の鳴きからしたる声も、折知り顔なるを、さして思ふことなきだに、聞き過ぐしがたげなるに、ましてわりなき御心惑ひどもに、なかなか、こともゆかぬにや。<BR>⏎
 「おほかたの秋の別れも悲しきに<BR>  鳴く音な添へそ野辺の松虫」<BR>⏎
d1158<P>⏎
cd2:1161-162 とあいなく涙ぐみあへり。<BR>⏎
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130 とあいなく涙ぐみあへり。<BR>⏎
text10163 <A NAME="in13">[第三段 伊勢下向の日決定]</A><BR>131 
d1164<P>⏎
cd2:1166-167 男は、さしも思さぬことをだに、情けのためにはよく言ひ続けたまふべかめれば、ましておしなべての列には思ひきこえたまはざりし御仲の、かくて背きたまひなむとするを、口惜しうもいとほしうも、思し悩むべし。<BR>⏎
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133 男は、さしも思さぬことをだに、情けのためにはよく言ひ続けたまふべかめれば、ましておしなべての列には思ひきこえたまはざりし御仲の、かくて背きたまひなむとするを、口惜しうもいとほしうも、思し悩むべし。<BR>⏎
d1169<P>⏎
cd2:1170-171 斎宮は、若き御心地に、不定なりつる御出で立ちの、かく定まりゆくを、うれしとのみ思したり。世人は、例なきことと、もどきもあはれがりも、さまざまに聞こゆべし。何ごとも、人にもどきあつかはれぬ際はやすげなり。なかなか世に抜け出でぬる人の御あたりは、所狭きこと多くなむ。<BR>⏎
<P>⏎
135 斎宮は、若き御心地に、不定なりつる御出で立ちの、かく定まりゆくを、うれしとのみ思したり。世人は、例なきことと、もどきもあはれがりも、さまざまに聞こゆべし。何ごとも、人にもどきあつかはれぬ際はやすげなり。なかなか世に抜け出でぬる人の御あたりは、所狭きこと多くなむ。<BR>⏎
text10172 <A NAME="in14">[第四段 斎宮、宮中へ向かう]</A><BR>136 
d1173<P>⏎
d1175<P>⏎
cd2:1177-178  八洲もる国つ御神も心あらば<BR>⏎
  飽かぬ別れの仲をことわれ<BR>⏎
139  八洲もる国つ御神も心あらば<BR>  飽かぬ別れの仲をことわれ<BR>⏎
d1181<P>⏎
cd2:1182-183 「国つ神空にことわる仲ならば<BR>⏎
  なほざりごとをまづや糾さむ」<BR>⏎
142 「国つ神空にことわる仲ならば<BR>  なほざりごとをまづや糾さむ」<BR>⏎
d1185<P>⏎
d1187<P>⏎
text10188 <A NAME="in15">[第五段 斎宮、伊勢へ向かう]</A><BR>145 
d1189<P>⏎
d1192<P>⏎
cd4:2193-196 「そのかみを今日はかけじと忍ぶれど<BR>⏎
  心のうちにものぞ悲しき」<BR>⏎
<P>⏎
 斎宮は、十四にぞなりたまひける。いとうつくしうおはするさまを、うるはしうしたてたてまつりたまへるぞ、いとゆゆしきまで見えたまふを、帝御心動きて、別れの櫛たてまつりたまふほど、いとあはれにて、しほたれさせたまひぬ。<BR>⏎
148-149 「そのかみを今日はかけじと忍ぶれど<BR>  心のうちにものぞ悲しき」<BR>⏎
 斎宮は、十四にぞなりたまひける。いとうつくしうおはするさまを、うるはしうしたてたてまつりたまへるぞ、いとゆゆしきまで見えたまふを、帝御心動きて、別れの櫛たてまつりたまふほど、いとあはれにて、しほたれさせたまひぬ。<BR>⏎
d1198<P>⏎
d1200<P>⏎
cd3:1201-203 「振り捨てて今日は行くとも鈴鹿川<BR>⏎
  八十瀬の波に袖は濡れじや」<BR>⏎
<P>⏎
152 「振り捨てて今日は行くとも鈴鹿川<BR>  八十瀬の波に袖は濡れじや」<BR>⏎
d1205<P>⏎
cd3:1206-208 「鈴鹿川八十瀬の波に濡れ濡れず<BR>⏎
  伊勢まで誰れか思ひおこせむ」<BR>⏎
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154 「鈴鹿川八十瀬の波に濡れ濡れず<BR>  伊勢まで誰れか思ひおこせむ」<BR>⏎
d1211<P>⏎
cd5:2212-216 「行く方を眺めもやらむこの秋は<BR>⏎
  逢坂山を霧な隔てそ」<BR>⏎
<P>⏎
 西の対にも渡りたまはで、人やりならず、もの寂しげに眺め暮らしたまふ。まして旅の空は、いかに御心尽くしなること多かりけむ。<BR>⏎
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157-158 「行く方を眺めもやらむこの秋は<BR>  逢坂山を霧な隔てそ」<BR>⏎
 西の対にも渡りたまはで、人やりならず、もの寂しげに眺め暮らしたまふ。まして旅の空は、いかに御心尽くしなること多かりけむ。<BR>⏎
text10217 <H4>第二章 光る源氏の物語 父桐壺帝の崩御</H4>159 
text10218 <A NAME="in21">[第一段 十月、桐壺院、重体となる]</A><BR>160 
d1219<P>⏎
d1221<P>⏎
d1223<P>⏎
cd2:1224-225 とあはれなる御遺言ども多かりけれど、女のまねぶべきことにしあらねば、この片端だにかたはらいたし。<BR>⏎
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163 とあはれなる御遺言ども多かりけれど、女のまねぶべきことにしあらねば、この片端だにかたはらいたし。<BR>⏎
d1227<P>⏎
d1230<P>⏎
d1233<P>⏎
text10234 <A NAME="in22">[第二段 十一月一日、桐壺院、崩御]</A><BR>169 
d1235<P>⏎
d1237<P>⏎
d1239<P>⏎
cd4:2240-243 中宮、大将殿などは、ましてすぐれて、ものも思しわかれず、後々の御わざなど、孝じ仕うまつりたまふさまも、そこらの親王たちの御中にすぐれたまへるを、ことわりながら、いとあはれに、世人も見たてまつる。<A HREF="#k15">藤の御衣にやつれたまへる</A><A NAME="t15">に</A>つけても、限りなくきよらに心苦しげなり。去年、今年とうち続き、かかることを見たまふに、世もいとあぢきなう思さるれど、かかるついでにも、まづ思し<A HREF="#k16">立たるる</A><A NAME="t16">こ</A>とはあれど、またさまざまの御ほだし多かり。<BR>⏎
<P>⏎
 御四十九日までは、女御、御息所たち、みな院に集ひたまへりつるを、過ぎぬれば、散り散りにまかでたまふ。師走の二十日なれば、おほかたの世の中とぢむる空のけしきにつけても、まして晴るる世なき、中宮の御心のうちなり。大后の御心も知りたまへれば、心にまかせたまへらむ世の、はしたなく住み憂からむを思すよりも、馴れきこえたまへる年ごろの御ありさまを、思ひ出できこえたまはぬ時の間なきに、かくてもおはしますまじう、みな他々へと出でたまふほどに、悲しきこと限りなし。<BR>⏎
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172-173 中宮、大将殿などは、ましてすぐれて、ものも思しわかれず、後々の御わざなど、孝じ仕うまつりたまふさまも、そこらの親王たちの御中にすぐれたまへるを、ことわりながら、いとあはれに、世人も見たてまつる。<A HREF="#k15">藤の御衣にやつれたまへる</A><A NAME="t15">に</A>つけても、限りなくきよらに心苦しげなり。去年、今年とうち続き、かかることを見たまふに、世もいとあぢきなう思さるれど、かかるついでにも、まづ思し<A HREF="#k16">立たるる</A><A NAME="t16">こ</A>とはあれど、またさまざまの御ほだし多かり。<BR>⏎
 御四十九日までは、女御、御息所たち、みな院に集ひたまへりつるを、過ぎぬれば、散り散りにまかでたまふ。師走の二十日なれば、おほかたの世の中とぢむる空のけしきにつけても、まして晴るる世なき、中宮の御心のうちなり。大后の御心も知りたまへれば、心にまかせたまへらむ世の、はしたなく住み憂からむを思すよりも、馴れきこえたまへる年ごろの御ありさまを、思ひ出できこえたまはぬ時の間なきに、かくてもおはしますまじう、みな他々へと出でたまふほどに、悲しきこと限りなし。<BR>⏎
d1245<P>⏎
cd3:1246-248 「蔭ひろみ頼みし松や枯れにけむ<BR>⏎
  下葉散りゆく年の暮かな」<BR>⏎
<P>⏎
175 「蔭ひろみ頼みし松や枯れにけむ<BR>  下葉散りゆく年の暮かな」<BR>⏎
d1250<P>⏎
cd8:3251-258 「さえわたる池の鏡のさやけきに<BR>⏎
  見なれし影を見ぬぞ悲しき」<BR>⏎
<P>⏎
 と思すままに、あまり若々しうぞあるや。王命婦、<BR>⏎
<P>⏎
 「年暮れて岩井の水もこほりとぢ<BR>⏎
  見し人影のあせもゆくかな」<BR>⏎
<P>⏎
177-179 「さえわたる池の鏡のさやけきに<BR>  見なれし影を見ぬぞ悲しき」<BR>⏎
 と思すままに、あまり若々しうぞあるや。王命婦、<BR>⏎
 「年暮れて岩井の水もこほりとぢ<BR>  見し人影のあせもゆくかな」<BR>⏎
d1261<P>⏎
text10262 <A NAME="in23">[第三段 諒闇の新年となる]</A><BR>182 
d1263<P>⏎
cd2:1264-265 年かへりぬれど、世の中今めかしきことなく静かなり。まして大将殿は、もの憂くて籠もりゐたまへり。除目のころなど、院の御時をばさらにもいはず、年ごろ劣るけぢめなくて、御門のわたり、所なく立ち込みたりし馬車うすらぎて、宿直物の袋をさをさ見えず、親しき家司どもばかり、ことに急ぐことなげにてあるを見たまふにも、「今よりは、かくこそは」と思ひやられて、ものすさまじくなむ。<BR>⏎
<P>⏎
183 年かへりぬれど、世の中今めかしきことなく静かなり。まして大将殿は、もの憂くて籠もりゐたまへり。除目のころなど、院の御時をばさらにもいはず、年ごろ劣るけぢめなくて、御門のわたり、所なく立ち込みたりし馬車うすらぎて、宿直物の袋をさをさ見えず、親しき家司どもばかり、ことに急ぐことなげにてあるを見たまふにも、「今よりは、かくこそは」と思ひやられて、ものすさまじくなむ。<BR>⏎
d1267<P>⏎
d1269<P>⏎
d1272<P>⏎
d1274<P>⏎
d1276<P>⏎
text10277 <A NAME="in24">[第四段 源氏朧月夜と逢瀬を重ねる]</A><BR>190 
d1278<P>⏎
cd6:3279-284 帝は、院の御遺言違へず、あはれに思したれど、若うおはしますうちにも、御心なよびたるかたに過ぎて、強きところおはしまさぬなるべし、母后祖父大臣とりどりしたまふことは、え背かせたまはず、世のまつりごと、御心にかなはぬやうなり。<BR>⏎
<P>⏎
 わづらはしさのみまされど、尚侍の君は、人知れぬ御心し通へば、わりなくてと、おぼつかなくはあらず。五壇の御修法の初めにて、慎しみおはします隙をうかがひて、例の、夢のやうに聞こえたまふ。かの昔おぼえたる細殿の局に、中納言の君、紛らはして入れたてまつる。人目もしげきころなれば、常よりも端近なる、そら恐ろしうおぼゆ。<BR>⏎
<P>⏎
 朝夕に見たてまつる人だに、飽かぬ御さまなれば、ましてめづらしきほどにのみある御対面の、いかでかはおろかならむ。女の御さまも、げにぞめでたき御盛りなる。重りかなるかたは、いかがあらむ、をかしうなまめき若びたる心地して、見まほしき御けはひなり。<BR>⏎
<P>⏎
191-193 帝は、院の御遺言違へず、あはれに思したれど、若うおはしますうちにも、御心なよびたるかたに過ぎて、強きところおはしまさぬなるべし、母后祖父大臣 とりどりしたまふことは、え背かせたまはず、世のまつりごと、御心にかなはぬやうなり。<BR>⏎
 わづらはしさのみまされど、尚侍の君は、人知れぬ御心し通へば、わりなくてと、おぼつかなくはあらず。五壇の御修法の初めにて、慎しみおはします隙をうかがひて、例の、夢のやうに聞こえたまふ。かの昔おぼえたる細殿の局に、中納言の君、紛らはして入れたてまつる。人目もしげきころなれば、常よりも端近なる、そら恐ろしうおぼゆ。<BR>⏎
 朝夕に見たてまつる人だに、飽かぬ御さまなれば、ましてめづらしきほどにのみある御対面の、いかでかはおろかならむ。女の御さまも、げにぞめでたき御盛りなる。重りかなるかたは、いかがあらむ、をかしうなまめき若びたる心地して、見まほしき御けはひなり。<BR>⏎
cd2:1287-288 と声づくるなり。「またこのわたりに隠ろへたる近衛司ぞあるべき。腹ぎたなきかたへの教へおこするぞかし」と、大将は聞きたまふ。をかしきものから、わづらはし。<BR>⏎
<P>⏎
196 と声づくるなり。「またこのわたりに隠ろへたる近衛司ぞあるべき。腹ぎたなきかたへの教へおこするぞかし」と、大将は聞きたまふ。をかしきものから、わづらはし。<BR>⏎
d1292<P>⏎
cd3:1293-295 「心からかたがた袖を濡らすかな<BR>⏎
  明くと教ふる声につけても」<BR>⏎
<P>⏎
200 「心からかたがた袖を濡らすかな<BR>  明くと教ふる声につけても」<BR>⏎
d1297<P>⏎
cd3:1298-300 「嘆きつつわが世はかくて過ぐせとや<BR>⏎
  胸のあくべき時ぞともなく」<BR>⏎
<P>⏎
202 「嘆きつつわが世はかくて過ぐせとや<BR>  胸のあくべき時ぞともなく」<BR>⏎
d1304<P>⏎
text10305 <H4>第三章 藤壺の物語 塗籠事件</H4>206 
text10306 <A NAME="in31">[第一段 源氏、再び藤壺に迫る]</A><BR>207 
d1307<P>⏎
cd4:2308-311 内裏に参りたまはむことは、うひうひしく、所狭く思しなりて、春宮を見たてまつりたまはぬを、おぼつかなく思ほえたまふ。また頼もしき人もものしたまはねば、ただこの大将の君をぞ、よろづに頼みきこえたまへるに、<A HREF="#k19">なほ、この憎き御心のやまぬに</A><A NAME="t19">、</A>ともすれば御胸をつぶしたまひつつ、いささかもけしきを御覧じ知らずなりにしを思ふだに、いと恐ろしきに、今さらにまた、さる事の聞こえありて、わが身はさるものにて、春宮の<A HREF="#k20">御ために</A><A NAME="t20">か</A>ならずよからぬこと出で来なむ、と思すに、いと恐ろしければ、御祈りをさへせさせて、このこと思ひやませたてまつらむと、思しいたらぬことなく逃れたまふを、いかなる折にかありけむ、あさましうて、近づき参りたまへり。心深くたばかりたまひけむことを、知る人なかりければ、夢のやうにぞありける。<BR>⏎
<P>⏎
 まねぶべきやうなく聞こえ続けたまへど、宮、いとこよなくもて離れきこえたまひて、果て果ては、御胸をいたう悩みたまへば、近うさぶらひつる命婦、弁などぞ、あさましう見たてまつりあつかふ。男は、憂しつらし、と思ひきこえたまふこと、限りなきに、来し方行く先、かきくらす心地して、うつし心失せにければ、明け果てにけれど、出でたまはずなりぬ。<BR>⏎
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208-209 内裏に参りたまはむことは、うひうひしく、所狭く思しなりて、春宮を見たてまつりたまはぬを、おぼつかなく思ほえたまふ。また頼もしき人もものしたまはねば、ただこの大将の君をぞ、よろづに頼みきこえたまへるに、<A HREF="#k19">なほ、この憎き御心のやまぬに</A><A NAME="t19">、</A>ともすれば御胸をつぶしたまひつつ、いささかもけしきを御覧じ知らずなりにしを思ふだに、いと恐ろしきに、今さらにまた、さる事の聞こえありて、わが身はさるものにて、春宮の<A HREF="#k20">御ために</A><A NAME="t20">か</A>ならずよからぬこと出で来なむ、と思すに、いと恐ろしければ、御祈りをさへせさせて、このこと思ひやませたてまつらむと、思しいたらぬことなく逃れたまふを、いかなる折にかありけむ、あさましうて、近づき参りたまへり。心深くたばかりたまひけむことを、知る人なかりければ、夢のやうにぞありける。<BR>⏎
 まねぶべきやうなく聞こえ続けたまへど、宮、いとこよなくもて離れきこえたまひて、果て果ては、御胸をいたう悩みたまへば、近うさぶらひつる命婦、弁などぞ、あさましう見たてまつりあつかふ。男は、憂しつらし、と思ひきこえたまふこと、限りなきに、来し方行く先、かきくらす心地して、うつし心失せにければ、明け果てにけれど、出でたまはずなりぬ。<BR>⏎
d1315<P>⏎
cd2:1318-319 <A HREF="#k22">など</A><A NAME="t22"></A>うちささめき扱ふ。<BR>⏎
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215 <A HREF="#k22">など</A><A NAME="t22"></A>うちささめき扱ふ。<BR>⏎
cd6:4321-326 「なほいと苦しうこそあれ。世や尽きぬらむ」<BR>⏎
 とて外の方を見出だしたまへるかたはら目、言ひ知らずなまめかしう見ゆ。御くだものをだに、とて参り据ゑたり。箱の蓋などにも、なつかしきさまにてあれど、見入れたまはず。世の中をいたう思し悩めるけしきにて、のどかに眺め入りたまへる、いみじうらうたげなり。髪ざし、頭つき、御髪のかかりたるさま、限りなき匂はしさなど、ただかの対の姫君に違ふところなし。年ごろ、すこし思ひ忘れたまへりつるを、「あさましきまでおぼえ<A HREF="#k23">たまへる</A><A NAME="t23">か</A>な」と見たまふままに、すこしもの思ひのはるけどころある心地したまふ。<BR>⏎
<P>⏎
 気高う恥づ<A HREF="#k24">かしげなる</A><A NAME="t24">さ</A>まなども、さらに異人とも思ひ分きがたきを、なほ限りなく昔より思ひしめきこえてし心の思ひなしにや、「さまことに、いみじうねびまさりたまひにけるかな」と、たぐひなくおぼえたまふに、心惑ひして、やをら御帳のうちにかかづらひ入りて、御衣の褄を引きならしたまふ。けはひしるく、さと匂ひたるに、あさましうむくつけう思されて、やがてひれ伏したまへり。「見だに向きたまへかし」と心やましうつらうて、引き寄せたまへるに、御衣をすべし置きて、ゐざりのきたまふに、心にもあらず、御髪の取り添へられたりければ、いと心憂く、宿世のほど、思し知られて、いみじと思したり。<BR>⏎
<P>⏎
 男も、ここら世をもてしづめたまふ御心、みな乱れて、うつしざまにもあらず、よろづのことを泣く泣く怨みきこえたまへど、まことに心づきなし、と思して、いらへも聞こえたまはず。ただ<BR>⏎
217-220 「なほいと苦しうこそあれ。世や尽きぬらむ」<BR>⏎
 とて外の方を見出だしたまへるかたはら目、言ひ知らずなまめかしう見ゆ。御くだものをだに、とて参り据ゑたり。箱の蓋などにも、なつかしきさまにてあれど、見入れたまはず。世の中をいたう思し悩めるけしきにて、のどかに眺め入りたまへる、いみじうらうたげなり。髪ざし、頭つき、御髪のかかりたるさま、限りなき匂はしさなど、ただかの対の姫君に違ふところなし。年ごろ、すこし思ひ忘れたまへりつるを、「あさましきまでおぼえ<A HREF="#k23">たまへる</A><A NAME="t23">か</A>な」と見たまふままに、すこしもの思ひのはるけどころある心地したまふ。<BR>⏎
 気高う恥づ<A HREF="#k24">かしげなる</A><A NAME="t24">さ</A>まなども、さらに異人とも思ひ分きがたきを、なほ限りなく昔より思ひしめきこえてし心の思ひなしにや、「さまことに、いみじうねびまさりたまひにけるかな」と、たぐひなくおぼえたまふに、心惑ひして、やをら御帳のうちにかかづらひ入りて、御衣の褄を引きならしたまふ。けはひしるく、さと匂ひたるに、あさましうむくつけう思されて、やがてひれ伏したまへり。「見だに向きたまへかし」と心やましうつらうて、引き寄せたまへるに、御衣をすべし置きて、ゐざりのきたまふに、心にもあらず、御髪の取り添へられたりければ、いと心憂く、宿世のほど、思し知られて、いみじと思したり。<BR>⏎
 男も、ここら世をもてしづめたまふ御心、みな乱れて、うつしざまにもあらず、よろづのことを泣く泣く怨みきこえたまへど、まことに心づきなし、と思して、いらへも聞こえたまはず。ただ<BR>⏎
d1330<P>⏎
cd3:2332-334 「ただかばかりにても、時々、いみじき愁へをだに、はるけはべりぬべくは、何のおほけなき心もはべらじ」<BR>⏎
 などたゆめきこえたまふべし。なのめなることだに、かやうなる仲らひは、あはれなることも添ふなるを、ましてたぐひなげなり。<BR>⏎
<P>⏎
225-226 「ただかばかりにても、時々、いみじき愁へをだに、はるけはべりぬべくは、何のおほけなき心もはべらじ」<BR>⏎
 などたゆめきこえたまふべし。なのめなることだに、かやうなる仲らひは、あはれなることも添ふなるを、ましてたぐひなげなり。<BR>⏎
c1336 「世の中に<A HREF="#k25">ありと</A><A NAME="t25">聞</A>こし召されむも、いと恥づかしければ、やがて亡せはべりなむも、またこの世ならぬ罪となりはべりぬべきこと」<BR>⏎
228 「世の中に<A HREF="#k25">ありと</A><A NAME="t25">聞</A>こし召されむも、いと恥づかしければ、やがて亡せはべりなむも、またこの世ならぬ罪となりはべりぬべきこと」<BR>⏎
d1338<P>⏎
cd2:1339-340 「逢ふことのかたきを今日に限らずは<BR>⏎
  今幾世をか嘆きつつ経む<BR>⏎
230 「逢ふことのかたきを今日に限らずは<BR>  今幾世をか嘆きつつ経む<BR>⏎
d1342<P>⏎
d1344<P>⏎
cd3:1345-347 「長き世の恨みを人に残しても<BR>⏎
  かつは心をあだと知らなむ」<BR>⏎
<P>⏎
233 「長き世の恨みを人に残しても<BR>  かつは心をあだと知らなむ」<BR>⏎
d1349<P>⏎
text10350 <A NAME="in32">[第二段 藤壺、出家を決意]</A><BR>235 
d1351<P>⏎
cd2:1352-353 「いづこを面にてかは、またも見えたてまつらむ。いとほしと思し知るばかり」と思して、御文も聞こえたまはず。うち絶えて、内裏、春宮にも参りたまはず、<A HREF="#k27">籠もり</A><A NAME="t27">お</A>はして、起き臥し、「いみじかりける人の御心かな」と、人悪ろく恋しう悲しきに、心魂も失せにけるにや、悩ましうさへ思さる。もの心細く、「なぞや<A HREF="#no8">世に経れば憂さこそまされ</A><A NAME="te8">」</A>と、思し立つには、この女君のいと<A HREF="#k28">らうたげにて</A><A NAME="t28">、</A>あはれにうち頼みきこえたまへるを、振り捨てむこと、いとかたし。<BR>⏎
<P>⏎
236 「いづこを面にてかは、またも見えたてまつらむ。いとほしと思し知るばかり」と思して、御文も聞こえたまはず。うち絶えて、内裏、春宮にも参りたまはず、<A HREF="#k27">籠もり</A><A NAME="t27">お</A>はして、起き臥し、「いみじかりける人の御心かな」と、人悪ろく恋しう悲しきに、心魂も失せにけるにや、悩ましうさへ思さる。もの心細く、「なぞや<A HREF="#no8">世に経れば憂さこそまされ</A><A NAME="te8">」</A>と、思し立つには、この女君のいと<A HREF="#k28">らうたげにて</A><A NAME="t28">、</A>あはれにうち頼みきこえたまへるを、振り捨てむこと、いとかたし。<BR>⏎
cd4:2355-358 「かかること絶えずは、いとどしき世に、憂き名さへ漏り出でなむ。大后の、あるまじきことにのたまふなる位をも去りなむ」と、やうやう思しなる。院の思しのたまはせしさまの、なのめならざりしを思し出づるにも、「よろづのこと、ありしにもあらず、変はりゆく世にこそあめれ。戚夫人の見けむ目のやうにはあらずとも、かならず人笑へなることは、ありぬべき身にこそあめれ」など、世の疎ましく、過ぐしがたう思さるれば、背きなむことを思し取るに、春宮、見たてまつらで面変はりせむこと、あはれに思さるれば、忍びやかにて参りたまへり。<BR>⏎
<P>⏎
 大将の君は、さらぬことだに、思し寄らぬことなく仕うまつりたまふを、御心地悩ましきにことつけて、御送りにも参りたまはず。おほかたの御とぶらひは、同じやうなれど、「むげに思し屈しにける」と、心知るどちは、いとほしがりきこゆ。<BR>⏎
<P>⏎
238-239 「かかること絶えずは、いとどしき世に、憂き名さへ漏り出でなむ。大后の、あるまじきことにのたまふなる位をも去りなむ」と、やうやう思しなる。院の思しのたまはせしさまの、なのめならざりしを思し出づるにも、「よろづのこと、ありしにもあらず、変はりゆく世にこそあめれ。戚夫人の見けむ目のやうにはあらずとも、かならず人笑へなることは、ありぬべき身にこそあめれ」など、世の疎ましく、過ぐしがたう思さるれば、背きなむことを思し取るに、春宮、見たてまつらで面変はりせむこと、あはれに思さるれば、忍びやかにて参りたまへり。<BR>⏎
 大将の君は、さらぬことだに、思し寄らぬことなく仕うまつりたまふを、御心地悩ましきにことつけて、御送りにも参りたまはず。おほかたの御とぶらひは、同じやうなれど、「むげに思し屈しにける」と、心知るどちは、いとほしがりきこゆ。<BR>⏎
d1361<P>⏎
c3364-366 「式部がやうにや。いかでかさはなりたまはむ」<BR>⏎
 と笑みてのたまふ。いふかひなくあはれにて、<BR>⏎
 「それは老いてはべれば醜きぞ。さはあらで、髪はそれよりも<A HREF="#k29">短くて</A><A NAME="t29">、</A>黒き衣などを着て、夜居の僧のやうになりはべらむとすれば、見たてまつらむことも、いとど久しかるべきぞ」<BR>⏎
244-246 「式部がやうにや。いかでかさはなりたまはむ」<BR>⏎
 と笑みてのたまふ。いふかひなくあはれにて、<BR>⏎
 「それは老いてはべれば醜きぞ。さはあらで、髪はそれよりも<A HREF="#k29">短くて</A><A NAME="t29">、</A>黒き衣などを着て、夜居の僧のやうになりはべらむとすれば、見たてまつらむことも、いとど久しかるべきぞ」<BR>⏎
d1369<P>⏎
cd2:1370-371 とて涙の落つれば、恥づかしと思して、さすがに背きたまへる、御髪はゆらゆらときよらにて、まみのなつかしげに匂ひたまへるさま、おとなびたまふままに、ただかの御顔を脱ぎすべたまへり。御歯のすこし朽ちて、口の内黒みて、笑みたまへる薫りうつくしきは、女にて見たてまつらまほしうきよらなり。「いとかうしもおぼえたまへるこそ、心憂けれ」と、玉の瑕に思さるるも、世のわづらはしさの、空恐ろしうおぼえたまふなりけり。<BR>⏎
<P>⏎
249 とて涙の落つれば、恥づかしと思して、さすがに背きたまへる、御髪はゆらゆらときよらにて、まみのなつかしげに匂ひたまへるさま、おとなびたまふままに、ただかの御顔を脱ぎすべたまへり。御歯のすこし朽ちて、口の内黒みて、笑みたまへる薫りうつくしきは、女にて見たてまつらまほしうきよらなり。「いとかうしもおぼえたまへるこそ、心憂けれ」と、玉の瑕に思さるるも、世のわづらはしさの、空恐ろしうおぼえたまふなりけり。<BR>⏎
text10372 <H4>第四章 光る源氏の物語 雲林院参籠</H4>250 
text10373 <A NAME="in41">[第一段 秋、雲林院に参籠]</A><BR>251 
d1374<P>⏎
cd5:4376-380 「故母御息所の御兄の律師の籠もりたまへる坊にて、法文など読み、行なひせむ」と思して、二三日おはするに、あはれなること多かり。<BR>⏎
<P>⏎
 紅葉やうやう色づきわたりて、秋の野のいとなまめきたるなど見たまひて、故里も忘れぬべく思さる。法師ばらの、才ある限り召し出でて、論議せさせて聞こしめさせたまふ。所からに、いとど世の中の常なさを思し明かしても、なほ「<A HREF="#no9">憂き人しもぞ</A><A NAME="te9">」</A>と、思し出でらるるおし明け方の月影に、法師ばらの閼伽たてまつるとて、からからと鳴らしつつ、菊の花、濃き薄き紅葉など、折り散らしたるも、はかなげなれど、<BR>⏎
 「このかたのいとなみは、この世もつれづれならず、後の世はた、頼もしげなり。さもあぢきなき身をもて悩むかな」<BR>⏎
 など思し続けたまふ。律師の、いと尊き声にて、<BR>⏎
253-256 「故母御息所の御兄の律師の籠もりたまへる坊にて、法文など読み、行なひせむ」と思して、二三日おはするに、あはれなること多かり。<BR>⏎
 紅葉やうやう色づきわたりて、秋の野のいとなまめきたるなど見たまひて、故里も忘れぬべく思さる。法師ばらの、才ある限り召し出でて、論議せさせて聞こしめさせたまふ。所からに、いとど世の中の常なさを思し明かしても、なほ「<A HREF="#no9">憂き人しもぞ</A><A NAME="te9">」</A>と、思し出でらるるおし明け方の月影に、法師ばらの閼伽たてまつるとて、からからと鳴らしつつ、菊の花、濃き薄き紅葉など、折り散らしたるも、はかなげなれど、<BR>⏎
 「このかたのいとなみは、この世もつれづれならず、後の世はた、頼もしげなり。さもあぢきなき身をもて悩むかな」<BR>⏎
 など思し続けたまふ。律師の、いと尊き声にて、<BR>⏎
cd2:1382-383 とうちのべて行なひたまへるは、いとうらやましければ、「なぞや」と思しなるに、まづ姫君の心にかかりて思ひ出でられたまふぞ、いと悪ろき心なるや。<BR>⏎
<P>⏎
258 とうちのべて行なひたまへるは、いとうらやましければ、「なぞや」と思しなるに、まづ姫君の心にかかりて思ひ出でられたまふぞ、いと悪ろき心なるや。<BR>⏎
d1385<P>⏎
d1387<P>⏎
cd10:4388-397 など陸奥紙にうちとけ書きたまへるさへぞ、めでたき。<BR>⏎
<P>⏎
 「浅茅生の露のやどりに君をおきて<BR>⏎
  四方の嵐ぞ静心なき」<BR>⏎
<P>⏎
 などこまやかなるに、女君もうち泣きたまひぬ。御返し、白き色紙に、<BR>⏎
<P>⏎
 「風吹けばまづぞ乱るる色変はる<BR>⏎
  浅茅が露にかかるささがに」<BR>⏎
<P>⏎
261-264 など陸奥紙にうちとけ書きたまへるさへぞ、めでたき。<BR>⏎
 「浅茅生の露のやどりに君をおきて<BR>  四方の嵐ぞ静心なき」<BR>⏎
 などこまやかなるに、女君もうち泣きたまひぬ。御返し、白き色紙に、<BR>⏎
 「風吹けばまづぞ乱るる色変はる<BR>  浅茅が露にかかるささがに」<BR>⏎
d1400<P>⏎
text10401 <A NAME="in42">[第二段 朝顔斎院と和歌を贈答]</A><BR>267 
d1402<P>⏎
cd5:3404-408 「かく旅の空になむ、もの思ひにあくがれにけるを、思し知るにもあらじかし」<BR>⏎
 など怨みたまひて、御前には、<BR>⏎
<P>⏎
 「かけまくはかしこけれどもそのかみの<BR>⏎
  秋思ほゆる木綿欅かな<BR>⏎
269-271 「かく旅の空になむ、もの思ひにあくがれにけるを、思し知るにもあらじかし」<BR>⏎
 など怨みたまひて、御前には、<BR>⏎
 「かけまくはかしこけれどもそのかみの<BR>  秋思ほゆる木綿欅かな<BR>⏎
d1410<P>⏎
c1411 となれなれしげに、唐の浅緑の紙に、榊に木綿つけなど、神々しうしなして参らせたまふ。<BR>⏎
273 となれなれしげに、唐の浅緑の紙に、榊に木綿つけなど、神々しうしなして参らせたまふ。<BR>⏎
cd4:2414-417 とすこし心とどめて多かり。御前のは、木綿の片端に、<BR>⏎
<P>⏎
 「そのかみやいかがはありし木綿欅<BR>⏎
  心にかけてしのぶらむゆゑ<BR>⏎
276-277 とすこし心とどめて多かり。御前のは、木綿の片端に、<BR>⏎
 「そのかみやいかがはありし木綿欅<BR>  心にかけてしのぶらむゆゑ<BR>⏎
d1419<P>⏎
cd4:2421-424 「御手、こまやかにはあらねど、らうらうじう、草などをかしうなりにけり。まして朝顔もねびまさりたまへらむかし」と思ほゆるも、ただならず、恐ろしや。<BR>⏎
<P>⏎
 「あはれこのころぞかし。野の宮のあはれなりしこと」と思し出でて、「あやしう、やうのもの」と、神恨めしう思さるる御癖の、見苦しきぞかし。わりなう思さば、さもありぬべかりし年ごろは、のどかに過ぐいたまひて、今は悔しう思さるべかめるも、あやしき御心なりや。<BR>⏎
<P>⏎
280-281 「御手、こまやかにはあらねど、らうらうじう、草などをかしうなりにけり。まして朝顔もねびまさりたまへらむかし」と思ほゆるも、ただならず、恐ろしや。<BR>⏎
 「あはれこのころぞかし。野の宮のあはれなりしこと」と思し出でて、「あやしう、やうのもの」と、神恨めしう思さるる御癖の、見苦しきぞかし。わりなう思さば、さもありぬべかりし年ごろは、のどかに過ぐいたまひて、今は悔しう思さるべかめるも、あやしき御心なりや。<BR>⏎
d1426<P>⏎
d1428<P>⏎
text10429 <A NAME="in43">[第三段 源氏、二条院に帰邸]</A><BR>284 
d1430<P>⏎
d1432<P>⏎
d1434<P>⏎
d1436<P>⏎
cd4:3438-441 げにいみじき枝どもなれば、御目とまるに、例の、いささかなるものありけり。人びと見たてまつるに、御顔の色も移ろひて、<BR>⏎
 「なほかかる心の絶えたまはぬこそ、いと疎ましけれ。あたら思ひやり深うものしたまふ人の、ゆくりなく、かうやうなること、折々混ぜたまふを、人もあやしと見るらむかし」<BR>⏎
 と心づきなく思されて、瓶に挿させて、廂の柱のもとにおしやらせたまひつ。<BR>⏎
<P>⏎
289-291 げにいみじき枝どもなれば、御目とまるに、例の、いささかなるものありけり。人びと見たてまつるに、御顔の色も移ろひて、<BR>⏎
 「なほかかる心の絶えたまはぬこそ、いと疎ましけれ。あたら思ひやり深うものしたまふ人の、ゆくりなく、かうやうなること、折々混ぜたまふを、人もあやしと見るらむかし」<BR>⏎
 と心づきなく思されて、瓶に挿させて、廂の柱のもとにおしやらせたまひつ。<BR>⏎
text10442 <A NAME="in44">[第四段 朱雀帝と対面]</A><BR>292 
d1443<P>⏎
d1445<P>⏎
c1446 まづ内裏の御方に参り<A HREF="#k31">たまへれば</A><A NAME="t31">、</A>のどやかにおはしますほどにて、昔今の御物語聞こえたまふ。御容貌も、院にいとよう似たてまつりたまひて、今すこし<A HREF="#k32">なまめかしき</A><A NAME="t32">気</A>添ひて、なつかしうなごやかにぞおはします。かたみにあはれと見たてまつりたまふ。<BR>⏎
294 まづ内裏の御方に参り<A HREF="#k31">たまへれば</A><A NAME="t31">、</A>のどやかにおはしますほどにて、昔今の御物語聞こえたまふ。御容貌も、院にいとよう似たてまつりたまひて、今すこし<A HREF="#k32">なまめかしき</A><A NAME="t32">気</A>添ひて、なつかしうなごやかにぞおはします。かたみにあはれと見たてまつりたまふ。<BR>⏎
c1448 「何かは今はじめたることならばこそあらめ。さも心交はさむに、似げなかるまじき人のあはひなりかし」<BR>⏎
296 「何かは今はじめたることならばこそあらめ。さも心交はさむに、似げなかるまじき人のあはひなりかし」<BR>⏎
d1450<P>⏎
cd2:1451-452 よろづの御物語、文の道のおぼつかなく思さるることどもなど、<A HREF="#k34">問はせ</A><A NAME="t34">た</A>まひて、また好き好きしき歌語りなども、かたみに聞こえ交はさせたまふついでに、かの斎宮の下りたまひし日のこと、容貌のをかしくおはせしなど、語らせたまふに、我もうちとけて、野の宮のあはれなりし曙も、みな聞こえ出でたまひてけり。<BR>⏎
<P>⏎
298 よろづの御物語、文の道のおぼつかなく思さるることどもなど、<A HREF="#k34">問はせ</A><A NAME="t34">た</A>まひて、また好き好きしき歌語りなども、かたみに聞こえ交はさせたまふついでに、かの斎宮の下りたまひし日のこと、容貌のをかしくおはせしなど、語らせたまふに、我もうちとけて、野の宮のあはれなりし曙も、みな聞こえ出でたまひてけり。<BR>⏎
c1456 「中宮の、今宵、まかでたまふなる、とぶらひにものしはべらむ。院ののたまはせおくことはべりしかば。また後見仕うまつる人もはべらざめるに。春宮の御ゆかり、いとほしう思ひたまへられはべりて」<BR>⏎
302 「中宮の、今宵、まかでたまふなる、とぶらひにものしはべらむ。院ののたまはせおくことはべりしかば。また後見仕うまつる人もはべらざめるに。春宮の御ゆかり、いとほしう思ひたまへられはべりて」<BR>⏎
d1458<P>⏎
cd5:3460-464 とのたまはすれば、<BR>⏎
 「おほかた、したまふわざなど、いとさとく大人びたるさまにものしたまへど、まだいと片なりに」<BR>⏎
<P>⏎
 などその御ありさまも奏したまひて、まかでたまふに、大宮の御兄の藤大納言の子の、頭の弁といふが、世にあひ、はなやかなる若人にて、思ふことなきなるべし、妹の麗景殿の御方に行くに、大将の御前駆を忍びやかに追へば、しばし立ちとまりて、<BR>⏎
<P>⏎
305-307 とのたまはすれば、<BR>⏎
 「おほかた、したまふわざなど、いとさとく大人びたるさまにものしたまへど、まだいと片なりに」<BR>⏎
 などその御ありさまも奏したまひて、まかでたまふに、大宮の御兄の藤大納言の子の、頭の弁といふが、世にあひ、はなやかなる若人にて、思ふことなきなるべし、妹の麗景殿の御方に行くに、大将の御前駆を忍びやかに追へば、しばし立ちとまりて、<BR>⏎
d1466<P>⏎
cd2:1467-468 といとゆるるかにうち誦じたるを、大将、いとまばゆしと聞きたまへど、咎むべきことかは。后の御けしきは、いと恐ろしう、わづらはしげにのみ聞こゆるを、かう親しき人びとも、けしきだち言ふべかめることどももあるに、わづらはしう思されけれど、つれなうのみもてなしたまへり。<BR>⏎
<P>⏎
309 といとゆるるかにうち誦じたるを、大将、いとまばゆしと聞きたまへど、咎むべきことかは。后の御けしきは、いと恐ろしう、わづらはしげにのみ聞こゆるを、かう親しき人びとも、けしきだち言ふべかめることどももあるに、わづらはしう思されけれど、つれなうのみもてなしたまへり。<BR>⏎
text10469 <A NAME="in45">[第五段 藤壺に挨拶]</A><BR>310 
d1470<P>⏎
cd11:5472-482 と聞こえたまふ。<BR>⏎
 月のはなやかなるに、「昔かうやうなる折は、御遊びせさせたまひて、今めかしうもてなさせたまひし」など、思し出づるに、同じ御垣の内ながら、変はれること多く悲し。<BR>⏎
<P>⏎
 「九重に霧や隔つる雲の上の<BR>⏎
  月をはるかに思ひやるかな」<BR>⏎
<P>⏎
 と命婦して、聞こえ伝へたまふ。ほどなければ、御けはひも、ほのかなれど、なつかしう聞こゆるに、つらさも忘られて、まづ涙ぞ落つる。<BR>⏎
<P>⏎
 「月影は見し世の秋に変はらぬを<BR>⏎
  隔つる霧のつらくもあるかな<BR>⏎
<P>⏎
312-316 と聞こえたまふ。<BR>⏎
 月のはなやかなるに、「昔かうやうなる折は、御遊びせさせたまひて、今めかしうもてなさせたまひし」など、思し出づるに、同じ御垣の内ながら、変はれること多く悲し。<BR>⏎
 「九重に霧や隔つる雲の上の<BR>  月をはるかに思ひやるかな」<BR>⏎
 と命婦して、聞こえ伝へたまふ。ほどなければ、御けはひも、ほのかなれど、なつかしう聞こゆるに、つらさも忘られて、まづ涙ぞ落つる。<BR>⏎
 「月影は見し世の秋に変はらぬを<BR>  隔つる霧のつらくもあるかな<BR>⏎
d1485<P>⏎
d1487<P>⏎
text10488 <A NAME="in46">[第六段 初冬のころ、源氏朧月夜と和歌贈答]</A><BR>320 
d1489<P>⏎
d1492<P>⏎
cd3:1493-495 「木枯の吹くにつけつつ待ちし間に<BR>⏎
  おぼつかなさのころも経にけり」<BR>⏎
<P>⏎
323 「木枯の吹くにつけつつ待ちし間に<BR>  おぼつかなさのころも経にけり」<BR>⏎
d1498<P>⏎
cd3:1499-501  あひ見ずてしのぶるころの涙をも<BR>⏎
  なべての空の時雨とや見る<BR>⏎
<P>⏎
326  あひ見ずてしのぶるころの涙をも<BR>  なべての空の時雨とや見る<BR>⏎
c1503 などこまやかになりにけり。<BR>⏎
328 などこまやかになりにけり。<BR>⏎
d1505<P>⏎
text10506 <H4>第五章 藤壺の物語 法華八講主催と出家</H4>330 
text10507 <A NAME="in51">[第一段 十一月一日、故桐壺院の御国忌]</A><BR>331 
d1508<P>⏎
d1511<P>⏎
cd3:1512-514 「別れにし今日は来れども見し人に<BR>⏎
  行き逢ふほどをいつと頼まむ」<BR>⏎
<P>⏎
334 「別れにし今日は来れども見し人に<BR>  行き逢ふほどをいつと頼まむ」<BR>⏎
d1516<P>⏎
cd3:1517-519 「ながらふるほどは憂けれど行きめぐり<BR>⏎
  今日はその世に逢ふ心地して」<BR>⏎
<P>⏎
336 「ながらふるほどは憂けれど行きめぐり<BR>  今日はその世に逢ふ心地して」<BR>⏎
d1521<P>⏎
text10522 <A NAME="in52">[第二段 十二月十日過ぎ、藤壺、法華八講主催の後、出家す]</A><BR>338 
d1523<P>⏎
d1525<P>⏎
d1527<P>⏎
cd5:3529-533 親王は、なかばのほどに立ちて、入りたまひぬ。心強う思し立つさまのたまひて、果つるほどに、山の座主召して、忌むこと受けたまふべきよし、のたまはす。御伯父の横川の僧都、近う参りたまひて、御髪<A HREF="#k41">下ろし</A><A NAME="t41">たまふ</A>ほどに、宮の内ゆすりて、ゆゆしう泣きみちたり。何となき老い衰へたる人だに、今はと世を背くほどは、あやしうあはれなるわざを、ましてかねての御けしきにも出だしたまはざりつることなれば、親王もいみじう泣きたまふ。<BR>⏎
 参りたまへる人びとも、おほかたのことのさまも、あはれに尊ければ、みな袖濡らしてぞ帰りたまひける。<BR>⏎
<P>⏎
 故院の御子たちは、昔の御ありさまを思し出づるに、いとどあはれに悲しう思されて、みなとぶらひきこえたまふ。大将は、立ちとまりたまひて、聞こえ出でたまふべきかたもなく、暮れまどひて思さるれど、「<A HREF="#k42">などか</A><A NAME="t42"></A>さしも」と、人見たてまつるべければ、親王など出でたまひぬる後にぞ、御前に参りたまへる。<BR>⏎
<P>⏎
342-344 親王は、なかばのほどに立ちて、入りたまひぬ。心強う思し立つさまのたまひて、果つるほどに、山の座主召して、忌むこと受けたまふべきよし、のたまはす。御伯父の横川の僧都、近う参りたまひて、御髪<A HREF="#k41">下ろし</A><A NAME="t41">たまふ</A>ほどに、宮の内ゆすりて、ゆゆしう泣きみちたり。何となき老い衰へたる人だに、今はと世を背くほどは、あやしうあはれなるわざを、ましてかねての御けしきにも出だしたまはざりつることなれば、親王もいみじう泣きたまふ。<BR>⏎
 参りたまへる人びとも、おほかたのことのさまも、あはれに尊ければ、みな袖濡らしてぞ帰りたまひける。<BR>⏎
 故院の御子たちは、昔の御ありさまを思し出づるに、いとどあはれに悲しう思されて、みなとぶらひきこえたまふ。大将は、立ちとまりたまひて、聞こえ出でたまふべきかたもなく、暮れまどひて思さるれど、「<A HREF="#k42">などか</A><A NAME="t42"></A>さしも」と、人見たてまつるべければ、親王など出でたまひぬる後にぞ、御前に参りたまへる。<BR>⏎
c1538 など例の、命婦して聞こえたまふ。<BR>⏎
349 など例の、命婦して聞こえたまふ。<BR>⏎
d1540<P>⏎
d1544<P>⏎
cd2:1545-546 「月のすむ雲居をかけて慕ふとも<BR>⏎
  <A HREF="#no17">この世の闇になほや惑はむ</A><A NAME="te17"><BR>⏎
354 「月のすむ雲居をかけて慕ふとも<BR>  <A HREF="#no17">この世の闇になほや惑はむ</A><A NAME="te17"><BR>⏎
d1548<P>⏎
d1550<P>⏎
cd6:3551-556 「おほふかたの憂きにつけては厭へども<BR>⏎
  いつかこの世を背き果つべき<BR>⏎
 かつ濁りつつ」<BR>⏎
<P>⏎
 などかたへは御使の心しらひなるべし。あはれのみ尽きせねば、胸苦しうてまかでたまひぬ。<BR>⏎
<P>⏎
357-359 「おほふかたの憂きにつけては厭へども<BR>  いつかこの世を背き果つべき<BR>⏎
 かつ濁りつつ」<BR>⏎
 などかたへは御使の心しらひなるべし。あはれのみ尽きせねば、胸苦しうてまかでたまひぬ。<BR>⏎
text10557 <A NAME="in53">[第三段 後に残された源氏]</A><BR>360 
d1558<P>⏎
d1561<P>⏎
cd3:2562-564 「今は、かかるかたざまの御調度どもをこそは」と思せば、年の内にと、急がせたまふ。命婦の君も御供になりにければ、それも心深うとぶらひたまふ。詳しう言ひ続けむに、ことことしきさまなれば、漏らしてけるなめり。さるはかうやうの折こそ、をかしき歌など出で来るやうもあれ、さうざうしや。<BR>⏎
 参りたまふも、今はつつましさ薄らぎて、御みづから聞こえたまふ折もありけり。思ひしめてしことは、さらに御心に離れねど、ましてあるまじきことなりかし。<BR>⏎
<P>⏎
363-364 「今は、かかるかたざまの御調度どもをこそは」と思せば、年の内にと、急がせたまふ。命婦の君も御供になりにければ、それも心深うとぶらひたまふ。詳しう言ひ続けむに、ことことしきさまなれば、漏らしてけるなめり。さるはかうやうの折こそ、をかしき歌など出で来るやうもあれ、さうざうしや。<BR>⏎
 参りたまふも、今はつつましさ薄らぎて、御みづから聞こえたまふ折もありけり。思ひしめてしことは、さらに御心に離れねど、ましてあるまじきことなりかし。<BR>⏎
text10565 <H4>第六章 光る源氏の物語 寂寥の日々</H4>365 
text10566 <A NAME="in61">[第一段 諒闇明けの新年を迎える]</A><BR>366 
d1567<P>⏎
d1569<P>⏎
d1572<P>⏎
d1574<P>⏎
cd3:1575-577 「ながめかる海人のすみかと見るからに<BR>⏎
  まづしほたるる松が浦島」<BR>⏎
<P>⏎
371 「ながめかる海人のすみかと見るからに<BR>  まづしほたるる松が浦島」<BR>⏎
d1579<P>⏎
cd3:1580-582 「ありし世のなごりだになき浦島に<BR>⏎
  立ち寄る波のめづらしきかな」<BR>⏎
<P>⏎
373 「ありし世のなごりだになき浦島に<BR>  立ち寄る波のめづらしきかな」<BR>⏎
c1584 「さもたぐひなくねびまさりたまふかな」<BR>⏎
375 「さもたぐひなくねびまさりたまふかな」<BR>⏎
cd2:1587-588 など老いしらへる人びと、うち泣きつつ、めできこゆ。宮も思し出づること多かり。<BR>⏎
<P>⏎
378 など老いしらへる人びと、うち泣きつつ、めできこゆ。宮も思し出づること多かり。<BR>⏎
text10589 <A NAME="in62">[第二段 源氏一派の人々の不遇]</A><BR>379 
d1590<P>⏎
d1594<P>⏎
d1597<P>⏎
cd2:1598-599 御子どもは、いづれともなく人がらめやすく世に用ゐられて、心地よげにものしたまひしを、こよなう静まりて、三位中将なども、世を思ひ沈めるさま、こよなし。かの四の君をも、なほかれがれにうち通ひつつ、めざましうもてなされたれば、心解けたる御婿のうちにも入れたまはず。思ひ知れとにや、このたびの司召にも漏れぬれど、いとしも思ひ入れず。<BR>⏎
<P>⏎
385 御子どもは、いづれともなく人がらめやすく世に用ゐられて、心地よげにものしたまひしを、こよなう静まりて、三位中将なども、世を思ひ沈めるさま、こよなし。かの四の君をも、なほかれがれにうち通ひつつ、めざましうもてなされたれば、心解けたる御婿のうちにも入れたまはず。思ひ知れとにや、このたびの司召にも漏れぬれど、いとしも思ひ入れず。<BR>⏎
d1602<P>⏎
cd2:1603-604 春秋の御読経をばさるものにて、臨時にも、さまざま尊き事どもをせさせたまひなどして、またいたづらに暇ありげなる博士ども召し集めて、文作り、韻塞ぎなどやうのすさびわざどもをもしなど、心をやりて、宮仕へをもをさをさしたまはず、御心にまかせてうち遊びておはするを、世の中には、わづらはしきことどもやうやう言ひ出づる人びとあるべし。<BR>⏎
<P>⏎
388 春秋の御読経をばさるものにて、臨時にも、さまざま尊き事どもをせさせたまひなどして、またいたづらに暇ありげなる博士ども召し集めて、文作り、韻塞ぎなどやうのすさびわざどもをもしなど、心をやりて、宮仕へをもをさをさしたまはず、御心にまかせてうち遊びておはするを、世の中には、わづらはしきことどもやうやう言ひ出づる人びとあるべし。<BR>⏎
text10605 <A NAME="in63">[第三段 韻塞ぎに無聊を送る]</A><BR>389 
d1606<P>⏎
d1608<P>⏎
c1610 「いかで<A HREF="#k49">かう</A><A NAME="t49">し</A>もたらひたまひけむ」<BR>⏎
392 「いかで<A HREF="#k49">かう</A><A NAME="t49">し</A>もたらひたまひけむ」<BR>⏎
cd2:1612-613 とめできこゆ。つひに右負けにけり。<BR>⏎
<P>⏎
394 とめできこゆ。つひに右負けにけり。<BR>⏎
cd2:1616-617 中将の御子の、今年初めて殿上する、八つ九つばかりにて、声いと<A HREF="#k50">おもしろく</A><A NAME="t50">、</A>笙の笛吹きなどするを、うつくしびもてあそびたまふ。四の君腹の二郎なりけり。世の人の思へる寄せ重くて、おぼえことにかしづけり。心ばへもかどかどしう、容貌もをかしくて、御遊びのすこし乱れゆくほどに、「<A HREF="#no20">高砂</A><A NAME="te20">」</A>を出だして謡ふ、いとうつくし。大将の君、御衣脱ぎてかづけたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
397 中将の御子の、今年初めて殿上する、八つ九つばかりにて、声いと<A HREF="#k50">おもしろく</A><A NAME="t50">、</A>笙の笛吹きなどするを、うつくしびもてあそびたまふ。四の君腹の二郎なりけり。世の人の思へる寄せ重くて、おぼえことにかしづけり。心ばへもかどかどしう、容貌もをかしくて、御遊びのすこし乱れゆくほどに、「<A HREF="#no20">高砂</A><A NAME="te20">」</A>を出だして謡ふ、いとうつくし。大将の君、御衣脱ぎてかづけたまふ。<BR>⏎
d1619<P>⏎
cd3:1620-622 「それもがと今朝開けたる初花に<BR>⏎
  劣らぬ君が匂ひをぞ見る」<BR>⏎
<P>⏎
399 「それもがと今朝開けたる初花に<BR>  劣らぬ君が匂ひをぞ見る」<BR>⏎
d1624<P>⏎
cd3:1625-627 「時ならで今朝咲く花は夏の雨に<BR>⏎
  しをれにけらし匂ふほどなく<BR>⏎
<P>⏎
401 「時ならで今朝咲く花は夏の雨に<BR>  しをれにけらし匂ふほどなく<BR>⏎
cd3:2629-631 とうちさうどきて、らうがはしく聞こし召しなすを、咎め出でつつ、しひきこえたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
 多かめりし言どもも、かうやうなる折のまほ<A HREF="#k51">ならぬ</A><A NAME="t51">こ</A>と、数々に書きつくる、心地なきわざとか、貫之が諌め、たうるる方にて、むつかしければ、とどめつ。皆この御ことをほめたる筋にのみ、大和のも唐のも作り<A HREF="#k52">続け</A><A NAME="t52">た</A>り。わが御心地にも、いたう思しおごりて、<BR>⏎
403-404 とうちさうどきて、らうがはしく聞こし召しなすを、咎め出でつつ、しひきこえたまふ。<BR>⏎
 多かめりし言どもも、かうやうなる折のまほ<A HREF="#k51">ならぬ</A><A NAME="t51">こ</A>と、数々に書きつくる、心地なきわざとか、貫之が諌め、たうるる方にて、むつかしければ、とどめつ。皆この御ことをほめたる筋にのみ、大和のも唐のも作り<A HREF="#k52">続け</A><A NAME="t52">た</A>り。わが御心地にも、いたう思しおごりて、<BR>⏎
cd2:1633-634 とうち誦じたまへる御名のりさへぞ、げにめでたき。「成王の何」とか、のたまはむとすらむ。そればかりや、また心もとなからむ。<BR>⏎
<P>⏎
406 とうち誦じたまへる御名のりさへぞ、げにめでたき。「成王の何」とか、のたまはむとすらむ。そればかりや、また心もとなからむ。<BR>⏎
d1636<P>⏎
text10637 <H4>第七章 朧月夜の物語 村雨の紛れの密会露見</H4>408 
text10638 <A NAME="in71">[第一段 源氏、朧月夜と密会中、右大臣に発見される]</A><BR>409 
d1639<P>⏎
d1643<P>⏎
d1646<P>⏎
c1647 神鳴り止み、雨すこしを止みぬるほどに、大臣渡りたまひて、まづ宮の御方におはしけるを、村雨のまぎれにてえ知りたまはぬに、軽らかにふとはひ入りたまひて、御簾引き上げたまふままに、<BR>⏎
415 神鳴り止み、雨すこしを止みぬるほどに、大臣渡りたまひて、まづ宮の御方におはしけるを、村雨のまぎれにてえ知りたまはぬに、軽らかにふとはひ入りたまひて、御簾引き上げたまふままに、<BR>⏎
cd2:1649-650 などのたまふけはひの、舌疾にあはつけきを、大将は、もののまぎれにも、左の大臣の御ありさま、ふと思し比べられて、たとしへなうぞ、ほほ笑まれたまふ。げに入り果ててものたまへかしな。<BR>⏎
<P>⏎
417 などのたまふけはひの、舌疾にあはつけきを、大将は、もののまぎれにも、左の大臣の御ありさま、ふと思し比べられて、たとしへなうぞ、ほほ笑まれたまふ。げに入り果ててものたまへかしな。<BR>⏎
cd5:4652-656 「など御けしきの例ならぬ。もののけなどのむつかしきを、修法延べさすべかりけり」<BR>⏎
 とのたまふに、薄二藍なる帯の、御衣にまつはれて引き出でられたるを見つけたまひて、あやしと思すに、また畳紙の手習ひなどしたる、御几帳のもとに落ちたり。「これはいかなる物どもぞ」と、御心おどろかれて、<BR>⏎
 「かれは誰れがぞ。けしき異なるもののさまかな。たまへ。それ取りて誰がぞと見はべらむ」<BR>⏎
 とのたまふにぞ、うち見返りて、我も見つけたまへる。紛らはすべきかたもなければ、いかがは応へきこえたまはむ。我にもあらでおはするを、「子ながらも恥づかしと思すらむかし」と、さばかりの人は、思し憚るべきぞかし。されどいと急に、のどめたるところおはせぬ大臣の、思しもまはさずなりて、畳紙を取りたまふままに、几帳より見入れたまへるに、いといたうなよびて、慎ましからず添ひ臥したる男もあり。今ぞ、やをら顔ひき隠して、とかう紛らはす。あさましう、めざましう心やましけれど、直面には、いかでか現はしたまはむ。目もくるる心地すれば、この畳紙を取りて、寝殿に渡りたまひぬ。<BR>⏎
<P>⏎
419-422 「など御けしきの例ならぬ。もののけなどのむつかしきを、修法延べさすべかりけり」<BR>⏎
 とのたまふに、薄二藍なる帯の、御衣にまつはれて引き出でられたるを見つけたまひて、あやしと思すに、また畳紙の手習ひなどしたる、御几帳のもとに落ちたり。「これはいかなる物どもぞ」と、御心おどろかれて、<BR>⏎
 「かれは誰れがぞ。けしき異なるもののさまかな。たまへ。それ取りて誰がぞと見はべらむ」<BR>⏎
 とのたまふにぞ、うち見返りて、我も見つけたまへる。紛らはすべきかたもなければ、いかがは応へきこえたまはむ。我にもあらでおはするを、「子ながらも恥づかしと思すらむかし」と、さばかりの人は、思し憚るべきぞかし。されどいと急に、のどめたるところおはせぬ大臣の、思しもまはさずなりて、畳紙を取りたまふままに、几帳より見入れたまへるに、いといたうなよびて、慎ましからず添ひ臥したる男もあり。今ぞ、やをら顔ひき隠して、とかう紛らはす。あさましう、めざましう心やましけれど、直面には、いかでか現はしたまはむ。目もくるる心地すれば、この畳紙を取りて、寝殿に渡りたまひぬ。<BR>⏎
d1658<P>⏎
text10659 <A NAME="in72">[第二段 右大臣、源氏追放を画策する]</A><BR>424 
d1660<P>⏎
d1662<P>⏎
c2663-664 「かうかうのことなむはべる。この畳紙は、右大将の御手なり。昔も、心宥されでありそめにけることなれど、人柄によろづの罪を宥して、さても見むと、言ひはべりし折は、心もとどめず、めざましげにもてなされにしかば、やすからず思ひたまへしかど、さるべきにこそはとて、世に穢れたりとも、思し捨つまじきを頼みにて、かく本意のごとくたてまつりながら、なほその憚りありて、うけばりたる女御なども言はせ<A HREF="#k55">たまはぬ</A><A NAME="t55">を</A>だに、飽かず口惜しう思ひたまふるに、またかかることさへはべりければ、さらにいと心憂くなむ思ひなりはべりぬる。男の例とはいひながら、大将もいとけしからぬ御心なりけり。斎院をもなほ聞こえ犯しつつ、忍びに御文通はしなどして、けしきあることなど、人の語りはべりしをも、世のためのみにもあらず、我がためもよかるまじきことなれば、よもさる思ひやりなきわざ、し出でられじとなむ、時の有職と天の下をなびかしたまへるさま、ことなめれば、大将の御心を、疑ひはべらざりつる」<BR>⏎
<P>⏎
426-427 「かうかうのことなむはべる。この畳紙は、右大将の御手なり。昔も、心宥されでありそめにけることなれど、人柄によろづの罪を宥して、さても見むと、言ひはべりし折は、心もとどめず、めざましげにもてなされにしかば、やすからず思ひたまへしかど、さるべきにこそはとて、世に穢れたりとも、思し捨つまじきを頼みにて、かく本意のごとくたてまつりながら、なほその憚りありて、うけばりたる女御なども言はせ<A HREF="#k55">たまはぬ</A><A NAME="t55">を</A>だに、飽かず口惜しう思ひたまふるに、またかかることさへはべりければ、さらにいと心憂くなむ思ひなりはべりぬる。<BR>⏎
 
男の例とはいひながら、大将もいとけしからぬ御心なりけり。斎院をもなほ聞こえ犯しつつ、忍びに御文通はしなどして、けしきあることなど、人の語りはべりしをも、世のためのみにもあらず、我がためもよかるまじきことなれば、よもさる思ひやりなきわざ、し出でられじとなむ、時の有職と天の下をなびかしたまへるさま、ことなめれば、大将の御心を、疑ひはべらざりつる」<BR>⏎
d1666<P>⏎
cd10:7667-676 「帝と聞こゆれど、昔より皆人思ひ落としきこえて、致仕の大臣も、またなくかしづく一つ女を、兄の坊にておはするにはたてまつらで、弟の源氏にて、いときなきが元服の副臥にとり分き、またこの君をも宮仕へにと心ざしてはべりしに、をこがましかりしありさまなりしを、誰れも誰れもあやしとやは思したりし。皆かの御方にこそ御心寄せはべるめりしを、その本意違ふさまにてこそは、かくてもさぶらひたまふめれど、いとほしさに、いかでさる方にても、人に劣らぬさまにもてなしきこえむ、さばかりねたげなりし人の見るところもあり、などこそは思ひはべりつれど、忍びて我が心の入る方に、なびきたまふにこそははべらめ。斎院の御ことは、ましてさもあらむ。何ごとにつけても、朝廷の御方にうしろやすからず見ゆるは、春宮の御世、心寄せ殊なる人なれば、ことわりになむあめる」<BR>⏎
<P>⏎
 とすくすくしうのたまひ続くるに、さすがにいとほしう、「など聞こえつることぞ」と、思さるれば、<BR>⏎
 「さはれしばし、このこと漏らしはべらじ。内裏にも奏せさせたまふな。かくのごと罪はべりとも、思し捨つまじきを頼みにて、あまえてはべるなるべし。うちうちに制しのたまはむに、聞きはべらずは、その罪に、ただみづから当たりはべらむ」<BR>⏎
 など聞こえ直したまへど、ことに御けしきも直らず。<BR>⏎
 「かく一所におはして隙もなきに、つつむところなく、さて入りものせらるらむは、ことさらに軽め弄ぜらるるにこそは」と思しなすに、いとどいみじうめざましく、「このついでに、さるべきことども構へ出でむに、よきたよりなり」と、思しめぐらすべし。<BR>⏎

<P>⏎
 <a name="in81">【出典】<BR>⏎
</a><A NAME="no1">出典1</A> 琴の音に峰の松風かよふらしいづれの緒より調べそめけむ(拾遺集雑上-四五一 斎宮女御)<A HREF="#te1">(戻)</A><BR>⏎
429-435 「帝と聞こゆれど、昔より皆人思ひ落としきこえて、致仕の大臣も、またなくかしづく一つ女を、兄の坊にておはするにはたてまつらで、弟の源氏にて、いときなきが元服の副臥にとり分き、またこの君をも宮仕へにと心ざしてはべりしに、をこがましかりしありさまなりしを、誰れも誰れもあやしとやは思したりし。皆かの御方にこそ御心寄せはべるめりしを、その本意違ふさまにてこそは、かくてもさぶらひたまふめれど、いとほしさに、いかでさる方にても、人に劣らぬさまにもてなしきこえむ、さばかりねたげなりし人の見るところもあり、などこそは思ひはべりつれど、忍びて我が心の入る方に、なびきたまふにこそははべらめ。斎院の御ことは、ましてさもあらむ。何ごとにつけても、朝廷の御方にうしろやすからず見ゆるは、春宮の御世、心寄せ殊なる人なれば、ことわりになむあめる」<BR>⏎
 とすくすくしうのたまひ続くるに、さすがにいとほしう、「など聞こえつることぞ」と、思さるれば、<BR>⏎
 「さはれしばし、このこと漏らしはべらじ。内裏にも奏せさせたまふな。かくのごと罪はべりとも、思し捨つまじきを頼みにて、あまえてはべるなるべし。うちうちに制しのたまはむに、聞きはべらずは、その罪に、ただみづから当たりはべらむ」<BR>⏎
 など聞こえ直したまへど、ことに御けしきも直らず。<BR>⏎
 「かく一所におはして隙もなきに、つつむところなく、さて入りものせらるらむは、ことさらに軽め弄ぜらるるにこそは」と思しなすに、いとどいみじうめざましく、「このついでに、さるべきことども構へ出でむに、よきたよりなり」と、思しめぐらすべし。<BR>⏎
 <A NAME="in81">【出典】</A><BR>⏎
<A NAME="no1">出典1</A> 琴の音に峰の松風かよふらしいづれの緒より調べそめけむ(拾遺集雑上-四五一 斎宮女御)<A HREF="#te1">(戻)</A><BR>⏎
cd2:1689-690<A NAME="no14">出典14</A> 昔者荊軻慕燕丹之義 白虹貫日太子畏之(史記-鄒陽伝⏎
)<A HREF="#te14">(戻)</A><BR>⏎
448<A NAME="no14">出典14</A> 昔者荊軻慕燕丹之義 白虹貫日太子畏之(史記-鄒陽伝)<A HREF="#te14">(戻)</A><BR>⏎
d1698
c1699<p> <a name="in82">【校訂】<BR>⏎
456 <A NAME="in82">【校訂】</A><BR>
c1701</a><A NAME="k01">校訂1</A> 憂しと--うして(て/$と<朱>)<A HREF="#t01">(戻)</A><BR>⏎
458<A NAME="k01">校訂1</A> 憂しと--うして(て/$と<朱>)<A HREF="#t01">(戻)</A><BR>⏎
c1719<A NAME="k19">校訂19</A> なほこの憎き御心のやまぬに--(/+猶このにくき御心のやまぬに<朱>)<A HREF="#t19">(戻)</A><BR>⏎
476<A NAME="k19">校訂19</A> なほこの憎き御心のやまぬに--(/+猶このにくき御心のやまぬに<朱>)<A HREF="#t19">(戻)</A><BR>⏎
d1756</p>⏎
d1763</p>⏎
i0523
diffsrc/original/text11.htmlsrc/modified/text11.html
cd2:18-9<body background="wallppr063.gif">⏎
First updated 9/20/1996(ver.1-1)<BR>⏎
8<BODY>⏎
cd3:210-12Last updated 9/6/2009(ver.2-2)<BR>⏎
渋谷栄一校訂(C)<BR>⏎
<P
>⏎
9-10<ADDRESS>Last updated 9/6/2009(ver.2-2)<BR>⏎
渋谷栄一校訂(C)</ADDRESS>⏎
d114<P>⏎
d116<P>⏎
i015
d130<P>⏎
d137<P>⏎
d140<P>⏎
text1141 <H4>花散里の物語</H4>34 
text1142 <A NAME="in11">[第一段 花散里訪問を決意]</A><BR>35 
d143<P>⏎
d145<P>⏎
d147<P>⏎
d149<P>⏎
text1150 <A NAME="in12">[第二段 中川の女と和歌を贈答]</A><BR>39 
d151<P>⏎
d153<P>⏎
d155<P>⏎
cd3:156-58 「をちかへりえぞ忍ばれぬほととぎす<BR>⏎
  ほの語らひし宿の垣根に」<BR>⏎
<P>⏎
42 「をちかへりえぞ忍ばれぬほととぎす<BR>  ほの語らひし宿の垣根に」<BR>⏎
d160<P>⏎
cd3:161-63 「ほととぎす言問ふ声はそれなれど<BR>⏎
  あなおぼつかな五月雨の空」<BR>⏎
<P>⏎
44 「ほととぎす言問ふ声はそれなれど<BR>  あなおぼつかな五月雨の空」<BR>⏎
cd3:267-69 「さもつつむべきことぞかし。ことわりにもあれば、さすがなり。かやうの際に、筑紫の五節が、らうたげなりしはや」<BR>⏎
 とまづ思し出づ。<BR>⏎
<P>⏎
48-49 「さもつつむべきことぞかし。ことわりにもあれば、さすがなり。かやうの際に、筑紫の五節が、らうたげなりしはや」<BR>⏎
 とまづ思し出づ。<BR>⏎
d171<P>⏎
text1172 <A NAME="in13">[第三段 姉麗景殿女御と昔を語る]</A><BR>51 
d173<P>⏎
c174 かの本意の所は、思しやりつるもしるく、人目なく、静かにておはするありさまを見たまふも、いとあはれなり。まづ女御の御方にて、昔の御物語など聞こえたまふに、夜更けにけり。<BR>⏎
52 かの本意の所は、思しやりつるもしるく、人目なく、静かにておはするありさまを見たまふも、いとあはれなり。まづ女御の御方にて、昔の御物語など聞こえたまふに、夜更けにけり。<BR>⏎
d176<P>⏎
cd2:178-79 など思ひ出できこえたまふにつけても、昔のことかきつらね思されて、うち泣きたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
55 など思ひ出できこえたまふにつけても、昔のことかきつらね思されて、うち泣きたまふ。<BR>⏎
d281-82
<P>⏎
cd7:283-89 「<A HREF="#no4">橘の香をなつかしみほととぎす<BR>⏎
  花散る里をたづねてぞとふ</A><A NAME="te4"><BR>⏎
</A>⏎
<p><A NAME="te4">
 い</A></p>⏎
<P>
にしへの忘れがたき慰めには、なほ参りはべりぬべかりけり。こよなうこそ、紛るることも、数添ふこともはべりけれ。おほかたの世に従ふものなれば、昔語もかきくづすべき人少なうなりゆくを、ましてつれづれも紛れなく思さるらむ」<BR>⏎

<P>⏎
57-58 「<A HREF="#no4">橘の香をなつかしみほととぎす<BR>  花散る里をたづねてぞとふ</A><A NAME="te4"></A><BR>⏎
 いにしへの忘れがたき慰めには、なほ参りはべりぬべかりけり。こよなうこそ、紛るることも、数添ふこともはべりけれ。おほかたの世に従ふものなれば、昔語もかきくづすべき人少なうなりゆくを、ましてつれづれも紛れなく思さるらむ」<BR>⏎
d291-92
<P>⏎
cd4:193-96 「人目なく荒れたる宿は橘の<BR>⏎
  花こそ軒のつまとなりけれ」<BR>⏎

<P>⏎
60 「人目なく荒れたる宿は橘の<BR>  花こそ軒のつまとなりけれ」<BR>⏎
d298-99
<P>⏎
text11100 <A NAME="in14">[第四段 花散里を訪問]</A><BR>62 
d2101-102
<P>⏎
d2104-105
<P>⏎
d2107-108
<P>⏎
text11109 <a name="in21">【出典】<BR>65 
c1110</a><A NAME="no1">出典1</A> 夜や暗き道や惑へるほととぎす我が宿をしも過ぎがてに鳴く(古今集夏-一五四 紀友則)<A HREF="#te1">(戻)</A><BR>⏎
66<A NAME="no1">出典1</A> 夜や暗き道や惑へるほととぎす我が宿をしも過ぎがてに鳴く(古今集夏-一五四 紀友則)<A HREF="#te1">(戻)</A><BR>⏎
d1114
text11115<p> <a name="in22">【校訂】<BR>70 
cd2:1117-118</a><A NAME="k01">校訂1</A> なめれど--な(な/+め)れと<A HREF="#t01">(戻)</A><BR>⏎
</p>⏎
72<A NAME="k01">校訂1</A> なめれど--な(な/+め)れと<A HREF="#t01">(戻)</A><BR>⏎
d1126</p>⏎
i183
diffsrc/original/text12.htmlsrc/modified/text12.html
cd2:18-9<body background="wallppr063.gif">⏎
First updated 9/20/1996(ver.1-1)<BR>⏎
8<BODY>⏎
cd3:210-12Last updated 9/21/2010(ver.2-3)<BR>⏎
渋谷栄一校訂(C)<BR>⏎
<P
>⏎
9-10<ADDRESS>Last updated 9/21/2010(ver.2-3)<BR>⏎
渋谷栄一校訂(C)</ADDRESS>⏎
d114<P>⏎
i014
d138<P>⏎
d172<P>⏎
d175<P>⏎
text1276 <H4>第一章 光る源氏の物語 逝く春と離別の物語</H4>70 
text1277 <A NAME="in11">[第一段 源氏、須磨退去を決意]</A><BR>71 
d178<P>⏎
d181<P>⏎
c282-83 よろづのこと、来し方行く末、思ひ続けたまふに、悲しきこといとさまざまなり。憂きものと思ひ捨てつる世も、今はと住み離れなむことを思すには、いと捨てがたきこと多かるなかにも、姫君の、明け暮れにそへては、思ひ嘆きたまへるさまの、心苦しうあはれなるを、「行きめぐりても、また逢ひ見むことをかならず」と、思さむにてだに、なほ一二日のほど、よそよそに明かし暮らす折々だに、おぼつかなきものにおぼえ、女君も心細うのみ思ひたまへるを、「幾年そのほどと限りある道にもあらず、<A HREF="#no1">逢ふを限りに</A><A NAME="te1">隔</A>たりゆかむも、定めなき世に、やがて<A HREF="#no2">別るべき門出</A><A NAME="te2">に</A>もや」と、いみじうおぼえたまへば、「忍びてもろともにもや」と、思し寄る折あれど、さる心細からむ海づらの、波風よりほかに立ちまじる人もなからむに、かくらうたき御さまにて、引き具し<A HREF="#k01">たまへらむ</A><A NAME="t01">も</A>、いとつきなく、わが心にも、「なかなか、もの思ひのつまなるべきを」など思し返すを、女君は、「いみじからむ道にも、後れきこえずだにあらば」と、おもむけて、恨めしげに思いたり。<BR>⏎
<P>⏎
74-75 よろづのこと、来し方行く末、思ひ続けたまふに、悲しきこといとさまざまなり。憂きものと思ひ捨てつる世も、今はと住み離れなむことを思すには、いと捨てがたきこと多かるなかにも、姫君の、明け暮れにそへては、思ひ嘆きたまへるさまの、心苦しうあはれなるを、<BR>⏎
「行きめぐりても、また逢ひ見むことをかならず」と、思さむにてだに、なほ一二日のほど、よそよそに明かし暮らす折々だに、おぼつかなきものにおぼえ、女君も心細うのみ思ひたまへるを、「幾年そのほどと限りある道にもあらず、<A HREF="#no1">逢ふを限りに</A><A NAME="te1">隔</A>たりゆかむも、定めなき世に、やがて<A HREF="#no2">別るべき門出</A><A NAME="te2">に</A>もや」と、いみじうおぼえたまへば、「忍びてもろともにもや」と、思し寄る折あれど、さる心細からむ海づらの、波風よりほかに立ちまじる人もなからむに、かくらうたき御さまにて、引き具し<A HREF="#k01">たまへらむ</A><A NAME="t01">も</A>、いとつきなく、わが心にも、「なかなか、もの思ひのつまなるべきを」など思し返すを、女君は、「いみじからむ道にも、後れきこえずだにあらば」と、おもむけて、恨めしげに思いたり。<BR>⏎
d185<P>⏎
cd2:186-87 入道の宮よりも、「ものの聞こえや、またいかがとりなさむ」と、わが御ためつつましけれど、忍びつつ御とぶらひ常にあり。「昔かやうに相思し、あはれをも見せたまはましかば」と、うち思ひ出でたまふにも、「さもさまざまに、心をのみ尽くすべかりける人の御契りかな」と、つらく思ひきこえたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
77 入道の宮よりも、「ものの聞こえや、またいかがとりなさむ」と、わが御ためつつましけれど、忍びつつ御とぶらひ常にあり。「昔かやうに相思し、あはれをも見せたまはましかば」と、うち思ひ出でたまふにも、「さもさまざまに、心をのみ尽くすべかりける人の御契りかな」と、つらく思ひきこえたまふ。<BR>⏎
text1288 <A NAME="in12">[第二段 左大臣邸に離京の挨拶]</A><BR>78 
d189<P>⏎
cd3:290-92 三月二十日あまりのほどになむ、都を離れたまひける。人にいつとしも知らせたまはず、ただいと近う仕うまつり馴れたる限り、七八人ばかり御供にて、いとかすかに出で立ちたまふ。さるべき所々に、御文ばかりうち忍びたまひしにも、あはれと忍ばるばかり尽くいたまへるは、見どころもありぬべかりしかど、その折の、心地の紛れに、はかばかしうも聞き置かずなりにけり。<BR>⏎
<P>⏎
 二三日かねて、夜に隠れて、大殿に渡りたまへり。網代車のうちやつれたるにて、女車のやうにて隠ろへ<A HREF="#k02">入り</A><A NAME="t02">た</A>まふも、いとあはれに、夢とのみ見ゆ。御方、いと寂しげにうち荒れたる心地して、若君の御乳母ども、昔さぶらひし人のなかに、まかで散らぬ限り、かく渡りたまへるを<A HREF="#k03">めづらしがりきこえて</A><A NAME="t03">、</A>参う上り集ひて見たてまつるにつけても、ことにもの深からぬ若き人びとさへ、世の常なさ思ひ知られて、涙にくれたり。<BR>⏎
79-80 三月二十日あまりのほどになむ、都を離れたまひける。人にいつとしも知らせたまはず、ただいと近う仕うまつり馴れたる限り、七八人ばかり御供にて、いとかすかに出で立ちたまふ。さるべき所々に、御文ばかりうち忍びたまひしにも、あはれと忍ばるばかり尽くいたまへるは、見どころもありぬべかりしかど、その折の、心地の紛れに、はかばかしうも聞き置かずなりにけり。<BR>⏎
 二三日かねて、夜に隠れて、大殿に渡りたまへり。網代車のうちやつれたるにて、女車のやうにて隠ろへ<A HREF="#k02">入り</A><A NAME="t02">た</A>まふも、いとあはれに、夢とのみ見ゆ。御方、いと寂しげにうち荒れたる心地して、若君の御乳母ども、昔さぶらひし人のなかに、まかで散らぬ限り、かく渡りたまへるを<A HREF="#k03">めづらしがりきこえて</A><A NAME="t03">、</A>参う上り集ひて見たてまつるにつけても、ことにもの深からぬ若き人びとさへ、世の常なさ思ひ知られて、涙にくれたり。<BR>⏎
cd2:195-96 とて膝に据ゑたまへる御けしき、忍びがたげなり。<BR>⏎
<P>⏎
83 とて膝に据ゑたまへる御けしき、忍びがたげなり。<BR>⏎
d1100<P>⏎
cd3:2101-103 「とあることも、かかることも、前の世の報いにこそはべるなれば、言ひもてゆけば、ただみづからのおこたりになむはべる。さしてかく官爵を取られず、あさはかなることにかかづらひてだに、朝廷のかしこまりなる人の、うつしざまにて世の中にあり経るは、咎重きわざに人の国にもしはべるなるを、遠く放ちつかはすべき定めなどもはべるなるは、さま異なる罪に当たるべきにこそはべるなれ。濁りなき心にまかせて、つれなく過ぐしはべらむも、いと憚り多く、これより大きなる恥にのぞまぬさきに、世を逃れなむと思うたまへ立ちぬる」<BR>⏎
 などこまやかに聞こえたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
87-88 「とあることも、かかることも、前の世の報いにこそはべるなれば、言ひもてゆけば、ただみづからのおこたりになむはべる。さしてかく官爵を取られず、あさはかなることにかかづらひてだに、朝廷のかしこまりなる人の、うつしざまにて世の中にあり経るは、咎重きわざに人の国にもしはべるなるを、遠く放ちつかはすべき定めなどもはべるなるは、さま異なる罪に当たるべきにこそはべるなれ。濁りなき心にまかせて、つれなく過ぐしはべらむも、いと憚り多く、これより大きなる恥にのぞまぬさきに、世を逃れなむと思うたまへ立ちぬる」<BR>⏎
 などこまやかに聞こえたまふ。<BR>⏎
d1105<P>⏎
cd3:2106-108 「過ぎはべりにし人を、世に思うたまへ忘るる世なくのみ、今に悲しびはべるを、この御ことになむ、もしはべる世ならましかば、いかやうに思ひ嘆きはべらまし。よくぞ短くて、かかる夢を見ずなりにけると、思うたまへ慰めはべり。幼くものしたまふが、かく齢過ぎぬるなかにとまりたまひて、なづさひきこえぬ月日や隔たりたまはむと思ひたまふるをなむ、よろづのことよりも、悲しうはべる。いにしへの人も、まことに犯しあるにてしも、かかることに当たらざりけり。なほさるべきにて、人の朝廷にもかかるたぐひ多うはべりけり。されど言ひ出づる節ありてこそ、さることもはべりけれ、とざまかうざまに、思ひたまへ寄らむかたなくなむ」<BR>⏎
 <A HREF="#k07">など</A><A NAME="t07"></A>多くの御物語聞こえたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
90-91 「過ぎはべりにし人を、世に思うたまへ忘るる世なくのみ、今に悲しびはべるを、この御ことになむ、もしはべる世ならましかば、いかやうに思ひ嘆きはべらまし。よくぞ短くて、かかる夢を見ずなりにけると、思うたまへ慰めはべり。幼くものしたまふが、かく齢過ぎぬるなかにとまりたまひて、なづさひきこえぬ月日や隔たりたまはむと思ひたまふるをなむ、よろづのことよりも、悲しうはべる。いにしへの人も、まことに犯しあるにてしも、かかることに当たらざりけり。なほさるべきにて、人の朝廷にもかかるたぐひ多うはべりけり。されど言ひ出づる節ありてこそ、さることもはべりけれ、とざまかうざまに、思ひたまへ寄らむかたなくなむ」<BR>⏎
 <A HREF="#k07">など</A><A NAME="t07"></A>多くの御物語聞こえたまふ。<BR>⏎
d1110<P>⏎
d1112<P>⏎
d1116<P>⏎
d1120<P>⏎
cd3:1121-123 「鳥辺山燃えし煙もまがふやと<BR>⏎
  海人の塩焼く浦見にぞ行く」<BR>⏎
<P>⏎
100 「鳥辺山燃えし煙もまがふやと<BR>  海人の塩焼く浦見にぞ行く」<BR>⏎
cd2:1128-129 と鼻声にて、げに浅からず思へり。<BR>⏎
<P>⏎
105 と鼻声にて、げに浅からず思へり。<BR>⏎
d1132<P>⏎
c1134 入り方の月いと明きに、いとどなまめかしうきよらにて、ものを思いたるさま、虎狼だに泣きぬべし。ましていはけなくおはせしほどより見たてまつりそめてし人びとなれば、<A HREF="#k08">たとしへ</A><A NAME="t08">な</A>き御ありさまをいみじと思ふ。<BR>⏎
109 入り方の月いと明きに、いとどなまめかしうきよらにて、ものを思いたるさま、虎狼だに泣きぬべし。ましていはけなくおはせしほどより見たてまつりそめてし人びとなれば、<A HREF="#k08">たとしへ</A><A NAME="t08">な</A>き御ありさまをいみじと思ふ。<BR>⏎
d1136<P>⏎
cd3:1137-139 「<A HREF="#no5">亡き人の別れやいとど</A><A NAME="te5">隔</A>たらむ<BR>⏎
  煙となりし雲居ならでは」<BR>⏎
<P>⏎
111 「<A HREF="#no5">亡き人の別れやいとど</A><A NAME="te5">隔</A>たらむ<BR>  煙となりし雲居ならでは」<BR>⏎
d1141<P>⏎
text12142 <A NAME="in13">[第三段 二条院の人々との離別]</A><BR>113 
d1143<P>⏎
cd2:1145-146 台盤なども、かたへは塵ばみて、畳所々引き返したり。「見るほどだにかかり。ましていかに荒れゆかむ」と思す。<BR>⏎
<P>⏎
115 台盤なども、かたへは塵ばみて、畳所々引き返したり。「見るほどだにかかり。ましていかに荒れゆかむ」と思す。<BR>⏎
d1148<P>⏎
cd4:3152-155 とばかりのたまひて、いみじと思し入れたるさま、人よりことなるを、ことわりぞかし、父親王、いとおろかにもとより思しつきにけるに、まして世の聞こえをわづらはしがりて、訪れきこえたまはず、御とぶらひにだに渡りたまはぬを、人の見るらむことも恥づかしく、なかなか知られたてまつらでやみなましを、継母の北の方などの、<BR>⏎
 「にはかなりし幸ひのあわたたしさ。あなゆゆしや。思ふ人、方々につけて別れたまふ人かな」<BR>⏎
 とのたまひけるを、さる便りありて漏り聞きたまふにも、いみじう心憂ければ、これよりも絶えて訪れきこえたまはず。また頼もしき人もなく、げにぞあはれなる御ありさまなる。<BR>⏎
<P>⏎
120-122 とばかりのたまひて、いみじと思し入れたるさま、人よりことなるを、ことわりぞかし、父親王、いとおろかにもとより思しつきにけるに、まして世の聞こえをわづらはしがりて、訪れきこえたまはず、御とぶらひにだに渡りたまはぬを、人の見るらむことも恥づかしく、なかなか知られたてまつらでやみなましを、継母の北の方などの、<BR>⏎
 「にはかなりし幸ひのあわたたしさ。あなゆゆしや。思ふ人、方々につけて別れたまふ人かな」<BR>⏎
 とのたまひけるを、さる便りありて漏り聞きたまふにも、いみじう心憂ければ、これよりも絶えて訪れきこえたまはず。また頼もしき人もなく、げにぞあはれなる御ありさまなる。<BR>⏎
d1158<P>⏎
c1159 日たくるまで大殿籠もれり。帥宮三位中将などおはしたり。対面したまはむとて、御直衣などたてまつる。<BR>⏎
125 日たくるまで大殿籠もれり。帥宮三位中将などおはしたり。対面したまはむとて、御直衣などたてまつる。<BR>⏎
c1161 とて<A HREF="#k11">無紋の</A><A NAME="t11">直</A>衣、なかなか、いとなつかしきを着たまひて、うちやつれたまへる、いとめでたし。御鬢かきたまふとて、鏡台に寄りたまへるに、面痩せたまへる影の、我ながらいとあてにきよらなれば、<BR>⏎
127 とて<A HREF="#k11">無紋の</A><A NAME="t11">直</A>衣、なかなか、いとなつかしきを着たまひて、うちやつれたまへる、いとめでたし。御鬢かきたまふとて、鏡台に寄りたまへるに、面痩せたまへる影の、我ながらいとあてにきよらなれば、<BR>⏎
d1164<P>⏎
cd9:4165-173 「身はかくてさすらへぬとも君があたり<BR>⏎
  去らぬ鏡の影は離れじ」<BR>⏎
<P>⏎
 と聞こえたまへば、<BR>⏎
<P>⏎
 「別れても影だにとまるものならば<BR>⏎
  鏡を見ても慰めてまし」<BR>⏎
<P>⏎
 柱隠れにゐ隠れて、涙を紛らはしたまへるさま、「なほここら見るなかにたぐひなかりけり」と、思し知らるる人の<A HREF="#k12">御ありさま</A><A NAME="t12">な</A>り。<BR>⏎
130-133 「身はかくてさすらへぬとも君があたり<BR>  去らぬ鏡の影は離れじ」<BR>⏎
 と聞こえたまへば、<BR>⏎
 「別れても影だにとまるものならば<BR>  鏡を見ても慰めてまし」<BR>⏎
 柱隠れにゐ隠れて、涙を紛らはしたまへるさま、「なほここら見るなかにたぐひなかりけり」と、思し知らるる人の<A HREF="#k12">御ありさま</A><A NAME="t12">な</A>り。<BR>⏎
d1175<P>⏎
text12176 <A NAME="in14">[第四段 花散里邸に離京の挨拶]</A><BR>135 
d1177<P>⏎
c1180 とよろこびきこえたまふさま、書き続けむもうるさし。<BR>⏎
138 とよろこびきこえたまふさま、書き続けむもうるさし。<BR>⏎
d1183<P>⏎
d1185<P>⏎
d1187<P>⏎
cd5:2188-192 と過ぎにし方のことどものたまひて、鶏もしばしば鳴けば、世につつみて急ぎ出でたまふ。例の、月の入り果つるほどよそへられて、あはれなり。女君の濃き御衣に映りて、げに<A HREF="#no7">漏るる顔</A><A NAME="te7">な</A>れば、<BR>⏎
<P>⏎
 「月影の宿れる袖はせばくとも<BR>⏎
  とめても見ばやあかぬ光を」<BR>⏎
<P>⏎
143-144 と過ぎにし方のことどものたまひて、鶏もしばしば鳴けば、世につつみて急ぎ出でたまふ。例の、月の入り果つるほどよそへられて、あはれなり。女君の濃き御衣に映りて、げに<A HREF="#no7">漏るる顔</A><A NAME="te7">な</A>れば、<BR>⏎
 「月影の宿れる袖はせばくとも<BR>  とめても見ばやあかぬ光を」<BR>⏎
d1194<P>⏎
cd4:2195-198 「行きめぐりつひにすむべき月影の<BR>⏎
  しばし雲らむ空な眺めそ<BR>⏎
<P>⏎
 思へば、はかなしや。ただ<A HREF="#no8">知らぬ涙</A><A NAME="te8">の</A>みこそ、心を昏らすものなれ」<BR>⏎
146-147 「行きめぐりつひにすむべき月影の<BR>  しばし雲らむ空な眺めそ<BR>⏎
 思へば、はかなしや。ただ<A HREF="#no8">知らぬ涙</A><A NAME="te8">の</A>みこそ、心を昏らすものなれ」<BR>⏎
d1200<P>⏎
text12201 <A NAME="in15">[第五段 旅生活の準備と身辺整理]</A><BR>149 
d1202<P>⏎
d1204<P>⏎
d1206<P>⏎
d1208<P>⏎
cd2:1211-212 とのたまひて、上下皆参う上らせたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
155 とのたまひて、上下皆参う上らせたまふ。<BR>⏎
d1214<P>⏎
d1217<P>⏎
cd3:1218-220  逢ふ瀬なき涙の河に沈みしや<BR>⏎
  流るる澪の初めなりけむ<BR>⏎
<P>⏎
159  逢ふ瀬なき涙の河に沈みしや<BR>  流るる澪の初めなりけむ<BR>⏎
d1224<P>⏎
cd3:1225-227 「涙河浮かぶ水泡も消えぬべし<BR>⏎
  流れて後の瀬をも待たずて」<BR>⏎
<P>⏎
163 「涙河浮かぶ水泡も消えぬべし<BR>  流れて後の瀬をも待たずて」<BR>⏎
d1229<P>⏎
text12230 <A NAME="in16">[第六段 藤壺に離京の挨拶]</A><BR>165 
d1231<P>⏎
cd3:2232-234 明日とて、暮には、院の御墓拝みたてまつりたまふとて、北山へ詣でたまふ。暁かけて月出づるころなれば、まづ入道の宮に参うでたまふ。近き御簾の前に御座参りて、御みづから聞こえさせたまふ。春宮の御事をいみじううしろめたきものに思ひきこえたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
 かたみに心深きどちの御物語は、よろづあはれまさりけむかし。なつかしうめでたき御けはひの昔に変はらぬに、つらかりし<A HREF="#k15">御心ばへ</A><A NAME="t15">も</A>、かすめきこえさせまほしけれど、今さらにうたてと思さるべし、わが御心にも、なかなか今ひときは乱れまさりぬべければ、念じ返して、ただ<BR>⏎
166-167 明日とて、暮には、院の御墓拝みたてまつりたまふとて、北山へ詣でたまふ。暁かけて月出づるころなれば、まづ入道の宮に参うでたまふ。近き御簾の前に御座参りて、御みづから聞こえさせたまふ。春宮の御事をいみじううしろめたきものに思ひきこえたまふ。<BR>⏎
 かたみに心深きどちの御物語は、よろづあはれまさりけむかし。なつかしうめでたき御けはひの昔に変はらぬに、つらかりし<A HREF="#k15">御心ばへ</A><A NAME="t15">も</A>、かすめきこえさせまほしけれど、今さらにうたてと思さるべし、わが御心にも、なかなか今ひときは乱れまさりぬべければ、念じ返して、ただ<BR>⏎
d1240<P>⏎
cd3:1241-243 「見しはなくあるは悲しき世の果てを<BR>⏎
  背きしかひもなくなくぞ経る」<BR>⏎
<P>⏎
173 「見しはなくあるは悲しき世の果てを<BR>  背きしかひもなくなくぞ経る」<BR>⏎
d1245<P>⏎
cd3:1246-248 「別れしに悲しきことは尽きにしを<BR>⏎
  またぞこの世の憂さはまされる」<BR>⏎
<P>⏎
175 「別れしに悲しきことは尽きにしを<BR>  またぞこの世の憂さはまされる」<BR>⏎
text12249 <A NAME="in17">[第七段 桐壺院の御墓に離京の挨拶]</A><BR>176 
d1250<P>⏎
c1251 月待ち出でて出でたまふ。御供にただ五六人ばかり、下人もむつましき限りして、御馬にてぞおはする。さらなることなれど、ありし世の御ありきに異なり、皆いと悲しう思ふなり。なかにかの御禊の日、仮の御随身にて仕うまつりし右近の将監の蔵人、得べきかうぶりもほど過ぎつるを、つひに御簡削られ、官も取られて、はしたなければ、御供に参るうちなり。<BR>⏎
177 月待ち出でて出でたまふ。御供にただ五六人ばかり、下人もむつましき限りして、御馬にてぞおはする。さらなることなれど、ありし世の御ありきに異なり、皆いと悲しう思ふなり。なかにかの御禊の日、仮の御随身にて仕うまつりし右近の将監の蔵人、得べきかうぶりもほど過ぎつるを、つひに御簡削られ、官も取られて、はしたなければ、御供に参るうちなり。<BR>⏎
d1253<P>⏎
cd4:2254-257 「ひき連れて葵かざししそのかみを<BR>⏎
  思へばつらし賀茂の瑞垣」<BR>⏎
<P>⏎
 と言ふを、「げにいかに思ふらむ。人よりけにはなやかなりしものを」と思すも、心苦し。<BR>⏎
179-180 「ひき連れて葵かざししそのかみを<BR>  思へばつらし賀茂の瑞垣」<BR>⏎
 と言ふを、「げにいかに思ふらむ。人よりけにはなやかなりしものを」と思すも、心苦し。<BR>⏎
d1259<P>⏎
cd3:1260-262 「憂き世をば今ぞ別るるとどまらむ<BR>⏎
  名をば糺の神にまかせて」<BR>⏎
<P>⏎
182 「憂き世をば今ぞ別るるとどまらむ<BR>  名をば糺の神にまかせて」<BR>⏎
d1264<P>⏎
d1266<P>⏎
d1268<P>⏎
cd3:1269-271 「亡き影やいかが見るらむよそへつつ<BR>⏎
  眺むる月も雲隠れぬる」<BR>⏎
<P>⏎
186 「亡き影やいかが見るらむよそへつつ<BR>  眺むる月も雲隠れぬる」<BR>⏎
text12272 <A NAME="in18">[第八段 東宮に離京の挨拶]</A><BR>187 
d1273<P>⏎
d1275<P>⏎
d1277<P>⏎
cd3:1278-280 いつかまた春の都の花を見む<BR>⏎
 時失へる山賤にして」<BR>⏎
<P>⏎
190  いつかまた春の都の花を見む<BR>  時失へる山賤にして」<BR>⏎
cd4:2287-290 とそこはかとなく、心の乱れけるなるべし。<BR>⏎
<P>⏎
 「<A HREF="#no9">咲きてとく散る</A><A NAME="te9">は</A>憂けれどゆく春は<BR>⏎
  花の都を立ち帰り見よ<BR>⏎
197-198 とそこはかとなく、心の乱れけるなるべし。<BR>⏎
 「<A HREF="#no9">咲きてとく散る</A><A NAME="te9">は</A>憂けれどゆく春は<BR>  花の都を立ち帰り見よ<BR>⏎
d1292<P>⏎
cd2:1294-295 一目も見たてまつれる人は、かく思しくづほれぬる御ありさまを、嘆き惜しみきこえぬ人なし。まして常に参り馴れたりしは、知り及びたまふまじき長女、御厠人まで、ありがたき御顧みの下なりつるを、「しばしにても、見たてまつらぬほどや経む」と、思ひ嘆きけり。<BR>⏎
<P>⏎
201 一目も見たてまつれる人は、かく思しくづほれぬる御ありさまを、嘆き惜しみきこえぬ人なし。まして常に参り馴れたりしは、知り及びたまふまじき長女、御厠人まで、ありがたき御顧みの下なりつるを、「しばしにても、見たてまつらぬほどや経む」と、思ひ嘆きけり。<BR>⏎
d1297<P>⏎
text12298 <A NAME="in19">[第九段 離京の当日]</A><BR>203 
d1299<P>⏎
d1301<P>⏎
d1303<P>⏎
cd4:2304-307 とて御簾巻き上げて、端にいざなひきこえたまへば、女君、泣き沈み<A HREF="#k21">たまへるを</A><A NAME="t21">、</A>ためらひて、ゐざり出でたまへる、月影に、いみじうをかしげにてゐたまへり。「わが身かくてはかなき世を別れなば、いかなるさまにさすらへたまはむ」と、うしろめたく悲しけれど、思し入りたるに、いとどしかるべければ、<BR>⏎
<P>⏎
 「生ける世の別れを知らで契りつつ<BR>⏎
  命を人に限りけるかな<BR>⏎
206-207 とて御簾巻き上げて、端にいざなひきこえたまへば、女君、泣き沈み<A HREF="#k21">たまへるを</A><A NAME="t21">、</A>ためらひて、ゐざり出でたまへる、月影に、いみじうをかしげにてゐたまへり。「わが身かくてはかなき世を別れなば、いかなるさまにさすらへたまはむ」と、うしろめたく悲しけれど、思し入りたるに、いとどしかるべければ、<BR>⏎
 「生ける世の別れを知らで契りつつ<BR>  命を人に限りけるかな<BR>⏎
d1309<P>⏎
cd7:3310-316 などあさはかに聞こえなしたまへば、<BR>⏎
<P>⏎
 「惜しからぬ命に代へて目の前の<BR>⏎
  別れをしばしとどめてしがな」<BR>⏎
<P>⏎
 「げにさぞ思さるらむ」と、いと見捨てがたけれど、明け果てなば、はしたなかるべきにより、急ぎ出でたまひぬ。<BR>⏎
<P>⏎
209-211 などあさはかに聞こえなしたまへば、<BR>⏎
 「惜しからぬ命に代へて目の前の<BR>  別れをしばしとどめてしがな」<BR>⏎
 「げにさぞ思さるらむ」と、いと見捨てがたけれど、明け果てなば、はしたなかるべきにより、急ぎ出でたまひぬ。<BR>⏎
d1318<P>⏎
cd3:1319-321 「唐国に名を残しける人よりも<BR>⏎
  行方知られぬ家居をやせむ」<BR>⏎
<P>⏎
213 「唐国に名を残しける人よりも<BR>  行方知られぬ家居をやせむ」<BR>⏎
d1323<P>⏎
cd3:1324-326 「故郷を峰の霞は隔つれど<BR>⏎
  眺むる空は同じ雲居か」<BR>⏎
<P>⏎
215 「故郷を峰の霞は隔つれど<BR>  眺むる空は同じ雲居か」<BR>⏎
d1328<P>⏎
text12329 <H4>第二章 光る源氏の物語 夏の長雨と鬱屈の物語</H4>217 
text12330 <A NAME="in21">[第一段 須磨の住居]</A><BR>218 
d1331<P>⏎
d1334<P>⏎
d1336<P>⏎
text12337 <A NAME="in22">[第二段 京の人々へ手紙]</A><BR>222 
d1338<P>⏎
d1340<P>⏎
d1342<P>⏎
cd2:1343-344 「松島の海人の苫屋もいかならむ<BR>⏎
  須磨の浦人しほたるるころ<BR>⏎
225 「松島の海人の苫屋もいかならむ<BR>  須磨の浦人しほたるるころ<BR>⏎
d1346<P>⏎
d1348<P>⏎
cd3:1350-352  <A HREF="#no15">こりずまの浦のみるめ</A><A NAME="te15">の</A>ゆかしきを<BR>⏎
  塩焼く海人やいかが思はむ」<BR>⏎
<P>⏎
229  <A HREF="#no15">こりずまの浦のみるめ</A><A NAME="te15">の</A>ゆかしきを<BR>  塩焼く海人やいかが思はむ」<BR>⏎
d1355<P>⏎
d1357<P>⏎
cd2:1358-359 もてならしたまひし御調度ども、弾きならしたまひし御琴、脱ぎ捨てたまひつる御衣の匂ひなどにつけても、今はと世になからむ人のやうにのみ思したれば、かつはゆゆしうて、少納言は、僧都に御祈りのことなど聞こゆ。二方に御修法などせさせたまふ。かつは「思し嘆く御心静めたまひて、思ひなき世にあらせたてまつりたまへ」と、心苦しきままに祈り申したまふ。<BR>⏎
<P>⏎
233 もてならしたまひし御調度ども、弾きならしたまひし御琴、脱ぎ捨てたまひつる御衣の匂ひなどにつけても、今はと世になからむ人のやうにのみ思したれば、かつはゆゆしうて、少納言は、僧都に御祈りのことなど聞こゆ。二方に御修法などせさせたまふ。かつは「思し嘆く御心静めたまひて、思ひなき世にあらせたてまつりたまへ」と、心苦しきままに祈り申したまふ。<BR>⏎
d1361<P>⏎
cd2:1362-363 出で入りたまひし方、<A HREF="#no16">寄りゐたまひし真木柱</A><A NAME="te16">な</A>どを見たまふにも、胸のみふたがりて、ものをとかう思ひめぐらし、世にしほじみぬる齢の人だにあり、まして馴れむつびきこえ、父母にもなりて生ほし立てならはしたまへれば、恋しう思ひきこえたまへる、ことわりなり。ひたすら世になくなりなむは、言はむ方なくて、やうやう忘れ草も生ひやすらむ、聞くほどは近けれど、<A HREF="#no17">いつまでと限りある</A><A NAME="te17">御</A>別れにもあらで、思すに尽きせずなむ。<BR>⏎
<P>⏎
235 出で入りたまひし方、<A HREF="#no16">寄りゐたまひし真木柱</A><A NAME="te16">な</A>どを見たまふにも、胸のみふたがりて、ものをとかう思ひめぐらし、世にしほじみぬる齢の人だにあり、まして馴れむつびきこえ、父母にもなりて生ほし立てならはしたまへれば、恋しう思ひきこえたまへる、ことわりなり。ひたすら世になくなりなむは、言はむ方なくて、やうやう忘れ草も生ひやすらむ、聞くほどは近けれど、<A HREF="#no17">いつまでと限りある</A><A NAME="te17">御</A>別れにもあらで、思すに尽きせずなむ。<BR>⏎
d1365<P>⏎
cd4:2366-369 「このころは、いとど<BR>⏎
  塩垂るることをやくにて松島に<BR>⏎
  年ふる海人も嘆きをぞつむ」<BR>⏎
<P>⏎
237-238 「このころは、いとど<BR>⏎
  塩垂るることをやくにて松島に<BR>  年ふる海人も嘆きをぞつむ」<BR>⏎
d1371<P>⏎
cd3:1372-374 「浦にたく海人だにつつむ恋なれば<BR>⏎
  くゆる煙よ行く方ぞなき<BR>⏎
<P>⏎
240 「浦にたく海人だにつつむ恋なれば<BR>  くゆる煙よ行く方ぞなき<BR>⏎
cd2:1376-377 とばかりいささか書きて、中納言の君の中にあり。思し嘆くさまなど、いみじう言ひたり。あはれと思ひきこえたまふ節々もあれば、うち泣かれたまひぬ。<BR>⏎
<P>⏎
242 とばかりいささか書きて、中納言の君の中にあり。思し嘆くさまなど、いみじう言ひたり。あはれと思ひきこえたまふ節々もあれば、うち泣かれたまひぬ。<BR>⏎
d1379<P>⏎
cd5:2380-384 「浦人の潮くむ袖に比べ見よ<BR>⏎
  波路へだつる夜の衣を」<BR>⏎
<P>⏎
 ものの色、したまへるさまなど、いときよらなり。何ごとも<A HREF="#k24">らうらうじう</A><A NAME="t24">も</A>のしたまふを、思ふさまにて、「今は他事に心あわたたしう、行きかかづらふ方もなく、しめやかにてあるべきものを」と思すに、いみじう口惜しう、夜昼面影におぼえて、<A HREF="#k25">堪へがたう</A><A NAME="t25">思</A>ひ出でられたまへば、「なほ忍びてや迎へまし」と思す。またうち返し、「なぞやかく憂き世に、罪をだに失はむ」と思せば、やがて御精進にて、明け暮れ行なひておはす。<BR>⏎
<P>⏎
244-245 「浦人の潮くむ袖に比べ見よ<BR>  波路へだつる夜の衣を」<BR>⏎
 ものの色、したまへるさまなど、いときよらなり。何ごとも<A HREF="#k24">らうらうじう</A><A NAME="t24">も</A>のしたまふを、思ふさまにて、「今は他事に心あわたたしう、行きかかづらふ方もなく、しめやかにてあるべきものを」と思すに、いみじう口惜しう、夜昼面影におぼえて、<A HREF="#k25">堪へがたう</A><A NAME="t25">思</A>ひ出でられたまへば、「なほ忍びてや迎へまし」と思す。またうち返し、「なぞやかく憂き世に、罪をだに失はむ」と思せば、やがて御精進にて、明け暮れ行なひておはす。<BR>⏎
d1386<P>⏎
text12387 <A NAME="in23">[第三段 伊勢の御息所へ手紙]</A><BR>247 
d1388<P>⏎
c1389 まことや、騒がしかりしほどの紛れに漏らしてけり。かの伊勢の宮へも御使ありけり。かれよりもふりはへ尋ね参れり。浅からぬ<A HREF="#k26">ことども</A><A NAME="t26">書</A>きたまへり。言の葉、筆づかひなどは、人よりことになまめかしく、いたり深う見えたり。<BR>⏎
248 まことや、騒がしかりしほどの紛れに漏らしてけり。かの伊勢の宮へも御使ありけり。かれよりもふりはへ尋ね参れり。浅からぬ<A HREF="#k26">ことども</A><A NAME="t26">書</A>きたまへり。言の葉、筆づかひなどは、人よりことになまめかしく、いたり深う見えたり。<BR>⏎
d1391<P>⏎
cd3:1392-394  うきめかる伊勢をの海人を思ひやれ<BR>⏎
  藻塩垂るてふ須磨の浦にて<BR>⏎
<P>⏎
250  うきめかる伊勢をの海人を思ひやれ<BR>  藻塩垂るてふ須磨の浦にて<BR>⏎
d1397<P>⏎
cd7:3398-404 「伊勢島や潮干の潟に漁りても<BR>⏎
  いふかひなきは我が身なりけり」<BR>⏎
<P>⏎
 ものをあはれと思しけるままに、うち置きうち置き書きたまへる、白き唐の紙、四五枚ばかりを巻き<A HREF="#k27">続けて</A><A NAME="t27">、</A>墨つきなど見所あり。<BR>⏎
<P>⏎
 「あはれに思ひきこえし人を、ひとふし憂しと思ひきこえし心あやまりに、かの御息所も思ひ倦じて別れたまひにし」と思せば、今にいとほしうかたじけなきものに思ひきこえたまふ。折からの御文、いとあはれなれば、御使さへむつましうて、二三日据ゑさせたまひて、かしこの物語などせさせて聞こしめす。<BR>⏎
<P>⏎
253-255 「伊勢島や潮干の潟に漁りても<BR>  いふかひなきは我が身なりけり」<BR>⏎
 ものをあはれと思しけるままに、うち置きうち置き書きたまへる、白き唐の紙、四五枚ばかりを巻き<A HREF="#k27">続けて</A><A NAME="t27">、</A>墨つきなど見所あり。<BR>⏎
 「あはれに思ひきこえし人を、ひとふし憂しと思ひきこえし心あやまりに、かの御息所も思ひ倦じて別れたまひにし」と思せば、今にいとほしうかたじけなきものに思ひきこえたまふ。折からの御文、いとあはれなれば、御使さへむつましうて、二三日据ゑさせたまひて、かしこの物語などせさせて聞こしめす。<BR>⏎
d1406<P>⏎
d1408<P>⏎
cd5:2409-413  <A HREF="#no19">伊勢人の波の上漕ぐ小舟</A><A NAME="te19">に</A>も<BR>⏎
  うきめは刈らで乗らましものを<BR>⏎
  海人がつむなげきのなかに塩垂れて<BR>⏎
  いつまで須磨の浦に眺めむ<BR>⏎
<P>⏎
258-259  <A HREF="#no19">伊勢人の波の上漕ぐ小舟</A><A NAME="te19">に</A>も<BR>  うきめは刈らで乗らましものを<BR>⏎
  海人がつむなげきのなかに塩垂れて<BR>  いつまで須磨の浦に眺めむ<BR>⏎
cd2:1415-416 などぞありける。かやうにいづこにもおぼつかなからず聞こえかはしたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
261 などぞありける。かやうにいづこにもおぼつかなからず聞こえかはしたまふ。<BR>⏎
d1418<P>⏎
cd5:2419-423 「荒れまさる軒のしのぶを眺めつつ<BR>⏎
  しげくも露のかかる袖かな」<BR>⏎
<P>⏎
 とあるを、「げに葎よりほかの後見もなきさまにておはすらむ」と思しやりて、「長雨に築地所々崩れてなむ」と聞きたまへば、京の家司のもとに仰せつかはして、近き国々の御荘の者などもよほさせて、仕うまつるべき由のたまはす。<BR>⏎
<P>⏎
263-264 「荒れまさる軒のしのぶを眺めつつ<BR>  しげくも露のかかる袖かな」<BR>⏎
 とあるを、「げに葎よりほかの後見もなきさまにておはすらむ」と思しやりて、「長雨に築地所々崩れてなむ」と聞きたまへば、京の家司のもとに仰せつかはして、近き国々の御荘の者などもよほさせて、仕うまつるべき由のたまはす。<BR>⏎
text12424 <A NAME="in24">[第四段 朧月夜尚侍参内する]</A><BR>265 
d1425<P>⏎
cd2:1426-427 尚侍の君は、人笑へにいみじう思しくづほるるを、大臣いとかなしうしたまふ君にて、せちに宮にも内裏にも奏したまひければ、「限りある女御御息所にもおはせず、公ざまの宮仕へ」と思し直り、また「かの憎かりしゆゑこそ、いかめしきことも出で来しか」。許されたまひて、参りたまふべきにつけても、なほ心に染みにし方ぞ、あはれにおぼえたまける。<BR>⏎
<P>⏎
266 尚侍の君は、人笑へにいみじう思しくづほるるを、大臣いとかなしうしたまふ君にて、せちに宮にも内裏にも奏したまひければ、「限りある女御御息所にもおはせず、公ざまの宮仕へ」と思し直り、また「かの憎かりしゆゑこそ、いかめしきことも出で来しか」。許されたまひて、参りたまふべきにつけても、なほ心に染みにし方ぞ、あはれにおぼえたまける。<BR>⏎
d1430<P>⏎
d1432<P>⏎
cd6:3433-438 とて涙ぐませたまふに、え念じたまはず。<BR>⏎
<P>⏎
 「世の中こそ、あるにつけてもあぢきなきものなりけれ、と思ひ知るままに、久しく世にあらむものとなむ、さらに思はぬ。さもなりなむに、いかが思さるべき。近きほどの別れに思ひ落とされむこそ、ねたけれ。<A HREF="#no20">生ける世に</A><A NAME="te20">と</A>は、げによからぬ人の言ひ置きけむ」<BR>⏎
<P>⏎
 といとなつかしき御さまにて、ものをまことにあはれと思し入りてのたまはするにつけて、ほろほろとこぼれ出づれば、<BR>⏎
<P>⏎
270-272 とて涙ぐませたまふに、え念じたまはず。<BR>⏎
 「世の中こそ、あるにつけてもあぢきなきものなりけれ、と思ひ知るままに、久しく世にあらむものとなむ、さらに思はぬ。さもなりなむに、いかが思さるべき。近きほどの別れに思ひ落とされむこそ、ねたけれ。<A HREF="#no20">生ける世に</A><A NAME="te20">と</A>は、げによからぬ人の言ひ置きけむ」<BR>⏎
 といとなつかしき御さまにて、ものをまことにあはれと思し入りてのたまはするにつけて、ほろほろとこぼれ出づれば、<BR>⏎
d1440<P>⏎
d1442<P>⏎
cd2:1444-445 など世を御心のほかにまつりごちなしたまふ人びとのあるに、若き御心の、強きところなきほどにて、いとほしと思したることも多かり。<BR>⏎
<P>⏎
276 など世を御心のほかにまつりごちなしたまふ人びとのあるに、若き御心の、強きところなきほどにて、いとほしと思したることも多かり。<BR>⏎
text12446 <H4>第三章 光る源氏の物語 須磨の秋の物語</H4>277 
text12447 <A NAME="in31">[第一段 須磨の秋]</A><BR>278 
d1448<P>⏎
d1450<P>⏎
d1452<P>⏎
cd3:1453-455 「恋ひわびて泣く音にまがふ浦波は<BR>⏎
  <A HREF="#no25">思ふ方より風や吹く</A><A NAME="te25">ら</A>む」<BR>⏎
<P>⏎
281 「恋ひわびて泣く音にまがふ浦波は<BR>  <A HREF="#no25">思ふ方より風や吹く</A><A NAME="te25">ら</A>む」<BR>⏎
d1457<P>⏎
cd2:1458-459 「げにいかに思ふらむ。我が身ひとつにより、親兄弟片時立ち離れがたく、ほどにつけつつ思ふらむ家を別れて、かく惑ひあへる」と思すに、いみじくて、「いとかく思ひ沈むさまを、心細しと思ふらむ」と思せば、昼は何くれとうちのたまひ紛らはし、つれづれなるままに、色々の紙を継ぎつつ、手習ひをしたまひ、めづらしきさまなる唐の綾などに、さまざまの絵どもを描きすさびたまへる屏風の面どもなど、いとめでたく見所あり。<BR>⏎
<P>⏎
283 「げにいかに思ふらむ。我が身ひとつにより、親兄弟片時立ち離れがたく、ほどにつけつつ思ふらむ家を別れて、かく惑ひあへる」と思すに、いみじくて、「いとかく思ひ沈むさまを、心細しと思ふらむ」と思せば、昼は何くれとうちのたまひ紛らはし、つれづれなるままに、色々の紙を継ぎつつ、手習ひをしたまひ、めづらしきさまなる唐の綾などに、さまざまの絵どもを描きすさびたまへる屏風の面どもなど、いとめでたく見所あり。<BR>⏎
d1461<P>⏎
cd4:2462-465 「このころの上手にすめる千枝常則などを召して、作り絵仕うまつらせばや」<BR>⏎
<P>⏎
 と心もとながりあへり。なつかしうめでたき御さまに、世のもの思ひ忘れて、近う馴れ仕うまつるをうれしきことにて、四五人ばかりぞ、つとさぶらひける。<BR>⏎
<P>⏎
285-286 「このころの上手にすめる千枝常則などを召して、作り絵仕うまつらせばや」<BR>⏎
 と心もとながりあへり。なつかしうめでたき御さまに、世のもの思ひ忘れて、近う馴れ仕うまつるをうれしきことにて、四五人ばかりぞ、つとさぶらひける。<BR>⏎
d1469<P>⏎
d1471<P>⏎
cd2:1472-473 「初雁は恋しき人の列なれや<BR>⏎
  旅の空飛ぶ声の悲しき」<BR>⏎
291 「初雁は恋しき人の列なれや<BR>  旅の空飛ぶ声の悲しき」<BR>⏎
cd2:1475-476 「かきつらね昔のことぞ思ほゆる<BR>⏎
  雁はその世の友ならねども」<BR>⏎
293 「かきつらね昔のことぞ思ほゆる<BR>  雁はその世の友ならねども」<BR>⏎
cd2:1478-479 「心から常世を捨てて鳴く雁を<BR>⏎
  雲のよそにも思ひけるかな」<BR>⏎
295 「心から常世を捨てて鳴く雁を<BR>  雲のよそにも思ひけるかな」<BR>⏎
cd2:1481-482 「常世出でて旅の空なる雁がねも<BR>⏎
  列に遅れぬほどぞ慰む<BR>⏎
297 「常世出でて旅の空なる雁がねも<BR>  列に遅れぬほどぞ慰む<BR>⏎
d1484<P>⏎
d1486<P>⏎
text12487 <A NAME="in32">[第二段 配所の月を眺める]</A><BR>300 
d1488<P>⏎
d1490<P>⏎
c1492 と誦じたまへる、例の涙もとどめられず。入道の宮の、「霧や隔つる」とのたまはせしほど、言はむ方なく恋しく、折々のこと思ひ出でたまふに、よよと泣かれたまふ。<BR>⏎
303 と誦じたまへる、例の涙もとどめられず。入道の宮の、「霧や隔つる」とのたまはせしほど、言はむ方なく恋しく、折々のこと思ひ出でたまふに、よよと泣かれたまふ。<BR>⏎
d1495<P>⏎
cd2:1496-497 「見るほどぞしばし慰むめぐりあはむ<BR>⏎
  月の都は遥かなれども」<BR>⏎
306 「見るほどぞしばし慰むめぐりあはむ<BR>  月の都は遥かなれども」<BR>⏎
d1501<P>⏎
cd3:1502-504 「憂しとのみひとへにものは思ほえで<BR>⏎
  左右にも濡るる袖かな」<BR>⏎
<P>⏎
310 「憂しとのみひとへにものは思ほえで<BR>  左右にも濡るる袖かな」<BR>⏎
text12505 <A NAME="in33">[第三段 筑紫五節と和歌贈答]</A><BR>311 
d1506<P>⏎
cd2:1507-508 そのころ、大弐は上りける。いかめしく類広く、娘がちにて所狭かりければ、北の方は舟にて上る。浦づたひに逍遥しつつ来るに、他よりもおもしろきわたりなれば、心とまるに、「大将かくておはす」と聞けば、あいなう、好いたる若き娘たちは、舟の内さへ恥づかしう、心懸想せらる。まして五節の君は、綱手引き過ぐるも口惜しきに、琴の声、風につきて遥かに聞こゆるに、所のさま、人の御ほど、物の音の心細さ、取り集め、心ある限りみな泣きにけり。<BR>⏎
<P>⏎
312 そのころ、大弐は上りける。いかめしく類広く、娘がちにて所狭かりければ、北の方は舟にて上る。浦づたひに逍遥しつつ来るに、他よりもおもしろきわたりなれば、心とまるに、「大将かくておはす」と聞けば、あいなう、好いたる若き娘たちは、舟の内さへ恥づかしう、心懸想せらる。まして五節の君は、綱手引き過ぐるも口惜しきに、琴の声、風につきて遥かに聞こゆるに、所のさま、人の御ほど、物の音の心細さ、取り集め、心ある限りみな泣きにけり。<BR>⏎
d1512<P>⏎
d1515<P>⏎
d1517<P>⏎
cd2:1518-519 「琴の音に弾きとめらるる綱手縄<BR>⏎
  たゆたふ心君知るらめや<BR>⏎
319 「琴の音に弾きとめらるる綱手縄<BR>  たゆたふ心君知るらめや<BR>⏎
d1521<P>⏎
d1523<P>⏎
cd2:1524-525 「心ありて引き手の綱のたゆたはば<BR>⏎
  うち過ぎましや須磨の浦波<BR>⏎
322 「心ありて引き手の綱のたゆたはば<BR>  うち過ぎましや須磨の浦波<BR>⏎
d1527<P>⏎
cd2:1528-529 とあり。駅の長に句詩取らする人もありけるを、まして落ちとまりぬべくなむおぼえける。<BR>⏎
<P>⏎
324 とあり。駅の長に句詩取らする人もありけるを、まして落ちとまりぬべくなむおぼえける。<BR>⏎
text12530 <A NAME="in34">[第四段 都の人々の生活]</A><BR>325 
d1531<P>⏎
cd2:1532-533 都には、月日過ぐるままに、帝を初めたてまつりて、恋ひきこゆる折ふし多かり。春宮は、まして常に思し出でつつ忍びて泣きたまふ。見たてまつる御乳母、まして命婦の君は、いみじうあはれに見たてまつる。<BR>⏎
<P>⏎
326 都には、月日過ぐるままに、帝を初めたてまつりて、恋ひきこゆる折ふし多かり。春宮は、まして常に思し出でつつ忍びて泣きたまふ。見たてまつる御乳母、まして命婦の君は、いみじうあはれに見たてまつる。<BR>⏎
d1536<P>⏎
d1538<P>⏎
cd2:1539-540 など悪しきことども聞こえければ、わづらはしとて、消息聞こえたまふ人なし。<BR>⏎
<P>⏎
330 など悪しきことども聞こえければ、わづらはしとて、消息聞こえたまふ人なし。<BR>⏎
d1542<P>⏎
text12543 <A NAME="in35">[第五段 須磨の生活]</A><BR>332 
d1544<P>⏎
cd5:2545-549 かの御住まひには、久しくなるままに、え念じ過ぐすまじうおぼえたまへど、「我が身だにあさましき宿世とおぼゆる住まひに、いかでかはうち具しては、つきなからむ」さまを思ひ返したまふ。所につけて、よろづのことさま変はり、見たまへ知らぬ下人のうへをも、見たまひ慣らはぬ御心地に、めざましうかたじけなう、みづから思さる。煙のいと近く時々立ち来るを、「これや<A HREF="#no31">海人の塩焼く</A><A NAME="te31">な</A>らむ」と思しわたるは、おはします後の山に、柴といふものふすぶるなりけり。めづらかにて、<BR>⏎
<P>⏎
 「山賤の庵に焚けるしばしばも<BR>⏎
  言問ひ来なむ恋ふる里人」<BR>⏎
<P>⏎
333-334 かの御住まひには、久しくなるままに、え念じ過ぐすまじうおぼえたまへど、「我が身だにあさましき宿世とおぼゆる住まひに、いかでかはうち具しては、つきなからむ」さまを思ひ返したまふ。所につけて、よろづのことさま変はり、見たまへ知らぬ下人のうへをも、見たまひ慣らはぬ御心地に、めざましうかたじけなう、みづから思さる。煙のいと近く時々立ち来るを、「これや<A HREF="#no31">海人の塩焼く</A><A NAME="te31">な</A>らむ」と思しわたるは、おはします後の山に、柴といふものふすぶるなりけり。めづらかにて、<BR>⏎
 「山賤の庵に焚けるしばしばも<BR>  言問ひ来なむ恋ふる里人」<BR>⏎
d1551<P>⏎
c1552 昔胡の国に遣しけむ女を思しやりて、「ましていかなりけむ。この世に我が思ひきこゆる人などをさやうに放ちやりたらむこと」など思ふも、あらむことのやうに<A HREF="#k30">ゆゆしう</A><A NAME="t30">て</A>、<BR>⏎
336 昔胡の国に遣しけむ女を思しやりて、「ましていかなりけむ。この世に我が思ひきこゆる人などをさやうに放ちやりたらむこと」など思ふも、あらむことのやうに<A HREF="#k30">ゆゆしう</A><A NAME="t30">て</A>、<BR>⏎
d1555<P>⏎
cd5:2558-562 とひとりごちたまて、<BR>⏎
<P>⏎
 「いづ方の雲路に我も<A HREF="#k31">迷ひ</A><A NAME="t31">な</A>む<BR>⏎
  月の見るらむことも恥づかし」<BR>⏎
<P>⏎
341-342 とひとりごちたまて、<BR>⏎
 「いづ方の雲路に我も<A HREF="#k31">迷ひ</A><A NAME="t31">な</A>む<BR>  月の見るらむことも恥づかし」<BR>⏎
d1564<P>⏎
cd3:1565-567 「友千鳥諸声に鳴く暁は<BR>⏎
  ひとり寝覚の床も頼もし」<BR>⏎
<P>⏎
344 「友千鳥諸声に鳴く暁は<BR>  ひとり寝覚の床も頼もし」<BR>⏎
d1569<P>⏎
d1571<P>⏎
text12572 <A NAME="in36">[第六段 明石入道の娘]</A><BR>347 
d1573<P>⏎
d1577<P>⏎
d1579<P>⏎
d1581<P>⏎
d1583<P>⏎
cd2:1584-585 「あなかたはや。京の人の語るを聞けば、やむごとなき御妻ども、いと多く持ちたまひて、そのあまり、忍び忍び帝の御妻さへあやまちたまひて、かくも騒がれたまふなる人は、まさにかくあやしき山賤を、心とどめたまひてむや」<BR>⏎
<P>⏎
354 「あなかたはや。京の人の語るを聞けば、やむごとなき御妻ども、いと多く持ちたまひて、そのあまり、忍び忍び帝の御妻さへあやまちたまひて、かくも騒がれたまふなる人は、まさにかくあやしき山賤を、心とどめたまひてむや」<BR>⏎
d1587<P>⏎
d1589<P>⏎
cd4:2590-593 と心をやりて言ふもかたくなしく見ゆ。まばゆきまでしつらひかしづきけり。母君、<BR>⏎
<P>⏎
 「などかめでたくとも、ものの初めに、罪に当たりて流されておはしたらむ人をしも思ひかけむ。さても心をとどめたまふべくはこそあらめ、たはぶれにてもあるまじきことなり」<BR>⏎
<P>⏎
357-358 と心をやりて言ふもかたくなしく見ゆ。まばゆきまでしつらひかしづきけり。母君、<BR>⏎
 「などかめでたくとも、ものの初めに、罪に当たりて流されておはしたらむ人をしも思ひかけむ。さても心をとどめたまふべくはこそあらめ、たはぶれにてもあるまじきことなり」<BR>⏎
d1595<P>⏎
c1596 「罪に当たることは、唐土にも我が朝廷にも、かく世にすぐれ、何ごとも人にことになりぬる人の、かならずあることなり。いかにものしたまふ君ぞ。故母御息所は、おのが叔父にものしたまひし按察使大納言の娘なり。いとかうざくなる名をとりて、宮仕へに出だしたまへりしに、国王すぐれて時めかしたまふこと、並びなかりけるほどに、人の嫉み重くて亡せたまひにしかど、この君のとまりたまへる、いとめでたしかし。女は心高くつかふべきものなり。おのれかかる田舎人なりとて、思し捨てじ」<BR>⏎
360 「罪に当たることは、唐土にも我が朝廷にも、かく世にすぐれ、何ごとも人にことになりぬる人の、かならずあることなり。いかにものしたまふ君ぞ。故母御息所は、おのが叔父にものしたまひし按察使大納言の娘なり。いとかうざくなる名をとりて、宮仕へに出だしたまへりしに、国王すぐれて時めかしたまふこと、並びなかりけるほどに、人の嫉み重くて亡せたまひにしかど、この君のとまりたまへる、いとめでたしかし。女は心高くつかふべきものなり。おのれかかる田舎人なりとて、思し捨てじ」<BR>⏎
d1598<P>⏎
c1599 この娘、すぐれたる容貌ならねど、なつかしうあてはかに、心ばせあるさまなどぞ、げにやむごとなき人に劣るまじかりける。身のありさまを、口惜しきものに思ひ知りて、<BR>⏎
362 この娘、すぐれたる容貌ならねど、なつかしうあてはかに、心ばせあるさまなどぞ、げにやむごとなき人に劣るまじかりける。身のありさまを、口惜しきものに思ひ知りて、<BR>⏎
d1603<P>⏎
text12604 <H4>第四章 光る源氏の物語 信仰生活と神の啓示の物語</H4>366 
text12605 <A NAME="in41">[第一段 須磨で新年を迎える]</A><BR>367 
d1606<P>⏎
d1608<P>⏎
d1610<P>⏎
cd3:1611-613 「いつとなく大宮人の恋しきに<BR>⏎
  <A HREF="#no34">桜かざしし今日</A><A NAME="te34">も</A>来にけり」<BR>⏎
<P>⏎
370 「いつとなく大宮人の恋しきに<BR>  <A HREF="#no34">桜かざしし今日</A><A NAME="te34">も</A>来にけり」<BR>⏎
d1616<P>⏎
d1618<P>⏎
d1621<P>⏎
d1623<P>⏎
d1627<P>⏎
cd2:1630-631 と諸声に誦じたまふ。御供の人も涙を流す。<A HREF="#k37">おのがじし</A><A NAME="t37">、</A>はつかなる別れ惜しむべかめり。<BR>⏎
<P>⏎
382 と諸声に誦じたまふ。御供の人も涙を流す。<A HREF="#k37">おのがじし</A><A NAME="t37">、</A>はつかなる別れ惜しむべかめり。<BR>⏎
d1633<P>⏎
cd3:1634-636 「故郷をいづれの春か行きて見む<BR>⏎
  うらやましきは帰る雁がね」<BR>⏎
<P>⏎
384 「故郷をいづれの春か行きて見む<BR>  うらやましきは帰る雁がね」<BR>⏎
d1638<P>⏎
cd3:1639-641 「あかなくに雁の常世を立ち別れ<BR>⏎
  花の都に道や惑はむ」<BR>⏎
<P>⏎
386 「あかなくに雁の常世を立ち別れ<BR>  花の都に道や惑はむ」<BR>⏎
cd2:1646-647 とていみじき笛の名ありけるなどばかり、人咎めつべきことは、かたみにえしたまはず。<BR>⏎
<P>⏎
391 とていみじき笛の名ありけるなどばかり、人咎めつべきことは、かたみにえしたまはず。<BR>⏎
d1651<P>⏎
cd5:2652-656 「雲近く飛び交ふ鶴も空に見よ<BR>⏎
  我は春日の曇りなき身ぞ<BR>⏎
<P>⏎
 かつは頼まれながら、かくなりぬる人、昔のかしこき人だに、はかばかしう世にまたまじらふこと難くはべりければ、何か都のさかひをまた見むとなむ思ひはべらぬ」<BR>⏎
<P>⏎
395-396 「雲近く飛び交ふ鶴も空に見よ<BR>  我は春日の曇りなき身ぞ<BR>⏎
 かつは頼まれながら、かくなりぬる人、昔のかしこき人だに、はかばかしう世にまたまじらふこと難くはべりければ、何か都のさかひをまた見むとなむ思ひはべらぬ」<BR>⏎
d1658<P>⏎
cd3:1659-661 「たづかなき雲居にひとり音をぞ鳴く<BR>⏎
  翼並べし友を恋ひつつ<BR>⏎
<P>⏎
398 「たづかなき雲居にひとり音をぞ鳴く<BR>  翼並べし友を恋ひつつ<BR>⏎
cd2:1663-664 などしめやかにもあらで帰りたまひぬる名残、いとど悲しう眺め暮らしたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
400 などしめやかにもあらで帰りたまひぬる名残、いとど悲しう眺め暮らしたまふ。<BR>⏎
text12665 <A NAME="in42">[第二段 上巳の祓と嵐]</A><BR>401 
d1666<P>⏎
cd6:3669-674 となまさかしき人の聞こゆれば、海づらもゆかしうて出でたまふ。いとおろそかに、軟障ばかりを引きめぐらして、この国に通ひける陰陽師召して、祓へせさせたまふ。舟にことことしき人形乗せて流すを見たまふに、よそへられて、<BR>⏎
<P>⏎
 「知らざりし大海の原に流れ来て<BR>⏎
  ひとかたにやはものは悲しき」<BR>⏎
<P>⏎
 とてゐたまへる御さま、さる晴れに出でて、言ふよしなく見えたまふ。<BR>⏎
404-406 となまさかしき人の聞こゆれば、海づらもゆかしうて出でたまふ。いとおろそかに、軟障ばかりを引きめぐらして、この国に通ひける陰陽師召して、祓へせさせたまふ。舟にことことしき人形乗せて流すを見たまふに、よそへられて、<BR>⏎
 「知らざりし大海の原に流れ来て<BR>  ひとかたにやはものは悲しき」<BR>⏎
 とてゐたまへる御さま、さる晴れに出でて、言ふよしなく見えたまふ。<BR>⏎
d1676<P>⏎
cd3:1677-679 「八百よろづ神もあはれと思ふらむ<BR>⏎
  犯せる罪のそれとなければ」<BR>⏎
<P>⏎
408 「八百よろづ神もあはれと思ふらむ<BR>  犯せる罪のそれとなければ」<BR>⏎
d1684<P>⏎
c1688 「高潮といふものになむ、とりあへず人そこなはるるとは聞けど、いとかかることは、まだ知らず」<BR>⏎
416 「高潮といふものになむ、とりあへず人そこなはるるとは聞けど、いとかかることは、まだ知らず」<BR>⏎
d1690<P>⏎
cd6:4692-697 「など宮より召しあるには参りたまはぬ」<BR>⏎
 とてたどりありくと見るに、おどろきて、「さは海の中の龍王の、いといたうものめでするものにて、見入れたるなりけり」と思すに、いとものむつかしう、この住まひ堪へがたく思しなりぬ。<BR>⏎

<P>⏎
 <a name="in51">【出典】<BR>⏎
</a><A NAME="no1">出典1</A> 我が恋は行方も知らず果てもなし逢ふを限りと思ふばかりぞ(古今集恋二-六一一 凡河内躬恒)<A HREF="#te1">(戻)</A><BR>⏎
419-422 「など宮より召しあるには参りたまはぬ」<BR>⏎
 とてたどりありくと見るに、おどろきて、「さは海の中の龍王の、いといたうものめでするものにて、見入れたるなりけり」と思すに、いとものむつかしう、この住まひ堪へがたく思しなりぬ。<BR>⏎
 <A NAME="in51">【出典】</A><BR>⏎
<A NAME="no1">出典1</A> 我が恋は行方も知らず果てもなし逢ふを限りと思ふばかりぞ(古今集恋二-六一一 凡河内躬恒)<A HREF="#te1">(戻)</A><BR>⏎
c1734<A NAME="no38">出典38</A> 酔悲*水+麗涙春盃裏 吟苦支頤暁燭前(白氏文集十七-一一〇七)<A HREF="#te38">(戻)</A><BR>⏎
459<A NAME="no38">出典38</A> 酔悲*(水+麗)涙春盃裏 吟苦支頤暁燭前(白氏文集十七-一一〇七)<A HREF="#te38">(戻)</A><BR>⏎
d1738
c1739<p> <a name="in52">【校訂】<BR>⏎
463 <A NAME="in52">【校訂】</A><BR>
c1741</a><A NAME="k01">校訂1</A> たまへらむ--給つ(つ/$へ<朱>)らむ<A HREF="#t01">(戻)</A><BR>⏎
465<A NAME="k01">校訂1</A> たまへらむ--給つ(つ/$へ<朱>)らむ<A HREF="#t01">(戻)</A><BR>⏎
d1779</p>⏎
d1786</p>⏎
i0513
diffsrc/original/text13.htmlsrc/modified/text13.html
cd2:18-9<body background="wallppr063.gif">⏎
First updated 9/20/1996(ver.1-1)<BR>⏎
8<BODY>⏎
cd3:210-12Last updated 9/21/2010(ver.2-3)<BR>⏎
渋谷栄一校訂(C)<BR>⏎
<P
>⏎
9-10<ADDRESS>Last updated 9/21/2010(ver.2-3)<BR>⏎
渋谷栄一校訂(C)</ADDRESS>⏎
d114<P>⏎
i014
d138<P>⏎
c144<LI>明石入道の迎えの舟---<A HREF="#in14">渚に小さやかなる舟寄せて、人二三人ばかり</A>⏎
40<LI>明石入道の迎えの舟---<A HREF="#in14">渚に小さやかなる舟寄せて、人二三人ばかり</A>⏎
d178<P>⏎
d181<P>⏎
text1382 <H4>第一章 光る源氏の物語 須磨の嵐と神の導きの物語</H4>76 
text1383 <A NAME="in11">[第一段 須磨の嵐続く]</A><BR>77 
d184<P>⏎
cd2:185-86 なほ雨風やまず、雷鳴り静まらで、日ごろになりぬ。いとどものわびしきこと、数知らず、来し方行く先、悲しき御ありさまに、心強うしもえ思しなさず、「いかにせまし。かかりとて、都に帰らむことも、まだ世に許されもなくては、人笑はれなることこそまさらめ。なほこれより深き山を求めてや、あと絶えなまし」と思すにも、「波風に<A HREF="#k01">騒がれて</A><A NAME="t01">な</A>ど、人の言ひ伝へむこと、後の世まで、いと軽々しき名や流し果てむ」と思し乱る。<BR>⏎
<P>⏎
78 なほ雨風やまず、雷鳴り静まらで、日ごろになりぬ。いとどものわびしきこと、数知らず、来し方行く先、悲しき御ありさまに、心強うしもえ思しなさず、「いかにせまし。かかりとて、都に帰らむことも、まだ世に許されもなくては、人笑はれなることこそまさらめ。なほこれより深き山を求めてや、あと絶えなまし」と思すにも、「波風に<A HREF="#k01">騒がれて</A><A NAME="t01">な</A>ど、人の言ひ伝へむこと、後の世まで、いと軽々しき名や流し果てむ」と思し乱る。<BR>⏎
d189<P>⏎
cd3:191-93  浦風やいかに吹くらむ思ひやる<BR>⏎
  袖うち濡らし波間なきころ」<BR>⏎
<P>⏎
82  浦風やいかに吹くらむ思ひやる<BR>  袖うち濡らし波間なきころ」<BR>⏎
d195<P>⏎
cd5:397-101 などはかばかしうもあらず、かたくなしう語りなせど、京の方のことと思せばいぶかしうて、御前に召し出でて、問はせたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
 「ただ例の雨のを止みなく降りて、風は時々<A HREF="#k04">吹き出でて</A><A NAME="t04">、</A>日ごろになりはべるを、例ならぬことに驚きはべるなり。いとかく、地の底徹るばかりの氷降り、雷の静まらぬことははべらざりき」<BR>⏎
 などいみじきさまに驚き懼ぢてをる顔のいとからきにも、心細さまさりける。<BR>⏎
<P>⏎
85-87 などはかばかしうもあらず、かたくなしう語りなせど、京の方のことと思せばいぶかしうて、御前に召し出でて、問はせたまふ。<BR>⏎
 「ただ例の雨のを止みなく降りて、風は時々<A HREF="#k04">吹き出でて</A><A NAME="t04">、</A>日ごろになりはべるを、例ならぬことに驚きはべるなり。いとかく、地の底徹るばかりの氷降り、雷の静まらぬことははべらざりき」<BR>⏎
 などいみじきさまに驚き懼ぢてをる顔のいとからきにも、心細さまさりける。<BR>⏎
text13102 <A NAME="in12">[第二段 光る源氏の祈り]</A><BR>88 
d1103<P>⏎
d1105<P>⏎
d1107<P>⏎
d1109<P>⏎
d1111<P>⏎
cd2:1112-113 と多くの大願を立てたまふ。おのおのみづからの命をば、さるものにて、かかる御身のまたなき例に沈みたまひぬべきことのいみじう悲しき、心を起こして、すこしものおぼゆる限りは、「身に代へてこの御身一つを救ひたてまつらむ」と、とよみて、諸声に仏、神を念じたてまつる。<BR>⏎
<P>⏎
93 と多くの大願を立てたまふ。おのおのみづからの命をば、さるものにて、かかる御身のまたなき例に沈みたまひぬべきことのいみじう悲しき、心を起こして、すこしものおぼゆる限りは、「身に代へてこの御身一つを救ひたてまつらむ」と、とよみて、諸声に仏、神を念じたてまつる。<BR>⏎
d1115<P>⏎
cd3:2116-118 と御社の方に向きて、さまざまの願を立てたまふ。<BR>⏎
 また海の中の龍王、よろづの神たちに願を立てさせたまふに、いよいよ鳴りとどろきて、おはしますに続きたる廊に落ちかかりぬ。炎燃え上がりて、廊は焼けぬ。心魂なくて、ある限り惑ふ。後の方なる大炊殿とおぼしき屋に移したてまつりて、上下となく立ち込みて、いとらうがはしく泣きとよむ声、雷にも劣らず。空は墨をすりたるやうにて、日も暮れにけり。<BR>⏎
<P>⏎
95-96 と御社の方に向きて、さまざまの願を立てたまふ。<BR>⏎
 また海の中の龍王、よろづの神たちに願を立てさせたまふに、いよいよ鳴りとどろきて、おはしますに続きたる廊に落ちかかりぬ。炎燃え上がりて、廊は焼けぬ。心魂なくて、ある限り惑ふ。後の方なる大炊殿とおぼしき屋に移したてまつりて、上下となく立ち込みて、いとらうがはしく泣きとよむ声、雷にも劣らず。空は墨をすりたるやうにて、日も暮れにけり。<BR>⏎
text13119 <A NAME="in13">[第三段 嵐収まる]</A><BR>97 
d1120<P>⏎
d1125<P>⏎
d1127<P>⏎
d1130<P>⏎
cd3:1131-133 「海にます神の助けにかからずは<BR>⏎
  潮の八百会にさすらへなまし」<BR>⏎
<P>⏎
105 「海にます神の助けにかからずは<BR>  潮の八百会にさすらへなまし」<BR>⏎
d1135<P>⏎
cd4:2136-139 「などかくあやしき所にものするぞ」<BR>⏎
<P>⏎
 とて御手を取りて引き立てたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
107-108 「などかくあやしき所にものするぞ」<BR>⏎
 とて御手を取りて引き立てたまふ。<BR>⏎
d1141<P>⏎
d1143<P>⏎
d1145<P>⏎
d1147<P>⏎
cd4:2148-151 「いとあるまじきこと。これはただいささかなる物の報いなり。我は、位に在りし時、あやまつことなかりしかど、おのづから犯しありければ、その罪を<A HREF="#k09">終ふる</A><A NAME="t09">ほ</A>ど暇なくて、この世を顧みざりつれど、いみじき愁へに沈むを見るに、堪へがたくて、海に入り、渚に上り、いたく困じにたれど、かかるついでに内裏に奏すべきことのあるによりなむ、急ぎ上りぬる」<BR>⏎
<P>⏎
 とて立ち去りたまひぬ。<BR>⏎
<P>⏎
113-114 「いとあるまじきこと。これはただいささかなる物の報いなり。我は、位に在りし時、あやまつことなかりしかど、おのづから犯しありければ、その罪を<A HREF="#k09">終ふる</A><A NAME="t09">ほ</A>ど暇なくて、この世を顧みざりつれど、いみじき愁へに沈むを見るに、堪へがたくて、海に入り、渚に上り、いたく困じにたれど、かかるついでに内裏に奏すべきことのあるによりなむ、急ぎ上りぬる」<BR>⏎
 とて立ち去りたまひぬ。<BR>⏎
d1154<P>⏎
d1156<P>⏎
text13157 <A NAME="in14">[第四段 明石入道の迎えの舟]</A><BR>118 
d1158<P>⏎
cd2:1159-160 渚に小さやかなる舟寄せて、人二三人ばかり、この旅の御宿りをさして参る。何人ならむと問へば、<BR>⏎
<P>⏎
119 渚に小さやかなる舟寄せて、人二三人ばかり、この旅の御宿りをさして参る。何人ならむと問へば、<BR>⏎
d1162<P>⏎
d1164<P>⏎
d1166<P>⏎
cd4:3167-170 とおぼめく。君の、御夢なども思し合はすることもありて、「はや会へ」とのたまへば、舟に行きて会ひたり。「さばかり激しかりつる波風に、いつの間にか舟出しつらむ」と、心得がたく思へり。<BR>⏎
<P>⏎
 「去ぬる朔日の日、夢にさま異なるものの告げ知らすることはべりしかば、信じがたきことと思うたまへしかど、『十三日にあらたなるしるし見せむ。舟装ひまうけて、かならず、雨風止まば、この浦にを寄せよ』と、かねて示すことのはべりしかば、試みに舟の装ひをまうけて待ちはべりしに、いかめしき雨、風、雷のおどろかしはべりつれば、人の朝廷にも、夢を信じて国を助くるたぐひ多うはべりけるを、用ゐさせたまはぬまでも、このいましめの日を過ぐさず、このよしを告げ申しはべらむとて、舟出だしはべりつるに、あやしき風細う吹きて、この浦に着きはべること、まことに神のしるべ違はずなむ。<A HREF="#k12">ここにも</A><A NAME="t12">、</A>もししろしめすことやはべりつらむ、とてなむ。いと憚り多くはべれど、この<A HREF="#k13">よし</A><A NAME="t13">、</A>申したまへ」<BR>⏎
<P>⏎
123-125 とおぼめく。君の、御夢なども思し合はすることもありて、「はや会へ」とのたまへば、舟に行きて会ひたり。「さばかり激しかりつる波風に、いつの間にか舟出しつらむ」と、心得がたく思へり。<BR>⏎
 「去ぬる朔日の日、夢にさま異なるものの告げ知らすることはべりしかば、信じがたきことと思うたまへしかど、『十三日にあらたなるしるし見せむ。舟装ひまうけて、かならず、雨風止まば、この浦にを寄せよ』と、かねて示すことのはべりしかば、<BR>⏎
試みに舟の装ひをまうけて待ちはべりしに、いかめしき雨、風、雷のおどろかしはべりつれば、人の朝廷にも、夢を信じて国を助くるたぐひ多うはべりけるを、用ゐさせたまはぬまでも、このいましめの日を過ぐさず、このよしを告げ申しはべらむとて、舟出だしはべりつるに、あやしき風細う吹きて、この浦に着きはべること、まことに神のしるべ違はずなむ。<A HREF="#k12">ここにも</A><A NAME="t12">、</A>もししろしめすことやはべりつらむ、とてなむ。いと憚り多くはべれど、この<A HREF="#k13">よし</A><A NAME="t13">、</A>申したまへ」<BR>⏎
d1173<P>⏎
ci1:2174 「世の人の聞き伝へむ後のそしりもやすからざるべきを憚りて、まことの神の助けにもあらむを、背くものならば、またこれよりまさりて、人笑はれなる目をや見む。<A HREF="#k14">うつつざま</A><A NAME="t14">の</A>人の心だになほ苦し。はかなきことをもつつみて、我より齢まさり、もしは位高く、時世の寄せ今一際まさる人には、なびき従ひて、その心むけをたどるべきものなりけり。退きて咎なしとこそ、昔さかしき人も言ひ置きけれ。<A HREF="#k15">げに</A><A NAME="t15">、</A>かく命を極め、世にまたなき<A HREF="#k16">目の</A><A NAME="t16">限</A>りを見尽くしつ。さらに後のあとの名をはぶくとても、たけきこともあらじ。夢の中にも父帝の御教へありつれば、また<A HREF="#k17">何ごとか</A><A NAME="t17">疑</A>はむ」<BR>⏎
128-129 「世の人の聞き伝へむ後のそしりもやすからざるべきを憚りて、まことの神の助けにもあらむを、背くものならば、またこれよりまさりて、人笑はれなる目をや見む。<A HREF="#k14">うつつざま</A><A NAME="t14">の</A>人の心だになほ苦し。はかなきことをもつつみて、我より齢まさり、もしは位高く、時世の寄せ今一際まさる人には、なびき従ひて、その心むけをたどるべきものなりけり。退きて咎なしとこそ、昔さかしき人も言ひ置きけれ。<BR>⏎
<
A HREF="#k15">げに</A><A NAME="t15">、</A>かく命を極め、世にまたなき<A HREF="#k16">目の</A><A NAME="t16">限</A>りを見尽くしつ。さらに後のあとの名をはぶくとても、たけきこともあらじ。夢の中にも父帝の御教へありつれば、また<A HREF="#k17">何ごとか</A><A NAME="t17">疑</A>はむ」<BR>⏎
d1176<P>⏎
cd3:2179-181 「ともあれかくもあれ、夜の明け果てぬ先に御舟にたてまつれ」<BR>⏎
 とて例の親しき限り、四五人ばかりして、たてまつりぬ。<BR>⏎
<P>⏎
133-134 「ともあれかくもあれ、夜の明け果てぬ先に御舟にたてまつれ」<BR>⏎
 とて例の親しき限り、四五人ばかりして、たてまつりぬ。<BR>⏎
d1183<P>⏎
text13184 <H4>第二章 明石の君の物語 明石での新生活の物語</H4>136 
text13185 <A NAME="in21">[第一段 明石入道の浜の館]</A><BR>137 
d1186<P>⏎
d1189<P>⏎
d1191<P>⏎
d1193<P>⏎
text13194 <A NAME="in22">[第二段 京への手紙]</A><BR>142 
d1195<P>⏎
d1199<P>⏎
d1201<P>⏎
cd2:1203-204  遥かにも思ひやるかな知らざりし<BR>⏎
  浦よりをちに浦伝ひして<BR>⏎
148  遥かにも思ひやるかな知らざりし<BR>  浦よりをちに浦伝ひして<BR>⏎
d1206<P>⏎
c1207 とげに、そこはかとなく書き乱りたまへるしもぞ、いと見まほしき側目なるを、「いとこよなき御心ざしのほど」と、人びと見たてまつる。<BR>⏎
150 とげに、そこはかとなく書き乱りたまへるしもぞ、いと見まほしき側目なるを、「いとこよなき御心ざしのほど」と、人びと見たてまつる。<BR>⏎
d1210<P>⏎
text13211 <A NAME="in23">[第三段 明石の入道とその娘]</A><BR>153 
d1212<P>⏎
c4213-216 明石の入道、行なひ勤めたるさま、いみじう思ひ澄ましたるを、ただこの娘一人をもてわづらひたるけしき、いとかたはらいたきまで、時々漏らし愁へきこゆ。御心地にも、をかしと聞きおきたまひし人なれば、「かくおぼえなくてめぐりおはしたるも、さるべき契りあるにや」と思しながら、「なほかう身を沈めたるほどは、行なひより他のことは思はじ。都の人も、ただなるよりは、言ひしに違ふと思さむも、心恥づかしう」思さるれば、けしきだちたまふことなし。ことに触れて、「心ばせ、ありさま、なべてならずもありけるかな」と、ゆかしう<A HREF="#k23">思されぬに</A><A NAME="t23">し</A>もあらず。<BR>⏎
<P>⏎
 ここにはかしこまりて、みづからもをさをさ参らず、もの隔たりたる下の屋にさぶらふ。さるは明け暮れ見たてまつらまほしう、飽かず思ひきこえて、「思ふ心を叶へむ」と、仏、神をいよいよ念じたてまつる。<BR>⏎
<P>⏎
154-157 明石の入道、行なひ勤めたるさま、いみじう思ひ澄ましたるを、ただこの娘一人をもてわづらひたるけしき、いとかたはらいたきまで、時々漏らし愁へきこゆ。<BR>⏎
御心地にも、をかしと聞きおきたまひし人なれば、「かくおぼえなくてめぐりおはしたるも、さるべき契りあるにや」と思しながら、「なほかう身を沈めたるほどは、行なひより他のことは思はじ。都の人も、ただなるよりは、言ひしに違ふと思さむも、心恥づかしう」思さるれば、けしきだちたまふことなし。<BR>⏎
ことに触れて、「心ばせ、ありさま、なべてならずもありけるかな」と、ゆかしう<A HREF="#k23">思されぬに</A><A NAME="t23">し</A>もあらず。<BR>⏎
 ここにはかしこまりて、みづからもをさをさ参らず、もの隔たりたる下の屋にさぶらふ。さるは明け暮れ見たてまつらまほしう、飽かず思ひきこえて、「思ふ心を叶へむ」と、仏、神をいよいよ念じたてまつる。<BR>⏎
d1219<P>⏎
d1221<P>⏎
d1223<P>⏎
text13224 <A NAME="in24">[第四段 夏四月となる]</A><BR>162 
d1225<P>⏎
d1227<P>⏎
cd5:2229-233 「<A HREF="#no3">あはと遥かに</A><A NAME="te3">」</A><A HREF="#k26">など</A><A NAME="t26">の</A>たまひて、<BR>⏎
<P>⏎
 「あはと見る淡路の島のあはれさへ<BR>⏎
  残るくまなく澄める夜の月」<BR>⏎
<P>⏎
165-166 「<A HREF="#no3">あはと遥かに</A><A NAME="te3">」</A><A HREF="#k26">など</A><A NAME="t26">の</A>たまひて、<BR>⏎
 「あはと見る淡路の島のあはれさへ<BR>  残るくまなく澄める夜の月」<BR>⏎
d1236<P>⏎
text13237 <A NAME="in25">[第五段 源氏、入道と琴を合奏]</A><BR>169 
d1238<P>⏎
c1240 「さらに背きにし世の中も取り返し思ひ出でぬべくはべり。後の世に願ひはべる所のありさまも、<A HREF="#k28">思うたまへ</A><A NAME="t28">や</A>らるる夜の、さまかな」<BR>⏎
171 「さらに背きにし世の中も取り返し思ひ出でぬべくはべり。後の世に願ひはべる所のありさまも、<A HREF="#k28">思うたまへ</A><A NAME="t28">や</A>らるる夜の、さまかな」<BR>⏎
d1242<P>⏎
d1244<P>⏎
d1246<P>⏎
cd2:1247-248 箏の御琴参りたれば、少し弾きたまふも、さまざまいみじうのみ思ひきこえたり。いとさしも聞こえぬ物の音<A HREF="#k32">だに</A><A NAME="t32">、</A>折からこそはまさるものなるを、はるばると物のとどこほりなき海づらなるに、なかなか、春秋の花紅葉の盛りなるよりは、ただそこはかとなう茂れる蔭ども、なまめかしきに、水鶏のうちたたきたるは、「<A HREF="#no4">誰が門さして</A><A NAME="te4">」</A>と、あはれにおぼゆ。<BR>⏎
<P>⏎
175 箏の御琴参りたれば、少し弾きたまふも、さまざまいみじうのみ思ひきこえたり。いとさしも聞こえぬ物の音<A HREF="#k32">だに</A><A NAME="t32">、</A>折からこそはまさるものなるを、はるばると物のとどこほりなき海づらなるに、なかなか、春秋の花紅葉の盛りなるよりは、ただそこはかとなう茂れる蔭ども、なまめかしきに、水鶏のうちたたきたるは、「<A HREF="#no4">誰が門さして</A><A NAME="te4">」</A>と、あはれにおぼゆ。<BR>⏎
c3250-252 「これは女のなつかしきさまにてしどけなう弾きたるこそ、をかしけれ」<BR>⏎
 とおほかたにのたまふを、入道はあいなくうち笑みて、<BR>⏎
 「あそばすよりなつかしきさまなるは、いづこのかはべらむ。なにがし、延喜の御手より弾き伝へたること、四代になむなりはべりぬるを、かうつたなき身にて、この世のことは捨て忘れはべりぬるを、もののせちにいぶせき折々は、かき鳴らしはべりしを、あやしう、まねぶ者のはべるこそ、自然にかの先大王の御手に通ひてはべれ。<A HREF="#no5">山伏のひが耳に</A><A NAME="te5">、</A>松風を聞きわたしはべるにやあらむ。いかで<A HREF="#k33">これも</A><A NAME="t33">忍</A>びて聞こしめさせてしがな」<BR>⏎
177-179 「これは女のなつかしきさまにてしどけなう弾きたるこそ、をかしけれ」<BR>⏎
 とおほかたにのたまふを、入道はあいなくうち笑みて、<BR>⏎
 「あそばすよりなつかしきさまなるは、いづこのかはべらむ。なにがし、延喜の御手より弾き伝へたること、四代になむなりはべりぬるを、かうつたなき身にて、この世のことは捨て忘れはべりぬるを、もののせちにいぶせき折々は、かき鳴らしはべりしを、あやしう、まねぶ者のはべるこそ、自然にかの先大王の御手に通ひてはべれ。<A HREF="#no5">山伏のひが耳に</A><A NAME="te5">、</A>松風を聞きわたしはべるにやあらむ。いかで<A HREF="#k33">これも</A><A NAME="t33">忍</A>びて聞こしめさせてしがな」<BR>⏎
d1254<P>⏎
c2257-258 とて押しやりたまふに、<BR>⏎
 「あやしう、昔より<A HREF="#k34">箏</A><A NAME="t34">は</A>、女なむ弾き取るものなりける。嵯峨の御伝へにて、女五の宮、さる世の中の上手にものしたまひけるを、その御筋にて、取り立てて伝ふる人なし。すべてただ今世に名を取れる人びと、掻き撫での心やりばかりにのみあるを、ここにかう弾きこめたまへりける、いと興ありけることかな。いかでかは、聞くべき」<BR>⏎
183-184 とて押しやりたまふに、<BR>⏎
 「あやしう、昔より<A HREF="#k34">箏</A><A NAME="t34">は</A>、女なむ弾き取るものなりける。嵯峨の御伝へにて、女五の宮、さる世の中の上手にものしたまひけるを、その御筋にて、取り立てて伝ふる人なし。すべてただ今世に名を取れる人びと、掻き撫での心やりばかりにのみあるを、ここにかう弾きこめたまへりける、いと興ありけることかな。いかでかは、聞くべき」<BR>⏎
d1260<P>⏎
d1263<P>⏎
cd2:1264-265 げにいとすぐしてかい弾きたり。今の世に聞こえぬ筋弾きつけて、手づかひいといたう唐めき、ゆの音深う澄ましたり。「伊勢の海」ならねど、「<A HREF="#no6">清き渚に貝や拾はむ</A><A NAME="te6">」</A>など、声よき人に歌はせて、我も時々拍子とりて、声うち添へたまふを、琴弾きさしつつ、めできこゆ。御くだものなど、めづらしきさまにて参らせ、人びとに酒強ひそしなどして、おのづからもの忘れしぬべき夜のさまなり。<BR>⏎
<P>⏎
188 げにいとすぐしてかい弾きたり。今の世に聞こえぬ筋弾きつけて、手づかひいといたう唐めき、ゆの音深う澄ましたり。「伊勢の海」ならねど、「<A HREF="#no6">清き渚に貝や拾はむ</A><A NAME="te6">」</A>など、声よき人に歌はせて、我も時々拍子とりて、声うち添へたまふを、琴弾きさしつつ、めできこゆ。御くだものなど、めづらしきさまにて参らせ、人びとに酒強ひそしなどして、おのづからもの忘れしぬべき夜のさまなり。<BR>⏎
text13266 <A NAME="in26">[第六段 入道の問わず語り]</A><BR>189 
d1267<P>⏎
d1269<P>⏎
cd2:1270-271 「いと取り申しがたきことなれど、わが君、かうおぼえなき世界に、仮にても、移ろひおはしましたるは、もし年ごろ老法師の祈り申しはべる神仏のあはれびおはしまして、しばしのほど、御心をも悩ましたてまつるにやとなむ思うたまふる。<BR>⏎
<P>⏎
191 「いと取り申しがたきことなれど、わが君、かうおぼえなき世界に、仮にても、移ろひおはしましたるは、もし年ごろ老法師の祈り申しはべる神仏のあはれびおはしまして、しばしのほど、御心をも悩ましたてまつるにやとなむ思うたまふる。<BR>⏎
d1273<P>⏎
cd3:2274-276 前の世の契りつたなくてこそ、かく口惜しき山賤となりはべりけめ、親、大臣の位を保ちたまへりき。みづからかく田舎の民となりにてはべり。次々、さのみ劣り<A HREF="#k35">まからば</A><A NAME="t35">、</A>何の身にかなりはべらむと、悲しく思ひはべるを、これは生れし時より頼むところなむはべる。いかにして都の貴き人にたてまつらむと思ふ心、深きにより、ほどほどにつけて、あまたの人の嫉みを負ひ、身のためからき目を見る折々も多くはべれど、さらに苦しみと思ひはべらず。命の限りは狭き衣にもはぐくみはべりなむ。かくながら見捨てはべりなば、波のなかにも交り失せね、となむ掟てはべる」<BR>⏎
<P>⏎
 などすべてまねぶべくもあらぬことどもを、うち泣きうち泣き聞こゆ。<BR>⏎
193-194 前の世の契りつたなくてこそ、かく口惜しき山賤となりはべりけめ、親、大臣の位を保ちたまへりき。みづからかく田舎の民となりにてはべり。次々、さのみ劣り<A HREF="#k35">まからば</A><A NAME="t35">、</A>何の身にかなりはべらむと、悲しく思ひはべるを、これは生れし時より頼むところなむはべる。いかにして都の貴き人にたてまつらむと思ふ心、深きにより、ほどほどにつけて、あまたの人の嫉みを負ひ、身のためからき目を見る折々も多くはべれど、さらに苦しみと思ひはべらず。命の限りは狭き衣にもはぐくみはべりなむ。かくながら見捨てはべりなば、波のなかにも交り失せね、となむ掟てはべる」<BR>⏎
 などすべてまねぶべくもあらぬことどもを、うち泣きうち泣き聞こゆ。<BR>⏎
d1278<P>⏎
c1279 「横さまの罪に当たりて、思ひかけぬ世界にただよふも、何の罪にかとおぼつかなく思ひつる、今宵の御物語に聞き合はすれば、げに浅からぬ前の世の契りにこそはと、あはれになむ。などかはかくさだかに思ひ知りたまひけることを、今までは告げたまはざりつらむ。都離れし時より、世の常なきもあぢきなう、行なひより他のことなくて月日を経るに、心も皆くづほれにけり。かかる人ものしたまふとは、ほの聞きながら、いたづら人をばゆゆしきものにこそ思ひ捨てたまふらめと、思ひ屈しつるを、さらば導きたまふべきにこそあなれ。心細き一人寝の慰めにも」<BR>⏎
196 「横さまの罪に当たりて、思ひかけぬ世界にただよふも、何の罪にかとおぼつかなく思ひつる、今宵の御物語に聞き合はすれば、げに浅からぬ前の世の契りにこそはと、あはれになむ。などかはかくさだかに思ひ知りたまひけることを、今までは告げたまはざりつらむ。都離れし時より、世の常なきもあぢきなう、行なひより他のことなくて月日を経るに、心も皆くづほれにけり。かかる人ものしたまふとは、ほの聞きながら、いたづら人をばゆゆしきものにこそ思ひ捨てたまふらめと、思ひ屈しつるを、さらば導きたまふべきにこそあなれ。心細き一人寝の慰めにも」<BR>⏎
d1281<P>⏎
cd2:1282-283 「一人寝は君も知りぬやつれづれと<BR>⏎
  思ひ明かしの浦さびしさを<BR>⏎
198 「一人寝は君も知りぬやつれづれと<BR>  思ひ明かしの浦さびしさを<BR>⏎
d1286<P>⏎
cd6:3287-292 「されど浦なれたまへらむ人は」とて、<BR>⏎
 「旅衣うら悲しさに明かしかね<BR>⏎
  草の枕は夢も結ばず」<BR>⏎
<P>⏎
 とうち乱れたまへる御さまは、いとぞ愛敬づき、言ふよしなき御けはひなる。数知らぬことども聞こえ尽くしたれど、うるさしや。ひがことどもに書きなしたれば、いとどをこにかたくなしき入道の心ばへも、あらはれぬべかめり。<BR>⏎
<P>⏎
201-203 「されど浦なれたまへらむ人は」とて、<BR>⏎
 「旅衣うら悲しさに明かしかね<BR>  草の枕は夢も結ばず」<BR>⏎
 とうち乱れたまへる御さまは、いとぞ愛敬づき、言ふよしなき御けはひなる。数知らぬことども聞こえ尽くしたれど、うるさしや。ひがことどもに書きなしたれば、いとどをこにかたくなしき入道の心ばへも、あらはれぬべかめり。<BR>⏎
text13293 <A NAME="in27">[第七段 明石の娘へ懸想文]</A><BR>204 
d1294<P>⏎
d1296<P>⏎
cd2:1297-298 「をちこちも知らぬ雲居に眺めわび<BR>⏎
  かすめし宿の梢をぞ訪ふ<BR>⏎
206 「をちこちも知らぬ雲居に眺めわび<BR>  かすめし宿の梢をぞ訪ふ<BR>⏎
d1300<P>⏎
d1305<P>⏎
cd3:2306-308 「いとかしこきは、田舎びてはべる<A HREF="#no8">袂に、つつみあまりぬる</A><A NAME="te8">に</A>や。さらに見たまへも、及びはべらぬかしこさになむ。さるは<BR>⏎
  眺むらむ同じ雲居を眺むるは<BR>⏎
  思ひも同じ思ひなるらむ<BR>⏎
212-213 「いとかしこきは、田舎びてはべる<A HREF="#no8">袂に、つつみあまりぬる</A><A NAME="te8">に</A>や。さらに見たまへも、及びはべらぬかしこさになむ。さるは<BR>⏎
  眺むらむ同じ雲居を眺むるは<BR>  思ひも同じ思ひなるらむ<BR>⏎
d1310<P>⏎
cd2:1311-312 と聞こえたり。陸奥紙に、いたう古めきたれど、書きざまよしばみたり。「げにも好きたるかな」と、めざましう見たまふ。御使に、なべてならぬ玉裳などかづけたり。<BR>⏎
<P>⏎
215 と聞こえたり。陸奥紙に、いたう古めきたれど、書きざまよしばみたり。「げにも好きたるかな」と、めざましう見たまふ。御使に、なべてならぬ玉裳などかづけたり。<BR>⏎
d1315<P>⏎
cd2:1316-317 「いぶせくも心にものを悩むかな<BR>⏎
  やよやいかにと問ふ人もなみ<BR>⏎
218 「いぶせくも心にものを悩むかな<BR>  やよやいかにと問ふ人もなみ<BR>⏎
d1319<P>⏎
cd5:2320-324 とこのたびは、いといたうなよびたる薄様に、いとうつくしげに書きたまへり。若き人のめでざらむも、いとあまり埋れいたからむ。めでたしとは見れど、なずらひならぬ身のほどの、いみじうかひなければ、なかなか、世にあるものと、尋ね知りたまふにつけて、涙ぐまれて、さらに例の動なきを、せめて言はれて、浅からず染めたる紫の紙に、墨つき濃く薄く紛らはして、<BR>⏎
<P>⏎
 「思ふらむ<A HREF="#k38">心の</A><A NAME="t38">ほ</A>どややよいかに<BR>⏎
  まだ見ぬ人の聞きか悩まむ」<BR>⏎
<P>⏎
220-221 とこのたびは、いといたうなよびたる薄様に、いとうつくしげに書きたまへり。若き人のめでざらむも、いとあまり埋れいたからむ。めでたしとは見れど、なずらひならぬ身のほどの、いみじうかひなければ、なかなか、世にあるものと、尋ね知りたまふにつけて、涙ぐまれて、さらに例の動なきを、せめて言はれて、浅からず染めたる紫の紙に、墨つき濃く薄く紛らはして、<BR>⏎
 「思ふらむ<A HREF="#k38">心の</A><A NAME="t38">ほ</A>どややよいかに<BR>  まだ見ぬ人の聞きか悩まむ」<BR>⏎
c1326 京のことおぼえて、をかしと見たまへど、うちしきりて遣はさむも、人目つつましければ、二三日隔てつつ、つれづれなる夕暮れ、もしはものあはれなる曙などやうに紛らはして、折々、同じ心に見知りぬべきほど推し量りて、書き交はしたまふに、似げなからず。<BR>⏎
223 京のことおぼえて、をかしと見たまへど、うちしきりて遣はさむも、人目つつましければ、二三日隔てつつ、つれづれなる夕暮れ、もしはものあはれなる曙などやうに紛らはして、折々、同じ心に見知りぬべきほど推し量りて、書き交はしたまふに、似げなからず。<BR>⏎
d1328<P>⏎
d1330<P>⏎
text13331 <A NAME="in28">[第八段 都の天変地異]</A><BR>226 
d1332<P>⏎
d1337<P>⏎
d1339<P>⏎
d1341<P>⏎
c1342 「なほこの源氏の君、まことに犯しなきにてかく沈むならば、かならずこの報いありなむとなむおぼえはべる。今は、なほもとの位をも賜ひてむ」<BR>⏎
233 「なほこの源氏の君、まことに犯しなきにてかく沈むならば、かならずこの報いありなむとなむおぼえはべる。今は、なほもとの位をも賜ひてむ」<BR>⏎
d1344<P>⏎
cd2:1346-347 など后かたく諌めたまふに、思し憚るほどに月日かさなりて、御悩みども、さまざまに重りまさらせたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
236 など后かたく諌めたまふに、思し憚るほどに月日かさなりて、御悩みども、さまざまに重りまさらせたまふ。<BR>⏎
text13348 <H4>第三章 明石の君の物語 結婚の喜びと嘆きの物語</H4>237 
text13349 <A NAME="in31">[第一段 明石の侘び住まい]</A><BR>238 
d1350<P>⏎
d1354<P>⏎
ci1:2355 「いと口惜しき際の田舎人こそ、仮に下りたる人のうちとけ言につきて、さやうに軽らかに語らふ<A HREF="#k40">わざ</A><A NAME="t40">を</A>もすなれ、人数にも思されざらむものゆゑ、我はいみじきもの思ひをや添へむ。かく及びなき心を思へる親たちも、世籠もりて過ぐす年月こそ、あいな頼みに、行く末心にくく思ふらめ、なかなかなる心をや尽くさむ」と思ひて、「ただこの浦におはせむほど、かかる御文ばかりを聞こえかはさむこそ、おろかならね。年ごろ音にのみ聞きて、いつかはさる人の御ありさまをほのかにも見たてまつらむなど、思ひかけざりし御住まひにて、まほならねどほのかにも見たてまつり、世になきものと聞き伝へし御琴の音をも風につけて聞き、明け暮れの御ありさまおぼつかなからで、かくまで世にあるものと思し尋ぬるなどこそ、かかる海人のなかに朽ちぬる身にあまることなれ」<BR>⏎
242-243 「いと口惜しき際の田舎人こそ、仮に下りたる人のうちとけ言につきて、さやうに軽らかに語らふ<A HREF="#k40">わざ</A><A NAME="t40">を</A>もすなれ、人数にも思されざらむものゆゑ、我はいみじきもの思ひをや添へむ。<BR>⏎
かく及びなき心を思へる親たちも、世籠もりて過ぐす年月こそ、あいな頼みに、行く末心にくく思ふらめ、なかなかなる心をや尽くさむ」と思ひて、「ただこの浦におはせむほど、かかる御文ばかりを聞こえかはさむこそ、おろかならね。年ごろ音にのみ聞きて、いつかはさる人の御ありさまをほのかにも見たてまつらむなど、思ひかけざりし御住まひにて、まほならねどほのかにも見たてまつり、世になきものと聞き伝へし御琴の音をも風につけて聞き、明け暮れの御ありさまおぼつかなからで、かくまで世にあるものと思し尋ぬるなどこそ、かかる海人のなかに朽ちぬる身にあまることなれ」<BR>⏎
d1357<P>⏎
c1362 などうち返し思ひ乱れたり。君は、<BR>⏎
249 などうち返し思ひ乱れたり。君は、<BR>⏎
cd2:1364-365 など常はのたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
251 など常はのたまふ。<BR>⏎
text13366 <A NAME="in32">[第二段 明石の君を初めて訪ねる]</A><BR>252 
d1367<P>⏎
d1369<P>⏎
d1371<P>⏎
cd7:4372-378 「秋の夜の<A HREF="#no12">月毛の駒</A><A NAME="te12">よ</A>我が恋ふる<BR>⏎
  雲居を翔れ時の間も見む」<BR>⏎
<P>⏎
 とうちひとりごたれたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
 造れるさま、木深く、いたき所まさりて、見どころある住まひなり。海のつらはいかめしうおもしろく、これは心細く住みたるさま、「ここにゐて、思ひ残すことはあらじ」と、思しやらるるに、ものあはれなり。三昧堂近くて、鐘の声、松風に響きあひて、もの悲しう、岩に生ひたる松の根ざしも、心ばへあるさまなり。<A HREF="#k41">前栽どもに虫の声を尽くしたり</A><A NAME="t41">。</A>ここかしこのありさまなど御覧ず。娘住ませたる方は、心ことに磨きて、月入れたる真木の戸口、けしき<A HREF="#k42">ばかり</A><A NAME="t42">押</A>し開けたり。<BR>⏎
<P>⏎
255-258 「秋の夜の<A HREF="#no12">月毛の駒</A><A NAME="te12">よ</A>我が恋ふる<BR>  雲居を翔れ時の間も見む」<BR>⏎
 とうちひとりごたれたまふ。<BR>⏎
 造れるさま、木深く、いたき所まさりて、見どころある住まひなり。海のつらはいかめしうおもしろく、これは心細く住みたるさま、「ここにゐて、思ひ残すことはあらじ」と、思しやらるるに、ものあはれなり。三昧堂近くて、鐘の声、松風に響きあひて、もの悲しう、岩に生ひたる松の根ざしも、心ばへあるさまなり。<A HREF="#k41">前栽どもに虫の声を尽くしたり</A><A NAME="t41">。</A>ここかしこのありさまなど御覧ず。<BR>⏎
娘住ませたる方は、心ことに磨きて、月入れたる真木の戸口、けしき<A HREF="#k42">ばかり</A><A NAME="t42">押</A>し開けたり。<BR>⏎
d1380<P>⏎
cd11:5382-392 「この聞きならしたる琴をさへや」<BR>⏎
 などよろづにのたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
 「むつごとを語りあはせむ人もがな<BR>⏎
  憂き世の夢もなかば覚むやと」<BR>⏎
<P>⏎
 「明けぬ夜にやがて惑へる心には<BR>⏎
  いづれを夢とわきて語らむ」<BR>⏎
<P>⏎
 ほのかなるけはひ、伊勢の御息所にいとようおぼえたり。何心もなくうちとけてゐたりけるを、かうものおぼえぬに、いとわりなくて、近かりける曹司の内に入りて、いかで固めけるにか、いと強きを、しひてもおし立ちたまはぬさまなり。されどさのみもいかでかあらむ。<BR>⏎
<P>⏎
261-265 「この聞きならしたる琴をさへや」<BR>⏎
 などよろづにのたまふ。<BR>⏎
 「むつごとを語りあはせむ人もがな<BR>  憂き世の夢もなかば覚むやと」<BR>⏎
 「明けぬ夜にやがて惑へる心には<BR>  いづれを夢とわきて語らむ」<BR>⏎
 ほのかなるけはひ、伊勢の御息所にいとようおぼえたり。何心もなくうちとけてゐたりけるを、かうものおぼえぬに、いとわりなくて、近かりける曹司の内に入りて、いかで固めけるにか、いと強きを、しひてもおし立ちたまはぬさまなり。されどさのみもいかでかあらむ。<BR>⏎
d1394<P>⏎
d1396<P>⏎
cd2:1397-398 かくて後は、忍びつつ時々おはす。「ほどもすこし離れたるに、おのづからもの言ひさがなき海人の子もや立ちまじらむ」と思し憚るほどを、「さればよ」と思ひ嘆きたるを、「げにいかならむ」と、入道も極楽の願ひをば忘れて、ただこの御けしきを待つことにはす。今さらに心を乱るも、いといとほしげなり。<BR>⏎
<P>⏎
268 かくて後は、忍びつつ時々おはす。「ほどもすこし離れたるに、おのづからもの言ひさがなき海人の子もや立ちまじらむ」と思し憚るほどを、「さればよ」と思ひ嘆きたるを、「げにいかならむ」と、入道も極楽の願ひをば忘れて、ただこの御けしきを待つことにはす。今さらに心を乱るも、いといとほしげなり。<BR>⏎
text13399 <A NAME="in33">[第三段 紫の君に手紙]</A><BR>269 
d1400<P>⏎
cd3:2401-403 二条の君の、風のつてにも漏り聞きたまはむことは、「たはぶれにても、心の隔てありけると、思ひ疎まれたてまつらむ、心苦しう恥づかしう」思さるるも、あながちなる御心ざしのほどなりかし。「かかる方の<A HREF="#k44">ことをば</A><A NAME="t44">、</A>さすがに、心とどめて怨みたまへりし折々、などてあやなきすさびごとにつけても、<A HREF="#k45">さ</A><A NAME="t45">思</A>はれたてまつりけむ」など、取り返さまほしう、人のありさまを見たまふにつけても、恋しさの慰む方<A HREF="#k46">なければ</A><A NAME="t46">、</A>例よりも御文こまやかに書きたまひて、<BR>⏎
<P> 「まことや、我ながら心より外なるなほざりごとにて、疎まれたてまつりし節々を、思ひ出づるさへ胸いたきに、またあやしうものはかなき夢をこそ見はべりしか。かう聞こゆる問はず語りに、隔てなき心のほどは思し合はせよ。『<A HREF="#no13">誓ひしことも</A><A NAME="te13">』</A>」など書きて、<BR>⏎
<P>⏎
270-271 二条の君の、風のつてにも漏り聞きたまはむことは、「たはぶれにても、心の隔てありけると、思ひ疎まれたてまつらむ、心苦しう恥づかしう」思さるるも、あながちなる御心ざしのほどなりかし。「かかる方の<A HREF="#k44">ことをば</A><A NAME="t44">、</A>さすがに、心とどめて怨みたまへりし折々、などてあやなきすさびごとにつけても、<A HREF="#k45">さ</A><A NAME="t45">思</A>はれたてまつりけむ」など、取り返さまほしう、人のありさまを見たまふにつけても、恋しさの慰む方<A HREF="#k46">なければ</A><A NAME="t46">、</A>例よりも御文こまやかに書きたまひて、<BR>⏎
 「まことや、我ながら心より外なるなほざりごとにて、疎まれたてまつりし節々を、思ひ出づるさへ胸いたきに、またあやしうものはかなき夢をこそ見はべりしか。かう聞こゆる問はず語りに、隔てなき心のほどは思し合はせよ。『<A HREF="#no13">誓ひしことも</A><A NAME="te13">』</A>」など書きて、<BR>⏎
cd3:1405-407  しほしほとまづぞ泣かるるかりそめの<BR>⏎
  みるめは海人のすさびなれども」<BR>⏎
<P>⏎
273  しほしほとまづぞ泣かるるかりそめの<BR>  みるめは海人のすさびなれども」<BR>⏎
d1409<P>⏎
cd3:1411-413  うらなくも思ひけるかな契りしを<BR>⏎
  <A HREF="#no14">松より波は越えじ</A><A NAME="te14">も</A>のぞと」<BR>⏎
<P>⏎
276  うらなくも思ひけるかな契りしを<BR>  <A HREF="#no14">松より波は越えじ</A><A NAME="te14">も</A>のぞと」<BR>⏎
d1415<P>⏎
text13416 <A NAME="in34">[第四段 明石の君の嘆き]</A><BR>278 
d1417<P>⏎
cd2:1420-421 とかねて推し量り思ひしよりも、よろづに悲しけれど、なだらかにもてなして、憎からぬさまに見えたてまつる。<BR>⏎
<P>⏎
281 とかねて推し量り思ひしよりも、よろづに悲しけれど、なだらかにもてなして、憎からぬさまに見えたてまつる。<BR>⏎
d1423<P>⏎
cd2:1424-425 絵をさまざま描き集めて、思ふことどもを書きつけ、返りこと聞くべきさまにしなしたまへり。見む人の心に染みぬべきもののさま<A HREF="#k48">なり</A><A NAME="t48">。</A>いかでか空に通ふ御心ならむ、二条の君も、ものあはれに慰む方なくおぼえたまふ折々、同じやうに絵を描き集めたまひつつ、やがて我が御ありさま、日記のやうに書きたまへり。いかなるべき御さまどもにかあらむ。<BR>⏎
<P>⏎
283 絵をさまざま描き集めて、思ふことどもを書きつけ、返りこと聞くべきさまにしなしたまへり。見む人の心に染みぬべきもののさま<A HREF="#k48">なり</A><A NAME="t48">。</A>いかでか空に通ふ御心ならむ、二条の君も、ものあはれに慰む方なくおぼえたまふ折々、同じやうに絵を描き集めたまひつつ、やがて我が御ありさま、日記のやうに書きたまへり。いかなるべき御さまどもにかあらむ。<BR>⏎
text13426 <H4>第四章 明石の君の物語 明石の浦の別れの秋の物語</H4>284 
text13427 <A NAME="in41">[第一段 七月二十日過ぎ、帰京の宣旨下る]</A><BR>285 
d1428<P>⏎
d1430<P>⏎
d1432<P>⏎
cd2:1433-434 つひのことと思ひしかど、世の常なきにつけても、「いかになり果つべき<A HREF="#k49">にか</A><A NAME="t49">」</A>と嘆きたまふを、かうにはかなれば、うれしきに添へても、またこの浦を今はと思ひ離れむことを思し嘆くに、入道、さるべきことと思ひながら、うち聞くより胸ふたがりておぼゆれど、「思ひのごと栄えたまはばこそは、我が思ひの叶ふにはあらめ」など、思ひ直す。<BR>⏎
<P>⏎
288 つひのことと思ひしかど、世の常なきにつけても、「いかになり果つべき<A HREF="#k49">にか</A><A NAME="t49">」</A>と嘆きたまふを、かうにはかなれば、うれしきに添へても、またこの浦を今はと思ひ離れむことを思し嘆くに、入道、さるべきことと思ひながら、うち聞くより胸ふたがりておぼゆれど、「思ひのごと栄えたまはばこそは、我が思ひの叶ふにはあらめ」など、思ひ直す。<BR>⏎
text13435 <A NAME="in42">[第二段 明石の君の懐妊]</A><BR>289 
d1436<P>⏎
d1438<P>⏎
d1441<P>⏎
c1443 ほどさへあはれなる空のけしきに、「なぞや心づから今も昔も、すずろなることにて身をはふらかすらむ」と、さまざまに思し乱れたるを、心知れる人びとは、<BR>⏎
294 ほどさへあはれなる空のけしきに、「なぞや心づから今も昔も、すずろなることにて身をはふらかすらむ」と、さまざまに思し乱れたるを、心知れる人びとは、<BR>⏎
c1445 と見たてまつりむつかるめり。<BR>⏎
296 と見たてまつりむつかるめり。<BR>⏎
cd2:1448-449 とつきしろふ。少納言、しるべして聞こえ出でし初めのこと<A HREF="#k52">など</A><A NAME="t52">、</A>ささめきあへるを、ただならず思へり。<BR>⏎
<P>⏎
299 とつきしろふ。少納言、しるべして聞こえ出でし初めのこと<A HREF="#k52">など</A><A NAME="t52">、</A>ささめきあへるを、ただならず思へり。<BR>⏎
text13450 <A NAME="in43">[第三段 離別間近の日]</A><BR>300 
d1451<P>⏎
d1453<P>⏎
d1455<P>⏎
cd3:1456-458 「このたびは立ち別るとも藻塩焼く<BR>⏎
  煙は同じ方になびかむ」<BR>⏎
<P>⏎
303 「このたびは立ち別るとも藻塩焼く<BR>  煙は同じ方になびかむ」<BR>⏎
d1460<P>⏎
cd5:3461-465 「かきつめて海人のたく藻の思ひにも<BR>⏎
  今はかひなき恨みだにせじ」<BR>⏎
<P>⏎
 あはれにうち泣きて、言少ななるものから、さるべき節の御応へなど浅からず聞こゆ。この常にゆかしがりたまふ物の音など、さらに聞かせたてまつらざりつるを、いみじう恨みたまふ。<BR>⏎
 「さらば形見にも偲ぶばかりの一琴をだに」<BR>⏎
305-307 「かきつめて海人のたく藻の思ひにも<BR>  今はかひなき恨みだにせじ」<BR>⏎
 あはれにうち泣きて、言少ななるものから、さるべき節の御応へなど浅からず聞こゆ。この常にゆかしがりたまふ物の音など、さらに聞かせたてまつらざりつるを、いみじう恨みたまふ。<BR>⏎
 「さらば形見にも偲ぶばかりの一琴をだに」<BR>⏎
d1467<P>⏎
cd2:1468-469 入道、え堪へで箏の琴取りてさし入れたり。みづからも、いとど涙さへそそのかされて、とどむべき方なきに、誘はるるなるべし、忍びやかに調べたるほど、いと上衆めきたり。入道の宮の御琴の音を、ただ今のまたなきものに思ひきこえたるは、「今めかしう、あなめでた」と、聞く人の心ゆきて、容貌さへ思ひやらるることは、げにいと限りなき御琴の音なり。<BR>⏎
<P>⏎
309 入道、え堪へで箏の琴取りてさし入れたり。みづからも、いとど涙さへそそのかされて、とどむべき方なきに、誘はるるなるべし、忍びやかに調べたるほど、いと上衆めきたり。入道の宮の御琴の音を、ただ今のまたなきものに思ひきこえたるは、「今めかしう、あなめでた」と、聞く人の心ゆきて、容貌さへ思ひやらるることは、げにいと限りなき御琴の音なり。<BR>⏎
d1473<P>⏎
cd3:1474-476 「なほざりに頼め置くめる一ことを<BR>⏎
  尽きせぬ音にやかけて偲ばむ」<BR>⏎
<P>⏎
313 「なほざりに頼め置くめる一ことを<BR>  尽きせぬ音にやかけて偲ばむ」<BR>⏎
d1478<P>⏎
cd3:1479-481 「逢ふまでのかたみに契る中の緒の<BR>⏎
  調べはことに変はらざらなむ<BR>⏎
<P>⏎
315 「逢ふまでのかたみに契る中の緒の<BR>  調べはことに変はらざらなむ<BR>⏎
cd2:1483-484 と頼めたまふめり。されどただ別れむほどのわりなさを思ひ<A HREF="#k53">咽せ</A><A NAME="t53">た</A>るも、いとことわりなり。<BR>⏎
<P>⏎
317 と頼めたまふめり。されどただ別れむほどのわりなさを思ひ<A HREF="#k53">咽せ</A><A NAME="t53">た</A>るも、いとことわりなり。<BR>⏎
text13485 <A NAME="in44">[第四段 離別の朝]</A><BR>318 
d1486<P>⏎
d1488<P>⏎
cd3:1489-491 「うち捨てて立つも悲しき浦波の<BR>⏎
  名残いかにと思ひやるかな」<BR>⏎
<P>⏎
320 「うち捨てて立つも悲しき浦波の<BR>  名残いかにと思ひやるかな」<BR>⏎
d1493<P>⏎
cd4:2494-497 「年経つる苫屋も荒れて憂き波の<BR>⏎
  返る方にや身をたぐへまし」<BR>⏎
<P>⏎
 とうち思ひけるままなるを見たまふに、忍びたまへど、ほろほろとこぼれぬ。心知らぬ人びとは、<BR>⏎
322-323 「年経つる苫屋も荒れて憂き波の<BR>  返る方にや身をたぐへまし」<BR>⏎
 とうち思ひけるままなるを見たまふに、忍びたまへど、ほろほろとこぼれぬ。心知らぬ人びとは、<BR>⏎
d1501<P>⏎
cd2:1502-503 うれしきにも、「げに今日を限りに、この渚を別るること」などあはれがりて、口々しほたれ言ひあへることどもあめり。されど何かはとてなむ。<BR>⏎
<P>⏎
327 うれしきにも、「げに今日を限りに、この渚を別るること」などあはれがりて、口々しほたれ言ひあへることどもあめり。されど何かはとてなむ。<BR>⏎
d1505<P>⏎
cd3:1506-508 「寄る波に立ちかさねたる旅衣<BR>⏎
  しほどけしとや人の厭はむ」<BR>⏎
<P>⏎
329 「寄る波に立ちかさねたる旅衣<BR>  しほどけしとや人の厭はむ」<BR>⏎
d1510<P>⏎
cd4:2511-514 「かたみにぞ換ふべかりける逢ふことの<BR>⏎
  日数隔てむ中の衣を」<BR>⏎
<P>⏎
 とて「心ざしあるを」とて、たてまつり替ふ。御身になれたるどもを遣はす。げに今一重偲ばれたまふべきことを添ふる形見なめり。えならぬ御衣に匂ひの移りたるを、いかが人の心にも染めざらむ。<BR>⏎
331-332 「かたみにぞ換ふべかりける逢ふことの<BR>  日数隔てむ中の衣を」<BR>⏎
 とて「心ざしあるを」とて、たてまつり替ふ。御身になれたるどもを遣はす。げに今一重偲ばれたまふべきことを添ふる形見なめり。えならぬ御衣に匂ひの移りたるを、いかが人の心にも染めざらむ。<BR>⏎
d1518<P>⏎
cd3:1519-521 「世をうみにここらしほじむ身となりて<BR>⏎
  なほこの岸をえこそ離れね<BR>⏎
<P>⏎
336 「世をうみにここらしほじむ身となりて<BR>  なほこの岸をえこそ離れね<BR>⏎
c1524 など御けしき賜はる。いみじうものをあはれと思して、所々うち赤みたまへる御まみのわたりなど、言はむかたなく見えたまふ。<BR>⏎
339 など御けしき賜はる。いみじうものをあはれと思して、所々うち赤みたまへる御まみのわたりなど、言はむかたなく見えたまふ。<BR>⏎
d1526<P>⏎
cd5:2527-531 「都出でし春の嘆きに劣らめや<BR>⏎
  年経る浦を別れぬる秋」<BR>⏎
<P>⏎
 とておし拭ひたまへるに、いとどものおぼえず、しほたれまさる。立ちゐもあさましうよろぼふ。<BR>⏎
<P>⏎
341-342 「都出でし春の嘆きに劣らめや<BR>  年経る浦を別れぬる秋」<BR>⏎
 とておし拭ひたまへるに、いとどものおぼえず、しほたれまさる。立ちゐもあさましうよろぼふ。<BR>⏎
text13532 <A NAME="in45">[第五段 残された明石の君の嘆き]</A><BR>343 
d1533<P>⏎
c1535 「何にかく心尽くしなることを思ひそめけむ。すべてひがひがしき人に従ひける心のおこたりぞ」<BR>⏎
345 「何にかく心尽くしなることを思ひそめけむ。すべてひがひがしき人に従ひける心のおこたりぞ」<BR>⏎
c2537-538 「あなかまや。思し捨つまじきこともものしたまふめれば、さりとも、思すところあらむ。思ひ慰めて、御湯などをだに参れ。あなゆゆしや」<BR>⏎
 とて片隅に寄りゐたり。乳母、母君など、ひがめる心を言ひ合はせつつ、<BR>⏎
347-348 「あなかまや。思し捨つまじきこともものしたまふめれば、さりとも、思すところあらむ。思ひ慰めて、御湯などをだに参れ。あなゆゆしや」<BR>⏎
 とて片隅に寄りゐたり。乳母、母君など、ひがめる心を言ひ合はせつつ、<BR>⏎
d1540<P>⏎
d1543<P>⏎
text13544 <H4>第五章 光る源氏の物語 帰京と政界復帰の物語</H4>352 
text13545 <A NAME="in51">[第一段 難波の御祓い]</A><BR>353 
d1546<P>⏎
d1548<P>⏎
cd2:1550-551 女君も、かひなきものに思し捨てつる命、うれしう<A HREF="#k62">思さるらむ</A><A NAME="t62">か</A>し。いとうつくしげにねびととのほりて、御もの思ひのほどに、所狭かりし御髪のすこし<A HREF="#k63">へがれ</A><A NAME="t63">た</A>るしも、いみじうめでたきを、「今はかくて見るべきぞかし」と、御心落ちゐるにつけては、またかの飽かず別れし人の思へりしさま、心苦しう思しやらる。なほ世とともに、かかる方にて御心の暇ぞなきや。<BR>⏎
<P>⏎
356 女君も、かひなきものに思し捨てつる命、うれしう<A HREF="#k62">思さるらむ</A><A NAME="t62">か</A>し。いとうつくしげにねびととのほりて、御もの思ひのほどに、所狭かりし御髪のすこし<A HREF="#k63">へがれ</A><A NAME="t63">た</A>るしも、いみじうめでたきを、「今はかくて見るべきぞかし」と、御心落ちゐるにつけては、またかの飽かず別れし人の思へりしさま、心苦しう思しやらる。なほ世とともに、かかる方にて御心の暇ぞなきや。<BR>⏎
d1553<P>⏎
d1555<P>⏎
text13556 <A NAME="in52">[第二段 源氏、参内]</A><BR>359 
d1557<P>⏎
cd2:1558-559 召しありて、内裏に参りたまふ。御前にさぶらひたまふに、ねびまさりて、「いかでさるものむつかしき住まひに年経たまひつらむ」と見たてまつる。女房などの、院の御時さぶらひて、老いしらへるどもは、悲しくて、今さらに泣き騒ぎめできこゆ。<BR>⏎
<P>⏎
360 召しありて、内裏に参りたまふ。御前にさぶらひたまふに、ねびまさりて、「いかでさるものむつかしき住まひに年経たまひつらむ」と見たてまつる。女房などの、院の御時さぶらひて、老いしらへるどもは、悲しくて、今さらに泣き騒ぎめできこゆ。<BR>⏎
d1561<P>⏎
d1565<P>⏎
cd3:1566-568 「わたつ海にしなえうらぶれ<A HREF="#no18">蛭の児</A><A NAME="te18">の</A><BR>⏎
  脚立たざりし年は経にけり」<BR>⏎
<P>⏎
365 「わたつ海にしなえうらぶれ<A HREF="#no18">蛭の児</A><A NAME="te18">の</A><BR>  脚立たざりし年は経にけり」<BR>⏎
d1570<P>⏎
cd3:1571-573 「宮柱めぐりあひける時しあれば<BR>⏎
  別れし春の恨み残すな」<BR>⏎
<P>⏎
367 「宮柱めぐりあひける時しあれば<BR>  別れし春の恨み残すな」<BR>⏎
d1575<P>⏎
d1578<P>⏎
text13579 <A NAME="in53">[第三段 明石の君への手紙、他]</A><BR>371 
d1580<P>⏎
d1582<P>⏎
cd2:1584-585  嘆きつつ明石の浦に朝霧の<BR>⏎
  立つやと人を思ひやるかな」<BR>⏎
374  嘆きつつ明石の浦に朝霧の<BR>  立つやと人を思ひやるかな」<BR>⏎
d1587<P>⏎
cd3:1588-590 「須磨の浦に心を寄せし舟人の<BR>⏎
  やがて朽たせる袖を見せばや」<BR>⏎
<P>⏎
376 「須磨の浦に心を寄せし舟人の<BR>  やがて朽たせる袖を見せばや」<BR>⏎
d1592<P>⏎
cd3:1593-595 「<A HREF="#no19">帰りては</A><A NAME="te19">か</A>ことやせまし寄せたりし<BR>⏎
  名残に袖の干がたかりしを」<BR>⏎
<P>⏎
378 「<A HREF="#no19">帰りては</A><A NAME="te19">か</A>ことやせまし寄せたりし<BR>  名残に袖の干がたかりしを」<BR>⏎
d2598-599
<P>⏎
c2600-601 <a name="in61">【出典】<BR>⏎
</a><A NAME="no1">出典1</A> 浪にのみ濡れつるものを吹く風の便りうれしき海人の釣舟(後撰集雑三-一二二四 紀貫之)<A HREF="#te1">(戻)</A><BR>⏎
381-382 <A NAME="in61">【出典】</A><BR>⏎
<A NAME="no1">出典1</A> 浪にのみ濡れつるものを吹く風の便りうれしき海人の釣舟(後撰集雑三-一二二四 紀貫之)<A HREF="#te1">(戻)</A><BR>⏎
d1620
c1621<p> <a name="in62">【校訂】<BR>⏎
401 <A NAME="in62">【校訂】</A><BR>
c1623</a><A NAME="k01">校訂1</A> 騒がれて--さはかさ(さ/$<朱>)れて<A HREF="#t01">(戻)</A><BR>⏎
403<A NAME="k01">校訂1</A> 騒がれて--さはかさ(さ/$<朱>)れて<A HREF="#t01">(戻)</A><BR>⏎
d1689</p>⏎
d1696</p>⏎
i1478
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cd2:18-9<body background="wallppr063.gif">⏎
First updated 9/20/1996(ver.1-1)<BR>⏎
8<BODY>⏎
cd3:210-12Last updated 9/21/2010(ver.2-3)<BR>⏎
渋谷栄一校訂(C)<BR>⏎
<P
>⏎
9-10<ADDRESS>Last updated 9/21/2010(ver.2-3)<BR>⏎
渋谷栄一校訂(C)</ADDRESS>⏎
d114<P>⏎
i014
d152<P>⏎
c187<LI>六条御息所、死去---<A HREF="#in53">七八日ありて亡せたまひにけり</A>⏎
83<LI>六条御息所、死去---<A HREF="#in53">七八日ありて亡せたまひにけり</A>⏎
d192<P>⏎
d195<P>⏎
text1496 <H4>第一章 光る源氏の物語 光る源氏の政界領導と御世替わり</H4>90 
text1497 <A NAME="in11">[第一段 故桐壺院の追善法華御八講]</A><BR>91 
d198<P>⏎
cd2:199-100 さやかに見えたまひし夢の後は、院の帝の御ことを心にかけきこえたまひて、「いかでかの沈み<A HREF="#k01">たまふらむ</A><A NAME="t01">罪</A>、救ひたてまつることをせむ」と、思し嘆きけるを、かく帰りたまひては、その御急ぎしたまふ。神無月に御八講したまふ。<A HREF="#k02">世の人</A><A NAME="t02">な</A>びき仕うまつること、昔のやうなり。<BR>⏎
<P>⏎
92 さやかに見えたまひし夢の後は、院の帝の御ことを心にかけきこえたまひて、「いかでかの沈み<A HREF="#k01">たまふらむ</A><A NAME="t01">罪</A>、救ひたてまつることをせむ」と、思し嘆きけるを、かく帰りたまひては、その御急ぎしたまふ。神無月に御八講したまふ。<A HREF="#k02">世の人</A><A NAME="t02">な</A>びき仕うまつること、昔のやうなり。<BR>⏎
d1102<P>⏎
text14103 <A NAME="in12">[第二段 朱雀帝と源氏の朧月夜尚侍をめぐる確執]</A><BR>94 
d1104<P>⏎
d1106<P>⏎
d1108<P>⏎
c1109 とてうち泣きたまふ。<BR>⏎
97 とてうち泣きたまふ。<BR>⏎
d1111<P>⏎
cd4:2112-115 「などか<A HREF="#k03">御子を</A><A NAME="t03">だ</A>に持たまへるまじき。口惜しうもあるかな。契り深き人のためには、今見出でたまひてむと思ふも、口惜しや。限りあれば、ただ人にてぞ見たまはむかし」<BR>⏎
<P>⏎
 など行く末のことをさへのたまはするに、いと恥づかしうも悲しうもおぼえたまふ。御容貌など、なまめかしうきよらにて、限りなき御心ざしの年月に添ふやうにもてなさせたまふに、めでたき人なれど、さしも<A HREF="#k04">思ひたまへら</A><A NAME="t04">ざ</A>りしけしき、心ばへなど、もの思ひ知られたまふままに、「などてわが心の若くいはけなきにまかせて、さる騷ぎをさへ引き出でて、わが名をばさらにもいはず、人の御ためさへ」など思し出づるに、いと憂き御身なり。<BR>⏎
<P>⏎
99-100 「などか<A HREF="#k03">御子を</A><A NAME="t03">だ</A>に持たまへるまじき。口惜しうもあるかな。契り深き人のためには、今見出でたまひてむと思ふも、口惜しや。限りあれば、ただ人にてぞ見たまはむかし」<BR>⏎
 など行く末のことをさへのたまはするに、いと恥づかしうも悲しうもおぼえたまふ。御容貌など、なまめかしうきよらにて、限りなき御心ざしの年月に添ふやうにもてなさせたまふに、めでたき人なれど、さしも<A HREF="#k04">思ひたまへら</A><A NAME="t04">ざ</A>りしけしき、心ばへなど、もの思ひ知られたまふままに、「などてわが心の若くいはけなきにまかせて、さる騷ぎをさへ引き出でて、わが名をばさらにもいはず、人の御ためさへ」など思し出づるに、いと憂き御身なり。<BR>⏎
text14116 <A NAME="in13">[第三段 東宮の御元服と御世替わり]</A><BR>101 
d1117<P>⏎
d1120<P>⏎
c1123 とぞ聞こえ慰めたまひける。<BR>⏎
106 とぞ聞こえ慰めたまひける。<BR>⏎
d1125<P>⏎
cd2:1128-129 と受けひき申したまはず。「人の国にも、こと移り世の中定まらぬ折は、深き山に跡を絶えたる人だにも、治まれる世には、白髪も恥ぢず出で仕へけるをこそ、まことの聖にはしけれ。病に沈みて、返し申したまひける位を、世の中変はりてまた改めたまはむに、さらに咎あるまじう」、公、私定めらる。さる例もありければ、すまひ果てたまはで、太政大臣になりたまふ。御年も六十三にぞなりたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
110 と受けひき申したまはず。「人の国にも、こと移り世の中定まらぬ折は、深き山に跡を絶えたる人だにも、治まれる世には、白髪も恥ぢず出で仕へけるをこそ、まことの聖にはしけれ。病に沈みて、返し申したまひける位を、世の中変はりてまた改めたまはむに、さらに咎あるまじう」、公、私定めらる。さる例もありければ、すまひ果てたまはで、太政大臣になりたまふ。御年も六十三にぞなりたまふ。<BR>⏎
d1131<P>⏎
cd3:2132-134 大殿腹の若君、人よりことにうつくしうて、内裏春宮の殿上したまふ。故姫君の亡せたまひにし嘆きを、宮大臣、またさらに改めて思し嘆く。されどおはせぬ名残も、ただこの大臣の御光に、<A HREF="#k07">よろづ</A><A NAME="t07">も</A>て<A HREF="#k08">なされ</A><A NAME="t08">た</A>まひて、年ごろ、思し沈みつる名残なきまで栄えたまふ。なほ昔に御心ばへ変はらず、折節ごとに渡りたまひなどしつつ、若君の御乳母たち、さらぬ人びとも、年ごろのほどまかで散らざりけるは、皆さるべきことに触れつつ、よすがつけむことを思しおきつるに、幸ひ人多くなりぬべし。<BR>⏎
<P>⏎
 二条院にも、同じごと待ちきこえける人を、あはれなるものに思して、年ごろの胸あくばかりと思せば、中将中務やうの人びとには、ほどほどにつけつつ情けを見えたまふに、御いとまなくて、他歩きもしたまはず。<BR>⏎
112-113 大殿腹の若君、人よりことにうつくしうて、内裏春宮の殿上したまふ。故姫君の亡せたまひにし嘆きを、宮大臣、またさらに改めて思し嘆く。されどおはせぬ名残も、ただこの大臣の御光に、<A HREF="#k07">よろづ</A><A NAME="t07">も</A>て<A HREF="#k08">なされ</A><A NAME="t08">た</A>まひて、年ごろ、思し沈みつる名残なきまで栄えたまふ。なほ昔に御心ばへ変はらず、折節ごとに渡りたまひなどしつつ、若君の御乳母たち、さらぬ人びとも、年ごろのほどまかで散らざりけるは、皆さるべきことに触れつつ、よすがつけむことを思しおきつるに、幸ひ人多くなりぬべし。<BR>⏎
 二条院にも、同じごと待ちきこえける人を、あはれなるものに思して、年ごろの胸あくばかりと思せば、中将中務やうの人びとには、ほどほどにつけつつ情けを見えたまふに、御いとまなくて、他歩きもしたまはず。<BR>⏎
d1136<P>⏎
text14137 <H4>第二章 明石の物語 明石の姫君誕生</H4>115 
text14138 <A NAME="in21">[第一段 宿曜の予言と姫君誕生]</A><BR>116 
d1139<P>⏎
d1141<P>⏎
d1143<P>⏎
cd2:1144-145 と告げきこゆ。めづらしきさまにてさへあなるを思すに、おろかならず。「などて京に迎へて、かかることをもせさせざりけむ」と、口惜しう思さる。<BR>⏎
<P>⏎
119 と告げきこゆ。めづらしきさまにてさへあなるを思すに、おろかならず。「などて京に迎へて、かかることをもせさせざりけむ」と、口惜しう思さる。<BR>⏎
cd4:2147-150 「御子三人。帝后かならず並びて生まれ<A HREF="#k09">たまふ</A><A NAME="t09">べ</A>し。中の劣りは、太政大臣にて位を極むべし」<BR>⏎
<P>⏎
 と勘へ申したりしこと、さしてかなふなめり。おほかた、上なき位に昇り、世をまつりごちたまふべきこと、さばかりかしこかりしあまたの相人どもの聞こえ集めたるを、年ごろは世のわづらはしさにみな思し消ちつるを、当帝のかく位にかなひたまひぬることを、思ひのごとうれしと思す。みづからも、「もて離れたまへる筋は、さらにあるまじきこと」と思す。<BR>⏎
<P>⏎
121-122 「御子三人。帝后かならず並びて生まれ<A HREF="#k09">たまふ</A><A NAME="t09">べ</A>し。中の劣りは、太政大臣にて位を極むべし」<BR>⏎
 と勘へ申したりしこと、さしてかなふなめり。おほかた、上なき位に昇り、世をまつりごちたまふべきこと、さばかりかしこかりしあまたの相人どもの聞こえ集めたるを、年ごろは世のわづらはしさにみな思し消ちつるを、当帝のかく位にかなひたまひぬることを、思ひのごとうれしと思す。みづからも、「もて離れたまへる筋は、さらにあるまじきこと」と思す。<BR>⏎
cd2:1152-153 と御心のうちに思しけり。今、行く末のあらましごとを思すに、<BR>⏎
<P>⏎
124 と御心のうちに思しけり。今、行く末のあらましごとを思すに、<BR>⏎
d1156<P>⏎
text14157 <A NAME="in22">[第二段 宣旨の娘を乳母に選定]</A><BR>127 
d1158<P>⏎
d1161<P>⏎
c1163 「ただのたまはせむままに」<BR>⏎
131 「ただのたまはせむままに」<BR>⏎
cd2:1166-167 などことのありやう詳しう語らひたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
134 などことのありやう詳しう語らひたまふ。<BR>⏎
cd4:2170-173 とのたまふにつけても、「げに同じうは、御身近うも仕うまつり馴れば、憂き身も慰みなまし」と見たてまつる。<BR>⏎
<P>⏎
 「かねてより隔てぬ仲とならはねど<BR>⏎
  別れは惜しき<A HREF="#k10">ものにぞあり</A><A NAME="t10">け</A>る<BR>⏎
137-138 とのたまふにつけても、「げに同じうは、御身近うも仕うまつり馴れば、憂き身も慰みなまし」と見たてまつる。<BR>⏎
 「かねてより隔てぬ仲とならはねど<BR>  別れは惜しき<A HREF="#k10">ものにぞあり</A><A NAME="t10">け</A>る<BR>⏎
d1175<P>⏎
d1177<P>⏎
cd3:1178-180 「うちつけの別れを惜しむかことにて<BR>⏎
  思はむ方に慕ひやはせぬ」<BR>⏎
<P>⏎
141 「うちつけの別れを惜しむかことにて<BR>  思はむ方に慕ひやはせぬ」<BR>⏎
d1182<P>⏎
text14183 <A NAME="in23">[第三段 乳母、明石へ出発]</A><BR>143 
d1184<P>⏎
d1186<P>⏎
d1188<P>⏎
cd3:1189-191 「いつしかも袖うちかけむ<A HREF="#k14">をとめ子が</A><A NAME="t14"><BR>⏎
  世</A>を経て<A HREF="#no1">撫づる岩</A><A NAME="te1">の</A>生ひ先」<BR>⏎
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146 「いつしかも袖うちかけむ<A HREF="#k14">をとめ子が</A><A NAME="t14"><BR>  世</A>を経て<A HREF="#no1">撫づる岩</A><A NAME="te1">の</A>生ひ先」<BR>⏎
d1193<P>⏎
cd2:1195-196 稚児のいとゆゆしきまでうつくしうおはすること、たぐひなし。「げにかしこき御心に、かしづききこえむと思したるは、むべなりけり」と見たてまつるに、あやしき道に出で立ちて、夢の心地しつる嘆きもさめにけり。いとうつくしうらうたうおぼえて、扱ひきこゆ。<BR>⏎
<P>⏎
149 稚児のいとゆゆしきまでうつくしうおはすること、たぐひなし。「げにかしこき御心に、かしづききこえむと思したるは、むべなりけり」と見たてまつるに、あやしき道に出で立ちて、夢の心地しつる嘆きもさめにけり。いとうつくしうらうたうおぼえて、扱ひきこゆ。<BR>⏎
d1198<P>⏎
cd3:1199-201 「ひとりして撫づるは袖のほどなきに<BR>⏎
  <A HREF="#no2">覆ふばかりの</A><A NAME="te2">蔭</A>をしぞ待つ」<BR>⏎
<P>⏎
151 「ひとりして撫づるは袖のほどなきに<BR>  <A HREF="#no2">覆ふばかりの</A><A NAME="te2">蔭</A>をしぞ待つ」<BR>⏎
d1203<P>⏎
text14204 <A NAME="in24">[第四段 紫の君に姫君誕生を語る]</A><BR>153 
d1205<P>⏎
d1207<P>⏎
d1209<P>⏎
d1211<P>⏎
d1214<P>⏎
d1216<P>⏎
cd2:1217-218 とて果て果ては涙ぐみたまふ。年ごろ飽かず恋しと思ひきこえたまひし御心のうちども、折々の御文の通ひなど思し出づるには、「よろづのこと、すさびにこそあれ」と思ひ消たれたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
160 とて果て果ては涙ぐみたまふ。年ごろ飽かず恋しと思ひきこえたまひし御心のうちども、折々の御文の通ひなど思し出づるには、「よろづのこと、すさびにこそあれ」と思ひ消たれたまふ。<BR>⏎
d1223<P>⏎
d1225<P>⏎
cd5:2227-231 とただならず、思ひ続けたまひて、「われはわれ」と、うち背き眺めて、「あはれなりし世のありさま」など、独り言のやうにうち嘆きて、<BR>⏎
<P>⏎
 「思ふどちなびく方にはあらずとも<BR>⏎
  われぞ煙に先立ちなまし」<BR>⏎
<P>⏎
167-168 とただならず、思ひ続けたまひて、「われはわれ」と、うち背き眺めて、「あはれなりし世のありさま」など、独り言のやうにうち嘆きて、<BR>⏎
 「思ふどちなびく方にはあらずとも<BR>  われぞ煙に先立ちなまし」<BR>⏎
d1233<P>⏎
cd7:3234-240  誰れにより世を海山に行きめぐり<BR>⏎
  絶えぬ涙に浮き沈む身ぞ<BR>⏎
<P>⏎
 いでやいかでか見えたてまつらむ。命こそかなひがたかべいものなめれ。はかなきことにて、人に心おかれじと思ふも、ただ一つゆゑぞや」<BR>⏎
<P>⏎
 とて箏の御琴引き寄せて、掻き合せすさびたまひて、そそのかしきこえたまへど、かのすぐれたりけむもねたきにや、手も触れたまはず。いとおほどかにうつくしう、たをやぎたまへるものから、さすがに執念きところつきて、もの怨じしたまへるが、なかなか愛敬づきて腹立ちなしたまふを、をかしう見どころありと思す。<BR>⏎
<P>⏎
170-172  誰れにより世を海山に行きめぐり<BR>  絶えぬ涙に浮き沈む身ぞ<BR>⏎
 いでやいかでか見えたてまつらむ。命こそかなひがたかべいものなめれ。はかなきことにて、人に心おかれじと思ふも、ただ一つゆゑぞや」<BR>⏎
 とて箏の御琴引き寄せて、掻き合せすさびたまひて、そそのかしきこえたまへど、かのすぐれたりけむもねたきにや、手も触れたまはず。いとおほどかにうつくしう、たをやぎたまへるものから、さすがに執念きところつきて、もの怨じしたまへるが、なかなか愛敬づきて腹立ちなしたまふを、をかしう見どころありと思す。<BR>⏎
text14241 <A NAME="in25">[第五段 姫君の五十日の祝]</A><BR>173 
d1242<P>⏎
d1244<P>⏎
d1248<P>⏎
cd4:2249-252 「海松や時ぞともなき蔭にゐて<BR>⏎
  何のあやめもいかにわくらむ<BR>⏎
<P>⏎
 心のあくがるるまでなむ。なほかくてはえ過ぐすまじきを、思ひ立ちたまひね。さりとも、うしろめたきことは、よも」<BR>⏎
178-179 「海松や時ぞともなき蔭にゐて<BR>  何のあやめもいかにわくらむ<BR>⏎
 心のあくがるるまでなむ。なほかくてはえ過ぐすまじきを、思ひ立ちたまひね。さりとも、うしろめたきことは、よも」<BR>⏎
d1254<P>⏎
d1256<P>⏎
cd5:4257-261 ここにも、よろづ所狭きまで思ひ設けたりけれど、この御使なくは、闇の夜にてこそ暮れぬべかりけれ。乳母も、この女君のあはれに思ふやうなるを、語らひ人にて、世の慰めにしけり。をさをさ劣らぬ人も、類に触れて迎へ取りてあらすれど、こよなく衰へたる宮仕へ人などの、巌の中尋ぬるが落ち止まれるなどこそあれ、これはこよなうこめき思ひあがれり。<BR>⏎
<P> 聞きどころある世の物語などして、大臣の君の御ありさま、世にかしづかれたまへる御おぼえのほども、女心地にまかせて限りなく語り尽くせば、<A HREF="#k17">げに</A><A NAME="t17"></A>かく思し出づばかりの名残とどめたる身も、いとたけくやうやう思ひなりけり。御文ももろともに見て、心のうちに、<BR>⏎
 「あはれかうこそ思ひの外に、めでたき宿世はありけれ。憂きものはわが身こそありけれ」<BR>⏎
 と思ひ続けらるれど、「乳母のことはいかに」など、こまやかに訪らはせたまへるも、かたじけなく、何ごとも慰めけり。<BR>⏎
<P>⏎
182-185 ここにも、よろづ所狭きまで思ひ設けたりけれど、この御使なくは、闇の夜にてこそ暮れぬべかりけれ。乳母も、この女君のあはれに思ふやうなるを、語らひ人にて、世の慰めにしけり。をさをさ劣らぬ人も、類に触れて迎へ取りてあらすれど、こよなく衰へたる宮仕へ人などの、巌の中尋ぬるが落ち止まれるなどこそあれ、これはこよなうこめき思ひあがれり。<BR>⏎
 聞きどころある世の物語などして、大臣の君の御ありさま、世にかしづかれたまへる御おぼえのほども、女心地にまかせて限りなく語り尽くせば、<A HREF="#k17">げに</A><A NAME="t17"></A>かく思し出づばかりの名残とどめたる身も、いとたけくやうやう思ひなりけり。御文ももろともに見て、心のうちに、<BR>⏎
 「あはれかうこそ思ひの外に、めでたき宿世はありけれ。憂きものはわが身こそありけれ」<BR>⏎
 と思ひ続けらるれど、「乳母のことはいかに」など、こまやかに訪らはせたまへるも、かたじけなく、何ごとも慰めけり。<BR>⏎
d1263<P>⏎
cd4:2264-267 「数ならぬみ島隠れに鳴く鶴を<BR>⏎
  今日もいかにと問ふ人ぞなき<BR>⏎
<P>⏎
 よろづに思うたまへ結ぼほるるありさまを、かく<A HREF="#k18">たまさか</A><A NAME="t18">の</A>御慰めにかけはべる命のほども、はかなくなむ。げに後ろやすく思うたまへ置くわざもがな」<BR>⏎
187-188 「数ならぬみ島隠れに鳴く鶴を<BR>  今日もいかにと問ふ人ぞなき<BR>⏎
 よろづに思うたまへ結ぼほるるありさまを、かく<A HREF="#k18">たまさか</A><A NAME="t18">の</A>御慰めにかけはべる命のほども、はかなくなむ。げに後ろやすく思うたまへ置くわざもがな」<BR>⏎
d1269<P>⏎
text14270 <A NAME="in26">[第六段 紫の君、嫉妬を覚える]</A><BR>190 
d1271<P>⏎
cd4:3274-277 と忍びやかにひとりごち、眺めたまふを、<BR>⏎
 「まことは、かくまでとりなしたまふよ。こはただかばかりのあはれぞや。所のさまなど、うち思ひやる時々、来し方のこと忘れがたき独り言を、ようこそ聞き<A HREF="#k19">過ぐい</A><A NAME="t19">た</A>まはね」<BR>⏎
 など恨みきこえたまひて、上包ばかりを見せたてまつらせたまふ。<A HREF="#k20">筆</A><A NAME="t20">な</A>どのいとゆゑづきて、やむごとなき人苦しげなるを、「かかればなめり」と、思す。<BR>⏎
<P>⏎
193-195 と忍びやかにひとりごち、眺めたまふを、<BR>⏎
 「まことは、かくまでとりなしたまふよ。こはただかばかりのあはれぞや。所のさまなど、うち思ひやる時々、来し方のこと忘れがたき独り言を、ようこそ聞き<A HREF="#k19">過ぐい</A><A NAME="t19">た</A>まはね」<BR>⏎
 など恨みきこえたまひて、上包ばかりを見せたてまつらせたまふ。<A HREF="#k20">筆</A><A NAME="t20">な</A>どのいとゆゑづきて、やむごとなき人苦しげなるを、「かかればなめり」と、思す。<BR>⏎
text14278 <H4>第三章 光る源氏の物語 新旧後宮女性の動向</H4>196 
text14279 <A NAME="in31">[第一段 花散里訪問]</A><BR>197 
d1280<P>⏎
cd2:1281-282 かくこの御心とりたまふほどに、<A HREF="#k21">花散里などを離れ</A><A NAME="t21">果</A>てたまひぬるこそ、いとほしけれ。公事も繁く、所狭き御身に、思し憚るに添へても、めづらしく御目おどろくことのなきほど、思ひしづめたまふなめり。<BR>⏎
<P>⏎
198 かくこの御心とりたまふほどに、<A HREF="#k21">花散里などを離れ</A><A NAME="t21">果</A>てたまひぬるこそ、いとほしけれ。公事も繁く、所狭き御身に、思し憚るに添へても、めづらしく御目おどろくことのなきほど、思ひしづめたまふなめり。<BR>⏎
d1284<P>⏎
d1286<P>⏎
cd4:2287-290 「水鶏だにおどろかさずはいかにして<BR>⏎
  荒れたる宿に月を入れまし」<BR>⏎
<P>⏎
 といとなつかしう、言ひ消ちたまへるぞ、<BR>⏎
201-202 「水鶏だにおどろかさずはいかにして<BR>  荒れたる宿に月を入れまし」<BR>⏎
 といとなつかしう、言ひ消ちたまへるぞ、<BR>⏎
d1293<P>⏎
cd2:1294-295 「おしなべてたたく水鶏におどろかば<BR>⏎
  うはの空なる月もこそ入れ<BR>⏎
205 「おしなべてたたく水鶏におどろかば<BR>  うはの空なる月もこそ入れ<BR>⏎
d1297<P>⏎
cd4:2298-301 とはなほ言に聞こえたまへど、あだあだしき筋など、疑はしき御心ばへにはあらず。年ごろ、待ち過ぐしきこえたまへるも、さらにおろかには思されざりけり。「空な眺めそ」と、頼めきこえたまひし折のことも、のたまひ出でて、<BR>⏎
<P>⏎
 「などてたぐひあらじと、いみじうものを思ひ沈みけむ。憂き身からは、同じ嘆かしさにこそ」<BR>⏎
<P>⏎
207-208 とはなほ言に聞こえたまへど、あだあだしき筋など、疑はしき御心ばへにはあらず。年ごろ、待ち過ぐしきこえたまへるも、さらにおろかには思されざりけり。「空な眺めそ」と、頼めきこえたまひし折のことも、のたまひ出でて、<BR>⏎
 「などてたぐひあらじと、いみじうものを思ひ沈みけむ。憂き身からは、同じ嘆かしさにこそ」<BR>⏎
d1303<P>⏎
text14304 <A NAME="in32">[第二段 筑紫の五節と朧月夜尚侍]</A><BR>210 
d1305<P>⏎
d1308<P>⏎
d1311<P>⏎
d1313<P>⏎
text14314 <A NAME="in33">[第三段 旧後宮の女性たちの動向]</A><BR>216 
d1315<P>⏎
cd2:1316-317 院はのどやかに思しなりて、<A HREF="#k24">時々に</A><A NAME="t24">つ</A>けて、をかしき御遊びなど、好ましげにておはします。女御更衣、みな例のごとさぶらひたまへど、春宮の御母女御のみぞ、とり立てて時めきたまふこともなく、尚侍の君の御おぼえにおし消たれたまへりしを、かく引き変へ、めでたき御幸ひにて、離れ出でて宮に添ひたてまつりたまへる。<BR>⏎
<P>⏎
217 院はのどやかに思しなりて、<A HREF="#k24">時々に</A><A NAME="t24">つ</A>けて、をかしき御遊びなど、好ましげにておはします。女御更衣、みな例のごとさぶらひたまへど、春宮の御母女御のみぞ、とり立てて時めきたまふこともなく、尚侍の君の御おぼえにおし消たれたまへりしを、かく引き変へ、めでたき御幸ひにて、離れ出でて宮に添ひたてまつりたまへる。<BR>⏎
d1319<P>⏎
d1321<P>⏎
d1323<P>⏎
text14324 <A NAME="in34">[第四段 冷泉帝後宮の入内争い]</A><BR>221 
d1325<P>⏎
d1328<P>⏎
d1332<P>⏎
text14333 <H4>第四章 明石の物語 住吉浜の邂逅</H4>227 
text14334 <A NAME="in41">[第一段 住吉詣で]</A><BR>228 
d1335<P>⏎
d1337<P>⏎
d1340<P>⏎
cd3:2344-346 とてはかなきほどの下衆だに、心地よげにうち笑ふ。<BR>⏎
<P>⏎
 「げにあさましう、月日もこそあれ。なかなか、この御ありさまを遥かに見るも、身のほど口惜しうおぼゆ。さすがに、かけ離れたてまつらぬ宿世ながら、かく口惜しき際の者だに、もの思ひなげにて、仕うまつるを色節に思ひたるに、何の罪深き身にて、心にかけておぼつかなう思ひきこえつつ、かかりける御響きをも知らで、立ち出でつらむ」<BR>⏎
235-236 とてはかなきほどの下衆だに、心地よげにうち笑ふ。<BR>⏎
 「げにあさましう、月日もこそあれ。なかなか、この御ありさまを遥かに見るも、身のほど口惜しうおぼゆ。さすがに、かけ離れたてまつらぬ宿世ながら、かく口惜しき際の者だに、もの思ひなげにて、仕うまつるを色節に思ひたるに、何の罪深き身にて、心にかけておぼつかなう思ひきこえつつ、かかりける御響きをも知らで、立ち出でつらむ」<BR>⏎
d1348<P>⏎
text14349 <A NAME="in42">[第二段 住吉社頭の盛儀]</A><BR>238 
d1350<P>⏎
d1352<P>⏎
d1355<P>⏎
d1357<P>⏎
d1360<P>⏎
cd2:1364-365 とて漕ぎ渡りぬ。<BR>⏎
<P>⏎
248 とて漕ぎ渡りぬ。<BR>⏎
text14366 <A NAME="in43">[第三段 源氏、惟光と住吉の神徳を感ず]</A><BR>249 
d1367<P>⏎
d1370<P>⏎
cd7:3371-377 「住吉の松こそものはかなしけれ<BR>⏎
  神代のことをかけて思へば」<BR>⏎
<P>⏎
 げにと思し出でて、<BR>⏎
<P>⏎
 「荒かりし波のまよひに住吉の<BR>⏎
  神をばかけて忘れやはする<BR>⏎
252-254 「住吉の松こそものはかなしけれ<BR>  神代のことをかけて思へば」<BR>⏎
 げにと思し出でて、<BR>⏎
 「荒かりし波のまよひに住吉の<BR>  神をばかけて忘れやはする<BR>⏎
d1379<P>⏎
d1381<P>⏎
text14382 <A NAME="in44">[第四段 源氏、明石の君に和歌を贈る]</A><BR>257 
d1383<P>⏎
d1385<P>⏎
cd10:4388-397 と御心にもあらで、うち誦じたまへるを、御車のもと近き惟光、うけたまはりやしつらむ、さる召しもやと、例にならひて懐にまうけたる柄短き筆など、御車とどむる所にてたてまつれり。「をかし」と思して、畳紙に、<BR>⏎
<P>⏎
 「みをつくし恋ふるしるしにここまでも<BR>⏎
  めぐり逢ひけるえには深しな」<BR>⏎
<P>⏎
 とてたまへれば、かしこの心知れる下人して遣りけり。駒並めて、うち過ぎたまふにも、心のみ動くに、露ばかりなれど、<A HREF="#k30">いと</A><A NAME="t30">あ</A>はれにかたじけなくおぼえて、うち泣きぬ。<BR>⏎
<P>⏎
 「数ならで難波のこともかひなきに<BR>⏎
  などみをつくし思ひそめけむ」<BR>⏎
<P>⏎
261-264 と御心にもあらで、うち誦じたまへるを、御車のもと近き惟光、うけたまはりやしつらむ、さる召しもやと、例にならひて懐にまうけたる柄短き筆など、御車とどむる所にてたてまつれり。「をかし」と思して、畳紙に、<BR>⏎
 「みをつくし恋ふるしるしにここまでも<BR>  めぐり逢ひけるえには深しな」<BR>⏎
 とてたまへれば、かしこの心知れる下人して遣りけり。駒並めて、うち過ぎたまふにも、心のみ動くに、露ばかりなれど、<A HREF="#k30">いと</A><A NAME="t30">あ</A>はれにかたじけなくおぼえて、うち泣きぬ。<BR>⏎
 「数ならで難波のこともかひなきに<BR>  などみをつくし思ひそめけむ」<BR>⏎
d1400<P>⏎
cd5:2401-405 「露けさの昔に似たる旅衣<BR>⏎
  <A HREF="#no7">田蓑の島の名には隠れず</A><A NAME="te7">」</A><BR>⏎
<P>⏎
 道のままに、かひある逍遥遊びののしりたまへど、御心にはなほかかりて思しやる。遊女どもの集ひ参れる、上達部と聞こゆれど、若やかにこと好ましげなるは、皆目とどめたまふべかめり。されど「いでや、をかしきことも、もののあはれも、人からこそあべけれ。なのめなることをだに、すこしあはき方に寄りぬるは、心とどむるたよりもなきものを」と思すに、おのが心をやりて、よしめきあへるも疎ましう思しけり。<BR>⏎
<P>⏎
267-268 「露けさの昔に似たる旅衣<BR>  <A HREF="#no7">田蓑の島の名には隠れず</A><A NAME="te7">」</A><BR>⏎
 道のままに、かひある逍遥遊びののしりたまへど、御心にはなほかかりて思しやる。遊女どもの集ひ参れる、上達部と聞こゆれど、若やかにこと好ましげなるは、皆目とどめたまふべかめり。されど「いでや、をかしきことも、もののあはれも、人からこそあべけれ。なのめなることをだに、すこしあはき方に寄りぬるは、心とどむるたよりもなきものを」と思すに、おのが心をやりて、よしめきあへるも疎ましう思しけり。<BR>⏎
text14406 <A NAME="in45">[第五段 明石の君、翌日住吉に詣でる]</A><BR>269 
d1407<P>⏎
cd2:1408-409 かの人は、過ぐしきこえて、またの日ぞ吉ろしかりければ、御幣たてまつる。ほどにつけたる願どもなど、かつがつ果たしける。またなかなかもの思ひ添はりて、明け暮れ、口惜しき身を思ひ嘆く。<BR>⏎
<P>⏎
270 かの人は、過ぐしきこえて、またの日ぞ吉ろしかりければ、御幣たてまつる。ほどにつけたる願どもなど、かつがつ果たしける。またなかなかもの思ひ添はりて、明け暮れ、口惜しき身を思ひ嘆く。<BR>⏎
cd3:2411-413 「いと頼もしげに、数まへのたまふめれど、いさやまた<A HREF="#no8">島漕ぎ離れ</A><A NAME="te8">、</A>中空に心細きことやあらむ」<BR>⏎
 と思ひわづらふ。<BR>⏎
<P>⏎
272-273 「いと頼もしげに、数まへのたまふめれど、いさやまた<A HREF="#no8">島漕ぎ離れ</A><A NAME="te8">、</A>中空に心細きことやあらむ」<BR>⏎
 と思ひわづらふ。<BR>⏎
d1415<P>⏎
text14416 <H4>第五章 光る源氏の物語 冷泉帝後宮の入内争い</H4>275 
text14417 <A NAME="in51">[第一段 斎宮と母御息所上京]</A><BR>276 
d1418<P>⏎
d1420<P>⏎
d1423<P>⏎
cd2:1424-425 なほかの六条の旧宮をいとよく修理しつくろひたりければ、みやびかにて住みたまひけり。よしづきたまへること、旧りがたくて、よき女房など多く、好いたる人の集ひ所にて、ものさびしきやうなれど、心やれるさまにて経たまふほどに、にはかに重くわづらひたまひて、もののいと心細く思されければ、罪深き所ほとりに年経つるも、いみじう思して、尼になりたまひぬ。<BR>⏎
<P>⏎
280 なほかの六条の旧宮をいとよく修理しつくろひたりければ、みやびかにて住みたまひけり。よしづきたまへること、旧りがたくて、よき女房など多く、好いたる人の集ひ所にて、ものさびしきやうなれど、心やれるさまにて経たまふほどに、にはかに重くわづらひたまひて、もののいと心細く思されければ、罪深き所ほとりに年経つるも、いみじう思して、尼になりたまひぬ。<BR>⏎
d1427<P>⏎
d1429<P>⏎
text14430 <A NAME="in52">[第二段 御息所、斎宮を源氏に託す]</A><BR>283 
d1431<P>⏎
d1433<P>⏎
cd6:3434-439 「心細くてとまりたまはむを、かならずことに触れて数まへきこえたまへ。また見ゆづる人もなく、たぐひなき御ありさまになむ。かひなき身ながらも、今しばし世の中を思ひのどむるほどは、とざまかうざまにものを思し知るまで、見たてまつらむことこそ思ひたまへつれ」<BR>⏎
<P>⏎
 とても消え入りつつ泣いたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
 「かかる御ことなくてだに、思ひ放ちきこえさすべきにもあらぬを、まして心の及ばむに従ひては、何ごとも後見きこえむとなむ思うたまふる。さらにうしろめたくな思ひきこえたまひそ」<BR>⏎
<P>⏎
285-287 「心細くてとまりたまはむを、かならずことに触れて数まへきこえたまへ。また見ゆづる人もなく、たぐひなき御ありさまになむ。かひなき身ながらも、今しばし世の中を思ひのどむるほどは、とざまかうざまにものを思し知るまで、見たてまつらむことこそ思ひたまへつれ」<BR>⏎
 とても消え入りつつ泣いたまふ。<BR>⏎
 「かかる御ことなくてだに、思ひ放ちきこえさすべきにもあらぬを、まして心の及ばむに従ひては、何ごとも後見きこえむとなむ思うたまふる。さらにうしろめたくな思ひきこえたまひそ」<BR>⏎
d1441<P>⏎
cd2:1442-443 「いとかたきこと。まことにうち頼むべき親などにて、見ゆづる人だに、女親に離れぬるは、いとあはれなることにこそはべるめれ。まして思ほし人めかさむにつけても、あぢきなき方やうち交り、人に心も置かれたまはむ。うたてある思ひやりごとなれど、かけてさやうの世づいたる筋に思し寄るな。憂き身を抓みはべるにも、女は、思ひの外にてもの思ひを添ふるものになむはべりければ、いかでさる方をもて離れて、見たてまつらむと思うたまふる」<BR>⏎
<P>⏎
289 「いとかたきこと。まことにうち頼むべき親などにて、見ゆづる人だに、女親に離れぬるは、いとあはれなることにこそはべるめれ。まして思ほし人めかさむにつけても、あぢきなき方やうち交り、人に心も置かれたまはむ。うたてある思ひやりごとなれど、かけてさやうの世づいたる筋に思し寄るな。憂き身を抓みはべるにも、女は、思ひの外にてもの思ひを添ふるものになむはべりければ、いかでさる方をもて離れて、見たてまつらむと思うたまふる」<BR>⏎
d1445<P>⏎
cd5:3446-450 「年ごろに、よろづ思うたまへ知りにたるものを、昔の好き心の名残あり顔にのたまひなすも本意なくなむ。よしおのづから」<BR>⏎
<P>⏎
 とて外は暗うなり、内は大殿油のほのかにものより通りて見ゆるを、「もしもや」と思して、やをら御几帳のほころびより見たまへば、心もとなきほどの火影に、御髪いとをかしげにはなやかにそぎて、寄りゐたまへる、絵に描きたらむさまして、いみじうあはれなり。帳の東面に添ひ臥したまへるぞ宮ならむかし。御几帳のしどけなく引きやられたるより、御目とどめて見通したまへれば、頬杖つきて、いともの悲しと思いたるさまなり。はつかなれど、いとうつくしげならむと見ゆ。<BR>⏎
 御髪のかかりたるほど、頭つきけはひ、あてに気高きものから、ひちちかに愛敬づきたまへるけはひ、しるく見えたまへば、心もとなくゆかしきにも、「さばかりのたまふものを」と、思し返す。<BR>⏎
<P>⏎
291-293 「年ごろに、よろづ思うたまへ知りにたるものを、昔の好き心の名残あり顔にのたまひなすも本意なくなむ。よしおのづから」<BR>⏎
 とて外は暗うなり、内は大殿油のほのかにものより通りて見ゆるを、「もしもや」と思して、やをら御几帳のほころびより見たまへば、心もとなきほどの火影に、御髪いとをかしげにはなやかにそぎて、寄りゐたまへる、絵に描きたらむさまして、いみじうあはれなり。帳の東面に添ひ臥したまへるぞ宮ならむかし。御几帳のしどけなく引きやられたるより、御目とどめて見通したまへれば、頬杖つきて、いともの悲しと思いたるさまなり。はつかなれど、いとうつくしげならむと見ゆ。<BR>⏎
 御髪のかかりたるほど、頭つきけはひ、あてに気高きものから、ひちちかに愛敬づきたまへるけはひ、しるく見えたまへば、心もとなくゆかしきにも、「さばかりのたまふものを」と、思し返す。<BR>⏎
cd2:1452-453 とて人にかき臥せられたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
295 とて人にかき臥せられたまふ。<BR>⏎
cd2:1455-456 とて覗きたまふけしきなれば、<BR>⏎
<P>⏎
297 とて覗きたまふけしきなれば、<BR>⏎
d1459<P>⏎
d1461<P>⏎
d1463<P>⏎
text14464 <A NAME="in53">[第三段 六条御息所、死去]</A><BR>302 
d1465<P>⏎
cd2:1466-467 七八日ありて亡せたまひにけり。あへなう思さるるに、世もいとはかなくて、もの心細く思されて、内裏へも参りたまはず、とかくの御ことなど掟てさせたまふ。また頼もしき人もことにおはせざりけり。<A HREF="#k33">古き</A><A NAME="t33">斎</A>宮の宮司など、仕うまつり馴れたるぞ、わづかにことども定めける。<BR>⏎
<P>⏎
303 七八日ありて亡せたまひにけり。あへなう思さるるに、世もいとはかなくて、もの心細く思されて、内裏へも参りたまはず、とかくの御ことなど掟てさせたまふ。また頼もしき人もことにおはせざりけり。<A HREF="#k33">古き</A><A NAME="t33">斎</A>宮の宮司など、仕うまつり馴れたるぞ、わづかにことども定めける。<BR>⏎
c1470 と女別当して、聞こえたまへり。<BR>⏎
306 と女別当して、聞こえたまへり。<BR>⏎
d1472<P>⏎
d1474<P>⏎
d1476<P>⏎
cd2:1477-478 雪、霙、かき乱れ荒るる日、「いかに宮のありさま、かすかに眺めたまふらむ」と思ひやりきこえたまひて、御使たてまつれたまへり。<BR>⏎
<P>⏎
310 雪、霙、かき乱れ荒るる日、「いかに宮のありさま、かすかに眺めたまふらむ」と思ひやりきこえたまひて、御使たてまつれたまへり。<BR>⏎
cd3:1480-482  降り乱れひまなき空に亡き人の<BR>⏎
  天翔るらむ宿ぞ悲しき」<BR>⏎
<P>⏎
312  降り乱れひまなき空に亡き人の<BR>  天翔るらむ宿ぞ悲しき」<BR>⏎
d1487<P>⏎
cd3:1488-490 「消えがてにふるぞ悲しきかきくらし<BR>⏎
  わが身それとも思ほえぬ世に」<BR>⏎
<P>⏎
317 「消えがてにふるぞ悲しきかきくらし<BR>  わが身それとも思ほえぬ世に」<BR>⏎
d1492<P>⏎
text14493 <A NAME="in54">[第四段 斎宮を養女とし、入内を計画]</A><BR>319 
d1494<P>⏎
d1496<P>⏎
d1498<P>⏎
d1500<P>⏎
d1502<P>⏎
cd2:1504-505<P> 「女別当内侍などいふ人びと、あるは離れたてまつらぬわかむどほりなどにて、心ばせある人々多かるべし。この人知れず思ふ方のまじらひをせさせたてまつらむに、人に劣りたまふまじかめり。いかでさやかに、御容貌を見てしがな」<BR>⏎
<P>⏎
325 「女別当内侍などいふ人びと、あるは離れたてまつらぬわかむどほりなどにて、心ばせある人々多かるべし。この人知れず思ふ方のまじらひをせさせたてまつらむに、人に劣りたまふまじかめり。いかでさやかに、御容貌を見てしがな」<BR>⏎
d1508<P>⏎
d1510<P>⏎
c1511 さぶらふ人びと、貴きも賤しきもあまたあり。されど大臣の、<BR>⏎
329 さぶらふ人びと、貴きも賤しきもあまたあり。されど大臣の、<BR>⏎
cd2:1513-514 など親がり申したまへば、「いと恥づかしき御ありさまに、便なきこと聞こし召しつけられじ」と言ひ思ひつつ、はかなきことの情けも、さらにつくらず。<BR>⏎
<P>⏎
331 など親がり申したまへば、「いと恥づかしき御ありさまに、便なきこと聞こし召しつけられじ」と言ひ思ひつつ、はかなきことの情けも、さらにつくらず。<BR>⏎
text14515 <A NAME="in55">[第五段 朱雀院と源氏の斎宮をめぐる確執]</A><BR>332 
d1516<P>⏎
d1518<P>⏎
d1520<P>⏎
cd2:1521-522 と御息所にも聞こえたまひき。されど「やむごとなき人びとさぶらひたまふに、数々なる御後見もなくてや」と思しつつみ、「主上は、いとあつしうおはしますも恐ろしう、またもの思ひや加へたまはむ」と、憚り過ぐしたまひしを、今は、まして誰かは仕うまつらむと、人びと思ひたるを、ねむごろに院には思しのたまはせけり。<BR>⏎
<P>⏎
335 と御息所にも聞こえたまひき。されど「やむごとなき人びとさぶらひたまふに、数々なる御後見もなくてや」と思しつつみ、「主上は、いとあつしうおはしますも恐ろしう、またもの思ひや加へたまはむ」と、憚り過ぐしたまひしを、今は、まして誰かは仕うまつらむと、人びと思ひたるを、ねむごろに院には思しのたまはせけり。<BR>⏎
cd2:1524-525<P> 「かうかうのことをなむ、思うたまへわづらふに、母御息所、いと重々しく心深きさまにものしはべりしを、あぢきなき好き心にまかせて、さるまじき名をも流し、憂きものに思ひ置かれはべりにしをなむ、世にいとほしく思ひたまふる。この世にて、その恨みの心とけず過ぎはべりにしを、今はとなりての際に、この斎宮の御ことをなむ、ものせられしかば、さも聞き置き、心にも残すまじうこそは、さすがに見おきたまひけめ、と思ひたまふるにも、忍びがたう。おほかたの世につけてだに、心苦しきことは見聞き過ぐされぬわざにはべるを、いかでなき蔭にても、かの恨み忘るばかり、と思ひたまふるを、内裏にも、さこそおとなびさせたまへど、いときなき御齢におはしますを、すこし物の心知る人はさぶらはれてもよくやと思ひたまふるを、<A HREF="#k38">御定め</A><A NAME="t38">に</A>」<BR>⏎
<P>⏎
337 「かうかうのことをなむ、思うたまへわづらふに、母御息所、いと重々しく心深きさまにものしはべりしを、あぢきなき好き心にまかせて、さるまじき名をも流し、憂きものに思ひ置かれはべりにしをなむ、世にいとほしく思ひたまふる。この世にて、その恨みの心とけず過ぎはべりにしを、今はとなりての際に、この斎宮の御ことをなむ、ものせられしかば、さも聞き置き、心にも残すまじうこそは、さすがに見おきたまひけめ、と思ひたまふるにも、忍びがたう。おほかたの世につけてだに、心苦しきことは見聞き過ぐされぬわざにはべるを、いかでなき蔭にても、かの恨み忘るばかり、と思ひたまふるを、内裏にも、さこそおとなびさせたまへど、いときなき御齢におはしますを、すこし物の心知る人はさぶらはれてもよくやと思ひたまふるを、<A HREF="#k38">御定め</A><A NAME="t38">に</A>」<BR>⏎
d1527<P>⏎
d1529<P>⏎
cd3:2530-532 「<A HREF="#k39">さらば</A><A NAME="t39"></A>御けしきありて、数まへさせたまはば、もよほしばかりの言を、添ふるになしはべらむ。とざまかうざまに、思ひたまへ残すことなきに、かくまでさばかりの心構へも、まねびはべるに、世人やいかにとこそ、憚りはべれ」<BR>⏎
<P>⏎
 など聞こえたまて、後には、「げに知らぬやうにて、ここに渡したてまつりてむ」と思す。<BR>⏎
340-341 「<A HREF="#k39">さらば</A><A NAME="t39"></A>御けしきありて、数まへさせたまはば、もよほしばかりの言を、添ふるになしはべらむ。とざまかうざまに、思ひたまへ残すことなきに、かくまでさばかりの心構へも、まねびはべるに、世人やいかにとこそ、憚りはべれ」<BR>⏎
 など聞こえたまて、後には、「げに知らぬやうにて、ここに渡したてまつりてむ」と思す。<BR>⏎
cd2:1535-536 と聞こえ知らせたまへば、うれしきことに思して、<A HREF="#k40">御渡り</A><A NAME="t40">の</A>ことをいそぎたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
344 と聞こえ知らせたまへば、うれしきことに思して、<A HREF="#k40">御渡り</A><A NAME="t40">の</A>ことをいそぎたまふ。<BR>⏎
text14537 <A NAME="in56">[第六段 冷泉帝後宮の入内争い]</A><BR>345 
d1538<P>⏎
d1540<P>⏎
d1542<P>⏎
d1544<P>⏎
d2546-547
<P>⏎
c2548-549 <a name="in61">【出典】<BR>⏎
</a><A NAME="no1">出典1</A> 君が世は天の羽衣まれに着て撫づとも尽きぬ巌ならなむ(拾遺集賀-二九九 読人しらず)<A HREF="#te1">(戻)</A><BR>⏎
350-351 <A NAME="in61">【出典】</A><BR>⏎
<A NAME="no1">出典1</A> 君が世は天の羽衣まれに着て撫づとも尽きぬ巌ならなむ(拾遺集賀-二九九 読人しらず)<A HREF="#te1">(戻)</A><BR>⏎
d1557
c1558<p> <a name="in62">【校訂】<BR>⏎
359 <A NAME="in62">【校訂】</A><BR>
c1560</a><A NAME="k01">校訂1</A> たまふらむ--*たまえむ<A HREF="#t01">(戻)</A><BR>⏎
361<A NAME="k01">校訂1</A> たまふらむ--*たまえむ<A HREF="#t01">(戻)</A><BR>⏎
d1601</p>⏎
d1608</p>⏎
i0412
diffsrc/original/text15.htmlsrc/modified/text15.html
cd2:18-9<body background="wallppr063.gif">⏎
First updated 9/20/1996(ver.1-1)<BR>⏎
8<BODY>⏎
cd3:210-12Last updated 10/9/2009(ver.2-2)<BR>⏎
渋谷栄一校訂(C)<BR>⏎
<P
>⏎
9-10<ADDRESS>Last updated 10/9/2009(ver.2-2)<BR>⏎
渋谷栄一校訂(C)</ADDRESS>⏎
d114<P>⏎
i014
d136<P>⏎
c148<LI>法華御八講---<A HREF="#in22">冬になりゆくままに、いとどかき付かむかたなく</A>⏎
44<LI>法華御八講---<A HREF="#in22">冬になりゆくままに、いとどかき付かむかたなく</A>⏎
d166<P>⏎
d169<P>⏎
text1570 <H4>第一章 末摘花の物語 光る源氏の須磨明石離京時代</H4>64 
text1571 <A NAME="in11">[第一段 末摘花の孤独]</A><BR>65 
d172<P>⏎
cd2:173-74 <A HREF="#no1">藻塩垂れつつわびたまひしころほひ</A><A NAME="te1">、</A>都にも、さまざまに思し嘆く人多かりしを、さてもわが御身の拠り所あるは、一方の思ひこそ苦しげなりしか、二条の上なども、のどやかにて、旅の御住みかをもおぼつかなからず、聞こえ通ひたまひつつ、位を去りたまへる仮の御よそひをも、<A HREF="#no2">竹の子の世の憂き節</A><A NAME="te2">を</A>、時々につけてあつかひきこえたまふに、慰めたまひけむ、なかなか、その数と人にも知られず、立ち別れたまひしほどの御ありさまをも、よそのことに思ひやりたまふ人びとの、下の心くだきたまふたぐひ多かり。<BR>⏎
<P>⏎
66 <A HREF="#no1">藻塩垂れつつわびたまひしころほひ</A><A NAME="te1">、</A>都にも、さまざまに思し嘆く人多かりしを、さてもわが御身の拠り所あるは、一方の思ひこそ苦しげなりしか、二条の上なども、のどやかにて、旅の御住みかをもおぼつかなからず、聞こえ通ひたまひつつ、位を去りたまへる仮の御よそひをも、<A HREF="#no2">竹の子の世の憂き節</A><A NAME="te2">を</A>、時々につけてあつかひきこえたまふに、慰めたまひけむ、なかなか、その数と人にも知られず、立ち別れたまひしほどの御ありさまをも、よそのことに思ひやりたまふ人びとの、下の心くだきたまふたぐひ多かり。<BR>⏎
d176<P>⏎
d178<P>⏎
cd4:279-82 「いでやいと口惜しき御宿世なりけり。おぼえず神仏の現はれたまへらむやうなりし御心ばへに、かかるよすがも人は出でおはするものなりけりと、ありがたう見たてまつりしを、おほかたの世の事といひながら、また頼む方なき御ありさまこそ、悲しけれ」<BR>⏎
<P>⏎
 とつぶやき嘆く。さる方にありつきたりしあなたの年ごろは、いふかひなきさびしさに目なれて過ぐしたまふを、なかなかすこし世づきてならひにける年月に、いと堪へがたく思ひ嘆くべし。すこしも、さてありぬべき人びとは、おのづから参りつきてありしを、皆次々に従ひて行き散りぬ。女ばらの命堪へぬもありて、月日に従ひては、上下人数少なくなりゆく。<BR>⏎
<P>⏎
69-70 「いでやいと口惜しき御宿世なりけり。おぼえず神仏の現はれたまへらむやうなりし御心ばへに、かかるよすがも人は出でおはするものなりけりと、ありがたう見たてまつりしを、おほかたの世の事といひながら、また頼む方なき御ありさまこそ、悲しけれ」<BR>⏎
 とつぶやき嘆く。さる方にありつきたりしあなたの年ごろは、いふかひなきさびしさに目なれて過ぐしたまふを、なかなかすこし世づきてならひにける年月に、いと堪へがたく思ひ嘆くべし。すこしも、さてありぬべき人びとは、おのづから参りつきてありしを、皆次々に従ひて行き散りぬ。女ばらの命堪へぬもありて、月日に従ひては、上下人数少なくなりゆく。<BR>⏎
text1583 <A NAME="in12">[第二段 常陸宮邸の窮乏]</A><BR>71 
d184<P>⏎
d186<P>⏎
cd2:187-88 「なほいとわりなし。この受領どもの、おもしろき家造り好むが、この宮の木立を心につけて、放ちたまはせてむやと、ほとりにつきて、案内し申さするを、さやうにせさせたまひて、いとかう、もの恐ろしからぬ御住まひに、思し移ろはなむ。立ちとまりさぶらふ人も、いと<A HREF="#k02">堪へ</A><A NAME="t02">が</A>たし」<BR>⏎
<P>⏎
73 「なほいとわりなし。この受領どもの、おもしろき家造り好むが、この宮の木立を心につけて、放ちたまはせてむやと、ほとりにつきて、案内し申さするを、さやうにせさせたまひて、いとかう、もの恐ろしからぬ御住まひに、思し移ろはなむ。立ちとまりさぶらふ人も、いと<A HREF="#k02">堪へ</A><A NAME="t02">が</A>たし」<BR>⏎
d190<P>⏎
cd3:291-93 「あないみじや。人の聞き思はむこともあり。生ける世に、しか名残なきわざ、いかがせむ。かく恐ろしげに荒れ果てぬれど、親の御影とまりたる心地する古き住みかと思ふに、慰みてこそあれ」<BR>⏎
<P>⏎
 とうち泣きつつ、思しもかけず。<BR>⏎
75-76 「あないみじや。人の聞き思はむこともあり。生ける世に、しか名残なきわざ、いかがせむ。かく恐ろしげに荒れ果てぬれど、親の御影とまりたる心地する古き住みかと思ふに、慰みてこそあれ」<BR>⏎
 とうち泣きつつ、思しもかけず。<BR>⏎
d195<P>⏎
d197<P>⏎
cd2:198-99 とて取り紛らはしつつ、目に近き今日明日の見苦しさを繕はむとする時もあるを、いみじう諌めたまひて、<BR>⏎
<P>⏎
79 とて取り紛らはしつつ、目に近き今日明日の見苦しさを繕はむとする時もあるを、いみじう諌めたまひて、<BR>⏎
d1101<P>⏎
d1103<P>⏎
text15104 <A NAME="in13">[第三段 常陸宮邸の荒廃]</A><BR>82 
d1105<P>⏎
cd2:1106-107 はかなきことにても、見訪らひきこゆる人はなき御身なり。ただ御兄の禅師の君ばかりぞ、まれにも京に出でたまふ時は、さしのぞきたまへど、それも世になき古めき人にて、同じき法師といふなかにも、たづきなく、この世を離れたる聖にものしたまひて、しげき草、蓬をだに、かき払はむものとも思ひ寄りたまはず。<BR>⏎
<P>⏎
83 はかなきことにても、見訪らひきこゆる人はなき御身なり。ただ御兄の禅師の君ばかりぞ、まれにも京に出でたまふ時は、さしのぞきたまへど、それも世になき古めき人にて、同じき法師といふなかにも、たづきなく、この世を離れたる聖にものしたまひて、しげき草、蓬をだに、かき払はむものとも思ひ寄りたまはず。<BR>⏎
d1109<P>⏎
d1111<P>⏎
d1113<P>⏎
text15114 <A NAME="in14">[第四段 末摘花の気紛らし]</A><BR>87 
d1115<P>⏎
cd2:1116-117 はかなき古歌、物語などやうのすさびごとにてこそ、つれづれをも紛らはし、かかる住まひをも思ひ慰むるわざなめれ、さやうのことにも心遅くものしたまふ。わざと好ましからねど、おのづからまた急ぐことなきほどは、同じ心なる文通はしなどうちしてこそ、若き人は木草につけても心を慰めたまふべけれど、親のもてかしづきたまひし御心掟のままに、世の中をつつましきものに思して、まれにも言通ひたまふべき御あたりをも、さらに馴れたまはず、古りにたる御厨子開けて、『<A HREF="#k04">唐守</A><A NAME="t04">』</A>『藐姑射の刀自』『かぐや姫の物語』の絵に描きたるをぞ、時々のまさぐりものにしたまふ。<BR>⏎
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88 はかなき古歌、物語などやうのすさびごとにてこそ、つれづれをも紛らはし、かかる住まひをも思ひ慰むるわざなめれ、さやうのことにも心遅くものしたまふ。わざと好ましからねど、おのづからまた急ぐことなきほどは、同じ心なる文通はしなどうちしてこそ、若き人は木草につけても心を慰めたまふべけれど、親のもてかしづきたまひし御心掟のままに、世の中をつつましきものに思して、まれにも言通ひたまふべき御あたりをも、さらに馴れたまはず、古りにたる御厨子開けて、『<A HREF="#k04">唐守</A><A NAME="t04">』</A>『藐姑射の刀自』『かぐや姫の物語』の絵に描きたるをぞ、時々のまさぐりものにしたまふ。<BR>⏎
d1119<P>⏎
text15120 <A NAME="in15">[第五段 乳母子の侍従と叔母]</A><BR>90 
d1121<P>⏎
d1123<P>⏎
d1125<P>⏎
d1127<P>⏎
c1128 などなま憎げなる言葉ども言ひ聞かせつつ、時々聞こえけり。<BR>⏎
94 などなま憎げなる言葉ども言ひ聞かせつつ、時々聞こえけり。<BR>⏎
d1130<P>⏎
cd2:1131-132 「わがかく劣りのさまにて、あなづらはしく思はれたりしを、いかでかかる世の末に、この君を、わが娘どもの使人になしてしがな。心ばせなどの古びたる方こそあれ、いとうしろやすき後見ならむ」と思ひて、<BR>⏎
<P>⏎
96 「わがかく劣りのさまにて、あなづらはしく思はれたりしを、いかでかかる世の末に、この君を、わが娘どもの使人になしてしがな。心ばせなどの古びたる方こそあれ、いとうしろやすき後見ならむ」と思ひて、<BR>⏎
d1134<P>⏎
d1136<P>⏎
d1138<P>⏎
d1140<P>⏎
cd4:3141-144 など言よがるを、さらに受け引きたまはねば、<BR>⏎
 「あな憎。ことことしや。心一つに思し上がるとも、さる薮原に年経たまふ人を、大将殿も、やむごとなくしも思ひきこえたまはじ」<BR>⏎
 など怨じうけひけり。<BR>⏎
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101-103 など言よがるを、さらに受け引きたまはねば、<BR>⏎
 「あな憎。ことことしや。心一つに思し上がるとも、さる薮原に年経たまふ人を、大将殿も、やむごとなくしも思ひきこえたまはじ」<BR>⏎
 など怨じうけひけり。<BR>⏎
text15145 <H4>第二章 末摘花の物語 光る源氏帰京後</H4>104 
text15146 <A NAME="in21">[第一段 顧みられない末摘花]</A><BR>105 
d1147<P>⏎
cd2:1148-149 さるほどに、げに世の中に赦されたまひて、都に帰りたまふと、天の下の喜びにて立ち騒ぐ。我もいかで、人より先に、深き心ざしを御覧ぜられむとのみ、思ひきほふ男、女につけて、高きをも下れるをも、人の心ばへを見たまふに、あはれに思し知ること、さまざまなり。かやうにあわたたしきほどに、さらに思ひ出でたまふけしき見えで月日経ぬ。<BR>⏎
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106 さるほどに、げに世の中に赦されたまひて、都に帰りたまふと、天の下の喜びにて立ち騒ぐ。我もいかで、人より先に、深き心ざしを御覧ぜられむとのみ、思ひきほふ男、女につけて、高きをも下れるをも、人の心ばへを見たまふに、あはれに思し知ること、さまざまなり。かやうにあわたたしきほどに、さらに思ひ出でたまふけしき見えで月日経ぬ。<BR>⏎
d1151<P>⏎
cd7:4153-159 「さればよ。まさにかくたづきなく、人悪ろき御ありさまを、数まへたまふ人はありなむや。仏、聖も、罪軽きをこそ導きよくしたまふなれ、かかる御ありさまにて、たけく世を思し、宮、上などのおはせし時のままにならひたまへる、御心おごりの、いとほしきこと」<BR>⏎
 といとどをこがましげに思ひて、<BR>⏎
<P>⏎
 「なほ思ほし立ちね。<A HREF="#no6">世の憂き時は、見えぬ山路を</A><A NAME="te6">こ</A>そは尋ぬなれ。田舎などは、むつかしきものと思しやるらめど、ひたぶるに人悪ろげには、よももてなしきこえじ」<BR>⏎
<P>⏎
 などいとよく言へば、むげに屈んじにたる女ばら、<BR>⏎
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109-112 「さればよ。まさにかくたづきなく、人悪ろき御ありさまを、数まへたまふ人はありなむや。仏、聖も、罪軽きをこそ導きよくしたまふなれ、かかる御ありさまにて、たけく世を思し、宮、上などのおはせし時のままにならひたまへる、御心おごりの、いとほしきこと」<BR>⏎
 といとどをこがましげに思ひて、<BR>⏎
 「なほ思ほし立ちね。<A HREF="#no6">世の憂き時は、見えぬ山路を</A><A NAME="te6">こ</A>そは尋ぬなれ。田舎などは、むつかしきものと思しやるらめど、ひたぶるに人悪ろげには、よももてなしきこえじ」<BR>⏎
 などいとよく言へば、むげに屈んじにたる女ばら、<BR>⏎
d1161<P>⏎
c1162 ともどきつぶやく。<BR>⏎
114 ともどきつぶやく。<BR>⏎
d1164<P>⏎
d1166<P>⏎
cd2:1167-168 とてそそのかしきこゆれど、なほかくかけ離れて久しうなりたまひぬる人に頼みをかけたまふ。御心のうちに、「さりとも、あり経ても、思し出づるついであらじやは。あはれに心深き契りをしたまひしに、わが身は憂くて、かく忘られ<A HREF="#k09">たるに</A><A NAME="t09">こ</A>そあれ、風のつてにても、我かくいみじきありさまを聞きつけたまはば、かならず訪らひ出でたまひてむ」と、年ごろ思しければ、おほかたの御家居も、ありしよりけにあさましけれど、わが心もて、はかなき御調度どもなども取り失はせたまはず、心強く同じさまにて念じ過ごしたまふなりけり。<BR>⏎
<P>⏎
117 とてそそのかしきこゆれど、なほかくかけ離れて久しうなりたまひぬる人に頼みをかけたまふ。御心のうちに、「さりとも、あり経ても、思し出づるついであらじやは。あはれに心深き契りをしたまひしに、わが身は憂くて、かく忘られ<A HREF="#k09">たるに</A><A NAME="t09">こ</A>そあれ、風のつてにても、我かくいみじきありさまを聞きつけたまはば、かならず訪らひ出でたまひてむ」と、年ごろ思しければ、おほかたの御家居も、ありしよりけにあさましけれど、わが心もて、はかなき御調度どもなども取り失はせたまはず、心強く同じさまにて念じ過ごしたまふなりけり。<BR>⏎
d1170<P>⏎
text15171 <A NAME="in22">[第二段 法華御八講]</A><BR>119 
d1172<P>⏎
c1173 冬になりゆくままに、いとどかき付かむかたなく、悲しげに眺め過ごしたまふ。かの殿には、故院の御料の御八講、世の中ゆすりてしたまふ。ことに僧などは、なべてのは召さず、才すぐれ行なひにしみ、尊き限りを選らせたまひければ、この禅師の君参りたまへりけり。<BR>⏎
120 冬になりゆくままに、いとどかき付かむかたなく、悲しげに眺め過ごしたまふ。かの殿には、故院の御料の御八講、世の中ゆすりてしたまふ。ことに僧などは、なべてのは召さず、才すぐれ行なひにしみ、尊き限りを選らせたまひければ、この禅師の君参りたまへりけり。<BR>⏎
d1175<P>⏎
d1177<P>⏎
cd2:1179-180 言少なに、世の人に似ぬ御あはひにて、かひなき世の物語をだにえ聞こえ合はせたまはず。「さてもかばかりつたなき身のありさまを、あはれにおぼつかなくて過ぐしたまふは、心憂の仏菩薩や」と、つらうおぼゆるを、「げに限りなめり」と、やうやう思ひなりたまふに、大弐の北の方、にはかに来たり。<BR>⏎
<P>⏎
124 言少なに、世の人に似ぬ御あはひにて、かひなき世の物語をだにえ聞こえ合はせたまはず。「さてもかばかりつたなき身のありさまを、あはれにおぼつかなくて過ぐしたまふは、心憂の仏菩薩や」と、つらうおぼゆるを、「げに限りなめり」と、やうやう思ひなりたまふに、大弐の北の方、にはかに来たり。<BR>⏎
text15181 <A NAME="in23">[第三段 叔母、末摘花を誘う]</A><BR>125 
d1182<P>⏎
cd2:1183-184 例はさしもむつびぬを、誘ひ立てむの心にて、たてまつるべき御装束など調じて、よき車に乗りて、面もちけしき、ほこりかにもの思ひなげなるさまして、ゆくりもなく走り来て、門開けさするより、人悪ろく寂しきこと、限りもなし。左右の戸もみなよろぼひ倒れにければ、男ども助けてとかく開け騒ぐ。いづれか、この寂しき宿にもかならず分けたる跡あなる三つの径と、たどる。<BR>⏎
<P>⏎
126 例はさしもむつびぬを、誘ひ立てむの心にて、たてまつるべき御装束など調じて、よき車に乗りて、面もちけしき、ほこりかにもの思ひなげなるさまして、ゆくりもなく走り来て、門開けさするより、人悪ろく寂しきこと、限りもなし。左右の戸もみなよろぼひ倒れにければ、男ども助けてとかく開け騒ぐ。いづれか、この寂しき宿にもかならず分けたる跡あなる三つの径と、たどる。<BR>⏎
d1186<P>⏎
d1188<P>⏎
cd2:1189-190 とてうちも泣くべきぞかし。されど行く道に心をやりて、いと心地よげなり。<BR>⏎
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129 とてうちも泣くべきぞかし。されど行く道に心をやりて、いと心地よげなり。<BR>⏎
d1192<P>⏎
d1194<P>⏎
d1197<P>⏎
cd2:1198-199 「げにしかなむ思さるべけれど、生ける身を捨て、かくむくつけき住まひするたぐひははべらずやあらむ。大将殿の造り磨きたまはむにこそは、引きかへ玉の台にもなりかへらめとは、頼もしうははべれど、ただ今は、式部卿宮の御女よりほかに、心分けたまふ方もなかなり。昔より好き好きしき御心にて、なほざりに通ひたまひける所々、皆思し離れにたなり。ましてかうものはかなきさまにて、薮原に過ぐしたまへる人をば、心きよく我を頼みたまへるありさまと尋ねきこえたまふこと、いとかたくなむあるべき」<BR>⏎
<P>⏎
134 「げにしかなむ思さるべけれど、生ける身を捨て、かくむくつけき住まひするたぐひははべらずやあらむ。大将殿の造り磨きたまはむにこそは、引きかへ玉の台にもなりかへらめとは、頼もしうははべれど、ただ今は、式部卿宮の御女よりほかに、心分けたまふ方もなかなり。昔より好き好きしき御心にて、なほざりに通ひたまひける所々、皆思し離れにたなり。ましてかうものはかなきさまにて、薮原に過ぐしたまへる人をば、心きよく我を頼みたまへるありさまと尋ねきこえたまふこと、いとかたくなむあるべき」<BR>⏎
d1201<P>⏎
text15202 <A NAME="in24">[第四段 侍従、叔母に従って離京]</A><BR>136 
d1203<P>⏎
cd7:5204-210 されど動くべうもあらねば、よろづに言ひわづらひ暮らして、<BR>⏎
 「さらば侍従をだに」<BR>⏎
 と日の暮るるままに急げば、心あわたたしくて、泣く泣く、<BR>⏎
<P>⏎
 「さらばまづ今日は。かう責めたまふ送りばかりにまうではべらむ。かの聞こえたまふもことわりなり。また思しわづらふもさることにはべれば、中に見たまふるも心苦しくなむ」<BR>⏎
<P>⏎
 と忍びて聞こゆ。<BR>⏎
137-141 されど動くべうもあらねば、よろづに言ひわづらひ暮らして、<BR>⏎
 「さらば侍従をだに」<BR>⏎
 と日の暮るるままに急げば、心あわたたしくて、泣く泣く、<BR>⏎
 「さらばまづ今日は。かう責めたまふ送りばかりにまうではべらむ。かの聞こえたまふもことわりなり。また思しわづらふもさることにはべれば、中に見たまふるも心苦しくなむ」<BR>⏎
 と忍びて聞こゆ。<BR>⏎
d1212<P>⏎
d1214<P>⏎
cd3:1215-217 「絶ゆまじき筋を頼みし玉かづら<BR>⏎
  思ひのほかにかけ離れぬる<BR>⏎
<P>⏎
144 「絶ゆまじき筋を頼みし玉かづら<BR>  思ひのほかにかけ離れぬる<BR>⏎
d1219<P>⏎
cd2:1220-221 とていみじう泣いたまふ。この人も、ものも聞こえやらず。<BR>⏎
<P>⏎
146 とていみじう泣いたまふ。この人も、ものも聞こえやらず。<BR>⏎
d1223<P>⏎
cd2:1224-225 「玉かづら絶えてもやまじ行く道の<BR>⏎
  手向の神もかけて誓はむ<BR>⏎
148 「玉かづら絶えてもやまじ行く道の<BR>  手向の神もかけて誓はむ<BR>⏎
d1227<P>⏎
cd2:1230-231 とつぶやかれて、心も空にて引き出づれば、<A HREF="#no7">かへり見のみ</A><A NAME="te7">せ</A>られける。<BR>⏎
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152 とつぶやかれて、心も空にて引き出づれば、<A HREF="#no7">かへり見のみ</A><A NAME="te7">せ</A>られける。<BR>⏎
cd3:2233-235 「いでやことわりぞ。いかでか立ち止まりたまはむ。われらも、えこそ<A HREF="#k10">念じ</A><A NAME="t10">果</A>つまじけれ」<BR>⏎
 とおのが身々につけたるたよりども思ひ出でて、止まるまじう思へるを、人悪ろく聞きおはす。<BR>⏎
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154-155 「いでやことわりぞ。いかでか立ち止まりたまはむ。われらも、えこそ<A HREF="#k10">念じ</A><A NAME="t10">果</A>つまじけれ」<BR>⏎
 とおのが身々につけたるたよりども思ひ出でて、止まるまじう思へるを、人悪ろく聞きおはす。<BR>⏎
text15236 <A NAME="in25">[第五段 常陸宮邸の寂寥]</A><BR>156 
d1237<P>⏎
d1239<P>⏎
cd2:1240-241 かの殿には、<A HREF="#k11">めづらし人</A><A NAME="t11">に</A>、いとどもの騒がしき御ありさまにて、いとやむごとなく思されぬ所々には、わざともえ訪れたまはず。まして「その人はまだ世にやおはすらむ」とばかり思し出づる折もあれど、尋ねたまふべき<A HREF="#k12">御心ざし</A><A NAME="t12">も</A>急がであり経るに、年変はりぬ。<BR>⏎
<P>⏎
158 かの殿には、<A HREF="#k11">めづらし人</A><A NAME="t11">に</A>、いとどもの騒がしき御ありさまにて、いとやむごとなく思されぬ所々には、わざともえ訪れたまはず。まして「その人はまだ世にやおはすらむ」とばかり思し出づる折もあれど、尋ねたまふべき<A HREF="#k12">御心ざし</A><A NAME="t12">も</A>急がであり経るに、年変はりぬ。<BR>⏎
text15242 <H4>第三章 末摘花の物語 久しぶりの再会の物語</H4>159 
text15243 <A NAME="in31">[第一段 花散里訪問途上]</A><BR>160 
d1244<P>⏎
d1246<P>⏎
d1248<P>⏎
c1250 「ここは常陸の宮ぞかしな」<BR>⏎
164 「ここは常陸の宮ぞかしな」<BR>⏎
c1253 「ここにありし人は、まだや眺むらむ。訪らふべきを、わざとものせむも所狭し。かかるついでに、入りて消息せよ。よく尋ね入りてを、うち出でよ。人違へしてはをこならむ」<BR>⏎
167 「ここにありし人は、まだや眺むらむ。訪らふべきを、わざとものせむも所狭し。かかるついでに、入りて消息せよ。よく尋ね入りてを、うち出でよ。人違へしてはをこならむ」<BR>⏎
d1255<P>⏎
d1257<P>⏎
cd5:2258-262 「亡き人を恋ふる袂のひまなきに<BR>⏎
  荒れたる軒のしづくさへ添ふ」<BR>⏎
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 も心苦しきほどになむありける。<BR>⏎
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170-171 「亡き人を恋ふる袂のひまなきに<BR>  荒れたる軒のしづくさへ添ふ」<BR>⏎
 も心苦しきほどになむありける。<BR>⏎
text15263 <A NAME="in32">[第二段 惟光、邸内を探る]</A><BR>172 
d1264<P>⏎
d1266<P>⏎
c1271 「それはほかになむものしたまふ。されど思しわくまじき女なむはべる」<BR>⏎
178 「それはほかになむものしたまふ。されど思しわくまじき女なむはべる」<BR>⏎
d1273<P>⏎
cd2:1274-275 内には、思ひも寄らず、狩衣姿なる男、忍びやかにもてなし、なごやかなれば、見ならはずなりにける目にて、「もし狐などの変化にや」とおぼゆれど、近う寄りて、<BR>⏎
<P>⏎
180 内には、思ひも寄らず、狩衣姿なる男、忍びやかにもてなし、なごやかなれば、見ならはずなりにける目にて、「もし狐などの変化にや」とおぼゆれど、近う寄りて、<BR>⏎
d1277<P>⏎
d1279<P>⏎
d1281<P>⏎
cd3:2282-284 とややくづし出でて、問はず語りもしつべきが、<A HREF="#k16">むつかしけれ</A><A NAME="t16">ば</A>、<BR>⏎
<P>⏎
 「よしよし。まづかくなむ、聞こえさせむ」<BR>⏎
184-185 とややくづし出でて、問はず語りもしつべきが、<A HREF="#k16">むつかしけれ</A><A NAME="t16">ば</A>、<BR>⏎
 「よしよし。まづかくなむ、聞こえさせむ」<BR>⏎
d1286<P>⏎
text15287 <A NAME="in33">[第三段 源氏、邸内に入る]</A><BR>187 
d1288<P>⏎
cd2:1292-293 とありさま聞こゆ。<BR>⏎
<P>⏎
191 とありさま聞こゆ。<BR>⏎
cd2:1296-297 とわが御心の情けなさも思し知らる。<BR>⏎
<P>⏎
194 とわが御心の情けなさも思し知らる。<BR>⏎
d1299<P>⏎
d1301<P>⏎
d1303<P>⏎
d1305<P>⏎
cd3:1306-308 「尋ねても我こそ訪はめ道もなく<BR>⏎
  深き蓬のもとの心を」<BR>⏎
<P>⏎
199 「尋ねても我こそ訪はめ道もなく<BR>  深き蓬のもとの心を」<BR>⏎
d1311<P>⏎
c1312 「<A HREF="#no11">御傘さぶらふ。げに木の下露は、雨にまさりて</A><A NAME="te11">」</A><BR>⏎
202 「<A HREF="#no11">御傘さぶらふ。げに木の下露は、雨にまさりて</A><A NAME="te11">」</A><BR>⏎
d1314<P>⏎
text15315 <A NAME="in34">[第四段 末摘花と再会]</A><BR>204 
d1316<P>⏎
d1318<P>⏎
d1320<P>⏎
d1322<P>⏎
cd6:3323-328 とて帷子をすこしかきやりたまへれば、例の、いとつつましげに、とみにも応へきこえたまはず。かくばかり分け入りたまへるが浅からぬに、思ひ起こしてぞ、ほのかに聞こえ出でたまひける。<BR>⏎
<P>⏎
 「かかる草隠れに過ぐしたまひける年月のあはれも、おろかならず、また変はらぬ心ならひに、人の御心のうちもたどり知らずながら、分け入りはべりつる露けさなどを、いかが思す。年ごろのおこたり、はたなべての世に思しゆるすらむ。今よりのちの御心にかなはざらむなむ、<A HREF="#no13">言ひしに違ふ罪</A><A NAME="te13">も</A>負ふべき」<BR>⏎
<P>⏎
 などさしも思されぬことも、情け情けしう聞こえなしたまふことども、<A HREF="#k18">あむめり</A><A NAME="t18">。</A><BR>⏎
<P>⏎
208-210 とて帷子をすこしかきやりたまへれば、例の、いとつつましげに、とみにも応へきこえたまはず。かくばかり分け入りたまへるが浅からぬに、思ひ起こしてぞ、ほのかに聞こえ出でたまひける。<BR>⏎
 「かかる草隠れに過ぐしたまひける年月のあはれも、おろかならず、また変はらぬ心ならひに、人の御心のうちもたどり知らずながら、分け入りはべりつる露けさなどを、いかが思す。年ごろのおこたり、はたなべての世に思しゆるすらむ。今よりのちの御心にかなはざらむなむ、<A HREF="#no13">言ひしに違ふ罪</A><A NAME="te13">も</A>負ふべき」<BR>⏎
 などさしも思されぬことも、情け情けしう聞こえなしたまふことども、<A HREF="#k18">あむめり</A><A NAME="t18">。</A><BR>⏎
d1330<P>⏎
cd5:2331-335 「藤波のうち過ぎがたく見えつるは<BR>⏎
  松こそ宿のしるしなりけれ<BR>⏎
<P>⏎
 数ふれば、こよなう積もりぬらむかし。都に変はりにけることの多かりけるも、さまざまあはれになむ。今、のどかにぞ<A HREF="#no15">鄙の別れに衰へし</A><A NAME="te15">世</A>の物語も聞こえ尽くすべき。年経たまへらむ春秋の暮らしがたさなども、誰にかは愁へたまはむと、うらもなくおぼゆるも、かつはあやしうなむ」<BR>⏎
<P>⏎
212-213 「藤波のうち過ぎがたく見えつるは<BR>  松こそ宿のしるしなりけれ<BR>⏎
 数ふれば、こよなう積もりぬらむかし。都に変はりにけることの多かりけるも、さまざまあはれになむ。今、のどかにぞ<A HREF="#no15">鄙の別れに衰へし</A><A NAME="te15">世</A>の物語も聞こえ尽くすべき。年経たまへらむ春秋の暮らしがたさなども、誰にかは愁へたまはむと、うらもなくおぼゆるも、かつはあやしうなむ」<BR>⏎
d1337<P>⏎
cd3:1338-340 「年を経て待つしるしなきわが宿を<BR>⏎
  花のたよりに過ぎぬばかりか」<BR>⏎
<P>⏎
215 「年を経て待つしるしなきわが宿を<BR>  花のたよりに過ぎぬばかりか」<BR>⏎
d1342<P>⏎
d1344<P>⏎
d1346<P>⏎
text15347 <H4>第四章 末摘花の物語 その後の物語</H4>219 
text15348 <A NAME="in41">[第一段 末摘花への生活援助]</A><BR>220 
d1349<P>⏎
d1351<P>⏎
d1353<P>⏎
cd2:1354-355 など人びとの上まで思しやりつつ、訪らひきこえたまへば、かくあやしき蓬のもとには、置き所なきまで、女ばらも空を仰ぎてなむ、そなたに向きて喜びきこえける。<BR>⏎
<P>⏎
223 など人びとの上まで思しやりつつ、訪らひきこえたまへば、かくあやしき蓬のもとには、置き所なきまで、女ばらも空を仰ぎてなむ、そなたに向きて喜びきこえける。<BR>⏎
d1357<P>⏎
text15358 <A NAME="in42">[第二段 常陸宮邸に活気戻る]</A><BR>225 
d1359<P>⏎
cd2:1360-361 今は限りと、あなづり果てて、さまざまに迷ひ散りあかれし<A HREF="#k20">上下</A><A NAME="t20">の</A>人びと、我も我も参らむと争ひ出づる人もあり。心ばへなど、はた埋もれいたきまでよくおはする御ありさまに、心やすくならひて、ことなることなきなま受領などやうの家にある人は、ならはずはしたなき心地するもありて、うちつけの心みえに参り帰り、君は、いにしへにもまさりたる御勢のほどにて、ものの思ひやりもまして添ひたまひにければ、こまやかに思しおきてたるに、にほひ出でて、宮の内やうやう人目見え、木草の葉もただすごくあはれに見えなされしを、遣水かき払ひ、前栽のもとだちも涼しうしなしなどして、ことなるおぼえなき下家司の、ことに<A HREF="#k21">仕へ</A><A NAME="t21">ま</A>ほしきは、かく御心とどめて思さるることなめりと<A HREF="#k22">見取り</A><A NAME="t22">て</A>、御けしき賜はりつつ、追従し仕うまつる。<BR>⏎
<P>⏎
226 今は限りと、あなづり果てて、さまざまに迷ひ散りあかれし<A HREF="#k20">上下</A><A NAME="t20">の</A>人びと、我も我も参らむと争ひ出づる人もあり。心ばへなど、はた埋もれいたきまでよくおはする御ありさまに、心やすくならひて、ことなることなきなま受領などやうの家にある人は、ならはずはしたなき心地するもありて、うちつけの心みえに参り帰り、君は、いにしへにもまさりたる御勢のほどにて、ものの思ひやりもまして添ひたまひにければ、こまやかに思しおきてたるに、にほひ出でて、宮の内やうやう人目見え、木草の葉もただすごくあはれに見えなされしを、遣水かき払ひ、前栽のもとだちも涼しうしなしなどして、ことなるおぼえなき下家司の、ことに<A HREF="#k21">仕へ</A><A NAME="t21">ま</A>ほしきは、かく御心とどめて思さるることなめりと<A HREF="#k22">見取り</A><A NAME="t22">て</A>、御けしき賜はりつつ、追従し仕うまつる。<BR>⏎
text15362 <A NAME="in43">[第三段 末摘花のその後]</A><BR>227 
d1363<P>⏎
d1365<P>⏎
d2367-368
<P>⏎
text15369 <a name="in51">【出典】<BR>230 
c1370</a><A NAME="no1">出典1</A> わくらばに問ふ人あらば須磨の浦に藻塩垂れつつわぶと答へよ(古今集雑下-九六二 在原行平)<A HREF="#te1">(戻)</A><BR>⏎
231<A NAME="no1">出典1</A> わくらばに問ふ人あらば須磨の浦に藻塩垂れつつわぶと答へよ(古今集雑下-九六二 在原行平)<A HREF="#te1">(戻)</A><BR>⏎
d1386
text15387<p> <a name="in52">【校訂】<BR>247 
c1389</a><A NAME="k01">校訂1</A> 形--かた(かた/$<朱>)かたち<A HREF="#t01">(戻)</A><BR>⏎
249<A NAME="k01">校訂1</A> 形--かた(かた/$<朱>)かたち<A HREF="#t01">(戻)</A><BR>⏎
d1411</p>⏎
d1418</p>⏎
i0281
diffsrc/original/text16.htmlsrc/modified/text16.html
cd2:18-9<body background="wallppr063.gif">⏎
First updated 9/20/1996(ver.1-1)<BR>⏎
8<BODY>⏎
cd3:210-12Last updated 9/21/2010(ver.2-3)<BR>⏎
渋谷栄一校訂(C)<BR>⏎
<P
>⏎
9-10<ADDRESS>Last updated 9/21/2010(ver.2-3)<BR>⏎
渋谷栄一校訂(C)</ADDRESS>⏎
d114<P>⏎
i014
d130<P>⏎
d147<P>⏎
d150<P>⏎
text1651 <H4>第一章 空蝉の物語 逢坂関での再会の物語</H4>45 
text1652 <A NAME="in11">[第一段 空蝉、夫と常陸国下向]</A><BR>46 
d153<P>⏎
d155<P>⏎
text1656 <A NAME="in12">[第二段 源氏、石山寺参詣]</A><BR>48 
d157<P>⏎
d159<P>⏎
cd2:160-61 打出の浜来るほどに、「<A HREF="#k01">殿は</A><A NAME="t01">、</A>粟田山越えたまひぬ」とて、御前の人びと、道もさりあへず来込みぬれば、関山に皆下りゐて、ここかしこの杉の下に車どもかき下ろし、木隠れに居かしこまりて過ぐしたてまつる。車など、かたへは後らかし、先に立てなどしたれど、なほ類広く見ゆ。<BR>⏎
<P>⏎
50 打出の浜来るほどに、「<A HREF="#k01">殿は</A><A NAME="t01">、</A>粟田山越えたまひぬ」とて、御前の人びと、道もさりあへず来込みぬれば、関山に皆下りゐて、ここかしこの杉の下に車どもかき下ろし、木隠れに居かしこまりて過ぐしたてまつる。車など、かたへは後らかし、先に立てなどしたれど、なほ類広く見ゆ。<BR>⏎
d163<P>⏎
text1664 <A NAME="in13">[第三段 逢坂の関での再会]</A><BR>52 
d165<P>⏎
d167<P>⏎
d170<P>⏎
cd3:171-73 「行くと来とせき止めがたき涙をや<BR>⏎
  絶えぬ清水と人は見るらむ<BR>⏎
<P>⏎
56 「行くと来とせき止めがたき涙をや<BR>  絶えぬ清水と人は見るらむ<BR>⏎
d175<P>⏎
text1676 <H4>第二章 空蝉の物語 手紙を贈る</H4>58 
text1677 <A NAME="in21">[第一段 昔の小君と紀伊守]</A><BR>59 
d178<P>⏎
cd2:179-80 石山より出でたまふ御迎へに右衛門佐参りてぞ、まかり過ぎしかしこまりなど申す。昔童にて、いとむつましうらうたきものにしたまひしかば、かうぶりなど得しまで、この御徳に隠れたりしを、おぼえぬ世の騷ぎありしころ、ものの聞こえに憚りて、常陸に下りしをぞ、すこし心置きて年ごろは思しけれど、色にも出だしたまはず、昔のやうにこそあらねど、なほ親しき家人のうちには数へたまひけり。<BR>⏎
<P>⏎
60 石山より出でたまふ御迎へに右衛門佐参りてぞ、まかり過ぎしかしこまりなど申す。昔童にて、いとむつましうらうたきものにしたまひしかば、かうぶりなど得しまで、この御徳に隠れたりしを、おぼえぬ世の騷ぎありしころ、ものの聞こえに憚りて、常陸に下りしをぞ、すこし心置きて年ごろは思しけれど、色にも出だしたまはず、昔のやうにこそあらねど、なほ親しき家人のうちには数へたまひけり。<BR>⏎
d182<P>⏎
text1683 <A NAME="in22">[第二段 空蝉へ手紙を贈る]</A><BR>62 
d184<P>⏎
d186<P>⏎
cd2:188-89  わくらばに行き逢ふ道を頼みしも<BR>⏎
  なほかひなしや<A HREF="#no2">潮ならぬ海</A><A NAME="te2"><BR>⏎
65  わくらばに行き逢ふ道を頼みしも<BR>  なほかひなしや<A HREF="#no2">潮ならぬ海</A><A NAME="te2"><BR>⏎
d191<P>⏎
d193<P>⏎
d195<P>⏎
cd4:296-99 とて賜へれば、かたじけなくて持て行きて、<BR>⏎
<P>⏎
 「なほ聞こえたまへ。昔にはすこし思しのくことあらむと思ひたまふるに、同じやうなる御心のなつかしさなむ、いとどありがたき。すさびごとぞ用なきことと思へど、えこそすくよかに聞こえ返さね。女にては、負けきこえたまへらむに、罪ゆるされぬべし」<BR>⏎
<P>⏎
69-70 とて賜へれば、かたじけなくて持て行きて、<BR>⏎
 「なほ聞こえたまへ。昔にはすこし思しのくことあらむと思ひたまふるに、同じやうなる御心のなつかしさなむ、いとどありがたき。すさびごとぞ用なきことと思へど、えこそすくよかに聞こえ返さね。女にては、負けきこえたまへらむに、罪ゆるされぬべし」<BR>⏎
d1101<P>⏎
cd2:1102-103 「逢坂の関やいかなる関なれば<BR>⏎
  しげき嘆きの仲を分くらむ<BR>⏎
72 「逢坂の関やいかなる関なれば<BR>  しげき嘆きの仲を分くらむ<BR>⏎
d1105<P>⏎
cd2:1106-107 と聞こえたり。あはれもつらさも、忘れぬふしと思し置かれたる人なれば、折々は、なほのたまひ動かしけり。<BR>⏎
<P>⏎
74 と聞こえたり。あはれもつらさも、忘れぬふしと思し置かれたる人なれば、折々は、なほのたまひ動かしけり。<BR>⏎
text16108 <H4>第三章 空蝉の物語 夫の死去後に出家</H4>75 
text16109 <A NAME="in31">[第一段 夫常陸介死去]</A><BR>76 
d1110<P>⏎
d1112<P>⏎
d1114<P>⏎
c1115 とのみ明け暮れ言ひけり。<BR>⏎
79 とのみ明け暮れ言ひけり。<BR>⏎
d1117<P>⏎
d1119<P>⏎
cd2:1120-121 とうしろめたう悲しきことに、言ひ思へど、心にえ止めぬものにて、亡せぬ。<BR>⏎
<P>⏎
82 とうしろめたう悲しきことに、言ひ思へど、心にえ止めぬものにて、亡せぬ。<BR>⏎
text16122 <A NAME="in32">[第二段 空蝉、出家す]</A><BR>83 
d1123<P>⏎
cd2:1124-125 しばしこそ、「さのたまひしものを」など、情けつくれど、うはべこそあれ、つらきこと多かり。とあるもかかるも世の道理なれば、身一つの憂きことにて、嘆き明かし暮らす。ただこの河内守のみぞ、昔より好き心ありて、すこし情けがりける。<BR>⏎
<P>⏎
84 しばしこそ、「さのたまひしものを」など、情けつくれど、うはべこそあれ、つらきこと多かり。とあるもかかるも世の道理なれば、身一つの憂きことにて、嘆き明かし暮らす。ただこの河内守のみぞ、昔より好き心ありて、すこし情けがりける。<BR>⏎
d1127<P>⏎
d1130<P>⏎
cd5:3133-137 などぞあいなのさかしらやなどぞ、はべるめる。<BR>⏎

<P>⏎
 <a name="in41">【出典】<BR>⏎
</a><A NAME="no1">出典1</A> 甲斐が嶺を嶺越し山越し吹く風に人にもがもやことづてやらむ(古今集東歌-一〇九八 甲斐歌)<A HREF="#te1">(戻)</A><BR>⏎
90-92 などぞあいなのさかしらやなどぞ、はべるめる。<BR>⏎
 <A NAME="in41">【出典】</A><BR>⏎
<A NAME="no1">出典1</A> 甲斐が嶺を嶺越し山越し吹く風に人にもがもやことづてやらむ(古今集東歌-一〇九八 甲斐歌)<A HREF="#te1">(戻)</A><BR>⏎
d1139
c1140<p> <a name="in42">【校訂】<BR>⏎
94 <A NAME="in42">【校訂】</A><BR>
c1142</a><A NAME="k01">校訂1</A> 殿は--との(の/+は)<A HREF="#t01">(戻)</A><BR>⏎
96<A NAME="k01">校訂1</A> 殿は--との(の/+は)<A HREF="#t01">(戻)</A><BR>⏎
d1146</p>⏎
d1153</p>⏎
i0110
diffsrc/original/text17.htmlsrc/modified/text17.html
cd2:18-9<body background="wallppr063.gif">⏎
First updated 9/20/1996(ver.1-1)<BR>⏎
8<BODY>⏎
cd3:210-12Last updated 9/21/2010(ver.2-3)<BR>⏎
渋谷栄一校訂(C)<BR>⏎
<P
>⏎
9-10<ADDRESS>Last updated 9/21/2010(ver.2-3)<BR>⏎
渋谷栄一校訂(C)</ADDRESS>⏎
d114<P>⏎
i014
d136<P>⏎
d165<P>⏎
d168<P>⏎
text1769 <H4>第一章 前斎宮の物語 前斎宮をめぐる朱雀院と光る源氏の確執</H4>63 
text1770 <A NAME="in11">[第一段 朱雀院、前斎宮の入内に際して贈り物する]</A><BR>64 
d171<P>⏎
d173<P>⏎
cd7:374-80 院はいと口惜しく思し召せど、人悪ろければ、御消息など絶えにたるを、その日になりて、えならぬ御よそひども、御櫛の筥打乱の筥香壺の筥ども、世の常ならず、くさぐさの御薫物ども、薫衣香、またなきさまに、百歩の外を多く過ぎ匂ふまで、心ことに調へさせたまへり。大臣見たまひもせむにと、かねてよりや思しまうけけむ、いとわざとがましかむめり。<BR>⏎
<P>⏎
 殿も渡りたまへるほどにて、「<A HREF="#k01">かくなむ</A><A NAME="t01">」</A>と、女別当御覧ぜさす。ただ御櫛の筥の片つ方を見たまふに、尽きせずこまかになまめきて、めづらしきさまなり。挿櫛の筥の心葉に、<BR>⏎
<P>⏎
 「別れ路に添へし小櫛をかことにて<BR>⏎
  遥けき仲と神やいさめし」<BR>⏎
<P>⏎
66-68 院はいと口惜しく思し召せど、人悪ろければ、御消息など絶えにたるを、その日になりて、えならぬ御よそひども、御櫛の筥打乱の筥香壺の筥ども、世の常ならず、くさぐさの御薫物ども、薫衣香、またなきさまに、百歩の外を多く過ぎ匂ふまで、心ことに調へさせたまへり。大臣見たまひもせむにと、かねてよりや思しまうけけむ、いとわざとがましかむめり。<BR>⏎
 殿も渡りたまへるほどにて、「<A HREF="#k01">かくなむ</A><A NAME="t01">」</A>と、女別当御覧ぜさす。ただ御櫛の筥の片つ方を見たまふに、尽きせずこまかになまめきて、めづらしきさまなり。挿櫛の筥の心葉に、<BR>⏎
 「別れ路に添へし小櫛をかことにて<BR>  遥けき仲と神やいさめし」<BR>⏎
cd6:382-87 「かの下りたまひしほど、御心に思ほしけむこと、かう年経て帰りたまひて、その御心ざしをも遂げたまふべきほどに、かかる違ひ目のあるを、いかに思すらむ。御位を去り、もの静かにて、世を恨めしとや思すらむ」など、「我になりて心動くべきふしかな」と、思し続けたまふに、いとほしく、「何にかくあながちなることを思ひはじめて、心苦しく思ほし悩ますらむ。つらしとも、思ひきこえしかど、またなつかしうあはれなる御心ばへを」など、思ひ乱れたまひて、とばかりうち眺めたまへり。<BR>⏎
<P>⏎
 「この御返りは、いかやうにか聞こえさせたまふらむ。また御消息もいかが」<BR>⏎
<P>⏎
 など聞こえたまへど、いとかたはらいたければ、御文はえ引き出でず。宮は悩ましげに<A HREF="#k02">思ほして</A><A NAME="t02">、</A>御返りいともの憂くしたまへど、<BR>⏎
<P>⏎
70-72 「かの下りたまひしほど、御心に思ほしけむこと、かう年経て帰りたまひて、その御心ざしをも遂げたまふべきほどに、かかる違ひ目のあるを、いかに思すらむ。御位を去り、もの静かにて、世を恨めしとや思すらむ」など、「我になりて心動くべきふしかな」と、思し続けたまふに、いとほしく、「何にかくあながちなることを思ひはじめて、心苦しく思ほし悩ますらむ。つらしとも、思ひきこえしかど、またなつかしうあはれなる御心ばへを」など、思ひ乱れたまひて、とばかりうち眺めたまへり。<BR>⏎
 「この御返りは、いかやうにか聞こえさせたまふらむ。また御消息もいかが」<BR>⏎
 など聞こえたまへど、いとかたはらいたければ、御文はえ引き出でず。宮は悩ましげに<A HREF="#k02">思ほして</A><A NAME="t02">、</A>御返りいともの憂くしたまへど、<BR>⏎
d189<P>⏎
cd2:190-91 と人びとそそのかしわづらひきこゆるけはひを聞きたまひて、<BR>⏎
<P>⏎
74 と人びとそそのかしわづらひきこゆるけはひを聞きたまひて、<BR>⏎
d193<P>⏎
d195<P>⏎
cd3:196-98 「別るとて遥かに言ひし一言も<BR>⏎
  かへりてものは今ぞ悲しき」<BR>⏎
<P>⏎
77 「別るとて遥かに言ひし一言も<BR>  かへりてものは今ぞ悲しき」<BR>⏎
d1100<P>⏎
text17101 <A NAME="in12">[第二段 源氏、朱雀院の心中を思いやる]</A><BR>79 
d1102<P>⏎
d1104<P>⏎
d1106<P>⏎
cd2:1107-108 「あはれおはせましかば、いかにかひありて、思しいたづかまし」と、昔の御心ざま思し出づるに、「おほかたの世につけては、惜しうあたらしかりし人の御ありさまぞや。さこそえあらぬものなりけれ。よしありし方は、なほすぐれて」、物の折ごとに思ひ出できこえたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
82 「あはれおはせましかば、いかにかひありて、思しいたづかまし」と、昔の御心ざま思し出づるに、「おほかたの世につけては、惜しうあたらしかりし人の御ありさまぞや。さこそえあらぬものなりけれ。よしありし方は、なほすぐれて」、物の折ごとに思ひ出できこえたまふ。<BR>⏎
text17109 <A NAME="in13">[第三段 帝と弘徽殿女御と斎宮女御]</A><BR>83 
d1110<P>⏎
d1112<P>⏎
d1114<P>⏎
d1117<P>⏎
cd2:1118-119 弘徽殿には、御覧じつきたれば、睦ましうあはれに心やすく思ほし、これは人ざまもいたうしめり、恥づかしげに、大臣の御もてなしもやむごとなくよそほしければ、あなづりにくく思されて、御宿直などは等しくしたまへど、うちとけたる御童遊びに、昼など渡らせたまふことは、あなたがちにおはします。<BR>⏎
<P>⏎
88 弘徽殿には、御覧じつきたれば、睦ましうあはれに心やすく思ほし、これは人ざまもいたうしめり、恥づかしげに、大臣の御もてなしもやむごとなくよそほしければ、あなづりにくく思されて、御宿直などは等しくしたまへど、うちとけたる御童遊びに、昼など渡らせたまふことは、あなたがちにおはします。<BR>⏎
d1121<P>⏎
text17122 <A NAME="in14">[第四段 源氏、朱雀院と語る]</A><BR>90 
d1123<P>⏎
d1125<P>⏎
d1127<P>⏎
d1130<P>⏎
cd2:1131-132 かく隙間なくて、二所さぶらひたまへば、兵部卿宮、すがすがともえ思ほし立たず、「帝おとなびたまひなば、さりとも、え思ほし捨てじ」とぞ、待ち過ぐしたまふ。二所の御おぼえども、とりどりに挑みたまへり。<BR>⏎
<P>⏎
95 かく隙間なくて、二所さぶらひたまへば、兵部卿宮、すがすがともえ思ほし立たず、「帝おとなびたまひなば、さりとも、え思ほし捨てじ」とぞ、待ち過ぐしたまふ。二所の御おぼえども、とりどりに挑みたまへり。<BR>⏎
text17133 <H4>第二章 後宮の物語 中宮の御前の物語絵合せ</H4>96 
text17134 <A NAME="in21">[第一段 権中納言方、絵を集める]</A><BR>97 
d1135<P>⏎
d1137<P>⏎
cd2:1138-139 殿上の若き人びとも、このこと<A HREF="#k05">まねぶ</A><A NAME="t05">を</A>ば、御心とどめてをかしきものに思ほしたれば、ましてをかしげなる人の、心ばへあるさまに、まほならず描きすさび、なまめかしう添ひ臥して、とかく筆うちやすらひたまへる御さま、らうたげさに御心しみて、いとしげう渡らせたまひて、ありしよりけに御思ひまされるを、権中納言、聞きたまひて、あくまでかどかどしく今めきたまへる御心にて、「われ人に劣りなむや」と思しはげみて、すぐれたる上手どもを召し取りて、いみじくいましめて、またなきさまなる絵どもを、二なき紙どもに描き集めさせたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
99 殿上の若き人びとも、このこと<A HREF="#k05">まねぶ</A><A NAME="t05">を</A>ば、御心とどめてをかしきものに思ほしたれば、ましてをかしげなる人の、心ばへあるさまに、まほならず描きすさび、なまめかしう添ひ臥して、とかく筆うちやすらひたまへる御さま、らうたげさに御心しみて、いとしげう渡らせたまひて、ありしよりけに御思ひまされるを、権中納言、聞きたまひて、あくまでかどかどしく今めきたまへる御心にて、「われ人に劣りなむや」と思しはげみて、すぐれたる上手どもを召し取りて、いみじくいましめて、またなきさまなる絵どもを、二なき紙どもに描き集めさせたまふ。<BR>⏎
text17140 <A NAME="in22">[第二段 源氏方、須磨の絵日記を準備]</A><BR>100 
d1141<P>⏎
cd6:3143-148 とておもしろく心ばへある限りを選りつつ描かせたまふ。例の月次の絵も、見馴れぬさまに、言の葉を書き続けて、御覧ぜさせたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
 わざとをかしうしたれば、またこなたにてもこれを御覧ずるに、心やすくも取り出でたまはず、いといたく秘めて、この御方へ持て渡らせたまふを惜しみ、領じたまへば、大臣、聞き<A HREF="#k06">たまひて</A><A NAME="t06">、</A><BR>⏎
<P>⏎
 「なほ権中納言の<A HREF="#k07">御心ばへ</A><A NAME="t07">の</A>若々しさこそ、改まりがたかめれ」<BR>⏎
<P>⏎
102-104 とておもしろく心ばへある限りを選りつつ描かせたまふ。例の月次の絵も、見馴れぬさまに、言の葉を書き続けて、御覧ぜさせたまふ。<BR>⏎
 わざとをかしうしたれば、またこなたにてもこれを御覧ずるに、心やすくも取り出でたまはず、いといたく秘めて、この御方へ持て渡らせたまふを惜しみ、領じたまへば、大臣、聞き<A HREF="#k06">たまひて</A><A NAME="t06">、</A><BR>⏎
 「なほ権中納言の<A HREF="#k07">御心ばへ</A><A NAME="t07">の</A>若々しさこそ、改まりがたかめれ」<BR>⏎
d1150<P>⏎
d1152<P>⏎
d1155<P>⏎
cd5:2156-160 かの旅の御日記の箱をも取り出でさせたまひて、このついでにぞ、女君にも見せたてまつりたまひける。<A HREF="#k08">御心</A><A NAME="t08">深く</A>知らで今見む<A HREF="#k09">人だに</A><A NAME="t09">、すこし</A>もの思ひ知らむ人は、涙惜しむまじくあはれなり。まいて忘れがたく、その世の夢を思し覚ます折なき<A HREF="#k10">御心どもには</A><A NAME="t10">、取り</A>かへし悲しう思し出でらる。今まで見せたまはざりける恨みをぞ聞こえたまひける。<BR>⏎
<P>⏎
 「一人ゐて嘆きしよりは海人の住む<BR>⏎
  かたをかくてぞ見るべかりける<BR>⏎
<P>⏎
109-110 かの旅の御日記の箱をも取り出でさせたまひて、このついでにぞ、女君にも見せたてまつりたまひける。<A HREF="#k08">御心</A><A NAME="t08">深く</A>知らで今見む<A HREF="#k09">人だに</A><A NAME="t09">、すこし</A>もの思ひ知らむ人は、涙惜しむまじくあはれなり。まいて忘れがたく、その世の夢を思し覚ます折なき<A HREF="#k10">御心どもには</A><A NAME="t10">、取り</A>かへし悲しう思し出でらる。今まで見せたまはざりける恨みをぞ聞こえたまひける。<BR>⏎
 「一人ゐて嘆きしよりは海人の住む<BR>  かたをかくてぞ見るべかりける<BR>⏎
d1163<P>⏎
cd5:2164-168 「憂きめ見しその折よりも今日はまた<BR>⏎
  過ぎにしかたにかへる涙か」<BR>⏎
<P>⏎
 中宮ばかりには、見せたてまつるべきものなり。かたはなるまじき一帖づつ、さすがに浦々のありさまさやかに見えたるを、選りたまふついでにも、かの明石の家居ぞ、まづ「いかに」と思しやらぬ時の間なき。<BR>⏎
<P>⏎
113-114 「憂きめ見しその折よりも今日はまた<BR>  過ぎにしかたにかへる涙か」<BR>⏎
 中宮ばかりには、見せたてまつるべきものなり。かたはなるまじき一帖づつ、さすがに浦々のありさまさやかに見えたるを、選りたまふついでにも、かの明石の家居ぞ、まづ「いかに」と思しやらぬ時の間なき。<BR>⏎
text17169 <A NAME="in23">[第三段 三月十日、中宮の御前の物語絵合せ]</A><BR>115 
d1170<P>⏎
cd2:1171-172 かう絵ども<A HREF="#k11">集めらる</A><A NAME="t11">と</A>聞きたまひて、権中納言、いと心を尽くして、軸表紙紐の飾り、いよいよ調へたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
116 かう絵ども<A HREF="#k11">集めらる</A><A NAME="t11">と</A>聞きたまひて、権中納言、いと心を尽くして、軸表紙紐の飾り、いよいよ調へたまふ。<BR>⏎
d1174<P>⏎
d1176<P>⏎
cd2:1177-178 主上の女房なども、よしある限り、「これはかれは」など定めあへるを、このころのことにすめり。<BR>⏎
<P>⏎
119 主上の女房なども、よしある限り、「これはかれは」など定めあへるを、このころのことにすめり。<BR>⏎
text17179 <A NAME="in24">[第四段 「竹取」対「宇津保」]</A><BR>120 
d1180<P>⏎
d1182<P>⏎
cd2:1183-184 梅壺の御方には、平典侍、侍従の内侍、少将の命婦。右には、大弐の典侍、中将の命婦、兵衛の命婦を、ただ今は心にくき有職どもにて、心々に争ふ口つきどもを、をかしと聞こし召して、まづ物語の出で来はじめの祖なる『竹取の翁』に『宇津保の俊蔭』を合はせて争ふ。<BR>⏎
<P>⏎
122 梅壺の御方には、平典侍、侍従の内侍、少将の命婦。右には、大弐の典侍、中将の命婦、兵衛の命婦を、ただ今は心にくき有職どもにて、心々に争ふ口つきどもを、をかしと聞こし召して、まづ物語の出で来はじめの祖なる『竹取の翁』に『宇津保の俊蔭』を合はせて争ふ。<BR>⏎
d1186<P>⏎
d1188<P>⏎
cd2:1189-190 「かぐや姫ののぼりけむ雲居は、げに及ばぬことなれば、誰も知りがたし。この世の契りは竹の中に結びければ、下れる人のこととこそは見ゆめれ。ひとつ家の内は照らしけめど、百敷のかしこき御光には並ばずなりにけり。阿部のおほしが千々の黄金を捨てて、火鼠の思ひ片時に消えたるも、いとあへなし。車持の親王の、まことの蓬莱の深き心も知りながら、いつはりて玉の枝に疵をつけたるをあやまち」となす。<BR>⏎
<P>⏎
125 「かぐや姫ののぼりけむ雲居は、げに及ばぬことなれば、誰も知りがたし。この世の契りは竹の中に結びければ、下れる人のこととこそは見ゆめれ。ひとつ家の内は照らしけめど、百敷のかしこき御光には並ばずなりにけり。阿部のおほしが千々の黄金を捨てて、火鼠の思ひ片時に消えたるも、いとあへなし。車持の親王の、まことの蓬莱の深き心も知りながら、いつはりて玉の枝に疵をつけたるをあやまち」となす。<BR>⏎
d1192<P>⏎
cd2:1193-194 「俊蔭は、はげしき波風におぼほれ、知らぬ国に放たれしかど、なほさして行きける方の心ざしもかなひて、つひに人の朝廷にもわが国にも、ありがたき才のほどを広め、名を残しける古き心を言ふに、絵のさまも、唐土と日の本とを取り並べて、おもしろきことども、なほ並びなし」<BR>⏎
<P>⏎
127 「俊蔭は、はげしき波風におぼほれ、知らぬ国に放たれしかど、なほさして行きける方の心ざしもかなひて、つひに人の朝廷にもわが国にも、ありがたき才のほどを広め、名を残しける古き心を言ふに、絵のさまも、唐土と日の本とを取り並べて、おもしろきことども、なほ並びなし」<BR>⏎
d1196<P>⏎
text17197 <A NAME="in25">[第五段 「伊勢物語」対「正三位」]</A><BR>129 
d1198<P>⏎
c1199 次に、『伊勢物語』に『正三位』を合はせて、また定めやらず。これも右はおもしろくにぎははしく、内裏わたりよりうちはじめ、近き世のありさまを描きたるは、をかしう見所まさる。<BR>⏎
130 次に、『伊勢物語』に『正三位』を合はせて、また定めやらず。これも右はおもしろくにぎははしく、内裏わたりよりうちはじめ、近き世のありさまを描きたるは、をかしう見所まさる。<BR>⏎
d1201<P>⏎
cd3:1202-204 「<A HREF="#no1">伊勢の海の深き心を</A><A NAME="te1">た</A>どらずて<BR>⏎
  ふりにし跡と波や消つべき<BR>⏎
<P>⏎
132 「<A HREF="#no1">伊勢の海の深き心を</A><A NAME="te1">た</A>どらずて<BR>  ふりにし跡と波や消つべき<BR>⏎
d1206<P>⏎
cd5:2207-211 と争ひかねたり。右の典侍、<BR>⏎
<P>⏎
 「雲の上に思ひのぼれる心には<BR>⏎
  千尋の底もはるかにぞ見る」<BR>⏎
<P>⏎
134-135 と争ひかねたり。右の典侍、<BR>⏎
 「雲の上に思ひのぼれる心には<BR>  千尋の底もはるかにぞ見る」<BR>⏎
d1213<P>⏎
d1215<P>⏎
cd5:2216-220 「みるめこそうらふりぬらめ年経にし<BR>⏎
  伊勢をの海人の名をや沈めむ」<BR>⏎
<P>⏎
 かやうの女言にて、乱りがはしく争ふに、一巻に言の葉を尽くして、えも言ひやらず。ただあさはかなる若人どもは、死にかへりゆかしがれど、主上のも宮のも片端をだにえ見ず、いといたう秘めさせたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
138-139 「みるめこそうらふりぬらめ年経にし<BR>  伊勢をの海人の名をや沈めむ」<BR>⏎
 かやうの女言にて、乱りがはしく争ふに、一巻に言の葉を尽くして、えも言ひやらず。ただあさはかなる若人どもは、死にかへりゆかしがれど、主上のも宮のも 片端をだにえ見ず、いといたう秘めさせたまふ。<BR>⏎
text17221 <H4>第三章 後宮の物語 帝の御前の絵合せ</H4>140 
text17222 <A NAME="in31">[第一段 帝の御前の絵合せの企画]</A><BR>141 
d1223<P>⏎
d2225-226
<P>⏎
cd5:1228-232</A>⏎
<p><A HREF="#k17"> と</A></p>⏎
<P
><A NAME="t17"></A>のたまひなりぬ。かかることもやと、かねて思しければ、中にもことなるは選りとどめたまへるに、かの「須磨」「明石」の二巻は、思すところありて、取り交ぜさせたまへり。<BR>⏎

<P>⏎
144 と</A><A NAME="t17"></A>のたまひなりぬ。かかることもやと、かねて思しければ、中にもことなるは選りとどめたまへるに、かの「須磨」「明石」の二巻は、思すところありて、取り交ぜさせたまへり。<BR>⏎
d2234-235
<P>⏎
d2237-238
<P>⏎
d2240-241
<P>⏎
d2243-244
<P>⏎
d2246-247
<P>⏎
cd4:1248-251 「身こそかくしめの外なれそのかみの<BR>⏎
  心のうちを忘れしもせず」<BR>⏎

<P>⏎
150 「身こそかくしめの外なれそのかみの<BR>  心のうちを忘れしもせず」<BR>⏎
d2253-254
<P>⏎
cd7:2255-261 「しめのうちは昔にあらぬ心地して<BR>⏎
  神代のことも今ぞ恋しき」<BR>⏎

<P>⏎
 とて縹の唐の紙に包みて参らせたまふ。御使の禄など、いとなまめかし。<BR>⏎

<P>⏎
152-153 「しめのうちは昔にあらぬ心地して<BR>  神代のことも今ぞ恋しき」<BR>⏎
 とて縹の唐の紙に包みて参らせたまふ。御使の禄など、いとなまめかし。<BR>⏎
d2263-264
<P>⏎
d2266-267
<P>⏎
text17268 <A NAME="in32">[第二段 三月二十日過ぎ、帝の御前の絵合せ]</A><BR>156 
d2269-270
<P>⏎
d2272-273
<P>⏎
d2275-276
<P>⏎
d2278-279
<P>⏎
cd3:1280-282 皆御前に舁き立つ。主上の女房、前後と、装束き分けたり。<BR>⏎

<P>⏎
160 皆御前に舁き立つ。主上の女房、前後と、装束き分けたり。<BR>⏎
d2284-285
<P>⏎
d2287-288
<P>⏎
d2290-291
<P>⏎
d2293-294
<P>⏎
text17295 <A NAME="in33">[第三段 左方、勝利をおさめる]</A><BR>165 
d2296-297
<P>⏎
d2299-300
<P>⏎
d2302-303
<P>⏎
d3305-307
<P>⏎

text17308<H4>第四章 光る源氏の物語 光る源氏世界の黎明</H4>169 
text17309 <A NAME="in41">[第一段 学問と芸事の清談]</A><BR>170 
d1310<P>⏎
d1312<P>⏎
cd8:6313-320 「いはけなきほどより、学問に心を入れてはべりしに、すこしも才などつきぬべくや御覧じけむ、院ののたまはせしやう、『才学といふもの、世にいと重くするものなればにやあらむ、いたう進みぬる人の、命、幸ひと並びぬるは、いとかたきものになむ。品高く生まれ、さらでも人に劣るまじきほどにて、あながちにこの道な深く習ひそ』と、諌めさせたまひて、本才の方々のもの教へさせ<A HREF="#k24">たまひしに</A><A NAME="t24">、</A>つたなきこともなく、またとり立ててこのことと心得ることもはべらざりき。絵描くことのみなむ、あやしくはかなきものから、いかにしてかは心ゆくばかり描きて見るべきと、思ふ折々はべりしを、おぼえぬ山賤になりて、四方の海の深き心を見しに、さらに思ひ寄らぬ隈なく至られにしかど、筆のゆく限りありて、心よりはことゆかずなむ思うたまへられしを、ついでなくて、御覧ぜさすべきならねば、かう好き好きしきやうなる、後の聞こえやあらむ」<BR>⏎
<P>⏎
 と親王に申したまへば、<BR>⏎
<P>⏎
 「何の才も、心より放ちて習ふべきわざならねど、道々に物の師あり、学び所あらむは、事の深さ浅さは知らねど、おのづから移さむに跡ありぬべし。筆取る道と碁打つこととぞ、あやしう魂のほど見ゆるを、深き労なく見ゆる<A HREF="#k25">おれ者も</A><A NAME="t25">、</A>さるべきにて、書き打つたぐひも出で来れど、家の子の中には、なほ人に抜けぬる<A HREF="#k26">人</A><A NAME="t26">、</A>何ごとをも好み得けるとぞ見えたる。院の御前にて、親王たち内親王いづれかは、<A HREF="#k27">さまざま</A><A NAME="t27">と</A>りどりの才習はさせたまはざりけむ。その中にも、とり立てたる御心に入れて、<A HREF="#k28">伝へ</A><A NAME="t28">受</A>けとらせたまへるかひありて、『文才をばさるものにて言はず、さらぬことの中には、琴弾かせたまふことなむ一の才にて、次には横笛、琵琶、箏の琴をなむ、次々に習ひたまへる』と、主上も思しのたまはせき。世の人、しか思ひきこえさせたるを、絵はなほ筆のついでにすさびさせたまふあだこととこそ思ひたまへしか、いとかうまさなきまで、いにしへの墨がきの上手ども、跡をくらうなしつべかめるは、かへりて、けしからぬわざなり」<BR>⏎
<P>⏎
 とうち乱れて聞こえたまひて、酔ひ泣きにや、院の御こと聞こえ出でて、皆<A HREF="#k29">うちしほれ</A><A NAME="t29">た</A>まひぬ。<BR>⏎
<P>⏎
172-177 「いはけなきほどより、学問に心を入れてはべりしに、すこしも才などつきぬべくや御覧じけむ、院ののたまはせしやう、『才学といふもの、世にいと重くするものなればにやあらむ、いたう進みぬる人の、命、幸ひと並びぬるは、いとかたきものになむ。品高く生まれ、さらでも人に劣るまじきほどにて、あながちにこの道な深く習ひそ』と、諌めさせたまひて、本才の方々のもの教へさせ<A HREF="#k24">たまひしに</A><A NAME="t24">、</A>つたなきこともなく、またとり立ててこのことと心得ることもはべらざりき。<BR>⏎
絵描くことのみなむ、あやしくはかなきものから、いかにしてかは心ゆくばかり描きて見るべきと、思ふ折々はべりしを、おぼえぬ山賤になりて、四方の海の深き心を見しに、さらに思ひ寄らぬ隈なく至られにしかど、筆のゆく限りありて、心よりはことゆかずなむ思うたまへられしを、ついでなくて、御覧ぜさすべきならねば、かう好き好きしきやうなる、後の聞こえやあらむ」<BR>⏎
 と親王に申したまへば、<BR>⏎
 「何の才も、心より放ちて習ふべきわざならねど、道々に物の師あり、学び所あらむは、事の深さ浅さは知らねど、おのづから移さむに跡ありぬべし。筆取る道と碁打つこととぞ、あやしう魂のほど見ゆるを、深き労なく見ゆる<A HREF="#k25">おれ者も</A><A NAME="t25">、</A>さるべきにて、書き打つたぐひも出で来れど、家の子の中には、なほ人に抜けぬる<A HREF="#k26">人</A><A NAME="t26">、</A>何ごとをも好み得けるとぞ見えたる。<BR>⏎
院の御前にて、親王たち内親王いづれかは、<A HREF="#k27">さまざま</A><A NAME="t27">と</A>りどりの才習はさせたまはざりけむ。その中にも、とり立てたる御心に入れて、<A HREF="#k28">伝へ</A><A NAME="t28">受</A>けとらせたまへるかひありて、『文才をばさるものにて言はず、さらぬことの中には、琴弾かせたまふことなむ一の才にて、次には横笛、琵琶、箏の琴をなむ、次々に習ひたまへる』と、主上も思しのたまはせき。世の人、しか思ひきこえさせたるを、絵はなほ筆のついでにすさびさせたまふあだこととこそ思ひたまへしか、いとかうまさなきまで、いにしへの墨がきの上手ども、跡をくらうなしつべかめるは、かへりて、けしからぬわざなり」<BR>⏎
 とうち乱れて聞こえたまひて、酔ひ泣きにや、院の御こと聞こえ出でて、皆<A HREF="#k29">うちしほれ</A><A NAME="t29">た</A>まひぬ。<BR>⏎
text17321 <A NAME="in42">[第二段 光る源氏体制の夜明け]</A><BR>178 
d1322<P>⏎
d1324<P>⏎
cd2:1325-326 明け果つるままに、花の色も人の御容貌ども、ほのかに見えて、鳥のさへづるほど、心地ゆき、めでたき朝ぼらけなり。禄どもは、中宮の御方より賜はす。親王は御衣また重ねて賜はりたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
180 明け果つるままに、花の色も人の御容貌ども、ほのかに見えて、鳥のさへづるほど、心地ゆき、めでたき朝ぼらけなり。禄どもは、中宮の御方より賜はす。親王は御衣また重ねて賜はりたまふ。<BR>⏎
text17327 <A NAME="in43">[第三段 冷泉朝の盛世]</A><BR>181 
d1328<P>⏎
d1334<P>⏎
cd2:1335-336 はかなきことにつけても、かうもてなしきこえたまへば、権中納言は、「なほおぼえ圧さるべきにや」と、心やましう思さるべかめり。主上の御心ざしは、もとより思ししみにければ、なほこまやかに思し召したるさまを、人知れず見たてまつり知りたまひてぞ、頼もしく、「さりとも」と思されける。<BR>⏎
<P>⏎
187 はかなきことにつけても、かうもてなしきこえたまへば、権中納言は、「なほおぼえ圧さるべきにや」と、心やましう思さるべかめり。主上の御心ざしは、もとより思ししみにければ、なほこまやかに思し召したるさまを、人知れず見たてまつり知りたまひてぞ、頼もしく、「さりとも」と思されける。<BR>⏎
d1338<P>⏎
text17339 <A NAME="in44">[第四段 嵯峨野に御堂を建立]</A><BR>189 
d1340<P>⏎
d1342<P>⏎
d2344-345
<P>⏎
text17346 <a name="in51">【出典】<BR>192 
cd2:1347-348</a><A NAME="no1">出典1</A> 伊勢の海の千尋の底も限りあれば深き心を何にたとへむ(古今六帖三-一七五七)<A HREF="#te1">(戻)</A><BR>⏎

193<A NAME="no1">出典1</A> 伊勢の海の千尋の底も限りあれば深き心を何にたとへむ(古今六帖三-一七五七)<A HREF="#te1">(戻)</A><BR>⏎
text17349<p> <a name="in52">【校訂】<BR>194 
c1351</a><A NAME="k01">校訂1</A> かくなむ--かくな(な/+む)<A HREF="#t01">(戻)</A><BR>⏎
196<A NAME="k01">校訂1</A> かくなむ--かくな(な/+む)<A HREF="#t01">(戻)</A><BR>⏎
d1381</p>⏎
d1388</p>⏎
i0236
diffsrc/original/text18.htmlsrc/modified/text18.html
cd2:18-9<body background="wallppr063.gif">⏎
First updated 9/20/1996(ver.1-1)<BR>⏎
8<BODY>⏎
cd3:210-12Last updated 10/20/2009(ver.2-2)<BR>⏎
渋谷栄一校訂(C)<BR>⏎
<P
>⏎
9-10<ADDRESS>Last updated 10/20/2009(ver.2-2)<BR>⏎
渋谷栄一校訂(C)</ADDRESS>⏎
d114<P>⏎
i014
d132<P>⏎
d162<P>⏎
d165<P>⏎
text1866 <H4>第一章 明石の物語 上洛と老夫婦の別れの秋</H4>60 
text1867 <A NAME="in11">[第一段 二条東院の完成、明石に上洛を促す]</A><BR>61 
d168<P>⏎
cd8:769-76 東の院造りたてて、花散里と聞こえし、移ろはしたまふ。西の対、渡殿などかけて、政所、家司など、あるべきさまにし置かせたまふ。東の対は、明石の御方と思しおきてたり。北の対は、ことに広く造らせたまひて、かりにても、あはれと思して、行く末かけて契り頼めたまひし人びと集ひ住むべきさまに、隔て隔てしつらはせたまへるしも、なつかしう見所ありてこまかなる。寝殿は塞げたまはず、時々渡りたまふ御住み所にして、さるかたなる御しつらひどもし置かせたまへり。<BR>⏎
<P>⏎
 明石には御消息絶えず、今はなほ上りたまひぬべきことをばのたまへど、女は、なほわが身のほどを思ひ知るに、<BR>⏎
<P>⏎
 「こよなくやむごとなき際の人びとだに、なかなかさてかけ離れぬ御ありさまのつれなきを見つつ、もの思ひまさりぬべく聞くを、まして何ばかりのおぼえなりとてか、さし出でまじらはむ。この若君の<A HREF="#k01">御面伏せ</A><A NAME="t01">に</A>、数ならぬ身のほどこそ現はれめ。たまさかにはひ渡りたまふついでを待つことにて、人笑へに、はしたなきこと、いかにあらむ」<BR>⏎
<P>⏎
 と思ひ乱れても、またさりとて、かかる所に生ひ出で、数まへられたまはざらむも、いとあはれなれば、ひたすらにもえ恨み背かず。親たちも、「げにことわり」と思ひ嘆くに、なかなか、心も尽き果てぬ。<BR>⏎
<P>⏎
62-68 東の院造りたてて、花散里と聞こえし、移ろはしたまふ。西の対、渡殿などかけて、政所、家司など、あるべきさまにし置かせたまふ。<BR>⏎
 
東の対は、明石の御方と思しおきてたり。<BR>⏎
 
北の対は、ことに広く造らせたまひて、かりにても、あはれと思して、行く末かけて契り頼めたまひし人びと集ひ住むべきさまに、隔て隔てしつらはせたまへるしも、なつかしう見所ありてこまかなる。<BR>⏎
 
寝殿は塞げたまはず、時々渡りたまふ御住み所にして、さるかたなる御しつらひどもし置かせたまへり。<BR>⏎
 明石には御消息絶えず、今はなほ上りたまひぬべきことをばのたまへど、女は、なほわが身のほどを思ひ知るに、<BR>⏎
 「こよなくやむごとなき際の人びとだに、なかなかさてかけ離れぬ御ありさまのつれなきを見つつ、もの思ひまさりぬべく聞くを、まして何ばかりのおぼえなりとてか、さし出でまじらはむ。この若君の<A HREF="#k01">御面伏せ</A><A NAME="t01">に</A>、数ならぬ身のほどこそ現はれめ。たまさかにはひ渡りたまふついでを待つことにて、人笑へに、はしたなきこと、いかにあらむ」<BR>⏎
 と思ひ乱れても、またさりとて、かかる所に生ひ出で、数まへられたまはざらむも、いとあはれなれば、ひたすらにもえ恨み背かず。親たちも、「げにことわり」と思ひ嘆くに、なかなか、心も尽き果てぬ。<BR>⏎
text1877 <A NAME="in12">[第二段 明石方、大堰の山荘を修理]</A><BR>69 
d178<P>⏎
cd2:179-80 昔母君の御祖父、中務宮と聞こえけるが領じたまひける所、大堰川のわたりにありけるを、その御後、はかばかしうあひ継ぐ人もなくて、年ごろ荒れまどふを思ひ出でて、かの時より伝はりて宿守のやうにてある人を呼び取りて語らふ。<BR>⏎
<P>⏎
70 昔母君の御祖父、中務宮と聞こえけるが領じたまひける所、大堰川のわたりにありけるを、その御後、はかばかしうあひ継ぐ人もなくて、年ごろ荒れまどふを思ひ出でて、かの時より伝はりて宿守のやうにてある人を呼び取りて語らふ。<BR>⏎
d182<P>⏎
d184<P>⏎
d186<P>⏎
cd2:187-88 「何か。それもかの殿の御蔭に、かたかけてと思ふことありて。おのづからおひおひに内のことどもはしてむ。まづ急ぎておほかたのことどもをものせよ」<BR>⏎
<P>⏎
74 「何か。それもかの殿の御蔭に、かたかけてと思ふことありて。おのづからおひおひに内のことどもはしてむ。まづ急ぎておほかたのことどもをものせよ」<BR>⏎
d190<P>⏎
d192<P>⏎
cd4:293-96 <A HREF="#k04">など</A><A NAME="t04"></A>そのあたりの貯へのことどもを危ふげに<A HREF="#k05">思ひて</A><A NAME="t05">、</A>髭がちにつなしにくき顔を、鼻などうち赤めつつ、はちぶき言へば、<BR>⏎
<P>⏎
 「さらにその田などやうのことは、ここに知るまじ。ただ年ごろのやうに思ひてものせよ。券などはここになむあれど、すべて世の中を捨てたる身にて、年ごろともかくも尋ね知らぬを、そのことも今詳しくしたためむ」<BR>⏎
<P>⏎
77-78 <A HREF="#k04">など</A><A NAME="t04"></A>そのあたりの貯へのことどもを危ふげに<A HREF="#k05">思ひて</A><A NAME="t05">、</A>髭がちにつなしにくき顔を、鼻などうち赤めつつ、はちぶき言へば、<BR>⏎
 「さらにその田などやうのことは、ここに知るまじ。ただ年ごろのやうに思ひてものせよ。券などはここになむあれど、すべて世の中を捨てたる身にて、年ごろともかくも尋ね知らぬを、そのことも今詳しくしたためむ」<BR>⏎
d198<P>⏎
text1899 <A NAME="in13">[第三段 惟光を大堰に派遣]</A><BR>80 
d1100<P>⏎
d1102<P>⏎
d1104<P>⏎
c1105 「あたりをかしうて、海づらに通ひたる所のさまになむはべりける」<BR>⏎
83 「あたりをかしうて、海づらに通ひたる所のさまになむはべりける」<BR>⏎
d1107<P>⏎
cd2:1109-110 これは川面に、えもいはぬ松蔭に、何のいたはりもなく建てたる寝殿のことそぎたるさまも、おのづから山里のあはれを見せたり。内のしつらひなどまで思し寄る。<BR>⏎
<P>⏎
86 これは川面に、えもいはぬ松蔭に、何のいたはりもなく建てたる寝殿のことそぎたるさまも、おのづから山里のあはれを見せたり。内のしつらひなどまで思し寄る。<BR>⏎
text18111 <A NAME="in14">[第四段 腹心の家来を明石に派遣]</A><BR>87 
d1112<P>⏎
cd8:4113-120 親しき人びと、いみじう忍びて下し遣はす。逃れがたくて、今はと思ふに、年経つる浦を離れなむこと、あはれに、入道の心細くて一人止まらむことを思ひ乱れて、よろづに悲し。「すべてなどかく、心尽くしになりはじめけむ身にか」と、露のかからぬたぐひうらやましくおぼゆ。<BR>⏎
<P>⏎
 親たちも、かかる御迎へにて上る幸ひは、年ごろ寝ても覚めても、願ひわたりし心ざしのかなふと、いとうれしけれど、あひ見で過ぐさむいぶせさの堪へがたう悲しければ、夜昼思ひほれて、同じことをのみ、「さらば若君をば見たてまつらでは、はべるべきか」と言ふよりほかのことなし。<BR>⏎
<P>⏎
 母君も、いみじうあはれなり。年ごろだに、同じ庵にも住まずかけ離れつれば、まして誰れによりてかは、かけ留まらむ。ただあだにうち見る人のあさはかなる語らひだに、<A HREF="#no1">見なれそなれて</A><A NAME="te1">、</A>別るるほどは、ただならざめるを、ましてもてひがめたる頭つき、心おきてこそ頼もしげなけれど、またさるかたに、「これこそは、世を限るべき住みかなれ」と、<A HREF="#no2">あり果てぬ命</A><A NAME="te2">を</A>限りに思ひて、契り過ぐし来つるを、にはかに行き離れなむも心細し。<BR>⏎
<P>⏎
 若き人びとの、いぶせう思ひ沈みつるは、うれしきものから、見捨てがたき浜のさまを、「またはえしも帰らじかし」と、寄する波に添へて、袖濡れがちなり。<BR>⏎
<P>⏎
88-91 親しき人びと、いみじう忍びて下し遣はす。逃れがたくて、今はと思ふに、年経つる浦を離れなむこと、あはれに、入道の心細くて一人止まらむことを思ひ乱れて、よろづに悲し。「すべてなどかく、心尽くしになりはじめけむ身にか」と、露のかからぬたぐひうらやましくおぼゆ。<BR>⏎
 親たちも、かかる御迎へにて上る幸ひは、年ごろ寝ても覚めても、願ひわたりし心ざしのかなふと、いとうれしけれど、あひ見で過ぐさむいぶせさの堪へがたう悲しければ、夜昼思ひほれて、同じことをのみ、「さらば若君をば見たてまつらでは、はべるべきか」と言ふよりほかのことなし。<BR>⏎
 母君も、いみじうあはれなり。年ごろだに、同じ庵にも住まずかけ離れつれば、まして誰れによりてかは、かけ留まらむ。ただあだにうち見る人のあさはかなる語らひだに、<A HREF="#no1">見なれそなれて</A><A NAME="te1">、</A>別るるほどは、ただならざめるを、ましてもてひがめたる頭つき、心おきてこそ頼もしげなけれど、またさるかたに、「これこそは、世を限るべき住みかなれ」と、<A HREF="#no2">あり果てぬ命</A><A NAME="te2">を</A>限りに思ひて、契り過ぐし来つるを、にはかに行き離れなむも心細し。<BR>⏎
 若き人びとの、いぶせう思ひ沈みつるは、うれしきものから、見捨てがたき浜のさまを、「またはえしも帰らじかし」と、寄する波に添へて、袖濡れがちなり。<BR>⏎
text18121 <A NAME="in15">[第五段 老夫婦、父娘の別れの歌]</A><BR>92 
d1122<P>⏎
d1124<P>⏎
cd4:2125-128 若君は、いともいともうつくしげに、夜光りけむ玉の心地して、袖よりほかに放ちきこえざりつるを、見馴れてまつはしたまへる心ざまなど、ゆゆしきまで、かく人に違へる身をいまいましく思ひながら、「片時見たてまつらでは、いかでか過ぐさむとすらむ」と、つつみあへず。<BR>⏎
<P>⏎
 「行く先をはるかに祈る別れ路に<BR>⏎
  堪へぬは老いの涙なりけり<BR>⏎
94-95 若君は、いともいともうつくしげに、夜光りけむ玉の心地して、袖よりほかに放ちきこえざりつるを、見馴れてまつはしたまへる心ざまなど、ゆゆしきまで、かく人に違へる身をいまいましく思ひながら、「片時見たてまつらでは、いかでか過ぐさむとすらむ」と、つつみあへず。<BR>⏎
 「行く先をはるかに祈る別れ路に<BR>  堪へぬは老いの涙なりけり<BR>⏎
d1130<P>⏎
cd9:4131-139 とておしのごひ隠す。尼君、<BR>⏎
<P>⏎
 「もろともに都は出で来このたびや<BR>⏎
  ひとり<A HREF="#no3">野中の道に惑はむ</A><A NAME="te3">」</A><BR>⏎
<P>⏎
 とて泣きたまふさま、いとことわりなり。ここら契り交はして積もりぬる年月のほどを思へば、かう浮きたることを頼みて、捨てし世に帰るも、思へばはかなしや。御方、<BR>⏎
<P>⏎
 「いきてまたあひ見むことをいつとてか<BR>⏎
  限りも知らぬ世をば頼まむ<BR>⏎
97-100 とておしのごひ隠す。尼君、<BR>⏎
 「もろともに都は出で来このたびや<BR>  ひとり<A HREF="#no3">野中の道に惑はむ</A><A NAME="te3">」</A><BR>⏎
 とて泣きたまふさま、いとことわりなり。ここら契り交はして積もりぬる年月のほどを思へば、かう浮きたることを頼みて、捨てし世に帰るも、思へばはかなしや。御方、<BR>⏎
 「いきてまたあひ見むことをいつとてか<BR>  限りも知らぬ世をば頼まむ<BR>⏎
d1141<P>⏎
d1143<P>⏎
text18144 <A NAME="in16">[第六段 明石入道の別離の詞]</A><BR>103 
d1145<P>⏎
cd4:3146-149 「世の中を捨てはじめしに、かかる人の国に思ひ下りはべりしことども、ただ君の御ためと、思ふやうに明け暮れの御かしづきも心にかなふやうもやと、思ひたまへ立ちしかど、身のつたなかりける際の思ひ知らるること多かりしかば、さらに都に帰りて、古受領の沈めるたぐひにて、貧しき家の蓬葎、元のありさま改むることもなきものから、公私に、をこがましき名を広めて、親の御なき影を恥づかしめむことのいみじさになむ、やがて世を捨てつる門出なりけりと人にも知られにしを、その方につけては、よう思ひ放ちてけりと思ひはべるに、君のやうやう大人びたまひ、もの思ほし知るべきに添へては、などかう口惜しき世界にて錦を隠しきこゆらむと、<A HREF="#no4">心の闇</A><A NAME="te4">晴</A>れ間なく嘆きわたりはべりしままに、仏神を頼みきこえて、さりとも、かうつたなき身に引かれて、山賤の庵には混じりたまはじ、と思ふ心一つを頼みはべりしに、思ひ寄りがたくて、うれしきことどもを見たてまつりそめても、なかなか身のほどを、とざまかうざまに悲しう嘆きはべりつれど、若君のかう出でおはしましたる御宿世の頼もしさに、かかる渚に月日を過ぐしたまはむも、いとかたじけなう、契りことにおぼえたまへば、見たてまつらざらむ心惑ひは、静めがたけれど、この身は長く世を捨てし心はべり。君達は、世を照らしたまふべき光しるければ、しばしかかる山賤の心を乱りたまふばかりの御契りこそはありけめ。天に生まるる人の、あやしき三つの途に帰るらむ一時に思ひなずらへて、今日、長く別れたてまつりぬ。命尽きぬと聞こしめすとも、後のこと思しいとなむな。<A HREF="#no5">さらぬ別れに</A><A NAME="te5">、</A>御心動かし<A HREF="#k07">たまふな」と</A><A NAME="t07">言</A>ひ放つものから、「煙ともならむ夕べまで、若君の御ことをなむ、六時の勤めにも、なほ心ぎたなく、うち交ぜはべりぬべき」<BR>⏎
<P>⏎
 とてこれにぞ、うちひそみぬる。<BR>⏎
<P>⏎
104-106 「世の中を捨てはじめしに、かかる人の国に思ひ下りはべりしことども、ただ君の御ためと、思ふやうに明け暮れの御かしづきも心にかなふやうもやと、思ひたまへ立ちしかど、身のつたなかりける際の思ひ知らるること多かりしかば、さらに都に帰りて、古受領の沈めるたぐひにて、貧しき家の蓬葎、元のありさま改むることもなきものから、公私に、をこがましき名を広めて、親の御なき影を恥づかしめむことのいみじさになむ、やがて世を捨てつる門出なりけりと人にも知られにしを、その方につけては、よう思ひ放ちてけりと思ひはべるに、君のやうやう大人びたまひ、もの思ほし知るべきに添へては、などかう口惜しき世界にて錦を隠しきこゆらむと、<A HREF="#no4">心の闇</A><A NAME="te4">晴</A>れ間なく嘆きわたりはべりしままに、仏神を頼みきこえて、さりとも、かうつたなき身に引かれて、山賤の庵には混じりたまはじ、と思ふ心一つを頼みはべりしに、<BR>⏎
思ひ寄りがたくて、うれしきことどもを見たてまつりそめても、なかなか身のほどを、とざまかうざまに悲しう嘆きはべりつれど、若君のかう出でおはしましたる御宿世の頼もしさに、かかる渚に月日を過ぐしたまはむも、いとかたじけなう、契りことにおぼえたまへば、見たてまつらざらむ心惑ひは、静めがたけれど、この身は長く世を捨てし心はべり。君達は、世を照らしたまふべき光しるければ、しばしかかる山賤の心を乱りたまふばかりの御契りこそはありけめ。天に生まるる人の、あやしき三つの途に帰るらむ一時に思ひなずらへて、今日、長く別れたてまつりぬ。命尽きぬと聞こしめすとも、後のこと思しいとなむな。<A HREF="#no5">さらぬ別れに</A><A NAME="te5">、</A>御心動かし<A HREF="#k07">たまふな」と</A><A NAME="t07">言</A>ひ放つものから、「煙ともならむ夕べまで、若君の御ことをなむ、六時の勤めにも、なほ心ぎたなく、うち交ぜはべりぬべき」<BR>⏎
 とてこれにぞ、うちひそみぬる。<BR>⏎
text18150 <A NAME="in17">[第七段 明石一行の上洛]</A><BR>107 
d1151<P>⏎
d1153<P>⏎
cd3:1154-156 「かの岸に心寄りにし海人舟の<BR>⏎
  背きし方に漕ぎ帰るかな」<BR>⏎
<P>⏎
109 「かの岸に心寄りにし海人舟の<BR>  背きし方に漕ぎ帰るかな」<BR>⏎
cd3:1158-160 「いくかへり行きかふ秋を過ぐしつつ<BR>⏎
  <A HREF="#no7">浮木に乗りて</A><A NAME="te7">わ</A><A NAME="t09"></A>帰るらむ」<BR>⏎
<P>⏎
111 「いくかへり行きかふ秋を過ぐしつつ<BR>  <A HREF="#no7">浮木に乗りて</A><A NAME="te7">わ</A>れ帰るらむ」<BR>⏎
d1162<P>⏎
text18163 <H4>第二章 明石の物語 上洛後、源氏との再会</H4>113 
text18164 <A NAME="in21">[第一段 大堰山荘での生活始まる]</A><BR>114 
d1165<P>⏎
d1167<P>⏎
d1169<P>⏎
d1171<P>⏎
cd3:1172-174 「身を変へて一人<A HREF="#k10">帰れる</A><A NAME="t10">山</A>里に<BR>⏎
  聞きしに似たる松風ぞ吹く」<BR>⏎
<P>⏎
118 「身を変へて一人<A HREF="#k10">帰れる</A><A NAME="t10">山</A>里に<BR>  聞きしに似たる松風ぞ吹く」<BR>⏎
d1176<P>⏎
cd3:1177-179 「故里に見し世の友を恋ひわびて<BR>⏎
  さへづることを誰れか分くらむ」<BR>⏎
<P>⏎
120 「故里に見し世の友を恋ひわびて<BR>  さへづることを誰れか分くらむ」<BR>⏎
text18180 <A NAME="in22">[第二段 大堰山荘訪問の暇乞い]</A><BR>121 
d1181<P>⏎
d1183<P>⏎
cd2:1184-185 「桂に見るべきことはべるを、いさや心にもあらでほど経にけり。訪らはむと言ひし人さへ、かのわたり近く来ゐて、待つなれば、心苦しくてなむ。嵯峨野の御堂にも、飾りなき仏の御訪らひすべければ、二三日ははべりなむ」<BR>⏎
<P>⏎
123 「桂に見るべきことはべるを、いさや心にもあらでほど経にけり。訪らはむと言ひし人さへ、かのわたり近く来ゐて、待つなれば、心苦しくてなむ。嵯峨野の御堂にも、飾りなき仏の御訪らひすべければ、二三日ははべりなむ」<BR>⏎
d1187<P>⏎
d1190<P>⏎
text18191 <A NAME="in23">[第三段 源氏と明石の再会]</A><BR>127 
d1192<P>⏎
cd2:1193-194 忍びやかに、御前疎きは混ぜで、御心づかひして渡りたまひぬ。たそかれ時におはし着きたり。狩の御衣にやつれたまへりしだに世に知らぬ心地せしを、ましてさる御心してひきつくろひたまへる御直衣姿、世になくなまめかしうまばゆき心地すれば、思ひむせべる心の闇も晴るるやうなり。<BR>⏎
<P>⏎
128 忍びやかに、御前疎きは混ぜで、御心づかひして渡りたまひぬ。たそかれ時におはし着きたり。狩の御衣にやつれたまへりしだに世に知らぬ心地せしを、ましてさる御心してひきつくろひたまへる御直衣姿、世になくなまめかしうまばゆき心地すれば、思ひむせべる心の闇も晴るるやうなり。<BR>⏎
cd2:1197-198 とうち笑みたる顔の何心なきが、愛敬づき、匂ひたるを、いみじうらうたしと思す。<BR>⏎
<P>⏎
131 とうち笑みたる顔の何心なきが、愛敬づき、匂ひたるを、いみじうらうたしと思す。<BR>⏎
d1200<P>⏎
c1201 「ここにも、いと里離れて、渡らむこともかたきを、なほかの本意ある所に移ろひたまへ」<BR>⏎
133 「ここにも、いと里離れて、渡らむこともかたきを、なほかの本意ある所に移ろひたまへ」<BR>⏎
d1205<P>⏎
text18206 <A NAME="in24">[第四段 源氏、大堰山荘で寛ぐ]</A><BR>137 
d1207<P>⏎
d1209<P>⏎
d1211<P>⏎
c1212 など来し方のことものたまひ出でて、泣きみ笑ひみ、うちとけのたまへる、いとめでたし。<BR>⏎
140 など来し方のことものたまひ出でて、泣きみ笑ひみ、うちとけのたまへる、いとめでたし。<BR>⏎
d1214<P>⏎
d1216<P>⏎
cd2:1218-219 とて御直衣召し出でて、たてまつる。几帳のもとに寄りたまひて、<BR>⏎
<P>⏎
144 とて御直衣召し出でて、たてまつる。几帳のもとに寄りたまひて、<BR>⏎
d1221<P>⏎
cd2:1222-223 といとなつかしうのたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
146 といとなつかしうのたまふ。<BR>⏎
d1225<P>⏎
d1227<P>⏎
cd3:1228-230 「住み馴れし人は帰りてたどれども<BR>⏎
  清水は宿の主人顔なる」<BR>⏎
<P>⏎
149 「住み馴れし人は帰りてたどれども<BR>  清水は宿の主人顔なる」<BR>⏎
d1232<P>⏎
cd2:1233-234 「いさらゐははやくのことも忘れじを<BR>⏎
  もとの主人や面変はりせる<BR>⏎
151 「いさらゐははやくのことも忘れじを<BR>  もとの主人や面変はりせる<BR>⏎
d1236<P>⏎
cd2:1237-238 とうち眺めて、立ちたまふ姿にほひ、世に知らず、とのみ思ひきこゆ。<BR>⏎
<P>⏎
153 とうち眺めて、立ちたまふ姿にほひ、世に知らず、とのみ思ひきこゆ。<BR>⏎
text18239 <A NAME="in25">[第五段 嵯峨御堂に出向き大堰山荘に宿泊]</A><BR>154 
d1240<P>⏎
cd2:1241-242 御寺に渡りたまうて、月ごとの十四五日、晦日の日、行はるべき普賢講阿弥陀釈迦の<A HREF="#k14">念仏</A><A NAME="t14">の</A>三昧をばさるものにて、またまた加へ行はせたまふべき<A HREF="#k15">ことなど</A><A NAME="t15">、</A>定め置かせたまふ。堂の飾り、仏の御具など、めぐらし仰せらる。月の明きに帰りたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
155 御寺に渡りたまうて、月ごとの十四五日、晦日の日、行はるべき普賢講阿弥陀釈迦の<A HREF="#k14">念仏</A><A NAME="t14">の</A>三昧をばさるものにて、またまた加へ行はせたまふべき<A HREF="#k15">ことなど</A><A NAME="t15">、</A>定め置かせたまふ。堂の飾り、仏の御具など、めぐらし仰せらる。月の明きに帰りたまふ。<BR>⏎
d1244<P>⏎
cd3:1245-247 「契りしに変はらぬ琴の調べにて<BR>⏎
  絶えぬ心のほどは知りきや」<BR>⏎
<P>⏎
157 「契りしに変はらぬ琴の調べにて<BR>  絶えぬ心のほどは知りきや」<BR>⏎
d1249<P>⏎
cd5:2250-254 「変はらじと契りしことを頼みにて<BR>⏎
  松の響きに音を添へしかな」<BR>⏎
<P>⏎
 と聞こえ交はしたるも、似げなからぬこそは、身にあまりたるありさまなめれ。こよなうねびまさりにける容貌けはひ、え思ほし捨つまじう、若君、はた尽きもせずまぼられたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
159-160 「変はらじと契りしことを頼みにて<BR>  松の響きに音を添へしかな」<BR>⏎
 と聞こえ交はしたるも、似げなからぬこそは、身にあまりたるありさまなめれ。こよなうねびまさりにける容貌けはひ、え思ほし捨つまじう、若君、はた尽きもせずまぼられたまふ。<BR>⏎
d1256<P>⏎
cd2:1257-258 と思ほせど、また思はむこといとほしくて、えうち出でたまはで、涙ぐみて見たまふ。幼き心地に、すこし恥ぢらひたりしが、やうやううちとけて、もの言ひ笑ひなどして、むつれたまふを見るままに、匂ひまさりてうつくし。抱きておはするさま、見るかひありて、宿世こよなしと見えたり。<BR>⏎
<P>⏎
162 と思ほせど、また思はむこといとほしくて、えうち出でたまはで、涙ぐみて見たまふ。幼き心地に、すこし恥ぢらひたりしが、やうやううちとけて、もの言ひ笑ひなどして、むつれたまふを見るままに、匂ひまさりてうつくし。抱きておはするさま、見るかひありて、宿世こよなしと見えたり。<BR>⏎
text18259 <H4>第三章 明石の物語 桂院での饗宴</H4>163 
text18260 <A NAME="in31">[第一段 大堰山荘を出て桂院に向かう]</A><BR>164 
d1261<P>⏎
d1263<P>⏎
d1265<P>⏎
cd9:3266-274 とて騒がしきに引かれて出でたまふ。心苦しければ、さりげなく紛らはして立ちとまりたまへる戸口に、乳母、若君抱きてさし出でたり。あはれなる御けしきに、かき撫で<A HREF="#k17">たまひて</A><A NAME="t17">、</A><BR>⏎

<P>⏎
 「見では、いと苦しかりぬべきこそ、いとうちつけなれ。いかがすべき。いと<A HREF="#no10">里遠しや</A><A NAME="te10">」</A><A NAME="t18"><BR>⏎
</A>⏎
<p><A NAME="t18">
 と</A></p>⏎
<P>
のたまへば、<BR>⏎

<P>⏎
167-169 とて騒がしきに引かれて出でたまふ。心苦しければ、さりげなく紛らはして立ちとまりたまへる戸口に、乳母、若君抱きてさし出でたり。あはれなる御けしきに、かき撫で<A HREF="#k17">たまひて</A><A NAME="t17">、</A><BR>⏎
 「見では、いと苦しかりぬべきこそ、いとうちつけなれ。いかがすべき。いと<A HREF="#no10">里遠しや</A><A NAME="te10">」</A><BR>⏎
 とのたまへば、<BR>⏎
d2276-277
<P>⏎
d2279-280
<P>⏎
cd3:1281-283 「あやしう、もの思ひ絶えぬ身にこそありけれ。しばしにても苦しや。いづら。などもろともに出でては、惜しみたまはぬ。さらばこそ、人心地もせめ」<BR>⏎

<P>⏎
172 「あやしう、もの思ひ絶えぬ身にこそありけれ。しばしにても苦しや。いづら。などもろともに出でては、惜しみたまはぬ。さらばこそ、人心地もせめ」<BR>⏎
d2285-286
<P>⏎
d2288-289
<P>⏎
d2291-292
<P>⏎
d2294-295
<P>⏎
cd3:1296-298 かの解けたりし蔵人も、還りなりにけり。靭負尉にて、今年かうぶり得てけり。昔に改め、心地よげにて、御佩刀取りに寄り来たり。人影を見つけて、<BR>⏎

<P>⏎
177 かの解けたりし蔵人も、還りなりにけり。靭負尉にて、今年かうぶり得てけり。昔に改め、心地よげにて、御佩刀取りに寄り来たり。人影を見つけて、<BR>⏎
d2300-301
<P>⏎
cd6:2302-307 とけしきばむを、<BR>⏎

<P>⏎
 「<A HREF="#no11">八重立つ山</A><A NAME="te11">は</A>、さらに<A HREF="#no12">島隠れ</A><A NAME="te12">に</A>も劣らざりけるを、<A HREF="#no13">松も昔の</A><A NAME="te13">と</A>たどられつるに、忘れぬ人もものしたまひけるに、頼もし」<BR>⏎

<P>⏎
179-180 とけしきばむを、<BR>⏎
 「<A HREF="#no11">八重立つ山</A><A NAME="te11">は</A>、さらに<A HREF="#no12">島隠れ</A><A NAME="te12">に</A>も劣らざりけるを、<A HREF="#no13">松も昔の</A><A NAME="te13">と</A>たどられつるに、忘れぬ人もものしたまひけるに、頼もし」<BR>⏎
cd5:3310-314 などあさましうおぼゆれど、<BR>⏎
 「今ことさらに」<BR>⏎
 とうちけざやぎて、参りぬ。<BR>⏎

<P>⏎
183-185 などあさましうおぼゆれど、<BR>⏎
 「今ことさらに」<BR>⏎
 とうちけざやぎて、参りぬ。<BR>⏎
text18315 <A NAME="in32">[第二段 桂院に到着、饗宴始まる]</A><BR>186 
d2316-317
<P>⏎
d2319-320
<P>⏎
d2322-323
<P>⏎
cd3:1324-326 といたうからがりたまふ。<BR>⏎

<P>⏎
189 といたうからがりたまふ。<BR>⏎
d2328-329
<P>⏎
d2331-332
<P>⏎
d2334-335
<P>⏎
d2337-338
<P>⏎
text18339 <A NAME="in33">[第三段 饗宴の最中に勅使来訪]</A><BR>194 
d2340-341
<P>⏎
c1343 弾きもの、琵琶、和琴ばかり、笛ども上手の限りして、折に合ひたる調子吹き立つるほど、川風吹き合はせておもしろきに、月高くさし上がり、よろづのこと澄める夜のやや更くるほどに、殿上人、四五人ばかり連れて参れり。<BR>⏎
196 弾きもの、琵琶、和琴ばかり、笛ども上手の限りして、折に合ひたる調子吹き立つるほど、川風吹き合はせておもしろきに、月高くさし上がり、よろづのこと澄める夜のやや更くるほどに、殿上人、四五人ばかり連れて参れり。<BR>⏎
d2345-346
<P>⏎
d2348-349
<P>⏎
cd5:2350-354 と仰せられければ、ここにかう泊らせたまひにけるよし聞こし召して、御消息あるなりけり。御使は蔵人弁なりけり。<BR>⏎

<P>⏎
 「月のすむ川のをちなる里なれば<BR>⏎
  桂の影はのどけかるらむ<BR>⏎
199-200 と仰せられければ、ここにかう泊らせたまひにけるよし聞こし召して、御消息あるなりけり。御使は蔵人弁なりけり。<BR>⏎
 「月のすむ川のをちなる里なれば<BR>  桂の影はのどけかるらむ<BR>⏎
d2356-357
<P>⏎
d2359-360
<P>⏎
cd7:2363-369 と言ひつかはしたり。取りあへたるに従ひて参らせたり。衣櫃二荷にてあるを、御使の弁はとく帰り参れば、女の<A HREF="#k23">装束</A><A NAME="t23">か</A>づけたまふ。<BR>⏎

<P>⏎
 「久方の光に近き名のみして<BR>⏎
  朝夕霧も晴れぬ山里」<BR>⏎

<P>⏎
205-206 と言ひつかはしたり。取りあへたるに従ひて参らせたり。衣櫃二荷にてあるを、御使の弁はとく帰り参れば、女の<A HREF="#k23">装束</A><A NAME="t23">か</A>づけたまふ。<BR>⏎
 「久方の光に近き名のみして<BR>  朝夕霧も晴れぬ山里」<BR>⏎
d2371-372
<P>⏎
cd4:1373-376 「めぐり来て手に取るばかりさやけきや<BR>⏎
  淡路の島のあはと見し月」<BR>⏎

<P>⏎
208 「めぐり来て手に取るばかりさやけきや<BR>  淡路の島のあはと見し月」<BR>⏎
d2378-379
<P>⏎
cd4:1380-383 「浮雲にしばしまがひし月影の<BR>⏎
  すみはつる夜ぞのどけかるべき」<BR>⏎

<P>⏎
210 「浮雲にしばしまがひし月影の<BR>  すみはつる夜ぞのどけかるべき」<BR>⏎
d2385-386
<P>⏎
cd4:1387-390 「雲の上のすみかを捨てて夜半の月<BR>⏎
  いづれの谷にかげ隠しけむ」<BR>⏎

<P>⏎
212 「雲の上のすみかを捨てて夜半の月<BR>  いづれの谷にかげ隠しけむ」<BR>⏎
d2392-393
<P>⏎
d2395-396
<P>⏎
d2398-399
<P>⏎
d3401-403
<P>⏎

text18404<H4>第四章 紫の君の物語 嫉妬と姫君への関心</H4>217 
text18405 <A NAME="in41">[第一段 二条院に帰邸]</A><BR>218 
d1406<P>⏎
d1408<P>⏎
d1410<P>⏎
cd2:1411-412 とて大殿籠もれり。例の、心とけず見えたまへど、見知らぬやうにて、<BR>⏎
<P>⏎
221 とて大殿籠もれり。例の、心とけず見えたまへど、見知らぬやうにて、<BR>⏎
d1414<P>⏎
c1415 と教へきこえたまふ。<BR>⏎
223 と教へきこえたまふ。<BR>⏎
d1417<P>⏎
text18418 <A NAME="in42">[第二段 源氏、紫の君に姫君を養女とする件を相談]</A><BR>225 
d1419<P>⏎
d1421<P>⏎
cd7:4422-428 「これ破り隠したまへ。むつかしや。かかるものの散らむも、今はつきなきほどになりにけり」<BR>⏎
<P>⏎
 とて御脇息に寄りゐたまひて、御心のうちには、いとあはれに恋しう思しやらるれば、燈をうち眺めて、ことにもの<A HREF="#k24">ものたまはず</A><A NAME="t24">。</A>文は広ごりながらあれど、女君、見たまはぬやうなるを、<BR>⏎
<P>⏎
 「せめて見隠したまふ御目尻こそ、わづらはしけれ」<BR>⏎
<P>⏎
 とてうち笑みたまへる御愛敬、所狭きまでこぼれぬべし。<BR>⏎
227-230 「これ破り隠したまへ。むつかしや。かかるものの散らむも、今はつきなきほどになりにけり」<BR>⏎
 とて御脇息に寄りゐたまひて、御心のうちには、いとあはれに恋しう思しやらるれば、燈をうち眺めて、ことにもの<A HREF="#k24">ものたまはず</A><A NAME="t24">。</A>文は広ごりながらあれど、女君、見たまはぬやうなるを、<BR>⏎
 「せめて見隠したまふ御目尻こそ、わづらはしけれ」<BR>⏎
 とてうち笑みたまへる御愛敬、所狭きまでこぼれぬべし。<BR>⏎
d1430<P>⏎
d1432<P>⏎
d1434<P>⏎
d1436<P>⏎
cd5:2437-441 とてすこしうち笑みたまひぬ。稚児をわりなうらうたきものにしたまふ御心なれば、「得て抱きかしづかばや」と思す。<BR>⏎
<P>⏎
 「いかにせまし。迎へやせまし」と思し乱る。渡りたまふこといとかたし。嵯峨野の御堂の念仏など待ち出でて、月に二度ばかりの御契りなめり。<A HREF="#no17">年のわたりには</A><A NAME="te17"></A>立ちまさりぬべかめるを、及びなきことと思へども、なほいかがもの思はしからぬ。<BR>⏎

<P>⏎
235-236 とてすこしうち笑みたまひぬ。稚児をわりなうらうたきものにしたまふ御心なれば、「得て抱きかしづかばや」と思す。<BR>⏎
 「いかにせまし。迎へやせまし」と思し乱る。渡りたまふこといとかたし。嵯峨野の御堂の念仏など待ち出でて、月に二度ばかりの御契りなめり。<A HREF="#no17">年のわたりには</A><A NAME="te17"></A>立ちまさりぬべかめるを、及びなきことと思へども、なほいかがもの思はしからぬ。<BR>⏎
text18442 <a name="in51">【出典】<BR>237 
c1443</a><A NAME="no1">出典1</A> みなれ木のみなれそなれて離れなば恋しからじや恋しからむや(源氏釈所引、出典未詳)<A HREF="#te1">(戻)</A><BR>⏎
238<A NAME="no1">出典1</A> みなれ木のみなれそなれて離れなば恋しからじや恋しからむや(源氏釈所引、出典未詳)<A HREF="#te1">(戻)</A><BR>⏎
d1460
text18461<p> <a name="in52">【校訂】<BR>255 
c1463</a><A NAME="k01">校訂1</A> 御面伏せ--御(御/+お)もてふせ<A HREF="#t01">(戻)</A><BR>⏎
257<A NAME="k01">校訂1</A> 御面伏せ--御(御/+お)もてふせ<A HREF="#t01">(戻)</A><BR>⏎
c1471<A NAME="k09">校訂9</A> 浮木に--うき木(き/+に)<A HREF="#t09">(戻)</A><BR>⏎
265<A NAME="k09">校訂9</A> 浮木に--うき木(き/+に)<A HREF="#te7">(戻)</A><BR>⏎
c1480<A NAME="k18">校訂18</A> 遠しや--ゝほ(ほ/$を)しや<A HREF="#t18">(戻)</A><BR>⏎
274<A NAME="k18">校訂18</A> 遠しや--ゝほ(ほ/$を)しや<A HREF="#te10">(戻)</A><BR>⏎
d1489</p>⏎
d1496</p>⏎
i0293
diffsrc/original/text19.htmlsrc/modified/text19.html
cd2:18-9<body background="wallppr063.gif">⏎
First updated 9/20/1996(ver.1-1)<BR>⏎
8<BODY>⏎
cd3:210-12Last updated 10/27/2009(ver.2-2)<BR>⏎
渋谷栄一校訂(C)<BR>⏎
<P
>⏎
9-10<ADDRESS>Last updated 10/27/2009(ver.2-2)<BR>⏎
渋谷栄一校訂(C)</ADDRESS>⏎
d114<P>⏎
d137<P>⏎
d176<P>⏎
d179<P>⏎
text1980 <H4>第一章 明石の物語 母子の雪の別れ</H4>74 
text1981 <A NAME="in11">[第一段 明石、姫君の養女問題に苦慮する]</A><BR>75 
d182<P>⏎
cd7:484-90 「なほかくては、え過ぐさじ。かの近き所に思ひ立ちね」<BR>⏎
 とすすめたまへど、「<A HREF="#no1">つらき所多く</A><A NAME="te1">心</A>見果てむも、残りなき心地すべきを、<A HREF="#no2">いかに言ひてか</A><A NAME="te2">」</A>などいふやうに思ひ乱れたり。<BR>⏎
<P>⏎
 「さらばこの若君を。かくてのみは、便なきことなり。思ふ心あれば、かたじけなし。対に聞き置きて、常にゆかしがるを、しばし見ならはさせて、袴着の事なども、人知れぬさまならずしなさむとなむ思ふ」<BR>⏎
<P>⏎
 とまめやかに語らひたまふ。「さ思すらむ」と思ひわたることなれば、いとど胸つぶれぬ。<BR>⏎
<P>⏎
77-80 「なほかくては、え過ぐさじ。かの近き所に思ひ立ちね」<BR>⏎
 とすすめたまへど、「<A HREF="#no1">つらき所多く</A><A NAME="te1">心</A>見果てむも、残りなき心地すべきを、<A HREF="#no2">いかに言ひてか</A><A NAME="te2">」</A>などいふやうに思ひ乱れたり。<BR>⏎
 「さらばこの若君を。かくてのみは、便なきことなり。思ふ心あれば、かたじけなし。対に聞き置きて、常にゆかしがるを、しばし見ならはさせて、袴着の事なども、人知れぬさまならずしなさむとなむ思ふ」<BR>⏎
 とまめやかに語らひたまふ。「さ思すらむ」と思ひわたることなれば、いとど胸つぶれぬ。<BR>⏎
d192<P>⏎
cd10:593-102 とて放ちがたく思ひたる、ことわりには<A HREF="#k02">あれど</A><A NAME="t02">、</A><BR>⏎
<P>⏎
 「うしろやすからぬ方にやなどは、な疑ひたまひそ。かしこには、年経ぬれど、かかる人もなきが、さうざうしくおぼゆるままに、前斎宮のおとなびものしたまふをだにこそ、あながちに扱ひきこゆめれば、ましてかく憎みがたげなめるほどを、おろかには<A HREF="#k03">見放つ</A><A NAME="t03">ま</A>じき心ばへに」<BR>⏎
<P>⏎
 など女君の御ありさまの思ふやうなることも語りたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
 「げにいにしへは、いかばかりのことに定まりたまふべきにかと、つてにもほの聞こえし御心の、名残なく静まりたまへるは、おぼろけの御宿世にもあらず、人の御ありさまも、ここらの御なかにすぐれたまへるにこそは」と思ひやられて、「数ならぬ人の並びきこゆべきおぼえにもあらぬを、さすがに立ち出でて、人もめざましと思すことやあらむ。わが身は、とてもかくても同じこと。生ひ先遠き人の御うへも、つひには、かの御心にかかるべきにこそあめれ。さりとならば、げにかう何心なきほどにや譲りきこえまし」と思ふ。<BR>⏎
<P>⏎
 また「手を放ちて、うしろめたからむこと。つれづれも慰む方なくては、いかが明かし暮らすべからむ。何につけてか、たまさかの御立ち寄りもあらむ」など、さまざまに思ひ乱るるに、身の憂きこと、限りなし。<BR>⏎
<P>⏎
82-86 とて放ちがたく思ひたる、ことわりには<A HREF="#k02">あれど</A><A NAME="t02">、</A><BR>⏎
 「うしろやすからぬ方にやなどは、な疑ひたまひそ。かしこには、年経ぬれど、かかる人もなきが、さうざうしくおぼゆるままに、前斎宮のおとなびものしたまふをだにこそ、あながちに扱ひきこゆめれば、ましてかく憎みがたげなめるほどを、おろかには<A HREF="#k03">見放つ</A><A NAME="t03">ま</A>じき心ばへに」<BR>⏎
 など女君の御ありさまの思ふやうなることも語りたまふ。<BR>⏎
 「げにいにしへは、いかばかりのことに定まりたまふべきにかと、つてにもほの聞こえし御心の、名残なく静まりたまへるは、おぼろけの御宿世にもあらず、人の御ありさまも、ここらの御なかにすぐれたまへるにこそは」と思ひやられて、「数ならぬ人の並びきこゆべきおぼえにもあらぬを、さすがに立ち出でて、人もめざましと 思すことやあらむ。わが身は、とてもかくても同じこと。生ひ先遠き人の御うへも、つひには、かの御心にかかるべきにこそあめれ。さりとならば、げにかう何心なきほどにや譲りきこえまし」と思ふ。<BR>⏎
 また「手を放ちて、うしろめたからむこと。つれづれも慰む方なくては、いかが明かし暮らすべからむ。何につけてか、たまさかの御立ち寄りもあらむ」など、さまざまに思ひ乱るるに、身の憂きこと、限りなし。<BR>⏎
text19103 <A NAME="in12">[第二段 尼君、姫君を養女に出すことを勧める]</A><BR>87 
d1104<P>⏎
d1106<P>⏎
c2107-108 「あぢきなし。見たてまつらざらむことは、いと胸いたかりぬべけれど、つひにこの御ためによかるべからむことをこそ思はめ。浅く思してのたまふことにはあらじ。ただうち頼みきこえて、渡したてまつりたまひてよ。母方からこそ、帝の御子も際々におはすめれ。この大臣の君の、世に二つなき御ありさまながら、世に仕へたまふは、故大納言の、今ひときざみなり劣りたまひて、更衣腹と言はれたまひし、けぢめにこそはおはすめれ。ましてただ人はなずらふべきことにもあらず。また親王たち、大臣の御腹といへど、なほさし向かひたる劣りの所には、人も思ひ落とし、親の御もてなしも、え等しからぬものなり。ましてこれは、やむごとなき御方々にかかる人、出でものしたまはば、こよなく消たれたまひなむ。ほどほどにつけて、親にもひとふしもてかしづかれぬる人こそ、やがて落としめられぬはじめとはなれ。御袴着のほども、いみじき心を尽くすとも、かかる深山隠れにては、何の栄かあらむ。ただ任せきこえたまひて、もてなしきこえたまはむありさまをも、聞きたまへ」<BR>⏎
<P>⏎
89-90 「あぢきなし。見たてまつらざらむことは、いと胸いたかりぬべけれど、つひにこの御ためによかるべからむことをこそ思はめ。浅く思してのたまふことにはあらじ。ただうち頼みきこえて、渡したてまつりたまひてよ。母方からこそ、帝の御子も際々におはすめれ。この大臣の君の、世に二つなき御ありさまながら、世に仕へたまふは、故大納言の、今ひときざみなり劣りたまひて、更衣腹と言はれたまひし、けぢめにこそはおはすめれ。ましてただ人はなずらふべきことにもあらず。<BR>⏎
 
また親王たち、大臣の御腹といへど、なほさし向かひたる劣りの所には、人も思ひ落とし、親の御もてなしも、え等しからぬものなり。ましてこれは、やむごとなき御方々にかかる人、出でものしたまはば、こよなく消たれたまひなむ。ほどほどにつけて、親にもひとふしもてかしづかれぬる人こそ、やがて落としめられぬはじめとはなれ。御袴着のほども、いみじき心を尽くすとも、かかる深山隠れにては、何の栄かあらむ。ただ任せきこえたまひて、もてなしきこえたまはむありさまをも、聞きたまへ」<BR>⏎
d1110<P>⏎
d1113<P>⏎
d1115<P>⏎
d1117<P>⏎
d1119<P>⏎
d1121<P>⏎
d1123<P>⏎
d1125<P>⏎
cd2:1128-129 などうち泣きつつ過ぐすほどに、師走にもなりぬ。<BR>⏎
<P>⏎
102 などうち泣きつつ過ぐすほどに、師走にもなりぬ。<BR>⏎
text19130 <A NAME="in13">[第三段 明石と乳母、和歌を唱和]</A><BR>103 
d1131<P>⏎
d1133<P>⏎
d1136<P>⏎
cd3:1137-139 「雪深み深山の道は晴れず<A HREF="#k05">とも</A><A NAME="t05"><BR>⏎
  な</A>ほ文かよへ跡絶えずして」<BR>⏎
<P>⏎
107 「雪深み深山の道は晴れず<A HREF="#k05">とも</A><A NAME="t05"><BR>  な</A>ほ文かよへ跡絶えずして」<BR>⏎
d1141<P>⏎
cd3:1142-144 「雪間なき吉野の山を訪ねても<BR>⏎
  心のかよふ跡絶えめやは」<BR>⏎
<P>⏎
109 「雪間なき吉野の山を訪ねても<BR>  心のかよふ跡絶えめやは」<BR>⏎
d1146<P>⏎
text19147 <A NAME="in14">[第四段 明石の母子の雪の別れ]</A><BR>111 
d1148<P>⏎
d1151<P>⏎
cd2:1154-155 と思ほす。この春より<A HREF="#k06">生ふす</A><A NAME="t06">御</A>髪、<A HREF="#k07">尼削ぎ</A><A NAME="t07">の</A>ほどにて、ゆらゆらとめでたく、つらつき、まみの薫れるほどなど、言へばさらなり。よそのものに思ひやらむほどの<A HREF="#no4">心の闇</A><A NAME="te4"></A>推し量りたまふに、いと心苦しければ、うち返しのたまひ明かす。<BR>⏎
<P>⏎
116 と思ほす。この春より<A HREF="#k06">生ふす</A><A NAME="t06">御</A>髪、<A HREF="#k07">尼削ぎ</A><A NAME="t07">の</A>ほどにて、ゆらゆらとめでたく、つらつき、まみの薫れるほどなど、言へばさらなり。よそのものに思ひやらむほどの<A HREF="#no4">心の闇</A><A NAME="te4"></A>推し量りたまふに、いと心苦しければ、うち返しのたまひ明かす。<BR>⏎
d1158<P>⏎
d1160<P>⏎
cd3:1161-163 「末遠き二葉の松に引き別れ<BR>⏎
  いつか木高きかげを見るべき」<BR>⏎
<P>⏎
120 「末遠き二葉の松に引き別れ<BR>  いつか木高きかげを見るべき」<BR>⏎
d1166<P>⏎
cd2:1167-168 「生ひそめし根も深ければ<A HREF="#no5">武隈の<BR>⏎
  松に</A><A NAME="te5">小</A>松の千代をならべむ<BR>⏎
123 「生ひそめし根も深ければ<A HREF="#no5">武隈の<BR>  松に</A><A NAME="te5">小</A>松の千代をならべむ<BR>⏎
d1170<P>⏎
c1171 と慰めたまふ。さることとは思ひ静むれど、えなむ堪へざりける。乳母の少将とて、あてやかなる人ばかり、御佩刀、天児やうの物取りて乗る。人だまひによろしき若人、童女など乗せて、御送りに参らす。<BR>⏎
125 と慰めたまふ。さることとは思ひ静むれど、えなむ堪へざりける。乳母の少将とて、あてやかなる人ばかり、御佩刀、天児やうの物取りて乗る。人だまひによろしき若人、童女など乗せて、御送りに参らす。<BR>⏎
d1173<P>⏎
text19174 <A NAME="in15">[第五段 姫君、二条院へ到着]</A><BR>127 
d1175<P>⏎
d1177<P>⏎
d1179<P>⏎
cd6:3182-187 と口惜しく思さる。<BR>⏎
<P>⏎
 しばしは、人びともとめて泣きなどしたまひしかど、おほかた心やすくをかしき心ざまなれば、上にいとよくつき睦びきこえたまへれば、「いみじううつくしきもの得たり」と思しけり。こと事なく抱き扱ひ、もてあそびきこえたまひて、乳母も、おのづから近う仕うまつり馴れにけり。またやむごとなき人の乳ある、添へて参りたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
 御袴着は、何ばかりわざと思しいそぐことはなけれど、けしきことなり。御しつらひ、雛遊びの心地してをかしう見ゆ。参りたまへる客人ども、ただ明け暮れのけぢめしなければ、あながちに目も立たざりき。ただ姫君の襷引き結ひたまへる胸つきぞ、うつくしげさ添ひて見えたまひつる。<BR>⏎
<P>⏎
132-134 と口惜しく思さる。<BR>⏎
 しばしは、人びともとめて泣きなどしたまひしかど、おほかた心やすくをかしき心ざまなれば、上にいとよくつき睦びきこえたまへれば、「いみじううつくしきもの得たり」と思しけり。こと事なく抱き扱ひ、もてあそびきこえたまひて、乳母も、おのづから近う仕うまつり馴れにけり。またやむごとなき人の乳ある、添へて参りたまふ。<BR>⏎
 御袴着は、何ばかりわざと思しいそぐことはなけれど、けしきことなり。御しつらひ、雛遊びの心地してをかしう見ゆ。参りたまへる客人ども、ただ明け暮れのけぢめしなければ、あながちに目も立たざりき。ただ姫君の襷引き結ひたまへる胸つきぞ、うつくしげさ添ひて見えたまひつる。<BR>⏎
text19188 <A NAME="in16">[第六段 歳末の大堰の明石]</A><BR>135 
d1189<P>⏎
d1191<P>⏎
d1194<P>⏎
d1196<P>⏎
text19197 <H4>第二章  源氏の女君たちの物語 新春の女君たちの生活</H4>140 
text19198 <A NAME="in21">[第一段 東の院の花散里]</A><BR>141 
d1199<P>⏎
d1202<P>⏎
d1204<P>⏎
d1206<P>⏎
text19207 <A NAME="in22">[第二段 源氏、大堰山荘訪問を思いつく]</A><BR>146 
d1208<P>⏎
d1210<P>⏎
d1212<P>⏎
cd3:1213-215 「舟とむる遠方人のなくはこそ<BR>⏎
  明日帰り来む夫と待ち見め」<BR>⏎
<P>⏎
149 「舟とむる遠方人のなくはこそ<BR>  明日帰り来む夫と待ち見め」<BR>⏎
d1217<P>⏎
cd3:1218-220 「行きて見て明日もさね来むなかなかに<BR>⏎
  遠方人は心置く<A HREF="#k10">とも</A><A NAME="t10">」</A><BR>⏎
<P>⏎
151 「行きて見て明日もさね来むなかなかに<BR>  遠方人は心置く<A HREF="#k10">とも</A><A NAME="t10">」</A><BR>⏎
c2223-224 とうちまもりつつ、ふところに入れて、うつくしげなる御乳をくくめたまひつつ、戯れゐたまへる御さま、見どころ多かり。御前なる人びとは、<BR>⏎
 「などか同じくは」<BR>⏎
154-155 とうちまもりつつ、ふところに入れて、うつくしげなる御乳をくくめたまひつつ、戯れゐたまへる御さま、見どころ多かり。御前なる人びとは、<BR>⏎
 「などか同じくは」<BR>⏎
cd2:1226-227 など語らひあへり。<BR>⏎
<P>⏎
157 など語らひあへり。<BR>⏎
text19228 <A NAME="in23">[第三段 源氏、大堰山荘から嵯峨野の御堂、桂院に回る]</A><BR>158 
d1229<P>⏎
d1231<P>⏎
cd8:4232-239 「ただ世の常のおぼえにかき紛れたらば、さるたぐひなくやはと思ふべきを、世に似ぬひがものなる親の聞こえなどこそ、苦しけれ。人のほどなどは、さてもあるべきを」など思す。<BR>⏎
<P>⏎
 はつかに、飽かぬほどにのみあればにや、心のどかならず立ち帰りたまふも苦しくて、「<A HREF="#no7">夢のわたりの浮橋か</A><A NAME="te7">」</A>とのみ、うち嘆かれて、箏の琴のあるを引き寄せて、かの明石にて、小夜更けたりし音も、例の思し出でらるれば、琵琶をわりなく責めたまへば、すこし掻き合はせたる、「いかでかうのみひき具しけむ」と思さる。若君の御ことなど、こまやかに語りたまひつつおはす。<BR>⏎
<P>⏎
 ここはかかる所なれど、かやうに立ち泊りたまふ折々あれば、はかなき果物、強飯ばかりはきこしめす時もあり。近き御寺、桂殿などにおはしまし紛らはしつつ、いとまほには乱れたまはねど、またいとけざやかにはしたなく、おしなべてのさまにはもてなしたまはぬなどこそは、いとおぼえことには見ゆめれ。<BR>⏎
<P>⏎
 女も、かかる御心のほどを見知りきこえて、過ぎたりと思すばかりのことはし出でず、またいたく卑下せずなどして、御心おきてにもて違ふことなく、いとめやすくぞありける。<BR>⏎
<P>⏎
160-163 「ただ世の常のおぼえにかき紛れたらば、さるたぐひなくやはと思ふべきを、世に似ぬひがものなる親の聞こえなどこそ、苦しけれ。人のほどなどは、さてもあるべきを」など思す。<BR>⏎
 はつかに、飽かぬほどにのみあればにや、心のどかならず立ち帰りたまふも苦しくて、「<A HREF="#no7">夢のわたりの浮橋か</A><A NAME="te7">」</A>とのみ、うち嘆かれて、箏の琴のあるを引き寄せて、かの明石にて、小夜更けたりし音も、例の思し出でらるれば、琵琶をわりなく責めたまへば、すこし掻き合はせたる、「いかでかうのみひき具しけむ」と思さる。若君の御ことなど、こまやかに語りたまひつつおはす。<BR>⏎
 ここはかかる所なれど、かやうに立ち泊りたまふ折々あれば、はかなき果物、強飯ばかりはきこしめす時もあり。近き御寺、桂殿などにおはしまし紛らはしつつ、いとまほには乱れたまはねど、またいとけざやかにはしたなく、おしなべてのさまにはもてなしたまはぬなどこそは、いとおぼえことには見ゆめれ。<BR>⏎
 女も、かかる御心のほどを見知りきこえて、過ぎたりと思すばかりのことはし出でず、またいたく卑下せずなどして、御心おきてにもて違ふことなく、いとめやすくぞありける。<BR>⏎
d1243<P>⏎
cd2:1244-245 明石にも、さこそ言ひしか、この御心おきて、ありさまをゆかしがりて、おぼつかなからず、人は通はしつつ、胸つぶるることもあり、またおもだたしくうれしと思ふことも多くなむありける。<BR>⏎
<P>⏎
167 明石にも、さこそ言ひしか、この御心おきて、ありさまをゆかしがりて、おぼつかなからず、人は通はしつつ、胸つぶるることもあり、またおもだたしくうれしと思ふことも多くなむありける。<BR>⏎
text19246 <H4>第三章 藤壺の物語 藤壺女院の崩御</H4>168 
text19247 <A NAME="in31">[第一段 太政大臣薨去と天変地異]</A><BR>169 
d1248<P>⏎
cd4:2249-252 そのころ、太政大臣亡せたまひぬ。世の重しとおはしつる人なれば、朝廷にも思し嘆く。しばし籠もりたまひしほどをだに、天の下の騷ぎなりしかば、まして悲しと思ふ人多かり。源氏の大臣も、いと口惜しく、よろづこと、おし譲りきこえてこそ、暇もありつるを、心細く、事しげくも思されて、嘆きおはす。<BR>⏎
<P>⏎
 帝は、御年よりはこよなう大人大人しうねびさせたまひて、世の<A HREF="#k11">政事も</A><A NAME="t11">、</A>うしろめたく思ひきこえたまふべきにはあらね<A HREF="#k12">ども</A><A NAME="t12">、</A>またとりたてて御後見したまふべき人もなきを、「誰れに譲りてかは静かなる御本意もかなはむ」と思すに、いと飽かず口惜し。<BR>⏎
<P>⏎
170-171 そのころ、太政大臣亡せたまひぬ。世の重しとおはしつる人なれば、朝廷にも思し嘆く。しばし籠もりたまひしほどをだに、天の下の騷ぎなりしかば、まして悲しと思ふ人多かり。源氏の大臣も、いと口惜しく、よろづこと、おし譲りきこえてこそ、暇もありつるを、心細く、事しげくも思されて、嘆きおはす。<BR>⏎
 帝は、御年よりはこよなう大人大人しうねびさせたまひて、世の<A HREF="#k11">政事も</A><A NAME="t11">、</A>うしろめたく思ひきこえたまふべきにはあらね<A HREF="#k12">ども</A><A NAME="t12">、</A>またとりたてて御後見したまふべき人もなきを、「誰れに譲りてかは静かなる御本意もかなはむ」と思すに、いと飽かず口惜し。<BR>⏎
d1254<P>⏎
cd2:1257-258 とのみ世の人おどろくこと多くて、道々の勘文<A HREF="#k13">ども</A><A NAME="t13">た</A>てまつれるにも、あやしく世になべてならぬことども混じりたり。内の大臣<A HREF="#k14">のみ</A><A NAME="t14">な</A>む、御心のうちに、わづらはしく思し知らるることありける。<BR>⏎
<P>⏎
175 とのみ世の人おどろくこと多くて、道々の勘文<A HREF="#k13">ども</A><A NAME="t13">た</A>てまつれるにも、あやしく世になべてならぬことども混じりたり。内の大臣<A HREF="#k14">のみ</A><A NAME="t14">な</A>む、御心のうちに、わづらはしく思し知らるることありける。<BR>⏎
text19259 <A NAME="in32">[第二段 藤壺入道宮の病臥]</A><BR>176 
d1260<P>⏎
d1262<P>⏎
d1265<P>⏎
cd4:2266-269 といと弱げに聞こえたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
 三十七<A HREF="#k15">にぞ</A><A NAME="t15">お</A>はしましける。されどいと若く盛りにおはしますさまを、惜しく悲しと見たてまつらせたまふ。<BR>⏎
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180-181 といと弱げに聞こえたまふ。<BR>⏎
 三十七<A HREF="#k15">にぞ</A><A NAME="t15">お</A>はしましける。されどいと若く盛りにおはしますさまを、惜しく悲しと見たてまつらせたまふ。<BR>⏎
d1271<P>⏎
cd2:1272-273 といみじう思し召したり。ただこの<A HREF="#k16">ころぞ</A><A NAME="t16">、</A>おどろきて、よろづのことせさせたまふ。月ごろは、常の御悩みとのみうちたゆみたりつるを、源氏の大臣も深く思し入りたり。限りあれば、ほどなく帰らせたまふも、悲しきこと多かり。<BR>⏎
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183 といみじう思し召したり。ただこの<A HREF="#k16">ころぞ</A><A NAME="t16">、</A>おどろきて、よろづのことせさせたまふ。月ごろは、常の御悩みとのみうちたゆみたりつるを、源氏の大臣も深く思し入りたり。限りあれば、ほどなく帰らせたまふも、悲しきこと多かり。<BR>⏎
d1275<P>⏎
text19276 <A NAME="in33">[第三段 藤壺入道宮の崩御]</A><BR>185 
d1277<P>⏎
cd2:1278-279 大臣は、朝廷方ざまにても、かくやむごとなき人の限り、うち続き亡せたまひなむことを思し嘆く。人知れぬあはれ、はた限りなくて、御祈りなど思し寄らぬことなし。年ごろ思し絶えたりつる筋さへ、今一度聞こえずなりぬるが、いみじく思さるれば、近き御几帳のもとに寄りて、御ありさまなども、さるべき人びとに問ひ聞きたまへば、親しき限りさぶらひて、こまかに聞こゆ。<BR>⏎
<P>⏎
186 大臣は、朝廷方ざまにても、かくやむごとなき人の限り、うち続き亡せたまひなむことを思し嘆く。人知れぬあはれ、はた限りなくて、御祈りなど思し寄らぬことなし。年ごろ思し絶えたりつる筋さへ、今一度聞こえずなりぬるが、いみじく思さるれば、近き御几帳のもとに寄りて、御ありさまなども、さるべき人びとに問ひ聞きたまへば、親しき限りさぶらひて、こまかに聞こゆ。<BR>⏎
d1281<P>⏎
cd2:1282-283 と泣き嘆く人びと多かり。<BR>⏎
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188 と泣き嘆く人びと多かり。<BR>⏎
d1285<P>⏎
cd4:2286-289 とほのかにのたまはするも、ほのぼの聞こゆるに、御応へも聞こえやりたまはず、泣きたまふさま、いといみじ。「などかうしも心弱きさまに」と、人目を思し返せど、いにしへよりの御ありさまを、おほかたの世につけても、あたらしく惜しき人の御さまを、<A HREF="#no8">心にかなふわざ</A><A NAME="te8">な</A>らねば、かけとどめきこえむ方なく、いふかひなく思さるること限りなし。<BR>⏎
<P>⏎
 「はかばかしからぬ身ながらも、昔より、御後見仕うまつるべきことを、心のいたる限り、おろかならず思ひたまふるに、太政大臣の隠れたまひぬるをだに、世の中、心あわたたしく思ひたまへらるるに、またかくおはしませば、よろづに心乱れはべりて、世にはべらむことも、残りなき心地なむしはべる」<BR>⏎
<P>⏎
190-191 とほのかにのたまはするも、ほのぼの聞こゆるに、御応へも聞こえやりたまはず、泣きたまふさま、いといみじ。「などかうしも心弱きさまに」と、人目を思し返せど、いにしへよりの御ありさまを、おほかたの世につけても、あたらしく惜しき人の御さまを、<A HREF="#no8">心にかなふわざ</A><A NAME="te8">な</A>らねば、かけとどめきこえむ方なく、いふかひなく思さるること限りなし。<BR>⏎
 「はかばかしからぬ身ながらも、昔より、御後見仕うまつるべきことを、心のいたる限り、おろかならず思ひたまふるに、太政大臣の隠れたまひぬるをだに、世の中、心あわたたしく思ひたまへらるるに、またかくおはしませば、よろづに心乱れはべりて、世にはべらむことも、残りなき心地なむしはべる」<BR>⏎
d1291<P>⏎
text19292 <A NAME="in34">[第四段 源氏、藤壺を哀悼]</A><BR>193 
d1293<P>⏎
d1295<P>⏎
cd2:1296-297 功徳の方とても、勧むるによりたまひて、いかめしうめづらしうしたまふ人<A HREF="#k19">なども</A><A NAME="t19">、</A>昔の<A HREF="#k20">さかしき</A><A NAME="t20">世</A>に皆ありけるを、これはさやうなることなく、ただもとよりの宝物、得たまふべき年官、年爵、御封の物のさるべき限りして、まことに心深きことどもの限りをし置かせたまへれば、何とわくまじき山伏などまで惜しみきこゆ。<BR>⏎
<P>⏎
195 功徳の方とても、勧むるによりたまひて、いかめしうめづらしうしたまふ人<A HREF="#k19">なども</A><A NAME="t19">、</A>昔の<A HREF="#k20">さかしき</A><A NAME="t20">世</A>に皆ありけるを、これはさやうなることなく、ただもとよりの宝物、得たまふべき年官、年爵、御封の物のさるべき限りして、まことに心深きことどもの限りをし置かせたまへれば、何とわくまじき山伏などまで惜しみきこゆ。<BR>⏎
d1299<P>⏎
cd3:1300-302 「入り日さす峰にたなびく薄雲は<BR>⏎
  もの思ふ袖に色やまがへる」<BR>⏎
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197 「入り日さす峰にたなびく薄雲は<BR>  もの思ふ袖に色やまがへる」<BR>⏎
d1304<P>⏎
text19305 <H4>第四章 冷泉帝の物語 出生の秘密と譲位ほのめかし</H4>199 
text19306 <A NAME="in41">[第一段 夜居僧都、帝に密奏]</A><BR>200 
d1307<P>⏎
cd2:1308-309 御わざなども過ぎて、事ども静まりて、帝もの心細く思したり。この入道の宮の御母后の御世より伝はりて、次々の御祈りの師にてさぶらひける僧都、故宮にもいとやむごとなく親しきものに思したりしを、朝廷にも重き御おぼえにて、いかめしき御願ども多く立てて、世にかしこき聖なりける、年七十ばかりにて、今は終りの行なひをせむとて籠もりたるが、宮の御事によりて出でたるを、内裏より召しありて、常にさぶらはせたまふ。<BR>⏎
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201 御わざなども過ぎて、事ども静まりて、帝もの心細く思したり。この入道の宮の御母后の御世より伝はりて、次々の御祈りの師にてさぶらひける僧都、故宮にもいとやむごとなく親しきものに思したりしを、朝廷にも重き御おぼえにて、いかめしき御願ども多く立てて、世にかしこき聖なりける、年七十ばかりにて、今は終りの行なひをせむとて籠もりたるが、宮の御事によりて出でたるを、内裏より召しありて、常にさぶらはせたまふ。<BR>⏎
d1311<P>⏎
d1313<P>⏎
cd2:1314-315 とてさぶらふに、静かなる暁に、人も近くさぶらはず、あるはまかでなどしぬるほどに、古代にうちしはぶきつつ、世の中のことども奏したまふついでに、<BR>⏎
<P>⏎
204 とてさぶらふに、静かなる暁に、人も近くさぶらはず、あるはまかでなどしぬるほどに、古代にうちしはぶきつつ、世の中のことども奏したまふついでに、<BR>⏎
d1317<P>⏎
d1319<P>⏎
text19320 <A NAME="in42">[第二段 冷泉帝、出生の秘密を知る]</A><BR>207 
d1321<P>⏎
d1323<P>⏎
d1325<P>⏎
d1327<P>⏎
c2328-329 「あなかしこ。さらに仏の諌め守りたまふ真言の深き道をだに、隠しとどむることなく広め仕うまつりはべり。まして心に隈あること、何ごとにかはべらむ。<BR>⏎
 これは来し方行く先の大事とはべることを、過ぎおはしましにし院、后の宮、ただ今世をまつりごちたまふ大臣の御ため、すべてかへりてよからぬ事にや漏り出ではべらむ。かかる老法師の身には、たとひ愁へはべりとも、何の悔かはべらむ。仏天の告げあるによりて奏しはべるなり。<BR>⏎
211-212 「あなかしこ。さらに仏の諌め守りたまふ真言の深き道をだに、隠しとどむることなく広め仕うまつりはべり。まして心に隈あること、何ごとにかはべらむ。<BR>⏎
 これは来し方行く先の大事とはべることを、過ぎおはしましにし院、后の宮、ただ今世をまつりごちたまふ大臣の御ため、すべてかへりてよからぬ事にや漏り出ではべらむ。かかる老法師の身には、たとひ愁へはべりとも、何の悔かはべらむ。仏天の告げあるによりて奏しはべるなり。<BR>⏎
d1332<P>⏎
cd2:1333-334 とて詳しく奏するを聞こし召すに、あさましうめづらかにて、恐ろしうも悲しうも、さまざまに御心乱れたり。<BR>⏎
<P>⏎
215 とて詳しく奏するを聞こし召すに、あさましうめづらかにて、恐ろしうも悲しうも、さまざまに御心乱れたり。<BR>⏎
d1336<P>⏎
d1338<P>⏎
d1340<P>⏎
cd4:2341-344 「さらになにがしと王命婦とより他の人、この事のけしき見たるはべらず。さるによりなむ、いと恐ろしうはべる。天変しきりにさとし、世の中静かならぬは、このけなり。いときなく、ものの心知ろし召すまじかりつるほどこそはべりつれ、やうやう御齢足りおはしまして、何事もわきまへさせたまふべき時に至りて、咎をも示すなり。よろづのこと、親の御世より始まるにこそはべるなれ。何の罪とも知ろし召さぬが恐ろしきにより、思ひたまへ消ちてしことを、さらに心より出しはべりぬること」<BR>⏎
<P>⏎
 と泣く泣く聞こゆるほどに、明け果てぬれば、まかでぬ。<BR>⏎
<P>⏎
219-220 「さらになにがしと王命婦とより他の人、この事のけしき見たるはべらず。さるによりなむ、いと恐ろしうはべる。天変しきりにさとし、世の中静かならぬは、このけなり。いときなく、ものの心知ろし召すまじかりつるほどこそはべりつれ、やうやう御齢足りおはしまして、何事もわきまへさせたまふべき時に至りて、咎をも示すなり。よろづのこと、親の御世より始まるにこそはべるなれ。何の罪とも知ろし召さぬが恐ろしきにより、思ひたまへ消ちてしことを、さらに心より出しはべりぬること」<BR>⏎
 と泣く泣く聞こゆるほどに、明け果てぬれば、まかでぬ。<BR>⏎
d1350<P>⏎
cd2:1351-352 <A NAME="in43">[第三段 帝譲位の考えを漏らす]</A><BR>⏎
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226 <A NAME="in43">[第三段 帝譲位の考えを漏らす]</A><BR>⏎
d1355<P>⏎
d1357<P>⏎
d1359<P>⏎
cd6:3360-365 「いとあるまじき御ことなり。世の静かならぬことは、かならず政事の直く、ゆがめるにもよりはべらず。さかしき世にしもなむ、よからぬことどももはべりける。聖の帝の世にも、横様の乱れ出で来ること、唐土にもはべりける。わが国にもさなむはべる。ましてことわりの齢<A HREF="#k25">ども</A><A NAME="t25">の</A>、時至りぬるを、思し嘆くべきことにもはべらず」<BR>⏎
<P>⏎
 などすべて多くのことどもを聞こえたまふ。片端まねぶも、いとかたはらいたしや。<BR>⏎
<P>⏎
 常よりも黒き御装ひに、やつしたまへる御容貌、違ふところなし。主上も、年ごろ御鏡にも、思しよることなれど、聞こし召ししことの後は、またこまかに見たてまつり<A HREF="#k26">たまひつつ</A><A NAME="t26">、</A>ことにいとあはれに思し召さるれば、「いかでこのことをかすめ聞こえばや」と思せど、さすがに、はしたなくも思しぬべきことなれば、若き御心地につつましくて、<A HREF="#k27">ふとも</A><A NAME="t27">え</A>うち出できこえたまはぬほどは、ただおほかたのことどもを、常よりことになつかしう聞こえさせたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
231-233 「いとあるまじき御ことなり。世の静かならぬことは、かならず政事の直く、ゆがめるにもよりはべらず。さかしき世にしもなむ、よからぬことどももはべりける。聖の帝の世にも、横様の乱れ出で来ること、唐土にもはべりける。わが国にもさなむはべる。ましてことわりの齢<A HREF="#k25">ども</A><A NAME="t25">の</A>、時至りぬるを、思し嘆くべきことにもはべらず」<BR>⏎
 などすべて多くのことどもを聞こえたまふ。片端まねぶも、いとかたはらいたしや。<BR>⏎
 常よりも黒き御装ひに、やつしたまへる御容貌、違ふところなし。主上も、年ごろ御鏡にも、思しよることなれど、聞こし召ししことの後は、またこまかに見たてまつり<A HREF="#k26">たまひつつ</A><A NAME="t26">、</A>ことにいとあはれに思し召さるれば、「いかでこのことをかすめ聞こえばや」と思せど、さすがに、はしたなくも思しぬべきことなれば、若き御心地につつましくて、<A HREF="#k27">ふとも</A><A NAME="t27">え</A>うち出できこえたまはぬほどは、ただおほかたのことどもを、常よりことになつかしう聞こえさせたまふ。<BR>⏎
d1367<P>⏎
cd2:1368-369 <A NAME="in44">[第四段 帝源氏への譲位を思う]</A><BR>⏎
<P>⏎
235 <A NAME="in44">[第四段 帝源氏への譲位を思う]</A><BR>⏎
d1371<P>⏎
cd2:1372-373 「今さらに、しか忍びたまひけむこと知りにけりと、かの人にも思はれじ。ただ大臣にいかでほのめかし問ひきこえて、先々のかかる事の例はありけりやと<A HREF="#k28">問ひ</A><A NAME="t28">聞か</A>む」<BR>⏎
<P>⏎
237 「今さらに、しか忍びたまひけむこと知りにけりと、かの人にも思はれじ。ただ大臣にいかでほのめかし問ひきこえて、先々のかかる事の例はありけりやと<A HREF="#k28">問ひ</A><A NAME="t28">聞か</A>む」<BR>⏎
d1375<P>⏎
d1377<P>⏎
cd2:1378-379 などよろづにぞ思しける。<BR>⏎
<P>⏎
240 などよろづにぞ思しける。<BR>⏎
text19380 <A NAME="in45">[第五段 源氏、帝の意向を峻絶]</A><BR>241 
d1381<P>⏎
cd8:4382-389 秋の司召に、太政大臣になりたまふべきこと、うちうちに定め申したまふついでになむ、帝思し寄する筋のこと、漏らしきこえたまひけるを、大臣、いとまばゆく、恐ろしう思して、さらにあるまじきよしを申し返したまふ。<BR>⏎
<P>⏎
 「故院の御心ざし、あまたの皇子たちの御中に、とりわきて思し召しながら、位を譲らせたまはむことを思し召し寄らずなりにけり。何かその御心改めて、及ばぬ際には昇りはべらむ。ただもとの御おきてのままに、朝廷に仕うまつりて、今すこしの齢かさなりはべりなば、のどかなる行なひに籠もりはべりなむと思ひたまふる」<BR>⏎
<P>⏎
 と常の御言の葉に変はらず奏したまへば、いと口惜しうなむ思しける。<BR>⏎
<P>⏎
 太政大臣になりたまふべき定めあれど、しばしと思すところありて、ただ御位添ひて、牛車聴されて参りまかでしたまふを、帝飽かず、かたじけなき<A HREF="#k30">ものに</A><A NAME="t30">思</A>ひきこえたまひて、なほ親王になりたまふべきよしを思しのたまはすれど、<BR>⏎
<P>⏎
242-245 秋の司召に、太政大臣になりたまふべきこと、うちうちに定め申したまふついでになむ、帝思し寄する筋のこと、漏らしきこえたまひけるを、大臣、いとまばゆく、恐ろしう思して、さらにあるまじきよしを申し返したまふ。<BR>⏎
 「故院の御心ざし、あまたの皇子たちの御中に、とりわきて思し召しながら、位を譲らせたまはむことを思し召し寄らずなりにけり。何かその御心改めて、及ばぬ際には昇りはべらむ。ただもとの御おきてのままに、朝廷に仕うまつりて、今すこしの齢かさなりはべりなば、のどかなる行なひに籠もりはべりなむと思ひたまふる」<BR>⏎
 と常の御言の葉に変はらず奏したまへば、いと口惜しうなむ思しける。<BR>⏎
 太政大臣になりたまふべき定めあれど、しばしと思すところありて、ただ御位添ひて、牛車聴されて参りまかでしたまふを、帝飽かず、かたじけなき<A HREF="#k30">ものに</A><A NAME="t30">思</A>ひきこえたまひて、なほ親王になりたまふべきよしを思しのたまはすれど、<BR>⏎
d1391<P>⏎
d1393<P>⏎
cd2:1395-396 とあやしう思さる。<BR>⏎
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249 とあやしう思さる。<BR>⏎
d1398<P>⏎
cd2:1399-400 「このことを、もしもののついでに、露ばかりにても漏らし奏したまふことやありし」<BR>⏎
<P>⏎
251 「このことを、もしもののついでに、露ばかりにても漏らし奏したまふことやありし」<BR>⏎
d1402<P>⏎
cd2:1403-404 「さらに。かけても聞こし召さむことを、いみじきことに思し召して、かつは罪得ることにやと、主上の御ためを、なほ思し召し嘆きたりし」<BR>⏎
<P>⏎
253 「さらに。かけても聞こし召さむことを、いみじきことに思し召して、かつは罪得ることにやと、主上の御ためを、なほ思し召し嘆きたりし」<BR>⏎
d1406<P>⏎
text19407 <H4>第五章 光る源氏の物語 春秋優劣論と六条院造営の計画</H4>255 
text19408 <A NAME="in51">[第一段 斎宮女御、二条院に里下がり]</A><BR>256 
d1409<P>⏎
d1411<P>⏎
d1413<P>⏎
d1415<P>⏎
text19416 <A NAME="in52">[第二段 源氏、女御と往時を語る]</A><BR>260 
d1417<P>⏎
d1419<P>⏎
d1421<P>⏎
cd2:1422-423 とて柱に寄りゐたまへる夕ばえ、いとめでたし。昔の御ことども、かの野の宮に立ちわづらひし曙などを、聞こえ出でたまふ。いとものあはれと思したり。<BR>⏎
<P>⏎
263 とて柱に寄りゐたまへる夕ばえ、いとめでたし。昔の御ことども、かの野の宮に立ちわづらひし曙などを、聞こえ出でたまふ。いとものあはれと思したり。<BR>⏎
d1425<P>⏎
c1426 「過ぎにし方、ことに思ひ悩むべき<A HREF="#k33">ことも</A><A NAME="t33">な</A>くてはべりぬべかりし世の中にも、なほ心から、好き好きしきことにつけて、もの思ひの絶えずもはべりけるかな。さるまじきことどもの、心苦しきがあまたはべりし中に、つひに心も解けず、<A HREF="#k34">むすぼほれ</A><A NAME="t34">て</A>止みぬること、二つなむはべる。<BR>⏎
265 「過ぎにし方、ことに思ひ悩むべき<A HREF="#k33">ことも</A><A NAME="t33">な</A>くてはべりぬべかりし世の中にも、なほ心から、好き好きしきことにつけて、もの思ひの絶えずもはべりけるかな。さるまじきことどもの、心苦しきがあまたはべりし中に、つひに心も解けず、<A HREF="#k34">むすぼほれ</A><A NAME="t34">て</A>止みぬること、二つなむはべる。<BR>⏎
cd2:1428-429 とて今一つはのたまひさしつ。<BR>⏎
<P>⏎
267 とて今一つはのたまひさしつ。<BR>⏎
d1431<P>⏎
d1433<P>⏎
cd4:2436-439 とて異事に言ひ紛らはしたまひつ。<BR>⏎
<P>⏎
 「今は、いかでのどやかに、生ける世の限り、思ふこと残さず、後の世の勤めも心にまかせて、籠もりゐなむと思ひはべるを、この世の思ひ出にしつべきふしのはべらぬこそ、さすがに口惜しうはべりぬべけれ。かならず幼き人のはべる、生ひ先いと待ち遠なりや。かたじけなくとも、なほこの門広げさせたまひて、はべらずなりなむ後にも、数まへさせたまへ」<BR>⏎
<P>⏎
272-273 とて異事に言ひ紛らはしたまひつ。<BR>⏎
 「今は、いかでのどやかに、生ける世の限り、思ふこと残さず、後の世の勤めも心にまかせて、籠もりゐなむと思ひはべるを、この世の思ひ出にしつべきふしのはべらぬこそ、さすがに口惜しうはべりぬべけれ。かならず幼き人のはべる、生ひ先いと待ち遠なりや。かたじけなくとも、なほこの門広げさせたまひて、はべらずなりなむ後にも、数まへさせたまへ」<BR>⏎
d1442<P>⏎
text19443 <A NAME="in53">[第三段 女御に春秋の好みを問う]</A><BR>276 
d1444<P>⏎
d1446<P>⏎
d1448<P>⏎
d1450<P>⏎
d1452<P>⏎
cd6:3453-458 「ましていかが思ひ分きはべらむ。げにいつとなきなかに、<A HREF="#no17">あやしと聞きし夕べ</A><A NAME="te17">こ</A>そ、はかなう消えたまひにし露のよすがにも、思ひたまへられぬべけれ」<BR>⏎
<P>⏎
 としどけなげにのたまひ消つも、いとらうたげなるに、え忍びたまはで、<BR>⏎
<P>⏎
 「君もさはあはれを交はせ人知れず<BR>⏎
  わが身にしむる秋の夕風<BR>⏎
281-283 「ましていかが思ひ分きはべらむ。げにいつとなきなかに、<A HREF="#no17">あやしと聞きし夕べ</A><A NAME="te17">こ</A>そ、はかなう消えたまひにし露のよすがにも、思ひたまへられぬべけれ」<BR>⏎
 としどけなげにのたまひ消つも、いとらうたげなるに、え忍びたまはで、<BR>⏎
 「君もさはあはれを交はせ人知れず<BR>  わが身にしむる秋の夕風<BR>⏎
d1460<P>⏎
d1462<P>⏎
d1465<P>⏎
cd4:2466-469 「あさましうも疎ませたまひぬるかな。まことに心深き人は、かくこそあらざなれ。よし今よりは、憎ませたまふなよ。つらからむ」<BR>⏎
<P>⏎
 とて渡りたまひぬ。<BR>⏎
<P>⏎
288-289 「あさましうも疎ませたまひぬるかな。まことに心深き人は、かくこそあらざなれ。よし今よりは、憎ませたまふなよ。つらからむ」<BR>⏎
 とて渡りたまひぬ。<BR>⏎
d1475<P>⏎
text19476 <A NAME="in54">[第四段 源氏、紫の君と語らう]</A><BR>295 
d1477<P>⏎
d1479<P>⏎
d1481<P>⏎
cd5:3482-486 とわが身ながら思し知らる。<BR>⏎
<P>⏎
 「これはいと似げなきことなり。恐ろしう罪深き方は多うまさりけめど、いにしへの好きは、思ひやりすくなきほどの過ちに、仏神も許したまひけむ」と、思しさますも、「なほこの道は、うしろやすく深き方のまさりけるかな」<BR>⏎
 と思し知られたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
298-300 とわが身ながら思し知らる。<BR>⏎
 「これはいと似げなきことなり。恐ろしう罪深き方は多うまさりけめど、いにしへの好きは、思ひやりすくなきほどの過ちに、仏神も許したまひけむ」と、思しさますも、「なほこの道は、うしろやすく深き方のまさりけるかな」<BR>⏎
 と思し知られたまふ。<BR>⏎
d1488<P>⏎
c1490 「女御の、秋に心を寄せたまへりしもあはれに、君の、春の曙に心しめたまへるもことわりに<A HREF="#k40">こそ</A><A NAME="t40">あ</A>れ。時々につけたる木草の花によせても、御心とまるばかりの遊びなどしてしがなと、公私のいとなみしげき身こそふさはしからね、いかで思ふことしてしがなと、ただ御ためさうざうしくやと思ふこそ、心苦しけれ」<BR>⏎
303 「女御の、秋に心を寄せたまへりしもあはれに、君の、春の曙に心しめたまへるもことわりに<A HREF="#k40">こそ</A><A NAME="t40">あ</A>れ。時々につけたる木草の花によせても、御心とまるばかりの遊びなどしてしがなと、公私のいとなみしげき身こそふさはしからね、いかで思ふことしてしがなと、ただ御ためさうざうしくやと思ふこそ、心苦しけれ」<BR>⏎
d1492<P>⏎
text19493 <A NAME="in55">[第五段 源氏、大堰の明石を訪う]</A><BR>305 
d1494<P>⏎
d1497<P>⏎
cd2:1498-499 住み馴るるままに、いと心すごげなる所のさまに、いと深からざらむことにてだに、あはれ添ひぬべし。まして見たてまつるにつけても、つらかりける御契りの、さすがに、浅からぬを思ふに、なかなかにて慰めがたきけしきなれば、こしらへかねたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
308 住み馴るるままに、いと心すごげなる所のさまに、いと深からざらむことにてだに、あはれ添ひぬべし。まして見たてまつるにつけても、つらかりける御契りの、さすがに、浅からぬを思ふに、なかなかにて慰めがたきけしきなれば、こしらへかねたまふ。<BR>⏎
d1501<P>⏎
d1503<P>⏎
d1505<P>⏎
cd4:2506-509 「漁りせし影忘られぬ篝火は<BR>⏎
  身の浮舟や慕ひ来にけむ<BR>⏎
 思ひこそまがへられはべれ」<BR>⏎
<P>⏎
312-313 「漁りせし影忘られぬ篝火は<BR>  身の浮舟や慕ひ来にけむ<BR>⏎
 思ひこそまがへられはべれ」<BR>⏎
d1511<P>⏎
cd2:1512-513 「浅からぬしたの思ひを知らねばや<BR>⏎
  なほ<A HREF="#no19">篝火の影</A><A NAME="te19">は</A>騒げる<BR>⏎
315 「浅からぬしたの思ひを知らねばや<BR>  なほ<A HREF="#no19">篝火の影</A><A NAME="te19">は</A>騒げる<BR>⏎
d1515<P>⏎
c1516 とおし返し恨みたまへる。<BR>⏎
317 とおし返し恨みたまへる。<BR>⏎
d2518-519
<P>⏎
text19520 <a name="in61">【出典】<BR>319 
c1521</a><A NAME="no1">出典1</A> 宿変へて松にも見えずなりぬればつらき所の多くもあるかな(後撰集恋三-七〇五 女)<A HREF="#te1">(戻)</A><BR>⏎
320<A NAME="no1">出典1</A> 宿変へて松にも見えずなりぬればつらき所の多くもあるかな(後撰集恋三-七〇五 女)<A HREF="#te1">(戻)</A><BR>⏎
d1541
text19542<p> <a name="in62">【校訂】<BR>340 
c1544</a><A NAME="k01">校訂1</A> 川づらの--か(か/+は)つらの<A HREF="#t01">(戻)</A><BR>⏎
342<A NAME="k01">校訂1</A> 川づらの--か(か/+は)つらの<A HREF="#t01">(戻)</A><BR>⏎
d1584</p>⏎
d1591</p>⏎
i0392
diffsrc/original/text20.htmlsrc/modified/text20.html
cd2:18-9<body background="wallppr063.gif">⏎
First updated 9/20/1996(ver.1-1)<BR>⏎
8<BODY>⏎
cd3:210-12Last updated 9/21/2010(ver.2-3)<BR>⏎
渋谷栄一校訂(C)<BR>⏎
<P
>⏎
9-10<ADDRESS>Last updated 9/21/2010(ver.2-3)<BR>⏎
渋谷栄一校訂(C)</ADDRESS>⏎
d114<P>⏎
d131<P>⏎
d155<P>⏎
d158<P>⏎
text2059 <H4>第一章 朝顔姫君の物語 昔の恋の再燃</H4>53 
text2060 <A NAME="in11">[第一段 九月、故桃園式部卿宮邸を訪問]</A><BR>54 
d161<P>⏎
d163<P>⏎
d165<P>⏎
d167<P>⏎
d169<P>⏎
d172<P>⏎
d174<P>⏎
d176<P>⏎
cd7:477-83 「いともいともあさましく、いづ方につけても定めなき世を、同じさまにて見たまへ過ぐす<A HREF="#no1">命長さの恨めしきこと多く</A><A NAME="te1">は</A>べれど、かくて世に<A HREF="#k01">立ち返り</A><A NAME="t01">た</A>まへる御よろこびになむ、ありし年ごろを見たてまつりさしてましかば、口惜しからましとおぼえはべり」<BR>⏎
<P>⏎
 とうちわななきたまひて、<BR>⏎
<P>⏎
 「いときよらにねびまさりたまひにけるかな。童にものしたまへりしを見たてまつりそめし時、世にかかる光の出でおはしたることと驚かれはべりしを、時々見たてまつるごとに、ゆゆしくおぼえはべりてなむ。内裏の上なむ、いとよく似たてまつらせたまへりと、人びと聞こゆるを、さりとも劣りたまへらむとこそ、推し量りはべれ」<BR>⏎
<P>⏎
 と長々と聞こえたまへば、<BR>⏎
63-66 「いともいともあさましく、いづ方につけても定めなき世を、同じさまにて見たまへ過ぐす<A HREF="#no1">命長さの恨めしきこと多く</A><A NAME="te1">は</A>べれど、かくて世に<A HREF="#k01">立ち返り</A><A NAME="t01">た</A>まへる御よろこびになむ、ありし年ごろを見たてまつりさしてましかば、口惜しからましとおぼえはべり」<BR>⏎
 とうちわななきたまひて、<BR>⏎
 「いときよらにねびまさりたまひにけるかな。童にものしたまへりしを見たてまつりそめし時、世にかかる光の出でおはしたることと驚かれはべりしを、時々見たてまつるごとに、ゆゆしくおぼえはべりてなむ。内裏の上なむ、いとよく似たてまつらせたまへりと、人びと聞こゆるを、さりとも劣りたまへらむとこそ、推し量りはべれ」<BR>⏎
 と長々と聞こえたまへば、<BR>⏎
d185<P>⏎
d187<P>⏎
d189<P>⏎
d191<P>⏎
cd2:192-93 とてもまた泣いたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
71 とてもまた泣いたまふ。<BR>⏎
d195<P>⏎
d197<P>⏎
cd4:298-101 「さもさぶらひ馴れなましかば、今に思ふさまにはべらまし。皆さし放たせたまひて」<BR>⏎
<P>⏎
 と恨めしげにけしきばみきこえたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
74-75 「さもさぶらひ馴れなましかば、今に思ふさまにはべらまし。皆さし放たせたまひて」<BR>⏎
 と恨めしげにけしきばみきこえたまふ。<BR>⏎
text20102 <A NAME="in12">[第二段 朝顔姫君と対話]</A><BR>76 
d1103<P>⏎
d1105<P>⏎
d1107<P>⏎
c1108 とてやがて簀子より渡りたまふ。<BR>⏎
79 とてやがて簀子より渡りたまふ。<BR>⏎
d1111<P>⏎
d1113<P>⏎
cd2:1114-115 とて飽かず思したり。<BR>⏎
<P>⏎
83 とて飽かず思したり。<BR>⏎
d1117<P>⏎
cd12:5118-129 と聞こえ出だしたまへり。「げにこそ定めがたき世なれ」と、はかなきことにつけても思し続けらる。<BR>⏎
<P>⏎
 「人知れず神の許しを待ちし間に<BR>⏎
  ここらつれなき世を過ぐすかな<BR>⏎
<P>⏎
 今は、何のいさめにか、かこたせたまはむとすらむ。なべて世にわづらはしきことさへはべりしのち、さまざまに思ひたまへ集めしかな。いかで片端をだに」<BR>⏎
<P>⏎
 とあながちに聞こえたまふ、御用意なども、昔よりも今すこしなまめかしきけさへ添ひたまひにけり。さるはいといたう過ぐしたまへど、御位のほどには合はざめり。<BR>⏎
<P>⏎
 「なべて世のあはればかりを問ふからに<BR>⏎
  誓ひしことと神やいさめむ」<BR>⏎
<P>⏎
85-89 と聞こえ出だしたまへり。「げにこそ定めがたき世なれ」と、はかなきことにつけても思し続けらる。<BR>⏎
 「人知れず神の許しを待ちし間に<BR>  ここらつれなき世を過ぐすかな<BR>⏎
 今は、何のいさめにか、かこたせたまはむとすらむ。なべて世にわづらはしきことさへはべりしのち、さまざまに思ひたまへ集めしかな。いかで片端をだに」<BR>⏎
 とあながちに聞こえたまふ、御用意なども、昔よりも今すこしなまめかしきけさへ添ひたまひにけり。さるはいといたう過ぐしたまへど、御位のほどには合はざめり。<BR>⏎
 「なべて世のあはればかりを問ふからに<BR>  誓ひしことと神やいさめむ」<BR>⏎
d1131<P>⏎
cd2:1132-133 「あな心憂。その世の罪は、みな科戸の風にたぐへてき」<BR>⏎
<P>⏎
91 「あな心憂。その世の罪は、みな科戸の風にたぐへてき」<BR>⏎
d1135<P>⏎
d1137<P>⏎
cd2:1138-139 などはかなきことを聞こゆるも、まめやかには、いとかたはらいたし。世づかぬ御ありさまは、年月に添へても、もの深くのみ引き入りたまひて、え聞こえたまはぬを、見たてまつり悩めり。<BR>⏎
<P>⏎
94 などはかなきことを聞こゆるも、まめやかには、いとかたはらいたし。世づかぬ御ありさまは、年月に添へても、もの深くのみ引き入りたまひて、え聞こえたまはぬを、見たてまつり悩めり。<BR>⏎
d1141<P>⏎
cd2:1142-143 など浅はかならずうち嘆きて立ちたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
96 など浅はかならずうち嘆きて立ちたまふ。<BR>⏎
d1145<P>⏎
cd2:1146-147 とて出でたまふ名残、所狭きまで、例の聞こえあへり。<BR>⏎
<P>⏎
98 とて出でたまふ名残、所狭きまで、例の聞こえあへり。<BR>⏎
d1149<P>⏎
text20150 <A NAME="in13">[第三段 帰邸後に和歌を贈答しあう]</A><BR>100 
d1151<P>⏎
cd7:3152-158 心やましくて立ち出でたまひぬるは、まして寝覚がちに思し続けらる。とく御格子参らせたまひて、朝霧を眺めたまふ。枯れたる花どもの中に、朝顔のこれかれにはひまつはれて、あるかなきかに咲きて、匂ひもことに変はれるを、折らせたまひてたてまつれたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
 「けざやかなりし御もてなしに、人悪ろき心地しはべりて、うしろでもいとどいかが御覧じけむと、ねたく。されど<BR>⏎
<P
>⏎
  見し折のつゆ忘られぬ朝顔の<BR>⏎
  花の盛りは過ぎやしぬらむ<BR>⏎
<P>⏎
101-103 心やましくて立ち出でたまひぬるは、まして寝覚がちに思し続けらる。とく御格子参らせたまひて、朝霧を眺めたまふ。枯れたる花どもの中に、朝顔のこれかれにはひまつはれて、あるかなきかに咲きて、匂ひもことに変はれるを、折らせたまひてたてまつれたまふ。<BR>⏎
 「けざやかなりし御もてなしに、人悪ろき心地しはべりて、うしろでもいとどいかが御覧じけむと、ねたく。されど<BR>⏎
  見し折のつゆ忘られぬ朝顔の<BR>  花の盛りは過ぎやしぬらむ<BR>⏎
d1160<P>⏎
d1162<P>⏎
cd3:1163-165 「秋果てて霧の籬にむすぼほれ<BR>⏎
  あるかなきかに移る朝顔<BR>⏎
<P>⏎
106 「秋果てて霧の籬にむすぼほれ<BR>  あるかなきかに移る朝顔<BR>⏎
d1167<P>⏎
d1169<P>⏎
d1171<P>⏎
text20172 <A NAME="in14">[第四段 源氏、執拗に朝顔姫君を恋う]</A><BR>110 
d1173<P>⏎
cd2:1174-175 東の対に離れおはして、<A HREF="#k05">宣旨</A><A NAME="t05">を</A>迎へつつ語らひたまふ。さぶらふ人びとの、さしもあらぬ際のことをだに、なびきやすなるなどは、過ちもしつべく、めできこゆれど、宮は、そのかみだにこよなく思し離れたりしを、今はまして誰も思ひなかるべき御齢、おぼえにて、「はかなき木草につけたる御返りなどの、折過ぐさぬも、軽々しくや、とりなさるらむ」など、人の物言ひを憚りたまひつつ、うちとけたまふべき御けしきもなければ、古りがたく同じさまなる御心ばへを、世の人に変はり、めづらしくもねたくも思ひきこえたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
111 東の対に離れおはして、<A HREF="#k05">宣旨</A><A NAME="t05">を</A>迎へつつ語らひたまふ。さぶらふ人びとの、さしもあらぬ際のことをだに、なびきやすなるなどは、過ちもしつべく、めできこゆれど、宮は、そのかみだにこよなく思し離れたりしを、今はまして誰も思ひなかるべき御齢、おぼえにて、「はかなき木草につけたる御返りなどの、折過ぐさぬも、軽々しくや、とりなさるらむ」など、人の物言ひを憚りたまひつつ、うちとけたまふべき御けしきもなければ、古りがたく同じさまなる御心ばへを、世の人に変はり、めづらしくもねたくも思ひきこえたまふ。<BR>⏎
d1177<P>⏎
d1179<P>⏎
d1183<P>⏎
cd2:1185-186 など人知れず思し嘆かる。<BR>⏎
<P>⏎
118 など人知れず思し嘆かる。<BR>⏎
cd2:1188-189 などさまざまに思ひ乱れたまふに、よろしきことこそ、うち怨じなど憎からず聞こえたまへ、まめやかにつらしと思せば、色にも出だしたまはず。<BR>⏎
<P>⏎
120 などさまざまに思ひ乱れたまふに、よろしきことこそ、うち怨じなど憎からず聞こえたまへ、まめやかにつらしと思せば、色にも出だしたまはず。<BR>⏎
cd3:2191-193 「げに人の言葉むなしかるまじきなめり。けしきをだにかすめたまへかし」<BR>⏎
 と疎ましくのみ思ひきこえたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
122-123 「げに人の言葉むなしかるまじきなめり。けしきをだにかすめたまへかし」<BR>⏎
 と疎ましくのみ思ひきこえたまふ。<BR>⏎
text20194 <H4>第二章 朝顔姫君の物語 老いてなお旧りせぬ好色心</H4>124 
text20195 <A NAME="in21">[第一段 朝顔姫君訪問の道中]</A><BR>125 
d1196<P>⏎
d1198<P>⏎
d1200<P>⏎
cd2:1201-202 とてついゐたまへれど、見もやりたまはず、若君をもてあそび、紛らはしおはする側目の、ただならぬを、<BR>⏎
<P>⏎
128 とてついゐたまへれど、見もやりたまはず、若君をもてあそび、紛らはしおはする側目の、ただならぬを、<BR>⏎
d1204<P>⏎
d1206<P>⏎
c1207 「<A HREF="#no5">馴れゆくこそ</A><A NAME="te5">、</A>げに憂きこと多かりけれ」<BR>⏎
131 「<A HREF="#no5">馴れゆくこそ</A><A NAME="te5">、</A>げに憂きこと多かりけれ」<BR>⏎
d1209<P>⏎
cd2:1213-214 と忍びあへず思さる。<BR>⏎
<P>⏎
136 と忍びあへず思さる。<BR>⏎
d1216<P>⏎
d1218<P>⏎
cd2:1219-220 など人びとにものたまひなせど、<BR>⏎
<P>⏎
139 など人びとにものたまひなせど、<BR>⏎
cd2:1223-224 などつぶやきあへり。<BR>⏎
<P>⏎
142 などつぶやきあへり。<BR>⏎
text20225 <A NAME="in22">[第二段 宮邸に到着して門を入る]</A><BR>143 
d1226<P>⏎
d1229<P>⏎
d1231<P>⏎
d1233<P>⏎
d1235<P>⏎
cd3:1236-238 「いつのまに蓬がもととむすぼほれ<BR>⏎
  雪降る里と荒れし垣根ぞ」<BR>⏎
<P>⏎
149 「いつのまに蓬がもととむすぼほれ<BR>  雪降る里と荒れし垣根ぞ」<BR>⏎
d1240<P>⏎
text20241 <A NAME="in23">[第三段 宮邸で源典侍と出会う]</A><BR>151 
d1242<P>⏎
d1244<P>⏎
d1246<P>⏎
d1248<P>⏎
d1250<P>⏎
cd2:1251-252 など名のり<A HREF="#k10">出づる</A><A NAME="t10">に</A>ぞ、思し出づる。<BR>⏎
<P>⏎
156 など名のり<A HREF="#k10">出づる</A><A NAME="t10">に</A>ぞ、思し出づる。<BR>⏎
d1254<P>⏎
d1256<P>⏎
cd2:1257-258 とて寄りゐたまへる御けはひに、いとど昔思ひ出でつつ、古りがたくなまめかしきさまにもてなして、いたうすげみにたる口つき、思ひやらるる声づかひの、さすがに舌つきにて、うちされむとはなほ思へり。<BR>⏎
<P>⏎
159 とて寄りゐたまへる御けはひに、いとど昔思ひ出でつつ、古りがたくなまめかしきさまにもてなして、いたうすげみにたる口つき、思ひやらるる声づかひの、さすがに舌つきにて、うちされむとはなほ思へり。<BR>⏎
d1260<P>⏎
c1261 「この盛りに挑みたまひし女御更衣、あるはひたすら亡くなりたまひ、あるはかひなくて、はかなき世にさすらへたまふもあべかめり。入道の宮などの御齢よ。あさましとのみ思さるる世に、年のほど身の残り少なげさに、<A HREF="#k12">心ばへ</A><A NAME="t12">な</A>ども、ものはかなく見えし人の、生きとまりて、のどやかに行なひをもうちして過ぐしけるは、なほすべて定めなき世なり」<BR>⏎
161 「この盛りに挑みたまひし女御更衣、あるはひたすら亡くなりたまひ、あるはかひなくて、はかなき世にさすらへたまふもあべかめり。入道の宮などの御齢よ。あさましとのみ思さるる世に、年のほど身の残り少なげさに、<A HREF="#k12">心ばへ</A><A NAME="t12">な</A>ども、ものはかなく見えし人の、生きとまりて、のどやかに行なひをもうちして過ぐしけるは、なほすべて定めなき世なり」<BR>⏎
d1263<P>⏎
cd3:1264-266 「年経れどこの契りこそ忘られね<BR>⏎
  <A HREF="#no8">親の親とか</A><A NAME="te8">言</A>ひし一言」<BR>⏎
<P>⏎
163 「年経れどこの契りこそ忘られね<BR>  <A HREF="#no8">親の親とか</A><A NAME="te8">言</A>ひし一言」<BR>⏎
d1268<P>⏎
cd2:1269-270 「身を変へて後も待ち見よこの世にて<BR>⏎
  親を忘るるためしありやと<BR>⏎
165 「身を変へて後も待ち見よこの世にて<BR>  親を忘るるためしありやと<BR>⏎
d1272<P>⏎
cd2:1273-274 とて立ちたまひぬ。<BR>⏎
<P>⏎
167 とて立ちたまひぬ。<BR>⏎
text20275 <A NAME="in24">[第四段 朝顔姫君と和歌を詠み交わす]</A><BR>168 
d1276<P>⏎
d1279<P>⏎
d1281<P>⏎
c2282-283 とおり立ちて責めきこえたまへど、<BR>⏎
 「昔われも人も若やかに、罪許されたりし世にだに、故宮などの心寄せ思したりしを、なほあるまじく恥づかしと思ひきこえてやみにしを、世の末に、さだすぎ、つきなきほどにて、一声もいとまばゆからむ」<BR>⏎
172-173 とおり立ちて責めきこえたまへど、<BR>⏎
 「昔われも人も若やかに、罪許されたりし世にだに、故宮などの心寄せ思したりしを、なほあるまじく恥づかしと思ひきこえてやみにしを、世の末に、さだすぎ、つきなきほどにて、一声もいとまばゆからむ」<BR>⏎
d1285<P>⏎
d1287<P>⏎
cd2:1288-289 「つれなさを昔に懲りぬ心こそ<BR>⏎
  人のつらきに添へてつらけれ<BR>⏎
176 「つれなさを昔に懲りぬ心こそ<BR>  人のつらきに添へてつらけれ<BR>⏎
d1291<P>⏎
cd4:2295-298 と人びと、例の、聞こゆ。<BR>⏎
<P>⏎
 「あらためて何かは見えむ人のうへに<BR>⏎
  かかりと聞きし心変はりを<BR>⏎
181-182 と人びと、例の、聞こゆ。<BR>⏎
 「あらためて何かは見えむ人のうへに<BR>  かかりと聞きし心変はりを<BR>⏎
d1300<P>⏎
d1302<P>⏎
text20303 <A NAME="in25">[第五段 朝顔姫君、源氏の求愛を拒む]</A><BR>185 
d1304<P>⏎
d1306<P>⏎
d1308<P>⏎
cd3:2309-311 とてせちにうちささめき語らひたまへど、何ごとにかあらむ。人びとも、<BR>⏎
<P>⏎
 「あなかたじけな。あながちに情けおくれてももてなしきこえたまふらむ」<BR>⏎
188-189 とてせちにうちささめき語らひたまへど、何ごとにかあらむ。人びとも、<BR>⏎
 「あなかたじけな。あながちに情けおくれてももてなしきこえたまふらむ」<BR>⏎
d1313<P>⏎
cd3:2315-317 げに人のほどの、をかしきにも、あはれにも、思し知らぬにはあらねど、<BR>⏎
 「もの思ひ知るさまに見えたてまつるとて、おしなべての世の人のめできこゆらむ列にや思ひなされむ。かつは軽々しき心のほども見知りたまひぬべく、恥づかしげなめる御ありさまを」と思せば、「なつかしからむ情けも、いとあいなし。よその御返りなどは、うち絶えで、おぼつかなかるまじきほどに聞こえたまひ、人伝ての御応へ、はしたなからで過ぐしてむ。年ごろ、沈みつる罪失ふばかり御行なひを」とは思し立てど、「にはかにかかる御ことをしも、もて離れ顔にあらむも、なかなか今めかしきやうに見え聞こえて、人のとりなさじやは」と、世の人の口さがなさを思し知りにしかば、かつさぶらふ人にもうちとけたまはず、いたう御心づかひしたまひつつ、やうやう御行なひをのみしたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
192-193 げに人のほどの、をかしきにも、あはれにも、思し知らぬにはあらねど、<BR>⏎
 「もの思ひ知るさまに見えたてまつるとて、おしなべての世の人のめできこゆらむ列にや思ひなされむ。かつは軽々しき心のほども見知りたまひぬべく、恥づかしげなめる御ありさまを」と思せば、「なつかしからむ情けも、いとあいなし。よその御返りなどは、うち絶えで、おぼつかなかるまじきほどに聞こえたまひ、人伝ての御応へ、はしたなからで過ぐしてむ。年ごろ、沈みつる罪失ふばかり御行なひを」とは思し立てど、「にはかにかかる御ことをしも、もて離れ顔にあらむも、なかなか今めかしきやうに見え聞こえて、人のとりなさじやは」と、世の人の口さがなさを思し知りにしかば、かつさぶらふ人にもうちとけたまはず、いたう御心づかひしたまひつつ、やうやう御行なひをのみしたまふ。<BR>⏎
d1319<P>⏎
text20320 <H4>第三章 紫の君の物語 冬の雪の夜の孤影</H4>195 
text20321 <A NAME="in31">[第一段 紫の君、嫉妬す]</A><BR>196 
d1322<P>⏎
cd2:1325-326 と御心動きて、二条院に夜離れ重ねたまふを、女君は、<A HREF="#no12">たはぶれにくく</A><A NAME="te12">の</A>み思す。忍びたまへど、いかがうちこぼるる折もなからむ。<BR>⏎
<P>⏎
199 と御心動きて、二条院に夜離れ重ねたまふを、女君は、<A HREF="#no12">たはぶれにくく</A><A NAME="te12">の</A>み思す。忍びたまへど、いかがうちこぼるる折もなからむ。<BR>⏎
d1328<P>⏎
cd2:1329-330 とて御髪をかきやりつつ、いとほしと思したるさまも、絵に描かまほしき御あはひなり。<BR>⏎
<P>⏎
201 とて御髪をかきやりつつ、いとほしと思したるさまも、絵に描かまほしき御あはひなり。<BR>⏎
d1332<P>⏎
cd2:1333-334 などまろがれたる御額髪、ひきつくろひたまへど、いよいよ背きてものも聞こえたまはず。<BR>⏎
<P>⏎
203 などまろがれたる御額髪、ひきつくろひたまへど、いよいよ背きてものも聞こえたまはず。<BR>⏎
d1336<P>⏎
cd6:3337-342 <A HREF="#k16">とて</A><A NAME="t16"></A>「常なき世に、かくまで心置かるるもあぢきなのわざや」と、かつはうち眺めたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
 「斎院にはかなしごと聞こゆるや、もし思しひがむる方ある。それはいともて離れたることぞよ。おのづから見たまひてむ。昔よりこよなうけどほき御心ばへなるを、さうざうしき折々、ただならで聞こえ悩ますに、かしこもつれづれにものしたまふ所なれば、たまさかの応へなどしたまへど、まめまめしきさまにもあらぬを、かくなむあるとしも、愁へきこゆべきことにやは。うしろめたうはあらじとを、思ひ直したまへ」<BR>⏎
<P>⏎
 など日一日慰めきこえたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
205-207 <A HREF="#k16">とて</A><A NAME="t16"></A>「常なき世に、かくまで心置かるるもあぢきなのわざや」と、かつはうち眺めたまふ。<BR>⏎
 「斎院にはかなしごと聞こゆるや、もし思しひがむる方ある。それはいともて離れたることぞよ。おのづから見たまひてむ。昔よりこよなうけどほき御心ばへなるを、さうざうしき折々、ただならで聞こえ悩ますに、かしこもつれづれにものしたまふ所なれば、たまさかの応へなどしたまへど、まめまめしきさまにもあらぬを、かくなむあるとしも、愁へきこゆべきことにやは。うしろめたうはあらじとを、思ひ直したまへ」<BR>⏎
 など日一日慰めきこえたまふ。<BR>⏎
text20343 <A NAME="in32">[第二段 夜の庭の雪まろばし]</A><BR>208 
d1344<P>⏎
d1346<P>⏎
d1348<P>⏎
cd2:1349-350 とて<A HREF="#no14">御簾巻き上げ</A><A NAME="te14">さ</A>せたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
211 とて<A HREF="#no14">御簾巻き上げ</A><A NAME="te14">さ</A>せたまふ。<BR>⏎
d1355<P>⏎
text20356 <A NAME="in33">[第三段 源氏、往古の女性を語る]</A><BR>216 
d1357<P>⏎
d1363<P>⏎
d1365<P>⏎
d1367<P>⏎
d1369<P>⏎
cd9:5370-378 「さかし。なまめかしう容貌よき女の例には、なほ引き出でつべき人ぞかし。さも思ふに、いとほしく悔しきことの多かるかな。まいてうちあだけ好きたる人の、年積もりゆくままに、いかに悔しきこと多からむ。人よりはことなき静けさ、と思ひしだに」<BR>⏎
<P>⏎
 などのたまひ出でて、尚侍の君の御ことににも、涙すこしは落したまひつ。<BR>⏎
<P>⏎
 「この数にもあらずおとしめたまふ山里の人こそは、身のほどにはややうち過ぎ、ものの心など得つべけれど、人よりことなべきものなれば、思ひ上がれるさまをも、見消ちてはべるかな。いふかひなき際の人はまだ見ず。人は、すぐれたるは、かたき世なりや。<BR>⏎
 東の院にながむる人の心ばへこそ、古りがたくらうたけれ。さはたさらにえあらぬものを、さる方につけての心ばせ、人にとりつつ見そめしより、同じやうに世をつつましげに思ひて過ぎぬるよ。今はた、かたみに背くべくもあらず、深うあはれと思ひはべる」<BR>⏎
<P>⏎
 など昔今の御物語に夜更けゆく。<BR>⏎
<P>⏎
225-229 「さかし。なまめかしう容貌よき女の例には、なほ引き出でつべき人ぞかし。さも思ふに、いとほしく悔しきことの多かるかな。まいてうちあだけ好きたる人の、年積もりゆくままに、いかに悔しきこと多からむ。人よりはことなき静けさ、と思ひしだに」<BR>⏎
 などのたまひ出でて、尚侍の君の御ことににも、涙すこしは落したまひつ。<BR>⏎
 「この数にもあらずおとしめたまふ山里の人こそは、身のほどにはややうち過ぎ、ものの心など得つべけれど、人よりことなべきものなれば、思ひ上がれるさまをも、見消ちてはべるかな。いふかひなき際の人はまだ見ず。人は、すぐれたるは、かたき世なりや。<BR>⏎
 東の院にながむる人の心ばへこそ、古りがたくらうたけれ。さはたさらにえあらぬものを、さる方につけての心ばせ、人にとりつつ見そめしより、同じやうに世をつつましげに思ひて過ぎぬるよ。今はた、かたみに背くべくもあらず、深うあはれと思ひはべる」<BR>⏎
 など昔今の御物語に夜更けゆく。<BR>⏎
text20379 <A NAME="in34">[第四段 藤壺、源氏の夢枕に立つ]</A><BR>230 
d1380<P>⏎
d1382<P>⏎
cd3:1383-385 「氷閉ぢ石間の水は行きなやみ<BR>⏎
  空澄む月の影ぞ流るる」<BR>⏎
<P>⏎
232 「氷閉ぢ石間の水は行きなやみ<BR>  空澄む月の影ぞ流るる」<BR>⏎
d1387<P>⏎
cd3:1388-390 「かきつめて昔恋しき雪もよに<BR>⏎
  あはれを添ふる鴛鴦の浮寝か」<BR>⏎
<P>⏎
234 「かきつめて昔恋しき雪もよに<BR>  あはれを添ふる鴛鴦の浮寝か」<BR>⏎
d1392<P>⏎
d1394<P>⏎
d1396<P>⏎
cd2:1397-398 「こはなど、かくは」<BR>⏎
<P>⏎
238 「こはなど、かくは」<BR>⏎
d1400<P>⏎
d1402<P>⏎
cd3:1403-405 「とけて寝ぬ寝覚さびしき冬の夜に<BR>⏎
  むすぼほれつる夢の短さ」<BR>⏎
<P>⏎
241 「とけて寝ぬ寝覚さびしき冬の夜に<BR>  むすぼほれつる夢の短さ」<BR>⏎
text20406 <A NAME="in35">[第五段 源氏、藤壺を供養す]</A><BR>242 
d1407<P>⏎
d1409<P>⏎
d1411<P>⏎
cd2:1412-413 とものの心を深く思したどるに、いみじく悲しければ、<BR>⏎
<P>⏎
245 とものの心を深く思したどるに、いみじく悲しければ、<BR>⏎
c1415 などつくづくと思す。<BR>⏎
247 などつくづくと思す。<BR>⏎
d1417<P>⏎
cd5:2418-422 と思しつつむほどに、阿弥陀仏を心にかけて念じたてまつりたまふ。「同じ蓮に」とこそは、<BR>⏎
<P>⏎
 「亡き人を慕ふ心にまかせても<BR>⏎
  影見ぬ三つの瀬にや惑はむ」<BR>⏎
<P>⏎
249-250 と思しつつむほどに、阿弥陀仏を心にかけて念じたてまつりたまふ。「同じ蓮に」とこそは、<BR>⏎
 「亡き人を慕ふ心にまかせても<BR>  影見ぬ三つの瀬にや惑はむ」<BR>⏎
d2424-425
<P>⏎
text20426 <a name="in41">【出典】<BR>252 
cd3:2427-429</a><A NAME="no1">出典1</A> 寿則多辱(荘子-天地)<A HREF="#te1">(戻)</A><BR>⏎
<A NAME="no2">出典2</A> 恋せじと御禊は神もうけずかと人を忘るる罪深くして(源氏釈所引、出典未詳)<BR>⏎
恋せじと御手洗河にせし御禊神はうけずもなりにけるかな(古今集恋一-五〇一 読人しらず)<A HREF="#te2">(戻)</A><BR>⏎
253-254<A NAME="no1">出典1</A> 寿則多辱(荘子-天地)<A HREF="#te1">(戻)</A><BR>⏎
<A NAME="no2">出典2</A> 恋せじと御禊は神もうけずかと人を忘るる罪深くして(源氏釈所引、出典未詳)<BR>恋せじと御手洗河にせし御禊神はうけずもなりにけるかな(古今集恋一-五〇一 読人しらず)<A HREF="#te2">(戻)</A><BR>⏎
d1442
text20443<p> <a name="in42">【校訂】<BR>267 
c1445</a><A NAME="k01">校訂1</A> 立ち返り--たちか(か/$か)へり<A HREF="#t01">(戻)</A><BR>⏎
269<A NAME="k01">校訂1</A> 立ち返り--たちか(か/$か)へり<A HREF="#t01">(戻)</A><BR>⏎
d1466</p>⏎
d1473</p>⏎
i0300
diffsrc/original/text21.htmlsrc/modified/text21.html
cd2:18-9<body background="wallppr063.gif">⏎
First updated 9/20/1996(ver.1-1)<BR>⏎
8<BODY>⏎
cd3:210-12Last updated 9/21/2010(ver.2-3)<BR>⏎
渋谷栄一校訂(C)<BR>⏎
<P
>⏎
9-10<ADDRESS>Last updated 9/21/2010(ver.2-3)<BR>⏎
渋谷栄一校訂(C)</ADDRESS>⏎
d114<P>⏎
d143<P>⏎
d1100<P>⏎
d1103<P>⏎
text21104 <H4>第一章 朝顔姫君の物語 藤壺代償の恋の諦め</H4>98 
text21105 <A NAME="in11">[第一段 故藤壺の一周忌明ける]</A><BR>99 
d1106<P>⏎
d1108<P>⏎
d1110<P>⏎
cd2:1111-112 と訪らひきこえさせたまへり。<BR>⏎
<P>⏎
102 と訪らひきこえさせたまへり。<BR>⏎
cd3:1114-116  かけきやは川瀬の波もたちかへり<BR>⏎
  君が禊の藤のやつれを」<BR>⏎
<P>⏎
104  かけきやは川瀬の波もたちかへり<BR>  君が禊の藤のやつれを」<BR>⏎
d1118<P>⏎
cd2:1119-120 「藤衣着しは昨日と思ふまに<BR>⏎
  今日は禊の<A HREF="#no1">瀬にかはる世を</A><A NAME="te1"><BR>⏎
106 「藤衣着しは昨日と思ふまに<BR>  今日は禊の<A HREF="#no1">瀬にかはる世を</A><A NAME="te1"><BR>⏎
d1122<P>⏎
cd2:1126-127 ともてわづらふべし。<BR>⏎
<P>⏎
111 ともてわづらふべし。<BR>⏎
text21128 <A NAME="in12">[第二段 源氏、朝顔姫君を諦める]</A><BR>112 
d1129<P>⏎
d1131<P>⏎
d1133<P>⏎
c1134 とほめきこえたまふを、若き人びとは笑ひきこゆ。<BR>⏎
115 とほめきこえたまふを、若き人びとは笑ひきこゆ。<BR>⏎
d1136<P>⏎
cd4:2138-141 されど故大殿の姫君ものせられし限りは、三の宮の思ひたまはむことのいとほしさに、とかく言添へきこゆることもなかりしなり。今は、そのやむごとなくえさらぬ筋にてものせられし人さへ、亡くなられにしかば、げになどてかは、さやうにておはせましも悪しかるまじとうちおぼえはべるにも、さらがへりてかくねむごろに聞こえたまふも、さるべきにもあらむとなむ思ひはべる」<BR>⏎
<P>⏎
 などいと古代に聞こえたまふを、心づきなしと思して、<BR>⏎
<P>⏎
118-119 されど故大殿の姫君ものせられし限りは、三の宮の思ひたまはむことのいとほしさに、とかく言添へきこゆることもなかりしなり。今は、そのやむごとなくえさらぬ筋にてものせられし人さへ、亡くなられにしかば、げになどてかは、さやうにておはせましも悪しかるまじとうちおぼえはべるにも、さらがへりてかくねむごろに聞こえたまふも、さるべきにもあらむとなむ思ひはべる」<BR>⏎
 などいと古代に聞こえたまふを、心づきなしと思して、<BR>⏎
d1143<P>⏎
d1145<P>⏎
d1147<P>⏎
text21148 <H4>第二章 夕霧の物語 光る源氏の子息教育の物語</H4>123 
text21149 <A NAME="in21">[第一段 子息夕霧の元服と教育論]</A><BR>124 
d1150<P>⏎
d1152<P>⏎
d1154<P>⏎
c1155 四位になしてむと思し、世人もさぞあらむと思へるを、<BR>⏎
127 四位になしてむと思し、世人もさぞあらむと思へるを、<BR>⏎
d1158<P>⏎
d1161<P>⏎
cd6:3162-167 「ただ今、かうあながちにしも、まだきに老いつかすまじうはべれど、思ふやうはべりて、大学の道にしばし習はさむの本意はべるにより、今二三年をいたづらの年に思ひなして、おのづから朝廷にも仕うまつりぬべきほどにならば、今、人となりはべりなむ。<BR>⏎
<P>⏎
 みづからは、九重のうちに生ひ出ではべりて、世の中のありさまも知りはべらず、夜昼、御前にさぶらひて、わづかになむはかなき書なども習ひはべりし。ただかしこき御手より伝へはべりしだに、何ごとも広き心を知らぬほどは、文の才をまねぶにも、琴笛の調べにも、音耐へず、及ばぬところの多くなむはべりける。<BR>⏎
<P>⏎
 はかなき親に、かしこき子のまさる例は、いとかたきことになむはべれば、まして次々伝はりつつ、隔たりゆかむほどの行く先、いとうしろめたなきによりなむ、思ひたまへおきてはべる。<BR>⏎
<P>⏎
132-134 「ただ今、かうあながちにしも、まだきに老いつかすまじうはべれど、思ふやうはべりて、大学の道にしばし習はさむの本意はべるにより、今二三年をいたづらの年に思ひなして、おのづから朝廷にも仕うまつりぬべきほどにならば、今、人となりはべりなむ。<BR>⏎
 みづからは、九重のうちに生ひ出ではべりて、世の中のありさまも知りはべらず、夜昼、御前にさぶらひて、わづかになむはかなき書なども習ひはべりし。ただかしこき御手より伝へはべりしだに、何ごとも広き心を知らぬほどは、文の才をまねぶにも、琴笛の調べにも、音耐へず、及ばぬところの多くなむはべりける。<BR>⏎
 はかなき親に、かしこき子のまさる例は、いとかたきことになむはべれば、まして次々伝はりつつ、隔たりゆかむほどの行く先、いとうしろめたなきによりなむ、思ひたまへおきてはべる。<BR>⏎
d1169<P>⏎
cd5:3170-174 なほ才をもととしてこそ、大和魂の世に用ゐらるる方も強うはべらめ。さしあたりては、心もとなきやうにはべれども、つひの世の重鎮となるべき心おきてを習ひなば、はべらずなりなむ後も、うしろやすかるべきによりなむ。ただ今は、はかばかしからずながらも、かくて育みはべらば、せまりたる大学の衆とて、笑ひあなづる人もよもはべらじと思うたまふる」<BR>⏎
<P>⏎
 など聞こえ知らせたまへば、うち嘆きたまひて、<BR>⏎
<P>⏎
 「げにかくも思し寄るべかりけることを。この大将なども、あまり引き違へたる御ことなりと、かたぶけはべるめるを、この幼心地にも、いと口惜しく、大将、左衛門の督の子どもなどを、我よりは下臈と思ひおとしたりしだに、皆おのおの加階し昇りつつ、およすげあへるに、浅葱をいとからしと思はれたるに、心苦しくはべるなり」<BR>⏎
136-138 なほ才をもととしてこそ、大和魂の世に用ゐらるる方も強うはべらめ。さしあたりては、心もとなきやうにはべれども、つひの世の重鎮となるべき心おきてを習ひなば、はべらずなりなむ後も、うしろやすかるべきによりなむ。ただ今は、はかばかしからずながらも、かくて育みはべらば、せまりたる大学の衆とて、笑ひあなづる人もよもはべらじと思うたまふる」<BR>⏎
 など聞こえ知らせたまへば、うち嘆きたまひて、<BR>⏎
 「げにかくも思し寄るべかりけることを。この大将なども、あまり引き違へたる御ことなりと、かたぶけはべるめるを、この幼心地にも、いと口惜しく、大将、左衛門の督の子どもなどを、我よりは下臈と思ひおとしたりしだに、皆おのおの加階し昇りつつ、およすげあへるに、浅葱をいとからしと思はれたるに、心苦しくはべるなり」<BR>⏎
d1176<P>⏎
d1178<P>⏎
cd2:1179-180 とていとうつくしと思したり。<BR>⏎
<P>⏎
141 とていとうつくしと思したり。<BR>⏎
d1182<P>⏎
d1184<P>⏎
text21185 <A NAME="in22">[第二段 大学寮入学の準備]</A><BR>144 
d1186<P>⏎
d1188<P>⏎
d1190<P>⏎
d1192<P>⏎
cd6:3193-198 若き君達は、え堪へずほほ笑まれぬ。さるはもの笑ひなどすまじく、過ぐしつつ静まれる限りをと、選り出だして、瓶子なども取らせたまへるに、筋異なりけるまじらひにて、右大将、民部卿などの、おほなおほな土器とりたまへるを、あさましく咎め出でつつおろす。<BR>⏎
<P>⏎
 「おほし垣下あるじ、はなはだ非常にはべりたうぶ。かくばかりのしるしとあるなにがしを知らずしてや、朝廷には仕うまつりたうぶ。はなはだをこなり」<BR>⏎
<P>⏎
 など言ふに、人びと皆ほころびて笑ひぬれば、また<BR>⏎
<P>⏎
148-150 若き君達は、え堪へずほほ笑まれぬ。さるはもの笑ひなどすまじく、過ぐしつつ静まれる限りをと、選り出だして、瓶子なども取らせたまへるに、筋異なりけるまじらひにて、右大将、民部卿などの、おほなおほな土器とりたまへるを、あさましく咎め出でつつおろす。<BR>⏎
 「おほし垣下あるじ、はなはだ非常にはべりたうぶ。かくばかりのしるしとあるなにがしを知らずしてや、朝廷には仕うまつりたうぶ。はなはだをこなり」<BR>⏎
 など言ふに、人びと皆ほころびて笑ひぬれば、また<BR>⏎
d1200<P>⏎
cd2:1201-202 などおどし言ふも、いとをかし。<BR>⏎
<P>⏎
152 などおどし言ふも、いとをかし。<BR>⏎
d1204<P>⏎
d1207<P>⏎
d1209<P>⏎
d1212<P>⏎
text21213 <A NAME="in23">[第三段 響宴と詩作の会]</A><BR>159 
d1214<P>⏎
d1216<P>⏎
d1218<P>⏎
d1220<P>⏎
text21221 <A NAME="in24">[第四段 夕霧の勉学生活]</A><BR>163 
d1222<P>⏎
c1223 うち続き、入学といふことせさせたまひて、やがてこの院のうちに御曹司作りて、まめやかに才深き師に預けきこえたまひてぞ、学問せさせたてまつりたまひける。<BR>⏎
164 うち続き、入学といふことせさせたまひて、やがてこの院のうちに御曹司作りて、まめやかに才深き師に預けきこえたまひてぞ、学問せさせたてまつりたまひける。<BR>⏎
cd2:1226-227 とぞ許しきこえたまひける。<BR>⏎
<P>⏎
167 とぞ許しきこえたまひける。<BR>⏎
d1229<P>⏎
d1231<P>⏎
d1233<P>⏎
d1235<P>⏎
cd2:1236-237 と思ひて、ただ四五月のうちに、『史記』などいふ書、読み果てたまひてけり。<BR>⏎
<P>⏎
172 と思ひて、ただ四五月のうちに、『史記』などいふ書、読み果てたまひてけり。<BR>⏎
text21238 <A NAME="in25">[第五段 大学寮試験の予備試験]</A><BR>173 
d1239<P>⏎
d1242<P>⏎
d1244<P>⏎
cd2:1245-246 と誰も誰も、涙落としたまふ。大将は、まして<BR>⏎
<P>⏎
177 と誰も誰も、涙落としたまふ。大将は、まして<BR>⏎
d1248<P>⏎
cd2:1249-250 と聞こえ出でて泣きたまふ。殿も、え心強うもてなしたまはず、<BR>⏎
<P>⏎
179 と聞こえ出でて泣きたまふ。殿も、え心強うもてなしたまはず、<BR>⏎
d1252<P>⏎
d1257<P>⏎
text21258 <A NAME="in26">[第六段 試験の当日]</A><BR>185 
d1259<P>⏎
cd2:1260-261 大学に参りたまふ日は、寮門に、上達部の御車ども数知らず集ひたり。おほかた世に<A HREF="#k10">残りたる</A><A NAME="t10">あ</A>らじと見えたるに、またなくもてかしづかれて、つくろはれ入りたまへる冠者の君の御さま、げにかかる交じらひには堪へず、あてにうつくしげなり。<BR>⏎
<P>⏎
186 大学に参りたまふ日は、寮門に、上達部の御車ども数知らず集ひたり。おほかた世に<A HREF="#k10">残りたる</A><A NAME="t10">あ</A>らじと見えたるに、またなくもてかしづかれて、つくろはれ入りたまへる冠者の君の御さま、げにかかる交じらひには堪へず、あてにうつくしげなり。<BR>⏎
d1264<P>⏎
cd2:1265-266 昔おぼえて大学の栄ゆるころなれば、上中下の人、我も我もと、この道に志し集れば、いよいよ世の中に、才ありはかばかしき人多くなむありける。文人擬生などいふなることどもよりうちはじめ、すがすがしう果てたまへれば、ひとへに心に入れて、師も弟子も、いとど励みましたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
189 昔おぼえて大学の栄ゆるころなれば、上中下の人、我も我もと、この道に志し集れば、いよいよ世の中に、才ありはかばかしき人多くなむありける。文人擬生などいふなることどもよりうちはじめ、すがすがしう果てたまへれば、ひとへに心に入れて、師も弟子も、いとど励みましたまふ。<BR>⏎
d1268<P>⏎
text21269 <H4>第三章 光る源氏周辺の人々の物語 内大臣家の物語</H4>191 
text21270 <A NAME="in31">[第一段 斎宮女御の立后と光る源氏の太政大臣就任]</A><BR>192 
d1271<P>⏎
cd2:1272-273 かくて后ゐたまふべきを、<BR>⏎
<P>⏎
193 かくて后ゐたまふべきを、<BR>⏎
d1275<P>⏎
cd2:1276-277 と大臣もことづけたまふ。源氏のうちしきり后にゐたまはむこと、世の人許しきこえず。<BR>⏎
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195 と大臣もことづけたまふ。源氏のうちしきり后にゐたまはむこと、世の人許しきこえず。<BR>⏎
d1279<P>⏎
cd2:1280-281 などうちうちに、こなたかなたに心寄せきこゆる人びと、おぼつかながりきこゆ。<BR>⏎
<P>⏎
197 などうちうちに、こなたかなたに心寄せきこゆる人びと、おぼつかながりきこゆ。<BR>⏎
d1283<P>⏎
d1285<P>⏎
d1287<P>⏎
d1289<P>⏎
d1291<P>⏎
text21292 <A NAME="in32">[第二段 夕霧と雲居雁の幼恋]</A><BR>203 
d1293<P>⏎
d1295<P>⏎
d1297<P>⏎
c1298 と父大臣聞こえたまひて、けどほくなりにたるを、幼心地に思ふことなきにしもあらねば、はかなき花紅葉につけても、雛遊びの追従をも、ねむごろにまつはれありきて、心ざしを見えきこえたまへば、いみじう思ひ交はして、<A HREF="#k15">けざやかに</A><A NAME="t15">は</A>今も恥ぢきこえたまはず。<BR>⏎
206 と父大臣聞こえたまひて、けどほくなりにたるを、幼心地に思ふことなきにしもあらねば、はかなき花紅葉につけても、雛遊びの追従をも、ねむごろにまつはれありきて、心ざしを見えきこえたまへば、いみじう思ひ交はして、<A HREF="#k15">けざやかに</A><A NAME="t15">は</A>今も恥ぢきこえたまはず。<BR>⏎
d1300<P>⏎
d1302<P>⏎
d1304<P>⏎
cd2:1305-306 まだ片生ひなる手の生ひ先うつくしきにて、書き交はしたまへる文どもの、心幼くて、おのづから落ち散る折あるを、御方の人びとは、ほのぼの知れるもありけれど、「何かはかくこそ」と、誰にも聞こえむ。見隠しつつあるなるべし。<BR>⏎
<P>⏎
210 まだ片生ひなる手の生ひ先うつくしきにて、書き交はしたまへる文どもの、心幼くて、おのづから落ち散る折あるを、御方の人びとは、ほのぼの知れるもありけれど、「何かはかくこそ」と、誰にも聞こえむ。見隠しつつあるなるべし。<BR>⏎
text21307 <A NAME="in33">[第三段 内大臣、大宮邸に参上]</A><BR>211 
d1308<P>⏎
d1310<P>⏎
d1312<P>⏎
d1314<P>⏎
d1316<P>⏎
d1318<P>⏎
d1320<P>⏎
d1322<P>⏎
d1324<P>⏎
cd2:1325-326 などかつ御物語聞こえたまふ。<BR>⏎
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220 などかつ御物語聞こえたまふ。<BR>⏎
text21327 <A NAME="in34">[第四段 弘徽殿女御の失意]</A><BR>221 
d1328<P>⏎
d1330<P>⏎
cd2:1331-332 など人の上のたまひ出でて、<BR>⏎
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223 など人の上のたまひ出でて、<BR>⏎
d1334<P>⏎
d1336<P>⏎
cd4:2337-340 「などかさしもあらむ。この家にさる筋の人出でものしたまはで<A HREF="#k20">止むやう</A><A NAME="t20">あ</A>らじと、故大臣の思ひたまひて、女御の御ことをも、ゐたちいそぎたまひしものを。おはせましかば、かくもてひがむることもなからまし」<BR>⏎
<P>⏎
 などこの御ことにてぞ、太政大臣をも恨めしげに思ひきこえたまへる。<BR>⏎
<P>⏎
226-227 「などかさしもあらむ。この家にさる筋の人出でものしたまはで<A HREF="#k20">止むやう</A><A NAME="t20">あ</A>らじと、故大臣の思ひたまひて、女御の御ことをも、ゐたちいそぎたまひしものを。おはせましかば、かくもてひがむることもなからまし」<BR>⏎
 などこの御ことにてぞ、太政大臣をも恨めしげに思ひきこえたまへる。<BR>⏎
d1342<P>⏎
text21343 <A NAME="in35">[第五段 夕霧、内大臣と対面]</A><BR>229 
d1344<P>⏎
d1346<P>⏎
d1348<P>⏎
cd6:3349-354 とうち誦じたまひて、<BR>⏎
<P>⏎
 「<A HREF="#no5">琴の感ならねど</A><A NAME="te5">、</A>あやしくものあはれなる夕べかな。なほあそばさむや」<BR>⏎
<P>⏎
 とて「秋風楽」に掻きあはせて、唱歌したまへる声、いとおもしろければ、皆さまざま、大臣をもいとうつくしと思ひきこえたまふに、いとど添へむとにやあらむ、<A HREF="#k22">冠者の君</A><A NAME="t22">参</A>りたまへり。<BR>⏎
<P>⏎
232-234 とうち誦じたまひて、<BR>⏎
 「<A HREF="#no5">琴の感ならねど</A><A NAME="te5">、</A>あやしくものあはれなる夕べかな。なほあそばさむや」<BR>⏎
 とて「秋風楽」に掻きあはせて、唱歌したまへる声、いとおもしろければ、皆さまざま、大臣をもいとうつくしと思ひきこえたまふに、いとど添へむとにやあらむ、<A HREF="#k22">冠者の君</A><A NAME="t22">参</A>りたまへり。<BR>⏎
d1356<P>⏎
d1358<P>⏎
d1360<P>⏎
d1362<P>⏎
c1363 とて御笛たてまつりたまふ。<BR>⏎
239 とて御笛たてまつりたまふ。<BR>⏎
d1367<P>⏎
cd4:2368-371 「大殿も、かやうの御遊びに心止めたまひて、いそがしき御政事どもをば逃れたまふなりけり。げにあぢきなき世に、心のゆくわざをしてこそ、過ぐしはべりなまほしけれ」<BR>⏎
<P>⏎
 などのたまひて、御土器参りたまふに、暗うなれば、<A HREF="#k24">御殿油</A><A NAME="t24">参</A>り、御湯漬くだものなど、誰も誰もきこしめす。<BR>⏎
<P>⏎
243-244 「大殿も、かやうの御遊びに心止めたまひて、いそがしき御政事どもをば逃れたまふなりけり。げにあぢきなき世に、心のゆくわざをしてこそ、過ぐしはべりなまほしけれ」<BR>⏎
 などのたまひて、御土器参りたまふに、暗うなれば、<A HREF="#k24">御殿油</A><A NAME="t24">参</A>り、御湯漬くだものなど、誰も誰もきこしめす。<BR>⏎
cd2:1374-375 と近う仕うまつる大宮の御方のねび人ども、ささめきけり。<BR>⏎
<P>⏎
247 と近う仕うまつる大宮の御方のねび人ども、ささめきけり。<BR>⏎
text21376 <A NAME="in36">[第六段 内大臣、雲居雁の噂を立ち聞く]</A><BR>248 
d1377<P>⏎
d1379<P>⏎
c1380 「かしこがりたまへど、人の親よ。おのづからおれたることこそ出で来べかめれ」<BR>⏎
250 「かしこがりたまへど、人の親よ。おのづからおれたることこそ出で来べかめれ」<BR>⏎
cd2:1382-383 などぞつきしろふ。<BR>⏎
<P>⏎
252 などぞつきしろふ。<BR>⏎
d1385<P>⏎
c1386 とけしきをつぶつぶと心得たまへど、音もせで出でたまひぬ。<BR>⏎
254 とけしきをつぶつぶと心得たまへど、音もせで出でたまひぬ。<BR>⏎
d1388<P>⏎
d1392<P>⏎
d1394<P>⏎
cd4:2396-399 「あなむくつけや。しりう言やほの聞こしめしつらむ。わづらはしき御心を」<BR>⏎
<P>⏎
 とわびあへり。<BR>⏎
<P>⏎
261-262 「あなむくつけや。しりう言やほの聞こしめしつらむ。わづらはしき御心を」<BR>⏎
 とわびあへり。<BR>⏎
d1403<P>⏎
d1405<P>⏎
cd2:1406-407 と人びとの言ひしけしきを、ねたしと思すに、御心動きて、すこし男々しくあざやぎたる御心には、静めがたし。<BR>⏎
<P>⏎
267 と人びとの言ひしけしきを、ねたしと思すに、御心動きて、すこし男々しくあざやぎたる御心には、静めがたし。<BR>⏎
text21408 <H4>第四章 内大臣家の物語 雲居雁の養育をめぐる物語</H4>268 
text21409 <A NAME="in41">[第一段 内大臣、母大宮の養育を恨む]</A><BR>269 
d1410<P>⏎
d1412<P>⏎
d1414<P>⏎
d1417<P>⏎
cd2:1418-419 と涙おし拭ひたまふに、宮、化粧じたまへる御顔の色違ひて、御目も大きになりぬ。<BR>⏎
<P>⏎
274 と涙おし拭ひたまふに、宮、化粧じたまへる御顔の色違ひて、御目も大きになりぬ。<BR>⏎
d1421<P>⏎
d1423<P>⏎
d1425<P>⏎
cd2:1426-427 まことに天の下並ぶ人なき有職にはものせらるめれど、親しきほどにかかるは、人の聞き思ふところも、あはつけきやうになむ何ばかりのほどにもあらぬ仲らひにだにしはべるを、かの人の御ためにも、いとかたはなることなり。さし離れ、きらきらしうめづらしげあるあたりに、今めかしうもてなさるる<A HREF="#k28">こそ</A><A NAME="t28">、</A>をかしけれ。ゆかりむつび、ねぢけがましきさまにて、大臣も聞き<A HREF="#k29">思す</A><A NAME="t29">と</A>ころはべりなむ。<BR>⏎
<P>⏎
278 まことに天の下並ぶ人なき有職にはものせらるめれど、親しきほどにかかるは、人の聞き思ふところも、あはつけきやうになむ何ばかりのほどにもあらぬ仲らひにだにしはべるを、かの人の御ためにも、いとかたはなることなり。さし離れ、きらきらしうめづらしげあるあたりに、今めかしうもてなさるる<A HREF="#k28">こそ</A><A NAME="t28">、</A>をかしけれ。ゆかりむつび、ねぢけがましきさまにて、大臣も聞き<A HREF="#k29">思す</A><A NAME="t29">と</A>ころはべりなむ。<BR>⏎
d1429<P>⏎
d1431<P>⏎
cd2:1432-433 「げにかうのたまふもことわりなれど、かけてもこの人びとの下の心なむ知りはべらざりける。げにいと口惜しきことは、ここにこそまして嘆くべくはべれ。もろともに罪をおほせ<A HREF="#k30">たまふは</A><A NAME="t30">、</A>恨めしきことになむ。<BR>⏎
<P>⏎
281 「げにかうのたまふもことわりなれど、かけてもこの人びとの下の心なむ知りはべらざりける。げにいと口惜しきことは、ここにこそまして嘆くべくはべれ。もろともに罪をおほせ<A HREF="#k30">たまふは</A><A NAME="t30">、</A>恨めしきことになむ。<BR>⏎
d1435<P>⏎
cd2:1436-437 さても誰かはかかることは聞こえけむ。よからぬ世の人の言につきて、きはだけく思しのたまふも、あぢきなく、むなしきことにて、人の御名や汚れむ」<BR>⏎
<P>⏎
283 さても誰かはかかることは聞こえけむ。よからぬ世の人の言につきて、きはだけく思しのたまふも、あぢきなく、むなしきことにて、人の御名や汚れむ」<BR>⏎
d1439<P>⏎
cd4:2440-443 「何の浮きたることにかはべらむ。さぶらふめる人びとも、かつは皆もどき笑ふべかめるものを、いと口惜しく、やすからず思うたまへらるるや」<BR>⏎
<P>⏎
 とて立ちたまひぬ。<BR>⏎
<P>⏎
285-286 「何の浮きたることにかはべらむ。さぶらふめる人びとも、かつは皆もどき笑ふべかめるものを、いと口惜しく、やすからず思うたまへらるるや」<BR>⏎
 とて立ちたまひぬ。<BR>⏎
d1445<P>⏎
text21446 <A NAME="in42">[第二段 内大臣、乳母らを非難する]</A><BR>288 
d1447<P>⏎
d1449<P>⏎
d1451<P>⏎
cd2:1452-453 とて御乳母どもをさいなみたまふに、聞こえむ方なし。<BR>⏎
<P>⏎
291 とて御乳母どもをさいなみたまふに、聞こえむ方なし。<BR>⏎
cd6:3455-460 「これは明け暮れ立ちまじりたまひて年ごろおはしましつるを、何かは、いはけなき御ほどを、宮の御もてなしよりさし過ぐしても、隔てきこえさせむと、うちとけて過ぐしきこえつるを、<A HREF="#k37">一昨年</A><A NAME="t37">ば</A>かりよりは、けざやかなる御もてなしになりにてはべるめるに、若き人とても、うち紛ればみ、いかにぞや、世づきたる人もおはすべかめるを、夢に乱れたるところおはしまさざめれば、さらに思ひ寄らざりけること」<BR>⏎
<P>⏎
 とおのがどち嘆く。<BR>⏎
<P>⏎
 「よししばし、かかること漏らさじ。隠れあるまじきことなれど、心をやりて、あらぬこととだに言ひ<A HREF="#k38">なされ</A><A NAME="t38">よ</A>。今かしこに渡したてまつりてむ。宮の御心のいとつらきなり。そこたちは、さりとも、いとかかれとしも、思はれざりけむ」<BR>⏎
<P>⏎
293-295 「これは明け暮れ立ちまじりたまひて年ごろおはしましつるを、何かは、いはけなき御ほどを、宮の御もてなしよりさし過ぐしても、隔てきこえさせむと、うちとけて過ぐしきこえつるを、<A HREF="#k37">一昨年</A><A NAME="t37">ば</A>かりよりは、けざやかなる御もてなしになりにてはべるめるに、若き人とても、うち紛ればみ、いかにぞや、世づきたる人もおはすべかめるを、夢に乱れたるところおはしまさざめれば、さらに思ひ寄らざりけること」<BR>⏎
 とおのがどち嘆く。<BR>⏎
 「よししばし、かかること漏らさじ。隠れあるまじきことなれど、心をやりて、あらぬこととだに言ひ<A HREF="#k38">なされ</A><A NAME="t38">よ</A>。今かしこに渡したてまつりてむ。宮の御心のいとつらきなり。そこたちは、さりとも、いとかかれとしも、思はれざりけむ」<BR>⏎
d1462<P>⏎
cd2:1463-464 「あないみじや。大納言殿に聞きたまはむことをさへ思ひはべれば、めでたきにても、ただ人の筋は、何のめづらしさにか思ひたまへかけむ」<BR>⏎
<P>⏎
297 「あないみじや。大納言殿に聞きたまはむことをさへ思ひはべれば、めでたきにても、ただ人の筋は、何のめづらしさにか思ひたまへかけむ」<BR>⏎
d1466<P>⏎
d1468<P>⏎
d1470<P>⏎
cd2:1471-472 と忍びてさるべきどちのたまひて、大宮をのみぞ恨みきこえたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
301 と忍びてさるべきどちのたまひて、大宮をのみぞ恨みきこえたまふ。<BR>⏎
text21473 <A NAME="in43">[第三段 大宮、内大臣を恨む]</A><BR>302 
d1474<P>⏎
d1476<P>⏎
d1478<P>⏎
cd2:1479-480 とわが心ざしのまさればにや、大臣を恨めしう思ひきこえたまふ。御心のうちを見せたてまつりたらば、ましていかに恨みきこえたまはむ。<BR>⏎
<P>⏎
305 とわが心ざしのまさればにや、大臣を恨めしう思ひきこえたまふ。御心のうちを見せたてまつりたらば、ましていかに恨みきこえたまはむ。<BR>⏎
text21481 <A NAME="in44">[第四段 大宮、夕霧に忠告]</A><BR>306 
d1482<P>⏎
d1484<P>⏎
d1486<P>⏎
d1488<P>⏎
d1490<P>⏎
d1492<P>⏎
cd2:1493-494 とていと恥づかしと思へるけしきを、あはれに心苦しうて、<BR>⏎
<P>⏎
312 とていと恥づかしと思へるけしきを、あはれに心苦しうて、<BR>⏎
d1496<P>⏎
d1498<P>⏎
text21499 <H4>第五章 夕霧の物語 幼恋の物語</H4>315 
text21500 <A NAME="in51">[第一段 夕霧と雲居雁の恋の煩悶]</A><BR>316 
d1501<P>⏎
d1503<P>⏎
d1505<P>⏎
c1506 と<A HREF="#k40">独りごち</A><A NAME="t40">た</A>まふけはひ、若うらうたげなり。<BR>⏎
319 と<A HREF="#k40">独りごち</A><A NAME="t40">た</A>まふけはひ、若うらうたげなり。<BR>⏎
d1508<P>⏎
cd2:1509-510 「これ開けさせたまへ。小侍従やさぶらふ」<BR>⏎
<P>⏎
321 「これ開けさせたまへ。小侍従やさぶらふ」<BR>⏎
d1512<P>⏎
cd3:1513-515 「さ夜中に友呼びわたる雁が音に<BR>⏎
  うたて吹き添ふ荻の上風」<BR>⏎
<P>⏎
323 「さ夜中に友呼びわたる雁が音に<BR>  うたて吹き添ふ荻の上風」<BR>⏎
d1517<P>⏎
d1519<P>⏎
d1521<P>⏎
cd2:1522-523 またかう騒がるべき<A HREF="#k42">こととも</A><A NAME="t42">思</A>さざりけるを、御後見どももいみじうあはめきこゆれば、え言も通はしたまはず。おとなびたる人や、さるべき隙をも作り出づらむ、男君も、今すこしものはかなき年のほどにて、ただいと口惜しとのみ思ふ。<BR>⏎
<P>⏎
327 またかう騒がるべき<A HREF="#k42">こととも</A><A NAME="t42">思</A>さざりけるを、御後見どももいみじうあはめきこゆれば、え言も通はしたまはず。おとなびたる人や、さるべき隙をも作り出づらむ、男君も、今すこしものはかなき年のほどにて、ただいと口惜しとのみ思ふ。<BR>⏎
text21524 <A NAME="in52">[第二段 内大臣、弘徽殿女御を退出させる]</A><BR>328 
d1525<P>⏎
d1527<P>⏎
d1529<P>⏎
d1531<P>⏎
d1533<P>⏎
d1536<P>⏎
d1538<P>⏎
d1540<P>⏎
d1542<P>⏎
d1544<P>⏎
d1546<P>⏎
d1548<P>⏎
cd2:1549-550 とうち泣きつつのたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
341 とうち泣きつつのたまふ。<BR>⏎
text21551 <A NAME="in53">[第三段 夕霧、大宮邸に参上]</A><BR>342 
d1552<P>⏎
d1554<P>⏎
d1557<P>⏎
d1559<P>⏎
cd4:2562-565 とて出でたまひぬ。<BR>⏎
<P>⏎
 「いふかひなきことを、なだらかに言ひなして、さてもやあらまし」と思せど、なほいと心やましければ、「人の御ほどのすこしものものしくなりなむに、かたはならず見なして、そのほど、心ざしの深さ浅さのおもむきをも見定めて、許すとも、ことさらなるやうにもてなしてこそあらめ。制し諌むとも、一所にては、幼き心のままに、見苦しうこそあらめ。宮も、よもあながちに制したまふことあらじ」<BR>⏎
<P>⏎
349-350 とて出でたまひぬ。<BR>⏎
 「いふかひなきことを、なだらかに言ひなして、さてもやあらまし」と思せど、なほいと心やましければ、「人の御ほどのすこしものものしくなりなむに、かたはならず見なして、そのほど、心ざしの深さ浅さのおもむきをも見定めて、許すとも、ことさらなるやうにもてなしてこそあらめ。制し諌むとも、一所にては、幼き心のままに、見苦しうこそあらめ。宮も、よもあながちに制したまふことあらじ」<BR>⏎
d1567<P>⏎
text21568 <A NAME="in54">[第四段 夕霧と雲居雁のわずかの逢瀬]</A><BR>352 
d1569<P>⏎
d1571<P>⏎
d1573<P>⏎
d1575<P>⏎
d1577<P>⏎
d1579<P>⏎
d1581<P>⏎
cd4:2582-585 などささめき聞こゆれば、いよいよ恥づかしと思して、物ものたまはず。<BR>⏎
<P>⏎
 「いでむつかしきことな聞こえられそ。人の御宿世宿世、いと定めがたく」<BR>⏎
<P>⏎
359-360 などささめき聞こゆれば、いよいよ恥づかしと思して、物ものたまはず。<BR>⏎
 「いでむつかしきことな聞こえられそ。人の御宿世宿世、いと定めがたく」<BR>⏎
d1587<P>⏎
cd4:2588-591 「いでやものげなしとあなづりきこえさせ<A HREF="#k49">たまふに</A><A NAME="t49">は</A>べるめりかし。さりとも、げにわが君人に劣りきこえさせたまふと、聞こしめし合はせよ」<BR>⏎
<P>⏎
 となま心やましきままに言ふ。<BR>⏎
<P>⏎
362-363 「いでやものげなしとあなづりきこえさせ<A HREF="#k49">たまふに</A><A NAME="t49">は</A>べるめりかし。さりとも、げにわが君人に劣りきこえさせたまふと、聞こしめし合はせよ」<BR>⏎
 となま心やましきままに言ふ。<BR>⏎
d1593<P>⏎
d1595<P>⏎
cd2:1596-597 「大臣の御心のいとつらければ、さはれ思ひやみなむと思へど、恋しうおはせむこそわりなかるべけれ。などてすこし隙ありぬべかりつる日ごろ、よそに隔てつらむ」<BR>⏎
<P>⏎
366 「大臣の御心のいとつらければ、さはれ思ひやみなむと思へど、恋しうおはせむこそわりなかるべけれ。などてすこし隙ありぬべかりつる日ごろ、よそに隔てつらむ」<BR>⏎
d1599<P>⏎
cd2:1600-601 「まろもさこそはあらめ」<BR>⏎
<P>⏎
368 「まろもさこそはあらめ」<BR>⏎
d1603<P>⏎
d1605<P>⏎
d1607<P>⏎
text21608 <A NAME="in55">[第五段 乳母、夕霧の六位を蔑む]</A><BR>372 
d1609<P>⏎
d1613<P>⏎
cd2:1614-615 「あな心づきなや。げに宮知らせたまはぬことにはあらざりけり」<BR>⏎
<P>⏎
376 「あな心づきなや。げに宮知らせたまはぬことにはあらざりけり」<BR>⏎
d1617<P>⏎
cd4:2618-621 「いでや<A HREF="#k52">憂かり</A><A NAME="t52">け</A>る世かな。殿の思しのたまふことは、さらにも聞こえず、大納言殿にもいかに聞かせたまはむ。めでたくとも、もののはじめの六位宿世よ」<BR>⏎
<P>⏎
 とつぶやくもほの聞こゆ。ただこの屏風のうしろに<A HREF="#k53">尋ね来て</A><A NAME="t53">、</A>嘆くなりけり。<BR>⏎
<P>⏎
378-379 「いでや<A HREF="#k52">憂かり</A><A NAME="t52">け</A>る世かな。殿の思しのたまふことは、さらにも聞こえず、大納言殿にもいかに聞かせたまはむ。めでたくとも、もののはじめの六位宿世よ」<BR>⏎
 とつぶやくもほの聞こゆ。ただこの屏風のうしろに<A HREF="#k53">尋ね来て</A><A NAME="t53">、</A>嘆くなりけり。<BR>⏎
d1623<P>⏎
cd2:1625-626  くれなゐの涙に深き袖の色を<BR>⏎
  浅緑にや言ひしをるべき<BR>⏎
382  くれなゐの涙に深き袖の色を<BR>  浅緑にや言ひしをるべき<BR>⏎
d1628<P>⏎
d1630<P>⏎
cd5:2631-635 「いろいろに身の憂きほどの知らるるは<BR>⏎
  いかに染めける中の衣ぞ」<BR>⏎
<P>⏎
 と物のたまひ果てぬに、殿入りたまへば、わりなくて渡りたまひぬ。<BR>⏎
<P>⏎
385-386 「いろいろに身の憂きほどの知らるるは<BR>  いかに染めける中の衣ぞ」<BR>⏎
 と物のたまひ果てぬに、殿入りたまへば、わりなくて渡りたまひぬ。<BR>⏎
d1637<P>⏎
c1638 御車三つばかりにて、忍びやかに急ぎ出でたまふけはひを聞くも、静心なければ、宮の御前より「参りたまへ」とあれど、寝たるやうにて動きもしたまはず。<BR>⏎
388 御車三つばかりにて、忍びやかに急ぎ出でたまふけはひを聞くも、静心なければ、宮の御前より「参りたまへ」とあれど、寝たるやうにて動きもしたまはず。<BR>⏎
d1641<P>⏎
cd3:1642-644 「霜氷うたてむすべる明けぐれの<BR>⏎
  空かきくらし降る涙かな」<BR>⏎
<P>⏎
391 「霜氷うたてむすべる明けぐれの<BR>  空かきくらし降る涙かな」<BR>⏎
text21645 <H4>第六章 夕霧の物語 五節舞姫への恋</H4>392 
text21646 <A NAME="in61">[第一段 惟光の娘、五節舞姫となる]</A><BR>393 
d1647<P>⏎
d1649<P>⏎
d1651<P>⏎
d1653<P>⏎
d1655<P>⏎
d1657<P>⏎
d1659<P>⏎
cd2:1660-661 と苛めば、わびて同じくは宮仕へやがてせ<A HREF="#k55">さすべく</A><A NAME="t55">思</A>ひおきてたり。<BR>⏎
<P>⏎
400 と苛めば、わびて同じくは宮仕へやがてせ<A HREF="#k55">さすべく</A><A NAME="t55">思</A>ひおきてたり。<BR>⏎
d1663<P>⏎
d1665<P>⏎
d1667<P>⏎
d1669<P>⏎
d1671<P>⏎
text21672 <A NAME="in62">[第二段 夕霧、五節舞姫を恋慕]</A><BR>406 
d1673<P>⏎
d1675<P>⏎
cd4:2676-679 さま容貌はめでたくをかしげにて、静やかになまめいたまへれば、若き女房などは、いとをかしと見たてまつる。<BR>⏎
<P>⏎
 上の御方には、御簾の前にだにもの近うももてなしたまはず。わが御心ならひ、いかに思すにかありけむ、疎々しければ、御達なども気遠きを、今日はものの紛れに、入り立ちたまへるなめり。<BR>⏎
<P>⏎
408-409 さま容貌はめでたくをかしげにて、静やかになまめいたまへれば、若き女房などは、いとをかしと見たてまつる。<BR>⏎
 上の御方には、御簾の前にだにもの近うももてなしたまはず。わが御心ならひ、いかに思すにかありけむ、疎々しければ、御達なども気遠きを、今日はものの紛れに、入り立ちたまへるなめり。<BR>⏎
d1681<P>⏎
cd4:2682-685 ただかの人の御ほどと見えて、今すこしそびやかに、様体などのことさらび、をかしきところはまさりてさへ見ゆ。暗ければ、こまかには見えねど、ほどのいとよく思ひ出でらるるさまに、心移るとはなけれど、ただにもあらで、衣の裾を引き鳴らいたまふに、何心もなく、あやしと思ふに、<BR>⏎
<P>⏎
 「<A HREF="#no11">天にます豊岡姫の</A><A NAME="te11">宮</A>人も<BR>⏎
  わが心ざすしめを忘るな<BR>⏎
411-412 ただかの人の御ほどと見えて、今すこしそびやかに、様体などのことさらび、をかしきところはまさりてさへ見ゆ。暗ければ、こまかには見えねど、ほどのいとよく思ひ出でらるるさまに、心移るとはなけれど、ただにもあらで、衣の裾を引き鳴らいたまふに、何心もなく、あやしと思ふに、<BR>⏎
 「<A HREF="#no11">天にます豊岡姫の</A><A NAME="te11">宮</A>人も<BR>  わが心ざすしめを忘るな<BR>⏎
d1687<P>⏎
d1690<P>⏎
text21691 <A NAME="in63">[第三段 宮中における五節の儀]</A><BR>416 
d1692<P>⏎
cd4:2693-696 <A HREF="#k56">浅葱の心やましければ、内裏へ参ることもせず</A><A NAME="t56">、</A>もの憂がりたまふを、五節にことつけて、直衣などさま変はれる色聴されて参りたまふ。きびはにきよらなるものから、まだきにおよすけて、されありきたまふ。帝よりはじめたてまつりて、思したるさまなべてならず、世にめづらしき御おぼえなり。<BR>⏎
<P>⏎
 五節の参る儀式は、いづれともなく、心々に二なくしたまへるを、「舞姫の容貌、大殿と大納言とはすぐれたり」とめでののしる。げにいとをかしげなれど、ここしううつくしげなることは、なほ大殿のには、え<A HREF="#k57">及ぶ</A><A NAME="t57">ま</A>じかりけり。<BR>⏎
<P>⏎
417-418 <A HREF="#k56">浅葱の心やましければ、内裏へ参ることもせず</A><A NAME="t56">、</A>もの憂がりたまふを、五節にことつけて、直衣などさま変はれる色聴されて参りたまふ。きびはにきよらなるものから、まだきにおよすけて、されありきたまふ。帝よりはじめたてまつりて、思したるさまなべてならず、世にめづらしき御おぼえなり。<BR>⏎
 五節の参る儀式は、いづれともなく、心々に二なくしたまへるを、「舞姫の容貌、大殿と大納言とはすぐれたり」とめでののしる。げにいとをかしげなれど、ここしううつくしげなることは、なほ大殿のには、え<A HREF="#k57">及ぶ</A><A NAME="t57">ま</A>じかりけり。<BR>⏎
d1698<P>⏎
d1700<P>⏎
cd3:1701-703 「乙女子も神さびぬらし天つ袖<BR>⏎
  古き世の友よはひ経ぬれば」<BR>⏎
<P>⏎
421 「乙女子も神さびぬらし天つ袖<BR>  古き世の友よはひ経ぬれば」<BR>⏎
d1705<P>⏎
cd3:1706-708 「かけて言へば今日のこととぞ思ほゆる<BR>⏎
  日蔭の霜の袖にとけしも」<BR>⏎
<P>⏎
423 「かけて言へば今日のこととぞ思ほゆる<BR>  日蔭の霜の袖にとけしも」<BR>⏎
d1710<P>⏎
d1712<P>⏎
text21713 <A NAME="in64">[第四段 夕霧、舞姫の弟に恋文を託す]</A><BR>426 
d1714<P>⏎
d1716<P>⏎
d1718<P>⏎
d1720<P>⏎
cd2:1721-722 とわざとのことにはあらねど、うち添へて涙ぐまるる折々あり。<BR>⏎
<P>⏎
430 とわざとのことにはあらねど、うち添へて涙ぐまるる折々あり。<BR>⏎
d1724<P>⏎
d1726<P>⏎
d1728<P>⏎
d1730<P>⏎
d1732<P>⏎
d1734<P>⏎
d1736<P>⏎
cd2:1737-738 「いかでかさははべらむ。心にまかせてもえ見はべらず。男兄弟とて、近くも寄せはべらねば、ましていかでか君達には御覧ぜさせむ」<BR>⏎
<P>⏎
438 「いかでかさははべらむ。心にまかせてもえ見はべらず。男兄弟とて、近くも寄せはべらねば、ましていかでか君達には御覧ぜさせむ」<BR>⏎
d1740<P>⏎
cd2:1741-742 「さらば文をだに」<BR>⏎
<P>⏎
440 「さらば文をだに」<BR>⏎
d1744<P>⏎
d1746<P>⏎
cd3:1747-749 「日影にもしるかりけめや少女子が<BR>⏎
  天の羽袖にかけし心は」<BR>⏎
<P>⏎
443 「日影にもしるかりけめや少女子が<BR>  天の羽袖にかけし心は」<BR>⏎
d1751<P>⏎
d1753<P>⏎
d1755<P>⏎
d1757<P>⏎
d1759<P>⏎
d1761<P>⏎
d1763<P>⏎
d1765<P>⏎
d1767<P>⏎
d1769<P>⏎
d1771<P>⏎
d1773<P>⏎
d1775<P>⏎
text21776 <A NAME="in65">[第五段 花散里、夕霧の母代となる]</A><BR>457 
d1777<P>⏎
d1779<P>⏎
d1781<P>⏎
d1783<P>⏎
cd4:2786-789<P> 「容貌のまほならずもおはしけるかな。かかる人をも、人は思ひ捨てたまはざりけり」など、「わがあながちに、つらき人の御容貌を心にかけて恋しと思ふもあぢきなしや。心ばへのかやうにやはらかならむ人をこそあひ思はめ」<BR>⏎
<P>⏎
 と思ふ。また<BR>⏎
<P>⏎
463-464 「容貌のまほならずもおはしけるかな。かかる人をも、人は思ひ捨てたまはざりけり」など、「わがあながちに、つらき人の御容貌を心にかけて恋しと思ふもあぢきなしや。心ばへのかやうにやはらかならむ人をこそあひ思はめ」<BR>⏎
 と思ふ。また<BR>⏎
d1792<P>⏎
d1794<P>⏎
text21795 <A NAME="in66">[第六段 歳末、夕霧の衣装を準備]</A><BR>468 
d1796<P>⏎
d1798<P>⏎
d1800<P>⏎
d1802<P>⏎
cd2:1803-804 「などてかさもあらむ。老いくづほれたらむ人のやうにものたまふかな」<BR>⏎
<P>⏎
472 「などてかさもあらむ。老いくづほれたらむ人のやうにものたまふかな」<BR>⏎
d1806<P>⏎
d1808<P>⏎
d1810<P>⏎
d1812<P>⏎
cd2:1813-814 「<A HREF="#k62">男は</A><A NAME="t62">、</A>口惜しき際の人だに、心を高うこそつかふなれ。あまりしめやかに、かくなものしたまひそ。何とかかう眺めがちに思ひ入れたまふべき。ゆゆしう」<BR>⏎
<P>⏎
477 「<A HREF="#k62">男は</A><A NAME="t62">、</A>口惜しき際の人だに、心を高うこそつかふなれ。あまりしめやかに、かくなものしたまひそ。何とかかう眺めがちに思ひ入れたまふべき。ゆゆしう」<BR>⏎
d1816<P>⏎
d1818<P>⏎
cd2:1819-820 とて涙の落つるを紛らはいたまへるけしき、いみじうあはれなるに、宮は、いとどほろほろと泣きたまひて、<BR>⏎
<P>⏎
480 とて涙の落つるを紛らはいたまへるけしき、いみじうあはれなるに、宮は、いとどほろほろと泣きたまひて、<BR>⏎
d1822<P>⏎
cd2:1823-824 とて泣きおはします。<BR>⏎
<P>⏎
482 とて泣きおはします。<BR>⏎
text21825 <H4>第七章 光る源氏の物語 六条院造営</H4>483 
text21826 <A NAME="in71">[第一段 二月二十日過ぎ、朱雀院へ行幸]</A><BR>484 
d1827<P>⏎
d1829<P>⏎
cd2:1830-831 如月の二十日あまり、朱雀院に行幸あり。花盛りはまだしきほどなれど、弥生は故宮の御忌月なり。とく開けたる桜の色もいとおもしろければ、院にも御用意ことにつくろひ磨かせたまひ、行幸に仕うまつりたまふ上達部親王たちよりはじめ、心づかひしたまへり。<BR>⏎
<P>⏎
486 如月の二十日あまり、朱雀院に行幸あり。花盛りはまだしきほどなれど、弥生は故宮の御忌月なり。とく開けたる桜の色もいとおもしろければ、院にも御用意ことにつくろひ磨かせたまひ、行幸に仕うまつりたまふ上達部親王たちよりはじめ、心づかひしたまへり。<BR>⏎
d1833<P>⏎
d1835<P>⏎
cd2:1838-839 と世の中恨めしうおぼえたまひけり。<BR>⏎
<P>⏎
491 と世の中恨めしうおぼえたまひけり。<BR>⏎
d1841<P>⏎
cd2:1842-843 「またさばかりのこと見てむや」<BR>⏎
<P>⏎
493 「またさばかりのこと見てむや」<BR>⏎
d1845<P>⏎
cd3:1846-848 「鴬のさへづる声は昔にて<BR>⏎
  睦れし花の蔭ぞ変はれる」<BR>⏎
<P>⏎
495 「鴬のさへづる声は昔にて<BR>  睦れし花の蔭ぞ変はれる」<BR>⏎
cd3:1850-852 「九重を霞隔つるすみかにも<BR>⏎
  春と告げくる鴬の声」<BR>⏎
<P>⏎
497 「九重を霞隔つるすみかにも<BR>  春と告げくる鴬の声」<BR>⏎
d1854<P>⏎
cd3:1855-857 「いにしへを吹き伝へたる笛竹に<BR>⏎
  さへづる鳥の音さへ変はらぬ」<BR>⏎
<P>⏎
499 「いにしへを吹き伝へたる笛竹に<BR>  さへづる鳥の音さへ変はらぬ」<BR>⏎
d1859<P>⏎
cd3:1860-862 「鴬の昔を恋ひてさへづるは<BR>⏎
  木伝ふ花の色やあせたる」<BR>⏎
<P>⏎
501 「鴬の昔を恋ひてさへづるは<BR>  木伝ふ花の色やあせたる」<BR>⏎
d1864<P>⏎
cd2:1865-866 楽所遠くておぼつかなければ、御前に御琴ども召す。兵部卿宮琵琶。内大臣和琴。箏の御琴、院の御前に参りて、琴は、例の太政大臣に賜はりたまふ。せめきこえたまふ。さるいみじき上手のすぐれたる御手づかひどもの、尽くしたまへる音は、たとへむかたなし。唱歌の殿上人あまたさぶらふ。「<A HREF="#no14">安名尊</A><A NAME="te14">」</A>遊びて、次に「<A HREF="#no15">桜人</A><A NAME="te15">」</A>。月おぼろにさし出でてをかしきほどに、中島のわたりに、ここかしこ篝火ども灯して、大御遊びはやみぬ。<BR>⏎
<P>⏎
503 楽所遠くておぼつかなければ、御前に御琴ども召す。兵部卿宮琵琶。内大臣和琴。箏の御琴、院の御前に参りて、琴は、例の太政大臣に賜はりたまふ。せめきこえたまふ。さるいみじき上手のすぐれたる御手づかひどもの、尽くしたまへる音は、たとへむかたなし。唱歌の殿上人あまたさぶらふ。「<A HREF="#no14">安名尊</A><A NAME="te14">」</A>遊びて、次に「<A HREF="#no15">桜人</A><A NAME="te15">」</A>。月おぼろにさし出でてをかしきほどに、中島のわたりに、ここかしこ篝火ども灯して、大御遊びはやみぬ。<BR>⏎
text21867 <A NAME="in72">[第二段 弘徽殿大后を見舞う]</A><BR>504 
d1868<P>⏎
d1870<P>⏎
d1872<P>⏎
d1874<P>⏎
cd2:1875-876 とうち泣きたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
508 とうち泣きたまふ。<BR>⏎
d1878<P>⏎
d1880<P>⏎
d1882<P>⏎
cd2:1885-886 といにしへを悔い思す。<BR>⏎
<P>⏎
514 といにしへを悔い思す。<BR>⏎
d1888<P>⏎
c1889 后は朝廷に奏せさせたまふことある時々ぞ、御たうばりの年官年爵、何くれのことに触れつつ、御心にかなはぬ時ぞ、「命長くてかかる世の末を見ること」と、取り返さまほしう、よろづ思しむつかりける。<BR>⏎
516 后は朝廷に奏せさせたまふことある時々ぞ、御たうばりの年官年爵、何くれのことに触れつつ、御心にかなはぬ時ぞ、「命長くてかかる世の末を見ること」と、取り返さまほしう、よろづ思しむつかりける。<BR>⏎
d1891<P>⏎
cd2:1892-893 かくて大学の君、その日の文うつくしう作りたまひて、進士になりたまひぬ。年積もれるかしこき者どもを選らばせたまひしかど、及第の人、わづかに三人なむありける。<BR>⏎
<P>⏎
518 かくて大学の君、その日の文うつくしう作りたまひて、進士になりたまひぬ。年積もれるかしこき者どもを選らばせたまひしかど、及第の人、わづかに三人なむありける。<BR>⏎
d1895<P>⏎
text21896 <A NAME="in73">[第三段 源氏、六条院造営を企図す]</A><BR>520 
d1897<P>⏎
d1899<P>⏎
cd2:1900-901 式部卿宮、明けむ年ぞ五十になりたまひける御賀のこと、対の上思しまうくるに、大臣も、「げに過ぐしがたきことどもなり」と思して、「さやうの御いそぎも、同じくめづらしからむ御家居にて」と、いそがせたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
522 式部卿宮、明けむ年ぞ五十になりたまひける御賀のこと、対の上思しまうくるに、大臣も、「げに過ぐしがたきことどもなり」と思して、「さやうの御いそぎも、同じくめづらしからむ御家居にて」と、いそがせたまふ。<BR>⏎
d1903<P>⏎
d1905<P>⏎
d1907<P>⏎
d1909<P>⏎
cd2:1910-911 といとほしくもからくも思しけるを、かくあまたかかづらひたまへる人びと多かるなかに、取りわきたる御思ひすぐれて、世に心にくくめでたきことに、思ひかしづかれたまへる御宿世をぞ、わが家まではにほひ来ねど、面目に思すに、また<BR>⏎
<P>⏎
527 といとほしくもからくも思しけるを、かくあまたかかづらひたまへる人びと多かるなかに、取りわきたる御思ひすぐれて、世に心にくくめでたきことに、思ひかしづかれたまへる御宿世をぞ、わが家まではにほひ来ねど、面目に思すに、また<BR>⏎
d1913<P>⏎
d1915<P>⏎
text21916 <A NAME="in74">[第四段 秋八月に六条院完成]</A><BR>530 
d1917<P>⏎
d1919<P>⏎
d1921<P>⏎
d1923<P>⏎
d1925<P>⏎
d1927<P>⏎
text21928 <A NAME="in75">[第五段 秋の彼岸の頃に引っ越し始まる]</A><BR>536 
d1929<P>⏎
d1931<P>⏎
d1933<P>⏎
d1935<P>⏎
d1937<P>⏎
cd2:1938-939 五六日過ぎて、中宮まかでさせたまふ。この御けしきはた、さは言へど、いと所狭し。御幸ひのすぐれたまへりけるをばさるものにて、御ありさまの心にくく重りかにおはしませば、世に重く思はれたまへること、すぐれてなむおはしましける。<BR>⏎
<P>⏎
541 五六日過ぎて、中宮まかでさせたまふ。この御けしきはた、さは言へど、いと所狭し。御幸ひのすぐれたまへりけるをばさるものにて、御ありさまの心にくく重りかにおはしませば、世に重く思はれたまへること、すぐれてなむおはしましける。<BR>⏎
d1941<P>⏎
text21942 <A NAME="in76">[第六段 九月、中宮と紫の上和歌を贈答]</A><BR>543 
d1943<P>⏎
d1945<P>⏎
cd5:2946-950 大きやかなる童女の、濃き衵、紫苑の織物重ねて、赤朽葉の羅の汗衫、いといたうなれて、廊、渡殿の反橋を渡りて参る。うるはしき儀式なれど、童女のをかしきをなむえ思し捨てざりける。さる所にさぶらひなれたれば、もてなし、ありさま、他のには似ず、このましうをかし。御消息には、<BR>⏎
<P>⏎
 「心から春まつ園はわが宿の<BR>⏎
  紅葉を風のつてにだに見よ」<BR>⏎
<P>⏎
545-546 大きやかなる童女の、濃き衵、紫苑の織物重ねて、赤朽葉の羅の汗衫、いといたうなれて、廊、渡殿の反橋を渡りて参る。うるはしき儀式なれど、童女のをかしきをなむえ思し捨てざりける。さる所にさぶらひなれたれば、もてなし、ありさま、他のには似ず、このましうをかし。御消息には、<BR>⏎
 「心から春まつ園はわが宿の<BR>  紅葉を風のつてにだに見よ」<BR>⏎
d1953<P>⏎
cd3:1954-956 「風に散る紅葉は軽し春の色を<BR>⏎
  岩根の松にかけてこそ見め」<BR>⏎
<P>⏎
549 「風に散る紅葉は軽し春の色を<BR>  岩根の松にかけてこそ見め」<BR>⏎
d1958<P>⏎
d1960<P>⏎
d1962<P>⏎
d2964-965
<P>⏎
text21966 <a name="in81">【出典】<BR>554 
c1967</a><A NAME="no1">出典1</A> 世の中は何か常なる飛鳥川昨日の淵ぞ今日は瀬となる(古今集雑下-九三三 読人しらず)<A HREF="#te1">(戻)</A><BR>⏎
555<A NAME="no1">出典1</A> 世の中は何か常なる飛鳥川昨日の淵ぞ今日は瀬となる(古今集雑下-九三三 読人しらず)<A HREF="#te1">(戻)</A><BR>⏎
d1983
text21984<p> <a name="in82">【校訂】<BR>571 
c1986</a><A NAME="k01">校訂1</A> 心地よげ--心ちよ(よ/$よ)け<A HREF="#t01">(戻)</A><BR>⏎
573<A NAME="k01">校訂1</A> 心地よげ--心ちよ(よ/$よ)け<A HREF="#t01">(戻)</A><BR>⏎
d11051</p>⏎
d11058</p>⏎
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First updated 9/20/1996(ver.1-1)<BR>⏎
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cd3:210-12Last updated 9/21/2010(ver.2-3)<BR>⏎
渋谷栄一校訂(C)<BR>⏎
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9-10<ADDRESS>Last updated 9/21/2010(ver.2-3)<BR>⏎
渋谷栄一校訂(C)</ADDRESS>⏎
d114<P>⏎
d116<P>⏎
d146<P>⏎
d192<P>⏎
d195<P>⏎
text2296 <H4>第一章 玉鬘の物語 筑紫流離の物語</H4>89 
text2297 <A NAME="in11">[第一段 源氏と右近、夕顔を回想]</A><BR>90 
d198<P>⏎
d1100<P>⏎
cd4:2101-104 右近は、何の人数ならねど、なほその形見と見たまひて、らうたきものに思したれば、古人の数に仕うまつり馴れたり。須磨の御移ろひのほどに、対の上の御方に、皆人びと聞こえ渡したまひしほどより、そなたにさぶらふ。心よくかいひそめたるものに、女君も思したれど、心のうちには、<BR>⏎
<P>⏎
 「故君ものしたまはましかば、明石の御方ばかりのおぼえには劣りたまはざらまし。さしも深き御心ざしなかりけるをだに、落としあぶさず、取りしたためたまふ御心長さなりければ、まいてやむごとなき列にこそあらざらめ、この御殿移りの数のうちには交じらひたまひなまし」<BR>⏎
<P>⏎
92-93 右近は、何の人数ならねど、なほその形見と見たまひて、らうたきものに思したれば、古人の数に仕うまつり馴れたり。須磨の御移ろひのほどに、対の上の御方に、皆人びと聞こえ渡したまひしほどより、そなたにさぶらふ。心よくかいひそめたるものに、女君も思したれど、心のうちには、<BR>⏎
 「故君ものしたまはましかば、明石の御方ばかりのおぼえには劣りたまはざらまし。さしも深き御心ざしなかりけるをだに、落としあぶさず、取りしたためたまふ御心長さなりければ、まいてやむごとなき列にこそあらざらめ、この御殿移りの数のうちには交じらひたまひなまし」<BR>⏎
d1106<P>⏎
cd2:1107-108 かの西の京にとまりし若君をだに行方も知らず、ひとへにものを思ひつつみ、また「今さらにかひなきことによりて、<A HREF="#no2">我が名漏らすな</A><A NAME="te2">」</A>と、口がためたまひしを憚りきこえて、尋ねても訪づれきこえざりしほどに、その御乳母の男、少弐になりて、行きければ、下りにけり。かの若君の四つになる年ぞ、筑紫へは行きける。<BR>⏎
<P>⏎
95 かの西の京にとまりし若君をだに行方も知らず、ひとへにものを思ひつつみ、また「今さらにかひなきことによりて、<A HREF="#no2">我が名漏らすな</A><A NAME="te2">」</A>と、口がためたまひしを憚りきこえて、尋ねても訪づれきこえざりしほどに、その御乳母の男、少弐になりて、行きければ、下りにけり。かの若君の四つになる年ぞ、筑紫へは行きける。<BR>⏎
text22109 <A NAME="in12">[第二段 玉鬘一行、筑紫へ下向]</A><BR>96 
d1110<P>⏎
c1112 「さらばいかがはせむ。若君をだにこそは、御形見に見たてまつらめ。あやしき道に添へたてまつりて、遥かなるほどにおはせむことの悲しきこと。なほ父君にほのめかさむ」<BR>⏎
98 「さらばいかがはせむ。若君をだにこそは、御形見に見たてまつらめ。あやしき道に添へたてまつりて、遥かなるほどにおはせむことの悲しきこと。なほ父君にほのめかさむ」<BR>⏎
d1114<P>⏎
cd5:3116-120 「まだよくも見なれたまはぬに、幼き人をとどめたてまつりたまはむも、うしろめたかるべし」<BR>⏎
 「知りながら、はた率て下りねと許したまふべきにもあらず」<BR>⏎
<P>⏎
 などおのがじし語らひあはせて、いとうつくしう、ただ今から気高くきよらなる御さまを、ことなるしつらひなき舟に乗せて漕ぎ出づるほどは、いとあはれになむおぼえける。<BR>⏎
<P>⏎
101-103 「まだよくも見なれたまはぬに、幼き人をとどめたてまつりたまはむも、うしろめたかるべし」<BR>⏎
 「知りながら、はた率て下りねと許したまふべきにもあらず」<BR>⏎
 などおのがじし語らひあはせて、いとうつくしう、ただ今から気高くきよらなる御さまを、ことなるしつらひなき舟に乗せて漕ぎ出づるほどは、いとあはれになむおぼえける。<BR>⏎
d1122<P>⏎
d1124<P>⏎
d1126<P>⏎
d1128<P>⏎
d1131<P>⏎
cd2:1132-133 と京の方を思ひやらるるに、<A HREF="#no3">帰る浪もうらやましく</A><A NAME="te3">、</A>心細きに、舟子どもの荒々しき声にて、<BR>⏎
<P>⏎
110 と京の方を思ひやらるるに、<A HREF="#no3">帰る浪もうらやましく</A><A NAME="te3">、</A>心細きに、舟子どもの荒々しき声にて、<BR>⏎
d1135<P>⏎
cd8:3136-143 と歌ふを聞くままに、二人さし向ひて泣きけり。<BR>⏎
<P>⏎
 「舟人もたれを恋ふとか大島の<BR>⏎
  うらがなしげに声の聞こゆる」<BR>⏎
<P>⏎
 「来し方も行方も知らぬ沖に出でて<BR>⏎
  あはれいづくに君を恋ふらむ」<BR>⏎
<P>⏎
112-114 と歌ふを聞くままに、二人さし向ひて泣きけり。<BR>⏎
 「舟人もたれを恋ふとか大島の<BR>  うらがなしげに声の聞こゆる」<BR>⏎
 「来し方も行方も知らぬ沖に出でて<BR>  あはれいづくに君を恋ふらむ」<BR>⏎
d1145<P>⏎
c1148 「なほ世に亡くなりたまひにけるなめり」<BR>⏎
118 「なほ世に亡くなりたまひにけるなめり」<BR>⏎
d1150<P>⏎
text22151 <A NAME="in13">[第三段 乳母の夫の遺言]</A><BR>120 
d1152<P>⏎
d1154<P>⏎
d1156<P>⏎
cd2:1157-158 とうしろめたがる。男子三人あるに、<BR>⏎
<P>⏎
123 とうしろめたがる。男子三人あるに、<BR>⏎
d1161<P>⏎
d1163<P>⏎
text22164 <A NAME="in14">[第四段 玉鬘への求婚]</A><BR>127 
d1165<P>⏎
d1167<P>⏎
d1169<P>⏎
d1171<P>⏎
d1174<P>⏎
cd2:1175-176 と言ふ<A HREF="#k01">なるを</A><A NAME="t01">聞</A>くもゆゆしく、<BR>⏎
<P>⏎
133 と言ふ<A HREF="#k01">なるを</A><A NAME="t01">聞</A>くもゆゆしく、<BR>⏎
d1178<P>⏎
d1180<P>⏎
cd4:2181-184 娘どもも男子どもも、所につけたるよすがども出で来て住みつきにたり。心のうちにこそ急ぎ思へど、京のことはいや遠ざかるやうに隔たりゆく。もの思し知るままに、世をいと憂きものに思して、年三などしたまふ。二十ばかりになりたまふままに、生ひととのほりて、いとあたらしくめでたし。<BR>⏎
<P>⏎
 この住む所は、肥前国とぞいひける。そのわたりにもいささか由ある人は、まづこの少弐の孫のありさまを聞き伝へて、なほ絶えず訪れ来るも、いといみじう、耳かしかましきまでなむ。<BR>⏎
<P>⏎
136-137 娘どもも男子どもも、所につけたるよすがども出で来て住みつきにたり。心のうちにこそ急ぎ思へど、京のことはいや遠ざかるやうに隔たりゆく。もの思し知るままに、世をいと憂きものに思して、年三などしたまふ。二十ばかりになりたまふままに、生ひととのほりて、いとあたらしくめでたし。<BR>⏎
 この住む所は、肥前国とぞいひける。そのわたりにもいささか由ある人は、まづこの少弐の孫のありさまを聞き伝へて、なほ絶えず訪れ来るも、いといみじう、耳かしかましきまでなむ。<BR>⏎
text22185 <H4>第二章 玉鬘の物語 大夫監の求婚と筑紫脱出</H4>138 
text22186 <A NAME="in21">[第一段 大夫の監の求婚]</A><BR>139 
d1187<P>⏎
cd4:3190-193 といとねむごろに言ひかかるを、いとむくつけく思ひて、<BR>⏎
 「いかでかかることを聞かで、尼になりなむとす」<BR>⏎
 と言はせたれば、いよいよあやふがりて、おしてこの国に越え来ぬ。<BR>⏎
<P>⏎
142-144 といとねむごろに言ひかかるを、いとむくつけく思ひて、<BR>⏎
 「いかでかかることを聞かで、尼になりなむとす」<BR>⏎
 と言はせたれば、いよいよあやふがりて、おしてこの国に越え来ぬ。<BR>⏎
d1197<P>⏎
d1202<P>⏎
d1204<P>⏎
cd2:1205-206 「なほいとたいだいしく、あたらしきことなり。故少弐ののたまひしこともあり。とかく構へて、京に上げたてまつりてむ」<BR>⏎
<P>⏎
153 「なほいとたいだいしく、あたらしきことなり。故少弐ののたまひしこともあり。とかく構へて、京に上げたてまつりてむ」<BR>⏎
d1208<P>⏎
d1211<P>⏎
d1213<P>⏎
text22214 <A NAME="in22">[第二段 大夫の監の訪問]</A><BR>158 
d1215<P>⏎
d1217<P>⏎
d1219<P>⏎
cd5:3220-224 「故少弐のいと情けび、きらきらしくものしたまひしを、いかでかあひ語らひ申さむと思ひたまへしかども、さる心ざしをも見せ聞こえずはべりしほどに、いと悲しくて、隠れたまひにしを、その代はりに、一向に仕うまつるべくなむ、心ざしを励まして、今日はいとひたぶるに、強ひてさぶらひつる。<BR>⏎
 このおはしますらむ女君、筋ことにうけたまはれば、いとかたじけなし。ただなにがしらが私の君と思ひ申して、いただきになむささげたてまつるべき。おとどもしぶしぶにおはしげなることは、よからぬ女どもあまたあひ知りてはべるを聞こしめし疎むななり。さりとも、すやつばらを、人並みにはしはべりなむや。わが君をば、后の位に落としたてまつらじものをや」<BR>⏎
<P>⏎
 などいとよげに言ひ続く。<BR>⏎
<P>⏎
161-163 「故少弐のいと情けび、きらきらしくものしたまひしを、いかでかあひ語らひ申さむと思ひたまへしかども、さる心ざしをも見せ聞こえずはべりしほどに、いと悲しくて、隠れたまひにしを、その代はりに、一向に仕うまつるべくなむ、心ざしを励まして、今日はいとひたぶるに、強ひてさぶらひつる。<BR>⏎
 このおはしますらむ女君、筋ことにうけたまはれば、いとかたじけなし。ただなにがしらが私の君と思ひ申して、いただきになむささげたてまつるべき。おとどもしぶしぶにおはしげなることは、よからぬ女どもあまたあひ知りてはべるを聞こしめし疎むななり。さりとも、すやつばらを、人並みにはしはべりなむや。わが君をば、后の位に落としたてまつらじものをや」<BR>⏎
 などいとよげに言ひ続く。<BR>⏎
d1226<P>⏎
d1228<P>⏎
cd3:2229-231 「さらにな思し憚りそ。天下に、目つぶれ、足折れたまへりとも、なにがしは仕うまつりやめてむ。国のうちの仏神は、おのれになむ靡きたまへる」<BR>⏎
 など誇りゐたり。<BR>⏎
<P>⏎
166-167 「さらにな思し憚りそ。天下に、目つぶれ、足折れたまへりとも、なにがしは仕うまつりやめてむ。国のうちの仏神は、おのれになむ靡きたまへる」<BR>⏎
 など誇りゐたり。<BR>⏎
d1233<P>⏎
text22234 <A NAME="in23">[第三段 大夫の監、和歌を詠み贈る]</A><BR>169 
d1235<P>⏎
d1237<P>⏎
cd2:1238-239 「君にもし心違はば松浦なる<BR>⏎
  鏡の神をかけて誓はむ<BR>⏎
171 「君にもし心違はば松浦なる<BR>  鏡の神をかけて誓はむ<BR>⏎
c2241-242<P> とうち笑みたるも、世づかずうひうひしや。あれにもあらねば、返しすべくも思はねど、娘どもに詠ますれど、<BR>⏎
 「まろはましてものもおぼえず」<BR>⏎
173-174 とうち笑みたるも、世づかずうひうひしや。あれにもあらねば、返しすべくも思はねど、娘どもに詠ますれど、<BR>⏎
 「まろはましてものもおぼえず」<BR>⏎
d1244<P>⏎
cd3:1245-247 「年を経て祈る心の違ひなば<BR>⏎
  鏡の神をつらしとや見む」<BR>⏎
<P>⏎
176 「年を経て祈る心の違ひなば<BR>  鏡の神をつらしとや見む」<BR>⏎
d1249<P>⏎
d1251<P>⏎
cd4:2252-255 とゆくりかに寄り来たるけはひに、おびえて、おとど色もなくなりぬ。娘たち、さはいへど、心強く笑ひて、<BR>⏎
<P>⏎
 「この人の、さまことにものしたまふを、引き違へ、いづらは思はれむを、なほほけほけしき人の、神かけて、聞こえひがめたまふなめりや」<BR>⏎
<P>⏎
179-180 とゆくりかに寄り来たるけはひに、おびえて、おとど色もなくなりぬ。娘たち、さはいへど、心強く笑ひて、<BR>⏎
 「この人の、さまことにものしたまふを、引き違へ、いづらは思はれむを、なほほけほけしき人の、神かけて、聞こえひがめたまふなめりや」<BR>⏎
d1257<P>⏎
cd2:1258-259 「おいさり、さり」とうなづきて、<BR>⏎
<P>⏎
182 「おいさり、さり」とうなづきて、<BR>⏎
d1261<P>⏎
cd2:1262-263 とてまた詠まむと思へれども、<A HREF="#k02">堪へず</A><A NAME="t02">や</A>ありけむ、往ぬめり。<BR>⏎
<P>⏎
184 とてまた詠まむと思へれども、<A HREF="#k02">堪へず</A><A NAME="t02">や</A>ありけむ、往ぬめり。<BR>⏎
text22264 <A NAME="in24">[第四段 玉鬘、筑紫を脱出]</A><BR>185 
d1265<P>⏎
d1267<P>⏎
d1269<P>⏎
cd2:1270-271 と思ひわづらひにたれど、姫君の人知れず思いたるさまの、いと心苦しくて、生きたらじと思ひ沈みたまへる、ことわりとおぼゆれば、いみじきことを思ひ構へて出で立つ。妹たちも、年ごろ経ぬるよるべを捨てて、この御供に出で立つ。<BR>⏎
<P>⏎
188 と思ひわづらひにたれど、姫君の人知れず思いたるさまの、いと心苦しくて、生きたらじと思ひ沈みたまへる、ことわりとおぼゆれば、いみじきことを思ひ構へて出で立つ。妹たちも、年ごろ経ぬるよるべを捨てて、この御供に出で立つ。<BR>⏎
d1273<P>⏎
cd8:3274-281 姉のおもとは、類広くなりて、え出で立たず。かたみに別れ惜しみて、あひ見むことの難きを思ふに、年経つる故里とて、ことに見捨てがたきこともなし。ただ松浦の宮の前の渚と、かの姉おもとの別るるをなむ、顧みせられて、悲しかりける。<BR>⏎
<P>⏎
 「浮島を漕ぎ離れても行く方や<BR>⏎
  いづく泊りと知らずもあるかな」<BR>⏎
<P>⏎
 「行く先も見えぬ<A HREF="#k04">波路に</A><A NAME="t04">舟</A>出して<BR>⏎
  風にまかする身こそ浮きたれ」<BR>⏎
<P>⏎
190-192 姉のおもとは、類広くなりて、え出で立たず。かたみに別れ惜しみて、あひ見むことの難きを思ふに、年経つる故里とて、ことに見捨てがたきこともなし。ただ松浦の宮の前の渚と、かの姉おもとの別るるをなむ、顧みせられて、悲しかりける。<BR>⏎
 「浮島を漕ぎ離れても行く方や<BR>  いづく泊りと知らずもあるかな」<BR>⏎
 「行く先も見えぬ<A HREF="#k04">波路に</A><A NAME="t04">舟</A>出して<BR>  風にまかする身こそ浮きたれ」<BR>⏎
d1283<P>⏎
text22284 <A NAME="in25">[第五段 都に帰着]</A><BR>194 
d1285<P>⏎
cd2:1286-287 「かく逃げぬるよし、おのづから言ひ出で伝へば、負けじ魂にて、追ひ来なむ」と思ふに、心も惑ひて、早舟といひて、さまことになむ構へたりければ、思ふ方の風さへ進みて、危ふきまで走り上りぬ。響の灘もなだらかに過ぎぬ。<BR>⏎
<P>⏎
195 「かく逃げぬるよし、おのづから言ひ出で伝へば、負けじ魂にて、追ひ来なむ」と思ふに、心も惑ひて、早舟といひて、さまことになむ構へたりければ、思ふ方の風さへ進みて、危ふきまで走り上りぬ。響の灘もなだらかに過ぎぬ。<BR>⏎
d1289<P>⏎
d1291<P>⏎
cd3:1292-294 「憂きことに胸のみ騒ぐ響きには<BR>⏎
  響の灘もさはらざりけり」<BR>⏎
<P>⏎
198 「憂きことに胸のみ騒ぐ響きには<BR>  響の灘もさはらざりけり」<BR>⏎
d1296<P>⏎
d1298<P>⏎
d1300<P>⏎
cd2:1302-303 豊後介あはれになつかしう歌ひすさみて、<BR>⏎
<P>⏎
203 豊後介あはれになつかしう歌ひすさみて、<BR>⏎
d1305<P>⏎
cd4:3306-309 とて思へば、<BR>⏎
 「げにぞ皆うち捨ててける。いかがなりぬらむ。はかばかしく身の助けと思ふ郎等どもは、皆率て来にけり。<A HREF="#k05">我を</A><A NAME="t05">悪</A>しと思ひて、追ひまどはして、いかがしなすらむ」と思ふに、「心幼くも、顧みせで、出でにけるかな」<BR>⏎
 とすこし心のどまりてぞ、あさましき事を思ひ続くるに、心弱くうち泣かれぬ。<BR>⏎
<P>⏎
205-207 とて思へば、<BR>⏎
 「げにぞ皆うち捨ててける。いかがなりぬらむ。はかばかしく身の助けと思ふ郎等どもは、皆率て来にけり。<A HREF="#k05">我を</A><A NAME="t05">悪</A>しと思ひて、追ひまどはして、いかがしなすらむ」と思ふに、「心幼くも、顧みせで、出でにけるかな」<BR>⏎
 とすこし心のどまりてぞ、あさましき事を思ひ続くるに、心弱くうち泣かれぬ。<BR>⏎
d1311<P>⏎
d1313<P>⏎
cd3:2314-316 「げにあやしのわざや。年ごろ従ひ来つる人の心にも、にはかに違ひて逃げ出でにしを、いかに思ふらむ」<BR>⏎
 とさまざま思ひ続けらるる。<BR>⏎
<P>⏎
210-211 「げにあやしのわざや。年ごろ従ひ来つる人の心にも、にはかに違ひて逃げ出でにしを、いかに思ふらむ」<BR>⏎
 とさまざま思ひ続けらるる。<BR>⏎
d1318<P>⏎
cd2:1319-320 とあきれておぼゆれど、「いかがはせむ」とて、急ぎ入りぬ。<BR>⏎
<P>⏎
213 とあきれておぼゆれど、「いかがはせむ」とて、急ぎ入りぬ。<BR>⏎
text22321 <H4>第三章 玉鬘の物語 玉鬘、右近と椿市で邂逅</H4>214 
text22322 <A NAME="in31">[第一段 岩清水八幡宮へ参詣]</A><BR>215 
d1323<P>⏎
d1325<P>⏎
d1327<P>⏎
d1329<P>⏎
d1331<P>⏎
d1333<P>⏎
cd4:2334-337 「神仏こそは、さるべき方にも導き知らせたてまつりたまはめ。近きほどに、八幡の宮と申すは、かしこにても参り祈り申したまひし松浦筥崎、同じ社なり。かの国を離れたまふとても、多くの願立て申したまひき。今、都に帰りて、かくなむ御験を得てまかり上りたると、早く申したまへ」<BR>⏎
<P>⏎
 とて八幡に詣でさせたてまつる。それのわたり知れる人に言ひ尋ねて、五師とて、早く親の語らひし大徳残れるを呼びとりて、詣でさせたてまつる。<BR>⏎
<P>⏎
221-222 「神仏こそは、さるべき方にも導き知らせたてまつりたまはめ。近きほどに、八幡の宮と申すは、かしこにても参り祈り申したまひし松浦筥崎、同じ社なり。かの国を離れたまふとても、多くの願立て申したまひき。今、都に帰りて、かくなむ御験を得てまかり上りたると、早く申したまへ」<BR>⏎
 とて八幡に詣でさせたてまつる。それのわたり知れる人に言ひ尋ねて、五師とて、早く親の語らひし大徳残れるを呼びとりて、詣でさせたてまつる。<BR>⏎
text22338 <A NAME="in32">[第二段 初瀬の観音へ参詣]</A><BR>223 
d1339<P>⏎
cd9:5340-348 「うち次ぎては、仏の御なかには、初瀬なむ、日の本のうちには、あらたなる験現したまふと、唐土にだに聞こえあむなり。ましてわが国のうちにこそ、遠き国の境とても、年経たまへれば、若君をば、まして恵みたまひてむ」<BR>⏎
<P> とて出だし立てたてまつる。ことさらに徒歩よりと定めたり。ならはぬ心地に、いとわびしく苦しけれど、人の言ふままに、ものもおぼえで歩みたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
 「いかなる罪深き身にて、かかる世にさすらふらむ。わが親、世に亡くなりたまへりとも、われをあはれと思さば、おはすらむ所に誘ひたまへ。もし世におはせば、御顔見せたまへ」<BR>⏎
<P>⏎
 と仏を念じつつ、ありけむさまをだにおぼえねば、ただ「親おはせましかば」と、ばかりの悲しさを、嘆きわたりたまへるに、かくさしあたりて、身のわりなきままに、取り返しいみじくおぼえつつ、からうして、椿市といふ所に、四日といふ巳の時ばかりに、生ける心地もせで、行き着きたまへり。<BR>⏎
<P>⏎
 歩むともなく、とかくつくろひたれど、足のうら動かれず、わびしければ、せむかたなくて休みたまふ。この頼もし人なる介、弓矢持ちたる人二人、さては下なる者童など三四人、女ばらある限り三人、壺装束して、樋洗めく者、古き下衆女二人ばかりとぞある。<BR>⏎
<P>⏎
224-228 「うち次ぎては、仏の御なかには、初瀬なむ、日の本のうちには、あらたなる験現したまふと、唐土にだに聞こえあむなり。ましてわが国のうちにこそ、遠き国の境とても、年経たまへれば、若君をば、まして恵みたまひてむ」<BR>⏎
 とて出だし立てたてまつる。ことさらに徒歩よりと定めたり。ならはぬ心地に、いとわびしく苦しけれど、人の言ふままに、ものもおぼえで歩みたまふ。<BR>⏎
 「いかなる罪深き身にて、かかる世にさすらふらむ。わが親、世に亡くなりたまへりとも、われをあはれと思さば、おはすらむ所に誘ひたまへ。もし世におはせば、御顔見せたまへ」<BR>⏎
 と仏を念じつつ、ありけむさまをだにおぼえねば、ただ「親おはせましかば」と、ばかりの悲しさを、嘆きわたりたまへるに、かくさしあたりて、身のわりなきままに、取り返しいみじくおぼえつつ、からうして、椿市といふ所に、四日といふ巳の時ばかりに、生ける心地もせで、行き着きたまへり。<BR>⏎
 歩むともなく、とかくつくろひたれど、足のうら動かれず、わびしければ、せむかたなくて休みたまふ。この頼もし人なる介、弓矢持ちたる人二人、さては下なる者童など三四人、女ばらある限り三人、壺装束して、樋洗めく者、古き下衆女二人ばかりとぞある。<BR>⏎
d1350<P>⏎
d1352<P>⏎
cd2:1353-354 とむつかるを、めざましく聞くほどに、げに人びと来ぬ。<BR>⏎
<P>⏎
231 とむつかるを、めざましく聞くほどに、げに人びと来ぬ。<BR>⏎
text22355 <A NAME="in33">[第三段 右近も初瀬へ参詣]</A><BR>232 
d1356<P>⏎
cd4:2357-360 これも徒歩よりなめり。よろしき女二人、下人どもぞ、男女、数多かむめる。馬四つ五つ牽かせて、いみじく忍びやつしたれど、きよげなる男どもなどあり。<BR>⏎
<P>⏎
 法師は、せめてここに宿さまほしくして、頭掻きありく。いとほしけれど、また宿り替へむもさま悪しくわづらはしければ、人びとは奥に入り、他に隠しなどして、かたへは片つ方に寄りぬ。軟障などひき隔てておはします。<BR>⏎
<P>⏎
233-234 これも徒歩よりなめり。よろしき女二人、下人どもぞ、男女、数多かむめる。馬四つ五つ牽かせて、いみじく忍びやつしたれど、きよげなる男どもなどあり。<BR>⏎
 法師は、せめてここに宿さまほしくして、頭掻きありく。いとほしけれど、また宿り替へむもさま悪しくわづらはしければ、人びとは奥に入り、他に隠しなどして、かたへは片つ方に寄りぬ。軟障などひき隔てておはします。<BR>⏎
cd2:1362-363 さるはかの世とともに恋ひ泣く右近なりけり。年月に添へて、はしたなき交じらひのつきなくなりゆく身を思ひなやみて、この御寺になむたびたび詣でける。<BR>⏎
<P>⏎
236 さるはかの世とともに恋ひ泣く右近なりけり。年月に添へて、はしたなき交じらひのつきなくなりゆく身を思ひなやみて、この御寺になむたびたび詣でける。<BR>⏎
d1365<P>⏎
cd2:1366-367 「これは御前に参らせたまへ。御台などうちあはで、いとかたはらいたしや」<BR>⏎
<P>⏎
238 「これは御前に参らせたまへ。御台などうちあはで、いとかたはらいたしや」<BR>⏎
d1369<P>⏎
d1371<P>⏎
d1373<P>⏎
d1376<P>⏎
d1378<P>⏎
d1380<P>⏎
text22381 <A NAME="in34">[第四段 右近、玉鬘に再会す]</A><BR>246 
d1382<P>⏎
d1384<P>⏎
d1386<P>⏎
cd16:8387-402 とて寄り来たり。田舎びたる掻練に<A HREF="#k06">衣</A><A NAME="t06">な</A>ど着て、いといたう太りにけり。わが齢もいとどおぼえて恥づかしけれど、<BR>⏎
<P>⏎
 「なほさし覗け。われをば見知りたりや」<BR>⏎
<P>⏎
 とて顔さし出でたり。この女の手を打ちて、<BR>⏎
<P>⏎
 「あが御許にこそおはしましけれ。あなうれしともうれし。いづくより参りたまひたるぞ。上はおはしますや」<BR>⏎
<P>⏎
 といとおどろおどろしく泣く。若き者にて見なれし世を思ひ出づるに、隔て来にける年月数へられて、いとあはれなり。<BR>⏎
<P>⏎
 「まづおとどはおはすや。若君は、いかがなりたまひにし。あてきと聞こえしは」<BR>⏎
<P>⏎
 とて君の御ことは、言ひ出でず。<BR>⏎
<P>⏎
 「皆おはします。姫君も大人になりておはします。まづおとどに、かくなむと聞こえむ」<BR>⏎
<P>⏎
249-256 とて寄り来たり。田舎びたる掻練に<A HREF="#k06">衣</A><A NAME="t06">な</A>ど着て、いといたう太りにけり。わが齢もいとどおぼえて恥づかしけれど、<BR>⏎
 「なほさし覗け。われをば見知りたりや」<BR>⏎
 とて顔さし出でたり。この女の手を打ちて、<BR>⏎
 「あが御許にこそおはしましけれ。あなうれしともうれし。いづくより参りたまひたるぞ。上はおはしますや」<BR>⏎
 といとおどろおどろしく泣く。若き者にて見なれし世を思ひ出づるに、隔て来にける年月数へられて、いとあはれなり。<BR>⏎
 「まづおとどはおはすや。若君は、いかがなりたまひにし。あてきと聞こえしは」<BR>⏎
 とて君の御ことは、言ひ出でず。<BR>⏎
 「皆おはします。姫君も大人になりておはします。まづおとどに、かくなむと聞こえむ」<BR>⏎
cd2:1404-405 皆驚きて、<BR>⏎
<P>⏎
258 皆驚きて、<BR>⏎
d1408<P>⏎
cd2:1409-410 とてこの隔てに寄り来たり。気遠く隔てつる屏風だつもの、名残なくおし開けて、まづ言ひやるべき方なく泣き交はす。老い人は、ただ<BR>⏎
<P>⏎
261 とてこの隔てに寄り来たり。気遠く隔てつる屏風だつもの、名残なくおし開けて、まづ言ひやるべき方なく泣き交はす。老い人は、ただ<BR>⏎
d1412<P>⏎
d1414<P>⏎
cd4:2415-418 「いでや聞こえてもかひなし。御方は、はや亡せたまひにき」<BR>⏎
<P>⏎
 と言ふままに、二三人ながらむせかへり、いとむつかしく、せきかねたり。<BR>⏎
<P>⏎
264-265 「いでや聞こえてもかひなし。御方は、はや亡せたまひにき」<BR>⏎
 と言ふままに、二三人ながらむせかへり、いとむつかしく、せきかねたり。<BR>⏎
text22419 <A NAME="in35">[第五段 右近、初瀬観音に感謝]</A><BR>266 
d1420<P>⏎
d1422<P>⏎
d1424<P>⏎
cd6:3425-430 すこし足なれたる人は、とく御堂に着きにけり。この君をもてわづらひきこえつつ、初夜行なふほどにぞ上りたまへる。いと騒がしく人詣で混みてののしる。右近が局は仏の右の方に近き間にしたり。この御師は、まだ深からねばにや、西の間に遠かりけるを、<BR>⏎
<P>⏎
 「なほここにおはしませ」<BR>⏎
<P>⏎
 と尋ね交はし言ひたれば、男どもをばとどめて、介にかうかうと言ひあはせて、こなたに移したてまつる。<BR>⏎
<P>⏎
269-271 すこし足なれたる人は、とく御堂に着きにけり。この君をもてわづらひきこえつつ、初夜行なふほどにぞ上りたまへる。いと騒がしく人詣で混みてののしる。右近が局は仏の右の方に近き間にしたり。この御師は、まだ深からねばにや、西の間に遠かりけるを、<BR>⏎
 「なほここにおはしませ」<BR>⏎
 と尋ね交はし言ひたれば、男どもをばとどめて、介にかうかうと言ひあはせて、こなたに移したてまつる。<BR>⏎
d1432<P>⏎
cd2:1433-434 とて物語いとせまほしけれど、おどろおどろしき行なひの紛れ、騒がしきにもよほされて、仏拝みたてまつる。右近は心のうちに、<BR>⏎
<P>⏎
273 とて物語いとせまほしけれど、おどろおどろしき行なひの紛れ、騒がしきにもよほされて、仏拝みたてまつる。右近は心のうちに、<BR>⏎
d1436<P>⏎
d1438<P>⏎
text22439 <A NAME="in36">[第六段 三条、初瀬観音に祈願]</A><BR>276 
d1440<P>⏎
d1442<P>⏎
d1444<P>⏎
cd4:2445-448 と額に手を当てて念じ入りてをり。右近、「いとゆゆしくも言ふかな」と聞きて、<BR>⏎
<P>⏎
 「いといたくこそ田舎びにけれな。中将殿は、昔の御おぼえだにいかがおはしましし。まして今は天の下を御心にかけたまへる大臣にて、いかばかりいつかしき御仲に、御方しも、受領の妻にて、品定まりておはしまさむよ」<BR>⏎
<P>⏎
279-280 と額に手を当てて念じ入りてをり。右近、「いとゆゆしくも言ふかな」と聞きて、<BR>⏎
 「いといたくこそ田舎びにけれな。中将殿は、昔の御おぼえだにいかがおはしましし。まして今は天の下を御心にかけたまへる大臣にて、いかばかりいつかしき御仲に、御方しも、受領の妻にて、品定まりておはしまさむよ」<BR>⏎
d1450<P>⏎
cd4:2451-454 「あなかま。たまへ。大臣たちもしばし待て。大弐の御館の上の、清水の御寺、<A HREF="#k08">観世音寺</A><A NAME="t08">に</A>参りたまひし勢ひは、帝の行幸にやは劣れる。あなむくつけ」<BR>⏎
<P>⏎
 とてなほさらに手をひき放たず、拝み入りてをり。<BR>⏎
<P>⏎
282-283 「あなかま。たまへ。大臣たちもしばし待て。大弐の御館の上の、清水の御寺、<A HREF="#k08">観世音寺</A><A NAME="t08">に</A>参りたまひし勢ひは、帝の行幸にやは劣れる。あなむくつけ」<BR>⏎
 とてなほさらに手をひき放たず、拝み入りてをり。<BR>⏎
d1456<P>⏎
d1458<P>⏎
d1460<P>⏎
d1462<P>⏎
d1464<P>⏎
text22465 <A NAME="in37">[第七段 右近、主人の光る源氏について語る]</A><BR>289 
d1466<P>⏎
d1468<P>⏎
cd6:3469-474 「おぼえぬ高き交じらひをして、多くの人をなむ見集むれど、殿の上の御容貌に似る人おはせじとなむ、年ごろ見たてまつるを、また生ひ出でたまふ姫君の御さま、いとことわりにめでたくおはします。かしづきたてまつりたまふさまも、並びなかめるに、かうやつれたまへる御さまの、劣りたまふまじく見えたまふは、ありがたうなむ。<BR>⏎
<P>⏎
 大臣の君、父帝の御時より、そこらの女御后、それより下は<A HREF="#k09">残る</A><A NAME="t09">な</A>く見たてまつり集めたまへる御目にも、当代の御母后と聞こえしと、この姫君の御容貌とをなむ、『よき人とはこれを言ふにやあらむとおぼゆる』と聞こえたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
 見たてまつり並ぶるに、かの后の宮をば知りきこえず、姫君はきよらにおはしませど、まだ片なりにて、生ひ先ぞ推し量られたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
291-293 「おぼえぬ高き交じらひをして、多くの人をなむ見集むれど、殿の上の御容貌に似る人おはせじとなむ、年ごろ見たてまつるを、また生ひ出でたまふ姫君の御さま、いとことわりにめでたくおはします。かしづきたてまつりたまふさまも、並びなかめるに、かうやつれたまへる御さまの、劣りたまふまじく見えたまふは、ありがたうなむ。<BR>⏎
 大臣の君、父帝の御時より、そこらの女御后、それより下は<A HREF="#k09">残る</A><A NAME="t09">な</A>く見たてまつり集めたまへる御目にも、当代の御母后と聞こえしと、この姫君の御容貌とをなむ、『よき人とはこれを言ふにやあらむとおぼゆる』と聞こえたまふ。<BR>⏎
 見たてまつり並ぶるに、かの后の宮をば知りきこえず、姫君はきよらにおはしませど、まだ片なりにて、生ひ先ぞ推し量られたまふ。<BR>⏎
d1476<P>⏎
cd4:2477-480 見たてまつるに、命延ぶる御ありさまどもを、またさるたぐひおはしましなむやとなむ思ひはべるに、<A HREF="#k10">いづくか</A><A NAME="t10">劣</A>りたまはむ。ものは限りあるものなれば、すぐれたまへりとて、頂きを離れたる光やはおはする。ただこれを、すぐれたりとは聞こゆべきなめりかし」<BR>⏎
<P>⏎
 とうち笑みて見たてまつれば、老い人もうれしと思ふ。<BR>⏎
<P>⏎
295-296 見たてまつるに、命延ぶる御ありさまどもを、またさるたぐひおはしましなむやとなむ思ひはべるに、<A HREF="#k10">いづくか</A><A NAME="t10">劣</A>りたまはむ。ものは限りあるものなれば、すぐれたまへりとて、頂きを離れたる光やはおはする。ただこれを、すぐれたりとは聞こゆべきなめりかし」<BR>⏎
 とうち笑みて見たてまつれば、老い人もうれしと思ふ。<BR>⏎
text22481 <A NAME="in38">[第八段 乳母、右近に依頼]</A><BR>297 
d1482<P>⏎
d1485<P>⏎
d1487<P>⏎
cd2:1488-489 「いでや身こそ数ならねど、殿も御前近く召し使ひたまへば、ものの折ごとに、『いかにならせたまひにけむ』と聞こえ出づるを、聞こしめし置きて、『われいかで尋ねきこえむと思ふを、聞き出でたてまつりたらば』となむ、のたまはする」<BR>⏎
<P>⏎
301 「いでや身こそ数ならねど、殿も御前近く召し使ひたまへば、ものの折ごとに、『いかにならせたまひにけむ』と聞こえ出づるを、聞こしめし置きて、『われいかで尋ねきこえむと思ふを、聞き出でたてまつりたらば』となむ、のたまはする」<BR>⏎
d1491<P>⏎
d1493<P>⏎
d1495<P>⏎
cd4:2498-501 さりとも、姫君をば、かのありし夕顔の五条にぞとどめたてまつりたまへらむとぞ思ひし。あないみじや。田舎人にておはしまさましよ」<BR>⏎
<P>⏎
 などうち語らひつつ、日一日、昔物語、念誦などしつつ。<BR>⏎
<P>⏎
307-308 さりとも、姫君をば、かのありし夕顔の五条にぞとどめたてまつりたまへらむとぞ思ひし。あないみじや。田舎人にておはしまさましよ」<BR>⏎
 などうち語らひつつ、日一日、昔物語、念誦などしつつ。<BR>⏎
text22502 <A NAME="in39">[第九段 右近、玉鬘一行と約束して別れる]</A><BR>309 
d1503<P>⏎
d1505<P>⏎
cd2:1506-507 「<A HREF="#no8">二本の杉</A><A NAME="te8">の</A>たちどを尋ねずは<BR>⏎
  古川野辺に君を見ましや<BR>⏎
311 「<A HREF="#no8">二本の杉</A><A NAME="te8">の</A>たちどを尋ねずは<BR>  古川野辺に君を見ましや<BR>⏎
d1509<P>⏎
d1511<P>⏎
cd9:5512-520 「初瀬川はやくのことは知らねども<BR>⏎
  今日の逢ふ瀬に身さへ流れぬ」<BR>⏎
<P>⏎
 とうち泣きておはするさま、いとめやすし。<BR>⏎
 「容貌はいとかくめでたくきよげながら、田舎び、こちこちしうおはせましかば、いかに玉の瑕ならまし。いであはれ、いかでかく生ひ出でたまひけむ」<BR>⏎
 とおとどをうれしく思ふ。<BR>⏎
<P>⏎
 母君は、ただいと若やかにおほどかにて、やはやはとぞ、たをやぎたまへりし。これは気高く、もてなしなど恥づかしげに、よしめきたまへり。筑紫を心にくく思ひなすに、皆見し人は里びにたるに、心得がたくなむ。<BR>⏎
<P>⏎
314-318 「初瀬川はやくのことは知らねども<BR>  今日の逢ふ瀬に身さへ流れぬ」<BR>⏎
 とうち泣きておはするさま、いとめやすし。<BR>⏎
 「容貌はいとかくめでたくきよげながら、田舎び、こちこちしうおはせましかば、いかに玉の瑕ならまし。いであはれ、いかでかく生ひ出でたまひけむ」<BR>⏎
 とおとどをうれしく思ふ。<BR>⏎
 母君は、ただいと若やかにおほどかにて、やはやはとぞ、たをやぎたまへりし。これは気高く、もてなしなど恥づかしげに、よしめきたまへり。筑紫を心にくく思ひなすに、皆見し人は里びにたるに、心得がたくなむ。<BR>⏎
d1523<P>⏎
d1525<P>⏎
text22526 <H4>第四章 光る源氏の物語 玉鬘を養女とする物語</H4>322 
text22527 <A NAME="in41">[第一段 右近、六条院に帰参する]</A><BR>323 
d1528<P>⏎
d1530<P>⏎
d1532<P>⏎
cd4:2533-536 「などか里居は久しくしつるぞ。例ならず、やまめ人の、引き違へ、こまがへるやうもありかし。をかしきことなどありつらむかし」<BR>⏎
<P>⏎
 など例の、むつかしう、戯れ事などのたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
326-327 「などか里居は久しくしつるぞ。例ならず、やまめ人の、引き違へ、こまがへるやうもありかし。をかしきことなどありつらむかし」<BR>⏎
 など例の、むつかしう、戯れ事などのたまふ。<BR>⏎
d1538<P>⏎
d1540<P>⏎
d1542<P>⏎
d1544<P>⏎
cd4:2545-548 とて人びと参れば、聞こえさしつ。<BR>⏎
<P>⏎
 大殿油など参りて、うちとけ並びおはします御ありさまども、いと見るかひ多かり。女君は、二十七八にはなりたまひぬらむかし、盛りにきよらにねびまさりたまへり。すこしほど経て見たてまつるは、「またこのほどにこそ、にほひ加はりたまひにけれ」と見えたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
332-333 とて人びと参れば、聞こえさしつ。<BR>⏎
 大殿油など参りて、うちとけ並びおはします御ありさまども、いと見るかひ多かり。女君は、二十七八にはなりたまひぬらむかし、盛りにきよらにねびまさりたまへり。すこしほど経て見たてまつるは、「またこのほどにこそ、にほひ加はりたまひにけれ」と見えたまふ。<BR>⏎
d1550<P>⏎
text22551 <A NAME="in42">[第二段 右近、源氏に玉鬘との邂逅を語る]</A><BR>335 
d1552<P>⏎
d1554<P>⏎
d1556<P>⏎
d1558<P>⏎
d1561<P>⏎
d1563<P>⏎
cd4:2564-567 「上も、年経ぬるどちうちとけ過ぎ、はたむつかりたまはむとや。さるまじき心と見ねば、危ふし」<BR>⏎
<P>⏎
 など右近に語らひて笑ひたまふ。いと愛敬づき、をかしきけさへ添ひたまへり。<BR>⏎
<P>⏎
342-343 「上も、年経ぬるどちうちとけ過ぎ、はたむつかりたまはむとや。さるまじき心と見ねば、危ふし」<BR>⏎
 など右近に語らひて笑ひたまふ。いと愛敬づき、をかしきけさへ添ひたまへり。<BR>⏎
d1569<P>⏎
d1571<P>⏎
d1573<P>⏎
cd2:1574-575 「あな見苦しや。はかなく消えたまひにし夕顔の露の御ゆかりをなむ、見たまへつけたりし」<BR>⏎
<P>⏎
347 「あな見苦しや。はかなく消えたまひにし夕顔の露の御ゆかりをなむ、見たまへつけたりし」<BR>⏎
d1577<P>⏎
cd2:1578-579 「げにあはれなりけることかな。年ごろはいづくにか」<BR>⏎
<P>⏎
349 「げにあはれなりけることかな。年ごろはいづくにか」<BR>⏎
d1581<P>⏎
cd2:1582-583 「あやしき山里になむ昔人もかたへは変はらではべりければ、その世の物語し出ではべりて、堪へがたく思ひたまへりし」<BR>⏎
<P>⏎
351 「あやしき山里になむ. 昔人もかたへは変はらではべりければ、その世の物語し出ではべりて、堪へがたく思ひたまへりし」<BR>⏎
d1585<P>⏎
cd8:4586-593 「よし心知りたまはぬ御あたりに」<BR>⏎
<P>⏎
 と隠しきこえたまへば、上、<BR>⏎
<P>⏎
 「あなわづらはし。ねぶたきに、聞き入るべくもあらぬものを」<BR>⏎
<P>⏎
 とて御袖して御耳塞ぎたまひつ。<BR>⏎
<P>⏎
353-356 「よし心知りたまはぬ御あたりに」<BR>⏎
 と隠しきこえたまへば、上、<BR>⏎
 「あなわづらはし。ねぶたきに、聞き入るべくもあらぬものを」<BR>⏎
 とて御袖して御耳塞ぎたまひつ。<BR>⏎
d1595<P>⏎
d1597<P>⏎
d1599<P>⏎
d1601<P>⏎
d1603<P>⏎
d1605<P>⏎
cd2:1606-607 「いかでかさまでは」<BR>⏎
<P>⏎
363 「いかでかさまでは」<BR>⏎
d1609<P>⏎
d1611<P>⏎
cd2:1612-613 と親めきてのたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
366 と親めきてのたまふ。<BR>⏎
text22614 <A NAME="in43">[第三段 源氏、玉鬘を六条院へ迎える]</A><BR>367 
d1615<P>⏎
d1617<P>⏎
c1618 「さらばかの人、このわたりに渡いたてまつらむ。年ごろ、もののついでごとに、口惜しう惑はしつることを思ひ出でつるに、いとうれしく聞き出でながら、今までおぼつかなきも、かひなきことになむ。<BR>⏎
369 「さらばかの人、このわたりに渡いたてまつらむ。年ごろ、もののついでごとに、口惜しう惑はしつることを思ひ出でつるに、いとうれしく聞き出でながら、今までおぼつかなきも、かひなきことになむ。<BR>⏎
d1620<P>⏎
d1622<P>⏎
d1624<P>⏎
d1626<P>⏎
d1628<P>⏎
cd2:1629-630 とほほ笑みながら、涙ぐみたまへり。<BR>⏎
<P>⏎
375 とほほ笑みながら、涙ぐみたまへり。<BR>⏎
d1632<P>⏎
cd2:1633-634 とて御消息たてまつれたまふ。かの末摘花のいふかひなかりしを思し出づれば、さやうに沈みて生ひ出でたらむ人のありさまうしろめたくて、まづ文のけしきゆかしく思さるるなりけり。ものまめやかに、あるべかしく書きたまひて、端に、<BR>⏎
<P>⏎
377 とて御消息たてまつれたまふ。かの末摘花のいふかひなかりしを思し出づれば、さやうに沈みて生ひ出でたらむ人のありさまうしろめたくて、まづ文のけしきゆかしく思さるるなりけり。ものまめやかに、あるべかしく書きたまひて、端に、<BR>⏎
cd3:1636-638  知らずとも尋ねて知らむ三島江に<BR>⏎
  生ふる三稜の<A HREF="#k13">筋は</A><A NAME="t13">絶</A>えじを」<BR>⏎
<P>⏎
379  知らずとも尋ねて知らむ三島江に<BR>  生ふる三稜の<A HREF="#k13">筋は</A><A NAME="t13">絶</A>えじを」<BR>⏎
cd2:1640-641 御文、みづからまかでて、のたまふさまなど聞こゆ。御装束、人びとの料などさまざまあり。上にも語らひきこえたまへるなるべし、御匣殿などにも、設けの物召し集めて、色あひしざまなど、ことなるをと、選らせたまへれば、田舎びたる目どもには、まして珍らしきまでなむ思ひける。<BR>⏎
<P>⏎
381 御文、みづからまかでて、のたまふさまなど聞こゆ。御装束、人びとの料などさまざまあり。上にも語らひきこえたまへるなるべし、御匣殿などにも、設けの物召し集めて、色あひしざまなど、ことなるをと、選らせたまへれば、田舎びたる目どもには、まして珍らしきまでなむ思ひける。<BR>⏎
text22642 <A NAME="in44">[第四段 玉鬘、源氏に和歌を返す]</A><BR>382 
d1643<P>⏎
cd2:1646-647 とおもむけて、苦しげに思したれど、あるべきさまを、右近聞こえ知らせ、人びとも、<BR>⏎
<P>⏎
385 とおもむけて、苦しげに思したれど、あるべきさまを、右近聞こえ知らせ、人びとも、<BR>⏎
cd3:2649-651 「右近が、数にもはべらず、いかでか御覧じつけられむと思ひたまへしだに、仏神の御導きはべらざりけりや。まして誰れも誰れもたひらかにだにおはしまさば」<BR>⏎
<P>⏎
 と皆聞こえ慰む。<BR>⏎
387-388 「右近が、数にもはべらず、いかでか御覧じつけられむと思ひたまへしだに、仏神の御導きはべらざりけりや。まして誰れも誰れもたひらかにだにおはしまさば」<BR>⏎
 と皆聞こえ慰む。<BR>⏎
d1655<P>⏎
cd5:2656-660 「数ならぬ三稜や何の筋なれば<BR>⏎
  憂きにしもかく根をとどめけむ」<BR>⏎
<P>⏎
 とのみほのかなり。手ははかなだちよろぼはしけれど、あてはかにて口惜しからねば、御心落ちゐにけり。<BR>⏎
<P>⏎
392-393 「数ならぬ三稜や何の筋なれば<BR>  憂きにしもかく根をとどめけむ」<BR>⏎
 とのみほのかなり。手ははかなだちよろぼはしけれど、あてはかにて口惜しからねば、御心落ちゐにけり。<BR>⏎
d1665<P>⏎
text22666 <A NAME="in45">[第五段 源氏、紫の上に夕顔について語る]</A><BR>398 
d1667<P>⏎
d1669<P>⏎
d1671<P>⏎
c1672 とていとあはれげに思し出でたり。<BR>⏎
401 とていとあはれげに思し出でたり。<BR>⏎
d1674<P>⏎
d1676<P>⏎
d1678<P>⏎
cd2:1679-680 とのたまふ。なほ北の御殿をば、めざましと心置きたまへり。姫君の、いとうつくしげにて、何心もなく聞きたまふが、らうたければ、また「ことわりぞかし」と思し返さる。<BR>⏎
<P>⏎
405 とのたまふ。なほ北の御殿をば、めざましと心置きたまへり。姫君の、いとうつくしげにて、何心もなく聞きたまふが、らうたければ、また「ことわりぞかし」と思し返さる。<BR>⏎
text22681 <A NAME="in46">[第六段 玉鬘、六条院に入る]</A><BR>406 
d1682<P>⏎
d1684<P>⏎
d1687<P>⏎
d1689<P>⏎
cd6:3690-695 といとこまやかに聞こえたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
 「げにかかる人のおはしけるを、知りきこえざりけるよ。姫君の一所ものしたまふがさうざうしきに、よきことかな」<BR>⏎
<P>⏎
 とおいらかにのたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
411-413 といとこまやかに聞こえたまふ。<BR>⏎
 「げにかかる人のおはしけるを、知りきこえざりけるよ。姫君の一所ものしたまふがさうざうしきに、よきことかな」<BR>⏎
 とおいらかにのたまふ。<BR>⏎
d1697<P>⏎
d1699<P>⏎
d1701<P>⏎
d1704<P>⏎
d1707<P>⏎
d1710<P>⏎
text22711 <A NAME="in47">[第七段 源氏、玉鬘に対面する]</A><BR>423 
d1712<P>⏎
c1713 その夜、やがて大臣の君渡りたまへり。昔光る源氏などいふ御名は、聞きわたりたてまつりしかど、年ごろのうひうひしさに、さしも思ひきこえざりけるを、ほのかなる大殿油に、御几帳のほころびよりはつかに見たてまつる、いとど恐ろしくさへぞおぼゆるや。<BR>⏎
424 その夜、やがて大臣の君渡りたまへり。昔光る源氏などいふ御名は、聞きわたりたてまつりしかど、年ごろのうひうひしさに、さしも思ひきこえざりけるを、ほのかなる大殿油に、御几帳のほころびよりはつかに見たてまつる、いとど恐ろしくさへぞおぼゆるや。<BR>⏎
d1715<P>⏎
d1717<P>⏎
d1719<P>⏎
d1721<P>⏎
cd2:1722-723 とて几帳すこし押しやりたまふ。わりなく恥づかしければ、そばみておはする様体など、いとめやすく見ゆれば、うれしくて、<BR>⏎
<P>⏎
429 とて几帳すこし押しやりたまふ。わりなく恥づかしければ、そばみておはする様体など、いとめやすく見ゆれば、うれしくて、<BR>⏎
d1725<P>⏎
d1727<P>⏎
d1729<P>⏎
d1731<P>⏎
d1733<P>⏎
cd2:1734-735 とて御目おし拭ひたまふ。まことに悲しう思し出でらる。御年のほど、数へたまひて、<BR>⏎
<P>⏎
435 とて御目おし拭ひたまふ。まことに悲しう思し出でらる。御年のほど、数へたまひて、<BR>⏎
d1737<P>⏎
d1739<P>⏎
d1741<P>⏎
cd2:1742-743 とほのかに聞こえたまふ声ぞ、昔人にいとよくおぼえて若びたりける。ほほ笑みて、<BR>⏎
<P>⏎
439 とほのかに聞こえたまふ声ぞ、昔人にいとよくおぼえて若びたりける。ほほ笑みて、<BR>⏎
d1745<P>⏎
cd2:1746-747 とて心ばへいふかひなくはあらぬ御応へと思す。右近に、あるべきことのたまはせて、渡りたまひぬ。<BR>⏎
<P>⏎
441 とて心ばへいふかひなくはあらぬ御応へと思す。右近に、あるべきことのたまはせて、渡りたまひぬ。<BR>⏎
text22748 <A NAME="in48">[第八段 源氏、玉鬘の人物に満足する]</A><BR>442 
d1749<P>⏎
d1751<P>⏎
d1753<P>⏎
d1755<P>⏎
d1757<P>⏎
d1759<P>⏎
d1761<P>⏎
cd4:2762-765 とて笑ひたまふに、面赤みておはする、いと若くをかしげなり。硯引き寄せたまうて、手習に、<BR>⏎
<P>⏎
 「恋ひわたる身はそれなれど玉かづら<BR>⏎
  いかなる筋を尋ね来つらむ<BR>⏎
449-450 とて笑ひたまふに、面赤みておはする、いと若くをかしげなり。硯引き寄せたまうて、手習に、<BR>⏎
 「恋ひわたる身はそれなれど玉かづら<BR>  いかなる筋を尋ね来つらむ<BR>⏎
d1767<P>⏎
cd2:1768-769 とやがて独りごちたまへば、「げに深く思しける人の名残なめり」と見たまふ。<BR>⏎
<P>⏎
452 とやがて独りごちたまへば、「げに深く思しける人の名残なめり」と見たまふ。<BR>⏎
text22770 <A NAME="in49">[第九段 玉鬘の六条院生活始まる]</A><BR>453 
d1771<P>⏎
d1773<P>⏎
d1776<P>⏎
d1778<P>⏎
cd4:2779-782 といとまめまめしう聞こえたまへば、かたはらいたきまで、心知れる人は思ふ。<BR>⏎
<P>⏎
 心の限り尽くしたりし御住まひなりしかど、あさましう田舎びたりしも、たとしへなくぞ思ひ比べらるるや。御しつらひよりはじめ、今めかしう気高くて、親、はらからと睦びきこえたまふ御さま、容貌よりはじめ、目もあやにおぼゆるに、今ぞ、三条も大弐をあなづらはしく思ひける。まして監が息ざしけはひ、思ひ出づるもゆゆしきこと限りなし。<BR>⏎
<P>⏎
458-459 といとまめまめしう聞こえたまへば、かたはらいたきまで、心知れる人は思ふ。<BR>⏎
 心の限り尽くしたりし御住まひなりしかど、あさましう田舎びたりしも、たとしへなくぞ思ひ比べらるるや。御しつらひよりはじめ、今めかしう気高くて、親、はらからと睦びきこえたまふ御さま、容貌よりはじめ、目もあやにおぼゆるに、今ぞ、三条も大弐をあなづらはしく思ひける。まして監が息ざしけはひ、思ひ出づるもゆゆしきこと限りなし。<BR>⏎
d1784<P>⏎
cd2:1785-786 年ごろ田舎び沈みたりし心地に、にはかに名残もなく、いかでか仮にても立ち出で見るべきよすがなくおぼえし大殿のうちを、朝夕に出で入りならし、人を従へ、事行なふ身と<A HREF="#k20">なれば</A><A NAME="t20">、</A>いみじき面目と思ひけり。大臣の君の御心おきての、こまかにありがたうおはしますこと、いとかたじけなし。<BR>⏎
<P>⏎
461 年ごろ田舎び沈みたりし心地に、にはかに名残もなく、いかでか仮にても立ち出で見るべきよすがなくおぼえし大殿のうちを、朝夕に出で入りならし、人を従へ、事行なふ身と<A HREF="#k20">なれば</A><A NAME="t20">、</A>いみじき面目と思ひけり。大臣の君の御心おきての、こまかにありがたうおはしますこと、いとかたじけなし。<BR>⏎
text22787 <H4>第五章 光る源氏の物語 末摘花の物語と和歌論</H4>462 
text22788 <A NAME="in51">[第一段 歳末の衣配り]</A><BR>463 
d1789<P>⏎
d1791<P>⏎
d1793<P>⏎
c1794 と上に聞こえたまへば、御匣殿に仕うまつれるも、こなたにせさせたまへるも、皆取う出させたまへり。<BR>⏎
466 と上に聞こえたまへば、御匣殿に仕うまつれるも、こなたにせさせたまへるも、皆取う出させたまへり。<BR>⏎
d1796<P>⏎
cd2:1797-798 ここかしこの擣殿より参らせたる擣物ども御覧じ比べて、濃き赤きなど、さまざまを選らせたまひつつ、御衣櫃、衣筥どもに入れさせたまうて、おとなびたる上臈どもさぶらひて、「これはかれは」と取り具しつつ入る。上も見たまひて、<BR>⏎
<P>⏎
468 ここかしこの擣殿より参らせたる擣物ども御覧じ比べて、濃き赤きなど、さまざまを選らせたまひつつ、御衣櫃、衣筥どもに入れさせたまうて、おとなびたる上臈どもさぶらひて、「これはかれは」と取り具しつつ入る。上も見たまひて、<BR>⏎
d1800<P>⏎
d1802<P>⏎
cd2:1803-804 「つれなくて、人の御容貌推し量らむの御心なめりな。さてはいづれをとか思す」<BR>⏎
<P>⏎
471 「つれなくて、人の御容貌推し量らむの御心なめりな。さてはいづれをとか思す」<BR>⏎
d1806<P>⏎
d1808<P>⏎
cd2:1809-810 とさすが恥ぢらひておはす。<BR>⏎
<P>⏎
474 とさすが恥ぢらひておはす。<BR>⏎
d1812<P>⏎
d1814<P>⏎
d1816<P>⏎
cd4:2817-820 「いでこの容貌のよそへは、人腹立ちぬべきことなり。よきとても、物の色は限りあり、人の容貌は、おくれたるも、またなほ底ひあるものを」<BR>⏎
<P>⏎
 とてかの末摘花の御料に、柳の織物の、よしある唐草を乱れ織れるも、いとなまめきたれば、人知れずほほ笑まれたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
478-479 「いでこの容貌のよそへは、人腹立ちぬべきことなり。よきとても、物の色は限りあり、人の容貌は、おくれたるも、またなほ底ひあるものを」<BR>⏎
 とてかの末摘花の御料に、柳の織物の、よしある唐草を乱れ織れるも、いとなまめきたれば、人知れずほほ笑まれたまふ。<BR>⏎
d1822<P>⏎
cd2:1823-824 空蝉の尼君に、青鈍の織物、いと心ばせあるを見つけたまひて、御料にある梔子の御衣、聴し色なる添へたまひて、同じ日着たまふべき御消息聞こえめぐらしたまふ。げに似ついたる見むの御心なりけり。<BR>⏎
<P>⏎
481 空蝉の尼君に、青鈍の織物、いと心ばせあるを見つけたまひて、御料にある梔子の御衣、聴し色なる添へたまひて、同じ日着たまふべき御消息聞こえめぐらしたまふ。げに似ついたる見むの御心なりけり。<BR>⏎
text22825 <A NAME="in52">[第二段 末摘花の返歌]</A><BR>482 
d1826<P>⏎
cd6:3827-832 皆御返りどもただならず。御使の禄、心々なるに、末摘、東の院におはすれば、今すこしさし離れ、艶なるべきを、うるはしくものしたまふ人にて、あるべきことは違へたまはず、山吹の袿の、袖口いたくすすけたるを、うつほにてうち掛けたまへり。御文には、いとかうばしき陸奥紙の、すこし年経、厚きが黄ばみたるに、<BR>⏎
<P>⏎
 「いでや賜へるは、なかなかにこそ。<BR>⏎
  着てみれば恨みられけり唐衣<BR>⏎
  返しやりてむ袖を濡らして」<BR>⏎
<P>⏎
483-485 皆御返りどもただならず。御使の禄、心々なるに、末摘、東の院におはすれば、今すこしさし離れ、艶なるべきを、うるはしくものしたまふ人にて、あるべきことは違へたまはず、山吹の袿の、袖口いたくすすけたるを、うつほにてうち掛けたまへり。御文には、いとかうばしき陸奥紙の、すこし年経、厚きが黄ばみたるに、<BR>⏎
 「いでや賜へるは、なかなかにこそ。<BR>⏎
  着てみれば恨みられけり唐衣<BR>  返しやりてむ袖を濡らして」<BR>⏎
d1834<P>⏎
cd2:1835-836 御使にかづけたる物を、いと侘しくかたはらいたしと思して、御けしき悪しければ、すべりまかでぬ。いみじくおのおのはささめき笑ひけり。かやうにわりなう古めかしう、かたはらいたきところのつきたまへるさかしらに、もてわづらひぬべう思す。恥づかしきまみなり。<BR>⏎
<P>⏎
487 御使にかづけたる物を、いと侘しくかたはらいたしと思して、御けしき悪しければ、すべりまかでぬ。いみじくおのおのはささめき笑ひけり。かやうにわりなう古めかしう、かたはらいたきところのつきたまへるさかしらに、もてわづらひぬべう思す。恥づかしきまみなり。<BR>⏎
text22837 <A NAME="in53">[第三段 源氏の和歌論]</A><BR>488 
d1838<P>⏎
cd2:1839-840 「古代の歌詠みは、『唐衣』、『袂濡るる』かことこそ離れねな。まろもその列ぞかし。さらに一筋にまつはれて、今めきたる言の葉にゆるぎたまはぬこそ、ねたきことははたあれ。人の中なることを、をりふし、御前などのわざとある歌詠みのなかにては、『円居』離れぬ三文字ぞかし。昔の懸想のをかしき挑みには、『あだ人』といふ五文字を、やすめどころにうち置きて、言の葉の続きたよりある心地すべかめり」<BR>⏎
<P>⏎
489 「古代の歌詠みは、『唐衣』、『袂濡るる』かことこそ離れねな。まろもその列ぞかし。さらに一筋にまつはれて、今めきたる言の葉にゆるぎたまはぬこそ、ねたきことははたあれ。人の中なることを、をりふし、御前などのわざとある歌詠みのなかにては、『円居』離れぬ三文字ぞかし。昔の懸想のをかしき挑みには、『あだ人』といふ五文字を、やすめどころにうち置きて、言の葉の続きたよりある心地すべかめり」<BR>⏎
d1842<P>⏎
d1845<P>⏎
c1846 とてをかしく思いたるさまぞ、いとほしきや。<BR>⏎
493 とてをかしく思いたるさまぞ、いとほしきや。<BR>⏎
d1848<P>⏎
cd2:1849-850 「などて返したまひけむ。書きとどめて、姫君にも見せたてまつりたまふべかりけるものを。ここにも、もののなかなりしも、虫みな損なひてければ。見ぬ人はた、心ことにこそは遠かりけれ」<BR>⏎
<P>⏎
495 「などて返したまひけむ。書きとどめて、姫君にも見せたてまつりたまふべかりけるものを。ここにも、もののなかなりしも、虫みな損なひてければ。見ぬ人はた、心ことにこそは遠かりけれ」<BR>⏎
d1852<P>⏎
d1854<P>⏎
d1856<P>⏎
d1858<P>⏎
cd4:2859-862 とそそのかしきこえたまふ。情け捨てぬ御心にて、書きたまふ。いと心やすげなり。<BR>⏎
<P>⏎
 「返さむと言ふにつけても片敷の<BR>⏎
  夜の衣を思ひこそやれ<BR>⏎
500-501 とそそのかしきこえたまふ。情け捨てぬ御心にて、書きたまふ。いと心やすげなり。<BR>⏎
 「返さむと言ふにつけても片敷の<BR>  夜の衣を思ひこそやれ<BR>⏎
d1864<P>⏎
d2866-867
<P>⏎
text22868 <a name="in61">【出典】<BR>504 
c1869</a><A NAME="no1">出典1</A> 世の中にあらましかばと思ふ人亡きが多くもなりにけるかな(拾遺集哀傷-一二九九 藤原為頼泳<A HREF="#te1">(戻)</A><BR>⏎
505<A NAME="no1">出典1</A> 世の中にあらましかばと思ふ人亡きが多くもなりにけるかな(拾遺集哀傷-一二九九 藤原為頼泳<A HREF="#te1">(戻)</A><BR>⏎
d1879
text22880<p> <a name="in62">【校訂】<BR>515 
c1882</a><A NAME="k01">校訂1</A> なるを--(/+なるを)<A HREF="#t01">(戻)</A><BR>⏎
517<A NAME="k01">校訂1</A> なるを--(/+なるを)<A HREF="#t01">(戻)</A><BR>⏎
d1904</p>⏎
d1911</p>⏎
i0549
diffsrc/original/text23.htmlsrc/modified/text23.html
cd2:18-9<body background="wallppr063.gif">⏎
First updated 9/20/1996(ver.1-1)<BR>⏎
8<BODY>⏎
cd3:210-12Last updated 11/22/2009(ver.2-2)<BR>⏎
渋谷栄一校訂(C)<BR>⏎
<P
>⏎
9-10<ADDRESS>Last updated 11/22/2009(ver.2-2)<BR>⏎
渋谷栄一校訂(C)</ADDRESS>⏎
d114<P>⏎
d116<P>⏎
d138<P>⏎
d158<P>⏎
d161<P>⏎
text2362 <H4>第一章 光る源氏の物語 新春の六条院の女性たち</H4>55 
text2363 <A NAME="in11">[第一段 春の御殿の紫の上の周辺]</A><BR>56 
d164<P>⏎
cd2:165-66 <A HREF="#no1">年立ちかへる</A><A NAME="te1">朝</A>の空のけしき、名残なく曇らぬうららかげさには、<A HREF="#no2">数ならぬ垣根</A><A NAME="te2">の</A>うちだに、雪間の草若やかに色づきはじめ、いつしかとけしきだつ霞に、木の芽もうちけぶり、おのづから人の心ものびらかにぞ見ゆるかし。ましていとど玉を敷ける御前の、庭よりはじめ見所多く、磨きましたまへる<A HREF="#k01">御方々のありさま</A><A NAME="t01">、</A>まねびたてむも言の葉足るまじくなむ。<BR>⏎
<P>⏎
57 <A HREF="#no1">年立ちかへる</A><A NAME="te1">朝</A>の空のけしき、名残なく曇らぬうららかげさには、<A HREF="#no2">数ならぬ垣根</A><A NAME="te2">の</A>うちだに、雪間の草若やかに色づきはじめ、いつしかとけしきだつ霞に、木の芽もうちけぶり、おのづから人の心ものびらかにぞ見ゆるかし。ましていとど玉を敷ける御前の、庭よりはじめ見所多く、磨きましたまへる<A HREF="#k01">御方々のありさま</A><A NAME="t01">、</A>まねびたてむも言の葉足るまじくなむ。<BR>⏎
d168<P>⏎
d170<P>⏎
d172<P>⏎
d174<P>⏎
d176<P>⏎
d178<P>⏎
d180<P>⏎
cd12:581-92 とて乱れたる事どもすこしうち混ぜつつ、祝ひきこえたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
 「薄氷解けぬる池の鏡には<BR>⏎
  世に曇りなき影ぞ並べる」<BR>⏎
<P>⏎
 げにめでたき御あはひどもなり。<BR>⏎
<P>⏎
 「曇りなき池の鏡によろづ代を<BR>⏎
  すむべき影ぞしるく見えける」<BR>⏎
<P>⏎
 何事につけても、末遠き御契りを、あらまほしく聞こえ交はしたまふ。今日は子の日なりけり。げに<A HREF="#no5">千年の春をかけて</A><A NAME="te5">祝</A>はむに、ことわりなる日なり。<BR>⏎
<P>⏎
65-69 とて乱れたる事どもすこしうち混ぜつつ、祝ひきこえたまふ。<BR>⏎
 「薄氷解けぬる池の鏡には<BR>  世に曇りなき影ぞ並べる」<BR>⏎
 げにめでたき御あはひどもなり。<BR>⏎
 「曇りなき池の鏡によろづ代を<BR>  すむべき影ぞしるく見えける」<BR>⏎
 何事につけても、末遠き御契りを、あらまほしく聞こえ交はしたまふ。今日は子の日なりけり。げに<A HREF="#no5">千年の春をかけて</A><A NAME="te5">祝</A>はむに、ことわりなる日なり。<BR>⏎
text2393 <A NAME="in12">[第二段 明石姫君、実母と和歌を贈答]</A><BR>70 
d194<P>⏎
d196<P>⏎
cd2:197-98 「年月を<A HREF="#no6">松にひかれて</A><A NAME="te6">経</A>る人に<BR>⏎
  今日鴬の初音聞かせよ<BR>⏎
72 「年月を<A HREF="#no6">松にひかれて</A><A NAME="te6">経</A>る人に<BR>  今日鴬の初音聞かせよ<BR>⏎
d1100<P>⏎
cd2:1101-102 と聞こえたまへるを、「げにあはれ」と思し知る。言忌もえしあへたまはぬけしきなり。<BR>⏎
<P>⏎
74 と聞こえたまへるを、「げにあはれ」と思し知る。言忌もえしあへたまはぬけしきなり。<BR>⏎
d1104<P>⏎
cd5:2105-109 とて御硯取りまかなひ、書かせたてまつりたまふ。いとうつくしげにて、明け暮れ見たてまつる人だに、飽かず思ひきこゆる御ありさまを、今までおぼつかなき年月の隔たりにけるも、「罪得がましう、心苦し」と思す。<BR>⏎
<P>⏎
 「ひき別れ年は経れども鴬の<BR>⏎
  巣立ちし松の根を忘れめや」<BR>⏎
<P>⏎
76-77 とて御硯取りまかなひ、書かせたてまつりたまふ。いとうつくしげにて、明け暮れ見たてまつる人だに、飽かず思ひきこゆる御ありさまを、今までおぼつかなき年月の隔たりにけるも、「罪得がましう、心苦し」と思す。<BR>⏎
 「ひき別れ年は経れども鴬の<BR>  巣立ちし松の根を忘れめや」<BR>⏎
d1111<P>⏎
text23112 <A NAME="in13">[第三段 夏の御殿の花散里を訪問]</A><BR>79 
d1113<P>⏎
d1116<P>⏎
cd2:1117-118 「縹は、げににほひ多からぬあはひにて、御髪などもいたく盛り過ぎにけり。やさしき方にあらぬと、葡萄鬘してぞつくろひたまふべき。我ならざらむ人は、見醒めしぬべき御ありさまを、かくて見るこそうれしく本意あれ。心軽き人の列にて、われに背きたまひなましかば」など、御対面の折々は、まづ「わが心の長きも、人の御心の重きをも、うれしく、思ふやうなり」<BR>⏎
<P>⏎
82 「縹は、げににほひ多からぬあはひにて、御髪などもいたく盛り過ぎにけり。やさしき方にあらぬと、葡萄鬘してぞつくろひたまふべき。我ならざらむ人は、見醒めしぬべき御ありさまを、かくて見るこそうれしく本意あれ。心軽き人の列にて、われに背きたまひなましかば」など、御対面の折々は、まづ「わが心の長きも、人の御心の重きをも、うれしく、思ふやうなり」<BR>⏎
d1120<P>⏎
text23121 <A NAME="in14">[第四段 続いて玉鬘を訪問]</A><BR>84 
d1122<P>⏎
d1124<P>⏎
d1126<P>⏎
d1128<P>⏎
d1130<P>⏎
d1132<P>⏎
d1134<P>⏎
d1136<P>⏎
text23137 <A NAME="in15">[第五段 冬の御殿の明石御方に泊まる]</A><BR>92 
d1138<P>⏎
d1140<P>⏎
d1142<P>⏎
cd2:1143-144 「めづらしや花のねぐらに木づたひて<BR>⏎
  谷の古巣を<A HREF="#k11">訪へる</A><A NAME="t11">鴬</A><BR>⏎
95 「めづらしや花のねぐらに木づたひて<BR>  谷の古巣を<A HREF="#k11">訪へる</A><A NAME="t11">鴬</A><BR>⏎
d1146<P>⏎
c1147 なども<BR>⏎
97 なども<BR>⏎
cd4:2149-152 などひき返し慰めたる筋など書きまぜつつあるを、取りて見たまひつつほほ笑みたまへる、恥づかしげなり。<BR>⏎
<P>⏎
 筆さし濡らして書きすさみたまふほどに、ゐざり出でて、さすがにみづからのもてなしは、かしこまりおきて、めやすき用意なるを、「なほ人よりはことなり」と思す。白きに、けざやかなる髪のかかりの、すこしさはらかなるほどに薄らぎにけるも、いとどなまめかしさ添ひて、なつかしければ、「新しき年の御騒がれもや」と、つつましけれど、こなたに泊りたまひぬ。「なほおぼえことなりかし」と、方々に心おきて思す。<BR>⏎
<P>⏎
99-100 などひき返し慰めたる筋など書きまぜつつあるを、取りて見たまひつつほほ笑みたまへる、恥づかしげなり。<BR>⏎
 筆さし濡らして書きすさみたまふほどに、ゐざり出でて、さすがにみづからのもてなしは、かしこまりおきて、めやすき用意なるを、「なほ人よりはことなり」と思す。白きに、けざやかなる髪のかかりの、すこしさはらかなるほどに薄らぎにけるも、いとどなまめかしさ添ひて、なつかしければ、「新しき年の御騒がれもや」と、つつましけれど、こなたに泊りたまひぬ。「なほおぼえことなりかし」と、方々に心おきて思す。<BR>⏎
d1155<P>⏎
d1157<P>⏎
cd2:1158-159 と御けしきとりたまふもをかしく見ゆ。ことなる御いらへもなければ、わづらはしくて、そら寝をしつつ、日高く御殿籠もり起きたり。<BR>⏎
<P>⏎
104 と御けしきとりたまふもをかしく見ゆ。ことなる御いらへもなければ、わづらはしくて、そら寝をしつつ、日高く御殿籠もり起きたり。<BR>⏎
text23160 <A NAME="in16">[第六段 六条院の正月二日の臨時客]</A><BR>105 
d1161<P>⏎
cd2:1162-163 今日は、<A HREF="#k14">臨時客</A><A NAME="t14">の</A>ことに紛らはしてぞ、面隠したまふ。上達部親王たちなど、例の残りなく参りたまへり。御遊びありて、引出物、禄など、二なし。そこら集ひたまへるが、我も劣らじともてなしたまへるなかにも、すこしなずらひなるだにも見えたまはぬものかな。とり放ちては、いと有職多くものしたまふころなれど、御前にては気圧されたまふも、悪しかし。何の数ならぬ下部どもなどだに、この院に参る日は、心づかひことなりけり。まして若やかなる上達部などは、思ふ心<A HREF="#k15">など</A><A NAME="t15">も</A>のしたまひて、すずろに心懸想したまひつつ、常の年よりもことなり。<BR>⏎
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106 今日は、<A HREF="#k14">臨時客</A><A NAME="t14">の</A>ことに紛らはしてぞ、面隠したまふ。上達部親王たちなど、例の残りなく参りたまへり。御遊びありて、引出物、禄など、二なし。そこら集ひたまへるが、我も劣らじともてなしたまへるなかにも、すこしなずらひなるだにも見えたまはぬものかな。とり放ちては、いと有職多くものしたまふころなれど、御前にては気圧されたまふも、悪しかし。何の数ならぬ下部どもなどだに、この院に参る日は、心づかひことなりけり。まして若やかなる上達部などは、思ふ心<A HREF="#k15">など</A><A NAME="t15">も</A>のしたまひて、すずろに心懸想したまひつつ、常の年よりもことなり。<BR>⏎
d1165<P>⏎
text23166 <H4>第二章 光る源氏の物語 二条東院の女性たちの物語</H4>108 
text23167 <A NAME="in21">[第一段 二条東院の末摘花を訪問]</A><BR>109 
d1168<P>⏎
cd4:2169-172 かうののしる馬車の音を、もの<A HREF="#k16">隔てて</A><A NAME="t16">聞</A>きたまふ御方々は、蓮の中の世界に、まだ開けざらむ心地もかくやと、心やましげなり。まして東の院に離れたまへる御方々は、年月に添へて、つれづれの数のみまされど、「<A HREF="#no11">世の憂きめ見えぬ山路</A><A NAME="te11">」</A>に思ひなずらへて、つれなき人の御心をば、何とかは見たてまつりとがめむ、その他の心もとなく寂しきことはたなければ、行なひの方の人は、その紛れなく勤め、仮名のよろづの草子の学問、心に入れたまはむ人は、また願ひに従ひ、ものまめやかにはかばかしきおきてにも、ただ心の願ひに従ひたる住まひなり。騒がしき<A HREF="#k17">日ごろ</A><A NAME="t17">過</A>ぐして渡りたまへり。<BR>⏎
<P>⏎
 常陸宮の御方は、人のほどあれば、心苦しく思して、人目の飾りばかりは、いとよくもてなしきこえたまふ。いにしへ盛りと見えし御若髪も、年ごろに衰ひゆき、まして<A HREF="#no12">滝の淀み恥づかしげ</A><A NAME="te12">な</A>る御かたはらめなどを、いとほしと思せば、まほにも向かひたまはず。<BR>⏎
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110-111 かうののしる馬車の音を、もの<A HREF="#k16">隔てて</A><A NAME="t16">聞</A>きたまふ御方々は、蓮の中の世界に、まだ開けざらむ心地もかくやと、心やましげなり。まして東の院に離れたまへる御方々は、年月に添へて、つれづれの数のみまされど、「<A HREF="#no11">世の憂きめ見えぬ山路</A><A NAME="te11">」</A>に思ひなずらへて、つれなき人の御心をば、何とかは見たてまつりとがめむ、その他の心もとなく寂しきことはたなければ、行なひの方の人は、その紛れなく勤め、仮名のよろづの草子の学問、心に入れたまはむ人は、また願ひに従ひ、ものまめやかにはかばかしきおきてにも、ただ心の願ひに従ひたる住まひなり。騒がしき<A HREF="#k17">日ごろ</A><A NAME="t17">過</A>ぐして渡りたまへり。<BR>⏎
 常陸宮の御方は、人のほどあれば、心苦しく思して、人目の飾りばかりは、いとよくもてなしきこえたまふ。いにしへ盛りと見えし御若髪も、年ごろに衰ひゆき、まして<A HREF="#no12">滝の淀み恥づかしげ</A><A NAME="te12">な</A>る御かたはらめなどを、いとほしと思せば、まほにも向かひたまはず。<BR>⏎
d1174<P>⏎
d1176<P>⏎
d1178<P>⏎
d1180<P>⏎
d1182<P>⏎
d1184<P>⏎
d1186<P>⏎
cd2:1187-188 「皮衣はいとよし。山伏の蓑代衣に譲りたまひてあへなむ。さてこのいたはりなき白妙の衣は、七重にも、などか<A HREF="#k20">重ね</A><A NAME="t20">た</A>まはざらむ。<A HREF="#k21">さるべき</A><A NAME="t21">折</A>々は、うち忘れたらむこともおどろかしたまへかし。もとよりおれおれしくたゆき心のおこたりに。まして方々の紛らはしき競ひにも、おのづからなむ」<BR>⏎
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119 「皮衣はいとよし。山伏の蓑代衣に譲りたまひてあへなむ。さてこのいたはりなき白妙の衣は、七重にも、などか<A HREF="#k20">重ね</A><A NAME="t20">た</A>まはざらむ。<A HREF="#k21">さるべき</A><A NAME="t21">折</A>々は、うち忘れたらむこともおどろかしたまへかし。もとよりおれおれしくたゆき心のおこたりに。まして方々の紛らはしき競ひにも、おのづからなむ」<BR>⏎
d1190<P>⏎
d1192<P>⏎
cd3:1193-195 「ふるさとの春の梢に訪ね来て<BR>⏎
  世の常ならぬ花を見るかな」<BR>⏎
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122 「ふるさとの春の梢に訪ね来て<BR>  世の常ならぬ花を見るかな」<BR>⏎
d1197<P>⏎
text23198 <A NAME="in22">[第二段 続いて空蝉を訪問]</A><BR>124 
d1199<P>⏎
d1202<P>⏎
d1204<P>⏎
d1206<P>⏎
d1208<P>⏎
d2210-211
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cd5:1213-217</A>⏎
<p><A HREF="#k25"> と</A></p>⏎
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><A NAME="t25">の</A>たまふ。「かのあさましかりし世の古事を聞き置きたまへるなめり」と、恥づかしく、<BR>⏎

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132 と</A><A NAME="t25">の</A>たまふ。「かのあさましかりし世の古事を聞き置きたまへるなめり」と、恥づかしく、<BR>⏎
d2219-220
<P>⏎
cd3:1221-223 とてまことにうち泣きぬ。いにしへよりももの深く恥づかしげさまさりて、かくもて離れたること、と思すしも、見放ちがたく思さるれど、はかなきことをのたまひかくべくもあらず、おほかたの昔今の物語をしたまひて、「かばかりの言ふかひだにあれかし」と、あなたを見やりたまふ。<BR>⏎

<P>⏎
134 とてまことにうち泣きぬ。いにしへよりももの深く恥づかしげさまさりて、かくもて離れたること、と思すしも、見放ちがたく思さるれど、はかなきことをのたまひかくべくもあらず、おほかたの昔今の物語をしたまひて、「かばかりの言ふかひだにあれかし」と、あなたを見やりたまふ。<BR>⏎
d2225-226
<P>⏎
d2228-229
<P>⏎
cd4:1230-233 などなつかしくのたまふ。いづれをも、ほどほどにつけてあはれと思したり。我はと思しあがりぬべき御身のほどなれど、さしもことことしくもてなしたまはず、所につけ、人のほどにつけつつ、さまざま<A HREF="#k26">あまねく</A><A NAME="t26">な</A>つかしくおはしませば、ただかばかりの御心にかかりてなむ、多くの人びと年を経ける。<BR>⏎

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137 などなつかしくのたまふ。いづれをも、ほどほどにつけてあはれと思したり。我はと思しあがりぬべき御身のほどなれど、さしもことことしくもてなしたまはず、所につけ、人のほどにつけつつ、さまざま<A HREF="#k26">あまねく</A><A NAME="t26">な</A>つかしくおはしませば、ただかばかりの御心にかかりてなむ、多くの人びと年を経ける。<BR>⏎
text23234<H4>第三章 光る源氏の物語 男踏歌</H4>138 
text23235 <A NAME="in31">[第一段 男踏歌、六条院に回り来る]</A><BR>139 
d1236<P>⏎
d1238<P>⏎
d1240<P>⏎
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d1248<P>⏎
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cd2:1251-252 さるは<A HREF="#k29">高巾子</A><A NAME="t29">の</A>世<A HREF="#k30">離れ</A><A NAME="t30">た</A>るさま、寿詞の乱りがはしき、をこめきたることを、ことことしくとりなしたる、なかなか何ばかりのおもしろかるべき<A HREF="#k31">拍子も</A><A NAME="t31">聞</A>こえぬものを。例の、綿かづきわたりてまかでぬ。<BR>⏎
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148 さるは<A HREF="#k29">高巾子</A><A NAME="t29">の</A>世<A HREF="#k30">離れ</A><A NAME="t30">た</A>るさま、寿詞の乱りがはしき、をこめきたることを、ことことしくとりなしたる、なかなか何ばかりのおもしろかるべき<A HREF="#k31">拍子も</A><A NAME="t31">聞</A>こえぬものを。例の、綿かづきわたりてまかでぬ。<BR>⏎
text23253 <A NAME="in32">[第二段 源氏、踏歌の後宴を計画す]</A><BR>149 
d1254<P>⏎
d1256<P>⏎
d1258<P>⏎
cd2:1259-260 などいとうつくしと思したり。「万春楽」と、御口ずさみにのたまひて、<BR>⏎
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152 などいとうつくしと思したり。「万春楽」と、御口ずさみにのたまひて、<BR>⏎
d1262<P>⏎
d2264-265
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text23266 <a name="in41">【出典】<BR>155 
c1267</a><A NAME="no1">出典1</A> あらたまの年立ち返る朝より待たるるものは鴬の声(拾遺集春-五 素性法師)<A HREF="#te1">(戻)</A><BR>⏎
156<A NAME="no1">出典1</A> あらたまの年立ち返る朝より待たるるものは鴬の声(拾遺集春-五 素性法師)<A HREF="#te1">(戻)</A><BR>⏎
d1285
text23286<p> <a name="in42">【校訂】<BR>174 
c1288</a><A NAME="k01">校訂1</A> 御方々のありさま--御かた/\の御まへの(御まへの/$)ありさまとも(とも/$)<A HREF="#t01">(戻)</A><BR>⏎
176<A NAME="k01">校訂1</A> 御方々のありさま--御かた/\の御まへの(御まへの/$)ありさまとも(とも/$)<A HREF="#t01">(戻)</A><BR>⏎
d1322</p>⏎
d1329</p>⏎
i0220
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cd2:18-9<body background="wallppr063.gif">⏎
First updated 9/20/1996(ver.1-1)<BR>⏎
8<BODY>⏎
cd3:210-12Last updated 9/21/2010(ver.2-3)<BR>⏎
渋谷栄一校訂(C)<BR>⏎
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9-10<ADDRESS>Last updated 9/21/2010(ver.2-3)<BR>⏎
渋谷栄一校訂(C)</ADDRESS>⏎
d114<P>⏎
d116<P>⏎
d138<P>⏎
d163<P>⏎
d166<P>⏎
text2467 <H4>第一章 光る源氏の物語 春の町の船楽と季の御読経</H4>60 
text2468 <A NAME="in11">[第一段 三月二十日頃の春の町の船楽]</A><BR>61 
d169<P>⏎
d171<P>⏎
d173<P>⏎
d175<P>⏎
d177<P>⏎
cd12:478-89 「風吹けば波の花さへ色見えて<BR>⏎
  こや名に立てる山吹の崎」<BR>⏎
<P>⏎
 「春の池や井手の川瀬にかよふらむ<BR>⏎
  岸の山吹そこも匂へり」<BR>⏎
<P>⏎
 「<A HREF="#no2">亀の上の山も</A><A NAME="te2">尋</A>ねじ舟のうちに<BR>⏎
  老いせぬ名をばここに残さむ」<BR>⏎
<P>⏎
 「春の日のうららにさしてゆく舟は<BR>⏎
  棹のしづくも花ぞ散りける」<BR>⏎
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66-69 「風吹けば波の花さへ色見えて<BR>  こや名に立てる山吹の崎」<BR>⏎
 「春の池や井手の川瀬にかよふらむ<BR>  岸の山吹そこも匂へり」<BR>⏎
 「<A HREF="#no2">亀の上の山も</A><A NAME="te2">尋</A>ねじ舟のうちに<BR>  老いせぬ名をばここに残さむ」<BR>⏎
 「春の日のうららにさしてゆく舟は<BR>  棹のしづくも花ぞ散りける」<BR>⏎
d191<P>⏎
text2492 <A NAME="in12">[第二段 船楽、夜もすがら催される]</A><BR>71 
d193<P>⏎
cd4:294-97 暮れかかるほどに、「皇じやう」といふ楽、いとおもしろく聞こゆるに、心にもあらず、釣殿にさし寄せられて下りぬ。ここのしつらひ、いとこと削ぎたるさまに、なまめかしきに、御方々の若き人どもの、われ劣らじと尽くしたる装束、容貌、花をこき交ぜたる錦に劣らず見えわたる。世に目馴れずめづらかなる楽ども仕うまつる。舞人など、心ことに選ばせたまひて。<BR>⏎
<P>⏎
 夜に入りぬれば、いと飽かぬ心地して、御前の庭に篝火ともして、御階のもとの苔の上に、楽人召して、上達部親王たちも、皆おのおの弾きもの、吹きものとりどりにしたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
72-73 暮れかかるほどに、「皇」といふ楽、いとおもしろく聞こゆるに、心にもあらず、釣殿にさし寄せられて下りぬ。ここのしつらひ、いとこと削ぎたるさまに、なまめかしきに、御方々の若き人どもの、われ劣らじと尽くしたる装束、容貌、花をこき交ぜたる錦に劣らず見えわたる。世に目馴れずめづらかなる楽ども仕うまつる。舞人など、心ことに選ばせたまひて。<BR>⏎
 夜に入りぬれば、いと飽かぬ心地して、御前の庭に篝火ともして、御階のもとの苔の上に、楽人召して、上達部親王たちも、皆おのおの弾きもの、吹きものとりどりにしたまふ。<BR>⏎
d199<P>⏎
d1101<P>⏎
text24102 <A NAME="in13">[第三段 蛍兵部卿宮、玉鬘を思う]</A><BR>76 
d1103<P>⏎
d1105<P>⏎
d1107<P>⏎
d1109<P>⏎
d1112<P>⏎
d1114<P>⏎
d1116<P>⏎
cd8:3117-124 「<A HREF="#no5">紫のゆゑに</A><A NAME="te5">心</A>をしめたれば<BR>⏎
  淵に身投げむ名やは惜しけき」<BR>⏎
<P>⏎
 とて大臣の君に、<A HREF="#no6">同じかざしを</A><A NAME="te6">参</A>りたまふ。いといたうほほ笑みたまひて、<BR>⏎
<P>⏎
 「淵に身を投げつべしやとこの春は<BR>⏎
  花のあたりを立ち去らで見よ」<BR>⏎
<P>⏎
84-86 「<A HREF="#no5">紫のゆゑに</A><A NAME="te5">心</A>をしめたれば<BR>  淵に身投げむ名やは惜しけき」<BR>⏎
 とて大臣の君に、<A HREF="#no6">同じかざしを</A><A NAME="te6">参</A>りたまふ。いといたうほほ笑みたまひて、<BR>⏎
 「淵に身を投げつべしやとこの春は<BR>  花のあたりを立ち去らで見よ」<BR>⏎
d1126<P>⏎
text24127 <A NAME="in14">[第四段 中宮、春の季の御読経主催す]</A><BR>88 
d1128<P>⏎
d1131<P>⏎
d1133<P>⏎
d1136<P>⏎
text24137 <A NAME="in15">[第五段 紫の上と中宮和歌を贈答]</A><BR>94 
d1138<P>⏎
d1140<P>⏎
cd3:1141-143 「花園の胡蝶をさへや下草に<BR>⏎
  秋待つ虫はうとく見るらむ」<BR>⏎
<P>⏎
96 「花園の胡蝶をさへや下草に<BR>  秋待つ虫はうとく見るらむ」<BR>⏎
d1145<P>⏎
cd4:2146-149 「げに春の色は、え落とさせたまふまじかりけり」<BR>⏎
<P>⏎
 と花におれつつ聞こえあへり。鴬のうららかなる音に、「鳥の楽」はなやかに聞きわたされて、池の水鳥もそこはかとなくさへづりわたるに、「急」になり果つるほど、飽かずおもしろし。「蝶」は、ましてはかなきさまに飛び立ちて、山吹の籬のもとに、咲きこぼれたる花の蔭に舞ひ出づる。<BR>⏎
<P>⏎
98-99 「げに春の色は、え落とさせたまふまじかりけり」<BR>⏎
 と花におれつつ聞こえあへり。鴬のうららかなる音に、「鳥の楽」はなやかに聞きわたされて、池の水鳥もそこはかとなくさへづりわたるに、「急」になり果つるほど、飽かずおもしろし。「蝶」は、ましてはかなきさまに飛び立ちて、山吹の籬のもとに、咲きこぼれたる花の蔭に舞ひ出づる。<BR>⏎
d1151<P>⏎
d1153<P>⏎
cd3:1154-156  胡蝶にも誘はれなまし心ありて<BR>⏎
  八重山吹を隔てざりせば」<BR>⏎
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102  胡蝶にも誘はれなまし心ありて<BR>  八重山吹を隔てざりせば」<BR>⏎
d1158<P>⏎
d1161<P>⏎
text24162 <H4>第二章 玉鬘の物語 初夏の六条院に求婚者たち多く集まる</H4>106 
text24163 <A NAME="in21">[第一段 玉鬘に恋人多く集まる]</A><BR>107 
d1164<P>⏎
d1166<P>⏎
cd2:1167-168 聞こえたまふ人いとあまたものしたまふ。されど大臣、おぼろけに思し定むべくもあらず、わが御心にも、すくよかに親がり果つまじき御心や添ふらむ、「父大臣にも知らせやしてまし」など、思し寄る折々もあり。<BR>⏎
<P>⏎
109 聞こえたまふ人いとあまたものしたまふ。されど大臣、おぼろけに思し定むべくもあらず、わが御心にも、すくよかに親がり果つまじき御心や添ふらむ、「父大臣にも知らせやしてまし」など、思し寄る折々もあり。<BR>⏎
d1170<P>⏎
d1172<P>⏎
text24173 <A NAME="in22">[第二段 玉鬘へ求婚者たちの恋文]</A><BR>112 
d1174<P>⏎
d1176<P>⏎
d1178<P>⏎
cd4:2179-182 「はやうより隔つることなう、あまたの親王たちの御中に、この君をなむ、かたみに取り分きて思ひしに、ただかやうの筋のことなむ、いみじう隔て思うたまひてやみにしを、世の末に、かく好きたまへる心ばへを見るが、をかしうもあはれにもおぼゆるかな。なほ御返りなど聞こえたまへ。すこしもゆゑあらむ女の、かの親王よりほかに、また言の葉を交はすべき人こそ世におぼえね。いとけしきある人の御さまぞや」<BR>⏎
<P>⏎
 と若き人はめでたまひぬべく聞こえ知らせたまへど、つつましくのみ思いたり。<BR>⏎
<P>⏎
115-116 「はやうより隔つることなう、あまたの親王たちの御中に、この君をなむ、かたみに取り分きて思ひしに、ただかやうの筋のことなむ、いみじう隔て思うたまひてやみにしを、世の末に、かく好きたまへる心ばへを見るが、をかしうもあはれにもおぼゆるかな。なほ御返りなど聞こえたまへ。すこしもゆゑあらむ女の、かの親王よりほかに、また言の葉を交はすべき人こそ世におぼえね。いとけしきある人の御さまぞや」<BR>⏎
 と若き人はめでたまひぬべく聞こえ知らせたまへど、つつましくのみ思いたり。<BR>⏎
d1184<P>⏎
cd7:3185-191 「これはいかなれば、かく結ぼほれたるにか」<BR>⏎
<P>⏎
 とて引き開けたまへり。<A HREF="#k07">手</A><A NAME="t07">い</A>とをかしうて、<BR>⏎
<P>⏎
 「思ふとも君は知らじなわきかへり<BR>⏎
  岩漏る水に色し見えねば」<BR>⏎
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118-120 「これはいかなれば、かく結ぼほれたるにか」<BR>⏎
 とて引き開けたまへり。<A HREF="#k07">手</A><A NAME="t07">い</A>とをかしうて、<BR>⏎
 「思ふとも君は知らじなわきかへり<BR>  岩漏る水に色し見えねば」<BR>⏎
d1193<P>⏎
d1195<P>⏎
d1197<P>⏎
text24198 <A NAME="in23">[第三段 源氏、玉鬘の女房に教訓す]</A><BR>124 
d1199<P>⏎
d1201<P>⏎
d1203<P>⏎
cd4:2204-207 我にて思ひしにも、あな情けな、恨めしうもと、その折にこそ、無心なるにや、もしはめざましかるべき際はけやけうなどもおぼえけれ、わざと深からで、花蝶につけたる便りごとは、心ねたうもてないたる、なかなか心立つやうにもあり。またさて忘れぬるは、何の咎かはあらむ。<BR>⏎
<P>⏎
 ものの便りばかりのなほざりごとに、口疾う心得たるも、さらでありぬべかりける、後の難とありぬべきわざなり。すべて女のものづつみせず、心のままに、もののあはれも知り顔つくり、をかしきことをも見知らむなむ、その積もりあぢきなかるべきを、宮、大将は、おほなおほななほざりごとをうち出でたまふべきにもあらず、またあまりもののほど知らぬやうならむも、御ありさまに違へり。<BR>⏎
<P>⏎
127-128 我にて思ひしにも、あな情けな、恨めしうもと、その折にこそ、無心なるにや、もしはめざましかるべき際はけやけうなどもおぼえけれ、わざと深からで、花蝶につけたる便りごとは、心ねたうもてないたる、なかなか心立つやうにもあり。またさて忘れぬるは、何の咎かはあらむ。<BR>⏎
 ものの便りばかりのなほざりごとに、口疾う心得たるも、さらでありぬべかりける、後の難とありぬべきわざなり。すべて女のものづつみせず、心のままに、もののあはれも知り顔つくり、をかしきことをも見知らむなむ、その積もりあぢきなかるべきを、宮、大将は、おほなおほななほざりごとをうち出でたまふべきにもあらず、またあまりもののほど知らぬやうならむも、御ありさまに違へり。<BR>⏎
d1209<P>⏎
cd2:1210-211 など聞こえたまへば、君はうち背きておはする、側目いとをかしげなり。撫子の細長に、このころの花の色なる御小袿、あはひ気近う今めきて、もてなしなどもさはいへど、田舎びたまへりし名残こそ、ただありに、おほどかなる方にのみは見えたまひけれ、人の<A HREF="#k09">ありさまをも</A><A NAME="t09">見</A>知りたまふままに、いとさまよう、なよびかに、化粧なども、心してもてつけたまへれば、いとど飽かぬところなく、はなやかにうつくしげなり。他人と見なさむは、いと口惜しかべう思さる。<BR>⏎
<P>⏎
130 など聞こえたまへば、君はうち背きておはする、側目いとをかしげなり。撫子の細長に、このころの花の色なる御小袿、あはひ気近う今めきて、もてなしなどもさはいへど、田舎びたまへりし名残こそ、ただありに、おほどかなる方にのみは見えたまひけれ、人の<A HREF="#k09">ありさまをも</A><A NAME="t09">見</A>知りたまふままに、いとさまよう、なよびかに、化粧なども、心してもてつけたまへれば、いとど飽かぬところなく、はなやかにうつくしげなり。他人と見なさむは、いと口惜しかべう思さる。<BR>⏎
text24212 <A NAME="in24">[第四段 右近の感想]</A><BR>131 
d1213<P>⏎
d1215<P>⏎
cd2:1216-217 「さらに人の御消息などは、聞こえ伝ふることはべらず。先々も知ろしめし御覧じたる三つ四つは、引き返し、はしたなめきこえむもいかがとて、御文ばかり取り入れなどしはべるめれど、御返りはさらに。聞こえさせたまふ折ばかりなむ。それをだに、苦しいことに思いたる」<BR>⏎
<P>⏎
133 「さらに人の御消息などは、聞こえ伝ふることはべらず。先々も知ろしめし御覧じたる三つ四つは、引き返し、はしたなめきこえむもいかがとて、御文ばかり取り入れなどしはべるめれど、御返りはさらに。聞こえさせたまふ折ばかりなむ。それをだに、苦しいことに思いたる」<BR>⏎
d1219<P>⏎
cd6:3220-225 「さてこの若やかに結ぼほれたるは誰がぞ。いといたう書いたるけしきかな」<BR>⏎
<P>⏎
 とほほ笑みて御覧ずれば、<BR>⏎
<P>⏎
 「かれは執念うとどめてまかりにけるにこそ。内の大殿の中将の、このさぶらふ<A HREF="#k10">みるこをぞ</A><A NAME="t10">、</A>もとより見知りたまへりける、伝へにてはべりける。また見入るる人もはべらざりしにこそ」<BR>⏎
<P>⏎
135-137 「さてこの若やかに結ぼほれたるは誰がぞ。いといたう書いたるけしきかな」<BR>⏎
 とほほ笑みて御覧ずれば、<BR>⏎
 「かれは執念うとどめてまかりにけるにこそ。内の大殿の中将の、このさぶらふ<A HREF="#k10">みるこをぞ</A><A NAME="t10">、</A>もとより見知りたまへりける、伝へにてはべりける。また見入るる人もはべらざりしにこそ」<BR>⏎
d1227<P>⏎
d1229<P>⏎
cd2:1230-231 などとみにもうち置きたまはず。<BR>⏎
<P>⏎
140 などとみにもうち置きたまはず。<BR>⏎
text24232 <A NAME="in25">[第五段 源氏、求婚者たちを批評]</A><BR>141 
d1233<P>⏎
d1235<P>⏎
c1236 宮は、独りものしたまふやうなれど、人柄いといたうあだめいて、通ひたまふ所あまた聞こえ、召人とか憎げなる名のりする人どもなむ、数あまた聞こゆる。<BR>⏎
143 宮は、独りものしたまふやうなれど、人柄いといたうあだめいて、通ひたまふ所あまた聞こえ、召人とか憎げなる名のりする人どもなむ、数あまた聞こゆる。<BR>⏎
d1238<P>⏎
d1240<P>⏎
cd4:2241-244 かうざまのことは、親などにも、さはやかに、わが思ふさまとて、語り出でがたきことなれど、さばかりの御齢にもあらず。今は、などか何ごとをも御心に分いたまはざらむ。まろを昔ざまになずらへて、母君と思ひないたまへ。御心に飽かざらむことは、心苦しく」<BR>⏎
<P>⏎
 などいとまめやかにて聞こえたまへば、苦しうて、御応へ聞こえむともおぼえたまはず。いと若々しきもうたておぼえて、<BR>⏎
<P>⏎
146-147 かうざまのことは、親などにも、さはやかに、わが思ふさまとて、語り出でがたきことなれど、さばかりの御齢にもあらず。今は、などか何ごとをも御心に分いたまはざらむ。まろを昔ざまになずらへて、母君と思ひないたまへ。御心に飽かざらむことは、心苦しく」<BR>⏎
 などいとまめやかにて聞こえたまへば、苦しうて、御応へ聞こえむともおぼえたまはず。いと若々しきもうたておぼえて、<BR>⏎
d1246<P>⏎
cd2:1247-248 と聞こえたまふさまのいとおいらかなれば、げにと思いて、<BR>⏎
<P>⏎
149 と聞こえたまふさまのいとおいらかなれば、げにと思いて、<BR>⏎
d1250<P>⏎
cd2:1251-252 などうち語らひたまふ。思すさまのことは、まばゆければ、えうち出でたまはず。けしきある言葉は時々混ぜたまへど、見知らぬさまなれば、すずろにうち嘆かれて渡りたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
151 などうち語らひたまふ。思すさまのことは、まばゆければ、えうち出でたまはず。けしきある言葉は時々混ぜたまへど、見知らぬさまなれば、すずろにうち嘆かれて渡りたまふ。<BR>⏎
text24253 <H4>第三章 玉鬘の物語 夏の雨と養父の恋慕の物語</H4>152 
text24254 <A NAME="in31">[第一段 源氏、玉鬘と和歌を贈答]</A><BR>153 
d1255<P>⏎
d1257<P>⏎
cd2:1258-259 「ませのうちに根深く植ゑし竹の子の<BR>⏎
  おのが世々にや生ひわかるべき<BR>⏎
155 「ませのうちに根深く植ゑし竹の子の<BR>  おのが世々にや生ひわかるべき<BR>⏎
d1261<P>⏎
cd4:2262-265 と御簾を引き上げて聞こえたまへば、ゐざり出でて、<BR>⏎
<P>⏎
 「今さらにいかならむ世か若竹の<BR>⏎
  生ひ始めけむ根をば尋ねむ<BR>⏎
157-158 と御簾を引き上げて聞こえたまへば、ゐざり出でて、<BR>⏎
 「今さらにいかならむ世か若竹の<BR>  生ひ始めけむ根をば尋ねむ<BR>⏎
d1267<P>⏎
c1268 と聞こえたまふを、いとあはれと思しけり。さるは心のうちにはさも思はずかし。いかならむ折聞こえ出でむとすらむと、心もとなくあはれなれど、この大臣の御心ばへのいとありがたきを、<BR>⏎
160 と聞こえたまふを、いとあはれと思しけり。さるは心のうちにはさも思はずかし。いかならむ折聞こえ出でむとすらむと、心もとなくあはれなれど、この大臣の御心ばへのいとありがたきを、<BR>⏎
cd2:1270-271 と昔物語を見たまふにも、やうやう人のありさま、世の中のあるやうを見知りたまへば、いとつつましう、心と知られたてまつらむことはかたかるべう、思す。<BR>⏎
<P>⏎
162 と昔物語を見たまふにも、やうやう人のありさま、世の中のあるやうを見知りたまへば、いとつつましう、心と知られたてまつらむことはかたかるべう、思す。<BR>⏎
text24272 <A NAME="in32">[第二段 源氏、紫の上に玉鬘を語る]</A><BR>163 
d1273<P>⏎
d1275<P>⏎
d1277<P>⏎
cd2:1278-279 などほめたまふ。ただにしも思すまじき御心ざまを見知りたまへれば、思し寄りて、<BR>⏎
<P>⏎
166 などほめたまふ。ただにしも思すまじき御心ざまを見知りたまへれば、思し寄りて、<BR>⏎
d1281<P>⏎
d1283<P>⏎
cd2:1284-285 「など頼もしげなくやはあるべき」<BR>⏎
<P>⏎
169 「など頼もしげなくやはあるべき」<BR>⏎
d1287<P>⏎
cd4:2288-291 「いでやわれにても、また忍びがたう、もの思はしき折々ありし御心ざまの、思ひ出でらるるふしぶしなくやは」<BR>⏎
<P>⏎
 とほほ笑みて聞こえたまへば、「あな心疾」とおぼいて、<BR>⏎
<P>⏎
171-172 「いでやわれにても、また忍びがたう、もの思はしき折々ありし御心ざまの、思ひ出でらるるふしぶしなくやは」<BR>⏎
 とほほ笑みて聞こえたまへば、「あな心疾」とおぼいて、<BR>⏎
c1293 とてわづらはしければ、のたまひさして、心のうちに、「人のかう推し量りたまふにも、いかがはあべからむ」と思し乱れ、かつはひがひがしうけしからぬ我が心のほども、思ひ知られたまうけり。<BR>⏎
174 とてわづらはしければ、のたまひさして、心のうちに、「人のかう推し量りたまふにも、いかがはあべからむ」と思し乱れ、かつはひがひがしうけしからぬ我が心のほども、思ひ知られたまうけり。<BR>⏎
d1295<P>⏎
text24296 <A NAME="in33">[第三段 源氏、玉鬘を訪問し恋情を訴える]</A><BR>176 
d1297<P>⏎
cd2:1300-301 とうち誦じたまうて、まづこの姫君の御さまの、<A HREF="#k12">匂ひやかげさ</A><A NAME="t12">を</A>思し出でられて、例の、忍びやかに渡りたまへり。<BR>⏎
<P>⏎
179 とうち誦じたまうて、まづこの姫君の御さまの、<A HREF="#k12">匂ひやかげさ</A><A NAME="t12">を</A>思し出でられて、例の、忍びやかに渡りたまへり。<BR>⏎
d1303<P>⏎
d1305<P>⏎
cd4:2306-309 とて涙ぐみたまへり。箱の蓋なる御果物の中に、橘のあるをまさぐりて、<BR>⏎
<P>⏎
 「<A HREF="#no9">橘の薫りし袖に</A><A NAME="te9">よ</A>そふれば<BR>⏎
  変はれる身とも思ほえぬかな<BR>⏎
182-183 とて涙ぐみたまへり。箱の蓋なる御果物の中に、橘のあるをまさぐりて、<BR>⏎
 「<A HREF="#no9">橘の薫りし袖に</A><A NAME="te9">よ</A>そふれば<BR>  変はれる身とも思ほえぬかな<BR>⏎
cd5:2311-315<P> とて御手をとらへたまへれば、女、かやうにもならひたまはざりつるを、いとうたておぼゆれど、<A HREF="#k13">おほどか</A><A NAME="t13">な</A>るさまにてものしたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
 「<A HREF="#no10">袖の香をよそふる</A><A NAME="te10">か</A>らに橘の<BR>⏎
  身さへはかなくなりもこそすれ」<BR>⏎
<P>⏎
185-186 とて御手をとらへたまへれば、女、かやうにもならひたまはざりつるを、いとうたておぼゆれど、<A HREF="#k13">おほどか</A><A NAME="t13">な</A>るさまにてものしたまふ。<BR>⏎
 「<A HREF="#no10">袖の香をよそふる</A><A NAME="te10">か</A>らに橘の<BR>  身さへはかなくなりもこそすれ」<BR>⏎
d1318<P>⏎
cd2:1319-320 「何かかく疎ましとは思いたる。いとよくも隠して、人に咎めらるべくもあらぬ心のほどぞよ。さりげなくてをもて隠したまへ。浅くも思ひきこえさせぬ心ざしに、また添ふべければ、世にたぐひあるまじき心地なむするを、この訪づれきこゆる人びとには、思し落とすべくやはある。いとかう深き心ある人は、世にありがたかるべきわざなれば、うしろめたくのみこそ」<BR>⏎
<P>⏎
189 「何かかく疎ましとは思いたる。いとよくも隠して、人に咎めらるべくもあらぬ心のほどぞよ。さりげなくてをもて隠したまへ。浅くも思ひきこえさせぬ心ざしに、また添ふべければ、世にたぐひあるまじき心地なむするを、この訪づれきこゆる人びとには、思し落とすべくやはある。いとかう深き心ある人は、世にありがたかるべきわざなれば、うしろめたくのみこそ」<BR>⏎
d1322<P>⏎
text24323 <A NAME="in34">[第四段 源氏、自制して帰る]</A><BR>191 
d1324<P>⏎
d1326<P>⏎
d1328<P>⏎
d1330<P>⏎
d1332<P>⏎
cd2:1333-334 とてあはれげになつかしう聞こえたまふこと多かり。ましてかやうなるけはひは、ただ昔の心地して、いみじうあはれなり。<BR>⏎
<P>⏎
196 とてあはれげになつかしう聞こえたまふこと多かり。ましてかやうなるけはひは、ただ昔の心地して、いみじうあはれなり。<BR>⏎
d1336<P>⏎
d1338<P>⏎
cd2:1339-340 といとこまかに聞こえたまへど、我にもあらぬさまして、いといと憂しと思いたれば、<BR>⏎
<P>⏎
199 といとこまかに聞こえたまへど、我にもあらぬさまして、いといと憂しと思いたれば、<BR>⏎
d1342<P>⏎
d1344<P>⏎
cd4:2345-348 「ゆめけしきなくてを」<BR>⏎
<P>⏎
 とて出でたまひぬ。<BR>⏎
<P>⏎
202-203 「ゆめけしきなくてを」<BR>⏎
 とて出でたまひぬ。<BR>⏎
d1350<P>⏎
d1352<P>⏎
cd2:1353-354 など兵部なども、忍びて聞こゆるにつけて、いとど思はずに、心づきなき御心のありさまを、疎ましう思ひ果てたまふにも、身ぞ心憂かりける。<BR>⏎
<P>⏎
206 など兵部なども、忍びて聞こゆるにつけて、いとど思はずに、心づきなき御心のありさまを、疎ましう思ひ果てたまふにも、身ぞ心憂かりける。<BR>⏎
text24355 <A NAME="in35">[第五段 苦悩する玉鬘]</A><BR>207 
d1356<P>⏎
d1358<P>⏎
d1360<P>⏎
cd3:1361-363  <A HREF="#no12">うちとけて寝も見ぬものを若草の</A><A NAME="te12"><BR>⏎
  こ</A>とあり顔にむすぼほるらむ<BR>⏎
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210  <A HREF="#no12">うちとけて寝も見ぬものを若草の</A><A NAME="te12"><BR>  こ</A>とあり顔にむすぼほるらむ<BR>⏎
d1365<P>⏎
cd2:1366-367 とさすがに親がりたる御言葉も、いと憎しと見たまひて、御返り事聞こえざらむも、人目あやしければ、ふくよかなる陸奥紙に、ただ<BR>⏎
<P>⏎
212 とさすがに親がりたる御言葉も、いと憎しと見たまひて、御返り事聞こえざらむも、人目あやしければ、ふくよかなる陸奥紙に、ただ<BR>⏎
d1369<P>⏎
d1371<P>⏎
d1373<P>⏎
c1374 かくてことの心知る人は少なうて、疎きも親しきも、むげの親ざまに思ひきこえたるを、<BR>⏎
216 かくてことの心知る人は少なうて、疎きも親しきも、むげの親ざまに思ひきこえたるを、<BR>⏎
cd2:1376-377 とよろづにやすげなう思し乱る。<BR>⏎
<P>⏎
218 とよろづにやすげなう思し乱る。<BR>⏎
d2379-380
<P>⏎
text24381 <a name="in41">【出典】<BR>220 
c1382</a><A NAME="no1">出典1</A> 繞廊紫藤架 夾砌紅薬欄(白氏文集 秦中吟・傷宅-七七)<A HREF="#te1">(戻)</A><BR>⏎
221<A NAME="no1">出典1</A> 繞廊紫藤架 夾砌紅薬欄(白氏文集 秦中吟・傷宅-七七)<A HREF="#te1">(戻)</A><BR>⏎
d1396
text24397<p> <a name="in42">【校訂】<BR>235 
c1399</a><A NAME="k01">校訂1</A> 花の--花(花/+の)<A HREF="#t01">(戻)</A><BR>⏎
237<A NAME="k01">校訂1</A> 花の--花(花/+の)<A HREF="#t01">(戻)</A><BR>⏎
d1412</p>⏎
d1419</p>⏎
i0260
diffsrc/original/text25.htmlsrc/modified/text25.html
cd2:18-9<body background="wallppr063.gif">⏎
First updated 9/20/1996(ver.1-1)<BR>⏎
8<BODY>⏎
cd3:210-12Last updated 9/21/2010(ver.2-3)<BR>⏎
渋谷栄一校訂(C)<BR>⏎
<P
>⏎
9-10<ADDRESS>Last updated 9/21/2010(ver.2-3)<BR>⏎
渋谷栄一校訂(C)</ADDRESS>⏎
d114<P>⏎
d116<P>⏎
d144<P>⏎
d168<P>⏎
d171<P>⏎
text2572 <H4>第一章 玉鬘の物語 蛍の光によって姿を見られる</H4>65 
text2573 <A NAME="in11">[第一段 玉鬘、養父の恋に悩む]</A><BR>66 
d174<P>⏎
cd2:176-77<P> 対の姫君こそ、いとほしく、思ひのほかなる思ひ添ひて、いかにせむと思し乱るめれ。かの監が憂かりしさまにはなずらふべきけはひならねど、かかる筋に、かけても人の思ひ寄りきこゆべきことならねば、心ひとつに思しつつ、「様ことに疎まし」と思ひきこえたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
68 対の姫君こそ、いとほしく、思ひのほかなる思ひ添ひて、いかにせむと思し乱るめれ。かの監が憂かりしさまにはなずらふべきけはひならねど、かかる筋に、かけても人の思ひ寄りきこゆべきことならねば、心ひとつに思しつつ、「様ことに疎まし」と思ひきこえたまふ。<BR>⏎
d179<P>⏎
d181<P>⏎
d183<P>⏎
text2584 <A NAME="in12">[第二段 兵部卿宮、六条院に来訪]</A><BR>72 
d185<P>⏎
d187<P>⏎
d189<P>⏎
cd2:190-91 と聞こえたまへるを、殿御覧じて、<BR>⏎
<P>⏎
75 と聞こえたまへるを、殿御覧じて、<BR>⏎
d193<P>⏎
cd4:294-97 とて教へて書かせたてまつりたまへど、いとどうたておぼえたまへば、「乱り心地悪し」とて、聞こえたまはず。<BR>⏎
<P>⏎
 人びとも、ことにやむごとなく寄せ重きなども、をさをさなし。ただ母君の御叔父なりける、宰相ばかりの人の娘にて、心ばせなど口惜しからぬが、世に衰へ残りたるを、尋ねとりたまへる、宰相の君とて、手などもよろしく書き、おほかたも大人びたる人なれば、さるべき折々の御返りなど書かせたまへば、召し出でて、言葉などのたまひて書かせたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
77-78 とて教へて書かせたてまつりたまへど、いとどうたておぼえたまへば、「乱り心地悪し」とて、聞こえたまはず。<BR>⏎
 人びとも、ことにやむごとなく寄せ重きなども、をさをさなし。ただ母君の御叔父なりける、宰相ばかりの人の娘にて、心ばせなど口惜しからぬが、世に衰へ残りたるを、尋ねとりたまへる、宰相の君とて、手などもよろしく書き、おほかたも大人びたる人なれば、さるべき折々の御返りなど書かせたまへば、召し出でて、言葉などのたまひて書かせたまふ。<BR>⏎
d1100<P>⏎
d1103<P>⏎
d1105<P>⏎
text25106 <A NAME="in13">[第三段 玉鬘、夕闇時に母屋の端に出る]</A><BR>84 
d1107<P>⏎
d1109<P>⏎
d1111<P>⏎
d1113<P>⏎
d1115<P>⏎
cd2:1116-117 など諌めきこえたまへど、いとわりなくて、ことづけてもはひ入りたまひぬべき御心ばへなれば、とざまかうざまにわびしければ、すべり出でて、母屋の際なる御几帳のもとに、かたはら臥したまへる。<BR>⏎
<P>⏎
89 など諌めきこえたまへど、いとわりなくて、ことづけてもはひ入りたまひぬべき御心ばへなれば、とざまかうざまにわびしければ、すべり出でて、母屋の際なる御几帳のもとに、かたはら臥したまへる。<BR>⏎
text25118 <A NAME="in14">[第四段 源氏、宮に蛍を放って玉鬘の姿を見せる]</A><BR>90 
d1119<P>⏎
d1121<P>⏎
d1123<P>⏎
d1125<P>⏎
d1127<P>⏎
c1128 とかまへありきたまふなりけり。まことのわが姫君をば、かくしも、もて騷ぎたまはじ、うたてある御心なりけり。<BR>⏎
95 とかまへありきたまふなりけり。まことのわが姫君をば、かくしも、もて騷ぎたまはじ、うたてある御心なりけり。<BR>⏎
d1130<P>⏎
text25131 <A NAME="in15">[第五段 兵部卿宮、玉鬘にますます執心す]</A><BR>97 
d1132<P>⏎
d1134<P>⏎
cd4:2135-138 ほどもなく紛らはして隠しつ。されどほのかなる光、艶なることのつまにもしつべく見ゆ。ほのかなれど、そびやかに臥したまへりつる様体のをかしかりつるを、飽かず思して、げにこのこと御心にしみにけり。<BR>⏎
<P>⏎
 「鳴く声も聞こえぬ虫の思ひだに<BR>⏎
  人の消つには消ゆるものかは<BR>⏎
99-100 ほどもなく紛らはして隠しつ。されどほのかなる光、艶なることのつまにもしつべく見ゆ。ほのかなれど、そびやかに臥したまへりつる様体のをかしかりつるを、飽かず思して、げにこのこと御心にしみにけり。<BR>⏎
 「鳴く声も聞こえぬ虫の思ひだに<BR>  人の消つには消ゆるものかは<BR>⏎
d1140<P>⏎
d1142<P>⏎
cd5:2143-147 「声はせで身をのみ焦がす蛍こそ<BR>⏎
  言ふよりまさる思ひなるらめ」<BR>⏎
<P>⏎
 などはかなく聞こえなして、御みづからは引き入りたまひにければ、いとはるかにもてなしたまふ愁はしさを、いみじく怨みきこえたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
103-104 「声はせで身をのみ焦がす蛍こそ<BR>  言ふよりまさる思ひなるらめ」<BR>⏎
 などはかなく聞こえなして、御みづからは引き入りたまひにければ、いとはるかにもてなしたまふ愁はしさを、いみじく怨みきこえたまふ。<BR>⏎
d1149<P>⏎
d1151<P>⏎
text25152 <A NAME="in16">[第六段 源氏、玉鬘への恋慕の情を自制す]</A><BR>107 
d1153<P>⏎
d1155<P>⏎
d1157<P>⏎
c2158-159 と起き臥し思しなやむ。さるは「まことにゆかしげなきさまにはもてなし果てじ」と、大臣は思しけり。なほさる御心癖なれば、中宮なども、いとうるはしくや思ひきこえたまへる、ことに触れつつ、ただならず<A HREF="#k04">聞こえ</A><A NAME="t04">動</A>かしなどしたまへど、やむごとなき方の、およびなくわづらはしさに、おり立ちあらはし聞こえ寄りたまはぬを、この君は、人の御さまも、気近く今めきたるに、おのづから思ひ忍びがたきに、折々、人見たてまつりつけば疑ひ負ひぬべき御もてなしなどは、うち交じるわざなれど、ありがたく思し返しつつ、さすがなる御仲なりけり。<BR>⏎
<P>⏎
110-111 と起き臥し思しなやむ。<BR>⏎
 
さるは「まことにゆかしげなきさまにはもてなし果てじ」と、大臣は思しけり。なほさる御心癖なれば、中宮なども、いとうるはしくや思ひきこえたまへる、ことに触れつつ、ただならず<A HREF="#k04">聞こえ</A><A NAME="t04">動</A>かしなどしたまへど、やむごとなき方の、およびなくわづらはしさに、おり立ちあらはし聞こえ寄りたまはぬを、この君は、人の御さまも、気近く今めきたるに、おのづから思ひ忍びがたきに、折々、人見たてまつりつけば疑ひ負ひぬべき御もてなしなどは、うち交じるわざなれど、ありがたく思し返しつつ、さすがなる御仲なりけり。<BR>⏎
text25160 <H4>第二章 光る源氏の物語 夏の町の物語</H4>112 
text25161 <A NAME="in21">[第一段 五月五日端午の節句、源氏、玉鬘を訪問]</A><BR>113 
d1162<P>⏎
d1164<P>⏎
d1166<P>⏎
cd2:1167-168 など活けみ殺しみ戒めおはする御さま、尽きせず若くきよげに見えたまふ。艶も色もこぼるばかりなる御衣に、直衣はかなく重なれるあはひも、いづこに加はれるきよらにかあらむ、この世の人の染め出だしたると見えず、常の色も変へぬ文目も、今日はめづらかに、をかしくおぼゆる薫りなども、「思ふことなくは、をかしかりぬべき御ありさまかな」と姫君思す。<BR>⏎
<P>⏎
116 など活けみ殺しみ戒めおはする御さま、尽きせず若くきよげに見えたまふ。艶も色もこぼるばかりなる御衣に、直衣はかなく重なれるあはひも、いづこに加はれるきよらにかあらむ、この世の人の染め出だしたると見えず、常の色も変へぬ文目も、今日はめづらかに、をかしくおぼゆる薫りなども、「思ふことなくは、をかしかりぬべき御ありさまかな」と姫君思す。<BR>⏎
d1170<P>⏎
cd3:1171-173 「今日さへや引く人もなき水隠れに<BR>⏎
  生ふる菖蒲の根のみ泣かれむ」<BR>⏎
<P>⏎
118 「今日さへや引く人もなき水隠れに<BR>  生ふる菖蒲の根のみ泣かれむ」<BR>⏎
d1175<P>⏎
cd2:1176-177 「あらはれていとど浅くも見ゆるかな<BR>⏎
  菖蒲もわかず泣かれける根の<BR>⏎
120 「あらはれていとど浅くも見ゆるかな<BR>  菖蒲もわかず泣かれける根の<BR>⏎
d1179<P>⏎
cd2:1180-181 とばかりほのかにぞあめる。「手を今すこしゆゑづけたらば」と、宮は好ましき御心に、いささか飽かぬことと見たまひけむかし。<BR>⏎
<P>⏎
122 とばかりほのかにぞあめる。「手を今すこしゆゑづけたらば」と、宮は好ましき御心に、いささか飽かぬことと見たまひけむかし。<BR>⏎
d1183<P>⏎
text25184 <A NAME="in22">[第二段 六条院馬場殿の騎射]</A><BR>124 
d1185<P>⏎
d1187<P>⏎
d1189<P>⏎
d1192<P>⏎
d1194<P>⏎
d1196<P>⏎
c1197 対の御方よりも、童女など、物見に渡り来て、廊の戸口に御簾青やかに掛けわたして、今めきたる裾濃の御几帳ども立てわたし、童下仕へなどさまよふ。菖蒲襲の衵、二藍の羅の汗衫着たる童女ぞ、西の対のなめる。<BR>⏎
131 対の御方よりも、童女など、物見に渡り来て、廊の戸口に御簾青やかに掛けわたして、今めきたる裾濃の御几帳ども立てわたし、童下仕へなどさまよふ。菖蒲襲の衵、二藍の羅の汗衫着たる童女ぞ、西の対のなめる。<BR>⏎
d1199<P>⏎
d1201<P>⏎
d1203<P>⏎
d1206<P>⏎
text25207 <A NAME="in23">[第三段 源氏、花散里のもとに泊まる]</A><BR>137 
d1208<P>⏎
d1210<P>⏎
cd2:1211-212 「兵部卿宮の、人よりはこよなくものしたまふかな。容貌などはすぐれねど、用意けしきなどよしあり、愛敬づきたる君なり。忍びて見たまひつや。よしといへど、なほこそあれ」<BR>⏎
<P>⏎
139 「兵部卿宮の、人よりはこよなくものしたまふかな。容貌などはすぐれねど、用意けしきなどよしあり、愛敬づきたる君なり。忍びて見たまひつや。よしといへど、なほこそあれ」<BR>⏎
d1214<P>⏎
d1216<P>⏎
d1218<P>⏎
cd2:1221-222 と見たまへど、言に表はしてものたまはず。<BR>⏎
<P>⏎
145 と見たまへど、言に表はしてものたまはず。<BR>⏎
d1224<P>⏎
cd3:1225-227 「その<A HREF="#no5">駒もすさめぬ草</A><A NAME="te5">と</A>名に立てる<BR>⏎
  汀の菖蒲今日や引きつる」<BR>⏎
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147 「その<A HREF="#no5">駒もすさめぬ草</A><A NAME="te5">と</A>名に立てる<BR>  汀の菖蒲今日や引きつる」<BR>⏎
d1229<P>⏎
cd3:1230-232 「鳰鳥に影をならぶる<A HREF="#no6">若駒</A><A NAME="te6">は</A><BR>⏎
  いつか菖蒲に引き別るべき」<BR>⏎
<P>⏎
149 「鳰鳥に影をならぶる<A HREF="#no6">若駒</A><A NAME="te6">は</A><BR>  いつか菖蒲に引き別るべき」<BR>⏎
d1234<P>⏎
d1236<P>⏎
d1239<P>⏎
text25240 <H4>第三章 光る源氏の物語 光る源氏の物語論</H4>154 
text25241 <A NAME="in31">[第一段 玉鬘ら六条院の女性たち、物語に熱中]</A><BR>155 
d1242<P>⏎
d1244<P>⏎
d1246<P>⏎
d1248<P>⏎
d1250<P>⏎
cd8:4251-258 「あなむつかし。女こそ、ものうるさがらず、人に欺かれむと生まれたるものなれ。ここらのなかに真はいと少なからむを、かつ知る知る、かかるすずろごとに心を移し、はかられたまひて、暑かはしき<A HREF="#no7">五月雨の、髪の乱るる</A><A NAME="te7">も</A>知らで、書きたまふよ」<BR>⏎
<P>⏎
 とて笑ひたまふものから、また<BR>⏎
<P
>⏎
 「かかる世の古言ならでは、げに何をか紛るることなきつれづれを慰めまし。さてもこの偽りどものなかに、げにさもあらむとあはれを見せ、つきづきしく続けたる、はたはかなしごとと知りながら、いたづらに心動き、らうたげなる姫君のもの思へる見るに、かた心つくかし。<BR>⏎
<P>⏎
 またいとあるまじきことかなと見る見る、おどろおどろしくとりなしけるが目おどろきて、静かにまた聞くたびぞ、憎けれど、ふとをかしき節あらはなるなどもあるべし。<BR>⏎
<P>⏎
160-163 「あなむつかし。女こそ、ものうるさがらず、人に欺かれむと生まれたるものなれ。ここらのなかに真はいと少なからむを、かつ知る知る、かかるすずろごとに心を移し、はかられたまひて、暑かはしき<A HREF="#no7">五月雨の、髪の乱るる</A><A NAME="te7">も</A>知らで、書きたまふよ」<BR>⏎
 とて笑ひたまふものから、また<BR>⏎
 「かかる世の古言ならでは、げに何をか紛るることなきつれづれを慰めまし。さてもこの偽りどものなかに、げにさもあらむとあはれを見せ、つきづきしく続けたる、はたはかなしごとと知りながら、いたづらに心動き、らうたげなる姫君のもの思へる見るに、かた心つくかし。<BR>⏎
 またいとあるまじきことかなと見る見る、おどろおどろしくとりなしけるが目おどろきて、静かにまた聞くたびぞ、憎けれど、ふとをかしき節あらはなるなどもあるべし。<BR>⏎
d1260<P>⏎
d1262<P>⏎
cd4:2263-266 「げに偽り馴れたる人や、さまざまにさも汲みはべらむ。ただ<A HREF="#k07">いと</A><A NAME="t07">真</A>のこととこそ思うたまへられけれ」<BR>⏎
<P>⏎
 とて硯をおしやりたまへば、<BR>⏎
<P>⏎
166-167 「げに偽り馴れたる人や、さまざまにさも汲みはべらむ。ただ<A HREF="#k07">いと</A><A NAME="t07">真</A>のこととこそ思うたまへられけれ」<BR>⏎
 とて硯をおしやりたまへば、<BR>⏎
d1268<P>⏎
cd2:1269-270 とて笑ひたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
169 とて笑ひたまふ。<BR>⏎
text25271 <A NAME="in32">[第二段 源氏、玉鬘に物語について論じる]</A><BR>170 
d1272<P>⏎
d1274<P>⏎
d1276<P>⏎
c1277 仏の、いとうるはしき心にて説きおきたまへる御法も、方便といふことありて、悟りなきものは、ここかしこ違ふ疑ひを置きつべくなむ。『方等経』の中に多かれど、言ひもてゆけば、ひとつ旨にありて、菩提と煩悩との隔たりなむ、この人の善き悪しきばかりのことは変はりける。<BR>⏎
173 仏の、いとうるはしき心にて説きおきたまへる御法も、方便といふことありて、悟りなきものは、ここかしこ違ふ疑ひを置きつべくなむ。『方等経』の中に多かれど、言ひもてゆけば、ひとつ旨にありて、菩提と煩悩との隔たりなむ、この人の善き悪しきばかりのことは変はりける。<BR>⏎
d1279<P>⏎
cd6:3280-285 と物語をいとわざとのことにのたまひなしつ。<BR>⏎
<P>⏎
 「さてかかる古言の中に、まろがやうに実法なる痴者の物語はありや。いみじく気遠きものの姫君も、御心のやうにつれなく、<A HREF="#k08">そらおぼめき</A><A NAME="t08">し</A>たるは世にあらじな。いざたぐひなき物語にして、世に伝へさせむ」<BR>⏎
<P>⏎
 とさし寄りて聞こえたまへば、顔を引き入れて、<BR>⏎
<P>⏎
175-177 と物語をいとわざとのことにのたまひなしつ。<BR>⏎
 「さてかかる古言の中に、まろがやうに実法なる痴者の物語はありや。いみじく気遠きものの姫君も、御心のやうにつれなく、<A HREF="#k08">そらおぼめき</A><A NAME="t08">し</A>たるは世にあらじな。いざたぐひなき物語にして、世に伝へさせむ」<BR>⏎
 とさし寄りて聞こえたまへば、顔を引き入れて、<BR>⏎
d1287<P>⏎
d1289<P>⏎
cd7:3290-296 「珍かにやおぼえたまふ。げにこそまたなき心地すれ」<BR>⏎
<P>⏎
 とて寄りゐたまへるさま、いとあざれたり。<BR>⏎
<P>⏎
 「思ひあまり昔の跡を訪ぬれど<BR>⏎
  親に背ける子ぞたぐひなき<BR>⏎
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180-182 「珍かにやおぼえたまふ。げにこそまたなき心地すれ」<BR>⏎
 とて寄りゐたまへるさま、いとあざれたり。<BR>⏎
 「思ひあまり昔の跡を訪ぬれど<BR>  親に背ける子ぞたぐひなき<BR>⏎
d1298<P>⏎
d1300<P>⏎
cd3:1301-303 「古き跡を訪ぬれどげになかりけり<BR>⏎
  この世にかかる親の心は」<BR>⏎
<P>⏎
185 「古き跡を訪ぬれどげになかりけり<BR>  この世にかかる親の心は」<BR>⏎
cd2:1305-306 かくしていかなるべき御ありさまならむ。<BR>⏎
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187 かくしていかなるべき御ありさまならむ。<BR>⏎
text25307 <A NAME="in33">[第三段 源氏、紫の上に物語について述べる]</A><BR>188 
d1308<P>⏎
d1312<P>⏎
d1314<P>⏎
cd2:1315-316 と聞こえ出でたまへり。げにたぐひ多からぬことどもは、好み集めたまへりけりかし。<BR>⏎
<P>⏎
193 と聞こえ出でたまへり。げにたぐひ多からぬことどもは、好み集めたまへりけりかし。<BR>⏎
d1318<P>⏎
d1320<P>⏎
d1322<P>⏎
d1324<P>⏎
d1326<P>⏎
d1328<P>⏎
cd4:3329-332 げにさいへど、その人のけはひよと見えたるは、かひあり、おもだたしかし。言葉の限りまばゆくほめおきたるに、し出でたるわざ、言ひ出でたることのなかに、げにと見え聞こゆることなき、いと見劣りするわざなり。<BR>⏎
 すべて善からぬ人に、いかで人ほめさせじ」<BR>⏎
<P>⏎
 などただ「この姫君の、点つかれたまふまじく」と、よろづに思しのたまふ。<BR>⏎
200-202 げにさいへど、その人のけはひよと見えたるは、かひあり、おもだたしかし。言葉の限りまばゆくほめおきたるに、し出でたるわざ、言ひ出でたることのなかに、げにと見え聞こゆることなき、いと見劣りするわざなり。<BR>⏎
 すべて善からぬ人に、いかで人ほめさせじ」<BR>⏎
 などただ「この姫君の、点つかれたまふまじく」と、よろづに思しのたまふ。<BR>⏎
d1334<P>⏎
text25335 <A NAME="in34">[第四段 源氏、子息夕霧を思う]</A><BR>204 
d1336<P>⏎
d1338<P>⏎
d1340<P>⏎
cd2:1341-342 とて南面の御簾の内は許したまへり。台盤所、女房のなかは許したまはず。あまたおはせぬ御仲らひにて、いとやむごとなくかしづききこえたまへり。<BR>⏎
<P>⏎
207 とて南面の御簾の内は許したまへり。台盤所、女房のなかは許したまはず。あまたおはせぬ御仲らひにて、いとやむごとなくかしづききこえたまへり。<BR>⏎
d1344<P>⏎
d1346<P>⏎
d1348<P>⏎
d1350<P>⏎
d1352<P>⏎
cd2:1353-354 とつれなく応へてぞものしたまひける。昔の父大臣たちの御仲らひに似たり。<BR>⏎
<P>⏎
213 とつれなく応へてぞものしたまひける。昔の父大臣たちの御仲らひに似たり。<BR>⏎
text25355 <A NAME="in35">[第五段 内大臣、娘たちを思う]</A><BR>214 
d1356<P>⏎
d1358<P>⏎
d1360<P>⏎
d1362<P>⏎
cd6:3363-368 とあはれに思しわたる。君達にも、<BR>⏎
<P>⏎
 「もしさやうなる名のりする人あらば、耳とどめよ。心のすさびにまかせて、さるまじきことも多かりしなかに、これはいとしかおしなべての際にも思はざりし人の、はかなきもの倦むじをして、かく少なかりけるもののくさはひ一つを、失ひたることの口惜しきこと」<BR>⏎
<P>⏎
 と常にのたまひ出づ。中ごろなどはさしもあらず、うち忘れたまひけるを、人の、さまざまにつけて、女子かしづきたまへるたぐひどもに、わが思ほすにしもかなはぬが、いと心憂く、本意なく思すなりけり。<BR>⏎
<P>⏎
218-220 とあはれに思しわたる。君達にも、<BR>⏎
 「もしさやうなる名のりする人あらば、耳とどめよ。心のすさびにまかせて、さるまじきことも多かりしなかに、これはいとしかおしなべての際にも思はざりし人の、はかなきもの倦むじをして、かく少なかりけるもののくさはひ一つを、失ひたることの口惜しきこと」<BR>⏎
 と常にのたまひ出づ。中ごろなどはさしもあらず、うち忘れたまひけるを、人の、さまざまにつけて、女子かしづきたまへるたぐひどもに、わが思ほすにしもかなはぬが、いと心憂く、本意なく思すなりけり。<BR>⏎
d1370<P>⏎
cd2:1371-372 「もし年ごろ御心に知られたまはぬ御子を、人のものになして、聞こしめし出づることや」<BR>⏎
<P>⏎
222 「もし年ごろ御心に知られたまはぬ御子を、人のものになして、聞こしめし出づることや」<BR>⏎
d1374<P>⏎
d1376<P>⏎
cd3:1377-379 などこのころぞ、思しのたまふべかめる。<BR>⏎

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225 などこのころぞ、思しのたまふべかめる。<BR>⏎
text25380 <a name="in41">【出典】<BR>226 
c1381</a><A NAME="no1">出典1</A> 神代より忌むといふなる五月雨のこなたに人を見るよしもがな(信明集-五六)侘びつつも頼む月日はあるものを五月雨にさへなりにけるかな(花鳥余情所引-出典未詳)<A HREF="#te1">(戻)</A><BR>⏎
227<A NAME="no1">出典1</A> 神代より忌むといふなる五月雨のこなたに人を見るよしもがな(信明集-五六)侘びつつも頼む月日はあるものを五月雨にさへなりにけるかな(花鳥余情所引-出典未詳)<A HREF="#te1">(戻)</A><BR>⏎
d1388
text25389<p> <a name="in42">【校訂】<BR>234 
c1391</a><A NAME="k01">校訂1</A> 思ふには--おもふに(に/+は)<A HREF="#t01">(戻)</A><BR>⏎
236<A NAME="k01">校訂1</A> 思ふには--おもふに(に/+は)<A HREF="#t01">(戻)</A><BR>⏎
d1403</p>⏎
d1409</p>⏎
i0257
diffsrc/original/text26.htmlsrc/modified/text26.html
cd2:18-9<body background="wallppr063.gif">⏎
First updated 9/20/1996(ver.1-1)<BR>⏎
8<BODY>⏎
cd3:210-12Last updated 9/21/2010(ver.2-3)<BR>⏎
渋谷栄一校訂(C)<BR>⏎
<P
>⏎
9-10<ADDRESS>Last updated 9/21/2010(ver.2-3)<BR>⏎
渋谷栄一校訂(C)</ADDRESS>⏎
d114<P>⏎
d116<P>⏎
d144<P>⏎
d165<P>⏎
d168<P>⏎
text2669 <H4>第一章 玉鬘の物語 養父と養女の禁忌の恋物語</H4>62 
text2670 <A NAME="in11">[第一段 六条院釣殿の納涼]</A><BR>63 
d171<P>⏎
d173<P>⏎
d175<P>⏎
cd2:176-77 とて大御酒参り、氷水召して、水飯など、とりどりにさうどきつつ食ふ。<BR>⏎
<P>⏎
66 とて大御酒参り、氷水召して、水飯など、とりどりにさうどきつつ食ふ。<BR>⏎
d179<P>⏎
d181<P>⏎
cd2:182-83 とて寄り臥したまへり。<BR>⏎
<P>⏎
69 とて寄り臥したまへり。<BR>⏎
d185<P>⏎
d187<P>⏎
text2688 <A NAME="in12">[第二段 近江君の噂]</A><BR>72 
d189<P>⏎
d191<P>⏎
cd4:292-95 と弁少将に問ひたまへば、<BR>⏎
<P>⏎
 「ことことしく、さまで言ひなすべきことにもはべらざりけるを。この春のころほひ、夢語りしたまひけるを、ほの聞き伝へはべりける女の、『われなむかこつべきことある』と、名のり出ではべりけるを、中将の朝臣なむ聞きつけて、『まことにさやうに触ればひぬべきしるしやある』と、尋ねとぶらひはべりける。詳しきさまは、え知りはべらず。げにこのころ珍しき世語りになむ、人びともしはべるなる。かやうのことにぞ、人のため、おのづから家損なるわざにはべりけれ」<BR>⏎
<P>⏎
74-75 と弁少将に問ひたまへば、<BR>⏎
 「ことことしく、さまで言ひなすべきことにもはべらざりけるを。この春のころほひ、夢語りしたまひけるを、ほの聞き伝へはべりける女の、『われなむかこつべきことある』と、名のり出ではべりけるを、中将の朝臣なむ聞きつけて、『まことにさやうに触ればひぬべきしるしやある』と、尋ねとぶらひはべりける。詳しきさまは、え知りはべらず。げにこのころ珍しき世語りになむ、人びともしはべるなる。かやうのことにぞ、人のため、おのづから家損なるわざにはべりけれ」<BR>⏎
d197<P>⏎
cd4:298-101 「いと多かめる列に、離れたらむ後るる雁を、強ひて尋ねたまふが、ふくつけきぞ。いとともしきに、さやうならむもののくさはひ、<A HREF="#k02">見出で</A><A NAME="t02">ま</A>ほしけれど、名のりももの憂き際とや思ふらむ、さらにこそ聞こえね。さてももて離れたることにはあらじ。らうがはしくとかく紛れたまふめりしほどに、底清く澄まぬ水にやどる月は、曇りなきやうのいかでかあらむ」<BR>⏎
<P>⏎
 とほほ笑みてのたまふ。中将の君も、詳しく聞きたまふことなれば、えしもまめだたず。少将と藤侍従とは、いとからしと思ひたり。<BR>⏎
<P>⏎
77-78 「いと多かめる列に、離れたらむ後るる雁を、強ひて尋ねたまふが、ふくつけきぞ。いとともしきに、さやうならむもののくさはひ、<A HREF="#k02">見出で</A><A NAME="t02">ま</A>ほしけれど、名のりももの憂き際とや思ふらむ、さらにこそ聞こえね。さてももて離れたることにはあらじ。らうがはしくとかく紛れたまふめりしほどに、底清く澄まぬ水にやどる月は、曇りなきやうのいかでかあらむ」<BR>⏎
 とほほ笑みてのたまふ。中将の君も、詳しく聞きたまふことなれば、えしもまめだたず。少将と藤侍従とは、いとからしと思ひたり。<BR>⏎
d1103<P>⏎
cd2:1104-105 と弄じたまふやうなり。かやうのことにてぞ、うはべはいとよき御仲の、昔よりさすがに隙ありける。まいて中将をいたくはしたなめて、わびさせたまふつらさを思しあまりて、「なまねたしとも、漏り聞きたまへかし」と思すなりけり。<BR>⏎
<P>⏎
80 と弄じたまふやうなり。かやうのことにてぞ、うはべはいとよき御仲の、昔よりさすがに隙ありける。まいて中将をいたくはしたなめて、わびさせたまふつらさを思しあまりて、「なまねたしとも、漏り聞きたまへかし」と 思すなりけり。<BR>⏎
d1108<P>⏎
text26109 <A NAME="in13">[第三段 源氏、玉鬘を訪う]</A><BR>83 
d1110<P>⏎
d1112<P>⏎
d1114<P>⏎
cd4:2115-118 とて西の対に渡りたまへば、君達、皆御送りに参りたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
 たそかれ時のおぼおぼしきに、同じ<A HREF="#k04">直衣ども</A><A NAME="t04">な</A>れば、何ともわきまへられぬに、大臣姫君を、<BR>⏎
<P>⏎
86-87 とて西の対に渡りたまへば、君達、皆御送りに参りたまふ。<BR>⏎
 たそかれ時のおぼおぼしきに、同じ<A HREF="#k04">直衣ども</A><A NAME="t04">な</A>れば、何ともわきまへられぬに、大臣姫君を、<BR>⏎
d1120<P>⏎
cd2:1121-122 とて忍びて、<BR>⏎
<P>⏎
89 とて忍びて、<BR>⏎
d1124<P>⏎
d1126<P>⏎
d1128<P>⏎
cd4:2129-132 などささめきつつ聞こえたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
 御前に、乱れがはしき前栽なども植ゑさせたまはず、撫子の色をととのへたる、唐の、大和の、籬いとなつかしく結ひなして、咲き乱れたる夕ばえ、いみじく見ゆ。皆立ち寄りて、心のままにも折り取らぬを、飽かず思ひつつやすらふ。<BR>⏎
<P>⏎
93-94 などささめきつつ聞こえたまふ。<BR>⏎
 御前に、乱れがはしき前栽なども植ゑさせたまはず、撫子の色をととのへたる、唐の、大和の、籬いとなつかしく結ひなして、咲き乱れたる夕ばえ、いみじく見ゆ。皆立ち寄りて、心のままにも折り取らぬを、飽かず思ひつつやすらふ。<BR>⏎
d1134<P>⏎
d1137<P>⏎
cd2:1138-139 「中将を厭ひたまふこそ、大臣は本意なけれ。交じりものなくきらきらしかめるなかに、大君だつ筋にて、かたくななりとにや」<BR>⏎
<P>⏎
98 「中将を厭ひたまふこそ、大臣は本意なけれ。交じりものなくきらきらしかめるなかに、大君だつ筋にて、かたくななりとにや」<BR>⏎
d1141<P>⏎
d1143<P>⏎
d1145<P>⏎
cd4:2146-149 「いでその御肴もてはやされむさまは願はしからず。ただ幼きどちの結びおきけむ心も解けず、年月、隔てたまふ心むけのつらきなり。まだ下臈なり、世の聞き耳軽しと思はれば、知らず顔にて、ここに任せたまへらむに、うしろめたくはありなましや」<BR>⏎
<P>⏎
 などうめきたまふ。「さはかかる御心の隔てある御仲なりけり」と聞きたまふにも、親に知られたてまつらむことのいつとなきは、あはれにいぶせく思す。<BR>⏎
<P>⏎
102-103 「いでその御肴もてはやされむさまは願はしからず。ただ幼きどちの結びおきけむ心も解けず、年月、隔てたまふ心むけのつらきなり。まだ下臈なり、世の聞き耳軽しと思はれば、知らず顔にて、ここに任せたまへらむに、うしろめたくはありなましや」<BR>⏎
 などうめきたまふ。「さはかかる御心の隔てある御仲なりけり」と聞きたまふにも、親に知られたてまつらむことのいつとなきは、あはれにいぶせく思す。<BR>⏎
text26150 <A NAME="in14">[第四段 源氏、玉鬘と和琴について語る]</A><BR>104 
d1151<P>⏎
d1153<P>⏎
cd4:2154-157 「なほ気近くて暑かはしや。篝火こそよけれ」<BR>⏎
<P>⏎
 とて人召して、<BR>⏎
<P>⏎
106-107 「なほ気近くて暑かはしや。篝火こそよけれ」<BR>⏎
 とて人召して、<BR>⏎
d1159<P>⏎
d1161<P>⏎
d1163<P>⏎
d1165<P>⏎
d1167<P>⏎
d1169<P>⏎
d1171<P>⏎
cd4:2172-175 「このわたりにて、さりぬべき御遊びの折など、聞きはべりなむや。あやしき山賤などのなかにも、まねぶものあまたはべるなることなれば、おしなべて心やすくやとこそ思ひたまへつれ。さはすぐれたるは、さまことにやはべらむ」<BR>⏎
<P>⏎
 とゆかしげに、切に心に入れて思ひたまへれば、<BR>⏎
<P>⏎
115-116 「このわたりにて、さりぬべき御遊びの折など、聞きはべりなむや。あやしき山賤などのなかにも、まねぶものあまたはべるなることなれば、おしなべて心やすくやとこそ思ひたまへつれ。さはすぐれたるは、さまことにやはべらむ」<BR>⏎
 とゆかしげに、切に心に入れて思ひたまへれば、<BR>⏎
d1177<P>⏎
d1180<P>⏎
cd2:1181-182 とて調べすこし弾きたまふ。ことつひ<A HREF="#k06">いと二なく</A><A NAME="t06">、</A>今めかしくをかし。「これにもまされる音や出づらむ」と、親の御ゆかしさたち添ひて、このことにてさへ、「いかならむ世に、さてうちとけ弾きたまはむを聞かむ」など、思ひゐたまへり。<BR>⏎
<P>⏎
120 とて調べすこし弾きたまふ。ことつひ<A HREF="#k06">いと二なく</A><A NAME="t06">、</A>今めかしくをかし。「これにもまされる音や出づらむ」と、親の御ゆかしさたち添ひて、このことにてさへ、「いかならむ世に、さてうちとけ弾きたまはむを聞かむ」など、思ひゐたまへり。<BR>⏎
d1184<P>⏎
cd4:2185-188 「いで弾きたまへ。才は人になむ恥ぢぬ。「想夫恋」ばかりこそ、心のうちに思ひて、紛らはす人もありけめ、おもなくて、かれこれに合はせつるなむよき」<BR>⏎
<P>⏎
 と切に聞こえたまへど、さる田舎の隈にて、ほのかに京人と名のりける、古大君女教へきこえければ、ひがことにもやとつつましくて、手触れたまはず。<BR>⏎
<P>⏎
122-123 「いで弾きたまへ。才は人になむ恥ぢぬ。「想夫恋」ばかりこそ、心のうちに思ひて、紛らはす人もありけめ、おもなくて、かれこれに合はせつるなむよき」<BR>⏎
 と切に聞こえたまへど、さる田舎の隈にて、ほのかに京人と名のりける、古大君女教へきこえければ、ひがことにもやとつつましくて、手触れたまはず。<BR>⏎
d1190<P>⏎
d1192<P>⏎
cd2:1193-194 とてうち傾きたまへるさま、火影にいとうつくしげなり。笑ひたまひて、<BR>⏎
<P>⏎
126 とてうち傾きたまへるさま、火影にいとうつくしげなり。笑ひたまひて、<BR>⏎
d1196<P>⏎
cd2:1197-198 とて押しやりたまふ。いと心やまし。<BR>⏎
<P>⏎
128 とて押しやりたまふ。いと心やまし。<BR>⏎
text26199 <A NAME="in15">[第五段 源氏、玉鬘と和歌を唱和]</A><BR>129 
d1200<P>⏎
d1202<P>⏎
cd7:3203-209 「撫子を飽かでも、この人びとの立ち去りぬるかな。いかで大臣にも、この花園見せたてまつらむ。世もいと常なきをと思ふに、いにしへも、もののついでに語り出でたまへりしも、ただ今のこととぞおぼゆる」<BR>⏎
<P>⏎
 とてすこしのたまひ出でたるにも、いとあはれなり。<BR>⏎
<P>⏎
 「撫子のとこなつかしき色を見ば<BR>⏎
  もとの垣根を人や尋ねむ<BR>⏎
<P>⏎
131-133 「撫子を飽かでも、この人びとの立ち去りぬるかな。いかで大臣にも、この花園見せたてまつらむ。世もいと常なきをと思ふに、いにしへも、もののついでに語り出でたまへりしも、ただ今のこととぞおぼゆる」<BR>⏎
 とてすこしのたまひ出でたるにも、いとあはれなり。<BR>⏎
 「撫子のとこなつかしき色を見ば<BR>  もとの垣根を人や尋ねむ<BR>⏎
d1211<P>⏎
d1213<P>⏎
cd3:1214-216 「山賤の垣ほに生ひし撫子の<BR>⏎
  もとの根ざしを誰れか尋ねむ」<BR>⏎
<P>⏎
136 「山賤の垣ほに生ひし撫子の<BR>  もとの根ざしを誰れか尋ねむ」<BR>⏎
d1218<P>⏎
d1220<P>⏎
d1222<P>⏎
text26223 <A NAME="in16">[第六段 源氏、玉鬘への恋慕に苦悩]</A><BR>140 
d1224<P>⏎
d1226<P>⏎
cd5:3227-231 「なぞかくあいなきわざをして、やすからぬもの思ひをすらむ。さ思はじとて、心のままにもあらば、世の人のそしり言はむことの軽々しさ、わがためをばさるものにて、この人の御ためいとほしかるべし。限りなき心ざしといふとも、春の上の御おぼえに並ぶばかりは、わが心ながらえあるまじく」思し知りたり。「さてその劣りの列にては、何ばかりかはあらむ。わが身ひとつこそ、人よりは異なれ、見む人のあまたが中に、かかづらはむ末にては、何のおぼえかはたけからむ。異なることなき納言の際の、二心なくて思はむには、劣りぬべきことぞ」<BR>⏎
<P> とみづから思し知るに、いといとほしくて、「宮、大将などにや許してまし。さてもて離れ、いざなひ取りては、思ひも絶えなむや。いふかひなきにて、さもしてむ」と思す折もあり。<BR>⏎
<P>⏎
 されど渡りたまひて、御容貌を見たまひ、今は御琴教へたてまつりたまふにさへことづけて、近やかに馴れ寄りたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
142-144 「なぞかくあいなきわざをして、やすからぬもの思ひをすらむ。さ思はじとて、心のままにもあらば、世の人のそしり言はむことの軽々しさ、わがためをばさるものにて、この人の御ためいとほしかるべし。限りなき心ざしといふとも、春の上の御おぼえに並ぶばかりは、わが心ながらえあるまじく」思し知りたり。「さてその劣りの列にては、何ばかりかはあらむ。わが身ひとつこそ、人よりは異なれ、見む人のあまたが中に、かかづらはむ末にては、何のおぼえかはたけからむ。異なることなき納言の際の、二心なくて思はむには、劣りぬべきことぞ」<BR>⏎
 とみづから思し知るに、いといとほしくて、「宮、大将などにや許してまし。さてもて離れ、いざなひ取りては、思ひも絶えなむや。いふかひなきにて、さもしてむ」と思す折もあり。<BR>⏎
 されど渡りたまひて、御容貌を見たまひ、今は御琴教へたてまつりたまふにさへことづけて、近やかに馴れ寄りたまふ。<BR>⏎
d1233<P>⏎
cd2:1234-235 「さはまたさて、ここながらかしづき据ゑて、さるべき折々に、はかなくうち忍び、ものをも聞こえて慰みなむや。かくまだ世馴れぬほどの、わづらはしさにこそ、心苦しくはありけれ、おのづから<A HREF="#no7">関守強くとも</A><A NAME="te7">、</A>ものの心知りそめ、いとほしき思ひなくて、わが心も<A HREF="#no8">思ひ入りなば</A><A NAME="te8">、</A>しげくとも障はらじかし」と思し寄る、いとけしからぬことなりや。<BR>⏎
<P>⏎
146 「さはまたさて、ここながらかしづき据ゑて、さるべき折々に、はかなくうち忍び、ものをも聞こえて慰みなむや。かくまだ世馴れぬほどの、わづらはしさにこそ、心苦しくはありけれ、おのづから<A HREF="#no7">関守強くとも</A><A NAME="te7">、</A>ものの心知りそめ、いとほしき思ひなくて、わが心も<A HREF="#no8">思ひ入りなば</A><A NAME="te8">、</A>しげくとも障はらじかし」と思し寄る、いとけしからぬことなりや。<BR>⏎
d1237<P>⏎
text26238 <A NAME="in17">[第七段 玉鬘の噂]</A><BR>148 
d1239<P>⏎
d1241<P>⏎
cd2:1242-243 「さかし。<A HREF="#k08">そこに</A><A NAME="t08">こ</A>そは、年ごろ、音にも聞こえぬ山賤の子迎へ取りて、ものめかしたつれ。をさをさ人の上もどきたまはぬ大臣の、このわたりのことは、耳とどめてぞおとしめたまふや。これぞおぼえある心地しける」<BR>⏎
<P>⏎
150 「さかし。<A HREF="#k08">そこに</A><A NAME="t08">こ</A>そは、年ごろ、音にも聞こえぬ山賤の子迎へ取りて、ものめかしたつれ。をさをさ人の上もどきたまはぬ大臣の、このわたりのことは、耳とどめてぞおとしめたまふや。これぞおぼえある心地しける」<BR>⏎
d1245<P>⏎
d1247<P>⏎
d1249<P>⏎
cd4:2250-253 「いでそれは、かの大臣の御女と思ふばかりのおぼえのいといみじきぞ。人の心、皆さこそある世なめれ。かならずさしもすぐれじ。人びとしきほどならば、年ごろ聞こえなまし。<BR>⏎
<P>⏎
 あたら大臣の、塵もつかず、この世には過ぎたまへる御身のおぼえありさまに、おもだたしき腹に、女かしづきて、げに疵なからむと、思ひやりめでたきがものしたまはぬは。<BR>⏎
<P>⏎
154-155 「いでそれは、かの大臣の御女と思ふばかりのおぼえのいといみじきぞ。人の心、皆さこそある世なめれ。かならずさしもすぐれじ。人びとしきほどならば、年ごろ聞こえなまし。<BR>⏎
 あたら大臣の、塵もつかず、この世には過ぎたまへる御身のおぼえありさまに、おもだたしき腹に、女かしづきて、げに疵なからむと、思ひやりめでたきがものしたまはぬは。<BR>⏎
d1255<P>⏎
d1257<P>⏎
cd6:3258-263 と言ひおとしたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
 「さていかが定めらるなる。親王こそまつはし得たまはむ。もとより取り分きて御仲よし、人柄も警策なる御あはひどもならむかし」<BR>⏎
<P>⏎
 などのたまひては、なほ姫君の御こと、飽かず口惜し。「かやうに、心にくくもてなして、いかにしなさむなど、やすからずいぶかしがらせましものを」とねたければ、位さばかりと見ざらむ限りは、許しがたく思すなりけり。<BR>⏎
<P>⏎
158-160 と言ひおとしたまふ。<BR>⏎
 「さていかが定めらるなる。親王こそまつはし得たまはむ。もとより取り分きて御仲よし、人柄も警策なる御あはひどもならむかし」<BR>⏎
 などのたまひては、なほ姫君の御こと、飽かず口惜し。「かやうに、心にくくもてなして、いかにしなさむなど、やすからずいぶかしがらせましものを」とねたければ、位さばかりと見ざらむ限りは、許しがたく思すなりけり。<BR>⏎
d1265<P>⏎
text26266 <A NAME="in18">[第八段 内大臣、雲井雁を訪う]</A><BR>162 
d1267<P>⏎
d1269<P>⏎
d1271<P>⏎
d1273<P>⏎
cd2:1274-275 「<A HREF="#no9">うたた寝はいさめ</A><A NAME="te9">き</A>こゆるものを。などかいとものはかなきさまにては大殿籠もりける。人びとも近くさぶらはで、あやしや。<BR>⏎
<P>⏎
166 「<A HREF="#no9">うたた寝はいさめ</A><A NAME="te9">き</A>こゆるものを。などかいとものはかなきさまにては大殿籠もりける。人びとも近くさぶらはで、あやしや。<BR>⏎
d1277<P>⏎
d1279<P>⏎
d1281<P>⏎
cd2:1282-283 げにさもあることなれど、人として、心にもするわざにも、立ててなびく方は方とあるものなれば、生ひ出でたまふさまあらむかし。この君の人となり、宮仕へに出だし立てたまはむ世のけしきこそ、いとゆかしけれ」<BR>⏎
<P>⏎
170 げにさもあることなれど、人として、心にもするわざにも、立ててなびく方は方とあるものなれば、生ひ出でたまふさまあらむかし。この君の人となり、宮仕へに出だし立てたまはむ世のけしきこそ、いとゆかしけれ」<BR>⏎
d1285<P>⏎
d1287<P>⏎
d1289<P>⏎
cd2:1290-291 などいとらうたしと思ひつつ聞こえたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
174 などいとらうたしと思ひつつ聞こえたまふ。<BR>⏎
d1293<P>⏎
d1295<P>⏎
text26296 <H4>第二章 近江君の物語 娘の処遇に苦慮する内大臣の物語</H4>177 
text26297 <A NAME="in21">[第一段 内大臣、近江君の処遇に苦慮]</A><BR>178 
d1298<P>⏎
d1300<P>⏎
cd2:1301-302 「いかにせむ。さかしらに迎へ率て来て。人かく誹るとて、返し送らむも、いと軽々しく、もの狂ほしきやうなり。かくて籠めおきたれば、まことにかしづくべき心あるかと、人の言ひなすなるもねたし。女御の御方などに交じらはせて、さるをこのものにしないてむ。人のいとかたはなるものに言ひおとすなる容貌、はたいとさ言ふばかりにやはある」<BR>⏎
<P>⏎
180 「いかにせむ。さかしらに迎へ率て来て。人かく誹るとて、返し送らむも、いと軽々しく、もの狂ほしきやうなり。かくて籠めおきたれば、まことにかしづくべき心あるかと、人の言ひなすなるもねたし。女御の御方などに交じらはせて、さるをこのものにしないてむ。人のいとかたはなるものに言ひおとすなる容貌、はたいとさ言ふばかりにやはある」<BR>⏎
d1304<P>⏎
d1306<P>⏎
cd6:3307-312 と笑ひつつ聞こえたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
 「などかいとさことのほかにははべらむ。中将などの、いと二なく思ひはべりけむかね言に足らずといふばかりにこそははべらめ。かくのたまひ騒ぐを、はしたなう思はるるにも、かたへはかかやかしきにや」<BR>⏎
<P>⏎
 といと恥づかしげにて聞こえさせたまふ。この御ありさまは、こまかにをかしげさはなくて、いとあてに澄みたるものの、なつかしきさま添ひて、おもしろき<A HREF="#no10">梅の花の開け</A><A NAME="te10">さ</A>したる朝ぼらけおぼえて、残り多かりげにほほ笑みたまへるぞ、人に異なりける、と見たてまつりたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
183-185 と笑ひつつ聞こえたまふ。<BR>⏎
 「などかいとさことのほかにははべらむ。中将などの、いと二なく思ひはべりけむかね言に足らずといふばかりにこそははべらめ。かくのたまひ騒ぐを、はしたなう思はるるにも、かたへはかかやかしきにや」<BR>⏎
 といと恥づかしげにて聞こえさせたまふ。この御ありさまは、こまかにをかしげさはなくて、いとあてに澄みたるものの、なつかしきさま添ひて、おもしろき<A HREF="#no10">梅の花の開け</A><A NAME="te10">さ</A>したる朝ぼらけおぼえて、残り多かりげにほほ笑みたまへるぞ、人に異なりける、と見たてまつりたまふ。<BR>⏎
d1314<P>⏎
d1316<P>⏎
text26317 <A NAME="in22">[第二段 内大臣、近江君を訪う]</A><BR>188 
d1318<P>⏎
cd2:1319-320 やがてこの御方のたよりに、たたずみおはして、のぞきたまへば、簾高くおし張りて、五節の君とて、されたる若人のあると、双六をぞ打ちたまふ。手をいと切におしもみて、<BR>⏎
<P>⏎
189 やがてこの御方のたよりに、たたずみおはして、のぞきたまへば、簾高くおし張りて、五節の君とて、されたる若人のあると、双六をぞ打ちたまふ。手をいと切におしもみて、<BR>⏎
d1322<P>⏎
cd4:2323-326 とこふ声ぞ、いと舌疾きや。「あなうたて」と思して、御供の人の前駆<A HREF="#k10">追ふをも</A><A NAME="t10">、</A>手かき制したまうて、なほ妻戸の細目なるより、障子の開きあひたるを見入れたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
 この従姉妹も、はたけしきはやれる、<BR>⏎
<P>⏎
191-192 とこふ声ぞ、いと舌疾きや。「あなうたて」と思して、御供の人の前駆<A HREF="#k10">追ふをも</A><A NAME="t10">、</A>手かき制したまうて、なほ妻戸の細目なるより、障子の開きあひたるを見入れたまふ。<BR>⏎
 この従姉妹も、はたけしきはやれる、<BR>⏎
d1328<P>⏎
cd2:1329-330 と筒をひねりて、とみに打ち出でず。<A HREF="#no11">中に思ひは</A><A NAME="te11">あ</A>りやすらむ、いとあさへたるさまどもしたり。<BR>⏎
<P>⏎
194 と筒をひねりて、とみに打ち出でず。<A HREF="#no11">中に思ひは</A><A NAME="te11">あ</A>りやすらむ、いとあさへたるさまどもしたり。<BR>⏎
d1332<P>⏎
d1334<P>⏎
d1336<P>⏎
d1338<P>⏎
d1340<P>⏎
cd2:1341-342 「げに身に近く使ふ人もをさをさなきに、さやうにても見ならしたてまつらむと、かねては思ひしかど、えさしもあるまじきわざなりけり。なべての仕うまつり人こそ、とあるもかかるも、おのづから立ち交らひて、人の耳をも目をも、かならずしもとどめぬものなれば、心やすかべかめれ。それだに、その人の女、かの人の子と知らるる際になれば、親兄弟の面伏せなる類ひ多かめり。まして」<BR>⏎
<P>⏎
200 「げに身に近く使ふ人もをさをさなきに、さやうにても見ならしたてまつらむと、かねては思ひしかど、えさしもあるまじきわざなりけり。なべての仕うまつり人こそ、とあるもかかるも、おのづから立ち交らひて、人の耳をも目をも、かならずしもとどめぬものなれば、心やすかべかめれ。それだに、その人の女、かの人の子と知らるる際になれば、親兄弟の面伏せなる類ひ多かめり。まして」<BR>⏎
d1344<P>⏎
cd2:1345-346 「何か、そはことことしく思ひたまひて交らひはべらばこそ、所狭からめ。大御大壺取りにも、仕うまつりなむ」<BR>⏎
<P>⏎
202 「何か、そはことことしく思ひたまひて交らひはべらばこそ、所狭からめ。大御大壺取りにも、仕うまつりなむ」<BR>⏎
d1348<P>⏎
cd4:2349-352 「似つかはしからぬ役ななり。かくたまさかに会へる親の孝せむの心あらば、このもののたまふ声を、すこしのどめて聞かせたまへ。さらば命も延びなむかし」<BR>⏎
<P>⏎
 とをこめいたまへる大臣にて、ほほ笑みて<A HREF="#k11">のたまふ</A><A NAME="t11">。</A><BR>⏎
<P>⏎
204-205 「似つかはしからぬ役ななり。かくたまさかに会へる親の孝せむの心あらば、このもののたまふ声を、すこしのどめて聞かせたまへ。さらば命も延びなむかし」<BR>⏎
 とをこめいたまへる大臣にて、ほほ笑みて<A HREF="#k11">のたまふ</A><A NAME="t11">。</A><BR>⏎
text26353 <A NAME="in23">[第三段 近江君の性情]</A><BR>206 
d1354<P>⏎
d1356<P>⏎
d1358<P>⏎
cd2:1359-360 「その気近く入り立ちたりけむ大徳こそは、あぢきなかりけれ。ただその罪の報いななり。唖言吃とぞ、大乗誹りたる罪にも、数へたるかし」<BR>⏎
<P>⏎
209 「その気近く入り立ちたりけむ大徳こそは、あぢきなかりけれ。ただその罪の報いななり。唖言吃とぞ、大乗誹りたる罪にも、数へたるかし」<BR>⏎
d1362<P>⏎
d1364<P>⏎
d1366<P>⏎
cd4:2367-370 「いとうれしきことにこそはべるなれ。ただいかでもいかでも、御方々に数まへしろしめされむことをなむ、寝ても覚めても、年ごろ何ごとを思ひたまへつるにもあらず。御許しだにはべらば、水を汲みいただきても、仕うまつりなむ」<BR>⏎
<P>⏎
 といとよげに、今すこしさへづれば、いふかひなしと思して、<BR>⏎
<P>⏎
213-214 「いとうれしきことにこそはべるなれ。ただいかでもいかでも、御方々に数まへしろしめされむことをなむ、寝ても覚めても、年ごろ何ごとを思ひたまへつるにもあらず。御許しだにはべらば、水を汲みいただきても、仕うまつりなむ」<BR>⏎
 といとよげに、今すこしさへづれば、いふかひなしと思して、<BR>⏎
d1372<P>⏎
cd4:2373-376 とをこごとにのたまひなすをも知らず、同じき大臣と聞こゆるなかにも、いときよげにものものしく、はなやかなるさまして、おぼろけの人見えにくき御けしきをも見知らず、<BR>⏎
<P>⏎
 「さていつか女御殿には参りはべらむずる」<BR>⏎
<P>⏎
216-217 とをこごとにのたまひなすをも知らず、同じき大臣と聞こゆるなかにも、いときよげにものものしく、はなやかなるさまして、おぼろけの人見えにくき御けしきをも見知らず、<BR>⏎
 「さていつか女御殿には参りはべらむずる」<BR>⏎
d1378<P>⏎
cd2:1379-380 「よろしき日などやいふべからむ。よしことことしくは何かは。さ思はれば、今日にても」<BR>⏎
<P>⏎
219 「よろしき日などやいふべからむ。よしことことしくは何かは。さ思はれば、今日にても」<BR>⏎
d1382<P>⏎
text26383 <A NAME="in24">[第四段 近江君、血筋を誇りに思う]</A><BR>221 
d1384<P>⏎
cd4:2385-388 よき四位五位たちの、いつききこえて、うち身じろきたまふにも、いといかめしき御勢ひなるを見送りきこえて、<BR>⏎
<P>⏎
 「いであな、めでたのわが親や。かかりける胤ながら、あやしき小家に生ひ出でけること」<BR>⏎
<P>⏎
222-223 よき四位五位たちの、いつききこえて、うち身じろきたまふにも、いといかめしき御勢ひなるを 見送りきこえて、<BR>⏎
 「いであな、めでたのわが親や。かかりける胤ながら、あやしき小家に生ひ出でけること」<BR>⏎
d1390<P>⏎
d1392<P>⏎
d1394<P>⏎
d1396<P>⏎
cd4:2397-400 と腹立ちたまふ顔やう、気近く、愛敬づきて、うちそぼれたるは、さる方にをかしく罪許されたり。<BR>⏎
<P>⏎
 ただいと鄙び、あやしき下人の中に<A HREF="#k13">生ひ</A><A NAME="t13">出</A>でたまへれば、もの言ふさまも知らず。ことなるゆゑなき言葉をも、声のどやかに押ししづめて言ひ出だしたるは、<A HREF="#k14">打ち聞き</A><A NAME="t14">、</A>耳異におぼえ、をかしからぬ歌語りをするも、声づかひつきづきしくて、残り思はせ、本末惜しみたるさまにてうち誦じたるは、深き筋思ひ得ぬほどの打ち聞きには、をかしかなりと、耳もとまるかし。<BR>⏎
<P>⏎
228-229 と腹立ちたまふ顔やう、気近く、愛敬づきて、うちそぼれたるは、さる方にをかしく罪許されたり。<BR>⏎
 ただいと鄙び、あやしき下人の中に<A HREF="#k13">生ひ</A><A NAME="t13">出</A>でたまへれば、もの言ふさまも知らず。ことなるゆゑなき言葉をも、声のどやかに押ししづめて言ひ出だしたるは、<A HREF="#k14">打ち聞き</A><A NAME="t14">、</A>耳異におぼえ、をかしからぬ歌語りをするも、声づかひつきづきしくて、残り思はせ、本末惜しみたるさまにてうち誦じたるは、深き筋思ひ得ぬほどの打ち聞きには、をかしかなりと、耳もとまるかし。<BR>⏎
d1402<P>⏎
d1404<P>⏎
text26405 <A NAME="in25">[第五段 近江君の手紙]</A><BR>232 
d1406<P>⏎
cd2:1407-408 「さて女御殿に参れとのたまひつるを、しぶしぶなるさまならば、ものしくもこそ思せ。夜さりまうでむ。大臣の君、天下に思すとも、この御方々のすげなくしたまはむには、殿のうちには立てりなむはや」<BR>⏎
<P>⏎
233 「さて女御殿に参れとのたまひつるを、しぶしぶなるさまならば、ものしくもこそ思せ。夜さりまうでむ。大臣の君、天下に思すとも、この御方々のすげなくしたまはむには、殿のうちには立てりなむはや」<BR>⏎
d1411<P>⏎
d1413<P>⏎
cd8:4414-421 と点がちにて、裏には、<BR>⏎
<P>⏎
 「まことや、暮にも参り来むと思うたまへ立つは、<A HREF="#no18">厭ふにはゆる</A><A NAME="te18">に</A>や。いでやいでや、<A HREF="#no19">あやしきは水無川</A><A NAME="te19">に</A>を」<BR>⏎
<P>⏎
 とてまた端に、かくぞ<BR>⏎
<P
>⏎
 「草若み常陸の浦のいかが崎<BR>⏎
  いかであひ見む田子の浦波<BR>⏎
237-240 と点がちにて、裏には、<BR>⏎
 「まことや、暮にも参り来むと思うたまへ立つは、<A HREF="#no18">厭ふにはゆる</A><A NAME="te18">に</A>や。いでやいでや、<A HREF="#no19">あやしきは水無川</A><A NAME="te19">に</A>を」<BR>⏎
 とてまた端に、かくぞ<BR>⏎
 「草若み常陸の浦のいかが崎<BR>  いかであひ見む田子の浦波<BR>⏎
d1423<P>⏎
cd2:1424-425 と青き色紙一重ねに、いと草がちに、いかれる手の、その筋とも見えず、ただよひたる書きざまも<A HREF="#k15">下長</A><A NAME="t15">に</A>、わりなくゆゑばめり。行のほど、端ざまに筋交ひて、倒れぬべく見ゆるを、うち笑みつつ見て、さすがにいと細く小さく巻き結びて、撫子の花につけたり。<BR>⏎
<P>⏎
242 と青き色紙一重ねに、いと草がちに、いかれる手の、その筋とも見えず、ただよひたる書きざまも<A HREF="#k15">下長</A><A NAME="t15">に</A>、わりなくゆゑばめり。行のほど、端ざまに筋交ひて、倒れぬべく見ゆるを、うち笑みつつ見て、さすがにいと細く小さく巻き結びて、撫子の花につけたり。<BR>⏎
text26426 <A NAME="in26">[第六段 女御の返事]</A><BR>243 
d1427<P>⏎
d1429<P>⏎
cd2:1430-431 「これ参らせたまへ」<BR>⏎
<P>⏎
245 「これ参らせたまへ」<BR>⏎
d1433<P>⏎
d1435<P>⏎
c1436 とて御文取り入る。大輔の君といふ、持て参りて、引き解きて御覧ぜさす。<BR>⏎
248 とて御文取り入る。大輔の君といふ、持て参りて、引き解きて御覧ぜさす。<BR>⏎
d1438<P>⏎
d1440<P>⏎
cd2:1441-442 とゆかしげに思ひたれば、<BR>⏎
<P>⏎
251 とゆかしげに思ひたれば、<BR>⏎
d1444<P>⏎
cd2:1445-446 とて賜へり。<BR>⏎
<P>⏎
253 とて賜へり。<BR>⏎
d1448<P>⏎
cd2:1449-450 と譲りたまふ。もて出でてこそあらね、若き人は、ものをかしくて、皆うち笑ひぬ。御返り乞へば、<BR>⏎
<P>⏎
255 と譲りたまふ。もて出でてこそあらね、若き人は、ものをかしくて、皆うち笑ひぬ。御返り乞へば、<BR>⏎
d1452<P>⏎
cd2:1453-454 とてただ御文めきて書く。<BR>⏎
<P>⏎
257 とてただ御文めきて書く。<BR>⏎
d1456<P>⏎
cd3:1457-459  常陸なる駿河の海の須磨の浦に<BR>⏎
  波立ち出でよ筥崎の松」<BR>⏎
<P>⏎
259  常陸なる駿河の海の須磨の浦に<BR>  波立ち出でよ筥崎の松」<BR>⏎
d1461<P>⏎
cd4:2462-465 「あなうたて。まことにみづからのにもこそ言ひなせ」<BR>⏎
<P>⏎
 とかたはらいたげに思したれど、<BR>⏎
<P>⏎
261-262 「あなうたて。まことにみづからのにもこそ言ひなせ」<BR>⏎
 とかたはらいたげに思したれど、<BR>⏎
d1467<P>⏎
cd2:1468-469 とておし包みて出だしつ。<BR>⏎
<P>⏎
264 とておし包みて出だしつ。<BR>⏎
d1471<P>⏎
d1473<P>⏎
cd3:1474-476 とていとあまえたる薫物の香を、返す返す薫きしめゐたまへり。紅といふもの、いと赤らかにかいつけて、髪けづりつくろひたまへる、さる方ににぎははしく、愛敬づきたり。御対面のほど、さし過ぐしたることもあらむかし。<BR>⏎

<P>⏎
267 とていとあまえたる薫物の香を、返す返す薫きしめゐたまへり。紅といふもの、いと赤らかにかいつけて、髪けづりつくろひたまへる、さる方ににぎははしく、愛敬づきたり。御対面のほど、さし過ぐしたることもあらむかし。<BR>⏎
text26477 <a name="in31">【出典】<BR>268 
c1478</a><A NAME="no1">出典1</A> かはむしは声も耐へぬに蝉の羽のいとうすき身も苦しげに鳴く(河海抄所引-花山院集)<A HREF="#te1">(戻)</A><BR>⏎
269<A NAME="no1">出典1</A> かはむしは声も耐へぬに蝉の羽のいとうすき身も苦しげに鳴く(河海抄所引-花山院集)<A HREF="#te1">(戻)</A><BR>⏎
d1498
text26499<p> <a name="in32">【校訂】<BR>289 
c1501</a><A NAME="k01">校訂1</A> 尋ね出でて--たつね(ね/+い<朱>)てゝ<A HREF="#t01">(戻)</A><BR>⏎
291<A NAME="k01">校訂1</A> 尋ね出でて--たつね(ね/+い<朱>)てゝ<A HREF="#t01">(戻)</A><BR>⏎
d1517</p>⏎
d1524</p>⏎
i0317
diffsrc/original/text27.htmlsrc/modified/text27.html
cd2:18-9<body background="wallppr063.gif">⏎
First updated 9/20/1996(ver.1-1)<BR>⏎
8<BODY>⏎
cd3:210-12Last updated 12/6/2009(ver.2-2)<BR>⏎
渋谷栄一校訂(C)<BR>⏎
<P
>⏎
9-10<ADDRESS>Last updated 12/6/2009(ver.2-2)<BR>⏎
渋谷栄一校訂(C)</ADDRESS>⏎
d114<P>⏎
d116<P>⏎
d130<P>⏎
d137<P>⏎
d140<P>⏎
text2741 <H4>第一章 玉鬘の物語 養父と養女の禁忌の恋物語</H4>34 
text2742 <A NAME="in11">[第一段 近江君の世間の噂]</A><BR>35 
d143<P>⏎
d145<P>⏎
cd4:246-49 「ともあれかくもあれ、人見るまじくて籠もりゐたらむ女子を、なほざりのかことにても、さばかりにものめかし出でて、かく人に見せ、言ひ伝へらるるこそ、心得ぬことなれ。いと際々しうものしたまふあまりに、深き心をも尋ねずもて出でて、心にもかなはねば、かくはしたなきなるべし。よろづのこと、もてなしからにこそ、なだらかなるものなめれ」<BR>⏎
<P>⏎
 といとほしがりたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
37-38 「ともあれかくもあれ、人見るまじくて籠もりゐたらむ女子を、なほざりのかことにても、さばかりにものめかし出でて、かく人に見せ、言ひ伝へらるるこそ、心得ぬことなれ。いと際々しうものしたまふあまりに、深き心をも尋ねずもて出でて、心にもかなはねば、かくはしたなきなるべし。よろづのこと、もてなしからにこそ、なだらかなるものなめれ」<BR>⏎
 といとほしがりたまふ。<BR>⏎
d151<P>⏎
d153<P>⏎
text2754 <A NAME="in12">[第二段 初秋の夜、源氏、玉鬘と語らう]</A><BR>41 
d155<P>⏎
d157<P>⏎
cd2:158-59 五六日の夕月夜は疾く入りて、すこし雲隠るるけしき、<A HREF="#no2">荻の音もやうやうあはれ</A><A NAME="te2">な</A>るほどになりにけり。御琴を枕にて、もろともに添ひ臥したまへり。かかる類ひあらむやと、うち嘆きがちにて夜更かしたまふも、人の咎めたてまつらむことを思せば、渡りたまひなむとて、御前の篝火のすこし消えがたなるを、御供なる右近の大夫を召して、灯しつけさせたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
43 五六日の夕月夜は疾く入りて、すこし雲隠るるけしき、<A HREF="#no2">荻の音もやうやうあはれ</A><A NAME="te2">な</A>るほどになりにけり。御琴を枕にて、もろともに添ひ臥したまへり。かかる類ひあらむやと、うち嘆きがちにて夜更かしたまふも、人の咎めたてまつらむことを思せば、渡りたまひなむとて、御前の篝火のすこし消えがたなるを、御供なる右近の大夫を召して、灯しつけさせたまふ。<BR>⏎
d161<P>⏎
d163<P>⏎
d165<P>⏎
cd3:166-68 「篝火にたちそふ恋の煙こそ<BR>⏎
  世には絶えせぬ炎なりけれ<BR>⏎
<P>⏎
47 「篝火にたちそふ恋の煙こそ<BR>  世には絶えせぬ炎なりけれ<BR>⏎
d170<P>⏎
d172<P>⏎
cd3:173-75 「行方なき空に消ちてよ篝火の<BR>⏎
  たよりにたぐふ煙とならば<BR>⏎
<P>⏎
50 「行方なき空に消ちてよ篝火の<BR>  たよりにたぐふ煙とならば<BR>⏎
d177<P>⏎
d179<P>⏎
d181<P>⏎
cd2:182-83 とて立ちとまりたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
54 とて立ちとまりたまふ。<BR>⏎
text2784 <A NAME="in13">[第三段 柏木、玉鬘の前で和琴を演奏]</A><BR>55 
d185<P>⏎
d188<P>⏎
d190<P>⏎
cd2:191-92 とて御琴ひき出でて、なつかしきほどに弾きたまふ。源中将は、「盤渉調」にいとおもしろく吹きたり。頭中将、心づかひして出だし立てがたうす。「遅し」とあれば、弁少将、拍子打ち出でて、忍びやかに歌ふ声、鈴虫にまがひたり。二返りばかり歌はせたまひて、御琴は中将に譲らせたまひつ。げにかの父大臣の御爪音に、をさをさ<A HREF="#k01">劣らず</A><A NAME="t01">、</A>はなやかにおもしろし。<BR>⏎
<P>⏎
59 とて御琴ひき出でて、なつかしきほどに弾きたまふ。源中将は、「盤渉調」にいとおもしろく吹きたり。頭中将、心づかひして出だし立てがたうす。「遅し」とあれば、弁少将、拍子打ち出でて、忍びやかに歌ふ声、鈴虫にまがひたり。二返りばかり歌はせたまひて、御琴は中将に譲らせたまひつ。げにかの父大臣の御爪音に、をさをさ<A HREF="#k01">劣らず</A><A NAME="t01">、</A>はなやかにおもしろし。<BR>⏎
d194<P>⏎
d196<P>⏎
d298-99
<P>⏎
text27100 <a name="in21">【出典】<BR>63 
c1101</a><A NAME="no1">出典1</A> わが背子が衣の裾を吹き返しうらめづらしき秋の初風(古今集秋上-一七一 読人しらず)初風の涼しくもあるかわが背子の衣の裏のうらのさびしき(源氏釈所引、出典未詳)<A HREF="#te1">(戻)</A><BR>⏎
64<A NAME="no1">出典1</A> わが背子が衣の裾を吹き返しうらめづらしき秋の初風(古今集秋上-一七一 読人しらず)初風の涼しくもあるかわが背子の衣の裏のうらのさびしき(源氏釈所引、出典未詳)<A HREF="#te1">(戻)</A><BR>⏎
d1105
text27106<p> <a name="in22">【校訂】<BR>68 
cd2:1108-109</a><A NAME="k01">校訂1</A> 劣らず--おと(と/&と=と)らす<A HREF="#t01">(戻)</A><BR>⏎
</p>⏎
70<A NAME="k01">校訂1</A> 劣らず--おと(と/&と=と)らす<A HREF="#t01">(戻)</A><BR>⏎
d1115</p>⏎
i080
diffsrc/original/text28.htmlsrc/modified/text28.html
cd2:18-9<body background="wallppr063.gif">⏎
First updated 9/20/1996(ver.1-1)<BR>⏎
8<BODY>⏎
cd3:210-12Last updated 9/21/2010(ver.2-3)<BR>⏎
渋谷栄一校訂(C)<BR>⏎
<P
>⏎
9-10<ADDRESS>Last updated 9/21/2010(ver.2-3)<BR>⏎
渋谷栄一校訂(C)</ADDRESS>⏎
d114<P>⏎
d116<P>⏎
d142<P>⏎
d166<P>⏎
d169<P>⏎
text2870 <H4>第一章 夕霧の物語 継母垣間見の物語</H4>63 
text2871 <A NAME="in11">[第一段 八月野分の襲来]</A><BR>64 
d172<P>⏎
cd2:173-74 中宮の御前に、秋の花を植ゑさせたまへること、常の年よりも見所多く、色種を尽くして、よしある黒木赤木の籬を結ひまぜつつ、同じき花の枝ざし姿、朝夕露の光も世の常ならず、<A HREF="#no1">玉かとかかやきて</A><A NAME="te1">作</A>りわたせる野辺の色を見るに、はた春の山も忘られて、涼しうおもしろく、心もあくがるるやうなり。<BR>⏎
<P>⏎
65 中宮の御前に、秋の花を植ゑさせたまへること、常の年よりも見所多く、色種を尽くして、よしある黒木赤木の籬を結ひまぜつつ、同じき花の枝ざし姿、朝夕露の光も世の常ならず、<A HREF="#no1">玉かとかかやきて</A><A NAME="te1">作</A>りわたせる野辺の色を見るに、はた春の山も忘られて、涼しうおもしろく、心もあくがるるやうなり。<BR>⏎
d176<P>⏎
d178<P>⏎
cd2:179-80 花どものしをるるを、いとさしも思ひしまぬ人だに、あなわりなと思ひ騒がるるを、まして草むらの露の玉の緒乱るるままに、御心惑ひもしぬべく思したり。<A HREF="#no4">おほふばかりの袖</A><A NAME="te4">は</A>、秋の空にしもこそ欲しげなりけれ。暮れゆくままに、ものも見えず吹きまよはして、いとむくつけければ、御格子など参りぬるに、うしろめたくいみじと、花の上を思し嘆く。<BR>⏎
<P>⏎
68 花どものしをるるを、いとさしも思ひしまぬ人だに、あなわりなと思ひ騒がるるを、まして草むらの露の玉の緒乱るるままに、御心惑ひもしぬべく思したり。<A HREF="#no4">おほふばかりの袖</A><A NAME="te4">は</A>、秋の空にしもこそ欲しげなりけれ。暮れゆくままに、ものも見えず吹きまよはして、いとむくつけければ、御格子など参りぬるに、うしろめたくいみじと、花の上を思し嘆く。<BR>⏎
text2881 <A NAME="in12">[第二段 夕霧、紫の上を垣間見る]</A><BR>69 
d182<P>⏎
d184<P>⏎
d186<P>⏎
d188<P>⏎
d190<P>⏎
c191 「大臣のいと気遠くはるかにもてなしたまへるは、かく見る人ただにはえ思ふまじき御ありさまを、いたり深き御心にて、もしかかることもやと思すなりけり」<BR>⏎
74 「大臣のいと気遠くはるかにもてなしたまへるは、かく見る人ただにはえ思ふまじき御ありさまを、いたり深き御心にて、もしかかることもやと 思すなりけり」<BR>⏎
d193<P>⏎
d195<P>⏎
d197<P>⏎
d199<P>⏎
cd2:1101-102 とて「かの妻戸の開きたりけるよ」と、今ぞ見咎めたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
80 とて「かの妻戸の開きたりけるよ」と、今ぞ見咎めたまふ。<BR>⏎
d1104<P>⏎
text28105 <A NAME="in13">[第三段 夕霧、三条宮邸へ赴く]</A><BR>82 
d1106<P>⏎
d1108<P>⏎
cd4:2109-112 「いといかめしう吹きぬべき風にはべり。艮の方より吹きはべれば、この御前はのどけきなり。馬場の御殿南の釣殿などは、危ふげになむ」<BR>⏎
<P>⏎
 とてとかくこと行なひののしる。<BR>⏎
<P>⏎
84-85 「いといかめしう吹きぬべき風にはべり。艮の方より吹きはべれば、この御前はのどけきなり。馬場の御殿南の釣殿などは、危ふげになむ」<BR>⏎
 とてとかくこと行なひののしる。<BR>⏎
d1114<P>⏎
d1116<P>⏎
d1118<P>⏎
cd4:2119-122 「げにはや、まうでたまひね。老いもていきて、また若うなること、世にあるまじきことなれど、げにさのみこそあれ」<BR>⏎
<P>⏎
 などあはれがりきこえたまひて、<BR>⏎
<P>⏎
89-90 「げにはや、まうでたまひね。老いもていきて、また若うなること、世にあるまじきことなれど、げにさのみこそあれ」<BR>⏎
 などあはれがりきこえたまひて、<BR>⏎
d1124<P>⏎
cd4:2125-128 と御消息聞こえたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
 道すがらいりもみする風なれど、うるはしくものしたまふ君にて、三条宮と六条院とに参りて、御覧ぜられたまはぬ日なし。内裏の御物忌などに、えさらず籠もりたまふべき日より外は、いそがしき公事節会などの、暇いるべく、ことしげきにあはせても、まづこの院に参り、宮よりぞ出でたまひければ、まして今日、かかる空のけしきにより、風のさきにあくがれありきたまふもあはれに見ゆ。<BR>⏎
<P>⏎
92-93 と御消息聞こえたまふ。<BR>⏎
 道すがらいりもみする風なれど、うるはしくものしたまふ君にて、三条宮と六条院とに参りて、御覧ぜられたまはぬ日なし。内裏の御物忌などに、えさらず籠もりたまふべき日より外は、いそがしき公事節会などの、暇いるべく、ことしげきにあはせても、まづこの院に参り、宮よりぞ出でたまひければ、まして今日、かかる空のけしきにより、風のさきにあくがれありきたまふもあはれに見ゆ。<BR>⏎
d1130<P>⏎
d1132<P>⏎
cd2:1133-134 とただわななきにわななきたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
96 とただわななきにわななきたまふ。<BR>⏎
d1136<P>⏎
cd2:1137-138 とかつはのたまふ。そこら所狭かりし御勢ひのしづまりて、この君を頼もし人に思したる、常なき世なり。今もおほかたのおぼえの薄らぎたまふことはなけれど、内の大殿の御けはひは、なかなかすこし疎くぞありける。<BR>⏎
<P>⏎
98 とかつはのたまふ。そこら所狭かりし御勢ひのしづまりて、この君を頼もし人に思したる、常なき世なり。今もおほかたのおぼえの薄らぎたまふことはなけれど、内の大殿の御けはひは、なかなかすこし疎くぞありける。<BR>⏎
d1140<P>⏎
c3141-143 「こはいかにおぼゆる心ぞ。あるまじき思ひもこそ添へ。いと恐ろしきこと」<BR>⏎
 とみづから思ひ紛らはし、異事に思ひ移れど、なほふとおぼえつつ、<BR>⏎
 「来し方行く末、ありがたくもものしたまひけるかな。かかる御仲らひに、いかで東の御方、さるものの数にて立ち並びたまひつらむ。たとしへなかりけりや。あないとほし」<BR>⏎
100-102 「こはいかにおぼゆる心ぞ。あるまじき思ひもこそ添へ。いと恐ろしきこと」<BR>⏎
 とみづから思ひ紛らはし、異事に思ひ移れど、なほふとおぼえつつ、<BR>⏎
 「来し方行く末、ありがたくもものしたまひけるかな。かかる御仲らひに、いかで東の御方、さるものの数にて立ち並びたまひつらむ。たとしへなかりけりや。あないとほし」<BR>⏎
d1145<P>⏎
cd2:1146-147 人柄のいとまめやかなれば、似げなさを思ひ寄らねど、「さやうならむ人をこそ、同じくは、見て明かし暮らさめ。限りあらむ命のほども、今すこしはかならず延びなむかし」と思ひ続けらる。<BR>⏎
<P>⏎
104 人柄のいとまめやかなれば、似げなさを思ひ寄らねど、「さやうならむ人をこそ、同じくは、見て明かし暮らさめ。限りあらむ命のほども、今すこしはかならず延びなむかし」と 思ひ続けらる。<BR>⏎
text28148 <A NAME="in14">[第四段 夕霧、暁方に六条院へ戻る]</A><BR>105 
d1149<P>⏎
d1151<P>⏎
d1153<P>⏎
d1155<P>⏎
d1158<P>⏎
d1160<P>⏎
cd3:2161-163 「何ごとぞや。またわが心に思ひ加はれるよ」と思ひ出づれば、「いと似げなきことなりけり。あなもの狂ほし」<BR>⏎
 ととざまかうざまに思ひつつ、東の御方に、まづまうでたまへれば、懼ぢ極じておはしけるに、とかく聞こえ慰めて、人召して、所々つくろはすべきよしなど言ひおきて、南の御殿に参りたまへれば、まだ御格子も参らず。<BR>⏎
<P>⏎
112-113 「何ごとぞや。またわが心に思ひ加はれるよ」と思ひ出づれば、「いと似げなきことなりけり。あなもの狂ほし」<BR>⏎
 ととざまかうざまに思ひつつ、東の御方に、まづまうでたまへれば、懼ぢ極じておはしけるに、とかく聞こえ慰めて、人召して、所々つくろはすべきよしなど言ひおきて、南の御殿に参りたまへれば、まだ御格子も参らず。<BR>⏎
d1165<P>⏎
d1167<P>⏎
d1169<P>⏎
cd2:1170-171 とて起きたまふなり。何ごとにかあらむ、聞こえたまふ声はせで、大臣うち笑ひたまひて、<BR>⏎
<P>⏎
117 とて起きたまふなり。何ごとにかあらむ、聞こえたまふ声はせで、大臣うち笑ひたまひて、<BR>⏎
d1173<P>⏎
cd2:1174-175 とてとばかり語らひきこえたまふけはひども、いとをかし。女の御いらへは聞こえねど、ほのぼの、かやうに聞こえ戯れたまふ言の葉の趣きに、「ゆるびなき御仲らひかな」と、聞きゐたまへり。<BR>⏎
<P>⏎
119 とてとばかり語らひきこえたまふけはひども、いとをかし。女の御いらへは聞こえねど、ほのぼの、かやうに聞こえ戯れたまふ言の葉の趣きに、「ゆるびなき御仲らひかな」と、聞きゐたまへり。<BR>⏎
text28176 <A NAME="in15">[第五段 源氏、夕霧と語る]</A><BR>120 
d1177<P>⏎
d1179<P>⏎
d1181<P>⏎
d1183<P>⏎
d1185<P>⏎
cd2:1186-187 「今いくばくもおはせじ。まめやかに仕うまつり見えたてまつれ。内大臣は、こまかにしもあるまじうこそ、愁へたまひしか。人柄あやしうはなやかに、男々しき方によりて、親などの御孝をも、いかめしきさまをば立てて、人にも見おどろかさむの心あり、まことにしみて深きところはなき人になむものせられける。さるは心の隈多く、いとかしこき人の、末の世にあまるまで、才類ひなく、うるさながら。人として、かく難なきことはかたかりける」<BR>⏎
<P>⏎
125 「今いくばくもおはせじ。まめやかに仕うまつり見えたてまつれ。内大臣は、こまかにしもあるまじうこそ、愁へたまひしか。人柄あやしうはなやかに、男々しき方によりて、親などの御孝をも、いかめしきさまをば立てて、人にも見おどろかさむの心あり、まことにしみて深きところはなき人になむものせられける。さるは心の隈多く、いとかしこき人の、末の世にあまるまで、才類ひなく、うるさながら。人として、かく難なきことはかたかりける」<BR>⏎
d1189<P>⏎
d1191<P>⏎
cd2:1192-193 とてこの君して、御消息聞こえたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
128 とてこの君して、御消息聞こえたまふ。<BR>⏎
d1195<P>⏎
d1197<P>⏎
text28198 <A NAME="in16">[第六段 夕霧、中宮を見舞う]</A><BR>131 
d1199<P>⏎
cd2:1200-201 中将下りて、中の廊の戸より通りて、参りたまふ。朝ぼらけの容貌、いとめでたくをかしげなり。東の対の南の側に立ちて、御前の方を見やりたまへば、御格子、まだ二間ばかり上げて、ほのかなる朝ぼらけのほどに、御簾巻き上げて人びとゐたり。<BR>⏎
<P>⏎
132 中将下りて、中の廊の戸より通りて、参りたまふ。朝ぼらけの容貌、いとめでたくをかしげなり。東の対の南の側に立ちて、御前の方を見やりたまへば、御格子、まだ二間ばかり上げて、ほのかなる朝ぼらけのほどに、御簾巻き上げて 人びとゐたり。<BR>⏎
d1203<P>⏎
cd6:3204-209 童女下ろさせたまひて、虫の籠どもに露飼はせたまふなりけり。紫苑、撫子、濃き薄き衵どもに、女郎花の汗衫などやうの、時にあひたるさまにて、四五人連れて、ここかしこの草むらに寄りて、色々の籠どもを持てさまよひ、撫子などの、いとあはれげなる枝ども取り持て参る、霧のまよひは、いと艶にぞ見えける。<BR>⏎
<P>⏎
 吹き来る追風は、紫苑ことごとに匂ふ空も、香のかをりも、触ればひたまへる御けはひにやと、いと思ひやりめでたく、心懸想せられて、立ち出でにくけれど、忍びやかにうちおとなひて、歩み出でたまへるに、人びとけざやかにおどろき顔にはあらねど、皆すべり入りぬ。<BR>⏎
<P>⏎
 御参りのほどなど、童なりしに、入り立ち馴れたまへる、女房なども、いとけうとくはあらず。御消息啓せさせたまひて、宰相の君内侍などけはひすれば、私事も忍びやかに語らひたまふ。これはた、さいへど、気高く住みたるけはひありさまを見るにも、さまざまにもの思ひ出でらる。<BR>⏎
<P>⏎
134-136 童女下ろさせたまひて、虫の籠どもに露飼はせたまふなりけり。紫苑、撫子、濃き薄き衵どもに、女郎花の汗衫などやうの、時にあひたるさまにて、四五人連れて、ここかしこの草むらに寄りて、色々の籠どもを持てさまよひ、撫子などの、いとあはれげなる枝ども取り持て参る、霧のまよひは、いと艶にぞ見えける。<BR>⏎
 吹き来る追風は、紫苑ことごとに匂ふ空も、香のかをりも、触ればひたまへる御けはひにやと、いと思ひやりめでたく、心懸想せられて、立ち出でにくけれど、忍びやかにうちおとなひて、歩み出でたまへるに、人びとけざやかにおどろき顔にはあらねど、皆すべり入りぬ。<BR>⏎
 御参りのほどなど、童なりしに、入り立ち馴れたまへる、女房なども、いとけうとくはあらず。御消息啓せさせたまひて、宰相の君内侍などけはひすれば、私事も忍びやかに語らひたまふ。これはた、さいへど、気高く住みたるけはひありさまを見るにも、さまざまにもの思ひ出でらる。<BR>⏎
text28210 <H4>第二章 光源氏の物語 六条院の女方を見舞う物語</H4>137 
text28211 <A NAME="in21">[第一段 源氏、中宮を見舞う]</A><BR>138 
d1212<P>⏎
d1214<P>⏎
d1216<P>⏎
d1218<P>⏎
cd6:3219-224 「あやしくあえかにおはする宮なり。女どちは、もの恐ろしく思しぬべかりつる夜のさまなれば、げに<A HREF="#k01">おろかなりとも思い</A><A NAME="t01">つ</A>らむ」<BR>⏎
<P>⏎
 とてやがて参りたまふ。御直衣などたてまつるとて、御簾引き上げて入りたまふに、「短き御几帳引き寄せて、はつかに見ゆる御袖口は、さにこそはあらめ」と思ふに、胸つぶつぶと鳴る心地するも、うたてあれば、他ざまに見やりつ。<BR>⏎
<P>⏎
 殿御鏡など見たまひて、忍びて、<BR>⏎
<P>⏎
142-144 「あやしくあえかにおはする宮なり。女どちは、もの恐ろしく思しぬべかりつる夜のさまなれば、げに<A HREF="#k01">おろかなりとも思い</A><A NAME="t01">つ</A>らむ」<BR>⏎
 とてやがて参りたまふ。御直衣などたてまつるとて、御簾引き上げて入りたまふに、「短き御几帳引き寄せて、はつかに見ゆる御袖口は、さにこそはあらめ」と思ふに、胸つぶつぶと鳴る心地するも、うたてあれば、他ざまに見やりつ。<BR>⏎
 殿御鏡など見たまひて、忍びて、<BR>⏎
d1226<P>⏎
cd2:1227-228 とてわが御顔は、古りがたくよしと見たまふべかめり。いといたう心懸想したまひて、<BR>⏎
<P>⏎
146 とてわが御顔は、古りがたくよしと見たまふべかめり。いといたう心懸想したまひて、<BR>⏎
d1230<P>⏎
cd2:1231-232 とて出でたまふに、中将ながめ入りて、とみにもおどろくまじきけしきにてゐたまへるを、心疾き人の御目にはいかが見たまひけむ、立ちかへり、女君に、<BR>⏎
<P>⏎
148 とて出でたまふに、中将ながめ入りて、とみにもおどろくまじきけしきにてゐたまへるを、心疾き人の御目にはいかが見たまひけむ、立ちかへり、女君に、<BR>⏎
d1234<P>⏎
d1236<P>⏎
cd2:1237-238 「いかでかさはあらむ。渡殿の方には、人の音もせざりしものを」<BR>⏎
<P>⏎
151 「いかでかさはあらむ。渡殿の方には、人の音もせざりしものを」<BR>⏎
d1240<P>⏎
cd2:1241-242 「なほあやし」とひとりごちて、渡りたまひぬ。<BR>⏎
<P>⏎
153 「なほあやし」とひとりごちて、渡りたまひぬ。<BR>⏎
d1244<P>⏎
text28245 <A NAME="in22">[第二段 源氏、明石御方を見舞う]</A><BR>155 
d1246<P>⏎
cd2:1247-248 こなたより、やがて北に通りて、明石の御方を見やりたまへば、はかばかしき家司だつ人なども見えず、馴れたる下仕ひどもぞ、草の中にまじりて歩く。童女など、をかしき衵姿うちとけて、心とどめ取り分き植ゑたまふ龍胆朝顔のはひまじれる籬も、みな散り乱れたるを、とかく引き出で尋ぬるなるべし。<BR>⏎
<P>⏎
156 こなたより、やがて北に通りて、明石の御方を見やりたまへば、はかばかしき家司だつ人なども見えず、馴れたる下仕ひどもぞ、草の中にまじりて歩く。童女など、をかしき衵姿うちとけて、心とどめ取り分き植ゑたまふ龍胆朝顔のはひまじれる籬も、みな散り乱れたるを、とかく引き出で尋ぬるなるべし。<BR>⏎
d1250<P>⏎
cd3:1251-253 「おほかたに荻の葉過ぐる風の音も<BR>⏎
  憂き身ひとつにしむ心地して」<BR>⏎
<P>⏎
158 「おほかたに荻の葉過ぐる風の音も<BR>  憂き身ひとつにしむ心地して」<BR>⏎
d1255<P>⏎
text28256 <A NAME="in23">[第三段 源氏、玉鬘を見舞う]</A><BR>160 
d1257<P>⏎
d1259<P>⏎
d1261<P>⏎
d1263<P>⏎
d1265<P>⏎
cd2:1266-267 とむつかりたまへば、いとよくうち笑ひたまひて、<BR>⏎
<P>⏎
165 とむつかりたまへば、いとよくうち笑ひたまひて、<BR>⏎
d1269<P>⏎
d1271<P>⏎
c1272 「げにうち思ひのままに聞こえてけるかな」<BR>⏎
168 「げにうち思ひのままに聞こえてけるかな」<BR>⏎
d1274<P>⏎
text28275 <A NAME="in24">[第四段 夕霧、源氏と玉鬘を垣間見る]</A><BR>170 
d1276<P>⏎
d1278<P>⏎
d1280<P>⏎
d1282<P>⏎
cd6:3283-288 「ことと馴れ馴れしきにこそあめれ。いであなうたて。いかなることにかあらむ。思ひ寄らぬ隈なくおはしける御心にて、もとより見馴れ生ほしたてたまはぬは、かかる御思ひ添ひたまへるなめり。むべなりけりや。あな疎まし」<BR>⏎
<P>⏎
 と思ふ心も恥づかし。「女の<A HREF="#k04">御さま</A><A NAME="t04">、</A>げにはらからといふとも、すこし立ち退きて、異腹ぞかし」など思はむは、「などか心あやまりもせざらむ」とおぼゆ。<BR>⏎
<P>⏎
 昨日見し御けはひには、け劣りたれど、見るに笑まるるさまは、立ちも並びぬべく見ゆる。八重山吹の咲き乱れたる盛りに、露のかかれる夕映えぞ、ふと思ひ出でらるる。折にあはぬよそへどもなれど、なほうちおぼゆるやうよ。花は限りこそあれ、そそけたるしべなどもまじるかし、人の御容貌のよきは、たとへむ方なきものなりけり。<BR>⏎
<P>⏎
174-176 「ことと馴れ馴れしきにこそあめれ。いであなうたて。いかなることにかあらむ。思ひ寄らぬ隈なくおはしける御心にて、もとより見馴れ生ほしたてたまはぬは、かかる御思ひ添ひたまへるなめり。むべなりけりや。あな疎まし」<BR>⏎
 と思ふ心も恥づかし。「女の<A HREF="#k04">御さま</A><A NAME="t04">、</A>げにはらからといふとも、すこし立ち退きて、異腹ぞかし」など思はむは、「などか心あやまりもせざらむ」とおぼゆ。<BR>⏎
 昨日見し御けはひには、け劣りたれど、見るに笑まるるさまは、立ちも並びぬべく見ゆる。八重山吹の咲き乱れたる盛りに、露のかかれる夕映えぞ、ふと思ひ出でらるる。折にあはぬよそへどもなれど、なほうちおぼゆるやうよ。花は限りこそあれ、そそけたるしべなどもまじるかし、人の御容貌のよきは、たとへむ方なきものなりけり。<BR>⏎
d1290<P>⏎
cd3:1291-293 「吹き乱る風のけしきに女郎花<BR>⏎
  しをれしぬべき心地こそすれ」<BR>⏎
<P>⏎
178 「吹き乱る風のけしきに女郎花<BR>  しをれしぬべき心地こそすれ」<BR>⏎
d1296<P>⏎
cd2:1297-298 「下露になびかましかば女郎花<BR>⏎
  荒き風にはしをれざらまし<BR>⏎
181 「下露になびかましかば女郎花<BR>  荒き風にはしをれざらまし<BR>⏎
d1300<P>⏎
cd2:1301-302 などひが耳にやありけむ、聞きよくもあらずぞ。<BR>⏎
<P>⏎
183 などひが耳にやありけむ、聞きよくもあらずぞ。<BR>⏎
text28303 <A NAME="in25">[第五段 源氏、花散里を見舞う]</A><BR>184 
d1304<P>⏎
d1306<P>⏎
d1308<P>⏎
d1310<P>⏎
d1312<P>⏎
d1314<P>⏎
text28315 <H4>第三章 夕霧の物語 幼恋の物語</H4>190 
text28316 <A NAME="in31">[第一段 夕霧、雲井雁に手紙を書く]</A><BR>191 
d1317<P>⏎
d1319<P>⏎
d1321<P>⏎
cd2:1322-323 と御乳母ぞ聞こゆる。<BR>⏎
<P>⏎
194 と御乳母ぞ聞こゆる。<BR>⏎
d1325<P>⏎
d1327<P>⏎
d1329<P>⏎
d1331<P>⏎
d1333<P>⏎
cd2:1334-335 「いなこれはかたはらいたし」<BR>⏎
<P>⏎
200 「いなこれはかたはらいたし」<BR>⏎
d1337<P>⏎
cd5:2338-342 紫の薄様なりけり。墨、心とめておしすり、筆の先うち見つつ、こまやかに書きやすらひたまへる、いとよし。されどあやしく定まりて、憎き口つきこそものしたまへ。<BR>⏎
<P>⏎
 「風騒ぎむら雲まがふ夕べにも<BR>⏎
  忘るる間なく忘られぬ君」<BR>⏎
<P>⏎
202-203 紫の薄様なりけり。墨、心とめておしすり、筆の先うち見つつ、こまやかに書きやすらひたまへる、いとよし。されどあやしく定まりて、憎き口つきこそものしたまへ。<BR>⏎
 「風騒ぎむら雲まがふ夕べにも<BR>  忘るる間なく忘られぬ君」<BR>⏎
d1344<P>⏎
d1346<P>⏎
d1348<P>⏎
cd2:1349-350 などかやうの人びとにも、言少なに見えて、心解くべくももてなさず、いとすくすくしう気高し。<BR>⏎
<P>⏎
207 などかやうの人びとにも、言少なに見えて、心解くべくももてなさず、いとすくすくしう気高し。<BR>⏎
d1352<P>⏎
text28353 <A NAME="in32">[第二段 夕霧、明石姫君を垣間見る]</A><BR>209 
d1354<P>⏎
d1356<P>⏎
d1358<P>⏎
cd2:1359-360 「一昨年ばかりは、たまさかにもほの見たてまつりしに、またこよなく生ひまさりたまふなめりかし。まして盛りいかならむ」と思ふ。「かの見つる先々の、桜山吹といはば、これは藤の花とやいふべからむ。木高き木より咲きかかりて、風になびきたるにほひは、かくぞあるかし」と思ひよそへらる。「かかる人びとを、心にまかせて明け暮れ見たてまつらばや。さもありぬべきほどながら、隔て隔てのけざやかなるこそつらけれ」など思ふに、まめ心も、なまあくがるる心地す。<BR>⏎
<P>⏎
212 「一昨年ばかりは、たまさかにもほの見たてまつりしに、またこよなく生ひまさりたまふなめりかし。まして盛りいかならむ」と思ふ。「かの見つる先々の、桜山吹といはば、これは藤の花とやいふべからむ。木高き木より咲きかかりて、風になびきたるにほひは、かくぞあるかし」と思ひよそへらる。「かかる人びとを、心にまかせて明け暮れ見たてまつらばや。さもありぬべきほどながら、隔て隔てのけざやかなるこそつらけれ」など思ふに、まめ心も、なまあくがるる心地す。<BR>⏎
text28361 <A NAME="in33">[第三段 内大臣、大宮を訪う]</A><BR>213 
d1362<P>⏎
d1364<P>⏎
d1366<P>⏎
cd2:1368-369<P> とてただ泣きに泣きたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
217 とてただ泣きに泣きたまふ。<BR>⏎
d1371<P>⏎
cd2:1372-373 などなほ心解けず思ひおきたるけしきしてのたまへば、心憂くて、切にも聞こえたまはず。そのついでにも、<BR>⏎
<P>⏎
219 などなほ心解けず思ひおきたるけしきしてのたまへば、心憂くて、切にも聞こえたまはず。そのついでにも、<BR>⏎
d1375<P>⏎
cd4:2376-379 と愁へきこえたまひて、笑ひたまふ。宮、<BR>⏎
<P>⏎
 「いであやし。女といふ名はして、さがなかるやうやある」<BR>⏎
<P>⏎
221-222 と愁へきこえたまひて、笑ひたまふ。宮、<BR>⏎
 「いであやし。女といふ名はして、さがなかるやうやある」<BR>⏎
d1381<P>⏎
cd5:2382-386 「それなむ見苦しきことになむはべる。いかで御覧ぜさせむ」<BR>⏎
<P>⏎
 と聞こえたまふとや。<BR>⏎

<P>⏎
224-225 「それなむ見苦しきことになむはべる。いかで御覧ぜさせむ」<BR>⏎
 と聞こえたまふとや。<BR>⏎
text28387 <a name="in41">【出典】<BR>226 
c1388</a><A NAME="no1">出典1</A> 植ゑたてて君がしめゆふ野辺なれば玉とも見よと露や置くらむ(古今六帖一-五六二 伊勢)<A HREF="#te1">(戻)</A><BR>⏎
227<A NAME="no1">出典1</A> 植ゑたてて君がしめゆふ野辺なれば玉とも見よと露や置くらむ(古今六帖一-五六二 伊勢)<A HREF="#te1">(戻)</A><BR>⏎
d1395
text28396<p> <a name="in42">【校訂】<BR>234 
c1398</a><A NAME="k01">校訂1</A> おろかなりとも思い--おろかにし(にし/$なりともおほひ)<A HREF="#t01">(戻)</A><BR>⏎
236<A NAME="k01">校訂1</A> おろかなりとも思い--おろかにし(にし/$なりともおほひ)<A HREF="#t01">(戻)</A><BR>⏎
d1404</p>⏎
d1411</p>⏎
i0252
diffsrc/original/text29.htmlsrc/modified/text29.html
cd2:18-9<body background="wallppr063.gif">⏎
First updated 9/20/1996(ver.1-1)<BR>⏎
8<BODY>⏎
cd3:210-12Last updated 9/21/2010(ver.2-3)<BR>⏎
渋谷栄一校訂(C)<BR>⏎
<P
>⏎
9-10<ADDRESS>Last updated 9/21/2010(ver.2-3)<BR>⏎
渋谷栄一校訂(C)</ADDRESS>⏎
d114<P>⏎
d116<P>⏎
d148<P>⏎
d177<P>⏎
d180<P>⏎
text2981 <H4>第一章 玉鬘の物語 冷泉帝の大原野行幸</H4>74 
text2982 <A NAME="in11">[第一段 大原野行幸]</A><BR>75 
d183<P>⏎
d185<P>⏎
d187<P>⏎
cd2:188-89 行幸といへど、かならずかうしもあらぬを、今日は親王たち、上達部も、皆心ことに、御馬鞍をととのへ、随身、馬副の容貌丈だち、装束を飾りたまうつつ、めづらかにをかし。左右大臣、内大臣、納言より下はた、まして残らず仕うまつりたまへり。青色の袍、葡萄染の下襲を、殿上人五位六位まで着たり。<BR>⏎
<P>⏎
78 行幸といへど、かならずかうしもあらぬを、今日は親王たち、上達部も、皆心ことに、御馬鞍をととのへ、随身、馬副の容貌丈だち、装束を飾りたまうつつ、めづらかにをかし。左右大臣、内大臣、納言より下はた、まして残らず仕うまつりたまへり。青色の袍、葡萄染の下襲を、殿上人五位六位まで着たり。<BR>⏎
d191<P>⏎
d193<P>⏎
text2994 <A NAME="in12">[第二段 玉鬘、行幸を見物]</A><BR>81 
d195<P>⏎
cd2:196-97 西の対の姫君も立ち出でたまへり。そこばく挑み尽くしたまへる人の御容貌ありさまを見たまふに、帝の赤色の御衣たてまつりて、うるはしう動きなき御かたはらめに、なずらひきこゆべき人なし。<BR>⏎
<P>⏎
82 西の対の姫君も立ち出でたまへり。そこばく挑み尽くしたまへる人の御容貌ありさまを見たまふに、帝の赤色の御衣たてまつりて、うるはしう動きなき御かたはらめに、なずらひきこゆべき人なし。<BR>⏎
d199<P>⏎
cd6:3100-105 まして容貌ありや、をかしやなど、若き御達の消えかへり心うつす中少将、何くれの殿上人やうの人は、何にもあらず消えわたれるは、さらに類ひなうおはしますなりけり。源氏の大臣の御顔ざまは、異ものとも見えたまはぬを、思ひなしの今すこしいつかしう、かたじけなくめでたきなり。<BR>⏎
<P>⏎
 さはかかる類ひはおはしがたかりけり。あてなる人は、皆ものきよげにけはひ異なべいものとのみ、大臣、中将などの御にほひに目馴れたまへるを、出で消えどものかたはなるにやあらむ、同じ目鼻とも見えず、口惜しうぞ圧されたるや。<BR>⏎
<P>⏎
 兵部卿宮もおはす。右大将の、さばかり重りかによしめくも、今日のよそひいとなまめきて、やなぐひなど負ひて、仕うまつりたまへり。色黒く鬚がちに見えて、いと心づきなし。いかでかは<A HREF="#k01">女の</A><A NAME="t01">つ</A>くろひたてたる顔の色あひには似たらむ。いとわりなきことを、若き御心地には、見おとしたまうてけり。<BR>⏎
<P>⏎
84-86 まして容貌ありや、をかしやなど、若き御達の消えかへり心うつす中少将、何くれの殿上人やうの人は、何にもあらず消えわたれるは、さらに類ひなうおはしますなりけり。源氏の大臣の御顔ざまは、異ものとも見えたまはぬを、思ひなしの今すこしいつかしう、かたじけなくめでたきなり。<BR>⏎
 さはかかる類ひはおはしがたかりけり。あてなる人は、皆ものきよげにけはひ異なべいものとのみ、大臣、中将などの御にほひに目馴れたまへるを、出で消えどものかたはなるにやあらむ、同じ目鼻とも見えず、口惜しうぞ圧されたるや。<BR>⏎
 兵部卿宮もおはす。右大将の、さばかり重りかによしめくも、今日のよそひいとなまめきて、やなぐひなど負ひて、仕うまつりたまへり。色黒く鬚がちに見えて、いと心づきなし。いかでかは<A HREF="#k01">女の</A><A NAME="t01">つ</A>くろひたてたる顔の色あひには似たらむ。いとわりなきことを、若き御心地には、見おとしたまうてけり。<BR>⏎
d1107<P>⏎
text29108 <A NAME="in13">[第三段 行幸、大原野に到着]</A><BR>88 
d1109<P>⏎
cd2:1110-111 かうて野におはしまし着きて、御輿とどめ、上達部の平張にもの参り、御装束ども直衣狩のよそひなどに改めたまふほどに、六条院より御酒御くだものなどたてまつらせたまへり。今日仕うまつり<A HREF="#k02">たまふべく</A><A NAME="t02">、</A>かねて御けしきありけれど、御物忌のよしを奏せさせたまへりけるなりけり。<BR>⏎
<P>⏎
89 かうて野におはしまし着きて、御輿とどめ、上達部の平張にもの参り、御装束ども直衣狩のよそひなどに改めたまふほどに、六条院より御酒御くだものなどたてまつらせたまへり。今日仕うまつり<A HREF="#k02">たまふべく</A><A NAME="t02">、</A>かねて御けしきありけれど、御物忌のよしを奏せさせたまへりけるなりけり。<BR>⏎
d1113<P>⏎
cd3:1114-116 「雪深き小塩山にたつ雉の<BR>⏎
  古き跡をも今日は尋ねよ」<BR>⏎
<P>⏎
91 「雪深き小塩山にたつ雉の<BR>  古き跡をも今日は尋ねよ」<BR>⏎
d1118<P>⏎
cd5:2119-123 「小塩山深雪積もれる松原に<BR>⏎
  今日ばかりなる跡やなからむ」<BR>⏎
<P>⏎
 とそのころほひ聞きしことの、そばそば思ひ出でらるるは、ひがことにやあらむ。<BR>⏎
<P>⏎
93-94 「小塩山深雪積もれる松原に<BR>  今日ばかりなる跡やなからむ」<BR>⏎
 とそのころほひ聞きしことの、そばそば思ひ出でらるるは、ひがことにやあらむ。<BR>⏎
text29124 <A NAME="in14">[第四段 源氏、玉鬘に宮仕えを勧める]</A><BR>95 
d1125<P>⏎
d1127<P>⏎
d1129<P>⏎
d1131<P>⏎
d1133<P>⏎
d1135<P>⏎
d1137<P>⏎
cd3:1138-140  うち<A HREF="#k04">きらし</A><A NAME="t04">朝</A>ぐもりせし行幸には<BR>⏎
 さやかに空の光やは見し<BR>⏎
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102  うち<A HREF="#k04">きらし</A><A NAME="t04">朝</A>ぐもりせし行幸には<BR>  さやかに空の光やは見し<BR>⏎
d1142<P>⏎
d1144<P>⏎
d1146<P>⏎
d1148<P>⏎
cd6:3149-154 「あなうたて。めでたしと見たてまつるとも、心もて宮仕ひ思ひ立たむこそ、いとさし過ぎたる心ならめ」<BR>⏎
<P>⏎
 とて笑ひたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
 「いでそこにしもぞ、めできこえたまはむ」<BR>⏎
<P>⏎
107-109 「あなうたて。めでたしと見たてまつるとも、心もて宮仕ひ思ひ立たむこそ、いとさし過ぎたる心ならめ」<BR>⏎
 とて笑ひたまふ。<BR>⏎
 「いでそこにしもぞ、めできこえたまはむ」<BR>⏎
d1156<P>⏎
cd6:3157-162 「あかねさす光は空に曇らぬを<BR>⏎
  などて行幸に目をきらしけむ<BR>⏎
 なほ思し立て」<BR>⏎
<P>⏎
 など絶えず勧めたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
111-113 「あかねさす光は空に曇らぬを<BR>  などて行幸に目をきらしけむ<BR>⏎
 なほ思し立て」<BR>⏎
 など絶えず勧めたまふ。<BR>⏎
text29163 <A NAME="in15">[第五段 玉鬘、裳着の準備]</A><BR>114 
d1164<P>⏎
cd4:2165-168 「とてもかうても、まづ御裳着のことをこそは」と思して、その御まうけの御調度の、こまかなるきよらども加へさせたまひ、何くれの儀式を、御心にはいとも<A HREF="#k06">思ほさぬ</A><A NAME="t06">こ</A>とをだに、おのづからよだけくいかめしくなるを、まして「<A HREF="#k07">内の大臣にも</A><A NAME="t07">、</A>やがてこのついでにや知らせたてまつりてまし」と思し寄れば、いと<A HREF="#k08">めでたく</A><A NAME="t08">な</A>む。「年返りて、二月に」と思す。<BR>⏎
<P>⏎
 「女は聞こえ高く、名隠したまふべきほどならぬも、人の御女とて、籠もりおはするほどは、かならずしも氏神の御つとめなど、あらはならぬほどなればこそ、年月はまぎれ過ぐしたまへ、このもし思し寄ることもあらむには、春日の神の御心違ひぬべきも、つひには隠れてやむまじきものから、あぢきなく、わざとがましき後の名まで、うたたあるべし。なほなほしき人の際こそ、今様とては、氏改むることのたはやすきもあれ」など思しめぐらすに、「親子の御契り、絶ゆべきやうなし。同じくは、わが心許してを、知らせたてまつらむ」<BR>⏎
<P>⏎
115-116 「とてもかうても、まづ御裳着のことをこそは」と思して、その御まうけの御調度の、こまかなるきよらども加へさせたまひ、何くれの儀式を、御心にはいとも<A HREF="#k06">思ほさぬ</A><A NAME="t06">こ</A>とをだに、おのづからよだけくいかめしくなるを、まして「<A HREF="#k07">内の大臣にも</A><A NAME="t07">、</A>やがてこのついでにや知らせたてまつりてまし」と思し寄れば、いと<A HREF="#k08">めでたく</A><A NAME="t08">な</A>む。「年返りて、二月に」と思す。<BR>⏎
 「女は聞こえ高く、名隠したまふべきほどならぬも、人の御女とて、籠もりおはするほどは、かならずしも氏神の御つとめなど、あらはならぬほどなればこそ、年月はまぎれ過ぐしたまへ、このもし思し寄ることもあらむには、春日の神の御心違ひぬべきも、つひには隠れてやむまじきものから、あぢきなく、わざとがましき後の名まで、うたたあるべし。なほなほしき人の際こそ、今様とては、氏改むることのたはやすきもあれ」など思しめぐらすに、「親子の御契り、絶ゆべきやうなし。同じくは、わが心許してを、知らせたてまつらむ」<BR>⏎
d1170<P>⏎
d1172<P>⏎
d1174<P>⏎
d1176<P>⏎
text29177 <H4>第二章 光源氏の物語 大宮に玉鬘の事を語る</H4>121 
text29178 <A NAME="in21">[第一段 源氏、三条宮を訪問]</A><BR>122 
d1179<P>⏎
d1181<P>⏎
cd2:1182-183 「けしうはおはしまさざりけるを、なにがしの朝臣の心惑はして、おどろおどろしう嘆ききこえさすめれば、いかやうにものせさせたまふにかとなむ、おぼつかながりきこえさせつる。内裏などにも、ことなるついでなき限りは参らず、朝廷に仕ふる人ともなくて籠もりはべれば、よろづうひうひしうよだけくなりにてはべり。齢など、これよりまさる人、腰堪へぬまで屈まりありく例、昔も今もはべめれど、あやしくおれおれしき本性に、添ふもの憂さになむはべるべき」<BR>⏎
<P>⏎
124 「けしうはおはしまさざりけるを、なにがしの朝臣の心惑はして、おどろおどろしう嘆ききこえさすめれば、いかやうにものせさせたまふにかとなむ、おぼつかながりきこえさせつる。内裏などにも、ことなるついでなき限りは参らず、朝廷に仕ふる人ともなくて籠もりはべれば、よろづうひうひしうよだけくなりにてはべり。齢など、これよりまさる人、腰堪へぬまで屈まりありく例、昔も今もはべめれど、あやしくおれおれしき本性に、添ふもの憂さになむはべるべき」<BR>⏎
d1185<P>⏎
d1187<P>⏎
cd2:1188-189 とただ泣きに泣きて、御声のわななくも、をこがましけれど、さることどもなれば、いとあはれなり。<BR>⏎
<P>⏎
127 とただ泣きに泣きて、御声のわななくも、をこがましけれど、さることどもなれば、いとあはれなり。<BR>⏎
text29190 <A NAME="in22">[第二段 源氏と大宮との対話]</A><BR>128 
d1191<P>⏎
d1193<P>⏎
d1195<P>⏎
d1197<P>⏎
d1199<P>⏎
cd2:1200-201 とこの中将の御ことと思して<A HREF="#k09">のたまへば</A><A NAME="t09">、</A>うち笑ひたまひて、<BR>⏎
<P>⏎
133 とこの中将の御ことと思して<A HREF="#k09">のたまへば</A><A NAME="t09">、</A>うち笑ひたまひて、<BR>⏎
d1203<P>⏎
d1205<P>⏎
d1207<P>⏎
text29208 <A NAME="in23">[第三段 源氏、大宮に玉鬘を語る]</A><BR>137 
d1209<P>⏎
cd8:4210-217 「さるはかの知りたまふべき人をなむ、思ひまがふることはべりて、不意に尋ね取りてはべるを、その折は、さるひがわざとも明かしはべらずありしかば、あながちにことの心を尋ね返さふこともはべらで、たださるものの種の少なきを、かことにても、何かはと思うたまへ許して、をさをさ睦びも見はべらずして、年月はべりつるを、いかでか聞こしめしけむ、内裏に仰せらるるやうなむある。<BR>⏎
<P>⏎
 尚侍、宮仕へする人なくては、かの所のまつりごとしどけなく、女官なども<A HREF="#k11">公事を</A><A NAME="t11">仕</A>うまつるにたづきなく、こと乱るるやうになむありけるを、ただ今主上にさぶらふ古老の典侍二人、またさるべき人びと、さまざまに申さするを、はかばかしう選ばせたまはむ尋ねに、類ふべき人なむなき。<BR>⏎
<P>⏎
 なほ家高う、人のおぼえ軽からで、家のいとなみたてたらぬ人なむ、いにしへよりなり来にける。したたかにかしこきかたの選びにては、その人ならでも、年月の労になりのぼる類ひあれど、しか類ふべきもなしとならば、おほかたのおぼえをだに選らせたまはむとなむ、うちうちに仰せられたりしを、似げなきこととしも、何かは思ひたまはむ。<BR>⏎
<P>⏎
 宮仕へは、さるべき筋にて、上も下も思ひ及び、出で立つこそ心高きことなれ。公様にて、さる所のことをつかさどり、まつりごとのおもぶきをしたため知らむことは、はかばかしからず、あはつけきやうにおぼえたれど、などかまたさしもあらむ。ただわが身のありさまからこそ、よろづのことはべめれと、思ひ弱りはべりしついでになむ。<BR>⏎
<P>⏎
138-141 「さるはかの知りたまふべき人をなむ、思ひまがふることはべりて、不意に尋ね取りてはべるを、その折は、さるひがわざとも明かしはべらずありしかば、あながちにことの心を尋ね返さふこともはべらで、たださるものの種の少なきを、かことにても、何かはと思うたまへ許して、をさをさ睦びも見はべらずして、年月はべりつるを、いかでか聞こしめしけむ、内裏に仰せらるるやうなむある。<BR>⏎
 尚侍、宮仕へする人なくては、かの所のまつりごとしどけなく、女官なども<A HREF="#k11">公事を</A><A NAME="t11">仕</A>うまつるにたづきなく、こと乱るるやうになむありけるを、ただ今主上にさぶらふ古老の典侍二人、またさるべき人びと、さまざまに申さするを、はかばかしう選ばせたまはむ尋ねに、類ふべき人なむなき。<BR>⏎
 なほ家高う、人のおぼえ軽からで、家のいとなみたてたらぬ人なむ、いにしへよりなり来にける。したたかにかしこきかたの選びにては、その人ならでも、年月の労になりのぼる類ひあれど、しか類ふべきもなしとならば、おほかたのおぼえをだに選らせたまはむとなむ、うちうちに仰せられたりしを、似げなきこととしも、何かは思ひたまはむ。<BR>⏎
 宮仕へは、さるべき筋にて、上も下も思ひ及び、出で立つこそ心高きことなれ。公様にて、さる所のことをつかさどり、まつりごとのおもぶきをしたため知らむことは、はかばかしからず、あはつけきやうにおぼえたれど、などかまたさしもあらむ。ただわが身のありさまからこそ、よろづのことはべめれと、思ひ弱りはべりしついでになむ。<BR>⏎
d1219<P>⏎
cd2:1220-221 げに折しも便なう思ひとまりはべるに、よろしうものせさせたまひければ、なほかう思ひおこせるついでにとなむ思うたまふる。さやうに伝へものせさせたまへ」<BR>⏎
<P>⏎
143 げに折しも便なう思ひとまりはべるに、よろしうものせさせたまひければ、なほかう思ひおこせるついでにとなむ思うたまふる。さやうに伝へものせさせたまへ」<BR>⏎
d1223<P>⏎
cd4:2224-227 「いかにいかに、はべりけることにか。かしこには、さまざまにかかる名のりする人を、厭ふことなく拾ひ集めらるめるに、いかなる心にて、かくひき違へかこちきこえらるらむ。この年ごろ、うけたまはりて、なりぬるにや」<BR>⏎
<P>⏎
 と聞こえたまへば、<BR>⏎
<P>⏎
145-146 「いかにいかに、はべりけることにか。かしこには、さまざまにかかる名のりする人を、厭ふことなく拾ひ集めらるめるに、いかなる心にて、かくひき違へかこちきこえらるらむ。この年ごろ、うけたまはりて、なりぬるにや」<BR>⏎
 と聞こえたまへば、<BR>⏎
d1229<P>⏎
cd2:1230-231 と御口かためきこえたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
148 と御口かためきこえたまふ。<BR>⏎
text29232 <A NAME="in24">[第四段 大宮、内大臣を招く]</A><BR>149 
d1233<P>⏎
d1235<P>⏎
d1237<P>⏎
cd2:1238-239 などおどろきたまうて、御子どもの君達、睦ましうさるべきまうち君たち、たてまつれたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
152 などおどろきたまうて、御子どもの君達、睦ましうさるべきまうち君たち、たてまつれたまふ。<BR>⏎
d1241<P>⏎
d1243<P>⏎
d1245<P>⏎
d1247<P>⏎
d1249<P>⏎
cd2:1250-251 「御心をさしあはせてのたまはむこと」と思ひ寄りたまふに、「いとど否びどころなからむが、またなどかさしもあらむ」とやすらはるる、いとけしからぬ御あやにく心なりかし。「されど宮かくのたまひ、大臣も対面すべく待ちおはするにや、かたがたにかたじけなし。参りてこそは、御けしきに従はめ」<BR>⏎
<P>⏎
158 「御心をさしあはせてのたまはむこと」と思ひ寄りたまふに、「いとど否びどころなからむが、またなどかさしもあらむ」とやすらはるる、いとけしからぬ御あやにく心なりかし。「されど宮かくのたまひ、大臣も対面すべく待ちおはするにや、かたがたにかたじけなし。参りてこそは、御けしきに従はめ」<BR>⏎
d1253<P>⏎
text29254 <A NAME="in25">[第五段 内大臣、三条宮邸に参上]</A><BR>160 
d1255<P>⏎
d1257<P>⏎
d1259<P>⏎
d1261<P>⏎
text29262 <A NAME="in26">[第六段 源氏、内大臣と対面]</A><BR>164 
d1263<P>⏎
d1265<P>⏎
d1267<P>⏎
d1269<P>⏎
d1271<P>⏎
cd2:1272-273 などけしきばみたまふに、このことにやと思せば、わづらはしうて、かしこまりたるさまにてものしたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
169 などけしきばみたまふに、このことにやと思せば、わづらはしうて、かしこまりたるさまにてものしたまふ。<BR>⏎
d1275<P>⏎
d1277<P>⏎
d1279<P>⏎
d1281<P>⏎
d1283<P>⏎
d1285<P>⏎
d1287<P>⏎
d1289<P>⏎
text29290 <A NAME="in27">[第七段 源氏、内大臣、三条宮邸を辞去]</A><BR>178 
d1291<P>⏎
d1293<P>⏎
cd5:3294-298 「かく参り来あひては、さらに久しくなりぬる世の古事、思うたまへ出でられ、恋しきことの忍びがたきに、立ち出でむ心地もしはべらず」<BR>⏎
<P>⏎
 とてをさをさ心弱くおはしまさぬ六条殿も、酔ひ泣きにや、うちしほれたまふ。宮はたまいて、姫君の御ことを思し出づるに、ありしにまさる御ありさま、勢ひを見たてまつりたまふに、飽かず悲しくて、とどめがたく、しほしほと泣きたまふ尼衣は、げに心ことなりけり。<BR>⏎
<P> かかるついでなれど、中将の御ことをば、うち出でたまはずなりぬ。ひとふし用意なしと思しおきてければ、口入れむことも人悪く思しとどめ、かの大臣はた人の御けしきなきにさし過ぐしがたくて、さすがにむすぼほれたる心地したまうけり。<BR>⏎
<P>⏎
180-182 「かく参り来あひては、さらに久しくなりぬる世の古事、思うたまへ出でられ、恋しきことの忍びがたきに、立ち出でむ心地もしはべらず」<BR>⏎
 とてをさをさ心弱くおはしまさぬ六条殿も、酔ひ泣きにや、うちしほれたまふ。宮はたまいて、姫君の御ことを思し出づるに、ありしにまさる御ありさま、勢ひを見たてまつりたまふに、飽かず悲しくて、とどめがたく、しほしほと泣きたまふ尼衣は、げに心ことなりけり。<BR>⏎
 かかるついでなれど、中将の御ことをば、うち出でたまはずなりぬ。ひとふし用意なしと思しおきてければ、口入れむことも人悪く思しとどめ、かの大臣はた人の御けしきなきにさし過ぐしがたくて、さすがにむすぼほれたる心地したまうけり。<BR>⏎
d1300<P>⏎
d1302<P>⏎
cd2:1303-304 「さらばこの御悩みもよろしう見えたまふを、かならず聞こえし日違へさせたまはず、渡りたまふべき」よし、聞こえ契りたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
185 「さらばこの御悩みもよろしう見えたまふを、かならず聞こえし日違へさせたまはず、渡りたまふべき」よし、聞こえ契りたまふ。<BR>⏎
d1306<P>⏎
cd4:2308-311 「またいかなる御譲りあるべきにか」<BR>⏎
<P>⏎
 などひが心を得つつ、かかる<A HREF="#k14">筋とは</A><A NAME="t14">思</A>ひ寄らざりけり。<BR>⏎
<P>⏎
188-189 「またいかなる御譲りあるべきにか」<BR>⏎
 などひが心を得つつ、かかる<A HREF="#k14">筋とは</A><A NAME="t14">思</A>ひ寄らざりけり。<BR>⏎
text29312 <H4>第三章 玉鬘の物語 裳着の物語</H4>190 
text29313 <A NAME="in31">[第一段 内大臣、源氏の意向に従う]</A><BR>191 
d1314<P>⏎
d1316<P>⏎
c1317 「ふとしか受けとり、親がらむも便なからむ。尋ね得たまへらむ初めを思ふに、定めて心きよう見放ちたまはじ。やむごとなき方々を憚りて、うけばりてその際にはもてなさず、さすがにわづらはしう、ものの聞こえを思ひて、かく明かしたまふなめり」<BR>⏎
193 「ふとしか受けとり、親がらむも便なからむ。尋ね得たまへらむ初めを思ふに、定めて心きよう見放ちたまはじ。やむごとなき方々を憚りて、うけばりてその際にはもてなさず、さすがにわづらはしう、ものの聞こえを思ひて、かく明かしたまふなめり」<BR>⏎
d1319<P>⏎
cd4:2321-324 とよろづに思しけり。<BR>⏎
<P>⏎
 かくのたまふは、二月朔日ころなりけり。十六日彼岸の初めにて、いと吉き日なりけり。近うまた吉き日なしと勘へ申しけるうちに、<A HREF="#k15">宮</A><A NAME="t15">よ</A>ろしうおはしませば、いそぎ立ちたまうて、例の渡りたまうても、大臣に申しあらはししさまなど、いとこまかにあべきことども教へきこえたまへば、<BR>⏎
<P>⏎
196-197 とよろづに思しけり。<BR>⏎
 かくのたまふは、二月朔日ころなりけり。十六日彼岸の初めにて、いと吉き日なりけり。近うまた吉き日なしと勘へ申しけるうちに、<A HREF="#k15">宮</A><A NAME="t15">よ</A>ろしうおはしませば、いそぎ立ちたまうて、例の渡りたまうても、大臣に申しあらはししさまなど、いとこまかにあべきことども教へきこえたまへば、<BR>⏎
d1327<P>⏎
d1329<P>⏎
cd2:1331-332 と思ひあはすることどもあるに、かのつれなき人の御ありさまよりも、なほもあらず思ひ出でられて、「思ひ寄らざりけることよ」と、しれじれしき心地す。されど「あるまじう<A HREF="#k16">ねじけ</A><A NAME="t16">た</A>るべきほどなりけり」と、思ひ返すことこそは、ありがたきまめまめしさなめれ。<BR>⏎
<P>⏎
202 と思ひあはすることどもあるに、かのつれなき人の御ありさまよりも、なほもあらず思ひ出でられて、「思ひ寄らざりけることよ」と、しれじれしき心地す。されど「あるまじう<A HREF="#k16">ねじけ</A><A NAME="t16">た</A>るべきほどなりけり」と、思ひ返すことこそは、ありがたきまめまめしさなめれ。<BR>⏎
text29333 <A NAME="in32">[第二段 二月十六日、玉鬘の裳着の儀]</A><BR>203 
d1334<P>⏎
d1336<P>⏎
d1338<P>⏎
cd4:2339-342  ふたかたに言ひもてゆけば玉櫛笥<BR>⏎
  わが身はなれぬ懸子なりけり」<BR>⏎
<P>⏎
 といと古めかしうわななきたまへるを、殿もこなたにおはしまして、<A HREF="#k17">ことども</A><A NAME="t17">御</A>覧じ定むるほどなれば、見たまうて、<BR>⏎
206-207  ふたかたに言ひもてゆけば玉櫛笥<BR>  わが身はなれぬ懸子なりけり」<BR>⏎
 といと古めかしうわななきたまへるを、殿もこなたにおはしまして、<A HREF="#k17">ことども</A><A NAME="t17">御</A>覧じ定むるほどなれば、見たまうて、<BR>⏎
d1344<P>⏎
cd2:1345-346 などうち返し見たまうて、<BR>⏎
<P>⏎
209 などうち返し見たまうて、<BR>⏎
d1348<P>⏎
cd2:1349-350 と忍びて笑ひたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
211 と忍びて笑ひたまふ。<BR>⏎
text29351 <A NAME="in33">[第三段 玉鬘の裳着への祝儀の品々]</A><BR>212 
d1352<P>⏎
d1355<P>⏎
d1358<P>⏎
cd3:2359-361 「知らせたまふべき数にもはべらねば、つつましけれど、かかる折は思たまへ忍びがたくなむ。これいとあやしけれど、人にも賜はせよ」<BR>⏎
<P>⏎
 とおいらかなり。殿、御覧じつけて、いとあさましう、例の、と思すに、御顔赤みぬ。<BR>⏎
217-218 「知らせたまふべき数にもはべらねば、つつましけれど、かかる折は思たまへ忍びがたくなむ。これいとあやしけれど、人にも賜はせよ」<BR>⏎
 とおいらかなり。殿、御覧じつけて、いとあさましう、例の、と思すに、御顔赤みぬ。<BR>⏎
d1363<P>⏎
d1365<P>⏎
cd3:1366-368 「わが身こそ恨みられけれ唐衣<BR>⏎
  君が袂に馴れずと思へば」<BR>⏎
<P>⏎
221 「わが身こそ恨みられけれ唐衣<BR>  君が袂に馴れずと思へば」<BR>⏎
d1370<P>⏎
d1372<P>⏎
cd3:2373-375 といとほしがりたまふ。<BR>⏎
<P> 「いでこの返りこと、騒がしうとも、われせむ」<BR>⏎
<P>⏎
224-225 といとほしがりたまふ。<BR>⏎
 「いでこの返りこと、騒がしうとも、われせむ」<BR>⏎
d1377<P>⏎
d1379<P>⏎
cd6:3380-385 と憎さに書きたまうて、<BR>⏎
<P>⏎
 「唐衣また唐衣唐衣<BR>⏎
  かへすがへすも唐衣なる」<BR>⏎
<P>⏎
 とて<BR>⏎
228-230 と憎さに書きたまうて、<BR>⏎
 「唐衣また唐衣唐衣<BR>  かへすがへすも唐衣なる」<BR>⏎
 とて<BR>⏎
d1387<P>⏎
cd6:3388-393 とて見せたてまつりたまへば、君、いとにほひやかに笑ひたまひて、<BR>⏎
<P>⏎
 「あないとほし。弄じたるやうにもはべるかな」<BR>⏎
<P>⏎
 と苦しがりたまふ。ようなしごといと多かりや。<BR>⏎
<P>⏎
232-234 とて見せたてまつりたまへば、君、いとにほひやかに笑ひたまひて、<BR>⏎
 「あないとほし。弄じたるやうにもはべるかな」<BR>⏎
 と苦しがりたまふ。ようなしごといと多かりや。<BR>⏎
text29394 <A NAME="in34">[第四段 内大臣、腰結に役を勤める]</A><BR>235 
d1395<P>⏎
d1397<P>⏎
d1399<P>⏎
d1401<P>⏎
d1403<P>⏎
d1406<P>⏎
d1408<P>⏎
cd2:1409-410 「げにさらに聞こえさせやるべき方はべらずなむ」<BR>⏎
<P>⏎
243 「げにさらに聞こえさせやるべき方はべらずなむ」<BR>⏎
d1412<P>⏎
d1414<P>⏎
d1416<P>⏎
cd8:3417-424 「恨めしや沖つ玉藻をかづくまで<BR>⏎
  磯がくれける海人の心よ」<BR>⏎
<P>⏎
 とてなほつつみもあへずしほたれたまふ。姫君は、いと恥づかしき御さまどものさし集ひ、つつましさに、え聞こえたまはねば、殿、<BR>⏎
<P>⏎
 「よるべなみかかる渚にうち寄せて<BR>⏎
  海人も尋ねぬ藻屑とぞ見し<BR>⏎
<P>⏎
247-249 「恨めしや沖つ玉藻をかづくまで<BR>  磯がくれける海人の心よ」<BR>⏎
 とてなほつつみもあへずしほたれたまふ。姫君は、いと恥づかしき御さまどものさし集ひ、つつましさに、え聞こえたまはねば、殿、<BR>⏎
 「よるべなみかかる渚にうち寄せて<BR>  海人も尋ねぬ藻屑とぞ見し<BR>⏎
d1426<P>⏎
d1428<P>⏎
d1430<P>⏎
cd2:1431-432 と聞こえやる方なくて、出でたまひぬ。<BR>⏎
<P>⏎
253 と聞こえやる方なくて、出でたまひぬ。<BR>⏎
text29433 <A NAME="in35">[第五段 祝賀者、多数参上]</A><BR>254 
d1434<P>⏎
d1436<P>⏎
cd2:1437-438 かの殿の君達中将弁の君ばかりぞ、ほの知りたまへりける。人知れず思ひしことを、からうもうれしうも思ひなりたまふ。弁は、<BR>⏎
<P>⏎
256 かの殿の君達中将弁の君ばかりぞ、ほの知りたまへりける。人知れず思ひしことを、からうもうれしうも思ひなりたまふ。弁は、<BR>⏎
d1440<P>⏎
cd4:2441-444 などおのおの言ふよしを聞きたまへど、<BR>⏎
<P>⏎
 「なほしばしは御心づかひしたまうて、世にそしりなきさまにもてなさせたまへ。何ごとも、心やすきほどの人こそ、乱りがはしうともかくもはべべかめれ、こなたをもそなたをも、<A HREF="#k21">さまざま</A><A NAME="t21">人</A>の聞こえ悩まさむ、ただならむよりはあぢきなきを、なだらかに、やうやう人目をも馴らすなむ、よきことにははべるべき」<BR>⏎
<P>⏎
258-259 などおのおの言ふよしを聞きたまへど、<BR>⏎
 「なほしばしは御心づかひしたまうて、世にそしりなきさまにもてなさせたまへ。何ごとも、心やすきほどの人こそ、乱りがはしうともかくもはべべかめれ、こなたをもそなたをも、<A HREF="#k21">さまざま</A><A NAME="t21">人</A>の聞こえ悩まさむ、ただならむよりはあぢきなきを、なだらかに、やうやう人目をも馴らすなむ、よきことにははべるべき」<BR>⏎
d1446<P>⏎
d1448<P>⏎
d1450<P>⏎
d1452<P>⏎
d1454<P>⏎
d1456<P>⏎
c1457 とおりたち聞こえたまへど、<BR>⏎
266 とおりたち聞こえたまへど、<BR>⏎
d1459<P>⏎
d1461<P>⏎
cd2:1464-465 などなかなか心もとなう恋しう思ひきこえたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
271 などなかなか心もとなう恋しう思ひきこえたまふ。<BR>⏎
d1467<P>⏎
text29468 <A NAME="in36">[第六段 近江の君、玉鬘を羨む]</A><BR>273 
d1469<P>⏎
cd8:4470-477 世の人聞きに、「しばしこのこと出ださじ」と、切に籠めたまへど、口さがなきものは世の人なりけり。自然に言ひ漏らしつつ、やうやう聞こえ出で来るを、かのさがな者の君聞きて、女御の御前に、中将少将さぶらひたまふに出で来て、<BR>⏎
<P>⏎
 「殿は、御女まうけたまふべかなり。あなめでたや。いかなる人、二方にもてなさるらむ。聞けば、かれも劣り腹なり」<BR>⏎
<P>⏎
 とあふなげにのたまへば、女御、かたはらいたしと思して、ものものたまはず。中将、<BR>⏎
<P>⏎
 「しかかしづかるべきゆゑこそものしたまふらめ。さても誰が言ひしことを、かくゆくりなくうち出でたまふぞ。もの言ひただならぬ女房<A HREF="#k22">など</A><A NAME="t22">こ</A>そ、耳とどむれ」<BR>⏎
<P>⏎
274-277 世の人聞きに、「しばしこのこと出ださじ」と、切に籠めたまへど、口さがなきものは世の人なりけり。自然に言ひ漏らしつつ、やうやう聞こえ出で来るを、かのさがな者の君聞きて、女御の御前に、中将少将さぶらひたまふに出で来て、<BR>⏎
 「殿は、御女まうけたまふべかなり。あなめでたや。いかなる人、二方にもてなさるらむ。聞けば、かれも劣り腹なり」<BR>⏎
 とあふなげにのたまへば、女御、かたはらいたしと思して、ものものたまはず。中将、<BR>⏎
 「しかかしづかるべきゆゑこそものしたまふらめ。さても誰が言ひしことを、かくゆくりなくうち出でたまふぞ。もの言ひただならぬ女房<A HREF="#k22">など</A><A NAME="t22">こ</A>そ、耳とどむれ」<BR>⏎
d1479<P>⏎
d1481<P>⏎
cd2:1482-483 と恨みかくれば、皆<A HREF="#k23">ほほ笑みて</A><A NAME="t23">、</A><BR>⏎
<P>⏎
280 と恨みかくれば、皆<A HREF="#k23">ほほ笑みて</A><A NAME="t23">、</A><BR>⏎
d1485<P>⏎
d1487<P>⏎
cd4:2488-491 「めでたき御仲に、数ならぬ人は、混じるまじかりけり。中将の君ぞつらくおはする。さかしらに迎へたまひて、軽めあざけりたまふ。せうせうの人は、え立てるまじき殿の内かな。あなかしこ。あなかしこ」<BR>⏎
<P>⏎
 と後へざまにゐざり退きて、見おこせたまふ。憎げもなけれど、いと腹悪しげに目尻引き上げたり。<BR>⏎
<P>⏎
283-284 「めでたき御仲に、数ならぬ人は、混じるまじかりけり。中将の君ぞつらくおはする。さかしらに迎へたまひて、軽めあざけりたまふ。せうせうの人は、え立てるまじき殿の内かな。あなかしこ。あなかしこ」<BR>⏎
 と後へざまにゐざり退きて、見おこせたまふ。憎げもなけれど、いと腹悪しげに目尻引き上げたり。<BR>⏎
d1493<P>⏎
d1495<P>⏎
cd2:1496-497 とほほ笑みて言ひゐたまへり。中将も、<BR>⏎
<P>⏎
287 とほほ笑みて言ひゐたまへり。中将も、<BR>⏎
d1499<P>⏎
cd2:1500-501 とて立ちぬれば、ほろほろと泣きて、<BR>⏎
<P>⏎
289 とて立ちぬれば、ほろほろと泣きて、<BR>⏎
d1503<P>⏎
cd4:2504-507 とていとかやすく、いそしく、下臈童女などの仕うまつりたらぬ雑役をも、立ち走り、やすく惑ひありきつつ、心ざしを尽くして宮仕へしありきて、<BR>⏎
<P>⏎
 「尚侍に、おれを申しなしたまへ」<BR>⏎
<P>⏎
291-292 とていとかやすく、いそしく、下臈童女などの仕うまつりたらぬ雑役をも、立ち走り、やすく惑ひありきつつ、心ざしを尽くして宮仕へしありきて、<BR>⏎
 「尚侍に、おれを申しなしたまへ」<BR>⏎
d1509<P>⏎
text29510 <A NAME="in37">[第七段 内大臣、近江の君を愚弄]</A><BR>294 
d1511<P>⏎
d1513<P>⏎
cd2:1514-515 「いづらこの近江の君。こなたに」<BR>⏎
<P>⏎
296 「いづらこの近江の君。こなたに」<BR>⏎
d1517<P>⏎
d1519<P>⏎
cd8:4520-527 といとけざやかに聞こえて、出で来たり。<BR>⏎
<P>⏎
 「いと仕へたる御けはひ、公人にて、げにいかにあひたらむ。尚侍のことは、などかおのれに疾くはものせざりし」<BR>⏎
<P>⏎
 といとまめやかにてのたまへば、いとうれしと思ひて、<BR>⏎
<P>⏎
 「さも御けしき賜はらまほしうはべりしかど、この女御殿など、おのづから伝へ聞こえさせ<A HREF="#k25">たまひてむ</A><A NAME="t25">と</A>、<A HREF="#k26">頼み</A><A NAME="t26">ふ</A>くれてなむさぶらひつるを、なるべき人ものしたまふやうに<A HREF="#k27">聞き</A><A NAME="t27">た</A>まふれば、夢に富したる心地しはべりてなむ、胸に手を置きたるやうにはべる」<BR>⏎
<P>⏎
299-302 といとけざやかに聞こえて、出で来たり。<BR>⏎
 「いと仕へたる御けはひ、公人にて、げにいかにあひたらむ。尚侍のことは、などかおのれに疾くはものせざりし」<BR>⏎
 といとまめやかにてのたまへば、いとうれしと思ひて、<BR>⏎
 「さも御けしき賜はらまほしうはべりしかど、この女御殿など、おのづから伝へ聞こえさせ<A HREF="#k25">たまひてむ</A><A NAME="t25">と</A>、<A HREF="#k26">頼み</A><A NAME="t26">ふ</A>くれてなむさぶらひつるを、なるべき人ものしたまふやうに<A HREF="#k27">聞き</A><A NAME="t27">た</A>まふれば、夢に富したる心地しはべりてなむ、胸に手を置きたるやうにはべる」<BR>⏎
d1529<P>⏎
d1531<P>⏎
cd2:1532-533 などいとようすかしたまふ。人の親げなく、かたはなりや。<BR>⏎
<P>⏎
305 などいとようすかしたまふ。人の親げなく、かたはなりや。<BR>⏎
d1535<P>⏎
cd2:1536-537 とて手を押しすりて聞こえゐたり。御几帳のうしろなどにて聞く女房、死ぬべくおぼゆ。もの笑ひに堪へぬは、すべり出でてなむ、慰めける。女御も御面赤みて、わりなう見苦しと思したり。殿も、<BR>⏎
<P>⏎
307 とて手を押しすりて聞こえゐたり。御几帳のうしろなどにて聞く女房、死ぬべくおぼゆ。もの笑ひに堪へぬは、すべり出でてなむ、慰めける。女御も御面赤みて、わりなう見苦しと思したり。殿も、<BR>⏎
d1539<P>⏎
cd2:1540-541 とてただ笑ひ種につくりたまへど、世人は、<BR>⏎
<P>⏎
309 とてただ笑ひ種につくりたまへど、世人は、<BR>⏎
d1543<P>⏎
cd3:1544-546 などさまざま言ひけり。<BR>⏎

<P>⏎
311 などさまざま言ひけり。<BR>⏎
text29547 <a name="in41">【出典】<BR>312 
c1548</a><A NAME="no1">出典1</A> とにかくに人目堤を堰きかねて下に流るる音無の滝(源氏釈所引-出典未詳)<A HREF="#te1">(戻)</A><BR>⏎
313<A NAME="no1">出典1</A> とにかくに人目堤を堰きかねて下に流るる音無の滝(源氏釈所引-出典未詳)<A HREF="#te1">(戻)</A><BR>⏎
d1550
text29551<p> <a name="in42">【校訂】<BR>315 
c1553</a><A NAME="k01">校訂1</A> 女の--(/+女の<朱>)<A HREF="#t01">(戻)</A><BR>⏎
317<A NAME="k01">校訂1</A> 女の--(/+女の<朱>)<A HREF="#t01">(戻)</A><BR>⏎
d1581</p>⏎
d1588</p>⏎
i0355
diffsrc/original/text30.htmlsrc/modified/text30.html
cd2:18-9<body background="wallppr063.gif">⏎
First updated 9/20/1996(ver.1-1)<BR>⏎
8<BODY>⏎
cd3:210-12Last updated 9/21/2010(ver.2-3)<BR>⏎
渋谷栄一校訂(C)<BR>⏎
<P
>⏎
9-10<ADDRESS>Last updated 9/21/2010(ver.2-3)<BR>⏎
渋谷栄一校訂(C)</ADDRESS>⏎
d114<P>⏎
d116<P>⏎
d146<P>⏎
d167<P>⏎
d170<P>⏎
text3071 <H4>第一章 玉鬘の物語 玉鬘と夕霧との新関係</H4>64 
text3072 <A NAME="in11">[第一段 玉鬘、内侍出仕前の不安]</A><BR>65 
d173<P>⏎
cd2:175-76 「いかならむ。親と思ひきこゆる人の御心だに、うちとくまじき世なりければ、ましてさやうの交じらひにつけて、心よりほかに便なきこともあらば、中宮も女御も、方がたにつけて心おきたまはば、はしたなからむに、わが身はかくはかなきさまにて、いづ方にも深く思ひとどめられたてまつれるほどもなく、浅きおぼえにて、ただならず思ひ言ひ、いかで人笑へなるさまに見聞きなさむとうけひたまふ人びとも多く、とかくにつけて、やすからぬことのみありぬべき」を、もの思し知るまじきほどにしあらねば、さまざまに思ほし乱れ、人知れずもの嘆かし。<BR>⏎
<P>⏎
67 「いかならむ。親と思ひきこゆる人の御心だに、うちとくまじき世なりければ、ましてさやうの交じらひにつけて、心よりほかに便なきこともあらば、中宮も女御も、方がたにつけて心おきたまはば、はしたなからむに、わが身はかくはかなきさまにて、いづ方にも深く思ひとどめられたてまつれるほどもなく、浅きおぼえにて、ただならず思ひ言ひ、いかで人笑へなるさまに見聞きなさむとうけひたまふ人びとも多く、とかくにつけて、やすからぬことのみありぬべき」を、もの思し知るまじきほどにしあらねば、さまざまに思ほし乱れ、人知れずもの嘆かし。<BR>⏎
d179<P>⏎
cd4:280-83 となかなかこの親尋ねきこえたまひて後は、ことに憚りたまふけしきもなき大臣の君の御もてなしを取り加へつつ、人知れずなむ嘆かしかりける。<BR>⏎
<P>⏎
 思ふことを、まほならずとも、片端にてもうちかすめつべき<A HREF="#k01">女</A><A NAME="t01">親</A>もおはせず、いづ方もいづ方も、いと恥づかしげに、いとうるはしき御さまどもには、何ごとをかは、さなむかくなむとも聞こえ分きたまはむ。世の人に似ぬ身のありさまを、うち眺めつつ、夕暮の空のあはれげなるけしきを、端近うて見出だしたまへるさま、いとをかし。<BR>⏎
<P>⏎
70-71 となかなかこの親尋ねきこえたまひて後は、ことに憚りたまふけしきもなき大臣の君の御もてなしを取り加へつつ、人知れずなむ嘆かしかりける。<BR>⏎
 思ふことを、まほならずとも、片端にてもうちかすめつべき<A HREF="#k01">女</A><A NAME="t01">親</A>もおはせず、いづ方もいづ方も、いと恥づかしげに、いとうるはしき御さまどもには、何ごとをかは、さなむかくなむとも聞こえ分きたまはむ。世の人に似ぬ身のありさまを、うち眺めつつ、夕暮の空のあはれげなるけしきを、端近うて見出だしたまへるさま、いとをかし。<BR>⏎
text3084 <A NAME="in12">[第二段 夕霧、源氏の使者として玉鬘を訪問]</A><BR>72 
d185<P>⏎
d187<P>⏎
cd2:188-89 初めより、ものまめやかに心寄せきこえたまへば、もて離れて疎々しきさまにはもてなしたまはざりしならひに、今、あらざりけりとて、こよなく変はらむもうたてあれば、なほ御簾に几帳添へたる御対面は、人伝てならでありけり。殿の御消息にて、内裏より仰せ言あるさま、やがてこの君のうけたまはりたまへるなりけり。<BR>⏎
<P>⏎
74 初めより、ものまめやかに心寄せきこえたまへば、もて離れて疎々しきさまにはもてなしたまはざりしならひに、今、あらざりけりとて、こよなく変はらむもうたてあれば、なほ御簾に几帳添へたる御対面は、人伝てならでありけり。殿の御消息にて、内裏より仰せ言あるさま、やがてこの君のうけたまはりたまへるなりけり。<BR>⏎
d191<P>⏎
cd2:192-93 「この宮仕ひを、おほかたにしも思し放たじかし。さばかり見所ある御あはひどもにて、をかしきさまなることのわづらはしき、はたかならず出で来なむかし」<BR>⏎
<P>⏎
76 「この宮仕ひを、おほかたにしも思し放たじかし。さばかり見所ある御あはひどもにて、をかしきさまなることのわづらはしき、はたかならず出で来なむかし」<BR>⏎
d195<P>⏎
d197<P>⏎
d199<P>⏎
text30100 <A NAME="in13">[第三段 夕霧、玉鬘に言い寄る]</A><BR>80 
d1101<P>⏎
d1103<P>⏎
d1105<P>⏎
d1107<P>⏎
d1109<P>⏎
d1111<P>⏎
cd2:1112-113 「漏らさじと、つつませたまふらむこそ、心憂けれ。忍びがたく思ひたまへらるる形見なれば、脱ぎ捨てはべらむことも、いともの憂くはべるものを。さてもあやしうもて離れぬことの、また心得がたきにこそはべれ。この御あらはし衣の色なくは、えこそ思ひたまへ分くまじかりけれ」<BR>⏎
<P>⏎
86 「漏らさじと、つつませたまふらむこそ、心憂けれ。忍びがたく思ひたまへらるる形見なれば、脱ぎ捨てはべらむことも、いともの憂くはべるものを。さてもあやしうもて離れぬことの、また心得がたきにこそはべれ。この御あらはし衣の色なくは、えこそ思ひたまへ分くまじかりけれ」<BR>⏎
d1115<P>⏎
d1117<P>⏎
cd2:1118-119 とて例よりもしめりたる御けしき、いとらうたげにをかし。<BR>⏎
<P>⏎
89 とて例よりもしめりたる御けしき、いとらうたげにをかし。<BR>⏎
text30120 <A NAME="in14">[第四段 夕霧、玉鬘と和歌を詠み交す]</A><BR>90 
d1121<P>⏎
d1123<P>⏎
d1125<P>⏎
cd5:2126-130 とてとみにも許さで持たまへれば、うつたへに思ひ寄らで取りたまふ御袖を、引き動かしたり。<BR>⏎
<P>⏎
 「同じ野の露にやつるる藤袴<BR>⏎
  あはれはかけよかことばかりも」<BR>⏎
<P>⏎
93-94 とてとみにも許さで持たまへれば、うつたへに思ひ寄らで取りたまふ御袖を、引き動かしたり。<BR>⏎
 「同じ野の露にやつるる藤袴<BR>  あはれはかけよかことばかりも」<BR>⏎
d1132<P>⏎
cd2:1133-134 「尋ぬるにはるけき野辺の露ならば<BR>⏎
  薄紫やかことならまし<BR>⏎
96 「尋ぬるにはるけき野辺の露ならば<BR>  薄紫やかことならまし<BR>⏎
d1136<P>⏎
d1138<P>⏎
d1140<P>⏎
cd4:2141-144 頭中将のけしきは御覧じ知りきや。人の上に、なんど思ひはべりけむ。身にてこそ、いとをこがましく、かつは思ひたまへ知られけれ。なかなか、かの君は思ひさまして、つひに御あたり離るまじき頼みに、思ひ慰めたるけしきなど見はべるも、いとうらやましくねたきに、あはれとだに思しおけよ」<BR>⏎
<P>⏎
 など<A HREF="#k05">こまかに</A><A NAME="t05">聞</A>こえ知らせたまふこと多かれど、かたはらいたければ<A HREF="#k06">書かぬ</A><A NAME="t06">な</A>り。<BR>⏎
<P>⏎
100-101 頭中将のけしきは御覧じ知りきや。人の上に、なんど思ひはべりけむ。身にてこそ、いとをこがましく、かつは思ひたまへ知られけれ。なかなか、かの君は思ひさまして、つひに御あたり離るまじき頼みに、思ひ慰めたるけしきなど見はべるも、いとうらやましくねたきに、あはれとだに思しおけよ」<BR>⏎
 など<A HREF="#k05">こまかに</A><A NAME="t05">聞</A>こえ知らせたまふこと多かれど、かたはらいたければ<A HREF="#k06">書かぬ</A><A NAME="t06">な</A>り。<BR>⏎
d1146<P>⏎
d1148<P>⏎
cd2:1149-150 とてかかるついでに、今すこし漏らさまほしけれど、<BR>⏎
<P>⏎
104 とてかかるついでに、今すこし漏らさまほしけれど、<BR>⏎
d1152<P>⏎
cd2:1153-154 とて入り果てたまひぬれば、いといたくうち<A HREF="#k07">嘆きて</A><A NAME="t07">立</A>ちたまひぬ。<BR>⏎
<P>⏎
106 とて入り果てたまひぬれば、いといたくうち<A HREF="#k07">嘆きて</A><A NAME="t07">立</A>ちたまひぬ。<BR>⏎
text30155 <A NAME="in15">[第五段 夕霧、源氏に復命]</A><BR>107 
d1156<P>⏎
cd2:1157-158 「なかなかにもうち出でてけるかな」と、口惜しきにつけても、かの今すこし身にしみておぼえし御けはひを、かばかりの物越しにても、「ほのかに御声をだに、いかならむついでにか聞かむ」と、やすからず思ひつつ、御前に参りたまへれば、出でたまひて、御返りなど聞こえたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
108 「なかなかにもうち出でてけるかな」と、口惜しきにつけても、かの今すこし身にしみておぼえし御けはひを、かばかりの物越しにても、「ほのかに御声をだに、いかならむついでにか聞かむ」と、やすからず思ひつつ、御前に参りたまへれば、出でたまひて、御返りなど聞こえたまふ。<BR>⏎
d1160<P>⏎
cd2:1161-162 されど大原野の行幸に、主上を見たてまつりたまひては、いとめでたくおはしけり、と思ひたまへりき。若き人は、ほのかにも見たてまつりて、えしも宮仕への筋もて離れじ。さ思ひてなむ、このこともかくものせし」<BR>⏎
<P>⏎
110 されど大原野の行幸に、主上を見たてまつりたまひては、いとめでたくおはしけり、と思ひたまへりき。若き人は、ほのかにも見たてまつりて、えしも宮仕への筋もて離れじ。さ思ひてなむ、このこともかくものせし」<BR>⏎
cd6:3164-169<P> 「さても人ざまは、いづ方につけてかは、たぐひてものしたまふらむ。中宮、かく並びなき筋にておはしまし、また弘徽殿、やむごとなく、おぼえことにてものしたまへば、いみじき御思ひありとも、立ち並びたまふこと、かたくこそはべらめ。<BR>⏎
<P>⏎
 宮は、いとねむごろに思したなるを、わざとさる筋の御宮仕へにもあらぬものから、ひき違へたらむさまに御心おきたまはむも、さる御仲らひにては、いといとほしくなむ聞きたまふる」<BR>⏎
<P>⏎
 とおとなおとなしく申したまふ。<BR>⏎
<P>⏎
112-114 「さても人ざまは、いづ方につけてかは、たぐひてものしたまふらむ。中宮、かく並びなき筋にておはしまし、また弘徽殿、やむごとなく、おぼえことにてものしたまへば、いみじき御思ひありとも、立ち並びたまふこと、かたくこそはべらめ。<BR>⏎
 宮は、いとねむごろに思したなるを、わざとさる筋の御宮仕へにもあらぬものから、ひき違へたらむさまに御心おきたまはむも、さる御仲らひにては、いといとほしくなむ聞きたまふる」<BR>⏎
 とおとなおとなしく申したまふ。<BR>⏎
text30170 <A NAME="in16">[第六段 源氏の考え方]</A><BR>115 
d1171<P>⏎
cd4:2172-175 「かたしや。わが心ひとつなる人の上にもあらぬを、大将さへ、我をこそ恨むなれ。すべてかかることの心苦しさを見過ぐさで、あやなき人の恨み負ふ、かへりては軽々しきわざなりけり。かの母君の、あはれに言ひおきしことの忘れざりしかば、心細き山里になど聞きしを、かの大臣、はた聞き入れたまふべくもあらずと<A HREF="#k08">愁へし</A><A NAME="t08">に</A>、いとほしくて、かく渡しはじめたるなり。ここにかくものめかすとて、かの大臣も人めかいたまふなめり」<BR>⏎
<P>⏎
 とつきづきしくのたまひなす。<BR>⏎
<P>⏎
116-117 「かたしや。わが心ひとつなる人の上にもあらぬを、大将さへ、我をこそ恨むなれ。すべてかかることの心苦しさを見過ぐさで、あやなき人の恨み負ふ、かへりては軽々しきわざなりけり。かの母君の、あはれに言ひおきしことの忘れざりしかば、心細き山里になど聞きしを、かの大臣、はた聞き入れたまふべくもあらずと<A HREF="#k08">愁へし</A><A NAME="t08">に</A>、いとほしくて、かく渡しはじめたるなり。ここにかくものめかすとて、かの大臣も人めかいたまふなめり」<BR>⏎
 とつきづきしくのたまひなす。<BR>⏎
d1177<P>⏎
d1179<P>⏎
d1181<P>⏎
d1183<P>⏎
cd2:1184-185 「かたがたいと似げなきことかな。なほ宮仕へをも、御心許して、かくなむと思されむさまにぞ従ふべき。<A HREF="#no3">女は三つに従ふ</A><A NAME="te3">も</A>のにこそあなれど、ついでを違へて、おのが心にまかせむことは、あるまじきことなり」<BR>⏎
<P>⏎
122 「かたがたいと似げなきことかな。なほ宮仕へをも、御心許して、かくなむと思されむさまにぞ従ふべき。<A HREF="#no3">女は三つに従ふ</A><A NAME="te3">も</A>のにこそあなれど、ついでを違へて、おのが心にまかせむことは、あるまじきことなり」<BR>⏎
d1187<P>⏎
text30188 <A NAME="in17">[第七段 玉鬘の出仕を十月と決定]</A><BR>124 
d1189<P>⏎
d1191<P>⏎
cd2:1192-193 といとうるはしきさまに語り申したまへば、「げにさは思ひたまふらむかし」と思すに、いとほしくて、<BR>⏎
<P>⏎
126 といとうるはしきさまに語り申したまへば、「げにさは思ひたまふらむかし」と思すに、いとほしくて、<BR>⏎
d1195<P>⏎
cd6:3196-201 と笑ひたまふ。御けしきはけざやかなれど、なほ疑ひは置かる。大臣も、<BR>⏎
<P>⏎
 「さりや。かく人の推し量る、案に落つることもあらましかば、いと口惜しくねぢけたらまし。かの大臣に、いかでかく心清きさまを知らせたてまつらむ」<BR>⏎
<P>⏎
 と思すにぞ、「げに宮仕への筋にて、けざやかなるまじく紛れたるおぼえを、かしこくも思ひ寄りたまひけるかな」と、むくつけく思さる。<BR>⏎
<P>⏎
128-130 と笑ひたまふ。御けしきはけざやかなれど、なほ疑ひは置かる。大臣も、<BR>⏎
 「さりや。かく人の推し量る、案に落つることもあらましかば、いと口惜しくねぢけたらまし。かの大臣に、いかでかく心清きさまを知らせたてまつらむ」<BR>⏎
 と思すにぞ、「げに宮仕への筋にて、けざやかなるまじく紛れたるおぼえを、かしこくも思ひ寄りたまひけるかな」と、むくつけく思さる。<BR>⏎
d1203<P>⏎
d1205<P>⏎
d1207<P>⏎
d1209<P>⏎
cd2:1210-211 とおのおの応ふ。<BR>⏎
<P>⏎
135 とおのおの応ふ。<BR>⏎
d1213<P>⏎
text30214 <H4>第二章 玉鬘の物語 玉鬘と柏木との新関係</H4>137 
text30215 <A NAME="in21">[第一段 柏木、内大臣の使者として玉鬘を訪問]</A><BR>138 
d1216<P>⏎
d1218<P>⏎
d1220<P>⏎
d1222<P>⏎
d1224<P>⏎
cd10:5225-234 とてものしと思ひたまへり。<BR>⏎
<P>⏎
 「げに年ごろの積もりも取り添へて、聞こえまほしけれど、日ごろあやしく悩ましくはべれば、起き上がりなどもえしはべらでなむ。かくまでとがめたまふも、なかなか疎々しき心地なむしはべりける」<BR>⏎
<P>⏎
 といとまめだちて聞こえ出だしたまへり。<BR>⏎
<P>⏎
 「悩ましく思さるらむ御几帳のもとをば、許させたまふまじくや。よしよし。げに聞こえさするも、心地なかりけり」<BR>⏎
<P>⏎
 とて大臣の御消息ども忍びやかに聞こえたまふ用意など、人には劣りたまはず、いとめやすし。<BR>⏎
<P>⏎
143-147 とてものしと思ひたまへり。<BR>⏎
 「げに年ごろの積もりも取り添へて、聞こえまほしけれど、日ごろあやしく悩ましくはべれば、起き上がりなどもえしはべらでなむ。かくまでとがめたまふも、なかなか疎々しき心地なむしはべりける」<BR>⏎
 といとまめだちて聞こえ出だしたまへり。<BR>⏎
 「悩ましく思さるらむ御几帳のもとをば、許させたまふまじくや。よしよし。げに聞こえさするも、心地なかりけり」<BR>⏎
 とて大臣の御消息ども忍びやかに聞こえたまふ用意など、人には劣りたまはず、いとめやすし。<BR>⏎
text30235 <A NAME="in22">[第二段 柏木、玉鬘と和歌を詠み交す]</A><BR>148 
d1236<P>⏎
d1238<P>⏎
cd12:6239-250 など語りきこえたまふついでに、<BR>⏎
<P>⏎
 「いでやをこがましきことも、えぞ聞こえさせぬや。いづ方につけても、あはれをば御覧じ過ぐすべくやはありけると、いよいよ恨めしさも添ひはべるかな。まづは今宵などの御もてなしよ。北面だつ方に召し入れて、君達こそめざましくも思し召さめ、下仕へなどやうの人びととだに、うち語らはばや。またかかるやうはあらじかし。さまざまにめづらしき世なりかし」<BR>⏎
<P>⏎
 とうち傾きつつ、恨み続けたるもをかしければ、かくなむと聞こゆ。<BR>⏎
<P>⏎
 「げに人聞きを、うちつけなるやうにやと憚りはべるほどに、年ごろの埋れいたさをも、あきらめはべらぬは、いとなかなかなること多くなむ」<BR>⏎
<P>⏎
 とただすくよかに聞こえなしたまふに、まばゆくて、よろづおしこめたり。<BR>⏎
<P>⏎
 「妹背山深き道をば尋ねずて<BR>⏎
  緒絶の橋に踏み迷ひける<BR>⏎
150-155 など語りきこえたまふついでに、<BR>⏎
 「いでやをこがましきことも、えぞ聞こえさせぬや。いづ方につけても、あはれをば御覧じ過ぐすべくやはありけると、いよいよ恨めしさも添ひはべるかな。まづは今宵などの御もてなしよ。北面だつ方に召し入れて、君達こそめざましくも思し召さめ、下仕へなどやうの人びととだに、うち語らはばや。またかかるやうはあらじかし。さまざまにめづらしき世なりかし」<BR>⏎
 とうち傾きつつ、恨み続けたるもをかしければ、かくなむと聞こゆ。<BR>⏎
 「げに人聞きを、うちつけなるやうにやと憚りはべるほどに、年ごろの埋れいたさをも、あきらめはべらぬは、いとなかなかなること多くなむ」<BR>⏎
 とただすくよかに聞こえなしたまふに、まばゆくて、よろづおしこめたり。<BR>⏎
 「妹背山深き道をば尋ねずて<BR>  緒絶の橋に踏み迷ひける<BR>⏎
d1252<P>⏎
d1254<P>⏎
cd3:1255-257 「<A HREF="#k12">惑ひ</A><A NAME="t12">け</A>る道をば知らず妹背山<BR>⏎
  たどたどしくぞ誰も踏み見し」<BR>⏎
<P>⏎
158 「<A HREF="#k12">惑ひ</A><A NAME="t12">け</A>る道をば知らず妹背山<BR>  たどたどしくぞ誰も踏み見し」<BR>⏎
d1259<P>⏎
d1261<P>⏎
cd3:2262-264 「よし長居しはべらむも、すさまじきほどなり。やうやう労積もりてこそは、<A HREF="#k13">かことをも</A><A NAME="t13">」</A><BR>⏎
 <A HREF="#k14">とて</A><A NAME="t14"></A>立ちたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
161-162 「よし長居しはべらむも、すさまじきほどなり。やうやう労積もりてこそは、<A HREF="#k13">かことをも</A><A NAME="t13">」</A><BR>⏎
 <A HREF="#k14">とて</A><A NAME="t14"></A>立ちたまふ。<BR>⏎
d1266<P>⏎
cd2:1267-268 宰相中将のけはひありさまには、え並びたまはねど、これもをかしかめるは、「いかでかかる御仲らひなりけむ」と、若き人びとは、例のさるまじきことをも取り立ててめであへり。<BR>⏎
<P>⏎
164 宰相中将のけはひありさまには、え並びたまはねど、これもをかしかめるは、「いかでかかる御仲らひなりけむ」と、若き人びとは、例のさるまじきことをも取り立ててめであへり。<BR>⏎
text30269 <H4>第三章 玉鬘の物語 玉鬘と鬚黒大将</H4>165 
text30270 <A NAME="in31">[第一段 鬚黒大将、熱心に言い寄る]</A><BR>166 
d1271<P>⏎
d1273<P>⏎
d1275<P>⏎
d1277<P>⏎
d1279<P>⏎
d1281<P>⏎
d1283<P>⏎
cd2:1284-285 とこの弁の御許にも責ためたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
173 とこの弁の御許にも責ためたまふ。<BR>⏎
text30286 <A NAME="in32">[第二段 九月、多数の恋文が集まる]</A><BR>174 
d1287<P>⏎
d1289<P>⏎
cd5:2290-294 「なほ頼み来しも、過ぎゆく空のけしきこそ心尽くしに、<BR>⏎
<P>⏎
  数ならば厭ひもせまし長月に<BR>⏎
  命をかくるほどぞはかなき」<BR>⏎
<P>⏎
176-177 「なほ頼み来しも、過ぎゆく空のけしきこそ心尽くしに、<BR>⏎
  数ならば厭ひもせまし長月に<BR>  命をかくるほどぞはかなき」<BR>⏎
d1296<P>⏎
d1298<P>⏎
d1300<P>⏎
cd3:1301-303  <A HREF="#no5">朝日さす光を見ても玉笹</A><A NAME="te5">の</A><BR>⏎
  葉分けの霜を消たずもあらなむ<BR>⏎
<P>⏎
181  <A HREF="#no5">朝日さす光を見ても玉笹</A><A NAME="te5">の</A><BR>  葉分けの霜を消たずもあらなむ<BR>⏎
d1305<P>⏎
cd2:1306-307 とていとかしけたる下折れの霜も落とさず持て参れる御使さへぞ、うちあひたるや。<BR>⏎
<P>⏎
183 とていとかしけたる下折れの霜も落とさず持て参れる御使さへぞ、うちあひたるや。<BR>⏎
d1309<P>⏎
cd3:1310-312 「忘れなむと思ふもものの悲しきを<BR>⏎
  いかさまにしていかさまにせむ」<BR>⏎
<P>⏎
185 「忘れなむと思ふもものの悲しきを<BR>  いかさまにしていかさまにせむ」<BR>⏎
d1316<P>⏎
d1318<P>⏎
cd3:1319-321 「心もて光に向かふ葵だに<BR>⏎
  朝おく霜をおのれやは消つ」<BR>⏎
<P>⏎
190 「心もて光に向かふ葵だに<BR>  朝おく霜をおのれやは消つ」<BR>⏎
d2325-326
<P>⏎
text30327 <a name="in41">【出典】<BR>194 
c1328</a><A NAME="no1">出典1</A> 東路の道の果てなる常陸帯のかごとばかりも逢ひ見てしがな(古今六帖五二-三三六〇)<A HREF="#te1">(戻)</A><BR>⏎
195<A NAME="no1">出典1</A> 東路の道の果てなる常陸帯のかごとばかりも逢ひ見てしがな(古今六帖五二-三三六〇)<A HREF="#te1">(戻)</A><BR>⏎
d1333
text30334<p> <a name="in42">【校訂】<BR>200 
c1336</a><A NAME="k01">校訂1</A> 女--*をなん<A HREF="#t01">(戻)</A><BR>⏎
202<A NAME="k01">校訂1</A> 女--*をなん<A HREF="#t01">(戻)</A><BR>⏎
d1353</p>⏎
d1360</p>⏎
i0229
diffsrc/original/text31.htmlsrc/modified/text31.html
cd2:18-9<body background="wallppr063.gif">⏎
First updated 9/20/1996(ver.1-1)<BR>⏎
8<BODY>⏎
cd3:210-12Last updated 2/6/2010(ver.2-2)<BR>⏎
渋谷栄一校訂(C)<BR>⏎
<P
>⏎
9-10<ADDRESS>Last updated 2/6/2010(ver.2-2)<BR>⏎
渋谷栄一校訂(C)</ADDRESS>⏎
d114<P>⏎
d116<P>⏎
d158<P>⏎
d1103<P>⏎
d1106<P>⏎
text31107 <H4>第一章 玉鬘の物語 玉鬘、鬚黒大将と結婚</H4>100 
text31108 <A NAME="in11">[第一段 鬚黒、玉鬘を得る]</A><BR>101 
d1109<P>⏎
d1111<P>⏎
cd6:3112-117 見るままにめでたく、思ふさまなる御容貌ありさまを、「よそのものに見果ててやみなましよ」と思ふだに胸つぶれて、石山の仏をも、弁の御許をも、並べて預かまほしう思へど、女君の深くものしと疎みにければ、え交じらはで籠もりゐにけり。<BR>⏎
<P>⏎
 げにそこら心苦しげなることどもを、とりどりに見しかど、心浅き人のためにぞ、寺の験も現はれける。<BR>⏎
<P>⏎
 大臣も「心ゆかず口惜し」と思せど、いふかひなきことにて、「誰れも誰れもかく許しそめたまへることなれば、<A HREF="#k02">引き返し</A><A NAME="t02">許さ</A>ぬけしきを見せむも、人のためいとほしう、あいなし」と思して、儀式いと二なくもてかしづきたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
103-105 見るままにめでたく、思ふさまなる御容貌ありさまを、「よそのものに見果ててやみなましよ」と思ふだに胸つぶれて、石山の仏をも、弁の御許をも、並べて預かまほしう思へど、女君の深くものしと疎みにければ、え交じらはで籠もりゐにけり。<BR>⏎
 げにそこら心苦しげなることどもを、とりどりに見しかど、心浅き人のためにぞ、寺の験も現はれける。<BR>⏎
 大臣も「心ゆかず口惜し」と思せど、いふかひなきことにて、「誰れも誰れもかく許しそめたまへることなれば、<A HREF="#k02">引き返し</A><A NAME="t02">許さ</A>ぬけしきを見せむも、人のためいとほしう、あいなし」と思して、儀式いと二なくもてかしづきたまふ。<BR>⏎
d1119<P>⏎
cd2:1120-121 「なほ心のどかに、なだらかなるさまにて、音なく、いづ方にも、人のそしり恨みなかるべくをもてなしたまへ」<BR>⏎
<P>⏎
107 「なほ心のどかに、なだらかなるさまにて、音なく、いづ方にも、人のそしり恨みなかるべくをもてなしたまへ」<BR>⏎
d1123<P>⏎
text31124 <A NAME="in12">[第二段 内大臣、源氏に感謝]</A><BR>109 
d1125<P>⏎
d1127<P>⏎
d1129<P>⏎
cd2:1130-131 など忍びてのたまひけり。げに帝と聞こゆとも、人に思し落とし、はかなきほどに見えたてまつりたまひて、ものものしくももてなしたまはずは、あはつけきやうにもあべかりけり。<BR>⏎
<P>⏎
112 など忍びてのたまひけり。げに帝と聞こゆとも、人に思し落とし、はかなきほどに見えたてまつりたまひて、ものものしくももてなしたまはずは、あはつけきやうにもあべかりけり。<BR>⏎
d1133<P>⏎
d1135<P>⏎
d1137<P>⏎
d1139<P>⏎
text31140 <A NAME="in13">[第三段 玉鬘、宮仕えと結婚の新生活]</A><BR>117 
d1141<P>⏎
cd4:2142-145 霜月になりぬ。神事などしげく、内侍所にもこと多かるころにて、女官ども内侍ども参りつつ、今めかしう人騒がしきに、大将殿、昼もいと隠ろへたるさまにもてなして、籠もりおはするを、いと心づきなく、尚侍の君は思したり。<BR>⏎
<P>⏎
 宮などは、まいていみじう口惜しと思す。兵衛督は、妹の北の方の御ことをさへ、人笑へに思ひ嘆きて、とり重ねもの思ほしけれど、「をこがましう恨み寄りても、今はかひなし」と思ひ返す。<BR>⏎
<P>⏎
118-119 霜月になりぬ。神事などしげく、内侍所にもこと多かるころにて、女官ども内侍ども参りつつ、今めかしう人騒がしきに、大将殿、昼もいと隠ろへたるさまにもてなして、籠もりおはするを、いと心づきなく、尚侍の君は思したり。<BR>⏎
 宮などは、まいていみじう口惜しと思す。兵衛督は、妹の北の方の御ことをさへ、人笑へに思ひ嘆きて、とり重ねもの思ほしけれど、「をこがましう恨み寄りても、今はかひなし」と思ひ返す。<BR>⏎
d1147<P>⏎
cd2:1148-149 女はわららかににぎははしくもてなしたまふ本性ももて隠して、いといたう思ひ結ぼほれ、心もて<A HREF="#k05">あらぬ</A><A NAME="t05">さ</A>まはしるきことなれど、「大臣の思すらむこと、宮の御心ざまの心深う情け情けしうおはせし」などを思ひ出でたまふに、「恥づかしう、口惜しう」のみ思ほすに、もの心づきなき御けしき絶えず。<BR>⏎
<P>⏎
121 女はわららかににぎははしくもてなしたまふ本性ももて隠して、いといたう思ひ結ぼほれ、心もて<A HREF="#k05">あらぬ</A><A NAME="t05">さ</A>まはしるきことなれど、「大臣の思すらむこと、宮の御心ざまの心深う情け情けしうおはせし」などを思ひ出でたまふに、「恥づかしう、口惜しう」のみ思ほすに、もの心づきなき御けしき絶えず。<BR>⏎
text31150 <A NAME="in14">[第四段 源氏、玉鬘と和歌を詠み交す]</A><BR>122 
d1151<P>⏎
d1153<P>⏎
d1155<P>⏎
d1157<P>⏎
d1159<P>⏎
d1161<P>⏎
d1163<P>⏎
cd2:1164-165 「おりたちて汲みは見ねども渡り川<BR>⏎
  人の瀬とはた契らざりしを<BR>⏎
129 「おりたちて汲みは見ねども渡り川<BR>  人の瀬とはた契らざりしを<BR>⏎
d1167<P>⏎
c1168 とて鼻うちかみたまふけはひ、なつかしうあはれなり。<BR>⏎
131 とて鼻うちかみたまふけはひ、なつかしうあはれなり。<BR>⏎
d1170<P>⏎
cd5:2171-175 「みつせ川渡らぬさきにいかでなほ<BR>⏎
  涙の澪の泡と消えなむ」<BR>⏎
<P>⏎
 「心幼なの御消えどころや。さてもかの瀬は避き道なかなるを、御手の先ばかりは、引き助けきこえてむや」と、ほほ笑みたまひて、<BR>⏎
<P>⏎
133-134 「みつせ川渡らぬさきにいかでなほ<BR>  涙の澪の泡と消えなむ」<BR>⏎
 「心幼なの御消えどころや。さてもかの瀬は避き道なかなるを、御手の先ばかりは、引き助けきこえてむや」と、ほほ笑みたまひて、<BR>⏎
d1177<P>⏎
d1179<P>⏎
cd4:2180-183 「内裏にのたまはすることなむいとほしきを、なほあからさまに参らせたてまつらむ。おのがものと領じ果てては、さやうの御交じらひもかたげなめる世なめり。思ひそめきこえし心は違ふさまなめれど、二条の大臣は、心ゆきたまふなれば、心やすくなむ」<BR>⏎
<P>⏎
 などこまかに聞こえたまふ。あはれにも恥づかしくも聞きたまふこと多かれど、ただ涙にまつはれておはす。いとかう思したるさまの心苦しければ、思すさまにも乱れたまはず、ただあるべきやう、御心づかひを教へきこえたまふ。かしこに渡りたまはむことを、とみにも許しきこえたまふまじき御けしきなり。<BR>⏎
<P>⏎
137-138 「内裏にのたまはすることなむいとほしきを、なほあからさまに参らせたてまつらむ。おのがものと領じ果てては、さやうの御交じらひもかたげなめる世なめり。思ひそめきこえし心は違ふさまなめれど、二条の大臣は、心ゆきたまふなれば、心やすくなむ」<BR>⏎
 などこまかに聞こえたまふ。あはれにも恥づかしくも聞きたまふこと多かれど、ただ涙にまつはれておはす。いとかう思したるさまの心苦しければ、思すさまにも乱れたまはず、ただあるべきやう、御心づかひを教へきこえたまふ。かしこに渡りたまはむことを、とみにも許しきこえたまふまじき御けしきなり。<BR>⏎
text31184 <H4>第二章 鬚黒大将家の物語 北の方、乱心騒動</H4>139 
text31185 <A NAME="in21">[第一段 鬚黒の北の方の嘆き]</A><BR>140 
d1186<P>⏎
d1188<P>⏎
d1190<P>⏎
cd2:1191-192 女君、人に劣りたまふべきことなし。人の御本性も、さるやむごとなき父親王の、いみじうかしづきたてまつりたまへるおぼえ、世に軽からず、御容貌なども、いとようおはしけるを、あやしう執念き御もののけにわづらひたまひて、この年ごろ、人にも似たまはず、うつし心なき折々多くものしたまひて、御仲もあくがれてほど経にけれど、やむごとなきものとは、また並ぶ人なく思ひきこえたまへるを、めづらしう御心移る方の、なのめにだにあらず、人にすぐれたまへる御ありさまよりも、かの疑ひおきて、皆人の推し量りしことさへ、心きよくて<A HREF="#k10">過ぐい</A><A NAME="t10">た</A>まひけるなどを、ありがたうあはれと、思ひましきこえたまふも、ことわりになむ。<BR>⏎
<P>⏎
143 女君、人に劣りたまふべきことなし。人の御本性も、さるやむごとなき父親王の、いみじうかしづきたてまつりたまへるおぼえ、世に軽からず、御容貌なども、いとようおはしけるを、あやしう執念き御もののけにわづらひたまひて、この年ごろ、人にも似たまはず、うつし心なき折々多くものしたまひて、御仲もあくがれてほど経にけれど、やむごとなきものとは、また並ぶ人なく思ひきこえたまへるを、めづらしう御心移る方の、なのめにだにあらず、人にすぐれたまへる御ありさまよりも、かの疑ひおきて、皆人の推し量りしことさへ、心きよくて<A HREF="#k10">過ぐい</A><A NAME="t10">た</A>まひけるなどを、ありがたうあはれと、思ひましきこえたまふも、ことわりになむ。<BR>⏎
d1194<P>⏎
d1196<P>⏎
cd2:1197-198 とのたまひて宮の東の対を払ひしつらひて、「渡したてまつらむ」と思しのたまふを、「親の御あたりといひながら、今は限りの身にて、たち返り見えたてまつらむこと」と、思ひ乱れたまふに、いとど御心地もあやまりて、うちはへ臥しわづらひたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
146 とのたまひて宮の東の対を払ひしつらひて、「渡したてまつらむ」と思しのたまふを、「親の御あたりといひながら、今は限りの身にて、たち返り見えたてまつらむこと」と、思ひ乱れたまふに、いとど御心地もあやまりて、うちはへ臥しわづらひたまふ。<BR>⏎
d1200<P>⏎
text31201 <A NAME="in22">[第二段 鬚黒、北の方を慰める(一)]</A><BR>148 
d1202<P>⏎
d1204<P>⏎
d1206<P>⏎
d1208<P>⏎
d1210<P>⏎
d1212<P>⏎
cd2:1213-214 とうち笑ひてのたまへる、いとねたげに心やまし。<BR>⏎
<P>⏎
154 とうち笑ひてのたまへる、いとねたげに心やまし。<BR>⏎
text31215 <A NAME="in23">[第三段 鬚黒、北の方を慰める(二)]</A><BR>155 
d1216<P>⏎
d1218<P>⏎
cd4:2219-222 「<A HREF="#k13">みづからを</A><A NAME="t13">、</A>ほけたりひがひがし、とのたまひ、恥ぢしむるは、ことわりなることになむ。宮の御ことをさへ取り混ぜのたまふぞ、漏り聞きたまはむはいとほしう、憂き身のゆかり軽々しきやうなる。耳馴れにてはべれば、今はじめていかにもものを思ひはべらず」<BR>⏎
<P>⏎
 とてうち背きたまへる、らうたげなり。<BR>⏎
<P>⏎
157-158 「<A HREF="#k13">みづからを</A><A NAME="t13">、</A>ほけたりひがひがし、とのたまひ、恥ぢしむるは、ことわりなることになむ。宮の御ことをさへ取り混ぜのたまふぞ、漏り聞きたまはむはいとほしう、憂き身のゆかり軽々しきやうなる。耳馴れにてはべれば、今はじめていかにもものを思ひはべらず」<BR>⏎
 とてうち背きたまへる、らうたげなり。<BR>⏎
d1224<P>⏎
d1226<P>⏎
d1228<P>⏎
d1230<P>⏎
d1232<P>⏎
d1234<P>⏎
cd2:1235-236 とこしらへ聞こえたまへば、<BR>⏎
<P>⏎
165 とこしらへ聞こえたまへば、<BR>⏎
d1238<P>⏎
cd2:1239-240 大殿の北の方と聞こゆるも、異人にやはものしたまふ。かれは知らぬさまにて生ひ出でたまへる人の、末の世に、かく人の親だちもてないたまふつらさをなむ、思ほしのたまふなれど、ここにはともかくも思はずや。もてないたまはむさまを見るばかり」<BR>⏎
<P>⏎
167 大殿の北の方と聞こゆるも、異人にやはものしたまふ。かれは知らぬさまにて生ひ出でたまへる人の、末の世に、かく人の親だちもてないたまふつらさをなむ、思ほしのたまふなれど、ここにはともかくも思はずや。もてないたまはむさまを見るばかり」<BR>⏎
d1242<P>⏎
d1244<P>⏎
cd2:1245-246 など日一日入りゐて、語らひ申したまふ。<BR>⏎
<P>⏎
170 など日一日入りゐて、語らひ申したまふ。<BR>⏎
text31247 <A NAME="in24">[第四段 鬚黒、玉鬘のもとへ出かけようとする]</A><BR>171 
d1248<P>⏎
d1250<P>⏎
d1252<P>⏎
d1254<P>⏎
d1256<P>⏎
d1258<P>⏎
d1260<P>⏎
cd4:2261-264 「なほこのころばかり。心のほどを知らで、とかく人の言ひなし、大臣たちも左右に聞き思さむことを憚りてなむ、とだえあらむはいとほしき。思ひしづめて、なほ見果てたまへ。ここになど渡しては、心やすくはべりなむ。かく世の常なる御けしき見えたまふ時は、ほかざまに分くる心も失せてなむ、あはれに思ひきこゆる」<BR>⏎
<P>⏎
 など語らひたまへば、<BR>⏎
<P>⏎
178-179 「なほこのころばかり。心のほどを知らで、とかく人の言ひなし、大臣たちも左右に聞き思さむことを憚りてなむ、とだえあらむはいとほしき。思ひしづめて、なほ見果てたまへ。ここになど渡しては、心やすくはべりなむ。かく世の常なる御けしき見えたまふ時は、ほかざまに分くる心も失せてなむ、あはれに思ひきこゆる」<BR>⏎
 など語らひたまへば、<BR>⏎
d1266<P>⏎
cd2:1267-268 などなごやかに言ひゐたまへり。<BR>⏎
<P>⏎
181 などなごやかに言ひゐたまへり。<BR>⏎
text31269 <A NAME="in25">[第五段 北の方、鬚黒に香炉の灰を浴びせ掛ける]</A><BR>182 
d1270<P>⏎
cd2:1271-272 御火取り召して、いよいよ焚きしめさせたてまつりたまふ。みづからは、萎えたる御衣ども、うちとけたる御姿、いとど細うか弱げなり。しめりておはする、いと心苦し。御目のいたう泣き腫れたるぞ、すこしものしけれど、いとあはれと見る時は、罪なう思して、<BR>⏎
<P>⏎
183 御火取り召して、いよいよ焚きしめさせたてまつりたまふ。みづからは、萎えたる御衣ども、うちとけたる御姿、いとど細うか弱げなり。しめりておはする、いと心苦し。御目のいたう泣き腫れたるぞ、すこしものしけれど、いとあはれと見る時は、罪なう思して、<BR>⏎
d1274<P>⏎
d1276<P>⏎
d1278<P>⏎
d1280<P>⏎
cd4:2281-284 などさすがにまほにはあらで、そそのかしきこえて、声づくりあへり。<BR>⏎
<P>⏎
 中将、木工など、「あはれの世や」などうち嘆きつつ、語らひて臥したるに、正身は、いみじう思ひしづめて、らうたげに寄り臥したまへりと見るほどに、にはかに起き上がりて、大きなる籠の下なりつる火取りを取り寄せて、殿の後ろに寄りて、さと沃かけたまふほど、人のややみあふるほどもなう、あさましきに、あきれてものしたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
188-189 などさすがにまほにはあらで、そそのかしきこえて、声づくりあへり。<BR>⏎
 中将、木工など、「あはれの世や」などうち嘆きつつ、語らひて臥したるに、正身は、いみじう思ひしづめて、らうたげに寄り臥したまへりと見るほどに、にはかに起き上がりて、大きなる籠の下なりつる火取りを取り寄せて、殿の後ろに寄りて、さと沃かけたまふほど、人のややみあふるほどもなう、あさましきに、あきれてものしたまふ。<BR>⏎
d1286<P>⏎
cd2:1289-290 と御前なる人びとも、いとほしう見たてまつる。<BR>⏎
<P>⏎
193 と御前なる人びとも、いとほしう見たてまつる。<BR>⏎
d1292<P>⏎
d1294<P>⏎
text31295 <A NAME="in26">[第六段 鬚黒、玉鬘に手紙だけを贈る]</A><BR>196 
d1296<P>⏎
d1298<P>⏎
d1300<P>⏎
cd4:2301-304 ときすくに書きたまへり。<BR>⏎
<P>⏎
 「心さへ空に乱れし雪もよに<BR>⏎
  ひとり冴えつる片敷の袖<BR>⏎
199-200 ときすくに書きたまへり。<BR>⏎
 「心さへ空に乱れし雪もよに<BR>  ひとり冴えつる片敷の袖<BR>⏎
d1306<P>⏎
cd2:1307-308 と白き薄様に、つつやかに書い<A HREF="#k18">たまへれど</A><A NAME="t18">、</A>ことにをかしきところもなし。手はいときよげなり。才かしこくなどぞものしたまひける。<BR>⏎
<P>⏎
202 と白き薄様に、つつやかに書い<A HREF="#k18">たまへれど</A><A NAME="t18">、</A>ことにをかしきところもなし。手はいときよげなり。才かしこくなどぞものしたまひける。<BR>⏎
d1310<P>⏎
d1312<P>⏎
text31313 <A NAME="in27">[第七段 翌日、鬚黒、玉鬘を訪う]</A><BR>205 
d1314<P>⏎
cd3:2315-317 暮るれば、例の急ぎ出でたまふ。御装束のことなども、めやすくしなしたまはず、世にあやしう、うちあはぬさまにのみむつかりたまふを、あざやかなる御直衣なども、え取りあへたまはで、いと見苦し。<BR>⏎
<P>⏎
 昨夜のは、焼けとほりて、疎ましげに焦れたるにほひなどもことやうなり。御衣どもに移り香もしみたり。ふすべられけるほどあらはに、人も倦じたまひぬべければ、脱ぎ替へて、御湯殿など、いたうつくろひたまふ。<BR>⏎
206-207 暮るれば、例の急ぎ出でたまふ。御装束のことなども、めやすくしなしたまはず、世にあやしう、うちあはぬさまにのみむつかりたまふを、あざやかなる御直衣なども、え取りあへたまはで、いと見苦し。<BR>⏎
 昨夜のは、焼けとほりて、疎ましげに焦れたるにほひなどもことやうなり。御衣どもに移り香もしみたり。ふすべられけるほどあらはに、人も倦じたまひぬべければ、脱ぎ替へて、御湯殿など、いたうつくろひたまふ。<BR>⏎
d1319<P>⏎
cd3:1320-322 「ひとりゐて焦がるる胸の苦しきに<BR>⏎
  思ひあまれる炎とぞ見し<BR>⏎
<P>⏎
209 「ひとりゐて焦がるる胸の苦しきに<BR>  思ひあまれる炎とぞ見し<BR>⏎
d1324<P>⏎
cd5:2325-329 と口おほひてゐたる、まみいといたし。されど「いかなる心にて、かやうの人にものを言ひけむ」などのみぞおぼえたまひける。情けなきことよ。<BR>⏎
<P>⏎
 「憂きことを思ひ騒げばさまざまに<BR>⏎
  くゆる煙ぞいとど立ちそふ<BR>⏎
<P>⏎
211-212 と口おほひてゐたる、まみいといたし。されど「いかなる心にて、かやうの人にものを言ひけむ」などのみぞおぼえたまひける。情けなきことよ。<BR>⏎
 「憂きことを思ひ騒げばさまざまに<BR>  くゆる煙ぞいとど立ちそふ<BR>⏎
d1331<P>⏎
cd2:1332-333 とうち嘆きて出でたまひぬ。<BR>⏎
<P>⏎
214 とうち嘆きて出でたまひぬ。<BR>⏎
d1335<P>⏎
text31336 <H4>第三章 鬚黒大将家の物語 北の方、子供たちを連れて実家に帰る</H4>216 
text31337 <A NAME="in31">[第一段 式部卿宮、北の方を迎えに来る]</A><BR>217 
d1338<P>⏎
d1340<P>⏎
cd2:1341-342 殿に渡りたまふ時も、異方に離れゐたまひて、君達ばかりをぞ呼び放ちて見たてまつりたまふ。女一所、十二三ばかりにて、また次々、男二人なむおはしける。近き年ごろとなりては、御仲も隔たりがちにてならはしたまへれど、やむごとなう、立ち並ぶ方なくてならひたまへれば、「今は限り」と見たまふに、さぶらふ人びとも、「いみじう悲し」と思ふ。<BR>⏎
<P>⏎
219 殿に渡りたまふ時も、異方に離れゐたまひて、君達ばかりをぞ呼び放ちて見たてまつりたまふ。女一所、十二三ばかりにて、また次々、男二人なむおはしける。近き年ごろとなりては、御仲も隔たりがちにてならはしたまへれど、やむごとなう、立ち並ぶ方なくてならひたまへれば、「今は限り」と見たまふに、さぶらふ人びとも、「いみじう悲し」と思ふ。<BR>⏎
d1344<P>⏎
cd2:1345-346 「今は、しかかけ離れて、もて出でたまふらむに、さて心強くものしたまふ、いと面なう人笑へなることなり。おのがあらむ世の限りは、ひたぶるにしも、などか従ひくづほれたまはむ」<BR>⏎
<P>⏎
221 「今は、しかかけ離れて、もて出でたまふらむに、さて心強くものしたまふ、いと面なう人笑へなることなり。おのがあらむ世の限りは、ひたぶるにしも、などか従ひくづほれたまはむ」<BR>⏎
d1348<P>⏎
d1352<P>⏎
d1354<P>⏎
d1356<P>⏎
d1358<P>⏎
text31359 <A NAME="in32">[第二段 母君、子供たちを諭す]</A><BR>229 
d1360<P>⏎
d1362<P>⏎
d1364<P>⏎
d1366<P>⏎
d1368<P>⏎
cd5:3369-373 と泣きたまふに、皆深き心は思ひ分かねど、うちひそみて泣きおはさうず。<BR>⏎
<P>⏎
 「昔物語などを見るにも、世の常の心ざし深き親だに、時に移ろひ、人に従へば、おろかにのみこそなりけれ。まして形のやうにて、見る前にだに名残なき心は、かかりどころありてももてないたまはじ」<BR>⏎
 と御乳母どもさし集ひて、のたまひ嘆く。<BR>⏎
<P>⏎
234-236 と泣きたまふに、皆深き心は思ひ分かねど、うちひそみて泣きおはさうず。<BR>⏎
 「昔物語などを見るにも、世の常の心ざし深き親だに、時に移ろひ、人に従へば、おろかにのみこそなりけれ。まして形のやうにて、見る前にだに名残なき心は、かかりどころありてももてないたまはじ」<BR>⏎
 と御乳母どもさし集ひて、のたまひ嘆く。<BR>⏎
text31374 <A NAME="in33">[第三段 姫君、柱の隙間に和歌を残す]</A><BR>237 
d1375<P>⏎
d1377<P>⏎
d1379<P>⏎
c1380 と御迎への君達そそのかしきこえて、御目おし拭ひつつ眺めおはす。姫君は、殿いとかなしうしたてまつりたまふならひに、<BR>⏎
240 と御迎への君達そそのかしきこえて、御目おし拭ひつつ眺めおはす。姫君は、殿いとかなしうしたてまつりたまふならひに、<BR>⏎
d1383<P>⏎
d1385<P>⏎
cd2:1386-387 などこしらへきこえたまふ。「ただ今も渡りたまはなむ」と、待ちきこえたまへど、かく暮れなむに、まさに動きたまひなむや。<BR>⏎
<P>⏎
244 などこしらへきこえたまふ。「ただ今も渡りたまはなむ」と、待ちきこえたまへど、かく暮れなむに、まさに動きたまひなむや。<BR>⏎
d1389<P>⏎
cd3:1390-392 「今はとて宿かれぬとも馴れ来つる<BR>⏎
  真木の柱はわれを忘るな」<BR>⏎
<P>⏎
246 「今はとて宿かれぬとも馴れ来つる<BR>  真木の柱はわれを忘るな」<BR>⏎
d1394<P>⏎
cd5:2395-399 「馴れきとは思ひ出づとも何により<BR>⏎
  立ちとまるべき真木の柱ぞ」<BR>⏎
<P>⏎
 御前なる人びとも、さまざまに悲しく、「さしも思はぬ木草のもとさへ恋しからむこと」と、目とどめて、鼻すすりあへり。<BR>⏎
<P>⏎
248-249 「馴れきとは思ひ出づとも何により<BR>  立ちとまるべき真木の柱ぞ」<BR>⏎
 御前なる人びとも、さまざまに悲しく、「さしも思はぬ木草のもとさへ 恋しからむこと」と、目とどめて、鼻すすりあへり。<BR>⏎
d1401<P>⏎
cd3:1402-404 「浅けれど石間の水は澄み果てて<BR>⏎
  宿もる君やかけ離るべき<BR>⏎
<P>⏎
251 「浅けれど石間の水は澄み果てて<BR>  宿もる君やかけ離るべき<BR>⏎
d1406<P>⏎
d1408<P>⏎
cd2:1409-410 「ともかくも岩間の水の結ぼほれ<BR>⏎
  かけとむべくも思ほえぬ世を<BR>⏎
254 「ともかくも岩間の水の結ぼほれ<BR>  かけとむべくも思ほえぬ世を<BR>⏎
d1412<P>⏎
d1414<P>⏎
d1416<P>⏎
text31417 <A NAME="in34">[第四段 式部卿宮家の悲憤慷慨]</A><BR>258 
d1418<P>⏎
d1420<P>⏎
d1422<P>⏎
cd8:4423-430 女御をも、ことに触れ、はしたなくもてなしたまひしかど、それは御仲の恨み解けざりしほど、思ひ知れとにこそはありけめと思しのたまひ、世の人も言ひなししだに、なほさやはあるべき。<BR>⏎
<P>⏎
 人一人を思ひかしづきたまはむゆゑは、ほとりまでもにほふ例こそあれと、心得ざりしを、ましてかく末に、すずろなる継子かしづきをして、おのれ古したまへるいとほしみに、実法なる人の<A HREF="#k22">ゆるぎ</A><A NAME="t22">ど</A>ころあるまじきをとて、取り寄せもてかしづきたまふは、いかがつらからぬ」<BR>⏎
<P>⏎
 と言ひ続けののしりたまへば、宮は、<BR>⏎
<P>⏎
 「あな聞きにくや。世に難つけられたまはぬ大臣を、口にまかせてなおとしめたまひそ。かしこき人は、思ひおき、かかる報いもがなと、思ふことこそはものせられけめ。さ思はるるわが身の不幸なるにこそはあらめ。<BR>⏎
<P>⏎
261-264 女御をも、ことに触れ、はしたなくもてなしたまひしかど、それは御仲の恨み解けざりしほど、思ひ知れとにこそはありけめと思しのたまひ、世の人も言ひなししだに、なほさやはあるべき。<BR>⏎
 人一人を思ひかしづきたまはむゆゑは、ほとりまでもにほふ例こそあれと、心得ざりしを、ましてかく末に、すずろなる継子かしづきをして、おのれ古したまへるいとほしみに、実法なる人の<A HREF="#k22">ゆるぎ</A><A NAME="t22">ど</A>ころあるまじきをとて、取り寄せもてかしづきたまふは、いかがつらからぬ」<BR>⏎
 と言ひ続けののしりたまへば、宮は、<BR>⏎
 「あな聞きにくや。世に難つけられたまはぬ大臣を、口にまかせてなおとしめたまひそ。かしこき人は、思ひおき、かかる報いもがなと、思ふことこそはものせられけめ。さ思はるるわが身の不幸なるにこそはあらめ。<BR>⏎
d1432<P>⏎
d1434<P>⏎
d1438<P>⏎
d1440<P>⏎
d1442<P>⏎
d1444<P>⏎
text31445 <A NAME="in35">[第五段 鬚黒、式部卿宮家を訪問]</A><BR>273 
d1446<P>⏎
cd6:3447-452 宮に恨み聞こえむとて、参うでたまふままに、まづ殿におはしたれば、木工の君など出で来て、ありしさま語りきこゆ。姫君の御ありさま聞きたまひて、男々しく念じたまへど、ほろほろとこぼるる御けしき、いとあはれなり。<BR>⏎
<P>⏎
 「さても世の人にも似ず、あやしきことどもを見過ぐすここらの年ごろの心ざしを、見知りたまはずありけるかな。いと思ひのままならむ人は、今までも立ちとまるべくやはある。よしかの正身は、とてもかくても、いたづら人と見えたまへば、同じことなり。幼き人びとも、いかやうにもてなしたまはむとすらむ」<BR>⏎
<P>⏎
 とうち嘆きつつ、かの真木柱を見たまふに、手も幼けれど、心ばへのあはれに恋しきままに、道すがら涙おしのごひつつ参うで<A HREF="#k23">たまへれば</A><A NAME="t23">、</A>対面したまふべくもあらず。<BR>⏎
<P>⏎
274-276 宮に恨み聞こえむとて、参うでたまふままに、まづ殿におはしたれば、木工の君など出で来て、ありしさま語りきこゆ。姫君の御ありさま聞きたまひて、男々しく念じたまへど、ほろほろとこぼるる御けしき、いとあはれなり。<BR>⏎
 「さても世の人にも似ず、あやしきことどもを見過ぐすここらの年ごろの心ざしを、見知りたまはずありけるかな。いと思ひのままならむ人は、今までも立ちとまるべくやはある。よしかの正身は、とてもかくても、いたづら人と見えたまへば、同じことなり。幼き人びとも、いかやうにもてなしたまはむとすらむ」<BR>⏎
 とうち嘆きつつ、かの真木柱を見たまふに、手も幼けれど、心ばへのあはれに恋しきままに、道すがら涙おしのごひつつ参うで<A HREF="#k23">たまへれば</A><A NAME="t23">、</A>対面したまふべくもあらず。<BR>⏎
d1454<P>⏎
d1456<P>⏎
cd4:2457-460 「いと若々しき心地もしはべるかな。思ほし捨つまじき人びともはべればと、のどかに思ひはべりける心のおこたりを、かへすがへす聞こえてもやるかたなし。今はただ、なだらかに御覧じ許して、罪さりどころなう、世人にもことわらせて<A HREF="#k24">こそ</A><A NAME="t24">、</A>かやうにももてないたまはめ」<BR>⏎
<P>⏎
 など聞こえわづらひておはす。「姫君をだに見たてまつらむ」と聞こえ<A HREF="#k25">たまへれど</A><A NAME="t25">、</A>出だしたてまつるべくもあらず。<BR>⏎
<P>⏎
279-280 「いと若々しき心地もしはべるかな。思ほし捨つまじき人びともはべればと、のどかに思ひはべりける心のおこたりを、かへすがへす聞こえてもやるかたなし。今はただ、なだらかに御覧じ許して、罪さりどころなう、世人にもことわらせて<A HREF="#k24">こそ</A><A NAME="t24">、</A>かやうにももてないたまはめ」<BR>⏎
 など聞こえわづらひておはす。「姫君をだに見たてまつらむ」と聞こえ<A HREF="#k25">たまへれど</A><A NAME="t25">、</A>出だしたてまつるべくもあらず。<BR>⏎
d1463<P>⏎
cd4:2464-467 「あこをこそは恋しき御形見にも見るべかめれ」<BR>⏎
<P>⏎
 などうち泣きて語らひたまふ。宮にも、御けしき賜はらせたまへど、<BR>⏎
<P>⏎
283-284 「あこをこそは恋しき御形見にも見るべかめれ」<BR>⏎
 などうち泣きて語らひたまふ。宮にも、御けしき賜はらせたまへど、<BR>⏎
d1469<P>⏎
d1471<P>⏎
text31472 <A NAME="in36">[第六段 鬚黒、男子二人を連れ帰る]</A><BR>287 
d1473<P>⏎
d1475<P>⏎
cd2:1476-477 「なほここにあれ。来て<A HREF="#k26">見むにも</A><A NAME="t26">心</A>やすかるべく」<BR>⏎
<P>⏎
289 「なほここにあれ。来て<A HREF="#k26">見むにも</A><A NAME="t26">心</A>やすかるべく」<BR>⏎
d1479<P>⏎
d1481<P>⏎
d1483<P>⏎
d1485<P>⏎
d1487<P>⏎
d1489<P>⏎
d1491<P>⏎
text31492 <H4>第四章 玉鬘の物語 宮中出仕から鬚黒邸へ</H4>297 
text31493 <A NAME="in41">[第一段 玉鬘、新年になって参内]</A><BR>298 
d1494<P>⏎
d1496<P>⏎
d1498<P>⏎
d1500<P>⏎
d1502<P>⏎
d1504<P>⏎
cd2:1505-506 中宮、弘徽殿女御、この宮の女御、左の大殿の女御などさぶらひたまふ。さては中納言、宰相の御女二人ばかりぞさぶらひたまひける。<BR>⏎
<P>⏎
304 中宮、弘徽殿女御、この宮の女御、左の大殿の女御などさぶらひたまふ。さては中納言、宰相の御女二人ばかりぞさぶらひたまひける。<BR>⏎
text31507 <A NAME="in42">[第二段 男踏歌、貴顕の邸を回る]</A><BR>305 
d1508<P>⏎
d1510<P>⏎
d1512<P>⏎
cd2:1513-514 ほのぼのとをかしき朝ぼらけに、いたく酔ひ乱れたるさまして、「竹河」謡ひ<A HREF="#k31">ける</A><A NAME="t31">ほ</A>どを見れば、内の大殿の君達は、四五人ばかり、殿上人のなかに、声すぐれ、容貌きよげにて、うち続きたまへる、いとめでたし。<BR>⏎
<P>⏎
308 ほのぼのとをかしき朝ぼらけに、いたく酔ひ乱れたるさまして、「竹河」謡ひ<A HREF="#k31">ける</A><A NAME="t31">ほ</A>どを見れば、内の大殿の君達は、四五人ばかり、殿上人のなかに、声すぐれ、容貌きよげにて、うち続きたまへる、いとめでたし。<BR>⏎
d1516<P>⏎
d1518<P>⏎
d1520<P>⏎
text31521 <A NAME="in43">[第三段 玉鬘の宮中生活]</A><BR>312 
d1522<P>⏎
d1524<P>⏎
cd4:2525-528 「夜さり、まかでさせたてまつりてむ。かかるついでにと、思し移るらむ御宮仕へなむやすからぬ」<BR>⏎
<P>⏎
 とのみ同じことを責めきこえたまへど、御返りなし。さぶらふ人びとぞ、<BR>⏎
<P>⏎
314-315 「夜さり、まかでさせたてまつりてむ。かかるついでにと、思し移るらむ御宮仕へなむやすからぬ」<BR>⏎
 とのみ同じことを責めきこえたまへど、御返りなし。さぶらふ人びとぞ、<BR>⏎
d1530<P>⏎
d1532<P>⏎
d1534<P>⏎
d1536<P>⏎
d1538<P>⏎
cd2:1539-540 「深山木に羽うち交はしゐる鳥の<BR>⏎
  またなくねたき春にもあるかな<BR>⏎
321 「深山木に羽うち交はしゐる鳥の<BR>  またなくねたき春にもあるかな<BR>⏎
d1542<P>⏎
d1544<P>⏎
cd4:2545-548 <A NAME="in44">[第四段 帝玉鬘のもとを訪う]</A><BR>⏎
<P>⏎
 月の明かきに、御容貌はいふよしなくきよらにて、ただかの大臣の御けはひに違ふところなくおはします。「かかる人はまたもおはしけり」と、見たてまつりたまふ。かの御心ばへは浅からぬも、うたてもの思ひ加はりしを、これはなどかはさしもおぼえさせたまはむ。いとなつかしげに、思ひしことの違ひにたる怨みをのたまはするに、面おかむかたなくぞおぼえたまふや。顔をもて隠して、御応へもえ聞こえたまはねば、<BR>⏎
<P>⏎
324-325 <A NAME="in44">[第四段 帝玉鬘のもとを訪う]</A><BR>⏎
 月の明かきに、御容貌はいふよしなくきよらにて、ただかの大臣の御けはひに違ふところなくおはします。「かかる人はまたもおはしけり」と、見たてまつりたまふ。かの御心ばへは浅からぬも、うたてもの思ひ加はりしを、これはなどかはさしもおぼえさせたまはむ。いとなつかしげに、思ひしことの違ひにたる怨みをのたまはするに、面おかむかたなくぞおぼえたまふや。顔をもて隠して、御応へもえ聞こえたまはねば、<BR>⏎
d1550<P>⏎
d1552<P>⏎
cd3:1553-555 「などてかく灰あひがたき紫を<BR>⏎
  心に深く思ひそめけむ<BR>⏎
<P>⏎
328 「などてかく灰あひがたき紫を<BR>  心に深く思ひそめけむ<BR>⏎
d1557<P>⏎
d1559<P>⏎
cd3:1560-562 「いかならむ色とも知らぬ紫を<BR>⏎
  心してこそ人は染めけれ<BR>⏎
<P>⏎
331 「いかならむ色とも知らぬ紫を<BR>  心してこそ人は染めけれ<BR>⏎
d1564<P>⏎
d1566<P>⏎
cd4:2567-570 「その今より染めたまはむこそ、かひなかべいことなれ。愁ふべき人あらば、ことわり聞かまほしくなむ」<BR>⏎
<P>⏎
 といたう怨みさせたまふ御けしきの、まめやかにわづらはしければ、「いとうたてもあるかな」とおぼえて、「をかしきさまをも見えたてまつらじ、むつかしき世の癖なりけり」と思ふに、まめだちてさぶらひたまへば、え思すさまなる乱れごともうち出でさせたまはで、「やうやうこそは目馴れめ」と思しけり。<BR>⏎
<P>⏎
334-335 「その今より染めたまはむこそ、かひなかべいことなれ。愁ふべき人あらば、ことわり聞かまほしくなむ」<BR>⏎
 といたう怨みさせたまふ御けしきの、まめやかにわづらはしければ、「いとうたてもあるかな」とおぼえて、「をかしきさまをも見えたてまつらじ、むつかしき世の癖なりけり」と思ふに、まめだちてさぶらひたまへば、え思すさまなる乱れごともうち出でさせたまはで、「やうやうこそは目馴れめ」と思しけり。<BR>⏎
text31571 <A NAME="in45">[第五段 玉鬘、帝と和歌を詠み交す]</A><BR>336 
d1572<P>⏎
d1574<P>⏎
d1576<P>⏎
cd2:1577-578 とてまことにいと口惜しと思し召したり。<BR>⏎
<P>⏎
339 とてまことにいと口惜しと思し召したり。<BR>⏎
cd3:2580-582 されどひたぶるに浅き方に、思ひ疎まれじとて、いみじう心深きさまにのたまひ契りて、なつけたまふも、かたじけなう、「われはわれ、と思ふものを」と思す。<BR>⏎
<P>⏎
 御輦車寄せて、こなたかなたの、御かしづき人ども心もとながり、大将も、いとものむつかしうたち添ひ、騷ぎたまふまで、えおはしまし離れず。<BR>⏎
341-342 されどひたぶるに浅き方に、思ひ疎まれじとて、いみじう心深きさまにのたまひ契りて、なつけたまふも、かたじけなう、「われはわれ、と思ふものを」と思す。<BR>⏎
 御輦車寄せて、こなたかなたの、御かしづき人ども心もとながり、大将も、いとものむつかしうたち添ひ、騷ぎたまふまで、えおはしまし離れず。<BR>⏎
d1585<P>⏎
cd3:1586-588 「九重に霞隔てば梅の花<BR>⏎
  ただ香ばかりも匂ひ来じとや」<BR>⏎
<P>⏎
345 「九重に霞隔てば梅の花<BR>  ただ香ばかりも匂ひ来じとや」<BR>⏎
d1590<P>⏎
d1592<P>⏎
d1594<P>⏎
cd3:1595-597 「香ばかりは風にもつてよ花の枝に<BR>⏎
  立ち並ぶべき匂ひなくとも」<BR>⏎
<P>⏎
349 「香ばかりは風にもつてよ花の枝に<BR>  立ち並ぶべき匂ひなくとも」<BR>⏎
d1599<P>⏎
text31600 <A NAME="in46">[第六段 玉鬘、鬚黒邸に退出]</A><BR>351 
d1601<P>⏎
d1603<P>⏎
d1605<P>⏎
cd2:1606-607 とおいらかに申しないたまひて、やがて渡したてまつりたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
354 とおいらかに申しないたまひて、やがて渡したてまつりたまふ。<BR>⏎
d1609<P>⏎
d1611<P>⏎
cd2:1612-613 とぞ聞こえたまひける。<BR>⏎
<P>⏎
357 とぞ聞こえたまひける。<BR>⏎
d1615<P>⏎
cd2:1616-617 かの入りゐさせたまへりしことを、いみじう怨じきこえさせたまふも、心づきなく、なほなほしき心地して、世には心解けぬ御もてなし、いよいよけしき悪し。<BR>⏎
<P>⏎
359 かの入りゐさせたまへりしことを、いみじう怨じきこえさせたまふも、心づきなく、なほなほしき心地して、世には心解けぬ御もてなし、いよいよけしき悪し。<BR>⏎
d1619<P>⏎
text31620 <A NAME="in47">[第七段 二月、源氏、玉鬘へ手紙を贈る]</A><BR>361 
d1621<P>⏎
cd2:1623-624 「さてもつれなきわざなりや。いとかう際々しうとしも思はで、たゆめられたるねたさを」、人悪ろく、すべて御心にかからぬ折なく、恋しう思ひ出でられたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
363 「さてもつれなきわざなりや。いとかう際々しうとしも思はで、たゆめられたるねたさを」、人悪ろく、すべて御心にかからぬ折なく、恋しう思ひ出でられたまふ。<BR>⏎
cd9:4626-634 と起き臥し<A HREF="#k33">面影にぞ</A><A NAME="t33">見</A>えたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
 大将の、をかしやかに、わららかなる気もなき人に添ひゐたらむに、はかなき戯れごともつつましうあいなく思されて、念じたまふを、雨いたう降りて、いとのどやかなるころ、かやうのつれづれも紛らはし所に渡りたまひて、語らひたまひしさまなどの、いみじう恋しければ、御文たてまつりたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
 右近がもとに忍びて遣はすも、かつは思はむことを思すに、何ごともえ続けたまはで、ただ思はせたることどもぞありける。<BR>⏎
<P>⏎
 「かきたれてのどけきころの春雨に<BR>⏎
  ふるさと人をいかに偲ぶや<BR>⏎
<P>⏎
365-368 と起き臥し<A HREF="#k33">面影にぞ</A><A NAME="t33">見</A>えたまふ。<BR>⏎
 大将の、をかしやかに、わららかなる気もなき人に添ひゐたらむに、はかなき戯れごともつつましうあいなく思されて、念じたまふを、雨いたう降りて、いとのどやかなるころ、かやうのつれづれも紛らはし所に渡りたまひて、語らひたまひしさまなどの、いみじう恋しければ、御文たてまつりたまふ。<BR>⏎
 右近がもとに忍びて遣はすも、かつは思はむことを思すに、何ごともえ続けたまはで、ただ思はせたることどもぞありける。<BR>⏎
 「かきたれてのどけきころの春雨に<BR>  ふるさと人をいかに偲ぶや<BR>⏎
d1636<P>⏎
d1638<P>⏎
cd2:1639-640 隙に忍びて見せたてまつれば、うち泣きて、わが心にも、ほど経るままに思ひ出でられたまふ御さまを、まほに「恋しや、いかで見たてまつらむ」などは、えのたまはぬ親にて、「げにいかでかは対面もあらむ」と、あはれなり。<BR>⏎
<P>⏎
371 隙に忍びて見せたてまつれば、うち泣きて、わが心にも、ほど経るままに思ひ出でられたまふ御さまを、まほに「恋しや、いかで見たてまつらむ」などは、えのたまはぬ親にて、「げにいかでかは対面もあらむ」と、あはれなり。<BR>⏎
d1643<P>⏎
cd7:3644-650 「眺めする軒の雫に袖ぬれて<BR>⏎
  うたかた人を偲ばざらめや<BR>⏎
<P>⏎
 <A HREF="#no6">ほどふるころは</A><A NAME="te6">、</A>げにことなるつれづれもまさりはべりけり。あなかしこ」<BR>⏎
<P>⏎
 とゐやゐやしく書きなしたまへり。<BR>⏎
<P>⏎
374-376 「眺めする軒の雫に袖ぬれて<BR>  うたかた人を偲ばざらめや<BR>⏎
 <A HREF="#no6">ほどふるころは</A><A NAME="te6">、</A>げにことなるつれづれもまさりはべりけり。あなかしこ」<BR>⏎
 とゐやゐやしく書きなしたまへり。<BR>⏎
text31651 <A NAME="in48">[第八段 源氏、玉鬘の返書を読む]</A><BR>377 
d1652<P>⏎
d1654<P>⏎
d1656<P>⏎
cd2:1657-658 とさましわびたまひて、御琴掻き鳴らして、なつかしう弾きなしたまひし爪音、思ひ出でられたまふ。あづまの調べを、すが掻きて、<BR>⏎
<P>⏎
380 とさましわびたまひて、御琴掻き鳴らして、なつかしう弾きなしたまひし爪音、思ひ出でられたまふ。あづまの調べを、すが掻きて、<BR>⏎
d1660<P>⏎
cd2:1661-662 と歌ひすさびたまふも、恋しき人に見せたらば、あはれ過ぐすまじき御さまなり。<BR>⏎
<P>⏎
382 と歌ひすさびたまふも、恋しき人に見せたらば、あはれ過ぐすまじき御さまなり。<BR>⏎
d1664<P>⏎
d1666<P>⏎
cd3:2667-669 と憎げなる古事なれど、御言種になりてなむ、眺めさせたまひける。御文は、忍び忍びにありけり。身を憂きものに思ひしみたまひて、<A HREF="#k36">かやう</A><A NAME="t36">の</A>すさびごとをも、あいなく思しければ、心とけたる御いらへも聞こえたまはず。<BR>⏎
 なほかのありがたかりし御心おきてを、かたがたにつけて思ひしみたまへる御ことぞ、忘られざりける。<BR>⏎
<P>⏎
385-386 と憎げなる古事なれど、御言種になりてなむ、眺めさせたまひける。御文は、忍び忍びにありけり。身を憂きものに思ひしみたまひて、<A HREF="#k36">かやう</A><A NAME="t36">の</A>すさびごとをも、あいなく思しければ、心とけたる御いらへも聞こえたまはず。<BR>⏎
 なほかのありがたかりし御心おきてを、かたがたにつけて思ひしみたまへる御ことぞ、忘られざりける。<BR>⏎
text31670 <A NAME="in49">[第九段 三月、源氏、玉鬘を思う]</A><BR>387 
d1671<P>⏎
d1674<P>⏎
d1676<P>⏎
d1678<P>⏎
cd2:1679-680 「思はずに<A HREF="#k37">井手の</A><A NAME="t37">中</A>道隔つとも<BR>⏎
  言はでぞ恋ふる山吹の花<BR>⏎
392 「思はずに<A HREF="#k37">井手の</A><A NAME="t37">中</A>道隔つとも<BR>  言はでぞ恋ふる山吹の花<BR>⏎
d1682<P>⏎
cd2:1683-684 などのたまふも、聞く人なし。かくさすがにもて離れたることは、このたびぞ思しける。げにあやしき御心のすさびなりや。<BR>⏎
<P>⏎
394 などのたまふも、聞く人なし。かくさすがにもて離れたることは、このたびぞ思しける。げにあやしき御心のすさびなりや。<BR>⏎
d1686<P>⏎
d1688<P>⏎
cd7:3689-695 など<A HREF="#k39">親めき</A><A NAME="t39">書</A>きたまひて、<BR>⏎
<P>⏎
 「同じ巣にかへりしかひの見えぬかな<BR>⏎
  いかなる人か手ににぎるらむ<BR>⏎
<P>⏎
 などかさしもなど、心やましうなむ」<BR>⏎
<P>⏎
397-399 など<A HREF="#k39">親めき</A><A NAME="t39">書</A>きたまひて、<BR>⏎
 「同じ巣にかへりしかひの見えぬかな<BR>  いかなる人か手ににぎるらむ<BR>⏎
 などかさしもなど、心やましうなむ」<BR>⏎
d1697<P>⏎
cd4:2698-701 「女は、まことの親の御あたりにも、たはやすくうち渡り見えたてまつりたまはむこと、ついでなくてあるべきことにあらず。ましてなぞこの大臣の、をりをり思ひ放たず、恨み言はしたまふ」<BR>⏎
<P>⏎
 とつぶやくも、憎しと聞きたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
401-402 「女は、まことの親の御あたりにも、たはやすくうち渡り見えたてまつりたまはむこと、ついでなくてあるべきことにあらず。ましてなぞこの大臣の、をりをり思ひ放たず、恨み言はしたまふ」<BR>⏎
 とつぶやくも、憎しと聞きたまふ。<BR>⏎
d1703<P>⏎
cd2:1704-705 と書きにくくおぼいたれば、<BR>⏎
<P>⏎
404 と書きにくくおぼいたれば、<BR>⏎
d1707<P>⏎
d1709<P>⏎
cd3:1710-712 「巣隠れて数にもあらぬかりの子を<BR>⏎
 いづ方にかは<A HREF="#k40">取り隠す</A><A NAME="t40">べ</A>き<BR>⏎
<P>⏎
407 「巣隠れて数にもあらぬかりの子を<BR>  いづ方にかは<A HREF="#k40">取り隠す</A><A NAME="t40">べ</A>き<BR>⏎
d1714<P>⏎
d1716<P>⏎
d1718<P>⏎
cd2:1719-720 とて笑ひたまふ。心のうちには、かく領じたるを、いとからしと思す。<BR>⏎
<P>⏎
411 とて笑ひたまふ。心のうちには、かく領じたるを、いとからしと思す。<BR>⏎
text31721 <H4>第五章 鬚黒大将家と内大臣家の物語 玉鬘と近江の君</H4>412 
text31722 <A NAME="in51">[第一段 北の方、病状進む]</A><BR>413 
d1723<P>⏎
cd2:1724-725 かのもとの北の方は、月日隔たるままに、あさましと、ものを思ひ沈み、いよいよ呆け疾れてものしたまふ。大将殿のおほかたの訪らひ、何ごとをも詳しう思しおきて、君達をば、変はらず思ひかしづきたまへば、えしもかけ離れたまはず、まめやかなる方の頼みは、同じことにてなむものしたまひける。<BR>⏎
<P>⏎
414 かのもとの北の方は、月日隔たるままに、あさましと、ものを思ひ沈み、いよいよ呆け疾れてものしたまふ。大将殿のおほかたの訪らひ、何ごとをも詳しう思しおきて、君達をば、変はらず思ひかしづきたまへば、えしもかけ離れたまはず、まめやかなる方の頼みは、同じことにてなむものしたまひける。<BR>⏎
d1727<P>⏎
d1729<P>⏎
cd2:1730-731 など言ふに、うらやましう、かやうにても安らかに振る舞ふ身ならざりけむを嘆きたまふ。あやしう、男女につけつつ人にものを思はする尚侍の君<A HREF="#k41">にぞ</A><A NAME="t41">お</A>はしける。<BR>⏎
<P>⏎
417 など言ふに、うらやましう、かやうにても安らかに振る舞ふ身ならざりけむを嘆きたまふ。あやしう、男女につけつつ人にものを思はする尚侍の君<A HREF="#k41">にぞ</A><A NAME="t41">お</A>はしける。<BR>⏎
text31732 <A NAME="in52">[第二段 十一月に玉鬘、男子を出産]</A><BR>418 
d1733<P>⏎
d1735<P>⏎
d1737<P>⏎
d1739<P>⏎
cd2:1740-741 とこの若君のうつくしきにつけても、<BR>⏎
<P>⏎
422 とこの若君のうつくしきにつけても、<BR>⏎
d1743<P>⏎
cd2:1744-745 とあまりのことをぞ思ひてのたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
424 とあまりのことをぞ思ひてのたまふ。<BR>⏎
d1747<P>⏎
text31748 <A NAME="in53">[第三段 近江の君、活発に振る舞う]</A><BR>426 
d1749<P>⏎
c1750 まことや、かの内の大殿の御女の、尚侍のぞみし君も、さる<A HREF="#k44">ものの</A><A NAME="t44">癖</A>なれば、色めかしう、さまよふ心さへ添ひて、もてわづらひたまふ。女御も、「つひにあはあはしきこと、この君ぞ引き出でむ」と、ともすれば、御胸つぶしたまへど、大臣の、<BR>⏎
427 まことや、かの内の大殿の御女の、尚侍のぞみし君も、さる<A HREF="#k44">ものの</A><A NAME="t44">癖</A>なれば、色めかしう、さまよふ心さへ添ひて、もてわづらひたまふ。女御も、「つひにあはあはしきこと、この君ぞ引き出でむ」と、ともすれば、御胸つぶしたまへど、大臣の、<BR>⏎
cd2:1752-753 と制しのたまふをだに聞き入れず、まじらひ出でてものしたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
429 と制しのたまふをだに聞き入れず、まじらひ出でてものしたまふ。<BR>⏎
d1755<P>⏎
cd2:1756-757 「なほ人よりことにも」<BR>⏎
<P>⏎
431 「なほ人よりことにも」<BR>⏎
d1759<P>⏎
cd2:1760-761 「あなうたてや。こはなぞ」<BR>⏎
<P>⏎
433 「あなうたてや。こはなぞ」<BR>⏎
d1763<P>⏎
cd2:1765-766 とつき交はすに、この世に目馴れぬまめ人をしも、<BR>⏎
<P>⏎
436 とつき交はすに、この世に目馴れぬまめ人をしも、<BR>⏎
d1768<P>⏎
d1770<P>⏎
cd5:2771-775 「沖つ舟よるべ波路に漂はば<BR>⏎
  棹さし寄らむ泊り教へよ<BR>⏎
<P>⏎
 <A HREF="#no13">棚なし小舟</A><A NAME="te13">漕</A>ぎ返り、同じ人をや。あな<A HREF="#k48">悪や</A><A NAME="t48">」</A><BR>⏎
<P>⏎
439-440 「沖つ舟よるべ波路に漂はば<BR>  棹さし寄らむ泊り教へよ<BR>⏎
 <A HREF="#no13">棚なし小舟</A><A NAME="te13">漕</A>ぎ返り、同じ人をや。あな<A HREF="#k48">悪や</A><A NAME="t48">」</A><BR>⏎
d1777<P>⏎
cd8:3779-786 とをかしうて、<BR>⏎
<P>⏎
 「よるべなみ風の騒がす舟人も<BR>⏎
  思はぬ方に磯伝ひせず」<BR>⏎
<P>⏎
 とてはしたなかめり、とや。<BR>⏎

<P>⏎
443-445 とをかしうて、<BR>⏎
 「よるべなみ風の騒がす舟人も<BR>  思はぬ方に磯伝ひせず」<BR>⏎
 とてはしたなかめり、とや。<BR>⏎
text31787 <a name="in61">【出典】<BR>446 
c1788</a><A NAME="no1">出典1</A> 思ひつつ寝泣くに明くる冬の夜の袖の氷は解けずもあるかな(後撰集冬-四八一 読人しらず)<A HREF="#te1">(戻)</A><BR>⏎
447<A NAME="no1">出典1</A> 思ひつつ寝泣くに明くる冬の夜の袖の氷は解けずもあるかな(後撰集冬-四八一 読人しらず)<A HREF="#te1">(戻)</A><BR>⏎
d1801
text31802<p> <a name="in62">【校訂】<BR>460 
c1804</a><A NAME="k01">校訂1</A> 思ふ--思ひ(ひ/$<朱>)<A HREF="#t01">(戻)</A><BR>⏎
462<A NAME="k01">校訂1</A> 思ふ--思ひ(ひ/$<朱>)<A HREF="#t01">(戻)</A><BR>⏎
cd4:3849-852<A NAME="k46">校訂46</A> これぞなこれぞな--これそなゝ<A HREF="#t46">(戻)</A><BR>⏎
<A NAME="k47">校訂47</A> 棚なし--(/+た)なゝし<A HREF="#t47">(戻)</A><BR>⏎
<A NAME="k48">校訂48</A> 悪や--はるやい(い/#)<A HREF="#t48">(戻)</A><BR>⏎
</p>⏎
507-509<A NAME="k46">校訂46</A> これぞなこれぞな--これそなゝ<A HREF="#t46">(戻)</A><BR>
<A NAME="k47">校訂46</A> 棚なし--(/+た)なゝし<A HREF="#t47">(戻)</A><BR>⏎
<A NAME="k48">校訂47</A> 悪や--はるやい(い/#)<A HREF="#t48">(戻)</A><BR>⏎
d1859</p>⏎
i0520
diffsrc/original/text32.htmlsrc/modified/text32.html
cd2:18-9<body background="wallppr063.gif">⏎
First updated 9/20/1996(ver.1-1)<BR>⏎
8<BODY>⏎
cd3:210-12Last updated 9/21/2010(ver.2-3)<BR>⏎
渋谷栄一校訂(C)<BR>⏎
<P
>⏎
9-10<ADDRESS>Last updated 9/21/2010(ver.2-3)<BR>⏎
渋谷栄一校訂(C)</ADDRESS>⏎
d114<P>⏎
d116<P>⏎
d144<P>⏎
d168<P>⏎
d171<P>⏎
text3272 <H4>第一章 光る源氏の物語 薫物合せ</H4>65 
text3273 <A NAME="in11">[第一段 六条院の薫物合せの準備]</A><BR>66 
d174<P>⏎
d176<P>⏎
cd2:177-78 正月の晦日なれば、公私のどやかなるころほひに、薫物合はせたまふ。大弐の奉れる香ども御覧ずるに、「なほいにしへのには劣りてやあらむ」と思して、二条院の御倉開けさせたまひて、唐の物ども取り渡させたまひて、御覧じ比ぶるに、<BR>⏎
<P>⏎
68 正月の晦日なれば、公私のどやかなるころほひに、薫物合はせたまふ。大弐の奉れる香ども御覧ずるに、「なほいにしへのには劣りてやあらむ」と思して、二条院の御倉開けさせたまひて、唐の物ども取り渡させたまひて、御覧じ比ぶるに、<BR>⏎
d180<P>⏎
cd2:181-82 とて近き御しつらひの、物の覆ひ、敷物、茵などの端どもに、故院の御世の初めつ方、高麗人のたてまつれりける綾、緋金錦どもなど、今の世のものに似ず、なほさまざま御覧じあてつつせさせたまひて、このたびの綾、羅などは、人びとに賜はす。<BR>⏎
<P>⏎
70 とて近き御しつらひの、物の覆ひ、敷物、茵などの端どもに、故院の御世の初めつ方、高麗人のたてまつれりける綾、緋金錦どもなど、今の世のものに似ず、なほさまざま御覧じあてつつせさせたまひて、このたびの綾、羅などは、人びとに賜はす。<BR>⏎
d184<P>⏎
d186<P>⏎
cd2:187-88 と聞こえさせたまへり。贈り物、上達部の禄など、世になきさまに、内にも外にも、ことしげくいとなみたまふに添へて、方々に選りととのへて、鉄臼の音耳かしかましきころなり。<BR>⏎
<P>⏎
73 と聞こえさせたまへり。贈り物、上達部の禄など、世になきさまに、内にも外にも、ことしげくいとなみたまふに添へて、方々に選りととのへて、鉄臼の音耳かしかましきころなり。<BR>⏎
d190<P>⏎
d192<P>⏎
d194<P>⏎
d196<P>⏎
d198<P>⏎
text3299 <A NAME="in12">[第二段 二月十日、薫物合せ]</A><BR>79 
d1100<P>⏎
d1102<P>⏎
d1104<P>⏎
cd2:1105-106 とてをかしと思したれば、ほほ笑みて、<BR>⏎
<P>⏎
82 とてをかしと思したれば、ほほ笑みて、<BR>⏎
d1108<P>⏎
cd2:1109-110 とて御文は引き隠したまひつ。<BR>⏎
<P>⏎
84 とて御文は引き隠したまひつ。<BR>⏎
d1112<P>⏎
d1114<P>⏎
cd5:2115-119 とて御目止めたまへるに、<BR>⏎
<P>⏎
 「花の香は散りにし枝にとまらねど<BR>⏎
  うつらむ袖に浅くしまめや」<BR>⏎
<P>⏎
87-88 とて御目止めたまへるに、<BR>⏎
 「花の香は散りにし枝にとまらねど<BR>  うつらむ袖に浅くしまめや」<BR>⏎
d1121<P>⏎
d1123<P>⏎
d1125<P>⏎
d1127<P>⏎
d1129<P>⏎
d1131<P>⏎
cd5:2132-136 とて御硯のついでに、<BR>⏎
<P>⏎
 「<A HREF="#no1">花の枝にいとど心を</A><A NAME="te1">し</A>むるかな<BR>⏎
  人のとがめむ香をばつつめど」<BR>⏎
<P>⏎
95-96 とて御硯のついでに、<BR>⏎
 「<A HREF="#no1">花の枝にいとど心を</A><A NAME="te1">し</A>むるかな<BR>  人のとがめむ香をばつつめど」<BR>⏎
d1138<P>⏎
d1140<P>⏎
cd6:3141-146 など聞こえたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
 「あえものも、げにかならず思し寄るべきことなりけり」<BR>⏎
<P>⏎
 とことわり申したまふ。<BR>⏎
<P>⏎
99-101 など聞こえたまふ。<BR>⏎
 「あえものも、げにかならず思し寄るべきことなりけり」<BR>⏎
 とことわり申したまふ。<BR>⏎
text32147 <A NAME="in13">[第三段 御方々の薫物]</A><BR>102 
d1148<P>⏎
d1152<P>⏎
d1154<P>⏎
d1156<P>⏎
d1158<P>⏎
d1160<P>⏎
d1162<P>⏎
d1164<P>⏎
cd2:1165-166 と悩みたまふ。同じうこそは、いづくにも散りつつ広ごるべかめるを、人びとの心々に合はせたまへる、深さ浅さを、かぎあはせたまへるに、いと興あること多かり。<BR>⏎
<P>⏎
112 と悩みたまふ。同じうこそは、いづくにも散りつつ広ごるべかめるを、人びとの心々に合はせたまへる、深さ浅さを、かぎあはせたまへるに、いと興あること多かり。<BR>⏎
d1168<P>⏎
d1170<P>⏎
d1172<P>⏎
d1174<P>⏎
cd2:1175-176 夏の御方には、人びとのかう心々に挑みたまふなる中に、数々にも立ち出でずやと、煙をさへ思ひ消えたまへる御心にて、ただ荷葉を一種合はせたまへり。さま変はりしめやかなる香して、あはれになつかし。<BR>⏎
<P>⏎
117 夏の御方には、人びとのかう心々に挑みたまふなる中に、数々にも立ち出でずやと、煙をさへ思ひ消えたまへる御心にて、ただ荷葉を一種合はせたまへり。さま変はりしめやかなる香して、あはれになつかし。<BR>⏎
d1178<P>⏎
d1180<P>⏎
d1182<P>⏎
text32183 <A NAME="in14">[第四段 薫物合せ後の饗宴]</A><BR>121 
d1184<P>⏎
d1186<P>⏎
d1188<P>⏎
d1190<P>⏎
cd2:1191-192 宮の御前に琵琶、大臣に<A HREF="#k07">箏の</A><A NAME="t07">御</A>琴参りて、頭中将、和琴賜はりて、はなやかに掻きたてたるほど、いとおもしろく聞こゆ。宰相中将、横笛吹きたまふ。折にあひたる調子、雲居とほるばかり吹きたてたり。弁少将拍子取りて、「<A HREF="#no4">梅が枝</A><A NAME="te4">」</A>出だしたるほど、<A HREF="#k08">いと</A><A NAME="t08">を</A>かし。童にて、韻塞ぎの折、「高砂」謡ひし君なり。宮も大臣もさしいらへしたまひて、ことことしからぬものから、をかしき夜の御遊びなり。<BR>⏎
<P>⏎
125 宮の御前に琵琶、大臣に<A HREF="#k07">箏の</A><A NAME="t07">御</A>琴参りて、頭中将、和琴賜はりて、はなやかに掻きたてたるほど、いとおもしろく聞こゆ。宰相中将、横笛吹きたまふ。折にあひたる調子、雲居とほるばかり吹きたてたり。弁少将拍子取りて、「<A HREF="#no4">梅が枝</A><A NAME="te4">」</A>出だしたるほど、<A HREF="#k08">いと</A><A NAME="t08">を</A>かし。童にて、韻塞ぎの折、「高砂」謡ひし君なり。宮も大臣もさしいらへしたまひて、ことことしからぬものから、をかしき夜の御遊びなり。<BR>⏎
d1194<P>⏎
cd2:1195-196 「鴬の声にやいとどあくがれむ<BR>⏎
  心しめつる花のあたりに<BR>⏎
127 「鴬の声にやいとどあくがれむ<BR>  心しめつる花のあたりに<BR>⏎
d1198<P>⏎
d1200<P>⏎
cd3:1201-203 「色も香もうつるばかりにこの春は<BR>⏎
  花咲く宿をかれずもあらなむ」<BR>⏎
<P>⏎
130 「色も香もうつるばかりにこの春は<BR>  花咲く宿をかれずもあらなむ」<BR>⏎
d1205<P>⏎
cd3:1206-208 「鴬のねぐらの枝もなびくまで<BR>⏎
  なほ吹きとほせ夜半の笛竹」<BR>⏎
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132 「鴬のねぐらの枝もなびくまで<BR>  なほ吹きとほせ夜半の笛竹」<BR>⏎
d1210<P>⏎
cd2:1211-212 「心ありて風の避くめる花の木に<BR>⏎
  とりあへぬまで吹きや寄るべき<BR>⏎
134 「心ありて風の避くめる花の木に<BR>  とりあへぬまで吹きや寄るべき<BR>⏎
d1214<P>⏎
cd5:2215-219 と皆うち笑ひたまふ。弁少将、<BR>⏎
<P>⏎
 「霞だに月と花とを隔てずは<BR>⏎
  ねぐらの鳥もほころびなまし」<BR>⏎
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136-137 と皆うち笑ひたまふ。弁少将、<BR>⏎
 「霞だに月と花とを隔てずは<BR>  ねぐらの鳥もほころびなまし」<BR>⏎
d1221<P>⏎
cd3:1222-224 「花の香をえならぬ袖にうつしもて<BR>⏎
  ことあやまりと妹やとがめむ」<BR>⏎
<P>⏎
139 「花の香をえならぬ袖にうつしもて<BR>  ことあやまりと妹やとがめむ」<BR>⏎
d1226<P>⏎
d1228<P>⏎
d1230<P>⏎
cd3:1231-233 「めづらしと故里人も待ちぞ見む<BR>⏎
  花の錦を着て帰る君<BR>⏎
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143 「めづらしと故里人も待ちぞ見む<BR>  花の錦を着て帰る君<BR>⏎
d1235<P>⏎
d1237<P>⏎
text32238 <H4>第二章 光る源氏の物語 明石の姫君の裳着</H4>146 
text32239 <A NAME="in21">[第一段 明石の姫君の裳着]</A><BR>147 
d1240<P>⏎
cd2:1241-242 かくて西の御殿に、戌の時に渡りたまふ。宮のおはします西の放出をしつらひて、御髪上の内侍なども、やがてこなたに参れり。上も、このついでに、中宮に御対面あり。御方々の女房、押しあはせたる、数しらず見えたり。<BR>⏎
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148 かくて西の御殿に、戌の時に渡りたまふ。宮のおはします西の放出をしつらひて、御髪上の内侍なども、やがてこなたに参れり。上も、このついでに、中宮に御対面あり。御方々の女房、押しあはせたる、数しらず見えたり。<BR>⏎
d1244<P>⏎
d1246<P>⏎
d1248<P>⏎
d1250<P>⏎
cd2:1251-252 とのたまひ消つほどの御けはひ、いと若く愛敬づきたるに、大臣も、思すさまにをかしき御けはひどもの、さし集ひたまへるを、あはひめでたく思さる。母君の、かかる折だにえ見たてまつらぬを、いみじと思へりしも心苦しうて、参う上らせやせましと思せど、人のもの言ひをつつみて、過ぐしたまひつ。<BR>⏎
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153 とのたまひ消つほどの御けはひ、いと若く愛敬づきたるに、大臣も、思すさまにをかしき御けはひどもの、さし集ひたまへるを、あはひめでたく思さる。母君の、かかる折だにえ見たてまつらぬを、いみじと思へりしも心苦しうて、参う上らせやせましと思せど、人のもの言ひをつつみて、過ぐしたまひつ。<BR>⏎
d1254<P>⏎
text32255 <A NAME="in22">[第二段 明石の姫君の入内準備]</A><BR>155 
d1256<P>⏎
d1258<P>⏎
d1260<P>⏎
cd2:1262-263 この御方は、昔の御宿直所、淑景舎を改めしつらひて、御参り延びぬるを、宮にも心もとながらせたまへば、四月にと定めさせたまふ。御調度どもも、もとあるよりもととのへて、御みづからも、ものの下形絵様などをも御覧じ入れつつ、すぐれたる道々の上手どもを召し集めて、こまかに磨きととのへさせたまふ。<BR>⏎
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159 この御方は、昔の御宿直所、淑景舎を改めしつらひて、御参り延びぬるを、宮にも心もとながらせたまへば、四月にと定めさせたまふ。御調度どもも、もとあるよりもととのへて、御みづからも、ものの下形絵様などをも御覧じ入れつつ、すぐれたる道々の上手どもを召し集めて、こまかに磨きととのへさせたまふ。<BR>⏎
d1265<P>⏎
text32266 <A NAME="in23">[第三段 源氏の仮名論議]</A><BR>161 
d1267<P>⏎
d1269<P>⏎
d1271<P>⏎
cd2:1272-273 さてあるまじき御名も立てきこえしぞかし。悔しきことに思ひしみたまへりしかど、さしもあらざりけり。宮にかく後見仕うまつることを、心深うおはせしかば、亡き御影にも見直したまふらむ。<BR>⏎
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164 さてあるまじき御名も立てきこえしぞかし。悔しきことに思ひしみたまへりしかど、さしもあらざりけり。宮にかく後見仕うまつることを、心深うおはせしかば、亡き御影にも見直したまふらむ。<BR>⏎
d1275<P>⏎
cd2:1276-277 とうちささめきて聞こえたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
166 とうちささめきて聞こえたまふ。<BR>⏎
d1279<P>⏎
d1281<P>⏎
cd2:1282-283 と聴しきこえたまへば、<BR>⏎
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169 と聴しきこえたまへば、<BR>⏎
d1285<P>⏎
d1287<P>⏎
d1289<P>⏎
cd2:1290-291 とてまだ書かぬ草子ども作り加へて、表紙紐などいみじうせさせたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
173 とてまだ書かぬ草子ども作り加へて、表紙紐などいみじうせさせたまふ。<BR>⏎
d1293<P>⏎
cd2:1294-295 とわれぼめをしたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
175 とわれぼめをしたまふ。<BR>⏎
text32296 <A NAME="in24">[第四段 草子執筆の依頼]</A><BR>176 
d1297<P>⏎
d1299<P>⏎
cd4:2300-303 「このもの好みする若き人びと、試みむ」<BR>⏎
<P>⏎
 とて宰相中将、式部卿宮の兵衛督、内の大殿の頭中将などに、<BR>⏎
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178-179 「このもの好みする若き人びと、試みむ」<BR>⏎
 とて宰相中将、式部卿宮の兵衛督、内の大殿の頭中将などに、<BR>⏎
d1305<P>⏎
d1307<P>⏎
d1309<P>⏎
cd2:1310-311 御前に人しげからず、女房二三人ばかり、墨など擦らせたまひて、ゆゑある古き集の歌など、いかにぞやなど選り出でたまふに、口惜しからぬ限りさぶらふ。<BR>⏎
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183 御前に人しげからず、女房二三人ばかり、墨など擦らせたまひて、ゆゑある古き集の歌など、いかにぞやなど選り出でたまふに、口惜しからぬ限りさぶらふ。<BR>⏎
d1313<P>⏎
text32314 <A NAME="in25">[第五段 兵部卿宮、草子を持参]</A><BR>185 
d1315<P>⏎
cd2:1316-317 「兵部卿宮渡りたまふ」と聞こゆれば、おどろきて御直衣たてまつり、御茵参り添へさせたまひて、やがて待ち取り、入れたてまつりたまふ。この宮もいときよげにて、御階さまよく歩み昇りたまふほど、内にも人びとのぞきて見たてまつる。うちかしこまりて、かたみにうるはしだちたまへるも、いときよらなり。<BR>⏎
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186 「兵部卿宮渡りたまふ」と聞こゆれば、おどろきて御直衣たてまつり、御茵参り添へさせたまひて、やがて待ち取り、入れたてまつりたまふ。この宮もいときよげにて、御階さまよく歩み昇りたまふほど、内にも人びとのぞきて見たてまつる。うちかしこまりて、かたみにうるはしだちたまへるも、いときよらなり。<BR>⏎
d1319<P>⏎
cd2:1320-321 とよろこびきこえたまふ。かの御草子待たせて渡りたまへるなりけり。やがて御覧ずれば、すぐれてしもあらぬ御手を、ただかたかどに、いといたう筆澄みたるけしきありて書きなしたまへり。歌も、ことさらめき、そばみたる古言どもを選りて、ただ三行ばかりに、文字少なに好ましくぞ書きたまへる。大臣、御覧じ驚きぬ。<BR>⏎
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188 とよろこびきこえたまふ。かの御草子待たせて渡りたまへるなりけり。やがて御覧ずれば、すぐれてしもあらぬ御手を、ただかたかどに、いといたう筆澄みたるけしきありて書きなしたまへり。歌も、ことさらめき、そばみたる古言どもを選りて、ただ三行ばかりに、文字少なに好ましくぞ書きたまへる。大臣、御覧じ驚きぬ。<BR>⏎
d1323<P>⏎
cd2:1324-325 とねたがりたまふ。<BR>⏎
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190 とねたがりたまふ。<BR>⏎
d1327<P>⏎
cd2:1328-329 など戯れたまふ。<BR>⏎
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192 など戯れたまふ。<BR>⏎
d1331<P>⏎
d1333<P>⏎
cd2:1334-335 見たまふ人の<A HREF="#no6">涙さへ、水茎に流れ</A><A NAME="te6">添</A>ふ心地して、飽く世あるまじきに、またここの紙屋の色紙の、色あひはなやかなるに、乱れたる草の歌を、筆にまかせて乱れ書きたまへる、見所限りなし。<A HREF="#no7">しどろもどろに</A><A NAME="te7">愛</A>敬づき、見まほしければ、さらに残りどもに目も見やりたまはず。<BR>⏎
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195 見たまふ人の<A HREF="#no6">涙さへ、水茎に流れ</A><A NAME="te6">添</A>ふ心地して、飽く世あるまじきに、またここの紙屋の色紙の、色あひはなやかなるに、乱れたる草の歌を、筆にまかせて乱れ書きたまへる、見所限りなし。<A HREF="#no7">しどろもどろに</A><A NAME="te7">愛</A>敬づき、見まほしければ、さらに残りどもに目も見やりたまはず。<BR>⏎
text32336 <A NAME="in26">[第六段 他の人々持参の草子]</A><BR>196 
d1337<P>⏎
cd2:1338-339 左衛門督は、ことことしうかしこげなる筋をのみ好みて書きたれど、筆の掟て澄まぬ心地して、いたはり加へたるけしきなり。歌なども、ことさらめきて選り書きたり。<BR>⏎
<P>⏎
197 左衛門督は、ことことしうかしこげなる筋をのみ好みて書きたれど、筆の掟て澄まぬ心地して、いたはり加へたるけしきなり。歌なども、ことさらめきて選り書きたり。<BR>⏎
d1341<P>⏎
cd2:1342-343 宰相中将のは、水の勢ひ豊に書きなし、そそけたる葦の生ひざまなど、難波の浦に通ひて、こなたかなたいきまじりて、いたう澄みたるところあり。またいといかめしうひきかへて、文字やう石などのたたずまひ、好み書きたまへる枚もあめり。<BR>⏎
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199 宰相中将のは、水の勢ひ豊に書きなし、そそけたる葦の生ひざまなど、難波の浦に通ひて、こなたかなたいきまじりて、いたう澄みたるところあり。またいといかめしうひきかへて、文字やう石などのたたずまひ、好み書きたまへる枚もあめり。<BR>⏎
d1345<P>⏎
cd2:1346-347 と興じめでたまふ。何事ももの好みし、艶がりおはする親王にて、いといみじうめできこえたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
201 と興じめでたまふ。何事ももの好みし、艶がりおはする親王にて、いといみじうめできこえたまふ。<BR>⏎
text32348 <A NAME="in27">[第七段 古万葉集と古今和歌集]</A><BR>202 
d1349<P>⏎
d1351<P>⏎
d1353<P>⏎
d1355<P>⏎
cd4:2356-359 などめでたまふ。やがてこれはとどめたてまつりたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
 「女子などを持てはべらましにだに、をさをさ見はやすまじきには伝ふまじきを、まして朽ちぬべきを」<BR>⏎
<P>⏎
206-207 などめでたまふ。やがてこれはとどめたてまつりたまふ。<BR>⏎
 「女子などを持てはべらましにだに、をさをさ見はやすまじきには伝ふまじきを、まして朽ちぬべきを」<BR>⏎
d1361<P>⏎
cd4:2362-365 またこのころは、ただ仮名の定めをしたまひて、世の中に手書くとおぼえたる、上中下の人びとにも、さるべきものども思しはからひて、尋ねつつ書かせたまふ。この御筥には、立ち下れるをば混ぜたまはず、わざと人のほど、品分かせたまひつつ、草子巻物、皆書かせたてまつりたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
 よろづにめづらかなる御宝物ども、人の朝廷までありがたげなる中に、この本どもなむゆかしと心動きたまふ若人、世に多かりける。御絵どもととのへさせたまふ中に、かの『須磨の日記』は、末にも伝へ知らせむと思せど、「今すこし世をも思し知りなむに」と思し返して、まだ取り出でたまはず。<BR>⏎
<P>⏎
209-210 またこのころは、ただ仮名の定めをしたまひて、世の中に手書くとおぼえたる、上中下の人びとにも、さるべきものども思しはからひて、尋ねつつ書かせたまふ。この御筥には、立ち下れるをば混ぜたまはず、わざと人のほど、品分かせたまひつつ、草子巻物、皆書かせたてまつりたまふ。<BR>⏎
 よろづにめづらかなる御宝物ども、人の朝廷までありがたげなる中に、この本どもなむゆかしと心動きたまふ若人、世に多かりける。御絵どもととのへさせたまふ中に、かの『須磨の日記』は、末にも伝へ知らせむと思せど、「今すこし世をも思し知りなむに」と思し返して、まだ取り出でたまはず。<BR>⏎
text32366 <H4>第三章 内大臣家の物語 夕霧と雲居雁の物語</H4>211 
text32367 <A NAME="in31">[第一段 内大臣家の近況]</A><BR>212 
d1368<P>⏎
cd2:1369-370 内の大臣は、この御いそぎを、人の上にて聞きたまふも、いみじう心もとなく、さうざうしと思す。姫君の御ありさま、盛りにととのひて、あたらしううつくしげなり。つれづれとうちしめりたまへるほど、いみじき御嘆きぐさなるに、かの人の御けしき、はた同じやうになだらかなれば、「心弱く進み寄らむも、人笑はれに、人のねむごろなりしきざみに、なびきなましかば」など、人知れず思し嘆きて、一方に罪をもおほせたまはず。<BR>⏎
<P>⏎
213 内の大臣は、この御いそぎを、人の上にて聞きたまふも、いみじう心もとなく、さうざうしと思す。姫君の御ありさま、盛りにととのひて、あたらしううつくしげなり。つれづれとうちしめりたまへるほど、いみじき御嘆きぐさなるに、かの人の御けしき、はた同じやうになだらかなれば、「心弱く進み寄らむも、人笑はれに、人のねむごろなりしきざみに、なびきなましかば」など、人知れず思し嘆きて、一方に罪をもおほせたまはず。<BR>⏎
d1372<P>⏎
text32373 <A NAME="in32">[第二段 源氏、夕霧に結婚の教訓]</A><BR>215 
d1374<P>⏎
d1376<P>⏎
cd2:1377-378 「かのわたりのこと、思ひ絶えにたらば、右大臣中務宮などの、けしきばみ言はせたまふめるを、いづくも思ひ定められよ」<BR>⏎
<P>⏎
217 「かのわたりのこと、思ひ絶えにたらば、右大臣中務宮などの、けしきばみ言はせたまふめるを、いづくも思ひ定められよ」<BR>⏎
d1380<P>⏎
d1382<P>⏎
d1384<P>⏎
cd2:1385-386 いみじう思ひのぼれど、心にしもかなはず、限りのあるものから、好き好きしき心つかはるな。いはけなくより宮の内に生ひ出でて、身を<A HREF="#k17">心に</A><A NAME="t17">ま</A>かせず、所狭く、いささかの事のあやまりもあらば、軽々しきそしりをや負はむと、つつみしだに、なほ好き好きしき咎を負ひて、世にはしたなめられき。<BR>⏎
<P>⏎
221 いみじう思ひのぼれど、心にしもかなはず、限りのあるものから、好き好きしき心つかはるな。いはけなくより宮の内に生ひ出でて、身を<A HREF="#k17">心に</A><A NAME="t17">ま</A>かせず、所狭く、いささかの事のあやまりもあらば、軽々しきそしりをや負はむと、つつみしだに、なほ好き好きしき咎を負ひて、世にはしたなめられき。<BR>⏎
d1388<P>⏎
cd2:1390-391<P> などのどやかにつれづれなる折は、かかる御心づかひをのみ教へたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
224 などのどやかにつれづれなる折は、かかる御心づかひをのみ教へたまふ。<BR>⏎
text32392 <A NAME="in33">[第三段 夕霧と雲居の雁の仲]</A><BR>225 
d1393<P>⏎
d1395<P>⏎
d1397<P>⏎
d1399<P>⏎
d1401<P>⏎
d1403<P>⏎
cd2:1404-405 など涙を浮けてのたまへば、姫君いと恥づかしきにも、そこはかとなく涙のこぼるれば、はしたなくて背きたまへる、らうたげさ限りなし。<BR>⏎
<P>⏎
231 など涙を浮けてのたまへば、姫君いと恥づかしきにも、そこはかとなく涙のこぼるれば、はしたなくて背きたまへる、らうたげさ限りなし。<BR>⏎
d1407<P>⏎
cd2:1408-409 など思し乱れて立ちたまひぬる名残も、やがて端近う眺めたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
233 など思し乱れて立ちたまひぬる名残も、やがて端近う眺めたまふ。<BR>⏎
d1411<P>⏎
cd5:2412-416 などよろづに思ひゐたまへるほどに、御文あり。さすがにぞ見たまふ。こまやかにて、<BR>⏎
<P>⏎
 「つれなさは憂き世の常になりゆくを<BR>⏎
  忘れぬ人や人にことなる」<BR>⏎
<P>⏎
235-236 などよろづに思ひゐたまへるほどに、御文あり。さすがにぞ見たまふ。こまやかにて、<BR>⏎
 「つれなさは憂き世の常になりゆくを<BR>  忘れぬ人や人にことなる」<BR>⏎
d1418<P>⏎
cd3:1419-421 「限りとて忘れがたきを忘るるも<BR>⏎
  こや世になびく心なるらむ」<BR>⏎
<P>⏎
238 「限りとて忘れがたきを忘るるも<BR>  こや世になびく心なるらむ」<BR>⏎
d2423-424
<P>⏎
text32425 <a name="in41">【出典】<BR>240 
c1426</a><A NAME="no1">出典1</A> 梅の花立ち寄るばかりありしより人の咎むる香にぞ染みぬる(古今集春上-三五 読人しらず)<A HREF="#te1">(戻)</A><BR>⏎
241<A NAME="no1">出典1</A> 梅の花立ち寄るばかりありしより人の咎むる香にぞ染みぬる(古今集春上-三五 読人しらず)<A HREF="#te1">(戻)</A><BR>⏎
d1436
text32437<p> <a name="in42">【校訂】<BR>251 
c1439</a><A NAME="k01">校訂1</A> 承和--そうわう(そうわう/$承和)<A HREF="#t01">(戻)</A><BR>⏎
253<A NAME="k01">校訂1</A> 承和--そうわう(そうわう/$承和)<A HREF="#t01">(戻)</A><BR>⏎
d1457</p>⏎
d1464</p>⏎
i0281
diffsrc/original/text33.htmlsrc/modified/text33.html
cd2:18-9<body background="wallppr063.gif">⏎
First updated 9/20/1996(ver.1-1)<BR>⏎
8<BODY>⏎
cd3:210-12Last updated 9/21/2010(ver.2-3)<BR>⏎
渋谷栄一校訂(C)<BR>⏎
<P
>⏎
9-10<ADDRESS>Last updated 9/21/2010(ver.2-3)<BR>⏎
渋谷栄一校訂(C)</ADDRESS>⏎
d114<P>⏎
d116<P>⏎
d146<P>⏎
d174<P>⏎
d177<P>⏎
text3378 <H4>第一章 夕霧の物語 雲居雁との筒井筒の恋実る</H4>71 
text3379 <A NAME="in11">[第一段 夕霧と雲居雁の相思相愛の恋]</A><BR>72 
d180<P>⏎
d182<P>⏎
cd2:183-84 女君も、大臣のかすめたまひしことの筋を、「もしさもあらば、何の名残かは」と嘆かしうて、あやしく背き背きに、さすがなる<A HREF="#no2">御もろ恋</A><A NAME="te2">な</A>り。<BR>⏎
<P>⏎
74 女君も、大臣のかすめたまひしことの筋を、「もしさもあらば、何の名残かは」と嘆かしうて、あやしく背き背きに、さすがなる<A HREF="#no2">御もろ恋</A><A NAME="te2">な</A>り。<BR>⏎
d186<P>⏎
d188<P>⏎
text3389 <A NAME="in12">[第二段 三月二十日、極楽寺に詣でる]</A><BR>77 
d190<P>⏎
d192<P>⏎
cd2:193-94 この大臣をば、つらしと思ひきこえたまひしより、見えたてまつるも、心づかひせられて、いといたう用意し、もてしづめてものしたまふを、大臣も、常よりは目とどめたまふ。御誦経など、六条院よりもせさせたまへり。宰相君は、ましてよろづをとりもちて、あはれにいとなみ仕うまつりたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
79 この大臣をば、つらしと思ひきこえたまひしより、見えたてまつるも、心づかひせられて、いといたう用意し、もてしづめてものしたまふを、大臣も、常よりは目とどめたまふ。御誦経など、六条院よりもせさせたまへり。宰相君は、ましてよろづをとりもちて、あはれにいとなみ仕うまつりたまふ。<BR>⏎
d196<P>⏎
cd2:197-98 「などかいとこよなくは勘じたまへる。今日の御法の縁をも尋ね思さば、罪許したまひてよや。残り少なくなりゆく末の世に、思ひ捨てたまへるも、恨みきこゆべくなむ」<BR>⏎
<P>⏎
81 「などかいとこよなくは勘じたまへる。今日の御法の縁をも尋ね思さば、罪許したまひてよや。残り少なくなりゆく末の世に、思ひ捨てたまへるも、恨みきこゆべくなむ」<BR>⏎
d1100<P>⏎
d1102<P>⏎
d1104<P>⏎
d1106<P>⏎
text33107 <A NAME="in13">[第三段 内大臣、夕霧を自邸に招待]</A><BR>86 
d1108<P>⏎
d1110<P>⏎
d1112<P>⏎
d1114<P>⏎
cd8:3115-122 「わが宿の<A HREF="#no3">藤の色濃きたそかれに</A><A NAME="te3"><BR>⏎
  尋</A>ねやは来ぬ春の名残を」<BR>⏎
<P>⏎
 げにいとおもしろき枝につけたまへり。待ちつけたまへるも、心ときめきせられて、かしこまりきこえたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
 「なかなかに折りやまどはむ藤の花<BR>⏎
  たそかれ時のたどたどしくは」<BR>⏎
<P>⏎
90-92 「わが宿の<A HREF="#no3">藤の色濃きたそかれに</A><A NAME="te3"><BR>  尋</A>ねやは来ぬ春の名残を」<BR>⏎
 げにいとおもしろき枝につけたまへり。待ちつけたまへるも、心ときめきせられて、かしこまりきこえたまふ。<BR>⏎
 「なかなかに折りやまどはむ藤の花<BR>  たそかれ時のたどたどしくは」<BR>⏎
d1124<P>⏎
d1126<P>⏎
d1128<P>⏎
d1130<P>⏎
d1132<P>⏎
cd6:3133-138 「わづらはしき随身は否」<BR>⏎
<P>⏎
 とて返しつ。<BR>⏎
<P>⏎
 大臣の御前に、かくなむ、とて御覧ぜさせたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
98-100 「わづらはしき随身は否」<BR>⏎
 とて返しつ。<BR>⏎
 大臣の御前に、かくなむ、とて御覧ぜさせたまふ。<BR>⏎
d1140<P>⏎
d1142<P>⏎
d1144<P>⏎
d1146<P>⏎
d1148<P>⏎
d1150<P>⏎
d1152<P>⏎
cd2:1153-154 とてわが御料の心ことなるに、えならぬ御衣ども具して、御供に持たせてたてまつれたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
108 とてわが御料の心ことなるに、えならぬ御衣ども具して、御供に持たせてたてまつれたまふ。<BR>⏎
text33155 <A NAME="in14">[第四段 夕霧、内大臣邸を訪問]</A><BR>109 
cd2:1156-157<P> わが御方にて、心づかひいみじう化粧じて、たそかれも過ぎ、心やましきほどに参うでたまへり。主人の君達、中将をはじめて、七八人うち連れて迎ヘ入れたてまつる。いづれとなくをかしき容貌どもなれど、なほ人にすぐれて、あざやかにきよらなるものから、なつかしう、よしづき、恥づかしげなり。<BR>⏎
<P>⏎
110 わが御方にて、心づかひいみじう化粧じて、たそかれも過ぎ、心やましきほどに参うでたまへり。主人の君達、中将をはじめて、七八人うち連れて迎ヘ入れたてまつる。いづれとなくをかしき容貌どもなれど、なほ人にすぐれて、あざやかにきよらなるものから、なつかしう、よしづき、恥づかしげなり。<BR>⏎
d1159<P>⏎
cd3:2161-163 かれはただいと切になまめかしう愛敬づきて、見るに笑ましく、世の中忘るる心地ぞしたまふ。公ざまは、すこしたはれて、あざれたる方なりし、ことわりぞかし。<BR>⏎
 これは才の際もまさり、心もちゐ男々しく、すくよかに足らひたりと、世におぼえためり」<BR>⏎
<P>⏎
113-114 かれはただいと切になまめかしう愛敬づきて、見るに笑ましく、世の中忘るる心地ぞしたまふ。公ざまは、すこしたはれて、あざれたる方なりし、ことわりぞかし。<BR>⏎
 これは才の際もまさり、心もちゐ男々しく、すくよかに足らひたりと、世におぼえためり」<BR>⏎
d1165<P>⏎
d1167<P>⏎
cd2:1168-169 とてうちほほ笑みたまへる、けしきありて、匂ひきよげなり。<BR>⏎
<P>⏎
117 とてうちほほ笑みたまへる、けしきありて、匂ひきよげなり。<BR>⏎
text33170 <A NAME="in15">[第五段 藤花の宴 結婚を許される]</A><BR>118 
d1171<P>⏎
d1173<P>⏎
d1175<P>⏎
d1177<P>⏎
d1179<P>⏎
c1180 とかしこまりきこえたまふ。御時よく、さうどきて、<BR>⏎
123 とかしこまりきこえたまふ。御時よく、さうどきて、<BR>⏎
d1183<P>⏎
cd3:1184-186 「紫にかことはかけむ藤の花<BR>⏎
  まつより過ぎてうれたけれども」<BR>⏎
<P>⏎
126 「紫にかことはかけむ藤の花<BR>  まつより過ぎてうれたけれども」<BR>⏎
d1188<P>⏎
cd3:1189-191 「<A HREF="#no8">いく返り露けき春を</A><A NAME="te8">過</A>ぐし来て<BR>⏎
  花の紐解く折にあふらむ」<BR>⏎
<P>⏎
128 「<A HREF="#no8">いく返り露けき春を</A><A NAME="te8">過</A>ぐし来て<BR>  花の紐解く折にあふらむ」<BR>⏎
d1193<P>⏎
cd3:1194-196 「たをやめの袖にまがへる藤の花<BR>⏎
  見る人からや色もまさらむ」<BR>⏎
<P>⏎
130 「たをやめの袖にまがへる藤の花<BR>  見る人からや色もまさらむ」<BR>⏎
d1198<P>⏎
text33199 <A NAME="in16">[第六段 夕霧、雲居雁の部屋を訪う]</A><BR>132 
d1200<P>⏎
cd4:2201-204 七日の夕月夜、影ほのかなるに、池の鏡のどかに澄みわたれり。げにまだほのかなる梢どもの、さうざうしきころなるに、いたうけしきばみ横たはれる松の、木高きほどにはあらぬに、かかれる花のさま、世の常ならずおもしろし。<BR>⏎
<P>⏎
 例の弁少将、声いとなつかしくて、「<A HREF="#no9">葦垣</A><A NAME="te9">」</A>を謡ふ。大臣、<BR>⏎
<P>⏎
133-134 七日の夕月夜、影ほのかなるに、池の鏡のどかに澄みわたれり。げにまだほのかなる梢どもの、さうざうしきころなるに、いたうけしきばみ横たはれる松の、木高きほどにはあらぬに、かかれる花のさま、世の常ならずおもしろし。<BR>⏎
 例の弁少将、声いとなつかしくて、「<A HREF="#no9">葦垣</A><A NAME="te9">」</A>を謡ふ。大臣、<BR>⏎
d1206<P>⏎
cd2:1207-208 とうち乱れたまひて、<BR>⏎
<P>⏎
136 とうち乱れたまひて、<BR>⏎
d1210<P>⏎
cd2:1211-212 とうち加へたまへる御声、いとおもしろし。をかしきほどに乱りがはしき御遊びにて、もの思ひ残らずなりぬめり。<BR>⏎
<P>⏎
138 とうち加へたまへる御声、いとおもしろし。をかしきほどに乱りがはしき御遊びにて、もの思ひ残らずなりぬめり。<BR>⏎
d1214<P>⏎
d1216<P>⏎
cd2:1217-218 と中将に愁へたまふ。大臣、<BR>⏎
<P>⏎
141 と中将に愁へたまふ。大臣、<BR>⏎
d1220<P>⏎
d1222<P>⏎
d1224<P>⏎
d1226<P>⏎
d1228<P>⏎
d1230<P>⏎
d1232<P>⏎
d1234<P>⏎
d1236<P>⏎
cd4:2237-240 と怨みきこえたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
 「<A HREF="#k02">少将</A><A NAME="t02">の</A>進み出だしつる『葦垣』の趣きは、耳とどめたまひつや。いたき主かな。『<A HREF="#no11">河口の</A><A NAME="te11">』</A>とこそ、さしいらへまほしかりつれ」<BR>⏎
<P>⏎
151-152 と怨みきこえたまふ。<BR>⏎
 「<A HREF="#k02">少将</A><A NAME="t02">の</A>進み出だしつる『葦垣』の趣きは、耳とどめたまひつや。いたき主かな。『<A HREF="#no11">河口の</A><A NAME="te11">』</A>とこそ、さしいらへまほしかりつれ」<BR>⏎
d1242<P>⏎
cd2:1243-244 「浅き名を言ひ流しける河口は<BR>⏎
  いかが漏らしし関の荒垣<BR>⏎
154 「浅き名を言ひ流しける河口は<BR>  いかが漏らしし関の荒垣<BR>⏎
d1246<P>⏎
d1248<P>⏎
cd3:1249-251 「漏りにける岫田の関を河口の<BR>⏎
  浅きにのみはおほせざらなむ<BR>⏎
<P>⏎
157 「漏りにける岫田の関を河口の<BR>  浅きにのみはおほせざらなむ<BR>⏎
d1253<P>⏎
cd2:1254-255 と酔ひにかこちて、苦しげにもてなして、<A HREF="#no12">明くるも知らず顔</A><A NAME="te12">な</A>り。人びと、聞こえわづらふを、大臣、<BR>⏎
<P>⏎
159 と酔ひにかこちて、苦しげにもてなして、<A HREF="#no12">明くるも知らず顔</A><A NAME="te12">な</A>り。人びと、聞こえわづらふを、大臣、<BR>⏎
d1257<P>⏎
cd2:1258-259 ととがめたまふ。されど明かし果てでぞ出でたまふ。<A HREF="#no13">ねくたれの御朝顔</A><A NAME="te13">、</A>見るかひありかし。<BR>⏎
<P>⏎
161 ととがめたまふ。されど明かし果てでぞ出でたまふ。<A HREF="#no13">ねくたれの御朝顔</A><A NAME="te13">、</A>見るかひありかし。<BR>⏎
text33260 <A NAME="in17">[第七段 後朝の文を贈る]</A><BR>162 
d1261<P>⏎
d1263<P>⏎
d1265<P>⏎
cd5:2266-270  とがむなよ忍びにしぼる手もたゆみ<BR>⏎
  今日あらはるる袖のしづくを」<BR>⏎
<P>⏎
 などいと馴れ顔なり。うち笑みて、<BR>⏎
<P>⏎
165-166  とがむなよ忍びにしぼる手もたゆみ<BR>  今日あらはるる袖のしづくを」<BR>⏎
 などいと馴れ顔なり。うち笑みて、<BR>⏎
d1272<P>⏎
d1274<P>⏎
d1276<P>⏎
cd2:1277-278 御使の禄、なべてならぬさまにて賜へり。中将、をかしきさまにもてなしたまふ。常にひき隠しつつ隠ろへありきし御使、今日は面もちなど、人びとしく振る舞ふめり。右近将監なる人の、むつましう思し使ひたまふなりけり。<BR>⏎
<P>⏎
170 御使の禄、なべてならぬさまにて賜へり。中将、をかしきさまにもてなしたまふ。常にひき隠しつつ隠ろへありきし御使、今日は面もちなど、人びとしく振る舞ふめり。右近将監なる人の、むつましう思し使ひたまふなりけり。<BR>⏎
d1280<P>⏎
d1284<P>⏎
cd2:1285-286 など例の教へきこえたまふ。ことうちあひ、めやすき御あはひ、と思さる。<BR>⏎
<P>⏎
175 など例の教へきこえたまふ。ことうちあひ、めやすき御あはひ、と思さる。<BR>⏎
d1288<P>⏎
d1290<P>⏎
d1292<P>⏎
text33293 <A NAME="in18">[第八段 夕霧と雲居雁の固い夫婦仲]</A><BR>179 
d1294<P>⏎
d1296<P>⏎
d1298<P>⏎
d1300<P>⏎
d1302<P>⏎
text33303 <H4>第二章 光る源氏の物語 明石の姫君の入内</H4>184 
text33304 <A NAME="in21">[第一段 紫の上、賀茂の御阿礼に参詣]</A><BR>185 
d1305<P>⏎
cd4:2306-309 かくて六条院の御いそぎは、二十余日のほどなりけり。対の上、御阿礼に詣うでたまふとて、例の御方々いざなひきこえたまへど、なかなかさしも引き続きて心やましきを思して、誰も誰も<A HREF="#k12">とまり</A><A NAME="t12">た</A>まひて、ことことしきほどにもあらず、御車二十ばかりして、御前なども、くだくだしき人数多くもあらず、ことそぎたるしも、けはひことなり。<BR>⏎
<P>⏎
 祭の日の暁に<A HREF="#k13">詣うで</A><A NAME="t13">た</A>まひて、かへさには、物御覧ずべき御桟敷におはします。御方々の女房、おのおの車引き続きて、御前所占めたるほど、いかめしう、「かれはそれ」と、遠目よりおどろおどろしき御勢ひなり。<BR>⏎
<P>⏎
186-187 かくて六条院の御いそぎは、二十余日のほどなりけり。対の上、御阿礼に詣うでたまふとて、例の御方々いざなひきこえたまへど、なかなかさしも引き続きて心やましきを思して、誰も誰も<A HREF="#k12">とまり</A><A NAME="t12">た</A>まひて、ことことしきほどにもあらず、御車二十ばかりして、御前なども、くだくだしき人数多くもあらず、ことそぎたるしも、けはひことなり。<BR>⏎
 祭の日の暁に<A HREF="#k13">詣うで</A><A NAME="t13">た</A>まひて、かへさには、物御覧ずべき御桟敷におはします。御方々の女房、おのおの車引き続きて、御前所占めたるほど、いかめしう、「かれはそれ」と、遠目よりおどろおどろしき御勢ひなり。<BR>⏎
d1311<P>⏎
d1313<P>⏎
cd2:1314-315 とそのほどはのたまひ消ちて、<BR>⏎
<P>⏎
190 とそのほどはのたまひ消ちて、<BR>⏎
d1317<P>⏎
cd2:1318-319 とうち語らひたまひて、上達部なども御桟敷に参り集ひたまへれば、そなたに出でたまひぬ。<BR>⏎
<P>⏎
192 とうち語らひたまひて、上達部なども御桟敷に参り集ひたまへれば、そなたに出でたまひぬ。<BR>⏎
text33320 <A NAME="in22">[第二段 柏木や夕霧たちの雄姿]</A><BR>193 
d1321<P>⏎
cd2:1322-323 近衛司の使は、頭中将なりけり。かの大殿にて、出で立つ所より<A HREF="#k14">ぞ</A><A NAME="t14">人</A>びとは参りたまうける。藤典侍も使なりけり。おぼえことにて、内裏春宮よりはじめたてまつりて、六条院などよりも、御訪らひども所狭きまで、御心寄せいとめでたし。<BR>⏎
<P>⏎
194 近衛司の使は、頭中将なりけり。かの大殿にて、出で立つ所より<A HREF="#k14">ぞ</A><A NAME="t14">人</A>びとは参りたまうける。藤典侍も使なりけり。おぼえことにて、内裏春宮よりはじめたてまつりて、六条院などよりも、御訪らひども所狭きまで、御心寄せいとめでたし。<BR>⏎
d1325<P>⏎
cd2:1326-327 「何とかや今日のかざしよかつ見つつ<BR>⏎
  おぼめくまでもなりにけるかな<BR>⏎
196 「何とかや今日のかざしよかつ見つつ<BR>  おぼめくまでもなりにけるかな<BR>⏎
d1329<P>⏎
d1331<P>⏎
cd2:1332-333 「かざしてもかつたどらるる草の名は<BR>⏎
  <A HREF="#no15">桂を折りし人</A><A NAME="te15">や</A>知るらむ<BR>⏎
199 「かざしてもかつたどらるる草の名は<BR>  <A HREF="#no15">桂を折りし人</A><A NAME="te15">や</A>知るらむ<BR>⏎
d1335<P>⏎
cd2:1336-337 と聞こえたり。はかなけれど、ねたきいらへと思す。なほこの内侍にぞ、思ひ離れず、はひまぎれたまふべき。<BR>⏎
<P>⏎
201 と聞こえたり。はかなけれど、ねたきいらへと思す。なほこの内侍にぞ、思ひ離れず、はひまぎれたまふべき。<BR>⏎
text33338 <A NAME="in23">[第三段 四月二十日過ぎ、明石姫君、東宮に入内]</A><BR>202 
d1339<P>⏎
cd4:2340-343 かくて御参りは北の方添ひたまふべきを、「常に長々しうえ添ひさぶらひたまはじ。かかるついでに、かの御後見をや添へまし」と思す。<BR>⏎
<P>⏎
 上も、「つひにあるべきことの、かく隔たりて過ぐしたまふを、かの人も、ものしと思ひ嘆かるらむ。この御心にも、今はやうやうおぼつかなくあはれに思し知るらむ。かたがた心おかれたてまつらむも、あいなし」と思ひなりたまひて、<BR>⏎
<P>⏎
203-204 かくて御参りは北の方添ひたまふべきを、「常に長々しうえ添ひさぶらひたまはじ。かかるついでに、かの御後見をや添へまし」と思す。<BR>⏎
 上も、「つひにあるべきことの、かく隔たりて過ぐしたまふを、かの人も、ものしと思ひ嘆かるらむ。この御心にも、今はやうやうおぼつかなくあはれに思し知るらむ。かたがた心おかれたてまつらむも、あいなし」と思ひなりたまひて、<BR>⏎
d1345<P>⏎
d1347<P>⏎
d1349<P>⏎
cd4:2350-353 その夜は、上添ひて参りたまふに、<A HREF="#k16">さて</A><A NAME="t16">、</A>車にも立ちくだりうち歩みなど、人悪るかるべきを、わがためは思ひ憚らず、ただかく磨きたてまつりたまふ玉の疵にて、わがかくながらふるを、かつはいみじう心苦しう思ふ。<BR>⏎
<P>⏎
 <A HREF="#k17">御参り</A><A NAME="t17">の</A>儀式、「人の目おどろくばかりのことはせじ」と思しつつめど、おのづから世の常のさまにぞあらぬや。限りもなくかしづきすゑたてまつりたまひて、上は、「まことにあはれにうつくし」と思ひきこえたまふにつけても、人に譲るまじう、「まことにかかることもあらましかば」と思す。大臣も宰相の君も、ただこのことひとつをなむ、「飽かぬことかな」と、思しける。<BR>⏎
<P>⏎
208-209 その夜は、上添ひて参りたまふに、<A HREF="#k16">さて</A><A NAME="t16">、</A>車にも立ちくだりうち歩みなど、人悪るかるべきを、わがためは思ひ憚らず、ただかく磨きたてまつりたまふ玉の疵にて、わがかくながらふるを、かつはいみじう心苦しう思ふ。<BR>⏎
 <A HREF="#k17">御参り</A><A NAME="t17">の</A>儀式、「人の目おどろくばかりのことはせじ」と思しつつめど、おのづから世の常のさまにぞあらぬや。限りもなくかしづきすゑたてまつりたまひて、上は、「まことにあはれにうつくし」と思ひきこえたまふにつけても、人に譲るまじう、「まことにかかることもあらましかば」と思す。大臣も宰相の君も、ただこのことひとつをなむ、「飽かぬことかな」と、思しける。<BR>⏎
text33354 <A NAME="in24">[第四段 紫の上、明石御方と対面する]</A><BR>210 
d1355<P>⏎
d1357<P>⏎
d1359<P>⏎
cd4:2360-363 となつかしうのたまひて、物語などしたまふ。これもうちとけぬる初めなめり。ものなどうち言ひたるけはひなど、「むべこそは」と、めざましう見たまふ。<BR>⏎
<P>⏎
 またいと気高う盛りなる御けしきを、かたみにめでたしと見て、「そこらの御中にもすぐれたる御心ざしにて、並びなきさまに定まりたまひけるも、いとことわり」と思ひ知らるるに、「かうまで立ち並びきこゆる契り、おろかなりやは」と思ふものから、出でたまふ儀式の、いとことによそほしく、御輦車など聴されたまひて、女御の御ありさまに異ならぬを、思ひ比ぶるに、さすがなる身のほどなり。<BR>⏎
<P>⏎
213-214 となつかしうのたまひて、物語などしたまふ。これもうちとけぬる初めなめり。ものなどうち言ひたるけはひなど、「むべこそは」と、めざましう見たまふ。<BR>⏎
 またいと気高う盛りなる御けしきを、かたみにめでたしと見て、「そこらの御中にもすぐれたる御心ざしにて、並びなきさまに定まりたまひけるも、いとことわり」と思ひ知らるるに、「かうまで立ち並びきこゆる契り、おろかなりやは」と思ふものから、出でたまふ儀式の、いとことによそほしく、御輦車など聴されたまひて、女御の御ありさまに異ならぬを、思ひ比ぶるに、さすがなる身のほどなり。<BR>⏎
d1365<P>⏎
d1367<P>⏎
d1369<P>⏎
cd2:1370-371 上も、さるべき折節には参りたまふ。御仲らひあらまほしううちとけゆくに、さりとてさし過ぎもの馴れず、あなづらはしかるべきもてなし、はたつゆなく、あやしくあらまほしき人のありさま、心ばへなり。<BR>⏎
<P>⏎
218 上も、さるべき折節には参りたまふ。御仲らひあらまほしううちとけゆくに、さりとてさし過ぎもの馴れず、あなづらはしかるべきもてなし、はたつゆなく、あやしくあらまほしき人のありさま、心ばへなり。<BR>⏎
text33372 <H4>第三章 光る源氏の物語 准太上天皇となる</H4>219 
text33373 <A NAME="in31">[第一段 源氏、秋に准太上天皇の待遇を得る]</A><BR>220 
d1374<P>⏎
d1376<P>⏎
d1378<P>⏎
d1380<P>⏎
d1382<P>⏎
d1384<P>⏎
d1386<P>⏎
d1388<P>⏎
d1390<P>⏎
cd3:1391-393 「浅緑若葉の菊を露にても<BR>⏎
  濃き紫の色とかけきや<BR>⏎
<P>⏎
229 「浅緑若葉の菊を露にても<BR>  濃き紫の色とかけきや<BR>⏎
d1395<P>⏎
cd5:2396-400 といと匂ひやかにほほ笑みて賜へり。恥づかしういとほしきものからうつくしう見たてまつる。<BR>⏎
<P>⏎
 「双葉より名立たる園の菊なれば<BR>⏎
  浅き色わく露もなかりき<BR>⏎
<P>⏎
231-232 といと匂ひやかにほほ笑みて賜へり。恥づかしういとほしきものからうつくしう見たてまつる。<BR>⏎
 「双葉より名立たる園の菊なれば<BR>  浅き色わく露もなかりき<BR>⏎
d1402<P>⏎
cd2:1403-404 といと馴れて苦しがる。<BR>⏎
<P>⏎
234 といと馴れて苦しがる。<BR>⏎
text33405 <A NAME="in32">[第二段 夕霧夫妻、三条殿に移る]</A><BR>235 
d1406<P>⏎
d1408<P>⏎
d1410<P>⏎
d1412<P>⏎
d1414<P>⏎
cd3:1415-417 「なれこそは岩守るあるじ見し人の<BR>⏎
  行方は知るや宿の真清水」<BR>⏎
<P>⏎
240 「なれこそは岩守るあるじ見し人の<BR>  行方は知るや宿の真清水」<BR>⏎
d1419<P>⏎
cd3:1420-422 「<A HREF="#no18">亡き人の影</A><A NAME="te18">だ</A>に見えずつれなくて<BR>⏎
  心をやれるいさらゐの水」<BR>⏎
<P>⏎
242 「<A HREF="#no18">亡き人の影</A><A NAME="te18">だ</A>に見えずつれなくて<BR>  心をやれるいさらゐの水」<BR>⏎
d1424<P>⏎
text33425 <A NAME="in33">[第三段 内大臣、三条殿を訪問]</A><BR>244 
d1426<P>⏎
d1428<P>⏎
d1430<P>⏎
d1432<P>⏎
d1434<P>⏎
cd3:1435-437 「そのかみの老木はむべも<A HREF="#k23">朽ちぬらむ</A><A NAME="t23"><BR>⏎
  植</A>ゑし小松も苔生ひにけり」<BR>⏎
<P>⏎
249 「そのかみの老木はむべも<A HREF="#k23">朽ちぬらむ</A><A NAME="t23"><BR>  植</A>ゑし小松も苔生ひにけり」<BR>⏎
d1439<P>⏎
cd3:1440-442 「いづれをも蔭とぞ頼む双葉より<BR>⏎
  根ざし交はせる松の末々」<BR>⏎
<P>⏎
251 「いづれをも蔭とぞ頼む双葉より<BR>  根ざし交はせる松の末々」<BR>⏎
d1444<P>⏎
text33445 <A NAME="in34">[第四段 十月二十日過ぎ、六条院行幸]</A><BR>253 
d1446<P>⏎
d1448<P>⏎
cd2:1449-450 巳の時に行幸ありて、まづ馬場殿に左右の寮の御馬牽き並べて、左右近衛立ち添ひたる作法、五月の節にあやめわかれず通ひたり。未くだるほどに、南の寝殿に移りおはします。道のほどの反橋、渡殿には錦を敷き、あらはなるべき所には軟障を引き、いつくしうしなさせたまへり。<BR>⏎
<P>⏎
255 巳の時に行幸ありて、まづ馬場殿に左右の寮の御馬牽き並べて、左右近衛立ち添ひたる作法、五月の節にあやめわかれず通ひたり。未くだるほどに、南の寝殿に移りおはします。道のほどの反橋、渡殿には錦を敷き、あらはなるべき所には軟障を引き、いつくしうしなさせたまへり。<BR>⏎
d1452<P>⏎
d1454<P>⏎
d1456<P>⏎
d1458<P>⏎
text33459 <A NAME="in35">[第五段 六条院行幸の饗宴]</A><BR>260 
d1460<P>⏎
d1462<P>⏎
d1464<P>⏎
cd3:1465-467 「色まさる籬の菊も折々に<BR>⏎
  袖うちかけし秋を恋ふらし」<BR>⏎
<P>⏎
263 「色まさる籬の菊も折々に<BR>  袖うちかけし秋を恋ふらし」<BR>⏎
d1469<P>⏎
cd2:1470-471 「<A HREF="#no19">紫の雲にまがへる菊の花</A><A NAME="te19"><BR>⏎
  濁</A>りなき世の星かとぞ見る<BR>⏎
265 「<A HREF="#no19">紫の雲にまがへる菊の花</A><A NAME="te19"><BR>  濁</A>りなき世の星かとぞ見る<BR>⏎
d1473<P>⏎
d1475<P>⏎
text33476 <A NAME="in36">[第六段 朱雀院と冷泉帝の和歌]</A><BR>268 
d1477<P>⏎
cd2:1478-479 夕風の吹き敷く紅葉の色々、濃き薄き、錦を敷きたる渡殿の上、見えまがふ庭の面に、容貌をかしき童べの、やむごとなき家の子どもなどにて、青き赤き白橡、蘇芳葡萄染めなど、常のごと、例のみづらに、額ばかりのけしきを見せて、短きものどもをほのかに舞ひつつ、紅葉の蔭に返り入るほど、日の暮るるも<A HREF="#k25">いと惜しげ</A><A NAME="t25">な</A>り。<BR>⏎
<P>⏎
269 夕風の吹き敷く紅葉の色々、濃き薄き、錦を敷きたる渡殿の上、見えまがふ庭の面に、容貌をかしき童べの、やむごとなき家の子どもなどにて、青き赤き白橡、蘇芳葡萄染めなど、常のごと、例のみづらに、額ばかりのけしきを見せて、短きものどもをほのかに舞ひつつ、紅葉の蔭に返り入るほど、日の暮るるも<A HREF="#k25">いと惜しげ</A><A NAME="t25">な</A>り。<BR>⏎
d1481<P>⏎
cd10:4482-491 「秋をへて時雨ふりぬる里人も<BR>⏎
  かかる紅葉の折をこそ見ね」<BR>⏎
<P>⏎
 うらめしげにぞ思したるや。帝<BR>⏎
<P
>⏎
 「世の常の紅葉とや見るいにしへの<BR>⏎
  ためしにひける庭の錦を」<BR>⏎
<P>⏎
 と聞こえ知らせたまふ。御容貌いよいよねびととのほりたまひて、ただ一つものと見えさせたまふを、中納言さぶらひたまふが、ことことならぬこそ、めざましかめれ。あてにめでたきけはひや、思ひなしに劣り<A HREF="#k27">まさらむ</A><A NAME="t27">、</A>あざやかに匂はしきところは、添ひてさへ見ゆ。<BR>⏎
<P>⏎
271-274 「秋をへて時雨ふりぬる里人も<BR>  かかる紅葉の折をこそ見ね」<BR>⏎
 うらめしげにぞ思したるや。帝<BR>⏎
 「世の常の紅葉とや見るいにしへの<BR>  ためしにひける庭の錦を」<BR>⏎
 と聞こえ知らせたまふ。御容貌いよいよねびととのほりたまひて、ただ一つものと見えさせたまふを、中納言さぶらひたまふが、ことことならぬこそ、めざましかめれ。あてにめでたきけはひや、思ひなしに劣り<A HREF="#k27">まさらむ</A><A NAME="t27">、</A>あざやかに匂はしきところは、添ひてさへ見ゆ。<BR>⏎
d2493-494
<P>⏎
text33495 <a name="in41">【出典】<BR>276 
c1496</a><A NAME="no1">出典1</A> 人知れぬ我が通ひ路の関守は宵々ごとにうちも寝ななむ(古今集恋三-六三二 在原業平)<A HREF="#te1">(戻)</A><BR>⏎
277<A NAME="no1">出典1</A> 人知れぬ我が通ひ路の関守は宵々ごとにうちも寝ななむ(古今集恋三-六三二 在原業平)<A HREF="#te1">(戻)</A><BR>⏎
d1516
text33517<p> <a name="in42">【校訂】<BR>297 
c1519</a><A NAME="k01">校訂1</A> 恥づかしと--はつかしう(う/#と)<A HREF="#t01">(戻)</A><BR>⏎
299<A NAME="k01">校訂1</A> 恥づかしと--はつかしう(う/#と)<A HREF="#t01">(戻)</A><BR>⏎
d1546</p>⏎
d1553</p>⏎
i0336
diffsrc/original/text34.htmlsrc/modified/text34.html
cd2:18-9<body background="wallppr063.gif">⏎
First updated 9/20/1996(ver.1-1)<BR>⏎
8<BODY>⏎
cd3:210-12Last updated 9/21/2010(ver.2-3)<BR>⏎
渋谷栄一校訂(C)<BR>⏎
<P
>⏎
9-10<ADDRESS>Last updated 9/21/2010(ver.2-3)<BR>⏎
渋谷栄一校訂(C)</ADDRESS>⏎
d114<P>⏎
d116<P>⏎
c152<DD>呼称--尚侍の君・北の方、鬚黒の北の方<BR>⏎
48<DD>呼称---尚侍の君・北の方、鬚黒の北の方<BR>⏎
d156<P>⏎
c1116<LI>源氏、朧月夜に今なお執心---<A HREF="#in71">今はとて、女御更衣たちなど、おのがじし別れ</A>⏎
111<LI>源氏、朧月夜に今なお執心---<A HREF="#in71">今はとて、女御更衣たちなど、おのがじし別れ</A>⏎
d1195<P>⏎
d1198<P>⏎
text34199 <H4>第一章 朱雀院の物語 女三の宮の婿選び</H4>192 
text34200 <A NAME="in11">[第一段 朱雀院、女三の宮の将来を案じる]</A><BR>193 
d1201<P>⏎
d1203<P>⏎
d1205<P>⏎
d1207<P>⏎
d1209<P>⏎
d1211<P>⏎
cd2:1213-214 そのほど、御年、十三四ばかりおはす。<BR>⏎
<P>⏎
200 そのほど、御年、十三四ばかりおはす。<BR>⏎
d1216<P>⏎
cd2:1217-218 とただこの御ことをうしろめたく思し嘆く。<BR>⏎
<P>⏎
202 とただこの御ことをうしろめたく思し嘆く。<BR>⏎
d1220<P>⏎
d1222<P>⏎
text34223 <A NAME="in12">[第二段 東宮、父朱雀院を見舞う]</A><BR>205 
d1224<P>⏎
d1226<P>⏎
d1228<P>⏎
d1230<P>⏎
d1232<P>⏎
d1234<P>⏎
cd6:3235-240 と御目<A HREF="#k05">おし拭ひ</A><A NAME="t05">つ</A>つ、聞こえ知らせさせたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
 女御にも、<A HREF="#k06">うつくしき</A><A NAME="t06">さ</A>まに聞こえつけさせたまふ。されど女御の、人よりはまさりて時めきたまひしに、皆挑み交はしたまひしほど、御仲らひども、えうるはしからざりしかば、その名残にて、「<A HREF="#k07">げに</A><A NAME="t07">、</A>今はわざと憎しなどはなくとも、まことに心とどめて思ひ後見むとまでは思さずもや」とぞ推し量らるるかし。<BR>⏎
<P>⏎
 朝夕に、この御ことを思し嘆く。年暮れゆくままに、御悩みまことに重くなりまさらせたまひて、御簾の外にも出でさせたまはず。御もののけにて、時々<A HREF="#k08">悩ませたまふ</A><A NAME="t08">こ</A>ともありつれど、いとかくうちはへをやみなきさまにはおはしまさざりつるを、「このたびは、なほ限りなり」と思し召したり。<BR>⏎
<P>⏎
211-213 と御目<A HREF="#k05">おし拭ひ</A><A NAME="t05">つ</A>つ、聞こえ知らせさせたまふ。<BR>⏎
 女御にも、<A HREF="#k06">うつくしき</A><A NAME="t06">さ</A>まに聞こえつけさせたまふ。されど女御の、人よりはまさりて時めきたまひしに、皆挑み交はしたまひしほど、御仲らひども、えうるはしからざりしかば、その名残にて、「<A HREF="#k07">げに</A><A NAME="t07">、</A>今はわざと憎しなどはなくとも、まことに心とどめて思ひ後見むとまでは思さずもや」とぞ推し量らるるかし。<BR>⏎
 朝夕に、この御ことを思し嘆く。年暮れゆくままに、御悩みまことに重くなりまさらせたまひて、御簾の外にも出でさせたまはず。御もののけにて、時々<A HREF="#k08">悩ませたまふ</A><A NAME="t08">こ</A>ともありつれど、いとかくうちはへをやみなきさまにはおはしまさざりつるを、「このたびは、なほ限りなり」と思し召したり。<BR>⏎
d1242<P>⏎
text34243 <A NAME="in13">[第三段 源氏の使者夕霧、朱雀院を見舞う]</A><BR>215 
d1244<P>⏎
d1246<P>⏎
d1248<P>⏎
d1250<P>⏎
d1252<P>⏎
d1254<P>⏎
d1256<P>⏎
d1258<P>⏎
cd2:1259-260 などうちしほたれつつのたまはす。<BR>⏎
<P>⏎
223 などうちしほたれつつのたまはす。<BR>⏎
text34261 <A NAME="in14">[第四段 夕霧、源氏の言葉を言上す]</A><BR>224 
d1262<P>⏎
d1264<P>⏎
d1266<P>⏎
cd6:3267-272 『かく朝廷の御後見を<A HREF="#k15">仕うまつりさして</A><A NAME="t15">、</A>静かなる思ひをかなへむと、ひとへに籠もりゐし後は、何ごとをも、知らぬやうにて、故院の御遺言のごともえ仕うまつらず、御位におはしましし世には、齢のほども身のうつはものも及ばず、かしこき上の人びと多くて、その心ざしを遂げて御覧ぜらるることもなかりき。今、かく政事を去りて、静かにおはしますころほひ、心のうちをも隔てなく、参りうけたまはらまほしきを、さすがに何となく所狭き身のよそほひにて、おのづから月日を過ぐすこと』<BR>⏎
<P>⏎
 となむ折々嘆き申したまふ」<BR>⏎
<P>⏎
 など奏したまふ。<BR>⏎
<P>⏎
227-229 『かく朝廷の御後見を<A HREF="#k15">仕うまつりさして</A><A NAME="t15">、</A>静かなる思ひをかなへむと、ひとへに籠もりゐし後は、何ごとをも、知らぬやうにて、故院の御遺言のごともえ仕うまつらず、御位におはしましし世には、齢のほども身のうつはものも及ばず、かしこき上の人びと多くて、その心ざしを遂げて御覧ぜらるることもなかりき。今、かく政事を去りて、静かにおはしますころほひ、心のうちをも隔てなく、参りうけたまはらまほしきを、さすがに何となく所狭き身のよそほひにて、おのづから月日を過ぐすこと』<BR>⏎
 となむ折々嘆き申したまふ」<BR>⏎
 など奏したまふ。<BR>⏎
d1274<P>⏎
d1276<P>⏎
cd2:1277-278 とのたまはする御けしきを、「いかにのたまはする<A HREF="#k18">にか」と</A><A NAME="t18">、</A>あやしく思ひめぐらすに、「この姫宮をかく思し扱ひて、さるべき人あらば、預けて、心やすく世をも思ひ離ればや、となむ思しのたまはする」と、おのづから漏り聞きたまふ便りありければ、「さやうの筋にや」とは思ひぬれど、ふと心得顔にも、何かはいらへきこえさせむ。ただ<BR>⏎
<P>⏎
232 とのたまはする御けしきを、「いかにのたまはする<A HREF="#k18">にか」と</A><A NAME="t18">、</A>あやしく思ひめぐらすに、「この姫宮をかく思し扱ひて、さるべき人あらば、預けて、心やすく世をも思ひ離ればや、となむ思しのたまはする」と、おのづから漏り聞きたまふ便りありければ、「さやうの筋にや」とは思ひぬれど、ふと心得顔にも、何かはいらへきこえさせむ。ただ<BR>⏎
d1280<P>⏎
d1282<P>⏎
text34283 <A NAME="in15">[第五段 朱雀院の夕霧評]</A><BR>235 
d1284<P>⏎
d1286<P>⏎
cd9:5288-296 「あなめでた」<BR>⏎
<P>⏎
 など集りて聞こゆるを、老いしらへるは、<BR>⏎
<P> 「いでさりとも、かの院のかばかりにおはせし御ありさまには、えなずらひきこえたまはざめり。いと目もあやにこそきよらにものしたまひしか」<BR>⏎
<P>⏎
 など言ひしろふを聞こしめして、<BR>⏎
<P>⏎
 「まことに、かれはいとさま異なりし人ぞかし。今はまた、その世にもねびまさりて、光るとはこれを言ふべきにやと見ゆる匂ひなむ、いとど加はりにたる。うるはしだちて、はかばかしき方に見れば、いつくしくあざやかに、目も<A HREF="#k19">及ばぬ</A><A NAME="t19">心</A>地するを、またうちとけて、戯れごとをも言ひ乱れ遊べば、その方につけては、似るものなく愛敬づき、なつかしくうつくしきことの、<A HREF="#k20">並び</A><A NAME="t20">な</A>きこそ、世にありがたけれ。何ごとにも前の世推し量られて、めづらかなる人のありさまなり。<BR>⏎
<P>⏎
238-242 「あなめでた」<BR>⏎
 など集りて聞こゆるを、老いしらへるは、<BR>⏎
 「いでさりとも、かの院のかばかりにおはせし御ありさまには、えなずらひきこえたまはざめり。いと目もあやにこそきよらにものしたまひしか」<BR>⏎
 など言ひしろふを聞こしめして、<BR>⏎
 「まことに、かれはいとさま異なりし人ぞかし。今はまた、その世にもねびまさりて、光るとはこれを言ふべきにやと見ゆる匂ひなむ、いとど加はりにたる。うるはしだちて、はかばかしき方に見れば、いつくしくあざやかに、目も<A HREF="#k19">及ばぬ</A><A NAME="t19">心</A>地するを、またうちとけて、戯れごとをも言ひ乱れ遊べば、その方につけては、似るものなく愛敬づき、なつかしくうつくしきことの、<A HREF="#k20">並び</A><A NAME="t20">な</A>きこそ、世にありがたけれ。何ごとにも前の世推し量られて、めづらかなる人のありさまなり。<BR>⏎
d1298<P>⏎
cd4:2299-302 それにこれはいとこよなく進みにためるは、次々の子の世のおぼえのまさるなめりかし。まことに賢き方の才、心もちゐなどは、これもをさをさ劣るまじく、あやまりても、およすけまさりたるおぼえ、いと異<A HREF="#k22">なめり</A><A NAME="t22">」</A><BR>⏎
<P>⏎
 などめでさせたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
244-245 それにこれはいとこよなく進みにためるは、次々の子の世のおぼえのまさるなめりかし。まことに賢き方の才、心もちゐなどは、これもをさをさ劣るまじく、あやまりても、およすけまさりたるおぼえ、いと異<A HREF="#k22">なめり</A><A NAME="t22">」</A><BR>⏎
 などめでさせたまふ。<BR>⏎
text34303 <A NAME="in16">[第六段 女三の宮の乳母、源氏を推薦]</A><BR>246 
d1304<P>⏎
d1306<P>⏎
d1308<P>⏎
d1311<P>⏎
d1313<P>⏎
d1315<P>⏎
d1317<P>⏎
d1319<P>⏎
d1321<P>⏎
d1323<P>⏎
cd2:1324-325 「いでその旧りせぬあだけこそは、いとうしろめたけれ」<BR>⏎
<P>⏎
257 「いでその旧りせぬあだけこそは、いとうしろめたけれ」<BR>⏎
d1327<P>⏎
cd4:2328-331 「げにあまたの中にかかづらひて、めざましかるべき思ひはありとも、なほやがて親ざまに定めたるにて、さもや譲りおききこえまし」<BR>⏎
<P>⏎
 なども思し召すべし。<BR>⏎
<P>⏎
259-260 「げにあまたの中にかかづらひて、めざましかるべき思ひはありとも、なほやがて親ざまに定めたるにて、さもや譲りおききこえまし」<BR>⏎
 なども思し召すべし。<BR>⏎
cd2:1333-334 われ女ならば、同じはらからなりとも、かならず睦び寄りなまし。若かりし時など、さなむおぼえし。まして女の欺かれむは、いとことわりぞや」<BR>⏎
<P>⏎
262 われ女ならば、同じはらからなりとも、かならず睦び寄りなまし。若かりし時など、さなむおぼえし。まして女の欺かれむは、いとことわりぞや」<BR>⏎
d1336<P>⏎
text34337 <H4>第二章 朱雀院の物語 女三の宮との結婚を承諾</H4>264 
text34338 <A NAME="in21">[第一段 乳母と兄左中弁との相談]</A><BR>265 
d1339<P>⏎
d1341<P>⏎
d1343<P>⏎
cd2:1344-345 主上をおきたてまつりて、また真心に思ひきこえたまふべき人もなければ、おのらは、仕うまつるとても、何ばかりの<A HREF="#k24">宮仕へ</A><A NAME="t24">に</A>かあらむ。わが心一つにしもあらで、おのづから思ひの他のこともおはしまし、軽々しき聞こえもあらむ時には、いかさまにかはわづらはしからむ。御覧ずる世に、ともかくも、この御こと定まりたらば、仕うまつりよくなむあるべき。<BR>⏎
<P>⏎
268 主上をおきたてまつりて、また真心に思ひきこえたまふべき人もなければ、おのらは、仕うまつるとても、何ばかりの<A HREF="#k24">宮仕へ</A><A NAME="t24">に</A>かあらむ。わが心一つにしもあらで、おのづから思ひの他のこともおはしまし、軽々しき聞こえもあらむ時には、いかさまにかはわづらはしからむ。御覧ずる世に、ともかくも、この御こと定まりたらば、仕うまつりよくなむあるべき。<BR>⏎
d1347<P>⏎
d1349<P>⏎
cd8:4350-357 「いかなるべき御ことにかあらむ。院は、あやしきまで御心長く、仮にても見そめたまへる人は、御心とまりたるをも、またさしも<A HREF="#k25">深からざりけるをも</A><A NAME="t25">、</A>かたがたにつけて尋ね取りたまひつつ、あまた集へきこえたまへれど、やむごとなく思したるは、限りありて、一方なめれば、それにことよりて、かひなげなる住まひしたまふ方々こそは多かめるを、御宿世ありて、もしさやうにおはしますやうもあらば、いみじき人と聞こゆとも、立ち並びておしたちたまふことは、えあらじとこそは推し量らるれど、なほいかがと憚らるることありてなむおぼゆる。<BR>⏎
<P>⏎
 さるは『この世の栄え、末の世に過ぎて、身に心もとなきことはなきを、女の筋にてなむ、人のもどきをも<A HREF="#k26">負ひ</A><A NAME="t26">、</A>わが心にも飽かぬこともある』となむ、常にうちうちのすさびごとにも思しのたまはすなる。<BR>⏎
<P>⏎
 げに<A HREF="#k27">おのれらが</A><A NAME="t27">見</A>たてまつるにも、さなむおはします。かたがたにつけて、御蔭に隠したまへる人、皆その人ならず立ち下れる際にはものしたまはねど、限りあるただ人どもにて、院の御ありさまに並ぶべきおぼえ具したるやはおはすめる。<BR>⏎
<P>⏎
 それに同じくは、げにさもおはしまさば、いかにたぐひたる御あはひならむ」<BR>⏎
<P>⏎
271-274 「いかなるべき御ことにかあらむ。院は、あやしきまで御心長く、仮にても見そめたまへる人は、御心とまりたるをも、またさしも<A HREF="#k25">深からざりけるをも</A><A NAME="t25">、</A>かたがたにつけて尋ね取りたまひつつ、あまた集へきこえたまへれど、やむごとなく思したるは、限りありて、一方なめれば、それにことよりて、かひなげなる住まひしたまふ方々こそは多かめるを、御宿世ありて、もしさやうにおはしますやうもあらば、いみじき人と聞こゆとも、立ち並びておしたちたまふことは、えあらじとこそは推し量らるれど、なほいかがと憚らるることありてなむおぼゆる。<BR>⏎
 さるは『この世の栄え、末の世に過ぎて、身に心もとなきことはなきを、女の筋にてなむ、人のもどきをも<A HREF="#k26">負ひ</A><A NAME="t26">、</A>わが心にも飽かぬこともある』となむ、常にうちうちのすさびごとにも思しのたまはすなる。<BR>⏎
 げに<A HREF="#k27">おのれらが</A><A NAME="t27">見</A>たてまつるにも、さなむおはします。かたがたにつけて、御蔭に隠したまへる人、皆その人ならず立ち下れる際にはものしたまはねど、限りあるただ人どもにて、院の御ありさまに並ぶべきおぼえ具したるやはおはすめる。<BR>⏎
 それに同じくは、げにさもおはしまさば、いかにたぐひたる御あはひならむ」<BR>⏎
d1359<P>⏎
text34360 <A NAME="in22">[第二段 乳母、左中弁の意見を朱雀院に言上]</A><BR>276 
d1361<P>⏎
d1363<P>⏎
d1365<P>⏎
d1367<P>⏎
d1369<P>⏎
d1371<P>⏎
d1373<P>⏎
text34374 <A NAME="in23">[第三段 朱雀院、内親王の結婚を苦慮]</A><BR>283 
d1375<P>⏎
cd2:1376-377 「しか思ひたどるによりなむ。皇女たちの世づきたるありさまは、うたてあはあはしきやうにもあり、また高き際といへども、女は男に見ゆるにつけてこそ、悔しげなることも、めざましき思ひも、おのづからうちまじるわざなめれと、かつは心苦しく思ひ乱るるを、またさるべき人に立ちおくれて、頼む蔭どもに別れぬる後、心を立てて世の中に過ぐさむことも、昔は、人の心たひらかにて、世に許さるまじきほどのことをば、思ひ及ばぬものとならひたりけむ、今の世には、好き好きしく乱りがはしきことも、類に触れて聞こゆめりかし。<BR>⏎
<P>⏎
284 「しか思ひたどるによりなむ。皇女たちの世づきたるありさまは、うたてあはあはしきやうにもあり、また高き際といへども、女は男に見ゆるにつけてこそ、悔しげなることも、めざましき思ひも、おのづからうちまじるわざなめれと、かつは心苦しく思ひ乱るるを、またさるべき人に立ちおくれて、頼む蔭どもに別れぬる後、心を立てて世の中に過ぐさむことも、昔は、人の心たひらかにて、世に許さるまじきほどのことをば、思ひ及ばぬものとならひたりけむ、今の世には、好き好きしく乱りがはしきことも、類に触れて聞こゆめりかし。<BR>⏎
d1379<P>⏎
cd4:2380-383 ほどほどにつけて、<A HREF="#k32">宿世</A><A NAME="t32">な</A>どいふなることは、知りがたきわざなれば、よろづにうしろめたくなむ。すべて悪しくも善くも、さるべき人の心に許しおきたるままにて世の中を過ぐすは、宿世宿世にて、後の世に衰へある時も、みづからの過ちにはならず。<BR>⏎
<P>⏎
 あり経て、こよなき幸ひあり、めやすきことになる折は、かくても悪しからざりけりと見ゆれど、なほたちまちふとうち聞きつけたるほどは、親に知られず、さるべき人も許さぬに、心づからの忍びわざし出でたるなむ、女の身にはますことなき疵とおぼゆるわざなる。<BR>⏎
<P>⏎
286-287 ほどほどにつけて、<A HREF="#k32">宿世</A><A NAME="t32">な</A>どいふなることは、知りがたきわざなれば、よろづにうしろめたくなむ。すべて悪しくも善くも、さるべき人の心に許しおきたるままにて世の中を過ぐすは、宿世宿世にて、後の世に衰へある時も、みづからの過ちにはならず。<BR>⏎
 あり経て、こよなき幸ひあり、めやすきことになる折は、かくても悪しからざりけりと見ゆれど、なほたちまちふとうち聞きつけたるほどは、親に知られず、さるべき人も許さぬに、心づからの忍びわざし出でたるなむ、女の身にはますことなき疵とおぼゆるわざなる。<BR>⏎
d1385<P>⏎
d1387<P>⏎
cd2:1388-389 など見捨てたてまつりたまはむ後の世を、うしろめたげに思ひきこえさせたまへれば、いよいよわづらはしく思ひあへり。<BR>⏎
<P>⏎
290 など見捨てたてまつりたまはむ後の世を、うしろめたげに思ひきこえさせたまへれば、いよいよわづらはしく思ひあへり。<BR>⏎
text34390 <A NAME="in24">[第四段 朱雀院、婿候補者を批評]</A><BR>291 
d1391<P>⏎
d1393<P>⏎
cd6:3394-399 かの六条の大殿は、げにさりともものの心得て、うしろやすき方はこよなかりなむを、方々にあまたものせらるべき人びとを知るべきにもあらずかし。とてもかくても、人の心からなり。のどかにおちゐて、おほかたの世のためしとも、うしろやすき方は並びなくものせらるる人なり。さらで良ろしかるべき人、誰ればかりかはあらむ。<BR>⏎
<P>⏎
 兵部卿宮、人柄はめやすしかし。同じき筋にて、異人とわきまへおとしむべきにはあらねど、あまりいたくなよびよしめくほどに、重き方おくれて、すこし軽びたるおぼえや進みにたらむ。なほさる人はいと頼もしげなくなむある。<BR>⏎
<P>⏎
 また大納言の朝臣の家司望むなる、さる方に、ものまめやかなるべきことにはあなれど、さすがにいかにぞや。さやうにおしなべたる際は、なほめざましくなむあるべき。<BR>⏎
<P>⏎
293-295 かの六条の大殿は、げにさりともものの心得て、うしろやすき方はこよなかりなむを、方々にあまたものせらるべき人びとを知るべきにもあらずかし。とてもかくても、人の心からなり。のどかにおちゐて、おほかたの世のためしとも、うしろやすき方は並びなくものせらるる人なり。さらで良ろしかるべき人、誰ればかりかはあらむ。<BR>⏎
 兵部卿宮、人柄はめやすしかし。同じき筋にて、異人とわきまへおとしむべきにはあらねど、あまりいたくなよびよしめくほどに、重き方おくれて、すこし軽びたるおぼえや進みにたらむ。なほさる人はいと頼もしげなくなむある。<BR>⏎
 また大納言の朝臣の家司望むなる、さる方に、ものまめやかなるべきことにはあなれど、さすがにいかにぞや。さやうにおしなべたる際は、なほめざましくなむあるべき。<BR>⏎
d1401<P>⏎
d1403<P>⏎
d1405<P>⏎
cd2:1406-407 とよろづに思しわづらひたり。<BR>⏎
<P>⏎
299 とよろづに思しわづらひたり。<BR>⏎
d1409<P>⏎
text34410 <A NAME="in25">[第五段 婿候補者たちの動静]</A><BR>301 
d1411<P>⏎
d1413<P>⏎
d1415<P>⏎
cd2:1416-417 と思しのたまひて、尚侍の君には、かの姉北の方して、伝へ申したまふなりけり。よろづ限りなき言の葉を尽くして奏せさせ、御けしき賜はらせたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
304 と思しのたまひて、尚侍の君には、かの姉北の方して、伝へ申したまふなりけり。よろづ限りなき言の葉を尽くして奏せさせ、御けしき賜はらせたまふ。<BR>⏎
d1419<P>⏎
d1421<P>⏎
text34422 <A NAME="in26">[第六段 夕霧の心中]</A><BR>307 
d1423<P>⏎
d1425<P>⏎
d1427<P>⏎
cd2:1428-429 と心ときめきもしつべけれど、<BR>⏎
<P>⏎
310 と心ときめきもしつべけれど、<BR>⏎
d1431<P>⏎
cd2:1432-433 などもとより好き好きしからぬ心なれば、思ひしづめつつうち出でねど、さすがに他ざまに定まり果てたまはむも、いかにぞやおぼえて、耳はとまりけり。<BR>⏎
<P>⏎
312 などもとより好き好きしからぬ心なれば、思ひしづめつつうち出でねど、さすがに他ざまに定まり果てたまはむも、いかにぞやおぼえて、耳はとまりけり。<BR>⏎
text34434 <A NAME="in27">[第七段 朱雀院、使者を源氏のもとに遣わす]</A><BR>313 
d1435<P>⏎
d1437<P>⏎
cd7:4438-444 「さし当たりたるただ今のことよりも、後の世の例ともなるべき<A HREF="#k42">ことなるを、よく思し召しめぐらすべきことなり</A><A NAME="t42">。</A>人柄よろしとても、ただ人は限りあるを、なほしか思し立つことならば、かの六条院にこそ、親ざまに譲りきこえさせたまはめ」<BR>⏎
<P>⏎
 となむわざとの御消息とはあらねど、御けしきありけるを、待ち聞かせたまひても、<BR>⏎
<P>⏎
 「げにさることなり。いとよく思しのたまはせたり」<BR>⏎
<P> といよいよ御心立たせたまひて、まづかの弁してぞ、かつがつ案内伝へきこえさせたまひける。<BR>⏎
<P>⏎
315-318 「さし当たりたるただ今のことよりも、後の世の例ともなるべき<A HREF="#k42">ことなるを、よく思し召しめぐらすべきことなり</A><A NAME="t42">。</A>人柄よろしとても、ただ人は限りあるを、なほしか思し立つことならば、かの六条院にこそ、親ざまに譲りきこえさせたまはめ」<BR>⏎
 となむわざとの御消息とはあらねど、御けしきありけるを、待ち聞かせたまひても、<BR>⏎
 「げにさることなり。いとよく思しのたまはせたり」<BR>⏎
 といよいよ御心立たせたまひて、まづかの弁してぞ、かつがつ案内伝へきこえさせたまひける。<BR>⏎
text34445 <A NAME="in28">[第八段 源氏、承諾の意向を示す]</A><BR>319 
d1446<P>⏎
d1448<P>⏎
cd2:1449-450 「心苦しきことにもあなるかな。さはありとも、院の御世残りすくなしとて、ここにはまた、いくばく立ちおくれたてまつるべしとてか、その<A HREF="#k43">御後見</A><A NAME="t43">の</A>事をば受けとりきこえむ。げに次第を過たぬにて、今しばしのほども残りとまる限りあらば、おほかたにつけては、いづれの皇女たちをも、<A HREF="#k44">よそに</A><A NAME="t44">聞</A>き放ち<A HREF="#k45">たてまつる</A><A NAME="t45">べ</A>きにも<A HREF="#k46">あらねど</A><A NAME="t46">、</A>またかく取り分きて<A HREF="#k47">聞きおきたてまつり</A><A NAME="t47">て</A>むをば、ことにこそは後見きこえめと思ふを、それだにいと不定なる世の定めなさなりや」<BR>⏎
<P>⏎
321 「心苦しきことにもあなるかな。さはありとも、院の御世残りすくなしとて、ここにはまた、いくばく立ちおくれたてまつるべしとてか、その<A HREF="#k43">御後見</A><A NAME="t43">の</A>事をば受けとりきこえむ。げに次第を過たぬにて、今しばしのほども残りとまる限りあらば、おほかたにつけては、いづれの皇女たちをも、<A HREF="#k44">よそに</A><A NAME="t44">聞</A>き放ち<A HREF="#k45">たてまつる</A><A NAME="t45">べ</A>きにも<A HREF="#k46">あらねど</A><A NAME="t46">、</A>またかく取り分きて<A HREF="#k47">聞きおきたてまつり</A><A NAME="t47">て</A>むをば、ことにこそは後見きこえめと思ふを、それだにいと不定なる世の定めなさなりや」<BR>⏎
d1452<P>⏎
cd2:1453-454 「ましてひとつに頼まれたてまつるべき筋に、むつび馴れきこえむことは、いとなかなかに、うち続き世を去らむきざみ心苦しく、みづからのためにも浅からぬほだしになむあるべき。<BR>⏎
<P>⏎
323 「ましてひとつに頼まれたてまつるべき筋に、むつび馴れきこえむことは、いとなかなかに、うち続き世を去らむきざみ心苦しく、みづからのためにも浅からぬほだしになむあるべき。<BR>⏎
d1456<P>⏎
cd2:1457-458 されどいといたくまめだちて、思ふ人定まりにてぞ<A HREF="#k48">あめれば</A><A NAME="t48">、</A>それに憚らせたまふにやあらむ」<BR>⏎
<P>⏎
325 されどいといたくまめだちて、思ふ人定まりにてぞ<A HREF="#k48">あめれば</A><A NAME="t48">、</A>それに憚らせたまふにやあらむ」<BR>⏎
d1460<P>⏎
cd2:1461-462 「いとかなしくしたてまつりたまふ皇女なめれば、あながちにかく来し方行く先のたどりも深きなめりかしな。ただ内裏にこそたてまつりたまはめ。やむごとなきまづの人びとおはすといふことは、よしなきことなり。それにさはるべきことにもあらず。かならずさりとて、末の人疎かなるやうもなし。<BR>⏎
<P>⏎
327 「いとかなしくしたてまつりたまふ皇女なめれば、あながちにかく来し方行く先のたどりも深きなめりかしな。ただ内裏にこそたてまつりたまはめ。やむごとなきまづの人びとおはすといふことは、よしなきことなり。それにさはるべきことにもあらず。かならずさりとて、末の人疎かなるやうもなし。<BR>⏎
d1464<P>⏎
d1466<P>⏎
cd2:1467-468 などいぶかしくは思ひきこえたまふべし。<BR>⏎
<P>⏎
330 などいぶかしくは思ひきこえたまふべし。<BR>⏎
text34469 <H4>第三章 朱雀院の物語 女三の宮の裳着と朱雀院の出家</H4>331 
text34470 <A NAME="in31">[第一段 歳末、女三の宮の裳着催す]</A><BR>332 
d1471<P>⏎
d1473<P>⏎
d1475<P>⏎
d1477<P>⏎
d1479<P>⏎
cd2:1480-481 院の御こと、<A HREF="#k50">このたび</A><A NAME="t50">こそ</A>とぢめなれと、帝春宮をはじめたてまつりて、心苦しく聞こし召しつつ、蔵人所、納殿の<A HREF="#k51">唐物</A><A NAME="t51">ど</A>も、多く奉らせたまへり。<BR>⏎
<P>⏎
337 院の御こと、<A HREF="#k50">このたび</A><A NAME="t50">こそ</A>とぢめなれと、帝春宮をはじめたてまつりて、心苦しく聞こし召しつつ、蔵人所、納殿の<A HREF="#k51">唐物</A><A NAME="t51">ど</A>も、多く奉らせたまへり。<BR>⏎
d1483<P>⏎
text34484 <A NAME="in32">[第二段 秋好中宮、櫛を贈る]</A><BR>339 
d1485<P>⏎
d1487<P>⏎
cd8:3488-495 「さしながら昔を今に伝ふれば<BR>⏎
  玉の小櫛ぞ神さびにける」<BR>⏎
<P>⏎
 院、御覧じつけて、あはれに思し出でらるることもありけり。あえ物けしうはあらじと譲りきこえたまへるほど、げにおもだたしき簪なれば、御返りも、昔のあはれをばさしおきて、<BR>⏎
<P>⏎
 「さしつぎに見るものにもが万世を<BR>⏎
  黄楊の小櫛の神さぶるまで」<BR>⏎
<P>⏎
341-343 「さしながら昔を今に伝ふれば<BR>  玉の小櫛ぞ神さびにける」<BR>⏎
 院、御覧じつけて、あはれに思し出でらるることもありけり。あえ物けしうはあらじと譲りきこえたまへるほど、げにおもだたしき簪なれば、御返りも、昔のあはれをばさしおきて、<BR>⏎
 「さしつぎに見るものにもが万世を<BR>  黄楊の小櫛の神さぶるまで」<BR>⏎
d1497<P>⏎
text34498 <A NAME="in33">[第三段 朱雀院、出家す]</A><BR>345 
d1499<P>⏎
cd2:1500-501 御心地いと苦しきを念じつつ、思し起こして、この御いそぎ果てぬれば、三日過ぐして、つひに御髪下ろしたまふ。よろしきほどの人の上にてだに、今はとてさま変はるは悲しげなるわざなれば、ましていとあはれげに御方々も思し惑ふ。<BR>⏎
<P>⏎
346 御心地いと苦しきを念じつつ、思し起こして、この御いそぎ果てぬれば、三日過ぐして、つひに御髪下ろしたまふ。よろしきほどの人の上にてだに、今はとてさま変はるは悲しげなるわざなれば、ましていとあはれげに御方々も思し惑ふ。<BR>⏎
d1503<P>⏎
d1505<P>⏎
cd4:2506-509 とて御心乱れぬべけれど、あながちに御脇息にかかりたまひて、山の座主よりはじめて、御忌むことの阿闍梨三人さぶらひて、法服などたてまつるほど、この世を別れたまふ御作法、<A HREF="#k53">いみじく</A><A NAME="t53">悲</A>し。<BR>⏎
<P>⏎
 今日は、世を思ひ澄ましたる僧たちなどだに、涙もえとどめねば、まして女宮たち、女御更衣、ここらの男女、上下ゆすり満ちて泣きとよむに、いと心あわたたしう、かからで、静やかなる所に、やがて籠もるべく思しまうけける本意違ひて思し召さるるも、「ただこの幼き宮にひかされて」と思しのたまはす。<BR>⏎
<P>⏎
349-350 とて御心乱れぬべけれど、あながちに御脇息にかかりたまひて、山の座主よりはじめて、御忌むことの阿闍梨三人さぶらひて、法服などたてまつるほど、この世を別れたまふ御作法、<A HREF="#k53">いみじく</A><A NAME="t53">悲</A>し。<BR>⏎
 今日は、世を思ひ澄ましたる僧たちなどだに、涙もえとどめねば、まして女宮たち、女御更衣、ここらの男女、上下ゆすり満ちて泣きとよむに、いと心あわたたしう、かからで、静やかなる所に、やがて籠もるべく思しまうけける本意違ひて思し召さるるも、「ただこの幼き宮にひかされて」と思しのたまはす。<BR>⏎
d1511<P>⏎
text34512 <A NAME="in34">[第四段 源氏、朱雀院を見舞う]</A><BR>352 
d1513<P>⏎
cd2:1514-515 六条院も、すこし御心地よろしくと聞きたてまつらせたまひて、参りたまふ。御賜ばりの御封などこそ、皆同じごと、下りゐの帝と等しく定まりたまへれど、まことの太上天皇の儀式にはうけばりたまはず。世のもてなし思ひきこえたるさまなどは、心ことなれど、ことさらに削ぎたまひて、例の、ことことしからぬ御車にたてまつりて、上達部などさるべき限り、車にてぞ仕うまつりたまへる。<BR>⏎
<P>⏎
353 六条院も、すこし御心地よろしくと聞きたてまつらせたまひて、参りたまふ。御賜ばりの御封などこそ、皆同じごと、下りゐの帝と等しく定まりたまへれど、まことの太上天皇の儀式にはうけばりたまはず。世のもてなし思ひきこえたるさまなどは、心ことなれど、ことさらに削ぎたまひて、例の、ことことしからぬ御車にたてまつりて、上達部などさるべき限り、車にてぞ仕うまつりたまへる。<BR>⏎
d1517<P>⏎
d1519<P>⏎
d1522<P>⏎
cd2:1523-524 と慰めがたく思したり。<BR>⏎
<P>⏎
358 と慰めがたく思したり。<BR>⏎
text34525 <A NAME="in35">[第五段 朱雀院と源氏、親しく語り合う]</A><BR>359 
d1526<P>⏎
cd2:1527-528 院も、もの心細く思さるるに、え心強からず、うちしほれ<A HREF="#k56">たまひつつ</A><A NAME="t56">、</A>いにしへ今の御物語、いと弱げに聞こえさせたまひて、<BR>⏎
<P>⏎
360 院も、もの心細く思さるるに、え心強からず、うちしほれ<A HREF="#k56">たまひつつ</A><A NAME="t56">、</A>いにしへ今の御物語、いと弱げに聞こえさせたまひて、<BR>⏎
d1531<P>⏎
cd2:1532-533 とて思しおきてたるさまなど、詳しくのたまはするついでに、<BR>⏎
<P>⏎
363 とて思しおきてたるさまなど、詳しくのたまはするついでに、<BR>⏎
d1535<P>⏎
cd2:1536-537 とてまほにはあらぬ御けしき、心苦しく見たてまつりたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
365 とてまほにはあらぬ御けしき、心苦しく見たてまつりたまふ。<BR>⏎
text34538 <A NAME="in36">[第六段 内親王の結婚の必要性を説く]</A><BR>366 
d1539<P>⏎
d1541<P>⏎
cd8:4542-549 「げにただ人よりも、かかる筋には、私ざまの御後見なきは、口惜しげなるわざになむはべりける。春宮かくておはしませば、いとかしこき末の世の儲けの君と、天の下の頼みどころに仰ぎきこえさするを。<BR>⏎
<P>⏎
 ましてこのことと聞こえ置かせたまはむことは、一事として<A HREF="#k58">疎かに</A><A NAME="t58">軽</A>め申したまふべきにはべらねば、さらに行く先のこと思し悩むべきにもはべらねど、げにこと限りあれば、公けとなりたまひ、世の政事御心にかなふべしとは言ひながら、女の御ために、何ばかりのけざやかなる御心寄せあるべきにもはべらざりけり。<BR>⏎
<P>⏎
 すべて女の御ためには、さまざま真の御後見とすべきものは、なほさるべき筋に契りを交はし、えさらぬことに、育みきこゆる<A HREF="#k59">御護りめ</A><A NAME="t59">は</A>べるなむ、うしろやすかるべきことにはべるを、なほしひて後の世の御疑ひ残るべくは、よろしきに思し選びて、忍びて、さるべき御預かりを定めおかせたまふべきになむはべなる」<BR>⏎
<P>⏎
 と奏したまふ。<BR>⏎
<P>⏎
368-371 「げにただ人よりも、かかる筋には、私ざまの御後見なきは、口惜しげなるわざになむはべりける。春宮かくておはしませば、いとかしこき末の世の儲けの君と、天の下の頼みどころに仰ぎきこえさするを。<BR>⏎
 ましてこのことと聞こえ置かせたまはむことは、一事として<A HREF="#k58">疎かに</A><A NAME="t58">軽</A>め申したまふべきにはべらねば、さらに行く先のこと思し悩むべきにもはべらねど、げにこと限りあれば、公けとなりたまひ、世の政事御心にかなふべしとは言ひながら、女の御ために、何ばかりのけざやかなる御心寄せあるべきにもはべらざりけり。<BR>⏎
 すべて女の御ためには、さまざま真の御後見とすべきものは、なほさるべき筋に契りを交はし、えさらぬことに、育みきこゆる<A HREF="#k59">御護りめ</A><A NAME="t59">は</A>べるなむ、うしろやすかるべきことにはべるを、なほしひて後の世の御疑ひ残るべくは、よろしきに思し選びて、忍びて、さるべき御預かりを定めおかせたまふべきになむはべなる」<BR>⏎
 と奏したまふ。<BR>⏎
text34550 <A NAME="in37">[第七段 源氏、結婚を承諾]</A><BR>372 
d1551<P>⏎
d1553<P>⏎
cd2:1554-555 ましてかく、今はとこの世を離るる際にて、ことことしく思ふべきにもあらねど、またしか捨つる中にも、捨てがたきことありて、さまざまに思ひわづらひはべるほどに、病は重りゆく。また取り返すべきにもあらぬ月日の過ぎゆけば、心あわたたしくなむ。<BR>⏎
<P>⏎
374 ましてかく、今はとこの世を離るる際にて、ことことしく思ふべきにもあらねど、またしか捨つる中にも、捨てがたきことありて、さまざまに思ひわづらひはべるほどに、病は重りゆく。また取り返すべきにもあらぬ月日の過ぎゆけば、心あわたたしくなむ。<BR>⏎
d1557<P>⏎
d1559<P>⏎
d1561<P>⏎
d1564<P>⏎
cd2:1565-566 と受け引き申したまひつ。<BR>⏎
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380 と受け引き申したまひつ。<BR>⏎
text34567 <A NAME="in38">[第八段 朱雀院の饗宴]</A><BR>381 
d1568<P>⏎
d1570<P>⏎
d1572<P>⏎
text34573 <H4>第四章 光る源氏の物語 紫の上に打ち明ける</H4><BR>384 
text34574 <A NAME="in41">[第一段 源氏、結婚承諾を煩悶す]</A><BR>385 
d1575<P>⏎
d1578<P>⏎
d1580<P>⏎
d1582<P>⏎
d1584<P>⏎
d1586<P>⏎
d1588<P>⏎
text34589 <A NAME="in42">[第二段 源氏、紫の上に打ち明ける]</A><BR>393 
d1590<P>⏎
d1592<P>⏎
d1594<P>⏎
d1596<P>⏎
d1598<P>⏎
d1600<P>⏎
d1602<P>⏎
d1604<P>⏎
d1606<P>⏎
cd8:4607-614 と卑下したまふを、<BR>⏎
<P>⏎
 「あまりかううちとけたまふ御ゆるしも、いかなればと、うしろめたくこそあれ。まことは、さだに思しゆるいて、われも人も心得て、なだらかにもてなし過ぐしたまはば、いよいよあはれになむ。<BR>⏎
<P>⏎
 ひがこと聞こえなどせむ人の言、聞き入れたまふな。すべて世の人の口といふものなむ、誰が<A HREF="#k63">言ひ出づる</A><A NAME="t63">こ</A>とともなく、おのづから人の仲らひなど、<A HREF="#k64">うちほほゆがみ</A><A NAME="t64">、</A><A HREF="#k65">思はず</A><A NAME="t65">な</A>ること出で来るものなるを、心ひとつにしづめて、ありさまに従ふなむよき。まだきに騒ぎて、あいなきもの怨みしたまふな」<BR>⏎
<P>⏎
 といとよく教へきこえたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
402-405 と卑下したまふを、<BR>⏎
 「あまりかううちとけたまふ御ゆるしも、いかなればと、うしろめたくこそあれ。まことは、さだに思しゆるいて、われも人も心得て、なだらかにもてなし過ぐしたまはば、いよいよあはれになむ。<BR>⏎
 ひがこと聞こえなどせむ人の言、聞き入れたまふな。すべて世の人の口といふものなむ、誰が<A HREF="#k63">言ひ出づる</A><A NAME="t63">こ</A>とともなく、おのづから人の仲らひなど、<A HREF="#k64">うちほほゆがみ</A><A NAME="t64">、</A><A HREF="#k65">思はず</A><A NAME="t65">な</A>ること出で来るものなるを、心ひとつにしづめて、ありさまに従ふなむよき。まだきに騒ぎて、あいなきもの怨みしたまふな」<BR>⏎
 といとよく教へきこえたまふ。<BR>⏎
text34615 <A NAME="in43">[第三段 紫の上の心中]</A><BR>406 
d1616<P>⏎
d1618<P>⏎
d1620<P>⏎
d1622<P>⏎
cd2:1623-624 などおいらかなる人の御心といへど、いかでかはかばかりの隈はなからむ。今はさりともとのみ、わが身を思ひ上がり、うらなくて過ぐしける世の、人笑へならむことを、下には思ひ続けたまへど、いとおいらかにのみもてなしたまへり。<BR>⏎
<P>⏎
410 などおいらかなる人の御心といへど、いかでかはかばかりの隈はなからむ。今はさりともとのみ、わが身を思ひ上がり、うらなくて過ぐしける世の、人笑へならむことを、下には思ひ続けたまへど、いとおいらかにのみもてなしたまへり。<BR>⏎
text34625 <H4>第五章 光る源氏の物語 玉鬘、源氏の四十の賀を祝う</H4><BR>411 
text34626 <A NAME="in51">[第一段 玉鬘、源氏に若菜を献ず]</A><BR>412 
d1627<P>⏎
d1629<P>⏎
cd2:1630-631 さるは今年ぞ四十になりたまひければ、御賀のこと、朝廷にも聞こし召し過ぐさず、世の中の営みにて、かねてより響くを、ことのわづらひ多くいかめしきことは、昔より好みたまはぬ御心にて、皆かへさひ申したまふ。<BR>⏎
<P>⏎
414 さるは今年ぞ四十になりたまひければ、御賀のこと、朝廷にも聞こし召し過ぐさず、世の中の営みにて、かねてより響くを、ことのわづらひ多くいかめしきことは、昔より好みたまはぬ御心にて、皆かへさひ申したまふ。<BR>⏎
d1633<P>⏎
d1635<P>⏎
d1637<P>⏎
d1639<P>⏎
text34640 <A NAME="in52">[第二段 源氏、玉鬘と対面]</A><BR>419 
d1641<P>⏎
d1643<P>⏎
d1645<P>⏎
d1647<P>⏎
d1649<P>⏎
d1651<P>⏎
d1653<P>⏎
text34654 <A NAME="in53">[第三段 源氏、玉鬘と和歌を唱和]</A><BR>426 
d1655<P>⏎
d1657<P>⏎
cd8:3658-665 「若葉さす野辺の小松を引き連れて<BR>⏎
  もとの岩根を祈る今日かな」<BR>⏎
<P>⏎
 とせめておとなび聞こえたまふ。沈の折敷四つして、御若菜さまばかり<A HREF="#k74">参れり</A><A NAME="t74">。</A>御土器取りたまひて、<BR>⏎
<P>⏎
 「小松原末の齢に引かれてや<BR>⏎
  野辺の若菜も年を摘むべき」<BR>⏎
<P>⏎
428-430 「若葉さす野辺の小松を引き連れて<BR>  もとの岩根を祈る今日かな」<BR>⏎
 とせめておとなび聞こえたまふ。沈の折敷四つして、御若菜さまばかり<A HREF="#k74">参れり</A><A NAME="t74">。</A>御土器取りたまひて、<BR>⏎
 「小松原末の齢に引かれてや<BR>  野辺の若菜も年を摘むべき」<BR>⏎
d1667<P>⏎
d1669<P>⏎
d1671<P>⏎
text34672 <A NAME="in54">[第四段 管弦の遊び催す]</A><BR>434 
d1673<P>⏎
d1675<P>⏎
d1677<P>⏎
cd2:1678-679 とのたまひてすぐれたる音の限りを、かねてより思しまうけたりければ、忍びやかに御遊びあり。<BR>⏎
<P>⏎
437 とのたまひてすぐれたる音の限りを、かねてより思しまうけたりければ、忍びやかに御遊びあり。<BR>⏎
d1681<P>⏎
d1683<P>⏎
cd2:1684-685 父大臣は、琴の緒もいと緩に張りて、いたう下して調べ、響き多く合はせてぞ掻き鳴らしたまふ。これはいとわららかに昇る音の、なつかしく愛敬づきたるを、「いとかうしもは聞こえざりしを」と、親王たちも驚きたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
440 父大臣は、琴の緒もいと緩に張りて、いたう下して調べ、響き多く合はせてぞ掻き鳴らしたまふ。これはいとわららかに昇る音の、なつかしく愛敬づきたるを、「いとかうしもは聞こえざりしを」と、親王たちも驚きたまふ。<BR>⏎
d1687<P>⏎
d1689<P>⏎
cd2:1690-691 唱歌の人びと御階に召して、すぐれたる声の限り出だして、返り声になる。夜の更け行くままに、物の調べども、なつかしく変はりて、「<A HREF="#no7">青柳</A><A NAME="te7">」</A>遊びたまふほど、げにねぐらの鴬おどろきぬべく、いみじくおもしろし。私事のさまにしなしたまひて、禄など、いと警策にまうけられたりけり。<BR>⏎
<P>⏎
443 唱歌の人びと御階に召して、すぐれたる声の限り出だして、返り声になる。夜の更け行くままに、物の調べども、なつかしく変はりて、「<A HREF="#no7">青柳</A><A NAME="te7">」</A>遊びたまふほど、げにねぐらの鴬おどろきぬべく、いみじくおもしろし。私事のさまにしなしたまひて、禄など、いと警策にまうけられたりけり。<BR>⏎
text34692 <A NAME="in55">[第五段 暁に玉鬘帰る]</A><BR>444 
d1693<P>⏎
d1695<P>⏎
d1698<P>⏎
d1700<P>⏎
d1702<P>⏎
text34703 <H4>第六章 光る源氏の物語 女三の宮の六条院降嫁</H4><BR>450 
text34704 <A NAME="in61">[第一段 女三の宮、六条院に降嫁]</A><BR>451 
d1705<P>⏎
cd2:1706-707 かくて如月の十余日に、朱雀院の姫宮、六条院へ渡りたまふ。この院にも、<A HREF="#k81">御心</A><A NAME="t81">ま</A>うけ世の常ならず。若菜参りし西の放出に<A HREF="#k82">御帳</A><A NAME="t82">立</A>てて、そなたの一二の対、渡殿かけて、女房の局々まで、こまかにしつらひ磨かせたまへり。内裏に参りたまふ人の作法をまねびて、<A HREF="#k83">かの院</A><A NAME="t83">よ</A>りも御調度など運ばる。渡りたまふ儀式、言へばさらなり。<BR>⏎
<P>⏎
452 かくて如月の十余日に、朱雀院の姫宮、六条院へ渡りたまふ。この院にも、<A HREF="#k81">御心</A><A NAME="t81">ま</A>うけ世の常ならず。若菜参りし西の放出に<A HREF="#k82">御帳</A><A NAME="t82">立</A>てて、そなたの一二の対、渡殿かけて、女房の局々まで、こまかにしつらひ磨かせたまへり。内裏に参りたまふ人の作法をまねびて、<A HREF="#k83">かの院</A><A NAME="t83">よ</A>りも御調度など運ばる。渡りたまふ儀式、言へばさらなり。<BR>⏎
d1709<P>⏎
d1711<P>⏎
text34712 <A NAME="in62">[第二段 結婚の儀盛大に催さる]</A><BR>455 
d1713<P>⏎
d1715<P>⏎
cd3:2716-718 対の上も、ことに触れてただにも思されぬ世のありさまなり。げにかかるにつけて、こよなく人に劣り消たるることもあるまじけれど、また並ぶ人なくならひたまひて、はなやかに生ひ先遠く、あなづりにくきけはひにて移ろひたまへるに、なまはしたなく思さるれど、つれなくのみもてなして、御渡りのほども、もろ心にはかなきこともし出でたまひて、いとらうたげなる御ありさまを、いとどありがたしと思ひきこえたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
 姫宮は、げにまだいと小さく、片なりにおはするうちにも、いといはけなきけしきして、ひたみちに若びたまへり。<BR>⏎
457-458 対の上も、ことに触れてただにも思されぬ世のありさまなり。げにかかるにつけて、こよなく人に劣り消たるることもあるまじけれど、また並ぶ人なくならひたまひて、はなやかに生ひ先遠く、あなづりにくきけはひにて移ろひたまへるに、なまはしたなく思さるれど、つれなくのみもてなして、御渡りのほども、もろ心にはかなきこともし出でたまひて、いとらうたげなる御ありさまを、いとどありがたしと思ひきこえたまふ。<BR>⏎
 姫宮は、げにまだいと小さく、片なりにおはするうちにも、いといはけなきけしきして、ひたみちに若びたまへり。<BR>⏎
d1720<P>⏎
cd2:1721-722 「<A HREF="#k85">かれは</A><A NAME="t85">さ</A>れていふかひ<A HREF="#k86">ありしを</A><A NAME="t86">、</A>これはいといはけなくのみ見えたまへば、よかめり。憎げにおしたちたることなどはあるまじかめり」<BR>⏎
<P>⏎
460 「<A HREF="#k85">かれは</A><A NAME="t85">さ</A>れていふかひ<A HREF="#k86">ありしを</A><A NAME="t86">、</A>これはいといはけなくのみ見えたまへば、よかめり。憎げにおしたちたることなどはあるまじかめり」<BR>⏎
d1724<P>⏎
text34725 <A NAME="in63">[第三段 源氏、結婚を後悔]</A><BR>462 
d1726<P>⏎
d1728<P>⏎
cd8:4729-736 「などてよろづのことありとも、また人をば並べて見るべきぞ。あだあだしく、心弱くなりおきにけるわがおこたりに、かかることも出で来るぞかし。若けれど、中納言をばえ思しかけずなりぬめりしを」<BR>⏎
<P>⏎
 とわれながらつらく思し続くるに、涙ぐまれて、<BR>⏎
<P>⏎
 「今宵ばかりは、ことわりと許したまひてむな。これより後のとだえあらむこそ、身ながらも心づきなかるべけれ。<A HREF="#k87">また</A><A NAME="t87"></A>さりとて、かの院に聞こし召さむことよ」<BR>⏎
<P>⏎
 と思ひ乱れたまへる御心のうち、苦しげなり。すこしほほ笑みて、<BR>⏎
<P>⏎
464-467 「などてよろづのことありとも、また人をば並べて見るべきぞ。あだあだしく、心弱くなりおきにけるわがおこたりに、かかることも出で来るぞかし。若けれど、中納言をばえ思しかけずなりぬめりしを」<BR>⏎
 とわれながらつらく思し続くるに、涙ぐまれて、<BR>⏎
 「今宵ばかりは、ことわりと許したまひてむな。これより後のとだえあらむこそ、身ながらも心づきなかるべけれ。<A HREF="#k87">また</A><A NAME="t87"></A>さりとて、かの院に聞こし召さむことよ」<BR>⏎
 と思ひ乱れたまへる御心のうち、苦しげなり。すこしほほ笑みて、<BR>⏎
d1738<P>⏎
cd10:4739-748 といふかひなげにとりなしたまへば、恥づかしうさへおぼえたまひて、つらづゑをつきたまひて、寄り臥したまへれば、硯を引き寄せたまひて、<BR>⏎
<P>⏎
 「<A HREF="#no9">目に近く</A><A NAME="te9">移</A>れば変はる世の中を<BR>⏎
  行く末遠く頼みけるかな」<BR>⏎
<P>⏎
 古言など書き交ぜたまふを、取りて見たまひて、はかなき言なれど、げにとことわりにて、<BR>⏎
<P>⏎
 「命こそ絶ゆとも絶えめ定めなき<BR>⏎
  世の常ならぬ仲の契りを」<BR>⏎
<P>⏎
469-472 といふかひなげにとりなしたまへば、恥づかしうさへおぼえたまひて、つらづゑをつきたまひて、寄り臥したまへれば、硯を引き寄せたまひて、<BR>⏎
 「<A HREF="#no9">目に近く</A><A NAME="te9">移</A>れば変はる世の中を<BR>  行く末遠く頼みけるかな」<BR>⏎
 古言など書き交ぜたまふを、取りて見たまひて、はかなき言なれど、げにとことわりにて、<BR>⏎
 「命こそ絶ゆとも絶えめ定めなき<BR>  世の常ならぬ仲の契りを」<BR>⏎
d1750<P>⏎
d1752<P>⏎
cd2:1753-754 とそそのかしきこえたまへば、なよよかにをかしきほどに、えならず匂ひて渡りたまふを、見出だしたまふも、いとただにはあらずかし。<BR>⏎
<P>⏎
475 とそそのかしきこえたまへば、なよよかにをかしきほどに、えならず匂ひて渡りたまふを、見出だしたまふも、いとただにはあらずかし。<BR>⏎
text34755 <A NAME="in64">[第四段 紫の上、眠れぬ夜を過ごす]</A><BR>476 
d1756<P>⏎
d1758<P>⏎
d1760<P>⏎
d1762<P>⏎
cd4:2763-766 「またさりとて、はかなきことにつけても、安からぬことのあらむ折々、かならずわづらはしきことども出で来なむかし」<BR>⏎
<P>⏎
 などおのがじしうち語らひ嘆かしげなるを、つゆも見知らぬやうに、いとけはひをかしく物語などしたまひつつ、夜更くるまで<A HREF="#k89">おはす</A><A NAME="t89">。</A><BR>⏎
<P>⏎
480-481 「またさりとて、はかなきことにつけても、安からぬことのあらむ折々、かならずわづらはしきことども出で来なむかし」<BR>⏎
 などおのがじしうち語らひ嘆かしげなるを、つゆも見知らぬやうに、いとけはひをかしく物語などしたまひつつ、夜更くるまで<A HREF="#k89">おはす</A><A NAME="t89">。</A><BR>⏎
text34767 <A NAME="in65">[第五段 六条院の女たち、紫の上に同情]</A><BR>482 
d1768<P>⏎
d1770<P>⏎
cd4:2771-774 「かくこれかれあまたものしたまふめれど、御心にかなひて、今めかしくすぐれたる際にもあらずと、目馴れてさうざうしく思したりつるに、この宮のかく渡りたまへるこそ、めやすけれ。<BR>⏎
<P>⏎
 なほ童心の失せぬにやあらむ、われも睦びきこえてあらまほしきを、あいなく隔てあるさまに人びとやとりなさむとすらむ。ひとしきほど、劣りざまなど思ふ人にこそ、ただならず耳たつことも、おのづから出で来るわざなれ、かたじけなく、心苦しき御ことなめれば、いかで心おかれたてまつらじとなむ思ふ」<BR>⏎
<P>⏎
484-485 「かくこれかれあまたものしたまふめれど、御心にかなひて、今めかしくすぐれたる際にもあらずと、目馴れてさうざうしく思したりつるに、この宮のかく渡りたまへるこそ、めやすけれ。<BR>⏎
 なほ童心の失せぬにやあらむ、われも睦びきこえてあらまほしきを、あいなく隔てあるさまに人びとやとりなさむとすらむ。ひとしきほど、劣りざまなど思ふ人にこそ、ただならず耳たつことも、おのづから出で来るわざなれ、かたじけなく、心苦しき御ことなめれば、いかで心おかれたてまつらじとなむ思ふ」<BR>⏎
d1776<P>⏎
d1778<P>⏎
d1780<P>⏎
d1782<P>⏎
d1784<P>⏎
cd2:1785-786 などおもむけつつ、とぶらひきこえたまふもあるを、<BR>⏎
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491 などおもむけつつ、とぶらひきこえたまふもあるを、<BR>⏎
d1788<P>⏎
d1790<P>⏎
cd4:2791-794 あまり久しき<A HREF="#k91">宵居</A><A NAME="t91">も</A>、例ならず人やとがめむと、心の鬼に思して、入りたまひぬれば、御衾参りぬれど、げにかたはらさびしき夜な夜な経にけるも、なほただならぬ心地すれど、かの須磨の御別れの折などを思し出づれば、<BR>⏎
<P>⏎
 「今はと、かけ離れたまひても、ただ同じ世のうちに聞きたてまつらましかばと、わが身までのことはうち置き、あたらしく悲しかりしありさまぞかし。さてその紛れに、われも人も命堪へずなりなましかば、いふかひあらまし世かは」<BR>⏎
<P>⏎
494-495 あまり久しき<A HREF="#k91">宵居</A><A NAME="t91">も</A>、例ならず人やとがめむと、心の鬼に思して、入りたまひぬれば、御衾参りぬれど、げにかたはらさびしき夜な夜な経にけるも、なほただならぬ心地すれど、かの須磨の御別れの折などを思し出づれば、<BR>⏎
 「今はと、かけ離れたまひても、ただ同じ世のうちに聞きたてまつらましかばと、わが身までのことはうち置き、あたらしく悲しかりしありさまぞかし。さてその紛れに、われも人も命堪へずなりなましかば、いふかひあらまし世かは」<BR>⏎
d1797<P>⏎
text34798 <A NAME="in66">[第六段 源氏、夢に紫の上を見る]</A><BR>498 
d1799<P>⏎
d1801<P>⏎
d1803<P>⏎
d1805<P>⏎
d1807<P>⏎
d1809<P>⏎
d1811<P>⏎
d1813<P>⏎
cd4:2814-817 「こよなく久しかりつるに、身も冷えにけるは。懼ぢきこゆる心のおろかならぬにこそあめれ。さるは罪もなしや」<BR>⏎
<P>⏎
 とて御衣ひきやりなどしたまふに、すこし濡れたる御単衣の袖をひき隠して、うらもなくなつかしきものから、うちとけてはたあらぬ御用意など、いと恥づかしげにをかし。<BR>⏎
<P>⏎
506-507 「こよなく久しかりつるに、身も冷えにけるは。懼ぢきこゆる心のおろかならぬにこそあめれ。さるは罪もなしや」<BR>⏎
 とて御衣ひきやりなどしたまふに、すこし濡れたる御単衣の袖をひき隠して、うらもなくなつかしきものから、うちとけてはたあらぬ御用意など、いと恥づかしげにをかし。<BR>⏎
d1819<P>⏎
cd2:1820-821 と思し比べらる。<BR>⏎
<P>⏎
509 と思し比べらる。<BR>⏎
d1823<P>⏎
d1825<P>⏎
d1827<P>⏎
d1829<P>⏎
cd2:1830-831 とばかり言葉に聞こえたり。<BR>⏎
<P>⏎
514 とばかり言葉に聞こえたり。<BR>⏎
d1833<P>⏎
d1835<P>⏎
text34836 <A NAME="in67">[第七段 源氏、女三の宮と和歌を贈答]</A><BR>517 
d1837<P>⏎
d1839<P>⏎
cd3:1840-842 「中道を隔つるほどはなけれども<BR>⏎
  心乱るる<A HREF="#no13">今朝のあは雪</A><A NAME="te13">」</A><BR>⏎
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519 「中道を隔つるほどはなけれども<BR>  心乱るる<A HREF="#no13">今朝のあは雪</A><A NAME="te13">」</A><BR>⏎
d1844<P>⏎
d1846<P>⏎
d1848<P>⏎
d1850<P>⏎
d1852<P>⏎
d1854<P>⏎
d1856<P>⏎
cd2:1858-859<P> 「これもあまた移ろはぬほど、目とまるにやあらむ。花の盛りに並べて見ばや」<BR>⏎
<P>⏎
528 「これもあまた移ろはぬほど、目とまるにやあらむ。花の盛りに並べて見ばや」<BR>⏎
d1861<P>⏎
d1863<P>⏎
d1865<P>⏎
cd3:1866-868 「はかなくてうはの空にぞ消えぬべき<BR>⏎
  風にただよふ春のあは雪」<BR>⏎
<P>⏎
532 「はかなくてうはの空にぞ消えぬべき<BR>  風にただよふ春のあは雪」<BR>⏎
d1870<P>⏎
cd2:1871-872 異人の上ならば、「さこそあれ」などは、忍びて聞こえたまふべけれど、いとほしくて、ただ<BR>⏎
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534 異人の上ならば、「さこそあれ」などは、忍びて聞こえたまふべけれど、いとほしくて、ただ<BR>⏎
d1874<P>⏎
d1876<P>⏎
text34877 <A NAME="in68">[第八段 源氏、昼に宮の方に出向く]</A><BR>537 
d1878<P>⏎
d1880<P>⏎
d1882<P>⏎
cd2:1883-884 とうち混ぜて思ふもありける。<BR>⏎
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540 とうち混ぜて思ふもありける。<BR>⏎
d1886<P>⏎
cd2:1887-888 「院の帝は、ををしくすくよかなる方の御才などこそ、心もとなくおはしますと、世人思ひためれ、をかしき筋、なまめきゆゑゆゑしき方は、人にまさりたまへるを、などてかくおいらかに生ほしたてたまひけむ。さるはいと御心とどめたまへる皇女と聞きしを」<BR>⏎
<P>⏎
542 「院の帝は、ををしくすくよかなる方の御才などこそ、心もとなくおはしますと、世人思ひためれ、をかしき筋、なまめきゆゑゆゑしき方は、人にまさりたまへるを、などてかくおいらかに生ほしたてたまひけむ。さるはいと御心とどめたまへる皇女と聞きしを」<BR>⏎
d1890<P>⏎
d1892<P>⏎
d1894<P>⏎
d1896<P>⏎
d1898<P>⏎
text34899 <A NAME="in69">[第九段 朱雀院、紫の上に手紙を贈る]</A><BR>548 
d1900<P>⏎
d1902<P>⏎
cd2:1903-904 <A HREF="#k98">わづらはしく、いかに聞くところやなど、憚り</A><A NAME="t98">た</A>まふことなくて、ともかくも、ただ御心にかけてもてなしたまふべくぞ、たびたび聞こえたまひける。されどあはれにうしろめたく、幼くおはするを思ひきこえたまひけり。<BR>⏎
<P>⏎
550 <A HREF="#k98">わづらはしく、いかに聞くところやなど、憚り</A><A NAME="t98">た</A>まふことなくて、ともかくも、ただ御心にかけてもてなしたまふべくぞ、たびたび聞こえたまひける。されどあはれにうしろめたく、幼くおはするを思ひきこえたまひけり。<BR>⏎
d1906<P>⏎
d1908<P>⏎
cd3:1909-911  背きにしこの世に残る心こそ<BR>⏎
  <A HREF="#no17">入る山路のほだし</A><A NAME="te17">な</A>りけれ<BR>⏎
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553  背きにしこの世に残る心こそ<BR>  <A HREF="#no17">入る山路のほだし</A><A NAME="te17">な</A>りけれ<BR>⏎
d1913<P>⏎
d1915<P>⏎
d1917<P>⏎
cd5:2918-922 とて御使にも、女房して、土器さし出でさせたまひて、しひさせたまふ。「御返りはいかが」など、<A HREF="#k100">聞こえにくく</A><A NAME="t100">思</A>したれど、ことことしくおもしろかるべき折のことならねば、ただ心をのべて、<BR>⏎
<P>⏎
 「背く世の<A HREF="#k101">うしろめたくは</A><A NAME="t101">さ</A>りがたき<BR>⏎
  ほだしをしひてかけな離れそ」<BR>⏎
<P>⏎
557-558 とて御使にも、女房して、土器さし出でさせたまひて、しひさせたまふ。「御返りはいかが」など、<A HREF="#k100">聞こえにくく</A><A NAME="t100">思</A>したれど、ことことしくおもしろかるべき折のことならねば、ただ心をのべて、<BR>⏎
 「背く世の<A HREF="#k101">うしろめたくは</A><A NAME="t101">さ</A>りがたき<BR>  ほだしをしひてかけな離れそ」<BR>⏎
d1924<P>⏎
d1926<P>⏎
text34927 <H4>第七章 朧月夜の物語 こりずまの恋</H4><BR>561 
text34928 <A NAME="in71">[第一段 源氏、朧月夜に今なお執心]</A><BR>562 
d1929<P>⏎
cd2:1930-931 今はとて、女御更衣たちなど、おのがじし別れたまふも、あはれなることなむ多かりける。<BR>⏎
<P>⏎
563 今はとて、女御更衣たちなど、おのがじし別れたまふも、あはれなることなむ多かりける。<BR>⏎
d1933<P>⏎
d1935<P>⏎
d1937<P>⏎
d1939<P>⏎
d1941<P>⏎
d1943<P>⏎
text34944 <A NAME="in72">[第二段 和泉前司に手引きを依頼]</A><BR>570 
d1945<P>⏎
d1947<P>⏎
d1950<P>⏎
d1952<P>⏎
cd4:2954-957 げに人は漏り聞かぬやうありとも、<A HREF="#no20">心の問はむ</A><A NAME="te20">こ</A>そいと恥づかしかるべけれ」<BR>⏎
<P>⏎
 とうち嘆きたまひつつ、なほさらにあるまじきよしをのみ聞こゆ。<BR>⏎
<P>⏎
576-577 げに人は漏り聞かぬやうありとも、<A HREF="#no20">心の問はむ</A><A NAME="te20">こ</A>そいと恥づかしかるべけれ」<BR>⏎
 とうち嘆きたまひつつ、なほさらにあるまじきよしをのみ聞こゆ。<BR>⏎
text34958 <A NAME="in73">[第三段 紫の上に虚偽を言って出かける]</A><BR>578 
d1959<P>⏎
cd2:1960-961 「いにしへわりなかりし世にだに、心交はしたまはぬことにもあらざりしを。げに背きたまひぬる御ためうしろめたきやうにはあれど、あらざりしことにもあらねば、今しもけざやかにきよまはりて、<A HREF="#no21">立ちにしわが名</A><A NAME="te21">、</A>今さらに取り返したまふべきにや」<BR>⏎
<P>⏎
579 「いにしへわりなかりし世にだに、心交はしたまはぬことにもあらざりしを。げに背きたまひぬる御ためうしろめたきやうにはあれど、あらざりしことにもあらねば、今しもけざやかにきよまはりて、<A HREF="#no21">立ちにしわが名</A><A NAME="te21">、</A>今さらに取り返したまふべきにや」<BR>⏎
d1963<P>⏎
d1965<P>⏎
cd2:1966-967 と聞こえたまひて、いといたく心懸想したまふを、例はさしも見えたまはぬあたりを、あやしと見たまひて、思ひ合はせたまふことも<A HREF="#k104">あれど</A><A NAME="t104">、</A>姫宮の御事の後は、何事も、いと過ぎぬる方のやうにはあらず、すこし隔つる心添ひて、見知らぬやうにておはす。<BR>⏎
<P>⏎
582 と聞こえたまひて、いといたく心懸想したまふを、例はさしも見えたまはぬあたりを、あやしと見たまひて、思ひ合はせたまふことも<A HREF="#k104">あれど</A><A NAME="t104">、</A>姫宮の御事の後は、何事も、いと過ぎぬる方のやうにはあらず、すこし隔つる心添ひて、見知らぬやうにておはす。<BR>⏎
text34968 <A NAME="in74">[第四段 源氏、朧月夜を訪問]</A><BR>583 
d1969<P>⏎
d1971<P>⏎
cd2:1972-973 宵過ぐして、睦ましき人の限り、四五人ばかり、網代車の、昔おぼえてやつれたるにて出でたまふ。和泉守して、御消息聞こえたまふ。かく渡りおはしましたるよし、ささめき聞こゆれば、驚きたまひて、<BR>⏎
<P>⏎
585 宵過ぐして、睦ましき人の限り、四五人ばかり、網代車の、昔おぼえてやつれたるにて出でたまふ。和泉守して、御消息聞こえたまふ。かく渡りおはしましたるよし、ささめき聞こゆれば、驚きたまひて、<BR>⏎
d1975<P>⏎
d1977<P>⏎
d1979<P>⏎
cd2:1980-981 とてあながちに思ひめぐらして、入れたてまつる。御とぶらひ<A HREF="#k105">など</A><A NAME="t105">聞</A>こえたまひて、<BR>⏎
<P>⏎
589 とてあながちに思ひめぐらして、入れたてまつる。御とぶらひ<A HREF="#k105">など</A><A NAME="t105">聞</A>こえたまひて、<BR>⏎
d1983<P>⏎
cd6:3984-989 とわりなく聞こえたまへば、いたく嘆く嘆くゐざり出でたまへり。<BR>⏎
<P>⏎
 「さればよ。なほ気近さは」<BR>⏎
<P>⏎
 とかつ思さる。かたみに、おぼろけならぬ御みじろきなれば、あはれも少なからず。東の対なりけり。辰巳の方の廂に据ゑたてまつりて、御障子の<A HREF="#k106">しりばかり</A><A NAME="t106">は</A>固めたれば、<BR>⏎
<P>⏎
591-593 とわりなく聞こえたまへば、いたく嘆く嘆くゐざり出でたまへり。<BR>⏎
 「さればよ。なほ気近さは」<BR>⏎
 とかつ思さる。かたみに、おぼろけならぬ御みじろきなれば、あはれも少なからず。東の対なりけり。辰巳の方の廂に据ゑたてまつりて、御障子の<A HREF="#k106">しりばかり</A><A NAME="t106">は</A>固めたれば、<BR>⏎
d1991<P>⏎
d1993<P>⏎
text34994 <A NAME="in75">[第五段 朧月夜と一夜を過ごす]</A><BR>596 
d1995<P>⏎
d1997<P>⏎
cd3:1998-1000 「年月をなかに隔てて逢坂の<BR>⏎
  さも<A HREF="#k108">塞きがたく</A><A NAME="t108">落</A>つる涙か」<BR>⏎
<P>⏎
598 「年月をなかに隔てて逢坂の<BR>  さも<A HREF="#k108">塞きがたく</A><A NAME="t108">落</A>つる涙か」<BR>⏎
cd3:11002-1004<P> 「涙のみ塞きとめがたき清水にて<BR>⏎
  ゆき逢ふ道ははやく絶えにき」<BR>⏎
<P>⏎
600 「涙のみ塞きとめがたき清水にて<BR>  ゆき逢ふ道ははやく絶えにき」<BR>⏎
d11006<P>⏎
cd6:31007-1012 「誰れにより、多うはさるいみじきこともありし世の騷ぎぞは」と思ひ出でたまふに、「げに今<A HREF="#k109">一たび</A><A NAME="t109">の</A>対面はありもすべかりけり」<BR>⏎
<P>⏎
 と思し弱るも、もとよりづしやかなるところはおはせざりし人の、年ごろは、さまざまに世の中を思ひ知り、来し方を悔しく、公私のことに触れつつ、数もなく思し集めて、いといたく過ぐしたまひにたれど、昔おぼえたる御対面に、その世のことも遠からぬ心地して、え<A HREF="#k110">心強くも</A><A NAME="t110">も</A>てなしたまはず。<BR>⏎
<P>⏎
 なほらうらうじく、若うなつかしくて、一方ならぬ世のつつましさをもあはれをも、思ひ乱れて、嘆きがちにてものしたまふけしきなど、今始めたらむよりもめづらしくあはれにて、明けゆくもいと口惜しくて、出でたまはむ空もなし。<BR>⏎
<P>⏎
602-604 「誰れにより、多うはさるいみじきこともありし世の騷ぎぞは」と思ひ出でたまふに、「げに今<A HREF="#k109">一たび</A><A NAME="t109">の</A>対面はありもすべかりけり」<BR>⏎
 と思し弱るも、もとよりづしやかなるところはおはせざりし人の、年ごろは、さまざまに世の中を思ひ知り、来し方を悔しく、公私のことに触れつつ、数もなく思し集めて、いといたく過ぐしたまひにたれど、昔おぼえたる御対面に、その世のことも遠からぬ心地して、え<A HREF="#k110">心強くも</A><A NAME="t110">も</A>てなしたまはず。<BR>⏎
 なほらうらうじく、若うなつかしくて、一方ならぬ世のつつましさをもあはれをも、思ひ乱れて、嘆きがちにてものしたまふけしきなど、今始めたらむよりもめづらしくあはれにて、明けゆくもいと口惜しくて、出でたまはむ空もなし。<BR>⏎
text341013 <A NAME="in76">[第六段 源氏、和歌を詠み交して出る]</A><BR>605 
d11014<P>⏎
cd2:11015-1016 朝ぼらけのただならぬ空に、百千鳥の声もいとうららかなり。花は皆散り過ぎて、名残かすめる<A HREF="#k111">梢</A><A NAME="t111">の</A>浅緑なる木立、「昔藤の宴したまひし、このころのことなりけりかし」と思し出づる、年月の積もりにけるほども、その折のこと、かき続けあはれに思さる。<BR>⏎
<P>⏎
606 朝ぼらけのただならぬ空に、百千鳥の声もいとうららかなり。花は皆散り過ぎて、名残かすめる<A HREF="#k111">梢</A><A NAME="t111">の</A>浅緑なる木立、「昔藤の宴したまひし、このころのことなりけりかし」と思し出づる、年月の積もりにけるほども、その折のこと、かき続けあはれに思さる。<BR>⏎
d11018<P>⏎
cd4:21019-1022 「この藤よ。いかに染めけむ色にか。なほえならぬ心添ふ匂ひにこそ。いかでかこの<A HREF="#no24">蔭をば立ち離る</A><A NAME="te24">べ</A>き」<BR>⏎
<P>⏎
 とわりなく出でがてに思しやすらひたり。<BR>⏎
<P>⏎
608-609 「この藤よ。いかに染めけむ色にか。なほえならぬ心添ふ匂ひにこそ。いかでかこの<A HREF="#no24">蔭をば立ち離る</A><A NAME="te24">べ</A>き」<BR>⏎
 とわりなく出でがてに思しやすらひたり。<BR>⏎
d11024<P>⏎
d11026<P>⏎
d11028<P>⏎
d11030<P>⏎
cd3:11031-1033 「沈みしも忘れぬものを<A HREF="#no25">こりずまに</A><A NAME="te25"><BR>⏎
  身</A>も投げつべき宿の藤波」<BR>⏎
<P>⏎
614 「沈みしも忘れぬものを<A HREF="#no25">こりずまに</A><A NAME="te25"><BR>  身</A>も投げつべき宿の藤波」<BR>⏎
d11035<P>⏎
cd3:11036-1038 「身を投げむ淵もまことの淵ならで<BR>⏎
  かけじやさらにこりずまの波」<BR>⏎
<P>⏎
616 「身を投げむ淵もまことの淵ならで<BR>  かけじやさらにこりずまの波」<BR>⏎
d11040<P>⏎
d11042<P>⏎
text341043 <A NAME="in77">[第七段 源氏、自邸に帰る]</A><BR>619 
d11044<P>⏎
cd2:11045-1046 いみじく忍び入りたまへる御寝くたれのさまを待ち受けて、女君、さばかりならむと心得たまへれど、おぼめかしくもてなしておはす。なかなかうちふすべなどしたまへらむよりも、心苦しく、「などかくしも見放ちたまへらむ」と思さるれば、<A HREF="#no27">ありしよりけに</A><A NAME="te27">深</A>き契りをのみ、長き世をかけて聞こえたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
620 いみじく忍び入りたまへる御寝くたれのさまを待ち受けて、女君、さばかりならむと心得たまへれど、おぼめかしくもてなしておはす。なかなかうちふすべなどしたまへらむよりも、心苦しく、「などかくしも見放ちたまへらむ」と思さるれば、<A HREF="#no27">ありしよりけに</A><A NAME="te27">深</A>き契りをのみ、長き世をかけて聞こえたまふ。<BR>⏎
d11048<P>⏎
d11050<P>⏎
cd2:11051-1052 と語らひきこえたまふ。うち笑ひて、<BR>⏎
<P>⏎
623 と語らひきこえたまふ。うち笑ひて、<BR>⏎
d11054<P>⏎
cd2:11055-1056 とてさすがに涙ぐみたまへるまみの、いとらうたげに見ゆるに、<BR>⏎
<P>⏎
625 とてさすがに涙ぐみたまへるまみの、いとらうたげに見ゆるに、<BR>⏎
d11058<P>⏎
cd2:11059-1060 とてよろづに御心とりたまふほどに、何ごともえ残したまはずなりぬめり。<BR>⏎
<P>⏎
627 とてよろづに御心とりたまふほどに、何ごともえ残したまはずなりぬめり。<BR>⏎
d11062<P>⏎
text341063 <H4>第八章 紫の上の物語 紫の上の境遇と絶望感</H4><BR>629 
text341064 <A NAME="in81">[第一段 明石姫君、懐妊して退出]</A><BR>630 
d11065<P>⏎
d11067<P>⏎
d11069<P>⏎
d11071<P>⏎
text341072 <A NAME="in82">[第二段 紫の上、女三の宮に挨拶を申し出る]</A><BR>634 
d11073<P>⏎
d11075<P>⏎
d11077<P>⏎
cd2:11078-1079 と大殿に聞こえたまへば、うち笑みて、<BR>⏎
<P>⏎
637 と大殿に聞こえたまへば、うち笑みて、<BR>⏎
d11081<P>⏎
cd2:11082-1083 と許しきこえたまふ。宮よりも、明石の君の恥づかしげにて交じらむを思せば、御髪すましひきつくろひておはする、たぐひあらじと見えたまへり。<BR>⏎
<P>⏎
639 と許しきこえたまふ。宮よりも、明石の君の恥づかしげにて交じらむを思せば、御髪すましひきつくろひておはする、たぐひあらじと見えたまへり。<BR>⏎
d11085<P>⏎
d11087<P>⏎
cd2:11088-1089 など聞こえたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
642 など聞こえたまふ。<BR>⏎
d11091<P>⏎
cd2:11092-1093 とおいらかにのたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
644 とおいらかにのたまふ。<BR>⏎
d11095<P>⏎
cd2:11096-1097 とこまかに教へきこえたまふ。「御仲うるはしくて過ぐしたまへ」と思す。<BR>⏎
<P>⏎
646 とこまかに教へきこえたまふ。「御仲うるはしくて過ぐしたまへ」と思す。<BR>⏎
d11099<P>⏎
text341100 <A NAME="in83">[第三段 紫の上の手習い歌]</A><BR>648 
d11101<P>⏎
d11103<P>⏎
d11105<P>⏎
cd4:21106-1109 など思ひ続けられて、うち眺めたまふ。手習などするにも、おのづから古言も、もの思はしき筋にのみ書かるるを、「さらばわが身には思ふことありけり」と、身ながらぞ思し知らるる。<BR>⏎
<P>⏎
 院、渡りたまひて、宮、女御の君などの<A HREF="#k118">御さま</A><A NAME="t118">ど</A>もを、「うつくしうもおはするかな」と、さまざま見たてまつりたまへる御目うつしには、年ごろ目馴れたまへる人の、おぼろけならむが、いとかく<A HREF="#k119">おどろかる</A><A NAME="t119">べ</A>きにもあらぬを、「なほたぐひなくこそは」と見たまふ。ありがたきことなりかし。<BR>⏎
<P>⏎
651-652 など思ひ続けられて、うち眺めたまふ。手習などするにも、おのづから古言も、もの思はしき筋にのみ書かるるを、「さらばわが身には思ふことありけり」と、身ながらぞ思し知らるる。<BR>⏎
 院、渡りたまひて、宮、女御の君などの<A HREF="#k118">御さま</A><A NAME="t118">ど</A>もを、「うつくしうもおはするかな」と、さまざま見たてまつりたまへる御目うつしには、年ごろ目馴れたまへる人の、おぼろけならむが、いとかく<A HREF="#k119">おどろかる</A><A NAME="t119">べ</A>きにもあらぬを、「なほたぐひなくこそは」と見たまふ。ありがたきことなりかし。<BR>⏎
d11111<P>⏎
d11113<P>⏎
cd3:11114-1116 「身に近く秋や来ぬらむ見るままに<BR>⏎
  <A HREF="#no29">青葉の山も移ろひ</A><A NAME="te29">に</A>けり」<BR>⏎
<P>⏎
655 「身に近く秋や来ぬらむ見るままに<BR>  <A HREF="#no29">青葉の山も移ろひ</A><A NAME="te29">に</A>けり」<BR>⏎
d11118<P>⏎
cd3:11119-1121 「水鳥の青羽は色も変はらぬを<BR>⏎
  <A HREF="#no30">萩の下こそ</A><A NAME="te30">け</A>しきことなれ」<BR>⏎
<P>⏎
657 「水鳥の青羽は色も変はらぬを<BR>  <A HREF="#no30">萩の下こそ</A><A NAME="te30">け</A>しきことなれ」<BR>⏎
d11123<P>⏎
d11125<P>⏎
text341126 <A NAME="in84">[第四段 紫の上、女三の宮と対面]</A><BR>660 
d11127<P>⏎
d11129<P>⏎
d11131<P>⏎
d11133<P>⏎
d11135<P>⏎
d11137<P>⏎
d11139<P>⏎
d11141<P>⏎
d11143<P>⏎
cd2:11144-1145 と安らかにおとなびたるけはひにて、宮にも、御心につきたまふべく、絵などのこと、雛の捨てがたきさま、若やかに聞こえたまへば、「げにいと若く心よげなる人かな」と、幼き御心地にはうちとけたまへり。<BR>⏎
<P>⏎
669 と安らかにおとなびたるけはひにて、宮にも、御心につきたまふべく、絵などのこと、雛の捨てがたきさま、若やかに聞こえたまへば、「げにいと若く心よげなる人かな」と、幼き御心地にはうちとけたまへり。<BR>⏎
text341146 <A NAME="in85">[第五段 世間の噂、静まる]</A><BR>670 
d11147<P>⏎
d11149<P>⏎
d11151<P>⏎
d11153<P>⏎
text341154 <H4>第九章 光る源氏の物語 紫の上と秋好中宮、源氏の四十賀を祝う</H4><BR>674 
text341155 <A NAME="in91">[第一段 紫の上、薬師仏供養]</A><BR>675 
d11156<P>⏎
d11158<P>⏎
d11160<P>⏎
cd2:11161-1162 御堂のさま、おもしろくいはむかたなく、紅葉の蔭分けゆく野辺のほどよりはじめて、見物なるに、かたへはきほひ集りたまふなるべし。<BR>⏎
<P>⏎
678 御堂のさま、おもしろくいはむかたなく、紅葉の蔭分けゆく野辺のほどよりはじめて、見物なるに、かたへはきほひ集りたまふなるべし。<BR>⏎
d11164<P>⏎
text341165 <A NAME="in92">[第二段 精進落としの宴]</A><BR>680 
d11166<P>⏎
d11168<P>⏎
d11171<P>⏎
d11173<P>⏎
d11175<P>⏎
d11177<P>⏎
d11179<P>⏎
text341180 <A NAME="in93">[第三段 舞楽を演奏す]</A><BR>688 
d11181<P>⏎
cd4:21182-1185 未の時ばかりに楽人参る。「万歳楽」、「皇じやう」など舞ひて、日暮れかかるほどに、高麗の乱声して、「落蹲」舞ひ出でたるほど、なほ常の目馴れぬ舞のさまなれば、舞ひ果つるほどに、権中納言衛門督下りて、「入綾」をほのかに舞ひて、紅葉の蔭に入りぬる名残、飽かず興ありと人びと思したり。<BR>⏎
<P>⏎
 いにしへの朱雀院の行幸に、「青海波」のいみじかりし夕べ、思ひ出でたまふ人びとは、権中納言、衛門督、また劣らず立ち続きたまひにける、世々のおぼえありさま、容貌、<A HREF="#k127">用意</A><A NAME="t127">な</A>どもをさをさ劣らず、官位はやや進みてさへこそなど、齢のほどをも数へて、「なほさるべきにて、昔よりかく立ち続きたる御仲らひなりけり」と、めでたく思ふ。<BR>⏎
<P>⏎
689-690 未の時ばかりに楽人参る。「万歳楽」、「皇」など舞ひて、日暮れかかるほどに、高麗の乱声して、「落蹲」舞ひ出でたるほど、なほ常の目馴れぬ舞のさまなれば、舞ひ果つるほどに、権中納言衛門督下りて、「入綾」をほのかに舞ひて、紅葉の蔭に入りぬる名残、飽かず興ありと人びと思したり。<BR>⏎
 いにしへの朱雀院の行幸に、「青海波」のいみじかりし夕べ、思ひ出でたまふ人びとは、権中納言、衛門督、また劣らず立ち続きたまひにける、世々のおぼえありさま、容貌、<A HREF="#k127">用意</A><A NAME="t127">な</A>どもをさをさ劣らず、官位はやや進みてさへこそなど、齢のほどをも数へて、「なほさるべきにて、昔よりかく立ち続きたる御仲らひなりけり」と、めでたく思ふ。<BR>⏎
d11187<P>⏎
text341188 <A NAME="in94">[第四段 宴の後の寂寥]</A><BR>692 
d21189-1190
<P>⏎
cd5:11192-1196</A>⏎
<p><A HREF="#k128">
 御遊び</A></p>⏎
<P><
A NAME="t128">始</A>まりて、またいとおもしろし。御琴どもは、春宮よりぞ調へさせたまひける。朱雀院よりわたり参れる琵琶、琴。内裏より賜はりたまへる箏の御琴など、皆昔おぼえたるものの音どもにて、めづらしく掻き合はせたまへるに、何の折にも、過ぎにし方の御ありさま、内裏わたりなど思し出でらる。<BR>⏎

<P>⏎
694 御遊び</A><A NAME="t128">始</A>まりて、またいとおもしろし。御琴どもは、春宮よりぞ調へさせたまひける。朱雀院よりわたり参れる琵琶、琴。内裏より賜はりたまへる箏の御琴など、皆昔おぼえたるものの音どもにて、めづらしく掻き合はせたまへるに、何の折にも、過ぎにし方の御ありさま、内裏わたりなど思し出でらる。<BR>⏎
d21198-1199
<P>⏎
cd3:11200-1202 と飽かず口惜しくのみ思ひ出できこえたまふ。<BR>⏎

<P>⏎
696 と飽かず口惜しくのみ思ひ出できこえたまふ。<BR>⏎
d21204-1205
<P>⏎
d21207-1208
<P>⏎
d21210-1211
<P>⏎
text341212 <A NAME="in95">[第五段 秋好中宮の奈良・京の御寺に祈祷]</A><BR>700 
d21213-1214
<P>⏎
d21216-1217
<P>⏎
d21219-1220
<P>⏎
cd3:11221-1223 「四十の賀といふことは、さきざきを聞きはべるにも、残りの齢久しき例なむ少なかりけるを、このたびは、なほ世の響きとどめさせたまひて、まことに後に足らむことを数へ<A HREF="#k131">させ</A><A NAME="t131">た</A>まへ」<BR>⏎

<P>⏎
703 「四十の賀といふことは、さきざきを聞きはべるにも、残りの齢久しき例なむ少なかりけるを、このたびは、なほ世の響きとどめさせたまひて、まことに後に足らむことを数へ<A HREF="#k131">させ</A><A NAME="t131">た</A>まへ」<BR>⏎
d21225-1226
<P>⏎
text341227 <A NAME="in96">[第六段 中宮主催の饗宴]</A><BR>705 
d21228-1229
<P>⏎
d21231-1232
<P>⏎
d21234-1235
<P>⏎
text341236 <A NAME="in97">[第七段 勅命による夕霧の饗宴]</A><BR>708 
d21237-1238
<P>⏎
d21240-1241
<P>⏎
d21243-1244
<P>⏎
cd3:11245-1247 「いとかくにはかに余る喜びをなむ、いちはやき心地しはべる」<BR>⏎

<P>⏎
711 「いとかくにはかに余る喜びをなむ、いちはやき心地しはべる」<BR>⏎
d21249-1250
<P>⏎
d21252-1253
<P>⏎
d21255-1256
<P>⏎
cd3:11257-1259 御座、御調度どもなどは、太政大臣詳しくうけたまはりて、仕うまつらせたまへり。今日は、仰せ言ありて<A HREF="#k137">渡り参り</A><A NAME="t137">た</A>まへり。院も、いとかしこくおどろき申したまひて、御座に着きたまひぬ。<BR>⏎

<P>⏎
715 御座、御調度どもなどは、太政大臣詳しくうけたまはりて、仕うまつらせたまへり。今日は、仰せ言ありて <A HREF="#k137">渡り参り</A><A NAME="t137">た</A>まへり。院も、いとかしこくおどろき申したまひて、御座に着きたまひぬ。<BR>⏎
d21261-1262
<P>⏎
d21264-1265
<P>⏎
d21267-1268
<P>⏎
text341269 <A NAME="in98">[第八段 舞楽を演奏す]</A><BR>719 
d21270-1271
<P>⏎
d21273-1274
<P>⏎
d21276-1277
<P>⏎
d21279-1280
<P>⏎
d21282-1283
<P>⏎
cd3:11284-1286 御心と削ぎたまひて、いかめしきことどもは、このたび停めたまへれど、内裏春宮一院后の宮、次々の御ゆかりいつくしきほど、いひ知らず見えにたることなれば、なほかかる折には、めでたくなむおぼえける。<BR>⏎

<P>⏎
724 御心と削ぎたまひて、いかめしきことどもは、このたび停めたまへれど、内裏春宮一院后の宮、次々の御ゆかりいつくしきほど、いひ知らず見えにたることなれば、なほかかる折には、めでたくなむおぼえける。<BR>⏎
text341287 <A NAME="in99">[第九段 饗宴の後の感懐]</A><BR>725 
d21288-1289
<P>⏎
d21291-1292
<P>⏎
d31294-1296
<P>⏎

text341297<H4>第十章 明石の物語 男御子誕生</H4>728 
d11298<BR>⏎
text341299 <A NAME="in101">[第一段 明石女御、産期近づく]</A><BR>729 
d11300<P>⏎
d11302<P>⏎
d11304<P>⏎
d11306<P>⏎
text341307 <A NAME="in102">[第二段 大尼君、孫の女御に昔を語る]</A><BR>733 
d11308<P>⏎
d11310<P>⏎
d11312<P>⏎
d11314<P>⏎
d11316<P>⏎
d11318<P>⏎
cd4:21319-1322 とほろほろと<A HREF="#k141">泣けば</A><A NAME="t141">、</A><BR>⏎
<P>⏎
 「げにあはれなりける昔のことを、かく聞かせざらましかば、おぼつかなくても過ぎぬべかりけり」<BR>⏎
<P>⏎
739-740 とほろほろと<A HREF="#k141">泣けば</A><A NAME="t141">、</A><BR>⏎
 「げにあはれなりける昔のことを、かく聞かせざらましかば、おぼつかなくても過ぎぬべかりけり」<BR>⏎
d11324<P>⏎
d11326<P>⏎
d11328<P>⏎
d11330<P>⏎
d11332<P>⏎
text341333 <A NAME="in103">[第三段 明石御方、母尼君をたしなめる]</A><BR>746 
d11334<P>⏎
d11336<P>⏎
cd10:51337-1346 「あな見苦しや。短き御几帳引き寄せてこそ、さぶらひたまはめ。風など騒がしくて、おのづからほころびの隙もあらむに。医師などやうのさまして。いと盛り過ぎたまへりや」<BR>⏎
<P>⏎
 などなまかたはらいたく思ひたまへり。よしめきそして<A HREF="#k145">振る舞ふと</A><A NAME="t145">、</A>おぼゆめれども、もうもうに耳もおぼおぼしかりければ、「ああ」と、傾きてゐたり。<BR>⏎
<P>⏎
 さるはいとさ言ふばかりにもあらずかし。六十五六のほどなり。尼姿、いとかはらかに、<A HREF="#k146">あてなるさまして、目艶やかに</A><A NAME="t146">泣</A>き腫れたるけしきの、あやしく昔思ひ出でたるさまなれば、胸うちつぶれて、<BR>⏎
<P>⏎
 「古代のひが言どもや、はべりつらむ。よくこの世のほかなるやうなるひがおぼえどもにとり混ぜつつ、あやしき昔のことどもも出でまうで来つらむはや。夢の心地こそしはべれ」<BR>⏎
<P>⏎
 とうちほほ笑みて見たてまつりたまへば、いとなまめかしくきよらにて、例よりもいたくしづまり、もの思したるさまに見えたまふ。わが子ともおぼえたまはず、かたじけなきに、<BR>⏎
<P>⏎
748-752 「あな見苦しや。短き御几帳引き寄せてこそ、さぶらひたまはめ。風など騒がしくて、おのづからほころびの隙もあらむに。医師などやうのさまして。いと盛り過ぎたまへりや」<BR>⏎
 などなまかたはらいたく思ひたまへり。よしめきそして<A HREF="#k145">振る舞ふと</A><A NAME="t145">、</A>おぼゆめれども、もうもうに耳もおぼおぼしかりければ、「ああ」と、傾きてゐたり。<BR>⏎
 さるはいとさ言ふばかりにもあらずかし。六十五六のほどなり。尼姿、いとかはらかに、<A HREF="#k146">あてなるさまして、目艶やかに</A><A NAME="t146">泣</A>き腫れたるけしきの、あやしく昔思ひ出でたるさまなれば、胸うちつぶれて、<BR>⏎
 「古代のひが言どもや、はべりつらむ。よくこの世のほかなるやうなるひがおぼえどもにとり混ぜつつ、あやしき昔のことどもも出でまうで来つらむはや。夢の心地こそしはべれ」<BR>⏎
 とうちほほ笑みて見たてまつりたまへば、いとなまめかしくきよらにて、例よりもいたくしづまり、もの思したるさまに見えたまふ。わが子ともおぼえたまはず、かたじけなきに、<BR>⏎
d11348<P>⏎
d11350<P>⏎
text341351 <A NAME="in104">[第四段 明石女三代の和歌唱和]</A><BR>755 
d11352<P>⏎
d11354<P>⏎
d11356<P>⏎
cd7:31357-1363 「あなかたはらいた」<BR>⏎
<P>⏎
 と目くはすれど、聞きも入れず。<BR>⏎
<P>⏎
 「老の波かひある浦に立ち出でて<BR>⏎
  しほたるる海人を誰れかとがめむ<BR>⏎
<P>⏎
758-760 「あなかたはらいた」<BR>⏎
 と目くはすれど、聞きも入れず。<BR>⏎
 「老の波かひある浦に立ち出でて<BR>  しほたるる海人を誰れかとがめむ<BR>⏎
d11365<P>⏎
d11367<P>⏎
cd3:11368-1370 「しほたるる海人を波路のしるべにて<BR>⏎
  尋ねも見ばや浜の苫屋を」<BR>⏎
<P>⏎
763 「しほたるる海人を波路のしるべにて<BR>  尋ねも見ばや浜の苫屋を」<BR>⏎
d11372<P>⏎
cd3:11373-1375 「世を捨てて明石の浦に住む人も<BR>⏎
  <A HREF="#no33">心の闇</A><A NAME="te33">は</A>はるけしもせじ」<BR>⏎
<P>⏎
765 「世を捨てて明石の浦に住む人も<BR>  <A HREF="#no33">心の闇</A><A NAME="te33">は</A>はるけしもせじ」<BR>⏎
d11377<P>⏎
text341378 <A NAME="in105">[第五段 三月十日過ぎに男御子誕生]</A><BR>767 
d11379<P>⏎
d11381<P>⏎
d11383<P>⏎
d11385<P>⏎
d11387<P>⏎
cd2:11388-1389 「すこしかたほならば、いとほしからましを、あさましく気高く、げにかかる契りことにものしたまひける人かな」<BR>⏎
<P>⏎
772 「すこしかたほならば、いとほしからましを、あさましく気高く、げにかかる契りことにものしたまひける人かな」<BR>⏎
d11391<P>⏎
text341392 <A NAME="in106">[第六段 帝の七夜の産養]</A><BR>774 
d11393<P>⏎
d11395<P>⏎
d11397<P>⏎
d11399<P>⏎
d11401<P>⏎
cd2:11402-1403 とうつくしみきこえたまふは、ことわりなりや。<BR>⏎
<P>⏎
779 とうつくしみきこえたまふは、ことわりなりや。<BR>⏎
d11405<P>⏎
text341406 <A NAME="in107">[第七段 紫の上と明石御方の仲]</A><BR>781 
d11407<P>⏎
d11409<P>⏎
d11411<P>⏎
d11413<P>⏎
text341414 <H4>第十一章 明石の物語 入道の手紙</H4><BR>785 
text341415 <A NAME="in111">[第一段 明石入道、手紙を贈る]</A><BR>786 
d11416<P>⏎
d11418<P>⏎
d11420<P>⏎
d11422<P>⏎
d11424<P>⏎
text341425 <A NAME="in112">[第二段 入道の手紙]</A><BR>791 
d11426<P>⏎
d11428<P>⏎
d11430<P>⏎
d11432<P>⏎
d11434<P>⏎
d11436<P>⏎
d11438<P>⏎
d11440<P>⏎
cd2:11441-1442 またこの国のことに沈みはべりて、老の波にさらに立ち返らじと思ひとぢめて、この浦に年ごろはべしほども、わが君を頼むことに思ひきこえはべしかばなむ、心一つに多くの願を立てはべし。その返り申し、平らかに思ひのごと時にあひたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
799 またこの国のことに沈みはべりて、老の波にさらに立ち返らじと思ひとぢめて、この浦に年ごろはべしほども、わが君を頼むことに思ひきこえはべしかばなむ、心一つに多くの願を立てはべし。その返り申し、平らかに思ひのごと時にあひたまふ。<BR>⏎
d11444<P>⏎
cd7:31445-1451 この一つの思ひ、近き世にかなひはべりぬれば、<A HREF="#no34">はるかに西の方、十万億の国隔て</A><A NAME="te34">た</A>る九品の上の望み疑ひなくなりはべりぬれば、今はただ迎ふる蓮を待ちはべるほど、その夕べまで、水草清き山の末にて勤めはべらむとてなむ、まかり入りぬる。<BR>⏎
<P>⏎
  光出でむ暁近くなりにけり<BR>⏎
  今ぞ見し世の夢語りする」<BR>⏎
<P>⏎
 とて月日書きたり。<BR>⏎
<P>⏎
801-803 この一つの思ひ、近き世にかなひはべりぬれば、<A HREF="#no34">はるかに西の方、十万億の国隔て</A><A NAME="te34">た</A>る九品の上の望み疑ひなくなりはべりぬれば、今はただ迎ふる蓮を待ちはべるほど、その夕べまで、水草清き山の末にて勤めはべらむとてなむ、まかり入りぬる。<BR>⏎
  光出でむ暁近くなりにけり<BR>  今ぞ見し世の夢語りする」<BR>⏎
 とて月日書きたり。<BR>⏎
text341452 <A NAME="in113">[第三段 手紙の追伸]</A><BR>804 
d11453<P>⏎
d11455<P>⏎
d11457<P>⏎
cd4:21458-1461 さてかの社に立て集めたる願文どもを、大きなる<A HREF="#k158">沈の</A><A NAME="t158">文</A>箱に、封じ籠めてたてまつりたまへり。<BR>⏎
<P>⏎
 尼君には、ことごとにも書かず、ただ<BR>⏎
<P>⏎
807-808 さてかの社に立て集めたる願文どもを、大きなる<A HREF="#k158">沈の</A><A NAME="t158">文</A>箱に、封じ籠めてたてまつりたまへり。<BR>⏎
 尼君には、ことごとにも書かず、ただ<BR>⏎
d11463<P>⏎
d11465<P>⏎
text341466 <A NAME="in114">[第四段 使者の話]</A><BR>811 
d11467<P>⏎
d11469<P>⏎
d11472<P>⏎
d11474<P>⏎
cd2:11475-1476 などこの大徳も、童にて京より<A HREF="#k160">下りし</A><A NAME="t160">人</A>の、老法師になりてとまれる、いとあはれに心細しと<A HREF="#k161">思へり</A><A NAME="t161">。</A>仏の御弟子のさかしき聖<A HREF="#k162">だに</A><A NAME="t162">、</A>鷲の峰をばたどたどしからず頼みきこえながら、なほ<A HREF="#no36">薪尽きける</A><A NAME="te36">夜の</A>惑ひは深かりけるを、まして尼君の悲しと思ひたまへること限りなし。<BR>⏎
<P>⏎
816 などこの大徳も、童にて京より<A HREF="#k160">下りし</A><A NAME="t160">人</A>の、老法師になりてとまれる、いとあはれに心細しと<A HREF="#k161">思へり</A><A NAME="t161">。</A>仏の御弟子のさかしき聖<A HREF="#k162">だに</A><A NAME="t162">、</A>鷲の峰をばたどたどしからず頼みきこえながら、なほ<A HREF="#no36">薪尽きける</A><A NAME="te36">夜の</A>惑ひは深かりけるを、まして尼君の悲しと思ひたまへること限りなし。<BR>⏎
text341477 <A NAME="in115">[第五段 明石御方、手紙を見る]</A><BR>817 
d11478<P>⏎
d11480<P>⏎
cd2:11481-1482 火近く取り寄せて、この文を見たまふに、げにせきとめむかたぞなかりける。<A HREF="#k164">よその人</A><A NAME="t164">は</A>、何とも目とどむまじきことの、まづ昔来し方のこと思ひ出で、恋しと思ひわたりたまふ心には、「あひ見で過ぎ果てぬるにこそは」と、見たまふに、いみじくいふかひなし。<BR>⏎
<P>⏎
819 火近く取り寄せて、この文を見たまふに、げにせきとめむかたぞなかりける。<A HREF="#k164">よその人</A><A NAME="t164">は</A>、何とも目とどむまじきことの、まづ昔来し方のこと思ひ出で、恋しと思ひわたりたまふ心には、「あひ見で過ぎ果てぬるにこそは」と、見たまふに、いみじくいふかひなし。<BR>⏎
d11484<P>⏎
cd4:21485-1488 「さらばひが心にて、わが身をさしもあるまじきさまにあくがらしたまふと、中ごろ思ひただよはれしことは、かくはかなき夢に頼みをかけて、心高くものしたまふなりけり」<BR>⏎
<P>⏎
 とかつがつ思ひ合はせたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
821-822 「さらばひが心にて、わが身をさしもあるまじきさまにあくがらしたまふと、中ごろ思ひただよはれしことは、かくはかなき夢に頼みをかけて、心高くものしたまふなりけり」<BR>⏎
 とかつがつ思ひ合はせたまふ。<BR>⏎
text341489 <A NAME="in116">[第六段 尼君と御方の感懐]</A><BR>823 
d11490<P>⏎
d11493<P>⏎
cd2:11494-1495 数ならぬ方にても、ながらへし都を捨てて、かしこに沈みゐしをだに、世人に違ひたる宿世にもあるかなと思ひはべしかど、生ける世にゆき離れ、隔たるべき仲の契りとは思ひかけず、同じ蓮に住むべき後の世の頼みをさへかけて年月を過ぐし来て、にはかにかくおぼえぬ御こと出で来て、背きにし世に立ち返りてはべる、かひある御ことを見たてまつりよろこぶものから、片つかたには、おぼつかなく悲しきことのうち添ひて絶えぬを、つひにかくあひ見ず隔てながらこの世を別れぬるなむ、口惜しくおぼえはべる。<BR>⏎
<P>⏎
826 数ならぬ方にても、ながらへし都を捨てて、かしこに沈みゐしをだに、世人に違ひたる宿世にもあるかなと思ひはべしかど、生ける世にゆき離れ、隔たるべき仲の契りとは思ひかけず、同じ蓮に住むべき後の世の頼みをさへかけて年月を過ぐし来て、にはかにかくおぼえぬ御こと出で来て、背きにし世に立ち返りてはべる、かひある御ことを見たてまつりよろこぶものから、片つかたには、おぼつかなく悲しきことのうち添ひて絶えぬを、つひにかくあひ見ず隔てながらこの世を別れぬるなむ、口惜しくおぼえはべる。<BR>⏎
d11497<P>⏎
d11499<P>⏎
d11501<P>⏎
d11503<P>⏎
cd2:11504-1505 とて夜もすがら、あはれなることどもを言ひつつ明かしたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
831 とて夜もすがら、あはれなることどもを言ひつつ明かしたまふ。<BR>⏎
text341506 <A NAME="in117">[第七段 御方、部屋に戻る]</A><BR>832 
d11507<P>⏎
d11509<P>⏎
cd2:11510-1511 とて暁に帰り渡りたまひぬ。<BR>⏎
<P>⏎
834 とて暁に帰り渡りたまひぬ。<BR>⏎
d11513<P>⏎
d11515<P>⏎
d11517<P>⏎
d11519<P>⏎
cd2:11520-1521 「いでやさればこそ、さまざま例なき宿世にこそはべれ」<BR>⏎
<P>⏎
839 「いでやさればこそ、さまざま例なき宿世にこそはべれ」<BR>⏎
d11523<P>⏎
text341524 <H4>第十二章 明石の物語 一族の宿世</H4><BR>841 
text341525 <A NAME="in121">[第一段 東宮からのお召しの催促]</A><BR>842 
d11526<P>⏎
d11528<P>⏎
d11530<P>⏎
cd2:11531-1532 と紫の上ものたまひて、若宮忍びて参らせたてまつらむ<A HREF="#k169">御心づかひ</A><A NAME="t169">し</A>たまふ。<BR>⏎
<P>⏎
845 と紫の上ものたまひて、若宮忍びて参らせたてまつらむ<A HREF="#k169">御心づかひ</A><A NAME="t169">し</A>たまふ。<BR>⏎
d11534<P>⏎
cd4:21535-1538 「かくためらひがたくおはするほど、つくろひたまひてこそは」<BR>⏎
<P>⏎
 など御方などは<A HREF="#k170">心苦しがり</A><A NAME="t170">き</A>こえたまふを、大殿は、<BR>⏎
<P>⏎
847-848 「かくためらひがたくおはするほど、つくろひたまひてこそは」<BR>⏎
 など御方などは<A HREF="#k170">心苦しがり</A><A NAME="t170">き</A>こえたまふを、大殿は、<BR>⏎
d11540<P>⏎
d11542<P>⏎
text341543 <A NAME="in122">[第二段 明石女御、手紙を見る]</A><BR>851 
d11544<P>⏎
d11546<P>⏎
cd2:11547-1548 「思ふさまにかなひ果てさせたまふまでは、取り隠して置きてはべるべけれど、世の中定めがたければ、うしろめたさになむ。何ごとをも御心と思し数まへざらむこなた、ともかくも、はかなくなりはべりなば、かならずしも今はのとぢめを、御覧ぜらるべき身にもはべらねば、なほうつし心失せずはべる世になむ、はかなきことをも、聞こえさせ置くべくはべりける、と思ひはべりて。<BR>⏎
<P>⏎
853 「思ふさまにかなひ果てさせたまふまでは、取り隠して置きてはべるべけれど、世の中定めがたければ、うしろめたさになむ。何ごとをも御心と思し数まへざらむこなた、ともかくも、はかなくなりはべりなば、かならずしも今はのとぢめを、御覧ぜらるべき身にもはべらねば、なほうつし心失せずはべる世になむ、はかなきことをも、聞こえさせ置くべくはべりける、と思ひはべりて。<BR>⏎
d11550<P>⏎
d11552<P>⏎
d11554<P>⏎
d11556<P>⏎
cd2:11557-1558 などいと多く聞こえたまふ。涙ぐみて聞きおはす。かくむつましかるべき御前にも、常にうちとけぬさましたまひて、わりなく<A HREF="#k173">ものづつみし</A><A NAME="t173">た</A>るさまなり。この文の言葉、いとうたてこはく、憎げなるさまを、陸奥国紙にて、年経にければ、黄ばみ厚肥えたる五六枚、さすがに香にいと深くしみたるに書きたまへり。<BR>⏎
<P>⏎
858 などいと多く聞こえたまふ。涙ぐみて聞きおはす。かくむつましかるべき御前にも、常にうちとけぬさましたまひて、わりなく<A HREF="#k173">ものづつみし</A><A NAME="t173">た</A>るさまなり。この文の言葉、いとうたてこはく、憎げなるさまを、陸奥国紙にて、年経にければ、黄ばみ厚肥えたる五六枚、さすがに香にいと深くしみたるに書きたまへり。<BR>⏎
d11560<P>⏎
text341561 <A NAME="in123">[第三段 源氏、女御の部屋に来る]</A><BR>860 
d11562<P>⏎
d11564<P>⏎
d11566<P>⏎
d11568<P>⏎
d11570<P>⏎
d11572<P>⏎
d11574<P>⏎
d11576<P>⏎
cd2:11577-1578 「いとうたて。思ひぐまなき御ことかな。女におはしまさむにだに、あなたにて見たてまつりたまはむこそよくはべらめ。まして男は、限りなしと聞こえさすれど、心やすくおぼえたまふを。戯れにても、かやうに隔てがましきこと、な<A HREF="#k175">さかしがり</A><A NAME="t175">聞</A>こえさせたまひそ」<BR>⏎
<P>⏎
868 「いとうたて。思ひぐまなき御ことかな。女におはしまさむにだに、あなたにて見たてまつりたまはむこそよくはべらめ。まして男は、限りなしと聞こえさすれど、心やすくおぼえたまふを。戯れにても、かやうに隔てがましきこと、な<A HREF="#k175">さかしがり</A><A NAME="t175">聞</A>こえさせたまひそ」<BR>⏎
d11580<P>⏎
cd4:21581-1584 「御仲どもにまかせて、見放ちきこゆべきななりな。隔てて今は、誰も誰もさし放ち、さかしらなどのたまふこそ幼けれ。まづはかやうにはひ隠れて、つれなく言ひ落としたまふ<A HREF="#k176">めりかし</A><A NAME="t176">」</A><BR>⏎
<P>⏎
 とて御几帳を引きやりたまへれば、母屋の柱に寄りかかりて、いときよげに、心恥づかしげなるさましてものしたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
870-871 「御仲どもにまかせて、見放ちきこゆべきななりな。隔てて今は、誰も誰もさし放ち、さかしらなどのたまふこそ幼けれ。まづはかやうにはひ隠れて、つれなく言ひ落としたまふ<A HREF="#k176">めりかし</A><A NAME="t176">」</A><BR>⏎
 とて御几帳を引きやりたまへれば、母屋の柱に寄りかかりて、いときよげに、心恥づかしげなるさましてものしたまふ。<BR>⏎
text341585 <A NAME="in124">[第四段 源氏、手紙を見る]</A><BR>872 
d11586<P>⏎
d11588<P>⏎
d11590<P>⏎
d11592<P>⏎
cd8:41593-1600 「あなうたてや。今めかしくなり返らせたまふめる御心ならひに、聞き知らぬやうなる御すさび言どもこそ、時々出で来れ」<BR>⏎
<P>⏎
 とてほほ笑みたまへれど、ものあはれなりける御けしきどもしるければ、あやしとうち傾きたまへるさまなれば、わづらはしくて、<BR>⏎
<P>⏎
 「かの明石の岩屋より、忍びてはべし御祈りの巻数、またまだしき願などのはべりけるを、御心にも知らせたてまつるべき折あらば、御覧じおくべくやとてはべるを、ただ今は、ついでなくて、何かは開けさせたまはむ」<BR>⏎
<P>⏎
 と聞こえたまふに、「げにあはれなるべきありさまぞかし」と思して、<BR>⏎
<P>⏎
876-879 「あなうたてや。今めかしくなり返らせたまふめる御心ならひに、聞き知らぬやうなる御すさび言どもこそ、時々出で来れ」<BR>⏎
 とてほほ笑みたまへれど、ものあはれなりける御けしきどもしるければ、あやしとうち傾きたまへるさまなれば、わづらはしくて、<BR>⏎
 「かの明石の岩屋より、忍びてはべし御祈りの巻数、またまだしき願などのはべりけるを、御心にも知らせたてまつるべき折あらば、御覧じおくべくやとてはべるを、ただ今は、ついでなくて、何かは開けさせたまはむ」<BR>⏎
 と聞こえたまふに、「げにあはれなるべきありさまぞかし」と思して、<BR>⏎
d11602<P>⏎
d11604<P>⏎
cd2:11605-1606 まして今は心苦しきほだしもなく、思ひ離れにたらむをや。かやすき身ならば、忍びて、いと会はまほしくこそ」<BR>⏎
<P>⏎
882 まして今は心苦しきほだしもなく、思ひ離れにたらむをや。かやすき身ならば、忍びて、いと会はまほしくこそ」<BR>⏎
d11608<P>⏎
d11610<P>⏎
d11612<P>⏎
cd4:21613-1616 「さらばその遺言<A HREF="#k178">ななりな</A><A NAME="t178">。</A>消息は通はしたまふや。尼君、いかに思ひたまふらむ。親子の仲よりも、またさるさまの契りは、ことにこそ添ふべけれ」<BR>⏎
<P>⏎
 とてうち涙ぐみたまへり。<BR>⏎
<P>⏎
886-887 「さらばその遺言<A HREF="#k178">ななりな</A><A NAME="t178">。</A>消息は通はしたまふや。尼君、いかに思ひたまふらむ。親子の仲よりも、またさるさまの契りは、ことにこそ添ふべけれ」<BR>⏎
 とてうち涙ぐみたまへり。<BR>⏎
text341617 <A NAME="in125">[第五段 源氏の感想]</A><BR>888 
d11618<P>⏎
d11620<P>⏎
d11622<P>⏎
cd4:21623-1626 「いとあやしき梵字とかいふやうなる跡にはべめれど、御覧じとどむべき節もや混じりはべるとてなむ。今はとて別れはべりにしかど、なほこそあはれは残りはべるものなりけれ」<BR>⏎
<P>⏎
 とてさまよくうち<A HREF="#k180">泣きたまふ。寄りたまひて</A><A NAME="t180">、</A><BR>⏎
<P>⏎
891-892 「いとあやしき梵字とかいふやうなる跡にはべめれど、御覧じとどむべき節もや混じりはべるとてなむ。今はとて別れはべりにしかど、なほこそあはれは残りはべるものなりけれ」<BR>⏎
 とてさまよくうち<A HREF="#k180">泣きたまふ。寄りたまひて</A><A NAME="t180">、</A><BR>⏎
d11628<P>⏎
d11630<P>⏎
cd4:21631-1634 など涙おし拭ひたまひつつ、この<A HREF="#no38">夢のわたりに</A><A NAME="te38">目</A>とどめたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
 「あやしくひがひがしく、すずろに高き心ざしありと人も咎め、また<A HREF="#k184">我ながら</A><A NAME="t184">も</A>、さるまじき振る舞ひを、仮にてもするかな、と思ひしことは、この君の生まれたまひし時に、契り深く思ひ知りにしかど、目の前に見えぬあなたのことは、おぼつかなくこそ思ひわたりつれ、さらばかかる頼みありて、あながちには望みしなりけり。<BR>⏎
<P>⏎
895-896 など涙おし拭ひたまひつつ、この<A HREF="#no38">夢のわたりに</A><A NAME="te38">目</A>とどめたまふ。<BR>⏎
 「あやしくひがひがしく、すずろに高き心ざしありと人も咎め、また<A HREF="#k184">我ながら</A><A NAME="t184">も</A>、さるまじき振る舞ひを、仮にてもするかな、と思ひしことは、この君の生まれたまひし時に、契り深く思ひ知りにしかど、目の前に見えぬあなたのことは、おぼつかなくこそ思ひわたりつれ、さらばかかる頼みありて、あながちには望みしなりけり。<BR>⏎
d11636<P>⏎
d11638<P>⏎
text341639 <A NAME="in126">[第六段 源氏、紫の上の恩を説く]</A><BR>899 
d11640<P>⏎
cd8:41641-1648 「これはまた具してたてまつるべきものはべり。今また聞こえ<A HREF="#k185">知らせ</A><A NAME="t185">は</A>べらむ」<BR>⏎
<P>⏎
 と女御には聞こえたまふ。そのついでに、<BR>⏎
<P>⏎
 「今は、かくいにしへのことをもたどり知りたまひぬれど、あなたの御心ばへを、おろかに思しなすな。もとよりさるべき仲、えさらぬ睦びよりも、横さまの人のなげのあはれをもかけ、<A HREF="#k186">一言</A><A NAME="t186">の</A>心寄せあるは、おぼろけのことにもあらず。<BR>⏎
<P>⏎
 ましてここになどさぶらひ馴れたまふを見る見るも、初めの心ざし変はらず、深く<A HREF="#k187">ねむごろに</A><A NAME="t187">思</A>ひきこえたるを。<BR>⏎
<P>⏎
900-903 「これはまた具してたてまつるべきものはべり。今また聞こえ<A HREF="#k185">知らせ</A><A NAME="t185">は</A>べらむ」<BR>⏎
 と女御には聞こえたまふ。そのついでに、<BR>⏎
 「今は、かくいにしへのことをもたどり知りたまひぬれど、あなたの御心ばへを、おろかに思しなすな。もとよりさるべき仲、えさらぬ睦びよりも、横さまの人のなげのあはれをもかけ、<A HREF="#k186">一言</A><A NAME="t186">の</A>心寄せあるは、おぼろけのことにもあらず。<BR>⏎
 ましてここになどさぶらひ馴れたまふを見る見るも、初めの心ざし変はらず、深く<A HREF="#k187">ねむごろに</A><A NAME="t187">思</A>ひきこえたるを。<BR>⏎
d11650<P>⏎
d11652<P>⏎
cd2:11653-1654 多くはあらねど、人の心の、とあるさまかかるおもむきを見るに、ゆゑよしといひ、さまざまに口惜しからぬ際の心ばせあるべかめり。皆おのおの得たる方ありて、取るところなくもあらねど、また取り立てて、わが後見に思ひ、まめまめしく選び<A HREF="#k190">思はむには</A><A NAME="t190">、</A>ありがたきわざになむ。<BR>⏎
<P>⏎
906 多くはあらねど、人の心の、とあるさまかかるおもむきを見るに、ゆゑよしといひ、さまざまに口惜しからぬ際の心ばせあるべかめり。皆おのおの得たる方ありて、取るところなくもあらねど、また取り立てて、わが後見に思ひ、まめまめしく選び<A HREF="#k190">思はむには</A><A NAME="t190">、</A>ありがたきわざになむ。<BR>⏎
d11656<P>⏎
d11658<P>⏎
text341659 <A NAME="in127">[第七段 明石御方、卑下す]</A><BR>909 
d11660<P>⏎
d11662<P>⏎
cd2:11663-1664 など<A HREF="#k191">忍びやかに</A><A NAME="t191">の</A>たまふ。<BR>⏎
<P>⏎
911 など<A HREF="#k191">忍びやかに</A><A NAME="t191">の</A>たまふ。<BR>⏎
d11666<P>⏎
d11668<P>⏎
d11670<P>⏎
cd2:11671-1672 「その御ためには、何の心ざしかはあらむ。ただこの御ありさまを、うち添ひてもえ見たてまつらぬおぼつかなさに、譲りきこえらるるなめり。それもまた、とりもちて、掲焉になどあらぬ御もてなしどもに、よろづのことなのめに目やすくなれば、いとなむ思ひなくうれしき。<BR>⏎
<P>⏎
915 「その御ためには、何の心ざしかはあらむ。ただこの御ありさまを、うち添ひてもえ見たてまつらぬおぼつかなさに、譲りきこえらるるなめり。それもまた、とりもちて、掲焉になどあらぬ御もてなしどもに、よろづのことなのめに目やすくなれば、いとなむ思ひなくうれしき。<BR>⏎
d11674<P>⏎
d11676<P>⏎
cd4:21677-1680 「さりやよくこそ卑下しにけれ」<BR>⏎
<P>⏎
 など思ひ続けたまふ。対へ渡りたまひぬ。<BR>⏎
<P>⏎
918-919 「さりやよくこそ卑下しにけれ」<BR>⏎
 など思ひ続けたまふ。対へ渡りたまひぬ。<BR>⏎
text341681 <A NAME="in128">[第八段 明石御方、宿世を思う]</A><BR>920 
d11682<P>⏎
cd2:11683-1684 「さもいとやむごとなき御心ざしのみまさるめるかな。げにはた、人よりことに、かくしも具したまへるありさまの、ことわりと見えたまへるこそめでたけれ。<BR>⏎
<P>⏎
921 「さもいとやむごとなき御心ざしのみまさるめるかな。げにはた、人よりことに、かくしも具したまへるありさまの、ことわりと見えたまへるこそめでたけれ。<BR>⏎
d11686<P>⏎
d11688<P>⏎
cd4:21689-1692 「やむごとなきだに、思すさまにもあらざめる世に、まして立ちまじるべきおぼえにしあらねば、すべて今は、恨めしき節もなし。ただかの絶え籠もりにたる山住みを思ひやるのみぞ、あはれにおぼつかなき」<BR>⏎
<P>⏎
 尼君も、ただ「<A HREF="#no39">福地の園に種まきて</A><A NAME="te39">」</A>とやうなりし一言をうち頼みて、後の世を思ひやりつつ眺めゐたまへり。<BR>⏎
<P>⏎
924-925 「やむごとなきだに、思すさまにもあらざめる世に、まして立ちまじるべきおぼえにしあらねば、すべて今は、恨めしき節もなし。ただかの絶え籠もりにたる山住みを思ひやるのみぞ、あはれにおぼつかなき」<BR>⏎
 尼君も、ただ「<A HREF="#no39">福地の園に種まきて</A><A NAME="te39">」</A>とやうなりし一言をうち頼みて、後の世を思ひやりつつ眺めゐたまへり。<BR>⏎
text341693 <H4>第十三章 女三の宮の物語 柏木、女三の宮を垣間見る</H4><BR>926 
text341694 <A NAME="in131">[第一段 夕霧の女三の宮への思い]</A><BR>927 
d11695<P>⏎
d11697<P>⏎
d11699<P>⏎
d11701<P>⏎
text341702 <A NAME="in132">[第二段 夕霧、女三の宮を他の女性と比較]</A><BR>931 
d11703<P>⏎
d11705<P>⏎
cd4:21706-1709 「げにこそありがたき世なりけれ。紫の御用意、けしきの、ここらの年経ぬれど、ともかくも漏り出で見え聞こえたるところなく、しづやかなるをもととして、さすがに、心うつくしう、人をも消たず、身をもやむごとなく、心にくくもてなし添へたまへること」<BR>⏎
<P>⏎
 と見し面影も忘れがたくのみなむ思ひ出でられける。<BR>⏎
<P>⏎
933-934 「げにこそありがたき世なりけれ。紫の御用意、けしきの、ここらの年経ぬれど、ともかくも漏り出で見え聞こえたるところなく、しづやかなるをもととして、さすがに、心うつくしう、人をも消たず、身をもやむごとなく、心にくくもてなし添へたまへること」<BR>⏎
 と見し面影も忘れがたくのみなむ思ひ出でられける。<BR>⏎
d11711<P>⏎
d11713<P>⏎
text341714 <A NAME="in133">[第三段 柏木、女三の宮に執心]</A><BR>937 
d11715<P>⏎
d11717<P>⏎
d11719<P>⏎
d11721<P>⏎
cd4:21722-1725 「かたじけなくとも、さるものは思はせたてまつらざらまし。げにたぐひなき御身にこそ、あたらざらめ」<BR>⏎
<P>⏎
 と常にこの小侍従といふ御乳主をも言ひはげまして、<BR>⏎
<P>⏎
941-942 「かたじけなくとも、さるものは思はせたてまつらざらまし。げにたぐひなき御身にこそ、あたらざらめ」<BR>⏎
 と常にこの小侍従といふ御乳主をも言ひはげまして、<BR>⏎
d11727<P>⏎
cd2:11728-1729 とたゆみなく思ひありきけり。<BR>⏎
<P>⏎
944 とたゆみなく思ひありきけり。<BR>⏎
text341730 <A NAME="in134">[第四段 柏木ら東町に集い遊ぶ]</A><BR>945 
d11731<P>⏎
d11733<P>⏎
d11735<P>⏎
d11737<P>⏎
d11739<P>⏎
cd2:11740-1741 と問はせたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
950 と問はせたまふ。<BR>⏎
d11743<P>⏎
cd2:11744-1745 「乱りがはしきことの、さすがに目覚めてかどかどしきぞかし。いづらこなたに」<BR>⏎
<P>⏎
952 「乱りがはしきことの、さすがに目覚めてかどかどしきぞかし。いづらこなたに」<BR>⏎
d11747<P>⏎
d11749<P>⏎
d11751<P>⏎
d11753<P>⏎
d11755<P>⏎
cd2:11756-1757 とのたまひて寝殿の東面、桐壺は若宮具したてまつりて参りたまひにしころなれば、こなた隠ろへたりけり。遣水などのゆきあひはれて、よしあるかかりのほどを尋ねて立ち出づ。太政大臣殿の君達、頭弁、兵衛佐、大夫の君など、過ぐしたるも、まだ片なりなるも、さまざまに、人よりまさりてのみものしたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
958 とのたまひて寝殿の東面、桐壺は若宮具したてまつりて参りたまひにしころなれば、こなた隠ろへたりけり。遣水などのゆきあひはれて、よしあるかかりのほどを尋ねて立ち出づ。太政大臣殿の君達、頭弁、兵衛佐、大夫の君など、過ぐしたるも、まだ片なりなるも、さまざまに、人よりまさりてのみものしたまふ。<BR>⏎
text341758 <A NAME="in135">[第五段 南町で蹴鞠を催す]</A><BR>959 
d11759<P>⏎
d11761<P>⏎
cd2:11762-1763 「弁官もえをさめあへざめるを、上達部なりとも、若き衛府司たちは、などか乱れたまはざらむ。かばかりの齢にては、あやしく見過ぐす、口惜しくおぼえしわざなり。さるはいと軽々なりや。このことのさまよ」<BR>⏎
<P>⏎
961 「弁官もえをさめあへざめるを、上達部なりとも、若き衛府司たちは、などか乱れたまはざらむ。かばかりの齢にては、あやしく見過ぐす、口惜しくおぼえしわざなり。さるはいと軽々なりや。このことのさまよ」<BR>⏎
d11765<P>⏎
d11767<P>⏎
cd2:11768-1769 容貌いときよげになまめきたるさましたる人の、用意いたくして、さすがに乱りがはしき、をかしく見ゆ。<BR>⏎
<P>⏎
964 容貌いときよげになまめきたるさましたる人の、用意いたくして、さすがに乱りがはしき、をかしく見ゆ。<BR>⏎
d11771<P>⏎
text341772 <A NAME="in136">[第六段 女三の宮たちも見物す]</A><BR>966 
d11773<P>⏎
d11775<P>⏎
d11777<P>⏎
d11779<P>⏎
d11781<P>⏎
text341782 <A NAME="in137">[第七段 唐猫、御簾を引き開ける]</A><BR>971 
d11783<P>⏎
d11785<P>⏎
d11787<P>⏎
text341788 <A NAME="in138">[第八段 柏木、女三の宮を垣間見る]</A><BR>974 
d11789<P>⏎
d11791<P>⏎
cd2:11792-1793 紅梅にやあらむ、濃き<A HREF="#k210">薄き</A><A NAME="t210">、</A>すぎすぎに、あまた重なりたるけぢめ、はなやかに、草子のつまのやうに見えて、桜の織物の細長なるべし。御髪のすそまでけざやかに見ゆるは、糸をよりかけたるやうになびきて、裾のふさやかにそがれたる、いとうつくしげにて、七八寸ばかりぞ余りたまへる。御衣の裾がちに、いと細く<A HREF="#k211">ささやか</A><A NAME="t211">に</A>て、姿つき、髪のかかりたまへる側目、言ひ知らずあてにらうたげなり。夕影なれば、さやかならず、奥暗き心地するも、いと飽かず口惜し。<BR>⏎
<P>⏎
976 紅梅にやあらむ、濃き<A HREF="#k210">薄き</A><A NAME="t210">、</A>すぎすぎに、あまた重なりたるけぢめ、はなやかに、草子のつまのやうに見えて、桜の織物の細長なるべし。御髪のすそまでけざやかに見ゆるは、糸をよりかけたるやうになびきて、裾のふさやかにそがれたる、いとうつくしげにて、七八寸ばかりぞ余りたまへる。御衣の裾がちに、いと細く<A HREF="#k211">ささやか</A><A NAME="t211">に</A>て、姿つき、髪のかかりたまへる側目、言ひ知らずあてにらうたげなり。夕影なれば、さやかならず、奥暗き心地するも、いと飽かず口惜し。<BR>⏎
d11795<P>⏎
text341796 <A NAME="in139">[第九段 夕霧、事態を憂慮す]</A><BR>978 
d11797<P>⏎
cd4:21798-1801 大将、いとかたはらいたけれど、はひ寄らむもなかなかいと軽々しければ、ただ心を得させて、うちしはぶきたまへるにぞ、やをらひき入りたまふ。さるはわが心地にも、いと飽かぬ心地したまへど、猫の綱ゆるしつれば、心にもあらずうち嘆かる。<BR>⏎
<P>⏎
 ましてさばかり心をしめたる衛門督は、胸ふとふたがりて、誰ればかりにかはあらむ、ここらの中にしるき袿姿よりも、人に紛るべくもあらざりつる御けはひなど、心にかかりておぼゆ。<BR>⏎
<P>⏎
979-980 大将、いとかたはらいたけれど、はひ寄らむもなかなかいと軽々しければ、ただ心を得させて、うちしはぶきたまへるにぞ、やをらひき入りたまふ。さるはわが心地にも、いと飽かぬ心地したまへど、猫の綱ゆるしつれば、心にもあらずうち嘆かる。<BR>⏎
 ましてさばかり心をしめたる衛門督は、胸ふとふたがりて、誰ればかりにかはあらむ、ここらの中にしるき袿姿よりも、人に紛るべくもあらざりつる御けはひなど、心にかかりておぼゆ。<BR>⏎
d11803<P>⏎
text341804 <H4>第十四章 女三の宮の物語 蹴鞠の後宴</H4><BR>982 
text341805 <A NAME="in141">[第一段 蹴鞠の後の酒宴]</A><BR>983 
d11806<P>⏎
d11808<P>⏎
d11810<P>⏎
cd2:11811-1812 とて対の南面に入りたまへれば、みなそなたに参りたまひぬ。宮もゐ直りたまひて、御物語したまふ。<BR>⏎
<P>⏎
986 とて対の南面に入りたまへれば、みなそなたに参りたまひぬ。宮もゐ直りたまひて、御物語したまふ。<BR>⏎
d11814<P>⏎
d11816<P>⏎
d11818<P>⏎
d11820<P>⏎
cd4:21821-1824 「なほ内外の用意多からず、いはけなきは、らうたきやうなれど、うしろめたきやうなりや」<BR>⏎
<P>⏎
 と思ひ落とさる。<BR>⏎
<P>⏎
991-992 「なほ内外の用意多からず、いはけなきは、らうたきやうなれど、うしろめたきやうなりや」<BR>⏎
 と思ひ落とさる。<BR>⏎
d11826<P>⏎
text341827 <A NAME="in142">[第二段 源氏の昔語り]</A><BR>994 
d11828<P>⏎
d11830<P>⏎
d11832<P>⏎
d11834<P>⏎
d11836<P>⏎
d11838<P>⏎
d11840<P>⏎
cd2:11841-1842 など戯れたまふ御さまの、匂ひやかにきよらなるを見たてまつるにも、<BR>⏎
<P>⏎
1001 など戯れたまふ御さまの、匂ひやかにきよらなるを見たてまつるにも、<BR>⏎
d11844<P>⏎
cd2:11845-1846 と思ひめぐらすに、いとどこよなく、御あたりはるかなるべき身のほども思ひ知らるれば、胸のみふたがりて<A HREF="#k214">まかで</A><A NAME="t214">た</A>まひぬ。<BR>⏎
<P>⏎
1003 と思ひめぐらすに、いとどこよなく、御あたりはるかなるべき身のほども思ひ知らるれば、胸のみふたがりて<A HREF="#k214">まかで</A><A NAME="t214">た</A>まひぬ。<BR>⏎
text341847 <A NAME="in143">[第三段 柏木と夕霧、同車して帰る]</A><BR>1004 
d11848<P>⏎
d11850<P>⏎
cd2:11851-1852 「なほこのころのつれづれには、この院に参りて、紛らはすべきなりけり」<BR>⏎
<P>⏎
1006 「なほこのころのつれづれには、この院に参りて、紛らはすべきなりけり」<BR>⏎
d11854<P>⏎
d11856<P>⏎
d11858<P>⏎
cd4:21859-1862 とあいなく言へば、<BR>⏎
<P>⏎
 「たいだいしきこと。いかでかさはあらむ。こなたは、さま変はりて生ほしたてたまへる睦びのけぢめばかりにこそあべかめれ。宮をばかたがたにつけて、いとやむごとなく思ひきこえたまへるものを」<BR>⏎
<P>⏎
1010-1011 とあいなく言へば、<BR>⏎
 「たいだいしきこと。いかでかさはあらむ。こなたは、さま変はりて生ほしたてたまへる睦びのけぢめばかりにこそあべかめれ。宮をばかたがたにつけて、いとやむごとなく思ひきこえたまへるものを」<BR>⏎
d11864<P>⏎
cd7:31865-1871 「いであなかまたまへ。皆聞きてはべり。いといとほしげなる折々あなるをや。さるは世におしなべたらぬ人の御おぼえを。ありがたきわざなりや」<BR>⏎
<P>⏎
 といとほしがる。<BR>⏎
<P>⏎
 「いかなれば花に木づたふ鴬の<BR>⏎
  桜をわきてねぐらとはせぬ<BR>⏎
<P>⏎
1013-1015 「いであなかまたまへ。皆聞きてはべり。いといとほしげなる折々あなるをや。さるは世におしなべたらぬ人の御おぼえを。ありがたきわざなりや」<BR>⏎
 といとほしがる。<BR>⏎
 「いかなれば花に木づたふ鴬の<BR>  桜をわきてねぐらとはせぬ<BR>⏎
d11873<P>⏎
cd7:31874-1880 と口ずさびに言へば、<BR>⏎
<P>⏎
 「いであなあぢきなのもの扱ひや、さればよ」と思ふ。<BR>⏎
<P>⏎
 「<A HREF="#no42">深山木にねぐら</A><A NAME="te42">定</A>むるはこ鳥も<BR>⏎
  いかでか花の色に飽くべき<BR>⏎
<P>⏎
1017-1019 と口ずさびに言へば、<BR>⏎
 「いであなあぢきなのもの扱ひや、さればよ」と思ふ。<BR>⏎
 「<A HREF="#no42">深山木にねぐら</A><A NAME="te42">定</A>むるはこ鳥も<BR>  いかでか花の色に飽くべき<BR>⏎
d11882<P>⏎
d11884<P>⏎
text341885 <A NAME="in144">[第四段 柏木、小侍従に手紙を送る]</A><BR>1022 
d11886<P>⏎
d11888<P>⏎
d11890<P>⏎
cd2:11891-1892 とのみ心おごりをするに、この夕べより屈しいたく、もの思はしくて、<BR>⏎
<P>⏎
1025 とのみ心おごりをするに、この夕べより屈しいたく、もの思はしくて、<BR>⏎
d11894<P>⏎
d11896<P>⏎
cd2:11897-1898 「<A HREF="#no43">深き窓のうち</A><A NAME="te43">に</A>、何ばかりのことにつけてか、かく深き心ありけりとだに知らせたてまつるべき」<BR>⏎
<P>⏎
1028 「<A HREF="#no43">深き窓のうち</A><A NAME="te43">に</A>、何ばかりのことにつけてか、かく深き心ありけりとだに知らせたてまつるべき」<BR>⏎
d11900<P>⏎
d11902<P>⏎
d11904<P>⏎
cd3:11905-1907 「よそに見て折らぬ嘆きはしげれども<BR>⏎
  なごり恋しき花の夕かげ」<BR>⏎
<P>⏎
1032 「よそに見て折らぬ嘆きはしげれども<BR>  なごり恋しき花の夕かげ」<BR>⏎
d11909<P>⏎
text341910 <A NAME="in145">[第五段 女三の宮、柏木の手紙を見る]</A><BR>1034 
d11911<P>⏎
d11913<P>⏎
d11915<P>⏎
cd2:11916-1917 とうち笑ひて聞こゆれば、<BR>⏎
<P>⏎
1037 とうち笑ひて聞こゆれば、<BR>⏎
d11919<P>⏎
cd2:11920-1921 と何心も<A HREF="#k223">なげに</A><A NAME="t223">の</A>たまひて、文広げたるを御覧ず。<BR>⏎
<P>⏎
1039 と何心も<A HREF="#k223">なげに</A><A NAME="t223">の</A>たまひて、文広げたるを御覧ず。<BR>⏎
d11923<P>⏎
d11925<P>⏎
cd2:11926-1927 と戒めきこえたまふを思し出づるに、<BR>⏎
<P>⏎
1042 と戒めきこえたまふを思し出づるに、<BR>⏎
d11929<P>⏎
cd2:11930-1931 と人の見たてまつりけむことをば思さで、まづ憚りきこえたまふ心のうちぞ幼かりける。<BR>⏎
<P>⏎
1044 と人の見たてまつりけむことをば思さで、まづ憚りきこえたまふ心のうちぞ幼かりける。<BR>⏎
d11933<P>⏎
cd6:31934-1939 「一日は、つれなし顔をなむ。<A HREF="#k225">めざましう</A><A NAME="t225">と</A>許しきこえざりしを、『見ずもあらぬ』やいかに。あなかけかけし」<BR>⏎
<P>⏎
 とはやりかに走り書きて、<BR>⏎
<P>⏎
 「いまさらに色にな出でそ山桜<BR>⏎
  およばぬ枝に心かけきと<BR>⏎
1046-1048 「一日は、つれなし顔をなむ。<A HREF="#k225">めざましう</A><A NAME="t225">と</A>許しきこえざりしを、『見ずもあらぬ』やいかに。あなかけかけし」<BR>⏎
 とはやりかに走り書きて、<BR>⏎
 「いまさらに色にな出でそ山桜<BR>  およばぬ枝に心かけきと<BR>⏎
d11941<P>⏎
d21943-1944
<P>⏎
text341945 <a name="in151">【出典】<BR>1051 
c11946</a><A NAME="no1">出典1</A> わび人の分きて立ち寄る木のもとは頼む蔭なく紅葉散りけり(古今集秋下-二九二 僧正遍昭)<A HREF="#te1">(戻)</A><BR>⏎
1052<A NAME="no1">出典1</A> わび人の分きて立ち寄る木のもとは頼む蔭なく紅葉散りけり(古今集秋下-二九二 僧正遍昭)<A HREF="#te1">(戻)</A><BR>⏎
c11953<A NAME="no8">出典8</A> 我家は 帷とばりちやうも 垂れたるを 大君来ませ 聟にせむ 御肴に 何よけむ 鮑あはび栄螺さだをか 石陰子かせよけむ 鮑栄螺か 石陰子よけむ(催馬楽-我家)<A HREF="#te8">(戻)</A><BR>⏎
1059<A NAME="no8">出典8</A> 我家は <ruby><rb><rp>(<rt>とばり<rp>)</ruby><ruby><rb><rp>(<rt>ちやう<rp>)</ruby>も 垂れたるを 大君来ませ 聟にせむ 御肴に 何よけむ <ruby><rb><rp>(<rt>あはび<rp>)</ruby><ruby><rb>栄螺<rp>(<rt>さだを<rp>)</ruby>か 石<ruby><rb>陰子<rp>(<rt>かせ<rp>)</ruby>よけむ 鮑栄螺か 石陰子よけむ(催馬楽-我家)<A HREF="#te8">(戻)</A><BR>⏎
c11977<A NAME="no32">出典32</A> 席田むしろだの 席田の 伊津貫川いつぬきがはに や 住む鶴の 住む鶴の や 住む鶴の 千歳をかねてぞ 遊びあへる 千歳をかねてぞ 遊びあへる(催馬楽-席田)<A HREF="#te32">(戻)</A><BR>⏎
1083<A NAME="no32">出典32</A> <ruby><rb>席田<rp>(<rt>むしろだ<rp>)</ruby>の 席田の <ruby><rb>伊津貫川<rp>(<rt>いつぬきがは<rp>)</ruby>に や 住む鶴の 住む鶴の や 住む鶴の 千歳をかねてぞ 遊びあへる 千歳をかねてぞ 遊びあへる(催馬楽-席田)<A HREF="#te32">(戻)</A><BR>⏎
d11991
text341992<p> <a name="in152">【校訂】<BR>1097 
c241994-2017</a><a name="k01">校訂1</a><a name="in152"> おきたてまつりて--をきて(て/$)たてまつりて</a><a href="#t01">(戻)</a><a name="in152"><BR>⏎
</a><a name="
k02">校訂2</a><a name="in152"> 御年のほどよりはいとよく大人びさせたまひて--(/+御としの程よりはいとよくおとなひさせ給て)</a><a href="#t02">(戻)</a><a name="in152"><BR>⏎
</a><a name="
k03">校訂3</a><a name="in152"> 女宮たち--女御(御/$宮)たち</a><a href="#t03">(戻)</a><a name="in152"><BR>⏎
</a><a name="
k04">校訂4</a><a name="in152"> おとしめらるる宿世あるなむ、いと口惜しく--おと(と/+しめらるゝすくせあるなんいとくちお)しく</a><a href="#t04">(戻)</a><a name="in152"><BR>⏎
</a><a name="
k05">校訂5</a><a name="in152"> おし拭ひ--をしのひ(ひ/$)こひ</a><a href="#t05">(戻)</a><a name="in152"><BR>⏎
</a><a name="
k06">校訂6</a><a name="in152"> うつくしき--心(心/$)うつくしき</a><a href="#t06">(戻)</a><a name="in152"><BR>⏎
</a><a name="
k07">校訂7</a><a name="in152"> げに--けには(は/$)</a><a href="#t07">(戻)</a><a name="in152"><BR>⏎
</a><a name="
k08">校訂8</a><a name="in152"> 悩ませたまふ--なやみ(み/$ま)せたまふ</a><a href="#t08">(戻)</a><a name="in152"><BR>⏎
</a><a name="
k09">校訂9</a><a name="in152"> たてまつり--(/+たてまつり)</a><a href="#t09">(戻)</a><a name="in152"><BR>⏎
</a><a name="
k10">校訂10</a><a name="in152"> 御心寄せ--(/+御)心よせ</a><a href="#t10">(戻)</a><a name="in152"><BR>⏎
</a><a name="
k11">校訂11</a><a name="in152"> 末の世の--すゑのよに(に/$の)</a><a href="#t11">(戻)</a><a name="in152"><BR>⏎
</a><a name="
k12">校訂12</a><a name="in152"> 秋の行幸--秋(秋/+の)行幸</a><a href="#t12">(戻)</a><a name="in152"><BR>⏎
</a><a name="
k13">校訂13</a><a name="in152"> ついでにも--(/+つ)いてにも</a><a href="#t13">(戻)</a><a name="in152"><BR>⏎
</a><a name="
k14">校訂14</a><a name="in152"> 申さるる折ははべらず--申さゝ(ゝ/$るゝ)るをり(り/+は)はゝへらす</a><a href="#t14">(戻)</a><a name="in152"><BR>⏎
</a><a name="
k15">校訂15</a><a name="in152"> 仕うまつりさして--つかうまつりて(て/$)さして</a><a href="#t15">(戻)</a><a name="in152"><BR>⏎
</a><a name="
k16">校訂16</a><a name="in152"> なれど--な(な/$)なれと</a><a href="#t16">(戻)</a><a name="in152"><BR>⏎
</a><a name="
k17">校訂17</a><a name="in152"> きよらなる--きよく(く/$ら)なる</a><a href="#t17">(戻)</a><a name="in152"><BR>⏎
</a><a name="
k18">校訂18</a><a name="in152"> にか」と--*にと</a><a href="#t18">(戻)</a><a name="in152"><BR>⏎
</a><a name="
k19">校訂19</a><a name="in152"> 及ばぬ--をよはす(す/$ぬ)</a><a href="#t19">(戻)</a><a name="in152"><BR>⏎
</a><a name="
k20">校訂20</a><a name="in152"> 並び--ならひならひ(なたひ<後出>/$)</a><a href="#t20">(戻)</a><a name="in152"><BR>⏎
</a><a name="
k21">校訂21</a><a name="in152"> 撫でかしづき--なて(て/+かし)つき</a><a href="#t21">(戻)</a><a name="in152"><BR>⏎
</a><a name="
k22">校訂22</a><a name="in152"> なめり--なめりかし(かし/$)</a><a href="#t22">(戻)</a><a name="in152"><BR>⏎
</a><a name="
k23">校訂23</a><a name="in152"> 頼もしげなる--たのもしけれ(れ/$)なる</a><a href="#t23">(戻)</a><a name="in152"><BR>⏎
</a><a name="
k24">校訂24</a><a name="in152"> 宮仕へ--みやつかひ(ひ/$へ<)<A HREF="#t24">(戻)</a><BR>⏎
1099-1122<A NAME="k01">校訂1</A> おきたてまつりて--をきて(て/$)たてまつりて<A HREF="#t01">(戻)</A><BR>⏎
<
A NAME="k02">校訂2</A> 御年のほどよりはいとよく大人びさせたまひて--(/+御としの程よりはいとよくおとなひさせ給て)<A HREF="#t02">(戻)</A><BR>⏎
<
A NAME="k03">校訂3</A> 女宮たち--女御(御/$宮)たち<A HREF="#t03">(戻)</A><BR>⏎
<
A NAME="k04">校訂4</A> おとしめらるる宿世あるなむ、いと口惜しく--おと(と/+しめらるゝすくせあるなんいとくちお)しく<A HREF="#t04">(戻)</A><BR>⏎
<
A NAME="k05">校訂5</A> おし拭ひ--をしのひ(ひ/$)こひ<A HREF="#t05">(戻)</A><BR>⏎
<
A NAME="k06">校訂6</A> うつくしき--心(心/$)うつくしき<A HREF="#t06">(戻)</A><BR>⏎
<
A NAME="k07">校訂7</A> げに--けには(は/$)<A HREF="#t07">(戻)</A><BR>⏎
<
A NAME="k08">校訂8</A> 悩ませたまふ--なやみ(み/$ま)せたまふ<A HREF="#t08">(戻)</A><BR>⏎
<
A NAME="k09">校訂9</A> たてまつり--(/+たてまつり)<A HREF="#t09">(戻)</A><BR>⏎
<
A NAME="k10">校訂10</A> 御心寄せ--(/+御)心よせ<A HREF="#t10">(戻)</A><BR>⏎
<
A NAME="k11">校訂11</A> 末の世の--すゑのよに(に/$の)<A HREF="#t11">(戻)</A><BR>⏎
<
A NAME="k12">校訂12</A> 秋の行幸--秋(秋/+の)行幸<A HREF="#t12">(戻)</A><BR>⏎
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A NAME="k13">校訂13</A> ついでにも--(/+つ)いてにも<A HREF="#t13">(戻)</A><BR>⏎
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A NAME="k14">校訂14</A> 申さるる折ははべらず--申さゝ(ゝ/$るゝ)るをり(り/+は)はゝへらす<A HREF="#t14">(戻)</A><BR>⏎
<
A NAME="k15">校訂15</A> 仕うまつりさして--つかうまつりて(て/$)さして<A HREF="#t15">(戻)</A><BR>⏎
<
A NAME="k16">校訂16</A> なれど--な(な/$)なれと<A HREF="#t16">(戻)</A><BR>⏎
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A NAME="k17">校訂17</A> きよらなる--きよく(く/$ら)なる<A HREF="#t17">(戻)</A><BR>⏎
<
A NAME="k18">校訂18</A> にか」と--*にと<A HREF="#t18">(戻)</A><BR>⏎
<
A NAME="k19">校訂19</A> 及ばぬ--をよはす(す/$ぬ)<A HREF="#t19">(戻)</A><BR>⏎
<
A NAME="k20">校訂20</A> 並び--ならひならひ(なたひ<後出>/$)<A HREF="#t20">(戻)</A><BR>⏎
<
A NAME="k21">校訂21</A> 撫でかしづき--なて(て/+かし)つき<A HREF="#t21">(戻)</A><BR>⏎
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A NAME="k22">校訂22</A> なめり--なめりかし(かし/$)<A HREF="#t22">(戻)</A><BR>⏎
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A NAME="k23">校訂23</A> 頼もしげなる--たのもしけれ(れ/$)なる<A HREF="#t23">(戻)</A><BR>⏎
<
A NAME="k24">校訂24</A> 宮仕へ--みやつかひ(ひ/$へ)<A HREF="#t24">(戻)</A><BR>⏎
c12119<a name="k126">校訂126</a> など目--なとの(の/$め)<a href="#t126">(戻)</a><BR>⏎
1224<A NAME="k126">校訂126</A> など目--なとの(の/$め)<A HREF="#t126">(戻)</A><BR>⏎
c12199<a name="k206">校訂206</a> に花--はな(はな/$に花)<a href="#t206">(戻)</a><BR>⏎
1304<A NAME="k206">校訂206</A> に花--はな(はな/$に花)<A HREF="#t206">(戻)</A><BR>⏎
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First updated 9/20/1996(ver.1-1)<BR>⏎
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cd3:210-12Last updated 9/21/2010(ver.2-3)<BR>⏎
渋谷栄一校訂(C)<BR>⏎
<P
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9-10<ADDRESS>Last updated 9/21/2010(ver.2-3)<BR>⏎
渋谷栄一校訂(C)</ADDRESS>⏎
d114<P>⏎
d116<P>⏎
c152<DD>呼称--左大将殿の北の方・右の大臣の北の方・右大臣殿の北の方・北の方・尚侍の君・継母・君、鬚黒の北の方<BR>⏎
48<DD>呼称---左大将殿の北の方・右の大臣の北の方・右大臣殿の北の方・北の方・尚侍の君・継母・君、鬚黒の北の方<BR>⏎
d158<P>⏎
c170<LI>六条院の女方の動静---<A HREF="#in22">姫宮の御ことは、帝御心とどめて思ひ</A>⏎
65<LI>六条院の女方の動静---<A HREF="#in22">姫宮の御ことは、帝御心とどめて思ひ</A>⏎
c1119<LI>小侍従、手引きを承諾---<A HREF="#in73">「いで、あな聞きにく。あまりこちたくものを</A>⏎
114<LI>小侍従、手引きを承諾---<A HREF="#in73">「いで、あな聞きにく。あまりこちたくものを</A>⏎
c1125<LI>柏木と女二の宮の夫婦仲---<A HREF="#in79">督の君は、ましてなかなかなる心地のみまさりて</A>⏎
120<LI>柏木と女二の宮の夫婦仲---<A HREF="#in79">督の君は、ましてなかなかなる心地のみまさりて</A>⏎
c1133<LI>紫の上、小康を得る---<A HREF="#in85">五月などは、まして晴れ晴れしからぬ空のけしきに</A>⏎
128<LI>紫の上、小康を得る---<A HREF="#in85">五月などは、まして晴れ晴れしからぬ空のけしきに</A>⏎
d1172<P>⏎
d1175<P>⏎
text35176 <H4>第一章 柏木の物語 女三の宮の結婚後</H4>169 
text35177 <A NAME="in11">[第一段 六条院の競射]</A><BR>170 
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d1180<P>⏎
cd2:1181-182 「うれたくも言へるかな。いでやなぞ、かく異なることなきあへしらひばかりを慰めにては、いかが過ぐさむ。かかる<A HREF="#no1">人伝てならで</A><A NAME="te1">、</A>一言をものたまひ聞こゆる世ありなむや」<BR>⏎
<P>⏎
172 「うれたくも言へるかな。いでやなぞ、かく異なることなきあへしらひばかりを慰めにては、いかが過ぐさむ。かかる<A HREF="#no1">人伝てならで</A><A NAME="te1">、</A>一言をものたまひ聞こゆる世ありなむや」<BR>⏎
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d1188<P>⏎
d1190<P>⏎
d1192<P>⏎
cd5:3193-197 とて大将たちよりはじめて、下りたまふに、衛門督、人よりけに眺めをしつつものしたまへば、かの片端心知れる御目には、見つけつつ、<BR>⏎
<P>⏎
 「なほいとけしき異なり。わづらはしきこと出で来べき世にやあらむ」<BR>⏎
<P>⏎
 とわれさへ思ひつきぬる心地す。この君たち、御仲いとよし。さる仲らひといふ中にも、心交はしてねむごろなれば、はかなきことにても、もの思はしくうち紛るることあらむを、いとほしくおぼえたまふ。<BR>⏎
178-180 とて大将たちよりはじめて、下りたまふに、衛門督、人よりけに眺めをしつつものしたまへば、かの片端心知れる御目には、見つけつつ、<BR>⏎
 「なほいとけしき異なり。わづらはしきこと出で来べき世にやあらむ」<BR>⏎
 とわれさへ思ひつきぬる心地す。この君たち、御仲いとよし。さる仲らひといふ中にも、心交はしてねむごろなれば、はかなきことにても、もの思はしくうち紛るることあらむを、いとほしくおぼえたまふ。<BR>⏎
d1199<P>⏎
d1201<P>⏎
d1204<P>⏎
d1206<P>⏎
text35207 <A NAME="in12">[第二段 柏木、女三の宮の猫を預る]</A><BR>186 
d1208<P>⏎
d1210<P>⏎
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d1214<P>⏎
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d1218<P>⏎
d1220<P>⏎
cd4:2221-224 などゆかしく思さるばかり、聞こえなしたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
 聞こし召しおきて、桐壺の御方より伝へて聞こえさせたまひければ、参らせたまへり。「げにいとうつくしげなる猫なりけり」と、人びと興ずるを、衛門督は、「尋ねむと思したりき」と、御けしきを見おきて、日ごろ経て参りたまへり。<BR>⏎
<P>⏎
193-194 などゆかしく思さるばかり、聞こえなしたまふ。<BR>⏎
 聞こし召しおきて、桐壺の御方より伝へて聞こえさせたまひければ、参らせたまへり。「げにいとうつくしげなる猫なりけり」と、人びと興ずるを、衛門督は、「尋ねむと思したりき」と、御けしきを見おきて、日ごろ経て参りたまへり。<BR>⏎
d1226<P>⏎
cd2:1227-228 「御猫どもあまた集ひはべりにけり。いづらこの見し人は」<BR>⏎
<P>⏎
196 「御猫どもあまた集ひはべりにけり。いづらこの見し人は」<BR>⏎
d1230<P>⏎
cd2:1231-232 「げにをかしきさましたりけり。心なむ、まだなつきがたきは、見馴れぬ人を知るにやあらむ。ここなる猫ども、ことに劣らずかし」<BR>⏎
<P>⏎
198 「げにをかしきさましたりけり。心なむ、まだなつきがたきは、見馴れぬ人を知るにやあらむ。ここなる猫ども、ことに劣らずかし」<BR>⏎
d1234<P>⏎
cd2:1235-236 「これはさるわきまへ心も、をさをさはべらぬものなれど、その中にも心かしこきは、おのづから魂はべらむかし」など聞こえて、「まさるどもさぶらふめるを、これはしばし賜はり預からむ」<BR>⏎
<P>⏎
200 「これはさるわきまへ心も、をさをさはべらぬものなれど、その中にも心かしこきは、おのづから魂はべらむかし」など聞こえて、「まさるどもさぶらふめるを、これはしばし賜はり預からむ」<BR>⏎
d1238<P>⏎
cd5:2239-243 明け立てば、猫のかしづきをして、撫で養ひたまふ。人気遠かりし心も、いとよく馴れて、ともすれば、衣の裾にまつはれ、寄り臥し睦るるを、まめやかにうつくしと思ふ。いといたく眺めて、端近く寄り臥したまへるに、来て「ねうねう」と、いとらうたげに鳴けば、かき撫でて、「うたてもすすむかな」と、ほほ笑まる。<BR>⏎
<P>⏎
 「恋ひわぶる人のかたみと手ならせば<BR>⏎
  なれよ何とて鳴く音なるらむ<BR>⏎
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202-203 明け立てば、猫のかしづきをして、撫で養ひたまふ。人気遠かりし心も、いとよく馴れて、ともすれば、衣の裾にまつはれ、寄り臥し睦るるを、まめやかにうつくしと思ふ。いといたく眺めて、端近く寄り臥したまへるに、来て「ねうねう」と、いとらうたげに鳴けば、かき撫でて、「うたてもすすむかな」と、ほほ笑まる。<BR>⏎
 「恋ひわぶる人のかたみと手ならせば<BR>  なれよ何とて鳴く音なるらむ<BR>⏎
d1245<P>⏎
cd2:1246-247 と顔を見つつのたまへば、いよいよらうたげに鳴くを、懐に入れて眺めゐたまへり。御達などは、<BR>⏎
<P>⏎
205 と顔を見つつのたまへば、いよいよらうたげに鳴くを、懐に入れて眺めゐたまへり。御達などは、<BR>⏎
d1249<P>⏎
cd2:1250-251 ととがめけり。宮より召すにも参らせず、取りこめて、これを語らひたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
207 ととがめけり。宮より召すにも参らせず、取りこめて、これを語らひたまふ。<BR>⏎
text35252 <A NAME="in13">[第三段 柏木、真木柱姫君には無関心]</A><BR>208 
d1253<P>⏎
d1255<P>⏎
d1257<P>⏎
d1259<P>⏎
d1261<P>⏎
d1263<P>⏎
cd2:1264-265 大将も、さる世の重鎮となりたまふべき下形なれば、姫君の御おぼえ、などてかは軽くはあらむ。聞こえ出づる人びと、ことに触れて多かれど、思しも定めず。衛門督を、「さもけしきばまば」と思すべかめれど、猫には思ひ落としたてまつるにや、かけても思ひ寄らぬぞ、口惜しかりける。<BR>⏎
<P>⏎
214 大将も、さる世の重鎮となりたまふべき下形なれば、姫君の御おぼえ、などてかは軽くはあらむ。聞こえ出づる人びと、ことに触れて多かれど、思しも定めず。衛門督を、「さもけしきばまば」と思すべかめれど、猫には思ひ落としたてまつるにや、かけても思ひ寄らぬぞ、口惜しかりける。<BR>⏎
d1267<P>⏎
text35268 <A NAME="in14">[第四段 真木柱、兵部卿宮と結婚]</A><BR>216 
d1269<P>⏎
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d1275<P>⏎
d1277<P>⏎
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d1281<P>⏎
cd2:1282-283 とて御しつらひをも、立ちゐ、御手づから御覧じ入れ、よろづにかたじけなく御心に入れたまへり。<BR>⏎
<P>⏎
223 とて御しつらひをも、立ちゐ、御手づから御覧じ入れ、よろづにかたじけなく御心に入れたまへり。<BR>⏎
text35284 <A NAME="in15">[第五段 兵部卿宮と真木柱の不幸な結婚生活]</A><BR>224 
d1285<P>⏎
cd2:1286-287 宮は、亡せたまひにける北の方を、世とともに恋ひきこえたまひて、「ただ昔の御ありさまに似たてまつりたらむ人を見む」と思しけるに、「悪しくはあらねど、さま変はりてぞものしたまひける」と思すに、口惜しくやありけむ、通ひたまふさま、いともの憂げなり。<BR>⏎
<P>⏎
225 宮は、亡せたまひにける北の方を、世とともに恋ひきこえたまひて、「ただ昔の御ありさまに似たてまつりたらむ人を見む」と思しけるに、「悪しくはあらねど、さま変はりてぞものしたまひける」と思すに、口惜しくやありけむ、通ひたまふさま、いともの憂げなり。<BR>⏎
d1289<P>⏎
d1291<P>⏎
d1293<P>⏎
cd2:1294-295 「そのかみも、気近く見聞こえむとは、思ひ寄らざりきかし。ただ情け情けしう、心深きさまにのたまひわたりしを、あへなくあはつけきやうにや、聞き落としたまひけむ」と、いと恥づかしく、年ごろも思しわたることなれば、「かかるあたりにて、聞きたまはむことも、心づかひせらるべく」など思す。<BR>⏎
<P>⏎
229 「そのかみも、気近く見聞こえむとは、思ひ寄らざりきかし。ただ情け情けしう、心深きさまにのたまひわたりしを、あへなくあはつけきやうにや、聞き落としたまひけむ」と、いと恥づかしく、年ごろも思しわたることなれば、「かかるあたりにて、聞きたまはむことも、心づかひせらるべく」など思す。<BR>⏎
d1297<P>⏎
d1299<P>⏎
c2300-301 とむつかりたまふを、宮も漏り聞きたまひては、「いと聞きならはぬことかな。昔いとあはれと思ひし人をおきても、なほはかなき心のすさびは絶えざりしかど、かう厳しきもの怨じは、ことになかりしものを」心づきなく、いとど昔を恋ひきこえたまひつつ、故里にうち眺めがちにのみおはします。さ言ひつつも、二年ばかりになりぬれば、かかる方に目馴れて、たださる方の御仲にて過ぐしたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
232-233 とむつかりたまふを、宮も漏り聞きたまひては、「いと聞きならはぬことかな。昔いとあはれと思ひし人をおきても、なほはかなき心のすさびは絶えざりしかど、かう厳しきもの怨じは、ことになかりしものを」<BR>⏎
 
心づきなく、いとど昔を恋ひきこえたまひつつ、故里にうち眺めがちにのみおはします。さ言ひつつも、二年ばかりになりぬれば、かかる方に目馴れて、たださる方の御仲にて過ぐしたまふ。<BR>⏎
text35302 <H4>第二章 光る源氏の物語 住吉参詣</H4>234 
text35303 <A NAME="in21">[第一段 冷泉帝の退位]</A><BR>235 
d1304<P>⏎
d1306<P>⏎
d1308<P>⏎
cd2:1309-310 と年ごろ思しのたまはせつるを、日ごろいと重く悩ませたまふことありて、にはかに下りゐさせたまひぬ。世の人、「飽かず盛りの御世を、かく逃れたまふこと」と惜しみ嘆けど、春宮もおとなびさせたまひにたれば、うち嗣ぎて、世の中の政事など、ことに変はるけぢめもなかりけり。<BR>⏎
<P>⏎
238 と年ごろ思しのたまはせつるを、日ごろいと重く悩ませたまふことありて、にはかに下りゐさせたまひぬ。世の人、「飽かず盛りの御世を、かく逃れたまふこと」と惜しみ嘆けど、春宮もおとなびさせたまひにたれば、うち嗣ぎて、世の中の政事など、ことに変はるけぢめもなかりけり。<BR>⏎
d1312<P>⏎
d1314<P>⏎
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text35325 <A NAME="in22">[第二段 六条院の女方の動静]</A><BR>246 
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cd2:1327-328 姫宮の御ことは、帝御心とどめて思ひきこえたまふ。おほかたの世にも、あまねくもてかしづかれたまふを、対の上の御勢ひには、えまさりたまはず。年月経るままに、御仲いとうるはしく睦びきこえ交はしたまひて、いささか飽かぬことなく、隔ても見えたまはぬものから、<BR>⏎
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247 姫宮の御ことは、帝御心とどめて思ひきこえたまふ。おほかたの世にも、あまねくもてかしづかれたまふを、対の上の御勢ひには、えまさりたまはず。年月経るままに、御仲いとうるはしく睦びきこえ交はしたまひて、いささか飽かぬことなく、隔ても見えたまはぬものから、<BR>⏎
d1330<P>⏎
cd2:1331-332 とまめやかに聞こえたまふ折々あるを、<BR>⏎
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249 とまめやかに聞こえたまふ折々あるを、<BR>⏎
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text35341 <A NAME="in23">[第三段 源氏、住吉に参詣]</A><BR>254 
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d1344<P>⏎
cd2:1345-346 年ごとの春秋の神楽に、かならず長き世の祈りを加へたる願ども、げにかかる御勢ひならでは、果たしたまふべきこととも思ひおきてざりけり。ただ走り書きたる趣きの、才々しくはかばかしく、仏神も聞き入れたまふべき言の葉明らかなり。<BR>⏎
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256 年ごとの春秋の神楽に、かならず長き世の祈りを加へたる願ども、げにかかる御勢ひならでは、果たしたまふべきこととも思ひおきてざりけり。ただ走り書きたる趣きの、才々しくはかばかしく、仏神も聞き入れたまふべき言の葉明らかなり。<BR>⏎
d1348<P>⏎
cd2:1349-350 このたびは、この心をば表はしたまはず、ただ院の御物詣でにて出で立ちたまふ。浦伝ひのもの騒がしかりしほど、そこらの御願ども、皆果たし尽くしたまへれども、なほ世の中にかくおはしまして、かかるいろいろの栄えを見たまふにつけても、神の御助けは忘れがたくて、対の上も具しきこえさせたまひて、詣でさせたまふ、響き世の常ならず。いみじくことども<A HREF="#k02">削ぎ</A><A NAME="t02">捨</A>てて、世の煩ひあるまじく、と省かせたまへど、限りありければ、めづらかによそほしくなむ。<BR>⏎
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258 このたびは、この心をば表はしたまはず、ただ院の御物詣でにて出で立ちたまふ。浦伝ひのもの騒がしかりしほど、そこらの御願ども、皆果たし尽くしたまへれども、なほ世の中にかくおはしまして、かかるいろいろの栄えを見たまふにつけても、神の御助けは忘れがたくて、対の上も具しきこえさせたまひて、詣でさせたまふ、響き世の常ならず。いみじくことども<A HREF="#k02">削ぎ</A><A NAME="t02">捨</A>てて、世の煩ひあるまじく、と省かせたまへど、限りありければ、めづらかによそほしくなむ。<BR>⏎
text35351 <A NAME="in24">[第四段 住吉参詣の一行]</A><BR>259 
d1352<P>⏎
d1354<P>⏎
d1356<P>⏎
cd4:2357-360 御神楽の方には、いと多く仕うまつれり。内裏春宮院の殿上人、方々に分かれて、心寄せ仕うまつる。数も知らず、いろいろに尽くしたる上達部の御馬馬副随身小舎人童、次々の舎人などまで、整へ飾りたる見物、またなきさまなり。<BR>⏎
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 女御殿、対の上は、一つに奉りたり。次の御車には、明石の御方、尼君忍びて乗りたまへり。女御の御乳母、心知りにて乗りたり。方々のひとだまひ、上の御方の五つ、女御殿の五つ、明石の御あかれの三つ、目もあやに飾りたる装束、ありさま、言へばさらなり。さるは<BR>⏎
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262-263 御神楽の方には、いと多く仕うまつれり。内裏春宮院の殿上人、方々に分かれて、心寄せ仕うまつる。数も知らず、いろいろに尽くしたる上達部の御馬馬副随身小舎人童、次々の舎人などまで、整へ飾りたる見物、またなきさまなり。<BR>⏎
 女御殿、対の上は、一つに奉りたり。次の御車には、明石の御方、尼君忍びて乗りたまへり。女御の御乳母、心知りにて乗りたり。方々のひとだまひ、上の御方の五つ、女御殿の五つ、明石の御あかれの三つ、目もあやに飾りたる装束、ありさま、言へばさらなり。さるは<BR>⏎
d1362<P>⏎
cd2:1363-364 と院はのたまひけれど、<BR>⏎
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265 と院はのたまひけれど、<BR>⏎
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cd2:1367-368 と御方はしづめたまひけるを、残りの命うしろめたくて、かつがつものゆかしがりて、慕ひ参りたまふなりけり。さるべきにて、もとよりかく匂ひたまふ御身どもよりも、いみじかりける契り、あらはに思ひ知らるる人の御ありさまなり。<BR>⏎
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267 と御方はしづめたまひけるを、残りの命うしろめたくて、かつがつものゆかしがりて、慕ひ参りたまふなりけり。さるべきにて、もとよりかく匂ひたまふ御身どもよりも、いみじかりける契り、あらはに思ひ知らるる人の御ありさまなり。<BR>⏎
text35369 <A NAME="in25">[第五段 住吉社頭の東遊び]</A><BR>268 
d1370<P>⏎
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text35379 <A NAME="in26">[第六段 源氏、往時を回想]</A><BR>273 
d1380<P>⏎
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cd3:1384-386 「誰れかまた心を知りて住吉の<BR>⏎
  神代を経たる松にこと問ふ」<BR>⏎
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276 「誰れかまた心を知りて住吉の<BR>  神代を経たる松にこと問ふ」<BR>⏎
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cd3:1389-391 「住の江をいけるかひある渚とは<BR>⏎
  年経る尼も今日や知るらむ」<BR>⏎
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278 「住の江をいけるかひある渚とは<BR>  年経る尼も今日や知るらむ」<BR>⏎
cd3:1393-395 「昔こそまづ忘られね住吉の<BR>⏎
  神のしるしを見るにつけても」<BR>⏎
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280 「昔こそまづ忘られね住吉の<BR>  神のしるしを見るにつけても」<BR>⏎
d1397<P>⏎
text35398 <A NAME="in27">[第七段 終夜、神楽を奏す]</A><BR>282 
d1399<P>⏎
d1401<P>⏎
d1403<P>⏎
cd3:1404-406 「住の江の松に夜深く置く霜は<BR>⏎
  神の掛けたる木綿鬘かも」<BR>⏎
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285 「住の江の松に夜深く置く霜は<BR>  神の掛けたる木綿鬘かも」<BR>⏎
d1408<P>⏎
cd3:1409-411 「神人の手に取りもたる榊葉に<BR>⏎
  木綿かけ添ふる深き夜の霜」<BR>⏎
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287 「神人の手に取りもたる榊葉に<BR>  木綿かけ添ふる深き夜の霜」<BR>⏎
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cd3:1414-416 「祝子が木綿うちまがひ置く霜は<BR>⏎
  げにいちじるき神のしるしか」<BR>⏎
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289 「祝子が木綿うちまがひ置く霜は<BR>  げにいちじるき神のしるしか」<BR>⏎
d1418<P>⏎
text35419 <A NAME="in28">[第八段 明石一族の幸い]</A><BR>291 
d1420<P>⏎
cd2:1421-422 ほのぼのと明けゆくに、霜はいよいよ深くて、本末もたどたどしきまで、酔ひ過ぎにたる神楽おもてどもの、おのが顔をば知らで、おもしろきことに心はしみて、庭燎も影しめりたるに、なほ「<A HREF="#no9">万歳万歳</A><A NAME="te9">」</A>と、榊葉を取り返しつつ、祝ひきこゆる御世の末、思ひやるぞいとどしきや。<BR>⏎
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292 ほのぼのと明けゆくに、霜はいよいよ深くて、本末もたどたどしきまで、酔ひ過ぎにたる神楽おもてどもの、おのが顔をば知らで、おもしろきことに心はしみて、庭燎も影しめりたるに、なほ「<A HREF="#no9">万歳万歳</A><A NAME="te9">」</A>と、榊葉を取り返しつつ、祝ひきこゆる御世の末、思ひやるぞいとどしきや。<BR>⏎
d1424<P>⏎
d1426<P>⏎
d1428<P>⏎
d1430<P>⏎
d1432<P>⏎
text35433 <H4>第三章 朱雀院の物語 朱雀院の五十賀の計画</H4>298 
text35434 <A NAME="in31">[第一段 女三の宮と紫の上]</A><BR>299 
d1435<P>⏎
d1437<P>⏎
d1439<P>⏎
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cd2:1442-443 とたゆみなく思しわたれど、さかしきやうにや思さむとつつまれて、はかばかしくもえ聞こえたまはず。内裏の帝さへ、御心寄せことに聞こえたまへば、おろかに聞かれたてまつらむもいとほしくて、渡りたまふこと、やうやう等しきやうになりゆく。<BR>⏎
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303 とたゆみなく思しわたれど、さかしきやうにや思さむとつつまれて、はかばかしくもえ聞こえたまはず。内裏の帝さへ、御心寄せことに聞こえたまへば、おろかに聞かれたてまつらむもいとほしくて、渡りたまふこと、やうやう等しきやうになりゆく。<BR>⏎
d1445<P>⏎
text35446 <A NAME="in32">[第二段 花散里と玉鬘]</A><BR>305 
d1447<P>⏎
d1449<P>⏎
d1451<P>⏎
cd2:1452-453 姫宮のみぞ、同じさまに若くおほどきておはします。女御の君は、今は公ざまに思ひ放ちきこえたまひて、この宮をばいと心苦しく、幼からむ御女のやうに思ひはぐくみたてまつりたまふ。<BR>⏎
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308 姫宮のみぞ、同じさまに若くおほどきておはします。女御の君は、今は公ざまに思ひ放ちきこえたまひて、この宮をばいと心苦しく、幼からむ御女のやうに思ひはぐくみたてまつりたまふ。<BR>⏎
text35454 <A NAME="in33">[第三段 朱雀院の五十の賀の計画]</A><BR>309 
d1455<P>⏎
d1457<P>⏎
cd6:4458-463 「今はむげに世近くなりぬる心地して、もの心細きを、さらにこの世のこと顧みじと<A HREF="#k06">思ひ捨つれ</A><A NAME="t06">ど</A>、対面なむ今一度あらまほしきを、もし恨み残りもこそすれ、ことことしきさまならで渡りたまふべく」聞こえたまひければ、大殿も、<BR>⏎
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 「げにさるべきことなり。かかる御けしきなからむにてだに、進み参りたまふべきを。ましてかう待ちきこえたまひけるが、心苦しきこと」<BR>⏎
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 と参りたまふべきこと思しまうく。<BR>⏎
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311-314 「今はむげに世近くなりぬる心地して、もの心細きを、さらにこの世のこと顧みじと<A HREF="#k06">思ひ捨つれ</A><A NAME="t06">ど</A>、対面なむ今一度あらまほしきを、もし恨み残りもこそすれ、ことことしきさまならで渡りたまふべく」<BR>⏎
 
聞こえたまひければ、大殿も、<BR>⏎
 「げにさるべきことなり。かかる御けしきなからむにてだに、進み参りたまふべきを。ましてかう待ちきこえたまひけるが、心苦しきこと」<BR>⏎
 と参りたまふべきこと思しまうく。<BR>⏎
d1465<P>⏎
cd4:2466-469 と思しめぐらす。<BR>⏎
<P>⏎
 「このたび足りたまはむ年、若菜など調じてや」と思して、さまざまの御法服のこと、斎の<A HREF="#k07">御まうけの</A><A NAME="t07">し</A>つらひ、何くれとさまことに変はれることどもなれば、人の御心しつらひども入りつつ、思しめぐらす。<BR>⏎
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316-317 と思しめぐらす。<BR>⏎
 「このたび足りたまはむ年、若菜など調じてや」と思して、さまざまの御法服のこと、斎の<A HREF="#k07">御まうけの</A><A NAME="t07">し</A>つらひ、何くれとさまことに変はれることどもなれば、人の御心しつらひども入りつつ、思しめぐらす。<BR>⏎
d1471<P>⏎
d1473<P>⏎
text35474 <A NAME="in34">[第四段 女三の宮に琴を伝授]</A><BR>320 
d1475<P>⏎
d1477<P>⏎
d1479<P>⏎
cd4:2480-483 としりうごとに聞こえたまひけるを、内裏にも聞こし召して、<BR>⏎
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 「げにさりとも、けはひことならむかし。院の御前にて、手尽くしたまはむついでに、参り来て聞かばや」<BR>⏎
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323-324 としりうごとに聞こえたまひけるを、内裏にも聞こし召して、<BR>⏎
 「げにさりとも、けはひことならむかし。院の御前にて、手尽くしたまはむついでに、参り来て聞かばや」<BR>⏎
d1485<P>⏎
d1487<P>⏎
cd2:1488-489 といとほしく思して、このころぞ御心とどめて教へきこえたまふ。<BR>⏎
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327 といとほしく思して、このころぞ御心とどめて教へきこえたまふ。<BR>⏎
d1491<P>⏎
d1493<P>⏎
cd2:1494-495 とて対にも、そのころは御暇聞こえたまひて、明け暮れ教へきこえたまふ。<BR>⏎
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330 とて対にも、そのころは御暇聞こえたまひて、明け暮れ教へきこえたまふ。<BR>⏎
text35496 <A NAME="in35">[第五段 明石女御、懐妊して里下り]</A><BR>331 
d1497<P>⏎
d1499<P>⏎
d1501<P>⏎
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d1507<P>⏎
text35508 <A NAME="in36">[第六段 朱雀院の御賀を二月十日過ぎと決定]</A><BR>338 
d1509<P>⏎
d1511<P>⏎
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d1515<P>⏎
cd2:1516-517 そのかみよりも、またこのころの若き人びとの、されよしめき過ぐすに、はた浅くなりにたるべし。琴はたましてさらにまねぶ人なくなりにたりとか。この御琴の音ばかりだに伝へたる人、をさをさあらじ」<BR>⏎
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342 そのかみよりも、またこのころの若き人びとの、されよしめき過ぐすに、はた浅くなりにたるべし。琴はたましてさらにまねぶ人なくなりにたりとか。この御琴の音ばかりだに伝へたる人、をさをさあらじ」<BR>⏎
d1519<P>⏎
cd2:1520-521 二十一二ばかりになりたまへど、なほいといみじく片なりに、きびはなる心地して、細くあえかにうつくしくのみ見えたまふ。<BR>⏎
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344 二十一二ばかりになりたまへど、なほいといみじく片なりに、きびはなる心地して、細くあえかにうつくしくのみ見えたまふ。<BR>⏎
d1523<P>⏎
cd6:3524-529 とことに触れて教へきこえたまふ。<BR>⏎
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 「げにかかる御後見なくては、ましていはけなくおはします御ありさま、隠れなからまし」<BR>⏎
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 と人びとも見たてまつる。<BR>⏎
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346-348 とことに触れて教へきこえたまふ。<BR>⏎
 「げにかかる御後見なくては、ましていはけなくおはします御ありさま、隠れなからまし」<BR>⏎
 と人びとも見たてまつる。<BR>⏎
text35530 <H4>第四章 光る源氏の物語 六条院の女楽</H4>349 
text35531 <A NAME="in41">[第一段 六条院の女楽]</A><BR>350 
d1532<P>⏎
d1534<P>⏎
d1536<P>⏎
cd6:3537-542 とて寝殿に渡したてまつりたまふ。<BR>⏎
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 御供に、我も我もと、ものゆかしがりて参う上らまほしがれど、こなたに遠きをば、選りとどめさせたまひて、すこしねびたれど、よしある限り選りてさぶらはせたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
 童女は、容貌すぐれたる四人、赤色に桜の汗衫、薄色の織物の衵、浮紋の表の袴、紅の擣ちたるさま、もてなしすぐれたる限りを召したり。女御の御方にも、御しつらひなど、いとどあらたまれるころのくもりなきに、おのおの挑ましく、尽くしたるよそほひども、鮮やかに二なし。<BR>⏎
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353-355 とて寝殿に渡したてまつりたまふ。<BR>⏎
 御供に、我も我もと、ものゆかしがりて参う上らまほしがれど、こなたに遠きをば、選りとどめさせたまひて、すこしねびたれど、よしある限り選りてさぶらはせたまふ。<BR>⏎
 童女は、容貌すぐれたる四人、赤色に桜の汗衫、薄色の織物の衵、浮紋の表の袴、紅の擣ちたるさま、もてなしすぐれたる限りを召したり。女御の御方にも、御しつらひなど、いとどあらたまれるころのくもりなきに、おのおの挑ましく、尽くしたるよそほひども、鮮やかに二なし。<BR>⏎
d1544<P>⏎
d1546<P>⏎
text35547 <A NAME="in42">[第二段 孫君たちと夕霧を召す]</A><BR>358 
d1548<P>⏎
d1550<P>⏎
d1552<P>⏎
cd2:1553-554 「箏の御琴は、ゆるぶとなけれど、なほかく物に合はする折の調べにつけて、琴柱の立処乱るるものなり。よくその心しらひ調ふべきを、女はえ張りしづめじ。なほ大将をこそ召し寄せつべかめれ。この笛吹ども、まだいと幼げにて、拍子調へむ頼み強からず」<BR>⏎
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361 「箏の御琴は、ゆるぶとなけれど、なほかく物に合はする折の調べにつけて、琴柱の立処乱るるものなり。よくその心しらひ調ふべきを、女はえ張りしづめじ。なほ大将をこそ召し寄せつべかめれ。この笛吹ども、まだいと幼げにて、拍子調へむ頼み強からず」<BR>⏎
d1556<P>⏎
d1558<P>⏎
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cd2:1563-564 となまいとほしく思す。<BR>⏎
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366 となまいとほしく思す。<BR>⏎
text35565 <A NAME="in43">[第三段 夕霧、箏を調絃す]</A><BR>367 
d1566<P>⏎
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d1574<P>⏎
cd2:1575-576 「なほ掻き合はせばかりは、手一つ、すさまじからでこそ」<BR>⏎
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372 「なほ掻き合はせばかりは、手一つ、すさまじからでこそ」<BR>⏎
d1578<P>⏎
cd4:2579-582 「さらに今日の御遊びのさしいらへに、交じらふばかりの手づかひなむ、おぼえずはべりける」<BR>⏎
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 とけしきばみたまふ。<BR>⏎
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374-375 「さらに今日の御遊びのさしいらへに、交じらふばかりの手づかひなむ、おぼえずはべりける」<BR>⏎
 とけしきばみたまふ。<BR>⏎
d1584<P>⏎
d1586<P>⏎
d1588<P>⏎
text35589 <A NAME="in44">[第四段 女四人による合奏]</A><BR>379 
d1590<P>⏎
d1592<P>⏎
d1594<P>⏎
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d1598<P>⏎
text35599 <A NAME="in45">[第五段 女四人を花に喩える]</A><BR>384 
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cd2:1609-610 さるはいとふくらかなるほどになりたまひて、悩ましくおぼえたまひければ、御琴もおしやりて、脇息におしかかりたまへり。ささやかになよびかかりたまへるに、御脇息は例のほどなれば、およびたる心地して、ことさらに小さく作らばやと見ゆるぞ、いとあはれげにおはしける。<BR>⏎
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389 さるはいとふくらかなるほどになりたまひて、悩ましくおぼえたまひければ、御琴もおしやりて、脇息におしかかりたまへり。ささやかになよびかかりたまへるに、御脇息は例のほどなれば、およびたる心地して、ことさらに小さく作らばやと見ゆるぞ、いとあはれげにおはしける。<BR>⏎
d1612<P>⏎
d1614<P>⏎
cd2:1615-616 柳の織物の細長、萌黄にやあらむ、小袿着て、羅の裳のはかなげなる引きかけて、ことさら卑下したれど、けはひ思ひなしも、心にくくあなづらはしからず。<BR>⏎
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392 柳の織物の細長、萌黄にやあらむ、小袿着て、羅の裳のはかなげなる引きかけて、ことさら卑下したれど、けはひ思ひなしも、心にくくあなづらはしからず。<BR>⏎
d1618<P>⏎
text35619 <A NAME="in46">[第六段 夕霧の感想]</A><BR>394 
d1620<P>⏎
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text35627 <H4>第五章 光る源氏の物語 源氏の音楽論</H4>398 
text35628 <A NAME="in51">[第一段 音楽の春秋論]</A><BR>399 
d1629<P>⏎
d1631<P>⏎
cd2:1632-633 「心もとなしや、春の朧月夜よ。秋のあはれはた、かうやうなる物の音に、虫の声縒り合はせたる、ただならず、こよなく響き添ふ心地すかし」<BR>⏎
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401 「心もとなしや、春の朧月夜よ。秋のあはれはた、かうやうなる物の音に、虫の声縒り合はせたる、ただならず、こよなく響き添ふ心地すかし」<BR>⏎
d1635<P>⏎
d1637<P>⏎
d1639<P>⏎
cd2:1640-641 <A HREF="#no14">女は春をあはれぶ</A><A NAME="te14">と</A>、古き人の言ひ置きはべりける。げにさなむはべりける。なつかしく物のととのほることは、春の夕暮こそことにはべりけれ」<BR>⏎
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405 <A HREF="#no14">女は春をあはれぶ</A><A NAME="te14">と</A>、古き人の言ひ置きはべりける。げにさなむはべりける。なつかしく物のととのほることは、春の夕暮こそことにはべりけれ」<BR>⏎
d1643<P>⏎
cd2:1644-645 「いなこの定めよ。いにしへより人の分きかねたることを、末の世に下れる人の、えあきらめ果つまじくこそ。物の調べ、曲のものどもはしも、げに律をば次のものにしたるは、さもありかし」<BR>⏎
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407 「いなこの定めよ。いにしへより人の分きかねたることを、末の世に下れる人の、えあきらめ果つまじくこそ。物の調べ、曲のものどもはしも、げに律をば次のものにしたるは、さもありかし」<BR>⏎
d1647<P>⏎
d1649<P>⏎
cd2:1650-651 年ごろかく埋れて過ぐすに、耳などもすこしひがひがしくなりにたるにやあらむ、口惜しうなむ。あやしく、人の才、はかなくとりすることども、ものの栄ありてまさる所なる。その御前の御遊びなどに、ひときざみに選ばるる人びと、それかれといかにぞ」<BR>⏎
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410 年ごろかく埋れて過ぐすに、耳などもすこしひがひがしくなりにたるにやあらむ、口惜しうなむ。あやしく、人の才、はかなくとりすることども、ものの栄ありてまさる所なる。その御前の御遊びなどに、ひときざみに選ばるる人びと、それかれといかにぞ」<BR>⏎
d1653<P>⏎
d1655<P>⏎
cd2:1656-657 げにかたはらなきを、今宵うけたまはる物の音どもの、皆ひとしく耳おどろきはべるは。なほかくわざともあらぬ御遊びと、かねて思うたまへたゆみける心の騒ぐにやはべらむ。唱歌など、いと仕うまつりにくくなむ。<BR>⏎
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413 げにかたはらなきを、今宵うけたまはる物の音どもの、皆ひとしく耳おどろきはべるは。なほかくわざともあらぬ御遊びと、かねて思うたまへたゆみける心の騒ぐにやはべらむ。唱歌など、いと仕うまつりにくくなむ。<BR>⏎
d1659<P>⏎
cd10:5660-669 とめできこえたまふ。<BR>⏎
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 「いとさことことしき際にはあらぬを、わざとうるはしくも取りなさるるかな」<BR>⏎
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 とてしたり顔にほほ笑みたまふ。<BR>⏎
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 「げにけしうはあらぬ弟子どもなりかし。琵琶はしも、<A HREF="#k12">ここに</A><A NAME="t12">口</A>入るべきことまじらぬを、さいへど、物のけはひ異なるべし。おぼえぬ所にて聞き始めたりしに、めづらしき物の声かなとなむおぼえしかど、その折よりは、またこよなく優りにたるをや」<BR>⏎
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 とせめて我かしこにかこちなしたまへば、女房などは、すこしつきしろふ。<BR>⏎
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415-419 とめできこえたまふ。<BR>⏎
 「いとさことことしき際にはあらぬを、わざとうるはしくも取りなさるるかな」<BR>⏎
 とてしたり顔にほほ笑みたまふ。<BR>⏎
 「げにけしうはあらぬ弟子どもなりかし。琵琶はしも、<A HREF="#k12">ここに</A><A NAME="t12">口</A>入るべきことまじらぬを、さいへど、物のけはひ異なるべし。おぼえぬ所にて聞き始めたりしに、めづらしき物の声かなとなむおぼえしかど、その折よりは、またこよなく優りにたるをや」<BR>⏎
 とせめて我かしこにかこちなしたまへば、女房などは、すこしつきしろふ。<BR>⏎
text35670 <A NAME="in52">[第二段 琴の論]</A><BR>420 
d1671<P>⏎
d1673<P>⏎
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d1677<P>⏎
cd6:3678-683 かく限りなきものにて、そのままに習ひ取る人のありがたく、世の末なれば<A HREF="#k13">にや</A><A NAME="t13">、</A>いづこのそのかみの片端にかはあらむ。されどなほ、かの鬼神の耳とどめ、かたぶきそめにけるものなればにや、なまなまにまねびて、思ひかなはぬたぐひありけるのち、これを弾く人、よからずとかいふ難をつけて、うるさきままに、今はをさをさ伝ふる人なしとか。いと口惜しきことにこそあれ。<BR>⏎
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 琴の音を離れては、何琴をか物を調へ知るしるべとはせむ。げによろづのこと衰ふるさまは、やすくなりゆく世の中に、一人出で離れて、心を立てて、唐土、高麗と、この世に惑ひありき、親子を離れむことは、世の中にひがめる者になりぬべし。<BR>⏎
<P>⏎
 などかなのめにて、なほこの道を通はし知るばかりの端をば、知りおかざらむ。調べ一つに手を弾き尽くさむことだに、はかりもなきものななり。いはむや、多くの調べ、わづらはしき曲多かるを、心に入りし盛りには、世にありと<A HREF="#k14">あり</A><A NAME="t14">、</A>ここに伝はりたる譜といふものの限りをあまねく見合はせて、のちのちは、師とすべき人もなくてなむ、好み習ひしかど、なほ上りての人には、当たるべくもあらじをや。ましてこの後といひては、伝はるべき末もなき、いとあはれになむ」<BR>⏎
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424-426 かく限りなきものにて、そのままに習ひ取る人のありがたく、世の末なれば<A HREF="#k13">にや</A><A NAME="t13">、</A>いづこのそのかみの片端にかはあらむ。されどなほ、かの鬼神の耳とどめ、かたぶきそめにけるものなればにや、なまなまにまねびて、思ひかなはぬたぐひありけるのち、これを弾く人、よからずとかいふ難をつけて、うるさきままに、今はをさをさ伝ふる人なしとか。いと口惜しきことにこそあれ。<BR>⏎
 琴の音を離れては、何琴をか物を調へ知るしるべとはせむ。げによろづのこと衰ふるさまは、やすくなりゆく世の中に、一人出で離れて、心を立てて、唐土、高麗と、この世に惑ひありき、親子を離れむことは、世の中にひがめる者になりぬべし。<BR>⏎
 などかなのめにて、なほこの道を通はし知るばかりの端をば、知りおかざらむ。調べ一つに手を弾き尽くさむことだに、はかりもなきものななり。いはむや、多くの調べ、わづらはしき曲多かるを、心に入りし盛りには、世にありと<A HREF="#k14">あり</A><A NAME="t14">、</A>ここに伝はりたる譜といふものの限りをあまねく見合はせて、のちのちは、師とすべき人もなくてなむ、好み習ひしかど、なほ上りての人には、当たるべくもあらじをや。ましてこの後といひては、伝はるべき末もなき、いとあはれになむ」<BR>⏎
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text35690 <A NAME="in53">[第三段 源氏、葛城を謡う]</A><BR>430 
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cd2:1696-697 返り声に、皆調べ変はりて、律の掻き合はせども、なつかしく今めきたるに、琴は、五個の調べ、あまたの手の中に、心とどめてかならず弾きたまふべき五六の<A HREF="#k16">発剌</A><A NAME="t16">を</A>、いとおもしろく澄まして弾きたまふ。さらにかたほならず、いとよく澄みて聞こゆ。<BR>⏎
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433 返り声に、皆調べ変はりて、律の掻き合はせども、なつかしく今めきたるに、琴は、五個の調べ、あまたの手の中に、心とどめてかならず弾きたまふべき五六の<A HREF="#k16">発剌</A><A NAME="t16">を</A>、いとおもしろく澄まして弾きたまふ。さらにかたほならず、いとよく澄みて聞こゆ。<BR>⏎
d1699<P>⏎
text35700 <A NAME="in54">[第四段 女楽終了、禄を賜う]</A><BR>435 
d1701<P>⏎
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d1705<P>⏎
cd2:1706-707 とて笙の笛吹く君に、土器さしたまひて、御衣脱ぎてかづけたまふ。横笛の君には、こなたより、織物の細長に、袴などことことしからぬさまに、けしきばかりにて、大将の君には、宮の御方より、杯さし出でて、宮の御装束一領かづけたてまつりたまふを、大殿、<BR>⏎
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438 とて笙の笛吹く君に、土器さしたまひて、御衣脱ぎてかづけたまふ。横笛の君には、こなたより、織物の細長に、袴などことことしからぬさまに、けしきばかりにて、大将の君には、宮の御方より、杯さし出でて、宮の御装束一領かづけたてまつりたまふを、大殿、<BR>⏎
d1709<P>⏎
d1711<P>⏎
text35712 <A NAME="in55">[第五段 夕霧、わが妻を比較して思う]</A><BR>441 
d1713<P>⏎
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text35718 <H4>第六章 紫の上の物語 出家願望と発病</H4>444 
text35719 <A NAME="in61">[第一段 源氏、紫の上と語る]</A><BR>445 
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cd2:1727-728 「初めつ方、あなたにてほの聞きしは、いかにぞやありしを、いとこよなくなりにけり。いかでかはかく異事なく教へきこえたまはむには」<BR>⏎
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449 「初めつ方、あなたにてほの聞きしは、いかにぞやありしを、いとこよなくなりにけり。いかでかはかく異事なく教へきこえたまはむには」<BR>⏎
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d1734<P>⏎
cd2:1735-736 「昔世づかぬほどを、扱ひ思ひしさま、その世には暇もありがたくて、心のどかに取りわき教へきこゆることなどもなく、近き世にも、何となく次々、紛れつつ過ぐして、聞き扱はぬ御琴の音の、出で栄えしたりしも、面目ありて、大将の、いたくかたぶきおどろきたりしけしきも、思ふやうにうれしくこそありしか」<BR>⏎
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453 「昔世づかぬほどを、扱ひ思ひしさま、その世には暇もありがたくて、心のどかに取りわき教へきこゆることなどもなく、近き世にも、何となく次々、紛れつつ過ぐして、聞き扱はぬ御琴の音の、出で栄えしたりしも、面目ありて、大将の、いたくかたぶきおどろきたりしけしきも、思ふやうにうれしくこそありしか」<BR>⏎
d1738<P>⏎
text35739 <A NAME="in62">[第二段 紫の上、三十七歳の厄年]</A><BR>455 
d1740<P>⏎
d1742<P>⏎
d1744<P>⏎
cd2:1745-746 「さるべき御祈りなど、常よりも取り分きて、今年はつつしみたまへ。もの騒がしくのみありて、思ひいたらぬこともあらむを、なほ思しめぐらして、大きなることどももしたまはば、おのづからせさせてむ。故僧都のものしたまはずなりにたるこそ、いと口惜しけれ。おほかたにてうち頼まむにも、いとかしこかりし人を」<BR>⏎
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458 「さるべき御祈りなど、常よりも取り分きて、今年はつつしみたまへ。もの騒がしくのみありて、思ひいたらぬこともあらむを、なほ思しめぐらして、大きなることどももしたまはば、おのづからせさせてむ。故僧都のものしたまはずなりにたるこそ、いと口惜しけれ。おほかたにてうち頼まむにも、いとかしこかりし人を」<BR>⏎
d1748<P>⏎
text35749 <A NAME="in63">[第三段 源氏、半生を語る]</A><BR>460 
d1750<P>⏎
cd4:2751-754 「みづからは、幼くより、人に異なるさまにて、ことことしく生ひ出でて、今の世のおぼえありさま、来し方にたぐひ少なくなむありける。されどまた、世にすぐれて悲しきめを見る方も、人にはまさりけりかし。<BR>⏎
<P>⏎
 まづは思ふ人にさまざま後れ、残りとまれる齢の末にも、飽かず悲しと思ふこと多く、あぢきなくさるまじきことにつけても、あやしくもの思はしく、心に飽かずおぼゆること添ひたる身にて過ぎぬれば、それに代へてや、思ひしほどよりは、今までもながらふるならむとなむ、思ひ知らるる。<BR>⏎
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461-462 「みづからは、幼くより、人に異なるさまにて、ことことしく生ひ出でて、今の世のおぼえありさま、来し方にたぐひ少なくなむありける。されどまた、世にすぐれて悲しきめを見る方も、人にはまさりけりかし。<BR>⏎
 まづは思ふ人にさまざま後れ、残りとまれる齢の末にも、飽かず悲しと思ふこと多く、あぢきなくさるまじきことにつけても、あやしくもの思はしく、心に飽かずおぼゆること添ひたる身にて過ぎぬれば、それに代へてや、思ひしほどよりは、今までもながらふるならむとなむ、思ひ知らるる。<BR>⏎
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cd2:1765-766 とて残り多げなるけはひ、恥づかしげなり。<BR>⏎
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468 とて残り多げなるけはひ、恥づかしげなり。<BR>⏎
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cd2:1771-772 「それはしもあるまじきことになむ。さてかけ離れたまひなむ世に残りては、何のかひかあらむ。ただかく何となくて過ぐる年月なれど、明け暮れの隔てなきうれしさのみこそ、ますことなくおぼゆれ。なほ思ふさま異なる心のほどを見果てたまへ」<BR>⏎
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471 「それはしもあるまじきことになむ。さてかけ離れたまひなむ世に残りては、何のかひかあらむ。ただかく何となくて過ぐる年月なれど、明け暮れの隔てなきうれしさのみこそ、ますことなくおぼゆれ。なほ思ふさま異なる心のほどを見果てたまへ」<BR>⏎
d1774<P>⏎
text35775 <A NAME="in64">[第四段 源氏、関わった女方を語る]</A><BR>473 
d1776<P>⏎
d1778<P>⏎
d1780<P>⏎
cd2:1781-782 またわが過ちにのみもあらざりけりなど、心ひとつになむ思ひ出づる。うるはしく重りかにて、そのことの飽かぬかなとおぼゆることもなかりき。ただいとあまり乱れたるところなく、すくすくしく、すこしさかしとやいふべかりけむと、思ふには頼もしく、見るにはわづらはしかりし人ざまになむ。<BR>⏎
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476 またわが過ちにのみもあらざりけりなど、心ひとつになむ思ひ出づる。うるはしく重りかにて、そのことの飽かぬかなとおぼゆることもなかりき。ただいとあまり乱れたるところなく、すくすくしく、すこしさかしとやいふべかりけむと、思ふには頼もしく、見るにはわづらはしかりし人ざまになむ。<BR>⏎
d1784<P>⏎
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cd2:1789-790 と来し方の人の御上、すこしづつのたまひ出でて、<BR>⏎
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480 と来し方の人の御上、すこしづつのたまひ出でて、<BR>⏎
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cd2:1795-796 「異人は見ねば知らぬを、これはまほならねど、おのづからけしき見る折々もあるに、いとうちとけにくく、心恥づかしきありさましるきを、いとたとしへなきうらなさを、いかに見たまふらむと、つつましけれど、女御は、おのづから思し許すらむとのみ思ひてなむ」<BR>⏎
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483 「異人は見ねば知らぬを、これはまほならねど、おのづからけしき見る折々もあるに、いとうちとけにくく、心恥づかしきありさましるきを、いとたとしへなきうらなさを、いかに見たまふらむと、つつましけれど、女御は、おのづから思し許すらむとのみ思ひてなむ」<BR>⏎
d1798<P>⏎
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d1802<P>⏎
cd2:1803-804 とほほ笑みて<A HREF="#k19">聞こえ</A><A NAME="t19">た</A>まふ。<BR>⏎
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487 とほほ笑みて<A HREF="#k19">聞こえ</A><A NAME="t19">た</A>まふ。<BR>⏎
d1806<P>⏎
cd6:3807-812 とて夕つ方渡りたまひぬ。我に心置く人やあらむとも思したらず、いといたく若びて、ひとへに御琴に心入れておはす。<BR>⏎
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 「今は暇許してうち休ませたまへかし。物の師は心ゆかせてこそ。いと苦しかりつる日ごろのしるしありて、うしろやすくなりたまひにけり」<BR>⏎
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 とて御琴どもおしやりて、大殿籠もりぬ。<BR>⏎
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489-491 とて夕つ方渡りたまひぬ。我に心置く人やあらむとも思したらず、いといたく若びて、ひとへに御琴に心入れておはす。<BR>⏎
 「今は暇許してうち休ませたまへかし。物の師は心ゆかせてこそ。いと苦しかりつる日ごろのしるしありて、うしろやすくなりたまひにけり」<BR>⏎
 とて御琴どもおしやりて、大殿籠もりぬ。<BR>⏎
text35813 <A NAME="in65">[第五段 紫の上、発病す]</A><BR>492 
d1814<P>⏎
d1816<P>⏎
cd2:1817-818 「かく世のたとひに言ひ集めたる昔語りどもにも、あだなる男、色好み、二心ある人にかかづらひたる女、かやうなることを言ひ集めたるにも、<A HREF="#no17">つひに寄る方</A><A NAME="te17">あ</A>りてこそあめれ。あやしく、浮きても過ぐしつるありさまかな。げにのたまひつるやうに、人より異なる宿世もありける身ながら、人の忍びがたく飽かぬことにするもの思ひ離れぬ身にてや止みなむとすらむ。あぢきなくもあるかな」<BR>⏎
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494 「かく世のたとひに言ひ集めたる昔語りどもにも、あだなる男、色好み、二心ある人にかかづらひたる女、かやうなることを言ひ集めたるにも、<A HREF="#no17">つひに寄る方</A><A NAME="te17">あ</A>りてこそあめれ。あやしく、浮きても過ぐしつるありさまかな。げにのたまひつるやうに、人より異なる宿世もありける身ながら、人の忍びがたく飽かぬことにするもの思ひ離れぬ身にてや止みなむとすらむ。あぢきなくもあるかな」<BR>⏎
d1820<P>⏎
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d1828<P>⏎
text35829 <A NAME="in66">[第六段 朱雀院の五十賀、延期される]</A><BR>500 
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text35847 <A NAME="in67">[第七段 紫の上、二条院に転地療養]</A><BR>509 
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d1850<P>⏎
cd2:1851-852 冷泉院も聞こし召し嘆く。この人亡せたまはば、院もかならず世を背く御本意遂げたまひてむと、大将の君なども、心を尽くして見たてまつり扱ひたまふ。<BR>⏎
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511 冷泉院も聞こし召し嘆く。この人亡せたまはば、院もかならず世を背く御本意遂げたまひてむと、大将の君なども、心を尽くして見たてまつり扱ひたまふ。<BR>⏎
d1854<P>⏎
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d1858<P>⏎
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cd2:1861-862 とのみ惜しみきこえたまふに、げにいと頼みがたげに弱りつつ、限りのさまに見えたまふ折々多かるを、いかさまにせむと思し惑ひつつ、宮の御方にも、あからさまに渡りたまはず。御琴どももすさまじくて、皆引き籠められ、院の内の人びとは、皆ある限り二条の院に集ひ参りて、この院には、火を消ちたるやうにて、ただ女どちおはして、<A HREF="#k21">人ひとりの</A><A NAME="t21">御</A>けはひなりけりと見ゆ。<BR>⏎
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516 とのみ惜しみきこえたまふに、げにいと頼みがたげに弱りつつ、限りのさまに見えたまふ折々多かるを、いかさまにせむと思し惑ひつつ、宮の御方にも、あからさまに渡りたまはず。御琴どももすさまじくて、皆引き籠められ、院の内の人びとは、皆ある限り二条の院に集ひ参りて、この院には、火を消ちたるやうにて、ただ女どちおはして、<A HREF="#k21">人ひとりの</A><A NAME="t21">御</A>けはひなりけりと見ゆ。<BR>⏎
text35863 <A NAME="in68">[第八段 明石女御、看護のため里下り]</A><BR>517 
d1864<P>⏎
d1866<P>⏎
d1868<P>⏎
cd2:1869-870 と苦しき御心地にも聞こえたまふ。若宮の、いとうつくしうておはしますを見たてまつりたまひても、いみじく泣きたまひて、<BR>⏎
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520 と苦しき御心地にも聞こえたまふ。若宮の、いとうつくしうておはしますを見たてまつりたまひても、いみじく泣きたまひて、<BR>⏎
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cd4:2877-880 など仏神にも、この御心ばせのありがたく、罪軽きさまを申し明らめさせたまふ。<BR>⏎
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 御修法の阿闍梨たち、夜居などにても、近くさぶらふ限りのやむごとなき僧などは、いとかく思し惑へる御けはひを聞くに、いといみじく心苦しければ、心を起こして祈りきこゆ。すこしよろしきさまに見えたまふ時、五六日うちまぜつつ、また重りわづらひたまふこと、いつとなくて月日を経たまへば、「なほいかにおはすべきにか。よかるまじき御心地にや」と、思し嘆く。<BR>⏎
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524-525 など仏神にも、この御心ばせのありがたく、罪軽きさまを申し明らめさせたまふ。<BR>⏎
 御修法の阿闍梨たち、夜居などにても、近くさぶらふ限りのやむごとなき僧などは、いとかく思し惑へる御けはひを聞くに、いといみじく心苦しければ、心を起こして祈りきこゆ。すこしよろしきさまに見えたまふ時、五六日うちまぜつつ、また重りわづらひたまふこと、いつとなくて月日を経たまへば、「なほいかにおはすべきにか。よかるまじき御心地にや」と、思し嘆く。<BR>⏎
d1882<P>⏎
text35883 <H4>第七章 柏木の物語 女三の宮密通の物語</H4>527 
text35884 <A NAME="in71">[第一段 柏木、女二の宮と結婚]</A><BR>528 
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cd2:1890-891 なほかの下の心忘られず、小侍従といふ語らひ人は、宮の御侍従の乳母の娘なりけり。その乳母の姉ぞ、かの督の君の御乳母なりければ、早くより気近く聞きたてまつりて、まだ宮幼くおはしましし時より、いと<A HREF="#k24">きよらに</A><A NAME="t24">な</A>むおはします、帝のかしづきたてまつりたまふさまなど、聞きおきたてまつりて、かかる思ひもつきそめたるなりけり。<BR>⏎
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531 なほかの下の心忘られず、小侍従といふ語らひ人は、宮の御侍従の乳母の娘なりけり。その乳母の姉ぞ、かの督の君の御乳母なりければ、早くより気近く聞きたてまつりて、まだ宮幼くおはしましし時より、いと<A HREF="#k24">きよらに</A><A NAME="t24">な</A>むおはします、帝のかしづきたてまつりたまふさまなど、聞きおきたてまつりて、かかる思ひもつきそめたるなりけり。<BR>⏎
text35892 <A NAME="in72">[第二段 柏木、小侍従を語らう]</A><BR>532 
d1893<P>⏎
cd2:1894-895 かくて院も離れおはしますほど、人目少なくしめやかならむを推し量りて、小侍従を迎へ取りつつ、いみじう語らふ。<BR>⏎
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533 かくて院も離れおはしますほど、人目少なくしめやかならむを推し量りて、小侍従を迎へ取りつつ、いみじう語らふ。<BR>⏎
d1897<P>⏎
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d1901<P>⏎
cd7:4902-908 とのたまはせけるを伝へ聞きしに。いとほしくも、口惜しくも、いかが思ひ乱るる。<BR>⏎
 げに同じ御筋とは尋ねきこえしかど、それはそれとこそおぼゆるわざなりけれ」<BR>⏎
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 とうちうめきたまへば、小侍従、<BR>⏎
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 「いであな、おほけな。それをそれとさし置きたてまつりたまひて、またいかやうに限りなき御心ならむ」<BR>⏎
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537-540 とのたまはせけるを伝へ聞きしに。いとほしくも、口惜しくも、いかが思ひ乱るる。<BR>⏎
 げに同じ御筋とは尋ねきこえしかど、それはそれとこそおぼゆるわざなりけれ」<BR>⏎
 とうちうめきたまへば、小侍従、<BR>⏎
 「いであな、おほけな。それをそれとさし置きたてまつりたまひて、またいかやうに限りなき御心ならむ」<BR>⏎
d1910<P>⏎
cd2:1911-912 「さこそはありけれ。宮にかたじけなく聞こえさせ及びけるさまは、院にも内裏にも聞こし召しけり。などてかはさてもさぶらはざらましとなむ、ことのついでにはのたまはせける。いでやただ今すこしの御いたはりあらましかば」<BR>⏎
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542 「さこそはありけれ。宮にかたじけなく聞こえさせ及びけるさまは、院にも内裏にも聞こし召しけり。などてかはさてもさぶらはざらましとなむ、ことのついでにはのたまはせける。いでやただ今すこしの御いたはりあらましかば」<BR>⏎
d1914<P>⏎
d2916-917
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cd5:1919-923</A>⏎
<p><A HREF="#k25">
 「今はよし。過ぎにし</A></p>⏎
<P><
A NAME="t25">方</A>をば聞こえじや。ただかくありがたきものの隙に、気近きほどにて、この<A HREF="#k26">心</A><A NAME="t26">の</A>うちに思ふことの端、すこし聞こえさせつべくたばかりたまへ。おほけなき心は、すべてよし見たまへ、いと恐ろしければ、思ひ離れてはべり」<BR>⏎

<P>⏎
546 「今はよし。過ぎにし</A><A NAME="t25">方</A>をば聞こえじや。ただかくありがたきものの隙に、気近きほどにて、この<A HREF="#k26">心</A><A NAME="t26">の</A>うちに思ふことの端、すこし聞こえさせつべくたばかりたまへ。おほけなき心は、すべてよし見たまへ、いと恐ろしければ、思ひ離れてはべり」<BR>⏎
d2925-926
<P>⏎
cd3:1928-930 とはちふく。<BR>⏎

<P>⏎
549 とはちふく。<BR>⏎
text35931 <A NAME="in73">[第三段 小侍従、手引きを承諾]</A><BR>550 
d2932-933
<P>⏎
cd3:1934-936 「いであな、<A HREF="#k27">聞きにく</A><A NAME="t27">。</A>あまりこちたくものをこそ言ひなしたまふべけれ。世はいと定めなきものを、女御、后も、あるやうありて、ものしたまふたぐひなくやは。ましてその御ありさまよ。思へば、いとたぐひなくめでたけれど、うちうちは心やましきことも多かるらむ。<BR>⏎

<P>⏎
551 「いであな、<A HREF="#k27">聞きにく</A><A NAME="t27">。</A>あまりこちたくものをこそ言ひなしたまふべけれ。世はいと定めなきものを、女御、后も、あるやうありて、ものしたまふたぐひなくやは。ましてその御ありさまよ。思へば、いとたぐひなくめでたけれど、うちうちは心やましきことも多かるらむ。<BR>⏎
d2938-939
<P>⏎
d2941-942
<P>⏎
cd6:2943-948 「人に落とされたまへる御ありさまとて、めでたき方に改めたまふべきにやははべらむ。これは世の常の御ありさまにもはべらざめり。ただ御後見なくて漂はしくおはしまさむよりは、親ざまに、と譲りきこえたまひしかば、かたみにさこそ思ひ交はしきこえさせたまひためれ。あいなき御落としめ言になむ」<BR>⏎

<P>⏎
 と果て果ては腹立つを、よろづに言ひこしらへて、<BR>⏎

<P>⏎
554-555 「人に落とされたまへる御ありさまとて、めでたき方に改めたまふべきにやははべらむ。これは世の常の御ありさまにもはべらざめり。ただ御後見なくて漂はしくおはしまさむよりは、親ざまに、と譲りきこえたまひしかば、かたみにさこそ思ひ交はしきこえさせたまひためれ。あいなき御落としめ言になむ」<BR>⏎
 と果て果ては腹立つを、よろづに言ひこしらへて、<BR>⏎
d2950-951
<P>⏎
cd9:3952-960 といみじき誓言をしつつのたまへば、しばしこそ、いとあるまじきことに言ひ返しけれ、もの深からぬ若人は、人のかく身に代へていみじく思ひのたまふを、え否び果てで、<BR>⏎

<P>⏎
 「もしさりぬべき隙あらば、たばかりはべらむ。院のおはしまさぬ夜は、御帳のめぐりに人多くさぶらひて、御座のほとりに、さるべき人かならずさぶらひたまへば、いかなる折をかは、隙を見つけはべるべからむ」<BR>⏎

<P>⏎
 とわびつつ参りぬ。<BR>⏎

<P>⏎
557-559 といみじき誓言をしつつのたまへば、しばしこそ、いとあるまじきことに言ひ返しけれ、もの深からぬ若人は、人のかく身に代へていみじく思ひのたまふを、え否び果てで、<BR>⏎
 「もしさりぬべき隙あらば、たばかりはべらむ。院のおはしまさぬ夜は、御帳のめぐりに人多くさぶらひて、御座のほとりに、さるべき人かならずさぶらひたまへば、いかなる折をかは、隙を見つけはべるべからむ」<BR>⏎
 とわびつつ参りぬ。<BR>⏎
text35961 <A NAME="in74">[第四段 小侍従、柏木を導き入れる]</A><BR>560 
d2962-963
<P>⏎
cd6:2964-969 いかにいかにと、日々に責められ極じて、さるべき折うかがひつけて、消息しおこせたり。喜びながら、いみじくやつれ忍びておはしぬ。<BR>⏎

<P>⏎
 まことに、わが心にもいとけしからぬことなれば、気近く、なかなか思ひ乱るることもまさるべきことまでは、思ひも寄らず、ただ<BR>⏎

<P>⏎
561-562 いかにいかにと、日々に責められ極じて、さるべき折うかがひつけて、消息しおこせたり。喜びながら、いみじくやつれ忍びておはしぬ。<BR>⏎
 まことに、わが心にもいとけしからぬことなれば、気近く、なかなか思ひ乱るることもまさるべきことまでは、思ひも寄らず、ただ<BR>⏎
d2971-972
<P>⏎
d2974-975
<P>⏎
d2977-978
<P>⏎
d2980-981
<P>⏎
text35982 <A NAME="in75">[第五段 柏木、女三の宮をかき抱く]</A><BR>567 
d2983-984
<P>⏎
d2986-987
<P>⏎
d2989-990
<P>⏎
d2992-993
<P>⏎
cd3:1994-996 昔よりおほけなき心のはべりしを、ひたぶるに籠めて止みはべなましかば、心のうちに朽たして過ぎぬべかりけるを、なかなか、漏らしきこえさせて、院にも聞こし召されにしを、こよなくもて離れてものたまはせざりけるに、頼みをかけそめはべりて、身の数ならぬひときはに、人より深き心ざしを空しくなしはべりぬることと、動かしはべりにし心なむ、よろづ今はかひなきことと思うたまへ返せど、いかばかりしみはべりにけるにか、年月に添へて、口惜しくも、つらくも、むくつけくも、あはれにも、いろいろに深く思うたまへまさるに、せきかねて、かくおほけなきさまを御覧ぜられぬるも、かつはいと思ひやりなく恥づかしければ、罪重き心もさらにはべるまじ」<BR>⏎

<P>⏎
571 昔よりおほけなき心のはべりしを、ひたぶるに籠めて止みはべなましかば、心のうちに朽たして過ぎぬべかりけるを、なかなか、漏らしきこえさせて、院にも聞こし召されにしを、こよなくもて離れてものたまはせざりけるに、頼みをかけそめはべりて、身の数ならぬひときはに、人より深き心ざしを空しくなしはべりぬることと、動かしはべりにし心なむ、よろづ今はかひなきことと思うたまへ返せど、いかばかりしみはべりにけるにか、年月に添へて、口惜しくも、つらくも、むくつけくも、あはれにも、いろいろに深く思うたまへまさるに、せきかねて、かくおほけなきさまを御覧ぜられぬるも、かつはいと思ひやりなく恥づかしければ、罪重き心もさらにはべるまじ」<BR>⏎
d2998-999
<P>⏎
d21001-1002
<P>⏎
cd3:11003-1005 とよろづに聞こえたまふ。<BR>⏎

<P>⏎
574 とよろづに聞こえたまふ。<BR>⏎
text351006 <A NAME="in76">[第六段 柏木、猫の夢を見る]</A><BR>575 
d21007-1008
<P>⏎
d21010-1011
<P>⏎
d21013-1014
<P>⏎
d21016-1017
<P>⏎
d21019-1020
<P>⏎
cd3:11021-1023 「なほかく逃れぬ御宿世の、浅からざりけると<A HREF="#k28">思ほし</A><A NAME="t28">な</A>せ。みづからの心ながらも、うつし心にはあらずなむ、おぼえはべる」<BR>⏎

<P>⏎
580 「なほかく逃れぬ御宿世の、浅からざりけると<A HREF="#k28">思ほし</A><A NAME="t28">な</A>せ。みづからの心ながらも、うつし心にはあらずなむ、おぼえはべる」<BR>⏎
d21025-1026
<P>⏎
cd6:21027-1032 「げにさはたありけむよ」<BR>⏎

<P>⏎
 と口惜しく、契り心憂き御身なりけり。「院にも、今はいかでかは見えたてまつらむ」と、悲しく心細くて、いと幼げに泣きたまふを、いとかたじけなく、あはれと見たてまつりて、人の御涙をさへ拭ふ袖は、いとど露けさのみまさる。<BR>⏎

<P>⏎
582-583 「げにさはたありけむよ」<BR>⏎
 と口惜しく、契り心憂き御身なりけり。「院にも、今はいかでかは見えたてまつらむ」と、悲しく心細くて、いと幼げに泣きたまふを、いとかたじけなく、あはれと見たてまつりて、人の御涙をさへ拭ふ袖は、いとど露けさのみまさる。<BR>⏎
text351033 <A NAME="in77">[第七段 きぬぎぬの別れ]</A><BR>584 
d21034-1035
<P>⏎
d21037-1038
<P>⏎
d21040-1041
<P>⏎
cd9:31042-1050 とよろづに聞こえ悩ますも、うるさくわびしくて、もののさらに言はれたまはねば、<BR>⏎

<P>⏎
 「果て果ては、むくつけくこそなりはべりぬれ。またかかるやうはあらじ」<BR>⏎

<P>⏎
 といと憂しと思ひきこえて、<BR>⏎

<P>⏎
587-589 とよろづに聞こえ悩ますも、うるさくわびしくて、もののさらに言はれたまはねば、<BR>⏎
 「果て果ては、むくつけくこそなりはべりぬれ。またかかるやうはあらじ」<BR>⏎
 といと憂しと思ひきこえて、<BR>⏎
d21052-1053
<P>⏎
cd3:11054-1056 とてかき抱きて出づるに、果てはいかにしつるぞと、あきれて思さる。<BR>⏎

<P>⏎
591 とてかき抱きて出づるに、果てはいかにしつるぞと、あきれて思さる。<BR>⏎
d21058-1059
<P>⏎
cd6:21060-1065 「かういとつらき御心に、うつし心も失せはべりぬ。すこし思ひのどめよと思されば、あはれとだにのたまはせよ」<BR>⏎

<P>⏎
 と脅しきこゆるを、いとめづらかなりと思して物も言はむとしたまへど、わななかれて、いと若々しき御さまなり。<BR>⏎

<P>⏎
593-594 「かういとつらき御心に、うつし心も失せはべりぬ。すこし思ひのどめよと思されば、あはれとだにのたまはせよ」<BR>⏎
 と脅しきこゆるを、いとめづらかなりと思して 物も言はむとしたまへど、わななかれて、いと若々しき御さまなり。<BR>⏎
d21067-1068
<P>⏎
d21070-1071
<P>⏎
cd17:51072-1088 とてのどかならず立ち出づる明けぐれ、<A HREF="#no22">秋の空よりも心尽くし</A><A NAME="te22">な</A>り。<BR>⏎

<P>⏎
 「起きてゆく空も知られぬ明けぐれに<BR>⏎
  いづくの露のかかる袖なり」<BR>⏎

<P>⏎
 とひき出でて愁へきこゆれば、出でなむとするに、すこし慰めたまひて、<BR>⏎

<P>⏎
 「明けぐれの空に憂き身は消えななむ<BR>⏎
  夢なりけりと見てもやむべく」<BR>⏎

<P>⏎
 とはかなげにのたまふ声の、若くをかしげなるを、聞きさすやうにて<A HREF="#no23">出でぬる魂</A><A NAME="te23">は</A>、まことに身を離れて止まりぬる心地す。<BR>⏎

<P>⏎
597-601 とてのどかならず立ち出づる明けぐれ、<A HREF="#no22">秋の空よりも心尽くし</A><A NAME="te22">な</A>り。<BR>⏎
 「起きてゆく空も知られぬ明けぐれに<BR>  いづくの露のかかる袖なり」<BR>⏎
 とひき出でて愁へきこゆれば、出でなむとするに、すこし慰めたまひて、<BR>⏎
 「明けぐれの空に憂き身は消えななむ<BR>  夢なりけりと見てもやむべく」<BR>⏎
 とはかなげにのたまふ声の、若くをかしげなるを、聞きさすやうにて<A HREF="#no23">出でぬる魂</A><A NAME="te23">は</A>、まことに身を離れて止まりぬる心地す。<BR>⏎
text351089 <A NAME="in78">[第八段 柏木と女三の宮の罪の恐れ]</A><BR>602 
d21090-1091
<P>⏎
d21093-1094
<P>⏎
d21096-1097
<P>⏎
cd6:21098-1103 と恐ろしくそら恥づかしき心地して、ありきなどもしたまはず。女の<A HREF="#k32">御ため</A><A NAME="t32">は</A>さらにもいはず、わが心地にもいとあるまじきことといふ中にも、むくつけくおぼゆれば、思ひのままにもえ紛れありかず。<BR>⏎

<P>⏎
 帝の御妻をも取り過ちて、ことの聞こえあらむに、かばかりおぼえむことゆゑは、身のいたづらにならむ、苦しくおぼゆまじ。しかいちじるき罪にはあたらずとも、この院に目をそばめられたてまつらむことは、いと恐ろしく恥づかしくおぼゆ。<BR>⏎

<P>⏎
605-606 と恐ろしくそら恥づかしき心地して、ありきなどもしたまはず。女の<A HREF="#k32">御ため</A><A NAME="t32">は</A>さらにもいはず、わが心地にもいとあるまじきことといふ中にも、むくつけくおぼゆれば、思ひのままにもえ紛れありかず。<BR>⏎
 帝の御妻をも取り過ちて、ことの聞こえあらむに、かばかりおぼえむことゆゑは、身のいたづらにならむ、苦しくおぼゆまじ。しかいちじるき罪にはあたらずとも、この院に目をそばめられたてまつらむことは、いと恐ろしく恥づかしくおぼゆ。<BR>⏎
d21105-1106
<P>⏎
d21108-1109
<P>⏎
d21111-1112
<P>⏎
cd3:11113-1115 「今はのとぢめにもこそあれ。今さらにおろかなるさまを見えおかれじとてなむ。いはけなかりしほどより扱ひそめて、見放ちがたければ、かう月ごろよろづを知らぬさまに過ぐしはべるぞ。おのづからこのほど過ぎば、見直したまひてむ」<BR>⏎

<P>⏎
610 「今はのとぢめにもこそあれ。今さらにおろかなるさまを見えおかれじとてなむ。いはけなかりしほどより扱ひそめて、見放ちがたければ、かう月ごろよろづを知らぬさまに過ぐしはべるぞ。おのづからこのほど過ぎば、見直したまひてむ」<BR>⏎
d21117-1118
<P>⏎
text351119 <A NAME="in79">[第九段 柏木と女二の宮の夫婦仲]</A><BR>612 
d21120-1121
<P>⏎
cd3:11122-1124 督の君は、ましてなかなかなる心地のみまさりて、起き臥し明かし暮らしわびたまふ。祭の日などは、物見に争ひ行く君達かき連れ来て言ひそそのかせど、悩ましげにもてなして、眺め臥したまへり。<BR>⏎

<P>⏎
613 督の君は、ましてなかなかなる心地のみまさりて、起き臥し明かし暮らしわびたまふ。祭の日などは、物見に争ひ行く君達かき連れ来て言ひそそのかせど、悩ましげにもてなして、眺め臥したまへり。<BR>⏎
d21126-1127
<P>⏎
cd4:11128-1131 「悔しくぞ摘み犯しける葵草<BR>⏎
  神の許せるかざしならぬに」<BR>⏎

<P>⏎
615 「悔しくぞ摘み犯しける葵草<BR>  神の許せるかざしならぬに」<BR>⏎
d21133-1134
<P>⏎
d21136-1137
<P>⏎
d21139-1140
<P>⏎
d21142-1143
<P>⏎
cd4:11144-1147 「もろかづら落葉を何に拾ひけむ<BR>⏎
  名は睦ましきかざしなれども」<BR>⏎

<P>⏎
620 「もろかづら落葉を何に拾ひけむ<BR>  名は睦ましきかざしなれども」<BR>⏎
d31149-1151
<P>⏎

text351152<H4>第八章 紫の上の物語 死と蘇生</H4>622 
text351153 <A NAME="in81">[第一段 紫の上、絶命す]</A><BR>623 
d11154<P>⏎
d11156<P>⏎
d11158<P>⏎
cd2:11159-1160 とて人参りたれば、さらに何事も思し分かれず、御心も暮れて渡りたまふ。道のほどの心もとなきに、げにかの院は、ほとりの大路まで人立ち騒ぎたり。殿のうち泣きののしるけはひ、いとまがまがし。我にもあらで入りたまへれば、<BR>⏎
<P>⏎
626 とて人参りたれば、さらに何事も思し分かれず、御心も暮れて渡りたまふ。道のほどの心もとなきに、げにかの院は、ほとりの大路まで人立ち騒ぎたり。殿のうち泣きののしるけはひ、いとまがまがし。我にもあらで入りたまへれば、<BR>⏎
d11162<P>⏎
cd4:21163-1166 とてさぶらふ限りは、我も後れたてまつらじと、惑ふさまども、限りなし。御修法どもの檀こぼち、僧なども、さるべき限りこそまかでね、ほろほろと騒ぐを見たまふに、「さらば限りにこそは」と思し果つるあさましさに、何事かはたぐひあらむ。<BR>⏎
<P>⏎
 「さりとも、もののけのするにこそあらめ。いとかくひたぶるにな騷ぎそ」<BR>⏎
<P>⏎
628-629 とてさぶらふ限りは、我も後れたてまつらじと、惑ふさまども、限りなし。御修法どもの檀こぼち、僧なども、さるべき限りこそまかでね、ほろほろと騒ぐを見たまふに、「さらば限りにこそは」と思し果つるあさましさに、何事かはたぐひあらむ。<BR>⏎
 「さりとも、もののけのするにこそあらめ。いとかくひたぶるにな騷ぎそ」<BR>⏎
d11168<P>⏎
cd6:31169-1174 「限りある御命にて、この世尽きたまひぬとも、ただ今しばしのどめたまへ。不動尊の御本の誓ひあり。その日数をだに、かけ止めたてまつりたまへ」<BR>⏎
<P>⏎
 と頭よりまことに黒煙を立てて、いみじき心を起こして加持したてまつる。院も、<BR>⏎
<P>⏎
 「ただ今一度目を見合はせたまへ。いとあへなく限りなりつらむほどをだに、え見ずなりにけることの、悔しく悲しきを」<BR>⏎
<P>⏎
631-633 「限りある御命にて、この世尽きたまひぬとも、ただ今しばしのどめたまへ。不動尊の御本の誓ひあり。その日数をだに、かけ止めたてまつりたまへ」<BR>⏎
 と頭よりまことに黒煙を立てて、いみじき心を起こして加持したてまつる。院も、<BR>⏎
 「ただ今一度目を見合はせたまへ。いとあへなく限りなりつらむほどをだに、え見ずなりにけることの、悔しく悲しきを」<BR>⏎
d11176<P>⏎
text351177 <A NAME="in82">[第二段 六条御息所の死霊出現]</A><BR>635 
d11178<P>⏎
d11180<P>⏎
d11182<P>⏎
cd2:11183-1184 とて髪を振りかけて泣くけはひ、ただ昔見たまひしもののけのさまと見えたり。あさましく、むくつけしと、思ししみにしことの変はらぬもゆゆしければ、この童女の手をとらへて、引き据ゑて、さま悪しくもせさせたまはず。<BR>⏎
<P>⏎
638 とて髪を振りかけて泣くけはひ、ただ昔見たまひしもののけのさまと見えたり。あさましく、むくつけしと、思ししみにしことの変はらぬもゆゆしければ、この童女の手をとらへて、引き据ゑて、さま悪しくもせさせたまはず。<BR>⏎
d11186<P>⏎
d11188<P>⏎
cd3:11189-1191 「わが身こそあらぬさまなれそれながら<BR>⏎
  そらおぼれする君は君なり<BR>⏎
<P>⏎
641 「わが身こそあらぬさまなれそれながら<BR>  そらおぼれする君は君なり<BR>⏎
d11194<P>⏎
cd2:11195-1196 「中宮の御事にても、いとうれしくかたじけなしとなむ、天翔りても見たてまつれど、道異になりぬれば、子の上までも深くおぼえぬにやあらむ、なほみづからつらしと思ひきこえし心の執なむ、止まるものなりける。<BR>⏎
<P>⏎
644 「中宮の御事にても、いとうれしくかたじけなしとなむ、天翔りても見たてまつれど、道異になりぬれば、子の上までも深くおぼえぬにやあらむ、なほみづからつらしと思ひきこえし心の執なむ、止まるものなりける。<BR>⏎
d11198<P>⏎
d11200<P>⏎
cd2:11201-1202 よし今は、この罪軽むばかりのわざをせさせたまへ。修法読経とののしることも、身には苦しくわびしき炎とのみまつはれて、さらに尊きことも聞こえねば、いと悲しくなむ。<BR>⏎
<P>⏎
647 よし今は、この罪軽むばかりのわざをせさせたまへ。修法読経とののしることも、身には苦しくわびしき炎とのみまつはれて、さらに尊きことも聞こえねば、いと悲しくなむ。<BR>⏎
d11204<P>⏎
cd2:11205-1206 など言ひ続くれど、もののけに向かひて物語したまはむも、かたはらいたければ、封じ込めて、上をば、また異方に、忍びて渡したてまつりたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
649 など言ひ続くれど、もののけに向かひて物語したまはむも、かたはらいたければ、封じ込めて、上をば、また異方に、忍びて渡したてまつりたまふ。<BR>⏎
text351207 <A NAME="in83">[第三段 紫の上、死去の噂流れる]</A><BR>650 
d11208<P>⏎
d11210<P>⏎
d11212<P>⏎
cd2:11213-1214 とうちつけ言したまふ人もあり。また<BR>⏎
<P>⏎
653 とうちつけ言したまふ人もあり。また<BR>⏎
d11216<P>⏎
cd2:11217-1218 などうちささめきけり。<BR>⏎
<P>⏎
655 などうちささめきけり。<BR>⏎
d11220<P>⏎
d11222<P>⏎
cd2:11223-1224 とうち誦じ独りごちて、かの院へ皆参りたまふ。たしかならぬことなればゆゆしくや、とてただおほかたの御訪らひに参りたまへるに、かく人の泣き騒げば、まことなりけりと、立ち騷ぎたまへり。<BR>⏎
<P>⏎
658 とうち誦じ独りごちて、かの院へ皆参りたまふ。たしかならぬことなればゆゆしくや、とてただおほかたの御訪らひに参りたまへるに、かく人の泣き騒げば、まことなりけりと、立ち騷ぎたまへり。<BR>⏎
cd2:11226-1227<P> 「いかにいかに。ゆゆしきさまに人の申しつれば、信じがたきことにてなむ。ただ久しき御悩みをうけたまはり嘆きて参りつる」<BR>⏎
<P>⏎
660 「いかにいかに。ゆゆしきさまに人の申しつれば、信じがたきことにてなむ。ただ久しき御悩みをうけたまはり嘆きて参りつる」<BR>⏎
d11229<P>⏎
d11231<P>⏎
cd4:21232-1235 とてまことにいたく泣きたまへるけしきなり。目もすこし腫れたり。衛門督、わがあやしき心ならひにや、『この君の、いとさしも親しからぬ継母の御ことを、いたく心しめたまへるかな』、と目をとどむ。<BR>⏎
<P>⏎
 かくこれかれ参りたまへるよし聞こし召して、<BR>⏎
<P>⏎
663-664 とてまことにいたく泣きたまへるけしきなり。目もすこし腫れたり。衛門督、わがあやしき心ならひにや、『この君の、いとさしも親しからぬ継母の御ことを、いたく心しめたまへるかな』、と目をとどむ。<BR>⏎
 かくこれかれ参りたまへるよし聞こし召して、<BR>⏎
d11238<P>⏎
text351239 <A NAME="in84">[第四段 紫の上、蘇生後に五戒を受く]</A><BR>667 
d11240<P>⏎
d11242<P>⏎
cd2:11243-1244 うつし人にてだに、むくつけかりし人の御けはひの、まして世変はり、妖しきもののさまになりたまへらむを思しやるに、いと心憂ければ、中宮を扱ひきこえたまふさへぞ、この折はもの憂く、言ひもてゆけば、女の身は、皆同じ罪深きもとゐぞかしと、なべての世の中厭はしく、かのまた人も聞かざりし御仲の睦物語に、すこし語り出でたまへりしことを言ひ出でたりしに、まことと思し出づるに、いとわづらはしく思さる。<BR>⏎
<P>⏎
669 うつし人にてだに、むくつけかりし人の御けはひの、まして世変はり、妖しきもののさまになりたまへらむを思しやるに、いと心憂ければ、中宮を扱ひきこえたまふさへぞ、この折はもの憂く、言ひもてゆけば、女の身は、皆同じ罪深きもとゐぞかしと、なべての世の中厭はしく、かのまた人も聞かざりし御仲の睦物語に、すこし語り出でたまへりしことを言ひ出でたりしに、まことと思し出づるに、いとわづらはしく思さる。<BR>⏎
d11246<P>⏎
d11248<P>⏎
text351249 <A NAME="in85">[第五段 紫の上、小康を得る]</A><BR>672 
d11250<P>⏎
cd2:11251-1252 五月などは、まして晴れ晴れしからぬ空のけしきに、えさはやぎたまはねど、ありしよりはすこし良ろしきさまなり。されどなほ絶えず悩みわたりたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
673 五月などは、まして晴れ晴れしからぬ空のけしきに、えさはやぎたまはねど、ありしよりはすこし良ろしきさまなり。されどなほ絶えず悩みわたりたまふ。<BR>⏎
d11254<P>⏎
d11256<P>⏎
c21257-1258 「世の中に亡くなりなむも、わが身にはさらに口惜しきこと残るまじけれど、かく思し惑ふめるに、空しく見なされたてまつらむが、いと思ひ隈なかるべければ」思ひ起こして、御湯などいささか参るけにや、六月になりてぞ、時々御頭もたげたまひける。めづらしく見たてまつりたまふにも、なほいとゆゆしくて、六条の院にはあからさまにもえ渡りたまはず。<BR>⏎
<P>⏎
676-677 「世の中に亡くなりなむも、わが身にはさらに口惜しきこと残るまじけれど、かく思し惑ふめるに、空しく見なされたてまつらむが、いと思ひ隈なかるべければ」<BR>⏎
 
思ひ起こして、御湯などいささか参るけにや、六月になりてぞ、時々御頭もたげたまひける。めづらしく見たてまつりたまふにも、なほいとゆゆしくて、六条の院にはあからさまにもえ渡りたまはず。<BR>⏎
text351259 <H4>第九章 女三の宮の物語 懐妊と密通の露見</H4>678 
text351260 <A NAME="in91">[第一段 女三の宮懐妊す]</A><BR>679 
d11261<P>⏎
d11263<P>⏎
d11265<P>⏎
d11267<P>⏎
d11269<P>⏎
d11271<P>⏎
text351272 <A NAME="in92">[第二段 源氏、紫の上と和歌を唱和す]</A><BR>685 
d11273<P>⏎
d11275<P>⏎
d11277<P>⏎
d11279<P>⏎
cd7:31280-1286 「かくて見たてまつるこそ、夢の心地すれ。いみじくわが身さへ限りとおぼゆる折々のありしはや」<BR>⏎
<P>⏎
 と涙を浮けてのたまへば、みづからもあはれに思して、<BR>⏎
<P>⏎
 「消え止まるほどやは経べきたまさかに<BR>⏎
  蓮の露のかかるばかりを」<BR>⏎
<P>⏎
689-691 「かくて見たてまつるこそ、夢の心地すれ。いみじくわが身さへ限りとおぼゆる折々のありしはや」<BR>⏎
 と涙を浮けてのたまへば、みづからもあはれに思して、<BR>⏎
 「消え止まるほどやは経べきたまさかに<BR>  蓮の露のかかるばかりを」<BR>⏎
d11288<P>⏎
cd3:11289-1291 「契り置かむこの世ならでも蓮葉に<BR>⏎
  玉ゐる露の心隔つな」<BR>⏎
<P>⏎
693 「契り置かむこの世ならでも蓮葉に<BR>  玉ゐる露の心隔つな」<BR>⏎
d11293<P>⏎
text351294 <A NAME="in93">[第三段 源氏、女三の宮を見舞う]</A><BR>695 
d11295<P>⏎
d11297<P>⏎
d11299<P>⏎
cd2:11300-1301 とわづらひたまふ<A HREF="#k39">御ありさま</A><A NAME="t39">を</A>聞こゆ。<BR>⏎
<P>⏎
698 とわづらひたまふ<A HREF="#k39">御ありさま</A><A NAME="t39">を</A>聞こゆ。<BR>⏎
d11303<P>⏎
d11305<P>⏎
d11307<P>⏎
cd7:41308-1314 と思せば、ことにともかくものたまひあへしらひたまはで、ただうち悩みたまへるさまのいとらうたげなるを、あはれと見たてまつりたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
 からうして思し立ちて渡りたまひしかば、ふともえ帰りたまはで、二三日おはするほど、「いかにいかに」とうしろめたく思さるれば、御文をのみ書き尽くしたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
 「いつの間に積もる御言の葉にかあらむ。いでややすからぬ世をも見るかな」<BR>⏎
<P>⏎
 と若君の御過ちを知らぬ人は言ふ。侍従ぞ、かかるにつけても胸うち騷ぎける。<BR>⏎
702-705 と思せば、ことにともかくものたまひあへしらひたまはで、ただうち悩みたまへるさまのいとらうたげなるを、あはれと見たてまつりたまふ。<BR>⏎
 からうして思し立ちて渡りたまひしかば、ふともえ帰りたまはで、二三日おはするほど、「いかにいかに」とうしろめたく思さるれば、御文をのみ書き尽くしたまふ。<BR>⏎
 「いつの間に積もる御言の葉にかあらむ。いでややすからぬ世をも見るかな」<BR>⏎
 と若君の御過ちを知らぬ人は言ふ。侍従ぞ、かかるにつけても胸うち騷ぎける。<BR>⏎
d11316<P>⏎
d11318<P>⏎
d11320<P>⏎
cd2:11321-1322 「なほただこの端書きの、いとほしげにはべるぞや」<BR>⏎
<P>⏎
709 「なほただこの端書きの、いとほしげにはべるぞや」<BR>⏎
d11324<P>⏎
d11326<P>⏎
text351327 <A NAME="in94">[第四段 源氏、女三の宮と和歌を唱和す]</A><BR>712 
d11328<P>⏎
d11330<P>⏎
d11332<P>⏎
d11334<P>⏎
d11336<P>⏎
cd4:21337-1340 「さらば<A HREF="#no27">道たどたどしからぬ</A><A NAME="te27">ほ</A>どに」<BR>⏎
<P>⏎
 とて御衣などたてまつり直す。<BR>⏎
<P>⏎
717-718 「さらば<A HREF="#no27">道たどたどしからぬ</A><A NAME="te27">ほ</A>どに」<BR>⏎
 とて御衣などたてまつり直す。<BR>⏎
d11342<P>⏎
cd5:21343-1347 といと若やかなるさましてのたまふは憎からずかし。「その間にも、とや思す」と、心苦しげに思して、立ち止まりたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
 「夕露に袖濡らせとやひぐらしの<BR>⏎
  鳴くを聞く聞く起きて行くらむ」<BR>⏎
<P>⏎
720-721 といと若やかなるさましてのたまふは憎からずかし。「その間にも、とや思す」と、心苦しげに思して、立ち止まりたまふ。<BR>⏎
 「夕露に袖濡らせとやひぐらしの<BR>  鳴くを聞く聞く起きて行くらむ」<BR>⏎
d11349<P>⏎
cd7:31350-1356 「あな苦しや」<BR>⏎
<P>⏎
 とうち嘆きたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
 「待つ里もいかが聞くらむ方がたに<BR>⏎
  心騒がすひぐらしの声」<BR>⏎
<P>⏎
723-725 「あな苦しや」<BR>⏎
 とうち嘆きたまふ。<BR>⏎
 「待つ里もいかが聞くらむ方がたに<BR>  心騒がすひぐらしの声」<BR>⏎
d11358<P>⏎
text351359 <A NAME="in95">[第五段 源氏、柏木の手紙を発見]</A><BR>727 
d11360<P>⏎
d11362<P>⏎
d11364<P>⏎
cd2:11365-1366 とて御扇置きたまひて、昨日うたた寝したまへりし御座のあたりを、立ち止まりて見たまふに、御茵のすこしまよひたるつまより、浅緑の薄様なる文の、押し巻きたる端見ゆるを、何心もなく引き出でて御覧ずるに、男の手なり。紙の香などいと艶に、ことさらめきたる書きざまなり。二重ねにこまごまと書きたるを見たまふに、「紛るべき方なく、その人の手なりけり」と見たまひつ。<BR>⏎
<P>⏎
730 とて御扇置きたまひて、昨日うたた寝したまへりし御座のあたりを、立ち止まりて見たまふに、御茵のすこしまよひたるつまより、浅緑の薄様なる文の、押し巻きたる端見ゆるを、何心もなく引き出でて御覧ずるに、男の手なり。紙の香などいと艶に、ことさらめきたる書きざまなり。二重ねにこまごまと書きたるを見たまふに、「紛るべき方なく、その人の手なりけり」と見たまひつ。<BR>⏎
d11368<P>⏎
cd2:11369-1370 「いでさりとも、それにはあらじ。いといみじく、さることはありなむや。隠いたまひてけむ」<BR>⏎
<P>⏎
732 「いでさりとも、それにはあらじ。いといみじく、さることはありなむや。隠いたまひてけむ」<BR>⏎
d11372<P>⏎
d11374<P>⏎
cd2:11375-1376 「あないはけな。かかる物を散らしたまひて。我ならぬ人も見つけたらましかば」<BR>⏎
<P>⏎
735 「あないはけな。かかる物を散らしたまひて。我ならぬ人も見つけたらましかば」<BR>⏎
d11378<P>⏎
d11380<P>⏎
d11382<P>⏎
text351383 <A NAME="in96">[第六段 小侍従、女三の宮を責める]</A><BR>739 
d11384<P>⏎
d11386<P>⏎
d11388<P>⏎
d11390<P>⏎
cd2:11391-1392 「いづくにかは置かせたまひてし。人びとの参りしに、ことあり顔に近くさぶらはじと、さばかりの忌みをだに、心の鬼に<A HREF="#k40">避り</A><A NAME="t40">は</A>べしを。入らせたまひしほどは、すこしほど経はべりにしを、隠させたまひつらむとなむ、思うたまへし」<BR>⏎
<P>⏎
743 「いづくにかは置かせたまひてし。人びとの参りしに、ことあり顔に近くさぶらはじと、さばかりの忌みをだに、心の鬼に<A HREF="#k40">避り</A><A NAME="t40">は</A>べしを。入らせたまひしほどは、すこしほど経はべりにしを、隠させたまひつらむとなむ、思うたまへし」<BR>⏎
d11394<P>⏎
cd2:11395-1396 「いさとよ。見しほどに入りたまひしかば、ふともえ<A HREF="#k41">置きあへで</A><A NAME="t41">、</A>さし挟みしを、忘れにけり」<BR>⏎
<P>⏎
745 「いさとよ。見しほどに入りたまひしかば、ふともえ<A HREF="#k41">置きあへで</A><A NAME="t41">、</A>さし挟みしを、忘れにけり」<BR>⏎
d11398<P>⏎
cd4:21399-1402 「あないみじ。かの君も、いといたく懼ぢ憚りて、けしきにても漏り聞かせたまふことあらばと、かしこまりきこえたまひしものを。ほどだに経ず、かかることの出でまうで来るよ。すべていはけなき御ありさまにて、人にも見えさせたまひければ、年ごろさばかり忘れがたく、恨み言ひわたりたまひしかど、かくまで思うたまへし御ことかは。誰が御ためにも、いとほしくはべるべきこと」<BR>⏎
<P>⏎
 と憚りもなく聞こゆ。心やすく若くおはすれば、馴れきこえたるなめり。いらへもしたまはで、ただ泣きにのみぞ泣きたまふ。いと悩ましげにて、つゆばかりの物もきこしめさねば、<BR>⏎
<P>⏎
747-748 「あないみじ。かの君も、いといたく懼ぢ憚りて、けしきにても漏り聞かせたまふことあらばと、かしこまりきこえたまひしものを。ほどだに経ず、かかることの出でまうで来るよ。すべていはけなき御ありさまにて、人にも見えさせたまひければ、年ごろさばかり忘れがたく、恨み言ひわたりたまひしかど、かくまで思うたまへし御ことかは。誰が御ためにも、いとほしくはべるべきこと」<BR>⏎
 と憚りもなく聞こゆ。心やすく若くおはすれば、馴れきこえたるなめり。いらへもしたまはで、ただ泣きにのみぞ泣きたまふ。いと悩ましげにて、つゆばかりの物もきこしめさねば、<BR>⏎
d11404<P>⏎
cd2:11405-1406 とつらく思ひ言ふ。<BR>⏎
<P>⏎
750 とつらく思ひ言ふ。<BR>⏎
text351407 <A NAME="in97">[第七段 源氏、手紙を読み返す]</A><BR>751 
d11408<P>⏎
d11410<P>⏎
cd4:21411-1414 「年を経て思ひわたりけることの、たまさかに本意<A HREF="#k42">かなひ</A><A NAME="t42">て</A>、心やすからぬ筋を書き尽くしたる言葉、いと見所ありてあはれなれど、いとかく<A HREF="#k43">さやかには</A><A NAME="t43">書</A>くべしや。あたら人の文をこそ思ひやりなく書きけれ。落ち散ることもこそと思ひしかば、昔かやうにこまかなるべき折ふしにも、ことそぎつつこそ書き紛らはししか。人の深き用意は難きわざなりけり」<BR>⏎
<P>⏎
 とかの人の心をさへ見落としたまひつ。<BR>⏎
<P>⏎
753-754 「年を経て思ひわたりけることの、たまさかに本意<A HREF="#k42">かなひ</A><A NAME="t42">て</A>、心やすからぬ筋を書き尽くしたる言葉、いと見所ありてあはれなれど、いとかく<A HREF="#k43">さやかには</A><A NAME="t43">書</A>くべしや。あたら人の文をこそ思ひやりなく書きけれ。落ち散ることもこそと思ひしかば、昔かやうにこまかなるべき折ふしにも、ことそぎつつこそ書き紛らはししか。人の深き用意は難きわざなりけり」<BR>⏎
 とかの人の心をさへ見落としたまひつ。<BR>⏎
text351415 <A NAME="in98">[第八段 源氏、妻の密通を思う]</A><BR>755 
d11416<P>⏎
cd4:21417-1420 「さてもこの人をばいかがもてなしきこゆべき。めづらしきさまの御心地も、かかることの紛れにてなりけり。いであな、心憂や。かく人伝てならず憂きことを知るしる、<A HREF="#k44">ありし</A><A NAME="t44">な</A>がら見たてまつらむよ」<BR>⏎
<P>⏎
 とわが御心ながらも、え思ひ直すまじくおぼゆるを、<BR>⏎
<P>⏎
756-757 「さてもこの人をばいかがもてなしきこゆべき。めづらしきさまの御心地も、かかることの紛れにてなりけり。いであな、心憂や。かく人伝てならず憂きことを知るしる、<A HREF="#k44">ありし</A><A NAME="t44">な</A>がら見たてまつらむよ」<BR>⏎
 とわが御心ながらも、え思ひ直すまじくおぼゆるを、<BR>⏎
d11422<P>⏎
d11424<P>⏎
cd2:11425-1426 女御更衣といへど、とある筋かかる方につけて、かたほなる人もあり、心ばせかならず重からぬうち混じりて、思はずなることもあれど、おぼろけの定かなる過ち見えぬほどは、さても交じらふやうもあらむに、ふとしもあらはならぬ紛れありぬべし。<BR>⏎
<P>⏎
760 女御更衣といへど、とある筋かかる方につけて、かたほなる人もあり、心ばせかならず重からぬうち混じりて、思はずなることもあれど、おぼろけの定かなる過ち見えぬほどは、さても交じらふやうもあらむに、ふとしもあらはならぬ紛れありぬべし。<BR>⏎
d11428<P>⏎
cd6:31429-1434 と爪弾きせられたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
 「帝と聞こゆれど、ただ素直に、公ざまの心ばへばかりにて宮仕へのほどもものすさまじきに、心ざし深き私の<A HREF="#no28">ねぎ言になびき</A><A NAME="te28">、</A>おのがじしあはれを尽くし、見過ぐしがたき折のいらへをも言ひそめ、自然に心通ひそむらむ仲らひは、同じけしからぬ筋なれど、寄る方ありや。わが身ながらも、さばかりの人に心分けたまふべくはおぼえぬものを」<BR>⏎
<P>⏎
 といと心づきなけれど、また「けしきに出だすべきことにもあらず」など、思し乱るるにつけて、<BR>⏎
<P>⏎
762-764 と爪弾きせられたまふ。<BR>⏎
 「帝と聞こゆれど、ただ素直に、公ざまの心ばへばかりにて宮仕へのほどもものすさまじきに、心ざし深き私の<A HREF="#no28">ねぎ言になびき</A><A NAME="te28">、</A>おのがじしあはれを尽くし、見過ぐしがたき折のいらへをも言ひそめ、自然に心通ひそむらむ仲らひは、同じけしからぬ筋なれど、寄る方ありや。わが身ながらも、さばかりの人に心分けたまふべくはおぼえぬものを」<BR>⏎
 といと心づきなけれど、また「けしきに出だすべきことにもあらず」など、思し乱るるにつけて、<BR>⏎
d11436<P>⏎
cd2:11437-1438 と近き例を思すにぞ、<A HREF="#no29">恋の山路</A><A NAME="te29">は</A>、えもどくまじき御心まじりける。<BR>⏎
<P>⏎
766 と近き例を思すにぞ、<A HREF="#no29">恋の山路</A><A NAME="te29">は</A>、えもどくまじき御心まじりける。<BR>⏎
text351439 <H4>第十章 光る源氏の物語 密通露見後</H4>767 
text351440 <A NAME="in101">[第一段 紫の上、女三の宮を気づかう]</A><BR>768 
d11441<P>⏎
d11443<P>⏎
d11445<P>⏎
d11447<P>⏎
d11449<P>⏎
cd2:11450-1451 とてうめきたまへば、<BR>⏎
<P>⏎
773 とてうめきたまへば、<BR>⏎
d11453<P>⏎
d11455<P>⏎
cd4:21456-1459 「げにあながちに思ふ人のためには、わづらはしきよすがなけれど、よろづにたどり深きこと、<A HREF="#k45">とやかくや</A><A NAME="t45">と</A>、おほよそ人の思はむ心さへ思ひめぐらさるるを、これはただ、国王の御心やおきたまはむとばかりを憚らむは、浅き心地ぞしける」<BR>⏎
<P>⏎
 とほほ笑みてのたまひ紛らはす。渡りたまはむことは、<BR>⏎
<P>⏎
776-777 「げにあながちに思ふ人のためには、わづらはしきよすがなけれど、よろづにたどり深きこと、<A HREF="#k45">とやかくや</A><A NAME="t45">と</A>、おほよそ人の思はむ心さへ思ひめぐらさるるを、これはただ、国王の御心やおきたまはむとばかりを憚らむは、浅き心地ぞしける」<BR>⏎
 とほほ笑みてのたまひ紛らはす。渡りたまはむことは、<BR>⏎
d11461<P>⏎
d11463<P>⏎
cd4:21464-1467 「ここにはしばし心やすくてはべらむ。まづ渡りたまひて、人の御心も慰みなむほどにを」<BR>⏎
<P>⏎
 と聞こえ交はしたまふほどに、日ごろ経ぬ。<BR>⏎
<P>⏎
780-781 「ここにはしばし心やすくてはべらむ。まづ渡りたまひて、人の御心も慰みなむほどにを」<BR>⏎
 と聞こえ交はしたまふほどに、日ごろ経ぬ。<BR>⏎
text351468 <A NAME="in102">[第二段 柏木と女三の宮、密通露見におののく]</A><BR>782 
d11469<P>⏎
d11471<P>⏎
d11473<P>⏎
d11475<P>⏎
d11477<P>⏎
d11479<P>⏎
cd6:31480-1485 などやすからず思ふに、心地もいと悩ましくて、内裏へも参らず。さして重き罪には当たるべきならねど、身のいたづらになりぬる心地すれば、「さればよ」と、かつはわが心も、いとつらくおぼゆ。<BR>⏎
<P>⏎
 「いでやしづやかに心にくきけはひ見えたまはぬわたりぞや。まづはかの御簾のはさまも、さるべきことかは。軽々しと、大将の思ひたまへるけしき見えきかし」<BR>⏎
<P>⏎
 など今ぞ思ひ合はする。しひてこのことを思ひさまさむと思ふ方にて、あながちに難つけたてまつらまほしきにやあらむ。<BR>⏎
<P>⏎
788-790 などやすからず思ふに、心地もいと悩ましくて、内裏へも参らず。さして重き罪には当たるべきならねど、身のいたづらになりぬる心地すれば、「さればよ」と、かつはわが心も、いとつらくおぼゆ。<BR>⏎
 「いでやしづやかに心にくきけはひ見えたまはぬわたりぞや。まづはかの御簾のはさまも、さるべきことかは。軽々しと、大将の思ひたまへるけしき見えきかし」<BR>⏎
 など今ぞ思ひ合はする。しひてこのことを思ひさまさむと思ふ方にて、あながちに難つけたてまつらまほしきにやあらむ。<BR>⏎
text351486 <A NAME="in103">[第三段 源氏、女三の宮の幼さを非難]</A><BR>791 
d11487<P>⏎
cd6:31488-1493 「良きやうとても、あまりひたおもむきにおほどかにあてなる人は、世のありさまも知らず、かつさぶらふ人に心おきたまふこともなくて、かくいとほしき御身のためも、人のためも、いみじきことにもあるかな」<BR>⏎
<P>⏎
 とかの御ことの心苦しさも、え思ひ放たれたまはず。<BR>⏎
<P>⏎
 宮はいとらうたげにて悩みわたりたまふさまの、なほいと心苦しく、かく思ひ放ちたまふにつけては、あやにくに憂きに紛れぬ恋しさの苦しく思さるれば、渡りたまひて、見たてまつりたまふにつけても、胸いたくいとほしく思さる。<BR>⏎
<P>⏎
792-794 「良きやうとても、あまりひたおもむきにおほどかにあてなる人は、世のありさまも知らず、かつさぶらふ人に心おきたまふこともなくて、かくいとほしき御身のためも、人のためも、いみじきことにもあるかな」<BR>⏎
 とかの御ことの心苦しさも、え思ひ放たれたまはず。<BR>⏎
 宮はいとらうたげにて悩みわたりたまふさまの、なほいと心苦しく、かく思ひ放ちたまふにつけては、あやにくに憂きに紛れぬ恋しさの苦しく思さるれば、渡りたまひて、見たてまつりたまふにつけても、胸いたくいとほしく思さる。<BR>⏎
d11495<P>⏎
d11497<P>⏎
d11499<P>⏎
d11501<P>⏎
d11503<P>⏎
d11505<P>⏎
text351506 <A NAME="in104">[第四段 源氏、玉鬘の賢さを思う]</A><BR>801 
d11507<P>⏎
d11509<P>⏎
d11511<P>⏎
text351512 <A NAME="in105">[第五段 朧月夜、出家す]</A><BR>804 
d11513<P>⏎
d11515<P>⏎
d11517<P>⏎
cd3:11518-1520 「海人の世をよそに聞かめや須磨の浦に<BR>⏎
  藻塩垂れしも誰れならなくに<BR>⏎
<P>⏎
807 「海人の世をよそに聞かめや須磨の浦に<BR>  藻塩垂れしも誰れならなくに<BR>⏎
d11522<P>⏎
cd2:11523-1524 など多く聞こえたまへり。<BR>⏎
<P>⏎
809 など多く聞こえたまへり。<BR>⏎
d11526<P>⏎
d11528<P>⏎
cd5:21529-1533 「常なき世とは身一つにのみ知りはべりにしを、後れぬとのたまはせたるになむ、げに<BR>⏎
<P
>⏎
  海人舟にいかがは思ひおくれけむ<BR>⏎
  明石の浦にいさりせし君<BR>⏎
<P>⏎
812-813 「常なき世とは身一つにのみ知りはべりにしを、後れぬとのたまはせたるになむ、げに<BR>⏎
  海人舟にいかがは思ひおくれけむ<BR>  明石の浦にいさりせし君<BR>⏎
d11535<P>⏎
d11537<P>⏎
text351538 <A NAME="in106">[第六段 源氏、朧月夜と朝顔を語る]</A><BR>816 
d11539<P>⏎
d11541<P>⏎
cd3:21542-1544 「いといたくこそ恥づかしめられたれ。げに心づきなしや。さまざま心細き世の中のありさまを、よく見過ぐしつるやうなるよ。なべての世のことにても、はかなくものを言ひ交はし、時々によせて、あはれをも知り、ゆゑをも過ぐさず、よそながらの睦び交はしつべき人は、斎院とこの君とこそは残りありつるを、かくみな背き果てて、斎院はた、いみじうつとめて、紛れなく行なひにしみたまひにたなり。<BR>⏎
<P> なほここらの人のありさまを聞き見る中に、深く思ふさまに、さすがになつかしきことの、かの人の御なずらひにだにもあらざりけるかな。女子を生ほし立てむことよ、いと難かるべきわざなりけり。<BR>⏎
<P>⏎
818-819 「いといたくこそ恥づかしめられたれ。げに心づきなしや。さまざま心細き世の中のありさまを、よく見過ぐしつるやうなるよ。なべての世のことにても、はかなくものを言ひ交はし、時々によせて、あはれをも知り、ゆゑをも過ぐさず、よそながらの睦び交はしつべき人は、斎院とこの君とこそは残りありつるを、かくみな背き果てて、斎院はた、いみじうつとめて、紛れなく行なひにしみたまひにたなり。<BR>⏎
 なほここらの人のありさまを聞き見る中に、深く思ふさまに、さすがになつかしきことの、かの人の御なずらひにだにもあらざりけるかな。女子を生ほし立てむことよ、いと難かるべきわざなりけり。<BR>⏎
d11547<P>⏎
d11549<P>⏎
d11551<P>⏎
cd2:11552-1553 とてなほものを心細げにて、かく心にまかせて、行なひをもとどこほりなくしたまふ人びとを、うらやましく思ひきこえたまへり。<BR>⏎
<P>⏎
824 とてなほものを心細げにて、かく心にまかせて、行なひをもとどこほりなくしたまふ人びとを、うらやましく思ひきこえたまへり。<BR>⏎
d11555<P>⏎
d11557<P>⏎
d11559<P>⏎
text351560 <H4>第十一章 朱雀院の物語 五十賀の延引</H4>828 
text351561 <A NAME="in111">[第一段 女二の宮、院の五十の賀を祝う]</A><BR>829 
d11562<P>⏎
cd6:31563-1568 かくて山の帝の御賀も延びて、秋とありしを、八月は大将の御忌月にて、楽所のこと行なひたまはむに、便なかるべし。九月は、院の大后の崩れたまひにし月なれば、十月にと思しまうくるを、姫宮いたく悩みたまへば、また延びぬ。<BR>⏎
<P>⏎
 衛門督の御預かりの宮なむ、その月には参りたまひける。太政大臣居立ちて、いかめしくこまかに、もののきよら、儀式を尽くしたまへりけり。督の君も、そのついでにぞ、思ひ起こして出でたまひける。なほ悩ましく、例ならず病づきてのみ過ぐしたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
 <A HREF="#k49">宮</A><A NAME="t49">も</A>、うちはへてものをつつましく、いとほしとのみ思し嘆くにやあらむ、月多く重なりたまふままに、いと苦しげにおはしませば、院は、心憂しと思ひきこえたまふ方こそあれ、いとらうたげにあえかなるさまして、かく悩みわたりたまふを、いかにおはせむと嘆かしくて、さまざまに思し嘆く。御祈りなど、今年は紛れ多くて過ぐしたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
830-832 かくて山の帝の御賀も延びて、秋とありしを、八月は大将の御忌月にて、楽所のこと行なひたまはむに、便なかるべし。九月は、院の大后の崩れたまひにし月なれば、十月にと思しまうくるを、姫宮いたく悩みたまへば、また延びぬ。<BR>⏎
 衛門督の御預かりの宮なむ、その月には参りたまひける。太政大臣居立ちて、いかめしくこまかに、もののきよら、儀式を尽くしたまへりけり。督の君も、そのついでにぞ、思ひ起こして出でたまひける。なほ悩ましく、例ならず病づきてのみ過ぐしたまふ。<BR>⏎
 <A HREF="#k49">宮</A><A NAME="t49">も</A>、うちはへてものをつつましく、いとほしとのみ思し嘆くにやあらむ、月多く重なりたまふままに、いと苦しげにおはしませば、院は、心憂しと思ひきこえたまふ方こそあれ、いとらうたげにあえかなるさまして、かく悩みわたりたまふを、いかにおはせむと嘆かしくて、さまざまに思し嘆く。御祈りなど、今年は紛れ多くて過ぐしたまふ。<BR>⏎
text351569 <A NAME="in112">[第二段 朱雀院、女三の宮へ手紙]</A><BR>833 
d11570<P>⏎
d11572<P>⏎
d11574<P>⏎
d11576<P>⏎
d11578<P>⏎
cd2:11579-1580 <A HREF="#k51">など</A><A NAME="t51"></A>教へきこえたまへり。<BR>⏎
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838 <A HREF="#k51">など</A><A NAME="t51"></A>教へきこえたまへり。<BR>⏎
d11582<P>⏎
d11584<P>⏎
d11586<P>⏎
text351587 <A NAME="in113">[第三段 源氏、女三の宮を諭す]</A><BR>842 
d11588<P>⏎
d11590<P>⏎
cd2:11591-1592 いたり少なく、ただ人の聞こえなす方にのみ寄るべかめる御心には、ただおろかに浅きとのみ思し、また今はこよなくさだ過ぎにたるありさまも、あなづらはしく目馴れてのみ見なしたまふらむも、かたがたに口惜しくもうれたくもおぼゆるを、院のおはしまさむほどは、なほ心収めて、かの思しおきてたるやうありけむ、さだ過ぎ人をも、同じくなずらへきこえて、いたくな軽めたまひそ。<BR>⏎
<P>⏎
844 いたり少なく、ただ人の聞こえなす方にのみ寄るべかめる御心には、ただおろかに浅きとのみ思し、また今はこよなくさだ過ぎにたるありさまも、あなづらはしく目馴れてのみ見なしたまふらむも、かたがたに口惜しくもうれたくもおぼゆるを、院のおはしまさむほどは、なほ心収めて、かの思しおきてたるやうありけむ、さだ過ぎ人をも、同じくなずらへきこえて、いたくな軽めたまひそ。<BR>⏎
d11594<P>⏎
cd2:11595-1596 心苦しと思ひし人びとも、今はかけとどめらるるほだしばかりなるもはべらず。女御も、かくて行く末は知りがたけれど、御子たち数添ひたまふめれば、みづからの世だにのどけくはと見おきつべし。その他は、誰れも誰れも、あらむに従ひて、もろともに身を捨てむも、惜しかるまじき齢どもになりにたるを、やうやうすずしく思ひはべる。<BR>⏎
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846 心苦しと思ひし人びとも、今はかけとどめらるるほだしばかりなるもはべらず。女御も、かくて行く末は知りがたけれど、御子たち数添ひたまふめれば、みづからの世だにのどけくはと見おきつべし。その他は、誰れも誰れも、あらむに従ひて、もろともに身を捨てむも、惜しかるまじき齢どもになりにたるを、やうやうすずしく思ひはべる。<BR>⏎
d11598<P>⏎
cd2:11599-1600 などまほにそのこととは明かしたまはねど、つくづくと聞こえ続けたまふに、涙のみ落ちつつ、我にもあらず思ひしみておはすれば、我もうち泣きたまひて、<BR>⏎
<P>⏎
848 などまほにそのこととは明かしたまはねど、つくづくと聞こえ続けたまふに、涙のみ落ちつつ、我にもあらず思ひしみておはすれば、我もうち泣きたまひて、<BR>⏎
d11602<P>⏎
cd2:11603-1604 と恥ぢたまひつつ、御硯引き寄せたまひて、手づから押し磨り、紙取りまかなひ、書かせたてまつりたまへど、御手もわななきて、え書きたまはず。<BR>⏎
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850 と恥ぢたまひつつ、御硯引き寄せたまひて、手づから押し磨り、紙取りまかなひ、書かせたてまつりたまへど、御手もわななきて、え書きたまはず。<BR>⏎
d11606<P>⏎
text351607 <A NAME="in114">[第四段 朱雀院の御賀、十二月に延引]</A><BR>852 
d11608<P>⏎
d11610<P>⏎
cd4:21611-1614 「霜月はみづからの忌月なり。年の終りはた、いともの騒がし。またいとどこの御姿も見苦しく、待ち見たまはむをと思ひはべれど、さりとて、さのみ延ぶべきことにやは。むつかしくもの思し乱れず、あきらかにもてなしたまひて、このいたく面痩せたまへる、つくろひたまへ」<BR>⏎
<P>⏎
 などいとらうたしと、さすがに見たてまつりたまふ。<BR>⏎
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854-855 「霜月はみづからの忌月なり。年の終りはた、いともの騒がし。またいとどこの御姿も見苦しく、待ち見たまはむをと思ひはべれど、さりとて、さのみ延ぶべきことにやは。むつかしくもの思し乱れず、あきらかにもてなしたまひて、このいたく面痩せたまへる、つくろひたまへ」<BR>⏎
 などいとらうたしと、さすがに見たてまつりたまふ。<BR>⏎
d11616<P>⏎
d11618<P>⏎
text351619 <A NAME="in115">[第五段 源氏、柏木を六条院に召す]</A><BR>858 
d11620<P>⏎
d11622<P>⏎
d11624<P>⏎
d11626<P>⏎
cd2:11627-1628 さるはそこはかと苦しげなる病にもあらざなるを、思ふ心のあるにやと、心苦しく思して、取り分きて御消息つかはす。父大臣も、<BR>⏎
<P>⏎
862 さるはそこはかと苦しげなる病にもあらざなるを、思ふ心のあるにやと、心苦しく思して、取り分きて御消息つかはす。父大臣も、<BR>⏎
d11630<P>⏎
d11632<P>⏎
text351633 <A NAME="in116">[第六段 源氏、柏木と対面す]</A><BR>865 
d11634<P>⏎
cd2:11635-1636 まだ上達部なども集ひたまはぬほどなりけり。例の気近き御簾の内に入れたまひて、母屋の御簾下ろしておはします。げにいといたく痩せ痩せに青みて、例も誇りかにはなやぎたる方は、弟の君たちにはもて消たれて、いと用意あり顔にしづめたるさまぞことなるを、いとどしづめてさぶらひたまふさま、「などかは皇女たちの御かたはらにさし並べたらむに、さらに咎あるまじきを、ただことのさまの、誰も誰もいと思ひやりなきこそ、いと罪許しがたけれ」など、御目とまれど、さりげなく、いとなつかしく、<BR>⏎
<P>⏎
866 まだ上達部なども集ひたまはぬほどなりけり。例の気近き御簾の内に入れたまひて、母屋の御簾下ろしておはします。げにいといたく痩せ痩せに青みて、例も誇りかにはなやぎたる方は、弟の君たちにはもて消たれて、いと用意あり顔にしづめたるさまぞことなるを、いとどしづめてさぶらひたまふさま、「などかは皇女たちの御かたはらにさし並べたらむに、さらに咎あるまじきを、ただことのさまの、誰も誰もいと思ひやりなきこそ、いと罪許しがたけれ」など、御目とまれど、さりげなく、いとなつかしく、<BR>⏎
d11638<P>⏎
d11640<P>⏎
text351641 <A NAME="in117">[第七段 柏木と御賀について打ち合わせる]</A><BR>869 
d11642<P>⏎
d11644<P>⏎
cd2:11645-1646 院の御齢足りたまふ年なり、人よりさだかに数へたてまつり仕うまつるべきよし、致仕の大臣思ひ及び申されしを、『<A HREF="#no31">冠を掛け</A><A NAME="te31">、</A><A HREF="#no32">車を惜しまず捨て</A><A NAME="te32">て</A>し身にて、進み仕うまつらむに、つくところなし。げに下臈なりとも、同じごと深きところはべらむ。その心御覧ぜられよ』と、催し申さるることのはべしかば、重き病を相助けてなむ、参りてはべし。<BR>⏎
<P>⏎
871 院の御齢足りたまふ年なり、人よりさだかに数へたてまつり仕うまつるべきよし、致仕の大臣思ひ及び申されしを、『<A HREF="#no31">冠を掛け</A><A NAME="te31">、</A><A HREF="#no32">車を惜しまず捨て</A><A NAME="te32">て</A>し身にて、進み仕うまつらむに、つくところなし。げに下臈なりとも、同じごと深きところはべらむ。その心御覧ぜられよ』と、催し申さるることのはべしかば、重き病を相助けてなむ、参りてはべし。<BR>⏎
d11648<P>⏎
d11650<P>⏎
d11652<P>⏎
cd4:21653-1656 かの院、何事も心及びたまはぬことは、をさをさなきうちにも、楽の方のことは御心とどめて、いとかしこく知り調へたまへるを、さこそ思し捨てたるやうなれ、静かに聞こしめし澄まさむこと、今しもなむ心づかひせらるべき。かの大将ともろともに見入れて、舞の童べの用意心ばへ、よく加へたまへ。物の師などいふものは、ただわが立てたることこそあれ、いと口惜しきものなり」<BR>⏎
<P>⏎
 などいとなつかしくのたまひつくるを、うれしきものから、苦しくつつましくて、言少なにて、この御前をとく立ちなむと思へば、例のやうにこまやかにもあらで、やうやうすべり出でぬ。<BR>⏎
<P>⏎
875-876 かの院、何事も心及びたまはぬことは、をさをさなきうちにも、楽の方のことは御心とどめて、いとかしこく知り調へたまへるを、さこそ思し捨てたるやうなれ、静かに聞こしめし澄まさむこと、今しもなむ心づかひせらるべき。かの大将ともろともに見入れて、舞の童べの用意心ばへ、よく加へたまへ。物の師などいふものは、ただわが立てたることこそあれ、いと口惜しきものなり」<BR>⏎
 などいとなつかしくのたまひつくるを、うれしきものから、苦しくつつましくて、言少なにて、この御前をとく立ちなむと思へば、例のやうにこまやかにもあらで、やうやうすべり出でぬ。<BR>⏎
d11658<P>⏎
text351659 <H4>第十二章 柏木の物語 源氏から睨まれる</H4>878 
text351660 <A NAME="in121">[第一段 御賀の試楽の当日]</A><BR>879 
d11661<P>⏎
d11663<P>⏎
d11666<P>⏎
cd2:11667-1668 また大将の<A HREF="#k57">典侍</A><A NAME="t57">腹</A>の二郎君、式部卿宮の兵衛督といひし、今は源中納言の御子「皇じやう」。右の大殿の三郎君、「陵王」。大将殿の太郎、「落蹲」。さては「太平楽」、「喜春楽」などいふ舞どもをなむ、同じ御仲らひの君たち、大人たちなど舞ひける。<BR>⏎
<P>⏎
883 また大将の<A HREF="#k57">典侍</A><A NAME="t57">腹</A>の二郎君、式部卿宮の兵衛督といひし、今は源中納言の御子「皇」。右の大殿の三郎君、「陵王」。大将殿の太郎、「落蹲」。さては「太平楽」、「喜春楽」などいふ舞どもをなむ、同じ御仲らひの君たち、大人たちなど舞ひける。<BR>⏎
d11670<P>⏎
text351671 <A NAME="in122">[第二段 源氏、柏木に皮肉を言う]</A><BR>885 
d11672<P>⏎
d11674<P>⏎
d11676<P>⏎
cd2:11677-1678 とてうち見やりたまふに、人よりけにまめだち屈じて、まことに心地もいと悩ましければ、いみじきことも目もとまらぬ心地する人をしも、さしわきて、空酔ひをしつつかくのたまふ。戯れのやうなれど、いとど胸つぶれて、盃のめぐり来るも頭いたくおぼゆれば、けしきばかりにて紛らはすを、御覧じ咎めて、持たせながらたびたび強ひたまへば、はしたなくて、もてわづらふさま、なべての人に似ずをかし。<BR>⏎
<P>⏎
888 とてうち見やりたまふに、人よりけにまめだち屈じて、まことに心地もいと悩ましければ、いみじきことも目もとまらぬ心地する人をしも、さしわきて、空酔ひをしつつかくのたまふ。戯れのやうなれど、いとど胸つぶれて、盃のめぐり来るも頭いたくおぼゆれば、けしきばかりにて紛らはすを、御覧じ咎めて、持たせながらたびたび強ひたまへば、はしたなくて、もてわづらふさま、なべての人に似ずをかし。<BR>⏎
d11680<P>⏎
d11682<P>⏎
d11684<P>⏎
d11686<P>⏎
text351687 <A NAME="in123">[第三段 柏木、女二の宮邸を出る]</A><BR>893 
d11688<P>⏎
d11690<P>⏎
d11692<P>⏎
cd2:11693-1694 と御かたはらに御几帳ばかりを隔てて見たてまつりたまふ。<BR>⏎
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896 と御かたはらに御几帳ばかりを隔てて見たてまつりたまふ。<BR>⏎
d11696<P>⏎
cd6:31697-1702 などかたみに泣きたまひて、とみにもえ渡りたまはねば、また母北の方、うしろめたく思して、<BR>⏎
<P>⏎
 「などかまづ見えむとは思ひたまふまじき。われは心地もすこし例ならず心細き時は、あまたの中に、まづ取り分きてゆかしくも頼もしくもこそおぼえたまへ。かくいとおぼつかなきこと」<BR>⏎
<P>⏎
 と恨みきこえたまふも、またいと<A HREF="#k59">ことわりなり</A><A NAME="t59">。</A><BR>⏎
<P>⏎
898-900 などかたみに泣きたまひて、とみにもえ渡りたまはねば、また母北の方、うしろめたく思して、<BR>⏎
 「などかまづ見えむとは思ひたまふまじき。われは心地もすこし例ならず心細き時は、あまたの中に、まづ取り分きてゆかしくも頼もしくもこそおぼえたまへ。かくいとおぼつかなきこと」<BR>⏎
 と恨みきこえたまふも、またいと<A HREF="#k59">ことわりなり</A><A NAME="t59">。</A><BR>⏎
d11704<P>⏎
d11706<P>⏎
cd2:11707-1708 と泣く泣く渡りたまひぬ。宮はとまりたまひて、言ふ方なく思しこがれたり。<BR>⏎
<P>⏎
903 と泣く泣く渡りたまひぬ。宮はとまりたまひて、言ふ方なく思しこがれたり。<BR>⏎
text351709 <A NAME="in124">[第四段 柏木の病、さらに重くなる]</A><BR>904 
d11710<P>⏎
cd2:11711-1712 大殿に待ち受けきこえたまひて、よろづに騷ぎたまふ。さるはたちまちにおどろおどろしき御心地のさまにもあらず、月ごろ物などをさらに参らざりけるに、いとどはかなき柑子などをだに触れたまはず、ただやうやうものに引き入るるやうに見えたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
905 大殿に待ち受けきこえたまひて、よろづに騷ぎたまふ。さるはたちまちにおどろおどろしき御心地のさまにもあらず、月ごろ物などをさらに参らざりけるに、いとどはかなき柑子などをだに触れたまはず、ただやうやうものに引き入るるやうに見えたまふ。<BR>⏎
d11714<P>⏎
d11716<P>⏎
d11718<P>⏎
cd3:11719-1721 例の、五十寺の御誦経、またかのおはします御寺にも、摩訶毘盧遮那の。<BR>⏎

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909 例の、五十寺の御誦経、またかのおはします御寺にも、摩訶毘盧遮那の。<BR>⏎
text351722 <a name="in131">【出典】<BR>910 
c11723</a><A NAME="no1">出典1</A> いかにしてかく思ふてふことをだに人伝てならで君に語らむ(後撰集恋五-九六一 藤原敦忠)<A HREF="#te1">(戻)</A><BR>⏎
911<A NAME="no1">出典1</A> いかにしてかく思ふてふことをだに人伝てならで君に語らむ(後撰集恋五-九六一 藤原敦忠)<A HREF="#te1">(戻)</A><BR>⏎
c11731<A NAME="no9">出典9</A> 本方千歳 千歳 千歳や 千年の 千歳や (末方万歳 万歳 万歳や 万代の 万歳や (本方なほ千歳 (末方なほ万歳(神楽歌-千歳法)<A HREF="#te9">(戻)</A><BR>⏎
919<A NAME="no9">出典9</A> (本方)千歳 千歳 千歳や 千年の 千歳や<BR>(末方)万歳 万歳 万歳や 万代の 万歳や<BR>(本方)なほ千歳<BR>(末方)なほ万歳(神楽歌-千歳法)<A HREF="#te9">(戻)</A><BR>⏎
c11737<A NAME="no15">出典15</A> 感天地以致和 **=虫+支行之衆類(文選-五三 琴賦)<A HREF="#te15">(戻)</A><BR>⏎
925<A NAME="no15">出典15</A> 感天地以致和 *(*=虫+支)行之衆類(文選-五三 琴賦)<A HREF="#te15">(戻)</A><BR>⏎
c11753<A NAME="no31">出典31</A> 逢萌字子康 北海都昌人也 中略 即解冠挂東都城門 帰 将家属浮海 客於遼東(後漢書-逢萌伝)<A HREF="#te31">(戻)</A><BR>⏎
941<A NAME="no31">出典31</A> 逢萌字子康 北海都昌人也 (中略) 即解冠挂東都城門 帰 将家属浮海 客於遼東(後漢書-逢萌伝)<A HREF="#te31">(戻)</A><BR>⏎
d11759
text351760<p> <a name="in132">【校訂】<BR>947 
c11762</a><A NAME="k01">校訂1</A> こそ--*そ<A HREF="#t01">(戻)</A><BR>⏎
949<A NAME="k01">校訂1</A> こそ--*そ<A HREF="#t01">(戻)</A><BR>⏎
c11786<A NAME="k25">校訂25</A> さにえ言ひ果てたまはで、「今はよし。過ぎにし--(/+さにえいひはてたまはていまはよしすきにし)<A HREF="#t25">(戻)</A><BR>⏎
973<A NAME="k25">校訂25</A> さにえ言ひ果てたまはで、「今はよし。過ぎにし--(/+さにえいひはてたまはていまはよしすきにし)<A HREF="#t25">(戻)</A><BR>⏎
d11822</p>⏎
d11830</p>⏎
i01020
diffsrc/original/text36.htmlsrc/modified/text36.html
cd2:18-9<body background="wallppr063.gif">⏎
First updated 9/20/1996(ver.1-1)<BR>⏎
8<BODY>⏎
cd3:210-12Last updated 9/22/2010(ver.2-3)<BR>⏎
渋谷栄一校訂(C)<BR>⏎
<P
>⏎
9-10<ADDRESS>Last updated 9/22/2010(ver.2-3)<BR>⏎
渋谷栄一校訂(C)</ADDRESS>⏎
d114<P>⏎
d116<P>⏎
d146<P>⏎
c180<LI>夕霧、一条宮邸を訪問---<A HREF="#in51">一条の宮には、ましておぼつかなうて別れ</A>⏎
75<LI>夕霧、一条宮邸を訪問---<A HREF="#in51">一条の宮には、ましておぼつかなうて別れ</A>⏎
d187<P>⏎
d190<P>⏎
text3691 <H4>第一章 柏木の物語 女三の宮、薫を出産</H4>84 
text3692 <A NAME="in11">[第一段 柏木、病気のまま新年となる]</A><BR>85 
d193<P>⏎
d195<P>⏎
cd6:396-101 「しひてかけ離れなむ命、かひなく、罪重かるべきことを思ふ、心は心として、またあながちにこの世に離れがたく、惜しみ留めまほしき身かは。いはけなかりしほどより、思ふ心異にて、何ごとをも、人に今一際まさらむと、公私のことに触れて、なのめならず思ひ上りしかど、その心叶ひがたかりけり」<BR>⏎
<P>⏎
 と一つ二つの節ごとに、身を思ひ落としてしこなた、<A HREF="#no1">なべての世の中</A><A NAME="te1">す</A>さまじう思ひなりて、後の世の行なひに本意深く進みにしを、親たちの御恨みを思ひて、野山にもあくがれむ道の重きほだしなるべくおぼえしかば、とざまかうざまに紛らはしつつ過ぐしつるを、つひに<BR>⏎
<P>⏎
 「なほ世に立ちまふべくもおぼえぬもの思ひの、一方ならず身に添ひにたるは、我より他に誰かはつらき、心づからもてそこなひつるにこそあめれ」<BR>⏎
<P>⏎
87-89 「しひてかけ離れなむ命、かひなく、罪重かるべきことを思ふ、心は心として、またあながちにこの世に離れがたく、惜しみ留めまほしき身かは。いはけなかりしほどより、思ふ心異にて、何ごとをも、人に今一際まさらむと、公私のことに触れて、なのめならず思ひ上りしかど、その心叶ひがたかりけり」<BR>⏎
 と一つ二つの節ごとに、身を思ひ落としてしこなた、<A HREF="#no1">なべての世の中</A><A NAME="te1">す</A>さまじう思ひなりて、後の世の行なひに本意深く進みにしを、親たちの御恨みを思ひて、野山にもあくがれむ道の重きほだしなるべくおぼえしかば、とざまかうざまに紛らはしつつ過ぐしつるを、つひに<BR>⏎
 「なほ世に立ちまふべくもおぼえぬもの思ひの、一方ならず身に添ひにたるは、我より他に誰かはつらき、心づからもてそこなひつるにこそあめれ」<BR>⏎
d1103<P>⏎
cd6:3104-109 「神、仏をもかこたむ方なきは、これ皆さるべきにこそはあらめ。<A HREF="#no2">誰も千年の松ならぬ</A><A NAME="te2">世</A>は、つひに止まるべきにもあらぬを、かく人にも、すこしうちしのばれぬべきほどにて、なげのあはれをもかけたまふ人あらむをこそは、<A HREF="#no3">一つ思ひに</A><A NAME="te3">燃</A>えぬるしるしにはせめ。<BR>⏎
<P>⏎
 せめてながらへば、おのづからあるまじき名をも立ち、我も人も、やすからぬ乱れ出で来るやうもあらむよりは、なめしと、心置いたまふらむあたりにも、さりとも思し許いてむかし。よろづのこと、今はのとぢめには、皆消えぬべきわざなり。また異ざまの過ちしなければ、年ごろものの折ふしごとには、まつはしならひたまひにし方のあはれも出で来なむ」<BR>⏎
<P>⏎
 などつれづれに思ひ続くるも、うち返し、いとあぢきなし。<BR>⏎
<P>⏎
91-93 「神、仏をもかこたむ方なきは、これ皆さるべきにこそはあらめ。<A HREF="#no2">誰も千年の松ならぬ</A><A NAME="te2">世</A>は、つひに止まるべきにもあらぬを、かく人にも、すこしうちしのばれぬべきほどにて、なげのあはれをもかけたまふ人あらむをこそは、<A HREF="#no3">一つ思ひに</A><A NAME="te3">燃</A>えぬるしるしにはせめ。<BR>⏎
 せめてながらへば、おのづからあるまじき名をも立ち、我も人も、やすからぬ乱れ出で来るやうもあらむよりは、なめしと、心置いたまふらむあたりにも、さりとも思し許いてむかし。よろづのこと、今はのとぢめには、皆消えぬべきわざなり。また異ざまの過ちしなければ、年ごろものの折ふしごとには、まつはしならひたまひにし方のあはれも出で来なむ」<BR>⏎
 などつれづれに思ひ続くるも、うち返し、いとあぢきなし。<BR>⏎
text36110 <A NAME="in12">[第二段 柏木、女三の宮へ手紙]</A><BR>94 
d1111<P>⏎
d1113<P>⏎
d1115<P>⏎
d1117<P>⏎
cd3:1118-120 「今はとて燃えむ煙もむすぼほれ<BR>⏎
  絶えぬ思ひのなほや残らむ<BR>⏎
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98 「今はとて燃えむ煙もむすぼほれ<BR>  絶えぬ思ひのなほや残らむ<BR>⏎
d1122<P>⏎
d1124<P>⏎
d1126<P>⏎
d1128<P>⏎
d1130<P>⏎
cd2:1131-132 「なほこの御返り。まことにこれをとぢめにもこそはべれ」<BR>⏎
<P>⏎
104 「なほこの御返り。まことにこれをとぢめにもこそはべれ」<BR>⏎
d1134<P>⏎
cd6:3135-140 「われも今日か明日かの心地して、もの心細ければ、おほかたのあはればかりは思ひ知らるれど、いと心憂きことと思ひ懲りにしかば、いみじうなむつつましき」<BR>⏎
<P>⏎
 とてさらに書いたまはず。<BR>⏎
<P>⏎
 御心本性の、強くづしやかなるにはあらねど、恥づかしげなる人の御けしきの、折々にまほならぬが、いと恐ろしうわびしきなるべし。されど御硯などまかなひて責めきこゆれば、しぶしぶに書いたまふ。取りて、忍びて宵の紛れに、かしこに参りぬ。<BR>⏎
<P>⏎
106-108 「われも今日か明日かの心地して、もの心細ければ、おほかたのあはればかりは思ひ知らるれど、いと心憂きことと思ひ懲りにしかば、いみじうなむつつましき」<BR>⏎
 とてさらに書いたまはず。<BR>⏎
 御心本性の、強くづしやかなるにはあらねど、恥づかしげなる人の御けしきの、折々にまほならぬが、いと恐ろしうわびしきなるべし。されど御硯などまかなひて責めきこゆれば、しぶしぶに書いたまふ。取りて、忍びて宵の紛れに、かしこに参りぬ。<BR>⏎
text36141 <A NAME="in13">[第三段 柏木、侍従を招いて語る]</A><BR>109 
d1142<P>⏎
cd2:1143-144 大臣、かしこき行なひ人、葛城山より請じ出でたる、待ち受けたまひて、加持参らせむとしたまふ。御修法、読経なども、いとおどろおどろしう騷ぎたり。人の申すままに、さまざま聖だつ験者などの、をさをさ世にも聞こえず、深き山に籠もりたるなどをも、弟の君たちを遣はしつつ、尋ね召すに、けにくく心づきなき山伏どもなども、いと多く参る。患ひたまふさまの、そこはかとなくものを心細く思ひて、音をのみ時々泣きたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
110 大臣、かしこき行なひ人、葛城山より請じ出でたる、待ち受けたまひて、加持参らせむとしたまふ。御修法、読経なども、いとおどろおどろしう騷ぎたり。人の申すままに、さまざま聖だつ験者などの、をさをさ世にも聞こえず、深き山に籠もりたるなどをも、弟の君たちを遣はしつつ、尋ね召すに、けにくく心づきなき山伏どもなども、いと多く参る。患ひたまふさまの、そこはかとなくものを心細く思ひて、音をのみ時々泣きたまふ。<BR>⏎
d1146<P>⏎
d1148<P>⏎
cd4:2149-152 「いであな憎や。罪の深き身にやあらむ、陀羅尼の声高きは、いと気恐ろしくて、いよいよ死ぬべくこそおぼゆれ」<BR>⏎
<P>⏎
 とてやをらすべり出でて、この侍従と語らひたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
113-114 「いであな憎や。罪の深き身にやあらむ、陀羅尼の声高きは、いと気恐ろしくて、いよいよ死ぬべくこそおぼゆれ」<BR>⏎
 とてやをらすべり出でて、この侍従と語らひたまふ。<BR>⏎
d1154<P>⏎
d1156<P>⏎
cd2:1157-158 などこまやかに語らひたまふも、いとあはれなり。<BR>⏎
<P>⏎
117 などこまやかに語らひたまふも、いとあはれなり。<BR>⏎
d1160<P>⏎
d1162<P>⏎
d1164<P>⏎
cd2:1165-166 などいと弱げに、殻のやうなるさまして、泣きみ笑ひみ語らひたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
121 などいと弱げに、殻のやうなるさまして、泣きみ笑ひみ語らひたまふ。<BR>⏎
text36167 <A NAME="in14">[第四段 女三の宮の返歌を見る]</A><BR>122 
d1168<P>⏎
d1170<P>⏎
d1172<P>⏎
cd2:1173-174 など取り集め思ひしみたまへるさまの深きを、かつはいとうたて恐ろしう思へど、あはれはた、え忍ばず、この人もいみじう泣く。<BR>⏎
<P>⏎
125 など取り集め思ひしみたまへるさまの深きを、かつはいとうたて恐ろしう思へど、あはれはた、え忍ばず、この人もいみじう泣く。<BR>⏎
d1176<P>⏎
d1178<P>⏎
cd2:1179-180  立ち添ひて消えやしなまし憂きことを<BR>⏎
  思ひ乱るる煙比べに<BR>⏎
128  立ち添ひて消えやしなまし憂きことを<BR>  思ひ乱るる煙比べに<BR>⏎
d1182<P>⏎
d1184<P>⏎
cd7:3185-191 「いでやこの煙ばかりこそは、この世の思ひ出でならめ。はかなくもありけるかな」<BR>⏎
<P>⏎
 といとど泣きまさりたまひて、御返り、臥しながら、うち休みつつ書いたまふ。言の葉の続きもなう、あやしき鳥の跡のやうにて、<BR>⏎
<P>⏎
 「行方なき空の煙となりぬとも<BR>⏎
  思ふあたりを立ちは離れじ<BR>⏎
<P>⏎
131-133 「いでやこの煙ばかりこそは、この世の思ひ出でならめ。はかなくもありけるかな」<BR>⏎
 といとど泣きまさりたまひて、御返り、臥しながら、うち休みつつ書いたまふ。言の葉の続きもなう、あやしき鳥の跡のやうにて、<BR>⏎
 「行方なき空の煙となりぬとも<BR>  思ふあたりを立ちは離れじ<BR>⏎
d1193<P>⏎
d1195<P>⏎
d1197<P>⏎
cd2:1198-199 と泣く泣くゐざり入りたまひぬれば、例は無期に迎へ据ゑて、すずろ言をさへ言はせまほしうしたまふを、言少なにても、と思ふがあはれなるに、えも出でやらず。御ありさまを乳母も語りて、いみじく泣き惑ふ。大臣などの思したるけしきぞいみじきや。<BR>⏎
<P>⏎
137 と泣く泣くゐざり入りたまひぬれば、例は無期に迎へ据ゑて、すずろ言をさへ言はせまほしうしたまふを、言少なにても、と思ふがあはれなるに、えも出でやらず。御ありさまを乳母も語りて、いみじく泣き惑ふ。大臣などの思したるけしきぞいみじきや。<BR>⏎
d1201<P>⏎
d1203<P>⏎
d1205<P>⏎
d1207<P>⏎
text36208 <A NAME="in15">[第五段 女三の宮、男子を出産]</A><BR>142 
d1209<P>⏎
d1211<P>⏎
cd2:1212-213 「あな口惜しや。思ひまずる方なくて見たてまつらましかば、めづらしくうれしからまし」<BR>⏎
<P>⏎
144 「あな口惜しや。思ひまずる方なくて見たてまつらましかば、めづらしくうれしからまし」<BR>⏎
d1215<P>⏎
d1217<P>⏎
d1219<P>⏎
cd4:2220-223 と思すに、また<BR>⏎
<P>⏎
 「かく心苦しき疑ひ混じりたるにては、心やすき方にものしたまふもいとよしかし。さてもあやしや。わが世とともに恐ろしと思ひしことの報いなめり。この世にて、かく思ひかけぬことにむかはりぬれば、後の世の罪も、すこし軽みなむや」<BR>⏎
<P>⏎
148-149 と思すに、また<BR>⏎
 「かく心苦しき疑ひ混じりたるにては、心やすき方にものしたまふもいとよしかし。さてもあやしや。わが世とともに恐ろしと思ひしことの報いなめり。この世にて、かく思ひかけぬことにむかはりぬれば、後の世の罪も、すこし軽みなむや」<BR>⏎
d1225<P>⏎
d1227<P>⏎
d1229<P>⏎
cd2:1230-231 五日の夜、中宮の御方より、子持ちの御前の物、女房の中にも、品々に思ひ当てたる際々、公事にいかめしうせさせたまへり。<A HREF="#k02">御粥</A><A NAME="t02"></A>屯食五十具、所々の饗、院の下部、庁の召次所何かの隈まで、いかめしくせさせたまへり。宮司、大夫よりはじめて、院の殿上人、皆参れり。<BR>⏎
<P>⏎
153 五日の夜、中宮の御方より、子持ちの御前の物、女房の中にも、品々に思ひ当てたる際々、公事にいかめしうせさせたまへり。<A HREF="#k02">御粥</A><A NAME="t02"></A>屯食五十具、所々の饗、院の下部、庁の召次所何かの隈まで、いかめしくせさせたまへり。宮司、大夫よりはじめて、院の殿上人、皆参れり。<BR>⏎
d1233<P>⏎
d1235<P>⏎
text36236 <A NAME="in16">[第六段 女三の宮、出家を決意]</A><BR>156 
d1237<P>⏎
d1239<P>⏎
cd2:1240-241 「さはれこのついでにも死なばや」<BR>⏎
<P>⏎
158 「さはれこのついでにも死なばや」<BR>⏎
d1243<P>⏎
cd4:2244-247 「いでやおろそかにもおはしますかな。めづらしうさし出でたまへる御ありさまの、かばかりゆゆしきまでにおはしますを」<BR>⏎
<P>⏎
 とうつくしみきこゆれば、片耳に聞きたまひて、<BR>⏎
<P>⏎
160-161 「いでやおろそかにもおはしますかな。めづらしうさし出でたまへる御ありさまの、かばかりゆゆしきまでにおはしますを」<BR>⏎
 とうつくしみきこゆれば、片耳に聞きたまひて、<BR>⏎
d1249<P>⏎
d1251<P>⏎
d1253<P>⏎
cd10:5254-263 「世の中のはかなきを見るままに、行く末短う、もの心細くて、行なひがちに<A HREF="#k04">なりにて</A><A NAME="t04">は</A>べれば、かかるほどのらうがはしき心地するにより、え参り来ぬを、いかが御心地はさはやかに思しなりにたりや。心苦しうこそ」<BR>⏎
<P>⏎
 とて御几帳の側よりさしのぞきたまへり。御頭もたげたまひて、<BR>⏎
<P>⏎
 「なほえ生きたるまじき心地なむしはべるを、かかる人は罪も重かなり。尼になりて、もしそれにや生きとまると試み、また亡くなるとも、罪を失ふこともやとなむ思ひはべる」<BR>⏎
<P>⏎
 と常の御けはひよりは、いとおとなびて聞こえたまふを、<BR>⏎
<P>⏎
 「いとうたて、ゆゆしき御ことなり。などてかさまでは思す。かかることは、さのみこそ恐ろしかなれど、さてながらへぬわざならばこそあらめ」<BR>⏎
<P>⏎
165-169 「世の中のはかなきを見るままに、行く末短う、もの心細くて、行なひがちに<A HREF="#k04">なりにて</A><A NAME="t04">は</A>べれば、かかるほどのらうがはしき心地するにより、え参り来ぬを、いかが御心地はさはやかに思しなりにたりや。心苦しうこそ」<BR>⏎
 とて御几帳の側よりさしのぞきたまへり。御頭もたげたまひて、<BR>⏎
 「なほえ生きたるまじき心地なむしはべるを、かかる人は罪も重かなり。尼になりて、もしそれにや生きとまると試み、また亡くなるとも、罪を失ふこともやとなむ思ひはべる」<BR>⏎
 と常の御けはひよりは、いとおとなびて聞こえたまふを、<BR>⏎
 「いとうたて、ゆゆしき御ことなり。などてかさまでは思す。かかることは、さのみこそ恐ろしかなれど、さてながらへぬわざならばこそあらめ」<BR>⏎
d1265<P>⏎
d1267<P>⏎
cd4:2268-271 <A HREF="#k05">など</A><A NAME="t05">思</A>し寄れど、またいとあたらしう、あはれに、かばかり遠き御髪の生ひ先を、しかやつさむことも心苦しければ、<BR>⏎
<P>⏎
 「なほ強く思しなれ。けしうはおはせじ。限りと見ゆる人も、たひらなる例近ければ、さすがに頼みある世になむ」<BR>⏎
<P>⏎
172-173 <A HREF="#k05">など</A><A NAME="t05">思</A>し寄れど、またいとあたらしう、あはれに、かばかり遠き御髪の生ひ先を、しかやつさむことも心苦しければ、<BR>⏎
 「なほ強く思しなれ。けしうはおはせじ。限りと見ゆる人も、たひらなる例近ければ、さすがに頼みある世になむ」<BR>⏎
d1273<P>⏎
d1275<P>⏎
d1277<P>⏎
text36278 <H4>第二章 女三の宮の物語 女三の宮の出家</H4>177 
text36279 <A NAME="in21">[第一段 朱雀院、夜闇に六条院へ参上]</A><BR>178 
d1280<P>⏎
d1282<P>⏎
d1284<P>⏎
cd2:1285-286 と御行なひも乱れて思しけり。<BR>⏎
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181 と御行なひも乱れて思しけり。<BR>⏎
d1288<P>⏎
d1290<P>⏎
cd2:1291-292 といたう泣いたまふ。かく聞こえたまふさま、さるべき人して伝へ奏せさせたまひければ、いと堪へがたう悲しと思して、あるまじきこととは思し召しながら、夜に隠れて出でさせたまへり。<BR>⏎
<P>⏎
184 といたう泣いたまふ。かく聞こえたまふさま、さるべき人して伝へ奏せさせたまひければ、いと堪へがたう悲しと思して、あるまじきこととは思し召しながら、夜に隠れて出でさせたまへり。<BR>⏎
d1294<P>⏎
d1296<P>⏎
d1298<P>⏎
d1300<P>⏎
d1302<P>⏎
text36303 <A NAME="in22">[第二段 朱雀院、女三の宮の希望を入れる]</A><BR>190 
d1304<P>⏎
d1306<P>⏎
cd2:1307-308 とて御帳の前に、御茵参りて入れたてまつりたまふ。宮をも、とかう人びと繕ひきこえて、床のしもに下ろしたてまつる。御几帳すこし押しやらせたまひて、<BR>⏎
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192 とて御帳の前に、御茵参りて入れたてまつりたまふ。宮をも、とかう人びと繕ひきこえて、床のしもに下ろしたてまつる。御几帳すこし押しやらせたまひて、<BR>⏎
d1310<P>⏎
cd2:1311-312 とて御目おし拭はせたまふ。宮も、いと弱げに泣いたまひて、<BR>⏎
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194 とて御目おし拭はせたまふ。宮も、いと弱げに泣いたまひて、<BR>⏎
d1314<P>⏎
d1316<P>⏎
d1318<P>⏎
d1320<P>⏎
d1322<P>⏎
d1324<P>⏎
d1326<P>⏎
d1328<P>⏎
d1330<P>⏎
d1332<P>⏎
text36333 <A NAME="in23">[第三段 源氏、女三の宮の出家に狼狽]</A><BR>205 
d1334<P>⏎
d1336<P>⏎
d1338<P>⏎
d1340<P>⏎
d1342<P>⏎
cd2:1343-344 「さらばかくものしたるついでに、忌むこと受け<A HREF="#k11">たまはむ</A><A NAME="t11">を</A>だに、結縁にせむかし」<BR>⏎
<P>⏎
210 「さらばかくものしたるついでに、忌むこと受け<A HREF="#k11">たまはむ</A><A NAME="t11">を</A>だに、結縁にせむかし」<BR>⏎
d1346<P>⏎
d1348<P>⏎
cd2:1349-350 「などかいくばくもはべるまじき身をふり捨てて、かうは思しなりにける。なほしばし心を静めたまひて、御湯参り、物<A HREF="#k13">などをも</A><A NAME="t13">聞</A>こし召せ。尊きことなりとも、御身弱うては、行なひもしたまひてむや。かつはつくろひたまひてこそ」<BR>⏎
<P>⏎
213 「などかいくばくもはべるまじき身をふり捨てて、かうは思しなりにける。なほしばし心を静めたまひて、御湯参り、物<A HREF="#k13">などをも</A><A NAME="t13">聞</A>こし召せ。尊きことなりとも、御身弱うては、行なひもしたまひてむや。かつはつくろひたまひてこそ」<BR>⏎
d1352<P>⏎
text36353 <A NAME="in24">[第四段 朱雀院、夜明け方に山へ帰る]</A><BR>215 
d1354<P>⏎
d1356<P>⏎
d1358<P>⏎
d1360<P>⏎
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d1364<P>⏎
d1366<P>⏎
d1368<P>⏎
cd2:1369-370 「世の中の、今日か明日かにおぼえはべりしほどに、また知る人もなくて、漂はむことの、あはれに避りがたうおぼえはべしかば、御本意にはあらざりけめど、かく聞こえつけて、年ごろは心やすく思ひたまへつるを、もしも生きとまりはべらば、さま異に変りて、人しげき住まひはつきなかるべきを、さるべき山里などにかけ離れたらむありさまも、またさすがに心細かるべくや。さまに従ひて、なほ思し放つまじく」<BR>⏎
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223 「世の中の、今日か明日かにおぼえはべりしほどに、また知る人もなくて、漂はむことの、あはれに避りがたうおぼえはべしかば、御本意にはあらざりけめど、かく聞こえつけて、年ごろは心やすく思ひたまへつるを、もしも生きとまりはべらば、さま異に変りて、人しげき住まひはつきなかるべきを、さるべき山里などにかけ離れたらむありさまも、またさすがに心細かるべくや。さまに従ひて、なほ思し放つまじく」<BR>⏎
d1372<P>⏎
d1374<P>⏎
cd2:1375-376 とてげにいと堪へがたげに思したり。<BR>⏎
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226 とてげにいと堪へがたげに思したり。<BR>⏎
d1378<P>⏎
d1380<P>⏎
cd4:2381-384 とてうち笑ふ。いとあさましう、<BR>⏎
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 「さはこのもののけのここにも、離れざりけるにやあらむ」<BR>⏎
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229-230 とてうち笑ふ。いとあさましう、<BR>⏎
 「さはこのもののけのここにも、離れざりけるにやあらむ」<BR>⏎
d1386<P>⏎
text36387 <H4>第三章 柏木の物語 夕霧の見舞いと死去</H4>232 
text36388 <A NAME="in31">[第一段 柏木、権大納言となる]</A><BR>233 
d1389<P>⏎
d1391<P>⏎
d1393<P>⏎
d1395<P>⏎
d1397<P>⏎
cd10:5398-407 とのたまはすと聞きたまひしを、かたじけなう思ひ出づ。<BR>⏎
<P>⏎
 「かくて見捨てたてまつりぬるなめりと思ふにつけては、さまざまにいとほしけれど、心よりほかなる命なれば、堪へぬ契り恨めしうて、思し嘆かれむが、心苦しきこと。御心ざしありて訪らひものせさせたまへ」<BR>⏎
<P>⏎
 と母上にも聞こえたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
 「いであなゆゆし。後れたてまつりては、いくばく世に経べき身とて、かうまで行く先のことをばのたまふ」<BR>⏎
<P>⏎
 とて泣きにのみ泣きたまへば、え聞こえやりたまはず。右大弁の君にぞ、大方の事どもは詳しう聞こえたまふ。<BR>⏎
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238-242 とのたまはすと聞きたまひしを、かたじけなう思ひ出づ。<BR>⏎
 「かくて見捨てたてまつりぬるなめりと思ふにつけては、さまざまにいとほしけれど、心よりほかなる命なれば、堪へぬ契り恨めしうて、思し嘆かれむが、心苦しきこと。御心ざしありて訪らひものせさせたまへ」<BR>⏎
 と母上にも聞こえたまふ。<BR>⏎
 「いであなゆゆし。後れたてまつりては、いくばく世に経べき身とて、かうまで行く先のことをばのたまふ」<BR>⏎
 とて泣きにのみ泣きたまへば、え聞こえやりたまはず。右大弁の君にぞ、大方の事どもは詳しう聞こえたまふ。<BR>⏎
d1409<P>⏎
d1411<P>⏎
text36412 <A NAME="in32">[第二段 夕霧、柏木を見舞う]</A><BR>245 
d1413<P>⏎
d1415<P>⏎
cd4:2416-419 「なほこなたに入らせたまへ。いとらうがはしきさまにはべる罪は、おのづから思し許されなむ」<BR>⏎
<P>⏎
 とて臥したまへる枕上の方に、僧などしばし出だしたまひて、入れたてまつりたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
247-248 「なほこなたに入らせたまへ。いとらうがはしきさまにはべる罪は、おのづから思し許されなむ」<BR>⏎
 とて臥したまへる枕上の方に、僧などしばし出だしたまひて、入れたてまつりたまふ。<BR>⏎
d1421<P>⏎
d1423<P>⏎
cd2:1424-425 とて几帳のつま引き上げたまへれば、<BR>⏎
<P>⏎
251 とて几帳のつま引き上げたまへれば、<BR>⏎
d1427<P>⏎
cd2:1428-429 とて烏帽子ばかりおし入れて、すこし起き上がらむとしたまへど、いと苦しげなり。白き衣どもの、なつかしうなよよかなるをあまた重ねて、衾ひきかけて臥したまへり。御座のあたりものきよげに、けはひ香うばしう、心にくくぞ住みなしたまへる。<BR>⏎
<P>⏎
253 とて烏帽子ばかりおし入れて、すこし起き上がらむとしたまへど、いと苦しげなり。白き衣どもの、なつかしうなよよかなるをあまた重ねて、衾ひきかけて臥したまへり。御座のあたりものきよげに、けはひ香うばしう、心にくくぞ住みなしたまへる。<BR>⏎
d1431<P>⏎
text36432 <A NAME="in33">[第三段 柏木、夕霧に遺言]</A><BR>255 
d1433<P>⏎
d1435<P>⏎
d1437<P>⏎
d1439<P>⏎
d1441<P>⏎
d1443<P>⏎
d1445<P>⏎
cd2:1446-447 <A HREF="#k16">さるは</A><A NAME="t16"></A>この世の別れ、避りがたきことは、いと多うなむ。<A HREF="#no8">親にも仕うまつりさし</A><A NAME="te8">て</A>、今さらに御心どもを悩まし、君に仕うまつることも半ばのほどにて、<A HREF="#no9">身を顧みる</A><A NAME="te9">方</A>、はたましてはかばかしからぬ恨みを留めつる大方の嘆きをば、さるものにて。<BR>⏎
<P>⏎
262 <A HREF="#k16">さるは</A><A NAME="t16"></A>この世の別れ、避りがたきことは、いと多うなむ。<A HREF="#no8">親にも仕うまつりさし</A><A NAME="te8">て</A>、今さらに御心どもを悩まし、君に仕うまつることも半ばのほどにて、<A HREF="#no9">身を顧みる</A><A NAME="te9">方</A>、はたましてはかばかしからぬ恨みを留めつる大方の嘆きをば、さるものにて。<BR>⏎
d1449<P>⏎
d1451<P>⏎
d1453<P>⏎
d1456<P>⏎
cd6:3457-462 「いかなる御心の鬼にかは。さらにさやうなる御けしきもなく、かく重りたまへる由をも聞きおどろき嘆きたまふこと、限りなうこそ口惜しがり申したまふめりしか。などかく思すことあるにては、今まで<A HREF="#k18">残い</A><A NAME="t18">た</A>まひつらむ。こなた<A HREF="#k19">かなた</A><A NAME="t19">明</A>らめ申すべかりけるものを。今はいふかひなしや」<BR>⏎
<P>⏎
 とて取り返さまほしう悲しく思さる。<BR>⏎
<P>⏎
 「げにいささかも隙ありつる折、聞こえうけたまはるべうこそはべりけれ。されどいとかう今日明日としもやはと、みづからながら知らぬ命のほどを、思ひのどめはべりけるもはかなくなむ。このことは、さらに御心より漏らしたまふまじ。さるべきついではべらむ折には、御用意加へたまへとて、聞こえおくになむ。<BR>⏎
<P>⏎
268-270 「いかなる御心の鬼にかは。さらにさやうなる御けしきもなく、かく重りたまへる由をも聞きおどろき嘆きたまふこと、限りなうこそ口惜しがり申したまふめりしか。などかく思すことあるにては、今まで<A HREF="#k18">残い</A><A NAME="t18">た</A>まひつらむ。こなた<A HREF="#k19">かなた</A><A NAME="t19">明</A>らめ申すべかりけるものを。今はいふかひなしや」<BR>⏎
 とて取り返さまほしう悲しく思さる。<BR>⏎
 「げにいささかも隙ありつる折、聞こえうけたまはるべうこそはべりけれ。されどいとかう今日明日としもやはと、みづからながら知らぬ命のほどを、思ひのどめはべりけるもはかなくなむ。このことは、さらに御心より漏らしたまふまじ。さるべきついではべらむ折には、御用意加へたまへとて、聞こえおくになむ。<BR>⏎
d1464<P>⏎
d1466<P>⏎
d1468<P>⏎
cd2:1469-470 と手かききこえたまふ。加持参る僧ども近う参り、上、大臣などおはし集りて、人びとも立ち騒げば、泣く泣く出でたまひぬ。<BR>⏎
<P>⏎
274 と手かききこえたまふ。加持参る僧ども近う参り、上、大臣などおはし集りて、人びとも立ち騒げば、泣く泣く出でたまひぬ。<BR>⏎
text36471 <A NAME="in34">[第四段 柏木、泡の消えるように死去]</A><BR>275 
d1472<P>⏎
d1474<P>⏎
cd2:1475-476 年ごろ、下の心こそねむごろに深くもなかりしか、大方には、いとあらまほしくもてなしかしづききこえて、気なつかしう、心ばへをかしう、うちとけぬさまにて過ぐいたまひければ、つらき節もことになし。ただ<BR>⏎
<P>⏎
277 年ごろ、下の心こそねむごろに深くもなかりしか、大方には、いとあらまほしくもてなしかしづききこえて、気なつかしう、心ばへをかしう、うちとけぬさまにて過ぐいたまひければ、つらき節もことになし。ただ<BR>⏎
d1478<P>⏎
d1480<P>⏎
d1482<P>⏎
d1484<P>⏎
d1486<P>⏎
d1488<P>⏎
d1490<P>⏎
cd2:1491-492 「若君の御ことを、さぞと思ひたりしも、げにかかるべき契りにてや、思ひのほかに心憂きこともありけむ」と思し寄るに、さまざまもの心細うて、うち泣かれたまひぬ。<BR>⏎
<P>⏎
285 「若君の御ことを、さぞと思ひたりしも、げにかかるべき契りにてや、思ひのほかに心憂きこともありけむ」と思し寄るに、さまざまもの心細うて、うち泣かれたまひぬ。<BR>⏎
text36493 <H4>第四章 光る源氏の物語 若君の五十日の祝い</H4>286 
text36494 <A NAME="in41">[第一段 三月、若君の五十日の祝い]</A><BR>287 
d1495<P>⏎
d1497<P>⏎
cd4:2498-501 「御心地は、さはやかになりたまひにたりや。いでやいとかひなくもはべるかな。例の御ありさまにて、かく見なしたてまつらましかば、いかにうれしうはべらまし。心憂く、思し捨てけること」<BR>⏎
<P>⏎
 と涙ぐみて怨みきこえたまふ。日々に渡りたまひて、今しも、やむごとなく限りなきさまにもてなしきこえたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
289-290 「御心地は、さはやかになりたまひにたりや。いでやいとかひなくもはべるかな。例の御ありさまにて、かく見なしたてまつらましかば、いかにうれしうはべらまし。心憂く、思し捨てけること」<BR>⏎
 と涙ぐみて怨みきこえたまふ。日々に渡りたまひて、今しも、やむごとなく限りなきさまにもてなしきこえたまふ。<BR>⏎
d1503<P>⏎
d1505<P>⏎
cd2:1506-507 とて南面に小さき御座などよそひて、参らせたまふ。御乳母、いとはなやかに装束きて、御前のもの、いろいろを尽くしたる籠物、桧破籠の心ばへどもを、内にも外にも、もとの心を知らぬことなれば、取り散らし、何心もなきを、「いと心苦しうまばゆきわざなりや」と思す。<BR>⏎
<P>⏎
293 とて南面に小さき御座などよそひて、参らせたまふ。御乳母、いとはなやかに装束きて、御前のもの、いろいろを尽くしたる籠物、桧破籠の心ばへどもを、内にも外にも、もとの心を知らぬことなれば、取り散らし、何心もなきを、「いと心苦しうまばゆきわざなりや」と思す。<BR>⏎
text36508 <A NAME="in42">[第二段 源氏と女三の宮の夫婦の会話]</A><BR>294 
d1509<P>⏎
d1511<P>⏎
d1513<P>⏎
cd6:3514-519 「いであな心憂。墨染こそ、なほいとうたて目もくるる色なりけれ。かやうにても、見たてまつることは、絶ゆまじきぞかしと、思ひ慰めはべれど、古りがたうわりなき心地する涙の人悪ろさを、いとかう思ひ捨てられたてまつる身の咎に思ひなすも、さまざまに胸いたう口惜しくなむ。<A HREF="#no12">取り返すものにもがなや</A><A NAME="te12">」</A><BR>⏎
<P>⏎
 とうち嘆きたまひて、<BR>⏎
<P>⏎
 「今はとて思し離れば、まことに御心と厭ひ捨てたまひけると、恥づかしう心憂くなむおぼゆべき。なほあはれと思せ」<BR>⏎
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297-299 「いであな心憂。墨染こそ、なほいとうたて目もくるる色なりけれ。かやうにても、見たてまつることは、絶ゆまじきぞかしと、思ひ慰めはべれど、古りがたうわりなき心地する涙の人悪ろさを、いとかう思ひ捨てられたてまつる身の咎に思ひなすも、さまざまに胸いたう口惜しくなむ。<A HREF="#no12">取り返すものにもがなや</A><A NAME="te12">」</A><BR>⏎
 とうち嘆きたまひて、<BR>⏎
 「今はとて思し離れば、まことに御心と厭ひ捨てたまひけると、恥づかしう心憂くなむおぼゆべき。なほあはれと思せ」<BR>⏎
d1521<P>⏎
d1523<P>⏎
d1525<P>⏎
d1527<P>⏎
d1529<P>⏎
text36530 <A NAME="in43">[第三段 源氏、老後の感懐]</A><BR>305 
d1531<P>⏎
d1533<P>⏎
cd9:5534-542 「あはれ残り少なき世に、生ひ出づべき人にこそ」<BR>⏎
<P>⏎
 とて抱き取りたまへば、いと心やすくうち笑みて、つぶつぶと肥えて白ううつくし。大将などの稚児生ひ、ほのかに思し出づるには似たまはず。女御の御宮たち、はた父帝の御方ざまに、王気づきて気高うこそおはしませ、ことにすぐれてめでたうしもおはせず。<BR>⏎
<P>⏎
 この君、いとあてなるに添へて、愛敬づき、まみの薫りて、笑がちなるなどを、いとあはれと見たまふ。思ひなしにや、なほいとようおぼえたりかし。ただ今ながら、眼居の<A HREF="#k22">のどかに</A><A NAME="t22">恥</A>づかしきさまも、やう離れて、薫りをかしき顔ざまなり。<BR>⏎
<P> 宮はさしも思し分かず人はた、さらに知らぬことなれば、ただ一所の御心の内にのみぞ、<BR>⏎
<P>⏎
 「あはれはかなかりける人の契りかな」<BR>⏎
<P>⏎
307-311 「あはれ残り少なき世に、生ひ出づべき人にこそ」<BR>⏎
 とて抱き取りたまへば、いと心やすくうち笑みて、つぶつぶと肥えて白ううつくし。大将などの稚児生ひ、ほのかに思し出づるには似たまはず。女御の御宮たち、はた父帝の御方ざまに、王気づきて気高うこそおはしませ、ことにすぐれてめでたうしもおはせず。<BR>⏎
 この君、いとあてなるに添へて、愛敬づき、まみの薫りて、笑がちなるなどを、いとあはれと見たまふ。思ひなしにや、なほいとようおぼえたりかし。ただ今ながら、眼居の<A HREF="#k22">のどかに</A><A NAME="t22">恥</A>づかしきさまも、やう離れて、薫りをかしき顔ざまなり。<BR>⏎
 宮はさしも思し分かず. 人はた、さらに知らぬことなれば、ただ一所の御心の内にのみぞ、<BR>⏎
 「あはれはかなかりける人の契りかな」<BR>⏎
d1544<P>⏎
d1546<P>⏎
cd2:1547-548 とうち誦うじたまふ。<A HREF="#no14">五十八</A><A NAME="te14">を</A>十取り捨てたる御齢なれど、末になりたる心地したまひて、いとものあはれに思さる。「<A HREF="#no15">汝が爺に</A><A NAME="te15">」</A>とも、諌めまほしう思しけむかし。<BR>⏎
<P>⏎
314 とうち誦うじたまふ。<A HREF="#no14">五十八</A><A NAME="te14">を</A>十取り捨てたる御齢なれど、末になりたる心地したまひて、いとものあはれに思さる。「<A HREF="#no15">汝が爺に</A><A NAME="te15">」</A>とも、諌めまほしう思しけむかし。<BR>⏎
text36549 <A NAME="in44">[第四段 源氏、女三の宮に嫌味を言う]</A><BR>315 
d1550<P>⏎
d1552<P>⏎
cd4:2553-556 など思して、色にも出だしたまはず。いと何心なう物語して笑ひたまへるまみ、口つきのうつくしきも、「心知らざらむ人はいかがあらむ。なほいとよく似通ひたりけり」と見たまふに、「親たちの、子だにあれかしと、泣いたまふらむにも、え見せず、人知れずはかなき形見ばかりをとどめ置きて、さばかり思ひ上がり、およすけたりし身を、心もて失ひつるよ」<BR>⏎
<P>⏎
 とあはれに惜しければ、めざましと思ふ心もひき返し、うち泣かれたまひぬ。<BR>⏎
<P>⏎
317-318 など思して、色にも出だしたまはず。いと何心なう物語して笑ひたまへるまみ、口つきのうつくしきも、「心知らざらむ人はいかがあらむ。なほいとよく似通ひたりけり」と見たまふに、「親たちの、子だにあれかしと、泣いたまふらむにも、え見せず、人知れずはかなき形見ばかりをとどめ置きて、さばかり思ひ上がり、およすけたりし身を、心もて失ひつるよ」<BR>⏎
 とあはれに惜しければ、めざましと思ふ心もひき返し、うち泣かれたまひぬ。<BR>⏎
d1558<P>⏎
cd6:3559-564 「この人をば、いかが見たまふや。かかる人を捨てて、背き果てたまひぬべき世にやありける。あな心憂」<BR>⏎
<P>⏎
 とおどろかしきこえたまへば、顔うち赤めておはす。<BR>⏎
<P>⏎
 「<A HREF="#no16">誰が世にか種は蒔き</A><A NAME="te16">し</A>と人問はば<BR>⏎
  いかが岩根の松は答へむ<BR>⏎
320-322 「この人をば、いかが見たまふや。かかる人を捨てて、背き果てたまひぬべき世にやありける。あな心憂」<BR>⏎
 とおどろかしきこえたまへば、顔うち赤めておはす。<BR>⏎
 「<A HREF="#no16">誰が世にか種は蒔き</A><A NAME="te16">し</A>と人問はば<BR>  いかが岩根の松は答へむ<BR>⏎
d1566<P>⏎
cd2:1567-568 など忍びて聞こえたまふに、御いらへもなうて、ひれふしたまへり。ことわりと思せば、しひても聞こえたまはず。<BR>⏎
<P>⏎
324 など忍びて聞こえたまふに、御いらへもなうて、ひれふしたまへり。ことわりと思せば、しひても聞こえたまはず。<BR>⏎
d1570<P>⏎
cd2:1571-572 と推し量りきこえたまふも、いと心苦しうなむ。<BR>⏎
<P>⏎
326 と推し量りきこえたまふも、いと心苦しうなむ。<BR>⏎
text36573 <A NAME="in45">[第五段 夕霧、事の真相に関心]</A><BR>327 
d1574<P>⏎
d1576<P>⏎
d1578<P>⏎
cd4:2579-582 と面影忘れがたうて、兄弟の君たちよりも、しひて悲しとおぼえたまひけり。<BR>⏎
<P>⏎
 「女宮のかく世を背きたまへるありさま、おどろおどろしき御悩みにもあらで、すがやかに思し立ちけるほどよ。またさりとも、許しきこえたまふべきことかは。<BR>⏎
<P>⏎
330-331 と面影忘れがたうて、兄弟の君たちよりも、しひて悲しとおぼえたまひけり。<BR>⏎
 「女宮のかく世を背きたまへるありさま、おどろおどろしき御悩みにもあらで、すがやかに思し立ちけるほどよ。またさりとも、許しきこえたまふべきことかは。<BR>⏎
d1584<P>⏎
cd4:2585-588 など取り集めて思ひくだくに、<BR>⏎
<P>⏎
 「なほ昔より絶えず見ゆる心ばへ、え忍ばぬ折々ありきかし。いとようもて静めたるうはべは、人よりけに用意あり、のどかに、何ごとをこの人の心のうちに思ふらむと、<A HREF="#k24">見る</A><A NAME="t24">人</A>も苦しきまでありしかど、すこし弱きところつきて、なよび過ぎたりしけぞかし。<BR>⏎
<P>⏎
333-334 など取り集めて思ひくだくに、<BR>⏎
 「なほ昔より絶えず見ゆる心ばへ、え忍ばぬ折々ありきかし。いとようもて静めたるうはべは、人よりけに用意あり、のどかに、何ごとをこの人の心のうちに思ふらむと、<A HREF="#k24">見る</A><A NAME="t24">人</A>も苦しきまでありしかど、すこし弱きところつきて、なよび過ぎたりしけぞかし。<BR>⏎
d1590<P>⏎
cd4:2591-594 など心一つに思へど、女君にだに聞こえ出でたまはず。さるべきついでなくて、院にもまだえ申したまはざりけり。さるはかかることをなむかすめし、と申し出でて、御けしきも見まほしかりけり。<BR>⏎
<P>⏎
 父大臣、母北の方は、涙のいとまなく思し沈みて、はかなく過ぐる日数をも知りたまはず、御わざの法服御装束、何くれのいそぎをも、君たち御方々、とりどりになむせさせたまひける。<BR>⏎
<P>⏎
336-337 など心一つに思へど、女君にだに聞こえ出でたまはず。さるべきついでなくて、院にもまだえ申したまはざりけり。さるはかかることをなむかすめし、と申し出でて、御けしきも見まほしかりけり。<BR>⏎
 父大臣、母北の方は、涙のいとまなく思し沈みて、はかなく過ぐる日数をも知りたまはず、御わざの法服御装束、何くれのいそぎをも、君たち御方々、とりどりになむせさせたまひける。<BR>⏎
d1596<P>⏎
d1598<P>⏎
cd2:1599-600 とて亡きやうに思し惚れたり。<BR>⏎
<P>⏎
340 とて亡きやうに思し惚れたり。<BR>⏎
text36601 <H4>第五章 夕霧の物語 柏木哀惜</H4>341 
text36602 <A NAME="in51">[第一段 夕霧、一条宮邸を訪問]</A><BR>342 
d1603<P>⏎
cd2:1604-605 一条の宮には、ましておぼつかなうて別れたまひにし恨みさへ添ひて、日ごろ経るままに、広き宮の内、人気少なう心細げにて、親しく使ひ慣らしたまひし人は、なほ参り訪らひきこゆ。<BR>⏎
<P>⏎
343 一条の宮には、ましておぼつかなうて別れたまひにし恨みさへ添ひて、日ごろ経るままに、広き宮の内、人気少なう心細げにて、親しく使ひ慣らしたまひし人は、なほ参り訪らひきこゆ。<BR>⏎
d1607<P>⏎
d1609<P>⏎
cd4:2610-613 「あはれ故殿の御けはひとこそ、うち忘れては思ひつれ」<BR>⏎
<P>⏎
 とて泣くもあり。大将殿のおはしたるなりけり。御消息聞こえ入れたまへり。例の弁の君、宰相などのおはしたると思しつるを、いと恥づかしげにきよらなるもてなしにて入りたまへり。<BR>⏎
<P>⏎
346-347 「あはれ故殿の御けはひとこそ、うち忘れては思ひつれ」<BR>⏎
 とて泣くもあり。大将殿のおはしたるなりけり。御消息聞こえ入れたまへり。例の弁の君、宰相などのおはしたると思しつるを、いと恥づかしげにきよらなるもてなしにて入りたまへり。<BR>⏎
d1615<P>⏎
d1617<P>⏎
d1619<P>⏎
d1621<P>⏎
cd2:1622-623 とてしばしばおし拭ひ、鼻うちかみたまふ。あざやかに気高きものから、なつかしうなまめいたり。<BR>⏎
<P>⏎
352 とてしばしばおし拭ひ、鼻うちかみたまふ。あざやかに気高きものから、なつかしうなまめいたり。<BR>⏎
text36624 <A NAME="in52">[第二段 母御息所の嘆き]</A><BR>353 
d1625<P>⏎
d1627<P>⏎
d1629<P>⏎
cd6:3630-635 おのづから近き御仲らひにて、聞き及ばせたまふやうもはべりけむ。初めつ方より、をさをさうけひききこえざりし御ことを、大臣の御心むけも心苦しう、院にもよろしきやうに思し許いたる御けしきなどのはべしかば、さらばみづからの心おきての及ばぬなりけりと、思ひたまへなしてなむ、見たてまつりつるを、かく夢のやうなることを見たまふるに、思ひたまへ合はすれば、みづからの心のほどなむ、同じうは強うもあらがひきこえましを、と思ひはべるに、なほいと悔しう。それはかやうにしも思ひ寄りはべらざりきかし。<BR>⏎
<P>⏎
 皇女たちは、おぼろけのことならで、悪しくも善くも、かやうに世づきたまふことは、え心にくからぬことなりと、古めき心には思ひはべしを、いづかたにもよらず、中空に憂き<A HREF="#k29">御宿世</A><A NAME="t29">な</A>りければ、何かは、かかるついでに煙にも紛れたまひなむは、この御身のための人聞きなどは、ことに口惜しかるまじけれど、さりとても、しかすくよかに、え思ひ静むまじう、悲しう見たてまつりはべるに、いとうれしう、浅からぬ御訪らひのたびたびになりはべめるを、<A HREF="#k30">有り難うもと</A><A NAME="t30">聞</A>こえはべるも、さらばかの御契りありけるにこそはと、思ふやうにしも見えざりし御心ばへなれど、今はとて、これかれにつけおきたまひける御遺言の、あはれなるになむ、<A HREF="#no17">憂きにもうれしき瀬はまじり</A><A NAME="te17">は</A>べりける」<BR>⏎
<P>⏎
 とていといたう泣いたまふけはひなり。<BR>⏎
<P>⏎
356-358 おのづから近き御仲らひにて、聞き及ばせたまふやうもはべりけむ。初めつ方より、をさをさうけひききこえざりし御ことを、大臣の御心むけも心苦しう、院にもよろしきやうに思し許いたる御けしきなどのはべしかば、さらばみづからの心おきての及ばぬなりけりと、思ひたまへなしてなむ、見たてまつりつるを、かく夢のやうなることを見たまふるに、思ひたまへ合はすれば、みづからの心のほどなむ、同じうは強うもあらがひきこえましを、と思ひはべるに、なほいと悔しう。それはかやうにしも思ひ寄りはべらざりきかし。<BR>⏎
 皇女たちは、おぼろけのことならで、悪しくも善くも、かやうに世づきたまふことは、え心にくからぬことなりと、古めき心には思ひはべしを、いづかたにもよらず、中空に憂き<A HREF="#k29">御宿世</A><A NAME="t29">な</A>りければ、何かは、かかるついでに煙にも紛れたまひなむは、この御身のための人聞きなどは、ことに口惜しかるまじけれど、さりとても、しかすくよかに、え思ひ静むまじう、悲しう見たてまつりはべるに、いとうれしう、浅からぬ御訪らひのたびたびになりはべめるを、<A HREF="#k30">有り難うもと</A><A NAME="t30">聞</A>こえはべるも、さらばかの御契りありけるにこそはと、思ふやうにしも見えざりし御心ばへなれど、今はとて、これかれにつけおきたまひける御遺言の、あはれなるになむ、<A HREF="#no17">憂きにもうれしき瀬はまじり</A><A NAME="te17">は</A>べりける」<BR>⏎
 とていといたう泣いたまふけはひなり。<BR>⏎
text36636 <A NAME="in53">[第三段 夕霧、御息所と和歌を詠み交わす]</A><BR>359 
d1637<P>⏎
d1639<P>⏎
cd6:3640-645 「あやしう、いとこよなくおよすけたまへりし人の、かかるべうてや、この二三年のこなたなむ、いたうしめりて、もの心細げに見えたまひしかば、あまり世のことわりを思ひ知り、もの深うなりぬる人の、澄み過ぎて、かかる例、心うつくしからず、かへりては、あざやかなる方の<A HREF="#k31">おぼえ</A><A NAME="t31">薄</A>らぐものなりとなむ、常にはかばかしからぬ心に諌めきこえしかば、心浅しと思ひたまへりし。よろづよりも、人にまさりて、げにかの思し嘆くらむ御心の内の、かたじけなけれど、いと心苦しうもはべるかな」<BR>⏎
<P>⏎
 などなつかしうこまやかに聞こえたまひて、ややほど経てぞ出でたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
 かの君は、五六年のほどのこのかみなりしかど、なほいと若やかに、なまめき、あいだれてものしたまひし。これはいとすくよかに重々しく、男々しきけはひして、顔のみぞいと若うきよらなること、人にすぐれたまへる。若き人びとは、もの悲しさもすこし紛れて見出だしたてまつる。<BR>⏎
<P>⏎
361-363 「あやしう、いとこよなくおよすけたまへりし人の、かかるべうてや、この二三年のこなたなむ、いたうしめりて、もの心細げに見えたまひしかば、あまり世のことわりを思ひ知り、もの深うなりぬる人の、澄み過ぎて、かかる例、心うつくしからず、かへりては、あざやかなる方の<A HREF="#k31">おぼえ</A><A NAME="t31">薄</A>らぐものなりとなむ、常にはかばかしからぬ心に諌めきこえしかば、心浅しと思ひたまへりし。よろづよりも、人にまさりて、げにかの思し嘆くらむ御心の内の、かたじけなけれど、いと心苦しうもはべるかな」<BR>⏎
 などなつかしうこまやかに聞こえたまひて、ややほど経てぞ出でたまふ。<BR>⏎
 かの君は、五六年のほどのこのかみなりしかど、なほいと若やかに、なまめき、あいだれてものしたまひし。これはいとすくよかに重々しく、男々しきけはひして、顔のみぞいと若うきよらなること、人にすぐれたまへる。若き人びとは、もの悲しさもすこし紛れて見出だしたてまつる。<BR>⏎
d1647<P>⏎
d1649<P>⏎
d1651<P>⏎
cd3:1652-654 「時しあれば変はらぬ色に匂ひけり<BR>⏎
  片枝枯れにし宿の桜も」<BR>⏎
<P>⏎
367 「時しあれば変はらぬ色に匂ひけり<BR>  片枝枯れにし宿の桜も」<BR>⏎
d1656<P>⏎
cd5:2657-661 「この春は<A HREF="#no20">柳の芽にぞ玉はぬく</A><A NAME="te20"><BR>⏎
  咲</A>き散る花の行方知らねば」<BR>⏎
<P>⏎
 と聞こえたまふ。いと深きよしにはあらねど、今めかしう、かどありとは言はれたまひし更衣なりけり。「げにめやすきほどの用意なめり」と見たまふ。<BR>⏎
<P>⏎
369-370 「この春は<A HREF="#no20">柳の芽にぞ玉はぬく</A><A NAME="te20"><BR>  咲</A>き散る花の行方知らねば」<BR>⏎
 と聞こえたまふ。いと深きよしにはあらねど、今めかしう、かどありとは言はれたまひし更衣なりけり。「げにめやすきほどの用意なめり」と見たまふ。<BR>⏎
text36662 <A NAME="in54">[第四段 夕霧、太政大臣邸を訪問]</A><BR>371 
d1663<P>⏎
d1665<P>⏎
d1667<P>⏎
d1669<P>⏎
d1671<P>⏎
d1673<P>⏎
cd2:1674-675 うちひそみつつぞ見たまふ御さま、例は心強うあざやかに、誇りかなる御けしき名残なく、人悪ろし。さるは異なることなかめれど、この「玉はぬく」とある節の、げにと思さるるに、心乱れて、久しうえためらひたまはず。<BR>⏎
<P>⏎
377 うちひそみつつぞ見たまふ御さま、例は心強うあざやかに、誇りかなる御けしき名残なく、人悪ろし。さるは異なることなかめれど、この「玉はぬく」とある節の、げにと思さるるに、心乱れて、久しうえためらひたまはず。<BR>⏎
d1677<P>⏎
d1679<P>⏎
d1681<P>⏎
cd2:1682-683 と空を仰ぎて眺めたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
381 と空を仰ぎて眺めたまふ。<BR>⏎
d1685<P>⏎
cd3:1686-688 「木の下の雫に濡れてさかさまに<BR>⏎
  霞の衣着たる春かな」<BR>⏎
<P>⏎
383 「木の下の雫に濡れてさかさまに<BR>  霞の衣着たる春かな」<BR>⏎
d1690<P>⏎
cd3:1691-693 「亡き人も思はざりけむうち捨てて<BR>⏎
  夕べの霞君着たれとは」<BR>⏎
<P>⏎
385 「亡き人も思はざりけむうち捨てて<BR>  夕べの霞君着たれとは」<BR>⏎
d1695<P>⏎
cd3:1696-698 「恨めしや霞の衣誰れ着よと<BR>⏎
  春よりさきに花の散りけむ」<BR>⏎
<P>⏎
387 「恨めしや霞の衣誰れ着よと<BR>  春よりさきに花の散りけむ」<BR>⏎
d1700<P>⏎
text36701 <A NAME="in55">[第五段 四月、夕霧の一条宮邸を訪問]</A><BR>389 
d1702<P>⏎
d1704<P>⏎
d1706<P>⏎
d1708<P>⏎
d1710<P>⏎
d1712<P>⏎
d1714<P>⏎
d1716<P>⏎
cd3:1717-719 「ことならば馴らしの枝にならさなむ<BR>⏎
  <A HREF="#no22">葉守の神</A><A NAME="te22">の</A>許しありきと<BR>⏎
<P>⏎
397 「ことならば馴らしの枝にならさなむ<BR>  <A HREF="#no22">葉守の神</A><A NAME="te22">の</A>許しありきと<BR>⏎
d1721<P>⏎
cd2:1722-723 とて長押に寄りゐたまへり。<BR>⏎
<P>⏎
399 とて長押に寄りゐたまへり。<BR>⏎
d1725<P>⏎
cd5:2726-730 とこれかれつきしろふ。この御あへしらひきこゆる少将の君といふ人して、<BR>⏎
<P>⏎
 「柏木に葉守の神はまさずとも<BR>⏎
  人ならすべき宿の梢か<BR>⏎
<P>⏎
401-402 とこれかれつきしろふ。この御あへしらひきこゆる少将の君といふ人して、<BR>⏎
 「柏木に葉守の神はまさずとも<BR>  人ならすべき宿の梢か<BR>⏎
d1732<P>⏎
d1734<P>⏎
text36735 <A NAME="in56">[第六段 夕霧、御息所と対話]</A><BR>405 
d1736<P>⏎
d1738<P>⏎
d1740<P>⏎
cd2:1741-742 とてげに悩ましげなる御けはひなり。<BR>⏎
<P>⏎
408 とてげに悩ましげなる御けはひなり。<BR>⏎
d1744<P>⏎
cd4:2745-748 と慰めきこえたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
 「この宮こそ、聞きしよりは心の奥見えたまへ、あはれげに、いかに人笑はれなることを取り添へて思すらむ」<BR>⏎
<P>⏎
410-411 と慰めきこえたまふ。<BR>⏎
 「この宮こそ、聞きしよりは心の奥見えたまへ、あはれげに、いかに人笑はれなることを取り添へて思すらむ」<BR>⏎
d1750<P>⏎
cd2:1751-752 「容貌ぞいとまほにはえものしたまふまじけれど、いと見苦しうかたはらいたきほどにだにあらずは、などて<A HREF="#no23">見る目により人をも思ひ飽き</A><A NAME="te23">、</A>またさるまじきに心をも惑はすべきぞ。さま悪しや。ただ心ばせのみこそ、言ひもてゆかむには、やむごとなかるべけれ」と思ほす。<BR>⏎
<P>⏎
413 「容貌ぞいとまほにはえものしたまふまじけれど、いと見苦しうかたはらいたきほどにだにあらずは、などて<A HREF="#no23">見る目により人をも思ひ飽き</A><A NAME="te23">、</A>またさるまじきに心をも惑はすべきぞ。さま悪しや。ただ心ばせのみこそ、言ひもてゆかむには、やむごとなかるべけれ」と思ほす。<BR>⏎
d1754<P>⏎
cd2:1755-756 などわざと懸想びてはあらねど、ねむごろにけしきばみて聞こえたまふ。直衣姿いとあざやかにて、丈だちものものしう、<A HREF="#k39">そぞろか</A><A NAME="t39">に</A>ぞ見えたまひける。<BR>⏎
<P>⏎
415 などわざと懸想びてはあらねど、ねむごろにけしきばみて聞こえたまふ。直衣姿いとあざやかにて、丈だちものものしう、<A HREF="#k39">そぞろか</A><A NAME="t39">に</A>ぞ見えたまひける。<BR>⏎
d1758<P>⏎
cd4:2759-762 「これは男々しうはなやかに、あなきよらと、ふと見えたまふにほひぞ、人に似ぬや」<BR>⏎
<P>⏎
 とうち<A HREF="#k40">ささめき</A><A NAME="t40">て</A>、<BR>⏎
<P>⏎
417-418 「これは男々しうはなやかに、あなきよらと、ふと見えたまふにほひぞ、人に似ぬや」<BR>⏎
 とうち<A HREF="#k40">ささめき</A><A NAME="t40">て</A>、<BR>⏎
d1764<P>⏎
cd2:1765-766 など人びと言ふめり。<BR>⏎
<P>⏎
420 など人びと言ふめり。<BR>⏎
d1768<P>⏎
cd4:2769-772 とうち口ずさびて、それもいと近き世のことなれば、さまざまに近う遠う、心乱るやうなりし世の中に、高きも下れるも、惜しみあたらしがらぬはなきも、むべむべしき方をばさるものにて、あやしう情けを立てたる人にぞものしたまひければ、さしもあるまじき公人、女房などの年古めき<A HREF="#k41">たるども</A><A NAME="t41">さ</A>へ、恋ひ悲しびきこゆる。まして上には、御遊びなどの折ごとにも、まづ思し出でてなむ、しのばせたまひける。<BR>⏎
<P>⏎
 「あはれ衛門督」<BR>⏎
<P>⏎
422-423 とうち口ずさびて、それもいと近き世のことなれば、さまざまに近う遠う、心乱るやうなりし世の中に、高きも下れるも、惜しみあたらしがらぬはなきも、むべむべしき方をばさるものにて、あやしう情けを立てたる人にぞものしたまひければ、さしもあるまじき公人、女房などの年古めき<A HREF="#k41">たるども</A><A NAME="t41">さ</A>へ、恋ひ悲しびきこゆる。まして上には、御遊びなどの折ごとにも、まづ思し出でてなむ、しのばせたまひける。<BR>⏎
 「あはれ衛門督」<BR>⏎
d1774<P>⏎
d2776-777
<P>⏎
text36778 <a name="in61">【出典】<BR>426 
c1779</a><A NAME="no1">出典1</A> 大方の我が身一つの憂きからになべての世をも恨みつるかな(拾遺集恋五-九五三 紀貫之)<A HREF="#te1">(戻)</A><BR>⏎
427<A NAME="no1">出典1</A> 大方の我が身一つの憂きからになべての世をも恨みつるかな(拾遺集恋五-九五三 紀貫之)<A HREF="#te1">(戻)</A><BR>⏎
d1803
text36804<p> <a name="in62">【校訂】<BR>451 
c1806</a><A NAME="k01">校訂1</A> 御産養--御(御/+う)ふやしなひ<A HREF="#t01">(戻)</A><BR>⏎
453<A NAME="k01">校訂1</A> 御産養--御(御/+う)ふやしなひ<A HREF="#t01">(戻)</A><BR>⏎
d1847</p>⏎
d1856</p>⏎
i0506
diffsrc/original/text37.htmlsrc/modified/text37.html
cd2:18-9<body background="wallppr063.gif">⏎
First updated 9/20/1996(ver.1-1)<BR>⏎
8<BODY>⏎
cd3:210-12Last updated 6/4/2010(ver.2-2)<BR>⏎
渋谷栄一校訂(C)<BR>⏎
<P
>⏎
9-10<ADDRESS>Last updated 6/4/2010(ver.2-2)<BR>⏎
渋谷栄一校訂(C)</ADDRESS>⏎
d114<P>⏎
d116<P>⏎
d144<P>⏎
d168<P>⏎
d171<P>⏎
text3772 <H4>第一章 光る源氏の物語 薫の成長</H4>65 
text3773 <A NAME="in11">[第一段 柏木一周忌の法要]</A><BR>66 
d174<P>⏎
cd2:175-76 故権大納言のはかなく亡せたまひにし悲しさを、飽かず口惜しきものに、恋ひしのびたまふ人多かり。六条院にも、おほかたにつけてだに、世にめやすき人の亡くなるをば、惜しみたまふ御心に、ましてこれは、朝夕に親しく参り馴れつつ、人よりも御心とどめ思したりしかば、<A HREF="#k01">いかにぞやと</A><A NAME="t01">、</A>思し出づることはありながら、あはれは多く、<A HREF="#k02">折々に</A><A NAME="t02">つ</A>けてしのびたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
67 故権大納言のはかなく亡せたまひにし悲しさを、飽かず口惜しきものに、恋ひしのびたまふ人多かり。六条院にも、おほかたにつけてだに、世にめやすき人の亡くなるをば、惜しみたまふ御心に、ましてこれは、朝夕に親しく参り馴れつつ、人よりも御心とどめ思したりしかば、<A HREF="#k01">いかにぞやと</A><A NAME="t01">、</A>思し出づることはありながら、あはれは多く、<A HREF="#k02">折々に</A><A NAME="t02">つ</A>けてしのびたまふ。<BR>⏎
d178<P>⏎
cd2:179-80 大将の君も、ことども多くしたまひ、とりもちてねむごろに営みたまふ。かの一条の宮をも、このほどの御心ざし深く訪らひきこえたまふ。兄弟の君たちよりもまさりたる御心のほどを、いとかくは思ひきこえざりきと、大臣上も、喜びきこえたまふ。亡き後にも、世のおぼえ重くものしたまひけるほどの見ゆるに、いみじうあたらしうのみ、思し焦がるること、尽きせず。<BR>⏎
<P>⏎
69 大将の君も、ことども多くしたまひ、とりもちてねむごろに営みたまふ。かの一条の宮をも、このほどの御心ざし深く訪らひきこえたまふ。兄弟の君たちよりもまさりたる御心のほどを、いとかくは思ひきこえざりきと、大臣上も、喜びきこえたまふ。亡き後にも、世のおぼえ重くものしたまひけるほどの見ゆるに、いみじうあたらしうのみ、思し焦がるること、尽きせず。<BR>⏎
text3781 <A NAME="in12">[第二段 朱雀院、女三の宮へ山菜を贈る]</A><BR>70 
d182<P>⏎
d184<P>⏎
d186<P>⏎
d188<P>⏎
cd3:189-91  世を別れ入りなむ道はおくるとも<BR>⏎
  同じところを君も尋ねよ<BR>⏎
<P>⏎
74  世を別れ入りなむ道はおくるとも<BR>  同じところを君も尋ねよ<BR>⏎
d193<P>⏎
cd2:194-95 と聞こえたまへるを、涙ぐみて見たまふほどに、大殿の君渡りたまへり。例ならず、御前近き櫑子どもを、「なぞあやし」と御覧ずるに、院の御文なりけり。見たまへば、いとあはれなり。<BR>⏎
<P>⏎
76 と聞こえたまへるを、涙ぐみて見たまふほどに、大殿の君渡りたまへり。例ならず、御前近き櫑子どもを、「なぞあやし」と御覧ずるに、院の御文なりけり。見たまへば、いとあはれなり。<BR>⏎
d197<P>⏎
cd2:198-99 などこまやかに書かせたまへり。この「同じところ」の御ともなひを、ことにをかしき節もなき聖言葉なれど、「げにさぞ思すらむかし。我さへおろかなるさまに見えたてまつりて、いとどうしろめたき御思ひの添ふべかめるを、いといとほし」と思す。<BR>⏎
<P>⏎
78 などこまやかに書かせたまへり。この「同じところ」の御ともなひを、ことにをかしき節もなき. 聖言葉なれど、「げにさぞ思すらむかし。我さへおろかなるさまに見えたてまつりて、いとどうしろめたき御思ひの添ふべかめるを、いといとほし」と思す。<BR>⏎
d1101<P>⏎
cd3:1102-104 「憂き世にはあらぬところのゆかしくて<BR>⏎
  背く山路に思ひこそ入れ」<BR>⏎
<P>⏎
80 「憂き世にはあらぬところのゆかしくて<BR>  背く山路に思ひこそ入れ」<BR>⏎
d1106<P>⏎
d1108<P>⏎
cd2:1109-110 今は、まほにも見えたてまつりたまはず、いとうつくしうらうたげなる御額髪、面つきのをかしさ、ただ稚児のやうに見えたまひて、いみじうらうたきを見たてまつりたまふにつけては、「などかうはなりにしことぞ」と、罪得ぬべく思さるれば、御几帳ばかり隔てて、またいとこよなう気遠く、疎々しうはあらぬほどに、もてなしきこえてぞおはしける。<BR>⏎
<P>⏎
83 今は、まほにも見えたてまつりたまはず、いとうつくしうらうたげなる御額髪、面つきのをかしさ、ただ稚児のやうに見えたまひて、いみじうらうたきを見たてまつりたまふにつけては、「などかうはなりにしことぞ」と、罪得ぬべく思さるれば、御几帳ばかり隔てて、またいとこよなう気遠く、疎々しうはあらぬほどに、もてなしきこえてぞおはしける。<BR>⏎
text37111 <A NAME="in13">[第三段 若君、竹の子を噛る]</A><BR>84 
d1112<P>⏎
d1114<P>⏎
d1116<P>⏎
d1118<P>⏎
cd2:1119-120 「かれはいとかやうに際離れたるきよらはなかりしものを、いかでかからむ。宮にも似たてまつらず、今より気高くものものしう、さま異に見えたまへるけしきなどは、わが御鏡の影にも似げなからず」見なされたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
88 「かれはいとかやうに際離れたるきよらはなかりしものを、いかでかからむ。宮にも似たてまつらず、今より気高くものものしう、さま異に見えたまへるけしきなどは、わが御鏡の影にも似げなからず」見なされたまふ。<BR>⏎
d1122<P>⏎
cd4:2123-126 「あならうがはしや。いと<A HREF="#k04">不便</A><A NAME="t04">な</A>り。かれ取り隠せ。食ひ物に目とどめたまふと、もの言ひさがなき女房もこそ言ひなせ」<BR>⏎
<P>⏎
 とて笑ひたまふ。かき抱きたまひて、<BR>⏎
<P>⏎
90-91 「あならうがはしや。いと<A HREF="#k04">不便</A><A NAME="t04">な</A>り。かれ取り隠せ。食ひ物に目とどめたまふと、もの言ひさがなき女房もこそ言ひなせ」<BR>⏎
 とて笑ひたまふ。かき抱きたまひて、<BR>⏎
d1128<P>⏎
cd8:4129-136 あはれそのおのおのの生ひゆく末までは、見果てむとすらむやは。<A HREF="#no1">花の盛りは、ありなめど</A><A NAME="te1">」</A><BR>⏎
<P>⏎
 <A HREF="#k06">と</A><A NAME="t06"></A>うちまもりきこえたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
 「うたてゆゆしき御ことにも」<BR>⏎
<P>⏎
 と人びとは聞こゆ。<BR>⏎
<P>⏎
93-96 あはれそのおのおのの生ひゆく末までは、見果てむとすらむやは。<A HREF="#no1">花の盛りは、ありなめど</A><A NAME="te1">」</A><BR>⏎
 <A HREF="#k06">と</A><A NAME="t06"></A>うちまもりきこえたまふ。<BR>⏎
 「うたてゆゆしき御ことにも」<BR>⏎
 と人びとは聞こゆ。<BR>⏎
d1138<P>⏎
d1140<P>⏎
cd5:2141-145 「<A HREF="#no2">憂き節も忘れず</A><A NAME="te2">な</A>がら呉竹の<BR>⏎
  こは捨て難きものにぞありける」<BR>⏎
<P>⏎
 と率て放ちて、のたまひかくれど、うち笑ひて、何とも思ひたらず、いとそそかしう、這ひ下り騷ぎたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
99-100 「<A HREF="#no2">憂き節も忘れず</A><A NAME="te2">な</A>がら呉竹の<BR>  こは捨て難きものにぞありける」<BR>⏎
 と率て放ちて、のたまひかくれど、うち笑ひて、何とも思ひたらず、いとそそかしう、這ひ下り騷ぎたまふ。<BR>⏎
d1147<P>⏎
d1149<P>⏎
cd2:1150-151 とすこしは思し直さる。みづからの御宿世も、なほ飽かぬこと多かり。<BR>⏎
<P>⏎
103 とすこしは思し直さる。みづからの御宿世も、なほ飽かぬこと多かり。<BR>⏎
d1153<P>⏎
d1155<P>⏎
text37156 <H4>第二章 夕霧の物語 柏木遺愛の笛</H4>106 
text37157 <A NAME="in21">[第一段 夕霧、一条宮邸を訪問]</A><BR>107 
d1158<P>⏎
cd4:2159-162 大将の君は、かの今はのとぢめにとどめし一言を、心ひとつに思ひ出でつつ、「いかなりしことぞ」とは、いと聞こえまほしう、御けしきもゆかしきを、ほの心得て思ひ寄らるることもあれば、なかなかうち出でて聞こえむもかたはらいたくて、「いかならむついでに、この<A HREF="#k07">事の</A><A NAME="t07">詳</A>しきありさまも明きらめ、またかの人の思ひ入りたりしさまをも聞こしめさむ」と、思ひわたりたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
 秋の夕べのものあはれなるに、一条の宮を思ひやりきこえたまひて、渡りたまへり。うちとけしめやかに、御琴どもなど弾きたまふほどなるべし。深くもえ取りやらで、やがてその南の廂に入れたてまつりたまへり。端つ方なりける人の、ゐざり入りつるけはひどもしるく、衣の音なひも、おほかたの匂ひ香うばしく、心にくきほどなり。<BR>⏎
<P>⏎
108-109 大将の君は、かの今はのとぢめにとどめし一言を、心ひとつに思ひ出でつつ、「いかなりしことぞ」とは、いと聞こえまほしう、御けしきもゆかしきを、ほの心得て思ひ寄らるることもあれば、なかなかうち出でて聞こえむもかたはらいたくて、「いかならむついでに、この<A HREF="#k07">事の</A><A NAME="t07">詳</A>しきありさまも明きらめ、またかの人の思ひ入りたりしさまをも聞こしめさむ」と、思ひわたりたまふ。<BR>⏎
 秋の夕べのものあはれなるに、一条の宮を思ひやりきこえたまひて、渡りたまへり。うちとけしめやかに、御琴どもなど弾きたまふほどなるべし。深くもえ取りやらで、やがてその南の廂に入れたてまつりたまへり。端つ方なりける人の、ゐざり入りつるけはひどもしるく、衣の音なひも、おほかたの匂ひ香うばしく、心にくきほどなり。<BR>⏎
d1164<P>⏎
text37165 <A NAME="in22">[第二段 柏木遺愛の琴を弾く]</A><BR>111 
d1166<P>⏎
d1168<P>⏎
d1170<P>⏎
cd2:1171-172 など思ひ続けつつ、掻き鳴らしたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
114 など思ひ続けつつ、掻き鳴らしたまふ。<BR>⏎
d1174<P>⏎
cd2:1175-176 「あはれいとめづらかなる音に掻き鳴らしたまひしはや。この御琴にも籠もりてはべらむかし。承りあらはしてしがな」<BR>⏎
<P>⏎
116 「あはれいとめづらかなる音に掻き鳴らしたまひしはや。この御琴にも籠もりてはべらむかし。承りあらはしてしがな」<BR>⏎
d1178<P>⏎
d1180<P>⏎
d1182<P>⏎
d1184<P>⏎
cd4:2185-188 とうち眺めて、琴は押しやりたまへれば、<BR>⏎
<P>⏎
 「かれなほさらば、声に伝はることもやと、聞きわくばかり鳴らさせたまへ。ものむつかしう思うたまへ沈める<A HREF="#no7">耳をだに、明きらめ</A><A NAME="te7">は</A>べらむ」<BR>⏎
<P>⏎
121-122 とうち眺めて、琴は押しやりたまへれば、<BR>⏎
 「かれなほさらば、声に伝はることもやと、聞きわくばかり鳴らさせたまへ。ものむつかしう思うたまへ沈める<A HREF="#no7">耳をだに、明きらめ</A><A NAME="te7">は</A>べらむ」<BR>⏎
d1191<P>⏎
cd2:1192-193 とて御簾のもと近く押し寄せたまへど、とみにしも受けひきたまふまじきことなれば、しひても聞こえたまはず。<BR>⏎
<P>⏎
125 とて御簾のもと近く押し寄せたまへど、とみにしも受けひきたまふまじきことなれば、しひても聞こえたまはず。<BR>⏎
text37194 <A NAME="in23">[第三段 夕霧、想夫恋を弾く]</A><BR>126 
d1195<P>⏎
d1197<P>⏎
cd7:3198-204 「思ひ及び顔なるは、かたはらいたけれど、これはこと問はせたまふべくや」<BR>⏎
<P>⏎
 とて切に簾の内をそそのかしきこえたまへど、ましてつつましきさしいらへなれば、宮はただものをのみあはれと思し続けたるに、<BR>⏎
<P>⏎
 「<A HREF="#no9">ことに出でて言はぬも言ふにまさる</A><A NAME="te9">と</A>は<BR>⏎
  人に恥ぢたるけしきをぞ見る」<BR>⏎
<P>⏎
128-130 「思ひ及び顔なるは、かたはらいたけれど、これはこと問はせたまふべくや」<BR>⏎
 とて切に簾の内をそそのかしきこえたまへど、ましてつつましきさしいらへなれば、宮はただものをのみあはれと思し続けたるに、<BR>⏎
 「<A HREF="#no9">ことに出でて言はぬも言ふにまさる</A><A NAME="te9">と</A>は<BR>  人に恥ぢたるけしきをぞ見る」<BR>⏎
cd3:1206-208 「深き夜のあはればかりは聞きわけど<BR>⏎
  ことより顔にえやは弾きける」<BR>⏎
<P>⏎
132 「深き夜のあはればかりは聞きわけど<BR>  ことより顔にえやは弾きける」<BR>⏎
d1210<P>⏎
d1212<P>⏎
cd2:1213-214 などまほにはあらねど、うち匂はしおきて出でたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
135 などまほにはあらねど、うち匂はしおきて出でたまふ。<BR>⏎
text37215 <A NAME="in24">[第四段 御息所、夕霧に横笛を贈る]</A><BR>136 
d1216<P>⏎
d1218<P>⏎
cd2:1219-220 とて御贈り物に笛を添へてたてまつりたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
138 とて御贈り物に笛を添へてたてまつりたまふ。<BR>⏎
d1222<P>⏎
d1224<P>⏎
d1226<P>⏎
cd2:1227-228 とて見たまふに、これもげに世とともに身に添へてもてあそびつつ、<BR>⏎
<P>⏎
142 とて見たまふに、これもげに世とともに身に添へてもてあそびつつ、<BR>⏎
d1230<P>⏎
cd2:1231-232 とをりをり聞こえごちたまひしを思ひ出でたまふに、今すこしあはれ多く添ひて、試みに吹き鳴らす。盤渉調の半らばかり吹きさして、<BR>⏎
<P>⏎
144 とをりをり聞こえごちたまひしを思ひ出でたまふに、今すこしあはれ多く添ひて、試みに吹き鳴らす。盤渉調の半らばかり吹きさして、<BR>⏎
d1234<P>⏎
cd10:4235-244 とて出でたまふに、<BR>⏎
<P>⏎
 「露しげきむぐらの宿にいにしへの<BR>⏎
  秋に変はらぬ虫の声かな」<BR>⏎
<P>⏎
 と聞こえ出だしたまへり。<BR>⏎
<P>⏎
 「横笛の調べはことに変はらぬを<BR>⏎
  むなしくなりし音こそ尽きせね」<BR>⏎
<P>⏎
146-149 とて出でたまふに、<BR>⏎
 「露しげきむぐらの宿にいにしへの<BR>  秋に変はらぬ虫の声かな」<BR>⏎
 と聞こえ出だしたまへり。<BR>⏎
 「横笛の調べはことに変はらぬを<BR>  むなしくなりし音こそ尽きせね」<BR>⏎
d1246<P>⏎
text37247 <A NAME="in25">[第五段 帰宅して、故人を想う]</A><BR>151 
d1248<P>⏎
d1250<P>⏎
d1252<P>⏎
cd2:1253-254 など人の聞こえ知らせければ、かやうに夜更かしたまふもなま憎くて、入りたまふをも聞く聞く、寝たるやうにてものしたまふなるべし。<BR>⏎
<P>⏎
154 など人の聞こえ知らせければ、かやうに夜更かしたまふもなま憎くて、入りたまふをも聞く聞く、寝たるやうにてものしたまふなるべし。<BR>⏎
d1256<P>⏎
cd6:3257-262 <A NAME="t09">と</A>声はいとをかしうて、独りごち歌ひて、<BR>⏎
<P>⏎
 「こはなど、かく鎖し固めたる。あな埋れや。今宵の月を見ぬ里もありけり」<BR>⏎
<P>⏎
 とうめきたまふ。格子上げさせたまひて、御簾巻き上げなどしたまひて、端近く臥したまへり。<BR>⏎
<P>⏎
156-158 <A NAME="t09">と</A>声はいとをかしうて、独りごち歌ひて、<BR>⏎
 「こはなど、かく鎖し固めたる。あな埋れや。今宵の月を見ぬ里もありけり」<BR>⏎
 とうめきたまふ。格子上げさせたまひて、御簾巻き上げなどしたまひて、端近く臥したまへり。<BR>⏎
d1264<P>⏎
d1266<P>⏎
d1268<P>⏎
cd8:4269-276 「いかに名残も、眺めたまふらむ。御琴どもは、調べ変はらず遊びたまふらむかし。御息所も、和琴の上手ぞかし」<BR>⏎
<P>⏎
 など思ひやりて臥したまへり。<BR>⏎
<P>⏎
 「いかなれば故君、ただおほかたの心ばへは、やむごとなくもてなしきこえながら、いと深きけしきなかりけむ」<BR>⏎
<P>⏎
 とそれにつけても、いといぶかしうおぼゆ。<BR>⏎
<P>⏎
162-165 「いかに名残も、眺めたまふらむ。御琴どもは、調べ変はらず遊びたまふらむかし。御息所も、和琴の上手ぞかし」<BR>⏎
 など思ひやりて臥したまへり。<BR>⏎
 「いかなれば故君、ただおほかたの心ばへは、やむごとなくもてなしきこえながら、いと深きけしきなかりけむ」<BR>⏎
 とそれにつけても、いといぶかしうおぼゆ。<BR>⏎
d1278<P>⏎
d1280<P>⏎
text37281 <A NAME="in26">[第六段 夢に柏木現れ出る]</A><BR>168 
d1282<P>⏎
d1284<P>⏎
cd3:1285-287 「笛竹に吹き寄る風のことならば<BR>⏎
  末の世長きねに伝へなむ<BR>⏎
<P>⏎
170 「笛竹に吹き寄る風のことならば<BR>  末の世長きねに伝へなむ<BR>⏎
d1289<P>⏎
d1291<P>⏎
d1293<P>⏎
d1295<P>⏎
d1297<P>⏎
cd2:1298-299 などいと若くをかしき顔して、かこちたまへば、うち笑ひて、<BR>⏎
<P>⏎
176 などいと若くをかしき顔して、かこちたまへば、うち笑ひて、<BR>⏎
d1301<P>⏎
cd2:1302-303 とてうち見やりたまへるまみの、いと恥づかしげなれば、さすがに物ものたまはで、<BR>⏎
<P>⏎
178 とてうち見やりたまへるまみの、いと恥づかしげなれば、さすがに物ものたまはで、<BR>⏎
d1305<P>⏎
cd2:1306-307 とて明らかなる火影を、さすがに恥ぢたまへるさまも憎からず。まことに、この君なづみて、泣きむつかり明かしたまひつ。<BR>⏎
<P>⏎
180 とて明らかなる火影を、さすがに恥ぢたまへるさまも憎からず。まことに、この君なづみて、泣きむつかり明かしたまひつ。<BR>⏎
text37308 <H4>第三章 夕霧の物語 匂宮と薫</H4>181 
text37309 <A NAME="in31">[第一段 夕霧、六条院を訪問]</A><BR>182 
d1310<P>⏎
d1312<P>⏎
d1314<P>⏎
cd2:1315-316 など思し続けて、愛宕に誦経せさせたまふ。またかの心寄せの寺にもせさせたまひて、<BR>⏎
<P>⏎
185 など思し続けて、愛宕に誦経せさせたまふ。またかの心寄せの寺にもせさせたまひて、<BR>⏎
d1318<P>⏎
d1320<P>⏎
d1322<P>⏎
d1324<P>⏎
cd2:1325-326 とみづからかしこまりて、いとしどけなげにのたまへば、うち笑ひて、<BR>⏎
<P>⏎
190 とみづからかしこまりて、いとしどけなげにのたまへば、うち笑ひて、<BR>⏎
d1328<P>⏎
cd6:3329-334 とて抱きたてまつりてゐたまへれば、<BR>⏎
<P>⏎
 「人も見ず。まろ顔は隠さむ。なほなほ」<BR>⏎
<P>⏎
 とて御袖してさし隠したまへば、いとうつくしうて、率てたてまつりたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
192-194 とて抱きたてまつりてゐたまへれば、<BR>⏎
 「人も見ず。まろ顔は隠さむ。なほなほ」<BR>⏎
 とて御袖してさし隠したまへば、いとうつくしうて、率てたてまつりたまふ。<BR>⏎
text37335 <A NAME="in32">[第二段 源氏の孫君たち、夕霧を奪い合う]</A><BR>195 
d1336<P>⏎
d1338<P>⏎
d1340<P>⏎
d1342<P>⏎
d1344<P>⏎
cd2:1345-346 とて控へたまへり。院も御覧じて、<BR>⏎
<P>⏎
200 とて控へたまへり。院も御覧じて、<BR>⏎
d1348<P>⏎
cd2:1349-350 と諌めきこえ扱ひたまふ。大将も笑ひて、<BR>⏎
<P>⏎
202 と諌めきこえ扱ひたまふ。大将も笑ひて、<BR>⏎
d1352<P>⏎
d1354<P>⏎
d1356<P>⏎
cd2:1357-358 とて渡りたまはむとするに、宮たちまつはれて、さらに離れたまはず。宮の若君は、宮たちの御列にはあるまじきぞかしと、御心<A HREF="#k12">のうちに思せど、なかなかその御心</A><A NAME="t12">ば</A>へを、母宮の、御心の鬼にや思ひ寄せたまふらむと、これも心の癖に、いとほしう思さるれば、いとらうたきものに思ひかしづききこえたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
206 とて渡りたまはむとするに、宮たちまつはれて、さらに離れたまはず。宮の若君は、宮たちの御列にはあるまじきぞかしと、御心<A HREF="#k12">のうちに思せど、なかなかその御心</A><A NAME="t12">ば</A>へを、母宮の、御心の鬼にや思ひ寄せたまふらむと、これも心の癖に、いとほしう思さるれば、いとらうたきものに思ひかしづききこえたまふ。<BR>⏎
text37359 <A NAME="in33">[第三段 夕霧、薫をしみじみと見る]</A><BR>207 
d1360<P>⏎
d1362<P>⏎
d1364<P>⏎
d1366<P>⏎
d1368<P>⏎
cd2:1369-370 「いであはれ。もし疑ふゆゑもまことならば、父大臣の、さばかり世にいみじく思ひほれたまて、<BR>⏎
<P>⏎
212 「いであはれ。もし疑ふゆゑもまことならば、父大臣の、さばかり世にいみじく思ひほれたまて、<BR>⏎
d1372<P>⏎
cd4:2373-376 と泣き焦がれたまふに、聞かせたてまつらざらむ罪得がましさ」など思ふも、「いでいかでさはあるべきことぞ」<BR>⏎
<P>⏎
 となほ心得ず、思ひ寄る方なし。心ばへさへなつかしうあはれにて、睦れ遊びたまへば、いとらうたくおぼゆ。<BR>⏎
<P>⏎
214-215 と泣き焦がれたまふに、聞かせたてまつらざらむ罪得がましさ」など思ふも、「いでいかでさはあるべきことぞ」<BR>⏎
 となほ心得ず、思ひ寄る方なし。心ばへさへなつかしうあはれにて、睦れ遊びたまへば、いとらうたくおぼゆ。<BR>⏎
text37377 <A NAME="in34">[第四段 夕霧、源氏と対話す]</A><BR>216 
d1378<P>⏎
d1380<P>⏎
cd2:1381-382 「かの想夫恋の心ばへは、げにいにしへの例にも引き出でつべかりけるをりながら、女は、なほ人の心移るばかりのゆゑよしをも、おぼろけにては漏らすまじうこそありけれと、思ひ知らるることどもこそ多かれ。<BR>⏎
<P>⏎
218 「かの想夫恋の心ばへは、げにいにしへの例にも引き出でつべかりけるをりながら、女は、なほ人の心移るばかりのゆゑよしをも、おぼろけにては漏らすまじうこそありけれと、思ひ知らるることどもこそ多かれ。<BR>⏎
d1384<P>⏎
d1386<P>⏎
cd2:1387-388 「何の乱れかはべらむ。なほ常ならぬ世のあはれをかけそめはべりにしあたりに、心短くはべらむこそ、なかなか世の常の嫌疑あり顔にはべらめとてこそ。<BR>⏎
<P>⏎
221 「何の乱れかはべらむ。なほ常ならぬ世のあはれをかけそめはべりにしあたりに、心短くはべらむこそ、なかなか世の常の嫌疑あり顔にはべらめとてこそ。<BR>⏎
d1390<P>⏎
cd2:1391-392 何ごとも、人により、ことに従ふわざにこそはべるべかめれ。齢なども、やうやういたう若びたまふべきほどにもものしたまはず、またあざれがましう、好き好きしきけしきなどに、もの馴れ<A HREF="#k14">なども</A><A NAME="t14">し</A>はべらぬに、うちとけたまふにや。おほかたなつかしうめやすき人の御ありさまになむものしたまひける」<BR>⏎
<P>⏎
223 何ごとも、人により、ことに従ふわざにこそはべるべかめれ。齢なども、やうやういたう若びたまふべきほどにもものしたまはず、またあざれがましう、好き好きしきけしきなどに、もの馴れ<A HREF="#k14">なども</A><A NAME="t14">し</A>はべらぬに、うちとけたまふにや。おほかたなつかしうめやすき人の御ありさまになむものしたまひける」<BR>⏎
d1394<P>⏎
text37395 <A NAME="in35">[第五段 笛を源氏に預ける]</A><BR>225 
d1396<P>⏎
d1398<P>⏎
d1400<P>⏎
d1402<P>⏎
d1404<P>⏎
d1406<P>⏎
cd2:1407-408 といとたどたどしげに聞こえたまふに、<BR>⏎
<P>⏎
231 といとたどたどしげに聞こえたまふに、<BR>⏎
d1410<P>⏎
cd4:2411-414 と思せど、何かはそのほどの事あらはしのたまふべきならねば、しばしおぼめかしくて、<BR>⏎
<P>⏎
 「しか人の恨みとまるばかりのけしきは、何のついでにかは漏り出でけむと、みづからもえ思ひ出でずなむ。さて今静かに、かの夢は思ひ合はせてなむ聞こゆべき。夜語らず<A HREF="#k16">とか</A><A NAME="t16">、</A>女房の伝へに言ふなり」<BR>⏎
<P>⏎
233-234 と思せど、何かはそのほどの事あらはしのたまふべきならねば、しばしおぼめかしくて、<BR>⏎
 「しか人の恨みとまるばかりのけしきは、何のついでにかは漏り出でけむと、みづからもえ思ひ出でずなむ。さて今静かに、かの夢は思ひ合はせてなむ聞こゆべき。夜語らず<A HREF="#k16">とか</A><A NAME="t16">、</A>女房の伝へに言ふなり」<BR>⏎
d2416-417
<P>⏎
text37418 <a name="in41">【出典】<BR>236 
c1419</a><A NAME="no1">出典1</A> 春ごとに花の盛りはありなめどあひ見むことは命なりけり(古今集春下-九七 読人しらず)<A HREF="#te1">(戻)</A><BR>⏎
237<A NAME="no1">出典1</A> 春ごとに花の盛りはありなめどあひ見むことは命なりけり(古今集春下-九七 読人しらず)<A HREF="#te1">(戻)</A><BR>⏎
c1422<A NAME="no4">出典4</A> 呂氏春秋曰、鍾子期善聴中略鍾子期死、伯牙破琴絶絃(蒙求-伯牙絶絃)<A HREF="#te4">(戻)</A><BR>⏎
240<A NAME="no4">出典4</A> 呂氏春秋曰、鍾子期善聴 (中略鍾子期死、伯牙破琴絶絃(蒙求-伯牙絶絃)<A HREF="#te4">(戻)</A><BR>⏎
c1429<A NAME="no11">出典11</A> 妹いもと我と いるさの山の 山蘭やまあららぎ 手な取り触れそや 顔優るがにや 速く優るがにや(催馬楽-妹と我)<A HREF="#te11">(戻)</A><BR>⏎
247<A NAME="no11">出典11</A> <ruby><rb><rp>(<rt>いも<rp>)</ruby>と我と いるさの山の <ruby><rb>山蘭<rp>(<rt>やまあららぎ<rp>)</ruby> 手な取り触れそや 顔優るがにや <ruby><rb><rp>(<rt><rp>)</ruby>く優るがにや(催馬楽-妹と我)<A HREF="#te11">(戻)</A><BR>⏎
d1431
text37432<p> <a name="in42">【校訂】<BR>249 
c1434</a><A NAME="k01">校訂1</A> いかにぞやと--*いかにそや<A HREF="#t01">(戻)</A><BR>⏎
251<A NAME="k01">校訂1</A> いかにぞやと--*いかにそや<A HREF="#t01">(戻)</A><BR>⏎
d1450</p>⏎
d1457</p>⏎
i0277
diffsrc/original/text38.htmlsrc/modified/text38.html
cd2:18-9<body background="wallppr063.gif">⏎
First updated 9/20/1996(ver.1-1)<BR>⏎
8<BODY>⏎
cd3:210-12Last updated 6/10/2010(ver.2-2)<BR>⏎
渋谷栄一校訂(C)<BR>⏎
<P
>⏎
9-10<ADDRESS>Last updated 6/10/2010(ver.2-2)<BR>⏎
渋谷栄一校訂(C)</ADDRESS>⏎
d114<P>⏎
d116<P>⏎
d138<P>⏎
d160<P>⏎
d163<P>⏎
text3864 <H4>第一章 女三の宮の物語 持仏開眼供養</H4>57 
text3865 <A NAME="in11">[第一段 持仏開眼供養の準備]</A><BR>58 
d166<P>⏎
d168<P>⏎
d170<P>⏎
d172<P>⏎
d174<P>⏎
d176<P>⏎
cd2:177-78 さては阿弥陀経、唐の紙はもろくて、朝夕の御手慣らしにもいかがとて、紙屋の人を召して、ことに仰せ言賜ひて、心ことにきよらに漉かせたまへるに、この春のころほひより、御心とどめて急ぎ書かせたまへるかひありて、端を見たまふ人びと、目もかかやき惑ひたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
64 さては阿弥陀経、唐の紙はもろくて、朝夕の御手慣らしにもいかがとて、紙屋の人を召して、ことに仰せ言賜ひて、心ことにきよらに漉かせたまへるに、この春のころほひより、御心とどめて急ぎ書かせたまへるかひありて、端を見たまふ人びと、目もかかやき惑ひたまふ。<BR>⏎
d180<P>⏎
text3881 <A NAME="in12">[第二段 源氏と女三の宮、和歌を詠み交わす]</A><BR>66 
d182<P>⏎
cd2:183-84 堂飾り果てて、講師参う上り、行道の人びと参り集ひたまへば、院もあなたに出でたまふとて、宮のおはします西の廂にのぞきたまへれば、狭き心地する仮の御しつらひに、所狭く暑げなるまで、ことことしく装束きたる女房、五六十人ばかり集ひたり。<BR>⏎
<P>⏎
67 堂飾り果てて、講師参う上り、行道の人びと参り集ひたまへば、院もあなたに出でたまふとて、宮のおはします西の廂にのぞきたまへれば、狭き心地する仮の御しつらひに、所狭く暑げなるまで、ことことしく装束きたる女房、五六十人ばかり集ひたり。<BR>⏎
d186<P>⏎
d188<P>⏎
cd2:189-90 など例の、もの深からぬ若人どもの用意教へたまふ。宮は、人気に圧されたまひて、いと小さくをかしげにて、ひれ臥したまへり。<BR>⏎
<P>⏎
70 など例の、もの深からぬ若人どもの用意教へたまふ。宮は、人気に圧されたまひて、いと小さくをかしげにて、ひれ臥したまへり。<BR>⏎
d192<P>⏎
d194<P>⏎
d196<P>⏎
cd12:597-108 「かかる方の御いとなみをも、もろともに急がむものとは思ひ寄らざりしことなり。よし後の世にだに、かの花の中の<A HREF="#k04">宿りに</A><A NAME="t04">、</A>隔てなく、とを思ほせ」<BR>⏎
<P>⏎
 とてうち泣きたまひぬ。<BR>⏎
<P>⏎
 「蓮葉を同じ台と契りおきて<BR>⏎
  露の分かるる今日ぞ悲しき」<BR>⏎
<P>⏎
 と御硯にさし濡らして、<A HREF="#k05">香染めなる</A><A NAME="t05">御</A>扇に書きつけたまへり。宮、<BR>⏎
<P>⏎
 「隔てなく蓮の宿を契りても<BR>⏎
  君が心や住まじとすらむ」<BR>⏎
<P>⏎
74-78 「かかる方の御いとなみをも、もろともに急がむものとは思ひ寄らざりしことなり。よし後の世にだに、かの花の中の<A HREF="#k04">宿りに</A><A NAME="t04">、</A>隔てなく、とを思ほせ」<BR>⏎
 とてうち泣きたまひぬ。<BR>⏎
 「蓮葉を同じ台と契りおきて<BR>  露の分かるる今日ぞ悲しき」<BR>⏎
 と御硯にさし濡らして、<A HREF="#k05">香染めなる</A><A NAME="t05">御</A>扇に書きつけたまへり。宮、<BR>⏎
 「隔てなく蓮の宿を契りても<BR>  君が心や住まじとすらむ」<BR>⏎
d1110<P>⏎
d1112<P>⏎
cd2:1113-114 とうち笑ひながら、なほあはれとものを思ほしたる御けしきなり。<BR>⏎
<P>⏎
81 とうち笑ひながら、なほあはれとものを思ほしたる御けしきなり。<BR>⏎
text38115 <A NAME="in13">[第三段 持仏開眼供養執り行われる]</A><BR>82 
d1116<P>⏎
d1118<P>⏎
d1120<P>⏎
cd4:2121-124 これはただ忍びて、御念誦堂の初めと思したることなれど、内裏にも、山の帝も聞こし召して、皆御使どもあり。御誦経の布施など、いと所狭きまで、にはかになむこと広ごりける。<BR>⏎
<P>⏎
 院にまうけさせたまへりけることどもも、削ぐと思ししかど、世の常ならざりけるを、まいて今めかしきことどもの加はりたれば、夕べの寺に置き所なげなるまで所狭き勢ひになりてなむ、僧どもは帰りける。<BR>⏎
<P>⏎
85-86 これはただ忍びて、御念誦堂の初めと思したることなれど、内裏にも、山の帝も聞こし召して、皆御使どもあり。御誦経の布施など、いと所狭きまで、にはかになむこと広ごりける。<BR>⏎
 院にまうけさせたまへりけることどもも、削ぐと思ししかど、世の常ならざりけるを、まいて今めかしきことどもの加はりたれば、夕べの寺に置き所なげなるまで所狭き勢ひになりてなむ、僧どもは帰りける。<BR>⏎
text38125 <A NAME="in14">[第四段 三条宮邸を整備]</A><BR>87 
d1126<P>⏎
d1128<P>⏎
cd4:2129-132 「よそよそにては、おぼつかなかるべし。明け暮れ見たてまつり、聞こえ承らむこと怠らむに、本意違ひぬべし。げにあり果てぬ世いくばくあるまじけれど、なほ生ける限りの心ざしをだに失ひ果てじ」<BR>⏎
<P>⏎
 と聞こえたまひつつ、この宮をもいとこまかにきよらに造らせたまひ、御封の物ども、国々の御荘、御牧などより奉る物ども、はかばかしきさまのは、皆かの三条の宮の<A HREF="#k06">御倉に</A><A NAME="t06">納</A>めさせたまふ。またも建て添へさせたまひて、さまざまの御宝物ども、院の御処分に数もなく賜はりたまへるなど、あなたざまの物は、皆かの宮に運び渡し、こまかにいかめしうし置かせたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
89-90 「よそよそにては、おぼつかなかるべし。明け暮れ見たてまつり、聞こえ承らむこと怠らむに、本意違ひぬべし。げにあり果てぬ世いくばくあるまじけれど、なほ生ける限りの心ざしをだに失ひ果てじ」<BR>⏎
 と聞こえたまひつつ、この宮をもいとこまかにきよらに造らせたまひ、御封の物ども、国々の御荘、御牧などより奉る物ども、はかばかしきさまのは、皆かの三条の宮の<A HREF="#k06">御倉に</A><A NAME="t06">納</A>めさせたまふ。またも建て添へさせたまひて、さまざまの御宝物ども、院の御処分に数もなく賜はりたまへるなど、あなたざまの物は、皆かの宮に運び渡し、こまかにいかめしうし置かせたまふ。<BR>⏎
d1134<P>⏎
text38135 <H4>第二章 光る源氏の物語 六条院と冷泉院の中秋の宴</H4>92 
text38136 <A NAME="in21">[第一段 女三の宮の前栽に虫を放つ]</A><BR>93 
d1137<P>⏎
d1139<P>⏎
d1141<P>⏎
d1143<P>⏎
d1145<P>⏎
d1147<P>⏎
d1149<P>⏎
d1151<P>⏎
cd2:1152-153 とひとへにむつかしきことに思ひきこえたまへり。<BR>⏎
<P>⏎
101 とひとへにむつかしきことに思ひきこえたまへり。<BR>⏎
d1155<P>⏎
cd2:1156-157 「なほかやうに」<BR>⏎
<P>⏎
103 「なほかやうに」<BR>⏎
d1159<P>⏎
text38160 <A NAME="in22">[第二段 八月十五夜、秋の虫の論]</A><BR>105 
d1161<P>⏎
cd2:1162-163 十五夜の夕暮に、仏の御前に宮おはして、端近う眺めたまひつつ念誦したまふ。若き尼君たち二三人、花奉るとて鳴らす閼伽坏の音、水のけはひなど聞こゆる、さま変はりたるいとなみに、そそきあへる、いとあはれなるに、例の渡りたまひて、<BR>⏎
<P>⏎
106 十五夜の夕暮に、仏の御前に宮おはして、端近う眺めたまひつつ念誦したまふ。若き尼君たち二三人、花奉るとて鳴らす閼伽坏の音、水のけはひなど聞こゆる、さま変はりたるいとなみに、そそきあへる、いとあはれなるに、例の渡りたまひて、<BR>⏎
d1165<P>⏎
cd2:1166-167 とてわれも忍びてうち誦じたまふ阿弥陀の大呪、いと尊くほのぼの聞こゆ。げに声々聞こえたる中に、鈴虫のふり出でたるほど、はなやかにをかし。<BR>⏎
<P>⏎
108 とてわれも忍びてうち誦じたまふ阿弥陀の大呪、いと尊くほのぼの聞こゆ。げに声々聞こえたる中に、鈴虫のふり出でたるほど、はなやかにをかし。<BR>⏎
d1169<P>⏎
d1171<P>⏎
d1173<P>⏎
cd3:1174-176 「おほかたの秋をば憂しと知りにしを<BR>⏎
  ふり捨てがたき鈴虫の声」<BR>⏎
<P>⏎
112 「おほかたの秋をば憂しと知りにしを<BR>  ふり捨てがたき鈴虫の声」<BR>⏎
d1178<P>⏎
cd5:2179-183 「いかにとかや。いで思ひの外なる御ことにこそ」とて、<BR>⏎
<P>⏎
 「心もて草の宿りを厭へども<BR>⏎
  なほ鈴虫の声ぞふりせぬ」<BR>⏎
<P>⏎
114-115 「いかにとかや。いで思ひの外なる御ことにこそ」とて、<BR>⏎
 「心もて草の宿りを厭へども<BR>  なほ鈴虫の声ぞふりせぬ」<BR>⏎
d1185<P>⏎
d1187<P>⏎
text38188 <A NAME="in23">[第三段 六条院の鈴虫の宴]</A><BR>118 
d1189<P>⏎
d1191<P>⏎
d1193<P>⏎
cd2:1194-195 とて宮も、こなたに御座よそひて入れたてまつりたまふ。内裏の御前に、今宵は月の宴あるべかりつるを、とまりてさうざうしかりつるに、この院に人びと参りたまふと聞き伝へて、これかれ上達部なども参りたまへり。虫の音の定めをしたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
121 とて宮も、こなたに御座よそひて入れたてまつりたまふ。内裏の御前に、今宵は月の宴あるべかりつるを、とまりてさうざうしかりつるに、この院に人びと参りたまふと聞き伝へて、これかれ上達部なども参りたまへり。虫の音の定めをしたまふ。<BR>⏎
d1197<P>⏎
cd2:1198-199 「<A HREF="#no1">月見る宵の、いつとても</A><A NAME="te1">も</A>のあはれならぬ折はなきなかに、<A HREF="#no2">今宵の新たなる月の色</A><A NAME="te2">に</A>は、げになほ、わが世の外までこそ、よろづ思ひ流さるれ。故権大納言、何の折々にも、亡きにつけていとど偲ばるること多く、公私、ものの折節のにほひ失せたる心地こそすれ。花鳥の色にも音にも、思ひわきまへ、いふかひあるかたの、いとうるさかりしものを」<BR>⏎
<P>⏎
123 「<A HREF="#no1">月見る宵の、いつとても</A><A NAME="te1">も</A>のあはれならぬ折はなきなかに、<A HREF="#no2">今宵の新たなる月の色</A><A NAME="te2">に</A>は、げになほ、わが世の外までこそ、よろづ思ひ流さるれ。故権大納言、何の折々にも、亡きにつけていとど偲ばるること多く、公私、ものの折節のにほひ失せたる心地こそすれ。花鳥の色にも音にも、思ひわきまへ、いふかひあるかたの、いとうるさかりしものを」<BR>⏎
d1201<P>⏎
d1203<P>⏎
d1205<P>⏎
text38206 <A NAME="in24">[第四段 冷泉院より招請の和歌]</A><BR>127 
d1207<P>⏎
d1209<P>⏎
cd2:1210-211 「雲の上をかけ離れたるすみかにも<BR>⏎
  もの忘れせぬ秋の夜の月<BR>⏎
129 「雲の上をかけ離れたるすみかにも<BR>  もの忘れせぬ秋の夜の月<BR>⏎
d1213<P>⏎
d1215<P>⏎
d1217<P>⏎
cd5:2218-222 とてにはかなるやうなれど、参りたまはむとす。<BR>⏎
<P>⏎
 「月影は同じ雲居に見えながら<BR>⏎
  わが宿からの秋ぞ変はれる」<BR>⏎
<P>⏎
133-134 とてにはかなるやうなれど、参りたまはむとす。<BR>⏎
 「月影は同じ雲居に見えながら<BR>  わが宿からの秋ぞ変はれる」<BR>⏎
d1224<P>⏎
text38225 <A NAME="in25">[第五段 冷泉院の月の宴]</A><BR>136 
d1226<P>⏎
d1228<P>⏎
d1230<P>⏎
cd2:1231-232 うるはしかるべき折節は、所狭くよだけき儀式を尽くして、かたみに御覧ぜられたまひ、またいにしへのただ人ざまに思し返りて、今宵は軽々しきやうに、ふとかく参りたまへれば、いたう驚き、待ち喜びきこえたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
139 うるはしかるべき折節は、所狭くよだけき儀式を尽くして、かたみに御覧ぜられたまひ、またいにしへのただ人ざまに思し返りて、今宵は軽々しきやうに、ふとかく参りたまへれば、いたう驚き、待ち喜びきこえたまふ。<BR>⏎
d1234<P>⏎
cd2:1235-236 その夜の歌ども、唐のも大和のも、心ばへ深うおもしろくのみなむ。例の言<A HREF="#k13">足らぬ</A><A NAME="t13">片</A>端はまねぶもかたはらいたくてなむ。明け方に文など講じて、とく人びとまかでたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
141 その夜の歌ども、唐のも大和のも、心ばへ深うおもしろくのみなむ。例の言<A HREF="#k13">足らぬ</A><A NAME="t13">片</A>端はまねぶもかたはらいたくてなむ。明け方に文など講じて、とく人びとまかでたまふ。<BR>⏎
text38237 <H4>第三章 秋好中宮の物語 出家と母の罪を思う</H4>142 
text38238 <A NAME="in31">[第一段 秋好中宮、出家を思う]</A><BR>143 
d1239<P>⏎
d1241<P>⏎
d1243<P>⏎
d1245<P>⏎
cd2:1246-247 などまめやかなるさまに聞こえさせたまふ。<BR>⏎
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147 などまめやかなるさまに聞こえさせたまふ。<BR>⏎
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d1251<P>⏎
d1253<P>⏎
cd2:1254-255 「げに公ざまにては、限りある折節の御里居も、いとよう待ちつけきこえさせしを、今は何事につけてかは、御心にまかせさせたまふ御移ろひも<A HREF="#k15">はべらむ</A><A NAME="t15">。</A>定めなき世と言ひながらも、さして厭はしきことなき人の、さはやかに背き離るるもありがたう、心やすかるべきほどにつけてだに、おのづから思ひかかづらふほだしのみはべるを、などかその人まねにきほふ御道心は、かへりてひがひがしう推し量りきこえさする人もこそはべれ。かけてもいとあるまじき御ことになむ」<BR>⏎
<P>⏎
151 「げに公ざまにては、限りある折節の御里居も、いとよう待ちつけきこえさせしを、今は何事につけてかは、御心にまかせさせたまふ御移ろひも<A HREF="#k15">はべらむ</A><A NAME="t15">。</A>定めなき世と言ひながらも、さして厭はしきことなき人の、さはやかに背き離るるもありがたう、心やすかるべきほどにつけてだに、おのづから思ひかかづらふほだしのみはべるを、などかその人まねにきほふ御道心は、かへりてひがひがしう推し量りきこえさする人もこそはべれ。かけてもいとあるまじき御ことになむ」<BR>⏎
d1257<P>⏎
text38258 <A NAME="in32">[第二段 母御息所の罪を思う]</A><BR>153 
d1259<P>⏎
cd2:1260-261 御息所の、御身の苦しうなりたまふらむありさま、いかなる煙の中に惑ひたまふらむ、亡き影にても、人に疎まれたてまつりたまふ御名のりなどの出で来けること、かの院にはいみじう隠したまひけるを、おのづから人の口さがなくて、伝へ聞こし召しける後、いと悲しういみじくて、なべての世の厭はしく思しなりて、仮にても、かののたまひけむありさまの詳しう聞かまほしきを、まほにはえうち出で聞こえたまはで、ただ<BR>⏎
<P>⏎
154 御息所の、御身の苦しうなりたまふらむありさま、いかなる煙の中に惑ひたまふらむ、亡き影にても、人に疎まれたてまつりたまふ御名のりなどの出で来けること、かの院にはいみじう隠したまひけるを、おのづから人の口さがなくて、伝へ聞こし召しける後、いと悲しういみじくて、なべての世の厭はしく思しなりて、仮にても、かののたまひけむありさまの詳しう聞かまほしきを、まほにはえうち出で聞こえたまはで、ただ<BR>⏎
d1263<P>⏎
cd4:2264-267 などかすめつつぞのたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
 「げにさも思しぬべきこと」と、あはれに見たてまつりたまうて、<BR>⏎
<P>⏎
156-157 などかすめつつぞのたまふ。<BR>⏎
 「げにさも思しぬべきこと」と、あはれに見たてまつりたまうて、<BR>⏎
d1269<P>⏎
d1271<P>⏎
cd2:1272-273 など世の中なべてはかなく、厭ひ捨てまほしきことを聞こえ交はしたまへど、なほやつしにくき御身のありさまどもなり。<BR>⏎
<P>⏎
160 など世の中なべてはかなく、厭ひ捨てまほしきことを聞こえ交はしたまへど、なほやつしにくき御身のありさまどもなり。<BR>⏎
text38274 <A NAME="in33">[第三段 秋好中宮の仏道生活]</A><BR>161 
d1275<P>⏎
d1277<P>⏎
cd2:1278-279 春宮の女御の御ありさま、並びなく、いつきたてたまへるかひがひしさも、大将のまたいと人に異なる御さまをも、いづれとなくめやすしと思すに、なほこの冷泉院を思ひきこえたまふ<A HREF="#k17">御心ざしは、すぐれて深くあはれにぞおぼえたまふ</A><A NAME="t17">。</A>院も常にいぶかしう思ひきこえたまひしに、御対面のまれにいぶせうのみ思されけるに、急がされたまひて、かく心安きさまにと思しなりけるになむ。<BR>⏎
<P>⏎
163 春宮の女御の御ありさま、並びなく、いつきたてたまへるかひがひしさも、大将のまたいと人に異なる御さまをも、いづれとなくめやすしと思すに、なほこの冷泉院を思ひきこえたまふ<A HREF="#k17">御心ざしは、すぐれて深くあはれにぞおぼえたまふ</A><A NAME="t17">。</A>院も常にいぶかしう思ひきこえたまひしに、御対面のまれにいぶせうのみ思されけるに、急がされたまひて、かく心安きさまにと思しなりけるになむ。<BR>⏎
d2281-282
<P>⏎
text38283 <a name="in41">【出典】<BR>165 
c1284</a><A NAME="no1">出典1</A> いつとても月見ぬ秋はなきものをわきて今宵の珍しきかな(後撰集秋中-三二五 藤原雅正)<A HREF="#te1">(戻)</A><BR>⏎
166<A NAME="no1">出典1</A> いつとても月見ぬ秋はなきものをわきて今宵の珍しきかな(後撰集秋中-三二五 藤原雅正)<A HREF="#te1">(戻)</A><BR>⏎
d1287
text38288<p> <a name="in42">【校訂】<BR>169 
c1290</a><A NAME="k01">校訂1</A> さらなり--さゝ(ゝ/$ら<朱>)なり<A HREF="#t01">(戻)</A><BR>⏎
171<A NAME="k01">校訂1</A> さらなり--さゝ(ゝ/$ら<朱>)なり<A HREF="#t01">(戻)</A><BR>⏎
c1301<A NAME="k12">校訂12</A> たまふと聞こし--給(給/+ふ<朱>)時(時/とき<朱>)こし<A HREF="#t12">(戻)</A><BR>⏎
182<A NAME="k12">校訂12</A> たまふと聞こし--給(給/+ふ<朱>)時(時/とき<朱>)こし<A HREF="#t12">(戻)</A><BR>⏎
d1307</p>⏎
d1314</p>⏎
i0198
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First updated 9/20/1996(ver.1-1)<BR>⏎
8<BODY>⏎
cd3:210-12Last updated 9/22/2010(ver.2-3)<BR>⏎
渋谷栄一校訂(C)<BR>⏎
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>⏎
9-10<ADDRESS>Last updated 9/22/2010(ver.2-3)<BR>⏎
渋谷栄一校訂(C)</ADDRESS>⏎
d114<P>⏎
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d134<P>⏎
d1101<P>⏎
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text39105 <H4>第一章 夕霧の物語 小野山荘訪問</H4>98 
text39106 <A NAME="in11">[第一段 一条御息所と落葉宮、小野山荘に移る]</A><BR>99 
d1107<P>⏎
d1109<P>⏎
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d1115<P>⏎
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cd2:1124-125 弁の君、はた思ふ心なきにしもあらで、けしきばみけるに、ことの外なる御もてなしなりけるには、しひてえ参でとぶらひたまはずなりにたり。<BR>⏎
<P>⏎
108 弁の君、はた思ふ心なきにしもあらで、けしきばみけるに、ことの外なる御もてなしなりけるには、しひてえ参でとぶらひたまはずなりにたり。<BR>⏎
d1127<P>⏎
d1129<P>⏎
cd2:1130-131 と人びと聞こゆれば、宮ぞ御返り聞こえたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
111 と人びと聞こゆれば、宮ぞ御返り聞こえたまふ。<BR>⏎
d1133<P>⏎
cd4:2134-137 「なほつひにあるやうあるべきやう御仲らひなめり」<BR>⏎
<P>⏎
 と北の方けしきとりたまへれば、わづらはしくて、参うでまほしう思せど、とみにえ出で立ちたまはず。<BR>⏎
<P>⏎
113-114 「なほつひにあるやうあるべきやう御仲らひなめり」<BR>⏎
 と北の方けしきとりたまへれば、わづらはしくて、参うでまほしう思せど、とみにえ出で立ちたまはず。<BR>⏎
text39138 <A NAME="in12">[第二段 八月二十日頃、夕霧、小野山荘を訪問]</A><BR>115 
d1139<P>⏎
d1141<P>⏎
d1143<P>⏎
cd2:1144-145 とおほかたにぞ聞こえて出でたまふ。御前、ことことしからで、親しき限り五六人ばかり、狩衣にてさぶらふ。ことに深き道ならねど、松が崎の小山の色なども、さる巌ならねど、秋のけしきつきて、都に二なくと尽くしたる家居には、なほあはれも興もまさりてぞ見ゆるや。<BR>⏎
<P>⏎
118 とおほかたにぞ聞こえて出でたまふ。御前、ことことしからで、親しき限り五六人ばかり、狩衣にてさぶらふ。ことに深き道ならねど、松が崎の小山の色なども、さる巌ならねど、秋のけしきつきて、都に二なくと尽くしたる家居には、なほあはれも興もまさりてぞ見ゆるや。<BR>⏎
d1147<P>⏎
d1149<P>⏎
d1151<P>⏎
d1153<P>⏎
cd2:1154-155 と聞こえ出だしたまへり。<BR>⏎
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123 と聞こえ出だしたまへり。<BR>⏎
d1157<P>⏎
cd2:1158-159 など聞こえたまふ。<BR>⏎
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125 など聞こえたまふ。<BR>⏎
text39160 <A NAME="in13">[第三段 夕霧、落葉宮に面談を申し入れる]</A><BR>126 
d1161<P>⏎
d1163<P>⏎
d1165<P>⏎
d1167<P>⏎
cd4:2168-171 齢積もらず軽らかなりしほどに、ほの好きたる方に面馴れなましかば、かううひうひしうもおぼえざらまし。さらにかばかりすくすくしう、おれて年経る人は、たぐひあらじかし」<BR>⏎
<P>⏎
 とのたまふ。げにいとあなづりにくげなるさましたまひつれば、さればよと、<BR>⏎
<P>⏎
130-131 齢積もらず軽らかなりしほどに、ほの好きたる方に面馴れなましかば、かううひうひしうもおぼえざらまし。さらにかばかりすくすくしう、おれて年経る人は、たぐひあらじかし」<BR>⏎
 とのたまふ。げにいとあなづりにくげなるさましたまひつれば、さればよと、<BR>⏎
d1173<P>⏎
d1175<P>⏎
d1177<P>⏎
cd2:1178-179 と宮に聞こゆれば、<BR>⏎
<P>⏎
135 と宮に聞こゆれば、<BR>⏎
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d1183<P>⏎
cd2:1184-185 「こは宮の御消息か」とゐ直りて、「心苦しき御悩みを、身に代ふばかり嘆ききこえさせはべるも、何のゆゑにか。かたじけなけれど、ものを思し知る御ありさまなど、はればれしき方にも見たてまつり直したまふまでは、平らかに過ぐしたまはむこそ、誰が御ためにも頼もしきことにははべらめと、推し量りきこえさするによりなむ。ただあなたざまに思し譲りて、積もりはべりぬる心ざしをも知ろしめされぬは、本意なき心地なむ」<BR>⏎
<P>⏎
138 「こは宮の御消息か」とゐ直りて、「心苦しき御悩みを、身に代ふばかり嘆ききこえさせはべるも、何のゆゑにか。かたじけなけれど、ものを思し知る御ありさまなど、はればれしき方にも見たてまつり直したまふまでは、平らかに過ぐしたまはむこそ、誰が御ためにも頼もしきことにははべらめと、推し量りきこえさするによりなむ。ただあなたざまに思し譲りて、積もりはべりぬる心ざしをも知ろしめされぬは、本意なき心地なむ」<BR>⏎
d1187<P>⏎
text39188 <A NAME="in14">[第四段 夕霧、山荘に一晩逗留を決意]</A><BR>140 
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cd2:1194-195 所から、よろづのこと心細う見なさるるも、あはれにもの思ひ続けらる。出でたまはむ心地もなし。律師も加持する音して、陀羅尼いと尊く読むなり。<BR>⏎
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143 所から、よろづのこと心細う見なさるるも、あはれにもの思ひ続けらる。出でたまはむ心地もなし。律師も加持する音して、陀羅尼いと尊く読むなり。<BR>⏎
d1197<P>⏎
d1199<P>⏎
cd3:1200-202 「山里のあはれを添ふる夕霧に<BR>⏎
  立ち出でむ空もなき心地して」<BR>⏎
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146 「山里のあはれを添ふる夕霧に<BR>  立ち出でむ空もなき心地して」<BR>⏎
d1204<P>⏎
cd3:1205-207 「山賤の籬をこめて立つ霧も<BR>⏎
  心そらなる人はとどめず」<BR>⏎
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148 「山賤の籬をこめて立つ霧も<BR>  心そらなる人はとどめず」<BR>⏎
d1209<P>⏎
d1211<P>⏎
cd2:1212-213 などやすらひて、忍びあまりぬる筋もほのめかし聞こえたまふに、年ごろもむげに見知りたまはぬにはあらねど、知らぬ顔にのみもてなしたまへるを、かく言に出でて怨みきこえたまふを、わづらはしうて、いとど御いらへもなければ、いたう嘆きつつ、心のうちに、「またかかる折ありなむや」と、思ひめぐらしたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
151 などやすらひて、忍びあまりぬる筋もほのめかし聞こえたまふに、年ごろもむげに見知りたまはぬにはあらねど、知らぬ顔にのみもてなしたまへるを、かく言に出でて怨みきこえたまふを、わづらはしうて、いとど御いらへもなければ、いたう嘆きつつ、心のうちに、「またかかる折ありなむや」と、思ひめぐらしたまふ。<BR>⏎
d1215<P>⏎
d1217<P>⏎
d1219<P>⏎
d1221<P>⏎
text39222 <A NAME="in15">[第五段 夕霧、落葉宮の部屋に忍び込む]</A><BR>156 
d1223<P>⏎
cd2:1224-225 さて<BR>⏎
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157 さて<BR>⏎
d1227<P>⏎
cd2:1228-229 などつれなくのたまふ。例は、かやうに長居して、あざればみたるけしきも見えたまはぬを、「うたてもあるかな」と、宮思せど、ことさらめきて、軽らかにあなたにはひ渡りたまふは、人もさま悪しき心地して、ただ音せでおはしますに、とかく聞こえ寄りて、御消息聞こえ伝へにゐざり入る人の影につきて、入りたまひぬ。<BR>⏎
<P>⏎
159 などつれなくのたまふ。例は、かやうに長居して、あざればみたるけしきも見えたまはぬを、「うたてもあるかな」と、宮思せど、ことさらめきて、軽らかにあなたにはひ渡りたまふは、人もさま悪しき心地して、ただ音せでおはしますに、とかく聞こえ寄りて、御消息聞こえ伝へにゐざり入る人の影につきて、入りたまひぬ。<BR>⏎
d1231<P>⏎
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d1237<P>⏎
c1238 と泣きぬばかりに聞こゆれど、<BR>⏎
164 と泣きぬばかりに聞こゆれど、<BR>⏎
d1240<P>⏎
cd2:1241-242 とていとのどやかにさまよくもてしづめて、思ふことを聞こえ知らせたまふ。<BR>⏎
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166 とていとのどやかにさまよくもてしづめて、思ふことを聞こえ知らせたまふ。<BR>⏎
text39243 <A NAME="in16">[第六段 夕霧、落葉宮をかき口説く]</A><BR>167 
d1244<P>⏎
d1246<P>⏎
cd2:1247-248 「いと心憂く、若々しき御さまかな。人知れぬ心にあまりぬる好き好きしき罪ばかりこそはべらめ、これより馴れ過ぎたることは、さらに御心許されでは御覧ぜられじ。いかばかり<A HREF="#no4">千々に砕け</A><A NAME="te4">は</A>べる思ひに堪へぬぞや。<BR>⏎
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169 「いと心憂く、若々しき御さまかな。人知れぬ心にあまりぬる好き好きしき罪ばかりこそはべらめ、これより馴れ過ぎたることは、さらに御心許されでは御覧ぜられじ。いかばかり<A HREF="#no4">千々に砕け</A><A NAME="te4">は</A>べる思ひに堪へぬぞや。<BR>⏎
d1250<P>⏎
cd2:1251-252 とてあながちに情け深う、用意したまへり。<BR>⏎
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171 とてあながちに情け深う、用意したまへり。<BR>⏎
d1254<P>⏎
d1256<P>⏎
cd2:1257-258 とうち笑ひて、うたて心のままなるさまにもあらず。人の御ありさまの、なつかしうあてになまめいたまへること、さはいへどことに見ゆ。世とともにものを思ひたまふけにや、痩せ痩せにあえかなる心地して、うちとけたまへるままの御袖のあたりもなよびかに、気近うしみたる匂ひなど、取り集めてらうたげに、やはらかなる心地したまへり。<BR>⏎
<P>⏎
174 とうち笑ひて、うたて心のままなるさまにもあらず。人の御ありさまの、なつかしうあてになまめいたまへること、さはいへどことに見ゆ。世とともにものを思ひたまふけにや、痩せ痩せにあえかなる心地して、うちとけたまへるままの御袖のあたりもなよびかに、気近うしみたる匂ひなど、取り集めてらうたげに、やはらかなる心地したまへり。<BR>⏎
text39259 <A NAME="in17">[第七段 迫りながらも明け方近くなる]</A><BR>175 
d1260<P>⏎
d1262<P>⏎
cd2:1263-264 「なほかう思し知らぬ御ありさまこそ、かへりては浅う御心のほど知らるれ。かう世づかぬまでしれじれしき<A HREF="#k01">うしろやすさ</A><A NAME="t01">な</A>ども、たぐひあらじとおぼえはべるを、何事にもかやすきほどの人こそ、かかるをば痴者などうち笑ひて、つれなき心もつかふなれ。<BR>⏎
<P>⏎
177 「なほかう思し知らぬ御ありさまこそ、かへりては浅う御心のほど知らるれ。かう世づかぬまでしれじれしき<A HREF="#k01">うしろやすさ</A><A NAME="t01">な</A>ども、たぐひあらじとおぼえはべるを、何事にもかやすきほどの人こそ、かかるをば痴者などうち笑ひて、つれなき心もつかふなれ。<BR>⏎
d1266<P>⏎
cd4:2267-270 とよろづに聞こえせめられたまひて、いかが言ふべきと、わびしう思しめぐらす。<BR>⏎
<P>⏎
 世を知りたる方の心やすきやうに、折々ほのめかすも、めざましう、「げにたぐひなき身の憂さなりや」と、思し続けたまふに、死ぬべくおぼえたまうて、<BR>⏎
<P>⏎
179-180 とよろづに聞こえせめられたまひて、いかが言ふべきと、わびしう思しめぐらす。<BR>⏎
 世を知りたる方の心やすきやうに、折々ほのめかすも、めざましう、「げにたぐひなき身の憂さなりや」と、思し続けたまふに、死ぬべくおぼえたまうて、<BR>⏎
d1272<P>⏎
cd5:2273-277 といとほのかに、あはれげに泣いたまうて、<BR>⏎
<P>⏎
 「我のみや憂き世を知れるためしにて<BR>⏎
  濡れそふ袖の名を朽たすべき」<BR>⏎
<P>⏎
182-183 といとほのかに、あはれげに泣いたまうて、<BR>⏎
 「我のみや憂き世を知れるためしにて<BR>  濡れそふ袖の名を朽たすべき」<BR>⏎
d1279<P>⏎
cd7:3280-286 「げに悪しう聞こえつかし」<BR>⏎
<P>⏎
 などほほ笑みたまへるけしきにて、<BR>⏎
<P>⏎
 「おほかたは我濡衣を着せずとも<BR>⏎
  朽ちにし袖の名やは隠るる<BR>⏎
<P>⏎
185-187 「げに悪しう聞こえつかし」<BR>⏎
 などほほ笑みたまへるけしきにて、<BR>⏎
 「おほかたは我濡衣を着せずとも<BR>  朽ちにし袖の名やは隠るる<BR>⏎
d1288<P>⏎
cd6:3289-294 とて月明き方に誘ひきこゆるも、あさまし、と思す。心強うもてなしたまへど、はかなう引き寄せたてまつりて、<BR>⏎
<P>⏎
 「かばかりたぐひなき心ざしを御覧じ知りて、心やすうもてなしたまへ。御許しあらでは、さらにさらに」<BR>⏎
<P>⏎
 といとけざやかに聞こえたまふほど、明け方近うなりにけり。<BR>⏎
<P>⏎
189-191 とて月明き方に誘ひきこゆるも、あさまし、と思す。心強うもてなしたまへど、はかなう引き寄せたてまつりて、<BR>⏎
 「かばかりたぐひなき心ざしを御覧じ知りて、心やすうもてなしたまへ。御許しあらでは、さらにさらに」<BR>⏎
 といとけざやかに聞こえたまふほど、明け方近うなりにけり。<BR>⏎
text39295 <A NAME="in18">[第八段 夕霧、和歌を詠み交わして帰る]</A><BR>192 
d1296<P>⏎
d1298<P>⏎
d1300<P>⏎
cd4:2301-304 「かれは位などもまだ及ばざりけるほどながら、誰れ誰れも御許しありけるに、おのづからもてなされて、見馴れたまひにしを、それだにいとめざましき心のなりにしさま、ましてかうあるまじきことに、よそに聞くあたりにだにあらず、大殿などの聞き思ひたまはむことよ。なべての世のそしりをばさらにもいはず、院にもいかに聞こし召し思ほされむ」<BR>⏎
<P>⏎
 など離れぬここかしこの御心を思しめぐらすに、いと口惜しう、わが心一つに、<BR>⏎
<P>⏎
195-196 「かれは位などもまだ及ばざりけるほどながら、誰れ誰れも御許しありけるに、おのづからもてなされて、見馴れたまひにしを、それだにいとめざましき心のなりにしさま、ましてかうあるまじきことに、よそに聞くあたりにだにあらず、大殿などの聞き思ひたまはむことよ。なべての世のそしりをばさらにもいはず、院にもいかに聞こし召し思ほされむ」<BR>⏎
 など離れぬここかしこの御心を思しめぐらすに、いと口惜しう、わが心一つに、<BR>⏎
d1306<P>⏎
d1308<P>⏎
cd9:4309-317 とやらひきこえたまふより外の言なし。<BR>⏎
<P>⏎
 「あさましや。ことあり顔に分けはべらむ朝露の思はむところよ。なほさらば思し知れよ。をこがましきさまを見えたてまつりて、賢うすかしやりつと思し離れむこそ、その際は心もえ収めあふまじう、<A HREF="#k02">知らぬ</A><A NAME="t02">こ</A>とと、けしからぬ心づかひもならひはじむべう思ひたまへらるれ」<BR>⏎
<P>⏎
 とていとうしろめたく、なかなかなれど、ゆくりかにあざれたることの、まことにならはぬ御心地なれば、「いとほしう、わが御みづからも心劣りやせむ」など思いて、誰が御ためにも、あらはなるまじきほどの霧に立ち隠れて出でたまふ、心地そらなり。<BR>⏎
<P>⏎
 「荻原や軒端の露にそぼちつつ<BR>⏎
  八重立つ霧を分けぞ行くべき<BR>⏎
<P>⏎
199-202 とやらひきこえたまふより外の言なし。<BR>⏎
 「あさましや。ことあり顔に分けはべらむ朝露の思はむところよ。なほさらば思し知れよ。をこがましきさまを見えたてまつりて、賢うすかしやりつと思し離れむこそ、その際は心もえ収めあふまじう、<A HREF="#k02">知らぬ</A><A NAME="t02">こ</A>とと、けしからぬ心づかひもならひはじむべう思ひたまへらるれ」<BR>⏎
 とていとうしろめたく、なかなかなれど、ゆくりかにあざれたることの、まことにならはぬ御心地なれば、「いとほしう、わが御みづからも心劣りやせむ」など思いて、誰が御ためにも、あらはなるまじきほどの霧に立ち隠れて出でたまふ、心地そらなり。<BR>⏎
 「荻原や軒端の露にそぼちつつ<BR>  八重立つ霧を分けぞ行くべき<BR>⏎
d1319<P>⏎
cd5:2320-324 と聞こえたまふ。げにこの御名のたけからず漏りぬべきを、「<A HREF="#no6">心の問はむ</A><A NAME="te6">に</A>だに、口ぎよう答へむ」と思せば、いみじうもて離れたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
 「分け行かむ草葉の露をかことにて<BR>⏎
  なほ濡衣をかけむとや思ふ<BR>⏎
<P>⏎
204-205 と聞こえたまふ。げにこの御名のたけからず漏りぬべきを、「<A HREF="#no6">心の問はむ</A><A NAME="te6">に</A>だに、口ぎよう答へむ」と思せば、いみじうもて離れたまふ。<BR>⏎
 「分け行かむ草葉の露をかことにて<BR>  なほ濡衣をかけむとや思ふ<BR>⏎
d1326<P>⏎
cd2:1327-328 とあはめたまへるさま、いとをかしう恥づかしげなり。年ごろ、人に違へる心ばせ人になりて、さまざまに情けを見えたてまつる、名残なく、うちたゆめ、好き好きしきやうなるが、いとほしう、心恥づかしげなれば、おろかならず思ひ返しつつ、「かうあながちに従ひきこえても、後をこがましくや」と、さまざまに思ひ乱れつつ出でたまふ。道の露けさも、いと所狭し。<BR>⏎
<P>⏎
207 とあはめたまへるさま、いとをかしう恥づかしげなり。年ごろ、人に違へる心ばせ人になりて、さまざまに情けを見えたてまつる、名残なく、うちたゆめ、好き好きしきやうなるが、いとほしう、心恥づかしげなれば、おろかならず思ひ返しつつ、「かうあながちに従ひきこえても、後をこがましくや」と、さまざまに思ひ乱れつつ出でたまふ。道の露けさも、いと所狭し。<BR>⏎
text39329 <H4>第二章 落葉宮の物語 律師の告げ口</H4>208 
text39330 <A NAME="in21">[第一段 夕霧の後朝の文]</A><BR>209 
d1331<P>⏎
d1333<P>⏎
d1335<P>⏎
cd4:2336-339 と人びとはささめく。しばしうち休みたまひて、御衣脱ぎ替へたまふ。常に夏冬といときよらにしおきたまへれば、香の御唐櫃より取う出て奉りたまふ。御粥など参りて、御前に参りたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
 かしこに御文たてまつりたまへれど、御覧じも入れず。にはかにあさましかりしありさま、めざましうも恥づかしうも思すに、心づきなくて、御息所の漏り聞きたまはむことも、いと恥づかしう、またかかることやとかけて知りたまはざらむに、ただならぬふしにても見つけたまひ、人のもの言ひ隠れなき世なれば、おのづから聞きあはせて、隔てけると思さむがいと苦しければ、<BR>⏎
<P>⏎
212-213 と人びとはささめく。しばしうち休みたまひて、御衣脱ぎ替へたまふ。常に夏冬といときよらにしおきたまへれば、香の御唐櫃より取う出て奉りたまふ。御粥など参りて、御前に参りたまふ。<BR>⏎
 かしこに御文たてまつりたまへれど、御覧じも入れず。にはかにあさましかりしありさま、めざましうも恥づかしうも思すに、心づきなくて、御息所の漏り聞きたまはむことも、いと恥づかしう、またかかることやとかけて知りたまはざらむに、ただならぬふしにても見つけたまひ、人のもの言ひ隠れなき世なれば、おのづから聞きあはせて、隔てけると思さむがいと苦しければ、<BR>⏎
d1341<P>⏎
d1343<P>⏎
d1345<P>⏎
d1347<P>⏎
cd2:1348-349 「なほむげに聞こえさせたまはざらむも、おぼつかなく、若々しきやうにぞはべらむ」<BR>⏎
<P>⏎
218 「なほむげに聞こえさせたまはざらむも、おぼつかなく、若々しきやうにぞはべらむ」<BR>⏎
d1351<P>⏎
d1353<P>⏎
cd7:3354-360 とことのほかにて、寄り臥させたまひぬ。<BR>⏎
<P>⏎
 さるは憎げもなく、いと心深う書いたまうて、<BR>⏎
<P>⏎
 「<A HREF="#no7">魂をつれなき袖</A><A NAME="te7">に</A>留めおきて<BR>⏎
  わが心から惑はるるかな<BR>⏎
<P>⏎
221-223 とことのほかにて、寄り臥させたまひぬ。<BR>⏎
 さるは憎げもなく、いと心深う書いたまうて、<BR>⏎
 「<A HREF="#no7">魂をつれなき袖</A><A NAME="te7">に</A>留めおきて<BR>  わが心から惑はるるかな<BR>⏎
d1362<P>⏎
cd2:1363-364 などいと多かめれど、人はえまほにも見ず。例のけしきなる今朝の御文にもあらざめれど、なほえ思ひはるけず。人びとは、御けしきもいとほしきを、嘆かしう見たてまつりつつ、<BR>⏎
<P>⏎
225 などいと多かめれど、人はえまほにも見ず。例のけしきなる今朝の御文にもあらざめれど、なほえ思ひはるけず。人びとは、御けしきもいとほしきを、嘆かしう見たてまつりつつ、<BR>⏎
d1366<P>⏎
d1368<P>⏎
cd2:1369-370 など睦ましうさぶらふ限りは、おのがどち思ひ乱る。御息所もかけて知りたまはず。<BR>⏎
<P>⏎
228 など睦ましうさぶらふ限りは、おのがどち思ひ乱る。御息所もかけて知りたまはず。<BR>⏎
text39371 <A NAME="in22">[第二段 律師、御息所に告げ口]</A><BR>229 
d1372<P>⏎
d1374<P>⏎
cd4:2375-378 「大日如来虚言したまはずは。などてかかくなにがしが心を致して仕うまつる御修法、験なきやうはあらむ。悪霊は執念きやうなれど、業障にまとはれたるはかなものなり」<BR>⏎
<P>⏎
 と声はかれて怒りたまふ。いと聖だち、すくすくしき律師にて、ゆくりもなく、<BR>⏎
<P>⏎
231-232 「大日如来虚言したまはずは。などてかかくなにがしが心を致して仕うまつる御修法、験なきやうはあらむ。悪霊は執念きやうなれど、業障にまとはれたるはかなものなり」<BR>⏎
 と声はかれて怒りたまふ。いと聖だち、すくすくしき律師にて、ゆくりもなく、<BR>⏎
d1380<P>⏎
d1382<P>⏎
d1384<P>⏎
d1386<P>⏎
cd10:5387-396 「いであなかたは。なにがしに隠さるべきにもあらず。今朝、後夜に参う上りつるに、かの西の妻戸より、いとうるはしき男の出でたまへるを、霧深くて、なにがしはえ見分いたてまつらざりつるを、この法師ばらなむ、『大将殿の出でたまふなりけり』と、『昨夜も御車も返して泊りたまひにける』と、口々申しつる。<BR>⏎
<P>⏎
 げにいと香うばしき香の<A HREF="#k04">満ちて</A><A NAME="t04">、</A>頭痛きまでありつれば、げにさなりけりと、思ひあはせはべりぬる。常にいと香うばしうものしたまふ君なり。このこと、いと切にもあらぬことなり。人はいと有職にものしたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
 なにがしらも、童にものしたまうし時より、かの君の御ためのことは、修法をなむ、故大宮ののたまひつけたりしかば、一向にさるべきこと、今に承るところなれど、いと益なし。本妻強くものしたまふ。さる時にあへる族類にて、いとやむごとなし。若君たちは、七八人になりたまひぬ。<BR>⏎
<P>⏎
 え皇女の君圧したまはじ。また女人の悪しき身をうけ、長夜の闇に惑ふは、ただかやうの罪によりなむ、さるいみじき報いをも受くるものなる。人の御怒り出で来なば、長きほだしとなりなむ。もはら受けひかず」<BR>⏎
<P>⏎
 と頭振りて、ただ言ひに言ひ放てば、<BR>⏎
<P>⏎
237-241 「いであなかたは。なにがしに隠さるべきにもあらず。今朝、後夜に参う上りつるに、かの西の妻戸より、いとうるはしき男の出でたまへるを、霧深くて、なにがしはえ見分いたてまつらざりつるを、この法師ばらなむ、『大将殿の出でたまふなりけり』と、『昨夜も御車も返して泊りたまひにける』と、口々申しつる。<BR>⏎
 げにいと香うばしき香の<A HREF="#k04">満ちて</A><A NAME="t04">、</A>頭痛きまでありつれば、げにさなりけりと、思ひあはせはべりぬる。常にいと香うばしうものしたまふ君なり。このこと、いと切にもあらぬことなり。人はいと有職にものしたまふ。<BR>⏎
 なにがしらも、童にものしたまうし時より、かの君の御ためのことは、修法をなむ、故大宮ののたまひつけたりしかば、一向にさるべきこと、今に承るところなれど、いと益なし。本妻強くものしたまふ。さる時にあへる族類にて、いとやむごとなし。若君たちは、七八人になりたまひぬ。<BR>⏎
 え皇女の君圧したまはじ。また女人の悪しき身をうけ、長夜の闇に惑ふは、ただかやうの罪によりなむ、さるいみじき報いをも受くるものなる。人の御怒り出で来なば、長きほだしとなりなむ。もはら受けひかず」<BR>⏎
 と頭振りて、ただ言ひに言ひ放てば、<BR>⏎
d1398<P>⏎
cd2:1399-400 とおぼめいたまひながら、心のうちに、<BR>⏎
<P>⏎
243 とおぼめいたまひながら、心のうちに、<BR>⏎
d1402<P>⏎
text39403 <A NAME="in23">[第三段 御息所、小少将君に問い質す]</A><BR>245 
d1404<P>⏎
d1406<P>⏎
cd2:1407-408 「かかることなむ聞きつる。いかなりしことぞ。などかおのれには、さなむかくなむとは聞かせたまはざりける。さしもあらじと思ひながら」<BR>⏎
<P>⏎
247 「かかることなむ聞きつる。いかなりしことぞ。などかおのれには、さなむかくなむとは聞かせたまはざりける。さしもあらじと思ひながら」<BR>⏎
d1410<P>⏎
d1412<P>⏎
cd2:1413-414 律師とは思ひも寄らで、忍びて人の聞こえけると思ふ。ものものたまはで、いと憂く口惜しと思すに、涙ほろほろとこぼれたまひぬ。見たてまつるも、いといとほしう、「何にありのままに聞こえつらむ。苦しき御心地を、いとど思し乱るらむ」と悔しう思ひゐたり。<BR>⏎
<P>⏎
250 律師とは思ひも寄らで、忍びて人の聞こえけると思ふ。ものものたまはで、いと憂く口惜しと思すに、涙ほろほろとこぼれたまひぬ。見たてまつるも、いといとほしう、「何にありのままに聞こえつらむ。苦しき御心地を、いとど思し乱るらむ」と悔しう思ひゐたり。<BR>⏎
d1416<P>⏎
cd4:2417-420 「とてもかくても、さばかりに、何の用意もなく、軽らかに人に見えたまひけむこそ、いといみじけれ。うちうちの御心きようおはすとも、かくまで言ひつる法師ばら、よからぬ童べなどは、まさに言ひ残してむや。人には、いかに言ひあらがひ、さもあらぬことと言ふべきにかあらむ。すべて心幼き限りしも、ここにさぶらひて」<BR>⏎
<P>⏎
 ともえのたまひやらず。いと苦しげなる御心地に、ものを思しおどろきたれば、いと<A HREF="#k05">いとほしげなり</A><A NAME="t05">。</A>気高うもてなしきこえむとおぼいたるに、世づかはしう、軽々しき名の立ちたまふべきを、おろかならず思し嘆かる。<BR>⏎
<P>⏎
252-253 「とてもかくても、さばかりに、何の用意もなく、軽らかに人に見えたまひけむこそ、いといみじけれ。うちうちの御心きようおはすとも、かくまで言ひつる法師ばら、よからぬ童べなどは、まさに言ひ残してむや。人には、いかに言ひあらがひ、さもあらぬことと言ふべきにかあらむ。すべて心幼き限りしも、ここにさぶらひて」<BR>⏎
 ともえのたまひやらず。いと苦しげなる御心地に、ものを思しおどろきたれば、いと<A HREF="#k05">いとほしげなり</A><A NAME="t05">。</A>気高うもてなしきこえむとおぼいたるに、世づかはしう、軽々しき名の立ちたまふべきを、おろかならず思し嘆かる。<BR>⏎
d1422<P>⏎
cd2:1423-424 と涙を浮けてのたまふ。参りて、<BR>⏎
<P>⏎
255 と涙を浮けてのたまふ。参りて、<BR>⏎
d1426<P>⏎
d1428<P>⏎
text39429 <A NAME="in24">[第四段 落葉宮、母御息所のもとに参る]</A><BR>258 
d1430<P>⏎
d1432<P>⏎
d1434<P>⏎
d1436<P>⏎
cd2:1438-439<P> と押し下させたまふ。ものをいと苦しう、さまざまに思すには、気ぞ上がりける。<BR>⏎
<P>⏎
263 と押し下させたまふ。ものをいと苦しう、さまざまに思すには、気ぞ上がりける。<BR>⏎
c1441 「上に、この御ことほのめかし聞こえける人こそはべけれ。いかなりしことぞ、と問はせたまひつれば、ありのままに聞こえさせて、御障子の固めばかりをなむ、すこしこと添へて、けざやかに聞こえさせつる。もしさやうにかすめきこえさせたまはば、同じさまに聞こえさせたまへ」<BR>⏎
265 「上に、この御ことほのめかし聞こえける人こそはべけれ。いかなりしことぞ、と問はせたまひつれば、ありのままに聞こえさせて、御障子の固めばかりをなむ、すこしこと添へて、けざやかに聞こえさせつる。もしさやうにかすめきこえさせたまはば、同じさまに聞こえさせたまへ」<BR>⏎
d1443<P>⏎
d1445<P>⏎
d1447<P>⏎
cd5:3448-452 と生けるかひなく思ひ続けたまひて、「この人はかうても止まで、とかく言ひかかづらひ出でむも、わづらはしう聞き苦しかるべう」、よろづに思す。「まいていふかひなく、人の言によりて、いかなる名を朽たさまし」<BR>⏎
<P> などすこし思し慰むる方はあれど、「かばかりになりぬる高き人の、かくまでも、すずろに人に見ゆるやうはあらじかし」と、宿世憂く思し屈して、夕つ方ぞ、<BR>⏎
<P>⏎
 「なほ渡らせたまへ」<BR>⏎
<P>⏎
269-271 と生けるかひなく思ひ続けたまひて、「この人はかうても止まで、とかく言ひかかづらひ出でむも、わづらはしう聞き苦しかるべう」、よろづに思す。「まいていふかひなく、人の言によりて、いかなる名を朽たさまし」<BR>⏎
 などすこし思し慰むる方はあれど、「かばかりになりぬる高き人の、かくまでも、すずろに人に見ゆるやうはあらじかし」と、宿世憂く思し屈して、夕つ方ぞ、<BR>⏎
 「なほ渡らせたまへ」<BR>⏎
d1454<P>⏎
text39455 <A NAME="in25">[第五段 御息所の嘆き]</A><BR>273 
d1456<P>⏎
d1458<P>⏎
cd2:1459-460 「いと乱りがはしげにはべれば、渡らせたまふも心苦しうてなむ。この二三日ばかり見たてまつらざりけるほどの、年月の心地するも、かつはいとはかなくなむ。後かならずしも、対面のはべるべきにもはべらざめり。まためぐり参るとも、かひやははべるべき。<BR>⏎
<P>⏎
275 「いと乱りがはしげにはべれば、渡らせたまふも心苦しうてなむ。この二三日ばかり見たてまつらざりけるほどの、年月の心地するも、かつはいとはかなくなむ。後かならずしも、対面のはべるべきにもはべらざめり。まためぐり参るとも、かひやははべるべき。<BR>⏎
d1462<P>⏎
d1464<P>⏎
d1466<P>⏎
d1468<P>⏎
text39469 <H4>第三章 一条御息所の物語 行き違いの不幸</H4>280 
text39470 <A NAME="in31">[第一段 御息所、夕霧に返書]</A><BR>281 
d1471<P>⏎
d1473<P>⏎
d1475<P>⏎
d1477<P>⏎
d1479<P>⏎
cd6:3480-485 とさすがに問ひたまふ。人知れず思し弱る心も添ひて、下に待ち<A HREF="#k07">きこえたまひ</A><A NAME="t07">け</A>るに、さもあらぬなめりと思ほすも、心騷ぎして、<BR>⏎
<P>⏎
 「いでその御文、なほ聞こえたまへ。あいなし。人の御名を善さまに言ひ直す人は難きものなり。そこに心きよう思すとも、しか用ゐる人は少なくこそあらめ。心うつくしきやうに聞こえ通ひたまひて、なほありしままならむこそ良からめ。あいなき甘えたるさまなるべし」<BR>⏎
<P>⏎
 とて召し寄す。苦しけれどたてまつりつ。<BR>⏎
<P>⏎
286-288 とさすがに問ひたまふ。人知れず思し弱る心も添ひて、下に待ち<A HREF="#k07">きこえたまひ</A><A NAME="t07">け</A>るに、さもあらぬなめりと思ほすも、心騷ぎして、<BR>⏎
 「いでその御文、なほ聞こえたまへ。あいなし。人の御名を善さまに言ひ直す人は難きものなり。そこに心きよう思すとも、しか用ゐる人は少なくこそあらめ。心うつくしきやうに聞こえ通ひたまひて、なほありしままならむこそ良からめ。あいなき甘えたるさまなるべし」<BR>⏎
 とて召し寄す。苦しけれどたてまつりつ。<BR>⏎
d1487<P>⏎
cd3:1488-490  せくからに浅さぞ見えむ山川の<BR>⏎
  流れての名をつつみ果てずは」<BR>⏎
<P>⏎
290  せくからに浅さぞ見えむ山川の<BR>  流れての名をつつみ果てずは」<BR>⏎
d1492<P>⏎
d1494<P>⏎
cd2:1495-496 「故督の君の御心ざまの思はずなりし時、いと憂しと思ひしかど、おほかたのもてなしは、また並ぶ人なかりしかば、こなたに力ある心地して慰めしだに、世には心もゆかざりしを。あないみじや。大殿のわたりに思ひのたまはむこと」<BR>⏎
<P>⏎
293 「故督の君の御心ざまの思はずなりし時、いと憂しと思ひしかど、おほかたのもてなしは、また並ぶ人なかりしかば、こなたに力ある心地して慰めしだに、世には心もゆかざりしを。あないみじや。大殿のわたりに思ひのたまはむこと」<BR>⏎
d1498<P>⏎
cd2:1499-500 「なほいかがのたまふと、けしきをだに見む」と、心地のかき乱りくるるやうにしたまふ目、おし絞りて、あやしき鳥の跡のやうに書きたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
295 「なほいかがのたまふと、けしきをだに見む」と、心地のかき乱りくるるやうにしたまふ目、おし絞りて、あやしき鳥の跡のやうに書きたまふ。<BR>⏎
d1502<P>⏎
cd5:2503-507  女郎花萎るる野辺をいづことて<BR>⏎
  一夜ばかりの宿を借りけむ」<BR>⏎
<P>⏎
 とただ書きさして、おしひねりて出だしたまひて、臥したまひぬるままに、いといたく苦しがりたまふ。御もののけのたゆめけるにやと、人びと言ひ騒ぐ。<BR>⏎
<P>⏎
297-298  女郎花萎るる野辺をいづことて<BR>  一夜ばかりの宿を借りけむ」<BR>⏎
 とただ書きさして、おしひねりて出だしたまひて、臥したまひぬるままに、いといたく苦しがりたまふ。御もののけのたゆめけるにやと、人びと言ひ騒ぐ。<BR>⏎
d1509<P>⏎
cd4:2510-513 「なほ渡らせたまひね」<BR>⏎
<P>⏎
 と人びと聞こゆれど、御身の憂きままに、後れきこえじと思せば、つと添ひたまへり。<BR>⏎
<P>⏎
300-301 「なほ渡らせたまひね」<BR>⏎
 と人びと聞こゆれど、御身の憂きままに、後れきこえじと思せば、つと添ひたまへり。<BR>⏎
text39514 <A NAME="in32">[第二段 雲居雁、手紙を奪う]</A><BR>302 
d1515<P>⏎
d1517<P>⏎
d1519<P>⏎
d1521<P>⏎
cd2:1522-523 「あさましう。こはいかにしたまふぞ。あなけしからず。六条の東の上の御文なり。今朝、風邪おこりて悩ましげにしたまへるを、院の御前にはべりて、出でつるほど、またも参うでずなりぬれば、いとほしさに、今の間いかにと、聞こえたりつるなり。見たまへよ、懸想びたる文のさまか。さてもなほなほしの御さまや。年月に添へて、いたうあなづりたまふこそうれたけれ。思はむところを、むげに恥ぢたまはぬよ」<BR>⏎
<P>⏎
306 「あさましう。こはいかにしたまふぞ。あなけしからず。六条の東の上の御文なり。今朝、風邪おこりて悩ましげにしたまへるを、院の御前にはべりて、出でつるほど、またも参うでずなりぬれば、いとほしさに、今の間いかにと、聞こえたりつるなり。見たまへよ、懸想びたる文のさまか。さてもなほなほしの御さまや。年月に添へて、いたうあなづりたまふこそうれたけれ。思はむところを、むげに恥ぢたまはぬよ」<BR>⏎
d1525<P>⏎
d1527<P>⏎
cd4:2528-531 とばかりかくうるはしだちたまへるに憚りて、若やかにをかしきさましてのたまへば、うち笑ひて、<BR>⏎
<P>⏎
 「そはともかくもあらむ。世の常のことなり。またあらじかし、よろしうなりぬる男の、かく紛ふ方なく、一つ所を守らへて、もの懼ぢしたる鳥の兄鷹やうのもののやうなるは。いかに人<A HREF="#k08">笑ふ</A><A NAME="t08">ら</A>む。さるかたくなしき者に守られたまふは、御ためにもたけからずや。<BR>⏎
<P>⏎
309-310 とばかりかくうるはしだちたまへるに憚りて、若やかにをかしきさましてのたまへば、うち笑ひて、<BR>⏎
 「そはともかくもあらむ。世の常のことなり。またあらじかし、よろしうなりぬる男の、かく紛ふ方なく、一つ所を守らへて、もの懼ぢしたる鳥の兄鷹やうのもののやうなるは。いかに人<A HREF="#k08">笑ふ</A><A NAME="t08">ら</A>む。さるかたくなしき者に守られたまふは、御ためにもたけからずや。<BR>⏎
d1533<P>⏎
cd2:1534-535 とさすがに、この文のけしきなくをこつり<A HREF="#k09">取らむ</A><A NAME="t09">の</A>心にて、欺き申したまへば、いとにほひやかにうち笑ひて、<BR>⏎
<P>⏎
312 とさすがに、この文のけしきなくをこつり<A HREF="#k09">取らむ</A><A NAME="t09">の</A>心にて、欺き申したまへば、いとにほひやかにうち笑ひて、<BR>⏎
d1537<P>⏎
d1539<P>⏎
cd2:1540-541 「にはかにと思すばかりには、何ごとか見ゆらむ。いとうたてある御心の隈かな。よからずもの聞こえ知らする人ぞあるべき。あやしう、もとよりまろをば許さぬぞかし。なほかの緑の袖の名残、あなづらはしきにことづけて、もてなしたてまつらむと思ふやうあるにや。いろいろ聞きにくきことどもほのめくめり。あいなき人の御ためにも、いとほしう」<BR>⏎
<P>⏎
315 「にはかにと思すばかりには、何ごとか見ゆらむ。いとうたてある御心の隈かな。よからずもの聞こえ知らする人ぞあるべき。あやしう、もとよりまろをば許さぬぞかし。なほかの緑の袖の名残、あなづらはしきにことづけて、もてなしたてまつらむと思ふやうあるにや。いろいろ聞きにくきことどもほのめくめり。あいなき人の御ためにも、いとほしう」<BR>⏎
d1543<P>⏎
text39544 <A NAME="in33">[第三段 手紙を見ぬまま朝になる]</A><BR>317 
d1545<P>⏎
d1547<P>⏎
d1549<P>⏎
cd2:1550-551 女君は、君達におどろかされて、ゐざり出でたまふにぞ、われも今起きたまふやうにて、よろづにうかがひたまへど、え見つけたまはず。<A HREF="#k11">女は</A><A NAME="t11">、</A>かく求めむとも思ひたまへらぬをぞ、「げに懸想なき御文なりけり」と、心にも入れねば、君達のあわて遊びあひて、雛作り、拾ひ据ゑて遊びたまふ、書読み、手習ひなど、さまざまにいとあわたたし、小さき稚児這ひかかり引きしろへば、取りし文のことも思ひ出でたまはず。<BR>⏎
<P>⏎
320 女君は、君達におどろかされて、ゐざり出でたまふにぞ、われも今起きたまふやうにて、よろづにうかがひたまへど、え見つけたまはず。<A HREF="#k11">女は</A><A NAME="t11">、</A>かく求めむとも思ひたまへらぬをぞ、「げに懸想なき御文なりけり」と、心にも入れねば、君達のあわて遊びあひて、雛作り、拾ひ据ゑて遊びたまふ、書読み、手習ひなど、さまざまにいとあわたたし、小さき稚児這ひかかり引きしろへば、取りし文のことも思ひ出でたまはず。<BR>⏎
d1553<P>⏎
d1555<P>⏎
d1557<P>⏎
d1559<P>⏎
d1561<P>⏎
d1563<P>⏎
cd4:2564-567 「いでこのひがこと、な常にのたまひそ。何のをかしきやうかある。世人になずらへたまふこそ、なかなか恥づかしけれ。この女房たちも、かつはあやしきまめざまを、かくのたまふと、ほほ笑むらむものを」<BR>⏎
<P>⏎
 と戯れ言に言ひなして、<BR>⏎
<P>⏎
327-328 「いでこのひがこと、な常にのたまひそ。何のをかしきやうかある。世人になずらへたまふこそ、なかなか恥づかしけれ。この女房たちも、かつはあやしきまめざまを、かくのたまふと、ほほ笑むらむものを」<BR>⏎
 と戯れ言に言ひなして、<BR>⏎
d1569<P>⏎
d1571<P>⏎
text39572 <A NAME="in34">[第四段 夕霧、手紙を見る]</A><BR>331 
d1573<P>⏎
d1575<P>⏎
d1577<P>⏎
d1579<P>⏎
cd2:1580-581 と言はむ方なくおぼゆ。いと苦しげに、言ふかひなく、書き紛らはしたまへるさまにて、<BR>⏎
<P>⏎
335 と言はむ方なくおぼゆ。いと苦しげに、言ふかひなく、書き紛らはしたまへるさまにて、<BR>⏎
d1583<P>⏎
cd4:2584-587 と言ふべき方のなければ、女君ぞ、いとつらう心憂き。<BR>⏎
<P>⏎
 「すずろに、かくあだへ隠して。いでやわがならはしぞや」と、さまざまに身もつらく、すべて泣きぬべき心地したまふ。<BR>⏎
<P>⏎
337-338 と言ふべき方のなければ、女君ぞ、いとつらう心憂き。<BR>⏎
 「すずろに、かくあだへ隠して。いでやわがならはしぞや」と、さまざまに身もつらく、すべて泣きぬべき心地したまふ。<BR>⏎
d1589<P>⏎
d1591<P>⏎
cd2:1592-593 とうるはしき心に思して、まづこの御返りを聞こえたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
341 とうるはしき心に思して、まづこの御返りを聞こえたまふ。<BR>⏎
d1595<P>⏎
cd3:1596-598  秋の野の草の茂みは分けしかど<BR>⏎
  仮寝の枕結びやはせし<BR>⏎
<P>⏎
343  秋の野の草の茂みは分けしかど<BR>  仮寝の枕結びやはせし<BR>⏎
d1600<P>⏎
cd2:1601-602 とあり。宮には、いと多く聞こえたまて、御厩に足疾き御馬に移し置きて、一夜の大夫をぞたてまつれたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
345 とあり。宮には、いと多く聞こえたまて、御厩に足疾き御馬に移し置きて、一夜の大夫をぞたてまつれたまふ。<BR>⏎
d1604<P>⏎
cd2:1605-606 とて言ふべきやう、ささめき教へたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
347 とて言ふべきやう、ささめき教へたまふ。<BR>⏎
text39607 <A NAME="in35">[第五段 御息所の嘆き]</A><BR>348 
d1608<P>⏎
d1610<P>⏎
d1612<P>⏎
cd2:1613-614 「今さらにむつかしきことをば聞こえじと思へど、なほ御宿世とはいひながら、思はずに<A HREF="#k12">心幼くて</A><A NAME="t12">、</A>人のもどきを負ひたまふべきことを。取り返すべきことにはあらねど、今よりは、なほさる心したまへ。<BR>⏎
<P>⏎
351 「今さらにむつかしきことをば聞こえじと思へど、なほ御宿世とはいひながら、思はずに<A HREF="#k12">心幼くて</A><A NAME="t12">、</A>人のもどきを負ひたまふべきことを。取り返すべきことにはあらねど、今よりは、なほさる心したまへ。<BR>⏎
d1616<P>⏎
d1618<P>⏎
cd4:2619-622 院より始めたてまつりて、思しなびき、この父大臣にも許いたまふべき御けしきありしに、おのれ一人しも心をたてても、いかがはと思ひ寄りはべりしことなれば、末の世までものしき御ありさまを、わが御過ちならぬに、大空をかこちて見たてまつり過ぐすを、いとかう人のためわがための、よろづに聞きにくかりぬべきことの出で来添ひぬべきが、さてもよその御名をば知らぬ顔にて、世の常の御ありさまにだにあらば、おのづからあり経むにつけても、慰むこともやと、思ひなしはべるを、こよなう情けなき人の御心にもはべりけるかな」<BR>⏎
<P>⏎
 とつぶつぶと泣きたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
354-355 院より始めたてまつりて、思しなびき、この父大臣にも許いたまふべき御けしきありしに、おのれ一人しも心をたてても、いかがはと思ひ寄りはべりしことなれば、末の世までものしき御ありさまを、わが御過ちならぬに、大空をかこちて見たてまつり過ぐすを、いとかう人のためわがための、よろづに聞きにくかりぬべきことの出で来添ひぬべきが、さてもよその御名をば知らぬ顔にて、世の常の御ありさまにだにあらば、おのづからあり経むにつけても、慰むこともやと、思ひなしはべるを、こよなう情けなき人の御心にもはべりけるかな」<BR>⏎
 とつぶつぶと泣きたまふ。<BR>⏎
text39623 <A NAME="in36">[第六段 御息所死去す]</A><BR>356 
d1624<P>⏎
d1626<P>⏎
cd2:1627-628 「あはれ何ごとかは、人に劣りたまへる。いかなる御宿世にて、やすからず、ものを深く思すべき契り深かりけむ」<BR>⏎
<P>⏎
358 「あはれ何ごとかは、人に劣りたまへる。いかなる御宿世にて、やすからず、ものを深く思すべき契り深かりけむ」<BR>⏎
d1630<P>⏎
d1632<P>⏎
d1634<P>⏎
d1636<P>⏎
cd2:1637-638 とさまざま思し出づるに、やがて絶え入りたまひぬ。あへなくいみじと言へばおろかなり。昔より、もののけには時々患ひたまふ。限りと見ゆる折々もあれば、「例のごと取り入れたるなめり」とて、加持参り騒げど、今はのさま、しるかりけり。<BR>⏎
<P>⏎
363 とさまざま思し出づるに、やがて絶え入りたまひぬ。あへなくいみじと言へばおろかなり。昔より、もののけには時々患ひたまふ。限りと見ゆる折々もあれば、「例のごと取り入れたるなめり」とて、加持参り騒げど、今はのさま、しるかりけり。<BR>⏎
d1640<P>⏎
cd4:2641-644 「今はいふかひなし。いとかう思すとも、限りある道は、帰りおはすべきことにもあらず。慕ひきこえたまふとも、いかでか御心にはかなふべき」<BR>⏎
<P>⏎
 とさらなることわりを聞こえて、<BR>⏎
<P>⏎
365-366 「今はいふかひなし。いとかう思すとも、限りある道は、帰りおはすべきことにもあらず。慕ひきこえたまふとも、いかでか御心にはかなふべき」<BR>⏎
 とさらなることわりを聞こえて、<BR>⏎
d1646<P>⏎
cd2:1647-648 と引き動かいたてまつれど、すくみたるやうにて、ものもおぼえたまはず。<BR>⏎
<P>⏎
368 と引き動かいたてまつれど、すくみたるやうにて、ものもおぼえたまはず。<BR>⏎
d1650<P>⏎
text39651 <A NAME="in37">[第七段 朱雀院の弔問の手紙]</A><BR>370 
d1652<P>⏎
d1654<P>⏎
d1656<P>⏎
d1658<P>⏎
d1660<P>⏎
d1662<P>⏎
d1664<P>⏎
cd2:1665-666 など人聞きにはのたまひて、いとも悲しうあはれに、宮の思し嘆くらむことを推し量りきこえたまうて、<BR>⏎
<P>⏎
377 など人聞きにはのたまひて、いとも悲しうあはれに、宮の思し嘆くらむことを推し量りきこえたまうて、<BR>⏎
d1668<P>⏎
cd2:1669-670 と人びといさめきこゆれど、しひておはしましぬ。<BR>⏎
<P>⏎
379 と人びといさめきこゆれど、しひておはしましぬ。<BR>⏎
text39671 <A NAME="in38">[第八段 夕霧の弔問]</A><BR>380 
d1672<P>⏎
d1674<P>⏎
d1676<P>⏎
d1678<P>⏎
d1680<P>⏎
d1683<P>⏎
cd6:3684-689 と口々聞こゆれば、<BR>⏎
<P>⏎
 「ただ推し量りて。我は言ふべきこともおぼえず」<BR>⏎
<P>⏎
 とて臥したまへるもことわりにて、<BR>⏎
<P>⏎
387-389 と口々聞こゆれば、<BR>⏎
 「ただ推し量りて。我は言ふべきこともおぼえず」<BR>⏎
 とて臥したまへるもことわりにて、<BR>⏎
d1691<P>⏎
d1693<P>⏎
d1695<P>⏎
d1697<P>⏎
cd6:3698-703 「かこちきこえさするさまになむ、なりはべりぬべき。今日は、いとど乱りがはしき心地どもの惑ひに、聞こえさせ違ふることどももはべりなむ。さらばかく思し惑へる御心地も、限りあることにて、すこし静まらせたまひなむほどに、聞こえさせ承らむ」<BR>⏎
<P>⏎
 とて我にもあらぬさまなれば、のたまひ出づることも口ふたがりて、<BR>⏎
<P>⏎
 「げにこそ闇に惑へる心地すれ。なほ聞こえ慰めたまひて、いささかの御返りもあらばなむ」<BR>⏎
<P>⏎
394-396 「かこちきこえさするさまになむ、なりはべりぬべき。今日は、いとど乱りがはしき心地どもの惑ひに、聞こえさせ違ふることどももはべりなむ。さらばかく思し惑へる御心地も、限りあることにて、すこし静まらせたまひなむほどに、聞こえさせ承らむ」<BR>⏎
 とて我にもあらぬさまなれば、のたまひ出づることも口ふたがりて、<BR>⏎
 「げにこそ闇に惑へる心地すれ。なほ聞こえ慰めたまひて、いささかの御返りもあらばなむ」<BR>⏎
d1705<P>⏎
text39706 <A NAME="in39">[第九段 御息所の葬儀]</A><BR>398 
d1707<P>⏎
d1709<P>⏎
d1711<P>⏎
cd2:1712-713 など喜びかしこまりきこゆ。「名残だになくあさましきこと」と、宮は臥しまろびたまへど、かひなし。親と聞こゆとも、いとかくはならはすまじきものなりけり。見たてまつる人びとも、この御事を、またゆゆしう嘆ききこゆ。大和守、残りのことどもしたためて、<BR>⏎
<P>⏎
401 など喜びかしこまりきこゆ。「名残だになくあさましきこと」と、宮は臥しまろびたまへど、かひなし。親と聞こゆとも、いとかくはならはすまじきものなりけり。見たてまつる人びとも、この御事を、またゆゆしう嘆ききこゆ。大和守、残りのことどもしたためて、<BR>⏎
d1715<P>⏎
cd2:1716-717 など聞こゆれど、なほ峰の煙をだに、気近くて思ひ出できこえむと、この山里に住み果てなむと思いたり。<BR>⏎
<P>⏎
403 など聞こゆれど、なほ峰の煙をだに、気近くて思ひ出できこえむと、この山里に住み果てなむと思いたり。<BR>⏎
d1719<P>⏎
text39720 <H4>第四章 夕霧の物語 落葉宮に心あくがれる夕霧</H4>405 
text39721 <A NAME="in41">[第一段 夕霧、返事を得られず]</A><BR>406 
d1722<P>⏎
d1724<P>⏎
cd2:1725-726 大将殿は、日々に訪らひきこえたまふ。寂しげなる念仏の僧など、慰むばかり、よろづの物を遣はし訪らはせたまひ、宮の御前には、あはれに心深き言の葉を尽くして怨みきこえ、かつは尽きもせぬ御訪らひを聞こえたまへど、取りてだに御覧ぜず、すずろにあさましきことを、弱れる御心地に、疑ひなく思ししみて、消え失せたまひにしことを思し出づるに、「後の世の御罪にさへやなるらむ」と、胸に満つ心地して、この人の御ことをだにかけて聞きたまふは、いとどつらく心憂き涙のもよほしに思さる。人びとも聞こえわづらひぬ。<BR>⏎
<P>⏎
408 大将殿は、日々に訪らひきこえたまふ。寂しげなる念仏の僧など、慰むばかり、よろづの物を遣はし訪らはせたまひ、宮の御前には、あはれに心深き言の葉を尽くして怨みきこえ、かつは尽きもせぬ御訪らひを聞こえたまへど、取りてだに御覧ぜず、すずろにあさましきことを、弱れる御心地に、疑ひなく思ししみて、消え失せたまひにしことを思し出づるに、「後の世の御罪にさへやなるらむ」と、胸に満つ心地して、この人の御ことをだにかけて聞きたまふは、いとどつらく心憂き涙のもよほしに思さる。人びとも聞こえわづらひぬ。<BR>⏎
d1728<P>⏎
cd2:1729-730 「悲しきことも限りあるを。などかかくあまり見知りたまはずはあるべき。いふかひなく若々しきやうに」と恨めしう、「異事の筋に、花や蝶やと書けばこそあらめ、わが心にあはれと思ひ、もの嘆かしき方ざまのことを、いかにと問ふ人は、睦ましうあはれにこそおぼゆれ。<BR>⏎
<P>⏎
410 「悲しきことも限りあるを。などかかくあまり見知りたまはずはあるべき。いふかひなく若々しきやうに」と恨めしう、「異事の筋に、花や蝶やと書けばこそあらめ、わが心にあはれと思ひ、もの嘆かしき方ざまのことを、いかにと問ふ人は、睦ましうあはれにこそおぼゆれ。<BR>⏎
d1732<P>⏎
d1734<P>⏎
cd2:1735-736 などつれづれとものをのみ思し続けて、明かし暮らしたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
413 などつれづれとものをのみ思し続けて、明かし暮らしたまふ。<BR>⏎
text39737 <A NAME="in42">[第二段 雲居雁の嘆きの歌]</A><BR>414 
d1738<P>⏎
d1740<P>⏎
d1742<P>⏎
d1744<P>⏎
cd3:1745-747 「あはれをもいかに知りてか慰めむ<BR>⏎
  あるや恋しき亡きや悲しき<BR>⏎
<P>⏎
418 「あはれをもいかに知りてか慰めむ<BR>  あるや恋しき亡きや悲しき<BR>⏎
d1749<P>⏎
d1751<P>⏎
cd5:2753-757 と思す。いとどしくことなしびに、<BR>⏎
<P>⏎
 「いづれとか分きて眺めむ消えかへる<BR>⏎
  露も草葉のうへと見ぬ世を<BR>⏎
<P>⏎
422-423 と思す。いとどしくことなしびに、<BR>⏎
 「いづれとか分きて眺めむ消えかへる<BR>  露も草葉のうへと見ぬ世を<BR>⏎
d1759<P>⏎
cd4:2760-763 と書いたまへり。「なほかく隔てたまへること」と、露のあはれをばさしおきて、ただならず嘆きつつおはす。<BR>⏎
<P>⏎
 なほかくおぼつかなく思しわびて、また渡りたまへり。「御忌など過ぐしてのどやかに」と思し静めけれど、さまでもえ忍びたまはず、<BR>⏎
<P>⏎
425-426 と書いたまへり。「なほかく隔てたまへること」と、露のあはれをばさしおきて、ただならず嘆きつつおはす。<BR>⏎
 なほかくおぼつかなく思しわびて、また渡りたまへり。「御忌など過ぐしてのどやかに」と 思し静めけれど、さまでもえ忍びたまはず、<BR>⏎
d1765<P>⏎
cd4:2766-769 と思したばかりにければ、北の方の御思ひやりを、あながちにもあらがひきこえたまはず。<BR>⏎
<P>⏎
 正身は強う思し離るとも、かの一夜ばかりの御恨み文をとらへどころにかこちて、「えしもすすぎ果てたまはじ」と、頼もしかりけり。<BR>⏎
<P>⏎
428-429 と思したばかりにければ、北の方の御思ひやりを、あながちにもあらがひきこえたまはず。<BR>⏎
 正身は強う思し離るとも、かの一夜ばかりの御恨み文をとらへどころにかこちて、「えしもすすぎ果てたまはじ」と、頼もしかりけり。<BR>⏎
text39770 <A NAME="in43">[第三段 九月十日過ぎ、小野山荘を訪問]</A><BR>430 
d1771<P>⏎
d1773<P>⏎
d1775<P>⏎
cd2:1776-777 例の妻戸のもとに立ち寄りたまて、やがて眺め出だして立ちたまへり。なつかしきほどの直衣に、色こまやかなる御衣の擣目、いとけうらに透きて、影弱りたる夕日の、さすがに何心もなうさし来たるに、まばゆげに、わざとなく扇をさし隠したまへる手つき、「女こそかうはあらまほしけれ、それだにえあらぬを」と、見たてまつる。<BR>⏎
<P>⏎
433 例の妻戸のもとに立ち寄りたまて、やがて眺め出だして立ちたまへり。なつかしきほどの直衣に、色こまやかなる御衣の擣目、いとけうらに透きて、影弱りたる夕日の、さすがに何心もなうさし来たるに、まばゆげに、わざとなく扇をさし隠したまへる手つき、「女こそかうはあらまほしけれ、それだにえあらぬを」と、見たてまつる。<BR>⏎
d1779<P>⏎
d1781<P>⏎
cd2:1782-783 とてわざとも見入れぬさまに、山の方を眺めて、「なほなほ」と切にのたまへば、鈍色の几帳を、簾のつまよりすこしおし出でて、裾をひきそばめつつゐたり。大和守の妹なれば、離れたてまつらぬうちに、幼くより生ほし立てたまうければ、衣の色いと濃くて、橡の衣一襲、小袿着たり。<BR>⏎
<P>⏎
436 とてわざとも見入れぬさまに、山の方を眺めて、「なほなほ」と切にのたまへば、鈍色の几帳を、簾のつまよりすこしおし出でて、裾をひきそばめつつゐたり。大和守の妹なれば、離れたてまつらぬうちに、幼くより生ほし立てたまうければ、衣の色いと濃くて、橡の衣一襲、小袿着たり。<BR>⏎
d1785<P>⏎
cd2:1786-787 といと多く恨み続けたまふ。かの今はの御文のさまものたまひ出でて、いみじう泣きたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
438 といと多く恨み続けたまふ。かの今はの御文のさまものたまひ出でて、いみじう泣きたまふ。<BR>⏎
text39788 <A NAME="in44">[第四段 板ばさみの小少将君]</A><BR>439 
d1789<P>⏎
d1791<P>⏎
d1793<P>⏎
d1795<P>⏎
cd2:1796-797 などとめがたげにうち嘆きつつ、はかばかしうもあらず聞こゆ。<BR>⏎
<P>⏎
443 などとめがたげにうち嘆きつつ、はかばかしうもあらず聞こゆ。<BR>⏎
d1799<P>⏎
cd7:3800-806 いとかく心憂き御けしき、聞こえ知らせたまへ。よろづのこと、さるべきにこそ。世にあり経じと思すとも、従はぬ世なり。まづはかかる御別れの、御心にかなはば、あるべきことかは」<BR>⏎
<P>⏎
 などよろづに多くのたまへど、聞こゆべきこともなくて、うち嘆きつつゐたり。鹿のいといたく鳴くを、「<A HREF="#no14">われ劣らめや</A><A NAME="te14">」</A>とて、<BR>⏎
<P>⏎
 「里遠み小野の篠原わけて来て<BR>⏎
  我も鹿こそ声も惜しまね」<BR>⏎
<P>⏎
445-447 いとかく心憂き御けしき、聞こえ知らせたまへ。よろづのこと、さるべきにこそ。世にあり経じと思すとも、従はぬ世なり。まづはかかる御別れの、御心にかなはば、あるべきことかは」<BR>⏎
 などよろづに多くのたまへど、聞こゆべきこともなくて、うち嘆きつつゐたり。鹿のいといたく鳴くを、「<A HREF="#no14">われ劣らめや</A><A NAME="te14">」</A>とて、<BR>⏎
 「里遠み小野の篠原わけて来て<BR>  我も鹿こそ声も惜しまね」<BR>⏎
d1808<P>⏎
cd3:1809-811 「藤衣露けき秋の山人は<BR>⏎
  鹿の鳴く音に音をぞ添へつる」<BR>⏎
<P>⏎
449 「藤衣露けき秋の山人は<BR>  鹿の鳴く音に音をぞ添へつる」<BR>⏎
d1813<P>⏎
d1815<P>⏎
d1817<P>⏎
cd2:1818-819 とのみすくよかに言はせたまふ。「いみじういふかひなき御心なりけり」と、嘆きつつ帰りたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
453 とのみすくよかに言はせたまふ。「いみじういふかひなき御心なりけり」と、嘆きつつ帰りたまふ。<BR>⏎
text39820 <A NAME="in45">[第五段 夕霧、一条宮邸の側を通って帰宅]</A><BR>454 
d1821<P>⏎
d1823<P>⏎
d1825<P>⏎
cd3:1826-828 「見し人の影澄み果てぬ池水に<BR>⏎
  ひとり宿守る秋の夜の月」<BR>⏎
<P>⏎
457 「見し人の影澄み果てぬ池水に<BR>  ひとり宿守る秋の夜の月」<BR>⏎
d1830<P>⏎
d1832<P>⏎
cd6:3833-838 と御達も憎みあへり。上は、まめやかに心憂く、<BR>⏎
<P>⏎
 「あくがれたちぬる御心なめり。もとよりさる方にならひたまへる六条の院の人びとを、ともすればめでたきためしにひき出でつつ、心よからずあいだちなきものに思ひたまへる、わりなしや。我も昔よりしかならひなましかば、人目も馴れて、なかなか過ごしてまし。世のためしにしつべき御心ばへと、親兄弟よりはじめたてまつり、めやすきあえものにしたまへるを、ありありては、末に恥がましきことやあらむ」<BR>⏎
<P>⏎
 などいといたう嘆いたまへり。<BR>⏎
<P>⏎
460-462 と御達も憎みあへり。上は、まめやかに心憂く、<BR>⏎
 「あくがれたちぬる御心なめり。もとよりさる方にならひたまへる六条の院の人びとを、ともすればめでたきためしにひき出でつつ、心よからずあいだちなきものに思ひたまへる、わりなしや。我も昔よりしかならひなましかば、人目も馴れて、なかなか過ごしてまし。世のためしにしつべき御心ばへと、親兄弟よりはじめたてまつり、めやすきあえものにしたまへるを、ありありては、末に恥がましきことやあらむ」<BR>⏎
 などいといたう嘆いたまへり。<BR>⏎
d1840<P>⏎
cd2:1841-842 「いつとかはおどろかすべき明けぬ夜の<BR>⏎
  夢覚めてとか言ひしひとこと<BR>⏎
464 「いつとかはおどろかすべき明けぬ夜の<BR>  夢覚めてとか言ひしひとこと<BR>⏎
d1844<P>⏎
cd2:1845-846 とや書いたまひつらむ、おし包みて、名残も、「いかでよからむ」など口ずさびたまへり。人召して賜ひつ。「御返り事をだに見つけてしがな。なほいかなることぞ」と、けしき見まほしう思す。<BR>⏎
<P>⏎
466 とや書いたまひつらむ、おし包みて、名残も、「いかでよからむ」など口ずさびたまへり。人召して賜ひつ。「御返り事をだに見つけてしがな。なほいかなることぞ」と、けしき見まほしう思す。<BR>⏎
text39847 <A NAME="in46">[第六段 落葉宮の返歌が届く]</A><BR>467 
d1848<P>⏎
d1850<P>⏎
d1852<P>⏎
cd9:4853-861 とて中にひき破りて入れたる、「目には見たまうてけり」と、思すばかりのうれしさぞ、いと人悪ろかりける。そこはかとなく書きたまへるを、見続けたまへれば、<BR>⏎
<P>⏎
 「朝夕に泣く音を立つる小野山は<BR>⏎
  絶えぬ涙や音無の滝」<BR>⏎
<P>⏎
 とやとりなすべからむ、古言など、もの思はしげに書き乱りたまへる、御手なども見所あり。<BR>⏎
<P>⏎
 「人の上などにて、かやうの好き心思ひ焦らるるは、もどかしう、うつし心ならぬことに見聞きしかど、身のことにては、げにいと堪へがたかるべきわざなりけり。あやしや。などかうしも思ふべき心焦られぞ」<BR>⏎
<P>⏎
470-473 とて中にひき破りて入れたる、「目には見たまうてけり」と、思すばかりのうれしさぞ、いと人悪ろかりける。そこはかとなく書きたまへるを、見続けたまへれば、<BR>⏎
 「朝夕に泣く音を立つる小野山は<BR>  絶えぬ涙や音無の滝」<BR>⏎
 とやとりなすべからむ、古言など、もの思はしげに書き乱りたまへる、御手なども見所あり。<BR>⏎
 「人の上などにて、かやうの好き心思ひ焦らるるは、もどかしう、うつし心ならぬことに見聞きしかど、身のことにては、げにいと堪へがたかるべきわざなりけり。あやしや。などかうしも思ふべき心焦られぞ」<BR>⏎
d1863<P>⏎
text39864 <H4>第五章 落葉宮の物語 夕霧執拗に迫る</H4>475 
text39865 <A NAME="in51">[第一段 源氏や紫の上らの心配]</A><BR>476 
d1866<P>⏎
d1868<P>⏎
d1870<P>⏎
d1872<P>⏎
d1874<P>⏎
d1876<P>⏎
d1878<P>⏎
d1881<P>⏎
text39882 <A NAME="in52">[第二段 夕霧、源氏に対面]</A><BR>485 
d1883<P>⏎
d1885<P>⏎
cd2:1886-887 「御息所の忌果てぬらむな。昨日今日と思ふほどに、三年よりあなたのことになる世にこそあれ。あはれにあぢきなしや。<A HREF="#no17">夕べの露</A><A NAME="te17">か</A>かるほどのむさぼりよ。いかでかこの髪剃りて、よろづ背き捨てむと思ふを、さものどやかなるやうにても過ぐすかな。いと悪ろきわざなりや」<BR>⏎
<P>⏎
487 「御息所の忌果てぬらむな。昨日今日と思ふほどに、三年よりあなたのことになる世にこそあれ。あはれにあぢきなしや。<A HREF="#no17">夕べの露</A><A NAME="te17">か</A>かるほどのむさぼりよ。いかでかこの髪剃りて、よろづ背き捨てむと思ふを、さものどやかなるやうにても過ぐすかな。いと悪ろきわざなりや」<BR>⏎
d1889<P>⏎
d1891<P>⏎
cd2:1892-893 と聞こえたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
490 と聞こえたまふ。<BR>⏎
d1895<P>⏎
d1897<P>⏎
d1899<P>⏎
d1901<P>⏎
d1903<P>⏎
d1905<P>⏎
d1907<P>⏎
text39908 <A NAME="in53">[第三段 父朱雀院、出家希望を諌める]</A><BR>498 
d1909<P>⏎
d1911<P>⏎
d1913<P>⏎
d1915<P>⏎
cd2:1916-917 「いとあるまじきことなり。げにあまた、とざまかうざまに身をもてなしたまふべきことにもあらねど、後見なき人なむ、なかなかさるさまにて、あるまじき名を立ち、罪得がましき時、この世後の世、中空にもどかしき咎負ふわざなる。<BR>⏎
<P>⏎
502 「いとあるまじきことなり。げにあまた、とざまかうざまに身をもてなしたまふべきことにもあらねど、後見なき人なむ、なかなかさるさまにて、あるまじき名を立ち、罪得がましき時、この世後の世、中空にもどかしき咎負ふわざなる。<BR>⏎
d1919<P>⏎
d1921<P>⏎
cd2:1922-923 とたびたび聞こえたまうけり。この浮きたる御名をぞ聞こし召したるべき。「さやうのことの思はずなるにつけて倦じたまへる」と言はれたまはむことを思すなりけり。さりとて、また「表はれてものしたまはむもあはあはしう、心づきなきこと」と、思しながら、恥づかしと思さむもいとほしきを、「何かは我さへ聞き扱はむ」と思してなむ、この筋は、かけても聞こえたまはざりける。<BR>⏎
<P>⏎
505 とたびたび聞こえたまうけり。この浮きたる御名をぞ聞こし召したるべき。「さやうのことの思はずなるにつけて倦じたまへる」と言はれたまはむことを思すなりけり。さりとて、また「表はれてものしたまはむもあはあはしう、心づきなきこと」と、思しながら、恥づかしと思さむもいとほしきを、「何かは我さへ聞き扱はむ」と思してなむ、この筋は、かけても聞こえたまはざりける。<BR>⏎
text39924 <A NAME="in54">[第四段 夕霧、宮の帰邸を差配]</A><BR>506 
d1925<P>⏎
d1928<P>⏎
d1930<P>⏎
d1932<P>⏎
d1934<P>⏎
cd8:4935-942 今は、国のこともはべり、まかり下りぬべし。宮の内のことも、見たまへ譲るべき人もはべらず。いとたいだいしう、いかにと見たまふるを、かくよろづに思しいとなむを、げにこの方にとりて思たまふるには、かならずしもおはしますまじき御ありさまなれど、さこそは、いにしへも御心にかなはぬためし、多くはべれ。<BR>⏎
<P>⏎
 一所やは、世のもどきをも負はせたまふべき。いと幼くおはしますことなり。たけう思すとも、女の御心ひとつに、わが御身をとりしたため、顧みたまふべきやうかあらむ。なほ人のあがめかしづきたまへらむに助けられてこそ、深き御心のかしこき御おきても、それにかかるべきものなり。<BR>⏎
<P>⏎
 君たちの聞こえ知らせたてまつりたまはぬなり。かつはさるまじきことをも、御心どもに仕うまつりそめたまうて」<BR>⏎
<P>⏎
 と言ひ続けて、左近、少将を責む。<BR>⏎
<P>⏎
512-515 今は、国のこともはべり、まかり下りぬべし。宮の内のことも、見たまへ譲るべき人もはべらず。いとたいだいしう、いかにと見たまふるを、かくよろづに思しいとなむを、げにこの方にとりて思たまふるには、かならずしもおはしますまじき御ありさまなれど、さこそは、いにしへも御心にかなはぬためし、多くはべれ。<BR>⏎
 一所やは、世のもどきをも負はせたまふべき。いと幼くおはしますことなり。たけう思すとも、女の御心ひとつに、わが御身をとりしたため、顧みたまふべきやうかあらむ。なほ人のあがめかしづきたまへらむに助けられてこそ、深き御心のかしこき御おきても、それにかかるべきものなり。<BR>⏎
 君たちの聞こえ知らせたてまつりたまはぬなり。かつはさるまじきことをも、御心どもに仕うまつりそめたまうて」<BR>⏎
 と言ひ続けて、左近、少将を責む。<BR>⏎
text39943 <A NAME="in55">[第五段 落葉宮、自邸へ向かう]</A><BR>516 
d1944<P>⏎
cd2:1945-946 集りて聞こえこしらふるに、いとわりなく、あざやかなる御衣ども、人びとのたてまつり替へさするも、われにもあらず、なほいとひたぶるに削ぎ捨てまほしう思さるる御髪を、かき出でて見たまへば、六尺ばかりにて、すこし細りたれど、人はかたはにも見たてまつらず、みづからの御心には、<BR>⏎
<P>⏎
517 集りて聞こえこしらふるに、いとわりなく、あざやかなる御衣ども、人びとのたてまつり替へさするも、われにもあらず、なほいとひたぶるに削ぎ捨てまほしう思さるる御髪を、かき出でて見たまへば、六尺ばかりにて、すこし細りたれど、人はかたはにも見たてまつらず、みづからの御心には、<BR>⏎
d1948<P>⏎
d1950<P>⏎
d1952<P>⏎
cd5:2953-957 と皆騒ぐ。時雨いと心あわたたしう吹きまがひ、よろづにもの悲しければ、<BR>⏎
<P>⏎
 「のぼりにし峰の煙にたちまじり<BR>⏎
  思はぬ方になびかずもがな」<BR>⏎
<P>⏎
521-522 と皆騒ぐ。時雨いと心あわたたしう吹きまがひ、よろづにもの悲しければ、<BR>⏎
 「のぼりにし峰の煙にたちまじり<BR>  思はぬ方になびかずもがな」<BR>⏎
d1959<P>⏎
d1961<P>⏎
d1963<P>⏎
d1965<P>⏎
cd3:1966-968 「恋しさの慰めがたき形見にて<BR>⏎
  涙にくもる玉の筥かな」<BR>⏎
<P>⏎
527 「恋しさの慰めがたき形見にて<BR>  涙にくもる玉の筥かな」<BR>⏎
d1970<P>⏎
text39971 <A NAME="in56">[第六段 夕霧、主人顔して待ち構える]</A><BR>529 
d1972<P>⏎
cd2:1973-974 おはしまし着きたれば、殿のうち悲しげもなく、人気多くて、あらぬさまなり。御車寄せて降りたまふを、さらに故里とおぼえず、疎ましううたて思さるれば、とみにも下りたまはず。いとあやしう、若々しき御さまかなと、人びとも見たてまつりわづらふ。殿は、東の対の南面を、わが御方を、仮にしつらひて、住みつき顔におはす。三条殿には、人びと、<BR>⏎
<P>⏎
530 おはしまし着きたれば、殿のうち悲しげもなく、人気多くて、あらぬさまなり。御車寄せて降りたまふを、さらに故里とおぼえず、疎ましううたて思さるれば、とみにも下りたまはず。いとあやしう、若々しき御さまかなと、人びとも見たてまつりわづらふ。殿は、東の対の南面を、わが御方を、仮にしつらひて、住みつき顔におはす。三条殿には、人びと、<BR>⏎
d1976<P>⏎
cd2:1977-978 と驚きけり。なよらかにをかしばめることを、好ましからず思す人は、かく<A HREF="#k21">ゆくりか</A><A NAME="t21">な</A>ることぞうちまじりたまうける。されど年経にけることを、音なくけしきも漏らさで過ぐしたまうけるなり、とのみ思ひなして、かく女の御心許いたまはぬと、思ひ寄る人もなし。とてもかうても、宮の御ためにぞいとほしげなる。<BR>⏎
<P>⏎
532 と驚きけり。なよらかにをかしばめることを、好ましからず思す人は、かく<A HREF="#k21">ゆくりか</A><A NAME="t21">な</A>ることぞうちまじりたまうける。されど年経にけることを、音なくけしきも漏らさで過ぐしたまうけるなり、とのみ思ひなして、かく女の御心許いたまはぬと、思ひ寄る人もなし。とてもかうても、宮の御ためにぞいとほしげなる。<BR>⏎
d1980<P>⏎
cd2:1981-982 「御心ざしまことに長う思されば、今日明日を過ぐして聞こえさせたまへ。なかなか立ち帰りてもの思し沈みて、亡き人のやうにてなむ臥させたまひぬる。こしらへきこゆるをも、つらしとのみ思されたれば、何ごとも身のためこそはべれ。いとわづらはしう、聞こえさせにくくなむ」<BR>⏎
<P>⏎
534 「御心ざしまことに長う思されば、今日明日を過ぐして聞こえさせたまへ。なかなか立ち帰りてもの思し沈みて、亡き人のやうにてなむ臥させたまひぬる。こしらへきこゆるをも、つらしとのみ思されたれば、何ごとも身のためこそはべれ。いとわづらはしう、聞こえさせにくくなむ」<BR>⏎
d1985<P>⏎
cd4:2986-989 とて思ひ寄れるさま、人の御ためも、わがためにも、世のもどきあるまじうのたまひ続くれば、<BR>⏎
<P>⏎
 「いでやただ今は、またいたづら人に見なしたてまつるべきにやと、あわたたしき乱り心地に、よろづ思たまへわかれず。あが君、とかくおしたちて、ひたぶるなる御心なつかはせたまひそ」<BR>⏎
<P>⏎
537-538 とて思ひ寄れるさま、人の御ためも、わがためにも、世のもどきあるまじうのたまひ続くれば、<BR>⏎
 「いでやただ今は、またいたづら人に見なしたてまつるべきにやと、あわたたしき乱り心地に、よろづ思たまへわかれず。あが君、とかくおしたちて、ひたぶるなる御心なつかはせたまひそ」<BR>⏎
d1991<P>⏎
d1993<P>⏎
cd6:3994-999 といはむかたもなしと思してのたまへば、さすがにいとほしうもあり、<BR>⏎
<P>⏎
 「まだ知らぬは、げに世づかぬ御心がまへのけにこそはと、ことわりは、げにいづ方にかは寄る人はべらむとすらむ」<BR>⏎
<P>⏎
 とすこしうち笑ひぬ。<BR>⏎
<P>⏎
541-543 といはむかたもなしと思してのたまへば、さすがにいとほしうもあり、<BR>⏎
 「まだ知らぬは、げに世づかぬ御心がまへのけにこそはと、ことわりは、げにいづ方にかは寄る人はべらむとすらむ」<BR>⏎
 とすこしうち笑ひぬ。<BR>⏎
text391000 <A NAME="in57">[第七段 落葉宮、塗籠に籠る]</A><BR>544 
d11001<P>⏎
d11003<P>⏎
d11005<P>⏎
d11007<P>⏎
cd7:31008-1014 「ただいささかの隙をだに」<BR>⏎
<P>⏎
 といみじう聞こえたまへど、いとつれなし。<BR>⏎
<P>⏎
 「怨みわび胸あきがたき冬の夜に<BR>⏎
  また鎖しまさる関の岩門<BR>⏎
<P>⏎
548-550 「ただいささかの隙をだに」<BR>⏎
 といみじう聞こえたまへど、いとつれなし。<BR>⏎
 「怨みわび胸あきがたき冬の夜に<BR>  また鎖しまさる関の岩門<BR>⏎
d11016<P>⏎
cd2:11017-1018 と泣く泣く出でたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
552 と泣く泣く出でたまふ。<BR>⏎
text391019 <H4>第六章 夕霧の物語 雲居雁と落葉宮の間に苦慮</H4>553 
text391020 <A NAME="in61">[第一段 夕霧、花散里へ弁明]</A><BR>554 
d11021<P>⏎
d11023<P>⏎
d11025<P>⏎
cd2:11026-1027 といとおほどかにのたまふ。御几帳添へたれど、側よりほのかには、なほ見えたてまつりたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
557 といとおほどかにのたまふ。御几帳添へたれど、側よりほのかには、なほ見えたてまつりたまふ。<BR>⏎
d11029<P>⏎
cd8:41030-1037 とうち笑ひつつ、<BR>⏎
<P>⏎
 「かの正身なむ、なほ世に経じと深う思ひ立ちて、尼になりなむと思ひ結ぼほれたまふめれば、何かは。こなたかなたに聞きにくくもはべべきを、さやうに嫌疑離れても、またかの遺言は違へじと思ひたまへて、ただかく言ひ扱ひはべるなり。<BR>⏎
<P>⏎
 院の渡らせたまへらむにも、ことのついではべらば、かうやうにまねびきこえさせたまへ。ありありて、心づきなき心つかふと、思しのたまはむを憚りはべりつれど、げにかやうの筋にてこそ、人の諌めをも、みづからの心にも従はぬやうにはべりけれ」<BR>⏎
<P>⏎
 と忍びやかに聞こえたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
559-562 とうち笑ひつつ、<BR>⏎
 「かの正身なむ、なほ世に経じと深う思ひ立ちて、尼になりなむと思ひ結ぼほれたまふめれば、何かは。こなたかなたに聞きにくくもはべべきを、さやうに嫌疑離れても、またかの遺言は違へじと思ひたまへて、ただかく言ひ扱ひはべるなり。<BR>⏎
 院の渡らせたまへらむにも、ことのついではべらば、かうやうにまねびきこえさせたまへ。ありありて、心づきなき心つかふと、思しのたまはむを憚りはべりつれど、げにかやうの筋にてこそ、人の諌めをも、みづからの心にも従はぬやうにはべりけれ」<BR>⏎
 と忍びやかに聞こえたまふ。<BR>⏎
d11039<P>⏎
d11041<P>⏎
cd2:11042-1043 「らうたげにものたまはせなす、姫君かな。いと鬼しうはべるさがなものを」とて、「などてかそれをもおろかにはもてなしはべらむ。かしこけれど、御ありさまどもにても、推し量らせたまへ。<BR>⏎
<P>⏎
565 「らうたげにものたまはせなす、姫君かな。いと鬼しうはべるさがなものを」とて、「などてかそれをもおろかにはもてなしはべらむ。かしこけれど、御ありさまどもにても、推し量らせたまへ。<BR>⏎
d11045<P>⏎
cd4:21046-1049 なほ南の御殿の御心もちゐこそ、さまざまにありがたう、さてはこの御方の御心などこそは、めでたきものには、見たてまつり果てはべりぬれ」<BR>⏎
<P>⏎
 などほめきこえたまへば、笑ひたまひて、<BR>⏎
<P>⏎
567-568 なほ南の御殿の御心もちゐこそ、さまざまにありがたう、さてはこの御方の御心などこそは、めでたきものには、見たてまつり果てはべりぬれ」<BR>⏎
 などほめきこえたまへば、笑ひたまひて、<BR>⏎
d11051<P>⏎
cd2:11052-1053 さてをかしきことは、院の、みづからの御癖をば人知らぬやうに、いささかあだあだしき御心づかひをば、大事と思いて、戒め申したまふ。後言にも聞こえたまふめるこそ、賢しだつ人の、おのが上知らぬやうにおぼえはべれ」<BR>⏎
<P>⏎
570 さてをかしきことは、院の、みづからの御癖をば人知らぬやうに、いささかあだあだしき御心づかひをば、大事と思いて、戒め申したまふ。後言にも聞こえたまふめるこそ、賢しだつ人の、おのが上知らぬやうにおぼえはべれ」<BR>⏎
d11055<P>⏎
cd4:21056-1059 「さなむ常にこの道をしも戒め仰せらるる。さるはかしこき御教へならでも、いとよくをさめてはべる心を」<BR>⏎
<P>⏎
 とてげにをかしと思ひたまへり。<BR>⏎
<P>⏎
572-573 「さなむ常にこの道をしも戒め仰せらるる。さるはかしこき御教へならでも、いとよくをさめてはべる心を」<BR>⏎
 とてげにをかしと思ひたまへり。<BR>⏎
d11061<P>⏎
d11063<P>⏎
d11065<P>⏎
cd2:11066-1067 とわが御子ながらも、思す。<BR>⏎
<P>⏎
577 とわが御子ながらも、思す。<BR>⏎
text391068 <A NAME="in62">[第二段 雲居雁、嫉妬に荒れ狂う]</A><BR>578 
d11069<P>⏎
d11071<P>⏎
d11073<P>⏎
d11075<P>⏎
d11077<P>⏎
d11079<P>⏎
cd2:11080-1081 と何心もなう言ひなしたまふも、心やましうて、<BR>⏎
<P>⏎
584 と何心もなう言ひなしたまふも、心やましうて、<BR>⏎
d11083<P>⏎
cd2:11084-1085 とて起き上がりたまへるさまは、いみじう愛敬づきて、匂ひやかにうち赤みたまへる顔、いとをかしげなり。<BR>⏎
<P>⏎
586 とて起き上がりたまへるさまは、いみじう愛敬づきて、匂ひやかにうち赤みたまへる顔、いとをかしげなり。<BR>⏎
d11087<P>⏎
cd2:11088-1089 と戯れに言ひなしたまへど、<BR>⏎
<P>⏎
588 と戯れに言ひなしたまへど、<BR>⏎
d11091<P>⏎
d11093<P>⏎
cd6:31094-1099 「近くてこそ見たまはざらめ、よそにはなにか聞きたまはざらむ。さても契り深かなる瀬を知らせむの御心ななり。にはかにうち続くべかなる冥途のいそぎは、さこそは契りきこえしか」<BR>⏎
<P>⏎
 といとつれなく言ひて、何くれと慰めこしらへきこえ慰めたまへば、いと若やかに心うつくしう、らうたき心はたおはする人なれば、なほざり言とは見たまひながら、おのづからなごみつつものしたまふを、いとあはれと思すものから、心は空にて、<BR>⏎
<P>⏎
 「かれもいとわが心を立てて、強うものものしき人のけはひには見えたまはねど、もしなほ本意ならぬことにて、尼になども思ひなりたまひなば、をこがましうもあべいかな」<BR>⏎
<P>⏎
591-593 「近くてこそ見たまはざらめ、よそにはなにか聞きたまはざらむ。さても契り深かなる瀬を知らせむの御心ななり。にはかにうち続くべかなる冥途のいそぎは、さこそは契りきこえしか」<BR>⏎
 といとつれなく言ひて、何くれと慰めこしらへきこえ慰めたまへば、いと若やかに心うつくしう、らうたき心はたおはする人なれば、なほざり言とは見たまひながら、おのづからなごみつつものしたまふを、いとあはれと思すものから、心は空にて、<BR>⏎
 「かれもいとわが心を立てて、強うものものしき人のけはひには見えたまはねど、もしなほ本意ならぬことにて、尼になども思ひなりたまひなば、をこがましうもあべいかな」<BR>⏎
d11101<P>⏎
text391102 <A NAME="in63">[第三段 雲居雁、夕霧と和歌を詠み交す]</A><BR>595 
d11103<P>⏎
d11105<P>⏎
d11107<P>⏎
cd4:21108-1111 今思ふにも、いかでかはさありけむと、わが心ながら、いにしへだに重かりけりと思ひ知らるるを、今は、かく憎みたまふとも、思し捨つまじき人びと、いと所狭きまで数添ふめれば、御心ひとつにもて離れたまふべくもあらず。またよし見たまへや。命こそ定めなき世なれ」<BR>⏎
<P>⏎
 とてうち泣きたまふこともあり。女も、昔のことを思ひ出でたまふに、<BR>⏎
<P>⏎
598-599 今思ふにも、いかでかはさありけむと、わが心ながら、いにしへだに重かりけりと思ひ知らるるを、今は、かく憎みたまふとも、思し捨つまじき人びと、いと所狭きまで数添ふめれば、御心ひとつにもて離れたまふべくもあらず。またよし見たまへや。命こそ定めなき世なれ」<BR>⏎
 とてうち泣きたまふこともあり。女も、昔のことを思ひ出でたまふに、<BR>⏎
d11113<P>⏎
cd5:21114-1118 と思ひ出でたまふ。なよびたる御衣ども脱いたまうて、心ことなるをとり重ねて焚きしめたまひ、めでたうつくろひ化粧じて出でたまふを、灯影に見出だして、忍びがたく涙の出で来れば、脱ぎとめたまへる単衣の袖をひき寄せたまひて、<BR>⏎
<P>⏎
 「馴るる身を恨むるよりは松島の<BR>⏎
  海人の衣に裁ちやかへまし<BR>⏎
<P>⏎
601-602 と思ひ出でたまふ。なよびたる御衣ども脱いたまうて、心ことなるをとり重ねて焚きしめたまひ、めでたうつくろひ化粧じて出でたまふを、灯影に見出だして、忍びがたく涙の出で来れば、脱ぎとめたまへる単衣の袖をひき寄せたまひて、<BR>⏎
 「馴るる身を恨むるよりは松島の<BR>  海人の衣に裁ちやかへまし<BR>⏎
d11120<P>⏎
cd2:11121-1122 と独言にのたまふを、立ち止まりて、<BR>⏎
<P>⏎
604 と独言にのたまふを、立ち止まりて、<BR>⏎
d11124<P>⏎
cd3:11125-1127  松島の海人の濡衣なれぬとて<BR>⏎
  脱ぎ替へつてふ名を立ためやは」<BR>⏎
<P>⏎
606  松島の海人の濡衣なれぬとて<BR>  脱ぎ替へつてふ名を立ためやは」<BR>⏎
d11129<P>⏎
text391130 <A NAME="in64">[第四段 塗籠の落葉宮を口説く]</A><BR>608 
d11131<P>⏎
d11133<P>⏎
d11135<P>⏎
cd2:11136-1137 などよろづに聞こえければ、さもあることとは思しながら、今より後のよその聞こえをも、わが御心の過ぎにし方をも、心づきなく、恨めしかりける人のゆかりと思し知りて、その夜も対面したまはず。「戯れにくく、めづらかなり」と、聞こえ尽くしたまふ。人もいとほしと見たてまつる。<BR>⏎
<P>⏎
611 などよろづに聞こえければ、さもあることとは思しながら、今より後のよその聞こえをも、わが御心の過ぎにし方をも、心づきなく、恨めしかりける人のゆかりと思し知りて、その夜も対面したまはず。「戯れにくく、めづらかなり」と、聞こえ尽くしたまふ。人もいとほしと見たてまつる。<BR>⏎
d11139<P>⏎
d11141<P>⏎
d11143<P>⏎
cd6:31144-1149 など尽きもせず聞こえたまへど、<BR>⏎
<P>⏎
 「なほかかる乱れに添へて、わりなき御心なむいみじうつらき。人の聞き思はむことも、よろづになのめならざりける身の憂さをば、さるものにて、ことさらに心憂き御心がまへなれ」<BR>⏎
<P>⏎
 とまた言ひ返し恨みたまひつつ、はるかにのみもてなしたまへり。<BR>⏎
<P>⏎
615-617 など尽きもせず聞こえたまへど、<BR>⏎
 「なほかかる乱れに添へて、わりなき御心なむいみじうつらき。人の聞き思はむことも、よろづになのめならざりける身の憂さをば、さるものにて、ことさらに心憂き御心がまへなれ」<BR>⏎
 とまた言ひ返し恨みたまひつつ、はるかにのみもてなしたまへり。<BR>⏎
text391150 <A NAME="in65">[第五段 夕霧、塗籠に入って行く]</A><BR>618 
d11151<P>⏎
d11153<P>⏎
cd4:21154-1157 「うちうちの御心づかひは、こののたまふさまにかなひても、しばしは情けばまむ。世づかぬありさまの、いとうたてあり。またかかりとて、ひき絶え参らずは、人の御名いかがはいとほしかるべき。ひとへにものを思して、幼げなるこそいとほしけれ」<BR>⏎
<P>⏎
 などこの人を責めたまへば、<A HREF="#k23">げにと</A><A NAME="t23">思</A>ひ、見たてまつるも今は心苦しう、かたじけなうおぼゆるさまなれば、人通はしたまふ塗籠の北の口より、入れたてまつりてけり。<BR>⏎
<P>⏎
620-621 「うちうちの御心づかひは、こののたまふさまにかなひても、しばしは情けばまむ。世づかぬありさまの、いとうたてあり。またかかりとて、ひき絶え参らずは、人の御名いかがはいとほしかるべき。ひとへにものを思して、幼げなるこそいとほしけれ」<BR>⏎
 などこの人を責めたまへば、<A HREF="#k23">げにと</A><A NAME="t23">思</A>ひ、見たてまつるも今は心苦しう、かたじけなうおぼゆるさまなれば、人通はしたまふ塗籠の北の口より、入れたてまつりてけり。<BR>⏎
d11159<P>⏎
d11161<P>⏎
cd2:11162-1163 「いとかう言はむ方なきものに思ほされける身のほどは、たぐひなう恥づかしければ、あるまじき心のつきそめけむも、心地なく悔しうおぼえはべれど、とり返すものならぬうちに、何のたけき御名にかはあらむ。いふかひなく思し弱れ。<BR>⏎
<P>⏎
624 「いとかう言はむ方なきものに思ほされける身のほどは、たぐひなう恥づかしければ、あるまじき心のつきそめけむも、心地なく悔しうおぼえはべれど、とり返すものならぬうちに、何のたけき御名にかはあらむ。いふかひなく思し弱れ。<BR>⏎
d11165<P>⏎
d11167<P>⏎
cd2:11168-1169 「いとうたて。いかなればいとかう思すらむ。いみじう思ふ人も、かばかりになりぬれば、おのづからゆるぶけしきもあるを、<A HREF="#no20">岩木よりけになびきがたき</A><A NAME="te20">は</A>、契り遠うて、憎しなど思ふやうなるを、さや思すらむ」<BR>⏎
<P>⏎
627 「いとうたて。いかなればいとかう思すらむ。いみじう思ふ人も、かばかりになりぬれば、おのづからゆるぶけしきもあるを、<A HREF="#no20">岩木よりけになびきがたき</A><A NAME="te20">は</A>、契り遠うて、憎しなど思ふやうなるを、さや思すらむ」<BR>⏎
d11171<P>⏎
text391172 <A NAME="in66">[第六段 夕霧と落葉宮、遂に契りを結ぶ]</A><BR>629 
d11173<P>⏎
cd2:11174-1175 かうのみ痴れがましうて出で入らむもあやしければ、今日は泊りて、心のどかにおはす。かくさへひたぶるなるを、あさましと宮は思いて、いよいよ疎き御けしきのまさるを、をこがましき御心かなと、かつはつらきもののあはれなり。<BR>⏎
<P>⏎
630 かうのみ痴れがましうて出で入らむもあやしければ、今日は泊りて、心のどかにおはす。かくさへひたぶるなるを、あさましと宮は思いて、いよいよ疎き御けしきのまさるを、をこがましき御心かなと、かつはつらきもののあはれなり。<BR>⏎
d11177<P>⏎
d11179<P>⏎
cd2:11180-1181 「故君の異なることなかりしだに、心の限り思ひあがり、御容貌まほにおはせずと、ことの折に思へりしけしきを思し出づれば、ましてかういみじう衰へにたるありさまを、しばしにても見忍びなむや」と思ふも、いみじう恥づかしう、とざまかうざまに思ひめぐらしつつ、わが御心をこしらへたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
633 「故君の異なることなかりしだに、心の限り思ひあがり、御容貌まほにおはせずと、ことの折に思へりしけしきを思し出づれば、ましてかういみじう衰へにたるありさまを、しばしにても見忍びなむや」と思ふも、いみじう恥づかしう、とざまかうざまに思ひめぐらしつつ、わが御心をこしらへたまふ。<BR>⏎
d11183<P>⏎
d11185<P>⏎
d11187<P>⏎
d11189<P>⏎
text391190 <H4>第七章 雲居雁の物語 夕霧の妻たちの物語</H4>638 
text391191 <A NAME="in71">[第一段 雲居雁、実家へ帰る]</A><BR>639 
d11192<P>⏎
d11194<P>⏎
d11196<P>⏎
cd2:11197-1198 と世を試みつる心地して、「いかさまにしてこのなめげさを見じ」と思しければ、大殿へ、方違へむとて、渡りたまひにけるを、女御の里におはするほどなどに、対面したまうて、すこしもの思ひはるけどころに思されて、例のやうにも急ぎ渡りたまはず。<BR>⏎
<P>⏎
642 と世を試みつる心地して、「いかさまにしてこのなめげさを見じ」と思しければ、大殿へ、方違へむとて、渡りたまひにけるを、女御の里におはするほどなどに、対面したまうて、すこしもの思ひはるけどころに思されて、例のやうにも急ぎ渡りたまはず。<BR>⏎
d11200<P>⏎
d11202<P>⏎
cd2:11203-1204 と驚かれたまうて、三条殿に渡りたまへれば、君たちも、片へは止まりたまへれば、姫君たち、さてはいと幼きとをぞ率ておはしにける、見つけてよろこびむつれ、あるは上を恋ひたてまつりて、愁へ泣きたまふを、心苦しと思す。<BR>⏎
<P>⏎
645 と驚かれたまうて、三条殿に渡りたまへれば、君たちも、片へは止まりたまへれば、姫君たち、さてはいと幼きとをぞ率ておはしにける、見つけてよろこびむつれ、あるは上を恋ひたてまつりて、愁へ泣きたまふを、心苦しと思す。<BR>⏎
d11206<P>⏎
text391207 <A NAME="in72">[第二段 夕霧、雲居雁の実家へ行く]</A><BR>647 
d11208<P>⏎
d11210<P>⏎
d11212<P>⏎
cd2:11213-1214 といみじうあはめ恨み申したまへば、<BR>⏎
<P>⏎
650 といみじうあはめ恨み申したまへば、<BR>⏎
d11216<P>⏎
d11218<P>⏎
d11220<P>⏎
cd2:11221-1222 とてしひて渡りたまへともなくて、その夜はひとり臥したまへり。<BR>⏎
<P>⏎
654 とてしひて渡りたまへともなくて、その夜はひとり臥したまへり。<BR>⏎
d11224<P>⏎
d11227<P>⏎
cd4:21228-1231 と脅しきこえたまへば、すがすがしき御心にて、この君達をさへや、知らぬ所に率て渡したまはむ、と危ふし。姫君を、<BR>⏎
<P>⏎
 「いざ<A HREF="#k26">たまへかし</A><A NAME="t26">。</A>見たてまつりに、かく参り来ることもはしたなければ、常にも参り来じ。かしこにも人びとのらうたきを、同じ所にてだに見たてまつらむ」<BR>⏎
<P>⏎
658-659 と脅しきこえたまへば、すがすがしき御心にて、この君達をさへや、知らぬ所に率て渡したまはむ、と危ふし。姫君を、<BR>⏎
 「いざ<A HREF="#k26">たまへかし</A><A NAME="t26">。</A>見たてまつりに、かく参り来ることもはしたなければ、常にも参り来じ。かしこにも人びとのらうたきを、同じ所にてだに見たてまつらむ」<BR>⏎
d11233<P>⏎
d11235<P>⏎
cd2:11236-1237 と言ひ知らせたてまつりたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
662 と言ひ知らせたてまつりたまふ。<BR>⏎
text391238 <A NAME="in73">[第三段 蔵人少将、落葉宮邸へ使者]</A><BR>663 
d11239<P>⏎
d11241<P>⏎
cd2:11242-1243 「しばしは、さても見たまはで。おのづから思ふところものせらるらむものを。女のかくひききりなるも、かへりては軽くおぼゆるわざなり。よしかく言ひそめつとならば、何かは愚れて、ふとしも帰りたまふ。おのづから人のけしき心ばへは見えなむ」<BR>⏎
<P>⏎
665 「しばしは、さても見たまはで。おのづから思ふところものせらるらむものを。女のかくひききりなるも、かへりては軽くおぼゆるわざなり。よしかく言ひそめつとならば、何かは愚れて、ふとしも帰りたまふ。おのづから人のけしき心ばへは見えなむ」<BR>⏎
d11245<P>⏎
cd5:21246-1250 「契りあれや君を心にとどめおきて<BR>⏎
  あはれと思ふ恨めしと聞く<BR>⏎
<P>⏎
 なほえ思し放たじ」<BR>⏎
<P>⏎
667-668 「契りあれや君を心にとどめおきて<BR>  あはれと思ふ恨めしと聞く<BR>⏎
 なほえ思し放たじ」<BR>⏎
d11252<P>⏎
d11254<P>⏎
d11256<P>⏎
d11258<P>⏎
d11260<P>⏎
d11262<P>⏎
d11264<P>⏎
d11266<P>⏎
cd2:11267-1268 と集りて聞こえさすれば、まづうち泣きて、<BR>⏎
<P>⏎
677 と集りて聞こえさすれば、まづうち泣きて、<BR>⏎
d11270<P>⏎
d11272<P>⏎
cd5:21273-1277 「何ゆゑか世に数ならぬ身<A HREF="#k27">ひとつを</A><A NAME="t27"><BR>⏎
  憂</A>しとも思ひかなしとも聞く」<BR>⏎
<P>⏎
 とのみ思しけるままに、書きもとぢめたまはぬやうにて、おしつつみて出だしたまうつ。少将は、人びと物語して、<BR>⏎
<P>⏎
680-681 「何ゆゑか世に数ならぬ身<A HREF="#k27">ひとつを</A><A NAME="t27"><BR>  憂</A>しとも思ひかなしとも聞く」<BR>⏎
 とのみ思しけるままに、書きもとぢめたまはぬやうにて、おしつつみて出だしたまうつ。少将は、人びと物語して、<BR>⏎
d11279<P>⏎
cd2:11280-1281 などけしきばみおきて出でたまひぬ。<BR>⏎
<P>⏎
683 などけしきばみおきて出でたまひぬ。<BR>⏎
text391282 <A NAME="in74">[第四段 藤典侍、雲居雁を慰める]</A><BR>684 
d11283<P>⏎
d11285<P>⏎
d11287<P>⏎
d11289<P>⏎
cd3:11290-1292 「数ならば身に知られまし世の憂さを<BR>⏎
  人のためにも濡らす袖かな」<BR>⏎
<P>⏎
688 「数ならば身に知られまし世の憂さを<BR>  人のためにも濡らす袖かな」<BR>⏎
d11294<P>⏎
cd3:11295-1297 「人の世の憂きをあはれと見しかども<BR>⏎
  身にかへむとは思はざりしを」<BR>⏎
<P>⏎
690 「人の世の憂きをあはれと見しかども<BR>  身にかへむとは思はざりしを」<BR>⏎
d11299<P>⏎
cd4:21300-1303 この昔、御中絶えのほどには、この内侍のみこそ、人知れぬものに思ひとめたまへりしか、こと改めて後は、いとたまさかに、つれなくなりまさりたまうつつ、さすがに君達はあまたになりにけり。<BR>⏎
<P>⏎
 この御腹には、太郎君、三郎君、五郎君、六郎君、中の君、四の君、五の君とおはす。内侍は、大君、三の君、六の君、次郎君、四郎君とぞおはしける。すべて十二人が中に、かたほなるなく、いとをかしげに、とりどりに生ひ出でたまける。<BR>⏎
<P>⏎
692-693 この昔、御中絶えのほどには、この内侍のみこそ、人知れぬものに思ひとめたまへりしか、こと改めて後は、いとたまさかに、つれなくなりまさりたまうつつ、さすがに君達はあまたになりにけり。<BR>⏎
 この御腹には、太郎君、三郎君、五郎君、六郎君、中の君、四の君、五の君とおはす。内侍は、大君、三の君、六の君、次郎君、四郎君とぞおはしける。すべて十二人が中に、かたほなるなく、いとをかしげに、とりどりに生ひ出でたまける。<BR>⏎
d11305<P>⏎
d21307-1308
<P>⏎
text391309 <a name="in81">【出典】<BR>696 
c11310</a><A NAME="no1">出典1</A> ひぐらしの鳴きつるなへに日は暮れぬと思ふは山の蔭にぞありける(古今集秋上-二〇四 読人しらず)<A HREF="#te1">(戻)</A><BR>⏎
697<A NAME="no1">出典1</A> ひぐらしの鳴きつるなへに日は暮れぬと思ふは山の蔭にぞありける(古今集秋上-二〇四 読人しらず)<A HREF="#te1">(戻)</A><BR>⏎
d11331
text391332<p> <a name="in82">【校訂】<BR>718 
c11334</a><A NAME="k01">校訂1</A> うしろやすさ--うしろやすき(き/$さ<朱>)<A HREF="#t01">(戻)</A><BR>⏎
720<A NAME="k01">校訂1</A> うしろやすさ--うしろやすき(き/$さ<朱>)<A HREF="#t01">(戻)</A><BR>⏎
d11361</p>⏎
d11368</p>⏎
i0757
diffsrc/original/text40.htmlsrc/modified/text40.html
cd2:18-9<body background="wallppr063.gif">⏎
First updated 9/20/1996(ver.1-1)<BR>⏎
8<BODY>⏎
cd3:210-12Last updated 9/22/2010(ver.2-3)<BR>⏎
渋谷栄一校訂(C)<BR>⏎
<P
>⏎
9-10<ADDRESS>Last updated 9/22/2010(ver.2-3)<BR>⏎
渋谷栄一校訂(C)</ADDRESS>⏎
d114<P>⏎
d116<P>⏎
d163<P>⏎
d166<P>⏎
text4067 <H4>第一章 紫の上の物語 死期間近き春から夏の物語</H4>61 
text4068 <A NAME="in11">[第一段 紫の上、出家を願うが許されず]</A><BR>62 
d169<P>⏎
d171<P>⏎
d173<P>⏎
cd2:174-75 さるはわが御心にも、しか思しそめたる筋なれば、かくねむごろに思ひたまへるついでにもよほされて、同じ道にも入りなむと思せど、一度、家を出でたまひなば、仮にもこの世を顧みむとは思しおきてず、後の世には、同じ蓮の座をも分けむと、契り交はしきこえたまひて、頼みをかけたまふ御仲なれど、ここながら勤めたまはむほどは、同じ山なりとも、峰を隔てて、あひ見たてまつらぬ住み処にかけ離れなむことをのみ思しまうけたるに、かくいと頼もしげなきさまに悩み篤いたまへば、いと心苦しき御ありさまを、今はと行き離れむきざみには捨てがたく、なかなか、山水の住み処濁りぬべく、思しとどこほるほどに、ただうちあさへたる、思ひのままの道心起こす人びとには、こよなう後れたまひぬべかめり。<BR>⏎
<P>⏎
65 さるはわが御心にも、しか思しそめたる筋なれば、かくねむごろに思ひたまへるついでにもよほされて、同じ道にも入りなむと思せど、一度、家を出でたまひなば、仮にもこの世を顧みむとは思しおきてず、後の世には、同じ蓮の座をも分けむと、契り交はしきこえたまひて、頼みをかけたまふ御仲なれど、ここながら勤めたまはむほどは、同じ山なりとも、峰を隔てて、あひ見たてまつらぬ住み処にかけ離れなむことをのみ思しまうけたるに、かくいと頼もしげなきさまに悩み篤いたまへば、いと心苦しき御ありさまを、今はと行き離れむきざみには捨てがたく、なかなか、山水の住み処濁りぬべく、思しとどこほるほどに、ただうちあさへたる、思ひのままの道心起こす人びとには、こよなう後れたまひぬべかめり。<BR>⏎
d177<P>⏎
text4078 <A NAME="in12">[第二段 二条院の法華経供養]</A><BR>67 
d179<P>⏎
d181<P>⏎
d183<P>⏎
cd2:184-85 内裏春宮后の宮たちをはじめたてまつりて、御方々、ここかしこに御誦経、捧物などばかりのことをうちしたまふだに所狭きに、ましてそのころ、この御いそぎを仕うまつらぬ所なければ、いとこちたきことどもあり。「いつのほどに、いとかくいろいろ思しまうけけむ。げに石上の世々経たる御願にや」とぞ見えたる。<BR>⏎
<P>⏎
70 内裏春宮后の宮たちをはじめたてまつりて、御方々、ここかしこに御誦経、捧物などばかりのことをうちしたまふだに所狭きに、ましてそのころ、この御いそぎを仕うまつらぬ所なければ、いとこちたきことどもあり。「いつのほどに、いとかくいろいろ思しまうけけむ。げに石上の世々経たる御願にや」とぞ見えたる。<BR>⏎
d187<P>⏎
text4088 <A NAME="in13">[第三段 紫の上、明石御方と和歌を贈答]</A><BR>72 
d189<P>⏎
cd5:290-94 三月の十日なれば、花盛りにて、空のけしきなども、うららかにものおもしろく、仏のおはすなる所のありさま、遠からず思ひやられて、ことなり。深き心もなき人さへ、罪を失ひつべし。<A HREF="#no1">薪こる讃嘆の声</A><A NAME="te1">も</A>、<A HREF="#k02">そこら</A><A NAME="t02">集</A>ひたる響き、おどろおどろしきを、うち休みて静まりたるほどだにあはれに思さるるを、ましてこのころと<A HREF="#k03">なりては</A><A NAME="t03">、</A>何ごとにつけても、心細くのみ思し知る。明石の御方に、三の宮して、聞こえたまへる。<BR>⏎
<P>⏎
 「惜しからぬこの身ながらもかぎりとて<BR>⏎
  <A HREF="#no2">薪尽きなむ</A><A NAME="te2">こ</A>との悲しさ」<BR>⏎
<P>⏎
73-74 三月の十日なれば、花盛りにて、空のけしきなども、うららかにものおもしろく、仏のおはすなる所のありさま、遠からず思ひやられて、ことなり。深き心もなき人さへ、罪を失ひつべし。<A HREF="#no1">薪こる讃嘆の声</A><A NAME="te1">も</A>、<A HREF="#k02">そこら</A><A NAME="t02">集</A>ひたる響き、おどろおどろしきを、うち休みて静まりたるほどだにあはれに思さるるを、ましてこのころと<A HREF="#k03">なりては</A><A NAME="t03">、</A>何ごとにつけても、心細くのみ思し知る。明石の御方に、三の宮して、聞こえたまへる。<BR>⏎
 「惜しからぬこの身ながらもかぎりとて<BR>  <A HREF="#no2">薪尽きなむ</A><A NAME="te2">こ</A>との悲しさ」<BR>⏎
d196<P>⏎
cd3:197-99 「薪こる思ひは今日を初めにて<BR>⏎
  この世に願ふ法ぞはるけき」<BR>⏎
<P>⏎
76 「薪こる思ひは今日を初めにて<BR>  この世に願ふ法ぞはるけき」<BR>⏎
d1101<P>⏎
d1103<P>⏎
text40104 <A NAME="in14">[第四段 紫の上、花散里と和歌を贈答]</A><BR>79 
d1105<P>⏎
d1107<P>⏎
cd2:1108-109 まして夏冬の時につけたる遊び戯れにも、なま挑ましき下の心は、おのづから立ちまじりもすらめど、さすがに情けを<A HREF="#k04">交はし</A><A NAME="t04">た</A>まふ方々は、誰れも久しくとまるべき世にはあらざなれど、まづ我一人行方知らずなりなむを思し続くる、いみじうあはれなり。<BR>⏎
<P>⏎
81 まして夏冬の時につけたる遊び戯れにも、なま挑ましき下の心は、おのづから立ちまじりもすらめど、さすがに情けを<A HREF="#k04">交はし</A><A NAME="t04">た</A>まふ方々は、誰れも久しくとまるべき世にはあらざなれど、まづ我一人行方知らずなりなむを思し続くる、いみじうあはれなり。<BR>⏎
d1111<P>⏎
cd3:1112-114 「絶えぬべき御法ながらぞ頼まるる<BR>⏎
  世々にと結ぶ中の契りを」<BR>⏎
<P>⏎
83 「絶えぬべき御法ながらぞ頼まるる<BR>  世々にと結ぶ中の契りを」<BR>⏎
d1116<P>⏎
cd5:2117-121 「結びおく契りは絶えじおほかたの<BR>⏎
  残りすくなき御法なりとも」<BR>⏎
<P>⏎
 やがてこのついでに、不断の読経、懺法など、たゆみなく、尊きことどもせさせたまふ。御修法は、ことなるしるしも見えでほども経ぬれば、例のことになりて、うちはへさるべき所々、寺々にてぞせさせたまひける。<BR>⏎
<P>⏎
85-86 「結びおく契りは絶えじおほかたの<BR>  残りすくなき御法なりとも」<BR>⏎
 やがてこのついでに、不断の読経、懺法など、たゆみなく、尊きことどもせさせたまふ。御修法は、ことなるしるしも見えでほども経ぬれば、例のことになりて、うちはへさるべき所々、寺々にてぞせさせたまひける。<BR>⏎
text40122 <A NAME="in15">[第五段 紫の上、明石中宮と対面]</A><BR>87 
d1123<P>⏎
d1125<P>⏎
d1127<P>⏎
d1129<P>⏎
d1131<P>⏎
cd2:1132-133 とて渡りたまひぬ。起きゐたまへるを、いとうれしと思したるも、いとはかなきほどの御慰めなり。<BR>⏎
<P>⏎
92 とて渡りたまひぬ。起きゐたまへるを、いとうれしと思したるも、いとはかなきほどの御慰めなり。<BR>⏎
d1135<P>⏎
cd2:1136-137 とて<A HREF="#k05">しばらくは</A><A NAME="t05">こ</A>なたにおはすれば、明石の御方も渡りたまひて、心深げにしづまりたる御物語ども聞こえ交はしたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
94 とて<A HREF="#k05">しばらくは</A><A NAME="t05">こ</A>なたにおはすれば、明石の御方も渡りたまひて、心深げにしづまりたる御物語ども聞こえ交はしたまふ。<BR>⏎
text40138 <A NAME="in16">[第六段 紫の上、匂宮に別れの言葉]</A><BR>95 
d1139<P>⏎
d1141<P>⏎
d1143<P>⏎
cd2:1144-145 とて涙ぐみたまへる御顔の匂ひ、いみじうをかしげなり。「などかうのみ思したらむ」と思すに、中宮、うち泣きたまひぬ。ゆゆしげになどは聞こえなしたまはず、もののついでなどにぞ、年ごろ仕うまつり馴れたる人びとの、ことなるよるべなういとほしげなる、この人、かの人、<BR>⏎
<P>⏎
98 とて涙ぐみたまへる御顔の匂ひ、いみじうをかしげなり。「などかうのみ思したらむ」と思すに、中宮、うち泣きたまひぬ。ゆゆしげになどは聞こえなしたまはず、もののついでなどにぞ、年ごろ仕うまつり馴れたる人びとの、ことなるよるべなういとほしげなる、この人、かの人、<BR>⏎
d1147<P>⏎
d1149<P>⏎
d1151<P>⏎
d1153<P>⏎
d1155<P>⏎
cd4:2156-159 「いと恋しかりなむ。まろは内裏の上よりも宮よりも、婆をこそまさりて思ひきこゆれば、おはせずは、心地むつかしかりなむ」<BR>⏎
<P>⏎
 とて目おしすりて紛らはしたまへるさま、をかしければ、ほほ笑みながら涙は落ちぬ。<BR>⏎
<P>⏎
104-105 「いと恋しかりなむ。まろは内裏の上よりも宮よりも、婆をこそまさりて思ひきこゆれば、おはせずは、心地むつかしかりなむ」<BR>⏎
 とて目おしすりて紛らはしたまへるさま、をかしければ、ほほ笑みながら涙は落ちぬ。<BR>⏎
d1161<P>⏎
d1163<P>⏎
text40164 <H4>第二章 紫の上の物語 紫の上の死と葬儀</H4>108 
text40165 <A NAME="in21">[第一段 紫の上の部屋に明石中宮の御座所を設ける]</A><BR>109 
d1166<P>⏎
cd2:1167-168 秋待ちつけて、世の中すこし涼しくなりては、御心地もいささかさはやぐやうなれど、なほともすれば、かことがまし。さるは<A HREF="#no3">身にしむばかり思さるべき秋風</A><A NAME="te3">な</A>らねど、露けき折がちにて過ぐしたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
110 秋待ちつけて、世の中すこし涼しくなりては、御心地もいささかさはやぐやうなれど、なほともすれば、かことがまし。さるは<A HREF="#no3">身にしむばかり思さるべき秋風</A><A NAME="te3">な</A>らねど、露けき折がちにて過ぐしたまふ。<BR>⏎
d1171<P>⏎
text40172 <A NAME="in22">[第二段 明石中宮に看取られ紫の上、死去す]</A><BR>113 
d1173<P>⏎
d1175<P>⏎
d1177<P>⏎
cd15:6178-192 と聞こえたまふ。かばかりの隙あるをも、いとうれしと思ひきこえたまへる御けしきを見たまふも、心苦しく、「つひにいかに思し騒がむ」と思ふに、あはれなれば、<BR>⏎
<P>⏎
 「おくと見るほどぞはかなきともすれば<BR>⏎
  風に乱るる萩のうは露」<BR>⏎
<P>⏎
 げにぞ折れかへりとまるべうもあらぬ、よそへられたる折さへ忍びがたきを、見出だしたまひても、<BR>⏎
<P>⏎
 「ややもせば消えをあらそふ露の世に<BR>⏎
  後れ先だつほど経ずもがな」<BR>⏎
<P>⏎
 とて御涙を払ひあへたまはず。宮、<BR>⏎
<P>⏎
 「秋風にしばしとまらぬ露の世を<BR>⏎
  誰れか草葉のうへとのみ見む」<BR>⏎
<P>⏎
116-121 と聞こえたまふ。かばかりの隙あるをも、いとうれしと思ひきこえたまへる御けしきを見たまふも、心苦しく、「つひにいかに思し騒がむ」と思ふに、あはれなれば、<BR>⏎
 「おくと見るほどぞはかなきともすれば<BR>  風に乱るる萩のうは露」<BR>⏎
 げにぞ折れかへりとまるべうもあらぬ、よそへられたる折さへ忍びがたきを、見出だしたまひても、<BR>⏎
 「ややもせば消えをあらそふ露の世に<BR>  後れ先だつほど経ずもがな」<BR>⏎
 とて御涙を払ひあへたまはず。宮、<BR>⏎
 「秋風にしばしとまらぬ露の世を<BR>  誰れか草葉のうへとのみ見む」<BR>⏎
d1194<P>⏎
d1196<P>⏎
cd2:1197-198 とて御几帳引き寄せて臥したまへるさまの、常よりもいと頼もしげなく見えたまへば、<BR>⏎
<P>⏎
124 とて御几帳引き寄せて臥したまへるさまの、常よりもいと頼もしげなく見えたまへば、<BR>⏎
d1200<P>⏎
cd2:1201-202 とて宮は、御手をとらへたてまつりて、泣く泣く見たてまつりたまふに、まことに消えゆく露の心地して、限りに見えたまへば、御誦経の使ひども、数も知らず立ち騷ぎたり。先ざきも、かくて生き出でたまふ折にならひたまひて、御もののけと疑ひたまひて、夜一夜さまざまのことをし尽くさせたまへど、かひもなく、明け果つるほどに消え果てたまひぬ。<BR>⏎
<P>⏎
126 とて宮は、御手をとらへたてまつりて、泣く泣く見たてまつりたまふに、まことに消えゆく露の心地して、限りに見えたまへば、御誦経の使ひども、数も知らず立ち騷ぎたり。先ざきも、かくて生き出でたまふ折にならひたまひて、御もののけと疑ひたまひて、夜一夜さまざまのことをし尽くさせたまへど、かひもなく、明け果つるほどに消え果てたまひぬ。<BR>⏎
text40203 <A NAME="in23">[第三段 源氏、紫の上の落飾のことを諮る]</A><BR>127 
d1204<P>⏎
cd2:1205-206 宮も帰りたまはで、かくて見たてまつりたまへるを、限りなく思す。誰れも誰れも、ことわりの別れにて、たぐひあることとも思されず、めづらかにいみじく、明けぐれの夢に惑ひたまふほど、さらなりや。<BR>⏎
<P>⏎
128 宮も帰りたまはで、かくて見たてまつりたまへるを、限りなく思す。誰れも誰れも、ことわりの別れにて、たぐひあることとも思されず、めづらかにいみじく、明けぐれの夢に惑ひたまふほど、さらなりや。<BR>⏎
d1208<P>⏎
d1210<P>⏎
d1212<P>⏎
cd2:1213-214 「御もののけなどの、これも人の御心乱らむとて、かくのみものははべめるを、さもやおはしますらむ。さらばとてもかくても、御本意のことは、よろしきことにはべなり。<A HREF="#no4">一日一夜忌むことのしるし</A><A NAME="te4">こ</A>そは、むなしからずははべなれ。まことにいふかひなくなり果てさせたまひて、後の御髪ばかりをやつさせたまひても、異なるかの世の御光ともならせたまはざらむものから、目の前の悲しびのみまさるやうにて、いかがはべるべからむ」<BR>⏎
<P>⏎
132 「御もののけなどの、これも人の御心乱らむとて、かくのみものははべめるを、さもやおはしますらむ。さらばとてもかくても、御本意のことは、よろしきことにはべなり。<A HREF="#no4">一日一夜忌むことのしるし</A><A NAME="te4">こ</A>そは、むなしからずははべなれ。まことにいふかひなくなり果てさせたまひて、後の御髪ばかりをやつさせたまひても、異なるかの世の御光ともならせたまはざらむものから、目の前の悲しびのみまさるやうにて、いかがはべるべからむ」<BR>⏎
d1216<P>⏎
text40217 <A NAME="in24">[第四段 夕霧、紫の上の死に顔を見る]</A><BR>134 
d1218<P>⏎
d1220<P>⏎
cd4:2221-224 「あなかましばし」<BR>⏎
<P>⏎
 としづめ顔にて、御几帳の帷を、もののたまふ紛れに、引き上げて見たまへば、ほのぼのと明けゆく光もおぼつかなければ、大殿油を近くかかげて見たてまつりたまふに、飽かずうつくしげに、めでたうきよらに見ゆる御顔のあたらしさに、この君のかくのぞきたまふを見る見るも、あながちに隠さむの御心も思されぬなめり。<BR>⏎
<P>⏎
136-137 「あなかましばし」<BR>⏎
 としづめ顔にて、御几帳の帷を、もののたまふ紛れに、引き上げて見たまへば、ほのぼのと明けゆく光もおぼつかなければ、大殿油を近くかかげて見たてまつりたまふに、飽かずうつくしげに、めでたうきよらに見ゆる御顔のあたらしさに、この君のかくのぞきたまふを見る見るも、あながちに隠さむの御心も思されぬなめり。<BR>⏎
d1226<P>⏎
cd2:1227-228 とて御袖を顔におしあてたまへるほど、大将の君も、涙にくれて、目も見えたまはぬを、しひてしぼり開けて見たてまつるに、なかなか飽かず悲しきことたぐひなきに、まことに心惑ひもしぬべし。御髪のただうちやられたまへるほど、こちたくけうらにて、露ばかり乱れたるけしきもなう、つやつやとうつくしげなるさまぞ限りなき。<BR>⏎
<P>⏎
139 とて御袖を顔におしあてたまへるほど、大将の君も、涙にくれて、目も見えたまはぬを、しひてしぼり開けて見たてまつるに、なかなか飽かず悲しきことたぐひなきに、まことに心惑ひもしぬべし。御髪のただうちやられたまへるほど、こちたくけうらにて、露ばかり乱れたるけしきもなう、つやつやとうつくしげなるさまぞ限りなき。<BR>⏎
d1230<P>⏎
text40231 <A NAME="in25">[第五段 紫の上の葬儀]</A><BR>141 
d1232<P>⏎
d1234<P>⏎
cd2:1235-236 やがてその日、とかく収めたてまつる。限りありけることなれば、<A HREF="#no5">骸を見つつも</A><A NAME="te5">え</A>過ぐしたまふまじかりけるぞ、心憂き世の中なりける。はるばると広き野の、所もなく立ち込みて、限りなくいかめしき作法なれど、いとはかなき煙にて、はかなく昇りたまひぬるも、例のことなれど、あへなくいみじ。<BR>⏎
<P>⏎
143 やがてその日、とかく収めたてまつる。限りありけることなれば、<A HREF="#no5">骸を見つつも</A><A NAME="te5">え</A>過ぐしたまふまじかりけるぞ、心憂き世の中なりける。はるばると広き野の、所もなく立ち込みて、限りなくいかめしき作法なれど、いとはかなき煙にて、はかなく昇りたまひぬるも、例のことなれど、あへなくいみじ。<BR>⏎
d1238<P>⏎
cd2:1239-240 昔大将の君の御母君亡せたまへりし時の暁を思ひ出づるにも、かれはなほもののおぼえけるにや、月の顔の明らかにおぼえしを、今宵はただくれ惑ひたまへり。<BR>⏎
<P>⏎
145 昔大将の君の御母君亡せたまへりし時の暁を思ひ出づるにも、かれはなほもののおぼえけるにや、月の顔の明らかにおぼえしを、今宵はただくれ惑ひたまへり。<BR>⏎
d1242<P>⏎
text40243 <H4>第三章 光る源氏の物語 源氏の悲嘆と弔問客たち</H4>147 
text40244 <A NAME="in31">[第一段 源氏の悲嘆と弔問客]</A><BR>148 
d1245<P>⏎
d1247<P>⏎
d1249<P>⏎
d1251<P>⏎
d1253<P>⏎
cd5:2254-258 「いにしへの秋の夕べの恋しきに<BR>⏎
  今はと見えし明けぐれの夢」<BR>⏎
<P>⏎
 ぞ名残さへ憂かりける。やむごとなき僧どもさぶらはせたまひて、定まりたる念仏をばさるものにて、法華経など誦ぜさせたまふ。かたがたいとあはれなり。<BR>⏎
<P>⏎
153-154 「いにしへの秋の夕べの恋しきに<BR>  今はと見えし明けぐれの夢」<BR>⏎
 ぞ名残さへ憂かりける。やむごとなき僧どもさぶらはせたまひて、定まりたる念仏をばさるものにて、法華経など誦ぜさせたまふ。かたがたいとあはれなり。<BR>⏎
d1260<P>⏎
d1262<P>⏎
cd2:1263-264 と<A HREF="#k09">ややましき</A><A NAME="t09">を</A>、<BR>⏎
<P>⏎
157 と<A HREF="#k09">ややましき</A><A NAME="t09">を</A>、<BR>⏎
d1266<P>⏎
cd4:2267-270 と阿弥陀仏を念じたてまつりたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
 <A NAME="in32">[第二段 帝致仕大臣の弔問]</A><BR>⏎
<P>⏎
159-160 と阿弥陀仏を念じたてまつりたまふ。<BR>⏎
 <A NAME="in32">[第二段 帝致仕大臣の弔問]</A><BR>⏎
d1273<P>⏎
cd2:1274-275 「昔大将の御母亡せたまへりしも、このころのことぞかし」と思し出づるに、いともの悲しく、<BR>⏎
<P>⏎
163 「昔大将の御母亡せたまへりしも、このころのことぞかし」と思し出づるに、いともの悲しく、<BR>⏎
d1277<P>⏎
cd5:2278-282 などしめやかなる夕暮にながめたまふ。空のけしきもただならねば、御子の蔵人少将してたてまつりたまふ。あはれなることなど、こまやかに聞こえたまひて、端に、<BR>⏎
<P>⏎
 「いにしへの秋さへ今の心地して<BR>⏎
  濡れにし袖に露ぞおきそふ」<BR>⏎
<P>⏎
165-166 などしめやかなる夕暮にながめたまふ。空のけしきもただならねば、御子の蔵人少将してたてまつりたまふ。あはれなることなど、こまやかに聞こえたまひて、端に、<BR>⏎
 「いにしへの秋さへ今の心地して<BR>  濡れにし袖に露ぞおきそふ」<BR>⏎
d1284<P>⏎
cd3:1285-287 「露けさは昔今ともおもほえず<BR>⏎
  おほかた秋の夜こそつらけれ」<BR>⏎
<P>⏎
168 「露けさは昔今ともおもほえず<BR>  おほかた秋の夜こそつらけれ」<BR>⏎
d1289<P>⏎
d1291<P>⏎
d1293<P>⏎
d1295<P>⏎
cd2:1296-297 さしもあるまじきおほよその人さへ、そのころは、風の音虫の声につけつつ、涙落とさぬはなし。ましてほのかにも見たてまつりし人の、思ひ慰むべき世なし。年ごろ睦ましく仕うまつり馴れつる人びと、しばしも残れる命、恨めしきことを嘆きつつ、尼になり、この世のほかの山住みなどに思ひ立つもありけり。<BR>⏎
<P>⏎
173 さしもあるまじきおほよその人さへ、そのころは、風の音虫の声につけつつ、涙落とさぬはなし。ましてほのかにも見たてまつりし人の、思ひ慰むべき世なし。年ごろ睦ましく仕うまつり馴れつる人びと、しばしも残れる命、恨めしきことを嘆きつつ、尼になり、この世のほかの山住みなどに思ひ立つもありけり。<BR>⏎
text40298 <A NAME="in33">[第三段 秋好中宮の弔問]</A><BR>174 
d1299<P>⏎
d1301<P>⏎
cd3:1302-304 「枯れ果つる野辺を憂しとや亡き人の<BR>⏎
  秋に心をとどめざりけむ<BR>⏎
<P>⏎
176 「枯れ果つる野辺を憂しとや亡き人の<BR>  秋に心をとどめざりけむ<BR>⏎
d1306<P>⏎
cd5:2307-311 とありけるを、ものおぼえぬ御心にも、うち返し、置きがたく見たまふ。「いふかひありをかしからむ方の慰めには、この宮ばかりこそおはしけれ」と、いささかのもの紛るるやうに思し続くるにも、涙のこぼるるを、袖の暇なく、え書きやりたまはず。<BR>⏎
<P>⏎
 「昇りにし雲居ながらもかへり見よ<BR>⏎
  われ飽きはてぬ常ならぬ世に」<BR>⏎
<P>⏎
178-179 とありけるを、ものおぼえぬ御心にも、うち返し、置きがたく見たまふ。「いふかひありをかしからむ方の慰めには、この宮ばかりこそおはしけれ」と、いささかのもの紛るるやうに思し続くるにも、涙のこぼるるを、袖の暇なく、え書きやりたまはず。<BR>⏎
 「昇りにし雲居ながらもかへり見よ<BR>  われ飽きはてぬ常ならぬ世に」<BR>⏎
d1313<P>⏎
d1315<P>⏎
cd2:1316-317 仏の御前に人しげからずもてなして、のどやかに行なひたまふ。千年をももろともにと思ししかど、限りある別れぞいと口惜しきわざなりける。今は、蓮の露も異事に紛るまじく、後の世をと、ひたみちに思し立つこと、たゆみなし。されど人聞きを憚りたまふなむ、あぢきなかりける。<BR>⏎
<P>⏎
182 仏の御前に人しげからずもてなして、のどやかに行なひたまふ。千年をももろともにと思ししかど、限りある別れぞいと口惜しきわざなりける。今は、蓮の露も異事に紛るまじく、後の世をと、ひたみちに思し立つこと、たゆみなし。されど人聞きを憚りたまふなむ、あぢきなかりける。<BR>⏎
d2319-320
<P>⏎
text40321 <a name="in41">【出典】<BR>184 
c1322</a><A NAME="no1">出典1</A> 法華経をわが得しことは薪こり名摘み水汲み仕へてぞ得し(拾遺集哀傷-一三四六 大僧正行基)<A HREF="#te1">(戻)</A><BR>⏎
185<A NAME="no1">出典1</A> 法華経をわが得しことは薪こり名摘み水汲み仕へてぞ得し(拾遺集哀傷-一三四六 大僧正行基)<A HREF="#te1">(戻)</A><BR>⏎
d1329
text40330<p> <a name="in42">【校訂】<BR>192 
c1332</a><A NAME="k01">校訂1</A> まほしき--(/+ま)ほしき<A HREF="#t01">(戻)</A><BR>⏎
194<A NAME="k01">校訂1</A> まほしき--(/+ま)ほしき<A HREF="#t01">(戻)</A><BR>⏎
d1341</p>⏎
d1348</p>⏎
i0213
diffsrc/original/text41.htmlsrc/modified/text41.html
cd2:18-9<body background="wallppr063.gif">⏎
First updated 9/20/1996(ver.1-1)<BR>⏎
8<BODY>⏎
cd3:210-12Last updated 9/22/2010(ver.2-3)<BR>⏎
渋谷栄一校訂(C)<BR>⏎
<P
>⏎
9-10<ADDRESS>Last updated 9/22/2010(ver.2-3)<BR>⏎
渋谷栄一校訂(C)</ADDRESS>⏎
d114<P>⏎
d116<P>⏎
d136<P>⏎
d162<P>⏎
d165<P>⏎
text4166 <H4>第一章 光る源氏の物語 紫の上追悼の春の物語</H4>59 
text4167 <A NAME="in11">[第一段 紫の上のいない春を迎える]</A><BR>60 
d168<P>⏎
d170<P>⏎
cd3:171-73 「わが宿は花もてはやす人もなし<BR>⏎
  何にか春のたづね来つらむ」<BR>⏎
<P>⏎
62 「わが宿は花もてはやす人もなし<BR>  何にか春のたづね来つらむ」<BR>⏎
d175<P>⏎
cd3:176-78 「香をとめて来つるかひなくおほかたの<BR>⏎
  花のたよりと言ひやなすべき」<BR>⏎
<P>⏎
64 「香をとめて来つるかひなくおほかたの<BR>  花のたよりと言ひやなすべき」<BR>⏎
d180<P>⏎
d182<P>⏎
text4183 <A NAME="in12">[第二段 雪の朝帰りの思い出]</A><BR>67 
d184<P>⏎
d186<P>⏎
cd2:187-88 「などて戯れにても、またまめやかに心苦しきことにつけても、さやうなる心を見えたてまつりけむ。なに事もらうらうじくおはせし御心ばへなりしかば、人の深き心もいとよう見知りたまひながら、怨じ果てたまふことはなかりしかど、一わたりづつは、いかならむとすらむ」<BR>⏎
<P>⏎
69 「などて戯れにても、またまめやかに心苦しきことにつけても、さやうなる心を見えたてまつりけむ。なに事もらうらうじくおはせし御心ばへなりしかば、人の深き心もいとよう見知りたまひながら、怨じ果てたまふことはなかりしかど、一わたりづつは、いかならむとすらむ」<BR>⏎
d190<P>⏎
d192<P>⏎
d194<P>⏎
d196<P>⏎
d198<P>⏎
cd3:199-101 「憂き世には雪消えなむと思ひつつ<BR>⏎
  思ひの外になほぞほどふる」<BR>⏎
<P>⏎
75 「憂き世には雪消えなむと思ひつつ<BR>  思ひの外になほぞほどふる」<BR>⏎
text41102 <A NAME="in13">[第三段 中納言の君らを相手に述懐]</A><BR>76 
d1103<P>⏎
d1105<P>⏎
d1107<P>⏎
cd6:3108-113 とうちながめたまふ。「我さへうち捨てては、この人びとの、いとど嘆きわびむことの、あはれにいとほしかるべき」など、見わたしたまふ。忍びやかにうち行ひつつ、経など読みたまへる御声を、よろしう思はむことにてだに涙とまるまじきを、まして<A HREF="#no1">袖のしがらみせきあへぬ</A><A NAME="te1">ま</A>であはれに、明け暮れ見たてまつる人びとの心地、尽きせず思ひきこゆ。<BR>⏎
<P>⏎
 「この世につけては、飽かず思ふべきこと、をさをさあるまじう、高き身には生まれながら、また人よりことに、口惜しき契りにもありけるかな、と思ふこと絶えず。世のはかなく憂きを知らすべく、仏などのおきてたまへる身なるべし。それをしひて知らぬ顔にながらふれば、かく今はの夕べ近き末に、いみじきことのとぢめを見つるに、宿世のほども、みづからの心の際も、残りなく見果てて、心やすきに、今なむ露のほだしなくなりにたるを、これかれ、かくてありしよりけに目馴らす人びとの、今はとて行き別れむほどこそ、今一際の心乱れぬべけれ。いとはかなしかし。悪ろかりける心のほどかな」<BR>⏎
<P>⏎
 とて御目おしのごひ隠したまふに、紛れず、やがてこぼるる御涙を、見たてまつる人びと、ましてせきとめむかたなし。さてうち捨てられたてまつりなむが憂はしさを、おのおのうち出でまほしけれど、さもえ聞こえず、むせかへりてやみぬ。<BR>⏎
<P>⏎
79-81 とうちながめたまふ。「我さへうち捨てては、この人びとの、いとど嘆きわびむことの、あはれにいとほしかるべき」など、見わたしたまふ。忍びやかにうち行ひつつ、経など読みたまへる御声を、よろしう思はむことにてだに涙とまるまじきを、まして<A HREF="#no1">袖のしがらみせきあへぬ</A><A NAME="te1">ま</A>であはれに、明け暮れ見たてまつる人びとの心地、尽きせず思ひきこゆ。<BR>⏎
 「この世につけては、飽かず思ふべきこと、をさをさあるまじう、高き身には生まれながら、また人よりことに、口惜しき契りにもありけるかな、と思ふこと絶えず。世のはかなく憂きを知らすべく、仏などのおきてたまへる身なるべし。それをしひて知らぬ顔にながらふれば、かく今はの夕べ近き末に、いみじきことのとぢめを見つるに、宿世のほども、みづからの心の際も、残りなく見果てて、心やすきに、今なむ露のほだしなくなりにたるを、これかれ、かくてありしよりけに目馴らす人びとの、今はとて行き別れむほどこそ、今一際の心乱れぬべけれ。いとはかなしかし。悪ろかりける心のほどかな」<BR>⏎
 とて御目おしのごひ隠したまふに、紛れず、やがてこぼるる御涙を、見たてまつる人びと、ましてせきとめむかたなし。さてうち捨てられたてまつりなむが憂はしさを、おのおのうち出でまほしけれど、さもえ聞こえず、むせかへりてやみぬ。<BR>⏎
d1115<P>⏎
d1117<P>⏎
text41118 <A NAME="in14">[第四段 源氏、面会謝絶して独居]</A><BR>84 
d1119<P>⏎
d1121<P>⏎
d1123<P>⏎
cd2:1124-125 と思せば、大将の君などにだに、御簾隔ててぞ対面したまひける。かく心変りしたまへるやうに、人の言ひ伝ふべきころほひをだに思ひのどめてこそはと、念じ過ぐしたまひつつ、憂き世をも背きやりたまはず。御方々にまれにもうちほのめきたまふにつけては、まづいとせきがたき<A HREF="#no2">涙の雨のみ降り</A><A NAME="te2">ま</A>されば、いとわりなくて、いづ方にもおぼつかなきさまにて過ぐしたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
87 と思せば、大将の君などにだに、御簾隔ててぞ対面したまひける。かく心変りしたまへるやうに、人の言ひ伝ふべきころほひをだに思ひのどめてこそはと、念じ過ぐしたまひつつ、憂き世をも背きやりたまはず。御方々にまれにもうちほのめきたまふにつけては、まづいとせきがたき<A HREF="#no2">涙の雨のみ降り</A><A NAME="te2">ま</A>されば、いとわりなくて、いづ方にもおぼつかなきさまにて過ぐしたまふ。<BR>⏎
d1127<P>⏎
d1129<P>⏎
cd2:1130-131 とて対の御前の紅梅は、いと取り分きて後見ありきたまふを、いとあはれと見たてまつりたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
90 とて対の御前の紅梅は、いと取り分きて後見ありきたまふを、いとあはれと見たてまつりたまふ。<BR>⏎
d1133<P>⏎
cd5:2134-138 「植ゑて見し花のあるじもなき宿に<BR>⏎
  知らず顔にて来ゐる鴬」<BR>⏎
<P>⏎
 とうそぶき歩かせたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
92-93 「植ゑて見し花のあるじもなき宿に<BR>  知らず顔にて来ゐる鴬」<BR>⏎
 とうそぶき歩かせたまふ。<BR>⏎
text41139 <A NAME="in15">[第五段 春深まりゆく寂しさ]</A><BR>94 
d1141<P>⏎
d1143<P>⏎
d1145<P>⏎
cd2:1146-147 とかしこう思ひ得たり、と思ひてのたまふ顔のいとうつくしきにも、うち笑まれたまひぬ。<BR>⏎
<P>⏎
98 とかしこう思ひ得たり、と思ひてのたまふ顔のいとうつくしきにも、うち笑まれたまひぬ。<BR>⏎
d1149<P>⏎
d1151<P>⏎
cd2:1152-153 とて例の、涙ぐみたまへれば、いとものしと思して、<BR>⏎
<P>⏎
101 とて例の、涙ぐみたまへれば、いとものしと思して、<BR>⏎
d1155<P>⏎
cd2:1156-157 とて伏目になりて、御衣の袖を引きまさぐりなどしつつ、紛らはしおはす。<BR>⏎
<P>⏎
103 とて伏目になりて、御衣の袖を引きまさぐりなどしつつ、紛らはしおはす。<BR>⏎
d1159<P>⏎
d1162<P>⏎
d1164<P>⏎
text41165 <A NAME="in16">[第六段 女三の宮の方に出かける]</A><BR>108 
d1166<P>⏎
d1168<P>⏎
d1170<P>⏎
d1172<P>⏎
d1174<P>⏎
d1176<P>⏎
d1178<P>⏎
cd2:1179-180 と何心もなく聞こえたまふを、「ことしもこそあれ、心憂くも」と思さるるにつけても、「まづかやうのはかなきことにつけては、そのことのさらでもありなむかし、と思ふに、違ふふしなくてもやみにしかな」と、いはけなかりしほどよりの御ありさまを、「いで何ごとぞやありし」と思し出づるには、まづその折かの折、かどかどしうらうらうじう、匂ひ多かりし心ざま、もてなし、言の葉のみ思ひ続けられたまふに、例の涙もろさは、ふとこぼれ出でぬるもいと苦し。<BR>⏎
<P>⏎
115 と何心もなく聞こえたまふを、「ことしもこそあれ、心憂くも」と思さるるにつけても、「まづかやうのはかなきことにつけては、そのことのさらでもありなむかし、と思ふに、違ふふしなくてもやみにしかな」と、いはけなかりしほどよりの御ありさまを、「いで何ごとぞやありし」と思し出づるには、まづその折かの折、かどかどしうらうらうじう、匂ひ多かりし心ざま、もてなし、言の葉のみ思ひ続けられたまふに、例の涙もろさは、ふとこぼれ出でぬるもいと苦し。<BR>⏎
text41181 <A NAME="in17">[第七段 明石の御方に立ち寄る]</A><BR>116 
d1182<P>⏎
d1184<P>⏎
d1186<P>⏎
cd2:1187-188 などさして一つ筋の悲しさにのみはのたまはねど、思したるさまのことわりに心苦しきを、いとほしう見たてまつりて、<BR>⏎
<P>⏎
119 などさして一つ筋の悲しさにのみはのたまはねど、思したるさまのことわりに心苦しきを、いとほしう見たてまつりて、<BR>⏎
d1190<P>⏎
cd4:2191-194 いにしへの例などを聞きはべるにつけても、心におどろかれ、思ふより違ふふしありて、世を厭ふついでになるとか。それはなほ悪るきこととこそ。なほしばし思しのどめさせたまひて、宮たちなどもおとなびさせたまひて、まことに動きなかるべき御ありさまに、見たてまつりなさせたまはむまでは、乱れなくはべらむこそ、心やすくも、うれしくもはべるべけれ」<BR>⏎
<P>⏎
 などいとおとなびて聞こえたるけしき、いとめやすし。<BR>⏎
<P>⏎
121-122 いにしへの例などを聞きはべるにつけても、心におどろかれ、思ふより違ふふしありて、世を厭ふついでになるとか。それはなほ悪るきこととこそ。なほしばし思しのどめさせたまひて、宮たちなどもおとなびさせたまひて、まことに動きなかるべき御ありさまに、見たてまつりなさせたまはむまでは、乱れなくはべらむこそ、心やすくも、うれしくもはべるべけれ」<BR>⏎
 などいとおとなびて聞こえたるけしき、いとめやすし。<BR>⏎
text41195 <A NAME="in18">[第八段 明石の御方に悲しみを語る]</A><BR>123 
d1196<P>⏎
d1198<P>⏎
d1200<P>⏎
cd6:3201-206 「故后の宮の崩れたまへりし春なむ、花の色を見ても、まことに<A HREF="#no7">心あらば</A><A NAME="te7">と</A>おぼえし。それはおほかたの世につけて、をかしかりし御ありさまを、幼くより見たてまつりしみて、さるとぢめの悲しさも、人よりことにおぼえしなり。<BR>⏎
<P>⏎
 みづから取り分く心ざしにも、もののあはれはよらぬわざなり。年経ぬる人に後れて、心収めむ方なく忘れがたきも、ただかかる仲の悲しさのみにはあらず。幼きほどより生ほしたてしありさま、もろともに老いぬる末の世にうち捨てられて、わが身も人の身も、思ひ続けらるる悲しさの、堪へがたきになむ。すべてもののあはれも、ゆゑあることも、をかしき筋も、広う思ひめぐらす方、方々添ふことの、浅からずなるになむありける」<BR>⏎
<P>⏎
 など夜更くるまで、昔今の御物語に、「かくても明かしつべき夜を」と思しながら、帰りたまふを、女もものあはれに思ふべし。わが御心にも、「あやしうもなりにける心のほどかな」と、思し知らる。<BR>⏎
<P>⏎
126-128 「故后の宮の崩れたまへりし春なむ、花の色を見ても、まことに<A HREF="#no7">心あらば</A><A NAME="te7">と</A>おぼえし。それはおほかたの世につけて、をかしかりし御ありさまを、幼くより見たてまつりしみて、さるとぢめの悲しさも、人よりことにおぼえしなり。<BR>⏎
 みづから取り分く心ざしにも、もののあはれはよらぬわざなり。年経ぬる人に後れて、心収めむ方なく忘れがたきも、ただかかる仲の悲しさのみにはあらず。幼きほどより生ほしたてしありさま、もろともに老いぬる末の世にうち捨てられて、わが身も人の身も、思ひ続けらるる悲しさの、堪へがたきになむ。すべてもののあはれも、ゆゑあることも、をかしき筋も、広う思ひめぐらす方、方々添ふことの、浅からずなるになむありける」<BR>⏎
 など夜更くるまで、昔今の御物語に、「かくても明かしつべき夜を」と思しながら、帰りたまふを、女もものあはれに思ふべし。わが御心にも、「あやしうもなりにける心のほどかな」と、思し知らる。<BR>⏎
d1208<P>⏎
cd3:1209-211 「なくなくも帰りにしかな仮の世は<BR>⏎
  いづこもつひの常世ならぬに」<BR>⏎
<P>⏎
130 「なくなくも帰りにしかな仮の世は<BR>  いづこもつひの常世ならぬに」<BR>⏎
d1213<P>⏎
cd3:1214-216 「雁がゐし苗代水の絶えしより<BR>⏎
  映りし花の影をだに見ず」<BR>⏎
<P>⏎
132 「雁がゐし苗代水の絶えしより<BR>  映りし花の影をだに見ず」<BR>⏎
d1218<P>⏎
d1220<P>⏎
text41221 <H4>第二章 光る源氏の物語 紫の上追悼の夏の物語</H4>135 
text41222 <A NAME="in21">[第一段 花散里や中将の君らと和歌を詠み交わす]</A><BR>136 
d1223<P>⏎
d1225<P>⏎
cd3:1226-228 「夏衣裁ち替へてける今日ばかり<BR>⏎
  古き思ひもすすみやはせぬ」<BR>⏎
<P>⏎
138 「夏衣裁ち替へてける今日ばかり<BR>  古き思ひもすすみやはせぬ」<BR>⏎
d1230<P>⏎
cd2:1231-232 「羽衣の薄きに変はる今日よりは<BR>⏎
  空蝉の世ぞいとど悲しき」<BR>⏎
140 「羽衣の薄きに変はる今日よりは<BR>  空蝉の世ぞいとど悲しき」<BR>⏎
d1234<P>⏎
d1236<P>⏎
d1238<P>⏎
d1240<P>⏎
cd10:4241-250 「さもこそはよるべの水に水草ゐめ<BR>⏎
  今日のかざしよ名さへ忘るる」<BR>⏎
<P>⏎
 と恥ぢらひて聞こゆ。げにといとほしくて、<BR>⏎
<P>⏎
 「おほかたは思ひ捨ててし世なれども<BR>⏎
  葵はなほや摘みをかすべき」<BR>⏎
<P>⏎
 など一人ばかりをば思し放たぬけしきなり。<BR>⏎
<P>⏎
145-148 「さもこそはよるべの水に水草ゐめ<BR>  今日のかざしよ名さへ忘るる」<BR>⏎
 と恥ぢらひて聞こゆ。げにといとほしくて、<BR>⏎
 「おほかたは思ひ捨ててし世なれども<BR>  葵はなほや摘みをかすべき」<BR>⏎
 など一人ばかりをば思し放たぬけしきなり。<BR>⏎
text41251 <A NAME="in22">[第二段 五月雨の夜、夕霧来訪]</A><BR>149 
d1252<P>⏎
d1254<P>⏎
d1256<P>⏎
cd2:1257-258 「独り住みは、ことに変ることなけれど、あやしうさうざうしくこそありけれ。深き山住みせむにも、かくて身を馴らはしたらむは、こよなう心澄みぬべきわざなりけり」などのたまひて、「女房、ここにくだものなど参らせよ。男ども召さむもことことしきほどなり」などのたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
152 「独り住みは、ことに変ることなけれど、あやしうさうざうしくこそありけれ。深き山住みせむにも、かくて身を馴らはしたらむは、こよなう心澄みぬべきわざなりけり」などのたまひて、「女房、ここにくだものなど参らせよ。男ども召さむもことことしきほどなり」などのたまふ。<BR>⏎
d1260<P>⏎
text41261 <A NAME="in23">[第三段 ほととぎすの鳴き声に故人を偲ぶ]</A><BR>154 
d1262<P>⏎
d1264<P>⏎
d1266<P>⏎
d1268<P>⏎
d1270<P>⏎
d1272<P>⏎
cd2:1273-274 「それは仮ならず、命長き人びとにも、さやうなることのおほかた少なかりける。みづからの口惜しさにこそ。そこにこそは、門は広げたまはめ」などのたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
160 「それは仮ならず、命長き人びとにも、さやうなることのおほかた少なかりける。みづからの口惜しさにこそ。そこにこそは、門は広げたまはめ」などのたまふ。<BR>⏎
d1276<P>⏎
cd8:3277-284 「亡き人を偲ぶる宵の村雨に<BR>⏎
  濡れてや来つる山ほととぎす」<BR>⏎
<P>⏎
 とていとど空を眺めたまふ。大将、<BR>⏎
<P>⏎
 「ほととぎす君につてなむふるさとの<BR>⏎
  花橘は今ぞ盛りと」<BR>⏎
<P>⏎
162-164 「亡き人を偲ぶる宵の村雨に<BR>  濡れてや来つる山ほととぎす」<BR>⏎
 とていとど空を眺めたまふ。大将、<BR>⏎
 「ほととぎす君につてなむふるさとの<BR>  花橘は今ぞ盛りと」<BR>⏎
d1286<P>⏎
text41287 <A NAME="in24">[第四段 蛍の飛ぶ姿に故人を偲ぶ]</A><BR>166 
d1288<P>⏎
d1290<P>⏎
cd3:1291-293 「つれづれとわが泣き暮らす夏の日を<BR>⏎
  かことがましき虫の声かな」<BR>⏎
<P>⏎
168 「つれづれとわが泣き暮らす夏の日を<BR>  かことがましき虫の声かな」<BR>⏎
d1295<P>⏎
cd3:1296-298 「<A HREF="#no15">夜を知る蛍</A><A NAME="te15">を</A>見ても悲しきは<BR>⏎
  時ぞともなき思ひなりけり」<BR>⏎
<P>⏎
170 「<A HREF="#no15">夜を知る蛍</A><A NAME="te15">を</A>見ても悲しきは<BR>  時ぞともなき思ひなりけり」<BR>⏎
text41299 <H4>第三章 光る源氏の物語 紫の上追悼の秋冬の物語</H4>171 
text41300 <A NAME="in31">[第一段 紫の上の一周忌法要]</A><BR>172 
d1301<P>⏎
d1303<P>⏎
cd3:1304-306 「七夕の逢ふ瀬は雲のよそに見て<BR>⏎
  別れの庭に露ぞおきそふ」<BR>⏎
<P>⏎
174 「七夕の逢ふ瀬は雲のよそに見て<BR>  別れの庭に露ぞおきそふ」<BR>⏎
d1308<P>⏎
d1310<P>⏎
cd3:1311-313 「君恋ふる涙は際もなきものを<BR>⏎
  今日をば何の果てといふらむ」<BR>⏎
<P>⏎
177 「君恋ふる涙は際もなきものを<BR>  今日をば何の果てといふらむ」<BR>⏎
d1315<P>⏎
cd5:2316-320 「人恋ふるわが身も末になりゆけど<BR>⏎
  残り多かる涙なりけり」<BR>⏎
<P>⏎
 と書き添へたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
179-180 「人恋ふるわが身も末になりゆけど<BR>  残り多かる涙なりけり」<BR>⏎
 と書き添へたまふ。<BR>⏎
d1322<P>⏎
cd3:1323-325 「もろともにおきゐし菊の白露も<BR>⏎
  一人袂にかかる秋かな」<BR>⏎
<P>⏎
182 「もろともにおきゐし菊の白露も<BR>  一人袂にかかる秋かな」<BR>⏎
text41326 <A NAME="in32">[第二段 源氏、出家を決意]</A><BR>183 
d1327<P>⏎
cd3:1329-331 「大空をかよふ幻夢にだに<BR>⏎
  見えこぬ魂の行方たづねよ」<BR>⏎
<P>⏎
185 「大空をかよふ幻夢にだに<BR>  見えこぬ魂の行方たづねよ」<BR>⏎
d1333<P>⏎
cd5:2334-338 五節などいひて、世の中そこはかとなく今めかしげなるころ、大将殿の君たち、童殿上したまへる率て参りたまへり。同じほどにて、二人いとうつくしきさまなり。御叔父の頭中将、蔵人少将など、<A HREF="#k09">小忌にて</A><A NAME="t09">、</A>青摺の姿ども、きよげにめやすくて、皆うち続き、もてかしづきつつ、もろともに参りたまふ。思ふことなげなるさまどもを見たまふに、いにしへあやしかりし日蔭の折、さすがに思し出でらるべし。<BR>⏎
<P>⏎
 「宮人は豊明といそぐ今日<BR>⏎
  日影も知らで暮らしつるかな」<BR>⏎
<P>⏎
187-188 五節などいひて、世の中そこはかとなく今めかしげなるころ、大将殿の君たち、童殿上したまへる率て参りたまへり。同じほどにて、二人いとうつくしきさまなり。御叔父の頭中将、蔵人少将など、<A HREF="#k09">小忌にて</A><A NAME="t09">、</A>青摺の姿ども、きよげにめやすくて、皆うち続き、もてかしづきつつ、もろともに参りたまふ。思ふことなげなるさまどもを見たまふに、いにしへあやしかりし日蔭の折、さすがに思し出でらるべし。<BR>⏎
 「宮人は豊明といそぐ今日<BR>  日影も知らで暮らしつるかな」<BR>⏎
d1340<P>⏎
text41341 <A NAME="in33">[第三段 源氏、手紙を焼く]</A><BR>190 
d1342<P>⏎
d1344<P>⏎
cd7:3345-351 みづからしおきたまひけることなれど、「久しうなりける世のこと」と思すに、ただ今のやうなる墨つきなど、「げに<A HREF="#no19">千年の形見</A><A NAME="te19">に</A>しつべかりけるを、見ずなりぬべきよ」と思せば、かひなくて、疎からぬ人びと、二三人ばかり、御前にて破らせたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
 いとかからぬほどのことにてだに、過ぎにし人の跡と見るはあはれなるを、ましていとどかきくらし、それとも見分かれぬまで、降りおつる御涙の水茎に流れ添ふを、人もあまり心弱しと見たてまつるべきが、かたはらいたうはしたなければ、押しやりたまひて、<BR>⏎
<P>⏎
 「死出の山越えにし人を慕ふとて<BR>⏎
  跡を見つつもなほ惑ふかな」<BR>⏎
<P>⏎
192-194 みづからしおきたまひけることなれど、「久しうなりける世のこと」と思すに、ただ今のやうなる墨つきなど、「げに<A HREF="#no19">千年の形見</A><A NAME="te19">に</A>しつべかりけるを、見ずなりぬべきよ」と思せば、かひなくて、疎からぬ人びと、二三人ばかり、御前にて破らせたまふ。<BR>⏎
 いとかからぬほどのことにてだに、過ぎにし人の跡と見るはあはれなるを、ましていとどかきくらし、それとも見分かれぬまで、降りおつる御涙の水茎に流れ添ふを、人もあまり心弱しと見たてまつるべきが、かたはらいたうはしたなければ、押しやりたまひて、<BR>⏎
 「死出の山越えにし人を慕ふとて<BR>  跡を見つつもなほ惑ふかな」<BR>⏎
d1353<P>⏎
cd3:1354-356 「かきつめて見るもかひなし藻塩草<BR>⏎
  同じ雲居の煙とをなれ」<BR>⏎
<P>⏎
196 「かきつめて見るもかひなし藻塩草<BR>  同じ雲居の煙とをなれ」<BR>⏎
d1358<P>⏎
text41359 <A NAME="in34">[第四段 源氏、出家の準備]</A><BR>198 
d1360<P>⏎
d1362<P>⏎
d1364<P>⏎
d1366<P>⏎
d1368<P>⏎
cd3:1369-371 「春までの命も知らず雪のうちに<BR>⏎
  色づく梅を今日かざしてむ」<BR>⏎
<P>⏎
203 「春までの命も知らず雪のうちに<BR>  色づく梅を今日かざしてむ」<BR>⏎
d1373<P>⏎
cd3:1374-376 「千世の春見るべき花と祈りおきて<BR>⏎
  わが身ぞ雪とともにふりぬる」<BR>⏎
<P>⏎
205 「千世の春見るべき花と祈りおきて<BR>  わが身ぞ雪とともにふりぬる」<BR>⏎
d1378<P>⏎
d1380<P>⏎
d1382<P>⏎
d1384<P>⏎
cd5:2385-389 と走りありきたまふも、「をかしき御ありさまを見ざらむこと」と、よろづに忍びがたし。<BR>⏎
<P>⏎
 「<A HREF="#no20">もの思ふと過ぐる月日も知らぬまに</A><A NAME="te20"><BR>⏎
  年</A>もわが世も今日や尽きぬる」<BR>⏎
<P>⏎
210-211 と走りありきたまふも、「をかしき御ありさまを見ざらむこと」と、よろづに忍びがたし。<BR>⏎
 「<A HREF="#no20">もの思ふと過ぐる月日も知らぬまに</A><A NAME="te20"><BR>  年</A>もわが世も今日や尽きぬる」<BR>⏎
d2391-392
<P>⏎
text41393 <a name="in41">【出典】<BR>213 
c1394</a><A NAME="no1">出典1</A> 涙川落つる水上早ければせきかねつるぞ袖のしがらみ(拾遺集恋四-八七六 紀貫之)<A HREF="#te1">(戻)</A><BR>⏎
214<A NAME="no1">出典1</A> 涙川落つる水上早ければせきかねつるぞ袖のしがらみ(拾遺集恋四-八七六 紀貫之)<A HREF="#te1">(戻)</A><BR>⏎
d1414
text41415<p> <a name="in42">【校訂】<BR>234 
c1417</a><A NAME="k01">校訂1</A> その--(/+そ)の<A HREF="#t01">(戻)</A><BR>⏎
236<A NAME="k01">校訂1</A> その--(/+そ)の<A HREF="#t01">(戻)</A><BR>⏎
d1426</p>⏎
d1433</p>⏎
i0255
diffsrc/original/text42.htmlsrc/modified/text42.html
cd2:18-9<body background="wallppr063.gif">⏎
First updated 9/20/1996(ver.1-1)<BR>⏎
8<BODY>⏎
cd3:210-12Last updated 9/22/2010(ver.2-3)<BR>⏎
渋谷栄一校訂(C)<BR>⏎
<P
>⏎
9-10<ADDRESS>Last updated 9/22/2010(ver.2-3)<BR>⏎
渋谷栄一校訂(C)</ADDRESS>⏎
d114<P>⏎
d116<P>⏎
d134<P>⏎
d151<P>⏎
d154<P>⏎
text4255 <H4>第一章 光る源氏没後の物語 光る源氏の縁者たちのその後</H4>48 
text4256 <A NAME="in11">[第一段 匂宮と薫の評判]</A><BR>49 
d157<P>⏎
cd2:158-59 光隠れたまひにし後、かの御影に立ちつぎたまふべき人、そこらの御末々にありがたかりけり。下りゐの帝をかけたてまつらむはかたじけなし。当代の三の宮、その同じ御殿にて生ひ出でたまひし宮の若君と、この二所なむ、とりどりにきよらなる御名取りたまひて、げにいとなべてならぬ御ありさまどもなれど、いとまばゆき際にはおはせざるべし。<BR>⏎
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50 光隠れたまひにし後、かの御影に立ちつぎたまふべき人、そこらの御末々にありがたかりけり。下りゐの帝をかけたてまつらむはかたじけなし。当代の三の宮、その同じ御殿にて生ひ出でたまひし宮の若君と、この二所なむ、とりどりにきよらなる御名取りたまひて、げにいとなべてならぬ御ありさまどもなれど、いとまばゆき際にはおはせざるべし。<BR>⏎
d161<P>⏎
cd2:162-63 紫の上の、御心寄せことに育みきこえたまひしゆゑ、三の宮は、二条の院におはします。春宮をば、さるやむごとなきものにおきたてまつりたまて、帝后、いみじうかなしうしたてまつり、かしづききこえさせたまふ宮なれば、内裏住みをせさせたてまつりたまへど、なほ心やすき故里に、住みよくしたまふなりけり。御元服したまひては、兵部卿と聞こゆ。<BR>⏎
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52 紫の上の、御心寄せことに育みきこえたまひしゆゑ、三の宮は、二条の院におはします。春宮をば、さるやむごとなきものにおきたてまつりたまて、帝后、いみじうかなしうしたてまつり、かしづききこえさせたまふ宮なれば、内裏住みをせさせたてまつりたまへど、なほ心やすき故里に、住みよくしたまふなりけり。御元服したまひては、兵部卿と聞こゆ。<BR>⏎
text4264 <A NAME="in12">[第二段 今上の女一宮と夕霧の姫君たち]</A><BR>53 
d165<P>⏎
d167<P>⏎
d169<P>⏎
cd2:170-71 大臣も、「何かは、やうのものと、さのみうるはしうは」と静めたまへど、またさる御けしきあらむをば、もて離れてもあるまじうおもむけて、いといたうかしづききこえたまふ。六の君なむ、そのころの、すこし我はと思ひのぼりたまへる親王たち、上達部の、御心尽くすくさはひにものしたまひける。<BR>⏎
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56 大臣も、「何かは、やうのものと、さのみうるはしうは」と静めたまへど、またさる御けしきあらむをば、もて離れてもあるまじうおもむけて、いといたうかしづききこえたまふ。六の君なむ、そのころの、すこし我はと思ひのぼりたまへる親王たち、上達部の、御心尽くすくさはひにものしたまひける。<BR>⏎
text4272 <A NAME="in13">[第三段 光る源氏の夫人たちのその後]</A><BR>57 
d173<P>⏎
d175<P>⏎
d177<P>⏎
d179<P>⏎
cd6:380-85 と思しのたまはせて、丑寅の町に、かの一条の宮を渡したてまつりたまひてなむ、三条殿と、夜ごとに十五日づつ、うるはしう通ひ住みたまひける。<BR>⏎
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 二条院とて、造り磨き、六条の院の春の御殿とて、世にののしる玉の台も、ただ一人の御末のためなりけりと見えて、明石の御方は、あまたの宮たちの御後見をしつつ、扱ひきこえたまへり。大殿は、いづかたの御ことをも、昔の御心おきてのままに、改め変ることなく、あまねき親心に仕うまつりたまふにも、「対の上の、かやうにてとまりたまへらましかば、いかばかり心を尽くして仕うまつり見えたてまつらまし。つひにいささかも取り分きて、わが心寄せと見知りたまふべきふしもなくて、過ぎたまひにしこと」を、口惜しう飽かず悲しう思ひ出できこえたまふ。<BR>⏎
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 天の下の人、院を恋ひきこえぬなく、とにかくにつけても、世はただ火を消ちたるやうに、何ごとも栄なき嘆きをせぬ折なかりけり。まして殿のうちの人びと、御方々、宮たちなどは、さらにも聞こえず、限りなき御ことをばさるものにて、またかの紫の御ありさまを心にしめつつ、よろづのことにつけて、思ひ出できこえたまはぬ時の間なし。<A HREF="#no1">春の花の盛りは、げに長からぬ</A><A NAME="te1">に</A>しも、おぼえまさるものとなむ。<BR>⏎
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61-63 と思しのたまはせて、丑寅の町に、かの一条の宮を渡したてまつりたまひてなむ、三条殿と、夜ごとに十五日づつ、うるはしう通ひ住みたまひける。<BR>⏎
 二条院とて、造り磨き、六条の院の春の御殿とて、世にののしる玉の台も、ただ一人の御末のためなりけりと見えて、明石の御方は、あまたの宮たちの御後見をしつつ、扱ひきこえたまへり。大殿は、いづかたの御ことをも、昔の御心おきてのままに、改め変ることなく、あまねき親心に仕うまつりたまふにも、「対の上の、かやうにてとまりたまへらましかば、いかばかり心を尽くして仕うまつり見えたてまつらまし。つひにいささかも取り分きて、わが心寄せと見知りたまふべきふしもなくて、過ぎたまひにしこと」を、口惜しう飽かず悲しう思ひ出できこえたまふ。<BR>⏎
 天の下の人、院を恋ひきこえぬなく、とにかくにつけても、世はただ火を消ちたるやうに、何ごとも栄なき嘆きをせぬ折なかりけり。まして殿のうちの人びと、御方々、宮たちなどは、さらにも聞こえず、限りなき御ことをばさるものにて、またかの紫の御ありさまを心にしめつつ、よろづのことにつけて、思ひ出できこえたまはぬ時の間なし。<A HREF="#no1">春の花の盛りは、げに長からぬ</A><A NAME="te1">に</A>しも、おぼえまさるものとなむ。<BR>⏎
text4286 <H4>第二章 薫中将の物語 薫の厭世観と恋愛に消極的な性格</H4>64 
text4287 <A NAME="in21">[第一段 薫、冷泉院から寵遇される]</A><BR>65 
d189<P>⏎
d191<P>⏎
d193<P>⏎
d195<P>⏎
text4296 <A NAME="in22">[第二段 薫、出生の秘密に悩む]</A><BR>70 
d197<P>⏎
d199<P>⏎
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cd7:3102-108 「おぼつかな誰れに問はましいかにして<BR>⏎
  初めも果ても知らぬわが身ぞ」<BR>⏎
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 いらふべき人もなし。ことに触れて、わが身につつがある心地するも、ただならず、もの嘆かしくのみ、思ひめぐらしつつ、「宮もかく盛りの御容貌をやつしたまひて、何ばかりの御道心にてか、にはかにおもむきたまひけむ。かく思はずなりけることの乱れに、かならず憂しと思しなるふしありけむ。人もまさに漏り出で、知らじやは。なほつつむべきことの聞こえにより、我にはけしきを知らする人のなきなめり」と思ふ。<BR>⏎
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 「明け暮れ、勤めたまふやうなめれど、<A HREF="#k02">はかなく</A><A NAME="t02">お</A>ほどきたまへる女の御悟りのほどに、<A HREF="#no2">蓮の露も明らかに</A><A NAME="te2">、</A>玉と磨きたまはむことも難し。五つのなにがしも、なほうしろめたきを、我この御心地を、同じうは後の世をだに」と思ふ。「かの過ぎたまひけむも、やすからぬ思ひに結ぼほれてや」など推し量るに、世を変へても対面せまほしき心つきて、元服はもの憂がりたまひけれど、すまひ果てず、おのづから世の中にもてなされて、まばゆきまではなやかなる御身の飾りも、心につかずのみ、思ひしづまりたまへり。<BR>⏎
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73-75 「おぼつかな誰れに問はましいかにして<BR>  初めも果ても知らぬわが身ぞ」<BR>⏎
 いらふべき人もなし。ことに触れて、わが身につつがある心地するも、ただならず、もの嘆かしくのみ、思ひめぐらしつつ、「宮もかく盛りの御容貌をやつしたまひて、何ばかりの御道心にてか、にはかにおもむきたまひけむ。かく思はずなりけることの乱れに、かならず憂しと思しなるふしありけむ。人もまさに漏り出で、知らじやは。なほつつむべきことの聞こえにより、我にはけしきを知らする人のなきなめり」と思ふ。<BR>⏎
 「明け暮れ、勤めたまふやうなめれど、<A HREF="#k02">はかなく</A><A NAME="t02">お</A>ほどきたまへる女の御悟りのほどに、<A HREF="#no2">蓮の露も明らかに</A><A NAME="te2">、</A>玉と磨きたまはむことも難し。五つのなにがしも、なほうしろめたきを、我この御心地を、同じうは後の世をだに」と思ふ。「かの過ぎたまひけむも、やすからぬ思ひに結ぼほれてや」など推し量るに、世を変へても対面せまほしき心つきて、元服はもの憂がりたまひけれど、すまひ果てず、おのづから世の中にもてなされて、まばゆきまではなやかなる御身の飾りも、心につかずのみ、思ひしづまりたまへり。<BR>⏎
text42109 <A NAME="in23">[第三段 薫、目覚ましい栄達]</A><BR>76 
d1110<P>⏎
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cd4:2115-118 昔光る君と聞こえしは、さるまたなき御おぼえながら、そねみたまふ人うち添ひ、母方の御後見なくなどありしに、御心ざまもの深く、世の中を思しなだらめしほどに、並びなき御光を、まばゆからずもてしづめたまひ、つひにさるいみじき世の乱れも出で来ぬべかりしことをも、ことなく過ぐしたまひて、後の世の御勤めも後らかしたまはず、よろづさりげなくて、久しくのどけき御心おきてにこそありしか、この君は、まだしきに、世のおぼえいと過ぎて、思ひあがりたること、こよなくなどぞものしたまふ。<BR>⏎
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 げにさるべくて、いとこの世の人とはつくり出でざりける、仮に宿れるかとも見ゆること添ひたまへり。顔容貌も、そこはかと、いづこなむすぐれたる、あなきよら、と見ゆるところもなきが、ただいとなまめかしう恥づかしげに、心の奥多かりげなるけはひの、人に似ぬなりけり。<BR>⏎
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79-80 昔光る君と聞こえしは、さるまたなき御おぼえながら、そねみたまふ人うち添ひ、母方の御後見なくなどありしに、御心ざまもの深く、世の中を思しなだらめしほどに、並びなき御光を、まばゆからずもてしづめたまひ、つひにさるいみじき世の乱れも出で来ぬべかりしことをも、ことなく過ぐしたまひて、後の世の御勤めも後らかしたまはず、よろづさりげなくて、久しくのどけき御心おきてにこそありしか、この君は、まだしきに、世のおぼえいと過ぎて、思ひあがりたること、こよなくなどぞものしたまふ。<BR>⏎
 げにさるべくて、いとこの世の人とはつくり出でざりける、仮に宿れるかとも見ゆること添ひたまへり。顔容貌も、そこはかと、いづこなむすぐれたる、あなきよら、と見ゆるところもなきが、ただいとなまめかしう恥づかしげに、心の奥多かりげなるけはひの、人に似ぬなりけり。<BR>⏎
d1120<P>⏎
text42121 <A NAME="in24">[第四段 匂兵部卿宮、薫中将に競い合う]</A><BR>82 
d1122<P>⏎
cd4:2123-126 かくいとあやしきまで<A HREF="#no6">人のとがむる香</A><A NAME="te6">に</A>しみたまへるを、兵部卿宮なむ、異事よりも挑ましく思して、それはわざとよろづのすぐれたる移しをしめたまひ、朝夕のことわざに合はせいとなみ、御前の前栽にも、春は梅の花園を眺めたまひ、秋は<A HREF="#no7">世の人のめづる女郎花</A><A NAME="te7">、</A><A HREF="#no8">小牡鹿の妻にすめる萩の露</A><A NAME="te8">に</A>も、をさをさ御心移したまはず、<A HREF="#no9">老を忘るる菊</A><A NAME="te9">に</A>、衰へゆく藤袴、ものげなきわれもかうなどは、いとすさまじき霜枯れのころほひまで思し捨てずなど、わざとめきて、香にめづる思ひをなむ、立てて好ましうおはしける。<BR>⏎
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 かかるほどに、すこしなよびやはらぎて、好いたる方に引かれたまへりと、世の人は思ひきこえたり。昔の源氏は、すべてかく立ててそのことと、やう変り、しみたまへる方ぞなかりしかし。<BR>⏎
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83-84 かくいとあやしきまで<A HREF="#no6">人のとがむる香</A><A NAME="te6">に</A>しみたまへるを、兵部卿宮なむ、異事よりも挑ましく思して、それはわざとよろづのすぐれたる移しをしめたまひ、朝夕のことわざに合はせいとなみ、御前の前栽にも、春は梅の花園を眺めたまひ、秋は<A HREF="#no7">世の人のめづる女郎花</A><A NAME="te7">、</A><A HREF="#no8">小牡鹿の妻にすめる萩の露</A><A NAME="te8">に</A>も、をさをさ御心移したまはず、<A HREF="#no9">老を忘るる菊</A><A NAME="te9">に</A>、衰へゆく藤袴、ものげなきわれもかうなどは、いとすさまじき霜枯れのころほひまで思し捨てずなど、わざとめきて、香にめづる思ひをなむ、立てて好ましうおはしける。<BR>⏎
 かかるほどに、すこしなよびやはらぎて、好いたる方に引かれたまへりと、世の人は思ひきこえたり。昔の源氏は、すべてかく立ててそのことと、やう変り、しみたまへる方ぞなかりしかし。<BR>⏎
d1128<P>⏎
cd2:1129-130 「冷泉院の女一の宮をぞ、さやうにても見たてまつらばや。<A HREF="#k04">かひ</A><A NAME="t04">あ</A>りなむかし」と思したるは、母女御もいと重く、心にくくものしたまふあたりにて、姫宮の御けはひ、げにいとありがたくすぐれて、よその聞こえもおはしますに、ましてすこし近くもさぶらひ馴れたる女房などの、くはしき御ありさまの、ことに触れて聞こえ伝ふるなどもあるに、いとど忍びがたく思すべかめり。<BR>⏎
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86 「冷泉院の女一の宮をぞ、さやうにても見たてまつらばや。<A HREF="#k04">かひ</A><A NAME="t04">あ</A>りなむかし」と思したるは、母女御もいと重く、心にくくものしたまふあたりにて、姫宮の御けはひ、げにいとありがたくすぐれて、よその聞こえもおはしますに、ましてすこし近くもさぶらひ馴れたる女房などの、くはしき御ありさまの、ことに触れて聞こえ伝ふるなどもあるに、いとど忍びがたく思すべかめり。<BR>⏎
text42131 <A NAME="in25">[第五段 薫の厭世観と恋愛に消極的な性格]</A><BR>87 
d1132<P>⏎
d1134<P>⏎
cd6:3135-140 十九になりたまふ年、三位の宰相にて、なほ中将も離れず。帝后の御もてなしに、ただ人にては、憚りなきめでたき人のおぼえにてものしたまへど、心のうちには身を思ひ知るかたありて、ものあはれになどもありければ、心にまかせて、はやりかなる好きごと、をさをさ好まず、よろづのこともてしづめつつ、おのづからおよすけたる心ざまを、人にも知られたまへり。<BR>⏎
<P>⏎
 三の宮の、年に添へて心をくだきたまふめる、院の姫宮の御あたりを見るにも、一つ院のうちに、明け暮れ立ち馴れたまへば、ことに触れても、人のありさまを聞き見たてまつるに、「げにいとなべてならず。心にくくゆゑゆゑしき御もてなし<A HREF="#k05">限りなきを</A><A NAME="t05">、</A>同じくは、げにかやうなる人を見むにこそ、生ける限りの心ゆくべきつまなれ」と思ひながら、おほかたこそ隔つることなく思したれ、姫宮の御方ざまの隔ては、こよなく気遠くならはさせたまふも、ことわりにわづらはしければ、あながちにもまじらひ寄らず。「もし心より外の心もつかば、我も人もいと悪しかるべきこと」と思ひ知りて、もの馴れ寄ることもなかりけり。<BR>⏎
<P>⏎
 我が、かく人にめでられむとなりたまへるありさまなれば、はかなくなげの言葉を散らしたまふあたりも、こよなくもて離るる心なく、なびきやすなるほどに、おのづからなほざりの通ひ所もあまたに<A HREF="#k06">なる</A><A NAME="t06">を</A>、人のために、ことことしくなどもてなさず、いとよく紛らはし、そこはかとなく情けなからぬほどの、なかなか心やましきを、思ひ寄れる人は、誘はれつつ、三条の宮に参り集まるはあまたあり。<BR>⏎
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89-91 十九になりたまふ年、三位の宰相にて、なほ中将も離れず。帝后の御もてなしに、ただ人にては、憚りなきめでたき人のおぼえにてものしたまへど、心のうちには身を思ひ知るかたありて、ものあはれになどもありければ、心にまかせて、はやりかなる好きごと、をさをさ好まず、よろづのこともてしづめつつ、おのづからおよすけたる心ざまを、人にも知られたまへり。<BR>⏎
 三の宮の、年に添へて心をくだきたまふめる、院の姫宮の御あたりを見るにも、一つ院のうちに、明け暮れ立ち馴れたまへば、ことに触れても、人のありさまを聞き見たてまつるに、「げにいとなべてならず。心にくくゆゑゆゑしき御もてなし<A HREF="#k05">限りなきを</A><A NAME="t05">、</A>同じくは、げにかやうなる人を見むにこそ、生ける限りの心ゆくべきつまなれ」と思ひながら、おほかたこそ隔つることなく思したれ、姫宮の御方ざまの隔ては、こよなく気遠くならはさせたまふも、ことわりにわづらはしければ、あながちにもまじらひ寄らず。「もし心より外の心もつかば、我も人もいと悪しかるべきこと」と思ひ知りて、もの馴れ寄ることもなかりけり。<BR>⏎
 我が、かく人にめでられむとなりたまへるありさまなれば、はかなくなげの言葉を散らしたまふあたりも、こよなくもて離るる心なく、なびきやすなるほどに、おのづからなほざりの通ひ所もあまたに<A HREF="#k06">なる</A><A NAME="t06">を</A>、人のために、ことことしくなどもてなさず、いとよく紛らはし、そこはかとなく情けなからぬほどの、なかなか心やましきを、思ひ寄れる人は、誘はれつつ、三条の宮に参り集まるはあまたあり。<BR>⏎
d1142<P>⏎
text42143 <A NAME="in26">[第六段 夕霧の六の君の評判]</A><BR>93 
d1144<P>⏎
d1146<P>⏎
d1148<P>⏎
d1150<P>⏎
d1152<P>⏎
text42153 <A NAME="in27">[第七段 六条院の賭弓の還饗]</A><BR>98 
d1154<P>⏎
d1156<P>⏎
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d1160<P>⏎
d1162<P>⏎
cd4:2163-166 とおしとどめさせて、御子の右衛門督、権中納言、右大弁など、さらぬ上達部あまた、これかれに乗りまじり、誘ひ立てて、六条の院へおはす。<BR>⏎
<P>⏎
 道のややほど経るに、雪いささか散りて、艶なるたそかれ時なり。物の音をかしきほどに吹き立て遊びて入りたまふを、「げにここをおきて、いかならむ仏の国にかは、かやうの折節の心やり所を求めむ」と見えたり。<BR>⏎
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103-104 とおしとどめさせて、御子の右衛門督、権中納言、右大弁など、さらぬ上達部あまた、これかれに乗りまじり、誘ひ立てて、六条の院へおはす。<BR>⏎
 道のややほど経るに、雪いささか散りて、艶なるたそかれ時なり。物の音をかしきほどに吹き立て遊びて入りたまふを、「げにここをおきて、いかならむ仏の国にかは、かやうの折節の心やり所を求めむ」と見えたり。<BR>⏎
d1168<P>⏎
d1170<P>⏎
d1172<P>⏎
d2174-175
<P>⏎
text42176 <a name="in31">【出典】<BR>109 
c1177</a><A NAME="no1">出典1</A> 残りなく地散るぞめでたき桜花ありて世の中果ての憂ければ(古今集春下-七一 読人しらず)<A HREF="#te1">(戻)</A><BR>⏎
110<A NAME="no1">出典1</A> 残りなく地散るぞめでたき桜花ありて世の中果ての憂ければ(古今集春下-七一 読人しらず)<A HREF="#te1">(戻)</A><BR>⏎
d1188
text42189<p> <a name="in32">【校訂】<BR>121 
c1191</a><A NAME="k01">校訂1</A> 善巧太子--せんけうた(た/+いし<朱>)けう(けう/$<朱>)<A HREF="#t01">(戻)</A><BR>⏎
123<A NAME="k01">校訂1</A> 善巧太子--せんけうた(た/+いし<朱>)けう(けう/$<朱>)<A HREF="#t01">(戻)</A><BR>⏎
d1198</p>⏎
d1205</p>⏎
i0140
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c18<body background="wallppr063.gif">⏎
8<BODY>⏎
text4310渋谷栄一校訂(C)(ver.1-2-2)</ADDRESS>10 
d111<P>⏎
d113<P>⏎
d115<P>⏎
d141<P>⏎
d157<P>⏎
d160<P>⏎
text4361 <H4>第一章 紅梅大納言家の物語 娘たちの結婚を思案</H4>55 
text4362 <A NAME="in11">[第一段 按察使大納言家の家族]</A><BR>56 
d166<P>⏎
text4367 <A NAME="in12">[第二段 按察使大納言家の三姫君]</A><BR>60 
c168 君たち、同じほどに、すぎすぎおとなびたまひぬれば、御裳など着せたてまつりたまふ。七間の寝殿、広く大きに造りて、南面に大納言殿大君、西に中の君、東に宮の御方と、住ませたてまつりたまへり。<BR>⏎
61 君たち、同じほどに、すぎすぎおとなびたまひぬれば、御裳など着せたてまつりたまふ。七間の寝殿、広く大きに造りて、南面に大納言殿大君、西に中の君、東に宮の御方と、住ませたてまつりたまへり。<BR>⏎
c270-71 例の、かくかしづきたまふ聞こえありて、次々に従ひつつ聞こえたまふ人多く、「内裏、春宮より御けしきあれど、内裏には中宮おはします。いかばかりの人かは、かの御けはひに並びきこえむ。さりとて、思ひ劣り卑下せむもかひなかるべし。春宮には、<A HREF="#k01">右大臣殿の女御</A><A NAME="t01">、</A>並ぶ人なげにてさぶらひたまふは、きしろひにくけれど、さのみ言ひてやは。人にまさらむと思ふ女子を、宮仕へに思ひ絶えては、何の本意かはあらむ」と思したちて、参らせたてまつりたまふ。十七八のほどにて、うつくしう、匂ひ多かる容貌したまへり。<BR>⏎
 中の君も、うちすがひて、あてなまめかしう、澄みたるさまはまさりて、をかしうおはすめれば、ただ人にては、あたらしく見せま憂き御さまを、「兵部卿宮の、さも思したらば」など思したる。この若君を、内裏にてなど見つけたまふ時は、召しまとはし、戯れ敵にしたまふ。心ばへありて、奥<A HREF="#k02">推し量らるる</A><A NAME="t02">ま</A>み額つきなり。<BR>⏎
63-64 例の、かくかしづきたまふ聞こえありて、次々に従ひつつ聞こえたまふ人多く、「内裏、春宮より御けしきあれど、内裏には中宮おはします。いかばかりの人かは、かの御けはひに並びきこえむ。さりとて、思ひ劣り卑下せむもかひなかるべし。春宮には、<A HREF="#k01">右大臣殿の女御</A><A NAME="t01">、</A>並ぶ人なげにてさぶらひたまふは、きしろひにくけれど、さのみ言ひてやは。人にまさらむと思ふ女子を、宮仕へに思ひ絶えては、何の本意かはあらむ」と思したちて、参らせたてまつりたまふ。十七八のほどにて、うつくしう、匂ひ多かる容貌したまへり。<BR>⏎
 中の君も、うちすがひて、あてなまめかしう、澄みたるさまはまさりて、をかしうおはすめれば、ただ人にては、あたらしく見せま憂き御さまを、「兵部卿宮の、さも思したらば」など思したる。この若君を、内裏にてなど見つけたまふ時は、召しまとはし、戯れ敵にしたまふ。心ばへありて、奥<A HREF="#k02">推し量らるる</A><A NAME="t02">ま</A>み額つきなり。<BR>⏎
c174 とのたまひながら、まづ春宮の御ことをいそぎたまひて、「春日の神の御ことわりも、わが世にやもし出で来て、故大臣の、院の女御の御ことを、胸いたく思してやみにし慰めのこともあらなむ」と、心のうちに祈りて、参らせたてまつりたまひつ。いと時めきたまふよし、人びと聞こゆ。<BR>⏎
67 とのたまひながら、まづ春宮の御ことをいそぎたまひて、「春日の神の御ことわりも、わが世にやもし出で来て、故大臣の、院の女御の御ことを、胸いたく思してやみにし慰めのこともあらなむ」と、心のうちに祈りて、参らせたてまつりたまひつ。いと時めきたまふよし、人びと聞こゆ。<BR>⏎
d176<P>⏎
text4377 <A NAME="in13">[第三段 宮の御方の魅力]</A><BR>69 
c279-80 もの恥ぢを世の常ならずしたまひて、母北の方にだに、さやかにはをさをささし向ひたてまつりたまはず、かたはなるまでもてなしたまふものから、心ばへけはひの埋れたるさまならず、愛敬づきたまへること、はた人よりすぐれたまへり。<BR>⏎
 かく内裏参りや何やと、わが方ざまをのみ思ひ急ぐやうなるも、心苦しなど思して、<BR>⏎
71-72 もの恥ぢを世の常ならずしたまひて、母北の方にだに、さやかにはをさをささし向ひたてまつりたまはず、かたはなるまでもてなしたまふものから、心ばへけはひの埋れたるさまならず、愛敬づきたまへること、はた人よりすぐれたまへり。<BR>⏎
 かく内裏参りや何やと、わが方ざまをのみ思ひ急ぐやうなるも、心苦しなど思して、<BR>⏎
c382-84 と母君にも聞こえたまひけれど、<BR>⏎
 「さらにさやうの世づきたるさま、思ひ立つべきにもあらぬけしきなれば、なかなかならむことは、心苦しかるべし。御宿世にまかせて、世にあらむ限りは見たてまつらむ。後ぞあはれにうしろめたけれど、世を背く方にても、おのづから人笑へに、あはつけきこなくて、過ぐしたまはなむ」<BR>⏎
 などうち泣きて、御心ばせの思ふやうなることをぞ聞こえたまふ。<BR>⏎
74-76 と母君にも聞こえたまひけれど、<BR>⏎
 「さらにさやうの世づきたるさま、思ひ立つべきにもあらぬけしきなれば、なかなかならむことは、心苦しかるべし。御宿世にまかせて、世にあらむ限りは見たてまつらむ。後ぞあはれにうしろめたけれど、世を背く方にても、おのづから人笑へに、あはつけきこなくて、過ぐしたまはなむ」<BR>⏎
 などうち泣きて、御心ばせの思ふやうなることをぞ聞こえたまふ。<BR>⏎
d188<P>⏎
text4389 <A NAME="in14">[第四段 按察使大納言の音楽談義]</A><BR>80 
c193 琵琶は、押手しづやかなるをよきにするものなるに、柱さすほど、撥音のさま変はりて、なまめかしう聞こえ<A HREF="#k06">たるなむ</A><A NAME="t06">、</A>女の御ことにて、なかなかをかしかりける。いで遊ばさむや。御琴参れ」<BR>⏎
84 琵琶は、押手しづやかなるをよきにするものなるに、柱さすほど、撥音のさま変はりて、なまめかしう聞こえ<A HREF="#k06">たるなむ</A><A NAME="t06">、</A>女の御ことにて、なかなかをかしかりける。いで遊ばさむや。御琴参れ」<BR>⏎
d195<P>⏎
text4396 <H4>第二章 匂兵部卿の物語 宮の御方に執心</H4>86 
text4397 <A NAME="in21">[第一段 按察使大納言、匂宮に和歌を贈る]</A><BR>87 
c1101 「けしうはあらずなりゆくは、このわたりにて、おのづから物に合はするけなり。なほ掻き合はせさせたまへ」<BR>⏎
91 「けしうはあらずなりゆくは、このわたりにて、おのづから物に合はするけなり。なほ掻き合はせさせたまへ」<BR>⏎
c1103 「御前の花、心ばへありて見ゆめり。兵部卿宮、内裏におはすなり。一枝折りて参れ。<A HREF="#no1">知る人ぞ知る</A><A NAME="te1">」</A>とて、「あはれ光る源氏、といはゆる御盛りの大将などにおはせしころ、童にて、かやうにてまじらひ馴れきこえしこそ、世とともに恋しうはべれ。<BR>⏎
93 「御前の花、心ばへありて見ゆめり。兵部卿宮、内裏におはすなり。一枝折りて参れ。<A HREF="#no1">知る人ぞ知る</A><A NAME="te1">」</A>とて、「あはれ光る源氏、といはゆる御盛りの大将などにおはせしころ、童にて、かやうにてまじらひ馴れきこえしこそ、世とともに恋しうはべれ。<BR>⏎
c1106 など聞こえ出でたまひて、ものあはれにすごく思ひめぐらししをれたまふ。<BR>⏎
96 など聞こえ出でたまひて、ものあはれにすごく思ひめぐらししをれたまふ。<BR>⏎
cd4:2109-112 「心ありて風の匂はす園の梅に<BR>⏎
  まづ<A HREF="#no2">鴬の訪はずや</A><A NAME="te2">あ</A>るべき」<BR>⏎
 と紅の紙に若やぎ書きて、この君の懐紙に取りまぜ、押したたみて出だしたてたまふを、幼き心に、いと馴れきこえまほしと思へば、急ぎ参りたまひぬ。<BR>⏎
<P>⏎
99-100 「心ありて風の匂はす園の梅に<BR>  まづ<A HREF="#no2">鴬の訪はずや</A><A NAME="te2">あ</A>るべき」<BR>⏎
 と紅の紙に若やぎ書きて、この君の懐紙に取りまぜ、押したたみて出だしたてたまふを、幼き心に、いと馴れきこえまほしと思へば、急ぎ参りたまひぬ。<BR>⏎
text43113 <A NAME="in22">[第二段 匂宮、若君と語る]</A><BR>101 
c1117 と幼げなるものから、馴れきこゆ。<BR>⏎
105 と幼げなるものから、馴れきこゆ。<BR>⏎
c2123-124 と聞こえさしてゐたれば、<BR>⏎
 「我をば人げなしと思ひ離れたるとな。ことわりなり。されどやすからずこそ。古めかしき同じ筋にて、東と聞こゆなるは、あひ思ひたまひてむやと、忍びて語らひきこえよ」<BR>⏎
111-112 と聞こえさしてゐたれば、<BR>⏎
 「我をば人げなしと思ひ離れたるとな。ことわりなり。されどやすからずこそ。古めかしき同じ筋にて、東と聞こゆなるは、あひ思ひたまひてむやと、忍びて語らひきこえよ」<BR>⏎
c1127 とてうちも置かず御覧ず。枝のさま、花房、色も香も世の常ならず。<BR>⏎
115 とてうちも置かず御覧ず。枝のさま、花房、色も香も世の常ならず。<BR>⏎
cd2:1129-130 とて御心とどめたまふ花なれば、<A HREF="#k07">かひありて</A><A NAME="t07">、</A>もてはやしたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
117 とて御心とどめたまふ花なれば、<A HREF="#k07">かひありて</A><A NAME="t07">、</A>もてはやしたまふ。<BR>⏎
text43131 <A NAME="in23">[第三段 匂宮、宮の御方を思う]</A><BR>118 
c1133 と召し籠めつれば、春宮にもえ参らず、花も恥づかしく思ひぬべく香ばしくて、気近く臥せたまへるを、若き心地には、たぐひなくうれしくなつかしう思ひきこゆ。<BR>⏎
120 と召し籠めつれば、春宮にもえ参らず、花も恥づかしく思ひぬべく香ばしくて、気近く臥せたまへるを、若き心地には、たぐひなくうれしくなつかしう思ひきこゆ。<BR>⏎
c1136 など語りきこゆ。「大納言の御心ばへは、わが方ざまに思ふべかめれ」と聞き合はせたまへ、思ふ心は<A HREF="#k08">異に</A><A NAME="t08">し</A>みぬれば、この返りこと、けざやかにものたまひやらず。<BR>⏎
123 など語りきこゆ。「大納言の御心ばへは、わが方ざまに思ふべかめれ」と聞き合はせたまへ、思ふ心は<A HREF="#k08">異に</A><A NAME="t08">し</A>みぬれば、この返りこと、けざやかにものたまひやらず。<BR>⏎
cd3:2138-140 「花の香に誘はれぬべき身なりせば<BR>⏎
  風のたよりを過ぐさましやは」<BR>⏎
 さて「なほ今は、翁どもにさかしら<A HREF="#k09">せさせで</A><A NAME="t09">、</A>忍びやかに」と、返す返すのたまひて、この君も、東のをば、やむごとなく睦ましう思ひましたり。<BR>⏎
125-126 「花の香に誘はれぬべき身なりせば<BR>  風のたよりを過ぐさましやは」<BR>⏎
 さて「なほ今は、翁どもにさかしら<A HREF="#k09">せさせで</A><A NAME="t09">、</A>忍びやかに」と、返す返すのたまひて、この君も、東のをば、やむごとなく睦ましう思ひましたり。<BR>⏎
d1142<P>⏎
text43143 <A NAME="in24">[第四段 按察使大納言と匂宮、和歌を贈答]</A><BR>128 
c1144 これは昨日の御返りなれば見せたてまつる。<BR>⏎
129 これは昨日の御返りなれば見せたてまつる。<BR>⏎
cd8:6146-153 などしりうごちて、今日も参らせたまふに、また<BR>⏎
 「本つ香の匂へる君が袖触れば<BR>⏎
  花もえならぬ名をや散らさむ<BR>⏎
 とすきずきしやあなかしこ」<BR>⏎
 とまめやかに聞こえたまへり。まことに言ひなさむと思ふところあるにやと、さすがに御心ときめきしたまひて、<BR>⏎
 「花の香を匂はす宿に訪めゆかば<BR>⏎
  色にめづとや人の咎めむ」<BR>⏎
 などなほ心とけずいらへたまへるを、心やましと思ひゐたまへり。<BR>⏎
131-136 などしりうごちて、今日も参らせたまふに、また<BR>⏎
 「本つ香の匂へる君が袖触れば<BR>  花もえならぬ名をや散らさむ<BR>⏎
 とすきずきしやあなかしこ」<BR>⏎
 とまめやかに聞こえたまへり。まことに言ひなさむと思ふところあるにやと、さすがに御心ときめきしたまひて、<BR>⏎
 「花の香を匂はす宿に訪めゆかば<BR>  色にめづとや人の咎めむ」<BR>⏎
 などなほ心とけずいらへたまへるを、心やましと思ひゐたまへり。<BR>⏎
c1155 「若君の、一夜、宿直して、まかり出でたりし匂ひの、いとをかしかりしを、人はなほと思ひしを、宮の、いと思ほし寄りて、『兵部卿宮に近づききこえにけり。うべ我をばすさめたり』と、けしきとり、怨じたまへりしか。ここに御消息やありし。さも見えざりしを」<BR>⏎
138 「若君の、一夜、宿直して、まかり出でたりし匂ひの、いとをかしかりしを、人はなほと思ひしを、宮の、いと思ほし寄りて、『兵部卿宮に近づききこえにけり。うべ我をばすさめたり』と、けしきとり、怨じたまへりしか。ここに御消息やありし。さも見えざりしを」<BR>⏎
cd2:1160-161 など花によそへても、まづかけきこえたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
143 など花によそへても、まづかけきこえたまふ。<BR>⏎
text43162 <A NAME="in25">[第五段 匂宮、宮の御方に執心]</A><BR>144 
c1164 世の人も、時に寄る心ありてにや、さし向ひたる御方々には、心を尽くし聞こえわび、今めかしきこと多かれど、こなたは、よろづにつけ、ものしめやかに引き入りたまへるを、宮は、御ふさひの方に聞き伝へたまひて、深う、いかでと思ほしなりにけり。<BR>⏎
146 世の人も、時に寄る心ありてにや、さし向ひたる御方々には、心を尽くし聞こえわび、今めかしきこと多かれど、こなたは、よろづにつけ、ものしめやかに引き入りたまへるを、宮は、御ふさひの方に聞き伝へたまひて、深う、いかでと思ほしなりにけり。<BR>⏎
cd4:2167-170 と北の方も思しのたまふ。<BR>⏎
 はかなき御返りなどもなければ、負けじの御心添ひて、思ほしやむべくもあらず。「何かは人の御ありさまなどかは、さても見たてまつらまほしう、生ひ先遠くなどは<A HREF="#k10">見えさせ</A><A NAME="t10">た</A>まふに」など、北の方思ほし寄る時々あれど、いといたう色めきたまひて、通ひたまふ忍び所多く、八の宮の姫君にも、御心ざしの浅からで、いとしげうまうでありきたまふ。頼もしげなき御心の、あだあだしさなども、いとどつつましければ、まめやかには思ほし絶えたるを、かたじけなきばかりに、忍びて、母君ぞ、たまさかにさかしらがり聞こえたまふ。<BR>⏎

<P>⏎
149-150 と北の方も思しのたまふ。<BR>⏎
 はかなき御返りなどもなければ、負けじの御心添ひて、思ほしやむべくもあらず。「何かは人の御ありさまなどかは、さても見たてまつらまほしう、生ひ先遠くなどは<A HREF="#k10">見えさせ</A><A NAME="t10">た</A>まふに」など、北の方思ほし寄る時々あれど、いといたう色めきたまひて、通ひたまふ忍び所多く、八の宮の姫君にも、御心ざしの浅からで、いとしげうまうでありきたまふ。頼もしげなき御心の、あだあだしさなども、いとどつつましければ、まめやかには思ほし絶えたるを、かたじけなきばかりに、忍びて、母君ぞ、たまさかにさかしらがり聞こえたまふ。<BR>⏎
text43171 <a name="in31">【出典】<BR>151 
c1172</a><A NAME="no1">出典1</A> 君ならで誰にか見せむ梅の花色をも香をも知る人ぞ知る(古今集春上-三八 紀友則)<A HREF="#te1">(戻)</A><BR>⏎
152<A NAME="no1">出典1</A> 君ならで誰にか見せむ梅の花色をも香をも知る人ぞ知る(古今集春上-三八 紀友則)<A HREF="#te1">(戻)</A><BR>⏎
d1176
text43177<p> <a name="in32">【校訂】<BR>156 
c1179</a><A NAME="k01">校訂1</A> 右大臣殿の女御--*右大(大/+臣<朱>)の<A HREF="#t01">(戻)</A><BR>⏎
158<A NAME="k01">校訂1</A> 右大臣殿の女御--*右大(大/+臣<朱>)の<A HREF="#t01">(戻)</A><BR>⏎
d1189</p>⏎
d1196</p>⏎
i0178
diffsrc/original/text44.htmlsrc/modified/text44.html
cd2:18-9<body background="wallppr063.gif">⏎
First updated 9/20/1996(ver.1-1)<BR>⏎
8<BODY>⏎
cd3:210-12Last updated 11/9/2010(ver.2-2)<BR>⏎
渋谷栄一校訂(C)<BR>⏎
<P
>⏎
9-10<ADDRESS>Last updated 11/9/2010(ver.2-2)<BR>⏎
渋谷栄一校訂(C)</ADDRESS>⏎
d114<P>⏎
d116<P>⏎
d150<P>⏎
d196<P>⏎
d199<P>⏎
text44100 <H4>第一章 鬚黒一族の物語 玉鬘と姫君たち</H4>93 
text44101 <A NAME="in11">[第一段 鬚黒没後の玉鬘と子女たち]</A><BR>94 
d1102<P>⏎
cd2:1103-104 これは源氏の御族にも離れたまへりし、後の大殿わたりにありける悪御達の、落ちとまり残れるが、問はず語りしおきたるは、紫の<A HREF="#k01">ゆかりにも似ざめれど</A><A NAME="t01">、</A>かの女どもの言ひけるは、「源氏の御末々に、ひがことどもの混じりて聞こゆるは、我よりも年の数積もり、ほけたりける人のひがことにや」などあやしがりけるいづれかはまことならむ。<BR>⏎
<P>⏎
95 これは源氏の御族にも離れたまへりし、後の大殿わたりにありける悪御達の、落ちとまり残れるが、問はず語りしおきたるは、紫の<A HREF="#k01">ゆかりにも似ざめれど</A><A NAME="t01">、</A>かの女どもの言ひけるは、「源氏の御末々に、ひがことどもの混じりて聞こゆるは、我よりも年の数積もり、ほけたりける人のひがことにや」などあやしがりける. いづれかはまことならむ。<BR>⏎
d1106<P>⏎
d1108<P>⏎
d1110<P>⏎
cd2:1111-112 六条院には、すべてなほ昔に変らず数まへきこえたまひて、亡せたまひなむ後のことども書きおきたまへる御処分の文どもにも、中宮の御次に加へたてまつりたまへれば、右の大殿などは、なかなかその心ありて、さるべき折々訪れきこえたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
99 六条院には、すべてなほ昔に変らず数まへきこえたまひて、亡せたまひなむ後のことども書きおきたまへる御処分の文どもにも、中宮の御次に加へたてまつりたまへれば、右の大殿などは、なかなかその心ありて、さるべき折々訪れきこえたまふ。<BR>⏎
text44113 <A NAME="in12">[第二段 玉鬘の姫君たちへの縁談]</A><BR>100 
d1114<P>⏎
d1116<P>⏎
cd4:2117-120 内裏にも、かならず宮仕への本意深きよしを、大臣の奏しおきたまひければ、おとなびたまひぬらむ年月を推し量らせたまひて、仰せ言絶えずあれど、中宮の、いよいよ並びなくのみなりまさりたまふ御けはひにおされて、皆人無徳にものしたまふめる末に参りて、<A HREF="#no1">遥かに目を側められ</A><A NAME="te1">た</A>てまつらむもわづらはしく、また人に劣り、数ならぬさまにて見む、はた心尽くしなるべきを思ほしたゆたふ。<BR>⏎
<P>⏎
 冷泉院よりは、いとねむごろに思しのたまはせて、尚侍の君の、昔本意なくて過ぐしたまうし辛さをさへ、とり返し恨みきこえたまうて、<BR>⏎
<P>⏎
102-103 内裏にも、かならず宮仕への本意深きよしを、大臣の奏しおきたまひければ、おとなびたまひぬらむ年月を推し量らせたまひて、仰せ言絶えずあれど、中宮の、いよいよ並びなくのみなりまさりたまふ御けはひにおされて、皆人無徳にものしたまふめる末に参りて、<A HREF="#no1">遥かに目を側められ</A><A NAME="te1">た</A>てまつらむもわづらはしく、また人に劣り、数ならぬさまにて見む、はた心尽くしなるべきを思ほしたゆたふ。<BR>⏎
 冷泉院よりは、いとねむごろに思しのたまはせて、尚侍の君の、昔本意なくて過ぐしたまうし辛さをさへ、とり返し恨みきこえたまうて、<BR>⏎
d1122<P>⏎
cd2:1123-124 といとまめやかに聞こえたまひければ、「いかがはあるべきことならむ。みづからのいと口惜しき宿世にて、思ひの外に心づきなしと思されにしが、恥づかしうかたじけなきを、この世の末にや御覧じ直されまし」など定めかねたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
105 といとまめやかに聞こえたまひければ、「いかがはあるべきことならむ。みづからのいと口惜しき宿世にて、思ひの外に心づきなしと思されにしが、恥づかしうかたじけなきを、この世の末にや御覧じ直されまし」など定めかねたまふ。<BR>⏎
text44125 <A NAME="in13">[第三段 夕霧の息子蔵人少将の求婚]</A><BR>106 
d1126<P>⏎
d1128<P>⏎
d1130<P>⏎
d1132<P>⏎
cd2:1133-134 姫君をば、さらにただのさまにも思しおきてたまはず、中の君をなむ、今すこし世の聞こえ軽々しからぬほどになずらひならば、さもやと思しける。許したまはずは、盗みも取りつべく、むくつけきまで思へり。こよなきこととは思さねど、女方の心許したまはぬことの紛れあるは、音聞きもあはつけきわざなれば、聞こえつぐ人をも、「あなかしこ過ち引き出づな」などのたまふに、朽たされてなむ、わづらはしがりける。<BR>⏎
<P>⏎
110 姫君をば、さらにただのさまにも思しおきてたまはず、中の君をなむ、今すこし世の聞こえ軽々しからぬほどになずらひならば、さもやと思しける。許したまはずは、盗みも取りつべく、むくつけきまで思へり。こよなきこととは思さねど、女方の心許したまはぬことの紛れあるは、音聞きもあはつけきわざなれば、聞こえつぐ人をも、「あなかしこ. 過ち引き出づな」などのたまふに、朽たされてなむ、わづらはしがりける。<BR>⏎
text44135 <A NAME="in14">[第四段 薫君、玉鬘邸に出入りす]</A><BR>111 
d1136<P>⏎
cd2:1137-138 六条院の御末に、朱雀院の宮の御腹に生まれたまへりし君、冷泉院に、御子のやうに思しかしづく四位侍従、そのころ十四五ばかりにて、いときびはに幼かるべきほどよりは、心おきておとなおとなしく、めやすく、人にまさりたる生ひ先しるくものしたまふを、尚侍の君は、婿にても見まほしく思したり。<BR>⏎
<P>⏎
112 六条院の御末に、朱雀院の宮の御腹に生まれたまへりし君、冷泉院に、御子のやうに思しかしづく四位侍従、そのころ十四五ばかりにて、いときびはに幼かるべきほどよりは、心おきておとなおとなしく、めやすく、人にまさりたる生ひ先しるくものしたまふを、尚侍の君は、婿にても見まほしく思したり。<BR>⏎
d1140<P>⏎
d1142<P>⏎
d1144<P>⏎
d1146<P>⏎
text44147 <H4>第二章 玉鬘邸の物語 梅と桜の季節の物語</H4>117 
text44148 <A NAME="in21">[第一段 正月、夕霧、玉鬘邸に年賀に参上]</A><BR>118 
d1149<P>⏎
d1151<P>⏎
cd2:1152-153 君たちも、さまざまいときよげにて、年のほどよりは、官位過ぎつつ、何ごと思ふらむと見えたるべし。世とともに蔵人の君は、かしづかれたるさま異なれど、うちしめりて思ふことあり顔なり。<BR>⏎
<P>⏎
120 君たちも、さまざまいときよげにて、年のほどよりは、官位過ぎつつ、何ごと思ふらむと見えたるべし。世とともに蔵人の君は、かしづかれたるさま異なれど、うちしめりて思ふことあり顔なり。<BR>⏎
d1155<P>⏎
d1158<P>⏎
cd2:1159-160 「今は、かく世に経る数にもあらぬやうになりゆくありさまを、思し数まふるになむ、過ぎにし御ことも、いとど忘れがたく思うたまへられける」<BR>⏎
<P>⏎
124 「今は、かく世に経る数にもあらぬやうになりゆくありさまを、思し数まふるになむ、過ぎにし御ことも、いとど忘れがたく思うたまへられける」<BR>⏎
d1162<P>⏎
d1164<P>⏎
d1166<P>⏎
cd2:1167-168 「内裏に仰せらるることあるやうに承りしを、いづ方に思ほし定むべきことにか。院は、げに御位を去らせたまへるにこそ、盛り過ぎたる心地すれど、世にありがたき御ありさまは、古りがたくのみおはしますめるを、よろしう生ひ出づる女子はべら<A HREF="#k03">ましかばと</A><A NAME="t03">、</A>思ひたまへよりながら、恥づかしげなる御中に交じらふべき物のはべらでなむ、口惜しう思ひたまへらるる。<BR>⏎
<P>⏎
128 「内裏に仰せらるることあるやうに承りしを、いづ方に思ほし定むべきことにか。院は、げに御位を去らせたまへるにこそ、盛り過ぎたる心地すれど、世にありがたき御ありさまは、古りがたくのみおはしますめるを、よろしう生ひ出づる女子はべら<A HREF="#k03">ましかばと</A><A NAME="t03">、</A>思ひたまへよりながら、恥づかしげなる御中に交じらふべき物のはべらでなむ、口惜しう思ひたまへらるる。<BR>⏎
d1170<P>⏎
d1172<P>⏎
d1174<P>⏎
d1176<P>⏎
d1178<P>⏎
text44179 <A NAME="in22">[第二段 薫君、玉鬘邸に年賀に参上]</A><BR>134 
d1180<P>⏎
cd2:1181-182 夕つけて、四位侍従参りたまへり。そこらおとなしき若君達も、あまたさまざまに、いづれかは悪ろびたりつる。皆めやすかりつる中に、立ち後れてこの君の立ち出でたまへる、いとこよなく目とまる心地して、例の、ものめでする若き人たちは、「なほことなりけり」など言ふ。<BR>⏎
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135 夕つけて、四位侍従参りたまへり。そこらおとなしき若君達も、あまたさまざまに、いづれかは悪ろびたりつる。皆めやすかりつる中に、立ち後れてこの君の立ち出でたまへる、いとこよなく目とまる心地して、例の、ものめでする若き人たちは、「なほことなりけり」など言ふ。<BR>⏎
d1184<P>⏎
cd2:1185-186 と聞きにくく言ふ。げにいと若うなまめかしきさまして、うちふるまひたまへる<A HREF="#k04">匂ひ香</A><A NAME="t04">な</A>ど、世の常ならず。「姫君と聞こゆれど、心おはせむ人は、げに人よりはまさるなめりと、見知りたまふらむかし」とぞおぼゆる。<BR>⏎
<P>⏎
137 と聞きにくく言ふ。げにいと若うなまめかしきさまして、うちふるまひたまへる<A HREF="#k04">匂ひ香</A><A NAME="t04">な</A>ど、世の常ならず。「姫君と聞こゆれど、心おはせむ人は、げに人よりはまさるなめりと、見知りたまふらむかし」とぞおぼゆる。<BR>⏎
d1188<P>⏎
cd3:1189-191 「折りて見ばいとど匂ひもまさるやと<BR>⏎
  すこし色めけ梅の初花」<BR>⏎
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139 「折りて見ばいとど匂ひもまさるやと<BR>  すこし色めけ梅の初花」<BR>⏎
d1193<P>⏎
cd3:1194-196 「よそにてはもぎ木なりとや定むらむ<BR>⏎
  下に匂へる梅の初花<BR>⏎
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141 「よそにてはもぎ木なりとや定むらむ<BR>  下に匂へる梅の初花<BR>⏎
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d1206<P>⏎
cd4:2207-210 「大臣は、ねびまさりたまふままに、故院にいとようこそおぼえたてまつりたまへれ。この君は、似たまへるところも見えたまはぬを、けはひのいとしめやかに、なまめいたるもてなししもぞ、かの御若盛り思ひやらるる。かうざまにぞおはしけむかし」<BR>⏎
<P>⏎
 など思ひ出でられたまひて、うちしほれたまふ。名残さへとまりたる香うばしさを、人びとはめでくつがへる。<BR>⏎
<P>⏎
147-148 「大臣は、ねびまさりたまふままに、故院にいとようこそおぼえたてまつりたまへれ。この君は、似たまへるところも見えたまはぬを、けはひのいとしめやかに、なまめいたるもてなししもぞ、かの御若盛り思ひやらるる。かうざまにぞおはしけむかし」<BR>⏎
 など思ひ出でられたまひて、うちしほれたまふ。名残さへとまりたる香うばしさを、人びとはめでくつがへる。<BR>⏎
text44211 <A NAME="in23">[第三段 梅の花盛りに、薫君、玉鬘邸を訪問]</A><BR>149 
d1212<P>⏎
d1214<P>⏎
d1216<P>⏎
d1218<P>⏎
cd4:2219-222 「いざしるべしたまへ。まろはいとたどたどし」<BR>⏎
<P>⏎
 とてひき連れて、西の渡殿の前なる紅梅の木のもとに、「<A HREF="#no3">梅が枝</A><A NAME="te3">」</A>をうそぶきて立ち寄るけはひの、花よりもしるく、さとうち匂へれば、妻戸おし開けて、人びと、東琴をいとよく掻き合はせたり。女の琴にて、呂の歌は、かうしも合はせぬを、いたしと思ひて、今一返り、をり返し歌ふ、琵琶も二なく今めかし。<BR>⏎
<P>⏎
153-154 「いざしるべしたまへ。まろはいとたどたどし」<BR>⏎
 とてひき連れて、西の渡殿の前なる紅梅の木のもとに、「<A HREF="#no3">梅が枝</A><A NAME="te3">」</A>をうそぶきて立ち寄るけはひの、花よりもしるく、さとうち匂へれば、妻戸おし開けて、人びと、東琴をいとよく掻き合はせたり。女の琴にて、呂の歌は、かうしも合はせぬを、いたしと思ひて、今一返り、をり返し歌ふ、琵琶も二なく今めかし。<BR>⏎
d1224<P>⏎
d1226<P>⏎
d1228<P>⏎
cd2:1229-230 とのたまひ出だしたれば、「あまえて爪くふべきことにもあらぬを」と思ひて、をさをさ心にも入らず掻きわたしたまへるけしき、いと響き多く聞こゆ。<BR>⏎
<P>⏎
158 とのたまひ出だしたれば、「あまえて爪くふべきことにもあらぬを」と思ひて、をさをさ心にも入らず掻きわたしたまへるけしき、いと響き多く聞こゆ。<BR>⏎
d1232<P>⏎
cd2:1233-234 おほかたこの君は、あやしう故大納言の御ありさまに、いとようおぼえ、琴の音など、ただそれとこそおぼえつれ」<BR>⏎
<P>⏎
160 おほかたこの君は、あやしう故大納言の御ありさまに、いとようおぼえ、琴の音など、ただそれとこそおぼえつれ」<BR>⏎
d1236<P>⏎
text44237 <A NAME="in24">[第四段 得意の薫君と嘆きの蔵人少将]</A><BR>162 
d1238<P>⏎
d1240<P>⏎
d1242<P>⏎
cd7:3243-249 ととみにうけひかず。小袿重なりたる細長の、人香なつかしう染みたるを、取りあへたるままに、被けたまふ。「何ぞもぞ」などさうどきて、侍従は、主人の君にうち被けて去ぬ。引きとどめて被くれど、「水駅にて夜更けにけり」とて、逃げにけり。<BR>⏎
<P>⏎
 少将は、「この源侍従の君のかうほのめき寄るめれば、皆人これにこそ心寄せたまふらめ。わが身はいとど屈じいたく思ひ弱りて」、あぢきなうぞ恨むる。<BR>⏎
<P>⏎
 「人はみな花に心を移すらむ<BR>⏎
  一人ぞ惑ふ<A HREF="#no7">春の夜の闇</A><A NAME="te7">」</A><BR>⏎
<P>⏎
165-167 ととみにうけひかず。小袿重なりたる細長の、人香なつかしう染みたるを、取りあへたるままに、被けたまふ。「何ぞもぞ」などさうどきて、侍従は、主人の君にうち被けて去ぬ。引きとどめて被くれど、「水駅にて夜更けにけり」とて、逃げにけり。<BR>⏎
 少将は、「この源侍従の君のかうほのめき寄るめれば、皆人これにこそ心寄せたまふらめ。わが身はいとど屈じいたく思ひ弱りて」、あぢきなうぞ恨むる。<BR>⏎
 「人はみな花に心を移すらむ<BR>  一人ぞ惑ふ<A HREF="#no7">春の夜の闇</A><A NAME="te7">」</A><BR>⏎
d1251<P>⏎
cd3:1252-254 「をりからやあはれも知らむ梅の花<BR>⏎
  ただ香ばかりに移りしもせじ」<BR>⏎
<P>⏎
169 「をりからやあはれも知らむ梅の花<BR>  ただ香ばかりに移りしもせじ」<BR>⏎
d1256<P>⏎
d1258<P>⏎
cd5:2259-263 と見たまへとおぼしう、仮名がちに書きて、<BR>⏎
<P>⏎
 「竹河の橋うちいでし一節に<BR>⏎
  深き心の底は知りきや」<BR>⏎
<P>⏎
172-173 と見たまへとおぼしう、仮名がちに書きて、<BR>⏎
 「竹河の橋うちいでし一節に<BR>  深き心の底は知りきや」<BR>⏎
d1265<P>⏎
d1267<P>⏎
cd2:1268-269 とて尚侍の君は、この君たちの、手など悪しきことを恥づかしめたまふ。返りこと、げにいと若く、<BR>⏎
<P>⏎
176 とて尚侍の君は、この君たちの、手など悪しきことを恥づかしめたまふ。返りこと、げにいと若く、<BR>⏎
d1271<P>⏎
cd5:2272-276  竹河に夜を更かさじといそぎしも<BR>⏎
  いかなる節を思ひおかまし」<BR>⏎
<P>⏎
 げにこの節をはじめにて、この君の御曹司におはして、<A HREF="#k05">けしきばみ</A><A NAME="t05">寄</A>る。少将の推し量りしもしるく、皆人心寄せたり。侍従の君も、若き心地に、近きゆかりにて、明け暮れ睦びまほしう思ひけり。<BR>⏎
<P>⏎
178-179  竹河に夜を更かさじといそぎしも<BR>  いかなる節を思ひおかまし」<BR>⏎
 げにこの節をはじめにて、この君の御曹司におはして、<A HREF="#k05">けしきばみ</A><A NAME="t05">寄</A>る。少将の推し量りしもしるく、皆人心寄せたり。侍従の君も、若き心地に、近きゆかりにて、明け暮れ睦びまほしう思ひけり。<BR>⏎
text44277 <A NAME="in25">[第五段 三月、花盛りの玉鬘邸の姫君たち]</A><BR>180 
d1278<P>⏎
d1280<P>⏎
cd2:1281-282 そのころ、十八九のほどやおはしけむ、御容貌も心ばへも、とりどりにぞをかしき。姫君は、いとあざやかに気高う、今めかしきさましたまひて、げにただ人にて見たてまつらむは、似げなうぞ見えたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
182 そのころ、十八九のほどやおはしけむ、御容貌も心ばへも、とりどりにぞをかしき。姫君は、いとあざやかに気高う、今めかしきさましたまひて、げにただ人にて見たてまつらむは、似げなうぞ見えたまふ。<BR>⏎
d1284<P>⏎
d1286<P>⏎
d1288<P>⏎
d1290<P>⏎
cd2:1291-292 とておとなおとなしきさましてついゐたまへば、御前なる人びと、とかうゐなほる。中将、<BR>⏎
<P>⏎
187 とておとなおとなしきさましてついゐたまへば、御前なる人びと、とかうゐなほる。中将、<BR>⏎
d1294<P>⏎
d1296<P>⏎
cd2:1297-298 「弁官は、まいて私の宮仕へおこたりぬべきままに、さのみやは思し捨てむ」<BR>⏎
<P>⏎
190 「弁官は、まいて私の宮仕へおこたりぬべきままに、さのみやは思し捨てむ」<BR>⏎
d1300<P>⏎
d1302<P>⏎
cd2:1303-304 など涙ぐみて見たてまつりたまふ。二十七八のほどにものしたまへば、いとよくととのひて、この御ありさまどもを、「いかでいにしへ思しおきてしに、違へずもがな」と思ひゐたまへり。<BR>⏎
<P>⏎
193 など涙ぐみて見たてまつりたまふ。二十七八のほどにものしたまへば、いとよくととのひて、この御ありさまどもを、「いかでいにしへ思しおきてしに、違へずもがな」と思ひゐたまへり。<BR>⏎
d1306<P>⏎
cd4:2307-310 「幼く<A HREF="#k08">おはしましし</A><A NAME="t08">時</A>、この花は、わがぞわがぞと、争ひたまひしを、故殿は、姫君の御花ぞと定めたまふ。上は若君の御木と定めたまひしを、いとさは泣きののしらねど、やすからず思ひたまへられしはや」とて、「この桜の老木になりにけるにつけても、過ぎにける齢を思ひたまへ出づれば、あまたの人に後れはべりにける身の愁へも、止めがたうこそ」<BR>⏎
<P>⏎
 など泣きみ笑ひみ聞こえたまひて、例よりはのどやかにおはす。人の婿になりて、心静かにも今は見えたまはぬを、花に心とどめてものしたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
195-196 「幼く<A HREF="#k08">おはしましし</A><A NAME="t08">時</A>、この花は、わがぞわがぞと、争ひたまひしを、故殿は、姫君の御花ぞと定めたまふ。上は若君の御木と定めたまひしを、いとさは泣きののしらねど、やすからず思ひたまへられしはや」とて、「この桜の老木になりにけるにつけても、過ぎにける齢を思ひたまへ出づれば、あまたの人に後れはべりにける身の愁へも、止めがたうこそ」<BR>⏎
 など泣きみ笑ひみ聞こえたまひて、例よりはのどやかにおはす。人の婿になりて、心静かにも今は見えたまはぬを、花に心とどめてものしたまふ。<BR>⏎
text44311 <A NAME="in26">[第六段 玉鬘の大君、冷泉院に参院の話]</A><BR>197 
d1312<P>⏎
d1314<P>⏎
cd2:1315-316 「なほものの栄なき心地こそすべけれ。よろづのこと、時につけたるをこそ、世人も許すめれ。げにいと見たてまつらまほしき御ありさまは、この世にたぐひなくおはしますめれど、盛りならぬ心地ぞするや。琴笛の調べ、<A HREF="#no10">花鳥の色をも音をも</A><A NAME="te10">、</A>時に従ひてこそ、人の耳もとまるものなれ。春宮は、いかが」<BR>⏎
<P>⏎
199 「なほものの栄なき心地こそすべけれ。よろづのこと、時につけたるをこそ、世人も許すめれ。げにいと見たてまつらまほしき御ありさまは、この世にたぐひなくおはしますめれど、盛りならぬ心地ぞするや。琴笛の調べ、<A HREF="#no10">花鳥の色をも音をも</A><A NAME="te10">、</A>時に従ひてこそ、人の耳もとまるものなれ。春宮は、いかが」<BR>⏎
d1318<P>⏎
cd2:1319-320 「いさやはじめよりやむごとなき人の、かたはらもなきやうにてのみ、ものしたまふめればこそ。なかなかにて交じらはむは、胸いたく人笑へなることもやあらむと、つつましければ。殿おはせましかば、行く末の御宿世宿世は知らず、ただ今は、かひあるさまにもてなしたまひてましを」<BR>⏎
<P>⏎
201 「いさやはじめよりやむごとなき人の、かたはらもなきやうにてのみ、ものしたまふめればこそ。なかなかにて交じらはむは、胸いたく人笑へなることもやあらむと、つつましければ。殿おはせましかば、行く末の御宿世宿世は知らず、ただ今は、かひあるさまにもてなしたまひてましを」<BR>⏎
d1322<P>⏎
text44323 <A NAME="in27">[第七段 蔵人少将、姫君たちを垣間見る]</A><BR>203 
d1324<P>⏎
d1326<P>⏎
d1328<P>⏎
cd4:2329-332 と戯れ交はし聞こえたまふ。暗うなれば、端近うて打ち果てたまふ。御簾巻き上げて、人びと皆挑み念じきこゆ。折しも例の少将、侍従の君の御曹司に来たりけるを、うち連れて出でたまひにければ、おほかた人少ななるに、廊の戸の開きたるに、やをら寄りてのぞきけり。<BR>⏎
<P>⏎
 かううれしき折を見つけたるは、仏などの現れたまへらむに参りあひたらむ心地するも、はかなき心になむ。夕暮の霞の紛れは、さやかならねど、つくづくと見れば、桜色のあやめも、それと見分きつ。げに<A HREF="#no11">散りなむ後の形見</A><A NAME="te11">に</A>も見まほしく、匂ひ多く見えたまふを、いとど異ざまになりたまひなむこと、わびしく思ひまさらる。若き人びとのうちとけたる姿ども、夕映えをかしう見ゆ。右勝たせたまひぬ。「高麗の乱声、おそしや」など、はやりかに言ふもあり。<BR>⏎
<P>⏎
206-207 と戯れ交はし聞こえたまふ。暗うなれば、端近うて打ち果てたまふ。御簾巻き上げて、人びと皆挑み念じきこゆ。折しも例の少将、侍従の君の御曹司に来たりけるを、うち連れて出でたまひにければ、おほかた人少ななるに、廊の戸の開きたるに、やをら寄りてのぞきけり。<BR>⏎
 かううれしき折を見つけたるは、仏などの現れたまへらむに参りあひたらむ心地するも、はかなき心になむ。夕暮の霞の紛れは、さやかならねど、つくづくと見れば、桜色のあやめも、それと見分きつ。げに<A HREF="#no11">散りなむ後の形見</A><A NAME="te11">に</A>も見まほしく、匂ひ多く見えたまふを、いとど異ざまになりたまひなむこと、わびしく思ひまさらる。若き人びとのうちとけたる姿ども、夕映えをかしう見ゆ。右勝たせたまひぬ。「高麗の乱声、おそしや」など、はやりかに言ふもあり。<BR>⏎
d1334<P>⏎
cd2:1335-336 と右方は心地よげにはげましきこゆ。何ごとと知らねど、をかしと聞きて、さしいらへもせまほしけれど、「うちとけたまへる折、心地なくやは」と思ひて、出でて去ぬ。「またかかる紛れもや」と、蔭に添ひてぞ、うかがひありきける。<BR>⏎
<P>⏎
209 と右方は心地よげにはげましきこゆ。何ごとと知らねど、をかしと聞きて、さしいらへもせまほしけれど、「うちとけたまへる折、心地なくやは」と思ひて、出でて去ぬ。「またかかる紛れもや」と、蔭に添ひてぞ、うかがひありきける。<BR>⏎
text44337 <A NAME="in28">[第八段 姫君たち、桜花を惜しむ和歌を詠む]</A><BR>210 
d1338<P>⏎
d1340<P>⏎
cd3:1341-343 「桜ゆゑ風に心の騒ぐかな<BR>⏎
  思ひぐまなき花と見る見る」<BR>⏎
<P>⏎
212 「桜ゆゑ風に心の騒ぐかな<BR>  思ひぐまなき花と見る見る」<BR>⏎
d1345<P>⏎
cd3:1346-348 「咲くと見てかつは散りぬる花なれば<BR>⏎
  負くるを深き恨みともせず」<BR>⏎
<P>⏎
214 「咲くと見てかつは散りぬる花なれば<BR>  負くるを深き恨みともせず」<BR>⏎
d1350<P>⏎
cd3:1351-353 「風に散ることは世の常枝ながら<BR>⏎
  移ろふ花をただにしも見じ」<BR>⏎
<P>⏎
216 「風に散ることは世の常枝ながら<BR>  移ろふ花をただにしも見じ」<BR>⏎
d1355<P>⏎
cd3:1356-358 「心ありて池のみぎはに<A HREF="#no12">落つる花<BR>⏎
  あわ</A><A NAME="te12">と</A>なりてもわが方に寄れ」<BR>⏎
<P>⏎
218 「心ありて池のみぎはに<A HREF="#no12">落つる花<BR>  あわ</A><A NAME="te12">と</A>なりてもわが方に寄れ」<BR>⏎
d1360<P>⏎
cd3:1361-363 「大空の風に散れども桜花<BR>⏎
  おのがものとぞかきつめて見る」<BR>⏎
<P>⏎
220 「大空の風に散れども桜花<BR>  おのがものとぞかきつめて見る」<BR>⏎
d1365<P>⏎
cd3:1366-368 「桜花匂ひあまたに散らさじと<BR>⏎
  <A HREF="#no13">おほふばかりの袖</A><A NAME="te13">は</A>ありやは<BR>⏎
<P>⏎
222 「桜花匂ひあまたに散らさじと<BR>  <A HREF="#no13">おほふばかりの袖</A><A NAME="te13">は</A>ありやは<BR>⏎
d1370<P>⏎
text44371 <H4>第三章 玉鬘の大君の物語 冷泉院に参院</H4>224 
text44372 <A NAME="in31">[第一段 大君、冷泉院に参院決定]</A><BR>225 
d1373<P>⏎
d1375<P>⏎
d1377<P>⏎
cd2:1378-379 などいとまめやかに聞こえたまふ。「さるべきにこそはおはすらめ。いとかうあやにくにのたまふもかたじけなし」など思したり。<BR>⏎
<P>⏎
228 などいとまめやかに聞こえたまふ。「さるべきにこそはおはすらめ。いとかうあやにくにのたまふもかたじけなし」など思したり。<BR>⏎
d1381<P>⏎
d1383<P>⏎
cd2:1384-385 などいとほしげに聞こえたまふを、「苦しうもあるかな」と、うち嘆きたまひて、<BR>⏎
<P>⏎
231 などいとほしげに聞こえたまふを、「苦しうもあるかな」と、うち嘆きたまひて、<BR>⏎
d1387<P>⏎
cd2:1388-389 など申したまふも、この御参り過ぐして、中の君をと思すなるべし。「さし合はせては、うたてしたり顔ならむ。まだ位などもあさへたるほどを」など思すに、男は、さらにしか思ひ移るべくもあらず、ほのかに見たてまつりてのちは、面影に恋しう、いかならむ折にとのみおぼゆるに、かう頼みかからずなりぬるを、思ひ嘆きたまふこと限りなし。<BR>⏎
<P>⏎
233 など申したまふも、この御参り過ぐして、中の君をと思すなるべし。「さし合はせては、うたてしたり顔ならむ。まだ位などもあさへたるほどを」など思すに、男は、さらにしか思ひ移るべくもあらず、ほのかに見たてまつりてのちは、面影に恋しう、いかならむ折にとのみおぼゆるに、かう頼みかからずなりぬるを、思ひ嘆きたまふこと限りなし。<BR>⏎
text44390 <A NAME="in32">[第二段 蔵人少将、藤侍従を訪問]</A><BR>234 
d1391<P>⏎
d1393<P>⏎
cd5:2394-398 「つれなくて過ぐる月日をかぞへつつ<BR>⏎
  もの恨めしき暮の春かな」<BR>⏎
<P>⏎
 「人はかうこそ、のどやかにさまよくねたげなめれ、わがいと人笑はれなる心焦られを、かたへは目馴れて、あなづりそめられにたる」など思ふも、胸痛ければ、ことにものも言はれで、例語らふ中将の御許の曹司の方に行くも、例の、かひあらじかしと、嘆きがちなり。<BR>⏎
<P>⏎
236-237 「つれなくて過ぐる月日をかぞへつつ<BR>  もの恨めしき暮の春かな」<BR>⏎
 「人はかうこそ、のどやかにさまよくねたげなめれ、わがいと人笑はれなる心焦られを、かたへは目馴れて、あなづりそめられにたる」など思ふも、胸痛ければ、ことにものも言はれで、例語らふ中将の御許の曹司の方に行くも、例の、かひあらじかしと、嘆きがちなり。<BR>⏎
d1400<P>⏎
d1402<P>⏎
cd4:2403-406 「さばかりの夢をだに、また見てしがな。あはれ何を頼みにて生きたらむ。かう聞こゆることも、残り少なうおぼゆれば、<A HREF="#no15">つらきもあはれ</A><A NAME="te15">、</A>といふことこそ、まことなりけれ」<BR>⏎
<P>⏎
 といとまめだちて言ふ。「あはれと、言ひやるべき方なきことなり。かの慰めたまふらむ御さま、つゆばかりうれしと思ふべきけしきもなければ、げにかの夕暮の顕証なりけむに、いとどかうあやにくなる心は添ひたるならむ」と、ことわりに思ひて、<BR>⏎
<P>⏎
240-241 「さばかりの夢をだに、また見てしがな。あはれ何を頼みにて生きたらむ。かう聞こゆることも、残り少なうおぼゆれば、<A HREF="#no15">つらきもあはれ</A><A NAME="te15">、</A>といふことこそ、まことなりけれ」<BR>⏎
 といとまめだちて言ふ。「あはれと、言ひやるべき方なきことなり。かの慰めたまふらむ御さま、つゆばかりうれしと思ふべきけしきもなければ、げにかの夕暮の顕証なりけむに、いとどかうあやにくなる心は添ひたるならむ」と、ことわりに思ひて、<BR>⏎
d1408<P>⏎
cd7:3409-415 と向ひ火つくれば、<BR>⏎
<P>⏎
 「いでやさはれや。今は限りの身なれば、もの恐ろしくもあらずなりにたり。さても負けたまひしこそ、いといとほしかりしか。おいらかに召し入れてやは。目くはせたてまつらましかば、こよなからましものを」など言ひて、<BR>⏎
<P>⏎
 「いでやなぞ数ならぬ身にかなはぬは<BR>⏎
  人に負けじの心なりけり」<BR>⏎
<P>⏎
243-245 と向ひ火つくれば、<BR>⏎
 「いでやさはれや。今は限りの身なれば、もの恐ろしくもあらずなりにたり。さても負けたまひしこそ、いといとほしかりしか。おいらかに召し入れてやは。目くはせたてまつらましかば、こよなからましものを」など言ひて、<BR>⏎
 「いでやなぞ数ならぬ身にかなはぬは<BR>  人に負けじの心なりけり」<BR>⏎
d1417<P>⏎
cd3:1418-420 「わりなしや強きによらむ<A HREF="#k10">勝ち負けを</A><A NAME="t10"><BR>⏎
  心</A>一つにいかがまかする」<BR>⏎
<P>⏎
247 「わりなしや強きによらむ<A HREF="#k10">勝ち負けを</A><A NAME="t10"><BR>  心</A>一つにいかがまかする」<BR>⏎
d1422<P>⏎
cd3:1423-425 「あはれとて手を許せかし生き死にを<BR>⏎
  君にまかするわが身とならば」<BR>⏎
<P>⏎
249 「あはれとて手を許せかし生き死にを<BR>  君にまかするわが身とならば」<BR>⏎
d1427<P>⏎
text44428 <A NAME="in33">[第三段 四月一日、蔵人少将、玉鬘へ和歌を贈る]</A><BR>251 
d1429<P>⏎
d1431<P>⏎
cd7:3432-438 「院の聞こしめすところもあるべし。何にかはおほなおほな聞き入れむ、と思ひて、くやしう、対面のついでにもうち出で聞こえずなりにし。みづからあながちに申さましかば、さりともえ違へたまはざらまし」<BR>⏎
<P>⏎
 などのたまふ。さて例の、<BR>⏎
<P>⏎
 「花を見て春は暮らしつ今日よりや<BR>⏎
  しげき嘆きの下に惑はむ」<BR>⏎
<P>⏎
253-255 「院の聞こしめすところもあるべし。何にかはおほなおほな聞き入れむ、と思ひて、くやしう、対面のついでにもうち出で聞こえずなりにし。みづからあながちに申さましかば、さりともえ違へたまはざらまし」<BR>⏎
 などのたまふ。さて例の、<BR>⏎
 「花を見て春は暮らしつ今日よりや<BR>  しげき嘆きの下に惑はむ」<BR>⏎
d1440<P>⏎
d1442<P>⏎
d1444<P>⏎
cd6:3445-450 など聞こゆれば、尚侍の君も、いとほしと聞きたまふ。大臣北の方の思すところにより、せめて人の御恨み深くはと、取り替へありて思すこの御参りを、さまたげやうに思ふらむはしも、めざましきこと、限りなきにても、ただ人には、かけてあるまじきものに、故殿の思しおきてたりしものを、院に参りたまはむだに、行く末のはえばえしからぬを思したる、折しも、この御文取り入れてあはれがる。御返事、<BR>⏎
 「今日ぞ知る空を眺むるけしきにて<BR>⏎
  花に心を移しけりとも」<BR>⏎
<P>⏎
 「あないとほし。戯れにのみも取りなすかな」<BR>⏎
<P>⏎
259-261 など聞こゆれば、尚侍の君も、いとほしと聞きたまふ。大臣北の方の思すところにより、せめて人の御恨み深くはと、取り替へありて思すこの御参りを、さまたげやうに思ふらむはしも、めざましきこと、限りなきにても、ただ人には、かけてあるまじきものに、故殿の思しおきてたりしものを、院に参りたまはむだに、行く末のはえばえしからぬを思したる、折しも、この御文取り入れてあはれがる。御返事、<BR>⏎
 「今日ぞ知る空を眺むるけしきにて<BR>  花に心を移しけりとも」<BR>⏎
 「あないとほし。戯れにのみも取りなすかな」<BR>⏎
d1452<P>⏎
text44453 <A NAME="in34">[第四段 四月九日、大君、冷泉院に参院]</A><BR>263 
d1454<P>⏎
d1456<P>⏎
d1458<P>⏎
d1460<P>⏎
d1462<P>⏎
cd2:1463-464 とて源少将、兵衛佐など、たてまつれたまへり。「情けはおはすかし」と、喜びきこえたまふ。大納言殿よりも、人びとの御車たてまつれたまふ。北の方は、故大臣の御女、真木柱の姫君なれば、いづかたにつけても、睦ましう聞こえ通ひたまふべけれど、さしもあらず。<BR>⏎
<P>⏎
268 とて源少将、兵衛佐など、たてまつれたまへり。「情けはおはすかし」と、喜びきこえたまふ。大納言殿よりも、人びとの御車たてまつれたまふ。北の方は、故大臣の御女、真木柱の姫君なれば、いづかたにつけても、睦ましう聞こえ通ひたまふべけれど、さしもあらず。<BR>⏎
d1466<P>⏎
text44467 <A NAME="in35">[第五段 蔵人少将、大君と和歌を贈答]</A><BR>270 
d1468<P>⏎
d1470<P>⏎
d1472<P>⏎
d1474<P>⏎
d1476<P>⏎
cd3:1477-479 「あはれてふ常ならぬ世の一言も<BR>⏎
  いかなる人にかくるものぞは<BR>⏎
<P>⏎
275 「あはれてふ常ならぬ世の一言も<BR>  いかなる人にかくるものぞは<BR>⏎
d1481<P>⏎
d1483<P>⏎
d1485<P>⏎
cd3:1486-488 「生ける世の死には心にまかせねば<BR>⏎
  聞かでややまむ君が一言<BR>⏎
<P>⏎
279 「生ける世の死には心にまかせねば<BR>  聞かでややまむ君が一言<BR>⏎
d1490<P>⏎
d1492<P>⏎
text44493 <A NAME="in36">[第六段 冷泉院における大君と薫君]</A><BR>282 
d1494<P>⏎
cd4:2495-498 大人、童、めやすき限りをととのへられたり。おほかたの儀式などは、内裏に参りたまはましに、変はることなし。まづ女御の御方に渡りたまひて、尚侍の君は、御物語など聞こえたまふ。夜更けてなむ、上にまう上りたまひける。<BR>⏎
<P>⏎
 后女御など、みな年ごろ経てねびたまへるに、いとうつくしげにて、盛りに<A HREF="#k14">見所</A><A NAME="t14">あ</A>るさまを見たてまつりたまふは、などてかはおろかならむ。はなやかに時めきたまふ。ただ人だちて、心やすくもてなしたまへるさましもぞ、げにあらまほしうめでたかりける。<BR>⏎
<P>⏎
283-284 大人、童、めやすき限りをととのへられたり。おほかたの儀式などは、内裏に参りたまはましに、変はることなし。まづ女御の御方に渡りたまひて、尚侍の君は、御物語など聞こえたまふ。夜更けてなむ、上にまう上りたまひける。<BR>⏎
 后女御など、みな年ごろ経てねびたまへるに、いとうつくしげにて、盛りに<A HREF="#k14">見所</A><A NAME="t14">あ</A>るさまを見たてまつりたまふは、などてかはおろかならむ。はなやかに時めきたまふ。ただ人だちて、心やすくもてなしたまへるさましもぞ、げにあらまほしうめでたかりける。<BR>⏎
d1500<P>⏎
cd2:1501-502 源侍従の君をば、明け暮れ御前に召しまつはしつつ、げにただ昔の光る源氏の生ひ出でたまひしに劣らぬ人の御おぼえなり。院のうちには、いづれの御方にも疎からず、馴れ交じらひありきたまふ。この御方にも、心寄せあり顔にもてなして、下には、いかに見たまふらむの心さへ添ひたまへり。<BR>⏎
<P>⏎
286 源侍従の君をば、明け暮れ御前に召しまつはしつつ、げにただ昔の光る源氏の生ひ出でたまひしに劣らぬ人の御おぼえなり。院のうちには、いづれの御方にも疎からず、馴れ交じらひありきたまふ。この御方にも、心寄せあり顔にもてなして、下には、いかに見たまふらむの心さへ添ひたまへり。<BR>⏎
d1504<P>⏎
cd8:3505-512 「手にかくるものにしあらば藤の花<BR>⏎
  松よりまさる色を見ましや」<BR>⏎
<P>⏎
 とて花を見上げたるけしきなど、あやしくあはれに心苦しく思ほゆれば、わが心にあらぬ世のありさまにほのめかす。<BR>⏎
<P>⏎
 「紫の色はかよへど藤の花<BR>⏎
  心にえこそかからざりけれ」<BR>⏎
<P>⏎
288-290 「手にかくるものにしあらば藤の花<BR>  松よりまさる色を見ましや」<BR>⏎
 とて花を見上げたるけしきなど、あやしくあはれに心苦しく思ほゆれば、わが心にあらぬ世のありさまにほのめかす。<BR>⏎
 「紫の色はかよへど藤の花<BR>  心にえこそかからざりけれ」<BR>⏎
d1514<P>⏎
text44515 <A NAME="in37">[第七段 失意の蔵人少将と大君のその後]</A><BR>292 
d1516<P>⏎
d1518<P>⏎
d1520<P>⏎
d1522<P>⏎
d1524<P>⏎
cd6:3525-530 といとものしと思ひて、尚侍の君を申したまふ。<BR>⏎
<P>⏎
 「いさや。ただ今、かうにはかにしも思ひ立たざりしを。あながちに、いとほしうのたまはせしかば、後見なき交じらひの内裏わたりは、はしたなげなめるを、今は心やすき御ありさまなめるに、まかせきこえて、と思ひ寄りしなり。誰れも誰れも、便なからむ事は、ありのままにも諌めたまはで、今ひき返し、右の大臣も、ひがひがしきやうに、おもむけてのたまふなれば、苦しうなむ。これもさるべきにこそは」<BR>⏎
<P>⏎
 となだらかにのたまひて、心も騒がいたまはず。<BR>⏎
<P>⏎
297-299 といとものしと思ひて、尚侍の君を申したまふ。<BR>⏎
 「いさや。ただ今、かうにはかにしも思ひ立たざりしを。あながちに、いとほしうのたまはせしかば、後見なき交じらひの内裏わたりは、はしたなげなめるを、今は心やすき御ありさまなめるに、まかせきこえて、と思ひ寄りしなり。誰れも誰れも、便なからむ事は、ありのままにも諌めたまはで、今ひき返し、右の大臣も、ひがひがしきやうに、おもむけてのたまふなれば、苦しうなむ。これもさるべきにこそは」<BR>⏎
 となだらかにのたまひて、心も騒がいたまはず。<BR>⏎
d1532<P>⏎
cd6:3533-538 よし見聞きはべらむ。よう思へば、内裏は、中宮おはしますとて、異人は交じらひたまはずや。君に仕うまつることは、それが心やすきこそ、昔より興あることにはしけれ。女御は、いささかなることの違ひ目ありて、よろしからず思ひきこえたまはむに、ひがみたるやうになむ、世の聞き耳もはべらむ」<BR>⏎
<P>⏎
 など二所して申したまへば、尚侍の君、いと苦しと思して、さるは限りなき御思ひのみ、月日に添へてまさる。<BR>⏎
<P>⏎
 七月よりはらみたまひにけり。「うち悩みたまへるさま、げに人のさまざまに聞こえわづらはすも、ことわりぞかし。いかでかはかからむ人を、なのめに見聞き過ぐしてはやまむ」とぞおぼゆる。明け暮れ、御遊びをせさせたまひつつ、侍従も気近う召し入るれば、御琴の音などは聞きたまふ。かの「梅が枝」に合はせたりし中将の御許の和琴も、常に召し出でて弾かせたまへば、聞き合はするにも、ただには<A HREF="#k15">おぼえざり</A><A NAME="t15">け</A>り。<BR>⏎
<P>⏎
301-303 よし見聞きはべらむ。よう思へば、内裏は、中宮おはしますとて、異人は交じらひたまはずや。君に仕うまつることは、それが心やすきこそ、昔より興あることにはしけれ。女御は、いささかなることの違ひ目ありて、よろしからず思ひきこえたまはむに、ひがみたるやうになむ、世の聞き耳もはべらむ」<BR>⏎
 など二所して申したまへば、尚侍の君、いと苦しと思して、さるは限りなき御思ひのみ、月日に添へてまさる。<BR>⏎
 七月よりはらみたまひにけり。「うち悩みたまへるさま、げに人のさまざまに聞こえわづらはすも、ことわりぞかし。いかでかはかからむ人を、なのめに見聞き過ぐしてはやまむ」とぞおぼゆる。明け暮れ、御遊びをせさせたまひつつ、侍従も気近う召し入るれば、御琴の音などは聞きたまふ。かの「梅が枝」に合はせたりし中将の御許の和琴も、常に召し出でて弾かせたまへば、聞き合はするにも、ただには<A HREF="#k15">おぼえざり</A><A NAME="t15">け</A>り。<BR>⏎
text44539 <H4>第四章 玉鬘の物語 玉鬘の姫君たちの物語</H4>304 
text44540 <A NAME="in41">[第一段 正月、男踏歌、冷泉院に回る]</A><BR>305 
d1541<P>⏎
d1543<P>⏎
cd2:1544-545 十四日の月のはなやかに曇りなきに、御前より出でて、冷泉院に参る。女御も、この御息所も、上に御局して見たまふ。上達部親王たち、ひき連れて参りたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
307 十四日の月のはなやかに曇りなきに、御前より出でて、冷泉院に参る。女御も、この御息所も、上に御局して見たまふ。上達部親王たち、ひき連れて参りたまふ。<BR>⏎
d1547<P>⏎
d1549<P>⏎
d1551<P>⏎
text44552 <A NAME="in42">[第二段 翌日、冷泉院、薫を召す]</A><BR>311 
d1553<P>⏎
cd2:1554-555 夜一夜、所々かきありきて、いと悩ましう苦しくて臥したるに、源侍従を、院より召したれば、「あな苦し。しばし休むべきに」とむつかりながら参りたまへり。御前のことどもなど問はせたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
312 夜一夜、所々かきありきて、いと悩ましう苦しくて臥したるに、源侍従を、院より召したれば、「あな苦し。しばし休むべきに」とむつかりながら参りたまへり。御前のことどもなど問はせたまふ。<BR>⏎
d1557<P>⏎
cd2:1558-559 とてうつくしと思しためり。「万春楽」を御口ずさみにしたまひつつ、御息所の御方に渡らせたまへば、御供に参りたまふ。物見に参りたる里人多くて、例よりははなやかに、けはひ今めかし。<BR>⏎
<P>⏎
314 とてうつくしと思しためり。「万春楽」を御口ずさみにしたまひつつ、御息所の御方に渡らせたまへば、御供に参りたまふ。物見に参りたる里人多くて、例よりははなやかに、けはひ今めかし。<BR>⏎
d1561<P>⏎
d1563<P>⏎
d1565<P>⏎
d1567<P>⏎
cd14:6568-581 「竹河のその夜のことは思ひ出づや<BR>⏎
  しのぶばかりの節はなけれど」<BR>⏎
<P>⏎
 と言ふ。はかなきことなれど、涙ぐまるるも、「げにいと浅くはおぼえぬことなりけり」と、みづから思ひ知らる。<BR>⏎
<P>⏎
 「流れての頼めむなしき竹河に<BR>⏎
  世は憂きものと思ひ知りにき」<BR>⏎
<P>⏎
 ものあはれなるけしきを、人びとをかしがる。さるはおり立ちて人のやうにもわびたまはざりしかど、人ざまのさすがに心苦しう見ゆるなり。<BR>⏎
<P>⏎
 「うち出で過ぐすこともこそはべれ。あなかしこ」<BR>⏎
<P>⏎
 とて立つほどに、「こなたに」と召し出づれば、はしたなき心地すれど、参りたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
319-324 「竹河のその夜のことは思ひ出づや<BR>  しのぶばかりの節はなけれど」<BR>⏎
 と言ふ。はかなきことなれど、涙ぐまるるも、「げにいと浅くはおぼえぬことなりけり」と、みづから思ひ知らる。<BR>⏎
 「流れての頼めむなしき竹河に<BR>  世は憂きものと思ひ知りにき」<BR>⏎
 ものあはれなるけしきを、人びとをかしがる。さるはおり立ちて人のやうにもわびたまはざりしかど、人ざまのさすがに心苦しう見ゆるなり。<BR>⏎
 「うち出で過ぐすこともこそはべれ。あなかしこ」<BR>⏎
 とて立つほどに、「こなたに」と召し出づれば、はしたなき心地すれど、参りたまふ。<BR>⏎
d1583<P>⏎
cd4:2584-587 など思しやりて、御琴ども調べさせたまひて、箏は御息所、琵琶は侍従に賜ふ。和琴を弾かせたまひて、「この殿」など遊びたまふ。御息所の御琴の音、まだ片なりなるところありしを、いとよう教へないたてまつりたまひてけり。今めかしう爪音よくて、歌曲のものなど、上手にいとよく弾きたまふ。何ごとも、心もとなく、後れたることはものしたまはぬ人なめり。<BR>⏎
<P>⏎
 容貌、はたいとをかしかべしと、なほ<A HREF="#k17">心とまる</A><A NAME="t17">。</A>かやうなる折多かれど、おのづから気遠からず、乱れたまふ方なく、なれなれしうなどは怨みかけねど、折々につけて、思ふ心の違へる嘆かしさをかすむるも、いかが思しけむ、知らずかし。<BR>⏎
<P>⏎
326-327 など思しやりて、御琴ども調べさせたまひて、箏は御息所、琵琶は侍従に賜ふ。和琴を弾かせたまひて、「この殿」など遊びたまふ。御息所の御琴の音、まだ片なりなるところありしを、いとよう教へないたてまつりたまひてけり。今めかしう爪音よくて、歌曲のものなど、上手にいとよく弾きたまふ。何ごとも、心もとなく、後れたることはものしたまはぬ人なめり。<BR>⏎
 容貌、はたいとをかしかべしと、なほ<A HREF="#k17">心とまる</A><A NAME="t17">。</A>かやうなる折多かれど、おのづから気遠からず、乱れたまふ方なく、なれなれしうなどは怨みかけねど、折々につけて、思ふ心の違へる嘆かしさをかすむるも、いかが思しけむ、知らずかし。<BR>⏎
text44588 <A NAME="in43">[第三段 四月、大君に女宮誕生]</A><BR>328 
d1589<P>⏎
cd2:1590-591 卯月に、女宮生まれたまひぬ。ことにけざやかなるものの栄もなきやうなれど、院の御けしきに従ひて、右の大殿よりはじめて、御産養したまふ所々多かり。尚侍の君、つと抱き持ちてうつくしみたまふに、疾う参りたまふべきよしのみあれば、五十日のほどに参りたまひぬ。<BR>⏎
<P>⏎
329 卯月に、女宮生まれたまひぬ。ことにけざやかなるものの栄もなきやうなれど、院の御けしきに従ひて、右の大殿よりはじめて、御産養したまふ所々多かり。尚侍の君、つと抱き持ちてうつくしみたまふに、疾う参りたまふべきよしのみあれば、五十日のほどに参りたまひぬ。<BR>⏎
d1593<P>⏎
d1595<P>⏎
d1597<P>⏎
text44598 <A NAME="in44">[第四段 玉鬘、夕霧へ手紙を贈る]</A><BR>333 
d1599<P>⏎
cd2:1600-601 「かくて心やすくて内裏住みもしたまへかし」と、思すにも、「いとほしう、少将のことを、母北の方のわざとのたまひしものを。頼めきこえしやうにほのめかし聞こえしも、いかに思ひたまふらむ」と思し扱ふ。<BR>⏎
<P>⏎
334 「かくて心やすくて内裏住みもしたまへかし」と、思すにも、「いとほしう、少将のことを、母北の方のわざとのたまひしものを。頼めきこえしやうにほのめかし聞こえしも、いかに思ひたまふらむ」と思し扱ふ。<BR>⏎
d1603<P>⏎
d1605<P>⏎
d1607<P>⏎
cd2:1608-609 「内裏の御けしきは、思しとがむるも、ことわりになむ承る。公事につけても、宮仕へしたまはぬは、さるまじきわざになむ。はや思し立つべきになむ」<BR>⏎
<P>⏎
338 「内裏の御けしきは、思しとがむるも、ことわりになむ承る。公事につけても、宮仕へしたまはぬは、さるまじきわざになむ。はや思し立つべきになむ」<BR>⏎
d1611<P>⏎
cd2:1612-613 またこのたびは、中宮の御けしき取りてぞ参りたまふ。「大臣おはせましかば、おし消ちたまはざらまし」など、あはれなることどもをなむ。姉君は、容貌など名高う、をかしげなりと、聞こしめしおきたりけるを、引き変へたまへるを、なま心ゆかぬやうなれど、これもいとらうらうじく、心にくくもてなしてさぶらひたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
340 またこのたびは、中宮の御けしき取りてぞ参りたまふ。「大臣おはせましかば、おし消ちたまはざらまし」など、あはれなることどもをなむ。姉君は、容貌など名高う、をかしげなりと、聞こしめしおきたりけるを、引き変へたまへるを、なま心ゆかぬやうなれど、これもいとらうらうじく、心にくくもてなしてさぶらひたまふ。<BR>⏎
text44614 <A NAME="in45">[第五段 玉鬘、出家を断念]</A><BR>341 
d1615<P>⏎
d1617<P>⏎
d1619<P>⏎
cd2:1620-621 と君たちの申したまへば、思しとどこほりて、内裏には、時々忍びて参りたまふ折もあり。院には、わづらはしき御心ばへのなほ絶えねば、さるべき折も、さらに参りたまはず。いにしへを思ひ出でしが、さすがに、かたじけなうおぼえしかしこまりに、人の皆許さぬことに思へりしをも、知らず顔に思ひて参らせたてまつりて、「みづからさへ、戯れにても、若々しきことの世に聞こえたらむこそ、いとまばゆく見苦しかるべけれ」と思せど、さる罪によりと、はた御息所にも明かしきこえたまはねば、「われを昔より、故大臣は取り分きて思しかしづき、尚侍の君は、若君を、桜の争ひ、はかなき折にも、心寄せたまひし名残に、思し落としけるよ」と、恨めしう思ひきこえたまひけり。院の上はた、ましていみじうつらしとぞ思しのたまはせける。<BR>⏎
<P>⏎
344 と君たちの申したまへば、思しとどこほりて、内裏には、時々忍びて参りたまふ折もあり。院には、わづらはしき御心ばへのなほ絶えねば、さるべき折も、さらに参りたまはず。いにしへを思ひ出でしが、さすがに、かたじけなうおぼえしかしこまりに、人の皆許さぬことに思へりしをも、知らず顔に思ひて参らせたてまつりて、「みづからさへ、戯れにても、若々しきことの世に聞こえたらむこそ、いとまばゆく見苦しかるべけれ」と思せど、さる罪によりと、はた御息所にも明かしきこえたまはねば、「われを昔より、故大臣は取り分きて思しかしづき、尚侍の君は、若君を、桜の争ひ、はかなき折にも、心寄せたまひし名残に、思し落としけるよ」と、恨めしう思ひきこえたまひけり。院の上はた、ましていみじうつらしとぞ思しのたまはせける。<BR>⏎
d1623<P>⏎
cd2:1624-625 とうち語らひたまひて、あはれにのみ思しまさる。<BR>⏎
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346 とうち語らひたまひて、あはれにのみ思しまさる。<BR>⏎
text44626 <A NAME="in46">[第六段 大君、男御子を出産]</A><BR>347 
d1627<P>⏎
d1629<P>⏎
d1631<P>⏎
d1633<P>⏎
d1635<P>⏎
cd2:1636-637 といとど申したまふ。心やすからず、聞き苦しきままに、<BR>⏎
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352 といとど申したまふ。心やすからず、聞き苦しきままに、<BR>⏎
d1639<P>⏎
cd2:1640-641 と大上は嘆きたまふ。<BR>⏎
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354 と大上は嘆きたまふ。<BR>⏎
text44642 <A NAME="in47">[第七段 求婚者たちのその後]</A><BR>355 
d1643<P>⏎
cd2:1644-645 聞こえし人びとの、めやすくなり上りつつ、さてもおはせましに、かたはならぬぞあまたあるや。その中に、源侍従とて、いと若う、ひはづなりと見しは、宰相の中将にて、「匂ふや、薫るや」と、聞きにくくめで騒がるなる、げにいと人柄重りかに心にくきを、やむごとなき親王たち大臣の御女を、心ざしありてのたまふなるなども、聞き入れずなどあるにつけて、「そのかみは、若う心もとなきやうなりしかど、めやすくねびまさりぬべかめり」など、言ひおはさうず。<BR>⏎
<P>⏎
356 聞こえし人びとの、めやすくなり上りつつ、さてもおはせましに、かたはならぬぞあまたあるや。その中に、源侍従とて、いと若う、ひはづなりと見しは、宰相の中将にて、「匂ふや、薫るや」と、聞きにくくめで騒がるなる、げにいと人柄重りかに心にくきを、やむごとなき親王たち大臣の御女を、心ざしありてのたまふなるなども、聞き入れずなどあるにつけて、「そのかみは、若う心もとなきやうなりしかど、めやすくねびまさりぬべかめり」など、言ひおはさうず。<BR>⏎
c1648 などなま心悪ろき仕うまつり人は、うち忍びつつ、<BR>⏎
359 などなま心悪ろき仕うまつり人は、うち忍びつつ、<BR>⏎
d1651<P>⏎
d1653<P>⏎
d1655<P>⏎
text44656 <H4>第五章 薫君の物語 人びとの昇進後の物語</H4>364 
text44657 <A NAME="in51">[第一段 薫、玉鬘邸に昇進の挨拶に参上]</A><BR>365 
d1658<P>⏎
d1660<P>⏎
d1662<P>⏎
cd2:1663-664 「かくいと草深くなりゆく葎の門を、よきたまはぬ御心ばへにも、まづ昔の御こと思ひ出でられてなむ」<BR>⏎
<P>⏎
368 「かくいと草深くなりゆく葎の門を、よきたまはぬ御心ばへにも、まづ昔の御こと思ひ出でられてなむ」<BR>⏎
d1666<P>⏎
d1668<P>⏎
cd4:2669-672 「今日は、さだすぎにたる身の愁へなど、聞こゆべきついでにもあらずと、つつみはべれど、わざと立ち寄りたまはむことは難きを、対面なくて、はたさすがにくだくだしきことになむ。<BR>⏎
<P>⏎
 院にさぶらはるるが、いといたう世の中を思ひ乱れ、中空なるやうにただよふを、女御を頼みきこえ、また后の宮の御方にも、さりとも思し許されなむと、思ひたまへ過ぐすに、いづ方にもなめげに心ゆかぬものに思されたなれば、いとかたはらいたくて、宮たちは、さてさぶらひたまふ。このいと交じらひにくげなるみづからは、かくて心やすくだにながめ過ぐいたまへとて、まかでさせたるを、それにつけても、聞きにくくなむ。<BR>⏎
<P>⏎
371-372 「今日は、さだすぎにたる身の愁へなど、聞こゆべきついでにもあらずと、つつみはべれど、わざと立ち寄りたまはむことは難きを、対面なくて、はたさすがにくだくだしきことになむ。<BR>⏎
 院にさぶらはるるが、いといたう世の中を思ひ乱れ、中空なるやうにただよふを、女御を頼みきこえ、また后の宮の御方にも、さりとも思し許されなむと、思ひたまへ過ぐすに、いづ方にもなめげに心ゆかぬものに思されたなれば、いとかたはらいたくて、宮たちは、さてさぶらひたまふ。このいと交じらひにくげなるみづからは、かくて心やすくだにながめ過ぐいたまへとて、まかでさせたるを、それにつけても、聞きにくくなむ。<BR>⏎
d1674<P>⏎
cd2:1675-676 とうち泣いたまふけしきなり。<BR>⏎
<P>⏎
374 とうち泣いたまふけしきなり。<BR>⏎
text44677 <A NAME="in52">[第二段 薫、玉鬘と対面しての感想]</A><BR>375 
d1678<P>⏎
d1680<P>⏎
d1682<P>⏎
cd2:1683-684 といとすくすくしう申したまへば、<BR>⏎
<P>⏎
378 といとすくすくしう申したまへば、<BR>⏎
d1686<P>⏎
cd2:1687-688 とうち笑ひておはする、人の親にて、はかばかしがりたまへるほどよりは、いと若やかにおほどいたる心地す。「御息所も、かやうにぞおはすべかめる。宇治の姫君の心とまりておぼゆるも、かうざまなるけはひのをかしきぞかし」と思ひゐたまへり。<BR>⏎
<P>⏎
380 とうち笑ひておはする、人の親にて、はかばかしがりたまへるほどよりは、いと若やかにおほどいたる心地す。「御息所も、かやうにぞおはすべかめる。宇治の姫君の心とまりておぼゆるも、かうざまなるけはひのをかしきぞかし」と思ひゐたまへり。<BR>⏎
d1690<P>⏎
text44691 <A NAME="in53">[第三段 右大臣家の大饗]</A><BR>382 
d1692<P>⏎
d1694<P>⏎
cd2:1695-696 心にくくもてかしづきたまふ姫君たちを、さるは心ざしことに、いかでと思ひきこえたまふべかめれど、宮ぞ、いかなるにかあらむ、御心もとめたまはざりける。源中納言の、いとどあらまほしうねびととのひ、何ごとも後れたる方なくものしたまふを、大臣も北の方も、目とどめたまひけり。<BR>⏎
<P>⏎
384 心にくくもてかしづきたまふ姫君たちを、さるは心ざしことに、いかでと思ひきこえたまふべかめれど、宮ぞ、いかなるにかあらむ、御心もとめたまはざりける。源中納言の、いとどあらまほしうねびととのひ、何ごとも後れたる方なくものしたまふを、大臣も北の方も、目とどめたまひけり。<BR>⏎
d1698<P>⏎
d1700<P>⏎
text44701 <A NAME="in54">[第四段 宰相中将、玉鬘邸を訪問]</A><BR>387 
d1702<P>⏎
d1704<P>⏎
d1706<P>⏎
cd2:1707-708 と涙おしのごふも、ことさらめいたり。二十七八のほどの、いと盛りに匂ひ、はなやかなる容貌したまへり。<BR>⏎
<P>⏎
390 と涙おしのごふも、ことさらめいたり。二十七八のほどの、いと盛りに匂ひ、はなやかなる容貌したまへり。<BR>⏎
d1710<P>⏎
d2712-713
<P>⏎
text44714 <a name="in61">【出典】<BR>393 
c1715</a><A NAME="no1">出典1</A> 已被楊妃遥側目(白氏文集巻三-「上陽白髪人」)<A HREF="#te1">(戻)</A><BR>⏎
394<A NAME="no1">出典1</A> 已被楊妃遥側目(白氏文集巻三-「上陽白髪人」)<A HREF="#te1">(戻)</A><BR>⏎
c1720<A NAME="no6">出典6</A> 竹河の 橋のつめなるや 橋のつめなるや 花園に はれ 花園に 我をば放てや 我をば放てや 少女めざしたぐへて(催馬楽-竹河)<A HREF="#te6">(戻)</A><BR>⏎
399<A NAME="no6">出典6</A> 竹河の 橋のつめなるや 橋のつめなるや 花園に はれ 花園に 我をば放てや 我をば放てや <ruby><rb>少女<rp>(<rt>めざし<rp>)</ruby>たぐへて(催馬楽-竹河)<A HREF="#te6">(戻)</A><BR>⏎
d1735
text44736<p> <a name="in62">【校訂】<BR>414 
c1738</a><A NAME="k01">校訂1</A> ゆかりにも似ざめれど--ゆかり(り/+に<朱>)せ(せ/$さ<朱>)めれと<A HREF="#t01">(戻)</A><BR>⏎
416<A NAME="k01">校訂1</A> ゆかりにも似ざめれど--ゆかり(り/+に<朱>)せ(せ/$さ<朱>)めれと<A HREF="#t01">(戻)</A><BR>⏎
d1760</p>⏎
d1767</p>⏎
i0448
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cd2:18-9<body background="wallppr063.gif">⏎
First updated 9/20/1996(ver.1-1)<BR>⏎
8<BODY>⏎
cd3:210-12Last updated 12/14/2010(ver.2-2)<BR>⏎
渋谷栄一校訂(C)<BR>⏎
<P
>⏎
9-10<ADDRESS>Last updated 12/14/2010(ver.2-2)<BR>⏎
渋谷栄一校訂(C)</ADDRESS>⏎
d114<P>⏎
d116<P>⏎
d138<P>⏎
c160<LI>老女房の弁が応対---<A HREF="#in35">たとしへなくさし過ぐして、「あなかたじけなや</A>⏎
55<LI>老女房の弁が応対---<A HREF="#in35">たとしへなくさし過ぐして、「あなかたじけなや</A>⏎
c168<LI>十月初旬、薫宇治へ赴く---<A HREF="#in41">十月になりて、五六日のほどに、宇治へ参うでたまふ</A>⏎
63<LI>十月初旬、薫宇治へ赴く---<A HREF="#in41">十月になりて、五六日のほどに、宇治へ参うでたまふ</A>⏎
d175<P>⏎
d178<P>⏎
text4579 <H4>第一章 宇治八の宮の物語 隠遁者八の宮</H4>72 
text4580 <A NAME="in11">[第一段 八の宮の家系と家族]</A><BR>73 
d181<P>⏎
d183<P>⏎
d185<P>⏎
cd2:186-87 年ごろ経るに、御子ものしたまはで心もとなかりければ、さうざうしくつれづれなる慰めに、「いかでをかしからむ稚児もがな」と、宮ぞ時々思しのたまひけるに、めづらしく、女君のいとうつくしげなる、生まれたまへり。<BR>⏎
<P>⏎
76 年ごろ経るに、御子ものしたまはで心もとなかりければ、さうざうしくつれづれなる慰めに、「いかでをかしからむ稚児もがな」と、宮ぞ時々思しのたまひけるに、めづらしく、女君のいとうつくしげなる、生まれたまへり。<BR>⏎
d189<P>⏎
text4590 <A NAME="in12">[第二段 八の宮と娘たちの生活]</A><BR>78 
d191<P>⏎
d193<P>⏎
d195<P>⏎
cd6:396-101 後に生まれたまひし君をば、さぶらふ人びとも、「いでや折ふし心憂く」など、うちつぶやきつつ、心に入れても扱ひきこえざりけれど、限りのさまにて、何ごとも思し分かざりしほどながら、これをいと心苦しと思ひて、<BR>⏎
<P>⏎
 「ただこの君を形見に見たまひて、あはれと思せ」<BR>⏎
<P>⏎
 とばかりただ一言なむ、宮に聞こえ置きたまひければ、前の世の契りもつらき折ふしなれど、「さるべきにこそはありけめと、今はと見えしまで、いとあはれと思ひて、うしろめたげにのたまひしを」と、思し出でつつ、この君をしも、いとかなしうしたてまつりたまふ。容貌なむまことに<A HREF="#k01">いとうつくしう</A><A NAME="t01">、</A>ゆゆしきまでものしたまひける。<BR>⏎
<P>⏎
81-83 後に生まれたまひし君をば、さぶらふ人びとも、「いでや折ふし心憂く」など、うちつぶやきつつ、心に入れても扱ひきこえざりけれど、限りのさまにて、何ごとも思し分かざりしほどながら、これをいと心苦しと思ひて、<BR>⏎
 「ただこの君を形見に見たまひて、あはれと思せ」<BR>⏎
 とばかりただ一言なむ、宮に聞こえ置きたまひければ、前の世の契りもつらき折ふしなれど、「さるべきにこそはありけめと、今はと見えしまで、いとあはれと思ひて、うしろめたげにのたまひしを」と、思し出でつつ、この君をしも、いとかなしうしたてまつりたまふ。容貌なむまことに<A HREF="#k01">いとうつくしう</A><A NAME="t01">、</A>ゆゆしきまでものしたまひける。<BR>⏎
d1103<P>⏎
d1105<P>⏎
text45106 <A NAME="in13">[第三段 八の宮の仏道精進の生活]</A><BR>86 
d1107<P>⏎
d1109<P>⏎
d1111<P>⏎
cd6:3112-117 かかるほだしどもにかかづらふだに、思ひの外に口惜しう、「わが心ながらもかなはざりける契り」とおぼゆるを、まいて「何にか世の人めいて今さらに」とのみ、年月に添へて、世の中を思し離れつつ、心ばかりは聖になり果てたまひて、故君の亡せたまひにしこなたは、例の人のさまなる心ばへなど、たはぶれにても思し出でたまはざりけり。<BR>⏎
<P>⏎
 「などかさしも。別るるほどの悲しびは、また世にたぐひなきやうにのみこそは、おぼゆべかめれど、あり経れば、さのみやは。なほ世人になずらふ御心づかひをしたまひて、いとかく見苦しく、たつきなき宮の内も、おのづからもてなさるるわざもや」<BR>⏎
<P>⏎
 と人はもどききこえて、何くれと、つきづきしく聞こえごつことも、類にふれて多かれど、聞こしめし入れざりけり。<BR>⏎
<P>⏎
89-91 かかるほだしどもにかかづらふだに、思ひの外に口惜しう、「わが心ながらもかなはざりける契り」とおぼゆるを、まいて「何にか世の人めいて今さらに」とのみ、年月に添へて、世の中を思し離れつつ、心ばかりは聖になり果てたまひて、故君の亡せたまひにしこなたは、例の人のさまなる心ばへなど、たはぶれにても思し出でたまはざりけり。<BR>⏎
 「などかさしも。別るるほどの悲しびは、また世にたぐひなきやうにのみこそは、おぼゆべかめれど、あり経れば、さのみやは。なほ世人になずらふ御心づかひをしたまひて、いとかく見苦しく、たつきなき宮の内も、おのづからもてなさるるわざもや」<BR>⏎
 と人はもどききこえて、何くれと、つきづきしく聞こえごつことも、類にふれて多かれど、聞こしめし入れざりけり。<BR>⏎
d1119<P>⏎
text45120 <A NAME="in14">[第四段 ある春の日の生活]</A><BR>93 
d1121<P>⏎
d1123<P>⏎
cd2:1124-125 「うち捨ててつがひ去りにし水鳥の<BR>⏎
  仮のこの世にたちおくれけむ<BR>⏎
95 「うち捨ててつがひ去りにし水鳥の<BR>  仮のこの世にたちおくれけむ<BR>⏎
d1127<P>⏎
cd2:1128-129 と目おし拭ひたまふ。容貌いときよげにおはします宮なり。年ごろの御行ひにやせ細りたまひにたれど、さてしもあてになまめきて、君たちをかしづきたまふ御心ばへに、直衣の萎えばめるを着たまひて、しどけなき御さま、いと恥づかしげなり。<BR>⏎
<P>⏎
97 と目おし拭ひたまふ。容貌いときよげにおはします宮なり。年ごろの御行ひにやせ細りたまひにたれど、さてしもあてになまめきて、君たちをかしづきたまふ御心ばへに、直衣の萎えばめるを着たまひて、しどけなき御さま、いと恥づかしげなり。<BR>⏎
d1131<P>⏎
d1133<P>⏎
cd5:2134-138 とて紙たてまつりたまへば、恥ぢらひて書きたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
 「いかでかく巣立ちけるぞと思ふにも<BR>⏎
  憂き水鳥の契りをぞ知る」<BR>⏎
<P>⏎
100-101 とて紙たてまつりたまへば、恥ぢらひて書きたまふ。<BR>⏎
 「いかでかく巣立ちけるぞと思ふにも<BR>  憂き水鳥の契りをぞ知る」<BR>⏎
d1140<P>⏎
d1142<P>⏎
d1144<P>⏎
cd3:1145-147 「泣く泣くも羽うち着する君なくは<BR>⏎
  われぞ巣守になりは果てまし」<BR>⏎
<P>⏎
105 「泣く泣くも羽うち着する君なくは<BR>  われぞ巣守になりは果てまし」<BR>⏎
d1149<P>⏎
d1151<P>⏎
text45152 <A NAME="in15">[第五段 八の宮の半生と宇治へ移住]</A><BR>108 
d1153<P>⏎
cd2:1154-155 父帝にも女御にも、疾く後れきこえたまひて、はかばかしき御後見の、取り立てたるおはせざりければ、才など深くもえ習ひたまはず、まいて世の中に住みつく御心おきては、いかでかは知りたまはむ。高き人と聞こゆる中にも、あさましうあてにおほどかなる、女のやうにおはすれば、古き世の御宝物、祖父大臣の御処分、何やかやと尽きすまじかりけれど、行方もなくはかなく失せ果てて、御調度などばかりなむ、わざとうるはしくて多かりける。<BR>⏎
<P>⏎
109 父帝にも女御にも、疾く後れきこえたまひて、はかばかしき御後見の、取り立てたるおはせざりければ、才など深くもえ習ひたまはず、まいて世の中に住みつく御心おきては、いかでかは知りたまはむ。高き人と聞こゆる中にも、あさましうあてにおほどかなる、女のやうにおはすれば、古き世の御宝物、祖父大臣の御処分、何やかやと尽きすまじかりけれど、行方もなくはかなく失せ果てて、御調度などばかりなむ、わざとうるはしくて多かりける。<BR>⏎
d1157<P>⏎
cd2:1158-159 源氏の大殿の御弟におはせしを、冷泉院の春宮におはしましし時、朱雀院の大后の、横様に思し構へて、この宮を、世の中に立ち継ぎたまふべく、わが御時、もてかしづきたてまつりける騷ぎに、あいなく、あなたざまの御仲らひには、さし放たれたまひにければ、いよいよかの御つぎつぎになり果てぬる世にて、え交じらひたまはず。またこの年ごろ、かかる聖になり果てて、今は限りと、よろづを思し捨てたり。<BR>⏎
<P>⏎
111 源氏の大殿の御弟におはせしを、冷泉院の春宮におはしましし時、朱雀院の大后の、横様に思し構へて、この宮を、世の中に立ち継ぎたまふべく、わが御時、もてかしづきたてまつりける騷ぎに、あいなく、あなたざまの御仲らひには、さし放たれたまひにければ、いよいよかの御つぎつぎになり果てぬる世にて、え交じらひたまはず。またこの年ごろ、かかる聖になり果てて、今は限りと、よろづを思し捨てたり。<BR>⏎
d1161<P>⏎
d1163<P>⏎
cd3:1164-166 「見し人も宿も煙になりにしを<BR>⏎
  何とてわが身消え残りけむ」<BR>⏎
<P>⏎
114 「見し人も宿も煙になりにしを<BR>  何とてわが身消え残りけむ」<BR>⏎
d1168<P>⏎
text45169 <H4>第二章 宇治八の宮の物語 薫、八の宮と親交を結ぶ</H4>116 
text45170 <A NAME="in21">[第一段 八の宮、阿闍梨に師事]</A><BR>117 
d1171<P>⏎
cd2:1172-173 いとど<A HREF="#no4">山重なれる御住み処</A><A NAME="te4">に</A>、尋ね参る人なし。あやしき下衆など、田舎びたる山賤どものみ、まれに馴れ参り仕うまつる。<A HREF="#no5">峰の朝霧晴るる</A><A NAME="te5">折</A>なくて、明かし暮らしたまふに、この<A HREF="#no6">宇治山</A><A NAME="te6">に</A>、聖だちたる阿闍梨住みけり。<BR>⏎
<P>⏎
118 いとど<A HREF="#no4">山重なれる御住み処</A><A NAME="te4">に</A>、尋ね参る人なし。あやしき下衆など、田舎びたる山賤どものみ、まれに馴れ参り仕うまつる。<A HREF="#no5">峰の朝霧晴るる</A><A NAME="te5">折</A>なくて、明かし暮らしたまふに、この<A HREF="#no6">宇治山</A><A NAME="te6">に</A>、聖だちたる阿闍梨住みけり。<BR>⏎
d1175<P>⏎
d1177<P>⏎
d1179<P>⏎
cd2:1180-181 など隔てなく物語したまふ。<BR>⏎
<P>⏎
122 など隔てなく物語したまふ。<BR>⏎
text45182 <A NAME="in22">[第二段 冷泉院にて阿闍梨と薫語る]</A><BR>123 
d1183<P>⏎
d1185<P>⏎
d1187<P>⏎
d1189<P>⏎
d1191<P>⏎
d1193<P>⏎
d1195<P>⏎
cd6:3196-201 「げにはたこの姫君たちの、琴弾き合はせて遊びたまへる、川波にきほひて聞こえはべるは、いとおもしろく、極楽思ひやられはべるや」<BR>⏎
<P>⏎
 と古体にめづれば、帝ほほ笑みたまひて、<BR>⏎
<P>⏎
 「さる聖のあたりに生ひ出でて、この世の方ざまは、たどたどしからむと推し量らるるを、をかしのことや。うしろめたく思ひ捨てがたく、もてわづらひたまふらむを、もししばしも後れむほどは、譲りやはしたまはぬ」<BR>⏎
<P>⏎
130-132 「げにはたこの姫君たちの、琴弾き合はせて遊びたまへる、川波にきほひて聞こえはべるは、いとおもしろく、極楽思ひやられはべるや」<BR>⏎
 と古体にめづれば、帝ほほ笑みたまひて、<BR>⏎
 「さる聖のあたりに生ひ出でて、この世の方ざまは、たどたどしからむと推し量らるるを、をかしのことや。うしろめたく思ひ捨てがたく、もてわづらひたまふらむを、もししばしも後れむほどは、譲りやはしたまはぬ」<BR>⏎
d1203<P>⏎
text45204 <A NAME="in23">[第三段 阿闍梨、八の宮に薫を語る]</A><BR>134 
d1205<P>⏎
d1207<P>⏎
d1209<P>⏎
d1211<P>⏎
d1213<P>⏎
cd3:1214-216 「世を厭ふ心は山にかよへども<BR>⏎
  八重立つ雲を君や隔つる」<BR>⏎
<P>⏎
139 「世を厭ふ心は山にかよへども<BR>  八重立つ雲を君や隔つる」<BR>⏎
d1218<P>⏎
cd5:2219-223 「あと絶えて心澄むとはなけれども<BR>⏎
  世を宇治山に宿をこそ借れ」<BR>⏎
<P>⏎
 聖の方をば卑下して聞こえなしたまへれば、「なほ世に恨み残りける」と、いとほしく御覧ず。<BR>⏎
<P>⏎
141-142 「あと絶えて心澄むとはなけれども<BR>  世を宇治山に宿をこそ借れ」<BR>⏎
 聖の方をば卑下して聞こえなしたまへれば、「なほ世に恨み残りける」と、いとほしく御覧ず。<BR>⏎
d1225<P>⏎
cd2:1226-227 「法文などの心得まほしき心ざしなむ、いはけなかりし齢より深く思ひながら、えさらず世にあり経るほど、公私に暇なく明け暮らし、わざと閉ぢ籠もりて習ひ読み、おほかたはかばかしくもあらぬ身にしも、世の中を背き顔ならむも、憚るべきにあらねど、おのづからうちたゆみ、紛らはしくてなむ過ぐし来るを、いとありがたき御ありさまを承り伝へしより、かく心にかけてなむ、頼みきこえさする、などねむごろに申したまひし」など語りきこゆ。<BR>⏎
<P>⏎
144 「法文などの心得まほしき心ざしなむ、いはけなかりし齢より深く思ひながら、えさらず世にあり経るほど、公私に暇なく明け暮らし、わざと閉ぢ籠もりて習ひ読み、おほかたはかばかしくもあらぬ身にしも、世の中を背き顔ならむも、憚るべきにあらねど、おのづからうちたゆみ、紛らはしくてなむ過ぐし来るを、いとありがたき御ありさまを承り伝へしより、かく心にかけてなむ、頼みきこえさする、などねむごろに申したまひし」など語りきこゆ。<BR>⏎
cd2:1229-230 「世の中をかりそめのことと思ひ取り、厭はしき心のつきそむることも、わが身に愁へある時、<A HREF="#no7">なべての世も恨めしう</A><A NAME="te7">思</A>ひ知る初めありてなむ、道心も起こるわざなめるを、年若く、世の中思ふにかなひ、何ごとも飽かぬことはあらじとおぼゆる身のほどに、さはた後の世をさへ、たどり知りたまふらむがありがたさ。<BR>⏎
<P>⏎
146 「世の中をかりそめのことと思ひ取り、厭はしき心のつきそむることも、わが身に愁へある時、<A HREF="#no7">なべての世も恨めしう</A><A NAME="te7">思</A>ひ知る初めありてなむ、道心も起こるわざなめるを、年若く、世の中思ふにかなひ、何ごとも飽かぬことはあらじとおぼゆる身のほどに、さはた後の世をさへ、たどり知りたまふらむがありがたさ。<BR>⏎
d1232<P>⏎
d1234<P>⏎
text45235 <A NAME="in24">[第四段 薫、八の宮と親交を結ぶ]</A><BR>149 
d1236<P>⏎
cd2:1237-238 げに聞きしよりもあはれに、住まひたまへるさまよりはじめて、いと仮なる草の庵に、思ひなし、ことそぎたり。同じき山里といへど、さる方にて心とまりぬべく、のどやかなるもあるを、いと荒ましき水の音、波の響きに、もの忘れうちし、夜など、心解けて夢をだに見るべきほどもなげに、すごく吹き払ひたり。<BR>⏎
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150 げに聞きしよりもあはれに、住まひたまへるさまよりはじめて、いと仮なる草の庵に、思ひなし、ことそぎたり。同じき山里といへど、さる方にて心とまりぬべく、のどやかなるもあるを、いと荒ましき水の音、波の響きに、もの忘れうちし、夜など、心解けて夢をだに見るべきほどもなげに、すごく吹き払ひたり。<BR>⏎
d1240<P>⏎
d1242<P>⏎
cd2:1243-244 されど「さる方を思ひ離るる願ひに、山深く尋ねきこえたる本意なく、好き好きしきなほざりごとをうち出であざればまむも、ことに違ひてや」など思ひ返して、宮の御ありさまのいとあはれなるを、ねむごろにとぶらひきこえたまひ、たびたび参りたまひつつ、思ひしやうに、<A HREF="#no8">優婆塞ながら行ふ山</A><A NAME="te8">の</A>深き心、法文など、わざとさかしげにはあらで、いとよくのたまひ知らす。<BR>⏎
<P>⏎
153 されど「さる方を思ひ離るる願ひに、山深く尋ねきこえたる本意なく、好き好きしきなほざりごとをうち出であざればまむも、ことに違ひてや」など思ひ返して、宮の御ありさまのいとあはれなるを、ねむごろにとぶらひきこえたまひ、たびたび参りたまひつつ、思ひしやうに、<A HREF="#no8">優婆塞ながら行ふ山</A><A NAME="te8">の</A>深き心、法文など、わざとさかしげにはあらで、いとよくのたまひ知らす。<BR>⏎
d1246<P>⏎
cd2:1247-248 またその人ならぬ仏の御弟子の、忌むことを保つばかりの尊さはあれど、けはひ卑しく言葉たみて、こちなげにもの馴れたる、いとものしくて、昼は、公事に暇なくなどしつつ、しめやかなる宵のほど、気近き御枕上などに召し入れ語らひたまふにも、いとさすがにものむつかしうなどのみあるを、いとあてに、心苦しきさまして、のたまひ出づる言の葉も、同じ仏の御教へをも、耳近きたとひにひきまぜ、いとこよなく深き御悟りにはあらねど、よき人は、ものの心を得たまふ方の、いとことにものしたまひければ、やうやう見馴れたてまつりたまふたびごとに、常に見たてまつらまほしうて、暇なくなどしてほど経る時は、恋しくおぼえたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
155 またその人ならぬ仏の御弟子の、忌むことを保つばかりの尊さはあれど、けはひ卑しく言葉たみて、こちなげにもの馴れたる、いとものしくて、昼は、公事に暇なくなどしつつ、しめやかなる宵のほど、気近き御枕上などに召し入れ語らひたまふにも、いとさすがにものむつかしうなどのみあるを、いとあてに、心苦しきさまして、のたまひ出づる言の葉も、同じ仏の御教へをも、耳近きたとひにひきまぜ、いとこよなく深き御悟りにはあらねど、よき人は、ものの心を得たまふ方の、いとことにものしたまひければ、やうやう見馴れたてまつりたまふたびごとに、常に見たてまつらまほしうて、暇なくなどしてほど経る時は、恋しくおぼえたまふ。<BR>⏎
d1250<P>⏎
text45251 <H4>第三章 薫の物語 八の宮の娘たちを垣間見る</H4>157 
text45252 <A NAME="in31">[第一段 晩秋に薫、宇治へ赴く]</A><BR>158 
d1253<P>⏎
cd2:1254-255 秋の末つ方、四季にあててしたまふ御念仏を、この川面は、網代の波も、このころはいとど耳かしかましく静かならぬを、とてかの阿闍梨の住む寺の堂に移ろひたまひて、七日のほど行ひたまふ。姫君たちは、いと心細く、つれづれまさりて眺めたまひけるころ、中将の君、久しく参らぬかなと、思ひ出できこえたまひけるままに、有明の月の、まだ夜深くさし出づるほどに出で立ちて、いと忍びて、御供に人などもなくて、やつれておはしけり。<BR>⏎
<P>⏎
159 秋の末つ方、四季にあててしたまふ御念仏を、この川面は、網代の波も、このころはいとど耳かしかましく静かならぬを、とてかの阿闍梨の住む寺の堂に移ろひたまひて、七日のほど行ひたまふ。姫君たちは、いと心細く、つれづれまさりて眺めたまひけるころ、中将の君、久しく参らぬかなと、思ひ出できこえたまひけるままに、有明の月の、まだ夜深くさし出づるほどに出で立ちて、いと忍びて、御供に人などもなくて、やつれておはしけり。<BR>⏎
d1257<P>⏎
cd5:2258-262 「山おろしに耐へぬ木の葉の露よりも<BR>⏎
  あやなくもろきわが涙かな」<BR>⏎
<P>⏎
 山賤のおどろくもうるさしとて、随身の音もせさせたまはず。柴の籬を分けて、そこはかとなき水の流れどもを踏みしだく駒の足音も、なほ忍びてと用意したまへるに、隠れなき御匂ひぞ、風に従ひて、<A HREF="#no9">主知らぬ香</A><A NAME="te9">と</A>おどろく寝覚めの家々ありける。<BR>⏎
<P>⏎
161-162 「山おろしに耐へぬ木の葉の露よりも<BR>  あやなくもろきわが涙かな」<BR>⏎
 山賤のおどろくもうるさしとて、随身の音もせさせたまはず。柴の籬を分けて、そこはかとなき水の流れどもを踏みしだく駒の足音も、なほ忍びてと用意したまへるに、隠れなき御匂ひぞ、風に従ひて、<A HREF="#no9">主知らぬ香</A><A NAME="te9">と</A>おどろく寝覚めの家々ありける。<BR>⏎
d1264<P>⏎
text45265 <A NAME="in32">[第二段 宿直人、薫を招き入れる]</A><BR>164 
d1266<P>⏎
d1268<P>⏎
d1270<P>⏎
d1272<P>⏎
d1274<P>⏎
d1276<P>⏎
cd2:1277-278 「しばしや」と召し寄せて、「年ごろ、人伝てにのみ聞きて、ゆかしく思ふ御琴の音どもを、うれしき折かな。しばしすこしたち隠れて聞くべきものの隈ありや。つきなくさし過ぎて参り寄らむほど、皆琴やめたまひては、いと本意なからむ」<BR>⏎
<P>⏎
170 「しばしや」と召し寄せて、「年ごろ、人伝てにのみ聞きて、ゆかしく思ふ御琴の音どもを、うれしき折かな。しばしすこしたち隠れて聞くべきものの隈ありや。つきなくさし過ぎて参り寄らむほど、皆琴やめたまひては、いと本意なからむ」<BR>⏎
d1280<P>⏎
d1282<P>⏎
d1284<P>⏎
cd2:1285-286 「あぢきなき御もの隠しなり。しか忍びたまふなれど、皆人、ありがたき世の例に、聞き出づべかめるを」とのたまひて、「なほしるべせよ。われは好き好きしき心など、なき人ぞ。かくておはしますらむ御ありさまの、あやしく、げになべてにおぼえたまはぬなり」<BR>⏎
<P>⏎
174 「あぢきなき御もの隠しなり。しか忍びたまふなれど、皆人、ありがたき世の例に、聞き出づべかめるを」とのたまひて、「なほしるべせよ。われは好き好きしき心など、なき人ぞ。かくておはしますらむ御ありさまの、あやしく、げになべてにおぼえたまはぬなり」<BR>⏎
d1288<P>⏎
cd4:2289-292 「あなかしこ。心なきやうに、後の聞こえやはべらむ」<BR>⏎
<P>⏎
 <A HREF="#k04">とて</A><A NAME="t04"></A>あなたの御前は、竹の透垣しこめて、皆隔てことなるを、教へ寄せたてまつれり。御供の人は、西の廊に呼び据ゑて、この宿直人あひしらふ。<BR>⏎
<P>⏎
176-177 「あなかしこ。心なきやうに、後の聞こえやはべらむ」<BR>⏎
 <A HREF="#k04">とて</A><A NAME="t04"></A>あなたの御前は、竹の透垣しこめて、皆隔てことなるを、教へ寄せたてまつれり。御供の人は、西の廊に呼び据ゑて、この宿直人あひしらふ。<BR>⏎
text45293 <A NAME="in33">[第三段 薫、姉妹を垣間見る]</A><BR>178 
d1294<P>⏎
d1296<P>⏎
d1298<P>⏎
cd2:1299-300 とてさしのぞきたる顔、いみじくらうたげに匂ひやかなるべし。<BR>⏎
<P>⏎
181 とてさしのぞきたる顔、いみじくらうたげに匂ひやかなるべし。<BR>⏎
d1302<P>⏎
d1304<P>⏎
cd2:1305-306 とてうち笑ひたるけはひ、今少し重りかによしづきたり。<BR>⏎
<P>⏎
184 とてうち笑ひたるけはひ、今少し重りかによしづきたり。<BR>⏎
d1308<P>⏎
cd6:3309-314 などはかなきことを、うち解けのたまひ交はしたるけはひども、さらによそに思ひやりしには似ず、いとあはれになつかしうをかし。<BR>⏎
<P>⏎
 「昔物語などに語り伝へて、<A HREF="#k05">若き</A><A NAME="t05">女</A>房などの読むをも聞くに、かならずかやうのことを言ひたる、さしもあらざりけむ」と、憎く推し量らるるを、「げにあはれなるものの隈ありぬべき世なりけり」と、心移りぬべし。<BR>⏎
<P>⏎
 霧の深ければ、さやかに見ゆべくもあらず。また月さし出でなむと思すほどに、奥の方より、「人おはす」と告げきこゆる人やあらむ、簾下ろして皆入りぬ。おどろき顔にはあらず、なごやかにもてなして、やをら隠れぬるけはひども、衣の音もせず、いとなよよかに心苦しくて、いみじうあてにみやびかなるを、あはれと思ひたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
186-188 などはかなきことを、うち解けのたまひ交はしたるけはひども、さらによそに思ひやりしには似ず、いとあはれになつかしうをかし。<BR>⏎
 「昔物語などに語り伝へて、<A HREF="#k05">若き</A><A NAME="t05">女</A>房などの読むをも聞くに、かならずかやうのことを言ひたる、さしもあらざりけむ」と、憎く推し量らるるを、「げにあはれなるものの隈ありぬべき世なりけり」と、心移りぬべし。<BR>⏎
 霧の深ければ、さやかに見ゆべくもあらず。また月さし出でなむと思すほどに、奥の方より、「人おはす」と告げきこゆる人やあらむ、簾下ろして皆入りぬ。おどろき顔にはあらず、なごやかにもてなして、やをら隠れぬるけはひども、衣の音もせず、いとなよよかに心苦しくて、いみじうあてにみやびかなるを、あはれと思ひたまふ。<BR>⏎
d1316<P>⏎
d1318<P>⏎
d1320<P>⏎
text45321 <A NAME="in34">[第四段 薫、大君と御簾を隔てて対面]</A><BR>192 
d1322<P>⏎
d1324<P>⏎
d1326<P>⏎
d1328<P>⏎
d1330<P>⏎
cd2:1331-332 といとまめやかにのたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
197 といとまめやかにのたまふ。<BR>⏎
d1334<P>⏎
cd6:3335-340 「何ごとも思ひ知らぬありさまにて、知り顔にも、いかばかりかは聞こゆべく」<BR>⏎
<P>⏎
 といとよしあり、あてなる声して、ひき入りながらほのかにのたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
 「かつ知りながら、憂きを知らず顔なるも、世のさがと思うたまへ知るを、一所しも、あまりおぼめかせたまふらむこそ、口惜しかるべけれ。ありがたう、よろづを思ひ澄ましたる御住まひなどに、たぐひきこえさせたまふ御心のうちは、何ごとも涼しく推し量られはべれば、なほかく忍びあまりはべる深さ浅さのほども、分かせたまはむこそ、かひははべらめ。<BR>⏎
<P>⏎
199-201 「何ごとも思ひ知らぬありさまにて、知り顔にも、いかばかりかは聞こゆべく」<BR>⏎
 といとよしあり、あてなる声して、ひき入りながらほのかにのたまふ。<BR>⏎
 「かつ知りながら、憂きを知らず顔なるも、世のさがと思うたまへ知るを、一所しも、あまりおぼめかせたまふらむこそ、口惜しかるべけれ。ありがたう、よろづを思ひ澄ましたる御住まひなどに、たぐひきこえさせたまふ御心のうちは、何ごとも涼しく推し量られはべれば、なほかく忍びあまりはべる深さ浅さのほども、分かせたまはむこそ、かひははべらめ。<BR>⏎
d1342<P>⏎
cd4:2343-346 おのづから聞こしめし合はするやうもはべりなむ。つれづれとのみ過ぐしはべる世の物語も、聞こえさせ所に頼みきこえさせ、またかく、世離れて、眺めさせたまふらむ御心の紛らはしには、さしも驚かせたまふばかり聞こえ馴れはべらば、いかに思ふさまにはべらむ」<BR>⏎
<P>⏎
 など多くのたまへば、つつましく、いらへにくくて、起こしつる老い人の出で来たるにぞ、譲りたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
203-204 おのづから聞こしめし合はするやうもはべりなむ。つれづれとのみ過ぐしはべる世の物語も、聞こえさせ所に頼みきこえさせ、またかく、世離れて、眺めさせたまふらむ御心の紛らはしには、さしも驚かせたまふばかり聞こえ馴れはべらば、いかに思ふさまにはべらむ」<BR>⏎
 など多くのたまへば、つつましく、いらへにくくて、起こしつる老い人の出で来たるにぞ、譲りたまふ。<BR>⏎
text45347 <A NAME="in35">[第五段 老女房の弁が応対]</A><BR>205 
d1348<P>⏎
d1350<P>⏎
cd4:2351-354 「あなかたじけなや。かたはらいたき御座のさまにもはべるかな。御簾の内にこそ。若き人びとは、物のほど知らぬやうにはべるこそ」<BR>⏎
<P>⏎
 など<A HREF="#k07">したたかに</A><A NAME="t07">言</A>ふ声のさだすぎたるも、かたはらいたく君たちは思す。<BR>⏎
<P>⏎
207-208 「あなかたじけなや。かたはらいたき御座のさまにもはべるかな。御簾の内にこそ。若き人びとは、物のほど知らぬやうにはべるこそ」<BR>⏎
 など<A HREF="#k07">したたかに</A><A NAME="t07">言</A>ふ声のさだすぎたるも、かたはらいたく君たちは思す。<BR>⏎
d1356<P>⏎
cd6:3357-362 といとつつみなくもの馴れたるも、なま憎きものから、けはひいたう人めきて、よしある声なれば、<BR>⏎
<P>⏎
 「いとたづきも知らぬ心地しつるに、うれしき御けはひにこそ。何ごとも、げに思ひ知りたまひける頼み、こよなかりけり」<BR>⏎
<P>⏎
 とて寄り居たまへるを、几帳の側より見れば、曙、やうやう物の色分かるるに、げにやつしたまへると見ゆる狩衣姿の、いと濡れしめりたるほど、「うたてこの世の外の匂ひにや」と、あやしきまで薫り満ちたり。<BR>⏎
<P>⏎
210-212 といとつつみなくもの馴れたるも、なま憎きものから、けはひいたう人めきて、よしある声なれば、<BR>⏎
 「いとたづきも知らぬ心地しつるに、うれしき御けはひにこそ。何ごとも、げに思ひ知りたまひける頼み、こよなかりけり」<BR>⏎
 とて寄り居たまへるを、几帳の側より見れば、曙、やうやう物の色分かるるに、げにやつしたまへると見ゆる狩衣姿の、いと濡れしめりたるほど、「うたてこの世の外の匂ひにや」と、あやしきまで薫り満ちたり。<BR>⏎
text45363 <A NAME="in36">[第六段 老女房の弁の昔語り]</A><BR>213 
d1364<P>⏎
d1366<P>⏎
d1368<P>⏎
c1369 とうちわななくけしき、まことにいみじくもの悲しと思へり。<BR>⏎
216 とうちわななくけしき、まことにいみじくもの悲しと思へり。<BR>⏎
d1371<P>⏎
cd8:4372-379 「ここにかく参るをば、たび重なりぬるを、かくあはれ知りたまへる人もなくてこそ、露けき道のほどに、独りのみそほちつれ。うれしきついでなめるを、言な残いたまひそかし」とのたまへば、<BR>⏎
<P>⏎
 「かかるついでしも、はべらじかし。またはべりとも、夜の間のほど知らぬ命の、頼むべきにもはべらぬを。さらばただかかる古者、世にはべりけりとばかり、知ろしめされはべらなむ。<BR>⏎
<P>⏎
 三条の宮にはべりし小侍従、はかなくなりはべりにけると、ほの聞きはべりし。そのかみ、睦ましう思うたまへし同じほどの人、多く亡せはべりにける世の末に、はるかなる世界より伝はりまうで来て、この五六年のほどなむ、これにかくさぶらひはべる。<BR>⏎
<P>⏎
 知ろしめさじかしこのころ、藤大納言と申すなる御兄の、右衛門督にて隠れたまひにしは、物のついでなどにや、かの御上とて、聞こしめし伝ふることもはべらむ。<BR>⏎
<P>⏎
218-221 「ここにかく参るをば、たび重なりぬるを、かくあはれ知りたまへる人もなくてこそ、露けき道のほどに、独りのみそほちつれ。うれしきついでなめるを、言な残いたまひそかし」とのたまへば、<BR>⏎
 「かかるついでしも、はべらじかし。またはべりとも、夜の間のほど知らぬ命の、頼むべきにもはべらぬを。さらばただかかる古者、世にはべりけりとばかり、知ろしめされはべらなむ。<BR>⏎
 三条の宮にはべりし小侍従、はかなくなりはべりにけると、ほの聞きはべりし。そのかみ、睦ましう思うたまへし同じほどの人、多く亡せはべりにける世の末に、はるかなる世界より伝はりまうで来て、この五六年のほどなむ、これにかくさぶらひはべる。<BR>⏎
 知ろしめさじかし. このころ、藤大納言と申すなる御兄の、右衛門督にて隠れたまひにしは、物のついでなどにや、かの御上とて、聞こしめし伝ふることもはべらむ。<BR>⏎
d1381<P>⏎
d1383<P>⏎
cd8:4384-391 とてさすがにうち出でずなりぬ。<BR>⏎
<P>⏎
 あやしく、夢語り、巫女やうのものの、問はず語りすらむやうに、めづらかに思さるれど、あはれにおぼつかなく思しわたることの筋を聞こゆれば、いと奥ゆかしけれど、げに人目もしげし、さしぐみに古物語にかかづらひて、夜を明かし果てむも、<A HREF="#k08">こちごちしかる</A><A NAME="t08">べ</A>ければ、<BR>⏎
<P>⏎
 「そこはかと思ひ分くことは、なきものから、いにしへのことと聞きはべるも、ものあはれになむ。さらばかならずこの残り聞かせたまへ。霧晴れゆかば、はしたなかるべきやつれを、面なく御覧じとがめられぬべきさまなれば、思うたまふる心のほどよりは、口惜しうなむ」<BR>⏎
<P>⏎
 とて立ちたまふに、かのおはします寺の鐘の声、かすかに聞こえて、霧いと深くたちわたれり。<BR>⏎
<P>⏎
224-227 とてさすがにうち出でずなりぬ。<BR>⏎
 あやしく、夢語り、巫女やうのものの、問はず語りすらむやうに、めづらかに思さるれど、あはれにおぼつかなく思しわたることの筋を聞こゆれば、いと奥ゆかしけれど、げに人目もしげし、さしぐみに古物語にかかづらひて、夜を明かし果てむも、<A HREF="#k08">こちごちしかる</A><A NAME="t08">べ</A>ければ、<BR>⏎
 「そこはかと思ひ分くことは、なきものから、いにしへのことと聞きはべるも、ものあはれになむ。さらばかならずこの残り聞かせたまへ。霧晴れゆかば、はしたなかるべきやつれを、面なく御覧じとがめられぬべきさまなれば、思うたまふる心のほどよりは、口惜しうなむ」<BR>⏎
 とて立ちたまふに、かのおはします寺の鐘の声、かすかに聞こえて、霧いと深くたちわたれり。<BR>⏎
text45392 <A NAME="in37">[第七段 薫、大君と和歌を詠み交して帰京]</A><BR>228 
d1393<P>⏎
cd4:2394-397 <A HREF="#no11">峰の八重雲、思ひやる隔て</A><A NAME="te11">多</A>く、あはれなるに、なほこの姫君たちの御心のうちども心苦しう、「何ごとを思し残すらむ。かくいと奥まりたまへるも、ことわりぞかし」などおぼゆ。<BR>⏎
<P>⏎
 「あさぼらけ家路も見えず尋ね来し<BR>⏎
  槙の尾山は霧こめてけり<BR>⏎
229-230 <A HREF="#no11">峰の八重雲、思ひやる隔て</A><A NAME="te11">多</A>く、あはれなるに、なほこの姫君たちの御心のうちども心苦しう、「何ごとを思し残すらむ。かくいと奥まりたまへるも、ことわりぞかし」などおぼゆ。<BR>⏎
 「あさぼらけ家路も見えず尋ね来し<BR>  槙の尾山は霧こめてけり<BR>⏎
d1399<P>⏎
cd5:2400-404 と立ち返りやすらひたまへるさまを、都の人の目馴れたるだに、なほいとことに思ひきこえたるを、まいていかがはめづらしう見きこえざらむ。御返り聞こえ伝へにくげに思ひたれば、例の、いとつつましげにて、<BR>⏎
<P>⏎
 「雲のゐる峰のかけ路を秋霧の<BR>⏎
  いとど隔つるころにもあるかな」<BR>⏎
<P>⏎
232-233 と立ち返りやすらひたまへるさまを、都の人の目馴れたるだに、なほいとことに思ひきこえたるを、まいていかがはめづらしう見きこえざらむ。御返り聞こえ伝へにくげに思ひたれば、例の、いとつつましげにて、<BR>⏎
 「雲のゐる峰のかけ路を秋霧の<BR>  いとど隔つるころにもあるかな」<BR>⏎
d1406<P>⏎
cd10:5407-416 何ばかりをかしきふしは見えぬあたりなれど、げに心苦しきこと多かるにも、明うなりゆけば、さすがにひた面なる心地して、<BR>⏎
<P>⏎
 「なかなかなるほどに、承りさしつること多かる残りは、今すこし面馴れてこそは、恨みきこえさすべかめれ。さるはかく世の人めいて、もてなしたまふべくは、思はずに、もの思し分かざりけりと、恨めしうなむ」<BR>⏎
<P>⏎
 とて宿直人がしつらひたる西面におはして、眺めたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
 「網代は、人騒がしげなり。されど氷魚も寄らぬにやあらむ。すさまじげなるけしきなり」<BR>⏎
<P>⏎
 と御供の人びと見知りて言ふ。<BR>⏎
<P>⏎
235-239 何ばかりをかしきふしは見えぬあたりなれど、げに心苦しきこと多かるにも、明うなりゆけば、さすがにひた面なる心地して、<BR>⏎
 「なかなかなるほどに、承りさしつること多かる残りは、今すこし面馴れてこそは、恨みきこえさすべかめれ。さるはかく世の人めいて、もてなしたまふべくは、思はずに、もの思し分かざりけりと、恨めしうなむ」<BR>⏎
 とて宿直人がしつらひたる西面におはして、眺めたまふ。<BR>⏎
 「網代は、人騒がしげなり。されど氷魚も寄らぬにやあらむ。すさまじげなるけしきなり」<BR>⏎
 と御供の人びと見知りて言ふ。<BR>⏎
d1418<P>⏎
d1420<P>⏎
cd2:1421-422 「<A HREF="#no12">橋姫の心</A><A NAME="te12">を</A>汲みて高瀬さす<BR>⏎
  棹のしづくに袖ぞ濡れぬる<BR>⏎
242 「<A HREF="#no12">橋姫の心</A><A NAME="te12">を</A>汲みて高瀬さす<BR>  棹のしづくに袖ぞ濡れぬる<BR>⏎
d1424<P>⏎
cd4:2425-428 とて宿直人に持たせたまへり。いと寒げに、いららぎたる顔して持て参る。御返り、紙の香など、おぼろけならむ恥づかしげなるを、疾きをこそかかる折には、とて<BR>⏎
<P
>⏎
 「さしかへる宇治の河長朝夕の<BR>⏎
  しづくや袖を朽たし果つらむ<BR>⏎
244-245 とて宿直人に持たせたまへり。いと寒げに、いららぎたる顔して持て参る。御返り、紙の香など、おぼろけならむ恥づかしげなるを、疾きをこそかかる折には、とて<BR>⏎
 「さしかへる宇治の河長朝夕の<BR>  しづくや袖を朽たし果つらむ<BR>⏎
d1430<P>⏎
cd2:1431-432 といとをかしげに書きたまへり。「まほにめやすくも<A HREF="#k09">ものし</A><A NAME="t09">た</A>まひけり」と、心とまりぬれど、<BR>⏎
<P>⏎
247 といとをかしげに書きたまへり。「まほにめやすくも<A HREF="#k09">ものし</A><A NAME="t09">た</A>まひけり」と、心とまりぬれど、<BR>⏎
d1434<P>⏎
cd2:1435-436 と人びと騒がしきこゆれば、宿直人ばかりを召し寄せて、<BR>⏎
<P>⏎
249 と人びと騒がしきこゆれば、宿直人ばかりを召し寄せて、<BR>⏎
d1438<P>⏎
d1440<P>⏎
text45441 <A NAME="in38">[第八段 薫、宇治へ手紙を書く]</A><BR>252 
d1442<P>⏎
cd2:1443-444 老い人の物語、心にかかりて思し出でらる。思ひしよりは、こよなくまさりて、をかしかりつる御けはひども、面影に添ひて、「なほ思ひ離れがたき世なりけり」と、心弱く思ひ知らる。<BR>⏎
<P>⏎
253 老い人の物語、心にかかりて思し出でらる。思ひしよりは、こよなくまさりて、をかしかりつる御けはひども、面影に添ひて、「なほ思ひ離れがたき世なりけり」と、心弱く思ひ知らる。<BR>⏎
d1446<P>⏎
d1448<P>⏎
cd2:1449-450 などぞいとすくよかに書きたまへる。左近将監なる人、御使にて、<BR>⏎
<P>⏎
256 などぞいとすくよかに書きたまへる。左近将監なる人、御使にて、<BR>⏎
d1452<P>⏎
d1454<P>⏎
d1456<P>⏎
d1458<P>⏎
cd2:1459-460 宿直人が、御脱ぎ捨ての、艶にいみじき狩の御衣ども、えならぬ白き綾の御衣の、なよなよといひ知らず匂へるを、移し着て、身をはたえ変へぬものなれば、似つかはしからぬ袖の香を、<A HREF="#no14">人ごとにとがめられ</A><A NAME="te14">、</A>めでらるるなむ、なかなか所狭かりける。<BR>⏎
<P>⏎
261 宿直人が、御脱ぎ捨ての、艶にいみじき狩の御衣ども、えならぬ白き綾の御衣の、なよなよといひ知らず匂へるを、移し着て、身をはたえ変へぬものなれば、似つかはしからぬ袖の香を、<A HREF="#no14">人ごとにとがめられ</A><A NAME="te14">、</A>めでらるるなむ、なかなか所狭かりける。<BR>⏎
d1462<P>⏎
text45463 <A NAME="in39">[第九段 薫、匂宮に宇治の姉妹を語る]</A><BR>263 
d1464<P>⏎
d1466<P>⏎
d1468<P>⏎
d1470<P>⏎
cd2:1471-472 例の、さまざまなる御物語聞こえ交はしたまふついでに、宇治の宮の御こと語り出でて、見し暁のありさまなど、詳しく聞こえたまふに、宮、いと切にをかしと思いたり。<BR>⏎
<P>⏎
267 例の、さまざまなる御物語聞こえ交はしたまふついでに、宇治の宮の御こと語り出でて、見し暁のありさまなど、詳しく聞こえたまふに、宮、いと切にをかしと思いたり。<BR>⏎
d1474<P>⏎
cd2:1475-476 「さてそのありけむ返りことは、などか見せたまはざりし。まろならましかば」と恨みたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
269 「さてそのありけむ返りことは、などか見せたまはざりし。まろならましかば」と恨みたまふ。<BR>⏎
d1478<P>⏎
d1480<P>⏎
cd2:1481-482 ほのかなりし月影の見劣りせずは、まほならむはや。けはひありさま、はたさばかりならむをぞ、あらまほしきほどとは、おぼえはべるべき」<BR>⏎
<P>⏎
272 ほのかなりし月影の見劣りせずは、まほならむはや。けはひありさま、はたさばかりならむをぞ、あらまほしきほどとは、おぼえはべるべき」<BR>⏎
d1484<P>⏎
d1486<P>⏎
cd6:3487-492 「なほまたまた、よくけしき見たまへ」<BR>⏎
<P>⏎
 と人を勧めたまひて、限りある御身のほどのよだけさを、厭はしきまで、心もとなしと思したれば、をかしくて、<BR>⏎
<P>⏎
 「いでやよしなくぞはべる。しばし世の中に心とどめじと思うたまふるやうある身にて、なほざりごともつつましうはべるを、心ながらかなはぬ心つきそめなば、おほきに思ひに違ふべきことなむ、はべるべき」<BR>⏎
<P>⏎
275-277 「なほまたまた、よくけしき見たまへ」<BR>⏎
 と人を勧めたまひて、限りある御身のほどのよだけさを、厭はしきまで、心もとなしと思したれば、をかしくて、<BR>⏎
 「いでやよしなくぞはべる。しばし世の中に心とどめじと思うたまふるやうある身にて、なほざりごともつつましうはべるを、心ながらかなはぬ心つきそめなば、おほきに思ひに違ふべきことなむ、はべるべき」<BR>⏎
d1494<P>⏎
cd2:1495-496 「いであな、ことことし。例の、おどろおどろしき聖言葉、見果ててしがな」<BR>⏎
<P>⏎
279 「いであな、ことことし。例の、おどろおどろしき聖言葉、見果ててしがな」<BR>⏎
d1498<P>⏎
text45499 <H4>第四章 薫の物語 薫、出生の秘密を知る</H4>281 
text45500 <A NAME="in41">[第一段 十月初旬、薫宇治へ赴く]</A><BR>282 
d1501<P>⏎
cd2:1502-503 十月になりて、五六日のほどに、宇治へ参うでたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
283 十月になりて、五六日のほどに、宇治へ参うでたまふ。<BR>⏎
d1505<P>⏎
cd4:2506-509 「何かその蜉蝣に争ふ心にて、網代にも寄らむ」<BR>⏎
<P>⏎
 とそぎ捨てたまひて、例の、いと忍びやかにて出で立ちたまふ。軽らかに網代車にて、かとりの直衣指貫縫はせて、ことさらび着たまへり。<BR>⏎
<P>⏎
285-286 「何かその蜉蝣に争ふ心にて、網代にも寄らむ」<BR>⏎
 とそぎ捨てたまひて、例の、いと忍びやかにて出で立ちたまふ。軽らかに網代車にて、かとりの直衣指貫縫はせて、ことさらび着たまへり。<BR>⏎
d1511<P>⏎
d1513<P>⏎
d1515<P>⏎
d1517<P>⏎
d1519<P>⏎
d1521<P>⏎
d1523<P>⏎
cd10:5524-533 とて琵琶召して、客人にそそのかしたまふ。取りて調べたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
 「さらにほのかに聞きはべりし同じものとも思うたまへられざりけり。御琴の響きからにやとこそ、思うたまへしか」<BR>⏎
<P>⏎
 とて心解けても掻きたてたまはず。<BR>⏎
<P>⏎
 「いであな、さがなや。しか御耳とまるばかりの手などは、何処よりかここまでは伝はり来む。あるまじき御ことなり」<BR>⏎
<P>⏎
 とて琴掻きならしたまへる、いとあはれに心すごし。かたへは、<A HREF="#no15">峰の松風のもてはやす</A><A NAME="te15">な</A>るべし。いとたどたどしげにおぼめきたまひて、心ばへあり。手一つばかりにてやめたまひつ。<BR>⏎
<P>⏎
294-298 とて琵琶召して、客人にそそのかしたまふ。取りて調べたまふ。<BR>⏎
 「さらにほのかに聞きはべりし同じものとも思うたまへられざりけり。御琴の響きからにやとこそ、思うたまへしか」<BR>⏎
 とて心解けても掻きたてたまはず。<BR>⏎
 「いであな、さがなや。しか御耳とまるばかりの手などは、何処よりかここまでは伝はり来む。あるまじき御ことなり」<BR>⏎
 とて琴掻きならしたまへる、いとあはれに心すごし。かたへは、<A HREF="#no15">峰の松風のもてはやす</A><A NAME="te15">な</A>るべし。いとたどたどしげにおぼめきたまひて、心ばへあり。手一つばかりにてやめたまひつ。<BR>⏎
text45534 <A NAME="in42">[第二段 薫、八の宮の娘たちの後見を承引]</A><BR>299 
d1535<P>⏎
cd4:2536-539 「このわたりに、おぼえなくて、折々ほのめく箏の琴の音こそ、心得たるにや、と聞く折はべれど、心とどめてなどもあらで、久しうなりにけりや。心にまかせて、おのおの掻きならすべかめるは、川波ばかりや打ち合はすらむ。論なう、物の用にすばかりの拍子なども、とまらじとなむ、おぼえはべる」とて、「掻き鳴らしたまへ」<BR>⏎
<P>⏎
 とあなたに聞こえたまへど、「思ひ寄らざりし独り言を、聞きたまひけむだにあるものを、いとかたはならむ」とひき入りつつ、皆聞きたまはず。たびたびそそのかしたまへど、とかく聞こえすさびて、やみたまひぬめれば、いと口惜しうおぼゆ。<BR>⏎
<P>⏎
300-301 「このわたりに、おぼえなくて、折々ほのめく箏の琴の音こそ、心得たるにや、と聞く折はべれど、心とどめてなどもあらで、久しうなりにけりや。心にまかせて、おのおの掻きならすべかめるは、川波ばかりや打ち合はすらむ。論なう、物の用にすばかりの拍子なども、とまらじとなむ、おぼえはべる」とて、「掻き鳴らしたまへ」<BR>⏎
 とあなたに聞こえたまへど、「思ひ寄らざりし独り言を、聞きたまひけむだにあるものを、いとかたはならむ」とひき入りつつ、皆聞きたまはず。たびたびそそのかしたまへど、とかく聞こえすさびて、やみたまひぬめれば、いと口惜しうおぼゆ。<BR>⏎
d1541<P>⏎
cd4:2542-545 「人にだにいかで知らせじと、はぐくみ過ぐせど、今日明日とも知らぬ身の残り少なさに、さすがに、行く末遠き人は、落ちあふれてさすらへむこと、これ<A HREF="#k12">のみこそ</A><A NAME="t12">、</A>げに世を離れむ際のほだしなりけれ」<BR>⏎
<P>⏎
 とうち語らひたまへば、心苦しう見たてまつりたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
303-304 「人にだにいかで知らせじと、はぐくみ過ぐせど、今日明日とも知らぬ身の残り少なさに、さすがに、行く末遠き人は、落ちあふれてさすらへむこと、これ<A HREF="#k12">のみこそ</A><A NAME="t12">、</A>げに世を離れむ際のほだしなりけれ」<BR>⏎
 とうち語らひたまへば、心苦しう見たてまつりたまふ。<BR>⏎
d1547<P>⏎
d1549<P>⏎
text45550 <A NAME="in43">[第三段 薫、弁の君の昔語りの続きを聞く]</A><BR>307 
d1551<P>⏎
c1552 さて暁方の、宮の御行ひしたまふほどに、かの老い人召し出でて、会ひたまへり。<BR>⏎
308 さて暁方の、宮の御行ひしたまふほどに、かの老い人召し出でて、会ひたまへり。<BR>⏎
d1554<P>⏎
cd6:3555-560 故権大納言の君の、世とともにものを思ひつつ、病づき、はかなくなりたまひにしありさまを、聞こえ出でて泣くこと限りなし。<BR>⏎
<P>⏎
 「げによその人の上と聞かむだに、あはれなるべき古事どもを、まして年ごろおぼつかなく、ゆかしう、いかなりけむことの初めにかと、仏にも、このことをさだかに知らせたまへと、念じつる験にや、かく夢のやうにあはれなる昔語りを、おぼえぬついでに聞きつけつらむ」と思すに、涙とどめがたかりけり。<BR>⏎
<P>⏎
 「さてもかくその世の心知りたる人も残りたまへりけるを。めづらかにも恥づかしうもおぼゆることの筋に、なほかく言ひ伝ふるたぐひや、またもあらむ。年ごろ、かけても聞き及ばざりける」とのたまへば、<BR>⏎
<P>⏎
310-312 故権大納言の君の、世とともにものを思ひつつ、病づき、はかなくなりたまひにしありさまを、聞こえ出でて泣くこと限りなし。<BR>⏎
 「げによその人の上と聞かむだに、あはれなるべき古事どもを、まして年ごろおぼつかなく、ゆかしう、いかなりけむことの初めにかと、仏にも、このことをさだかに知らせたまへと、念じつる験にや、かく夢のやうにあはれなる昔語りを、おぼえぬついでに聞きつけつらむ」と思すに、涙とどめがたかりけり。<BR>⏎
 「さてもかくその世の心知りたる人も残りたまへりけるを。めづらかにも恥づかしうもおぼゆることの筋に、なほかく言ひ伝ふるたぐひや、またもあらむ。年ごろ、かけても聞き及ばざりける」とのたまへば、<BR>⏎
d1562<P>⏎
d1564<P>⏎
cd4:2565-568 御覧ぜさすべき物もはべり。今は何かは焼きも捨てはべりなむ。かく朝夕の消えを知らぬ身の、うち捨てはべりなば、落ち散るやうもこそと、いとうしろめたく思うたまふれど、この宮わたりにも、時々、ほのめかせたまふを、待ち出でたてまつりてしは、すこし頼もしく、かかる折もやと、念じはべりつる力出でまうで来てなむ。さらにこれは、この世のことにもはべらじ」<BR>⏎
<P>⏎
 と泣く泣く、こまかに、生まれたまひけるほどのことも、よくおぼえつつ聞こゆ。<BR>⏎
<P>⏎
315-316 御覧ぜさすべき物もはべり。今は何かは焼きも捨てはべりなむ。かく朝夕の消えを知らぬ身の、うち捨てはべりなば、落ち散るやうもこそと、いとうしろめたく思うたまふれど、この宮わたりにも、時々、ほのめかせたまふを、待ち出でたてまつりてしは、すこし頼もしく、かかる折もやと、念じはべりつる力出でまうで来てなむ。さらにこれは、この世のことにもはべらじ」<BR>⏎
 と泣く泣く、こまかに、生まれたまひけるほどのことも、よくおぼえつつ聞こゆ。<BR>⏎
text45569 <A NAME="in44">[第四段 薫、父柏木の最期を聞く]</A><BR>317 
d1570<P>⏎
cd2:1571-572 「空しうなりたまひし騷ぎに、母にはべりし人は、やがて病づきて、ほども経ず隠れはべりにしかば、いとど思うたまへしづみ、藤衣たち重ね、悲しきことを思うたまへしほどに、年ごろ、よからぬ人の心をつけたりけるが、人をはかりごちて、西の海の果てまで取りもてまかりにしかば、京のことさへ跡絶えて、その人もかしこにて亡せはべりにし後、十年あまりにてなむ、あらぬ世の心地して、まかり上りたりしを、この宮は、父方につけて、童より参り通ふゆゑはべりしかば、今はかう世に交じらふべきさまにもはべらぬを、冷泉院の女御殿の御方などこそは、昔聞き馴れたてまつりしわたりにて、参り寄るべくはべりしかど、はしたなくおぼえはべりて、えさし出ではべらで、<A HREF="#no16">深山隠れの朽木</A><A NAME="te16">に</A>なりにてはべるなり。<BR>⏎
<P>⏎
318 「空しうなりたまひし騷ぎに、母にはべりし人は、やがて病づきて、ほども経ず隠れはべりにしかば、いとど思うたまへしづみ、藤衣たち重ね、悲しきことを思うたまへしほどに、年ごろ、よからぬ人の心をつけたりけるが、人をはかりごちて、西の海の果てまで取りもてまかりにしかば、京のことさへ跡絶えて、その人もかしこにて亡せはべりにし後、十年あまりにてなむ、あらぬ世の心地して、まかり上りたりしを、この宮は、父方につけて、童より参り通ふゆゑはべりしかば、今はかう世に交じらふべきさまにもはべらぬを、冷泉院の女御殿の御方などこそは、昔聞き馴れたてまつりしわたりにて、参り寄るべくはべりしかど、はしたなくおぼえはべりて、えさし出ではべらで、<A HREF="#no16">深山隠れの朽木</A><A NAME="te16">に</A>なりにてはべるなり。<BR>⏎
d1574<P>⏎
d1576<P>⏎
cd2:1577-578 「よしさらば、この昔物語は尽きすべくなむあらぬ。また人聞かぬ心やすき所にて聞こえむ。侍従といひし人は、ほのかにおぼゆるは、五つ六つばかりなりしほどにや、にはかに胸を病みて亡せにきとなむ聞く。かかる対面なくは、罪重き身にて過ぎぬべかりけること」などのたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
321 「よしさらば、この昔物語は尽きすべくなむあらぬ。また人聞かぬ心やすき所にて聞こえむ。侍従といひし人は、ほのかにおぼゆるは、五つ六つばかりなりしほどにや、にはかに胸を病みて亡せにきとなむ聞く。かかる対面なくは、罪重き身にて過ぎぬべかりけること」などのたまふ。<BR>⏎
text45579 <A NAME="in45">[第五段 薫、形見の手紙を得る]</A><BR>322 
d1580<P>⏎
d1582<P>⏎
cd2:1583-584 「御前にて失はせたまへ。『われなほ生くべくもあらずなりにたり』とのたまはせて、この御文を取り集めて、賜はせたりしかば、小侍従に、またあひ見はべらむついでに、さだかに伝へ参らせむ、と思うたまへしを、やがて別れはべりにしも、私事には、飽かず悲しうなむ思うたまふる」<BR>⏎
<P>⏎
324 「御前にて失はせたまへ。『われなほ生くべくもあらずなりにたり』とのたまはせて、この御文を取り集めて、賜はせたりしかば、小侍従に、またあひ見はべらむついでに、さだかに伝へ参らせむ、と思うたまへしを、やがて別れはべりにしも、私事には、飽かず悲しうなむ思うたまふる」<BR>⏎
d1586<P>⏎
d1588<P>⏎
d1590<P>⏎
cd4:2591-594 「かくしばしば立ち寄らせたまふ光に、山の蔭も、すこしもの明らむる心地してなむ」<BR>⏎
<P>⏎
 などよろこび聞こえたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
328-329 「かくしばしば立ち寄らせたまふ光に、山の蔭も、すこしもの明らむる心地してなむ」<BR>⏎
 などよろこび聞こえたまふ。<BR>⏎
text45595 <A NAME="in46">[第六段 薫、父柏木の遺文を読む]</A><BR>330 
d1596<P>⏎
d1598<P>⏎
cd7:3599-605 色々の紙にて、たまさかに通ひける御文の返りこと、五つ六つぞある。さてはかの御手にて、病は重く限りになりにたるに、またほのかにも聞こえむこと難くなりぬるを、ゆかしう思ふことは添ひにたり、御容貌も変りておはしますらむが、さまざま悲しきことを、陸奥紙五六枚に、つぶつぶと、あやしき鳥の跡のやうに書きて、<BR>⏎
<P>⏎
 「目の前にこの世を背く君よりも<BR>⏎
  よそに別るる<A HREF="#no17">魂ぞ悲しき</A><A NAME="te17">」</A><BR>⏎
<P>⏎
 また端に、<BR>⏎
<P>⏎
332-334 色々の紙にて、たまさかに通ひける御文の返りこと、五つ六つぞある。さてはかの御手にて、病は重く限りになりにたるに、またほのかにも聞こえむこと難くなりぬるを、ゆかしう思ふことは添ひにたり、御容貌も変りておはしますらむが、さまざま悲しきことを、陸奥紙五六枚に、つぶつぶと、あやしき鳥の跡のやうに書きて、<BR>⏎
 「目の前にこの世を背く君よりも<BR>  よそに別るる<A HREF="#no17">魂ぞ悲しき</A><A NAME="te17">」</A><BR>⏎
 また端に、<BR>⏎
d1607<P>⏎
cd3:1608-610  命あらばそれとも見まし人知れぬ<BR>⏎
  岩根にとめし松の生ひ末」<BR>⏎
 <P>⏎
336  命あらばそれとも見まし人知れぬ<BR>  岩根にとめし松の生ひ末」<BR>⏎
d1612<P>⏎
cd5:2613-617 紙魚といふ虫の棲み処になりて、古めきたる黴臭さながら、跡は消えず、ただ今書きたらむにも違はぬ言の葉どもの、こまごまとさだかなるを見たまふに、「げに落ち散りたらましよ」と、うしろめたう、いとほしきことどもなり。<BR>⏎
<P>⏎
 「かかること、世にまたあらむや」と、心一つにいとどもの思はしさ添ひて、内裏へ参らむと思しつるも、出で立たれず。宮の御前に参りたまへれば、いと何心もなく、若やかなるさましたまひて、経読みたまふを、恥ぢらひて、もて隠したまへり。「何かは<A HREF="#k15">知りにけり</A><A NAME="t15">と</A>も、知られたてまつらむ」など、心に籠めて、よろづに思ひゐたまへり。<BR>⏎

<P>⏎
338-339 紙魚といふ虫の棲み処になりて、古めきたる黴臭さながら、跡は消えず、ただ今書きたらむにも違はぬ言の葉どもの、こまごまとさだかなるを見たまふに、「げに落ち散りたらましよ」と、うしろめたう、いとほしきことどもなり。<BR>⏎
 「かかること、世にまたあらむや」と、心一つにいとどもの思はしさ添ひて、内裏へ参らむと思しつるも、出で立たれず。宮の御前に参りたまへれば、いと何心もなく、若やかなるさましたまひて、経読みたまふを、恥ぢらひて、もて隠したまへり。「何かは<A HREF="#k15">知りにけり</A><A NAME="t15">と</A>も、知られたてまつらむ」など、心に籠めて、よろづに思ひゐたまへり。<BR>⏎
text45618 <a name="in51">【出典】<BR>340 
c1619</a><A NAME="no1">出典1</A> 世の憂き目見えぬ山路へ入らむには思ふ人こそほだしなりけれ(古今集雑下-九五五 物部吉名)<A HREF="#te1">(戻)</A><BR>⏎
341<A NAME="no1">出典1</A> 世の憂き目見えぬ山路へ入らむには思ふ人こそほだしなりけれ(古今集雑下-九五五 物部吉名)<A HREF="#te1">(戻)</A><BR>⏎
d1636
text45637<p> <a name="in52">【校訂】<BR>358 
c1639</a><A NAME="k01">校訂1</A> いとうつくしう--(/+いとうつくしう)<A HREF="#t01">(戻)</A><BR>⏎
360<A NAME="k01">校訂1</A> いとうつくしう--(/+いとうつくしう)<A HREF="#t01">(戻)</A><BR>⏎
d1654</p>⏎
d1662</p>⏎
i0386
diffsrc/original/text46.htmlsrc/modified/text46.html
cd2:18-9<body background="wallppr063.gif">⏎
First updated 9/20/1996(ver.1-1)<BR>⏎
8<BODY>⏎
cd3:210-12Last updated 2/1/2011(ver.2-2)<BR>⏎
渋谷栄一校訂(C)<BR>⏎
<P
>⏎
9-10<ADDRESS>Last updated 2/1/2011(ver.2-2)<BR>⏎
渋谷栄一校訂(C)</ADDRESS>⏎
d114<P>⏎
d116<P>⏎
d134<P>⏎
d179<P>⏎
d182<P>⏎
text4683 <H4>第一章 匂宮の物語 春、匂宮、宇治に立ち寄る</H4>76 
text4684 <A NAME="in11">[第一段 匂宮、初瀬詣での帰途に宇治に立ち寄る]</A><BR>77 
d185<P>⏎
d187<P>⏎
d189<P>⏎
d191<P>⏎
cd2:192-93 御子の君たち、右大弁、侍従の宰相、権中将、頭少将、蔵人兵衛佐など、さぶらひたまふ。帝后も心ことに思ひきこえ<A HREF="#k02">たまへる</A><A NAME="t02">宮</A>なれば、おほかたの御おぼえもいと限りなく、まいて六条院の御方ざまは、次々の人も、皆私の君に、心寄せ仕うまつりたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
81 御子の君たち、右大弁、侍従の宰相、権中将、頭少将、蔵人兵衛佐など、さぶらひたまふ。帝后も心ことに思ひきこえ<A HREF="#k02">たまへる</A><A NAME="t02">宮</A>なれば、おほかたの御おぼえもいと限りなく、まいて六条院の御方ざまは、次々の人も、皆私の君に、心寄せ仕うまつりたまふ。<BR>⏎
text4694 <A NAME="in12">[第二段 匂宮と八の宮、和歌を詠み交す]</A><BR>82 
d195<P>⏎
d197<P>⏎
d199<P>⏎
d1101<P>⏎
cd2:1102-103 「あはれに久しうなりにけりや。かやうの遊びなどもせで、あるにもあらで過ぐし来にける年月の、さすがに多く数へらるるこそ、かひなけれ」<BR>⏎
<P>⏎
86 「あはれに久しうなりにけりや。かやうの遊びなどもせで、あるにもあらで過ぐし来にける年月の、さすがに多く数へらるるこそ、かひなけれ」<BR>⏎
d1105<P>⏎
d1107<P>⏎
d1109<P>⏎
cd3:1110-112 「山風に霞吹きとく声はあれど<BR>⏎
  隔てて見ゆる遠方の白波」<BR>⏎
<P>⏎
90 「山風に霞吹きとく声はあれど<BR>  隔てて見ゆる遠方の白波」<BR>⏎
d1114<P>⏎
cd3:1115-117 「遠方こちの汀に波は隔つとも<BR>⏎
  なほ吹きかよへ宇治の川風」<BR>⏎
<P>⏎
92 「遠方こちの汀に波は隔つとも<BR>  なほ吹きかよへ宇治の川風」<BR>⏎
text46118 <A NAME="in13">[第三段 薫、迎えに八の宮邸に来る]</A><BR>93 
d1119<P>⏎
d1121<P>⏎
d1123<P>⏎
d1125<P>⏎
d1127<P>⏎
text46128 <A NAME="in14">[第四段 匂宮と中の君、和歌を詠み交す]</A><BR>98 
d1129<P>⏎
d1131<P>⏎
cd2:1132-133 「山桜匂ふあたりに尋ね来て<BR>⏎
  <A HREF="#no5">同じかざしを折り</A><A NAME="te5">て</A>けるかな<BR>⏎
100 「山桜匂ふあたりに尋ね来て<BR>  <A HREF="#no5">同じかざしを折り</A><A NAME="te5">て</A>けるかな<BR>⏎
d1135<P>⏎
d1137<P>⏎
d1139<P>⏎
cd4:2140-143 など古人ども聞こゆれば、中の君にぞ書かせたてまつりたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
 「かざし折る花のたよりに山賤の<BR>⏎
  垣根を過ぎぬ春の旅人<BR>⏎
104-105 など古人ども聞こゆれば、中の君にぞ書かせたてまつりたまふ。<BR>⏎
 「かざし折る花のたよりに山賤の<BR>  垣根を過ぎぬ春の旅人<BR>⏎
d1145<P>⏎
cd4:2146-149 といとをかしげに、らうらうじく書きたまへり。<BR>⏎
<P>⏎
 げに川風も心わかぬさまに吹き通ふ物の音ども、おもしろく遊びたまふ。御迎へに、藤大納言、仰せ言にて参りたまへり。人びとあまた参り集ひ、もの騒がしくてきほひ帰りたまふ。若き人びと、飽かず返り見のみせられける。宮は、「またさるべきついでして」と思す。<BR>⏎
<P>⏎
107-108 といとをかしげに、らうらうじく書きたまへり。<BR>⏎
 げに川風も心わかぬさまに吹き通ふ物の音ども、おもしろく遊びたまふ。御迎へに、藤大納言、仰せ言にて参りたまへり。人びとあまた参り集ひ、もの騒がしくてきほひ帰りたまふ。若き人びと、飽かず返り見のみせられける。宮は、「またさるべきついでして」と思す。<BR>⏎
d1151<P>⏎
d1153<P>⏎
cd4:2154-157 「なほ聞こえたまへ。わざと懸想だちてももてなさじ。なかなか心ときめきにもなりぬべし。いと好きたまへる親王なれば、かかる人なむ、と聞きたまふが、なほもあらぬすさびなめり」<BR>⏎
<P>⏎
 とそそのかしたまふ時々、中の君ぞ聞こえたまふ。姫君は、かやうのこと、戯れにももて離れたまへる御心深さなり。<BR>⏎
<P>⏎
111-112 「なほ聞こえたまへ。わざと懸想だちてももてなさじ。なかなか心ときめきにもなりぬべし。いと好きたまへる親王なれば、かかる人なむ、と聞きたまふが、なほもあらぬすさびなめり」<BR>⏎
 とそそのかしたまふ時々、中の君ぞ聞こえたまふ。姫君は、かやうのこと、戯れにももて離れたまへる御心深さなり。<BR>⏎
d1159<P>⏎
d1161<P>⏎
text46162 <A NAME="in15">[第五段 八の宮、娘たちへの心配]</A><BR>115 
d1163<P>⏎
cd4:2164-167 宮は、重く慎みたまふべき年なりけり。もの心細く思して、御行ひ常よりもたゆみなくしたまふ。<A HREF="#k07">世に心とどめたまはねば、出で立ちいそぎを</A><A NAME="t07">の</A>み思せば、涼しき道にも赴きたまひぬべきを、<A HREF="#k08">ただ</A><A NAME="t08">こ</A>の御ことどもに、いといとほしく、限りなき御心強さなれど、「かならず、今はと見捨てたまはむ御心は、乱れなむ」と、見たてまつる人も推し量りきこゆるを、思すさまにはあらずとも、なのめに、さても人聞き口惜しかるまじう、見ゆるされぬべき際の人の、真心に後見きこえむ、など思ひ寄りきこゆるあらば、知らず顔にてゆるしてむ、一所一所世に住みつきたまふよすがあらば、それを見譲る方に慰めおくべきを、さまで深き心に尋ねきこゆる人もなし。<BR>⏎
<P>⏎
 まれまれはかなきたよりに、好きごと聞こえなどする人は、まだ若々しき人の心のすさびに、物詣での中宿り、行き来のほどのなほざりごとに、けしきばみかけて、さすがにかく眺めたまふありさまなど推し量り、あなづらはしげにもてなすは、めざましうて、なげのいらへをだにせさせたまはず。三の宮ぞ、なほ見ではやまじと思す御心深かりける。さるべきにやおはしけむ。<BR>⏎
<P>⏎
116-117 宮は、重く慎みたまふべき年なりけり。もの心細く思して、御行ひ常よりもたゆみなくしたまふ。<A HREF="#k07">世に心とどめたまはねば、出で立ちいそぎを</A><A NAME="t07">の</A>み思せば、涼しき道にも赴きたまひぬべきを、<A HREF="#k08">ただ</A><A NAME="t08">こ</A>の御ことどもに、いといとほしく、限りなき御心強さなれど、「かならず、今はと見捨てたまはむ御心は、乱れなむ」と、見たてまつる人も推し量りきこゆるを、思すさまにはあらずとも、なのめに、さても人聞き口惜しかるまじう、見ゆるされぬべき際の人の、真心に後見きこえむ、など思ひ寄りきこゆるあらば、知らず顔にてゆるしてむ、一所一所世に住みつきたまふよすがあらば、それを見譲る方に慰めおくべきを、さまで深き心に尋ねきこゆる人もなし。<BR>⏎
 まれまれはかなきたよりに、好きごと聞こえなどする人は、まだ若々しき人の心のすさびに、物詣での中宿り、行き来のほどのなほざりごとに、けしきばみかけて、さすがにかく眺めたまふありさまなど推し量り、あなづらはしげにもてなすは、めざましうて、なげのいらへをだにせさせたまはず。三の宮ぞ、なほ見ではやまじと思す御心深かりける。さるべきにやおはしけむ。<BR>⏎
text46168 <H4>第二章 薫の物語 秋、八の宮死去す</H4>118 
text46169 <A NAME="in21">[第一段 秋、薫、中納言に昇進し、宇治を訪問]</A><BR>119 
d1170<P>⏎
d1172<P>⏎
d1174<P>⏎
d1176<P>⏎
cd2:1177-178 などおもむけつつ聞こえたまへば、<BR>⏎
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123 などおもむけつつ聞こえたまへば、<BR>⏎
d1180<P>⏎
d1182<P>⏎
text46183 <A NAME="in22">[第二段 薫、八の宮と昔語りをする]</A><BR>126 
d1184<P>⏎
d1186<P>⏎
cd8:4187-194 「このころの世は、いかがなりにたらむ。宮中などにて、かやうなる秋の月に、御前の御遊びの折にさぶらひあひたる中に、ものの上手とおぼしき限り、とりどりにうち合はせたる拍子など、ことことしきよりも、よしありとおぼえある女御更衣の御局々の、おのがじしは挑ましく思ひ、うはべの情けを交はすべかめるに、夜深きほどの人の気しめりぬるに、心やましく掻い調べ、ほのかにほころび出でたる物の音など、聞き所あるが多かりしかな。<BR>⏎
<P>⏎
 何ごとにも、女は、もてあそびのつまにしつべく、ものはかなきものから、人の心を動かすくさはひになむあるべき。されば罪の深きにやあらむ。<A HREF="#no10">子の道の闇</A><A NAME="te10">を</A>思ひやるにも、男は、いとしも親の心を乱さずやあらむ。女は、限りありて、いふかひなき方に思ひ捨つべきにも、なほいと心苦しかるべき」<BR>⏎
<P>⏎
 などおほかたのことにつけてのたまへる、いかがさ思さざらむ、心苦しく思ひやらるる御心のうちなり。<BR>⏎
<P>⏎
 「すべてまことに、しか思うたまへ捨てたるけにやはべらむ、みづからのことにては、いかにもいかにも深う思ひ知る方のはべらぬを、げにはかなきことなれど、声にめづる心こそ、背きがたきことにはべりけれ。さかしう聖だつ迦葉も、さればや、立ちて舞ひはべりけむ」<BR>⏎
<P>⏎
128-131 「このころの世は、いかがなりにたらむ。宮中などにて、かやうなる秋の月に、御前の御遊びの折にさぶらひあひたる中に、ものの上手とおぼしき限り、とりどりにうち合はせたる拍子など、ことことしきよりも、よしありとおぼえある女御更衣の御局々の、おのがじしは挑ましく思ひ、うはべの情けを交はすべかめるに、夜深きほどの人の気しめりぬるに、心やましく掻い調べ、ほのかにほころび出でたる物の音など、聞き所あるが多かりしかな。<BR>⏎
 何ごとにも、女は、もてあそびのつまにしつべく、ものはかなきものから、人の心を動かすくさはひになむあるべき。されば罪の深きにやあらむ。<A HREF="#no10">子の道の闇</A><A NAME="te10">を</A>思ひやるにも、男は、いとしも親の心を乱さずやあらむ。女は、限りありて、いふかひなき方に思ひ捨つべきにも、なほいと心苦しかるべき」<BR>⏎
 などおほかたのことにつけてのたまへる、いかがさ思さざらむ、心苦しく思ひやらるる御心のうちなり。<BR>⏎
 「すべてまことに、しか思うたまへ捨てたるけにやはべらむ、みづからのことにては、いかにもいかにも深う思ひ知る方のはべらぬを、げにはかなきことなれど、声にめづる心こそ、背きがたきことにはべりけれ。さかしう聖だつ迦葉も、さればや、立ちて舞ひはべりけむ」<BR>⏎
d1196<P>⏎
d1198<P>⏎
cd5:2199-203 とて宮は仏の御前に入りたまひぬ。<BR>⏎
<P>⏎
 「われなくて草の庵は荒れぬとも<BR>⏎
  このひとことはかれじとぞ思ふ<BR>⏎
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134-135 とて宮は仏の御前に入りたまひぬ。<BR>⏎
 「われなくて草の庵は荒れぬとも<BR>  このひとことはかれじとぞ思ふ<BR>⏎
d1205<P>⏎
cd5:2206-210 とてうち泣きたまふ。客人、<BR>⏎
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 「いかならむ世にかかれせむ長き世の<BR>⏎
  契りむすべる草の庵は<BR>⏎
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137-138 とてうち泣きたまふ。客人、<BR>⏎
 「いかならむ世にかかれせむ長き世の<BR>  契りむすべる草の庵は<BR>⏎
d1212<P>⏎
d1214<P>⏎
text46215 <A NAME="in23">[第三段 薫、弁の君から昔語りを聞き、帰京]</A><BR>141 
d1216<P>⏎
d1218<P>⏎
cd2:1219-220 「三の宮、いとゆかしう思いたるものを」と、心のうちには思ひ出でつつ、「わが心ながら、なほ人には異なりかし。さばかり御心もて許いたまふことの、さしもいそがれぬよ。もて離れてはたあるまじきこととは、さすがにおぼえず。かやうにてものをも聞こえ交はし、折ふしの花紅葉につけて、あはれをも情けをも通はすに、憎からずものしたまふあたりなれば、宿世異にて、他ざまにもなりたまはむは」、さすがに口惜しかるべう、領じたる心地しけり。<BR>⏎
<P>⏎
143 「三の宮、いとゆかしう思いたるものを」と、心のうちには思ひ出でつつ、「わが心ながら、なほ人には異なりかし。さばかり御心もて許いたまふことの、さしもいそがれぬよ。もて離れてはたあるまじきこととは、さすがにおぼえず。かやうにてものをも聞こえ交はし、折ふしの花紅葉につけて、あはれをも情けをも通はすに、憎からずものしたまふあたりなれば、宿世異にて、他ざまにもなりたまはむは」、さすがに口惜しかるべう、領じたる心地しけり。<BR>⏎
d1222<P>⏎
d1224<P>⏎
text46225 <A NAME="in24">[第四段 八の宮、姫君たちに訓戒して山に入る]</A><BR>146 
d1226<P>⏎
d1228<P>⏎
d1230<P>⏎
d1232<P>⏎
cd4:2233-236 おぼろけのよすがならで、人の言にうちなびき、この山里をあくがれたまふな。ただかう人に違ひたる契り異なる身と思しなして、ここに世を尽くしてむと思ひとりたまへ。ひたぶるに思ひなせば、ことにもあらず過ぎぬる年月なりけり。まして女は、さる方に絶え籠もりて、いちしるくいとほしげなる、よそのもどきを負はざらむなむよかるべき」<BR>⏎
<P>⏎
 などのたまふ。ともかくも身のならむやうまでは、思しも流されず、ただ「いかにしてか、後れたてまつりては、世に片時もながらふべき」と思すに、かく心細きさまの御あらましごとに、言ふ方なき御心惑ひどもになむ。心のうちにこそ思ひ捨てたまひつらめど、明け暮れ御かたはらにならはいたまうて、にはかに別れたまはむは、つらき心ならねど、げに恨めしかるべき御ありさまになむありける。<BR>⏎
<P>⏎
150-151 おぼろけのよすがならで、人の言にうちなびき、この山里をあくがれたまふな。ただかう人に違ひたる契り異なる身と思しなして、ここに世を尽くしてむと思ひとりたまへ。ひたぶるに思ひなせば、ことにもあらず過ぎぬる年月なりけり。まして女は、さる方に絶え籠もりて、いちしるくいとほしげなる、よそのもどきを負はざらむなむよかるべき」<BR>⏎
 などのたまふ。ともかくも身のならむやうまでは、思しも流されず、ただ「いかにしてか、後れたてまつりては、世に片時もながらふべき」と思すに、かく心細きさまの御あらましごとに、言ふ方なき御心惑ひどもになむ。心のうちにこそ思ひ捨てたまひつらめど、明け暮れ御かたはらにならはいたまうて、にはかに別れたまはむは、つらき心ならねど、げに恨めしかるべき御ありさまになむありける。<BR>⏎
d1238<P>⏎
d1240<P>⏎
d1242<P>⏎
d1244<P>⏎
d1246<P>⏎
d1248<P>⏎
d1250<P>⏎
cd2:1251-252 など返り見がちにて出でたまひぬ。二所、いとど心細くもの思ひ続けられて、起き臥しうち語らひつつ、<BR>⏎
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159 など返り見がちにて出でたまひぬ。二所、いとど心細くもの思ひ続けられて、起き臥しうち語らひつつ、<BR>⏎
d1255<P>⏎
cd2:1256-257 など泣きみ笑ひみ、戯れごともまめごとも、同じ心に慰め交して過ぐしたまふ。<BR>⏎
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162 など泣きみ笑ひみ、戯れごともまめごとも、同じ心に慰め交して過ぐしたまふ。<BR>⏎
text46258 <A NAME="in25">[第五段 八月二十日、八の宮、山寺で死去]</A><BR>163 
d1259<P>⏎
d1261<P>⏎
cd8:4262-269 「今朝より、悩ましくてなむ、え参らぬ。風邪かとて、とかくつくろふとものするほどになむ。さるは例よりも対面心もとなきを」<BR>⏎
<P>⏎
 と聞こえたまへり。胸つぶれて、いかなるにかと思し嘆き、御衣ども綿厚くて、急ぎせさせたまひて、たてまつれなどしたまふ。二三日<A HREF="#k10">怠り</A><A NAME="t10">た</A>まはず。「いかにいかに」と、人たてまつりたまへど、<BR>⏎
<P>⏎
 「ことにおどろおどろしくはあらず。そこはかとなく苦しうなむ。すこしもよろしくならば、今念じて」<BR>⏎
<P>⏎
 など言葉にて聞こえたまふ。阿闍梨つとさぶらひて仕うまつりける。<BR>⏎
<P>⏎
165-168 「今朝より、悩ましくてなむ、え参らぬ。風邪かとて、とかくつくろふとものするほどになむ。さるは例よりも対面心もとなきを」<BR>⏎
 と聞こえたまへり。胸つぶれて、いかなるにかと思し嘆き、御衣ども綿厚くて、急ぎせさせたまひて、たてまつれなどしたまふ。二三日<A HREF="#k10">怠り</A><A NAME="t10">た</A>まはず。「いかにいかに」と、人たてまつりたまへど、<BR>⏎
 「ことにおどろおどろしくはあらず。そこはかとなく苦しうなむ。すこしもよろしくならば、今念じて」<BR>⏎
 など言葉にて聞こえたまふ。阿闍梨つとさぶらひて仕うまつりける。<BR>⏎
d1271<P>⏎
cd2:1272-273 といよいよ思し離るべきことを聞こえ知らせつつ、「今さらにな出でたまひそ」と、諌め申すなりけり。<BR>⏎
<P>⏎
170 といよいよ思し離るべきことを聞こえ知らせつつ、「今さらにな出でたまひそ」と、諌め申すなりけり。<BR>⏎
d1275<P>⏎
d1277<P>⏎
d1279<P>⏎
d1281<P>⏎
text46282 <A NAME="in26">[第六段 阿闍梨による法事と薫の弔問]</A><BR>175 
d1283<P>⏎
d1285<P>⏎
d1287<P>⏎
d1289<P>⏎
d1291<P>⏎
d1293<P>⏎
d1295<P>⏎
d1297<P>⏎
d1299<P>⏎
d1301<P>⏎
text46302 <H4>第三章 宇治の姉妹の物語 晩秋の傷心の姫君たち</H4>185 
text46303 <A NAME="in31">[第一段 九月、忌中の姫君たち]</A><BR>186 
d1304<P>⏎
d1306<P>⏎
d1308<P>⏎
cd2:1309-310 兵部卿宮よりも、たびたび弔らひきこえたまふ。さやうの御返りなど、聞こえむ心地もしたまはず。おぼつかなければ、「中納言にはかうもあらざなるを、我をばなほ思ひ放ちたまへるなめり」と、恨めしく思す。紅葉の盛りに、文など作らせたまはむとて、<A HREF="#k14">出で立ちたまひし</A><A NAME="t14">を</A>、かくこのわたりの御逍遥、便なきころなれば、思しとまりて口惜しくなむ。<BR>⏎
<P>⏎
189 兵部卿宮よりも、たびたび弔らひきこえたまふ。さやうの御返りなど、聞こえむ心地もしたまはず。おぼつかなければ、「中納言にはかうもあらざなるを、我をばなほ思ひ放ちたまへるなめり」と、恨めしく思す。紅葉の盛りに、文など作らせたまはむとて、<A HREF="#k14">出で立ちたまひし</A><A NAME="t14">を</A>、かくこのわたりの御逍遥、便なきころなれば、思しとまりて口惜しくなむ。<BR>⏎
text46311 <A NAME="in32">[第二段 匂宮からの弔問の手紙]</A><BR>190 
d1312<P>⏎
d1314<P>⏎
cd3:1315-317 「牡鹿鳴く秋の山里いかならむ<BR>⏎
  小萩が露のかかる夕暮<BR>⏎
<P>⏎
192 「牡鹿鳴く秋の山里いかならむ<BR>  小萩が露のかかる夕暮<BR>⏎
d1320<P>⏎
cd4:2321-324 「げにいとあまり思ひ知らぬやうにて、たびたびになりぬるを、なほ聞こえたまへ」<BR>⏎
<P>⏎
 など中の宮を、例のそそのかして、書かせたてまつりたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
195-196 「げにいとあまり思ひ知らぬやうにて、たびたびになりぬるを、なほ聞こえたまへ」<BR>⏎
 など中の宮を、例のそそのかして、書かせたてまつりたまふ。<BR>⏎
d1326<P>⏎
cd9:4327-335 「なほえこそ書きはべるまじけれ。やうやうかう起きゐられなどしはべるが、げに限りありけるにこそとおぼゆるも、疎ましう心憂くて」<BR>⏎
<P>⏎
 とらうたげなるさまに泣きしをれておはするも、いと心苦し。<BR>⏎
<P>⏎
 夕暮のほどより来ける御使、宵すこし過ぎてぞ来たる。「いかでか帰り参らむ。今宵は旅寝して」と言はせたまへど、「立ち帰りこそ、参りなめ」と急げば、いとほしうて、我さかしう思ひしづめたまふにはあらねど、見わづらひたまひて、<BR>⏎
<P>⏎
 「涙のみ霧りふたがれる山里は<BR>⏎
  籬に鹿ぞ諸声に鳴く」<BR>⏎
<P>⏎
198-201 「なほえこそ書きはべるまじけれ。やうやうかう起きゐられなどしはべるが、げに限りありけるにこそとおぼゆるも、疎ましう心憂くて」<BR>⏎
 とらうたげなるさまに泣きしをれておはするも、いと心苦し。<BR>⏎
 夕暮のほどより来ける御使、宵すこし過ぎてぞ来たる。「いかでか帰り参らむ。今宵は旅寝して」と言はせたまへど、「立ち帰りこそ、参りなめ」と急げば、いとほしうて、我さかしう思ひしづめたまふにはあらねど、見わづらひたまひて、<BR>⏎
 「涙のみ霧りふたがれる山里は<BR>  籬に鹿ぞ諸声に鳴く」<BR>⏎
d1337<P>⏎
text46338 <A NAME="in33">[第三段 匂宮の使者、帰邸]</A><BR>203 
d1339<P>⏎
d1341<P>⏎
cd2:1342-343 さきざき御覧ぜしにはあらぬ手の、今すこしおとなびまさりて、よしづきたる書きざまなどを、「いづれかいづれならむ」と、うちも置かず御覧じつつ、とみにも大殿籠もらねば、<BR>⏎
<P>⏎
205 さきざき御覧ぜしにはあらぬ手の、今すこしおとなびまさりて、よしづきたる書きざまなどを、「いづれかいづれならむ」と、うちも置かず御覧じつつ、とみにも大殿籠もらねば、<BR>⏎
d1346<P>⏎
cd2:1347-348 と御前なる人びと、ささめき聞こえて、憎みきこゆ。ねぶたければなめり。<BR>⏎
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208 と御前なる人びと、ささめき聞こえて、憎みきこゆ。ねぶたければなめり。<BR>⏎
d1350<P>⏎
cd3:1351-353 「<A HREF="#no18">朝霧に友まどはせる</A><A NAME="te18">鹿</A>の音を<BR>⏎
  おほかたにやはあはれとも聞く<BR>⏎
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210 「<A HREF="#no18">朝霧に友まどはせる</A><A NAME="te18">鹿</A>の音を<BR>  おほかたにやはあはれとも聞く<BR>⏎
d1355<P>⏎
d1357<P>⏎
cd2:1358-359 この宮などを、軽らかにおしなべてのさまにも思ひきこえたまはず。なげの走り書いたまへる御筆づかひ言の葉も、をかしきさまになまめきたまへる御けはひを、あまたは見知りたまはねど、見たまひながら、「そのゆゑゆゑしく情けある方に、言をまぜきこえむも、つきなき身のありさまどもなれば、何かただ、かかる山伏だちて過ぐしてむ」と思す。<BR>⏎
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213 この宮などを、軽らかにおしなべてのさまにも思ひきこえたまはず。なげの走り書いたまへる御筆づかひ言の葉も、をかしきさまになまめきたまへる御けはひを、あまたは見知りたまはねど、見たまひながら、「そのゆゑゆゑしく情けある方に、言をまぜきこえむも、つきなき身のありさまどもなれば、何かただ、かかる山伏だちて過ぐしてむ」と思す。<BR>⏎
text46360 <A NAME="in34">[第四段 薫、宇治を訪問]</A><BR>214 
d1361<P>⏎
d1363<P>⏎
d1365<P>⏎
d1367<P>⏎
d1369<P>⏎
d1371<P>⏎
d1373<P>⏎
d1375<P>⏎
d1377<P>⏎
cd2:1378-379 「げにこそ。いとたぐひなげなめる御ありさまを、慰めきこえたまふ御心ばへの浅からぬほど」など、聞こえ知らす。<BR>⏎
<P>⏎
223 「げにこそ。いとたぐひなげなめる御ありさまを、慰めきこえたまふ御心ばへの浅からぬほど」など、聞こえ知らす。<BR>⏎
text46380 <A NAME="in35">[第五段 薫、大君と和歌を詠み交す]</A><BR>224 
d1381<P>⏎
d1383<P>⏎
cd2:1384-385 思すらむさま、またのたまひ契りしことなど、いとこまやかになつかしう言ひて、うたて雄々しきけはひなどは見えたまはぬ人なれば、け疎くすずろはしくなどはあらねど、知らぬ人にかく声を聞かせたてまつり、すずろに頼み顔なることなどもありつる日ごろを思ひ続くるも、さすがに苦しうて、つつましけれど、ほのかに一言などいらへきこえたまふさまの、げによろづ思ひほれたまへるけはひなれば、いとあはれと聞きたてまつりたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
226 思すらむさま、またのたまひ契りしことなど、いとこまやかになつかしう言ひて、うたて雄々しきけはひなどは見えたまはぬ人なれば、け疎くすずろはしくなどはあらねど、知らぬ人にかく声を聞かせたてまつり、すずろに頼み顔なることなどもありつる日ごろを思ひ続くるも、さすがに苦しうて、つつましけれど、ほのかに一言などいらへきこえたまふさまの、げによろづ思ひほれたまへるけはひなれば、いとあはれと聞きたてまつりたまふ。<BR>⏎
d1387<P>⏎
cd7:3388-394 「色変はる浅茅を見ても墨染に<BR>⏎
  やつるる袖を<A HREF="#k18">思ひこそ</A><A NAME="t18">や</A>れ」<BR>⏎
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 と独り言のやうにのたまへば、<BR>⏎
<P>⏎
 「色変はる袖をば露の宿りにて<BR>⏎
  わが身ぞさらに置き所なき<BR>⏎
228-230 「色変はる浅茅を見ても墨染に<BR>  やつるる袖を<A HREF="#k18">思ひこそ</A><A NAME="t18">や</A>れ」<BR>⏎
 と独り言のやうにのたまへば、<BR>⏎
 「色変はる袖をば露の宿りにて<BR>  わが身ぞさらに置き所なき<BR>⏎
d1396<P>⏎
d1398<P>⏎
text46399 <A NAME="in36">[第六段 薫、弁の君と語る]</A><BR>233 
d1400<P>⏎
d1402<P>⏎
d1404<P>⏎
cd4:2405-408 ただかう静やかなる御住まひなどの、心にかなひたまへりしを、かくはかなく見なしたてまつりなしつるに、いよいよいみじく、かりそめの世の思ひ知らるる心も、もよほされにたれど、心苦しうて、とまりたまへる御ことどもの、ほだしなど聞こえむは、かけかけしきやうなれど、ながらへても、かの御言あやまたず、聞こえ<A HREF="#k19">承らまほしさ</A><A NAME="t19">に</A>なむ。<BR>⏎
<P>⏎
 さるはおぼえなき御古物語聞きしより、いとど世の中に跡とめむともおぼえずなりにたりや」<BR>⏎
<P>⏎
236-237 ただかう静やかなる御住まひなどの、心にかなひたまへりしを、かくはかなく見なしたてまつりなしつるに、いよいよいみじく、かりそめの世の思ひ知らるる心も、もよほされにたれど、心苦しうて、とまりたまへる御ことどもの、ほだしなど聞こえむは、かけかけしきやうなれど、ながらへても、かの御言あやまたず、聞こえ<A HREF="#k19">承らまほしさ</A><A NAME="t19">に</A>なむ。<BR>⏎
 さるはおぼえなき御古物語聞きしより、いとど世の中に跡とめむともおぼえずなりにたりや」<BR>⏎
d1410<P>⏎
cd4:2411-414 この人は、かの大納言の御乳母子にて、父は、この姫君たちの母北の方の母方の叔父、左中弁にて亡せにけるが子なりけり。年ごろ、<A HREF="#k20">遠き国に</A><A NAME="t20">あ</A>くがれ、母君も亡せたまひてのち、かの殿には疎くなり、この宮には、尋ね取りてあらせたまふなりけり。人もいとやむごとなからず、宮仕へ馴れにたれど、心地なからぬものに宮も思して、姫君たちの御後見だつ人になしたまへるなりけり。<BR>⏎
<P>⏎
 昔の御ことは、年ごろかく朝夕に見たてまつり馴れ、心隔つる隈なく<A HREF="#k21">思ひきこゆる</A><A NAME="t21">君</A>たちにも、一言うち出で聞こゆるついでなく、忍びこめたりけれど、中納言の君は、「古人の問はず語り、皆例のことなれば、おしなべてあはあはしうなどは言ひ広げずとも、いと恥づかしげなめる御心どもには、聞きおきたまへらむかし」と推し量らるるが、ねたくもいとほしくもおぼゆるにぞ、「またもて離れてはやまじ」と、思ひ寄らるるつまにもなりぬべき。<BR>⏎
<P>⏎
239-240 この人は、かの大納言の御乳母子にて、父は、この姫君たちの母北の方の母方の叔父、左中弁にて亡せにけるが子なりけり。年ごろ、<A HREF="#k20">遠き国に</A><A NAME="t20">あ</A>くがれ、母君も亡せたまひてのち、かの殿には疎くなり、この宮には、尋ね取りてあらせたまふなりけり。人もいとやむごとなからず、宮仕へ馴れにたれど、心地なからぬものに宮も思して、姫君たちの御後見だつ人になしたまへるなりけり。<BR>⏎
 昔の御ことは、年ごろかく朝夕に見たてまつり馴れ、心隔つる隈なく<A HREF="#k21">思ひきこゆる</A><A NAME="t21">君</A>たちにも、一言うち出で聞こゆるついでなく、忍びこめたりけれど、中納言の君は、「古人の問はず語り、皆例のことなれば、おしなべてあはあはしうなどは言ひ広げずとも、いと恥づかしげなめる御心どもには、聞きおきたまへらむかし」と推し量らるるが、ねたくもいとほしくもおぼゆるにぞ、「またもて離れてはやまじ」と、思ひ寄らるるつまにもなりぬべき。<BR>⏎
text46415 <A NAME="in37">[第七段 薫、日暮れて帰京]</A><BR>241 
d1416<P>⏎
cd2:1417-418 今は旅寝もすずろなる心地して、帰りたまふにも、「<A HREF="#no20">これや限りの</A><A NAME="te20">」</A>などのたまひしを、「などかさしもやは、とうち頼みて、また見たてまつらずなりにけむ、秋やは変はれる。あまたの日数も隔てぬほどに、おはしにけむ方も知らず、あへなきわざなりや。ことに例の人めいたる御しつらひなく、いとことそぎたまふめりしかど、いとものきよげにかき払ひ、あたりをかしくもてないたまへりし御住まひも、大徳たち出で入り、こなたかなたひき隔てつつ、御念誦の具どもなどぞ、変らぬさまなれど、『仏は皆かの寺に移したてまつりてむとす』」と聞こゆるを、聞きたまふにも、かかるさまの人影などさへ絶え果てむほど、とまりて思ひたまはむ心地どもを汲みきこえたまふも、いと胸いたう思し続けらる。<BR>⏎
<P>⏎
242 今は旅寝もすずろなる心地して、帰りたまふにも、「<A HREF="#no20">これや限りの</A><A NAME="te20">」</A>などのたまひしを、「などかさしもやは、とうち頼みて、また見たてまつらずなりにけむ、秋やは変はれる。あまたの日数も隔てぬほどに、おはしにけむ方も知らず、あへなきわざなりや。ことに例の人めいたる御しつらひなく、いとことそぎたまふめりしかど、いとものきよげにかき払ひ、あたりをかしくもてないたまへりし御住まひも、大徳たち出で入り、こなたかなたひき隔てつつ、御念誦の具どもなどぞ、変らぬさまなれど、『仏は皆かの寺に移したてまつりてむとす』」と聞こゆるを、聞きたまふにも、かかるさまの人影などさへ絶え果てむほど、とまりて思ひたまはむ心地どもを汲みきこえたまふも、いと胸いたう思し続けらる。<BR>⏎
d1420<P>⏎
cd3:1421-423 「<A HREF="#no21">秋霧の晴れぬ</A><A NAME="te21">雲</A>居にいとどしく<BR>⏎
  この世をかりと言ひ知らすらむ」<BR>⏎
<P>⏎
244 「<A HREF="#no21">秋霧の晴れぬ</A><A NAME="te21">雲</A>居にいとどしく<BR>  この世をかりと言ひ知らすらむ」<BR>⏎
text46424 <A NAME="in38">[第八段 姫君たちの傷心]</A><BR>245 
d1425<P>⏎
d1427<P>⏎
d1429<P>⏎
cd2:1430-431 「さてもあさましうて明け暮らさるるは、月日なりけり。かく頼みがたかりける御世を、<A HREF="#no22">昨日今日とは思はで</A><A NAME="te22">、</A>ただおほかた定めなきはかなさばかりを、明け暮れのことに聞き見しかど、我も人も<A HREF="#no23">後れ先だつ</A><A NAME="te23">ほ</A>どしもやは経む、などうち思ひけるよ」<BR>⏎
<P>⏎
248 「さてもあさましうて明け暮らさるるは、月日なりけり。かく頼みがたかりける御世を、<A HREF="#no22">昨日今日とは思はで</A><A NAME="te22">、</A>ただおほかた定めなきはかなさばかりを、明け暮れのことに聞き見しかど、我も人も<A HREF="#no23">後れ先だつ</A><A NAME="te23">ほ</A>どしもやは経む、などうち思ひけるよ」<BR>⏎
d1433<P>⏎
cd2:1434-435 と二所うち語らひつつ、干す世もなくて過ぐしたまふに、年も暮れにけり。<BR>⏎
<P>⏎
250 と二所うち語らひつつ、干す世もなくて過ぐしたまふに、年も暮れにけり。<BR>⏎
text46436 <H4>第四章 宇治の姉妹の物語 歳末の宇治の姫君たち</H4>251 
text46437 <A NAME="in41">[第一段 歳末の宇治の姫君たち]</A><BR>252 
d1438<P>⏎
d1440<P>⏎
cd4:2441-444 「あはれ年は替はりなむとす。心細く悲しきことを。<A HREF="#no24">改まるべき春</A><A NAME="te24">待</A>ち出でてしがな」<BR>⏎
<P>⏎
 と<A HREF="#k22">心を消たず言ふもあり。「難きことかな」と</A><A NAME="t22">聞</A>きたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
254-255 「あはれ年は替はりなむとす。心細く悲しきことを。<A HREF="#no24">改まるべき春</A><A NAME="te24">待</A>ち出でてしがな」<BR>⏎
 と<A HREF="#k22">心を消たず言ふもあり。「難きことかな」と</A><A NAME="t22">聞</A>きたまふ。<BR>⏎
d1446<P>⏎
d1448<P>⏎
d1450<P>⏎
d1452<P>⏎
d1454<P>⏎
d1457<P>⏎
cd5:2458-462 など語らひたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
 「君なくて岩のかけ道絶えしより<BR>⏎
  松の雪をもなにとかは見る」<BR>⏎
<P>⏎
263-264 など語らひたまふ。<BR>⏎
 「君なくて岩のかけ道絶えしより<BR>  松の雪をもなにとかは見る」<BR>⏎
d1464<P>⏎
cd3:1465-467 「奥山の松葉に積もる雪とだに<BR>⏎
  消えにし人を思はましかば」<BR>⏎
<P>⏎
266 「奥山の松葉に積もる雪とだに<BR>  消えにし人を思はましかば」<BR>⏎
d1469<P>⏎
text46470 <A NAME="in42">[第二段 薫、歳末に宇治を訪問]</A><BR>268 
d1471<P>⏎
cd2:1474-475 うちとくとはなけれど、さきざきよりはすこし言の葉続けて、ものなどのたまへるさま、いとめやすく、心恥づかしげなり。「かやうにてのみは、え過ぐし果つまじ」と思ひなりたまふも、「いとうちつけなる心かな。なほ移りぬべき世なりけり」と思ひゐたまへり。<BR>⏎
<P>⏎
271 うちとくとはなけれど、さきざきよりはすこし言の葉続けて、ものなどのたまへるさま、いとめやすく、心恥づかしげなり。「かやうにてのみは、え過ぐし果つまじ」と思ひなりたまふも、「いとうちつけなる心かな。なほ移りぬべき世なりけり」と思ひゐたまへり。<BR>⏎
text46476 <A NAME="in43">[第三段 薫、匂宮について語る]</A><BR>272 
d1477<P>⏎
cd2:1478-479 「宮の、いとあやしく恨みたまふことのはべるかな。あはれなりし御一言をうけたまはりおきしさまなど、ことのついで<A HREF="#k27">にもや</A><A NAME="t27">、</A>漏らし聞こえたりけむ。またいと隈なき御心のさがにて、推し量りたまふにやはべらむ、ここになむ、ともかくも聞こえさせなすべきと頼むを、つれなき御けしきなるは、もてそこなひきこゆるぞと、たびたび怨じたまへば、心よりほかなることと思うたまふれど、<A HREF="#no25">里のしるべ</A><A NAME="te25">、</A>いとこよなうもえあらがひきこえぬを、何かはいとさしももてなしきこえたまはむ。<BR>⏎
<P>⏎
273 「宮の、いとあやしく恨みたまふことのはべるかな。あはれなりし御一言をうけたまはりおきしさまなど、ことのついで<A HREF="#k27">にもや</A><A NAME="t27">、</A>漏らし聞こえたりけむ。またいと隈なき御心のさがにて、推し量りたまふにやはべらむ、ここになむ、ともかくも聞こえさせなすべきと頼むを、つれなき御けしきなるは、もてそこなひきこゆるぞと、たびたび怨じたまへば、心よりほかなることと思うたまふれど、<A HREF="#no25">里のしるべ</A><A NAME="te25">、</A>いとこよなうもえあらがひきこえぬを、何かはいとさしももてなしきこえたまはむ。<BR>⏎
d1481<P>⏎
cd2:1482-483 <A HREF="#no26">崩れそめては、龍田の川の濁る名をも汚し</A><A NAME="te26">、</A>いふかひなく名残なきやうなることなども、皆うちまじるめれ。心の深うしみたまふべかめる御心ざまにかなひ、ことに背くこと多くなどものしたまはざらむをば、さらに軽々しく、初め終り違ふやうなることなど、見せたまふまじきけしきになむ。<BR>⏎
<P>⏎
275 <A HREF="#no26">崩れそめては、龍田の川の濁る名をも汚し</A><A NAME="te26">、</A>いふかひなく名残なきやうなることなども、皆うちまじるめれ。心の深うしみたまふべかめる御心ざまにかなひ、ことに背くこと多くなどものしたまはざらむをば、さらに軽々しく、初め終り違ふやうなることなど、見せたまふまじきけしきになむ。<BR>⏎
d1485<P>⏎
cd2:1486-487 といとまめやかにて、言ひ続けたまへば、わが御みづからのこととは思しもかけず、「人の親めきていらへむかし」と思しめぐらしたまへど、なほ言ふべき言の葉もなき心地して、<BR>⏎
<P>⏎
277 といとまめやかにて、言ひ続けたまへば、わが御みづからのこととは思しもかけず、「人の親めきていらへむかし」と思しめぐらしたまへど、なほ言ふべき言の葉もなき心地して、<BR>⏎
d1489<P>⏎
cd2:1490-491 とうち笑ひたまへるも、おいらかなるものから、けはひをかしう聞こゆ。<BR>⏎
<P>⏎
279 とうち笑ひたまへるも、おいらかなるものから、けはひをかしう聞こゆ。<BR>⏎
text46492 <A NAME="in44">[第四段 薫と大君、和歌を詠み交す]</A><BR>280 
d1493<P>⏎
cd7:3494-500 「かならず御みづから聞こしめし負ふべきこととも思うたまへず。それは<A HREF="#no27">雪を踏み分けて</A><A NAME="te27">参</A>り来たる心ざしばかりを、御覧じ分かむ御このかみ心にても過ぐさせたまひてよかし。かの御心寄せは、また異にぞはべべかめる。ほのかにのたまふさまもはべめりしを、いさやそれも人の分ききこえがたきことなり。御返りなどは、いづ方にかは聞こえたまふ」<BR>⏎
<P>⏎
 と問ひ申したまふに、「ようぞ戯れにも聞こえざりける。何となけれど、かうのたまふにも、いかに恥づかしう胸つぶれまし」と思ふに、え答へやりたまはず。<BR>⏎
<P>⏎
 「雪深き山のかけはし君ならで<BR>⏎
  またふみかよふ跡を見ぬかな」<BR>⏎
<P>⏎
281-283 「かならず御みづから聞こしめし負ふべきこととも思うたまへず。それは<A HREF="#no27">雪を踏み分けて</A><A NAME="te27">参</A>り来たる心ざしばかりを、御覧じ分かむ御このかみ心にても過ぐさせたまひてよかし。かの御心寄せは、また異にぞはべべかめる。ほのかにのたまふさまもはべめりしを、いさやそれも人の分ききこえがたきことなり。御返りなどは、いづ方にかは聞こえたまふ」<BR>⏎
 と問ひ申したまふに、「ようぞ戯れにも聞こえざりける。何となけれど、かうのたまふにも、いかに恥づかしう胸つぶれまし」と思ふに、え答へやりたまはず。<BR>⏎
 「雪深き山のかけはし君ならで<BR>  またふみかよふ跡を見ぬかな」<BR>⏎
d1502<P>⏎
d1504<P>⏎
cd3:1505-507 「つららとぢ駒ふみしだく山川を<BR>⏎
  しるべしがてらまづや渡らむ<BR>⏎
<P>⏎
286 「つららとぢ駒ふみしだく山川を<BR>  しるべしがてらまづや渡らむ<BR>⏎
d1509<P>⏎
d1511<P>⏎
d1513<P>⏎
text46514 <A NAME="in45">[第五段 薫、人びとを励まして帰京]</A><BR>290 
d1515<P>⏎
d1517<P>⏎
cd2:1518-519 と御供の人びと声づくれば、帰りたまひなむとて、<BR>⏎
<P>⏎
292 と御供の人びと声づくれば、帰りたまひなむとて、<BR>⏎
d1521<P>⏎
d1523<P>⏎
d1525<P>⏎
d1527<P>⏎
d1529<P>⏎
d1531<P>⏎
d1533<P>⏎
d1535<P>⏎
cd5:2536-540 「立ち寄らむ蔭と頼みし<A HREF="#no30">椎が本<BR>⏎
  空しき床</A><A NAME="te30">に</A>なりにけるかな」<BR>⏎
<P>⏎
 とて柱に寄りゐたまへるをも、若き人びとは、覗きてめでたてまつる。<BR>⏎
<P>⏎
301-302 「立ち寄らむ蔭と頼みし<A HREF="#no30">椎が本<BR>  空しき床</A><A NAME="te30">に</A>なりにけるかな」<BR>⏎
 とて柱に寄りゐたまへるをも、若き人びとは、覗きてめでたてまつる。<BR>⏎
d1542<P>⏎
text46543 <H4>第五章 宇治の姉妹の物語 匂宮、薫らとの恋物語始まる</H4>304 
text46544 <A NAME="in51">[第一段 新年、阿闍梨、姫君たちに山草を贈る]</A><BR>305 
d1545<P>⏎
d1547<P>⏎
d1549<P>⏎
cd10:4550-559 など人びとの言ふを、「何のをかしきならむ」と聞きたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
 「君が折る峰の蕨と見ましかば<BR>⏎
  知られやせまし春のしるしも」<BR>⏎
<P>⏎
 「雪深き汀の小芹誰がために<BR>⏎
  摘みかはやさむ親なしにして」<BR>⏎
<P>⏎
 などはかなきことどもをうち語らひつつ、明け暮らしたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
308-311 など人びとの言ふを、「何のをかしきならむ」と聞きたまふ。<BR>⏎
 「君が折る峰の蕨と見ましかば<BR>  知られやせまし春のしるしも」<BR>⏎
 「雪深き汀の小芹誰がために<BR>  摘みかはやさむ親なしにして」<BR>⏎
 などはかなきことどもをうち語らひつつ、明け暮らしたまふ。<BR>⏎
d1561<P>⏎
text46562 <A NAME="in52">[第二段 花盛りの頃、匂宮、中の君と和歌を贈答]</A><BR>313 
d1563<P>⏎
d1565<P>⏎
d1567<P>⏎
cd12:5568-579 などおほかたのあはれを<A HREF="#k30">口々</A><A NAME="t30">聞</A>こゆるに、いとゆかしう思されけり。<BR>⏎
<P>⏎
 「つてに見し宿の桜をこの春は<BR>⏎
  霞隔てず折りてかざさむ」<BR>⏎
<P>⏎
 と心をやりてのたまへりけり。「あるまじきことかな」と見たまひながら、いとつれづれなるほどに、見所ある御文の、うはべばかりをもて消たじとて、<BR>⏎
<P>⏎
 「いづことか尋ねて折らむ墨染に<BR>⏎
  霞みこめたる宿の桜を」<BR>⏎
<P>⏎
 なほかくさし放ち、つれなき御けしきのみ見ゆれば、まことに心憂しと思しわたる。<BR>⏎
<P>⏎
316-320 などおほかたのあはれを<A HREF="#k30">口々</A><A NAME="t30">聞</A>こゆるに、いとゆかしう思されけり。<BR>⏎
 「つてに見し宿の桜をこの春は<BR>  霞隔てず折りてかざさむ」<BR>⏎
 と心をやりてのたまへりけり。「あるまじきことかな」と見たまひながら、いとつれづれなるほどに、見所ある御文の、うはべばかりをもて消たじとて、<BR>⏎
 「いづことか尋ねて折らむ墨染に<BR>  霞みこめたる宿の桜を」<BR>⏎
 なほかくさし放ち、つれなき御けしきのみ見ゆれば、まことに心憂しと思しわたる。<BR>⏎
text46580 <A NAME="in53">[第三段 その後の匂宮と薫]</A><BR>321 
d1581<P>⏎
d1583<P>⏎
d1585<P>⏎
cd2:1586-587 など申したまへば、宮も御心づかひしたまふべし。<BR>⏎
<P>⏎
324 など申したまへば、宮も御心づかひしたまふべし。<BR>⏎
d1589<P>⏎
cd2:1590-591 大殿の六の君を思し入れぬこと、なま恨めしげに、大臣も思したりけり。されど<BR>⏎
<P>⏎
326 大殿の六の君を思し入れぬこと、なま恨めしげに、大臣も思したりけり。されど<BR>⏎
d1593<P>⏎
cd2:1594-595 と下にはのたまひて、すまひたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
328 と下にはのたまひて、すまひたまふ。<BR>⏎
d1597<P>⏎
text46598 <A NAME="in54">[第四段 夏、薫、宇治を訪問]</A><BR>330 
d1599<P>⏎
d1601<P>⏎
d1603<P>⏎
cd2:1604-605 ここもとに几帳を添へ立てたる、「あな口惜し」と思ひて、ひき帰る、折しも、風の簾をいたう吹き上ぐべかめれば、<BR>⏎
<P>⏎
333 ここもとに几帳を添へ立てたる、「あな口惜し」と思ひて、ひき帰る、折しも、風の簾をいたう吹き上ぐべかめれば、<BR>⏎
d1607<P>⏎
d1609<P>⏎
text46610 <A NAME="in55">[第五段 障子の向こう側の様子]</A><BR>336 
d1611<P>⏎
cd2:1612-613 まづ一人立ち出でて、几帳よりさし覗きて、この御供の人びとの、とかう行きちがひ、涼みあへるを見たまふなりけり。濃き<A HREF="#k34">鈍色</A><A NAME="t34">の</A>単衣に、萱草の袴もてはやしたる、なかなかさま変はりてはなやかなりと見ゆるは、着なしたまへる人からなめり。<BR>⏎
<P>⏎
337 まづ一人立ち出でて、几帳よりさし覗きて、この御供の人びとの、とかう行きちがひ、涼みあへるを見たまふなりけり。濃き<A HREF="#k34">鈍色</A><A NAME="t34">の</A>単衣に、萱草の袴もてはやしたる、なかなかさま変はりてはなやかなりと見ゆるは、着なしたまへる人からなめり。<BR>⏎
d1615<P>⏎
d1617<P>⏎
d1619<P>⏎
cd2:1620-621 と若き人びと、何心なく言ふあり。<BR>⏎
<P>⏎
341 と若き人びと、何心なく言ふあり。<BR>⏎
d1623<P>⏎
cd2:1624-625 とてうしろめたげにゐざり入りたまふほど、気高う心にくきけはひ添ひて見ゆ。黒き袷一襲、同じやうなる色合ひを着たまへれど、これはなつかしうなまめきて、あはれげに、心苦しうおぼゆ。<BR>⏎
<P>⏎
343 とてうしろめたげにゐざり入りたまふほど、気高う心にくきけはひ添ひて見ゆ。黒き袷一襲、同じやうなる色合ひを着たまへれど、これはなつかしうなまめきて、あはれげに、心苦しうおぼゆ。<BR>⏎
d2627-628
<P>⏎
text46629 <a name="in61">【出典】<BR>345 
c1630</a><A NAME="no1">出典1</A> 我が庵は都の巽しかぞ住む世を宇治山と人は言ふなり(古今集雑下-九八三 喜撰法師)<A HREF="#te1">(戻)</A><BR>⏎
346<A NAME="no1">出典1</A> 我が庵は都の巽しかぞ住む世を宇治山と人は言ふなり(古今集雑下-九八三 喜撰法師)<A HREF="#te1">(戻)</A><BR>⏎
c1633<A NAME="no4">出典4</A> 桜人 その舟止ちぢめ 島つ田を 十町作れる 見て帰り来むや そよや 明日帰りこむ そよや 言をこそ 明日とも言はめ 遠方をちかたに 妻ざる夫せなは 明日もさね来じや そよや さ明日もさね来じや そよや(催馬楽-桜人)<A HREF="#te4">(戻)</A><BR>⏎
349<A NAME="no4">出典4</A> 桜人 その舟<ruby><rb><rp>(<rt>ちぢ<rp>)</ruby>め 島つ田を 十町作れる 見て帰り来むや そよや 明日帰りこむ そよや 言をこそ 明日とも言はめ <ruby><rb>遠方<rp>(<rt>をちかた<rp>)</ruby>に 妻ざる<ruby><rb><rp>(<rt>せな<rp>)</ruby>は 明日もさね来じや そよや さ明日もさね来じや そよや(催馬楽-桜人)<A HREF="#te4">(戻)</A><BR>⏎
d1660
text46661<p> <a name="in62">【校訂】<BR>376 
c1663</a><A NAME="k01">校訂1</A> 仕うまつれり--つかうまつ(つ/+れ)り<A HREF="#t01">(戻)</A><BR>⏎
378<A NAME="k01">校訂1</A> 仕うまつれり--つかうまつ(つ/+れ)り<A HREF="#t01">(戻)</A><BR>⏎
d1697</p>⏎
d1704</p>⏎
i0422
diffsrc/original/text47.htmlsrc/modified/text47.html
cd2:18-9<body background="wallppr063.gif">⏎
<p>First updated 9/20/1996(ver.1-1)<BR>⏎
8<BODY>⏎
cd3:210-12Last updated 4/21/2011(ver.2-2)<BR>⏎
渋谷栄一校訂(C)<BR>⏎
  </p>⏎
9-10<ADDRESS>Last updated 4/21/2011(ver.2-2)<BR>⏎
渋谷栄一校訂(C)</ADDRESS>⏎
d114<P>⏎
d116<P>⏎
d132<P>⏎
c180<LI>一行、和歌を唱和する---<A HREF="#in52">今日は、かくてと思すに、また宮の大夫</A>⏎
75<LI>一行、和歌を唱和する---<A HREF="#in52">今日は、かくてと思すに、また宮の大夫</A>⏎
d1108<P>⏎
d1111<P>⏎
text47112 <H4>第一章 大君の物語 薫と大君の実事なき暁の別れ</H4>105 
text47113 <A NAME="in11">[第一段 秋、八の宮の一周忌の準備]</A><BR>106 
d1114<P>⏎
d1116<P>⏎
d1118<P>⏎
text47119 <A NAME="in12">[第二段 薫、大君に恋心を訴える]</A><BR>109 
d1120<P>⏎
d1122<P>⏎
cd3:1123-125 「<A HREF="#no4">あげまきに</A><A NAME="te4">長</A>き契りを結びこめ<BR>⏎
  同じ所に縒りも会はなむ」<BR>⏎
<P>⏎
111 「<A HREF="#no4">あげまきに</A><A NAME="te4">長</A>き契りを結びこめ<BR>  同じ所に縒りも会はなむ」<BR>⏎
d1127<P>⏎
cd3:1128-130 「ぬきもあへずもろき涙の玉の緒に<BR>⏎
  長き契りをいかが結ばむ」<BR>⏎
<P>⏎
113 「ぬきもあへずもろき涙の玉の緒に<BR>  長き契りをいかが結ばむ」<BR>⏎
d1132<P>⏎
d1134<P>⏎
d1136<P>⏎
cd8:4137-144 世のありさまなど、思し分くまじくは見たてまつらぬを、うたて遠々しくのみもてなさせたまへば、かばかりうらなく頼みきこゆる心に違ひて、恨めしくなむ。ともかくも思し分くらむさまなどを、さはやかに承りにしがな」<BR>⏎
<P>⏎
 といとまめだちて聞こえたまへば、<BR>⏎
<P>⏎
 「違へじの心にてこそは、かうまであやしき世の例なるありさまにて、隔てなくもてなしはべれ。それを思し分かざりけるこそは、浅きことも混ざりたる心地すれ。げにかかる住まひなどに、心あらむ人は、思ひ残す事あるまじきを、何事にも後れそめにけるうちに、こののたまふめる筋は、いにしへも、さらにかけて、とあらばかからばなど、行く末のあらましごとに取りまぜて、のたまひ置くこともなかりしかば、なほかかるさまにて、世づきたる方を思ひ絶ゆべく思しおきてける、となむ思ひ合はせはべれば、ともかくも聞こえむ方なくて。さるはすこし世籠もりたるほどにて、<A HREF="#no6">深山隠れに</A><A NAME="te6">は</A>心苦しく見えたまふ人の御上を、いとかく朽木にはなし果てずもがなと、人知れず扱はしくおぼえはべれど、いかなるべき世にかあらむ」<BR>⏎
<P>⏎
 とうち嘆きてもの思ひ乱れたまひけるほどのけはひ、いとあはれげなり。<BR>⏎
<P>⏎
117-120 世のありさまなど、思し分くまじくは見たてまつらぬを、うたて遠々しくのみもてなさせたまへば、かばかりうらなく頼みきこゆる心に違ひて、恨めしくなむ。ともかくも思し分くらむさまなどを、さはやかに承りにしがな」<BR>⏎
 といとまめだちて聞こえたまへば、<BR>⏎
 「違へじの心にてこそは、かうまであやしき世の例なるありさまにて、隔てなくもてなしはべれ。それを思し分かざりけるこそは、浅きことも混ざりたる心地すれ。げにかかる住まひなどに、心あらむ人は、思ひ残す事あるまじきを、何事にも後れそめにけるうちに、こののたまふめる筋は、いにしへも、さらにかけて、とあらばかからばなど、行く末のあらましごとに取りまぜて、のたまひ置くこともなかりしかば、なほかかるさまにて、世づきたる方を思ひ絶ゆべく思しおきてける、となむ思ひ合はせはべれば、ともかくも聞こえむ方なくて。さるはすこし世籠もりたるほどにて、<A HREF="#no6">深山隠れに</A><A NAME="te6">は</A>心苦しく見えたまふ人の御上を、いとかく朽木にはなし果てずもがなと、人知れず扱はしくおぼえはべれど、いかなるべき世にかあらむ」<BR>⏎
 とうち嘆きてもの思ひ乱れたまひけるほどのけはひ、いとあはれげなり。<BR>⏎
text47145 <A NAME="in13">[第三段 薫、弁を呼び出して語る]</A><BR>121 
d1146<P>⏎
d1148<P>⏎
cd2:1149-150「年ごろは、ただ後の世ざまの心ばへにて進み参りそめしを、もの心細げに思しなるめりし御末のころほひ、この御事どもを、心にまかせてもてなしきこゆべくなむのたまひ契りてしを、思しおきてたてまつりたまひし御ありさまどもには違ひて、御心ばへどもの、いといとあやにくにもの強げなるは、いかに思しおきつる方の異なるにやと、疑はしきことさへなむ。<BR>⏎
<P>⏎
123 「年ごろは、ただ後の世ざまの心ばへにて進み参りそめしを、もの心細げに思しなるめりし御末のころほひ、この御事どもを、心にまかせてもてなしきこゆべくなむのたまひ契りてしを、思しおきてたてまつりたまひし御ありさまどもには違ひて、御心ばへどもの、いといとあやにくにもの強げなるは、いかに思しおきつる方の異なるにやと、疑はしきことさへなむ。<BR>⏎
d1152<P>⏎
d1154<P>⏎
cd2:1155-156 「宮の御ことをも、かく聞こゆるに、うしろめたくはあらじと、うちとけたまふさまならぬは、うちうちに、さりとも思ほし向けたることのさまあらむ。なほいかに、いかに」<BR>⏎
<P>⏎
126 「宮の御ことをも、かく聞こゆるに、うしろめたくはあらじと、うちとけたまふさまならぬは、うちうちに、さりとも思ほし向けたることのさまあらむ。なほいかに、いかに」<BR>⏎
d1158<P>⏎
text47159 <A NAME="in14">[第四段 薫、弁を呼び出して語る(続き)]</A><BR>128 
d1160<P>⏎
d1162<P>⏎
cd4:2163-166 かくてさぶらふこれかれも、年ごろだに、何の<A HREF="#no7">頼もしげある木の本</A><A NAME="te7">の</A>隠ろへもはべらざりき。身を捨てがたく思ふ限りは、ほどほどにつけてまかで散り、昔の古き筋なる人も、多く見たてまつり捨てたるあたりに、まして今は、しばしも立ちとまりがたげにわびはべりて、おはしましし世にこそ、限りありて、かたほならむ御ありさまは、いとほしくもなど、古代なる御うるはしさに、思しもとどこほりつれ。<BR>⏎
<P>⏎
 今は、かうまた頼みなき御身どもにて、いかにもいかにも、世になびきたまへらむを、あながちにそしりきこえむ人は、かへりてものの心をも知らず、言ふかひなきことにてこそはあらめ。いかなる人か、いとかくて世をば過ぐし果てたまふべき。<BR>⏎
<P>⏎
130-131 かくてさぶらふこれかれも、年ごろだに、何の<A HREF="#no7">頼もしげある木の本</A><A NAME="te7">の</A>隠ろへもはべらざりき。身を捨てがたく思ふ限りは、ほどほどにつけてまかで散り、昔の古き筋なる人も、多く見たてまつり捨てたるあたりに、まして今は、しばしも立ちとまりがたげにわびはべりて、おはしましし世にこそ、限りありて、かたほならむ御ありさまは、いとほしくもなど、古代なる御うるはしさに、思しもとどこほりつれ。<BR>⏎
 今は、かうまた頼みなき御身どもにて、いかにもいかにも、世になびきたまへらむを、あながちにそしりきこえむ人は、かへりてものの心をも知らず、言ふかひなきことにてこそはあらめ。いかなる人か、いとかくて世をば過ぐし果てたまふべき。<BR>⏎
d1168<P>⏎
d1170<P>⏎
d1172<P>⏎
d1174<P>⏎
d1176<P>⏎
cd2:1178-179<P> 后の宮、はたなれなれしく、さやうにそこはかとなき思ひのままなるくだくだしさを、聞こえ触るべきにもあらず。三条の宮は、親と思ひきこゆべきにもあらぬ御若々しさなれど、限りあれば、たやすく馴れきこえさせずかし。その他の女は、すべていと疎くつつましく、恐ろしくおぼえて、心からよるべなく心細きなり。<BR>⏎
<P>⏎
138 后の宮、はたなれなれしく、さやうにそこはかとなき思ひのままなるくだくだしさを、聞こえ触るべきにもあらず。三条の宮は、親と思ひきこゆべきにもあらぬ御若々しさなれど、限りあれば、たやすく馴れきこえさせずかし。その他の女は、すべていと疎くつつましく、恐ろしくおぼえて、心からよるべなく心細きなり。<BR>⏎
d1181<P>⏎
cd2:1182-183 など言ひゐたまへり。老い人はた、かばかり心細きに、あらまほしげなる御ありさまを、いと切に、さもあらせたてまつらばやと思へど、いづ方も恥づかしげなる御ありさまどもなれば、思ひのままにはえ聞こえず。<BR>⏎
<P>⏎
140 など言ひゐたまへり。老い人はた、かばかり心細きに、あらまほしげなる御ありさまを、いと切に、さもあらせたてまつらばやと思へど、いづ方も恥づかしげなる御ありさまどもなれば、思ひのままにはえ聞こえず。<BR>⏎
text47184 <A NAME="in15">[第五段 薫、大君の寝所に迫る]</A><BR>141 
d1185<P>⏎
d1187<P>⏎
d1189<P>⏎
d1191<P>⏎
d1193<P>⏎
cd2:1194-195 内には、「人びと、近く」などのたまひおきつれど、「さしももて離れたまはざらなむ」と思ふべかめれば、いとしも護りきこえず、さし退つつ、みな寄り臥して、仏の御燈火もかかぐる人もなし。ものむつかしくて、忍びて人召せど、おどろかず。<BR>⏎
<P>⏎
146 内には、「人びと、近く」などのたまひおきつれど、「さしももて離れたまはざらなむ」と思ふべかめれば、いとしも護りきこえず、さし退つつ、みな寄り臥して、仏の御燈火もかかぐる人もなし。ものむつかしくて、忍びて人召せど、おどろかず。<BR>⏎
d1197<P>⏎
cd2:1198-199 とて入りたまひなむとするけしきなり。<BR>⏎
<P>⏎
148 とて入りたまひなむとするけしきなり。<BR>⏎
d1201<P>⏎
cd2:1202-203 とて屏風をやをら押し開けて入りたまひぬ。いとむくつけくて、半らばかり入りたまへるに、引きとどめられて、いみじくねたく心憂ければ、<BR>⏎
<P>⏎
150 とて屏風をやをら押し開けて入りたまひぬ。いとむくつけくて、半らばかり入りたまへるに、引きとどめられて、いみじくねたく心憂ければ、<BR>⏎
d1205<P>⏎
cd6:3206-211 とあはめたまへるさまの、いよいよをかしければ、<BR>⏎
<P>⏎
 「隔てぬ心をさらに思し分かねば、聞こえ知らせむとぞかし。めづらかなりとも、いかなる方に、思しよるにかはあらむ。仏の御前にて誓言も立てはべらむ。うたてな懼ぢたまひそ。御心破らじと思ひそめてはべれば。人はかくしも推し量り思ふまじかめれど、世に違へる痴者にて過ぐしはべるぞや」<BR>⏎
<P>⏎
 とて心にくきほどなる火影に、御髪のこぼれかかりたるを、かきやりつつ見たまへば、人の御けはひ、思ふやうに香りをかしげなり。<BR>⏎
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152-154 とあはめたまへるさまの、いよいよをかしければ、<BR>⏎
 「隔てぬ心をさらに思し分かねば、聞こえ知らせむとぞかし。めづらかなりとも、いかなる方に、思しよるにかはあらむ。仏の御前にて誓言も立てはべらむ。うたてな懼ぢたまひそ。御心破らじと思ひそめてはべれば。人はかくしも推し量り思ふまじかめれど、世に違へる痴者にて過ぐしはべるぞや」<BR>⏎
 とて心にくきほどなる火影に、御髪のこぼれかかりたるを、かきやりつつ見たまへば、人の御けはひ、思ふやうに香りをかしげなり。<BR>⏎
text47212 <A NAME="in16">[第六段 薫、大君をかき口説く]</A><BR>155 
d1213<P>⏎
d1215<P>⏎
d1217<P>⏎
d1219<P>⏎
d1221<P>⏎
d1223<P>⏎
cd2:1224-225 とてかの物の音聞きし有明の月影よりはじめて、折々の思ふ心の忍びがたくなりゆくさまを、いと多く聞こえたまふに、「恥づかしくもありけるかな」と疎ましく、「かかる心ばへながらつれなくまめだちたまひけるかな」と、聞きたまふこと多かり。<BR>⏎
<P>⏎
161 とてかの物の音聞きし有明の月影よりはじめて、折々の思ふ心の忍びがたくなりゆくさまを、いと多く聞こえたまふに、「恥づかしくもありけるかな」と疎ましく、「かかる心ばへながらつれなくまめだちたまひけるかな」と、聞きたまふこと多かり。<BR>⏎
d1227<P>⏎
d1229<P>⏎
cd2:1230-231 宮ののたまひしさまなど思し出づるに、「げにながらへば、心の外にかくあるまじきことも見るべきわざにこそは」と、もののみ悲しくて、<A HREF="#no8">水の音に流れ添ふ心地</A><A NAME="te8">し</A>たまふ。<BR>⏎
<P>⏎
164 宮ののたまひしさまなど思し出づるに、「げにながらへば、心の外にかくあるまじきことも見るべきわざにこそは」と、もののみ悲しくて、<A HREF="#no8">水の音に流れ添ふ心地</A><A NAME="te8">し</A>たまふ。<BR>⏎
text47232 <A NAME="in17">[第七段 実事なく朝を迎える]</A><BR>165 
d1233<P>⏎
d1235<P>⏎
d1237<P>⏎
cd2:1238-239 といとなつかしきさまして語らひきこえたまへば、やうやう恐ろしさも慰みて、<BR>⏎
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168 といとなつかしきさまして語らひきこえたまへば、やうやう恐ろしさも慰みて、<BR>⏎
d1241<P>⏎
d1243<P>⏎
d1245<P>⏎
cd4:2246-249 「ことあり顔に朝露もえ分けはべるまじ。また人はいかが推し量りきこゆべき。<A HREF="#k06">例の</A><A NAME="t06">や</A>うになだらかにもてなさせたまひて、ただ世に違ひたることにて、今より後も、ただかやうにしなさせたまひてよ。よにうしろめたき心はあらじと思せ。かばかりあながちなる心のほども、あはれと思し知らぬこそかひなけれ」<BR>⏎
<P>⏎
 とて出でたまはむのけしきもなし。あさましく、かたはならむとて、<BR>⏎
<P>⏎
172-173 「ことあり顔に朝露もえ分けはべるまじ。また人はいかが推し量りきこゆべき。<A HREF="#k06">例の</A><A NAME="t06">や</A>うになだらかにもてなさせたまひて、ただ世に違ひたることにて、今より後も、ただかやうにしなさせたまひてよ。よにうしろめたき心はあらじと思せ。かばかりあながちなる心のほども、あはれと思し知らぬこそかひなけれ」<BR>⏎
 とて出でたまはむのけしきもなし。あさましく、かたはならむとて、<BR>⏎
d1251<P>⏎
cd4:2252-255 とていとすべなしと思したれば、<BR>⏎
<P>⏎
 「あな苦しや。暁の別れや。まだ知らぬことにて、げに惑ひぬべきを」<BR>⏎
<P>⏎
175-176 とていとすべなしと思したれば、<BR>⏎
 「あな苦しや。暁の別れや。まだ知らぬことにて、げに惑ひぬべきを」<BR>⏎
d1257<P>⏎
cd3:1258-260 「山里のあはれ知らるる声々に<BR>⏎
  とりあつめたる朝ぼらけかな」<BR>⏎
<P>⏎
178 「山里のあはれ知らるる声々に<BR>  とりあつめたる朝ぼらけかな」<BR>⏎
d1262<P>⏎
cd3:1263-265 「<A HREF="#no11">鳥の音も聞こえぬ山</A><A NAME="te11">と</A>思ひしを<BR>⏎
  世の憂きことは訪ね来にけり」<BR>⏎
<P>⏎
180 「<A HREF="#no11">鳥の音も聞こえぬ山</A><A NAME="te11">と</A>思ひしを<BR>  世の憂きことは訪ね来にけり」<BR>⏎
d1267<P>⏎
text47268 <A NAME="in18">[第八段 大君、妹の中の君を薫にと思う]</A><BR>182 
d1269<P>⏎
d1271<P>⏎
d1273<P>⏎
d1275<P>⏎
d1277<P>⏎
d1279<P>⏎
d1281<P>⏎
d1283<P>⏎
d1285<P>⏎
d1287<P>⏎
cd2:1288-289 とせめて聞こえたまへば、暗くなりぬる紛れに起きたまひて、もろともに結びなどしたまふ。中納言殿より御文あれど、<BR>⏎
<P>⏎
192 とせめて聞こえたまへば、暗くなりぬる紛れに起きたまひて、もろともに結びなどしたまふ。中納言殿より御文あれど、<BR>⏎
d1291<P>⏎
cd6:3292-297 とて人伝てにぞ聞こえたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
 「さも見苦しく、若々しくおはす」<BR>⏎
<P>⏎
 と人びとつぶやききこゆ。<BR>⏎
<P>⏎
194-196 とて人伝てにぞ聞こえたまふ。<BR>⏎
 「さも見苦しく、若々しくおはす」<BR>⏎
 と人びとつぶやききこゆ。<BR>⏎
text47298 <H4>第二章 大君の物語 大君、中の君を残して逃れる</H4>197 
text47299 <A NAME="in21">[第一段 一周忌終り、薫、宇治を訪問]</A><BR>198 
d1300<P>⏎
d1302<P>⏎
d1304<P>⏎
d1306<P>⏎
d1308<P>⏎
cd2:1309-310 と御文にて聞こえたまへり。<BR>⏎
<P>⏎
203 と御文にて聞こえたまへり。<BR>⏎
d1312<P>⏎
d1314<P>⏎
d1316<P>⏎
text47317 <A NAME="in22">[第二段 大君、妹の中の君に薫を勧める]</A><BR>207 
d1318<P>⏎
d1320<P>⏎
cd2:1321-322 「せめて怨み深くは、この君をおし出でむ。劣りざまならむにてだに、さても見そめては、あさはかにはもてなすまじき心なめるを、ましてほのかにも見そめては、慰みなむ。言に出でては、いかでかはふとさることを待ち取る人のあらむ。本意になむあらぬと、うけひくけしきのなかなるは、かたへは人の思はむことを、あいなう浅き方にやなど、つつみたまふならむ」<BR>⏎
<P>⏎
209 「せめて怨み深くは、この君をおし出でむ。劣りざまならむにてだに、さても見そめては、あさはかにはもてなすまじき心なめるを、ましてほのかにも見そめては、慰みなむ。言に出でては、いかでかはふとさることを待ち取る人のあらむ。本意になむあらぬと、うけひくけしきのなかなるは、かたへは人の思はむことを、あいなう浅き方にやなど、つつみたまふならむ」<BR>⏎
d1324<P>⏎
d1326<P>⏎
cd2:1327-328 げにさのみやうのものと過ぐしたまはむも、明け暮るる月日に添へても、御ことをのみこそ、あたらしく心苦しくかなしきものに思ひきこゆるを、君だに世の常にもてなしたまひて、かかる身のありさまもおもだたしく、慰むばかり見たてまつりなさばや」<BR>⏎
<P>⏎
212 げにさのみやうのものと過ぐしたまはむも、明け暮るる月日に添へても、御ことをのみこそ、あたらしく心苦しくかなしきものに思ひきこゆるを、君だに世の常にもてなしたまひて、かかる身のありさまもおもだたしく、慰むばかり見たてまつりなさばや」<BR>⏎
d1330<P>⏎
d1332<P>⏎
cd6:3333-338 となま恨めしく思ひたまひつれば、げにといとほしくて、<BR>⏎
<P>⏎
 「なほこれかれうたてひがひがしきものに言ひ思ふべかめるにつけて、思ひ乱れはべるぞや」<BR>⏎
<P>⏎
 と言ひさしたまひつ。<BR>⏎
<P>⏎
215-217 となま恨めしく思ひたまひつれば、げにといとほしくて、<BR>⏎
 「なほこれかれうたてひがひがしきものに言ひ思ふべかめるにつけて、思ひ乱れはべるぞや」<BR>⏎
 と言ひさしたまひつ。<BR>⏎
text47339 <A NAME="in23">[第三段 薫は帰らず、大君、苦悩す]</A><BR>218 
d1340<P>⏎
d1342<P>⏎
cd2:1343-344 「いかにもてなすべき身にかは。一所おはせましかば、ともかくも、さるべき人に扱はれたてまつりて、宿世といふなる方につけて、<A HREF="#no14">身を心ともせぬ世</A><A NAME="te14">な</A>れば、皆例のことにてこそは、人笑へなる咎をも隠すなれ。ある限りの人は年積もり、さかしげにおのがじしは思ひつつ、心をやりて、似つかはしげなることを聞こえ知らすれど、こははかばかしきことかは。人めかしからぬ心どもにて、ただ一方に言ふにこそは」<BR>⏎
<P>⏎
220 「いかにもてなすべき身にかは。一所おはせましかば、ともかくも、さるべき人に扱はれたてまつりて、宿世といふなる方につけて、<A HREF="#no14">身を心ともせぬ世</A><A NAME="te14">な</A>れば、皆例のことにてこそは、人笑へなる咎をも隠すなれ。ある限りの人は年積もり、さかしげにおのがじしは思ひつつ、心をやりて、似つかはしげなることを聞こえ知らすれど、こははかばかしきことかは。人めかしからぬ心どもにて、ただ一方に言ふにこそは」<BR>⏎
d1346<P>⏎
d1348<P>⏎
cd2:1349-350 などそそのかしきこえつつ、皆さる心すべかめるけしきを、あさましく、「げに何の障り所かはあらむ。ほどもなくて、かかる御住まひのかひなき、<A HREF="#no15">山梨の花</A><A NAME="te15">ぞ</A>」、逃れむ方なかりける。<BR>⏎
<P>⏎
223 などそそのかしきこえつつ、皆さる心すべかめるけしきを、あさましく、「げに何の障り所かはあらむ。ほどもなくて、かかる御住まひのかひなき、<A HREF="#no15">山梨の花</A><A NAME="te15">ぞ</A>」、逃れむ方なかりける。<BR>⏎
d1352<P>⏎
d1354<P>⏎
cd2:1355-356 と思しのたまふを、この老い人の、おのがじし語らひて、顕証にささめき、さは言へど、深からぬけに老いひがめるにや、いとほしくぞ見ゆる。<BR>⏎
<P>⏎
226 と思しのたまふを、この老い人の、おのがじし語らひて、顕証にささめき、さは言へど、深からぬけに老いひがめるにや、いとほしくぞ見ゆる。<BR>⏎
text47357 <A NAME="in24">[第四段 大君、弁と相談する]</A><BR>227 
d1358<P>⏎
d1360<P>⏎
d1362<P>⏎
cd6:3363-368 されど昔より思ひ離れそめたる心にて、いと苦しきを。この君の盛り過ぎたまはむも口惜し。げにかかる住まひも、ただこの御ゆかりに所狭くのみおぼゆるを、まことに昔を思ひきこえたまふ心ざしならば、同じことに思ひなしたまへかし。身を分けたる心のうちは皆ゆづりて、見たてまつらむ心地なむすべき。なほかうやうによろしげに聞こえなされよ」<BR>⏎
<P>⏎
 と恥ぢらひたるものから、あるべきさまをのたまひ続くれば、いとあはれと見たてまつる。<BR>⏎
<P>⏎
 「さのみこそは、さきざきも御けしきを見たまふれば、いとよく聞こえさすれど、さはえ思ひ改むまじ、兵部卿宮の御恨み、深さまさるめれば、またそなたざまに、いとよく後見きこえむ、となむ聞こえたまふ。それも思ふやうなる御ことどもなり。二所ながらおはしまして、ことさらに、いみじき御心尽くしてかしづききこえさせたまはむに、えしもかく世にありがたき御ことども、さし集ひたまはざらまし。<BR>⏎
<P>⏎
230-232 されど昔より思ひ離れそめたる心にて、いと苦しきを。この君の盛り過ぎたまはむも口惜し。げにかかる住まひも、ただこの御ゆかりに所狭くのみおぼゆるを、まことに昔を思ひきこえたまふ心ざしならば、同じことに思ひなしたまへかし。身を分けたる心のうちは皆ゆづりて、見たてまつらむ心地なむすべき。なほかうやうによろしげに聞こえなされよ」<BR>⏎
 と恥ぢらひたるものから、あるべきさまをのたまひ続くれば、いとあはれと見たてまつる。<BR>⏎
 「さのみこそは、さきざきも御けしきを見たまふれば、いとよく聞こえさすれど、さはえ思ひ改むまじ、兵部卿宮の御恨み、深さまさるめれば、またそなたざまに、いとよく後見きこえむ、となむ聞こえたまふ。それも思ふやうなる御ことどもなり。二所ながらおはしまして、ことさらに、いみじき御心尽くしてかしづききこえさせたまはむに、えしもかく世にありがたき御ことども、さし集ひたまはざらまし。<BR>⏎
d1370<P>⏎
cd2:1371-372 故宮の御遺言違へじと思し召すかたはことわりなれど、それはさるべき人のおはせず、品ほどならぬことやおはしまさむと思して、戒めきこえさせたまふめりしにこそ。<BR>⏎
<P>⏎
234 故宮の御遺言違へじと思し召すかたはことわりなれど、それはさるべき人のおはせず、品ほどならぬことやおはしまさむと思して、戒めきこえさせたまふめりしにこそ。<BR>⏎
d1374<P>⏎
cd4:2375-378 それ皆例のことなめれば、もどき言ふ人もはべらず。ましてかくばかり、ことさらにも作り出でまほしげなる人の御ありさまに、心ざし深くありがたげに聞こえたまふを、あながちにもて離れさせたまうて、思しおきつるやうに、行ひの本意を遂げたまふとも、さりとて<A HREF="#no16">雲霞をやは</A><A NAME="te16">」</A><BR>⏎
<P>⏎
 などすべてこと多く申し続くれば、いと憎く心づきなしと思して、ひれ臥したまへり。<BR>⏎
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236-237 それ皆例のことなめれば、もどき言ふ人もはべらず。ましてかくばかり、ことさらにも作り出でまほしげなる人の御ありさまに、心ざし深くありがたげに聞こえたまふを、あながちにもて離れさせたまうて、思しおきつるやうに、行ひの本意を遂げたまふとも、さりとて<A HREF="#no16">雲霞をやは</A><A NAME="te16">」</A><BR>⏎
 などすべてこと多く申し続くれば、いと憎く心づきなしと思して、ひれ臥したまへり。<BR>⏎
text47379 <A NAME="in25">[第五段 大君、中の君を残して逃れる]</A><BR>238 
d1380<P>⏎
d1382<P>⏎
cd4:2383-386 弁は、のたまひつるさまを客人に聞こゆ。「いかなればいとかくしも世を思ひ離れたまふらむ。聖だちたまへりしあたりにて、常なきものに思ひ知りたまへるにや」と思すに、いとどわが心通ひておぼゆれば、さかしだち憎くもおぼえず。<BR>⏎
<P>⏎
 「さらば物越などにも、今はあるまじきことに思しなるにこそはあなれ。今宵ばかり、大殿籠もるらむあたりにも、忍びてたばかれ」<BR>⏎
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240-241 弁は、のたまひつるさまを客人に聞こゆ。「いかなればいとかくしも世を思ひ離れたまふらむ。聖だちたまへりしあたりにて、常なきものに思ひ知りたまへるにや」と思すに、いとどわが心通ひておぼゆれば、さかしだち憎くもおぼえず。<BR>⏎
 「さらば物越などにも、今はあるまじきことに思しなるにこそはあなれ。今宵ばかり、大殿籠もるらむあたりにも、忍びてたばかれ」<BR>⏎
d1388<P>⏎
d1390<P>⏎
d1392<P>⏎
d1394<P>⏎
cd2:1395-396 「あらましごとにてだに、つらしと思ひたまへりつるを、まいていかにめづらかに思し疎まむ」と、いと心苦しきにも、すべてはかばかしき後見なくて、落ちとまる身どもの悲しきを思ひ続けたまふに、今はとて山に登りたまひし夕べの御さまなど、ただ今の心地して、いみじく恋しく悲しくおぼえたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
246 「あらましごとにてだに、つらしと思ひたまへりつるを、まいていかにめづらかに思し疎まむ」と、いと心苦しきにも、すべてはかばかしき後見なくて、落ちとまる身どもの悲しきを思ひ続けたまふに、今はとて山に登りたまひし夕べの御さまなど、ただ今の心地して、いみじく恋しく悲しくおぼえたまふ。<BR>⏎
text47397 <A NAME="in26">[第六段 薫、相手を中の君と知る]</A><BR>247 
d1398<P>⏎
d1400<P>⏎
cd4:2401-404 あさましげにあきれ惑ひたまへるを、「げに心も知らざりける」と見ゆれば、いといとほしくもあり、またおし返して、隠れたまへらむつらさの、まめやかに心憂くねたければ、これをもよそのものとはえ思ひ放つまじけれど、なほ本意の違はむ、口惜しくて、<BR>⏎
<P>⏎
 「うちつけに浅かりけりともおぼえたてまつらじ。この一ふしは、なほ過ぐして、つひに宿世逃れずは、こなたざまにならむも、何かは異人のやうにやは」<BR>⏎
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249-250 あさましげにあきれ惑ひたまへるを、「げに心も知らざりける」と見ゆれば、いといとほしくもあり、またおし返して、隠れたまへらむつらさの、まめやかに心憂くねたければ、これをもよそのものとはえ思ひ放つまじけれど、なほ本意の違はむ、口惜しくて、<BR>⏎
 「うちつけに浅かりけりともおぼえたてまつらじ。この一ふしは、なほ過ぐして、つひに宿世逃れずは、こなたざまにならむも、何かは異人のやうにやは」<BR>⏎
d1406<P>⏎
d1408<P>⏎
d1410<P>⏎
cd2:1411-412 とたどりあへり。<BR>⏎
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254 とたどりあへり。<BR>⏎
d1414<P>⏎
d1416<P>⏎
cd6:3417-422 「おほかた例の、見たてまつるに皺のぶる心地して、めでたくあはれに見まほしき御容貌ありさまを、などていともて離れては聞こえたまふらむ。何か、これは世の人の言ふめる、恐ろしき神ぞ、憑きたてまつりたらむ」<BR>⏎
<P>⏎
 と歯はうちすきて、愛敬なげに言ひなす女あり。また<BR>⏎
<P>⏎
 「あなまがまがし。なぞのものか憑かせたまはむ。ただ人に遠くて、生ひ出でさせたまふめれば、かかることにも、つきづきしげにもてなしきこえたまふ人もなくおはしますに、はしたなく思さるるにこそ。今おのづから見たてまつり馴れたまひなば、思ひきこえたまひてむ」<BR>⏎
<P>⏎
257-259 「おほかた例の、見たてまつるに皺のぶる心地して、めでたくあはれに見まほしき御容貌ありさまを、などていともて離れては聞こえたまふらむ。何か、これは世の人の言ふめる、恐ろしき神ぞ、憑きたてまつりたらむ」<BR>⏎
 と歯はうちすきて、愛敬なげに言ひなす女あり。また<BR>⏎
 「あなまがまがし。なぞのものか憑かせたまはむ。ただ人に遠くて、生ひ出でさせたまふめれば、かかることにも、つきづきしげにもてなしきこえたまふ人もなくおはしますに、はしたなく思さるるにこそ。今おのづから見たてまつり馴れたまひなば、思ひきこえたまひてむ」<BR>⏎
d1424<P>⏎
d1426<P>⏎
d1428<P>⏎
d1430<P>⏎
d1432<P>⏎
cd2:1433-434 など<A HREF="#no18">後瀬を契りて</A><A NAME="te18">出</A>でたまふ。我ながらあやしく夢のやうにおぼゆれど、なほつれなき人の御けしき、今一たび見果てむの心に、思ひのどめつつ、例の、出でて臥したまへり。<BR>⏎
<P>⏎
265 など<A HREF="#no18">後瀬を契りて</A><A NAME="te18">出</A>でたまふ。我ながらあやしく夢のやうにおぼゆれど、なほつれなき人の御けしき、今一たび見果てむの心に、思ひのどめつつ、例の、出でて臥したまへり。<BR>⏎
text47435 <A NAME="in27">[第七段 翌朝、それぞれの思い]</A><BR>266 
d1436<P>⏎
d1438<P>⏎
d1440<P>⏎
d1442<P>⏎
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d1446<P>⏎
d1448<P>⏎
d1450<P>⏎
cd6:3451-456 「来し方のつらさは、なほ残りある心地して、よろづに思ひ慰めつるを、今宵なむ、まことに恥づかしく、<A HREF="#no20">身も投げつべき心地</A><A NAME="te20">す</A>る。捨てがたく落としおきたてまつりたまへりけむ心苦しさを思ひきこゆる方こそ、またひたぶるに、身をもえ思ひ捨つまじけれ。かけかけしき筋は、いづ方にも思ひきこえじ。憂きもつらきも、かたがたに忘られたまふまじくなむ。<BR>⏎
<P>⏎
 宮などの、恥づかしげなく聞こえたまふめるを、同じくは心高く、と思ふ方ぞ異にものしたまふらむ、と心得果てつれば、いとことわりに恥づかしくて。また参りて、人びとに見えたてまつらむこともねたくなむ。よしかくをこがましき身の上、また人にだに漏らしたまふな」<BR>⏎
<P>⏎
 と怨じおきて、例よりも急ぎ出でたまひぬ。「誰が御ためもいとほしく」と、ささめきあへり。<BR>⏎
<P>⏎
274-276 「来し方のつらさは、なほ残りある心地して、よろづに思ひ慰めつるを、今宵なむ、まことに恥づかしく、<A HREF="#no20">身も投げつべき心地</A><A NAME="te20">す</A>る。捨てがたく落としおきたてまつりたまへりけむ心苦しさを思ひきこゆる方こそ、またひたぶるに、身をもえ思ひ捨つまじけれ。かけかけしき筋は、いづ方にも思ひきこえじ。憂きもつらきも、かたがたに忘られたまふまじくなむ。<BR>⏎
 宮などの、恥づかしげなく聞こえたまふめるを、同じくは心高く、と思ふ方ぞ異にものしたまふらむ、と心得果てつれば、いとことわりに恥づかしくて。また参りて、人びとに見えたてまつらむこともねたくなむ。よしかくをこがましき身の上、また人にだに漏らしたまふな」<BR>⏎
 と怨じおきて、例よりも急ぎ出でたまひぬ。「誰が御ためもいとほしく」と、ささめきあへり。<BR>⏎
text47457 <A NAME="in28">[第八段 薫と大君、和歌を詠み交す]</A><BR>277 
d1458<P>⏎
cd5:2459-463 姫君も、「いかにしつることぞ、もしおろかなる<A HREF="#k12">心</A><A NAME="t12">も</A>のしたまはば」と、胸つぶれて心苦しければ、すべてうちあはぬ人びとのさかしら、憎しと思す。さまざま思ひたまふに、御文あり。例よりはうれしとおぼえたまふも、かつはあやし。秋のけしきも知らず顔に、青き枝の、片枝いと濃く紅葉ぢたるを、<BR>⏎
<P>⏎
 「おなじ枝を分きて染めける山姫に<BR>⏎
  いづれか深き色と問はばや」<BR>⏎
<P>⏎
278-279 姫君も、「いかにしつることぞ、もしおろかなる<A HREF="#k12">心</A><A NAME="t12">も</A>のしたまはば」と、胸つぶれて心苦しければ、すべてうちあはぬ人びとのさかしら、憎しと思す。さまざま思ひたまふに、御文あり。例よりはうれしとおぼえたまふも、かつはあやし。秋のけしきも知らず顔に、青き枝の、片枝いと濃く紅葉ぢたるを、<BR>⏎
 「おなじ枝を分きて染めける山姫に<BR>  いづれか深き色と問はばや」<BR>⏎
d1465<P>⏎
d1467<P>⏎
cd3:1468-470 「山姫の染むる心はわかねども<BR>⏎
  移ろふ方や深きなるらむ」<BR>⏎
<P>⏎
282 「山姫の染むる心はわかねども<BR>  移ろふ方や深きなるらむ」<BR>⏎
d1472<P>⏎
d1474<P>⏎
cd4:2475-478 とかく言ひ伝へなどすめる老い人の思はむところも軽々しく、とにかくに心を染めけむだに悔しく、かばかりの世の中を思ひ捨てむの心に、みづからもかなはざりけりと、人悪ろく思ひ知らるるを、ましておしなべたる好き者のまねに、同じあたり返すがへす漕ぎめぐらむ、いと<A HREF="#k13">人笑へ</A><A NAME="t13">な</A>る<A HREF="#no21">棚無し小舟</A><A NAME="te21">め</A>きたるべし」<BR>⏎
<P>⏎
 など夜もすがら思ひ明かしたまひて、まだ有明の空もをかしきほどに、兵部卿宮の御方に参りたまふ。<BR>⏎
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285-286 とかく言ひ伝へなどすめる老い人の思はむところも軽々しく、とにかくに心を染めけむだに悔しく、かばかりの世の中を思ひ捨てむの心に、みづからもかなはざりけりと、人悪ろく思ひ知らるるを、ましておしなべたる好き者のまねに、同じあたり返すがへす漕ぎめぐらむ、いと<A HREF="#k13">人笑へ</A><A NAME="t13">な</A>る<A HREF="#no21">棚無し小舟</A><A NAME="te21">め</A>きたるべし」<BR>⏎
 など夜もすがら思ひ明かしたまひて、まだ有明の空もをかしきほどに、兵部卿宮の御方に参りたまふ。<BR>⏎
text47479 <H4>第三章 中の君の物語 中の君と匂宮との結婚</H4>287 
text47480 <A NAME="in31">[第一段 薫、匂宮を訪問]</A><BR>288 
d1481<P>⏎
d1483<P>⏎
d1485<P>⏎
cd2:1486-487 階を昇りも果てず、ついゐたまへれば、「なほ上に」などものたまはで、高欄によりゐたまひて、世の中の御物語聞こえ交はしたまふ。かのわたりのことをも、ものの<A HREF="#k14">ついでには</A><A NAME="t14">思</A>し出でて、「よろづに恨みたまふも、わりなしや。みづからの心にだにかなひがたきを」と思ふ思ふ、「さもおはせなむ」と思ひなるやうのあれば、例よりはまめやかに、あるべきさまなど申したまふ。<BR>⏎
<P>⏎
291 階を昇りも果てず、ついゐたまへれば、「なほ上に」などものたまはで、高欄によりゐたまひて、世の中の御物語聞こえ交はしたまふ。かのわたりのことをも、ものの<A HREF="#k14">ついでには</A><A NAME="t14">思</A>し出でて、「よろづに恨みたまふも、わりなしや。みづからの心にだにかなひがたきを」と思ふ思ふ、「さもおはせなむ」と思ひなるやうのあれば、例よりはまめやかに、あるべきさまなど申したまふ。<BR>⏎
d1489<P>⏎
d1491<P>⏎
cd5:2492-496 と語らひたまふを、なほわづらはしがれば、<BR>⏎
<P>⏎
 「女郎花咲ける大野をふせぎつつ<BR>⏎
  心せばくやしめを結ふらむ」<BR>⏎
<P>⏎
294-295 と語らひたまふを、なほわづらはしがれば、<BR>⏎
 「女郎花咲ける大野をふせぎつつ<BR>  心せばくやしめを結ふらむ」<BR>⏎
d1498<P>⏎
cd2:1499-500 「<A HREF="#no22">霧深き朝の原の女郎花</A><A NAME="te22"><BR>⏎
  心</A>を寄せて見る人ぞ見る<BR>⏎
297 「<A HREF="#no22">霧深き朝の原の女郎花</A><A NAME="te22"><BR>  心</A>を寄せて見る人ぞ見る<BR>⏎
d1502<P>⏎
cd6:3503-508 などねたましきこゆれば、<BR>⏎
<P>⏎
「<A HREF="#no23">あなかしかまし</A><A NAME="te23">」</A>と、果て果ては腹立ちたまひぬ。<BR>⏎
<P>⏎
 年ごろかくのたまへど、人の御ありさまをうしろめたく思ひしに、「容貌なども見おとしたまふまじく推し量らるる、心ばせの近劣りするやうもや」などぞ、あやふく思ひわたりしを、「何ごとも口惜しくはものしたまふまじかめり」と思へば、かのいとほしく、うちうちに思ひたばかりたまふありさまも違ふやうならむも、情けなきやうなるを、さりとて、さはたえ思ひ改むまじくおぼゆれば、譲りきこえて、「いづ方の恨みをも負はじ」など、下に思ひ構ふる心をも知りたまはで、心せばくとりなしたまふもをかしけれど、<BR>⏎
<P>⏎
299-301 などねたましきこゆれば、<BR>⏎
 「<A HREF="#no23">あなかしかまし</A><A NAME="te23">」</A>と、果て果ては腹立ちたまひぬ。<BR>⏎
 年ごろかくのたまへど、人の御ありさまをうしろめたく思ひしに、「容貌なども見おとしたまふまじく推し量らるる、心ばせの近劣りするやうもや」などぞ、あやふく思ひわたりしを、「何ごとも口惜しくはものしたまふまじかめり」と思へば、かのいとほしく、うちうちに思ひたばかりたまふありさまも違ふやうならむも、情けなきやうなるを、さりとて、さはたえ思ひ改むまじくおぼゆれば、譲りきこえて、「いづ方の恨みをも負はじ」など、下に思ひ構ふる心をも知りたまはで、心せばくとりなしたまふもをかしけれど、<BR>⏎
d1510<P>⏎
cd6:3511-516 など親方になりて聞こえたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
 「よし見たまへ。かばかり心にとまることなむ、まだなかりつる」<BR>⏎
<P>⏎
 などいとまめやかにのたまへば、<BR>⏎
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303-305 など親方になりて聞こえたまふ。<BR>⏎
 「よし見たまへ。かばかり心にとまることなむ、まだなかりつる」<BR>⏎
 などいとまめやかにのたまへば、<BR>⏎
d1518<P>⏎
cd2:1519-520 とておはしますべきやうなど、こまかに聞こえ知らせたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
307 とておはしますべきやうなど、こまかに聞こえ知らせたまふ。<BR>⏎
text47521 <A NAME="in32">[第二段 彼岸の果ての日、薫、匂宮を宇治に伴う]</A><BR>308 
d1522<P>⏎
d1524<P>⏎
d1526<P>⏎
d1528<P>⏎
d1530<P>⏎
d1532<P>⏎
cd4:2533-536 「ここもとに、ただ一言聞こえさすべきことなむはべるを、思し放つさま見たてまつりてしに、いと恥づかしけれど、ひたや籠もりにてはえやむまじきを、今しばし更かしてを、ありしさまには導きたまひてむや」<BR>⏎
<P>⏎
 などうらもなく語らひたまへば、「いづ方にも同じことにこそは」など思ひて参りぬ。<BR>⏎
<P>⏎
314-315 「ここもとに、ただ一言聞こえさすべきことなむはべるを、思し放つさま見たてまつりてしに、いと恥づかしけれど、ひたや籠もりにてはえやむまじきを、今しばし更かしてを、ありしさまには導きたまひてむや」<BR>⏎
 などうらもなく語らひたまへば、「いづ方にも同じことにこそは」など思ひて参りぬ。<BR>⏎
text47537 <A NAME="in33">[第三段 薫、中の君を匂宮にと企む]</A><BR>316 
d1538<P>⏎
d1540<P>⏎
d1542<P>⏎
d1544<P>⏎
d1546<P>⏎
cd2:1547-548 とて開けたまはず。「今はと移ろひなむを、ただならじとて言ふべきにや。何かは、例ならぬ対面にもあらず、人憎くいらへで、夜も更かさじ」など思ひて、かばかりも出でたまへるに、障子の中より御袖を捉へて引き寄せて、いみじく怨むれば、「いとうたてもあるわざかな。何に聞き入れつらむ」と、悔しく<A HREF="#k16">むつかしけれど</A><A NAME="t16">、</A>「こしらへて出だしてむ」と思して、異人と思ひわきたまふまじきさまに、かすめつつ語らひたまへる心ばへなど、いとあはれなり。<BR>⏎
<P>⏎
321 とて開けたまはず。「今はと移ろひなむを、ただならじとて言ふべきにや。何かは、例ならぬ対面にもあらず、人憎くいらへで、夜も更かさじ」など思ひて、かばかりも出でたまへるに、障子の中より御袖を捉へて引き寄せて、いみじく怨むれば、「いとうたてもあるわざかな。何に聞き入れつらむ」と、悔しく<A HREF="#k16">むつかしけれど</A><A NAME="t16">、</A>「こしらへて出だしてむ」と思して、異人と思ひわきたまふまじきさまに、かすめつつ語らひたまへる心ばへなど、いとあはれなり。<BR>⏎
d1550<P>⏎
d1552<P>⏎
d1554<P>⏎
d1556<P>⏎
cd4:2557-560 「かくよろづにめづらかなりける御心のほども知らで、言ふかひなき心幼さも見えたてまつりにけるおこたりに、思しあなづるにこそは」<BR>⏎
<P>⏎
 と言はむ方なく思ひたまへり。<BR>⏎
<P>⏎
326-327 「かくよろづにめづらかなりける御心のほども知らで、言ふかひなき心幼さも見えたてまつりにけるおこたりに、思しあなづるにこそは」<BR>⏎
 と言はむ方なく思ひたまへり。<BR>⏎
text47561 <A NAME="in34">[第四段 薫、大君の寝所に迫る]</A><BR>328 
d1562<P>⏎
d1564<P>⏎
cd4:2565-568 なほいかがはせむに思し弱りね。この御障子の固めばかり、いと強きも、まことにもの清く推し量りきこゆる人もはべらじ。しるべと誘ひたまへる人の御心にも、まさに<A HREF="#k17">かく</A><A NAME="t17">胸</A>ふたがりて、明かすらむとは、<A HREF="#k18">思しなむや</A><A NAME="t18">」</A><BR>⏎
<P>⏎
 とて障子をも引き破りつべきけしきなれば、言はむ方なく心づきなけれど、こしらへむと思ひしづめて、<BR>⏎
<P>⏎
330-331 なほいかがはせむに思し弱りね。この御障子の固めばかり、いと強きも、まことにもの清く推し量りきこゆる人もはべらじ。しるべと誘ひたまへる人の御心にも、まさに<A HREF="#k17">かく</A><A NAME="t17">胸</A>ふたがりて、明かすらむとは、<A HREF="#k18">思しなむや</A><A NAME="t18">」</A><BR>⏎
 とて障子をも引き破りつべきけしきなれば、言はむ方なく心づきなけれど、こしらへむと思ひしづめて、<BR>⏎
d1570<P>⏎
cd10:5571-580 なほいとかく、おどろおどろしく心憂く、<A HREF="#k20">な取り集め</A><A NAME="t20">惑</A>はしたまひそ。心より外にながらへば、すこし思ひのどまりて聞こえむ。心地もさらにかきくらすやうにて、いと悩ましきを、ここにうち休まむ。許したまへ」<BR>⏎
<P>⏎
 といみじくわびたまへば、さすがにことわりをいとよくのたまふが、心恥づかしくらうたくおぼえて、<BR>⏎
<P>⏎
 「あが君、御心に従ふことのたぐひなければこそ、かくまでかたくなしくなりはべれ。言ひ知らず憎く疎ましきものに思しなすめれば、聞こえむ方なし。いとど世に跡とむべくなむおぼえぬ」とて、「さらば隔てながらも、聞こえさせむ。ひたぶるに、なうち捨てさせたまひそ」<BR>⏎
<P>⏎
 とて許したてまつりたまへれば、這ひ入りて、さすがに、入りも果てたまはぬを、いとあはれと思ひて、<BR>⏎
<P>⏎
 「かばかりの御けはひを慰めにて、明かしはべらむ。ゆめゆめ」<BR>⏎
<P>⏎
333-337 なほいとかく、おどろおどろしく心憂く、<A HREF="#k20">な取り集め</A><A NAME="t20">惑</A>はしたまひそ。心より外にながらへば、すこし思ひのどまりて聞こえむ。心地もさらにかきくらすやうにて、いと悩ましきを、ここにうち休まむ。許したまへ」<BR>⏎
 といみじくわびたまへば、さすがにことわりをいとよくのたまふが、心恥づかしくらうたくおぼえて、<BR>⏎
 「あが君、御心に従ふことのたぐひなければこそ、かくまでかたくなしくなりはべれ。言ひ知らず憎く疎ましきものに思しなすめれば、聞こえむ方なし。いとど世に跡とむべくなむおぼえぬ」とて、「さらば隔てながらも、聞こえさせむ。ひたぶるに、なうち捨てさせたまひそ」<BR>⏎
 とて許したてまつりたまへれば、這ひ入りて、さすがに、入りも果てたまはぬを、いとあはれと思ひて、<BR>⏎
 「かばかりの御けはひを慰めにて、明かしはべらむ。ゆめゆめ」<BR>⏎
d1582<P>⏎
text47583 <A NAME="in35">[第五段 薫、再び実事なく夜を明かす]</A><BR>339 
d1584<P>⏎
d1586<P>⏎
cd2:1587-588 「しるべせし我やかへりて惑ふべき<BR>⏎
  心もゆかぬ<A HREF="#no26">明けぐれの道</A><A NAME="te26"><BR>⏎
341 「しるべせし我やかへりて惑ふべき<BR>  心もゆかぬ<A HREF="#no26">明けぐれの道</A><A NAME="te26"><BR>⏎
d1590<P>⏎
d1592<P>⏎
cd9:4593-601 「かたがたにくらす心を思ひやれ<BR>⏎
  人やりならぬ道に惑はば」<BR>⏎
<P>⏎
 とほのかにのたまふを、いと飽かぬ心地すれば、<BR>⏎
<P>⏎
 「いかにこよなく隔たりてはべるめれば、いとわりなうこそ」<BR>⏎
<P>⏎
 などよろづに怨みつつ、ほのぼのと明けゆくほどに、昨夜の方より出でたまふなり。いとやはらかに振る舞ひなしたまへる匂ひなど、艶なる御心げさうには、言ひ知らずしめたまへり。ねび人どもは、いとあやしく心得がたく思ひ惑はれけれど、「さりとも悪しざまなる御心あらむやは」と慰めたり。<BR>⏎
<P>⏎
344-347 「かたがたにくらす心を思ひやれ<BR>  人やりならぬ道に惑はば」<BR>⏎
 とほのかにのたまふを、いと飽かぬ心地すれば、<BR>⏎
 「いかにこよなく隔たりてはべるめれば、いとわりなうこそ」<BR>⏎
 などよろづに怨みつつ、ほのぼのと明けゆくほどに、昨夜の方より出でたまふなり。いとやはらかに振る舞ひなしたまへる匂ひなど、艶なる御心げさうには、言ひ知らずしめたまへり。ねび人どもは、いとあやしく心得がたく思ひ惑はれけれど、「さりとも悪しざまなる御心あらむやは」と慰めたり。<BR>⏎
d1603<P>⏎
d1605<P>⏎
d1607<P>⏎
text47608 <A NAME="in36">[第六段 匂宮、中の君へ後朝の文を書く]</A><BR>351 
d1609<P>⏎
cd2:1610-611 宮は、いつしかと御文たてまつりたまふ。山里には、誰も誰もうつつの心地したまはず、思ひ乱れたまへり。「さまざまに思し構へけるを、色にも出だしたまはざりけるよ」と、疎ましくつらく、姉宮をば思ひきこえたまひて、目も見合はせたてまつりたまはず。知らざりしさまをも、さはさはとはえあきらめたまはで、ことわりに心苦しく思ひきこえたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
352 宮は、いつしかと御文たてまつりたまふ。山里には、誰も誰もうつつの心地したまはず、思ひ乱れたまへり。「さまざまに思し構へけるを、色にも出だしたまはざりけるよ」と、疎ましくつらく、姉宮をば思ひきこえたまひて、目も見合はせたてまつりたまはず。知らざりしさまをも、さはさはとはえあきらめたまはで、ことわりに心苦しく思ひきこえたまふ。<BR>⏎
d1613<P>⏎
cd3:1614-616 「世の常に思ひやすらむ露深き<BR>⏎
  道の笹原分けて来つるも」<BR>⏎
<P>⏎
354 「世の常に思ひやすらむ露深き<BR>  道の笹原分けて来つるも」<BR>⏎
d1618<P>⏎
cd2:1619-620 紫苑色の細長一襲に、三重襲の袴具して賜ふ。御使苦しげに思ひたれば、包ませて、供なる人になむ贈らせたまふ。ことことしき御使にもあらず、例たてまつれたまふ上童なり。ことさらに、人にけしき漏らさじと思しければ、「昨夜のさかしがりし老い人のしわざなりけり」と、ものしくなむ聞こしめしける。<BR>⏎
<P>⏎
356 紫苑色の細長一襲に、三重襲の袴具して賜ふ。御使苦しげに思ひたれば、包ませて、供なる人になむ贈らせたまふ。ことことしき御使にもあらず、例たてまつれたまふ上童なり。ことさらに、人にけしき漏らさじと思しければ、「昨夜のさかしがりし老い人のしわざなりけり」と、ものしくなむ聞こしめしける。<BR>⏎
text47621 <A NAME="in37">[第七段 匂宮と中の君、結婚第二夜]</A><BR>357 
d1622<P>⏎
d1624<P>⏎
d1626<P>⏎
d1628<P>⏎
cd6:3629-634 「世の中に久しくもとおぼえはべらねば、明け暮れのながめにも、ただ御ことをのみなむ心苦しく思ひきこゆるに、この人びとも、よかるべきさまのことと、聞きにくきまで言ひ知らすめれば、年経たる心どもには、さりとも、世のことわりをも知りたらむ。<BR>⏎
<P>⏎
 はかばかしくもあらぬ心一つを立てて、かくてのみやは、見たてまつらむ、と思ひなるやうもありしかど、ただ今かく、思ひもあへず、恥づかしきことどもに乱れ思ふべくは、さらに思ひかけはべらざりしに、これやげに人の言ふめる逃れがたき御契りなりけむ。いとこそ、苦しけれ。すこし思し慰みなむに、知らざりしさまをも聞こえむ。憎しと、な思し入りそ。罪もぞ得たまふ」<BR>⏎
<P>⏎
 と御髪をなでつくろひつつ聞こえたまへば、いらへもしたまはねど、さすがに、かく思しのたまふが、げにうしろめたく悪しかれとも思しおきてじを、人笑へに見苦しきこと添ひて、見扱はれたてまつらむがいみじさを、よろづに思ひゐたまへり。<BR>⏎
<P>⏎
361-363 「世の中に久しくもとおぼえはべらねば、明け暮れのながめにも、ただ御ことをのみなむ心苦しく思ひきこゆるに、この人びとも、よかるべきさまのことと、聞きにくきまで言ひ知らすめれば、年経たる心どもには、さりとも、世のことわりをも知りたらむ。<BR>⏎
 はかばかしくもあらぬ心一つを立てて、かくてのみやは、見たてまつらむ、と思ひなるやうもありしかど、ただ今かく、思ひもあへず、恥づかしきことどもに乱れ思ふべくは、さらに思ひかけはべらざりしに、これやげに人の言ふめる逃れがたき御契りなりけむ。いとこそ、苦しけれ。すこし思し慰みなむに、知らざりしさまをも聞こえむ。憎しと、な思し入りそ。罪もぞ得たまふ」<BR>⏎
 と御髪をなでつくろひつつ聞こえたまへば、いらへもしたまはねど、さすがに、かく思しのたまふが、げにうしろめたく悪しかれとも思しおきてじを、人笑へに見苦しきこと添ひて、見扱はれたてまつらむがいみじさを、よろづに思ひゐたまへり。<BR>⏎
d1636<P>⏎
cd2:1637-638 言ひ知らずかしづくものの姫君も、すこし世の常の人げ近く、親せうとなどいひつつ、人のたたずまひをも見馴れたまへるは、ものの恥づかしさも、恐ろしさもなのめにやあらむ。家にあがめきこゆる人こそなけれ、かく山深き御あたりなれば、人に遠く、もの深くてならひたまへる心地に、思ひかけぬありさまの、つつましく恥づかしく、何ごとも世の人に似ず、あやしく田舎びたらむかし。はかなき御いらへにても言ひ出でむ方なくつつみたまへり。さるはこの君しもぞ、らうらうじくかどある方の匂ひはまさりたまへる。<BR>⏎
<P>⏎
365 言ひ知らずかしづくものの姫君も、すこし世の常の人げ近く、親せうとなどいひつつ、人のたたずまひをも見馴れたまへるは、ものの恥づかしさも、恐ろしさもなのめにやあらむ。家にあがめきこゆる人こそなけれ、かく山深き御あたりなれば、人に遠く、もの深くてならひたまへる心地に、思ひかけぬありさまの、つつましく恥づかしく、何ごとも世の人に似ず、あやしく田舎びたらむかし。はかなき御いらへにても言ひ出でむ方なくつつみたまへり。さるはこの君しもぞ、らうらうじくかどある方の匂ひはまさりたまへる。<BR>⏎
text47639 <A NAME="in38">[第八段 匂宮と中の君、結婚第三夜]</A><BR>366 
d1640<P>⏎
d1642<P>⏎
d1644<P>⏎
d1647<P>⏎
cd7:3648-654 と陸奥紙におひつぎ書きたまひて、まうけのものども、こまやかに、縫ひなどもせざりける、いろいろおし巻きなどしつつ、御衣櫃あまた懸籠入れて、老い人のもとに、「人びとの料に」とて賜へり。宮の御方にさぶらひけるに従ひて、いと多くもえ取り集めたまはざりけるにやあらむ、ただなる絹綾など、下には入れ隠しつつ、御料とおぼしき二領。いときよらにしたるを、単衣の御衣の袖に、古代のことなれど、<BR>⏎
<P>⏎
 「小夜衣着て馴れきとは言はずとも<BR>⏎
  かことばかりはかけずしもあらじ」<BR>⏎
<P>⏎
 と脅しきこえたまへり。<BR>⏎
<P>⏎
371-373 と陸奥紙におひつぎ書きたまひて、まうけのものども、こまやかに、縫ひなどもせざりける、いろいろおし巻きなどしつつ、御衣櫃あまた懸籠入れて、老い人のもとに、「人びとの料に」とて賜へり。宮の御方にさぶらひけるに従ひて、いと多くもえ取り集めたまはざりけるにやあらむ、ただなる絹綾など、下には入れ隠しつつ、御料とおぼしき二領。いときよらにしたるを、単衣の御衣の袖に、古代のことなれど、<BR>⏎
 「小夜衣着て馴れきとは言はずとも<BR>  かことばかりはかけずしもあらじ」<BR>⏎
 と脅しきこえたまへり。<BR>⏎
d1656<P>⏎
cd3:1657-659 「隔てなき心ばかりは通ふとも<BR>⏎
  馴れし袖とはかけじとぞ思ふ」<BR>⏎
<P>⏎
375 「隔てなき心ばかりは通ふとも<BR>  馴れし袖とはかけじとぞ思ふ」<BR>⏎
d1661<P>⏎
text47662 <H4>第四章 中の君の物語 匂宮と中の君、朝ぼらけの宇治川を見る</H4>377 
text47663 <A NAME="in41">[第一段 明石中宮、匂宮の外出を諌める]</A><BR>378 
d1664<P>⏎
d1666<P>⏎
cd4:2667-670 「なほかく独りおはしまして、世の中に、好いたまへる御名のやうやう聞こゆる、なほいと悪しきことなり。<A HREF="#k23">何事も</A><A NAME="t23">も</A>の好ましく、立てたる御心なつかひたまひそ。上もうしろめたげに思しのたまふ」<BR>⏎
<P>⏎
 と里住みがちにおはしますを諌めきこえたまへば、いと苦しと思して、御宿直所に出でたまひて、御文書きてたてまつれたまへる名残も、いたくうち眺めておはしますに、中納言の君参りたまへり。<BR>⏎
<P>⏎
380-381 「なほかく独りおはしまして、世の中に、好いたまへる御名のやうやう聞こゆる、なほいと悪しきことなり。<A HREF="#k23">何事も</A><A NAME="t23">も</A>の好ましく、立てたる御心なつかひたまひそ。上もうしろめたげに思しのたまふ」<BR>⏎
 と里住みがちにおはしますを諌めきこえたまへば、いと苦しと思して、御宿直所に出でたまひて、御文書きてたてまつれたまへる名残も、いたくうち眺めておはしますに、中納言の君参りたまへり。<BR>⏎
d1672<P>⏎
d1674<P>⏎
cd2:1675-676 と嘆かしげに思したり。「よく御けしきを見たてまつらむ」と思して、<BR>⏎
<P>⏎
384 と嘆かしげに思したり。「よく御けしきを見たてまつらむ」と思して、<BR>⏎
d1678<P>⏎
d1680<P>⏎
cd4:2681-684 「いと聞きにくくぞ思しのたまふや。多くは人のとりなすことなるべし。世に咎めあるばかりの心は、何事にかはつかふらむ。所狭き身のほどこそ、なかなかなるわざなりけれ」<BR>⏎
<P>⏎
 とてまことに厭はしくさへ思したり。<BR>⏎
<P>⏎
387-388 「いと聞きにくくぞ思しのたまふや。多くは人のとりなすことなるべし。世に咎めあるばかりの心は、何事にかはつかふらむ。所狭き身のほどこそ、なかなかなるわざなりけれ」<BR>⏎
 とてまことに厭はしくさへ思したり。<BR>⏎
d1686<P>⏎
d1688<P>⏎
d1690<P>⏎
d1692<P>⏎
cd2:1693-694 とてこの君は内裏にさぶらひたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
393 とてこの君は内裏にさぶらひたまふ。<BR>⏎
text47695 <A NAME="in42">[第二段 薫、明石中宮に対面]</A><BR>394 
d1696<P>⏎
d1698<P>⏎
d1700<P>⏎
d1702<P>⏎
cd2:1703-704 「女一の宮も、かくぞおはしますべかめる。いかならむ折に、かばかりにてももの近く、御声をだに聞きたてまつらむ」と、あはれとおぼゆ。「好いたる人の、おぼゆまじき心つかふらむも、<A HREF="#k24">かうやう</A><A NAME="t24">な</A>る御仲らひの、さすがに気遠からず入り立ちて、心にかなはぬ折のことならむかし。わが心のやうに、ひがひがしき心のたぐひやは、また世にあんべかめる。それになほ動きそめぬるあたりは、えこそ思ひ絶えね」<BR>⏎
<P>⏎
398 「女一の宮も、かくぞおはしますべかめる。いかならむ折に、かばかりにてももの近く、御声をだに聞きたてまつらむ」と、あはれとおぼゆ。「好いたる人の、おぼゆまじき心つかふらむも、<A HREF="#k24">かうやう</A><A NAME="t24">な</A>る御仲らひの、さすがに気遠からず入り立ちて、心にかなはぬ折のことならむかし。わが心のやうに、ひがひがしき心のたぐひやは、また世にあんべかめる。それになほ動きそめぬるあたりは、えこそ思ひ絶えね」<BR>⏎
d1706<P>⏎
d1708<P>⏎
text47709 <A NAME="in43">[第三段 女房たちと大君の思い]</A><BR>401 
d1710<P>⏎
d1712<P>⏎
d1714<P>⏎
d1716<P>⏎
d1718<P>⏎
d1720<P>⏎
d1722<P>⏎
d1724<P>⏎
cd2:1725-726 とうしろめたくて、見出だして臥したまへり。「恥づかしげならむ人に見えむことは、いよいよかたはらいたく、今一二年あらば、衰へまさりなむ。はかなげなる身のありさまを」と、御手つきの細やかにか弱く、あはれなるをさし出でても、世の中を思ひ続けたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
409 とうしろめたくて、見出だして臥したまへり。「恥づかしげならむ人に見えむことは、いよいよかたはらいたく、今一二年あらば、衰へまさりなむ。はかなげなる身のありさまを」と、御手つきの細やかにか弱く、あはれなるをさし出でても、世の中を思ひ続けたまふ。<BR>⏎
text47727 <A NAME="in44">[第四段 匂宮と中の君、朝ぼらけの宇治川を見る]</A><BR>410 
d1728<P>⏎
cd2:1729-730 宮は、ありがたかりつる御暇のほどを思しめぐらすに、「なほ心やすかるまじきことにこそは」と、胸ふたがりておぼえたまひけり。大宮の聞こえたまひしさまなど語りきこえたまひて、<BR>⏎
<P>⏎
411 宮は、ありがたかりつる御暇のほどを思しめぐらすに、「なほ心やすかるまじきことにこそは」と、胸ふたがりておぼえたまひけり。大宮の聞こえたまひしさまなど語りきこえたまひて、<BR>⏎
d1732<P>⏎
cd2:1733-734 といと深く聞こえたまへど、「絶え間あるべく思さるらむは、音に聞きし御心のほどしるべきにや」と心おかれて、わが御ありさまから、さまざまもの嘆かしくてなむありける。<BR>⏎
<P>⏎
413 といと深く聞こえたまへど、「絶え間あるべく思さるらむは、音に聞きし御心のほどしるべきにや」と心おかれて、わが御ありさまから、さまざまもの嘆かしくてなむありける。<BR>⏎
d1736<P>⏎
d1738<P>⏎
d1740<P>⏎
d1742<P>⏎
d1744<P>⏎
d1746<P>⏎
text47747 <A NAME="in45">[第五段 匂宮と中の君和歌を詠み交して別れる]</A><BR>420 
d1748<P>⏎
d1750<P>⏎
cd3:1751-753 「中絶えむものならなくに<A HREF="#no32">橋姫の<BR>⏎
  片敷く袖</A><A NAME="te32">や</A>夜半に濡らさむ」<BR>⏎
<P>⏎
422 「中絶えむものならなくに<A HREF="#no32">橋姫の<BR>  片敷く袖</A><A NAME="te32">や</A>夜半に濡らさむ」<BR>⏎
d1755<P>⏎
cd3:1756-758 「絶えせじのわが頼みにや宇治橋の<BR>⏎
  遥けきなかを待ちわたるべき」<BR>⏎
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424 「絶えせじのわが頼みにや宇治橋の<BR>  遥けきなかを待ちわたるべき」<BR>⏎
d1760<P>⏎
d1762<P>⏎
d1764<P>⏎
cd2:1765-766 などめできこゆ。<BR>⏎
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428 などめできこゆ。<BR>⏎
d1768<P>⏎
d1770<P>⏎
d1772<P>⏎
text47773 <A NAME="in46">[第六段 九月十日、薫と匂宮、宇治へ行く]</A><BR>432 
d1774<P>⏎
d1776<P>⏎
d1778<P>⏎
d1780<P>⏎
cd4:2781-784 女ばら、日ごろうちつぶやきつる、名残なく笑みさかえつつ、御座ひきつくろひなどす。京に、さるべき所々に行き散りたる娘ども、姪だつ人、二三人尋ね寄せて参らせたり。年ごろあなづりきこえける心浅き人びと、めづらかなる客人と思ひ驚きたり。<BR>⏎
<P>⏎
 姫宮も、折うれしく思ひきこえたまふに、さかしら人の添ひたまへるぞ、恥づかしくもありぬべく、なまわづらはしく思へど、心ばへの<A HREF="#k28">のどかに</A><A NAME="t28">も</A>の深くものしたまふを、「げに人はかくはおはせざりけり」と見あはせたまふに、ありがたしと思ひ知らる。<BR>⏎
<P>⏎
436-437 女ばら、日ごろうちつぶやきつる、名残なく笑みさかえつつ、御座ひきつくろひなどす。京に、さるべき所々に行き散りたる娘ども、姪だつ人、二三人尋ね寄せて参らせたり。年ごろあなづりきこえける心浅き人びと、めづらかなる客人と思ひ驚きたり。<BR>⏎
 姫宮も、折うれしく思ひきこえたまふに、さかしら人の添ひたまへるぞ、恥づかしくもありぬべく、なまわづらはしく思へど、心ばへの<A HREF="#k28">のどかに</A><A NAME="t28">も</A>の深くものしたまふを、「げに人はかくはおはせざりけり」と見あはせたまふに、ありがたしと思ひ知らる。<BR>⏎
text47785 <A NAME="in47">[第七段 薫、大君に対面、実事なく朝を迎える]</A><BR>438 
d1786<P>⏎
cd2:1787-788 宮を、所につけては、いとことにかしづき入れたてまつりて、この君は、主人方に心やすくもてなしたまふものから、まだ客人居のかりそめなる方に出だし放ち<A HREF="#k29">たまへれば</A><A NAME="t29">、</A>いとからしと思ひたまへり。怨みたまふもさすがにいとほしくて、物越に対面したまふ。<BR>⏎
<P>⏎
439 宮を、所につけては、いとことにかしづき入れたてまつりて、この君は、主人方に心やすくもてなしたまふものから、まだ客人居のかりそめなる方に出だし放ち<A HREF="#k29">たまへれば</A><A NAME="t29">、</A>いとからしと思ひたまへり。怨みたまふも さすがにいとほしくて、物越に対面したまふ。<BR>⏎
d1790<P>⏎
cd2:1791-792 「なほひたぶるに、いかでかくうちとけじ。あはれと思ふ人の御心も、かならずつらしと思ひぬべきわざにこそあめれ。我も人も見おとさず、心違はでやみにしがな」<BR>⏎
<P>⏎
441 「なほひたぶるに、いかでかくうちとけじ。あはれと思ふ人の御心も、かならずつらしと思ひぬべきわざにこそあめれ。我も人も見おとさず、心違はでやみにしがな」<BR>⏎
d1794<P>⏎
d1796<P>⏎
d1798<P>⏎
cd6:3799-804 「なほかくもの思ひ加ふるほど、すこし心地も静まりて聞こえむ」<BR>⏎
<P>⏎
 とのたまふ。人憎く気遠くは、もて離れぬものから、「障子の固めもいと強し。しひて破らむをば、つらくいみじからむ」と思したれば、「思さるるやうこそはあらめ。軽々しく異ざまになびきたまふこと、はた世にあらじ」と、心のどかなる人は、さいへど、いとよく思ひ静めたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
 「ただいとおぼつかなく、もの隔てたるなむ、胸あかぬ心地するを。ありしやうにて聞こえむ」<BR>⏎
<P>⏎
445-447 「なほかくもの思ひ加ふるほど、すこし心地も静まりて聞こえむ」<BR>⏎
 とのたまふ。人憎く気遠くは、もて離れぬものから、「障子の固めもいと強し。しひて破らむをば、つらくいみじからむ」と思したれば、「思さるるやうこそはあらめ。軽々しく異ざまになびきたまふこと、はた世にあらじ」と、心のどかなる人は、さいへど、いとよく思ひ静めたまふ。<BR>⏎
 「ただいとおぼつかなく、もの隔てたるなむ、胸あかぬ心地するを。ありしやうにて聞こえむ」<BR>⏎
d1806<P>⏎
d1808<P>⏎
cd2:1809-810 とほのかにうち笑ひたまへるけはひなど、あやしくなつかしくおぼゆ。<BR>⏎
<P>⏎
450 とほのかにうち笑ひたまへるけはひなど、あやしくなつかしくおぼゆ。<BR>⏎
d1812<P>⏎
d1814<P>⏎
d1816<P>⏎
d1818<P>⏎
d1820<P>⏎
text47821 <A NAME="in48">[第八段 匂宮、中の君を重んじる]</A><BR>456 
d1822<P>⏎
cd4:2823-826 わりなくておはしまして、ほどなく帰り<A HREF="#k30">たまふが</A><A NAME="t30">、</A>飽かず苦しきに、宮ものをいみじく思したり。御心のうちを知りたまはねば、女方には、「またいかならむ。人笑へにや」と思ひ嘆きたまへば、「げに心尽くしに苦しげなるわざかな」と見ゆ。<BR>⏎
<P>⏎
 京にも、隠ろへて渡りたまふべき所もさすがになし。六条の院には、左の大殿、片つ方には住みたまひて、さばかりいかでと思したる六の君の御ことを思しよらぬに、なま恨めしと思ひきこえたまふべかめり。好き好きしき御さまと、許しなくそしりきこえたまひて、内裏わたりにも愁へきこえたまふべかめれば、いよいよおぼえなくて出だし据ゑたまはむも、憚ることいと多かり。<BR>⏎
<P>⏎
457-458 わりなくておはしまして、ほどなく帰り<A HREF="#k30">たまふが</A><A NAME="t30">、</A>飽かず苦しきに、宮ものをいみじく思したり。御心のうちを知りたまはねば、女方には、「またいかならむ。人笑へにや」と思ひ嘆きたまへば、「げに心尽くしに苦しげなるわざかな」と見ゆ。<BR>⏎
 京にも、隠ろへて渡りたまふべき所もさすがになし。六条の院には、左の大殿、片つ方には住みたまひて、さばかりいかでと思したる六の君の御ことを思しよらぬに、なま恨めしと思ひきこえたまふべかめり。好き好きしき御さまと、許しなくそしりきこえたまひて、内裏わたりにも愁へきこえたまふべかめれば、いよいよおぼえなくて出だし据ゑたまはむも、憚ることいと多かり。<BR>⏎
d1828<P>⏎
d1830<P>⏎
cd2:1831-832 げにただ人は心やすかりけり。かくいと心苦しき御けしきながら、やすからず忍びたまふからに、かたみに思ひ悩みたまへるめるも、心苦しくて、「忍びてかく通ひたまふよしを、中宮などにも漏らし聞こし召させて、しばしの御騒がれはいとほしくとも、女方の御ためは、咎もあらじ。いとかく夜をだに明かしたまはぬ苦しげさよ。いみじくもてなしてあらせたてまつらばや」<BR>⏎
<P>⏎
461 げにただ人は心やすかりけり。かくいと心苦しき御けしきながら、やすからず忍びたまふからに、かたみに思ひ悩みたまへるめるも、心苦しくて、「忍びてかく通ひたまふよしを、中宮などにも漏らし聞こし召させて、しばしの御騒がれはいとほしくとも、女方の御ためは、咎もあらじ。いとかく夜をだに明かしたまはぬ苦しげさよ。いみじくもてなしてあらせたてまつらばや」<BR>⏎
d1834<P>⏎
cd2:1835-836 「更衣など、はかばかしく誰れかは扱ふらむ」など思して、御帳の帷、壁代など、三条の宮造り果てて、渡りたまはむ心まうけに、しおかせたまへるを、「まづさるべき用なむ」など、いと忍びて聞こえたまひて、たてまつれたまふ。さまざまなる女房の装束、御乳母などにものたまひつつ、わざともせさせたまひけり。<BR>⏎
<P>⏎
463 「更衣など、はかばかしく誰れかは扱ふらむ」など思して、御帳の帷、壁代など、三条の宮造り果てて、渡りたまはむ心まうけに、しおかせたまへるを、「まづさるべき用なむ」など、いと忍びて聞こえたまひて、たてまつれたまふ。さまざまなる女房の装束、御乳母などにものたまひつつ、わざともせさせたまひけり。<BR>⏎
text47837 <H4>第五章 大君の物語 匂宮たちの紅葉狩り</H4>464 
text47838 <A NAME="in51">[第一段 十月朔日頃、匂宮、宇治に紅葉狩り]</A><BR>465 
d1839<P>⏎
cd2:1840-841 十月朔日ころ、網代もをかしきほどならむと、そそのかしきこえたまひて、<A HREF="#no38">紅葉御覧ずべく</A><A NAME="te38">申</A>したまふ。親しき宮人ども、殿上人の睦ましく思す限り、「いと忍びて」と思せど、所狭き御勢なれば、おのづからこと広ごりて、左の大殿の宰相中将参りたまふ。さてはこの中納言殿ばかりぞ、上達部は仕うまつりたまふ。ただ人は多かり。<BR>⏎
<P>⏎
466 十月朔日ころ、網代もをかしきほどならむと、そそのかしきこえたまひて、<A HREF="#no38">紅葉御覧ずべく</A><A NAME="te38">申</A>したまふ。親しき宮人ども、殿上人の睦ましく思す限り、「いと忍びて」と思せど、所狭き御勢なれば、おのづからこと広ごりて、左の大殿の宰相中将参りたまふ。さてはこの中納言殿ばかりぞ、上達部は仕うまつりたまふ。ただ人は多かり。<BR>⏎
d1843<P>⏎
d1845<P>⏎
d1847<P>⏎
cd2:1848-849 世人のなびきかしづきたてまつるさま、かく忍びたまへる道にも、いとことにいつくしきを見たまふにも、「げに七夕ばかりにても、かかる彦星の光をこそ待ち出でめ」とおぼえたり。<BR>⏎
<P>⏎
470 世人のなびきかしづきたてまつるさま、かく忍びたまへる道にも、いとことにいつくしきを見たまふにも、「げに七夕ばかりにても、かかる彦星の光をこそ待ち出でめ」とおぼえたり。<BR>⏎
d1851<P>⏎
d1853<P>⏎
text47854 <A NAME="in52">[第二段 一行、和歌を唱和する]</A><BR>473 
d1855<P>⏎
cd2:1856-857 今日は、かくてと思すに、また宮の大夫、さらぬ殿上人など、あまたたてまつりたまへり。心あわたたしく口惜しくて、帰りたまはむそらなし。かしこには御文をぞたてまつれたまふ。をかしやかなることもなく、いとまめだちて、思しけることどもを、こまごまと<A HREF="#k31">書き続け</A><A NAME="t31">た</A>まへれど、「人目しげく騒がしからむに」とて、御返りなし。<BR>⏎
<P>⏎
474 今日は、かくてと思すに、また宮の大夫、さらぬ殿上人など、あまたたてまつりたまへり。心あわたたしく口惜しくて、帰りたまはむそらなし。かしこには御文をぞたてまつれたまふ。をかしやかなることもなく、いとまめだちて、思しけることどもを、こまごまと<A HREF="#k31">書き続け</A><A NAME="t31">た</A>まへれど、「人目しげく騒がしからむに」とて、御返りなし。<BR>⏎
d1859<P>⏎
cd2:1860-861 宮は、ましていぶせくわりなしと思すこと、限りなし。<A HREF="#no41">網代の氷魚</A><A NAME="te41">も</A>心寄せたてまつりて、いろいろの木の葉にかきまぜもてあそぶを、下人などはいとをかしきことに思へれば、人に従ひつつ、心ゆく御ありきに、みづからの御心地は、胸のみつとふたがりて、<A HREF="#no42">空をのみ眺め</A><A NAME="te42">た</A>まふに、この古宮の梢は、いとことにおもしろく、常磐木にはひ混じれる蔦の色なども、もの深げに見えて、遠目さへすごげなるを、中納言の君も、「なかなか頼めきこえけるを、憂はしきわざかな」とおぼゆ。<BR>⏎
<P>⏎
476 宮は、ましていぶせくわりなしと思すこと、限りなし。<A HREF="#no41">網代の氷魚</A><A NAME="te41">も</A>心寄せたてまつりて、いろいろの木の葉にかきまぜもてあそぶを、下人などはいとをかしきことに思へれば、人に従ひつつ、心ゆく御ありきに、みづからの御心地は、胸のみつとふたがりて、<A HREF="#no42">空をのみ眺め</A><A NAME="te42">た</A>まふに、この古宮の梢は、いとことにおもしろく、常磐木にはひ混じれる蔦の色なども、もの深げに見えて、遠目さへすごげなるを、中納言の君も、「なかなか頼めきこえけるを、憂はしきわざかな」とおぼゆ。<BR>⏎
d1863<P>⏎
d1866<P>⏎
cd2:1867-868 など口々言ふ。<BR>⏎
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480 など口々言ふ。<BR>⏎
d1870<P>⏎
cd3:1871-873 「いつぞやも花の盛りに一目見し<BR>⏎
  <A HREF="#no43">木のもとさへや秋は寂しき</A><A NAME="te43">」</A><BR>⏎
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482 「いつぞやも花の盛りに一目見し<BR>  <A HREF="#no43">木のもとさへや秋は寂しき</A><A NAME="te43">」</A><BR>⏎
d1875<P>⏎
cd3:1876-878 「桜こそ思ひ知らすれ咲き匂ふ<BR>⏎
  花も紅葉も常ならぬ世を」<BR>⏎
<P>⏎
484 「桜こそ思ひ知らすれ咲き匂ふ<BR>  花も紅葉も常ならぬ世を」<BR>⏎
d1880<P>⏎
cd3:1881-883 「いづこより秋は行きけむ山里の<BR>⏎
  紅葉の蔭は過ぎ憂きものを」<BR>⏎
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486 「いづこより秋は行きけむ山里の<BR>  紅葉の蔭は過ぎ憂きものを」<BR>⏎
d1885<P>⏎
cd3:1886-888 「<A HREF="#no44">見し人もなき山里</A><A NAME="te44">の</A>岩垣に<BR>⏎
  心長くも這へる葛かな」<BR>⏎
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488 「<A HREF="#no44">見し人もなき山里</A><A NAME="te44">の</A>岩垣に<BR>  心長くも這へる葛かな」<BR>⏎
d1890<P>⏎
d1892<P>⏎
cd7:3893-899 「秋はてて寂しさまさる木のもとを<BR>⏎
  吹きな過ぐしそ峰の松風」<BR>⏎
<P>⏎
 とていといたく涙ぐみたまへるを、ほのかに知る人は、<BR>⏎
<P>⏎
 「げに深く思すなりけり。今日のたよりを過ぐしたまふ心苦しさ」<BR>⏎
<P>⏎
491-493 「秋はてて寂しさまさる木のもとを<BR>  吹きな過ぐしそ峰の松風」<BR>⏎
 とていといたく涙ぐみたまへるを、ほのかに知る人は、<BR>⏎
 「げに深く思すなりけり。今日のたよりを過ぐしたまふ心苦しさ」<BR>⏎
d1901<P>⏎
text47902 <A NAME="in53">[第三段 大君と中の君の思い]</A><BR>495 
d1903<P>⏎
cd4:2904-907 かしこには、過ぎたまひぬるけはひを、遠くなるまで聞こゆる前駆の声々、ただならずおぼえたまふ。心まうけしつる人びとも、いと口惜しと思へり。姫宮は、まして<BR>⏎
<P>⏎
 「なほ音に聞く<A HREF="#no45">月草の色なる御心</A><A NAME="te45">な</A>りけり。ほのかに人の言ふを聞けば、男といふものは、虚言をこそいとよくすなれ。思はぬ人を思ふ顔にとりなす言の葉多かるものと、この人数ならぬ女ばらの、昔物語に言ふを、さるなほなほしきなかにこそは、けしからぬ心あるもまじるらめ。<BR>⏎
<P>⏎
496-497 かしこには、過ぎたまひぬるけはひを、遠くなるまで聞こゆる前駆の声々、ただならずおぼえたまふ。心まうけしつる人びとも、いと口惜しと思へり。姫宮は、まして<BR>⏎
 「なほ音に聞く<A HREF="#no45">月草の色なる御心</A><A NAME="te45">な</A>りけり。ほのかに人の言ふを聞けば、男といふものは、虚言をこそいとよくすなれ。思はぬ人を思ふ顔にとりなす言の葉多かるものと、この人数ならぬ女ばらの、昔物語に言ふを、さるなほなほしきなかにこそは、けしからぬ心あるもまじるらめ。<BR>⏎
d1909<P>⏎
d1911<P>⏎
d1913<P>⏎
d1915<P>⏎
d1917<P>⏎
d1919<P>⏎
cd2:1920-921 など姉宮は、いとどしくあはれと見たてまつりたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
504 など姉宮は、いとどしくあはれと見たてまつりたまふ。<BR>⏎
text47922 <A NAME="in54">[第四段 大君の思い]</A><BR>505 
d1923<P>⏎
d1925<P>⏎
cd4:2926-929 さもこそは憂き身どもにて、さるべき人にも後れたてまつらめ。やうのものと人笑へなることを添ふるありさまにて、亡き御影をさへ悩ましたてまつらむがいみじさなるを、我だに、さるもの思ひに沈まず、罪などいと深からぬさきに、いかで亡くなりなむ」<BR>⏎
<P>⏎
 と思し沈むに、心地もまことに苦しければ、物もつゆばかり参らず、ただ亡からむ後のあらましごとを、明け暮れ思ひ続けたまふにも、心細くて、この君を見たてまつりたまふも、いと心苦しく、<BR>⏎
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507-508 さもこそは憂き身どもにて、さるべき人にも後れたてまつらめ。やうのものと人笑へなることを添ふるありさまにて、亡き御影をさへ悩ましたてまつらむがいみじさなるを、我だに、さるもの思ひに沈まず、罪などいと深からぬさきに、いかで亡くなりなむ」<BR>⏎
 と思し沈むに、心地もまことに苦しければ、物もつゆばかり参らず、ただ亡からむ後のあらましごとを、明け暮れ思ひ続けたまふにも、心細くて、この君を見たてまつりたまふも、いと心苦しく、<BR>⏎
d1931<P>⏎
cd2:1932-933 など思し続くるに、「いふかひもなく、この世にはいささか思ひ慰む方なくて、過ぎぬべき身どもなりけり」と心細く思す。<BR>⏎
<P>⏎
510 など思し続くるに、「いふかひもなく、この世にはいささか思ひ慰む方なくて、過ぎぬべき身どもなりけり」と 心細く思す。<BR>⏎
text47934 <A NAME="in55">[第五段 匂宮の禁足、薫の後悔]</A><BR>511 
d1935<P>⏎
d1937<P>⏎
d1939<P>⏎
cd2:1940-941 と衛門督の漏らし申したまひければ、中宮も聞こし召し嘆き、主上もいとど許さぬ御けしきにて、<BR>⏎
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514 と衛門督の漏らし申したまひければ、中宮も聞こし召し嘆き、主上もいとど許さぬ御けしきにて、<BR>⏎
d1943<P>⏎
cd2:1944-945 と厳しきことども出で来て、内裏につとさぶらはせたてまつりたまふ。左の大臣殿の六の君を、うけひかず思したることなれど、おしたちて参らせたまふべく、皆定めらる。<BR>⏎
<P>⏎
516 と厳しきことども出で来て、内裏につとさぶらはせたてまつりたまふ。左の大臣殿の六の君を、うけひかず思したることなれど、おしたちて参らせたまふべく、皆定めらる。<BR>⏎
d1947<P>⏎
d1949<P>⏎
d1951<P>⏎
cd4:2952-955 と<A HREF="#no47">取り返すものならねど</A><A NAME="te47">、</A>をこがましく、心一つに思ひ乱れたまふ。<BR>⏎
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 宮はまして、御心にかからぬ折なく、恋しくうしろめたしと思す。<BR>⏎
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520-521 と<A HREF="#no47">取り返すものならねど</A><A NAME="te47">、</A>をこがましく、心一つに思ひ乱れたまふ。<BR>⏎
 宮はまして、御心にかからぬ折なく、恋しくうしろめたしと思す。<BR>⏎
d1957<P>⏎
cd2:1958-959 と大宮は明け暮れ聞こえたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
523 と大宮は明け暮れ聞こえたまふ。<BR>⏎
text47960 <A NAME="in56">[第六段 時雨降る日、匂宮宇治の中の君を思う]</A><BR>524 
d1961<P>⏎
d1963<P>⏎
d1965<P>⏎
cd4:2966-969 「またこの御ありさまになずらふ人世にありなむや。冷泉院の姫宮ばかりこそ、御おぼえのほどうちうちの御けはひも心にくく聞こゆれど、うち出でむ方もなく思しわたるに、かの山里人は、らうたげにあてなる方の劣りきこゆまじきぞかし」<BR>⏎
<P>⏎
 などまづ思ひ出づるに、いとど恋しくて、慰めに、御絵どものあまた散りたるを見たまへば、をかしげなる女絵どもの、恋する男の住まひなど描きまぜ、山里のをかしき家居など、心々に世のありさま描きたるを、よそへらるること多くて、御目とまりたまへば、すこし聞こえたまひて、「かしこへたてまつらむ」と思す。<BR>⏎
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527-528 「またこの御ありさまになずらふ人世にありなむや。冷泉院の姫宮ばかりこそ、御おぼえのほどうちうちの御けはひも心にくく聞こゆれど、うち出でむ方もなく思しわたるに、かの山里人は、らうたげにあてなる方の劣りきこゆまじきぞかし」<BR>⏎
 などまづ思ひ出づるに、いとど恋しくて、慰めに、御絵どものあまた散りたるを見たまへば、をかしげなる女絵どもの、恋する男の住まひなど描きまぜ、山里のをかしき家居など、心々に世のありさま描きたるを、よそへらるること多くて、御目とまりたまへば、すこし聞こえたまひて、「かしこへたてまつらむ」と思す。<BR>⏎
d1971<P>⏎
d1973<P>⏎
cd7:3974-980 と忍びて聞こえたまへば、「いかなる絵にか」と思すに、おし巻き寄せて、御前にさし入れたまへるを、うつぶして御覧ずる御髪のうちなびきて、こぼれ出でたるかたそばばかり、ほのかに見たてまつりたまへる、飽かずめでたく、「すこしももの隔てたる人と思ひきこえましかば」と思すに、忍びがたくて、<BR>⏎
<P>⏎
 「<A HREF="#no49">若草のね見むものとは</A><A NAME="te49">思</A>はねど<BR>⏎
  むすぼほれたる心地こそすれ」<BR>⏎
<P>⏎
 御前なる人びとは、この宮をばことに恥ぢきこえて、もののうしろに隠れたり。「ことしもこそあれうたてあやし」と思せば、ものものたまはず。ことわりにて、「<A HREF="#no50">うらなくものを</A><A NAME="te50">」</A>と言ひたる姫君も、されて憎く思さる。<BR>⏎
<P>⏎
531-533 と忍びて聞こえたまへば、「いかなる絵にか」と思すに、おし巻き寄せて、御前にさし入れたまへるを、うつぶして御覧ずる御髪のうちなびきて、こぼれ出でたるかたそばばかり、ほのかに見たてまつりたまへる、飽かずめでたく、「すこしももの隔てたる人と思ひきこえましかば」と思すに、忍びがたくて、<BR>⏎
 「<A HREF="#no49">若草のね見むものとは</A><A NAME="te49">思</A>はねど<BR>  むすぼほれたる心地こそすれ」<BR>⏎
 御前なる人びとは、この宮をばことに恥ぢきこえて、もののうしろに隠れたり。「ことしもこそあれうたてあやし」と思せば、ものものたまはず。ことわりにて、「<A HREF="#no50">うらなくものを</A><A NAME="te50">」</A>と言ひたる姫君も、されて憎く思さる。<BR>⏎
d1982<P>⏎
d1984<P>⏎
text47985 <H4>第六章 大君の物語 大君の病気と薫の看護</H4>536 
text47986 <A NAME="in61">[第一段 薫、大君の病気を知る]</A><BR>537 
d1987<P>⏎
cd6:3988-993 待ちきこえたまふ所は、絶え間遠き心地して、「なほかくなめり」と、心細く眺めたまふに、中納言おはしたり。悩ましげにしたまふと聞きて、御とぶらひなりけり。いと心地惑ふばかりの御悩みにもあらねど、ことつけて、対面したまはず。<BR>⏎
<P>⏎
 「おどろきながら、はるけきほどを参り来つるを。なほかの悩みたまふらむ御あたり近く」<BR>⏎
<P>⏎
 と切におぼつかながりきこえたまへば、うちとけて住まひたまへる方の御簾の前に入れたてまつる。「いとかたはらいたきわざ」と苦しがりたまへど、けにくくはあらで、御頭もたげ、御いらへなど聞こえたまふ。<BR>⏎
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538-540 待ちきこえたまふ所は、絶え間遠き心地して、「なほかくなめり」と、心細く眺めたまふに、中納言おはしたり。悩ましげにしたまふと聞きて、御とぶらひなりけり。いと心地惑ふばかりの御悩みにもあらねど、ことつけて、対面したまはず。<BR>⏎
 「おどろきながら、はるけきほどを参り来つるを。なほかの悩みたまふらむ御あたり近く」<BR>⏎
 と切におぼつかながりきこえたまへば、うちとけて住まひたまへる方の御簾の前に入れたてまつる。「いとかたはらいたきわざ」と苦しがりたまへど、けにくくはあらで、御頭もたげ、御いらへなど聞こえたまふ。<BR>⏎
d1995<P>⏎
d1997<P>⏎
d1999<P>⏎
d11001<P>⏎
cd2:11002-1003 とて泣きたまふけしきなり。いと心苦しく、我さへ恥づかしき心地して、<BR>⏎
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545 とて泣きたまふけしきなり。いと心苦しく、我さへ恥づかしき心地して、<BR>⏎
d11005<P>⏎
cd2:11006-1007 など人の御上をさへ扱ふも、かつはあやしくおぼゆ。<BR>⏎
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547 など人の御上をさへ扱ふも、かつはあやしくおぼゆ。<BR>⏎
d11009<P>⏎
cd2:11010-1011 「なほ例の、あなたに」<BR>⏎
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549 「なほ例の、あなたに」<BR>⏎
d11013<P>⏎
cd4:21014-1017 「ましてかくわづらひたまふほどのおぼつかなさを。思ひのままに参り来て、出だし放ちたまへれば、いとわりなくなむ。かかる折の御扱ひも、誰れかははかばかしく仕うまつる」<BR>⏎
<P>⏎
 など弁のおもとに語らひたまひて、御修法ども始むべきことのたまふ。「いと見苦しく、ことさらにも厭はしき身を」と聞きたまへど、思ひ隈なくのたまはむもうたてあれば、さすがにながらへよと思ひたまへる心ばへもあはれなり。<BR>⏎
<P>⏎
551-552 「ましてかくわづらひたまふほどのおぼつかなさを。思ひのままに参り来て、出だし放ちたまへれば、いとわりなくなむ。かかる折の御扱ひも、誰れかははかばかしく仕うまつる」<BR>⏎
 など弁のおもとに語らひたまひて、御修法ども始むべきことのたまふ。「いと見苦しく、ことさらにも厭はしき身を」と聞きたまへど、思ひ隈なくのたまはむもうたてあれば、さすがにながらへよと思ひたまへる心ばへもあはれなり。<BR>⏎
text471018 <A NAME="in62">[第二段 大君、匂宮と六の君の婚約を知る]</A><BR>553 
d11019<P>⏎
d11021<P>⏎
cd2:11022-1023 「日ごろ経ればにや、今日はいと苦しくなむ。さらばこなたに」<BR>⏎
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555 「日ごろ経ればにや、今日はいと苦しくなむ。さらばこなたに」<BR>⏎
d11025<P>⏎
d11027<P>⏎
cd2:11028-1029 とていとかすかにあはれなるけはひを、限りなく心苦しくて嘆きゐたまへり。さすがに、つれづれとかくておはしがたければ、いとうしろめたけれど、帰りたまふ。<BR>⏎
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558 とていとかすかにあはれなるけはひを、限りなく心苦しくて嘆きゐたまへり。さすがに、つれづれとかくておはしがたければ、いとうしろめたけれど、帰りたまふ。<BR>⏎
d11031<P>⏎
d11033<P>⏎
d11035<P>⏎
d11037<P>⏎
d11039<P>⏎
d11041<P>⏎
d11043<P>⏎
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d11049<P>⏎
d11051<P>⏎
d11053<P>⏎
text471054 <A NAME="in63">[第三段 中の君、昼寝の夢から覚める]</A><BR>571 
d11055<P>⏎
d11057<P>⏎
d11059<P>⏎
d11061<P>⏎
d11063<P>⏎
d11065<P>⏎
d11067<P>⏎
cd6:31068-1073 とて二所ながらいみじく泣きたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
 「このころ明け暮れ思ひ出でたてまつれば、ほのめきもやおはすらむ。いかでおはすらむ所に尋ね参らむ。罪深げなる身どもにて」<BR>⏎
<P>⏎
 と後の世をさへ思ひやりたまふ。<A HREF="#no53">人の国にありけむ香の煙</A><A NAME="te53">ぞ</A>、いと得まほしく思さるる。<BR>⏎
<P>⏎
578-580 とて二所ながらいみじく泣きたまふ。<BR>⏎
 「このころ明け暮れ思ひ出でたてまつれば、ほのめきもやおはすらむ。いかでおはすらむ所に尋ね参らむ。罪深げなる身どもにて」<BR>⏎
 と後の世をさへ思ひやりたまふ。<A HREF="#no53">人の国にありけむ香の煙</A><A NAME="te53">ぞ</A>、いと得まほしく思さるる。<BR>⏎
text471074 <A NAME="in64">[第四段 十月の晦、匂宮から手紙が届く]</A><BR>581 
d11075<P>⏎
d11077<P>⏎
cd2:11078-1079 「なほ心うつくしくおいらかなるさまに聞こえたまへ。かくてはかなくもなりはべりなば、これより名残なき方にもてなしきこゆる人もや出で来む、とうしろめたきを。まれにも、この人の思ひ出できこえたまはむに、さやうなるあるまじき心つかふ人は、えあらじと思へば、つらきながらなむ頼まれはべる」<BR>⏎
<P>⏎
583 「なほ心うつくしくおいらかなるさまに聞こえたまへ。かくてはかなくもなりはべりなば、これより名残なき方にもてなしきこゆる人もや出で来む、とうしろめたきを。まれにも、この人の思ひ出できこえたまはむに、さやうなるあるまじき心つかふ人は、えあらじと思へば、つらきながらなむ頼まれはべる」<BR>⏎
d11081<P>⏎
d11083<P>⏎
cd2:11084-1085 といよいよ顔を引き入れたまふ。<BR>⏎
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586 といよいよ顔を引き入れたまふ。<BR>⏎
d11087<P>⏎
cd2:11088-1089 とて大殿油参らせて見たまふ。<BR>⏎
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588 とて大殿油参らせて見たまふ。<BR>⏎
d11091<P>⏎
cd5:21092-1096 「眺むるは同じ雲居をいかなれば<BR>⏎
  おぼつかなさを添ふる時雨ぞ」<BR>⏎
<P>⏎
 「<A HREF="#no56">かく袖ひつる</A><A NAME="te56">」</A>などいふこともやありけむ、耳馴れにたるを、なほあらじことと見るにつけても、恨めしさまさりたまふ。さばかり世にありがたき御ありさま容貌を、いとどいかで人にめでられむと、好ましく艶にもてなしたまへれば、若き人の心寄せたてまつりたまはむ、ことわりなり。<BR>⏎
<P>⏎
590-591 「眺むるは同じ雲居をいかなれば<BR>  おぼつかなさを添ふる時雨ぞ」<BR>⏎
 「<A HREF="#no56">かく袖ひつる</A><A NAME="te56">」</A>などいふこともやありけむ、耳馴れにたるを、なほあらじことと見るにつけても、恨めしさまさりたまふ。さばかり世にありがたき御ありさま容貌を、いとどいかで人にめでられむと、好ましく艶にもてなしたまへれば、若き人の心寄せたてまつりたまはむ、ことわりなり。<BR>⏎
d11098<P>⏎
cd7:31099-1105 「<A HREF="#no57">霰降る深山の里</A><A NAME="te57">は</A>朝夕に<BR>⏎
  眺むる空もかきくらしつつ」<BR>⏎
<P>⏎
 かく言ふは、神無月の晦日なりけり。「月も隔たりぬるよ」と、宮は静心なく思されて、「今宵今宵」と思しつつ、<A HREF="#no58">障り多みなるほどに</A><A NAME="te58">、</A>五節などとく出で来たる年にて、内裏わたり今めかしく紛れがちにて、わざともなけれど過ぐいたまふほどに、あさましく待ち遠なり。はかなく人を見たまふにつけても、さるは御心に離るる折なし。左の大殿のわたりのこと、大宮も、<BR>⏎
<P>⏎
 「なほさるのどやかなる御後見をまうけたまひて、そのほかに尋ねまほしく思さるる人あらば、参らせて、重々しくもてなしたまへ」<BR>⏎
<P>⏎
593-595 「<A HREF="#no57">霰降る深山の里</A><A NAME="te57">は</A>朝夕に<BR>  眺むる空もかきくらしつつ」<BR>⏎
 かく言ふは、神無月の晦日なりけり。「月も隔たりぬるよ」と、宮は静心なく思されて、「今宵今宵」と思しつつ、<A HREF="#no58">障り多みなるほどに</A><A NAME="te58">、</A>五節などとく出で来たる年にて、内裏わたり今めかしく紛れがちにて、わざともなけれど過ぐいたまふほどに、あさましく待ち遠なり。はかなく人を見たまふにつけても、さるは御心に離るる折なし。左の大殿のわたりのこと、大宮も、<BR>⏎
 「なほさるのどやかなる御後見をまうけたまひて、そのほかに尋ねまほしく思さるる人あらば、参らせて、重々しくもてなしたまへ」<BR>⏎
d11107<P>⏎
d11109<P>⏎
d11111<P>⏎
text471112 <A NAME="in65">[第五段 薫、大君を見舞う]</A><BR>599 
d11113<P>⏎
d11115<P>⏎
cd2:11116-1117 山里には、「いかにいかに」と、訪らひきこえたまふ。「この月となりては、すこしよろしくおはす」と聞きたまひけるに、公私もの騒がしきころにて、五六日、人もたてまつれたまはぬに、「いかならむ」と、うちおどろかれたまひて、わりなきことのしげさをうち捨てて参でたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
601 山里には、「いかにいかに」と、訪らひきこえたまふ。「この月となりては、すこしよろしくおはす」と聞きたまひけるに、公私もの騒がしきころにて、五六日、人もたてまつれたまはぬに、「いかならむ」と、うちおどろかれたまひて、わりなきことのしげさをうち捨てて参でたまふ。<BR>⏎
d11119<P>⏎
d11121<P>⏎
cd6:31122-1127 と言ひもやらず泣くさま、ことわりなり。<BR>⏎
<P>⏎
 「心憂く、などかかくとも告げたまはざりける。院にも内裏にも、あさましく事しげきころにて、日ごろもえ聞こえざりつるおぼつかなさ」<BR>⏎
<P>⏎
 とてありし方に入りたまふ。御枕上近くてもの聞こえたまへど、御声もなきやうにて、えいらへたまはず。<BR>⏎
<P>⏎
604-606 と言ひもやらず泣くさま、ことわりなり。<BR>⏎
 「心憂く、などかかくとも告げたまはざりける。院にも内裏にも、あさましく事しげきころにて、日ごろもえ聞こえざりつるおぼつかなさ」<BR>⏎
 とてありし方に入りたまふ。御枕上近くてもの聞こえたまへど、御声もなきやうにて、えいらへたまはず。<BR>⏎
d11129<P>⏎
cd2:11130-1131 と恨みて、例の阿闍梨、おほかた世に験ありと聞こゆる人の限り、あまた請じたまふ。御修法読経、明くる日より始めさせたまはむとて、殿人あまた参り集ひ、上下の人立ち騷ぎたれば、心細さの名残なく頼もしげなり。<BR>⏎
<P>⏎
608 と恨みて、例の阿闍梨、おほかた世に験ありと聞こゆる人の限り、あまた請じたまふ。御修法読経、明くる日より始めさせたまはむとて、殿人あまた参り集ひ、上下の人立ち騷ぎたれば、心細さの名残なく頼もしげなり。<BR>⏎
text471132 <A NAME="in66">[第六段 薫、大君を看護する]</A><BR>609 
d11133<P>⏎
d11135<P>⏎
cd8:41136-1143 中の宮、苦しと思したれど、この御仲を、「なほもてはなれたまはぬなりけり」と皆思ひて、疎くもえもてなし隔てず。初夜よりはじめて、法華経を不断に読ませたまふ。声尊き限り十二人して、いと尊し。<BR>⏎
<P>⏎
 灯はこなたの南の間にともして、内は暗きに、几帳をひき上げて、すこしすべり入りて見たてまつりたまへば、老人ども二三人ぞさぶらふ。中の宮は、ふと隠れたまひぬれば、いと人少なに、心細くて臥したまへるを、<BR>⏎
<P>⏎
 「などか御声をだに聞かせたまはぬ」<BR>⏎
<P>⏎
 とて御手を捉へておどろかしきこえたまへば、<BR>⏎
<P>⏎
611-614 中の宮、苦しと思したれど、この御仲を、「なほもてはなれたまはぬなりけり」と皆思ひて、疎くもえもてなし隔てず。初夜よりはじめて、法華経を不断に読ませたまふ。声尊き限り十二人して、いと尊し。<BR>⏎
 灯はこなたの南の間にともして、内は暗きに、几帳をひき上げて、すこしすべり入りて見たてまつりたまへば、老人ども二三人ぞさぶらふ。中の宮は、ふと隠れたまひぬれば、いと人少なに、心細くて臥したまへるを、<BR>⏎
 「などか御声をだに聞かせたまはぬ」<BR>⏎
 とて御手を捉へておどろかしきこえたまへば、<BR>⏎
d11145<P>⏎
cd2:11146-1147 と息の下にのたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
616 と息の下にのたまふ。<BR>⏎
d11149<P>⏎
cd2:11150-1151 とてさくりもよよと泣きたまふ。御ぐしなど、すこし熱くぞおはしける。<BR>⏎
<P>⏎
618 とてさくりもよよと泣きたまふ。御ぐしなど、すこし熱くぞおはしける。<BR>⏎
d11153<P>⏎
cd2:11154-1155 と御耳にさし当てて、ものを多く聞こえたまへば、うるさうも恥づかしうもおぼえて、顔をふたぎたまへるを、むなしく見なしていかなる心地せむ、と胸もひしげておぼゆ。<BR>⏎
<P>⏎
620 と御耳にさし当てて、ものを多く聞こえたまへば、うるさうも恥づかしうもおぼえて、顔をふたぎたまへるを、むなしく見なしていかなる心地せむ、と胸もひしげておぼゆ。<BR>⏎
d11157<P>⏎
d11159<P>⏎
d11161<P>⏎
d11163<P>⏎
text471164 <A NAME="in67">[第七段 阿闍梨、八の宮の夢を語る]</A><BR>625 
d11165<P>⏎
d11167<P>⏎
d11169<P>⏎
d11171<P>⏎
d11173<P>⏎
cd4:21174-1177 俗の御かたちにて、『世の中を深う厭ひ離れしかば、心とまることなかりしを、いささかうち思ひしことに乱れてなむ、ただしばし願ひの所を隔たれるを思ふなむ、いと悔しき。すすむるわざせよ』と、いとさだかに仰せられしを、たちまちに仕うまつるべきことのおぼえはべらねば、堪へたるにしたがひて、行ひしはべる法師ばら五六人して、なにがしの念仏なむ仕うまつらせはべる。<BR>⏎
<P>⏎
 さては思ひたまへ得たることはべりて、常不軽をなむつかせはべる」<BR>⏎
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630-631 俗の御かたちにて、『世の中を深う厭ひ離れしかば、心とまることなかりしを、いささかうち思ひしことに乱れてなむ、ただしばし願ひの所を隔たれるを思ふなむ、いと悔しき。すすむるわざせよ』と、いとさだかに仰せられしを、たちまちに仕うまつるべきことのおぼえはべらねば、堪へたるにしたがひて、行ひしはべる法師ばら五六人して、なにがしの念仏なむ仕うまつらせはべる。<BR>⏎
 さては思ひたまへ得たることはべりて、常不軽をなむつかせはべる」<BR>⏎
d11179<P>⏎
cd4:21180-1183 「いかでかのまだ定まりたまはざらむさきに参でて、同じ所にも」<BR>⏎
<P>⏎
 と聞き臥したまへり。<BR>⏎
<P>⏎
633-634 「いかでかのまだ定まりたまはざらむさきに参でて、同じ所にも」<BR>⏎
 と聞き臥したまへり。<BR>⏎
d11185<P>⏎
d11187<P>⏎
d11189<P>⏎
cd3:11190-1192 「霜さゆる汀の千鳥うちわびて<BR>⏎
  鳴く音悲しき朝ぼらけかな」<BR>⏎
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638 「霜さゆる汀の千鳥うちわびて<BR>  鳴く音悲しき朝ぼらけかな」<BR>⏎
d11194<P>⏎
cd3:11195-1197 「暁の霜うち払ひ鳴く千鳥<BR>⏎
  もの思ふ人の心をや知る」<BR>⏎
<P>⏎
640 「暁の霜うち払ひ鳴く千鳥<BR>  もの思ふ人の心をや知る」<BR>⏎
d11199<P>⏎
text471200 <A NAME="in68">[第八段 豊明の夜、薫と大君、京を思う]</A><BR>642 
d11201<P>⏎
d11203<P>⏎
d11205<P>⏎
cd2:11206-1207 「なほかかるついでにいかで亡せなむ。この君のかく添ひて、残りなくなりぬるを、今はもて離れむかたなし。さりとて、かうおろかならず見ゆめる心ばへの、見劣りして、我も人も見えむが、心やすからず憂かるべきこと。もし命しひてとまらば、病にことつけて、形をも変へてむ。さてのみこそ、長き心をもかたみに見果つべきわざなれ」<BR>⏎
<P>⏎
645 「なほかかるついでにいかで亡せなむ。この君のかく添ひて、残りなくなりぬるを、今はもて離れむかたなし。さりとて、かうおろかならず見ゆめる心ばへの、見劣りして、我も人も見えむが、心やすからず憂かるべきこと。もし命しひてとまらば、病にことつけて、形をも変へてむ。さてのみこそ、長き心をもかたみに見果つべきわざなれ」<BR>⏎
d11209<P>⏎
d11211<P>⏎
d11213<P>⏎
d11215<P>⏎
d11217<P>⏎
cd2:11218-1219 と似げなきことに思ひて、頼もし人にも申しつがねば、口惜しう思す。<BR>⏎
<P>⏎
651 と似げなきことに思ひて、頼もし人にも申しつがねば、口惜しう思す。<BR>⏎
d11221<P>⏎
cd5:21222-1226 豊明は今日ぞかしと、京思ひやりたまふ。風いたう吹きて、雪の降るさまあわたたしう荒れまどふ。「都にはいとかうしもあらじかし」と、人やりならず心細うて、「<A HREF="#k34">疎くて</A><A NAME="t34">や</A>みぬべきにや」と思ふ契りはつらけれど、恨むべうもあらず。なつかしうらうたげなる御もてなしを、ただしばしにても例になして、「思ひつることどもも語らはばや」と思ひ続けて眺めたまふ。光もなくて暮れ果てぬ。<BR>⏎
<P>⏎
 「かき曇り日かげも見えぬ奥山に<BR>⏎
  心をくらすころにもあるかな」<BR>⏎
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653-654 豊明は今日ぞかしと、京思ひやりたまふ。風いたう吹きて、雪の降るさまあわたたしう荒れまどふ。「都にはいとかうしもあらじかし」と、人やりならず心細うて、「<A HREF="#k34">疎くて</A><A NAME="t34">や</A>みぬべきにや」と思ふ契りはつらけれど、恨むべうもあらず。なつかしうらうたげなる御もてなしを、ただしばしにても例になして、「思ひつることどもも語らはばや」と 思ひ続けて眺めたまふ。光もなくて暮れ果てぬ。<BR>⏎
 「かき曇り日かげも見えぬ奥山に<BR>  心をくらすころにもあるかな」<BR>⏎
text471227 <A NAME="in69">[第九段 薫、大君に寄り添う]</A><BR>655 
d11228<P>⏎
cd2:11229-1230 ただかくておはするを頼みに、皆思ひきこえたり。例の、近き方にゐたまへるに、御几帳などを、風のあらはに吹きなせば、中の宮、奥に入りたまふ。見苦しげなる人びとも、かかやき隠れぬるほどに、いと近う寄りて、<BR>⏎
<P>⏎
656 ただかくておはするを頼みに、皆思ひきこえたり。例の、近き方にゐたまへるに、御几帳などを、風のあらはに吹きなせば、中の宮、奥に入りたまふ。見苦しげなる人びとも、かかやき隠れぬるほどに、いと近う寄りて、<BR>⏎
d11232<P>⏎
cd2:11233-1234 と泣く泣く聞こえたまふ。ものおぼえずなりにたるさまなれど、顔はいとよく隠したまへり。<BR>⏎
<P>⏎
658 と泣く泣く聞こえたまふ。ものおぼえずなりにたるさまなれど、顔はいとよく隠したまへり。<BR>⏎
d11236<P>⏎
cd2:11237-1238 といとあはれと思ひたまへるけしきなるに、いよいよせきとどめがたくて、ゆゆしう、かく心細げに思ふとは見えじと、つつみたまへど、声も惜しまれず。<BR>⏎
<P>⏎
660 といとあはれと思ひたまへるけしきなるに、いよいよせきとどめがたくて、ゆゆしう、かく心細げに思ふとは見えじと、つつみたまへど、声も惜しまれず。<BR>⏎
d11240<P>⏎
d11242<P>⏎
d11244<P>⏎
d11246<P>⏎
text471247 <H4>第七章 大君の物語 大君の死と薫の悲嘆</H4>665 
text471248 <A NAME="in71">[第一段 大君、もの隠れゆくように死す]</A><BR>666 
d11249<P>⏎
cd6:31250-1255 「つひにうち捨てたまひなば、世にしばしもとまるべきにもあらず。命もし限りありてとまるべうとも、深き山にさすらへなむとす。ただいと心苦しうて、とまりたまはむ御ことをなむ思ひきこゆる」<BR>⏎
<P>⏎
 といらへさせたてまつらむとて、かの御ことをかけたまへば、顔隠したまへる御袖を少しひき直して、<BR>⏎
<P>⏎
 「かくはかなかりけるものを、思ひ隈なきやうに思されたりつるもかひなければ、このとまりたまはむ人を、同じこと思ひきこえたまへと、ほのめかしきこえしに、違へたまはざらましかば、うしろやすからましと、これのみなむ恨めしきふしにて、とまりぬべうおぼえはべる」<BR>⏎
<P>⏎
667-669 「つひにうち捨てたまひなば、世にしばしもとまるべきにもあらず。命もし限りありてとまるべうとも、深き山にさすらへなむとす。ただいと心苦しうて、とまりたまはむ御ことをなむ思ひきこゆる」<BR>⏎
 といらへさせたてまつらむとて、かの御ことをかけたまへば、顔隠したまへる御袖を少しひき直して、<BR>⏎
 「かくはかなかりけるものを、思ひ隈なきやうに思されたりつるもかひなければ、このとまりたまはむ人を、同じこと思ひきこえたまへと、ほのめかしきこえしに、違へたまはざらましかば、うしろやすからましと、これのみなむ恨めしきふしにて、とまりぬべうおぼえはべる」<BR>⏎
d11257<P>⏎
cd2:11258-1259 「かくいみじう、もの思ふべき身にやありけむ。いかにもいかにも、異ざまにこの世を思ひかかづらふ方のはべらざりつれば、御おもむけに従ひきこえずなりにし。今なむ、悔しく心苦しうもおぼゆる。されども、うしろめたくな思ひきこえたまひそ」<BR>⏎
<P>⏎
671 「かくいみじう、もの思ふべき身にやありけむ。いかにもいかにも、異ざまにこの世を思ひかかづらふ方のはべらざりつれば、御おもむけに従ひきこえずなりにし。今なむ、悔しく心苦しうもおぼゆる。されども、うしろめたくな思ひきこえたまひそ」<BR>⏎
d11261<P>⏎
cd2:11262-1263 「世の中をことさらに厭ひ離れね、と勧めたまふ仏などの、いとかくいみじきものは思はせたまふにやあらむ。見るままにもの隠れゆくやうにて消え果てたまひぬるは、いみじきわざかな」<BR>⏎
<P>⏎
673 「世の中をことさらに厭ひ離れね、と勧めたまふ仏などの、いとかくいみじきものは思はせたまふにやあらむ。見るままにもの隠れゆくやうにて消え果てたまひぬるは、いみじきわざかな」<BR>⏎
d11265<P>⏎
text471266 <A NAME="in72">[第二段 大君の火葬と薫の忌籠もり]</A><BR>675 
d11267<P>⏎
d11269<P>⏎
d11271<P>⏎
d11273<P>⏎
d11275<P>⏎
d11277<P>⏎
d11279<P>⏎
d11281<P>⏎
d11283<P>⏎
d11285<P>⏎
d11287<P>⏎
d11289<P>⏎
text471290 <A NAME="in73">[第三段 七日毎の法事と薫の悲嘆]</A><BR>687 
d11291<P>⏎
d11293<P>⏎
cd3:11294-1296 「くれなゐに落つる涙もかひなきは<BR>⏎
  形見の色を染めぬなりけり」<BR>⏎
<P>⏎
689 「くれなゐに落つる涙もかひなきは<BR>  形見の色を染めぬなりけり」<BR>⏎
d11298<P>⏎
d11300<P>⏎
d11302<P>⏎
d11304<P>⏎
d11306<P>⏎
d11308<P>⏎
d11310<P>⏎
d11312<P>⏎
cd2:11313-1314 と事に触れておぼゆ。<BR>⏎
<P>⏎
698 と事に触れておぼゆ。<BR>⏎
text471315 <A NAME="in74">[第四段 雪の降る日、薫、大君を思う]</A><BR>699 
d11316<P>⏎
d11318<P>⏎
cd3:11319-1321 「おくれじと空ゆく月を慕ふかな<BR>⏎
  つひに住むべきこの世ならねば」<BR>⏎
<P>⏎
701 「おくれじと空ゆく月を慕ふかな<BR>  つひに住むべきこの世ならねば」<BR>⏎
d11323<P>⏎
cd3:11324-1326 「恋ひわびて死ぬる薬のゆかしきに<BR>⏎
  雪の山にや跡を消なまし」<BR>⏎
<P>⏎
703 「恋ひわびて死ぬる薬のゆかしきに<BR>  雪の山にや跡を消なまし」<BR>⏎
d11328<P>⏎
d11330<P>⏎
d11332<P>⏎
d11334<P>⏎
d11336<P>⏎
text471337 <A NAME="in75">[第五段 匂宮、雪の中、宇治へ弔問]</A><BR>709 
d11338<P>⏎
d11340<P>⏎
cd4:21341-1344 「何人かはかかるさ夜中に雪を分くべき」<BR>⏎
<P>⏎
 と大徳たちも驚き思へるに、宮、狩の御衣にいたうやつれて、濡れ濡れ入りたまへるなりけり。うちたたきたまふさま、さななり、と聞きたまひて、中納言は、隠ろへたる方に入りたまひて、忍びておはす。御忌は日数残りたりけれど、心もとなく思しわびて、夜一夜雪に惑はされてぞおはしましける。<BR>⏎
<P>⏎
711-712 「何人かはかかるさ夜中に雪を分くべき」<BR>⏎
 と大徳たちも驚き思へるに、宮、狩の御衣にいたうやつれて、濡れ濡れ入りたまへるなりけり。うちたたきたまふさま、さななり、と聞きたまひて、中納言は、隠ろへたる方に入りたまひて、忍びておはす。御忌は日数残りたりけれど、心もとなく思しわびて、夜一夜雪に惑はされてぞおはしましける。<BR>⏎
d11346<P>⏎
d11348<P>⏎
d11350<P>⏎
d11352<P>⏎
d11354<P>⏎
d11356<P>⏎
cd2:11357-1358 など忍びて賢しがりたまへば、いよいよこの君の御心も恥づかしくて、<A HREF="#k37">え聞こえ</A><A NAME="t37">た</A>まはず。<BR>⏎
<P>⏎
719 など忍びて賢しがりたまへば、いよいよこの君の御心も恥づかしくて、<A HREF="#k37">え聞こえ</A><A NAME="t37">た</A>まはず。<BR>⏎
d11360<P>⏎
cd2:11361-1362 とおろかならず嘆き暮らしたまへり。<BR>⏎
<P>⏎
721 とおろかならず嘆き暮らしたまへり。<BR>⏎
text471363 <A NAME="in76">[第六段 匂宮と中の君、和歌を詠み交す]</A><BR>722 
d11364<P>⏎
cd10:41365-1374 夜のけしき、いとど険しき風の音に、人やりならず嘆き臥したまへるも、さすがにて、例の、もの隔てて<A HREF="#k38">聞こえたまふ</A><A NAME="t38">。</A>千々の社をひきかけて、行く先長きことを契りきこえたまふも、「いかでかく口馴れたまひけむ」と、心憂けれど、よそにてつれなきほどの疎ましさよりはあはれに、人の心もたをやぎぬべき御さまを、一方にもえ疎み果つまじかりけり。ただつくづくと聞きて、<BR>⏎
<P>⏎
 「来し方を思ひ出づるもはかなきを<BR>⏎
  行く末かけてなに頼むらむ」<BR>⏎
<P>⏎
 とほのかにのたまふ。なかなかいぶせう、心もとなし。<BR>⏎
<P>⏎
 「行く末を短きものと思ひなば<BR>⏎
  目の前にだに背かざらなむ<BR>⏎
<P>⏎
723-726 夜のけしき、いとど険しき風の音に、人やりならず嘆き臥したまへるも、さすがにて、例の、もの隔てて<A HREF="#k38">聞こえたまふ</A><A NAME="t38">。</A>千々の社をひきかけて、行く先長きことを契りきこえたまふも、「いかでかく口馴れたまひけむ」と、心憂けれど、よそにてつれなきほどの疎ましさよりはあはれに、人の心もたをやぎぬべき御さまを、一方にもえ疎み果つまじかりけり。ただつくづくと聞きて、<BR>⏎
 「来し方を思ひ出づるもはかなきを<BR>  行く末かけてなに頼むらむ」<BR>⏎
 とほのかにのたまふ。なかなかいぶせう、心もとなし。<BR>⏎
 「行く末を短きものと思ひなば<BR>  目の前にだに背かざらなむ<BR>⏎
d11376<P>⏎
cd2:11377-1378 とよろづにこしらへたまへど、<BR>⏎
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728 とよろづにこしらへたまへど、<BR>⏎
d11380<P>⏎
d11382<P>⏎
d11384<P>⏎
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d11388<P>⏎
text471389 <A NAME="in77">[第七段 歳暮に薫、宇治から帰京]</A><BR>734 
d11390<P>⏎
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d11396<P>⏎
d11398<P>⏎
cd2:11399-1400 とおぼほれあへり。<BR>⏎
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739 とおぼほれあへり。<BR>⏎
d11402<P>⏎
cd6:31403-1408 「なほかう参り来ることもいと難きを思ひわびて、近う渡いたてまつるべきことをなむ、たばかり出でたる」<BR>⏎
<P>⏎
 と聞こえたまへり。后の宮聞こし召しつけて、<BR>⏎
<P>⏎
 「中納言もかくおろかならず思ひほれてゐたなるは、げにおしなべて思ひがたうこそは、誰も<A HREF="#k39">思さるらめ</A><A NAME="t39">」</A>と、心苦しがりたまひて、「二条院の西の対に渡いたまて、時々も通ひたまふべく、忍びて聞こえたまひけるは、女一の宮の御方にことよせて思しなるにや」<BR>⏎
<P>⏎
741-743 「なほかう参り来ることもいと難きを思ひわびて、近う渡いたてまつるべきことをなむ、たばかり出でたる」<BR>⏎
 と聞こえたまへり。后の宮聞こし召しつけて、<BR>⏎
 「中納言もかくおろかならず思ひほれてゐたなるは、げにおしなべて思ひがたうこそは、誰も<A HREF="#k39">思さるらめ</A><A NAME="t39">」</A>と、心苦しがりたまひて、「二条院の西の対に渡いたまて、時々も通ひたまふべく、忍びて聞こえたまひけるは、女一の宮の御方にことよせて思しなるにや」<BR>⏎
d11410<P>⏎
d11412<P>⏎
d11414<P>⏎
cd2:11415-1416 などひき返し心細し。宮の思し寄るめりし筋は、いと似げなきことに思ひ離れて、「おほかたの御後見は、我ならでは、また誰かは」と、思すとや。<BR>⏎
<P>⏎
747 などひき返し心細し。宮の思し寄るめりし筋は、いと似げなきことに思ひ離れて、「おほかたの御後見は、我ならでは、また誰かは」と、思すとや。<BR>⏎
text471417 <a name="in81">【出典】<BR>748 
c11418</a><A NAME="no1">出典1</A> 身を憂しと思ふに消えぬものなればかくても経ぬる世にこそありけれ(古今集恋五-八〇六 読人しらず)<A HREF="#te1">(戻)</A><BR>⏎
749<A NAME="no1">出典1</A> 身を憂しと思ふに消えぬものなればかくても経ぬる世にこそありけれ(古今集恋五-八〇六 読人しらず)<A HREF="#te1">(戻)</A><BR>⏎
c11421<A NAME="no4">出典4</A> 総角あげまきや とうとう 尋ひろばかりや とうとう 離さかりて寝たれども 転まろび あひけり とうとう か寄りあひけり とうとう(催馬楽-総角)<A HREF="#te4">(戻)</A><BR>⏎
752<A NAME="no4">出典4</A> <ruby><rb>総角<rp>(<rt>あげまき<rp>)</ruby>や とうとう <ruby><rb><rp>(<rt>ひろ<rp>)</ruby>ばかりや とうとう <ruby><rb><rp>(<rt>さか<rp>)</ruby>りて寝たれども <ruby><rb><rp>(<rt>まろ<rp>)</ruby>び あひけり とうとう か寄りあひけり とうとう(催馬楽-総角)<A HREF="#te4">(戻)</A><BR>⏎
c11430<A NAME="no13">出典13</A> 総角あげまきや とうとう 尋ひろばかりや とうとう 離さかりて寝たれども 転まろび あひけり とうとう か寄りあひけり とうとう(催馬楽-総角)<A HREF="#te13">(戻)</A><BR>⏎
761<A NAME="no13">出典13</A> <ruby><rb>総角<rp>(<rt>あげまき<rp>)</ruby>や とうとう <ruby><rb><rp>(<rt>ひろ<rp>)</ruby>ばかりや とうとう <ruby><rb><rp>(<rt>さか<rp>)</ruby>りて寝たれども <ruby><rb><rp>(<rt>まろ<rp>)</ruby>び あひけり とうとう か寄りあひけり とうとう(催馬楽-総角)<A HREF="#te13">(戻)</A><BR>⏎
c11449<A NAME="no32">出典32</A> 狭蓆さむしろに衣片敷き今宵もや我や待つらむ宇治の橋姫(古今集恋四-六八九 読人しらず)忘らるる身を宇治橋の中絶えて人も通はぬ年ぞ経にける(古今集恋五-八二五 読人しらず)<A HREF="#te32">(戻)</A><BR>⏎
780<A NAME="no32">出典32</A> <ruby><rb>狭蓆<rp>(<rt>さむしろ<rp>)</ruby>に衣片敷き今宵もや我や待つらむ宇治の橋姫(古今集恋四-六八九 読人しらず)忘らるる身を宇治橋の中絶えて人も通はぬ年ぞ経にける(古今集恋五-八二五 読人しらず)<A HREF="#te32">(戻)</A><BR>⏎
d11482
text471483<p> <a name="in82">【校訂】<BR>813 
c11485</a><A NAME="k01">校訂1</A> まいて--まいり(り/$)て<A HREF="#t01">(戻)</A><BR>⏎
815<A NAME="k01">校訂1</A> まいて--まいり(り/$)て<A HREF="#t01">(戻)</A><BR>⏎
d11524</p>⏎
d11531</p>⏎
i0864
diffsrc/original/text48.htmlsrc/modified/text48.html
cd2:18-9<body background="wallppr063.gif">⏎
<p>First updated 9/20/1996(ver.1-1)<BR>⏎
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cd5:210-14Last updated 4/28/2011(ver.2-2)<BR>⏎
渋谷栄一校訂(C)<br>⏎
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9-10<ADDRESS>Last updated 4/28/2011(ver.2-2)<BR>⏎
渋谷栄一校訂(C)</ADDRESS>⏎
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d130<P>⏎
d151<P>⏎
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text4855 <H4>第一章 中君の物語 匂宮との結婚を前にした宇治での生活</H4>46 
text4856 <A NAME="in11">[第一段 宇治の新春、山の阿闍梨から山草が届く]</A><BR>47 
d157<P>⏎
d159<P>⏎
d161<P>⏎
d163<P>⏎
d165<P>⏎
cd5:266-70 など聞こえて、蕨、つくづくし、をかしき籠に入れて、「これは童べの供養じてはべる初穂なり」とて、たてまつれり。手は、いと悪しうて、歌は、わざとがましくひき放ちてぞ書きたる。<BR>⏎
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 「君にとてあまたの春を摘みしかば<BR>⏎
  常を忘れぬ初蕨なり<BR>⏎
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52-53 など聞こえて、蕨、つくづくし、をかしき籠に入れて、「これは童べの供養じてはべる初穂なり」とて、たてまつれり。手は、いと悪しうて、歌は、わざとがましくひき放ちてぞ書きたる。<BR>⏎
 「君にとてあまたの春を摘みしかば<BR>  常を忘れぬ初蕨なり<BR>⏎
d172<P>⏎
d174<P>⏎
text4875 <A NAME="in12">[第二段 中君、阿闍梨に返事を書く]</A><BR>56 
d176<P>⏎
d178<P>⏎
cd3:179-81 「この春は誰れにか見せむ亡き人の<BR>⏎
  かたみに摘める峰の早蕨」<BR>⏎
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58 「この春は誰れにか見せむ亡き人の<BR>  かたみに摘める峰の早蕨」<BR>⏎
d183<P>⏎
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d187<P>⏎
cd4:288-91 と見たてまつる人びとは口惜しがる。<BR>⏎
<P>⏎
 かの御あたりの人の通ひ来るたよりに、御ありさまは絶えず聞き交はしたまひけり。尽きせず思ひほれたまひて、「新しき年ともいはず、いや目になむ、なりたまへる」と聞きたまひても、「げにうちつけの心浅さにはものしたまはざりけり」と、いとど今ぞあはれも深く、思ひ知らるる。<BR>⏎
<P>⏎
62-63 と見たてまつる人びとは口惜しがる。<BR>⏎
 かの御あたりの人の通ひ来るたよりに、御ありさまは絶えず聞き交はしたまひけり。尽きせず思ひほれたまひて、「新しき年ともいはず、いや目になむ、なりたまへる」と聞きたまひても、「げにうちつけの心浅さにはものしたまはざりけり」と、いとど今ぞあはれも深く、思ひ知らるる。<BR>⏎
d193<P>⏎
text4894 <A NAME="in13">[第三段 正月下旬、薫、匂宮を訪問]</A><BR>65 
d195<P>⏎
d197<P>⏎
d199<P>⏎
cd3:1100-102 「折る人の心にかよふ花なれや<BR>⏎
  色には出でず下に匂へる」<BR>⏎
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68 「折る人の心にかよふ花なれや<BR>  色には出でず下に匂へる」<BR>⏎
d1104<P>⏎
cd2:1105-106 「見る人にかこと寄せける花の枝を<BR>⏎
  心してこそ折るべかりけれ<BR>⏎
70 「見る人にかこと寄せける花の枝を<BR>  心してこそ折るべかりけれ<BR>⏎
d1108<P>⏎
cd2:1109-110 と戯れ交はしたまへる、いとよき御あはひなり。<BR>⏎
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72 と戯れ交はしたまへる、いとよき御あはひなり。<BR>⏎
d1112<P>⏎
text48113 <A NAME="in14">[第四段 匂宮、薫に中君を京に迎えることを言う]</A><BR>74 
d1114<P>⏎
d1116<P>⏎
cd2:1117-118 世にためしありがたかりける仲の睦びを、「いでさりとも、いとさのみはあらざりけむ」と、残りありげに問ひなしたまふぞ、わりなき御心ならひなめるかし。さりながらも、ものに心えたまひて、嘆かしき心のうちもあきらむばかり、かつは慰め、またあはれをもさまし、さまざまに語らひたまふ、御さまのをかしきにすかされたてまつりて、げに心にあまるまで思ひ結ぼほるることども、すこしづつ語りきこえたまふぞ、こよなく胸のひまあく心地したまふ。<BR>⏎
<P>⏎
76 世にためしありがたかりける仲の睦びを、「いでさりとも、いとさのみはあらざりけむ」と、残りありげに問ひなしたまふぞ、わりなき御心ならひなめるかし。さりながらも、ものに心えたまひて、嘆かしき心のうちもあきらむばかり、かつは慰め、またあはれをもさまし、さまざまに語らひたまふ、御さまのをかしきにすかされたてまつりて、げに心にあまるまで思ひ結ぼほるることども、すこしづつ語りきこえたまふぞ、こよなく胸のひまあく心地したまふ。<BR>⏎
d1120<P>⏎
d1122<P>⏎
cd2:1123-124 とてかの、「異人とな思ひわきそ」と、譲りたまひし心おきてをも、すこしは語りきこえたまへど、<A HREF="#no5">岩瀬の森の呼子鳥</A><A NAME="te5">め</A>いたりし夜のことは、<A HREF="#k01">残したりけり</A><A NAME="t01">。</A>心のうちには、「かく慰めがたき形見にも、げにさてこそ、かやうにも扱ひきこゆべかりけれ」と、悔しきことやうやうまさりゆけど、今はかひなきものゆゑ、「常にかうのみ思はば、あるまじき心もこそ出で来れ。誰がためにもあぢきなく、をこがましからむ」と思ひ離る。「さてもおはしまさむにつけても、まことに思ひ後見きこえむ方は、また誰れかは」と思せば、御渡りのことどもも<A HREF="#k02">心まうけせさせ</A><A NAME="t02">た</A>まふ。<BR>⏎
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79 とてかの、「異人とな思ひわきそ」と、譲りたまひし心おきてをも、すこしは語りきこえたまへど、<A HREF="#no5">岩瀬の森の呼子鳥</A><A NAME="te5">め</A>いたりし夜のことは、<A HREF="#k01">残したりけり</A><A NAME="t01">。</A>心のうちには、「かく慰めがたき形見にも、げにさてこそ、かやうにも扱ひきこゆべかりけれ」と、悔しきことやうやうまさりゆけど、今はかひなきものゆゑ、「常にかうのみ思はば、あるまじき心もこそ出で来れ。誰がためにもあぢきなく、をこがましからむ」と思ひ離る。「さてもおはしまさむにつけても、まことに思ひ後見きこえむ方は、また誰れかは」と思せば、御渡りのことどもも<A HREF="#k02">心まうけせさせ</A><A NAME="t02">た</A>まふ。<BR>⏎
text48125 <A NAME="in15">[第五段 中君、姉大君の服喪が明ける]</A><BR>80 
d1126<P>⏎
d1128<P>⏎
d1130<P>⏎
cd2:1131-132 御服も、限りあることなれば、脱ぎ捨てたまふに、禊も浅き心地ぞする。親一所は、見たてまつらざりしかば、恋しきことは思ほえず。その御代はりにも、この度の衣を深く染めむと、心には思しのたまへど、さすがにさるべきゆゑもなきわざなれば、飽かず悲しきこと限りなし。<BR>⏎
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83 御服も、限りあることなれば、脱ぎ捨てたまふに、禊も浅き心地ぞする。親一所は、見たてまつらざりしかば、恋しきことは思ほえず。その御代はりにも、この度の衣を深く染めむと、心には思しのたまへど、さすがにさるべきゆゑもなきわざなれば、飽かず悲しきこと限りなし。<BR>⏎
d1134<P>⏎
cd5:2135-139 「はかなしや霞の衣裁ちしまに<BR>⏎
  花のひもとく折も来にけり」<BR>⏎
<P>⏎
 げに色々いときよらにてたてまつれたまへり。御渡りのほどの被け物どもなど、ことことしからぬものから、品々にこまやかに思しやりつつ、いと多かり。<BR>⏎
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85-86 「はかなしや霞の衣裁ちしまに<BR>  花のひもとく折も来にけり」<BR>⏎
 げに色々いときよらにてたてまつれたまへり。御渡りのほどの被け物どもなど、ことことしからぬものから、品々にこまやかに思しやりつつ、いと多かり。<BR>⏎
d1141<P>⏎
cd2:1142-143 など人びとは聞こえ知らす。あざやかならぬ古人どもの心には、かかる方を心にしめて聞こゆ。若き人は、時々も見たてまつりならひて、今はと異ざまになりたまはむを、さうざうしく、「いかに恋しくおぼえさせたまはむ」と聞こえあへり。<BR>⏎
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88 など人びとは聞こえ知らす。あざやかならぬ古人どもの心には、かかる方を心にしめて聞こゆ。若き人は、時々も見たてまつりならひて、今はと異ざまになりたまはむを、さうざうしく、「いかに恋しくおぼえさせたまはむ」と聞こえあへり。<BR>⏎
text48144 <A NAME="in16">[第六段 薫、中君が宇治を出立する前日に訪問]</A><BR>89 
d1145<P>⏎
d1147<P>⏎
d1149<P>⏎
cd2:1150-151 内にも、人びと思ひ出できこえつつうちひそみあへり。中の宮はまして、もよほさるる御涙の川に、明日の渡りもおぼえたまはず、ほれぼれしげにてながめ臥したまへるに、<BR>⏎
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92 内にも、人びと思ひ出できこえつつうちひそみあへり。中の宮はまして、もよほさるる御涙の川に、明日の渡りもおぼえたまはず、ほれぼれしげにてながめ臥したまへるに、<BR>⏎
d1153<P>⏎
d1155<P>⏎
cd6:3156-161 「はしたなしと思はれたてまつらむとしも思はねど、いさや心地も例のやうにもおぼえず、かき乱りつつ、いとどはかばかしからぬひがこともやと、つつましうて」<BR>⏎
<P>⏎
 など苦しげにおぼいたれど、「いとほし」など、これかれ聞こえて、中の障子の口にて対面したまへり。<BR>⏎
<P>⏎
 いと心恥づかしげになまめきて、また「このたびは、ねびまさりたまひにけり」と、目も驚くまで匂ひ多く、「人にも似ぬ用意など、あなめでたの人や」とのみ見えたまへるを、姫宮は、面影さらぬ人の御ことをさへ思ひ出できこえたまふに、いとあはれと見たてまつりたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
95-97 「はしたなしと思はれたてまつらむとしも思はねど、いさや心地も例のやうにもおぼえず、かき乱りつつ、いとどはかばかしからぬひがこともやと、つつましうて」<BR>⏎
 など苦しげにおぼいたれど、「いとほし」など、これかれ聞こえて、中の障子の口にて対面したまへり。<BR>⏎
 いと心恥づかしげになまめきて、また「このたびは、ねびまさりたまひにけり」と、目も驚くまで匂ひ多く、「人にも似ぬ用意など、あなめでたの人や」とのみ見えたまへるを、姫宮は、面影さらぬ人の御ことをさへ思ひ出できこえたまふに、いとあはれと見たてまつりたまふ。<BR>⏎
d1163<P>⏎
d1165<P>⏎
d1167<P>⏎
d1169<P>⏎
d1171<P>⏎
cd2:1172-173 など所々言ひ消ちて、いみじくものあはれと思ひたまへるけはひなど、いとようおぼえたまへるを、「心からよそのものに見なしつる」と、いと悔しく思ひゐたまへれど、かひなければ、その夜のことかけても言はず、忘れにけるにやと見ゆるまで、けざやかにもてなしたまへり。<BR>⏎
<P>⏎
103 など所々言ひ消ちて、いみじくものあはれと思ひたまへるけはひなど、いとようおぼえたまへるを、「心からよそのものに見なしつる」と、いと悔しく思ひゐたまへれど、かひなければ、その夜のことかけても言はず、忘れにけるにやと見ゆるまで、けざやかにもてなしたまへり。<BR>⏎
text48174 <A NAME="in17">[第七段 中君と薫、紅梅を見ながら和歌を詠み交す]</A><BR>104 
d1175<P>⏎
d1177<P>⏎
cd3:1178-180 「見る人も<A HREF="#no11">あらしにまよふ</A><A NAME="te11">山</A>里に<BR>⏎
  昔おぼゆる花の香ぞする」<BR>⏎
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106 「見る人も<A HREF="#no11">あらしにまよふ</A><A NAME="te11">山</A>里に<BR>  昔おぼゆる花の香ぞする」<BR>⏎
d1182<P>⏎
cd3:1183-185 「袖ふれし梅は変はらぬ匂ひにて<BR>⏎
  根ごめ移ろふ宿やことなる」<BR>⏎
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108 「袖ふれし梅は変はらぬ匂ひにて<BR>  根ごめ移ろふ宿やことなる」<BR>⏎
d1187<P>⏎
cd4:2188-191 「またもなほかやうにてなむ、何ごとも聞こえさせよかるべき」<BR>⏎
<P>⏎
 など聞こえおきて立ちたまひぬ。<BR>⏎
<P>⏎
110-111 「またもなほかやうにてなむ、何ごとも聞こえさせよかるべき」<BR>⏎
 など聞こえおきて立ちたまひぬ。<BR>⏎
d1193<P>⏎
text48194 <A NAME="in18">[第八段 薫、弁の尼と対面]</A><BR>113 
d1195<P>⏎
d1197<P>⏎
d1199<P>⏎
cd6:3200-205 とて容貌も変へてけるを、しひて召し出でて、いとあはれと見たまふ。例の、昔物語などせさせたまひて、<BR>⏎
<P>⏎
 「ここには、なほ時々は参り来べきを、いとたつきなく心細かるべきに、かくてものしたまはむは、いとあはれにうれしかるべきことになむ」<BR>⏎
<P>⏎
 などえも言ひやらず泣きたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
116-118 とて容貌も変へてけるを、しひて召し出でて、いとあはれと見たまふ。例の、昔物語などせさせたまひて、<BR>⏎
 「ここには、なほ時々は参り来べきを、いとたつきなく心細かるべきに、かくてものしたまはむは、いとあはれにうれしかるべきことになむ」<BR>⏎
 などえも言ひやらず泣きたまふ。<BR>⏎
d1207<P>⏎
cd15:7208-222 と思ひけることどもを愁へかけきこゆるも、かたくなしげなれど、いとよく言ひ慰めたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
 いたくねびにたれど、昔きよげなりける名残を削ぎ捨てたれば、額のほど、様変はれるに、すこし若くなりて、さる方に雅びかなり。<BR>⏎
<P>⏎
 「思ひわびては、などかかる様にもなしたてまつらざりけむ。それに延ぶるやうもやあらまし。さてもいかに心深く語らひきこえてあらまし」<BR>⏎
<P>⏎
 など一方ならずおぼえたまふに、この人さへうらやましければ、隠ろへたる几帳をすこし引きやりて、こまかにぞ語らひたまふ。げにむげに思ひほけたるさまながら、ものうち言ひたるけしき、用意、口惜しからず、ゆゑありける人の名残と見えたり。<BR>⏎
<P>⏎
 「さきに立つ涙の川に身を投げば<BR>⏎
  人におくれぬ命ならまし」<BR>⏎
<P>⏎
 とうちひそみ聞こゆ。<BR>⏎
<P>⏎
 「それもいと<A HREF="#k04">罪深かなる</A><A NAME="t04">こ</A>とにこそ。かの岸に到ること、などか。さしもあるまじきことにてさへ、深き底に沈み過ぐさむもあいなし。すべてなべてむなしく思ひとるべき世になむ」<BR>⏎
<P>⏎
120-126 と思ひけることどもを愁へかけきこゆるも、かたくなしげなれど、いとよく言ひ慰めたまふ。<BR>⏎
 いたくねびにたれど、昔きよげなりける名残を削ぎ捨てたれば、額のほど、様変はれるに、すこし若くなりて、さる方に雅びかなり。<BR>⏎
 「思ひわびては、などかかる様にもなしたてまつらざりけむ。それに延ぶるやうもやあらまし。さてもいかに心深く語らひきこえてあらまし」<BR>⏎
 など一方ならずおぼえたまふに、この人さへうらやましければ、隠ろへたる几帳をすこし引きやりて、こまかにぞ語らひたまふ。げにむげに思ひほけたるさまながら、ものうち言ひたるけしき、用意、口惜しからず、ゆゑありける人の名残と見えたり。<BR>⏎
 「さきに立つ涙の川に身を投げば<BR>  人におくれぬ命ならまし」<BR>⏎
 とうちひそみ聞こゆ。<BR>⏎
 「それもいと<A HREF="#k04">罪深かなる</A><A NAME="t04">こ</A>とにこそ。かの岸に到ること、などか。さしもあるまじきことにてさへ、深き底に沈み過ぐさむもあいなし。すべてなべてむなしく思ひとるべき世になむ」<BR>⏎
d1224<P>⏎
cd3:1225-227 「身を投げむ<A HREF="#no14">涙の川に沈み</A><A NAME="te14">て</A>も<BR>⏎
  恋しき瀬々に忘れしもせじ<BR>⏎
<P>⏎
128 「身を投げむ<A HREF="#no14">涙の川に沈み</A><A NAME="te14">て</A>も<BR>  恋しき瀬々に忘れしもせじ<BR>⏎
d1229<P>⏎
cd2:1230-231 と<A HREF="#no15">果てもなき心地</A><A NAME="te15">し</A>たまふ。<BR>⏎
<P>⏎
130 と<A HREF="#no15">果てもなき心地</A><A NAME="te15">し</A>たまふ。<BR>⏎
d1233<P>⏎
text48234 <A NAME="in19">[第九段 弁の尼、中君と語る]</A><BR>132 
d1235<P>⏎
d1237<P>⏎
cd3:1238-240 「人はみないそぎたつめる袖の浦に<BR>⏎
  一人藻塩を垂るる海人かな」<BR>⏎
<P>⏎
134 「人はみないそぎたつめる袖の浦に<BR>  一人藻塩を垂るる海人かな」<BR>⏎
d1242<P>⏎
cd3:1243-245 「塩垂るる海人の衣に異なれや<BR>⏎
  <A HREF="#no16">浮きたる波に濡るる</A><A NAME="te16">わ</A>が袖<BR>⏎
<P>⏎
136 「塩垂るる海人の衣に異なれや<BR>  <A HREF="#no16">浮きたる波に濡るる</A><A NAME="te16">わ</A>が袖<BR>⏎
d1247<P>⏎
cd4:2248-251 などいとなつかしく語らひたまふ。昔の人のもてつかひたまひしさるべき御調度どもなどは、皆この人にとどめおきたまひて、<BR>⏎
<P>⏎
 「かく人より深く思ひ沈みたまへるを見れば、前の世も、取り分きたる契りもやものしたまひけむと思ふさへ、睦ましくあはれになむ」<BR>⏎
<P>⏎
138-139 などいとなつかしく語らひたまふ。昔の人のもてつかひたまひしさるべき御調度どもなどは、皆この人にとどめおきたまひて、<BR>⏎
 「かく人より深く思ひ沈みたまへるを見れば、前の世も、取り分きたる契りもやものしたまひけむと思ふさへ、睦ましくあはれになむ」<BR>⏎
d1253<P>⏎
text48254 <H4>第二章 中君の物語 匂宮との京での結婚生活が始まる</H4>141 
text48255 <A NAME="in21">[第一段 中君、京へ向けて宇治を出発]</A><BR>142 
d1256<P>⏎
d1258<P>⏎
d1260<P>⏎
d1262<P>⏎
cd3:1263-265 「ありふればうれしき瀬にも逢ひけるを<BR>⏎
  <A HREF="#no17">身を宇治川に</A><A NAME="te17">投</A>げてましかば」<BR>⏎
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146 「ありふればうれしき瀬にも逢ひけるを<BR>  <A HREF="#no17">身を宇治川に</A><A NAME="te17">投</A>げてましかば」<BR>⏎
d1267<P>⏎
cd3:1268-270 「過ぎにしが恋しきことも忘れねど<BR>⏎
  今日はたまづもゆく心かな」<BR>⏎
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148 「過ぎにしが恋しきことも忘れねど<BR>  今日はたまづもゆく心かな」<BR>⏎
d1272<P>⏎
d1274<P>⏎
cd3:1275-277 「眺むれば<A HREF="#no18">山より出でて行く月</A><A NAME="te18">も</A><BR>⏎
  世に住みわびて山にこそ入れ」<BR>⏎
<P>⏎
151 「眺むれば<A HREF="#no18">山より出でて行く月</A><A NAME="te18">も</A><BR>  世に住みわびて山にこそ入れ」<BR>⏎
d1279<P>⏎
text48280 <A NAME="in22">[第二段 中君、京の二条院に到着]</A><BR>153 
d1281<P>⏎
d1283<P>⏎
d1285<P>⏎
d1287<P>⏎
cd5:2288-292 いみじう御心に入りてもてなしたまふなるを聞きたまふにも、かつはうれしきものから、さすがにわが心ながらをこがましく、胸うちつぶれて、「<A HREF="#no20">ものにもがなや</A><A NAME="te20">」</A>と、返す返す独りごたれて、<BR>⏎
<P>⏎
 「<A HREF="#no21">しなてるや鳰の湖に漕ぐ舟</A><A NAME="te21">の</A><BR>⏎
  まほならねどもあひ見しものを」<BR>⏎
<P>⏎
157-158 いみじう御心に入りてもてなしたまふなるを聞きたまふにも、かつはうれしきものから、さすがにわが心ながらをこがましく、胸うちつぶれて、「<A HREF="#no20">ものにもがなや</A><A NAME="te20">」</A>と、返す返す独りごたれて、<BR>⏎
 「<A HREF="#no21">しなてるや鳰の湖に漕ぐ舟</A><A NAME="te21">の</A><BR>  まほならねどもあひ見しものを」<BR>⏎
d1294<P>⏎
text48295 <A NAME="in23">[第三段 夕霧、六の君の裳着を行い、結婚を思案す]</A><BR>160 
d1296<P>⏎
d1298<P>⏎
d1300<P>⏎
d1302<P>⏎
d1304<P>⏎
d1306<P>⏎
d1308<P>⏎
cd4:2309-312 とすさまじげなるよし聞きたまひて、<BR>⏎
<P>⏎
 「いかでかこの君さへ、おほなおほな言出づることを、もの憂くはもてなすべきぞ」<BR>⏎
<P>⏎
167-168 とすさまじげなるよし聞きたまひて、<BR>⏎
 「いかでかこの君さへ、おほなおほな言出づることを、もの憂くはもてなすべきぞ」<BR>⏎
d1314<P>⏎
text48315 <A NAME="in24">[第四段 薫、桜の花盛りに二条院を訪ね中君と語る]</A><BR>170 
d1316<P>⏎
d1318<P>⏎
cd2:1319-320 ここがちにおはしましつきて、いとよう住み馴れたまひにたれば、「めやすのわざや」と見たてまつるものから、例の、いかにぞやおぼゆる心の添ひたるぞ、あやしきや。されど実の御心ばへは、いとあはれにうしろやすくぞ思ひきこえたまひける。<BR>⏎
<P>⏎
172 ここがちにおはしましつきて、いとよう住み馴れたまひにたれば、「めやすのわざや」と見たてまつるものから、例の、いかにぞやおぼゆる心の添ひたるぞ、あやしきや。されど実の御心ばへは、いとあはれにうしろやすくぞ思ひきこえたまひける。<BR>⏎
d1322<P>⏎
d1324<P>⏎
d1326<P>⏎
d1328<P>⏎
cd4:2329-332 「げにおはせましかば、おぼつかなからず行き返り、かたみに花の色、鳥の声をも、折につけつつ、すこし心ゆきて過ぐしつべかりける世を」<BR>⏎
<P>⏎
 など思し出づるにつけては、ひたぶるに絶え籠もりたまへりし住まひの心細さよりも、飽かず悲しう、口惜しきことぞ、いとどまさりける。<BR>⏎
<P>⏎
177-178 「げにおはせましかば、おぼつかなからず行き返り、かたみに花の色、鳥の声をも、折につけつつ、すこし心ゆきて過ぐしつべかりける世を」<BR>⏎
 など思し出づるにつけては、ひたぶるに絶え籠もりたまへりし住まひの心細さよりも、飽かず悲しう、口惜しきことぞ、いとどまさりける。<BR>⏎
text48333 <A NAME="in25">[第五段 匂宮、中君と薫に疑心を抱く]</A><BR>179 
d1334<P>⏎
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d1340<P>⏎
d1342<P>⏎
cd4:2343-346 「などかむげにさし放ちては、出だし据ゑたまへる。御あたりには、あまりあやしと思ふまで、うしろやすかりし心寄せを。わがためはをこがましきこともや、とおぼゆれど、さすがにむげに隔て多からむは、罪もこそ得れ。近やかにて、昔物語もうち語らひたまへかし」<BR>⏎
<P>⏎
 など聞こえたまふものから、<BR>⏎
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184-185 「などかむげにさし放ちては、出だし据ゑたまへる。御あたりには、あまりあやしと思ふまで、うしろやすかりし心寄せを。わがためはをこがましきこともや、とおぼゆれど、さすがにむげに隔て多からむは、罪もこそ得れ。近やかにて、昔物語もうち語らひたまへかし」<BR>⏎
 など聞こえたまふものから、<BR>⏎
d1348<P>⏎
cd3:1349-351 とうち返しのたまへば、一方ならずわづらはしけれど、わが御心にも、あはれ深く思ひ知られにし人の御心を、今しもおろかなるべきならねば、「かの人も思ひのたまふめるやうに、いにしへの御代はりとなずらへきこえて、かう思ひ知りけりと、見えたてまつるふしもあらばや」とは思せど、さすがにとかくやと、かたがたにやすからず聞こえなしたまへば、苦しう思されけり。<BR>⏎

<P>⏎
187 とうち返しのたまへば、一方ならずわづらはしけれど、わが御心にも、あはれ深く思ひ知られにし人の御心を、今しもおろかなるべきならねば、「かの人も思ひのたまふめるやうに、いにしへの御代はりとなずらへきこえて、かう思ひ知りけりと、見えたてまつるふしもあらばや」とは思せど、さすがにとかくやと、かたがたにやすからず聞こえなしたまへば、苦しう思されけり。<BR>⏎
text48352 <a name="in31">【出典】<BR>188 
c1353</a><A NAME="no1">出典1</A> 日の光薮し分かねば石の上古りにし里に花も咲きけり(古今集雑上-八七〇 布留今道)<A HREF="#te1">(戻)</A><BR>⏎
189<A NAME="no1">出典1</A> 日の光薮し分かねば石の上古りにし里に花も咲きけり(古今集雑上-八七〇 布留今道)<A HREF="#te1">(戻)</A><BR>⏎
cd2:1364-365<A NAME="no12">出典12</A> 憎さのみ益田の池のねぬなはは厭ふにはふるものにぞありける(源氏釈所引-⏎
出典未詳)あやしくも厭ふにはゆる心かないかにしてかは思ひやむべき(後撰集恋二-六〇八 読人しらず)<A HREF="#te12">(戻)</A><BR>⏎
200<A NAME="no12">出典12</A> 憎さのみ益田の池のねぬなはは厭ふにはふるものにぞありける(源氏釈所引-出典未詳)あやしくも厭ふにはゆる心かないかにしてかは思ひやむべき(後撰集恋二-六〇八 読人しらず)<A HREF="#te12">(戻)</A><BR>⏎
d1376
text48377<p> <a name="in32">【校訂】<BR>211 
c1379</a><A NAME="k01">校訂1</A> 残したりけり--のこし(し/+たり)けり<A HREF="#t01">(戻)</A><BR>⏎
213<A NAME="k01">校訂1</A> 残したりけり--のこし(し/+たり)けり<A HREF="#t01">(戻)</A><BR>⏎
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cd2:18-9<body background="wallppr063.gif">⏎
<p>First updated 9/20/1996(ver.1-1)<BR>⏎
8<BODY>⏎
cd4:210-13Last updated 6/21/2011(ver.2-2)<BR>⏎
渋谷栄一校訂(C)</p>⏎
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9-10<ADDRESS>Last updated 6/21/2011(ver.2-2)<BR>⏎
渋谷栄一校訂(C)</ADDRESS>⏎
d115<P>⏎
d117<P>⏎
d147<P>⏎
c185<LI>薫、中君に迫る---<A HREF="#in46">女、「さりやあな心憂」と思ふに、何事かは言はれむ</A>⏎
79<LI>薫、中君に迫る---<A HREF="#in46">女、「さりやあな心憂」と思ふに、何事かは言はれむ</A>⏎
c195<LI>薫と中君の、それぞれの苦悩---<A HREF="#in56">「かくて、なほいかでうしろやすく大人しき人にてやみなむ</A>⏎
89<LI>薫と中君の、それぞれの苦悩---<A HREF="#in56">「かくて、なほいかでうしろやすく大人しき人にてやみなむ</A>⏎
d1132<P>⏎
d1135<P>⏎
text49136 <H4>第一章 薫と匂宮の物語 女二の宮や六の君との結婚話</H4>128 
text49137 <A NAME="in11">[第一段 藤壺女御と女二の宮]</A><BR>129 
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d1140<P>⏎
d1142<P>⏎
d1144<P>⏎
text49145 <A NAME="in12">[第二段 藤壺女御の死去と女二の宮の将来]</A><BR>133 
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d1154<P>⏎
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d1158<P>⏎
cd2:1159-160 <A NAME="in13">[第三段 帝女二の宮を薫に降嫁させようと考える]</A><BR>⏎
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140 <A NAME="in13">[第三段 帝女二の宮を薫に降嫁させようと考える]</A><BR>⏎
d1162<P>⏎
d1164<P>⏎
cd4:2165-168 「しばしは、いでや飽かずもあるかな。さらでもおはしなまし、と聞こゆることどもありしかど、源中納言の、人よりことなるありさまにて、かくよろづを後見たてまつるにこそ、そのかみの御おぼえ衰へず、やむごとなきさまにてはながらへたまふめれ。さらずは、御心より外なる事どもも出で来て、おのづから人に軽められたまふこともやあらまし」<BR>⏎
<P>⏎
 など思し続けて、「ともかくも、御覧ずる世にや思ひ定めまし」と思し寄るには、やがてそのついでのままに、この中納言より他に、よろしかるべき人、またなかりけり。<BR>⏎
<P>⏎
143-144 「しばしは、いでや飽かずもあるかな。さらでもおはしなまし、と聞こゆることどもありしかど、源中納言の、人よりことなるありさまにて、かくよろづを後見たてまつるにこそ、そのかみの御おぼえ衰へず、やむごとなきさまにてはながらへたまふめれ。さらずは、御心より外なる事どもも出で来て、おのづから人に軽められたまふこともやあらまし」<BR>⏎
 など思し続けて、「ともかくも、御覧ずる世にや思ひ定めまし」と思し寄るには、やがてそのついでのままに、この中納言より他に、よろしかるべき人、またなかりけり。<BR>⏎
d1170<P>⏎
cd4:2171-174 など折々思し召しけり。<BR>⏎
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 <A NAME="in14">[第四段 帝女二の宮や薫と碁を打つ]</A><BR>⏎
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146-147 など折々思し召しけり。<BR>⏎
 <A NAME="in14">[第四段 帝女二の宮や薫と碁を打つ]</A><BR>⏎
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d1178<P>⏎
d1180<P>⏎
d1182<P>⏎
d1184<P>⏎
d1186<P>⏎
cd2:1187-188 と仰せ言ありて参りたまへり。げにかく取り分きて召し出づるもかひありて、遠くより薫れる匂ひよりはじめ、人に異なるさましたまへり。<BR>⏎
<P>⏎
154 と仰せ言ありて参りたまへり。げにかく取り分きて召し出づるもかひありて、遠くより薫れる匂ひよりはじめ、人に異なるさましたまへり。<BR>⏎
d1190<P>⏎
cd2:1191-192 とて碁盤召し出でて、御碁の敵に召し寄す。いつもかやうに、気近くならしまつはしたまふにならひにたれば、「さにこそは」と思ふに、<BR>⏎
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156 とて碁盤召し出でて、御碁の敵に召し寄す。いつもかやうに、気近くならしまつはしたまふにならひにたれば、「さにこそは」と思ふに、<BR>⏎
d1194<P>⏎
d1196<P>⏎
cd4:2197-200 さて打たせたまふに、三番に<A HREF="#k04">数</A><A NAME="t04">一</A>つ負けさせたまひぬ。<BR>⏎
<P>⏎
 「ねたきわざかな」とて、「まづ今日は、<A HREF="#no2">この花一枝許す</A><A NAME="te2">」</A><BR>⏎
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159-160 さて打たせたまふに、三番に<A HREF="#k04">数</A><A NAME="t04">一</A>つ負けさせたまひぬ。<BR>⏎
 「ねたきわざかな」とて、「まづ今日は、<A HREF="#no2">この花一枝許す</A><A NAME="te2">」</A><BR>⏎
d1202<P>⏎
cd3:1203-205 「世の常の垣根に匂ふ花ならば<BR>⏎
  心のままに折りて見ましを」<BR>⏎
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162 「世の常の垣根に匂ふ花ならば<BR>  心のままに折りて見ましを」<BR>⏎
d1207<P>⏎
cd3:1208-210 「霜にあへず枯れにし園の菊なれど<BR>⏎
  残りの色はあせずもあるかな」<BR>⏎
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164 「霜にあへず枯れにし園の菊なれど<BR>  残りの色はあせずもあるかな」<BR>⏎
d1212<P>⏎
cd4:2213-216 かやうに折々ほのめかさせたまふ御けしきを、人伝てならず承りながら、例の心の癖なれば、急がしくしもおぼえず。<BR>⏎
<P>⏎
 「いでや本意にもあらず。さまざまにいとほしき人びとの御ことどもをも、よく聞き過ぐしつつ年経ぬるを、今さらに聖のものの、世に帰り出でむ心地すべきこと」<BR>⏎
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166-167 かやうに折々ほのめかさせたまふ御けしきを、人伝てならず承りながら、例の心の癖なれば、急がしくしもおぼえず。<BR>⏎
 「いでや本意にもあらず。さまざまにいとほしき人びとの御ことどもをも、よく聞き過ぐしつつ年経ぬるを、今さらに聖のものの、世に帰り出でむ心地すべきこと」<BR>⏎
d1218<P>⏎
d1220<P>⏎
text49221 <A NAME="in15">[第五段 夕霧、匂宮を六の君の婿にと願う]</A><BR>170 
d1222<P>⏎
d1224<P>⏎
d1226<P>⏎
d1228<P>⏎
cd2:1229-230 「さはれなほざりの好きにはありとも、さるべきにて、御心とまるやうもなどかなからむ。<A HREF="#no3">水漏るまじく</A><A NAME="te3">思</A>ひ定めむとても、なほなほしき際に下らむはた、いと人悪ろく、飽かぬ心地すべし」<BR>⏎
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174 「さはれなほざりの好きにはありとも、さるべきにて、御心とまるやうもなどかなからむ。<A HREF="#no3">水漏るまじく</A><A NAME="te3">思</A>ひ定めむとても、なほなほしき際に下らむはた、いと人悪ろく、飽かぬ心地すべし」<BR>⏎
d1232<P>⏎
cd4:2233-236 「女子うしろめたげなる世の末にて、帝だに婿求めたまふ世に、ましてただ人の盛り過ぎむもあいなし」<BR>⏎
<P>⏎
 など誹らはしげにのたまひて、中宮をもまめやかに恨み申したまふこと、たび重なれば、聞こし召しわづらひて、<BR>⏎
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176-177 「女子うしろめたげなる世の末にて、帝だに婿求めたまふ世に、ましてただ人の盛り過ぎむもあいなし」<BR>⏎
 など誹らはしげにのたまひて、中宮をもまめやかに恨み申したまふこと、たび重なれば、聞こし召しわづらひて、<BR>⏎
d1238<P>⏎
cd8:4239-246 主上の、御代も末になり行くとのみ思しのたまふめるを、ただ人こそ、ひと事に定まりぬれば、また心を分けむことも難げなめれ。それだに、かの大臣のまめだちながら、こなたかなた羨みなくもてなしてものしたまはずやはある。ましてこれは、思ひおきてきこゆることも叶はば、あまたもさぶらはむになどかあらむ」<BR>⏎
<P>⏎
 など<A HREF="#k08">例ならず</A><A NAME="t08">言</A>続けて、あるべかしく聞こえさせたまふを、<BR>⏎
<P>⏎
 「わが御心にも、もとよりもて離れて、はた思さぬことなれば、あながちには、などてかはあるまじきさまにも聞こえさせたまはむ。ただいとことうるはしげなるあたりにとり籠められて、心やすくならひたまへるありさまの所狭からむことを、なま苦しく思すにもの憂きなれど、げにこの大臣に、あまり怨ぜられ果てむもあいなからむ」<BR>⏎
<P>⏎
 などやうやう思し弱りにたるべし。あだなる御心なれば、かの按察使大納言の、紅梅の御方をも、なほ思し絶えず、花紅葉につけてもののたまひわたりつつ、いづれをもゆかしくは思しけり。されどその年は変はりぬ。<BR>⏎
<P>⏎
179-182 主上の、御代も末になり行くとのみ思しのたまふめるを、ただ人こそ、ひと事に定まりぬれば、また心を分けむことも難げなめれ。それだに、かの大臣のまめだちながら、こなたかなた羨みなくもてなしてものしたまはずやはある。ましてこれは、思ひおきてきこゆることも叶はば、あまたもさぶらはむになどかあらむ」<BR>⏎
 など<A HREF="#k08">例ならず</A><A NAME="t08">言</A>続けて、あるべかしく聞こえさせたまふを、<BR>⏎
 「わが御心にも、もとよりもて離れて、はた思さぬことなれば、あながちには、などてかはあるまじきさまにも聞こえさせたまはむ。ただいとことうるはしげなるあたりにとり籠められて、心やすくならひたまへるありさまの所狭からむことを、なま苦しく思すにもの憂きなれど、げにこの大臣に、あまり怨ぜられ果てむもあいなからむ」<BR>⏎
 などやうやう思し弱りにたるべし。あだなる御心なれば、かの按察使大納言の、紅梅の御方をも、なほ思し絶えず、花紅葉につけてもののたまひわたりつつ、いづれをもゆかしくは思しけり。されどその年は変はりぬ。<BR>⏎
text49247 <H4>第二章 中君の物語 中君の不安な思いと薫の同情</H4>183 
text49248 <A NAME="in21">[第一段 匂宮の婚約と中君の不安な心境]</A><BR>184 
d1249<P>⏎
cd2:1250-251 女二の宮も、御服果てぬれば、「いとど何事にか憚りたまはむ。さも聞こえ出でば」と思し召したる御けしきなど、告げきこゆる人びともあるを、「あまり知らず顔ならむも、ひがひがしうなめげなり」と思し起こして、ほのめかしまゐらせたまふ折々もあるに、「はしたなきやうは、などてかはあらむ。そのほどに思し定めたなり」と伝てにも聞く、みづから御けしきをも見れど、心の内には、なほ飽かず過ぎたまひにし人の悲しさのみ、忘るべき世なくおぼゆれば、「うたてかく契り深くものしたまひける人の、などてかは、さすがに疎くては過ぎにけむ」と心得がたく思ひ出でらる。<BR>⏎
<P>⏎
185 女二の宮も、御服果てぬれば、「いとど何事にか憚りたまはむ。さも聞こえ出でば」と思し召したる御けしきなど、告げきこゆる人びともあるを、「あまり知らず顔ならむも、ひがひがしうなめげなり」と思し起こして、ほのめかしまゐらせたまふ折々もあるに、「はしたなきやうは、などてかはあらむ。そのほどに思し定めたなり」と伝てにも聞く、みづから御けしきをも見れど、心の内には、なほ飽かず過ぎたまひにし人の悲しさのみ、忘るべき世なくおぼゆれば、「うたてかく契り深くものしたまひける人の、などてかは、さすがに疎くては過ぎにけむ」と心得がたく思ひ出でらる。<BR>⏎
d1253<P>⏎
d1255<P>⏎
cd2:1256-257 「さればよ。いかでかは、数ならぬありさまなめれば、かならず人笑へに憂きこと出で来むものぞ、とは<A HREF="#k10">思ふ思ふ</A><A NAME="t10">過</A>ごしつる世ぞかし。あだなる御心と聞きわたりしを、頼もしげなく思ひながら、目に近くては、ことにつらげなること見えず、あはれに深き契りをのみしたまへるを、にはかに変はりたまはむほど、いかがはやすき心地はすべからむ。ただ人の仲らひなどのやうに、いとしも名残なくなどはあらずとも、いかにやすげなきこと多からむ。なほいと憂き身なめれば、つひには、山住みに帰るべきなめり」<BR>⏎
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188 「さればよ。いかでかは、数ならぬありさまなめれば、かならず人笑へに憂きこと出で来むものぞ、とは<A HREF="#k10">思ふ思ふ</A><A NAME="t10">過</A>ごしつる世ぞかし。あだなる御心と聞きわたりしを、頼もしげなく思ひながら、目に近くては、ことにつらげなること見えず、あはれに深き契りをのみしたまへるを、にはかに変はりたまはむほど、いかがはやすき心地はすべからむ。ただ人の仲らひなどのやうに、いとしも名残なくなどはあらずとも、いかにやすげなきこと多からむ。なほいと憂き身なめれば、つひには、山住みに帰るべきなめり」<BR>⏎
d1259<P>⏎
d1261<P>⏎
cd2:1262-263 それをいと深く、いかでさはあらじ、と思ひ入りたまひて、とざまかうざまに、もて離れむことを思して、容貌をも変へてむとしたまひしぞかし。かならずさるさまにてぞおはせまし。<BR>⏎
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191 それをいと深く、いかでさはあらじ、と思ひ入りたまひて、とざまかうざまに、もて離れむことを思して、容貌をも変へてむとしたまひしぞかし。かならずさるさまにてぞおはせまし。<BR>⏎
d1265<P>⏎
d1267<P>⏎
text49268 <A NAME="in22">[第二段 中君、匂宮の子を懐妊]</A><BR>194 
d1269<P>⏎
d1271<P>⏎
cd6:3272-277 さるはこの五月ばかりより、例ならぬさまに悩ましくしたまふこともありけり。こちたく苦しがりなどはしたまはねど、常よりももの参ることいとどなく、臥してのみおはするを、まださやうなる人のありさま、よくも見知りたまはねば、「ただ暑きころなれば、かくおはするなめり」とぞ思したる。<BR>⏎
<P>⏎
 さすがにあやしと思しとがむることもありて、「もしいかなるぞ。さる人こそ、かやうには悩むなれ」など、のたまふ折もあれど、いと恥づかしくしたまひて、さりげなくのみもてなしたまへるを、さし過ぎ聞こえ出づる人もなければ、たしかにもえ知りたまはず。<BR>⏎
<P>⏎
 八月になりぬれば、その日など、他よりぞ伝へ聞きたまふ。宮は、隔てむとにはあらねど、言ひ出でむほど心苦しくいとほしく思されて、さものたまはぬを、女君は、それさへ心憂くおぼえたまふ。忍びたることにもあらず、世の中なべて知りたることを、そのほどなどだにのたまはぬことと、いかが恨めしからざらむ。<BR>⏎
<P>⏎
196-198 さるはこの五月ばかりより、例ならぬさまに悩ましくしたまふこともありけり。こちたく苦しがりなどはしたまはねど、常よりももの参ることいとどなく、臥してのみおはするを、まださやうなる人のありさま、よくも見知りたまはねば、「ただ暑きころなれば、かくおはするなめり」とぞ思したる。<BR>⏎
 さすがにあやしと思しとがむることもありて、「もしいかなるぞ。さる人こそ、かやうには悩むなれ」など、のたまふ折もあれど、いと恥づかしくしたまひて、さりげなくのみもてなしたまへるを、さし過ぎ聞こえ出づる人もなければ、たしかにもえ知りたまはず。<BR>⏎
 八月になりぬれば、その日など、他よりぞ伝へ聞きたまふ。宮は、隔てむとにはあらねど、言ひ出でむほど心苦しくいとほしく思されて、さものたまはぬを、女君は、それさへ心憂くおぼえたまふ。忍びたることにもあらず、世の中なべて知りたることを、そのほどなどだにのたまはぬことと、いかが恨めしからざらむ。<BR>⏎
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text49280 <A NAME="in23">[第三段 薫、中君に同情しつつ恋慕す]</A><BR>200 
d1281<P>⏎
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cd6:3288-293 と憚りつつ、「ただいかにして、すこしもあはれと思はれて、うちとけたまへらむけしきをも見む」と、行く先のあらましごとのみ思ひ続けしに、人は同じ心にもあらずもてなして、さすがに、一方にもえさし放つまじく思ひたまへる慰めに、同じ身ぞと言ひなして、本意ならぬ方におもむけたまひしが、ねたく恨めしかりしかば、「まづその心おきてを違へむとて、急ぎせしわざぞかし」など、あながちに女々しくものぐるほしく率て歩き、たばかりきこえしほど思ひ出づるも、「いとけしからざりける心かな」と、返す返すぞ悔しき。<BR>⏎
<P>⏎
 「宮も、さりとも、そのほどのありさま思ひ出でたまはば、わが聞かむところをもすこしは憚りたまはじや」と思ふに、「いでや今は、その折のことなど、かけてものたまひ出でざめりかし。なほあだなる方に進み、移りやすなる人は、女のためのみにもあらず、頼もしげなく軽々しき事もありぬべきなめりかし」<BR>⏎
<P>⏎
 など憎く思ひきこえたまふ。わがまことにあまり一方にしみたる心ならひに、人はいとこよなくもどかしく見ゆるなるべし。<BR>⏎
<P>⏎
204-206 と憚りつつ、「ただいかにして、すこしもあはれと思はれて、うちとけたまへらむけしきをも見む」と、行く先のあらましごとのみ思ひ続けしに、人は同じ心にもあらずもてなして、さすがに、一方にもえさし放つまじく思ひたまへる慰めに、同じ身ぞと言ひなして、本意ならぬ方におもむけたまひしが、ねたく恨めしかりしかば、「まづその心おきてを違へむとて、急ぎせしわざぞかし」など、あながちに女々しくものぐるほしく率て歩き、たばかりきこえしほど思ひ出づるも、「いとけしからざりける心かな」と、返す返すぞ悔しき。<BR>⏎
 「宮も、さりとも、そのほどのありさま思ひ出でたまはば、わが聞かむところをもすこしは憚りたまはじや」と思ふに、「いでや今は、その折のことなど、かけてものたまひ出でざめりかし。なほあだなる方に進み、移りやすなる人は、女のためのみにもあらず、頼もしげなく軽々しき事もありぬべきなめりかし」<BR>⏎
 など憎く思ひきこえたまふ。わがまことにあまり一方にしみたる心ならひに、人はいとこよなくもどかしく見ゆるなるべし。<BR>⏎
text49294 <A NAME="in24">[第四段 薫、亡き大君を追憶す]</A><BR>207 
d1295<P>⏎
cd2:1296-297 「かの人をむなしく見なしきこえたまうてし後、思ふには、帝の御女を賜はむと思ほしおきつるも、うれしくもあらず、この君を見ましかばとおぼゆる心の、月日に添へてまさるも、ただかの御ゆかりと思ふに、思ひ離れがたきぞかし。<BR>⏎
<P>⏎
208 「かの人をむなしく見なしきこえたまうてし後、思ふには、帝の御女を賜はむと思ほしおきつるも、うれしくもあらず、この君を見ましかばとおぼゆる心の、月日に添へてまさるも、ただかの御ゆかりと思ふに、思ひ離れがたきぞかし。<BR>⏎
d1299<P>⏎
cd2:1300-301 などつくづくと人やりならぬ独り寝したまふ夜な夜なは、はかなき風の音にも目のみ覚めつつ、来し方行く先、人の上さへ、あぢきなき世を思ひめぐらしたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
210 などつくづくと人やりならぬ独り寝したまふ夜な夜なは、はかなき風の音にも目のみ覚めつつ、来し方行く先、人の上さへ、あぢきなき世を思ひめぐらしたまふ。<BR>⏎
d1303<P>⏎
cd4:2304-307 さるはかの君たちのほどに劣るまじき際の人びとも、時世に<A HREF="#k11">したがひつつ</A><A NAME="t11">衰</A>へて、心細げなる住まひするなどを、尋ね取りつつあらせなど、いと多かれど、「今はと世を逃れ背き離れむ時、この人こそと、取り立てて、<A HREF="#no5">心とまるほだし</A><A NAME="te5">に</A>なるばかりなることはなくて過ぐしてむ」と思ふ心深かりしを、「いとさも悪ろく、わが心ながら、ねぢけてもあるかな」<BR>⏎
<P>⏎
 など常よりも、やがて<A HREF="#k12">まどろまず</A><A NAME="t12">明</A>かしたまへる朝に、霧の籬より、花の色々おもしろく見えわたれる中に、<A HREF="#no6">朝顔のはかなげにて</A><A NAME="te6">混</A>じりたるを、なほことに目とまる心地したまふ。「<A HREF="#no7">明くる間咲きて</A><A NAME="te7">」</A>とか、常なき世にもなずらふるが、心苦しきなめりかし。<BR>⏎
<P>⏎
212-213 さるはかの君たちのほどに劣るまじき際の人びとも、時世に<A HREF="#k11">したがひつつ</A><A NAME="t11">衰</A>へて、心細げなる住まひするなどを、尋ね取りつつあらせなど、いと多かれど、「今はと世を逃れ背き離れむ時、この人こそと、取り立てて、<A HREF="#no5">心とまるほだし</A><A NAME="te5">に</A>なるばかりなることはなくて過ぐしてむ」と思ふ心深かりしを、「いとさも悪ろく、わが心ながら、ねぢけてもあるかな」<BR>⏎
 など常よりも、やがて<A HREF="#k12">まどろまず</A><A NAME="t12">明</A>かしたまへる朝に、霧の籬より、花の色々おもしろく見えわたれる中に、<A HREF="#no6">朝顔のはかなげにて</A><A NAME="te6">混</A>じりたるを、なほことに目とまる心地したまふ。「<A HREF="#no7">明くる間咲きて</A><A NAME="te7">」</A>とか、常なき世にもなずらふるが、心苦しきなめりかし。<BR>⏎
d1309<P>⏎
text49310 <A NAME="in25">[第五段 薫、二条院の中君を訪問]</A><BR>215 
d1311<P>⏎
d1313<P>⏎
d1315<P>⏎
d1317<P>⏎
d1319<P>⏎
d1321<P>⏎
cd2:1322-323 「さはれかの対の御方の悩みたまふなる、訪らひきこえむ。今日は内裏に参るべき日なれば、日たけぬさきに」<BR>⏎
<P>⏎
221 「さはれかの対の御方の悩みたまふなる、訪らひきこえむ。今日は内裏に参るべき日なれば、日たけぬさきに」<BR>⏎
d1325<P>⏎
cd2:1326-327 「今朝の間の色にや賞でむ置く露の<BR>⏎
  消えぬにかかる花と見る見る<BR>⏎
223 「今朝の間の色にや賞でむ置く露の<BR>  消えぬにかかる花と見る見る<BR>⏎
d1329<P>⏎
d1331<P>⏎
d1333<P>⏎
d1335<P>⏎
d1337<P>⏎
d1339<P>⏎
d1341<P>⏎
cd4:2342-345 「なほめざましくはおはすかし。心をあまりをさめたまへるぞ憎き」<BR>⏎
<P>⏎
 などあいなく、若き人びとは、聞こえあへり。<BR>⏎
<P>⏎
231-232 「なほめざましくはおはすかし。心をあまりをさめたまへるぞ憎き」<BR>⏎
 などあいなく、若き人びとは、聞こえあへり。<BR>⏎
d1347<P>⏎
d1349<P>⏎
d1351<P>⏎
cd2:1352-353 「さらばいかがはべるべからむ」<BR>⏎
<P>⏎
236 「さらばいかがはべるべからむ」<BR>⏎
d1355<P>⏎
cd8:4356-363 「北面などやうの隠れぞかし。かかる古人などのさぶらはむにことわりなる休み所は。それもまたただ御心なれば、愁へ<A HREF="#k14">きこゆべき</A><A NAME="t14">に</A>もあらず」<BR>⏎
<P>⏎
 とて長押に寄りかかりておはすれば、例の、人びと、<BR>⏎
<P>⏎
 「なほあしこもとに」<BR>⏎
<P>⏎
 などそそのかしきこゆ。<BR>⏎
<P>⏎
238-241 「北面などやうの隠れぞかし。かかる古人などのさぶらはむにことわりなる休み所は。それもまたただ御心なれば、愁へ<A HREF="#k14">きこゆべき</A><A NAME="t14">に</A>もあらず」<BR>⏎
 とて長押に寄りかかりておはすれば、例の、人びと、<BR>⏎
 「なほあしこもとに」<BR>⏎
 などそそのかしきこゆ。<BR>⏎
text49364 <A NAME="in26">[第六段 薫、中君と語らう]</A><BR>242 
d1365<P>⏎
cd2:1366-367 もとよりも、けはひはやりかに男々しくなどはものしたまはぬ人柄なるを、いよいよしめやかにもてなしをさめたまへれば、今はみづから聞こえたまふことも、やうやううたてつつましかりし方、すこしづつ薄らぎて、面馴れたまひにたり。<BR>⏎
<P>⏎
243 もとよりも、けはひはやりかに男々しくなどはものしたまはぬ人柄なるを、いよいよしめやかにもてなしをさめたまへれば、今はみづから聞こえたまふことも、やうやううたてつつましかりし方、すこしづつ薄らぎて、面馴れたまひにたり。<BR>⏎
d1369<P>⏎
cd4:2370-373 声なども、わざと似たまへりともおぼえざりしかど、あやしきまでただそれとのみおぼゆるに、人目見苦しかるまじくは、簾もひき上げてさし向かひきこえまほしく、うち悩みたまへらむ容貌ゆかしくおぼえたまふも、「なほ世の中にもの思はぬ人は、えあるまじきわざにやあらむ」とぞ思ひ知られたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
 「人びとしくきらきらしき方にははべらずとも、心に思ふことあり、嘆かしく身をもて悩むさまになどはなくて過ぐしつべきこの世と、みづから思ひたまへし、心から、悲しきことも、をこがましく悔しきもの思ひをも、かたがたにやすからず思ひはべるこそ、いとあいなけれ。官位などいひて、大事にすめる、ことわりの愁へにつけて嘆き思ふ人よりも、これや今すこし罪の深さはまさるらむ」<BR>⏎
<P>⏎
245-246 声なども、わざと似たまへりともおぼえざりしかど、あやしきまでただそれとのみおぼゆるに、人目見苦しかるまじくは、簾もひき上げてさし向かひきこえまほしく、うち悩みたまへらむ容貌ゆかしくおぼえたまふも、「なほ世の中にもの思はぬ人は、えあるまじきわざにやあらむ」とぞ思ひ知られたまふ。<BR>⏎
 「人びとしくきらきらしき方にははべらずとも、心に思ふことあり、嘆かしく身をもて悩むさまになどはなくて過ぐしつべきこの世と、みづから思ひたまへし、心から、悲しきことも、をこがましく悔しきもの思ひをも、かたがたにやすからず思ひはべるこそ、いとあいなけれ。官位などいひて、大事にすめる、ことわりの愁へにつけて嘆き思ふ人よりも、これや今すこし罪の深さはまさるらむ」<BR>⏎
d1375<P>⏎
cd3:1376-378 「よそへてぞ見るべかりける白露の<BR>⏎
  契りかおきし朝顔の花」<BR>⏎
<P>⏎
248 「よそへてぞ見るべかりける白露の<BR>  契りかおきし朝顔の花」<BR>⏎
d1380<P>⏎
cd2:1381-382 「消えぬまに枯れぬる花のはかなさに<BR>⏎
  おくるる露はなほぞまされる<BR>⏎
250 「消えぬまに枯れぬる花のはかなさに<BR>  おくるる露はなほぞまされる<BR>⏎
d1384<P>⏎
cd2:1385-386 といと忍びて言も続かず、つつましげに言ひ消ちたまへるほど、「なほいとよく似たまへるものかな」と思ふにも、まづぞ悲しき。<BR>⏎
<P>⏎
252 といと忍びて言も続かず、つつましげに言ひ消ちたまへるほど、「なほいとよく似たまへるものかな」と思ふにも、まづぞ悲しき。<BR>⏎
text49387 <A NAME="in27">[第七段 薫、源氏の死を語り、亡き大君を追憶]</A><BR>253 
d1388<P>⏎
d1390<P>⏎
cd2:1391-392 故院の亡せたまひて後、二三年ばかりの末に、世を背きたまひし嵯峨の院にも、六条の院にも、さしのぞく人の、心をさめむ方なくなむはべりける。木草の色につけても、涙にくれてのみなむ帰りはべりける。かの御あたりの人は、上下心浅き人なくこそはべりけれ。<BR>⏎
<P>⏎
255 故院の亡せたまひて後、二三年ばかりの末に、世を背きたまひし嵯峨の院にも、六条の院にも、さしのぞく人の、心をさめむ方なくなむはべりける。木草の色につけても、涙にくれてのみなむ帰りはべりける。かの御あたりの人は、上下心浅き人なくこそはべりけれ。<BR>⏎
d1394<P>⏎
cd8:4395-402 さてなかなか皆荒らし果て、忘れ草生ほして後なむ、この右の大臣も渡り住み、宮たちなども方々ものしたまへば、昔に返りたるやうにはべめる。さる世に、たぐひなき悲しさと見たまへしことも、年月経れば、思ひ覚ます折の出で来るにこそは、と見はべるに、げに限りあるわざなりけり、となむ見えはべる。<BR>⏎
<P>⏎
 かくは聞こえさせながらも、かのいにしへの悲しさは、まだいはけなくもはべりけるほどにて、いとさしもしまぬにやはべりけむ。なほこの近き夢こそ、覚ますべき方なく思ひたまへらるるは、同じこと、世の常なき悲しびなれど、罪深き方はまさりてはべるにやと、それさへなむ心憂くはべる」<BR>⏎
<P>⏎
 とて泣きたまへるほど、いと心深げなり。<BR>⏎
<P>⏎
 昔の人を、いとしも思ひきこえざらむ人だに、この人の思ひたまへるけしきを見むには、すずろにただにもあるまじきを、まして我もものを心細く思ひ乱れたまふにつけては、いとど常よりも、面影に恋しく悲しく思ひきこえたまふ心なれば、今すこしもよほされて、ものもえ聞こえたまはず、ためらひかねたまへるけはひを、かたみにいとあはれと思ひ交はしたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
257-260 さてなかなか皆荒らし果て、忘れ草生ほして後なむ、この右の大臣も渡り住み、宮たちなども方々ものしたまへば、昔に返りたるやうにはべめる。さる世に、たぐひなき悲しさと見たまへしことも、年月経れば、思ひ覚ます折の出で来るにこそは、と見はべるに、げに限りあるわざなりけり、となむ見えはべる。<BR>⏎
 かくは聞こえさせながらも、かのいにしへの悲しさは、まだいはけなくもはべりけるほどにて、いとさしもしまぬにやはべりけむ。なほこの近き夢こそ、覚ますべき方なく思ひたまへらるるは、同じこと、世の常なき悲しびなれど、罪深き方はまさりてはべるにやと、それさへなむ心憂くはべる」<BR>⏎
 とて泣きたまへるほど、いと心深げなり。<BR>⏎
 昔の人を、いとしも思ひきこえざらむ人だに、この人の思ひたまへるけしきを見むには、すずろにただにもあるまじきを、まして我もものを心細く思ひ乱れたまふにつけては、いとど常よりも、面影に恋しく悲しく思ひきこえたまふ心なれば、今すこしもよほされて、ものもえ聞こえたまはず、ためらひかねたまへるけはひを、かたみにいとあはれと思ひ交はしたまふ。<BR>⏎
text49403 <A NAME="in28">[第八段 薫と中君の故里の宇治を思う]</A><BR>261 
d1404<P>⏎
d1406<P>⏎
d1408<P>⏎
d1410<P>⏎
d1412<P>⏎
d1414<P>⏎
cd4:2415-418 などまめだちたることどもを聞こえたまふ。経仏など、この上も供養じたまふべきなめり。かやうなるついでにことづけて、やをら籠もり<A HREF="#k18">ゐなばや、など</A><A NAME="t18">お</A>もむけたまへるけしきなれば、<BR>⏎
<P>⏎
 「いとあるまじきことなり。なほ何事も心のどかに思しなせ」<BR>⏎
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267-268 などまめだちたることどもを聞こえたまふ。経仏など、この上も供養じたまふべきなめり。かやうなるついでにことづけて、やをら籠もり<A HREF="#k18">ゐなばや、など</A><A NAME="t18">お</A>もむけたまへるけしきなれば、<BR>⏎
 「いとあるまじきことなり。なほ何事も心のどかに思しなせ」<BR>⏎
d1420<P>⏎
text49421 <A NAME="in29">[第九段 薫、二条院を退出して帰宅]</A><BR>270 
d1422<P>⏎
d1424<P>⏎
d1426<P>⏎
cd2:1427-428 とて立ちたまひぬ。「宮のなどかなき折には来つらむ」と思ひたまひぬべき御心なるもわづらはしくて、侍の別当なる右京大夫召して、<BR>⏎
<P>⏎
273 とて立ちたまひぬ。「宮のなどかなき折には来つらむ」と思ひたまひぬべき御心なるもわづらはしくて、侍の別当なる右京大夫召して、<BR>⏎
d1430<P>⏎
d1432<P>⏎
d1434<P>⏎
d1436<P>⏎
cd6:3437-442 「さらば夕つ方も」<BR>⏎
<P>⏎
 とて出でたまひぬ。<BR>⏎
<P>⏎
 なほこの御けはひありさまを聞きたまふたびごとに、などて昔の人の御心おきてをもて違へて、思ひ隈なかりけむと、悔ゆる心のみまさりて、心にかかりたるもむつかしく、「なぞや人やりならぬ心ならむ」と思ひ返したまふ。そのままにまだ精進にて、いとどただ行なひをのみしたまひつつ、明かし暮らしたまふ。<BR>⏎
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278-280 「さらば夕つ方も」<BR>⏎
 とて出でたまひぬ。<BR>⏎
 なほこの御けはひありさまを聞きたまふたびごとに、などて昔の人の御心おきてをもて違へて、思ひ隈なかりけむと、悔ゆる心のみまさりて、心にかかりたるもむつかしく、「なぞや人やりならぬ心ならむ」と思ひ返したまふ。そのままにまだ精進にて、いとどただ行なひをのみしたまひつつ、明かし暮らしたまふ。<BR>⏎
d1444<P>⏎
d1446<P>⏎
d1448<P>⏎
text49449 <H4>第三章 中君の物語 匂宮と六の君の婚儀</H4>284 
text49450 <A NAME="in31">[第一段 匂宮と六の君の婚儀]</A><BR>285 
d1451<P>⏎
d1453<P>⏎
d1455<P>⏎
cd7:3456-462 と人申す。思す人持たまへればと、心やましけれど、今宵過ぎむも人笑へなるべければ、御子の頭中将して聞こえたまへり。<BR>⏎
<P>⏎
 「<A HREF="#no14">大空の月だに宿る</A><A NAME="te14">わ</A>が宿に<BR>⏎
  待つ宵過ぎて見えぬ君かな」<BR>⏎
<P>⏎
 宮は「なかなか今なむとも見えじ、心苦し」と思して、内裏におはしけるを御文聞こえたまへりけり。御返りやいかがありけむ、なほいとあはれに思されければ、忍びて渡りたまへりけるなりけり。らうたげなるありさまを、見捨てて出づべき心地もせず、いとほしければ、よろづに契り慰めて、もろともに月を眺めておはするほどなりけり。<BR>⏎
<P>⏎
288-290 と人申す。思す人持たまへればと、心やましけれど、今宵過ぎむも人笑へなるべければ、御子の頭中将して聞こえたまへり。<BR>⏎
 「<A HREF="#no14">大空の月だに宿る</A><A NAME="te14">わ</A>が宿に<BR>  待つ宵過ぎて見えぬ君かな」<BR>⏎
 宮は「なかなか今なむとも見えじ、心苦し」と思して、内裏におはしけるを御文聞こえたまへりけり。御返りやいかがありけむ、なほいとあはれに思されければ、忍びて渡りたまへりけるなりけり。らうたげなるありさまを、見捨てて出づべき心地もせず、いとほしければ、よろづに契り慰めて、もろともに月を眺めておはするほどなりけり。<BR>⏎
d1464<P>⏎
d1466<P>⏎
d1468<P>⏎
d1470<P>⏎
text49471 <A NAME="in32">[第二段 中君の不安な心境]</A><BR>295 
d1472<P>⏎
d1474<P>⏎
d1476<P>⏎
d1478<P>⏎
cd3:1479-481 「山里の松の蔭にもかくばかり<BR>⏎
  身にしむ秋の風はなかりき」<BR>⏎
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299 「山里の松の蔭にもかくばかり<BR>  身にしむ秋の風はなかりき」<BR>⏎
d1483<P>⏎
d1485<P>⏎
cd2:1486-487 「今は入らせたまひね。<A HREF="#no18">月見るは忌み</A><A NAME="te18">は</A>べるものを。あさましく、はかなき御くだものをだに御覧じ入れねば、いかにならせたまはむ」と。「あな見苦しや。ゆゆしう思ひ出でらるることもはべるを、いとこそわりなく」<BR>⏎
<P>⏎
302 「今は入らせたまひね。<A HREF="#no18">月見るは忌み</A><A NAME="te18">は</A>べるものを。あさましく、はかなき御くだものをだに御覧じ入れねば、いかにならせたまはむ」と。「あな見苦しや。ゆゆしう思ひ出でらるることもはべるを、いとこそわりなく」<BR>⏎
d1489<P>⏎
cd4:2490-493 「いでこの御ことよ。さりとも、かうておろかにはよもなり果てさせたまはじ。さいへど、もとの心ざし深く思ひそめつる仲は、名残なからぬものぞ」<BR>⏎
<P>⏎
 など言ひあへるも、さまざまに聞きにくく、「今は、いかにもいかにもかけて言はざらなむ、ただにこそ見め」と思さるるは、人には言はせじ、我一人怨みきこえむとにやあらむ。「いでや中納言殿の、さばかりあはれなる御心深さを」など、そのかみの人びとは言ひあはせて、「人の御宿世のあやしかりけることよ」と言ひあへり。<BR>⏎
<P>⏎
304-305 「いでこの御ことよ。さりとも、かうておろかにはよもなり果てさせたまはじ。さいへど、もとの心ざし深く思ひそめつる仲は、名残なからぬものぞ」<BR>⏎
 など言ひあへるも、さまざまに聞きにくく、「今は、いかにもいかにもかけて言はざらなむ、ただにこそ見め」と思さるるは、人には言はせじ、我一人怨みきこえむとにやあらむ。「いでや中納言殿の、さばかりあはれなる御心深さを」など、そのかみの人びとは言ひあはせて、「人の御宿世のあやしかりけることよ」と言ひあへり。<BR>⏎
text49494 <A NAME="in33">[第三段 匂宮、六の君に後朝の文を書く]</A><BR>306 
d1495<P>⏎
d1497<P>⏎
d1499<P>⏎
d1501<P>⏎
d1503<P>⏎
d1505<P>⏎
cd2:1506-507 と御前なる人びとつきじろふ。<BR>⏎
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312 と御前なる人びとつきじろふ。<BR>⏎
d1509<P>⏎
cd2:1510-511 などただにしもあらず、皆馴れ仕うまつりたる人びとなれば、やすからずうち言ふどももありて、すべてなほねたげなるわざにぞありける。「御返りも、こなたにてこそは」と思せど、「夜のほどおぼつかなさも、常の隔てよりはいかが」と、心苦しければ、急ぎ渡りたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
314 などただにしもあらず、皆馴れ仕うまつりたる人びとなれば、やすからずうち言ふどももありて、すべてなほねたげなるわざにぞありける。「御返りも、こなたにてこそは」と思せど、「夜のほどおぼつかなさも、常の隔てよりはいかが」と、心苦しければ、急ぎ渡りたまふ。<BR>⏎
d1513<P>⏎
d1515<P>⏎
d1517<P>⏎
cd2:1518-519 などやうなるまめごとを<A HREF="#k21">のたまへば</A><A NAME="t21">、</A>かかる方にも言よきは、心づきなくおぼえたまへど、むげにいらへきこえざらむも例ならねば、<BR>⏎
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318 などやうなるまめごとを<A HREF="#k21">のたまへば</A><A NAME="t21">、</A>かかる方にも言よきは、心づきなくおぼえたまへど、むげにいらへきこえざらむも例ならねば、<BR>⏎
d1521<P>⏎
d1523<P>⏎
d1525<P>⏎
d1527<P>⏎
text49528 <A NAME="in34">[第四段 匂宮、中君を慰める]</A><BR>323 
d1529<P>⏎
cd2:1530-531 されど見たまふほどは変はるけぢめもなきにや、後の世まで誓ひ頼めたまふことどもの尽きせぬを聞くにつけても、げにこの世は<A HREF="#no20">短かめる命待つ間</A><A NAME="te20">も</A>、つらき御心に見えぬべければ、「後の契りや違はぬこともあらむ」と思ふにこそ、<A HREF="#no21">なほこりずまに、またも</A><A NAME="te21">頼</A>まれぬ<A HREF="#k22">べけれとて</A><A NAME="t22">、</A>いみじく念ずべかめれど、え忍びあへぬにや、今日は泣きたまひぬ。<BR>⏎
<P>⏎
324 されど見たまふほどは変はるけぢめもなきにや、後の世まで誓ひ頼めたまふことどもの尽きせぬを聞くにつけても、げにこの世は<A HREF="#no20">短かめる命待つ間</A><A NAME="te20">も</A>、つらき御心に見えぬべければ、「後の契りや違はぬこともあらむ」と思ふにこそ、<A HREF="#no21">なほこりずまに、またも</A><A NAME="te21">頼</A>まれぬ<A HREF="#k22">べけれとて</A><A NAME="t22">、</A>いみじく念ずべかめれど、え忍びあへぬにや、今日は泣きたまひぬ。<BR>⏎
d1533<P>⏎
d1535<P>⏎
cd2:1536-537 とてわが御袖して涙を拭ひたまへば、<BR>⏎
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327 とてわが御袖して涙を拭ひたまへば、<BR>⏎
d1539<P>⏎
cd4:2540-543 とてすこしほほ笑みぬ。<BR>⏎
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 「げにあが君や、幼なの御もの言ひやな。<A HREF="#k24">されど</A><A NAME="t24">ま</A>ことには、心に隈のなければ、いと心やすし。いみじくことわりして聞こゆとも、いとしるかるべきわざぞ。むげに世のことわりを知りたまはぬこそ、らうたきものからわりなけれ。よしわが身になしても思ひめぐらしたまへ。<A HREF="#no22">身を心ともせぬ</A><A NAME="te22">あ</A>りさまなり。もし思ふやうなる世もあらば、人にまさりける心ざしのほど、知らせたてまつるべきひとふしなむある。たはやすく言出づべきことにもあらねば、命のみこそ」<BR>⏎
<P>⏎
329-330 とてすこしほほ笑みぬ。<BR>⏎
 「げにあが君や、幼なの御もの言ひやな。<A HREF="#k24">されど</A><A NAME="t24">ま</A>ことには、心に隈のなければ、いと心やすし。いみじくことわりして聞こゆとも、いとしるかるべきわざぞ。むげに世のことわりを知りたまはぬこそ、らうたきものからわりなけれ。よしわが身になしても思ひめぐらしたまへ。<A HREF="#no22">身を心ともせぬ</A><A NAME="te22">あ</A>りさまなり。もし思ふやうなる世もあらば、人にまさりける心ざしのほど、知らせたてまつるべきひとふしなむある。たはやすく言出づべきことにもあらねば、命のみこそ」<BR>⏎
d1545<P>⏎
text49546 <A NAME="in35">[第五段 後朝の使者と中君の諦観]</A><BR>332 
d1547<P>⏎
d1549<P>⏎
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d1553<P>⏎
cd3:1554-556  女郎花しをれぞまさる朝露の<BR>⏎
  いかに置きける名残なるらむ」<BR>⏎
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336  女郎花しをれぞまさる朝露の<BR>  いかに置きける名残なるらむ」<BR>⏎
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d1564<P>⏎
d1566<P>⏎
d1568<P>⏎
cd2:1569-570 とわが身になりてぞ、何ごとも思ひ知られたまひける。<BR>⏎
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343 とわが身になりてぞ、何ごとも思ひ知られたまひける。<BR>⏎
text49571 <A NAME="in36">[第六段 匂宮と六の君の結婚第二夜]</A><BR>344 
d1572<P>⏎
d1574<P>⏎
d1576<P>⏎
cd2:1577-578 とてよしある御くだもの召し寄せ、またさるべき人召して、ことさらに調ぜさせなどしつつ、そそのかしきこえたまへど、いとはるかにのみ思したれば、「見苦しきわざかな」と嘆ききこえたまふに、暮れぬれば、夕つ方、寝殿へ渡りたまひぬ。<BR>⏎
<P>⏎
347 とてよしある御くだもの召し寄せ、またさるべき人召して、ことさらに調ぜさせなどしつつ、そそのかしきこえたまへど、いとはるかにのみ思したれば、「見苦しきわざかな」と嘆ききこえたまふに、暮れぬれば、夕つ方、寝殿へ渡りたまひぬ。<BR>⏎
d1580<P>⏎
cd3:1581-583 「おほかたに聞かましものをひぐらしの<BR>⏎
  声恨めしき秋の暮かな」<BR>⏎
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349 「おほかたに聞かましものをひぐらしの<BR>  声恨めしき秋の暮かな」<BR>⏎
d1585<P>⏎
d1587<P>⏎
d1589<P>⏎
text49590 <A NAME="in37">[第七段 匂宮と六の君の結婚第三夜の宴]</A><BR>353 
d1591<P>⏎
d1593<P>⏎
d1595<P>⏎
cd2:1596-597 宵すこし過ぐるほどにおはしましたり。寝殿の南の廂、東に寄りて御座参れり。御台八つ、例の御皿など、うるはしげにきよらにて、また小さき台二つに、花足の御皿なども、今めかしくせさせたまひて、餅参らせたまへり。めづらしからぬこと書きおくこそ憎けれ。<BR>⏎
<P>⏎
356 宵すこし過ぐるほどにおはしましたり。寝殿の南の廂、東に寄りて御座参れり。御台八つ、例の御皿など、うるはしげにきよらにて、また小さき台二つに、花足の御皿なども、今めかしくせさせたまひて、餅参らせたまへり。めづらしからぬこと書きおくこそ憎けれ。<BR>⏎
d1599<P>⏎
d1601<P>⏎
d1603<P>⏎
cd2:1604-605 とふさはしからず思ひて言ひしを、思し出づるなめり。されど見知らぬやうにて、いとまめなり。<BR>⏎
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360 とふさはしからず思ひて言ひしを、思し出づるなめり。されど見知らぬやうにて、いとまめなり。<BR>⏎
d1607<P>⏎
cd4:2608-611 四位六人は、女の装束に細長添へて、五位十人は、三重襲の唐衣、裳の腰も皆けぢめあるべし。六位四人は、綾の細長、袴など。かつは限りあることを飽かず思しければ、ものの色、しざまなどをぞ、きよらを尽くしたまへりける。<BR>⏎
<P>⏎
 召次、舎人などの中には、乱りがはしきまでいかめしくなむありける。げにかくにぎははしくはなやかなることは、見るかひあれば、物語などに、まづ言ひたてたるにやあらむ。されど詳しくはえぞ数へ立てざりけるとや。<BR>⏎
<P>⏎
362-363 四位六人は、女の装束に細長添へて、五位十人は、三重襲の唐衣、裳の腰も皆けぢめあるべし。六位四人は、綾の細長、袴など。かつは限りあることを飽かず思しければ、ものの色、しざまなどをぞ、きよらを尽くしたまへりける。<BR>⏎
 召次、舎人などの中には、乱りがはしきまでいかめしくなむありける。げにかくにぎははしくはなやかなることは、見るかひあれば、物語などに、まづ言ひたてたるにやあらむ。されど詳しくはえぞ数へ立てざりけるとや。<BR>⏎
text49612 <H4>第四章 薫の物語 中君に同情しながら恋慕の情高まる</H4>364 
text49613 <A NAME="in41">[第一段 薫、匂宮の結婚につけわが身を顧みる]</A><BR>365 
d1614<P>⏎
d1616<P>⏎
d1618<P>⏎
cd2:1619-620 と中門のもとにてつぶやきけるを聞きつけたまひて、をかしとなむ思しける。夜の更けてねぶたきに、かのもてかしづかれつる人びとは、心地よげに酔ひ乱れて寄り臥しぬらむかしと、うらやましきなめりかし。<BR>⏎
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368 と中門のもとにてつぶやきけるを聞きつけたまひて、をかしとなむ思しける。夜の更けてねぶたきに、かのもてかしづかれつる人びとは、心地よげに酔ひ乱れて寄り臥しぬらむかしと、うらやましきなめりかし。<BR>⏎
d1622<P>⏎
d1624<P>⏎
cd4:2625-628 と宮の御ありさまを、めやすく思ひ出でたてまつりたまふ。<BR>⏎
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 「げに我にても、よしと思ふ女子持たらましかば、この<A HREF="#k26">宮をおきたてまつりて</A><A NAME="t26">、</A>内裏にだにえ参らせざらまし」と思ふに、「誰れも誰れも、宮にたてまつらむと心ざしたまへる女は、なほ源中納言にこそと、とりどりに言ひならふなるこそ、わがおぼえの口惜しくはあらぬなめりな。さるはいとあまり世づかず、古めきたるものを」など、心おごりせらる。<BR>⏎
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371-372 と宮の御ありさまを、めやすく思ひ出でたてまつりたまふ。<BR>⏎
 「げに我にても、よしと思ふ女子持たらましかば、この<A HREF="#k26">宮をおきたてまつりて</A><A NAME="t26">、</A>内裏にだにえ参らせざらまし」と思ふに、「誰れも誰れも、宮にたてまつらむと心ざしたまへる女は、なほ源中納言にこそと、とりどりに言ひならふなるこそ、わがおぼえの口惜しくはあらぬなめりな。さるはいとあまり世づかず、古めきたるものを」など、心おごりせらる。<BR>⏎
d1630<P>⏎
text49631 <A NAME="in42">[第二段 薫と按察使の君、匂宮と六の君]</A><BR>374 
d1632<P>⏎
d1634<P>⏎
cd3:1635-637 「うち渡し世に許しなき関川を<BR>⏎
  みなれそめけむ名こそ惜しけれ」<BR>⏎
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376 「うち渡し世に許しなき関川を<BR>  みなれそめけむ名こそ惜しけれ」<BR>⏎
d1639<P>⏎
cd3:1640-642 「<A HREF="#no25">深からず上は見ゆれど関川</A><A NAME="te25">の</A><BR>⏎
  下の通ひは絶ゆるものかは」<BR>⏎
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378 「<A HREF="#no25">深からず上は見ゆれど関川</A><A NAME="te25">の</A><BR>  下の通ひは絶ゆるものかは」<BR>⏎
d1644<P>⏎
d1646<P>⏎
cd2:1647-648 など言ひ紛らはしてぞ出でたまふ。ことにをかしきことの数を尽くさねど、<A HREF="#k27">さまの</A><A NAME="t27">な</A>まめかしき見なしにやあらむ、情けなくなどは人に思はれたまはず。かりそめの戯れ言をも言ひそめたまへる人の、気近くて見たてまつらばや、とのみ思ひきこゆるにや、あながちに、世を背きたまへる宮の御方に、<A HREF="#k28">縁を</A><A NAME="t28">尋</A>ねつつ参り集まりてさぶらふも、あはれなること、ほどほどにつけつつ多かるべし。<BR>⏎
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381 など言ひ紛らはしてぞ出でたまふ。ことにをかしきことの数を尽くさねど、<A HREF="#k27">さまの</A><A NAME="t27">な</A>まめかしき見なしにやあらむ、情けなくなどは人に思はれたまはず。かりそめの戯れ言をも言ひそめたまへる人の、気近くて見たてまつらばや、とのみ思ひきこゆるにや、あながちに、世を背きたまへる宮の御方に、<A HREF="#k28">縁を</A><A NAME="t28">尋</A>ねつつ参り集まりてさぶらふも、あはれなること、ほどほどにつけつつ多かるべし。<BR>⏎
d1650<P>⏎
cd4:2651-654 二十に一つ二つぞ余りたまへりける。いはけなきほどならねば、片なりに飽かぬところなく、あざやかに、盛りの花と見えたまへり。限りなくもてかしづきたまへるに、かたほならず。げに<A HREF="#no26">親にては、心も惑はし</A><A NAME="te26">た</A>まひつべかりけり。<BR>⏎
<P>⏎
 ただやはらかに愛敬づきらうたきことぞ、かの対の御方はまづ思ほし出でられける。もののたまふいらへなども、恥ぢらひたれど、またあまりおぼつかなくはあらず、すべていと見所多く、かどかどしげなり。<BR>⏎
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383-384 二十に一つ二つぞ余りたまへりける。いはけなきほどならねば、片なりに飽かぬところなく、あざやかに、盛りの花と見えたまへり。限りなくもてかしづきたまへるに、かたほならず。げに<A HREF="#no26">親にては、心も惑はし</A><A NAME="te26">た</A>まひつべかりけり。<BR>⏎
 ただやはらかに愛敬づきらうたきことぞ、かの対の御方はまづ思ほし出でられける。もののたまふいらへなども、恥ぢらひたれど、またあまりおぼつかなくはあらず、すべていと見所多く、かどかどしげなり。<BR>⏎
d1656<P>⏎
text49657 <A NAME="in43">[第三段 中君と薫、手紙を書き交す]</A><BR>386 
d1658<P>⏎
cd10:5659-668 かくて後、二条院に、え心やすく渡りたまはず。軽らかなる御身ならねば、思すままに、昼のほどなどもえ出でたまはねば、やがて同じ南の町に、年ごろありしやうにおはしまして、暮るれば、またえ引き避きても渡りたまはずなどして、待ち遠なる折々あるを、<BR>⏎
<P>⏎
 「かからむとすることとは思ひしかど、さしあたりては、いとかくやは名残なかるべき。げに心あらむ人は、数ならぬ身を知らで、交じらふべき世にもあらざりけり」<BR>⏎
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 と返す返すも山路分け出でけむほど、うつつともおぼえず悔しく悲しければ、<BR>⏎
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 「なほいかで忍びて<A HREF="#k29">渡りなむ</A><A NAME="t29">。</A>むげに背くさまにはあらずとも、しばし心をも慰めばや。憎げにもてなしなどせばこそ、うたてもあらめ」<BR>⏎
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 など心一つに思ひあまりて、恥づかしけれど、中納言殿に文たてまつれたまふ。<BR>⏎
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387-391 かくて後、二条院に、え心やすく渡りたまはず。軽らかなる御身ならねば、思すままに、昼のほどなどもえ出でたまはねば、やがて同じ南の町に、年ごろありしやうにおはしまして、暮るれば、またえ引き避きても渡りたまはずなどして、待ち遠なる折々あるを、<BR>⏎
 「かからむとすることとは思ひしかど、さしあたりては、いとかくやは名残なかるべき。げに心あらむ人は、数ならぬ身を知らで、交じらふべき世にもあらざりけり」<BR>⏎
 と返す返すも山路分け出でけむほど、うつつともおぼえず悔しく悲しければ、<BR>⏎
 「なほいかで忍びて<A HREF="#k29">渡りなむ</A><A NAME="t29">。</A>むげに背くさまにはあらずとも、しばし心をも慰めばや。憎げにもてなしなどせばこそ、うたてもあらめ」<BR>⏎
 など心一つに思ひあまりて、恥づかしけれど、中納言殿に文たてまつれたまふ。<BR>⏎
d1670<P>⏎
d1672<P>⏎
cd2:1673-674 陸奥紙に、ひきつくろはずまめだち書きたまへるしも、いとをかしげなり。宮の御忌日に、例のことどもいと尊くせさせたまへりけるを、喜びたまへるさまの、おどろおどろしくはあらねど、げに思ひ知りたまへるなめりかし。例は、これよりたてまつる御返りをだに、つつましげに思ほして、はかばかしくも続けたまはぬを、「みづから」とさへのたまへるが、めづらしくうれしきに、心ときめきもしぬべし。<BR>⏎
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394 陸奥紙に、ひきつくろはずまめだち書きたまへるしも、いとをかしげなり。宮の御忌日に、例のことどもいと尊くせさせたまへりけるを、喜びたまへるさまの、おどろおどろしくはあらねど、げに思ひ知りたまへるなめりかし。例は、これよりたてまつる御返りをだに、つつましげに思ほして、はかばかしくも続けたまはぬを、「みづから」とさへのたまへるが、めづらしくうれしきに、心ときめきもしぬべし。<BR>⏎
d1676<P>⏎
d1678<P>⏎
cd2:1679-680 とすくよかに、白き色紙のこはごはしきにてあり。<BR>⏎
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397 とすくよかに、白き色紙のこはごはしきにてあり。<BR>⏎
text49681 <A NAME="in44">[第四段 薫、中君を訪問して慰める]</A><BR>398 
d1682<P>⏎
cd2:1683-684 さてまたの日の夕つ方ぞ渡りたまへる。人知れず思ふ心し添ひたれば、あいなく心づかひいたくせられて、なよよかなる御衣どもを、いとど匂はし添へたまへるは、あまりおどろおどろしきまであるに、丁子染の扇の、もてならしたまへる移り香などさへ、喩へむ方なくめでたし。<BR>⏎
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399 さてまたの日の夕つ方ぞ渡りたまへる。人知れず思ふ心し添ひたれば、あいなく心づかひいたくせられて、なよよかなる御衣どもを、いとど匂はし添へたまへるは、あまりおどろおどろしきまであるに、丁子染の扇の、もてならしたまへる移り香などさへ、喩へむ方なくめでたし。<BR>⏎
d1686<P>⏎
d1688<P>⏎
cd2:1689-690 「わざと召しとはべらざりしかど、例ならず許させたまへりし喜びに、すなはちも参らまほしくはべりしを、宮渡らせたまふと承りしかば、折悪しくやはとて、今日になしはべりにける。さるは年ごろの心のしるしもやうやうあらはれはべるにや、隔てすこし薄らぎはべりにける御簾の内よ。めづらしくはべるわざかな」<BR>⏎
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402 「わざと召しとはべらざりしかど、例ならず許させたまへりし喜びに、すなはちも参らまほしくはべりしを、宮渡らせたまふと承りしかば、折悪しくやはとて、今日になしはべりにける。さるは年ごろの心のしるしもやうやうあらはれはべるにや、隔てすこし薄らぎはべりにける御簾の内よ。めづらしくはべるわざかな」<BR>⏎
d1692<P>⏎
d1694<P>⏎
cd2:1695-696 といとつつましげにのたまふが、いたくしぞきて、絶え絶えほのかに聞こゆれば、心もとなくて、<BR>⏎
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405 といとつつましげにのたまふが、いたくしぞきて、絶え絶えほのかに聞こゆれば、心もとなくて、<BR>⏎
d1698<P>⏎
cd2:1699-700 とのたまへば、げにと思して、すこしみじろき寄りたまふけはひを聞きたまふにも、ふと胸うちつぶるれど、さりげなくいとど静めたるさまして、宮の<A HREF="#k32">御心ばへ</A><A NAME="t32">、</A>思はずに<A HREF="#k33">浅う</A><A NAME="t33">お</A>はしけりとおぼしく、かつは言ひも疎め、また慰めも、かたがたにしづしづと聞こえたまひつつおはす。<BR>⏎
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407 とのたまへば、げにと思して、すこしみじろき寄りたまふけはひを聞きたまふにも、ふと胸うちつぶるれど、さりげなくいとど静めたるさまして、宮の<A HREF="#k32">御心ばへ</A><A NAME="t32">、</A>思はずに<A HREF="#k33">浅う</A><A NAME="t33">お</A>はしけりとおぼしく、かつは言ひも疎め、また慰めも、かたがたにしづしづと聞こえたまひつつおはす。<BR>⏎
text49701 <A NAME="in45">[第五段 中君、薫に宇治への同行を願う]</A><BR>408 
d1702<P>⏎
cd16:8703-718 女君は、人の御恨めしさなどは、うち出で語らひきこえたまふべきことにもあらねば、ただ<A HREF="#no27">世やは憂きなど</A><A NAME="te27">や</A>うに思はせて、言少なに紛らはしつつ、山里にあからさまに渡したまへとおぼしく、いとねむごろに思ひてのたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
 「それはしも、心一つにまかせては、え仕うまつるまじきことにはべり。なほ宮にただ心うつくしく<A HREF="#k34">聞こえさせたまひて</A><A NAME="t34">、</A>かの御けしきに従ひてなむよくはべるべき。さらずは、すこしも違ひ目ありて、心軽くもなど思しものせむに、いと悪しくはべりなむ。さだにあるまじくは、道のほども御送り迎へも、おりたちて仕うまつらむに、何の憚りかははべらむ。うしろやすく人に似ぬ心のほどは、宮も皆知らせたまへり」<BR>⏎
<P>⏎
 などは言ひながら、折々は、過ぎにし方の悔しさを忘るる折なく、<A HREF="#no28">ものにもがなや</A><A NAME="te28">と</A>取り返さまほしきと、ほのめかしつつ、やうやう暗くなりゆくまでおはするに、いとうるさくおぼえて、<BR>⏎
<P>⏎
 「さらば心地も悩ましくのみはべるを、またよろしく思ひたまへられむほどに、何事も」<BR>⏎
<P>⏎
 とて入りたまひぬるけしきなるが、いと口惜しければ、<BR>⏎
<P>⏎
 「さてもいつばかり思し立つべきにか。いとしげくはべし道の草も、すこしうち払はせはべらむかし」<BR>⏎
<P>⏎
 と心とりに聞こえたまへば、しばし入りさして、<BR>⏎
<P>⏎
 「この月は過ぎぬめれば、朔日のほどにも、とこそは思ひはべれ。ただいと忍びてこそよからめ。何か世の許しなどことことしく」<BR>⏎
<P>⏎
409-416 女君は、人の御恨めしさなどは、うち出で語らひきこえたまふべきことにもあらねば、ただ<A HREF="#no27">世やは憂きなど</A><A NAME="te27">や</A>うに思はせて、言少なに紛らはしつつ、山里にあからさまに渡したまへとおぼしく、いとねむごろに思ひてのたまふ。<BR>⏎
 「それはしも、心一つにまかせては、え仕うまつるまじきことにはべり。なほ宮にただ心うつくしく<A HREF="#k34">聞こえさせたまひて</A><A NAME="t34">、</A>かの御けしきに従ひてなむよくはべるべき。さらずは、すこしも違ひ目ありて、心軽くもなど思しものせむに、いと悪しくはべりなむ。さだにあるまじくは、道のほども御送り迎へも、おりたちて仕うまつらむに、何の憚りかははべらむ。うしろやすく人に似ぬ心のほどは、宮も皆知らせたまへり」<BR>⏎
 などは言ひながら、折々は、過ぎにし方の悔しさを忘るる折なく、<A HREF="#no28">ものにもがなや</A><A NAME="te28">と</A>取り返さまほしきと、ほのめかしつつ、やうやう暗くなりゆくまでおはするに、いとうるさくおぼえて、<BR>⏎
 「さらば心地も悩ましくのみはべるを、またよろしく思ひたまへられむほどに、何事も」<BR>⏎
 とて入りたまひぬるけしきなるが、いと口惜しければ、<BR>⏎
 「さてもいつばかり思し立つべきにか。いとしげくはべし道の草も、すこしうち払はせはべらむかし」<BR>⏎
 と心とりに聞こえたまへば、しばし入りさして、<BR>⏎
 「この月は過ぎぬめれば、朔日のほどにも、とこそは思ひはべれ。ただいと忍びてこそよからめ。何か世の許しなどことことしく」<BR>⏎
d1720<P>⏎
text49721 <A NAME="in46">[第六段 薫、中君に迫る]</A><BR>418 
d1722<P>⏎
cd2:1723-724 女「さりやあな心憂」と思ふに、何事かは言はれむ、ものも言はで、いとど引き入りたまへば、それにつきていと馴れ顔に、半らは内に入りて添ひ臥したまへり。<BR>⏎
<P>⏎
419 女「さりやあな心憂」と思ふに、何事かは言はれむ、ものも言はで、いとど引き入りたまへば、それにつきていと馴れ顔に、半らは内に入りて添ひ臥したまへり。<BR>⏎
d1726<P>⏎
d1728<P>⏎
d1730<P>⏎
d1732<P>⏎
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cd4:2735-738 とていとのどやかにはもてなしたまへれど、月ごろ悔しと思ひわたる心のうちの、苦しきまでなりゆくさまを、つくづくと言ひ続けたまひて、許すべきけしきにもあらぬに、せむかたなく、いみじとも世の常なり。なかなか、むげに心知らざらむ人よりも、恥づかしく心づきなくて、泣きたまひぬるを、<BR>⏎
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 「こはなぞ。あな若々し」<BR>⏎
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425-426 とていとのどやかにはもてなしたまへれど、月ごろ悔しと思ひわたる心のうちの、苦しきまでなりゆくさまを、つくづくと言ひ続けたまひて、許すべきけしきにもあらぬに、せむかたなく、いみじとも世の常なり。なかなか、むげに心知らざらむ人よりも、恥づかしく心づきなくて、泣きたまひぬるを、<BR>⏎
 「こはなぞ。あな若々し」<BR>⏎
d1740<P>⏎
text49741 <A NAME="in47">[第七段 薫、自制して退出する]</A><BR>428 
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d1748<P>⏎
cd4:2749-752 「悩ましげに聞きわたる御心地は、ことわりなりけり。いと恥づかしと思したりつる腰のしるしに、多くは心苦しくおぼえてやみぬるかな。例のをこがましの心や」と思へど、「情けなからむことは、なほいと本意なかるべし。またたちまちのわが心の乱れにまかせて、あながちなる心をつかひて後、心やすくしもはあらざらむものから、わりなく忍びありかむほども心尽くしに、女のかたがた思し乱れむことよ」<BR>⏎
<P>⏎
 などさかしく思ふにせかれず、<A HREF="#no29">今の間も恋しき</A><A NAME="te29">ぞ</A>わりなかりける。さらに見ではえあるまじくおぼえたまふも、返す返すあやにくなる心なりや。<BR>⏎
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432-433 「悩ましげに聞きわたる御心地は、ことわりなりけり。いと恥づかしと思したりつる腰のしるしに、多くは心苦しくおぼえてやみぬるかな。例のをこがましの心や」と思へど、「情けなからむことは、なほいと本意なかるべし。またたちまちのわが心の乱れにまかせて、あながちなる心をつかひて後、心やすくしもはあらざらむものから、わりなく忍びありかむほども心尽くしに、女のかたがた思し乱れむことよ」<BR>⏎
 などさかしく思ふにせかれず、<A HREF="#no29">今の間も恋しき</A><A NAME="te29">ぞ</A>わりなかりける。さらに見ではえあるまじくおぼえたまふも、返す返すあやにくなる心なりや。<BR>⏎
text49753 <H4>第五章 中君の物語 中君、薫の後見に感謝しつつも苦悩す</H4>434 
text49754 <A NAME="in51">[第一段 翌朝、薫、中君に手紙を書く]</A><BR>435 
d1755<P>⏎
d1757<P>⏎
cd2:1758-759 「宇治にいと渡らまほしげに思いためるを、さもや渡しきこえてまし」など思へど、「まさに宮は許したまひてむや。さりとて、忍びてはた、いと便なからむ。<A HREF="#k37">いかさまにして</A><A NAME="t37">か</A>は、人目見苦しからで、思ふ心のゆくべき」と、心もあくがれて眺め臥したまへり。<BR>⏎
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437 「宇治にいと渡らまほしげに思いためるを、さもや渡しきこえてまし」など思へど、「まさに宮は許したまひてむや。さりとて、忍びてはた、いと便なからむ。<A HREF="#k37">いかさまにして</A><A NAME="t37">か</A>は、人目見苦しからで、思ふ心のゆくべき」と、心もあくがれて眺め臥したまへり。<BR>⏎
d1761<P>⏎
cd3:1762-764 「いたづらに分けつる道の露しげみ<BR>⏎
  昔おぼゆる秋の空かな<BR>⏎
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439 「いたづらに分けつる道の露しげみ<BR>  昔おぼゆる秋の空かな<BR>⏎
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cd4:2775-778 「何かは。この宮離れ果てたまひなば、我を頼もし人にしたまふべきにこそはあめれ。さてもあらはれて心やすきさまにえあらじを、忍びつつまた思ひます人なき、心のとまりにてこそはあらめ」<BR>⏎
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 などただこの事のみ、つとおぼゆるぞ、けしからぬ心なるや。さばかり心深げにさかしがりたまへど、男といふものの心憂かりけることよ。亡き人の御悲しさは、言ふかひなきことにて、いとかく苦しきまではなかりけり。これはよろづにぞ思ひめぐらされたまひける。<BR>⏎
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445-446 「何かは。この宮離れ果てたまひなば、我を頼もし人にしたまふべきにこそはあめれ。さてもあらはれて心やすきさまにえあらじを、忍びつつまた思ひます人なき、心のとまりにてこそはあらめ」<BR>⏎
 などただこの事のみ、つとおぼゆるぞ、けしからぬ心なるや。さばかり心深げにさかしがりたまへど、男といふものの心憂かりけることよ。亡き人の御悲しさは、言ふかひなきことにて、いとかく苦しきまではなかりけり。これはよろづにぞ思ひめぐらされたまひける。<BR>⏎
d1780<P>⏎
cd2:1781-782 など人の言ふを聞くにも、後見の心は失せて、胸<A HREF="#k38">うちつぶれて</A><A NAME="t38">、</A>いとうらやましくおぼゆ。<BR>⏎
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448 など人の言ふを聞くにも、後見の心は失せて、胸<A HREF="#k38">うちつぶれて</A><A NAME="t38">、</A>いとうらやましくおぼゆ。<BR>⏎
text49783 <A NAME="in52">[第二段 匂宮、帰邸して、薫の移り香に不審を抱く]</A><BR>449 
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cd10:5791-800 御腹もすこしふくらかになりにたるに、かの恥ぢたまふしるしの帯の引き結はれたるほどなど、いとあはれに、まだかかる人を近くても見たまはざりければ、めづらしくさへ思したり。うちとけぬ所にならひたまひて、よろづのこと、心やすくなつかしく思さるるままに、おろかならぬ事どもを、尽きせず<A HREF="#k40">契りのたまふ</A><A NAME="t40">を</A>聞くにつけても、かくのみ言よきわざにやあらむと、あながちなりつる人の御けしきも思ひ出でられて、年ごろあはれなる心ばへなどは思ひわたりつれど、かかる方ざまにては、あれをもあるまじきことと思ふにぞ、この御行く先の頼めは、いでやと思ひながらも、すこし耳とまりける。<BR>⏎
<P>⏎
 「さてもあさましくたゆめたゆめて、入り来たりしほどよ。昔の人に疎くて過ぎにしことなど語りたまひし心ばへは、げにありがたかりけりと、なほうちとくべくはた、あらざりけりかし」<BR>⏎
<P>⏎
 などいよいよ心づかひせらるるにも、久しくとだえたまはむことは、いともの恐ろしかるべくおぼえたまへば、言に出でては言はねど、過ぎぬる方よりは、すこしまつはしざまにもてなしたまへるを、宮はいとど限りなくあはれと思ほしたるに、かの人の御移り香の、いと深くしみたまへるが、世の常の香の香に入れ薫きしめたるにも似ず、しるき匂ひなるを、その道の人にしおはすれば、あやしととがめ出でたまひて、いかなりしことぞと、けしきとりたまふに、ことのほかにもて離れぬことにしあれば、言はむ方なくわりなくて、いと苦しと思したるを、<BR>⏎
<P>⏎
 「さればよ。かならずさることはありなむ。よもただには思はじ、と思ひわたることぞかし」<BR>⏎
<P>⏎
 と御心騷ぎけり。さるは単衣の御衣なども、脱ぎ替へたまひてけれど、あやしく心より外にぞ身にしみにける。<BR>⏎
<P>⏎
453-457 御腹もすこしふくらかになりにたるに、かの恥ぢたまふしるしの帯の引き結はれたるほどなど、いとあはれに、まだかかる人を近くても見たまはざりければ、めづらしくさへ思したり。うちとけぬ所にならひたまひて、よろづのこと、心やすくなつかしく思さるるままに、おろかならぬ事どもを、尽きせず<A HREF="#k40">契りのたまふ</A><A NAME="t40">を</A>聞くにつけても、かくのみ言よきわざにやあらむと、あながちなりつる人の御けしきも思ひ出でられて、年ごろあはれなる心ばへなどは思ひわたりつれど、かかる方ざまにては、あれをもあるまじきことと思ふにぞ、この御行く先の頼めは、いでやと思ひながらも、すこし耳とまりける。<BR>⏎
 「さてもあさましくたゆめたゆめて、入り来たりしほどよ。昔の人に疎くて過ぎにしことなど語りたまひし心ばへは、げにありがたかりけりと、なほうちとくべくはた、あらざりけりかし」<BR>⏎
 などいよいよ心づかひせらるるにも、久しくとだえたまはむことは、いともの恐ろしかるべくおぼえたまへば、言に出でては言はねど、過ぎぬる方よりは、すこしまつはしざまにもてなしたまへるを、宮はいとど限りなくあはれと思ほしたるに、かの人の御移り香の、いと深くしみたまへるが、世の常の香の香に入れ薫きしめたるにも似ず、しるき匂ひなるを、その道の人にしおはすれば、あやしととがめ出でたまひて、いかなりしことぞと、けしきとりたまふに、ことのほかにもて離れぬことにしあれば、言はむ方なくわりなくて、いと苦しと思したるを、<BR>⏎
 「さればよ。かならずさることはありなむ。よもただには思はじ、と思ひわたることぞかし」<BR>⏎
 と御心騷ぎけり。さるは単衣の御衣なども、脱ぎ替へたまひてけれど、あやしく心より外にぞ身にしみにける。<BR>⏎
d1802<P>⏎
cd2:1803-804 とよろづに聞きにくくのたまひ続くるに、心憂くて、身ぞ置き所なき。<BR>⏎
<P>⏎
459 とよろづに聞きにくくのたまひ続くるに、心憂くて、身ぞ置き所なき。<BR>⏎
d1806<P>⏎
cd12:5807-818 とすべてまねぶべくもあらず、いとほしげに聞こえ<A HREF="#k41">たまへど</A><A NAME="t41">、</A>ともかくもいらへたまはぬさへ、いとねたくて、<BR>⏎
<P>⏎
 「また人に馴れける袖の移り香を<BR>⏎
  わが身にしめて恨みつるかな」<BR>⏎
<P>⏎
 女は、あさましくのたまひ続くるに、言ふべき方もなきを、いかがは、とて<BR>⏎
<P
>⏎
 「みなれぬる中の衣と頼めしを<BR>⏎
  かばかりにてやかけ離れなむ」<BR>⏎
<P>⏎
 とてうち泣きたまへるけしきの、限りなくあはれなるを見るにも、「かかればぞかし」と、いと心やましくて、我もほろほろとこぼしたまふぞ、色めかしき御心なるや。まことにいみじき過ちありとも、ひたぶるにはえぞ疎み果つまじく、らうたげに心苦しきさまのしたまへれば、えも怨み果てたまはず、のたまひさしつつ、かつはこしらへきこえたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
461-465 とすべてまねぶべくもあらず、いとほしげに聞こえ<A HREF="#k41">たまへど</A><A NAME="t41">、</A>ともかくもいらへたまはぬさへ、いとねたくて、<BR>⏎
 「また人に馴れける袖の移り香を<BR>  わが身にしめて恨みつるかな」<BR>⏎
 女は、あさましくのたまひ続くるに、言ふべき方もなきを、いかがは、とて<BR>⏎
 「みなれぬる中の衣と頼めしを<BR>  かばかりにてやかけ離れなむ」<BR>⏎
 とてうち泣きたまへるけしきの、限りなくあはれなるを見るにも、「かかればぞかし」と、いと心やましくて、我もほろほろとこぼしたまふぞ、色めかしき御心なるや。まことにいみじき過ちありとも、ひたぶるにはえぞ疎み果つまじく、らうたげに心苦しきさまのしたまへれば、えも怨み果てたまはず、のたまひさしつつ、かつはこしらへきこえたまふ。<BR>⏎
text49819 <A NAME="in53">[第三段 匂宮、中君の素晴しさを改めて認識]</A><BR>466 
d1820<P>⏎
d1822<P>⏎
d1824<P>⏎
d1826<P>⏎
d1828<P>⏎
cd2:1829-830 とわがいと隈なき御心ならひに思し知らるれば、常に心をかけて、「しるきさまなる文などやある」と、近き御厨子、小唐櫃などやうのものをも、さりげなくて探したまへど、さるものもなし。ただいとすくよかに言少なにて、なほなほしきなどぞ、わざともなけれど、ものにとりまぜなどしてもあるを、「あやし。なほいとかうのみはあらじかし」と疑はるるに、いとど今日はやすからず思さるる、ことわりなりかし。<BR>⏎
<P>⏎
471 とわがいと隈なき御心ならひに思し知らるれば、常に心をかけて、「しるきさまなる文などやある」と、近き御厨子、小唐櫃などやうのものをも、さりげなくて探したまへど、さるものもなし。ただいとすくよかに言少なにて、なほなほしきなどぞ、わざともなけれど、ものにとりまぜなどしてもあるを、「あやし。なほいとかうのみはあらじかし」と疑はるるに、いとど今日はやすからず思さるる、ことわりなりかし。<BR>⏎
d1832<P>⏎
cd2:1833-834 と思ひやるぞ、わびしく腹立たしくねたかりける。なほいとやすからざりければ、その日もえ出でたまはず。六条院には、御文をぞ二度三度たてまつりたまふを、<BR>⏎
<P>⏎
473 と思ひやるぞ、わびしく腹立たしくねたかりける。なほいとやすからざりければ、その日もえ出でたまはず。六条院には、御文をぞ二度三度たてまつりたまふを、<BR>⏎
d1836<P>⏎
d1838<P>⏎
text49839 <A NAME="in54">[第四段 薫、中君に衣料を贈る]</A><BR>476 
d1840<P>⏎
d1842<P>⏎
d1844<P>⏎
cd2:1845-846 としひてぞ思ひ返して、「さはいへど、え思し捨てざめりかし」と、うれしくもあり、「人びとのけはひなどの、なつかしきほどに萎えばみためりしを」と思ひやりたまひて、母宮の御方に参りたまひて、<BR>⏎
<P>⏎
479 としひてぞ思ひ返して、「さはいへど、え思し捨てざめりかし」と、うれしくもあり、「人びとのけはひなどの、なつかしきほどに萎えばみためりしを」と思ひやりたまひて、母宮の御方に参りたまひて、<BR>⏎
d1848<P>⏎
d1850<P>⏎
d1852<P>⏎
d1854<P>⏎
d1856<P>⏎
cd5:2857-861 とて御匣殿などに問はせたまひて、女の装束どもあまた領に、細長どもも、ただあるにしたがひて、ただなる絹綾などとり具したまふ。みづからの御料と思しきには、わが御料にありける紅の擣目なべて<A HREF="#k46">ならぬ</A><A NAME="t46">に</A>、白き綾どもなど、あまた重ねたまへるに、袴の具はなかりけるに、いかにしたりけるにか、腰の一つあるを、引き結び加へて、<BR>⏎
<P>⏎
 「結びける契りことなる下紐を<BR>⏎
  ただ一筋に恨みやはする」<BR>⏎
<P>⏎
485-486 とて御匣殿などに問はせたまひて、女の装束どもあまた領に、細長どもも、ただあるにしたがひて、ただなる絹綾などとり具したまふ。みづからの御料と思しきには、わが御料にありける紅の擣目なべて<A HREF="#k46">ならぬ</A><A NAME="t46">に</A>、白き綾どもなど、あまた重ねたまへるに、袴の具はなかりけるに、いかにしたりけるにか、腰の一つあるを、引き結び加へて、<BR>⏎
 「結びける契りことなる下紐を<BR>  ただ一筋に恨みやはする」<BR>⏎
d1863<P>⏎
d1865<P>⏎
d1867<P>⏎
d1869<P>⏎
text49870 <A NAME="in55">[第五段 薫、中君をよく後見す]</A><BR>491 
d1871<P>⏎
d1873<P>⏎
d1875<P>⏎
cd2:1876-877 童べなどの、なりあざやかならぬ、折々うち混じりなどしたるをも、女君は、いと恥づかしく、「なかなかなる住まひにもあるかな」など、人知れずは思すこと<A HREF="#k47">なきにしも</A><A NAME="t47">あ</A>らぬに、ましてこのころは、世に響きたる御ありさまのはなやかさに、かつは「宮のうちの人の見思はむことも、人げなきこと」と、思し乱るることも添ひて嘆かしきを、中納言の君は、いとよく推し量りきこえたまへば、疎からむあたりには、見苦しくくだくだしかりぬべき心しらひのさまも、あなづるとはなけれど、「何かは、ことことしくしたて顔ならむも、なかなかおぼえなく見とがむる人やあらむ」と、思すなりけり。<BR>⏎
<P>⏎
494 童べなどの、なりあざやかならぬ、折々うち混じりなどしたるをも、女君は、いと恥づかしく、「なかなかなる住まひにもあるかな」など、人知れずは思すこと<A HREF="#k47">なきにしも</A><A NAME="t47">あ</A>らぬに、ましてこのころは、世に響きたる御ありさまのはなやかさに、かつは「宮のうちの人の見思はむことも、人げなきこと」と、思し乱るることも添ひて嘆かしきを、中納言の君は、いとよく推し量りきこえたまへば、疎からむあたりには、見苦しくくだくだしかりぬべき心しらひのさまも、あなづるとはなけれど、「何かは、ことことしくしたて顔ならむも、なかなかおぼえなく見とがむる人やあらむ」と、思すなりけり。<BR>⏎
d1879<P>⏎
text49880 <A NAME="in56">[第六段 薫と中君の、それぞれの苦悩]</A><BR>496 
d1881<P>⏎
cd2:1882-883 「かくてなほいかでうしろやすく大人しき人にてやみなむ」と思ふにも、したがはず、心にかかりて苦しければ、御文などを、ありしよりはこまやかにて、ともすれば、忍びあまりたるけしき見せつつ聞こえたまふを、女君、いとわびしきこと添ひたる身と思し嘆かる。<BR>⏎
<P>⏎
497 「かくてなほいかでうしろやすく大人しき人にてやみなむ」と思ふにも、したがはず、心にかかりて苦しければ、御文などを、ありしよりはこまやかにて、ともすれば、忍びあまりたるけしき見せつつ聞こえたまふを、女君、いとわびしきこと添ひたる身と思し嘆かる。<BR>⏎
d1885<P>⏎
cd2:1886-887 とよろづに思ひ乱れたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
499 とよろづに思ひ乱れたまふ。<BR>⏎
d1889<P>⏎
d1891<P>⏎
cd2:1892-893 といと悲しく、宮のつらくなりたまはむ嘆きよりも、このこといと苦しくおぼゆ。<BR>⏎
<P>⏎
502 といと悲しく、宮のつらくなりたまはむ嘆きよりも、このこといと苦しくおぼゆ。<BR>⏎
text49894 <H4>第六章 薫の物語 中君から異母妹の浮舟の存在を聞く</H4>503 
text49895 <A NAME="in61">[第一段 薫、二条院の中君を訪問]</A><BR>504 
d1896<P>⏎
d1898<P>⏎
d1900<P>⏎
cd6:3901-906 とのたまひていとものしげなる御けしきなるを、一夜もののけしき見し人びと、<BR>⏎
<P>⏎
 「げにいと見苦しくはべるめり」<BR>⏎
<P>⏎
 とて母屋の御簾うち下ろして、夜居の僧の座に入れたてまつるを、女君、まことに心地もいと苦しけれど、人のかく言ふに、掲焉にならむも、またいかが、とつつましければ、もの憂ながらすこしゐざり出でて、対面したまへり。<BR>⏎
<P>⏎
507-509 とのたまひていとものしげなる御けしきなるを、一夜もののけしき見し人びと、<BR>⏎
 「げにいと見苦しくはべるめり」<BR>⏎
 とて母屋の御簾うち下ろして、夜居の僧の座に入れたてまつるを、女君、まことに心地もいと苦しけれど、人のかく言ふに、掲焉にならむも、またいかが、とつつましければ、もの憂ながらすこしゐざり出でて、対面したまへり。<BR>⏎
d1908<P>⏎
d1910<P>⏎
d1912<P>⏎
d1914<P>⏎
d1916<P>⏎
d1918<P>⏎
cd2:1919-920 「いかなればかくしも常に悩ましくは思さるらむ。人に問ひはべりしかば、しばしこそ心地は悪しかなれ、さてまた、よろしき折あり、などこそ教へはべしか。あまり若々しくもてなさせたまふなめり」<BR>⏎
<P>⏎
516 「いかなればかくしも常に悩ましくは思さるらむ。人に問ひはべりしかば、しばしこそ心地は悪しかなれ、さてまた、よろしき折あり、などこそ教へはべしか。あまり若々しくもてなさせたまふなめり」<BR>⏎
d1922<P>⏎
d1924<P>⏎
cd2:1925-926 とぞのたまふ。「げに<A HREF="#no32">誰も千年の松ならぬ世を</A><A NAME="te32">」</A>と思ふには、いと心苦しくあはれなれば、この召し寄せたる人の聞かむもつつまれず、かたはらいたき筋のことをこそ選りとどむれ、昔より思ひきこえしさまなどを、かの御耳一つには心得させながら、人はかたはにも聞くまじきさまに、さまよくめやすくぞ言ひなしたまふを、「げにありがたき御心ばへにも」と聞きゐたりけり。<BR>⏎
<P>⏎
519 とぞのたまふ。「げに<A HREF="#no32">誰も千年の松ならぬ世を</A><A NAME="te32">」</A>と思ふには、いと心苦しくあはれなれば、この召し寄せたる人の聞かむもつつまれず、かたはらいたき筋のことをこそ選りとどむれ、昔より思ひきこえしさまなどを、かの御耳一つには心得させながら、人はかたはにも聞くまじきさまに、さまよくめやすくぞ言ひなしたまふを、「げにありがたき御心ばへにも」と聞きゐたりけり。<BR>⏎
text49927 <A NAME="in62">[第二段 薫、亡き大君追慕の情を訴える]</A><BR>520 
d1928<P>⏎
d1930<P>⏎
d1932<P>⏎
d1934<P>⏎
d1936<P>⏎
cd7:3937-943 など<A HREF="#k50">怨み</A><A NAME="t50">泣</A>きみ聞こえたまふ。<BR>⏎

<P>⏎
 「うしろめたく思ひきこえば、かくあやしと人も見思ひぬべきまでは聞こえはべるべくや。年ごろ、こなたかなたにつけつつ、見知ることどものはべりしかばこそ、さま異なる頼もし人にて、今はこれよりなどおどろかし<A HREF="#k50">きこゆれ」</A><BR>⏎
<P>⏎
 <A NAME="t50">と</A>のたまへば、<BR>⏎
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525-527 など<A HREF="#k50">怨み</A><A NAME="t50">泣</A>きみ聞こえたまふ。<BR>⏎
 「うしろめたく思ひきこえば、かくあやしと人も見思ひぬべきまでは聞こえはべるべくや。年ごろ、こなたかなたにつけつつ、見知ることどものはべりしかばこそ、さま異なる頼もし人にて、今はこれよりなどおどろかし<A HREF="#k51">きこゆれ」</A><BR>⏎
 <A NAME="t51">と</A>のたまへば、<BR>⏎
d1945<P>⏎
d1947<P>⏎
text49948 <A NAME="in63">[第三段 薫、故大君に似た人形を望む]</A><BR>530 
d1949<P>⏎
d1951<P>⏎
d1953<P>⏎
cd2:1954-955 など忍びやかにうち誦じて、<BR>⏎
<P>⏎
533 など忍びやかにうち誦じて、<BR>⏎
d1957<P>⏎
d1959<P>⏎
d1961<P>⏎
d1963<P>⏎
d1965<P>⏎
cd2:1966-967 ととざまかうざまに忘れむ方なきよしを、嘆きたまふけしきの、心深げなるもいとほしくて、今すこし近くすべり寄りて、<BR>⏎
<P>⏎
539 ととざまかうざまに忘れむ方なきよしを、嘆きたまふけしきの、心深げなるもいとほしくて、今すこし近くすべり寄りて、<BR>⏎
d1969<P>⏎
d1971<P>⏎
d1973<P>⏎
d1975<P>⏎
text49976 <a name="in64">[第四段 中君、異母妹の浮舟を語る]</a><BR>544 
d1977<P>⏎
d1979<P>⏎
cd2:1980-981 形見など、かう思しのたまふめるは、なかなか何事も、あさましくもて離れたりとなむ、見る人びとも言ひはべりしを、いとさしもあるまじき人の、いかでかはさはありけむ」<BR>⏎
<P>⏎
546 形見など、かう思しのたまふめるは、なかなか何事も、あさましくもて離れたりとなむ、見る人びとも言ひはべりしを、いとさしもあるまじき人の、いかでかはさはありけむ」<BR>⏎
d1983<P>⏎
d1985<P>⏎
d1987<P>⏎
cd2:1988-989 「いさやそのゆゑも、いかなりけむこととも思ひ分かれはべらず。ものはかなきありさまどもにて、世に落ちとまりさすらへむとすらむこと、とのみうしろめたげに思したりしことどもを、ただ一人かき集めて思ひ知られはべるに、またあいなきことをさへうち添へて、人も聞き伝へむこそ、いといとほしかるべけれ」<BR>⏎
<P>⏎
550 「いさやそのゆゑも、いかなりけむこととも思ひ分かれはべらず。ものはかなきありさまどもにて、世に落ちとまりさすらへむとすらむこと、とのみうしろめたげに思したりしことどもを、ただ一人かき集めて思ひ知られはべるに、またあいなきことをさへうち添へて、人も聞き伝へむこそ、いといとほしかるべけれ」<BR>⏎
d1991<P>⏎
d1993<P>⏎
d1995<P>⏎
cd4:2996-999 といぶかしがりたまへど、さすがにかたはらいたくて、えこまかにも聞こえたまはず。<BR>⏎
<P>⏎
 「尋ねむと思す心あらば、そのわたりとは聞こえつべけれど、詳しくしもえ知らずや。またあまり言はば、心劣りもしぬべきことになむ」<BR>⏎
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554-555 といぶかしがりたまへど、さすがにかたはらいたくて、えこまかにも聞こえたまはず。<BR>⏎
 「尋ねむと思す心あらば、そのわたりとは聞こえつべけれど、詳しくしもえ知らずや。またあまり言はば、心劣りもしぬべきことになむ」<BR>⏎
d11001<P>⏎
cd6:31002-1007 「世を海中にも、魂のありか尋ねには、心の限り進みぬべきを、いとさまで思ふべきにはあらざなれど、いとかく慰めむ方なきよりはと、思ひ寄りはべる人形の願ひばかりには、などかは山里の本尊にも思ひはべらざらむ。なほ確かにのたまはせよ」<BR>⏎
<P>⏎
 とうちつけに責めきこえたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
 「いさやいにしへの御ゆるしもなかりしことを、かくまで漏らしきこゆるも、いと口軽けれど、変化の工求めたまふいとほしさにこそ、かくも」とて、「いと<a href="#k54">遠き</a><a name="t54">所</a>に年ごろ経にけるを、母なる人のうれはしきことに思ひて、あながちに尋ね寄りしを、はしたなくもえいらへではべりしに、ものしたりしなり。ほのかなりしかばにや、何事も思ひしほどよりは見苦しからずなむ見えし。これをいかさまにもてなさむ、と<a href="#k55">嘆くめりしに</a><a name="t55">、</a>仏にならむは、いとこよなきことにこそはあらめ、さまではいかでかは」<BR>⏎
<P>⏎
557-559 「世を海中にも、魂のありか尋ねには、心の限り進みぬべきを、いとさまで思ふべきにはあらざなれど、いとかく慰めむ方なきよりはと、思ひ寄りはべる人形の願ひばかりには、などかは山里の本尊にも思ひはべらざらむ。なほ確かにのたまはせよ」<BR>⏎
 とうちつけに責めきこえたまふ。<BR>⏎
 「いさやいにしへの御ゆるしもなかりしことを、かくまで漏らしきこゆるも、いと口軽けれど、変化の工求めたまふいとほしさにこそ、かくも」とて、「いと<A HREF="#k54">遠き</A><A NAME="t54">所</A>に年ごろ経にけるを、母なる人のうれはしきことに思ひて、あながちに尋ね寄りしを、はしたなくもえいらへではべりしに、ものしたりしなり。ほのかなりしかばにや、何事も思ひしほどよりは見苦しからずなむ見えし。これをいかさまにもてなさむ、と<A HREF="#k55">嘆くめりしに</A><A NAME="t55">、</A>仏にならむは、いとこよなきことにこそはあらめ、さまではいかでかは」<BR>⏎
d11009<P>⏎
text491010<a name="in65">[第五段 薫、なお中君を恋慕す]</a><BR>561 
d11011<P>⏎
d11013<P>⏎
d11015<P>⏎
cd2:11016-1017 などおりたちて練じたる心ならねばにや、わがため人のためも、心やすかるまじきことを、わりなく思し<a href="#k56">明かすに</a><a name="t56">、</a>「似たりとのたまひつる人も、いかでかは真かとは見るべき。さばかりの際なれば、思ひ寄らむに、難くはあらずとも、人の本意にもあらずは、うるさくこそあるべけれ」など、なほそなたざまには心も立たず。<BR>⏎
<P>⏎
564 などおりたちて練じたる心ならねばにや、わがため人のためも、心やすかるまじきことを、わりなく思し<A HREF="#k56">明かすに</A><A NAME="t56">、</A>「似たりとのたまひつる人も、いかでかは真かとは見るべき。さばかりの際なれば、思ひ寄らむに、難くはあらずとも、人の本意にもあらずは、うるさくこそあるべけれ」など、なほそなたざまには心も立たず。<BR>⏎
text491018 <h4>第七章 薫の物語 宇治を訪問して弁の尼から浮舟の詳細について聞く</h4>565 
text491019 <a name="in71">[第一段 九月二十日過ぎ、薫、宇治を訪れる]</a><BR>566 
d11020<P>⏎
d11022<P>⏎
d11024<P>⏎
d11026<P>⏎
cd2:11027-1028 とまほには出で来ず。<BR>⏎
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570 とまほには出で来ず。<BR>⏎
d11030<P>⏎
cd2:11031-1032 とて涙を一目浮けておはするに、老い人はいとどさらにせきあへず。<BR>⏎
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572 とて涙を一目浮けておはするに、老い人はいとどさらにせきあへず。<BR>⏎
d11034<P>⏎
d11036<P>⏎
cd4:21037-1040 「とあることもかかることも、ながらふれば、直るやうもあるを、あぢきなく思ししみけむこそ、わが過ちのやうに、なほ悲しけれ。このころの御ありさまは、何かそれこそ世の常なれ。されどうしろめたげには見えきこえざめり。言ひても言ひても、むなしき空に昇りぬる煙のみこそ、誰も逃れぬことながら、<a href="#no38">後れ先だつほど</a><a name="te38">は</a>、なほいと言ふかひなかりけり」<BR>⏎
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 とてもまた泣きたまひぬ。<BR>⏎
<P>⏎
575-576 「とあることもかかることも、ながらふれば、直るやうもあるを、あぢきなく思ししみけむこそ、わが過ちのやうに、なほ悲しけれ。このころの御ありさまは、何かそれこそ世の常なれ。されどうしろめたげには見えきこえざめり。言ひても言ひても、むなしき空に昇りぬる煙のみこそ、誰も逃れぬことながら、<A HREF="#no38">後れ先だつほど</A><A NAME="te38">は</A>、なほいと言ふかひなかりけり」<BR>⏎
 とてもまた泣きたまひぬ。<BR>⏎
text491041 <a name="in72">[第二段 薫、宇治の阿闍梨と面談す]</a><BR>577 
d11042<P>⏎
d11044<P>⏎
cd4:21045-1048 「さてここに時々ものするにつけても、かひなきことのやすからずおぼゆるが、いと益なきを、この寝殿こぼちて、かの山寺のかたはらに堂建てむ、となむ思ふを、同じくは疾く始めてむ」<BR>⏎
<P>⏎
 とのたまひて、堂いくつ廊ども僧房など、あるべきことども、書き出でのたまはせさせたまふを、<BR>⏎
<P>⏎
579-580 「さてここに時々ものするにつけても、かひなきことのやすからずおぼゆるが、いと益なきを、この寝殿こぼちて、かの山寺のかたはらに堂建てむ、となむ思ふを、同じくは疾く始めてむ」<BR>⏎
 とのたまひて、堂いくつ廊ども僧房など、あるべきことども、書き出でのたまはせさせたまふを、<BR>⏎
d11050<P>⏎
d11052<P>⏎
d11054<P>⏎
cd2:11055-1056 今は、兵部卿宮の北の方こそは、知りたまふべければ、かの宮の御料とも言ひつべくなりにたり。さればここながら寺になさむことは、便なかるべし。心にまかせてさもえせじ。所のさまもあまり川づら近く、顕証にもあれば、なほ寝殿を失ひて、異ざまにも造り変へむの心にてなむ」<BR>⏎
<P>⏎
584 今は、兵部卿宮の北の方こそは、知りたまふべければ、かの宮の御料とも言ひつべくなりにたり。さればここながら寺になさむことは、便なかるべし。心にまかせてさもえせじ。所のさまもあまり川づら近く、顕証にもあれば、なほ寝殿を失ひて、異ざまにも造り変へむの心にてなむ」<BR>⏎
d11058<P>⏎
cd2:11059-1060 「とざまかうざまに、いともかしこく尊き御心なり。昔別れを悲しびて、屍を包みてあまたの年首に掛けてはべりける人も、仏の御方便にてなむ、かの<a href="#k58">屍の</a><a name="t58">袋</a>を捨てて、つひに聖の道にも入りはべりにける。この寝殿を御覧ずるにつけて、御心動きおはしますらむ、一つにはたいだいしきことなり。また後の世の勧めともなるべきことにはべりけり。急ぎ仕うまつるべし。暦の博士はからひ申してはべらむ日を承りて、もののゆゑ知りたらむ工、二三人を賜はりて、こまかなることどもは、仏の御教へのままに仕うまつらせはべらむ」<BR>⏎
<P>⏎
586 「とざまかうざまに、いともかしこく尊き御心なり。昔別れを悲しびて、屍を包みてあまたの年首に掛けてはべりける人も、仏の御方便にてなむ、かの<A HREF="#k58">屍の</A><A NAME="t58">袋</A>を捨てて、つひに聖の道にも入りはべりにける。この寝殿を御覧ずるにつけて、御心動きおはしますらむ、一つにはたいだいしきことなり。また後の世の勧めともなるべきことにはべりけり。急ぎ仕うまつるべし。暦の博士はからひ申してはべらむ日を承りて、もののゆゑ知りたらむ工、二三人を賜はりて、こまかなることどもは、仏の御教へのままに仕うまつらせはべらむ」<BR>⏎
d11062<P>⏎
text491063 <a name="in73">[第三段 薫、弁の尼と語る]</a><BR>588 
d11064<P>⏎
d11066<P>⏎
d11068<P>⏎
cd2:11069-1070 などまめやかなることどもを語らひたまふ。他にては、かばかりにさだ過ぎなむ人を、何かと見入れたまふべきにもあらねど、夜も近く臥せて、昔物語などせさせたまふ。故権大納言の君の御ありさまも、聞く人なきに心やすくて、いとこまやかに聞こゆ。<BR>⏎
<P>⏎
591 などまめやかなることどもを語らひたまふ。他にては、かばかりにさだ過ぎなむ人を、何かと見入れたまふべきにもあらねど、夜も近く臥せて、昔物語などせさせたまふ。故権大納言の君の御ありさまも、聞く人なきに心やすくて、いとこまやかに聞こゆ。<BR>⏎
d11072<P>⏎
d11074<P>⏎
d11076<P>⏎
d11078<P>⏎
cd2:11079-1080 など心のうちに思ひ比べたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
596 など心のうちに思ひ比べたまふ。<BR>⏎
text491081 <a name="in74">[第四段 薫、浮舟の件を弁の尼に尋ねる]</a><BR>597 
d11082<P>⏎
cd2:11083-1084 さてもののついでに、かの形代のことを言ひ出でたまへり。<BR>⏎
<P>⏎
598 さてもののついでに、かの形代のことを言ひ出でたまへり。<BR>⏎
d11086<P>⏎
cd2:11087-1088 あいなくそのことに思し懲りて、やがておほかた聖にならせたまひにけるを、はしたなく思ひて、えさぶらはずなりにけるが、陸奥国の守の妻になりたりけるを、一年上りて、その君平らかにものしたまふよし、このわたりにもほのめかし申したりけるを、聞こしめしつけて、さらにかかる消息あるべきことにもあらずとのたまはせ放ちければ、かひなくてなむ嘆きはべりける。<BR>⏎
<P>⏎
600 あいなくそのことに思し懲りて、やがておほかた聖にならせたまひにけるを、はしたなく思ひて、えさぶらはずなりにけるが、陸奥国の守の妻になりたりけるを、一年上りて、その君平らかにものしたまふよし、このわたりにもほのめかし申したりけるを、聞こしめしつけて、さらにかかる消息あるべきことにもあらずとのたまはせ放ちければ、かひなくてなむ嘆きはべりける。<BR>⏎
d11090<P>⏎
d11092<P>⏎
d11094<P>⏎
cd2:11095-1096 詳しく聞きあきらめたまひて、「さらばまことにてもあらむかし。見ばや」と思ふ心出で来ぬ。<BR>⏎
<P>⏎
604 詳しく聞きあきらめたまひて、「さらばまことにてもあらむかし。見ばや」と思ふ心出で来ぬ。<BR>⏎
d11098<P>⏎
d11100<P>⏎
d11102<P>⏎
cd2:11103-1104 さいつころ、京より、大輔がもとより申したりしは、かの君なむ、いかでかの御墓にだに参らむと、のたまふなる、さる<a href="#k64">心せよ</a><a name="t64">、</a>などはべりしかど、まだここに、さしはへてはおとなはずはべめり。今さらばさやのついでに、かかる仰せなど伝へはべらむ」<BR>⏎
<P>⏎
608 さいつころ、京より、大輔がもとより申したりしは、かの君なむ、いかでかの御墓にだに参らむと、のたまふなる、さる<A HREF="#k64">心せよ</A><A NAME="t64">、</A>などはべりしかど、まだここに、さしはへてはおとなはずはべめり。今さらばさやのついでに、かかる仰せなど伝へはべらむ」<BR>⏎
d11106<P>⏎
text491107 <a name="in75">[第五段 薫、二条院の中君に宇治訪問の報告]</a><BR>610 
d11108<P>⏎
d11110<P>⏎
d11112<P>⏎
cd3:11113-1115 「宿り木と思ひ出でずは木のもとの<BR>⏎
  旅寝もいかにさびしからまし」<BR>⏎
<P>⏎
613 「宿り木と思ひ出でずは木のもとの<BR>  旅寝もいかにさびしからまし」<BR>⏎
d11117<P>⏎
cd3:11118-1120 「<a href="#no40">荒れ果つる朽木</a><a name="te40">の</a>もとを宿りきと<BR>⏎
  思ひおきけるほどの悲しさ」<BR>⏎
<P>⏎
615 「<A HREF="#no40">荒れ果つる朽木</A><A NAME="te40">の</A>もとを宿りきと<BR>  思ひおきけるほどの悲しさ」<BR>⏎
d11122<P>⏎
d11124<P>⏎
d11126<P>⏎
cd2:11127-1128 とて何心もなく持て参りたるを、女君、「例のむつかしきこともこそ」と苦しく思せど、取り隠さむやは。宮、<BR>⏎
<P>⏎
619 とて何心もなく持て参りたるを、女君、「例のむつかしきこともこそ」と苦しく思せど、取り隠さむやは。宮、<BR>⏎
d11130<P>⏎
cd2:11131-1132 とただならずのたまひて、召し寄せて見たまふ。御文には、<BR>⏎
<P>⏎
621 とただならずのたまひて、召し寄せて見たまふ。御文には、<BR>⏎
d11134<P>⏎
d11136<P>⏎
cd2:11137-1138 「よくもつれなく書きたまへる文かな。まろありとぞ聞きつらむ」<BR>⏎
<P>⏎
624 「よくもつれなく書きたまへる文かな。まろありとぞ聞きつらむ」<BR>⏎
d11140<P>⏎
d11142<P>⏎
cd2:11143-1144 とて他ざまに向きたまへり。あまえて書かざらむもあやしければ、<BR>⏎
<P>⏎
627 とて他ざまに向きたまへり。あまえて書かざらむもあやしければ、<BR>⏎
d11146<P>⏎
d11148<P>⏎
text491149 <a name="in76">[第六段 匂宮、中君の前で琵琶を弾く]</a><BR>630 
d11150<P>⏎
d11152<P>⏎
cd3:11153-1155 「<a href="#no45">穂に出でぬもの思ふらし</a><a name="te45">篠</a>薄<BR>⏎
  招く袂の露しげくして」<BR>⏎
<P>⏎
632 「<A HREF="#no45">穂に出でぬもの思ふらし</A><A NAME="te45">篠</A>薄<BR>  招く袂の露しげくして」<BR>⏎
d11157<P>⏎
cd2:11158-1159 「秋果つる野辺のけしきも篠薄<BR>⏎
  ほのめく風につけてこそ知れ<BR>⏎
634 「秋果つる野辺のけしきも篠薄<BR>  ほのめく風につけてこそ知れ<BR>⏎
d11161<P>⏎
d11163<P>⏎
d11165<P>⏎
d11167<P>⏎
d11169<P>⏎
cd4:21170-1173 「なにがしの皇子の、花めでたる夕べぞかし。いにしへ天人の翔りて、琵琶の手教へけるは。何事も浅くなりにたる世は、もの憂しや」<BR>⏎
<P>⏎
 とて御琴さし置きたまふを、口惜しと思して、<BR>⏎
<P>⏎
640-641 「なにがしの皇子の、花めでたる夕べぞかし。いにしへ天人の翔りて、琵琶の手教へけるは。何事も浅くなりにたる世は、もの憂しや」<BR>⏎
 とて御琴さし置きたまふを、口惜しと思して、<BR>⏎
d11175<P>⏎
cd6:31176-1181 とておぼつかなき手などをゆかしげに思したれば、<BR>⏎
<P>⏎
 「さらば独り琴はさうざうしきに、さしいらへしたまへかし」<BR>⏎
<P>⏎
 とて人召して、箏の御琴とり寄せさせて、弾かせたてまつりたまへど、<BR>⏎
<P>⏎
643-645 とておぼつかなき手などをゆかしげに思したれば、<BR>⏎
 「さらば独り琴はさうざうしきに、さしいらへしたまへかし」<BR>⏎
 とて人召して、箏の御琴とり寄せさせて、弾かせたてまつりたまへど、<BR>⏎
d11183<P>⏎
cd6:31184-1189 とつつましげにて手も触れたまはねば、<BR>⏎
<P>⏎
 「かばかりのことも、隔てたまへるこそ心憂けれ。このころ、見るわたり、まだいと心解くべきほどにも<a href="#k67">あらねど</a><a name="t67">、</a>かたなりなる初事をも隠さずこそあれ。すべて女は、やはらかに心うつくしきなむよきこととこそ、その中納言も定むめりしか。かの君に、はたかくもつつみたまはじ。こよなき御仲なめれば」<BR>⏎
<P>⏎
 などまめやかに怨みられてぞ、うち嘆きてすこし調べたまふ。ゆるびたりければ、盤渉調に合はせたまふ。掻き合はせなど、爪音けをかしげに聞こゆ。「<a href="#no48">伊勢の海</a><a name="te48">」</a>謡ひたまふ御声のあてにをかしきを、女房も、物のうしろに近づき参りて、笑み広ごりてゐたり。<BR>⏎
<P>⏎
647-649 とつつましげにて手も触れたまはねば、<BR>⏎
 「かばかりのことも、隔てたまへるこそ心憂けれ。このころ、見るわたり、まだいと心解くべきほどにも<A HREF="#k67">あらねど</A><A NAME="t67">、</A>かたなりなる初事をも隠さずこそあれ。すべて女は、やはらかに心うつくしきなむよきこととこそ、その中納言も定むめりしか。かの君に、はたかくもつつみたまはじ。こよなき御仲なめれば」<BR>⏎
 などまめやかに怨みられてぞ、うち嘆きてすこし調べたまふ。ゆるびたりければ、盤渉調に合はせたまふ。掻き合はせなど、爪音けをかしげに聞こゆ。「<A HREF="#no48">伊勢の海</A><A NAME="te48">」</A>謡ひたまふ御声のあてにをかしきを、女房も、物のうしろに近づき参りて、笑み広ごりてゐたり。<BR>⏎
d11191<P>⏎
cd2:11192-1193 などただ言ひに言へば、若き人びとは、<BR>⏎
<P>⏎
651 などただ言ひに言へば、若き人びとは、<BR>⏎
d11195<P>⏎
d11197<P>⏎
text491198 <a name="in77">[第七段 夕霧、匂宮を強引に六条院へ迎え取る]</a><BR>654 
d11199<P>⏎
cd2:11200-1201 御琴ども教へたてまつりなどして、三四日籠もりおはして、御物忌などことつけたまふを、かの殿には恨めしく思して、大臣、内裏より出でたまひけるままに、ここに参りたまへれば、宮、<BR>⏎
<P>⏎
655 御琴ども教へたてまつりなどして、三四日籠もりおはして、御物忌などことつけたまふを、かの殿には恨めしく思して、大臣、内裏より出でたまひけるままに、ここに参りたまへれば、宮、<BR>⏎
d11203<P>⏎
cd2:11204-1205 とむつかりたまへど、あなたに渡りたまひて、対面したまふ。<BR>⏎
<P>⏎
657 とむつかりたまへど、あなたに渡りたまひて、対面したまふ。<BR>⏎
d11207<P>⏎
cd6:31208-1213 など<a href="#k68">昔の御物語</a><a name="t68">ど</a>もすこし聞こえたまひて、やがて引き連れきこえたまひて出でたまひぬ。御子どもの殿ばら、さらぬ上達部、殿上人なども、いと多くひき続きたまへる勢ひ、こちたきを見るに、並ぶべくもあらぬぞ、屈しいたかりける。人びと覗きて見たてまつりて、<BR>⏎
<P>⏎
 「さもきよらにおはしける大臣かな。さばかり、いづれとなく、若く盛りにてきよげにおはさうずる御子どもの、似たまふべきもなかりけり。あなめでたや」<BR>⏎
<P>⏎
 と言ふもあり。また<BR>⏎
<P>⏎
659-661 など<A HREF="#k68">昔の御物語</A><A NAME="t68">ど</A>もすこし聞こえたまひて、やがて引き連れきこえたまひて出でたまひぬ。御子どもの殿ばら、さらぬ上達部、殿上人なども、いと多くひき続きたまへる勢ひ、こちたきを見るに、並ぶべくもあらぬぞ、屈しいたかりける。人びと覗きて見たてまつりて、<BR>⏎
 「さもきよらにおはしける大臣かな。さばかり、いづれとなく、若く盛りにてきよげにおはさうずる御子どもの、似たまふべきもなかりけり。あなめでたや」<BR>⏎
 と言ふもあり。また<BR>⏎
d11215<P>⏎
cd2:11216-1217 などうち嘆くもあるべし。御みづからも、来し方を思ひ出づるよりはじめ、かのはなやかなる御仲らひに立ちまじるべくもあらず、かすかなる身のおぼえをと、いよいよ心細ければ、「なほ心やすく籠もりゐなむのみこそ目やすからめ」など、いとどおぼえたまふ。はかなくて年も暮れぬ。<BR>⏎
<P>⏎
663 などうち嘆くもあるべし。御みづからも、来し方を思ひ出づるよりはじめ、かのはなやかなる御仲らひに立ちまじるべくもあらず、かすかなる身のおぼえをと、いよいよ心細ければ、「なほ心やすく籠もりゐなむのみこそ目やすからめ」など、いとどおぼえたまふ。はかなくて年も暮れぬ。<BR>⏎
text491218 <H4>第八章 薫の物語 女二の宮、薫の三条宮邸に降嫁</H4>664 
text491219 <a name="in81">[第一段 新年、薫権大納言兼右大将に昇進]</a><BR>665 
d11220<P>⏎
d11222<P>⏎
d11224<P>⏎
d11226<P>⏎
cd2:11227-1228 さるは女二の宮の御裳着、ただこのころになりて、世の中響きいとなみののしる。よろづのこと、帝の御心一つなるやうに思し急げば、御後見なきしもぞ、なかなかめでたげに見えける。<BR>⏎
<P>⏎
669 さるは女二の宮の御裳着、ただこのころになりて、世の中響きいとなみののしる。よろづのこと、帝の御心一つなるやうに思し急げば、御後見なきしもぞ、なかなかめでたげに見えける。<BR>⏎
d11230<P>⏎
d11232<P>⏎
d11234<P>⏎
cd6:31235-1240 喜びに所々ありきたまひて、この宮にも参りたまへり。いと苦しくしたまへば、こなたにおはしますほどなりければ、やがて参りたまへり。僧などさぶらひて便なき方に、とおどろきたまひて、あざやかなる御直衣、御下襲などたてまつり、<a href="#k72">ひきつくろひたまひて</a><a name="t72">、</a>下りて答の拝したまふ御さまどもとりどりにいとめでたく、<BR>⏎
<P>⏎
 「やがて官の禄賜ふ饗の所に」<BR>⏎
<P>⏎
 と請じたてまつりたまふを、悩みたまふ人によりてぞ、思したゆたひたまふめる。右大臣殿のしたまひけるままにとて、六条の院にてなむありける。<BR>⏎
<P>⏎
673-675 喜びに所々ありきたまひて、この宮にも参りたまへり。いと苦しくしたまへば、こなたにおはしますほどなりければ、やがて参りたまへり。僧などさぶらひて便なき方に、とおどろきたまひて、あざやかなる御直衣、御下襲などたてまつり、<A HREF="#k72">ひきつくろひたまひて</A><A NAME="t72">、</A>下りて答の拝したまふ御さまども とりどりにいとめでたく、<BR>⏎
 「やがて官の禄賜ふ饗の所に」<BR>⏎
 と請じたてまつりたまふを、悩みたまふ人によりてぞ、思したゆたひたまふめる。右大臣殿のしたまひけるままにとて、六条の院にてなむありける。<BR>⏎
d11242<P>⏎
d11244<P>⏎
d11246<P>⏎
text491247 <a name="in82">[第二段 中君に男子誕生]</a><BR>679 
d11248<P>⏎
cd4:21249-1252 からうして、その暁、男にて生まれたまへるを、宮もいとかひありてうれしく思したり。大将殿も、喜びに添へて、うれしく思す。昨夜おはしましたりしかしこまりに、やがてこの御喜びもうち添へて、立ちながら参りたまへり。かく籠もりおはしませば、参りたまはぬ人なし。<BR>⏎
<P>⏎
 御産養、三日は、例のただ宮の御私事にて、五日の夜、大将殿より屯食五十具碁手の銭椀飯などは、世の常のやうにて、子持ちの御前の衝重三十、稚児の御衣五重襲にて、御襁褓などぞ、ことことしからず忍びやかにしなしたまへれど、こまかに見れば、わざと目馴れぬ心ばへなど見えける。<BR>⏎
<P>⏎
680-681 からうして、その暁、男にて生まれたまへるを、宮もいとかひありてうれしく思したり。大将殿も、喜びに添へて、うれしく思す。昨夜おはしましたりしかしこまりに、やがてこの御喜びもうち添へて、立ちながら参りたまへり。かく籠もりおはしませば、参りたまはぬ人なし。<BR>⏎
 御産養、三日は、例のただ宮の御私事にて、五日の夜、大将殿より屯食五十具碁手の銭椀飯などは、世の常のやうにて、子持ちの御前の衝重三十、稚児の御衣五重襲にて、御襁褓などぞ、ことことしからず忍びやかにしなしたまへれど、こまかに見れば、わざと目馴れぬ心ばへなど見えける。<BR>⏎
d11254<P>⏎
d11256<P>⏎
d11258<P>⏎
d11260<P>⏎
d11262<P>⏎
cd2:11263-1264 大将殿は、「かくさへ大人び果てたまふめれば、いとどわが方ざまは気遠くやならむ。また宮の御心ざしもいとおろかならじ」と思ふは口惜しけれど、また初めよりの心おきてを思ふには、いとうれしくもあり。<BR>⏎
<P>⏎
687 大将殿は、「かくさへ大人び果てたまふめれば、いとどわが方ざまは気遠くやならむ。また宮の御心ざしもいとおろかならじ」と思ふは口惜しけれど、また初めよりの心おきてを思ふには、いとうれしくもあり。<BR>⏎
text491265 <a name="in83">[第三段 二月二十日過ぎ、女二の宮、薫に降嫁す]</a><BR>688 
d11266<P>⏎
cd2:11267-1268 かくてその月の二十日あまりにぞ、藤壺の宮の御裳着の事ありて、またの日なむ、大将参りたまひける。夜のことは忍びたるさまなり。天の下響きていつくしう見えつる御かしづきに、ただ人の具したてまつりたまふぞ、なほ飽かず心苦しく見ゆる。<BR>⏎
<P>⏎
689 かくてその月の二十日あまりにぞ、藤壺の宮の御裳着の事ありて、またの日なむ、大将参りたまひける。夜のことは忍びたるさまなり。天の下響きていつくしう見えつる御かしづきに、ただ人の具したてまつりたまふぞ、なほ飽かず心苦しく見ゆる。<BR>⏎
d11270<P>⏎
cd2:11271-1272 とそしらはしげに思ひのたまふ人もありけれど、思し立ちぬること、すがすがしくおはします御心にて、来し方ためしなきまで、同じくはもてなさむと、思しおきつるなめり。帝の御婿になる人は、昔も今も多かれど、かく盛りの御世に、ただ人のやうに、婿取り急がせたまへるたぐひは、すくなくやありけむ。<a href="#k73">右の大臣</a><a name="t73">も</a>、<BR>⏎
<P>⏎
691 とそしらはしげに思ひのたまふ人もありけれど、思し立ちぬること、すがすがしくおはします御心にて、来し方ためしなきまで、同じくはもてなさむと、思しおきつるなめり。帝の御婿になる人は、昔も今も多かれど、かく盛りの御世に、ただ人のやうに、婿取り急がせたまへるたぐひは、すくなくやありけむ。<A HREF="#k73">右の大臣</A><A NAME="t73">も</A>、<BR>⏎
d11274<P>⏎
d11276<P>⏎
cd4:21277-1280 三日の夜は、大蔵卿よりはじめて、かの御方の心寄せになさせたまへる人びと、家司に仰せ言賜ひて、忍びやかなれど、かの御前随身車副舎人まで禄賜はす。そのほどの事どもは、私事のやうにぞありける。<BR>⏎
<P>⏎
 かくて後は、忍び忍びに参りたまふ。心の内には、なほ忘れがたきいにしへざまのみおぼえて、昼は里に起き臥し眺め暮らして、暮るれば心より外に急ぎ参りたまふをも、ならはぬ心地にいともの憂く苦しくて、「まかでさせたてまつらむ」とぞ思しおきてける。<BR>⏎
<P>⏎
694-695 三日の夜は、大蔵卿よりはじめて、かの御方の心寄せになさせたまへる人びと、家司に仰せ言賜ひて、忍びやかなれど、かの御前随身車副舎人まで禄賜はす。そのほどの事どもは、私事のやうにぞありける。<BR>⏎
 かくて後は、忍び忍びに参りたまふ。心の内には、なほ忘れがたきいにしへざまのみおぼえて、昼は里に起き臥し眺め暮らして、暮るれば心より外に急ぎ参りたまふをも、ならはぬ心地にいともの憂く苦しくて、「まかでさせたてまつらむ」とぞ思しおきてける。<BR>⏎
d11282<P>⏎
d11284<P>⏎
cd2:11285-1286 とて御念誦堂のあはひに、廊を続けて造らせたまふ。西面に移ろひたまふべきなめり。東の対どもなども、焼けて後、うるはしく新しくあらまほしきを、いよいよ磨き添へつつ、こまかにしつらはせたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
698 とて御念誦堂のあはひに、廊を続けて造らせたまふ。西面に移ろひたまふべきなめり。東の対どもなども、焼けて後、うるはしく新しくあらまほしきを、いよいよ磨き添へつつ、こまかにしつらはせたまふ。<BR>⏎
d11288<P>⏎
d11290<P>⏎
cd2:11291-1292 かくやむごとなき御心どもに、かたみに限りもなくもてかしづき騒がれたまふおもだたしさも、いかなるにかあらむ、心の内にはことにうれしくもおぼえず、なほともすればうち眺めつつ、宇治の寺造ることを急がせたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
701 かくやむごとなき御心どもに、かたみに限りもなくもてかしづき騒がれたまふおもだたしさも、いかなるにかあらむ、心の内にはことにうれしくもおぼえず、なほともすればうち眺めつつ、宇治の寺造ることを急がせたまふ。<BR>⏎
text491293 <a name="in84">[第四段 中君の男御子、五十日の祝い]</a><BR>702 
d11294<P>⏎
cd4:21295-1298 宮の若君の五十日になりたまふ日数へ取りて、その餅の急ぎを心に入れて、籠物桧破籠などまで見入れたまひつつ、世の常のなべてにはあらずと思し心ざして、沈紫檀黄金など、道々の細工どもいと多く召しさぶらはせたまへば、我劣らじと、さまざまのことどもをし出づめり。<BR>⏎
<P>⏎
 みづからも、例の、宮のおはしまさぬ隙におはしたり。心のなしにやあらむ、今すこし重々しくやむごとなげなるけしきさへ添ひにけりと見ゆ。「今は、さりとも、むつかしかりしすずろごとなどは紛れたまひにたらむ」と思ふに、心やすくて、対面したまへり。されどありしながらのけしきに、まづ涙ぐみて、<BR>⏎
<P>⏎
703-704 宮の若君の五十日になりたまふ日数へ取りて、その餅の急ぎを心に入れて、籠物桧破籠などまで見入れたまひつつ、世の常のなべてにはあらずと思し心ざして、沈紫檀黄金など、道々の細工どもいと多く召しさぶらはせたまへば、我劣らじと、さまざまのことどもをし出づめり。<BR>⏎
 みづからも、例の、宮のおはしまさぬ隙におはしたり。心のなしにやあらむ、今すこし重々しくやむごとなげなるけしきさへ添ひにけりと見ゆ。「今は、さりとも、むつかしかりしすずろごとなどは紛れたまひにたらむ」と思ふに、心やすくて、対面したまへり。されどありしながらのけしきに、まづ涙ぐみて、<BR>⏎
d11300<P>⏎
cd2:11301-1302 とあいだちなくぞ愁へたまふ。<BR>⏎
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706 とあいだちなくぞ愁へたまふ。<BR>⏎
d11304<P>⏎
cd2:11305-1306 などはのたまへど、かばかりめでたげなることどもにも慰まず、「忘れがたく思ひたまふらむ心深さよ」とあはれに思ひきこえたまふに、おろかにもあらず思ひ知られたまふ。「おはせましかば」と、口惜しく思ひ出できこえたまへど、「それもわがありさまのやうに、うらやみなく身を恨むべかりけるかし。何事も数ならでは、世の人めかしきこともあるまじかりけり」とおぼゆるにぞ、いとどかのうちとけ果てでやみなむと思ひたまへりし心おきては、なほいと重々しく思ひ出でられたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
708 などはのたまへど、かばかりめでたげなることどもにも慰まず、「忘れがたく思ひたまふらむ心深さよ」とあはれに思ひきこえたまふに、おろかにもあらず思ひ知られたまふ。「おはせましかば」と、口惜しく思ひ出できこえたまへど、「それもわがありさまのやうに、うらやみなく身を恨むべかりけるかし。何事も数ならでは、世の人めかしきこともあるまじかりけり」とおぼゆるにぞ、いとどかのうちとけ果てでやみなむと思ひたまへりし心おきては、なほいと重々しく思ひ出でられたまふ。<BR>⏎
text491307 <a name="in85">[第五段 薫、中君の若君を見る]</a><BR>709 
d11308<P>⏎
d11310<P>⏎
cd2:11311-1312 さらなることなれば、憎げならむやは。ゆゆしきまで白くうつくしくて、たかやかに物語し、うち笑ひなどしたまふ顔を見るに、わがものにて見まほしくうらやましきも、世の思ひ離れがたくなりぬるにやあらむ。されど「言ふかひなくなりたまひにし人の、世の常のありさまにて、かやうならむ人をもとどめ置きたまへらましかば」とのみおぼえて、このころおもだたしげなる御あたりに、いつしかなどは思ひ寄られぬこそ、あまりすべなき君の御心なめれ。かく女々しくねぢけて、まねびなすこそいとほしけれ。<BR>⏎
<P>⏎
711 さらなることなれば、憎げならむやは。ゆゆしきまで白くうつくしくて、たかやかに物語し、うち笑ひなどしたまふ顔を見るに、わがものにて見まほしくうらやましきも、世の思ひ離れがたくなりぬるにやあらむ。されど「言ふかひなくなりたまひにし人の、世の常のありさまにて、かやうならむ人をもとどめ置きたまへらましかば」とのみおぼえて、このころおもだたしげなる御あたりに、いつしかなどは思ひ寄られぬこそ、あまりすべなき君の御心なめれ。かく女々しくねぢけて、まねびなすこそいとほしけれ。<BR>⏎
d11314<P>⏎
cd2:11315-1316 げにいとかく幼きほどを<a href="#k76">見せたまへる</a><a name="t76">も</a>あはれなれば、例よりは物語などこまやかに聞こえたまふほどに、暮れぬれば、心やすく夜をだに更かすまじきを、苦しうおぼゆれば、嘆く嘆く<a href="#k77">出でたまひぬ</a><a name="t77">。</a><BR>⏎
<P>⏎
713 げにいとかく幼きほどを<A HREF="#k76">見せたまへる</A><A NAME="t76">も</A>あはれなれば、例よりは物語などこまやかに聞こえたまふほどに、暮れぬれば、心やすく夜をだに更かすまじきを、苦しうおぼゆれば、嘆く嘆く<A HREF="#k77">出でたまひぬ</A><A NAME="t77">。</A><BR>⏎
d11318<P>⏎
cd2:11319-1320 などわづらはしがる若き人もあり。<BR>⏎
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715 などわづらはしがる若き人もあり。<BR>⏎
text491321 <a name="in86">[第六段 藤壺にて藤の花の宴催される]</a><BR>716 
d11322<P>⏎
d11324<P>⏎
d11326<P>⏎
d11328<P>⏎
d11330<P>⏎
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d11334<P>⏎
d11336<P>⏎
d11338<P>⏎
d11340<P>⏎
text491341 <a name="in87">[第七段 女二の宮、三条宮邸に渡御す]</a><BR>726 
d11342<P>⏎
cd11:51343-1353 按察使大納言は、「我こそかかる目も見むと思ひしか、ねたのわざや」と思ひたまへり。この宮の御母女御をぞ、昔心かけきこえたまへりけるを、参りたまひて後も、なほ思ひ離れぬさまに聞こえ通ひたまひて、果ては宮を得たてまつらむの心つきたりければ、御後見望むけしきも漏らし申しけれど、聞こし召しだに伝へずなりにければ、いと心やましと思ひて、<BR>⏎
<P>⏎
 「人柄は、げに契りことなめれど、なぞ時の帝のことことしきまで婿かしづきたまふべき。またあらじかし。九重のうちに、おはします殿近きほどにて、ただ人のうちとけ訪らひて、果ては宴や何やともて騒がるることは」<BR>⏎
<P>⏎
 などいみじく誹りつぶやき申したまひけれど、さすがゆかしければ、参りて、心の内にぞ腹立ちゐたまへりける。<BR>⏎
<P>⏎
 紙燭さして歌どもたてまつる。文台のもとに寄りつつ置くほどのけしきは、おのおのしたり顔なりけれど、例の、「いかにあやしげに古めきたりけむ」と思ひやれば、あながちに皆もたづね書かず。上の町も、上臈とて、御口つきどもは、異なること見えざめれど、しるしばかりとて、一つ二つぞ問ひ聞きたりし。これは大将の君の、下りて御かざし折りて参りたまへりけるとか。<BR>⏎
<P>⏎
 「すべらきのかざしに折ると藤の花<BR>⏎
  及ばぬ枝に袖かけてけり」<BR>⏎
<P>⏎
727-731 按察使大納言は、「我こそかかる目も見むと思ひしか、ねたのわざや」と思ひたまへり。この宮の御母女御をぞ、昔心かけきこえたまへりけるを、参りたまひて後も、なほ思ひ離れぬさまに聞こえ通ひたまひて、果ては宮を得たてまつらむの心つきたりければ、御後見望むけしきも漏らし申しけれど、聞こし召しだに伝へずなりにければ、いと心やましと思ひて、<BR>⏎
 「人柄は、げに契りことなめれど、なぞ時の帝のことことしきまで婿かしづきたまふべき。またあらじかし。九重のうちに、おはします殿近きほどにて、ただ人のうちとけ訪らひて、果ては宴や何やともて騒がるることは」<BR>⏎
 などいみじく誹りつぶやき申したまひけれど、さすがゆかしければ、参りて、心の内にぞ腹立ちゐたまへりける。<BR>⏎
 紙燭さして歌どもたてまつる。文台のもとに寄りつつ置くほどのけしきは、おのおのしたり顔なりけれど、例の、「いかにあやしげに古めきたりけむ」と思ひやれば、あながちに皆もたづね書かず。上の町も、上臈とて、御口つきどもは、異なること見えざめれど、しるしばかりとて、一つ二つぞ問ひ聞きたりし。これは大将の君の、下りて御かざし折りて参りたまへりけるとか。<BR>⏎
 「すべらきのかざしに折ると藤の花<BR>  及ばぬ枝に袖かけてけり」<BR>⏎
d11355<P>⏎
cd11:41356-1366 「<a href="#no51">よろづ世をかけて匂はむ</a><a name="te51">花</a>なれば<BR>⏎
  今日をも飽かぬ色とこそ見れ」<BR>⏎
<P>⏎
 「君がため折れるかざしは<a href="#no52">紫の<BR>⏎
  雲に劣らぬ</a><a name="te52">花</a>のけしきか」<BR>⏎
<P>⏎
 「世の常の色とも見えず雲居まで<BR>⏎
  たち昇りたる藤波の花」<BR>⏎
<P>⏎
 「これやこの腹立つ大納言のなりけむ」と見ゆれ。かたへは、ひがことにもやありけむ。かやうにことなるをかしきふしもなくのみぞあなりし。<BR>⏎
<P>⏎
733-736 「<A HREF="#no51">よろづ世をかけて匂はむ</A><A NAME="te51">花</A>なれば<BR>  今日をも飽かぬ色とこそ見れ」<BR>⏎
 「君がため折れるかざしは<A HREF="#no52">紫の<BR>  雲に劣らぬ</A><A NAME="te52">花</A>のけしきか」<BR>⏎
 「世の常の色とも見えず雲居まで<BR>  たち昇りたる藤波の花」<BR>⏎
 「これやこの腹立つ大納言のなりけむ」と見ゆれ。かたへは、ひがことにもやありけむ。かやうにことなるをかしきふしもなくのみぞあなりし。<BR>⏎
d11368<P>⏎
cd2:11369-1370 暁近うなりてぞ帰らせたまひける。禄ども、上達部親王たちには、主上より賜はす。殿上人、楽所の人びとには、宮の御方より品々に賜ひけり。<BR>⏎
<P>⏎
738 暁近うなりてぞ帰らせたまひける。禄ども、上達部親王たちには、主上より賜はす。殿上人、楽所の人びとには、宮の御方より品々に賜ひけり。<BR>⏎
d11372<P>⏎
cd2:11373-1374 かくて心やすくうちとけて見たてまつりたまふに、いとをかしげにおはす。ささやかにしめやかにて、ここはと見ゆるところなくおはすれば、「宿世のほど口惜しからざりけり」と、心おごりせらるるものから、過ぎにし方の忘らればこそはあらめ、なほ紛るる折なく、もののみ恋しくおぼゆれば、<BR>⏎
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740 かくて心やすくうちとけて見たてまつりたまふに、いとをかしげにおはす。ささやかにしめやかにて、ここはと見ゆるところなくおはすれば、「宿世のほど口惜しからざりけり」と、心おごりせらるるものから、過ぎにし方の忘らればこそはあらめ、なほ紛るる折なく、もののみ恋しくおぼゆれば、<BR>⏎
d11376<P>⏎
d11378<P>⏎
text491379 <H4>第九章 薫の物語 宇治で浮舟に出逢う</H4>743 
text491380 <a name="in91">[第一段 四月二十日過ぎ、薫、宇治で浮舟に邂逅]</a><BR>744 
d11381<P>⏎
d11383<P>⏎
cd2:11384-1385 造らせたまふ御堂見たまひて、すべきことどもおきてのたまひ、さて例の、朽木のもとを見たまへ過ぎむが、なほあはれなれば、そなたざまにおはするに、女車のことことしきさまにはあらぬ一つ、荒らましき東男の、腰に物負へる、あまた具して、下人も数多く頼もしげなるけしきにて、橋より今渡り来る見ゆ。<BR>⏎
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746 造らせたまふ御堂見たまひて、すべきことどもおきてのたまひ、さて例の、朽木のもとを見たまへ過ぎむが、なほあはれなれば、そなたざまにおはするに、女車のことことしきさまにはあらぬ一つ、荒らましき東男の、腰に物負へる、あまた具して、下人も数多く頼もしげなるけしきにて、橋より今渡り来る見ゆ。<BR>⏎
d11387<P>⏎
d11389<P>⏎
d11391<P>⏎
d11393<P>⏎
d11395<P>⏎
cd2:11396-1397 「おいや聞きし人ななり」<BR>⏎
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752 「おいや聞きし人ななり」<BR>⏎
d11399<P>⏎
cd4:11400-1403 「はや御車入れよ。ここにまた<BR>⏎
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<a href="#k83">人</a><a name="t83">宿</a>りたまへど、北面になむ」<BR>⏎
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754 「はや御車入れよ。ここにまた<A HREF="#k83">人</A><A NAME="t83">宿</A>りたまへど、北面になむ」<BR>⏎
d11405<P>⏎
d11407<P>⏎
d11409<P>⏎
d11411<P>⏎
cd2:11412-1413 とまづ口かためさせたまひてければ、皆さ心得て、<BR>⏎
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759 とまづ口かためさせたまひてければ、皆さ心得て、<BR>⏎
d11415<P>⏎
d11417<P>⏎
text491418 <a name="in92">[第二段 薫、浮舟を垣間見る]</a><BR>762 
d11419<P>⏎
cd2:11420-1421 若き人のある、まづ降りて、簾うち上ぐめり。御前のさまよりは、このおもと馴れてめやすし。また大人びたる人いま一人降りて、「早う」と言ふに、<BR>⏎
<P>⏎
763 若き人のある、まづ降りて、簾うち上ぐめり。御前のさまよりは、このおもと馴れてめやすし。また大人びたる人いま一人降りて、「早う」と言ふに、<BR>⏎
d11423<P>⏎
d11425<P>⏎
cd4:21426-1429 「例の御事。こなたは、さきざきも下ろし籠めてのみこそははべれ。さてはまたいづこのあらはなるべきぞ」<BR>⏎
<P>⏎
 と心をやりて言ふ。つつましげに降るるを見れば、まづ頭つき、様体、細やかにあてなるほどは、いとよくもの思ひ出でられぬべし。扇子をつとさし隠したれば、顔は見えぬほど心もとなくて、胸うちつぶれつつ見たまふ。<BR>⏎
<P>⏎
766-767 「例の御事。こなたは、さきざきも下ろし籠めてのみこそははべれ。さてはまたいづこのあらはなるべきぞ」<BR>⏎
 と心をやりて言ふ。つつましげに降るるを見れば、まづ頭つき、様体、細やかにあてなるほどは、いとよくもの思ひ出でられぬべし。扇子をつとさし隠したれば、顔は見えぬほど心もとなくて、胸うちつぶれつつ見たまふ。<BR>⏎
d11431<P>⏎
d11433<P>⏎
cd6:31434-1439 「さも苦しげに思したりつるかな。泉川の舟渡りも、まことに、今日はいと恐ろしくこそありつれ。この如月には、水のすくなかりしかばよかりしなりけり」<BR>⏎
<P>⏎
 「いでや歩くは、東路思へば、いづこか恐ろしからむ」<BR>⏎
<P>⏎
 など二人して苦しとも思ひたらず言ひゐたるに、主は音もせでひれ臥したり。腕をさし出でたるが、まろらかにをかしげなるほども、常陸殿などいふべくは見えず、まことにあてなり。<BR>⏎
<P>⏎
770-772 「さも苦しげに思したりつるかな。泉川の舟渡りも、まことに、今日はいと恐ろしくこそありつれ。この如月には、水のすくなかりしかばよかりしなりけり」<BR>⏎
 「いでや歩くは、東路思へば、いづこか恐ろしからむ」<BR>⏎
 など二人して苦しとも思ひたらず言ひゐたるに、主は音もせでひれ臥したり。腕をさし出でたるが、まろらかにをかしげなるほども、常陸殿などいふべくは見えず、まことにあてなり。<BR>⏎
d11441<P>⏎
cd2:11442-1443 「あな香ばしや。いみじき香の香こそすれ。尼君の焚きたまふにやあらむ」<BR>⏎
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774 「あな香ばしや。いみじき香の香こそすれ。尼君の焚きたまふにやあらむ」<BR>⏎
d11445<P>⏎
d11447<P>⏎
cd2:11448-1449 などほめゐたり。あなたの簀子より童来て、<BR>⏎
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777 などほめゐたり。あなたの簀子より童来て、<BR>⏎
d11451<P>⏎
cd4:21452-1455 とて折敷どもも取り続きてさし入る。果物取り寄せなどして、<BR>⏎
<P>⏎
 「ものけたまはるこれ」<BR>⏎
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779-780 とて折敷どもも取り続きてさし入る。果物取り寄せなどして、<BR>⏎
 「ものけたまはるこれ」<BR>⏎
d11457<P>⏎
d11459<P>⏎
text491460 <a name="in93">[第三段 浮舟、弁の尼と対面]</a><BR>783 
d11461<P>⏎
d11463<P>⏎
d11465<P>⏎
cd2:11466-1467 と御供の人びと心しらひて言ひたりければ、「この君を尋ねまほしげにのたまひしかば、かかるついでにもの言ひ触れむと思ほすによりて、日暮らしたまふにや」と思ひて、かく覗きたまふらむとは知らず。<BR>⏎
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786 と御供の人びと心しらひて言ひたりければ、「この君を尋ねまほしげにのたまひしかば、かかるついでにもの言ひ触れむと思ほすによりて、日暮らしたまふにや」と思ひて、かく覗きたまふらむとは知らず。<BR>⏎
d11469<P>⏎
cd2:11470-1471 「昨日おはし着きなむと待ちきこえさせしを、などか今日も日たけては」<BR>⏎
<P>⏎
788 「昨日おはし着きなむと待ちきこえさせしを、などか今日も日たけては」<BR>⏎
d11473<P>⏎
d11475<P>⏎
d11477<P>⏎
cd6:31478-1483 尼君のいらへうちする声けはひ、宮の御方にもいとよく似たりと聞こゆ。<BR>⏎
<P>⏎
 「あはれなりける人かな。かかりけるものを、今まで尋ねも知らで過ぐしけることよ。これより口惜しからむ際の品ならむゆかりなどにてだに、かばかりかよひきこえたらむ人を得ては、おろかに思ふまじき心地するに、ましてこれは、知られたてまつらざりけれど、まことに故宮の御子にこそはありけれ」<BR>⏎
<P>⏎
 と見なしたまひては、限りなくあはれにうれしくおぼえたまふ。「ただ今も、はひ寄りて、世の中におはしけるものを」と言ひ慰めまほし。蓬莱まで尋ねて、釵の限りを伝へて見たまひけむ帝は、なほいぶせかりけむ。「これは異人なれど、慰め所ありぬべきさまなり」とおぼゆるは、この人に契りのおはしけるにやあらむ。<BR>⏎
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792-794 尼君のいらへうちする声けはひ、宮の御方にもいとよく似たりと聞こゆ。<BR>⏎
 「あはれなりける人かな。かかりけるものを、今まで尋ねも知らで過ぐしけることよ。これより口惜しからむ際の品ならむゆかりなどにてだに、かばかりかよひきこえたらむ人を得ては、おろかに思ふまじき心地するに、ましてこれは、知られたてまつらざりけれど、まことに故宮の御子にこそはありけれ」<BR>⏎
 と見なしたまひては、限りなくあはれにうれしくおぼえたまふ。「ただ今も、はひ寄りて、世の中におはしけるものを」と言ひ慰めまほし。蓬莱まで尋ねて、釵の限りを伝へて見たまひけむ帝は、なほいぶせかりけむ。「これは異人なれど、慰め所ありぬべきさまなり」とおぼゆるは、この人に契りのおはしけるにやあらむ。<BR>⏎
d11485<P>⏎
text491486<a name="in94">[第四段 薫、弁の尼に仲立を依頼]</a><BR>796 
d11487<P>⏎
d11489<P>⏎
d11491<P>⏎
d11493<P>⏎
cd2:11494-1495 「しか仰せ言はべりし後は、さるべきついではべらば、と待ちはべりしに、去年は過ぎて、この二月になむ、初瀬詣でのたよりに対面してはべりし。<BR>⏎
<P>⏎
800 「しか仰せ言はべりし後は、さるべきついではべらば、と待ちはべりしに、去年は過ぎて、この二月になむ、初瀬詣でのたよりに対面してはべりし。<BR>⏎
d11497<P>⏎
d11499<P>⏎
d11501<P>⏎
cd2:11502-1503 「田舎びたる人どもに、忍びやつれたるありきも見えじとて、口固めつれど、いかがあらむ。下衆どもは隠れあらじかし。さていかがすべき。独りものすらむこそ、なかなか心やすかなれ。かく契り深くてなむ、参り来あひたる、と伝へたまへかし」<BR>⏎
<P>⏎
804 「田舎びたる人どもに、忍びやつれたるありきも見えじとて、口固めつれど、いかがあらむ。下衆どもは隠れあらじかし。さていかがすべき。独りものすらむこそ、なかなか心やすかなれ。かく契り深くてなむ、参り来あひたる、と伝へたまへかし」<BR>⏎
d11505<P>⏎
d11507<P>⏎
cd9:41508-1516 とうち笑ひて、<BR>⏎
<P>⏎
 「さらばしか伝へはべらむ」<BR>⏎
<P>⏎
 とて<a href="#k86">入るに</a><a name="t86">、</a><BR>⏎
<P>⏎
 「貌鳥の声も聞きしにかよふやと<BR>⏎
  茂みを分けて今日ぞ尋ぬる」<BR>⏎
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807-810 とうち笑ひて、<BR>⏎
 「さらばしか伝へはべらむ」<BR>⏎
 とて<A HREF="#k86">入るに</A><A NAME="t86">、</A><BR>⏎
 「貌鳥の声も聞きしにかよふやと<BR>  茂みを分けて今日ぞ尋ぬる」<BR>⏎
d31518-1520

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text491521<a name="in101">【出典】<BR>812 
c11522</a><a name="no1">出典1</a> 送春唯有酒 銷日不過棋<春を送るには唯酒有り 日を銷するには棋に過ぎず>(白氏文集巻十六-九二〇 官舎閑題)<a href="#te1">(戻)</a><BR>⏎
813<A NAME="no1">出典1</A> 送春唯有酒 銷日不過棋<春を送るには唯酒有り 日を銷するには棋に過ぎず>(白氏文集巻十六-九二〇 官舎閑題)<A HREF="#te1">(戻)</A><BR>⏎
c11534<a name="no13">出典13</a> 幾世しもあらじ我が身をなもかく海人の刈る藻に思ひ乱るる(古今集雑下-九三四 読人しらず)<a href="#te13">(戻)</a><BR>⏎
825<A NAME="no13">出典13</A> 幾世しもあらじ我が身をなもかく海人の刈る藻に思ひ乱るる(古今集雑下-九三四 読人しらず)<A HREF="#te13">(戻)</A><BR>⏎
c11537<a name="no16">出典16</a> 我が心慰めかねつ更級や姥捨山に照る月を見て(古今集雑上-八七八読人しらず)<a href="#te16">(戻)</a><BR>⏎
828<A NAME="no16">出典16</A> 我が心慰めかねつ更級や姥捨山に照る月を見て(古今集雑上-八七八 読人しらず)<A HREF="#te16">(戻)</A><BR>⏎
c11546<a name="no25">出典25</a> 浅くこそ人は見るらめ関川の絶ゆる心はあらじとぞ思ふ 関川の岩間を潜る水浅み絶えぬべくのみ見ゆる心を(大和物語-一六一一六二)<a href="#te25">(戻)</a><BR>⏎
837<A NAME="no25">出典25</A> 浅くこそ人は見るらめ関川の絶ゆる心はあらじとぞ思ふ 関川の岩間を潜る水浅み絶えぬべくのみ見ゆる心を(大和物語-一六一一六二)<A HREF="#te25">(戻)</A><BR>⏎
c11552<a name="no31">出典31</a> 憂きながら消えせぬは身なりけりうらやましきは水の泡かな(拾遺集哀傷-一三一三 中務)<a href="#te31">(戻)</a><BR>⏎
843<A NAME="no31">出典31</A> 憂きながら消えせぬは身なりけりうらやましきは水の泡かな(拾遺集哀傷-一三一三 中務)<A HREF="#te31">(戻)</A><BR>⏎
d11575
text491576<p><a name="in102">【校訂】<BR>866 
cd94:921578-1671</a><a name="k01">校訂1</a><a name="in102"> たてまつらせ--たてまつり(り/#)らせ</a><a href="#t01">(戻)</a><a name="in102"><BR>⏎
</a><a name="
k02">校訂2</a><a name="in102"> 頼もし人--たのもしき(き/#)人</a><a href="#t02">(戻)</a><a name="in102"><BR>⏎
</a><a name="
k03">校訂3</a><a name="in102"> 人--人/\(/\/#)</a><a href="#t03">(戻)</a><a name="in102"><BR>⏎
</a><a name="
k04">校訂4</a><a name="in102"> 数--(/+数<朱>)</a><a href="#t04">(戻)</a><a name="in102"><BR>⏎
</a><a name="
k05">校訂5</a><a name="in102"> おはせば--おはせし(し/#)は</a><a href="#t05">(戻)</a><a name="in102"><BR>⏎
</a><a name="
k06">校訂6</a><a name="in102"> 右の大殿--右大臣(臣/#)殿</a><a href="#t06">(戻)</a><a name="in102"><BR>⏎
</a><a name="
k07">校訂7</a><a name="in102"> 思ひ--思(/+ひ)</a><a href="#t07">(戻)</a><a name="in102"><BR>⏎
</a><a name="
k08">校訂8</a><a name="in102"> 例ならず--例の(の/$)ならす</a><a href="#t08">(戻)</a><a name="in102"><BR>⏎
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k09">校訂9</a><a name="in102"> 右の大殿--右大臣(臣/#)殿</a><a href="#t09">(戻)</a><a name="in102"><BR>⏎
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k10">校訂10</a><a name="in102"> 思ふ思ふ--思(/+ふ)/\</a><a href="#t10">(戻)</a><a name="in102"><BR>⏎
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k11">校訂11</a><a name="in102"> したがひつつ--したかひて(て/$<朱>)つゝ</a><a href="#t11">(戻)</a><a name="in102"><BR>⏎
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k12">校訂12</a><a name="in102"> まどろまず--まとろむ(む/$)ます</a><a href="#t12">(戻)</a><a name="in102"><BR>⏎
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k13">校訂13</a><a name="in102"> 見過ぎて--見すく(く/#)きて</a><a href="#t13">(戻)</a><a name="in102"><BR>⏎
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k14">校訂14</a><a name="in102"> きこゆべき--*きこえへき</a><a href="#t14">(戻)</a><a name="in102"><BR>⏎
</a><a name="
k15">校訂15</a><a name="in102"> 心苦しき--心くるし(し/+き)</a><a href="#t15">(戻)</a><a name="in102"><BR>⏎
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k16">校訂16</a><a name="in102"> はべりしに--侍へ(へ/#)しに</a><a href="#t16">(戻)</a><a name="in102"><BR>⏎
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k17">校訂17</a><a name="in102"> のたまはせよ--の給(給/+は)せよ</a><a href="#t17">(戻)</a><a name="in102"><BR>⏎
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k18">校訂18</a><a name="in102"> ゐなばや、など--ゐなはやと(と/#)なと</a><a href="#t18">(戻)</a><a name="in102"><BR>⏎
</a><a name="
k19">校訂19</a><a name="in102"> おきたまひて--をきて(て/#)給て</a><a href="#t19">(戻)</a><a name="in102"><BR>⏎
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k20">校訂20</a><a name="in102"> 折ふし--(/+おり)ふし</a><a href="#t20">(戻)</a><a name="in102"><BR>⏎
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k21">校訂21</a><a name="in102"> のたまへば--(/+の給へは)</a><a href="#t21">(戻)</a><a name="in102"><BR>⏎
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k22">校訂22</a><a name="in102"> べけれとて--へき(き/#)けれとて</a><a href="#t22">(戻)</a><a name="in102"><BR>⏎
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k23">校訂23</a><a name="in102"> ためらはぬ--え(え/#)ためらはぬ</a><a href="#t23">(戻)</a><a name="in102"><BR>⏎
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k24">校訂24</a><a name="in102"> されど--*さりと</a><a href="#t24">(戻)</a><a name="in102"><BR>⏎
</a><a name="
k25">校訂25</a><a name="in102"> たまひし--給う(う/#)し</a><a href="#t25">(戻)</a><a name="in102"><BR>⏎
</a><a name="
k26">校訂26</a><a name="in102"> 宮をおきたてまつりて--宮をゝきて(て/#)たてまつりて</a><a href="#t26">(戻)</a><a name="in102"><BR>⏎
</a><a name="
k27">校訂27</a><a name="in102"> さまの--さま/\(/\/$<朱>)の</a><a href="#t27">(戻)</a><a name="in102"><BR>⏎
</a><a name="
k28">校訂28</a><a name="in102"> 縁を--えん(ん/+を)</a><a href="#t28">(戻)</a><a name="in102"><BR>⏎
</a><a name="
k29">校訂29</a><a name="in102"> 渡りなむ--わたりなむと(と/#)</a><a href="#t29">(戻)</a><a name="in102"><BR>⏎
</a><a name="
k30">校訂30</a><a name="in102"> いとほしくと--いとほし(し/+く<朱>)と</a><a href="#t30">(戻)</a><a name="in102"><BR>⏎
</a><a name="
k31">校訂31</a><a name="in102"> さりぬべく--さりぬへき(き/#)く</a><a href="#t31">(戻)</a><a name="in102"><BR>⏎
</a><a name="
k32">校訂32</a><a name="in102"> 御心ばへ--御こゝろはへも(も/$<朱>)</a><a href="#t32">(戻)</a><a name="in102"><BR>⏎
</a><a name="
k33">校訂33</a><a name="in102"> 浅う--あさまし(まし/$)う</a><a href="#t33">(戻)</a><a name="in102"><BR>⏎
</a><a name="
k34">校訂34</a><a name="in102"> 聞こえさせたまひて--きこえさせて(て/#)給て</a><a href="#t34">(戻)</a><a name="in102"><BR>⏎
</a><a name="
k35">校訂35</a><a name="in102"> 柱もとの--はしらの(の/$)もとの</a><a href="#t35">(戻)</a><a name="in102"><BR>⏎
</a><a name="
k36">校訂36</a><a name="in102"> かく--かく(かく/$<朱>)かく</a><a href="#t36">(戻)</a><a name="in102"><BR>⏎
</a><a name="
k37">校訂37</a><a name="in102"> いかさまにして--いかさまし(し/$)にして</a><a href="#t37">(戻)</a><a name="in102"><BR>⏎
</a><a name="
k38">校訂38</a><a name="in102"> うちつぶれて--(/+うち<朱>)つふれて</a><a href="#t38">(戻)</a><a name="in102"><BR>⏎
</a><a name="
k39">校訂39</a><a name="in102"> 渡りたまへる--わたりぬ(ぬ/#)給へる</a><a href="#t39">(戻)</a><a name="in102"><BR>⏎
</a><a name="
k40">校訂40</a><a name="in102"> 契りのたまふ--ちきり給(給/$)のたまふ</a><a href="#t40">(戻)</a><a name="in102"><BR>⏎
</a><a name="
k41">校訂41</a><a name="in102"> たまへど--給へとも(も/#<朱>)</a><a href="#t41">(戻)</a><a name="in102"><BR>⏎
</a><a name="
k42">校訂42</a><a name="in102"> 御匂ひ--御(御/&御)にほ(にほ/#にほ<朱>)ひ</a><a href="#t42">(戻)</a><a name="in102"><BR>⏎
</a><a name="
k43">校訂43</a><a name="in102"> 思ひ比ぶれど--思くらふれは(は/#<朱>)と</a><a href="#t43">(戻)</a><a name="in102"><BR>⏎
</a><a name="
k44">校訂44</a><a name="in102"> 見馴れむ--見なん(ん/#)れん</a><a href="#t44">(戻)</a><a name="in102"><BR>⏎
</a><a name="
k45">校訂45</a><a name="in102"> など--なん(ん/$)と</a><a href="#t45">(戻)</a><a name="in102"><BR>⏎
</a><a name="
k46">校訂46</a><a name="in102"> ならぬ--ならす(す/#<朱>)ぬ</a><a href="#t46">(戻)</a><a name="in102"><BR>⏎
</a><a name="
k47">校訂47</a><a name="in102"> なきにしも--なきに(に/#<朱>)にしも</a><a href="#t47">(戻)</a><a name="in102"><BR>⏎
</a><a name="
k48">校訂48</a><a name="in102"> わびては--わひてはの(の/#<朱>)</a><a href="#t48">(戻)</a><a name="in102"><BR>⏎
</a><a name="
k49">校訂49</a><a name="in102"> かよはむを--かよはさ(さ/#<朱>)むを</a><a href="#t49">(戻)</a><a name="in102"><BR>⏎
</a><a name="
k50">校訂50</a><a name="in102"> 怨み--うらみゝ(ゝ/#)</a><a href="#t50">(戻)</a><a name="in102"><BR>⏎
</a><a name="
k51">校訂51</a><a name="in102"> きこゆれ」と--きこゆれは(は/$<朱>)と</a><a href="#t51">(戻)</a><a name="in102"><BR>⏎
</a><a name="
k52">校訂52</a><a name="in102"> 山里--(/+山)さと</a><a href="#t52">(戻)</a><a name="in102"><BR>⏎
</a><a name="
k53">校訂53</a><a name="in102"> 見知りぬ--見知(知/#<朱>)しりぬ</a><a href="#t53">(戻)</a><a name="in102"><BR>⏎
</a><a name="
k54">校訂54</a><a name="in102"> 遠き--とを/\(/\/#<朱>)き</a><a href="#t54">(戻)</a><a name="in102"><BR>⏎
</a><a name="
k55">校訂55</a><a name="in102"> 嘆くめりしに--なけくめりしを(を/#<朱>)に</a><a href="#t55">(戻)</a><a name="in102"><BR>⏎
</a><a name="
k56">校訂56</a><a name="in102"> 明かすに--あかす(す/+に)</a><a href="#t56">(戻)</a><a name="in102"><BR>⏎
</a><a name="
k57">校訂57</a><a name="in102"> 思しけむを--おほしけん(ん/+を)</a><a href="#t57">(戻)</a><a name="in102"><BR>⏎
</a><a name="
k58">校訂58</a><a name="in102"> 屍の--かはねを(を/#)の</a><a href="#t58">(戻)</a><a name="in102"><BR>⏎
</a><a name="
k59">校訂59</a><a name="in102"> いぶかしき--いふかしく(く/#<朱>)き</a><a href="#t59">(戻)</a><a name="in102"><BR>⏎
</a><a name="
k60">校訂60</a><a name="in102"> 恥づかしく--はつかく(く/#<朱>)しく</a><a href="#t60">(戻)</a><a name="in102"><BR>⏎
</a><a name="
k61">校訂61</a><a name="in102"> いと忍びて、はかなきほどにもののたまはせける--(/+いと忍ひてはかなき程に物の給はせける<朱>)</a><a href="#t61">(戻)</a><a name="in102"><BR>⏎
</a><a name="
k62">校訂62</a><a name="in102"> などこそ--*なとゝそ</a><a href="#t62">(戻)</a><a name="in102"><BR>⏎
</a><a name="
k63">校訂63</a><a name="in102"> 触れたらむ人は--*ふれたらんは人は</a><a href="#t63">(戻)</a><a name="in102"><BR>⏎
</a><a name="
k64">校訂64</a><a name="in102"> 心せよ--*心よせ</a><a href="#t64">(戻)</a><a name="in102"><BR>⏎
</a><a name="
k65">校訂65</a><a name="in102"> 琵琶を--ひは(は/#<朱>)わを</a><a href="#t65">(戻)</a><a name="in102"><BR>⏎
</a><a name="
k66">校訂66</a><a name="in102"> あらむ--あらむは(は/#)</a><a href="#t66">(戻)</a><a name="in102"><BR>⏎
</a><a name="
k67">校訂67</a><a name="in102"> あらねど--な(な/#あ)らねと</a><a href="#t67">(戻)</a><a name="in102"><BR>⏎
</a><a name="
k68">校訂68</a><a name="in102"> 昔の御物語--むかし(し/+の御<朱>)ものかたり</a><a href="#t68">(戻)</a><a name="in102"><BR>⏎
</a><a name="
k69">校訂69</a><a name="in102"> ものものしくも--もの/\しく(く/+も<朱>)</a><a href="#t69">(戻)</a><a name="in102"><BR>⏎
</a><a name="
k70">校訂70</a><a name="in102"> 聞こしめしおどろきて、御訪ぶらひども--*他本により補入</a><a href="#t70">(戻)</a><a name="in102"><BR>⏎
</a><a name="
k71">校訂71</a><a name="in102"> 参うで--*まかて</a><a href="#t71">(戻)</a><a name="in102"><BR>⏎
</a><a name="
k72">校訂72</a><a name="in102"> ひきつくろひたまひて--ひきつくろひて(て/#<朱>)給て</a><a href="#t72">(戻)</a><a name="in102"><BR>⏎
</a><a name="
k73">校訂73</a><a name="in102"> 右の大臣--ひたり(ひたり/$右)のおとゝ</a><a href="#t73">(戻)</a><a name="in102"><BR>⏎
</a><a name="
k74">校訂74</a><a name="in102"> 深かりけり--ふかく(く/#<朱>)かりけり</a><a href="#t74">(戻)</a><a name="in102"><BR>⏎
</a><a name="
k75">校訂75</a><a name="in102"> 漏り聞き--と(と/$も<朱>)りきゝ</a><a href="#t75">(戻)</a><a name="in102"><BR>⏎
</a><a name="
k76">校訂76</a><a name="in102"> 見せたまへる--みせはや(はや/$)給へる</a><a href="#t76">(戻)</a><a name="in102"><BR>⏎
</a><a name="
k77">校訂77</a><a name="in102"> 出でたまひぬ--いてぬ(ぬ/#<朱>)給ぬ</a><a href="#t77">(戻)</a><a name="in102"><BR>⏎
</a><a name="
k78">校訂78</a><a name="in102"> 鴬も--うくひも(も/$)すも</a><a href="#t78">(戻)</a><a name="in102"><BR>⏎
</a><a name="
k79">校訂79</a><a name="in102"> 宮の--宮(宮/+の<朱>)</a><a href="#t79">(戻)</a><a name="in102"><BR>⏎
</a><a name="
k80">校訂80</a><a name="in102"> 右の大臣--ひたり(ひたり/#みき)のおとゝ</a><a href="#t80">(戻)</a><a name="in102"><BR>⏎
</a><a name="
k81">校訂81</a><a name="in102"> たまへるなめり--給へり(り/#)るなめり</a><a href="#t81">(戻)</a><a name="in102"><BR>⏎
</a><a name="
k82">校訂82</a><a name="in102"> 右の大殿--ひたり(ひたり/#みき)のおとゝ</a><a href="#t82">(戻)</a><a name="in102"><BR>⏎
</a><a name="
k83">校訂83</a><a name="in102"> 人--(/+人<朱>)</a><a href="#t83">(戻)</a><a name="in102"><BR>⏎
</a><a name="
k84">校訂84</a><a name="in102"> 姿ども--すかたとん(ん/$も<朱>)</a><a href="#t84">(戻)</a><a name="in102"><BR>⏎
</a><a name="
k85">校訂85</a><a name="in102"> ゆめ--ゆめの(の/$)</a><a href="#t85">(戻)</a><a href="#k51"><BR>⏎
</a><a name="k86">校訂86</a><a href="#k51"> 入るに--弁のあま(弁のあま/$)いるに</a><a href="#t86">(戻)</a><a href="#k51"><BR>⏎
</a></p>⏎
<p><a href="index.html">源氏物語の世界ヘ</a><a href="#k51"><BR>⏎
</a><a href="r
oman49.html">ローマ字版</a><a href="#k51"><BR>⏎
</a><a href="version49.html">現代語訳 </a><a href="#k51"><BR>⏎
</a><a href="note
49.html">注釈</a><a href="#k51"><BR>⏎
</a><a href="data49.html">大島本</a><a href="#k51"><BR>⏎
</a><a href="okuiri49.html">
自筆本奥入</a><a href="#k51"><BR>⏎
</a></p>⏎
868-959<A NAME="k01">校訂1</A> たてまつらせ--たてまつり(り/#)らせ<A HREF="#t01">(戻)</A><BR>⏎
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A NAME="k02">校訂2</A> 頼もし人--たのもしき(き/#)人<A HREF="#t02">(戻)</A><BR>⏎
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A NAME="k03">校訂3</A> 人--人/\(/\/#)<A HREF="#t03">(戻)</A><BR>⏎
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A NAME="k04">校訂4</A> 数--(/+数<朱>)<A HREF="#t04">(戻)</A><BR>⏎
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A NAME="k05">校訂5</A> おはせば--おはせし(し/#)は<A HREF="#t05">(戻)</A><BR>⏎
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A NAME="k06">校訂6</A> 右の大殿--右大臣(臣/#)殿<A HREF="#t06">(戻)</A><BR>⏎
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A NAME="k07">校訂7</A> 思ひ--思(/+ひ)<A HREF="#t07">(戻)</A><BR>⏎
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A NAME="k08">校訂8</A> 例ならず--例の(の/$)ならす<A HREF="#t08">(戻)</A><BR>⏎
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A NAME="k09">校訂9</A> 右の大殿--右大臣(臣/#)殿<A HREF="#t09">(戻)</A><BR>⏎
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A NAME="k10">校訂10</A> 思ふ思ふ--思(/+ふ)/\<A HREF="#t10">(戻)</A><BR>⏎
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A NAME="k11">校訂11</A> したがひつつ--したかひて(て/$<朱>)つゝ<A HREF="#t11">(戻)</A><BR>⏎
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A NAME="k12">校訂12</A> まどろまず--まとろむ(む/$)ます<A HREF="#t12">(戻)</A><BR>⏎
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A NAME="k13">校訂13</A> 見過ぎて--見すく(く/#)きて<A HREF="#t13">(戻)</A><BR>⏎
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A NAME="k14">校訂14</A> きこゆべき--*きこえへき<A HREF="#t14">(戻)</A><BR>⏎
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A NAME="k15">校訂15</A> 心苦しき--心くるし(し/+き)<A HREF="#t15">(戻)</A><BR>⏎
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A NAME="k16">校訂16</A> はべりしに--侍へ(へ/#)しに<A HREF="#t16">(戻)</A><BR>⏎
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A NAME="k17">校訂17</A> のたまはせよ--の給(給/+は)せよ<A HREF="#t17">(戻)</A><BR>⏎
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A NAME="k18">校訂18</A> ゐなばや、など--ゐなはやと(と/#)なと<A HREF="#t18">(戻)</A><BR>⏎
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A NAME="k19">校訂19</A> おきたまひて--をきて(て/#)給て<A HREF="#t19">(戻)</A><BR>⏎
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A NAME="k20">校訂20</A> 折ふし--(/+おり)ふし<A HREF="#t20">(戻)</A><BR>⏎
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A NAME="k22">校訂22</A> べけれとて--へき(き/#)けれとて<A HREF="#t22">(戻)</A><BR>⏎
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A NAME="k23">校訂23</A> ためらはぬ--え(え/#)ためらはぬ<A HREF="#t23">(戻)</A><BR>⏎
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A NAME="k26">校訂26</A> 宮をおきたてまつりて--宮をゝきて(て/#)たてまつりて<A HREF="#t26">(戻)</A><BR>⏎
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A NAME="k28">校訂28</A> 縁を--えん(ん/+を)<A HREF="#t28">(戻)</A><BR>⏎
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A NAME="k29">校訂29</A> 渡りなむ--わたりなむと(と/#)<A HREF="#t29">(戻)</A><BR>⏎
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A NAME="k30">校訂30</A> いとほしくと--いとほし(し/+く<朱>)と<A HREF="#t30">(戻)</A><BR>⏎
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A NAME="k32">校訂32</A> 御心ばへ--御こゝろはへも(も/$<朱>)<A HREF="#t32">(戻)</A><BR>⏎
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A NAME="k33">校訂33</A> 浅う--あさまし(まし/$)う<A HREF="#t33">(戻)</A><BR>⏎
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A NAME="k34">校訂34</A> 聞こえさせたまひて--きこえさせて(て/#)給て<A HREF="#t34">(戻)</A><BR>⏎
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A NAME="k35">校訂35</A> 柱もとの--はしらの(の/$)もとの<A HREF="#t35">(戻)</A><BR>⏎
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A NAME="k36">校訂36</A> かく--かく(かく/$<朱>)かく<A HREF="#t36">(戻)</A><BR>⏎
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A NAME="k38">校訂38</A> うちつぶれて--(/+うち<朱>)つふれて<A HREF="#t38">(戻)</A><BR>⏎
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A NAME="k39">校訂39</A> 渡りたまへる--わたりぬ(ぬ/#)給へる<A HREF="#t39">(戻)</A><BR>⏎
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A NAME="k41">校訂41</A> たまへど--給へとも(も/#<朱>)<A HREF="#t41">(戻)</A><BR>⏎
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A NAME="k42">校訂42</A> 御匂ひ--御(御/&御)にほ(にほ/#にほ<朱>)ひ<A HREF="#t42">(戻)</A><BR>⏎
<
A NAME="k43">校訂43</A> 思ひ比ぶれど--思くらふれは(は/#<朱>)と<A HREF="#t43">(戻)</A><BR>⏎
<
A NAME="k44">校訂44</A> 見馴れむ--見なん(ん/#)れん<A HREF="#t44">(戻)</A><BR>⏎
<
A NAME="k45">校訂45</A> など--なん(ん/$)と<A HREF="#t45">(戻)</A><BR>⏎
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A NAME="k46">校訂46</A> ならぬ--ならす(す/#<朱>)ぬ<A HREF="#t46">(戻)</A><BR>⏎
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A NAME="k47">校訂47</A> なきにしも--なきに(に/#<朱>)にしも<A HREF="#t47">(戻)</A><BR>⏎
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A NAME="k48">校訂48</A> わびては--わひてはの(の/#<朱>)<A HREF="#t48">(戻)</A><BR>⏎
<
A NAME="k49">校訂49</A> かよはむを--かよはさ(さ/#<朱>)むを<A HREF="#t49">(戻)</A><BR>⏎
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A NAME="k50">校訂50</A> 怨み--うらみゝ(ゝ/#)<A HREF="#t50">(戻)</A><BR>⏎
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A NAME="k51">校訂51</A> きこゆれ」と--きこゆれは(は/$<朱>)と<A HREF="#t51">(戻)</A><BR>⏎
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A NAME="k52">校訂52</A> 山里--(/+山)さと<A HREF="#t52">(戻)</A><BR>⏎
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A NAME="k53">校訂53</A> 見知りぬ--見知(知/#<朱>)しりぬ<A HREF="#t53">(戻)</A><BR>⏎
<
A NAME="k54">校訂54</A> 遠き--とを/\(/\/#<朱>)き<A HREF="#t54">(戻)</A><BR>⏎
<
A NAME="k55">校訂55</A> 嘆くめりしに--なけくめりしを(を/#<朱>)に<A HREF="#t55">(戻)</A><BR>⏎
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A NAME="k56">校訂56</A> 明かすに--あかす(す/+に)<A HREF="#t56">(戻)</A><BR>⏎
<
A NAME="k57">校訂57</A> 思しけむを--おほしけん(ん/+を)<A HREF="#t57">(戻)</A><BR>⏎
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A NAME="k58">校訂58</A> 屍の--かはねを(を/#)の<A HREF="#t58">(戻)</A><BR>⏎
<
A NAME="k59">校訂59</A> いぶかしき--いふかしく(く/#<朱>)き<A HREF="#t59">(戻)</A><BR>⏎
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A NAME="k60">校訂60</A> 恥づかしく--はつかく(く/#<朱>)しく<A HREF="#t60">(戻)</A><BR>⏎
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A NAME="k61">校訂61</A> いと忍びて、はかなきほどにもののたまはせける--(/+いと忍ひてはかなき程に物の給はせける<朱>)<A HREF="#t61">(戻)</A><BR>⏎
<
A NAME="k62">校訂62</A> などこそ--*なとゝそ<A HREF="#t62">(戻)</A><BR>⏎
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A NAME="k63">校訂63</A> 触れたらむ人は--*ふれたらんは人は<A HREF="#t63">(戻)</A><BR>⏎
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A NAME="k64">校訂64</A> 心せよ--*心よせ<A HREF="#t64">(戻)</A><BR>⏎
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A NAME="k65">校訂65</A> 琵琶を--ひは(は/#<朱>)わを<A HREF="#t65">(戻)</A><BR>⏎
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A NAME="k66">校訂66</A> あらむ--あらむは(は/#)<A HREF="#t66">(戻)</A><BR>⏎
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A NAME="k67">校訂67</A> あらねど--な(な/#あ)らねと<A HREF="#t67">(戻)</A><BR>⏎
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A NAME="k68">校訂68</A> 昔の御物語--むかし(し/+の御<朱>)ものかたり<A HREF="#t68">(戻)</A><BR>⏎
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A NAME="k69">校訂69</A> ものものしくも--もの/\しく(く/+も<朱>)<A HREF="#t69">(戻)</A><BR>⏎
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A NAME="k70">校訂70</A> 聞こしめしおどろきて、御訪ぶらひども--*他本により補入<A HREF="#t70">(戻)</A><BR>⏎
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A NAME="k71">校訂71</A> 参うで--*まかて<A HREF="#t71">(戻)</A><BR>⏎
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A NAME="k72">校訂72</A> ひきつくろひたまひて--ひきつくろひて(て/#<朱>)給て<A HREF="#t72">(戻)</A><BR>⏎
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A NAME="k73">校訂73</A> 右の大臣--ひたり(ひたり/$右)のおとゝ<A HREF="#t73">(戻)</A><BR>⏎
<
A NAME="k74">校訂74</A> 深かりけり--ふかく(く/#<朱>)かりけり<A HREF="#t74">(戻)</A><BR>⏎
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A NAME="k75">校訂75</A> 漏り聞き--と(と/$も<朱>)りきゝ<A HREF="#t75">(戻)</A><BR>⏎
<
A NAME="k76">校訂76</A> 見せたまへる--みせはや(はや/$)給へる<A HREF="#t76">(戻)</A><BR>⏎
<
A NAME="k77">校訂77</A> 出でたまひぬ--いてぬ(ぬ/#<朱>)給ぬ<A HREF="#t77">(戻)</A><BR>⏎
<
A NAME="k78">校訂78</A> 鴬も--うくひも(も/$)すも<A HREF="#t78">(戻)</A><BR>⏎
<
A NAME="k79">校訂79</A> 宮の--宮(宮/+の<朱>)<A HREF="#t79">(戻)</A><BR>⏎
<
A NAME="k80">校訂80</A> 右の大臣--ひたり(ひたり/#みき)のおとゝ<A HREF="#t80">(戻)</A><BR>⏎
<
A NAME="k81">校訂81</A> たまへるなめり--給へり(り/#)るなめり<A HREF="#t81">(戻)</A><BR>⏎
<
A NAME="k82">校訂82</A> 右の大殿--ひたり(ひたり/#みき)のおとゝ<A HREF="#t82">(戻)</A><BR>⏎
<
A NAME="k83">校訂83</A> 人--(/+人<朱>)<A HREF="#t83">(戻)</A><BR>⏎
<
A NAME="k84">校訂84</A> 姿ども--すかたとん(ん/$も<朱>)<A HREF="#t84">(戻)</A><BR>⏎
<
A NAME="k85">校訂85</A> ゆめ--ゆめの(の/$)<A HREF="#t85">(戻)</A><BR>⏎
<A NAME="k86">校訂86</A> 入るに--弁のあま(弁のあま/$)いるに<A HREF="#t86">(戻)</A><BR>⏎
<
A HREF="index.html">源氏物語の世界ヘ</A><BR>⏎
<A HREF="roman49.html">ローマ字版 </A><BR>⏎
<A HREF="version49.html">現代語訳 </A><BR>⏎
<A HREF="note49.html">注釈</A><BR>⏎
<A HREF="data49.html">大島本</A><BR>⏎
<A HREF="okuiri49.html">自筆本奥入</A><BR>⏎
i0964
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<p>First updated 9/20/1996(ver.1-1)<BR>⏎
8<BODY>⏎
cd3:210-12Last updated 7/21/2011(ver.2-2)<BR>渋谷栄一校訂(C)</p>⏎
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9-10<ADDRESS>Last updated 7/21/2011(ver.2-2)<BR>
渋谷栄一校訂(C)</ADDRESS>⏎
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c1106<LI>宇治に到着、薫、京に手紙を書く---<A HREF="#in67">おはし着きて、「あはれ亡き魂や宿りて</A>⏎
102<LI>宇治に到着、薫、京に手紙を書く---<A HREF="#in67">おはし着きて、「あはれ亡き魂や宿りて</A>⏎
d1110<P>⏎
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text50114 <H4>第一章 浮舟の物語 左近少将との縁談とその破綻</H4>108 
text50115 <A NAME="in11">[第一段 浮舟の母、娘の良縁を願う]</A><BR>109 
d1116<P>⏎
d1118<P>⏎
cd4:2119-122 かの尼君のもとよりぞ、母北の方にのたまひしさまなど、たびたびほのめかしおこせけれど、まめやかに御心とまるべきこととも思はねば、たださまでも尋ね知りたまふらむこと、とばかりをかしう思ひて、人の御ほどのただ今世にありがたげなるをも、数ならましかば、などぞよろづに思ひける。<BR>⏎
<P>⏎
 守の子どもは、母亡くなりにけるなど、あまたこの腹にも、姫君とつけてかしづくあり、まだ幼きなど、すぎすぎに五六人ありければ、さまざまにこの扱ひをしつつ、異人と思ひ隔てたる心のありければ、常にいとつらきものに守をも恨みつつ、「いかでひきすぐれて、おもだたしきほどにしなしても見えにしがな」と、明け暮れ、この母君は思ひ扱ひける。<BR>⏎
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111-112 かの尼君のもとよりぞ、母北の方にのたまひしさまなど、たびたびほのめかしおこせけれど、まめやかに御心とまるべきこととも思はねば、たださまでも尋ね知りたまふらむこと、とばかりをかしう思ひて、人の御ほどのただ今世にありがたげなるをも、数ならましかば、などぞよろづに思ひける。<BR>⏎
 守の子どもは、母亡くなりにけるなど、あまたこの腹にも、姫君とつけてかしづくあり、まだ幼きなど、すぎすぎに五六人ありければ、さまざまにこの扱ひをしつつ、異人と思ひ隔てたる心のありければ、常にいとつらきものに守をも恨みつつ、「いかでひきすぐれて、おもだたしきほどにしなしても見えにしがな」と、明け暮れ、この母君は思ひ扱ひける。<BR>⏎
d1124<P>⏎
cd2:1125-126 娘多かりと聞きて、なま君達めく人びとも、おとなひ言ふ、いとあまたありけり。初めの腹の二三人は、皆さまざまに配りて、大人びさせたり。今はわが姫君を、「思ふやうにて見たてまつらばや」と、明け暮れ護りて、なでかしづくこと限りなし。<BR>⏎
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114 娘多かりと聞きて、なま君達めく人びとも、おとなひ言ふ、いとあまたありけり。初めの腹の二三人は、皆さまざまに配りて、大人びさせたり。今はわが姫君を、「思ふやうにて見たてまつらばや」と、明け暮れ護りて、なでかしづくこと限りなし。<BR>⏎
text50127 <A NAME="in12">[第二段 継父常陸介と求婚者左近少将]</A><BR>115 
d1128<P>⏎
d1130<P>⏎
d1132<P>⏎
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cd2:1137-138 などをかしき方に言ひなして、心を尽くし合へる中に、左近少将とて、年二十二三ばかりのほどにて、心ばせしめやかに、才ありといふ方は、人に許されたれど、きらきらしう今めいてなどはえあらぬにや、通ひし所なども絶えて、いとねむごろに言ひわたりけり。<BR>⏎
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120 などをかしき方に言ひなして、心を尽くし合へる中に、左近少将とて、年二十二三ばかりのほどにて、心ばせしめやかに、才ありといふ方は、人に許されたれど、きらきらしう今めいてなどはえあらぬにや、通ひし所なども絶えて、いとねむごろに言ひわたりけり。<BR>⏎
d1140<P>⏎
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cd2:1157-158 と常に恨みけり。<BR>⏎
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130 と常に恨みけり。<BR>⏎
text50159 <A NAME="in13">[第三段 左近少将、浮舟が継子だと知る]</A><BR>131 
d1160<P>⏎
cd2:1161-162 かくてこの少将、契りしほどを待ちつけで、「同じくは疾く」とせめければ、わが心一つに、かう思ひ急ぐも、いとつつましう、人の心の知りがたさを思ひて、初めより伝へそめける人の来たるに、近う呼び寄せて語らふ。<BR>⏎
<P>⏎
132 かくてこの少将、契りしほどを待ちつけで、「同じくは疾く」とせめければ、わが心一つに、かう思ひ急ぐも、いとつつましう、人の心の知りがたさを思ひて、初めより伝へそめける人の来たるに、近う呼び寄せて語らふ。<BR>⏎
d1164<P>⏎
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d1168<P>⏎
d1170<P>⏎
d1172<P>⏎
cd2:1173-174 「初めよりさらに、守の御娘にあらずといふことをなむ聞かざりつる。同じことなれど、人聞きもけ劣りたる心地して、出で入りせむにもよからずなむあるべき。ようも案内せで、浮かびたることを伝へける」<BR>⏎
<P>⏎
138 「初めよりさらに、守の御娘にあらずといふことをなむ聞かざりつる。同じことなれど、人聞きもけ劣りたる心地して、出で入りせむにもよからずなむあるべき。ようも案内せで、浮かびたることを伝へける」<BR>⏎
d1176<P>⏎
cd6:3177-182 「詳しくも知りたまへず。女どもの知るたよりにて、仰せ言を伝へ始めはべりしに、中にかしづく娘とのみ聞きはべれば、守のにこそはとこそ思ひたまへつれ。異人の子持たまへらむとも、問ひ聞きはべらざりつるなり。<BR>⏎
<P>⏎
 容貌、心もすぐれてものしたまふこと、母上のかなしうしたまひて、おもだたしう気高きことをせむと、あがめかしづかると聞きはべりしかば、いかでかの辺のこと伝へつべからむ人もがな、とのたまはせしかば、さるたより知りたまへりと、取り申ししなり。さらに浮かびたる罪、はべるまじきことなり」<BR>⏎
<P>⏎
 と腹悪しく言葉多かる者にて、申すに、君、いとあてやかならぬさまにて、<BR>⏎
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140-142 「詳しくも知りたまへず。女どもの知るたよりにて、仰せ言を伝へ始めはべりしに、中にかしづく娘とのみ聞きはべれば、守のにこそはとこそ思ひたまへつれ。異人の子持たまへらむとも、問ひ聞きはべらざりつるなり。<BR>⏎
 容貌、心もすぐれてものしたまふこと、母上のかなしうしたまひて、おもだたしう気高きことをせむと、あがめかしづかると聞きはべりしかば、いかでかの辺のこと伝へつべからむ人もがな、とのたまはせしかば、さるたより知りたまへりと、取り申ししなり。さらに浮かびたる罪、はべるまじきことなり」<BR>⏎
 と腹悪しく言葉多かる者にて、申すに、君、いとあてやかならぬさまにて、<BR>⏎
d1184<P>⏎
d1186<P>⏎
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text50189 <A NAME="in14">[第四段 左近少将、常陸介の実娘を所望す]</A><BR>146 
d1190<P>⏎
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d1194<P>⏎
d1196<P>⏎
cd4:2197-200 「いさや。初めよりしか言ひ寄れることをおきて、また言はむこそうたてあれ。されどわが本意は、かの守の主の、人柄もものものしく、大人しき人なれば、後見にもせまほしう、見るところありて思ひ始めしことなり。もはら顔、容貌のすぐれたらむ女の願ひもなし。品あてに艶ならむ女を願はば、やすく得つべし。<BR>⏎
<P>⏎
 されど寂しうことうち合はぬ、みやび好める人の果て果ては、ものきよくもなく、人にも人ともおぼえたらぬを見れば、すこし人にそしらるとも、なだらかにて世の中を過ぐさむことを願ふなり。守に、かくなむと語らひて、さもと許すけしきあらば、何かは、さも」<BR>⏎
<P>⏎
150-151 「いさや。初めよりしか言ひ寄れることをおきて、また言はむこそうたてあれ。されどわが本意は、かの守の主の、人柄もものものしく、大人しき人なれば、後見にもせまほしう、見るところありて思ひ始めしことなり。もはら顔、容貌のすぐれたらむ女の願ひもなし。品あてに艶ならむ女を願はば、やすく得つべし。<BR>⏎
 されど寂しうことうち合はぬ、みやび好める人の果て果ては、ものきよくもなく、人にも人ともおぼえたらぬを見れば、すこし人にそしらるとも、なだらかにて世の中を過ぐさむことを願ふなり。守に、かくなむと語らひて、さもと許すけしきあらば、何かは、さも」<BR>⏎
d1202<P>⏎
text50203 <A NAME="in15">[第五段 常陸介、左近少将に満足す]</A><BR>153 
d1204<P>⏎
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d1212<P>⏎
cd2:1213-214 となま荒々しきけしきなれど、<BR>⏎
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158 となま荒々しきけしきなれど、<BR>⏎
d1216<P>⏎
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d1220<P>⏎
d1222<P>⏎
cd4:2223-226 をなむ切にそしり申す人びとあまたはべるなれば、ただ今思しわづらひてなむ。<BR>⏎
<P>⏎
 『初めよりただきらぎらしう、人の後見と頼みきこえむに、堪へたまへる御おぼえを選び申して、聞こえ始め申ししなり。さらに異人ものしたまふらむといふこと知らざりければ、もとの心ざしのままに、まだ幼きものあまたおはすなるを、許いたまはば、いとどうれしくなむ。御けしき見て参うで来』<BR>⏎
<P>⏎
163-164 をなむ切にそしり申す人びとあまたはべるなれば、ただ今思しわづらひてなむ。<BR>⏎
 『初めよりただきらぎらしう、人の後見と頼みきこえむに、堪へたまへる御おぼえを選び申して、聞こえ始め申ししなり。さらに異人ものしたまふらむといふこと知らざりければ、もとの心ざしのままに、まだ幼きものあまたおはすなるを、許いたまはば、いとどうれしくなむ。御けしき見て参うで来』<BR>⏎
d1228<P>⏎
d1230<P>⏎
cd4:2231-234 「さらにかかる御消息はべるよし、詳しく承らず。まことに同じことに思うたまふべき人なれど、よからぬ童べあまたはべりて、はかばかしからぬ身に、さまざま思ひたまへ扱ふほどに、母なる者も、これを異人と思ひ分けたることと、くねり言ふことはべりて、ともかくも口入れさせぬ人のことにはべれば、ほのかに、しかなむ仰せらるることはべりとは聞きはべりしかど、なにがしを取り所に思しける御心は、知りはべらざりけり。<BR>⏎
<P>⏎
 さるはいとうれしく思ひたまへらるる御ことにこそはべるなれ。いとらうたしと思ふ女の童は、あまたの中に、これをなむ命にも代へむと思ひはべる。のたまふ人びとあれど、今の世の人の御心、定めなく聞こえはべるに、なかなか胸いたき目をや見むの憚りに、思ひ定むることもなくてなむ。<BR>⏎
<P>⏎
167-168 「さらにかかる御消息はべるよし、詳しく承らず。まことに同じことに思うたまふべき人なれど、よからぬ童べあまたはべりて、はかばかしからぬ身に、さまざま思ひたまへ扱ふほどに、母なる者も、これを異人と思ひ分けたることと、くねり言ふことはべりて、ともかくも口入れさせぬ人のことにはべれば、ほのかに、しかなむ仰せらるることはべりとは聞きはべりしかど、なにがしを取り所に思しける御心は、知りはべらざりけり。<BR>⏎
 さるはいとうれしく思ひたまへらるる御ことにこそはべるなれ。いとらうたしと思ふ女の童は、あまたの中に、これをなむ命にも代へむと思ひはべる。のたまふ人びとあれど、今の世の人の御心、定めなく聞こえはべるに、なかなか胸いたき目をや見むの憚りに、思ひ定むることもなくてなむ。<BR>⏎
d1236<P>⏎
d1238<P>⏎
cd2:1239-240 といとこまやかに言ふ。<BR>⏎
<P>⏎
171 といとこまやかに言ふ。<BR>⏎
text50241 <A NAME="in16">[第六段 仲人、左近少将を絶賛す]</A><BR>172 
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d1250<P>⏎
cd4:2251-254 御心はた、いみじう警策に、重々しくなむおはしますめる。あたら人の御婿を。かう聞きたまふほどに、思ほし立ちなむこそよからめ。かの殿には、我も我も婿にとりたてまつらむと、所々にはべるなれば、ここにしぶしぶなる御けはひあらば、他ざまにも思しなりなむ。これただうしろやすきことをとり申すなり」<BR>⏎
<P>⏎
 といと多く、よげに言ひ続くるに、いとあさましく鄙びたる守にて、うち笑みつつ聞きゐたり。<BR>⏎
<P>⏎
177-178 御心はた、いみじう警策に、重々しくなむおはしますめる。あたら人の御婿を。かう聞きたまふほどに、思ほし立ちなむこそよからめ。かの殿には、我も我も婿にとりたてまつらむと、所々にはべるなれば、ここにしぶしぶなる御けはひあらば、他ざまにも思しなりなむ。これただうしろやすきことをとり申すなり」<BR>⏎
 といと多く、よげに言ひ続くるに、いとあさましく鄙びたる守にて、うち笑みつつ聞きゐたり。<BR>⏎
text50255 <A NAME="in17">[第七段 左近少将、浮舟から常陸介の実娘にのり換える]</A><BR>179 
d1256<P>⏎
d1258<P>⏎
d1260<P>⏎
cd6:3261-266 当時の帝、しか恵み申したまふなれば、御後見は心もとなかるまじ。これかの御ためにも、なにがしが女の童のためにも、幸ひとあるべきことにやとも知らず」<BR>⏎
<P>⏎
 とよろしげに言ふ時に、いとうれしくなりて、妹にもかかることありとも語らず、あなたにも寄りつかで、守の言ひつることを、「いともいともよげにめでたし」と思ひて聞こゆれば、君、「すこし鄙びてぞある」とは聞きたまへど、憎からず、うち笑みて聞きゐたまへり。大臣にならむ贖労を取らむなどぞ、あまりおどろおどろしきことと、耳とどまりける。<BR>⏎
<P>⏎
 「さてかの北の方には、かくとものしつや。心ざしことに思ひ始めたまへらむに、ひき違へたらむ、ひがひがしくねぢけたるやうにとりなす人もあらむ。いさや」<BR>⏎
<P>⏎
182-184 当時の帝、しか恵み申したまふなれば、御後見は心もとなかるまじ。これかの御ためにも、なにがしが女の童のためにも、幸ひとあるべきことにやとも知らず」<BR>⏎
 とよろしげに言ふ時に、いとうれしくなりて、妹にもかかることありとも語らず、あなたにも寄りつかで、守の言ひつることを、「いともいともよげにめでたし」と思ひて聞こゆれば、君、「すこし鄙びてぞある」とは聞きたまへど、憎からず、うち笑みて聞きゐたまへり。大臣にならむ贖労を取らむなどぞ、あまりおどろおどろしきことと、耳とどまりける。<BR>⏎
 「さてかの北の方には、かくとものしつや。心ざしことに思ひ始めたまへらむに、ひき違へたらむ、ひがひがしくねぢけたるやうにとりなす人もあらむ。いさや」<BR>⏎
d1268<P>⏎
d1270<P>⏎
cd2:1271-272 と聞こゆ。「月ごろは、またなく世の常ならずかしづくと言ひつるものの、うちつけにかく言ふもいかならむと思へども、なほ一わたりはつらしと思はれ、人にはすこし誹らるとも、長らへて頼もしき事をこそ」と、いとまたくかしこき君にて、思ひ取りてければ、日をだにとり替へで、契りし暮れにぞ、おはし始めける。<BR>⏎
<P>⏎
187 と聞こゆ。「月ごろは、またなく世の常ならずかしづくと言ひつるものの、うちつけにかく言ふもいかならむと思へども、なほ一わたりはつらしと思はれ、人にはすこし誹らるとも、長らへて頼もしき事をこそ」と、いとまたくかしこき君にて、思ひ取りてければ、日をだにとり替へで、契りし暮れにぞ、おはし始めける。<BR>⏎
text50273 <A NAME="in18">[第八段 浮舟の縁談、破綻す]</A><BR>188 
d1274<P>⏎
d1276<P>⏎
cd4:2277-280 「あはれや。親に知られたてまつりて生ひ立ちたまはましかば、おはせずなりにたれども、大将殿ののたまふらむさまに、おほけなくとも、などかは思ひ立たざらまし。されどうちうちにこそかく思へ、他の音聞きは、守の子とも思ひ分かず、また実を尋ね知らむ人も、なかなか落としめ思ひぬべきこそ悲しけれ」<BR>⏎
<P>⏎
 など思ひ続く。<BR>⏎
<P>⏎
190-191 「あはれや。親に知られたてまつりて生ひ立ちたまはましかば、おはせずなりにたれども、大将殿ののたまふらむさまに、おほけなくとも、などかは思ひ立たざらまし。されどうちうちにこそかく思へ、他の音聞きは、守の子とも思ひ分かず、また実を尋ね知らむ人も、なかなか落としめ思ひぬべきこそ悲しけれ」<BR>⏎
 など思ひ続く。<BR>⏎
d1282<P>⏎
cd2:1283-284 など心一つに思ひ定むるも、媒の<A HREF="#k09">かく言よく</A><A NAME="t09">い</A>みじきに、女はましてすかされたるにやあらむ。明日明後日と思へば、心あわたたしくいそがしきに、こなたにも心のどかに居られたらず、そそめきありくに、守外より入り来て、ながながと、とどこほるところもなく言ひ続けて、<BR>⏎
<P>⏎
193 など心一つに思ひ定むるも、媒の<A HREF="#k09">かく言よく</A><A NAME="t09">い</A>みじきに、女はましてすかされたるにやあらむ。明日明後日と思へば、心あわたたしくいそがしきに、こなたにも心のどかに居られたらず、そそめきありくに、守外より入り来て、ながながと、とどこほるところもなく言ひ続けて、<BR>⏎
d1286<P>⏎
cd2:1287-288 などあやしく奥なく、人の思はむところも知らぬ人にて、言ひ散らしゐたり。<BR>⏎
<P>⏎
195 などあやしく奥なく、人の思はむところも知らぬ人にて、言ひ散らしゐたり。<BR>⏎
d1290<P>⏎
text50291 <H4>第二章 浮舟の物語 京に上り、匂宮夫妻と左近少将を見比べる</H4>197 
text50292 <A NAME="in21">[第一段 浮舟の母と乳母の嘆き]</A><BR>198 
d1293<P>⏎
d1295<P>⏎
d1297<P>⏎
d1299<P>⏎
d1301<P>⏎
cd2:1302-303 「何かこれも御幸ひにて違ふこととも知らず。かく心口惜しくいましける君なれば、あたら御さまをも見知らざらまし。わが君をば、心ばせあり、もの思ひ知りたらむ人にこそ、見せたてまつらまほしけれ。<BR>⏎
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203 「何かこれも御幸ひにて違ふこととも知らず。かく心口惜しくいましける君なれば、あたら御さまをも見知らざらまし。わが君をば、心ばせあり、もの思ひ知りたらむ人にこそ、見せたてまつらまほしけれ。<BR>⏎
d1305<P>⏎
d1307<P>⏎
cd2:1308-309 「あな恐ろしや。人の言ふを聞けば、年ごろおぼろけならむ人をば見じとのたまひて、右の大殿按察使大納言式部卿宮などの、いとねむごろにほのめかしたまひけれど、聞き過ぐして、帝の御かしづき女を得たまへる君は、<A HREF="#k14">いかばかり</A><A NAME="t14">の</A>人かまめやかには思さむ。<BR>⏎
<P>⏎
206 「あな恐ろしや。人の言ふを聞けば、年ごろおぼろけならむ人をば見じとのたまひて、右の大殿按察使大納言式部卿宮などの、いとねむごろにほのめかしたまひけれど、聞き過ぐして、帝の御かしづき女を得たまへる君は、<A HREF="#k14">いかばかり</A><A NAME="t14">の</A>人かまめやかには思さむ。<BR>⏎
d1311<P>⏎
d1313<P>⏎
cd2:1314-315 をりふしの心ばへの、かやうに愛敬なく用意なきことこそ憎けれ、嘆かしく恨めしきこともなく、かたみにうちいさかひても、心にあはぬことをばあきらめつ。上達部親王たちにて、みやびかに心恥づかしき人の御あたりといふとも、わが数ならでは甲斐あらじ。<BR>⏎
<P>⏎
209 をりふしの心ばへの、かやうに愛敬なく用意なきことこそ憎けれ、嘆かしく恨めしきこともなく、かたみにうちいさかひても、心にあはぬことをばあきらめつ。上達部親王たちにて、みやびかに心恥づかしき人の御あたりといふとも、わが数ならでは甲斐あらじ。<BR>⏎
d1317<P>⏎
d1319<P>⏎
text50320 <A NAME="in22">[第二段 継父常陸介、実娘の結婚の準備]</A><BR>212 
d1321<P>⏎
d1323<P>⏎
cd8:4324-331 「女房など、こなたにめやすきあまたあなるを、このほどは、あらせたまへ。やがて帳なども新しく仕立てられためる方を、事にはかになりにためれば、取り渡し、とかく改むまじ」<BR>⏎
<P>⏎
 とて西の方に来て、立ち居、とかくしつらひ騒ぐ。めやすきさまにさはらかに、あたりあたりあるべき限りしたる所を、さかしらに屏風ども持て来て、いぶせきまで立て集めて、<A HREF="#k17">厨子</A><A NAME="t17">二</A>階など、あやしきまでし加へて、心をやりて急げば、北の方見苦しく見れど、口入れじと言ひてしかば、ただに見聞く。御方は、北面に居たり。<BR>⏎
<P>⏎
 「人の御心は、見知り果てぬ。ただ同じ子なれば、さりとも、いとかくは思ひ放ちたまはじとこそ思ひつれ。さはれ世に母なき子は、なくやはある」<BR>⏎
<P>⏎
 とて娘を、昼より乳母と二人、撫でつくろひ立てたれば、憎げにもあらず、十五六のほどにて、いと小さやかにふくらかなる人の、髪うつくしげにて小袿のほどなり、裾いとふさやかなり。これをいとめでたしと思ひて、撫でつくろふ。<BR>⏎
<P>⏎
214-217 「女房など、こなたにめやすきあまたあなるを、このほどは、あらせたまへ。やがて帳なども新しく仕立てられためる方を、事にはかになりにためれば、取り渡し、とかく改むまじ」<BR>⏎
 とて西の方に来て、立ち居、とかくしつらひ騒ぐ。めやすきさまにさはらかに、あたりあたりあるべき限りしたる所を、さかしらに屏風ども持て来て、いぶせきまで立て集めて、<A HREF="#k17">厨子</A><A NAME="t17">二</A>階など、あやしきまでし加へて、心をやりて急げば、北の方見苦しく見れど、口入れじと言ひてしかば、ただに見聞く。御方は、北面に居たり。<BR>⏎
 「人の御心は、見知り果てぬ。ただ同じ子なれば、さりとも、いとかくは思ひ放ちたまはじとこそ思ひつれ。さはれ世に母なき子は、なくやはある」<BR>⏎
 とて娘を、昼より乳母と二人、撫でつくろひ立てたれば、憎げにもあらず、十五六のほどにて、いと小さやかにふくらかなる人の、髪うつくしげにて小袿のほどなり、裾いとふさやかなり。これをいとめでたしと思ひて、撫でつくろふ。<BR>⏎
d1333<P>⏎
cd2:1334-335 とかの<A HREF="#k18">仲人</A><A NAME="t18">に</A>はかられて言ふもいとをこなり。男君も、「このほどのいかめしく思ふやうなること」と、よろづの罪あるまじう思ひて、その夜も替へず来そめぬ。<BR>⏎
<P>⏎
219 とかの<A HREF="#k18">仲人</A><A NAME="t18">に</A>はかられて言ふもいとをこなり。男君も、「このほどのいかめしく思ふやうなること」と、よろづの罪あるまじう思ひて、その夜も替へず来そめぬ。<BR>⏎
text50336 <A NAME="in23">[第三段 浮舟の母、京の中君に手紙を贈る]</A><BR>220 
d1337<P>⏎
d1339<P>⏎
d1341<P>⏎
cd2:1342-343 とうち泣きつつ書きたる文を、あはれとは見たまひけれど、「故宮の、さばかり許したまはでやみにし人を、我一人残りて、知り語らはむもいとつつましく、また見苦しきさまにて世にあぶれむも、知らず顔にて<A HREF="#k19">聞かむこそ心苦しかるべけれ。ことなることなくて</A><A NAME="t19">か</A>たみに散りぼはむも、亡き人の御ために見苦しかるべきわざ」を思しわづらふ。<BR>⏎
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223 とうち泣きつつ書きたる文を、あはれとは見たまひけれど、「故宮の、さばかり許したまはでやみにし人を、我一人残りて、知り語らはむもいとつつましく、また見苦しきさまにて世にあぶれむも、知らず顔にて<A HREF="#k19">聞かむこそ心苦しかるべけれ。ことなることなくて</A><A NAME="t19">か</A>たみに散りぼはむも、亡き人の御ために見苦しかるべきわざ」を思しわづらふ。<BR>⏎
d1345<P>⏎
d1347<P>⏎
d1349<P>⏎
cd4:2350-353 「さらばかの西の方に、隠ろへたる所し出でて、いとむつかしげなめれど、さても過ぐいたまひつべくは、しばしのほど」<BR>⏎
<P>⏎
 と言ひつかはしつ。いとうれしと思ほして、人知れず出で立つ。御方もかの御あたりをば、睦びきこえまほしと思ふ心なれば、なかなかかかることどもの出で来たるを、うれしと思ふ。<BR>⏎
<P>⏎
227-228 「さらばかの西の方に、隠ろへたる所し出でて、いとむつかしげなめれど、さても過ぐいたまひつべくは、しばしのほど」<BR>⏎
 と言ひつかはしつ。いとうれしと思ほして、人知れず出で立つ。御方もかの御あたりをば、睦びきこえまほしと思ふ心なれば、なかなかかかることどもの出で来たるを、うれしと思ふ。<BR>⏎
text50354 <A NAME="in24">[第四段 母、浮舟を匂宮邸に連れ出す]</A><BR>229 
d1355<P>⏎
cd2:1356-357 守、少将の扱ひを、いかばかりめでたきことをせむと思ふに、そのきらきらしかるべきことも知らぬ心には、ただあららかなる東絹どもを、押しまろがして投げ出でつ。食ひ物も、所狭きまでなむ運び出でてののしりける。<BR>⏎
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230 守、少将の扱ひを、いかばかりめでたきことをせむと思ふに、そのきらきらしかるべきことも知らぬ心には、ただあららかなる東絹どもを、押しまろがして投げ出でつ。食ひ物も、所狭きまでなむ運び出でてののしりける。<BR>⏎
d1359<P>⏎
d1361<P>⏎
cd2:1362-363 「この御方ざまに、数まへたまふ人のなきを、あなづるなめり」と思へば、ことに許いたまはざりしあたりを、あながちに参らず。乳母、若き人びと、二三人ばかりして、西の廂の北に寄りて、人げ遠き方に局したり。<BR>⏎
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233 「この御方ざまに、数まへたまふ人のなきを、あなづるなめり」と思へば、ことに許いたまはざりしあたりを、あながちに参らず。乳母、若き人びと、二三人ばかりして、西の廂の北に寄りて、人げ遠き方に局したり。<BR>⏎
d1365<P>⏎
d1367<P>⏎
cd2:1368-369 と思ふには、かくしひて睦びきこゆるもあぢきなし。ここには、御物忌と言ひてければ、人も通はず。二三日ばかり母君もゐたり。こたみは、心のどかにこの御ありさまを見る。<BR>⏎
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236 と思ふには、かくしひて睦びきこゆるもあぢきなし。ここには、御物忌と言ひてければ、人も通はず。二三日ばかり母君もゐたり。こたみは、心のどかにこの御ありさまを見る。<BR>⏎
text50370 <A NAME="in25">[第五段 浮舟の母、匂宮と中君夫妻を垣間見る]</A><BR>237 
d1371<P>⏎
d1373<P>⏎
cd6:3374-379 また若やかなる五位ども、顔も知らぬどもも多かり。わが継子の式部丞にて蔵人なる、内裏の御使にて参れり御あたりにもえ近く参らず。こよなき人の御けはひを、<BR>⏎
<P>⏎
 「あはれこは何人ぞ。かかる御あたりにおはするめでたさよ。よそに思ふ時は、めでたき人びとと聞こゆとも、つらき目見せたまはばと、もの憂く推し量りきこえさせつらむあさましさよ。この御ありさま容貌を見れば、七夕ばかりにても、かやうに見たてまつり通はむは、いといみじかるべきわざかな」<BR>⏎
<P>⏎
 と思ふに、若君抱きてうつくしみおはす。女君、短き几帳を隔てておはするを、押しやりて、ものなど聞こえたまふ御容貌ども、いときよらに似合ひたり。<A HREF="#k21">故宮</A><A NAME="t21">の</A>寂しくおはせし御ありさまを思ひ比ぶるに、「宮たちと聞こゆれど、いとこよなきわざにこそありけれ」とおぼゆ。<BR>⏎
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239-241 また若やかなる五位ども、顔も知らぬどもも多かり。わが継子の式部丞にて蔵人なる、内裏の御使にて参れり. 御あたりにもえ近く参らず。こよなき人の御けはひを、<BR>⏎
 「あはれこは何人ぞ。かかる御あたりにおはするめでたさよ。よそに思ふ時は、めでたき人びとと聞こゆとも、つらき目見せたまはばと、もの憂く推し量りきこえさせつらむあさましさよ。この御ありさま容貌を見れば、七夕ばかりにても、かやうに見たてまつり通はむは、いといみじかるべきわざかな」<BR>⏎
 と思ふに、若君抱きてうつくしみおはす。女君、短き几帳を隔てておはするを、押しやりて、ものなど聞こえたまふ 御容貌ども、いときよらに似合ひたり。<A HREF="#k21">故宮</A><A NAME="t21">の</A>寂しくおはせし御ありさまを思ひ比ぶるに、「宮たちと聞こゆれど、いとこよなきわざにこそありけれ」とおぼゆ。<BR>⏎
d1381<P>⏎
text50382 <A NAME="in26">[第六段 浮舟の母、左近少将を垣間見て失望]</A><BR>243 
d1383<P>⏎
d1385<P>⏎
d1387<P>⏎
cd2:1388-389 とて御装束などしたまひておはす。ゆかしうおぼえて覗けば、うるはしくひきつくろひたまへる、はた似るものなく気高く愛敬づききよらにて、若君をえ見捨てたまはで遊びおはす。御粥、強飯など参りてぞ、こなたより出でたまふ。<BR>⏎
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246 とて御装束などしたまひておはす。ゆかしうおぼえて覗けば、うるはしくひきつくろひたまへる、はた似るものなく気高く愛敬づききよらにて、若君をえ見捨てたまはで遊びおはす。御粥、強飯など参りてぞ、こなたより出でたまふ。<BR>⏎
d1391<P>⏎
cd6:3392-397 「かれぞこの常陸守の婿の少将な。初めは御方にと定めけるを、守の娘を得てこそいたはられめ、など言ひて、かしけたる女の童を持たるななり」<BR>⏎
<P>⏎
 「いさこの御あたりの人はかけても言はず。かの君の方より、よく聞くたよりのあるぞ」<BR>⏎
<P>⏎
 などおのがどち言ふ。聞くらむとも知らで、人のかく言ふにつけても、胸つぶれて、少将をめやすきほどと思ひける心も口惜しく、「げにことなることなかるべかりけり」と思ひて、いとどしくあなづらはしく思ひなりぬ。<BR>⏎
<P>⏎
248-250 「かれぞこの常陸守の婿の少将な。初めは御方にと定めけるを、守の娘を得てこそいたはられめ、など言ひて、かしけたる女の童を持たるななり」<BR>⏎
 「いさこの御あたりの人はかけても言はず。かの君の方より、よく聞くたよりのあるぞ」<BR>⏎
 などおのがどち言ふ。聞くらむとも知らで、人のかく言ふにつけても、胸つぶれて、少将をめやすきほどと思ひける心も口惜しく、「げにことなることなかるべかりけり」と思ひて、いとどしくあなづらはしく思ひなりぬ。<BR>⏎
d1399<P>⏎
d1401<P>⏎
cd2:1402-403 とてしばし慰め遊ばして、出でたまひぬるさまの、返す返す見るとも見るとも、飽くまじく、匂ひやかにをかしければ、出でたまひぬる名残、さうざうしくぞ眺めらるる。<BR>⏎
<P>⏎
253 とてしばし慰め遊ばして、出でたまひぬるさまの、返す返す見るとも見るとも、飽くまじく、匂ひやかにをかしければ、出でたまひぬる名残、さうざうしくぞ眺めらるる。<BR>⏎
text50404 <H4>第三章 浮舟の物語 浮舟の母、中君に娘の浮舟を託す</H4>254 
text50405 <A NAME="in31">[第一段 浮舟の母、中君と談話す]</A><BR>255 
d1406<P>⏎
d1408<P>⏎
d1410<P>⏎
cd4:2411-414 などうち泣きつつ聞こゆ。君もうち泣きたまひて、<BR>⏎
<P>⏎
 「世の中の恨めしく心細き折々も、またかくながらふれば、すこしも思ひ慰めつべき折もあるを、いにしへ頼みきこえける蔭どもに後れたてまつりけるは、なかなかに世の常に思ひなされて、見たてまつり知らずなりにければ、あるをなほこの御ことは、尽きせずいみじくこそ。大将の、よろづのことに心の移らぬよしを愁へつつ、浅からぬ御心のさまを見るにつけても、いとこそ口惜しけれ」<BR>⏎
<P>⏎
258-259 などうち泣きつつ聞こゆ。君もうち泣きたまひて、<BR>⏎
 「世の中の恨めしく心細き折々も、またかくながらふれば、すこしも思ひ慰めつべき折もあるを、いにしへ頼みきこえける蔭どもに後れたてまつりけるは、なかなかに世の常に思ひなされて、見たてまつり知らずなりにければ、あるをなほこの御ことは、尽きせずいみじくこそ。大将の、よろづのことに心の移らぬよしを愁へつつ、浅からぬ御心のさまを見るにつけても、いとこそ口惜しけれ」<BR>⏎
d1416<P>⏎
d1418<P>⏎
d1420<P>⏎
cd4:2421-424 「いさややうのものと、人笑はれなる心地せましも、なかなかにやあらまし。見果てぬにつけて、心にくくもある世にこそ、と思へど、かの君は、いかなるにかあらむ、あやしきまでもの忘れせず、故宮の御後の世をさへ、思ひやり深く後見ありきたまふめる」<BR>⏎
<P>⏎
 など<A HREF="#k22">心うつくしう</A><A NAME="t22">語</A>りたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
263-264 「いさややうのものと、人笑はれなる心地せましも、なかなかにやあらまし。見果てぬにつけて、心にくくもある世にこそ、と思へど、かの君は、いかなるにかあらむ、あやしきまでもの忘れせず、故宮の御後の世をさへ、思ひやり深く後見ありきたまふめる」<BR>⏎
 など<A HREF="#k22">心うつくしう</A><A NAME="t22">語</A>りたまふ。<BR>⏎
d1426<P>⏎
d1428<P>⏎
text50429 <A NAME="in32">[第二段 浮舟の母、娘の不運を訴える]</A><BR>267 
d1430<P>⏎
d1432<P>⏎
d1434<P>⏎
d1436<P>⏎
cd4:2437-440 「げに心苦しき御ありさまにこそはあなれど、何か人にあなづらるる御ありさまは、かやうになりぬる人のさがにこそ。さりとても、堪へぬわざなりければ、むげにその方に思ひおきてたまへりし身だに、かく心より外にながらふれば、まいていとあるまじき御ことなり。やついたまはむも、いとほしげなる御さまにこそ」<BR>⏎
<P>⏎
 などいと大人びてのたまへば、母君、いとうれしと思ひたり。ねびにたるさまなれど、よしなからぬさましてきよげなり。いたく肥え過ぎにたるなむ、<A HREF="#k23">常陸殿とは</A><A NAME="t23">見</A>えける。<BR>⏎
<P>⏎
271-272 「げに心苦しき御ありさまにこそはあなれど、何か人にあなづらるる御ありさまは、かやうになりぬる人のさがにこそ。さりとても、堪へぬわざなりければ、むげにその方に思ひおきてたまへりし身だに、かく心より外にながらふれば、まいていとあるまじき御ことなり。やついたまはむも、いとほしげなる御さまにこそ」<BR>⏎
 などいと大人びてのたまへば、母君、いとうれしと思ひたり。ねびにたるさまなれど、よしなからぬさましてきよげなり。いたく肥え過ぎにたるなむ、<A HREF="#k23">常陸殿とは</A><A NAME="t23">見</A>えける。<BR>⏎
d1442<P>⏎
cd6:3443-448 など年ごろの物語、<A HREF="#no4">浮島のあはれなりしこと</A><A NAME="te4">も</A>聞こえ出づ。<BR>⏎
<P>⏎
 「<A HREF="#no5">わが身一つの</A><A NAME="te5">と</A>のみ、言ひ合はする人もなき筑波山のありさまも、かくあきらめきこえさせて、いつもいとかくてさぶらはまほしく思ひたまへなりはべりぬれど、かしこにはよからぬあやしの者ども、いかにたち騷ぎ求めはべらむ。さすがに心あわたたしく思ひたまへらるる。かかるほどのありさまに身をやつすは、口惜しきものになむはべりけると、身にも思ひ知らるるを、この君は、ただ任せきこえさせて、知りはべらじ」<BR>⏎
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 などかこちきこえかくれば、「げに見苦しからでもあらなむ」と見たまふ。<BR>⏎
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274-276 など年ごろの物語、<A HREF="#no4">浮島のあはれなりしこと</A><A NAME="te4">も</A>聞こえ出づ。<BR>⏎
 「<A HREF="#no5">わが身一つの</A><A NAME="te5">と</A>のみ、言ひ合はする人もなき筑波山のありさまも、かくあきらめきこえさせて、いつもいとかくてさぶらはまほしく思ひたまへなりはべりぬれど、かしこにはよからぬあやしの者ども、いかにたち騷ぎ求めはべらむ。さすがに心あわたたしく思ひたまへらるる。かかるほどのありさまに身をやつすは、口惜しきものになむはべりけると、身にも思ひ知らるるを、この君は、ただ任せきこえさせて、知りはべらじ」<BR>⏎
 などかこちきこえかくれば、「げに見苦しからでもあらなむ」と見たまふ。<BR>⏎
text50449 <A NAME="in33">[第三段 浮舟の母、薫を見て感嘆す]</A><BR>277 
d1450<P>⏎
d1452<P>⏎
d1454<P>⏎
cd4:2455-458 と人聞こゆれば、例の御几帳ひきつくろひて、心づかひす。この客人の母君、<BR>⏎
<P>⏎
 「いで見たてまつらむ。ほのかに見たてまつりける人の、いみじきものに聞こゆめれど、宮の御ありさまには、え並びたまはじ」<BR>⏎
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280-281 と人聞こゆれば、例の御几帳ひきつくろひて、心づかひす。この客人の母君、<BR>⏎
 「いで見たてまつらむ。ほのかに見たてまつりける人の、いみじきものに聞こゆめれど、宮の御ありさまには、え並びたまはじ」<BR>⏎
d1460<P>⏎
cd2:1461-462 「いさやえこそ聞こえ定めね」<BR>⏎
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283 「いさやえこそ聞こえ定めね」<BR>⏎
d1464<P>⏎
d1466<P>⏎
cd2:1467-468 など言ふほどに、「今ぞ、車より降りたまふなる」と聞く<A HREF="#k24">ほど</A><A NAME="t24">、</A>かしかましきまで追ひののしりて、とみにも<A HREF="#k25">見えたまはず</A><A NAME="t25">。</A>待たれたまふほどに、歩み入りたまふさまを見れば、げにあなめでた、をかしげとも見えずながらぞ、なまめかしうあてにきよげなるや。<BR>⏎
<P>⏎
286 など言ふほどに、「今ぞ、車より降りたまふなる」と聞く<A HREF="#k24">ほど</A><A NAME="t24">、</A>かしかましきまで追ひののしりて、とみにも<A HREF="#k25">見えたまはず</A><A NAME="t25">。</A>待たれたまふほどに、歩み入りたまふさまを見れば、げにあなめでた、をかしげとも見えずながらぞ、なまめかしうあてにきよげなるや。<BR>⏎
d1470<P>⏎
d1472<P>⏎
d1474<P>⏎
cd2:1475-476 「げにおろかならず、思ひやり深き御用意になむ」<BR>⏎
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290 「げにおろかならず、思ひやり深き御用意になむ」<BR>⏎
d1478<P>⏎
text50479 <A NAME="in34">[第四段 中君、薫に浮舟を勧める]</A><BR>292 
d1480<P>⏎
d1482<P>⏎
cd2:1483-484 「さしもいかでか、世を経て心に離れずのみはあらむ。なほ浅からず言ひ初めてしことの筋なれば、名残なからじとにや」など、見なしたまへど、人の御けしきはしるきものなれば、見もてゆくままに、あはれなる御心ざまを、<A HREF="#no6">岩木ならねば</A><A NAME="te6">、</A>思ほし知る。<BR>⏎
<P>⏎
294 「さしもいかでか、世を経て心に離れずのみはあらむ。なほ浅からず言ひ初めてしことの筋なれば、名残なからじとにや」など、見なしたまへど、人の御けしきはしるきものなれば、見もてゆくままに、あはれなる御心ざまを、<A HREF="#no6">岩木ならねば</A><A NAME="te6">、</A>思ほし知る。<BR>⏎
d1486<P>⏎
d1488<P>⏎
cd4:2489-492 とほのめかしきこえたまふを、かれもなべての心地はせず、ゆかしくなりにたれど、うちつけにふと移らむ心地はたせず。<BR>⏎
<P>⏎
 「いでやその本尊、願ひ満てたまふべくはこそ尊からめ、時々、心やましくは、なかなか山水も濁りぬべく」<BR>⏎
<P>⏎
297-298 とほのめかしきこえたまふを、かれもなべての心地はせず、ゆかしくなりにたれど、うちつけにふと移らむ心地はたせず。<BR>⏎
 「いでやその本尊、願ひ満てたまふべくはこそ尊からめ、時々、心やましくは、なかなか山水も濁りぬべく」<BR>⏎
d1494<P>⏎
d1496<P>⏎
cd4:2497-500 とほのかに笑ひたまふも、をかしう聞こゆ。<BR>⏎
<P>⏎
 「いでさらば、伝へ果てさせたまへかし。この御逃れ言葉こそ、思ひ出づればゆゆしく」<BR>⏎
<P>⏎
301-302 とほのかに笑ひたまふも、をかしう聞こゆ。<BR>⏎
 「いでさらば、伝へ果てさせたまへかし。この御逃れ言葉こそ、思ひ出づればゆゆしく」<BR>⏎
d1502<P>⏎
cd8:3503-510 「見し人の形代ならば身に添へて<BR>⏎
  恋しき瀬々のなでものにせむ」<BR>⏎
<P>⏎
 と例の、戯れに言ひなして、紛らはしたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
 「みそぎ河瀬々に出ださむなでものを<BR>⏎
  身に添ふ影と誰れか頼まむ<BR>⏎
<P>⏎
304-306 「見し人の形代ならば身に添へて<BR>  恋しき瀬々のなでものにせむ」<BR>⏎
 と例の、戯れに言ひなして、紛らはしたまふ。<BR>⏎
 「みそぎ河瀬々に出ださむなでものを<BR>  身に添ふ影と誰れか頼まむ<BR>⏎
d1512<P>⏎
d1514<P>⏎
cd2:1515-516 「<A HREF="#no9">つひに寄る瀬は</A><A NAME="te9">、</A>さらなりや。いと<A HREF="#no10">うれたきやうなる水の泡</A><A NAME="te10">に</A>も争ひはべるかな。かき流さるるなでものは、いでまことぞかし。いかで慰むべきことぞ」<BR>⏎
<P>⏎
309 「<A HREF="#no9">つひに寄る瀬は</A><A NAME="te9">、</A>さらなりや。いと<A HREF="#no10">うれたきやうなる水の泡</A><A NAME="te10">に</A>も争ひはべるかな。かき流さるるなでものは、いでまことぞかし。いかで慰むべきことぞ」<BR>⏎
d1518<P>⏎
cd4:2519-522 「今宵は、なほとく帰りたまひね」<BR>⏎
<P>⏎
 とこしらへやりたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
311-312 「今宵は、なほとく帰りたまひね」<BR>⏎
 とこしらへやりたまふ。<BR>⏎
text50523 <A NAME="in35">[第五段 浮舟の母、娘に貴人の婿を願う]</A><BR>313 
d1524<P>⏎
cd4:2525-528 「さらばその客人に、かかる心の願ひ年経ぬるを、うちつけになど、浅う思ひなすまじう、のたまはせ知らせたまひて、はしたなげなるまじうはこそ。いとうひうひしうならひにてはべる身は、何ごともをこがましきまでなむ」<BR>⏎
<P>⏎
 と語らひきこえおきて出でたまひぬるに、この母君、<BR>⏎
<P>⏎
314-315 「さらばその客人に、かかる心の願ひ年経ぬるを、うちつけになど、浅う思ひなすまじう、のたまはせ知らせたまひて、はしたなげなるまじうはこそ。いとうひうひしうならひにてはべる身は、何ごともをこがましきまでなむ」<BR>⏎
 と語らひきこえおきて出でたまひぬるに、この母君、<BR>⏎
d1530<P>⏎
d1532<P>⏎
d1534<P>⏎
d1536<P>⏎
cd2:1537-538 など言ふもあり。また<BR>⏎
<P>⏎
320 など言ふもあり。また<BR>⏎
d1540<P>⏎
cd2:1541-542 など口々めづることどもを、すずろに笑みて聞きゐたり。<BR>⏎
<P>⏎
322 など口々めづることどもを、すずろに笑みて聞きゐたり。<BR>⏎
text50543 <A NAME="in36">[第六段 浮舟の母、中君に娘を託す]</A><BR>323 
d1544<P>⏎
d1546<P>⏎
cd2:1547-548 「思ひ初めつること、執念きまで軽々しからずものしたまふめるを、げにただ今のありさまなどを思へば、わづらはしき心地すべけれど、かの世を背きても、など思ひ寄りたまふらむも、同じことに思ひなして、試みたまへかし」<BR>⏎
<P>⏎
325 「思ひ初めつること、執念きまで軽々しからずものしたまふめるを、げにただ今のありさまなどを思へば、わづらはしき心地すべけれど、かの世を背きても、など思ひ寄りたまふらむも、同じことに思ひなして、試みたまへかし」<BR>⏎
d1550<P>⏎
cd2:1551-552 「つらき目見せず、人にあなづられじの心にてこそ、<A HREF="#no13">鳥の音聞こえざらむ住まひ</A><A NAME="te13">ま</A>で思ひたまへおきつれ。げに人の御ありさまけはひを見たてまつり思ひたまふるは、下仕へのほどなどにても、かかる人の御あたりに、馴れきこえむは、かひありぬべし。まいて若き人は、心つけたてまつりぬべくはべるめれど、<A HREF="#no14">数ならぬ身</A><A NAME="te14">に</A>、もの思ふ種をやいとど蒔かせて見はべらむ。<BR>⏎
<P>⏎
327 「つらき目見せず、人にあなづられじの心にてこそ、<A HREF="#no13">鳥の音聞こえざらむ住まひ</A><A NAME="te13">ま</A>で思ひたまへおきつれ。げに人の御ありさまけはひを見たてまつり思ひたまふるは、下仕へのほどなどにても、かかる人の御あたりに、馴れきこえむは、かひありぬべし。まいて若き人は、心つけたてまつりぬべくはべるめれど、<A HREF="#no14">数ならぬ身</A><A NAME="te14">に</A>、もの思ふ種をやいとど蒔かせて見はべらむ。<BR>⏎
d1554<P>⏎
d1556<P>⏎
d1558<P>⏎
d1560<P>⏎
d1562<P>⏎
cd2:1563-564 「かたじけなく、よろづに頼みきこえさせてなむ。なほしばし隠させたまひて、<A HREF="#no15">巌の中に</A><A NAME="te15">と</A>も、いかにとも、思ひたまへめぐらしはべるほど、数にはべらずとも、思ほし放たず、何ごとをも教へさせたまへ」<BR>⏎
<P>⏎
333 「かたじけなく、よろづに頼みきこえさせてなむ。なほしばし隠させたまひて、<A HREF="#no15">巌の中に</A><A NAME="te15">と</A>も、いかにとも、思ひたまへめぐらしはべるほど、数にはべらずとも、思ほし放たず、何ごとをも教へさせたまへ」<BR>⏎
d1566<P>⏎
text50567 <H4>第四章 浮舟と匂宮の物語 浮舟、匂宮に見つかり言い寄られる</H4>335 
text50568 <A NAME="in41">[第一段 匂宮、二条院に帰邸]</A><BR>336 
d1569<P>⏎
d1571<P>⏎
d1573<P>⏎
cd2:1574-575 と目とどめさせたまふ。「かやうにてぞ忍びたる所には出づるかし」と、御心ならひに思し寄るも、むくつけし。<BR>⏎
<P>⏎
339 と目とどめさせたまふ。「かやうにてぞ忍びたる所には出づるかし」と、御心ならひに思し寄るも、むくつけし。<BR>⏎
d1577<P>⏎
d1579<P>⏎
d1581<P>⏎
cd2:1582-583 と笑ひあへるを聞くも、「げにこよなの身のほどや」と悲しく思ふ。ただこの御方のことを思ふゆゑにぞ、おのれも人びとしくならまほしくおぼえける。まして正身をなほなほしくやつして見むことは、いみじくあたらしう思ひなりぬ。宮、入りたまひて、<BR>⏎
<P>⏎
343 と笑ひあへるを聞くも、「げにこよなの身のほどや」と悲しく思ふ。ただこの御方のことを思ふゆゑにぞ、おのれも人びとしくならまほしくおぼえける。まして正身をなほなほしくやつして見むことは、いみじくあたらしう思ひなりぬ。宮、入りたまひて、<BR>⏎
d1585<P>⏎
cd2:1586-587 などなほ思し疑ひてのたまふ。「聞きにくくかたはらいたし」と思して、<BR>⏎
<P>⏎
345 などなほ思し疑ひてのたまふ。「聞きにくくかたはらいたし」と思して、<BR>⏎
d1589<P>⏎
cd4:2590-593 とうち背きたまふも、らうたげにをかし。<BR>⏎
<P>⏎
 <A HREF="#no17">明くるも知らず</A><A NAME="te17">大</A>殿籠もりたるに、人びとあまた参りたまへば、寝殿に渡りたまひぬ。后の宮は、ことことしき御悩みにもあらでおこたりたまひにければ、心地よげにて、右の大殿の君達など、碁打ち韻塞などしつつ遊びたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
347-348 とうち背きたまふも、らうたげにをかし。<BR>⏎
 <A HREF="#no17">明くるも知らず</A><A NAME="te17">大</A>殿籠もりたるに、人びとあまた参りたまへば、寝殿に渡りたまひぬ。后の宮は、ことことしき御悩みにもあらでおこたりたまひにければ、心地よげにて、右の大殿の君達など、碁打ち韻塞などしつつ遊びたまふ。<BR>⏎
text50594 <A NAME="in42">[第二段 匂宮、浮舟に言い寄る]</A><BR>349 
d1595<P>⏎
d1597<P>⏎
d1599<P>⏎
cd6:3600-605 と聞こえたまへば、<BR>⏎
<P>⏎
 「げにおはしまさぬ隙々にこそ、例は済ませ。あやしう日ごろももの憂がらせたまひて、今日過ぎば、この月は日もなし。九、十月は、いかでかはとて、仕まつらせつるを」<BR>⏎
<P>⏎
 と大輔いとほしがる。<BR>⏎
<P>⏎
352-354 と聞こえたまへば、<BR>⏎
 「げにおはしまさぬ隙々にこそ、例は済ませ。あやしう日ごろももの憂がらせたまひて、今日過ぎば、この月は日もなし。九、十月は、いかでかはとて、仕まつらせつるを」<BR>⏎
 と大輔いとほしがる。<BR>⏎
d1607<P>⏎
d1609<P>⏎
d1611<P>⏎
d1613<P>⏎
d1615<P>⏎
d1617<P>⏎
text50618 <A NAME="in43">[第三段 浮舟の乳母、困惑、右近、中君に急報]</A><BR>361 
d1619<P>⏎
d1621<P>⏎
cd2:1622-623 「これはいかなることにかはべらむ。あやしきわざにもはべる」<BR>⏎
<P>⏎
363 「これはいかなることにかはべらむ。あやしきわざにもはべる」<BR>⏎
d1625<P>⏎
d1627<P>⏎
cd2:1628-629 とてなれなれしく臥したまふに、「宮なりけり」と思ひ果つるに、乳母、言はむ方なくあきれてゐたり。<BR>⏎
<P>⏎
366 とてなれなれしく臥したまふに、「宮なりけり」と思ひ果つるに、乳母、言はむ方なくあきれてゐたり。<BR>⏎
d1631<P>⏎
cd6:3632-637 「あな暗や。まだ大殿油も参らざりけり。御格子を、苦しきに、急ぎ参りて、闇に惑ふよ」<BR>⏎
<P>⏎
 とて引き上ぐるに、宮も、「なま苦し」と聞きたまふ。乳母はた、いと苦しと思ひて、ものづつみせずはやりかにおぞき人にて、<BR>⏎
<P>⏎
 「もの聞こえはべらむ。ここにいとあやしきことのはべるに、<A HREF="#k27">見たまへ極じて</A><A NAME="t27">な</A>む、え動きはべらでなむ」<BR>⏎
<P>⏎
368-370 「あな暗や。まだ大殿油も参らざりけり。御格子を、苦しきに、急ぎ参りて、闇に惑ふよ」<BR>⏎
 とて引き上ぐるに、宮も、「なま苦し」と聞きたまふ。乳母はた、いと苦しと思ひて、ものづつみせずはやりかにおぞき人にて、<BR>⏎
 「もの聞こえはべらむ。ここにいとあやしきことのはべるに、<A HREF="#k27">見たまへ極じて</A><A NAME="t27">な</A>む、え動きはべらでなむ」<BR>⏎
d1639<P>⏎
cd4:2640-643 とて探り寄るに、袿姿なる男の、いと香うばしくて添ひ臥したまへるを、「例のけしからぬ御さま」と思ひ寄りにけり。「女の心合はせたまふまじきこと」と推し量らるれば、<BR>⏎
<P>⏎
 「<A HREF="#k28">げに</A><A NAME="t28"></A>いと見苦しきことにもはべるかな。右近は、いかにか聞こえさせむ。今参りて、御前にこそは忍びて聞こえさせめ」<BR>⏎
<P>⏎
372-373 とて探り寄るに、袿姿なる男の、いと香うばしくて添ひ臥したまへるを、「例のけしからぬ御さま」と思ひ寄りにけり。「女の心合はせたまふまじきこと」と推し量らるれば、<BR>⏎
 「<A HREF="#k28">げに</A><A NAME="t28"></A>いと見苦しきことにもはべるかな。右近は、いかにか聞こえさせむ。今参りて、御前にこそは忍びて聞こえさせめ」<BR>⏎
d1645<P>⏎
cd2:1646-647 「あさましきまであてにをかしき人かな。なほ何人ならむ。右近が言ひつるけしきも、いとおしなべての今参りにはあらざめり」<BR>⏎
<P>⏎
375 「あさましきまであてにをかしき人かな。なほ何人ならむ。右近が言ひつるけしきも、いとおしなべての今参りにはあらざめり」<BR>⏎
d1649<P>⏎
d1651<P>⏎
d1653<P>⏎
d1655<P>⏎
d1657<P>⏎
cd2:1658-659 といとほしく思せど、「いかが聞こえむ。さぶらふ人びとも、すこし若やかによろしきは、見捨てたまふなく、あやしき人の御癖なれば、いかがは思ひ寄りたまひけむ」とあさましきに、ものも言はれたまはず。<BR>⏎
<P>⏎
381 といとほしく思せど、「いかが聞こえむ。さぶらふ人びとも、すこし若やかによろしきは、見捨てたまふなく、あやしき人の御癖なれば、いかがは思ひ寄りたまひけむ」とあさましきに、ものも言はれたまはず。<BR>⏎
text50660 <A NAME="in44">[第四段 宮中から使者が来て、浮舟、危機を脱出]</A><BR>382 
d1661<P>⏎
cd4:2662-665 「上達部あまた参りたまふ日にて、遊び戯れては、例もかかる時は遅くも渡りたまへば、皆うちとけてやすみたまふぞかし。さてもいかにすべきことぞ。かの乳母こそ、おぞましかりけれ。つと添ひゐて護りたてまつり、引きもかなぐりたてまつりつべくこそ思ひたりつれ」<BR>⏎
<P>⏎
 と少将と二人していとほしがるほどに、内裏より人参りて、大宮この夕暮より御胸悩ませたまふを、ただ今いみじく重く<A HREF="#k29">悩ませたまふ</A><A NAME="t29">よ</A>し申さす。右近、<BR>⏎
<P>⏎
383-384 「上達部あまた参りたまふ日にて、遊び戯れては、例もかかる時は遅くも渡りたまへば、皆うちとけてやすみたまふぞかし。さてもいかにすべきことぞ。かの乳母こそ、おぞましかりけれ。つと添ひゐて護りたてまつり、引きもかなぐりたてまつりつべくこそ思ひたりつれ」<BR>⏎
 と少将と二人していとほしがるほどに、内裏より人参りて、大宮この夕暮より御胸悩ませたまふを、ただ今いみじく重く<A HREF="#k29">悩ませたまふ</A><A NAME="t29">よ</A>し申さす。右近、<BR>⏎
d1667<P>⏎
d1669<P>⏎
cd2:1670-671 「いでや今は、かひなくもあべいことを、をこがましく、あまりな脅かしきこえたまひそ」<BR>⏎
<P>⏎
387 「いでや今は、かひなくもあべいことを、をこがましく、あまりな脅かしきこえたまひそ」<BR>⏎
d1673<P>⏎
cd4:2674-677 「いなまだしかるべし」<BR>⏎
<P>⏎
 と忍びてささめき交はすを、上は、「いと聞きにくき人の御本性にこそあめれ。すこし心あらむ人は、わがあたりをさへ疎みぬべかめり」と思す。<BR>⏎
<P>⏎
389-390 「いなまだしかるべし」<BR>⏎
 と忍びてささめき交はすを、上は、「いと聞きにくき人の御本性にこそあめれ。すこし心あらむ人は、わがあたりをさへ疎みぬべかめり」と思す。<BR>⏎
d1679<P>⏎
d1681<P>⏎
d1683<P>⏎
d1685<P>⏎
d1687<P>⏎
d1689<P>⏎
cd2:1690-691 と申せば、「げににはかに時々悩みたまふ折々もあるを」と思すに、人の思すらむこともはしたなくなりて、いみじう怨み契りおきて<A HREF="#k32">出でたまひ</A><A NAME="t32">ぬ</A>。<BR>⏎
<P>⏎
397 と申せば、「げににはかに時々悩みたまふ折々もあるを」と思すに、人の思すらむこともはしたなくなりて、いみじう怨み契りおきて<A HREF="#k32">出でたまひ</A><A NAME="t32">ぬ</A>。<BR>⏎
text50692 <A NAME="in45">[第五段 乳母、浮舟を慰める]</A><BR>398 
d1693<P>⏎
d1695<P>⏎
cd2:1696-697 「かかる御住まひは、よろづにつけて、つつましう便なかりけり。かく<A HREF="#k33">おはしまし</A><A NAME="t33">そ</A>めて、さらによきことはべらじ。あな恐ろしや。限りなき人と聞こゆとも、やすからぬ御ありさまは、いとあぢきなかるべし。<BR>⏎
<P>⏎
400 「かかる御住まひは、よろづにつけて、つつましう便なかりけり。かく<A HREF="#k33">おはしまし</A><A NAME="t33">そ</A>めて、さらによきことはべらじ。あな恐ろしや。限りなき人と聞こゆとも、やすからぬ御ありさまは、いとあぢきなかるべし。<BR>⏎
d1699<P>⏎
cd6:3700-705 かの殿には、今日もいみじくいさかひたまひけり。ただ一所の御上を見扱ひたまふとて、<A HREF="#k34">わが</A><A NAME="t34">子</A>どもをば思し捨てたり、客人のおはするほどの御旅居見苦しと、荒々しきまでぞ聞こえたまひける。下人さへ聞きいとほしがりけり。<BR>⏎
<P>⏎
 すべてこの少将の君ぞ、いと愛敬なくおぼえたまふ。この御ことはべらざらましかば、うちうちやすからずむつかしきことは、折々はべりとも、なだらかに、年ごろのままにておはしますべきものを」<BR>⏎
<P>⏎
 などうち嘆きつつ言ふ。<BR>⏎
<P>⏎
402-404 かの殿には、今日もいみじくいさかひたまひけり。ただ一所の御上を見扱ひたまふとて、<A HREF="#k34">わが</A><A NAME="t34">子</A>どもをば思し捨てたり、客人のおはするほどの御旅居見苦しと、荒々しきまでぞ聞こえたまひける。下人さへ聞きいとほしがりけり。<BR>⏎
 すべてこの少将の君ぞ、いと愛敬なくおぼえたまふ。この御ことはべらざらましかば、うちうちやすからずむつかしきことは、折々はべりとも、なだらかに、年ごろのままにておはしますべきものを」<BR>⏎
 などうち嘆きつつ言ふ。<BR>⏎
d1707<P>⏎
cd2:1708-709 「何かかく思す。母おはせぬ人こそ、たづきなう悲しかるべけれ。よそのおぼえは、父なき人はいと口惜しけれど、さがなき継母に憎まれむよりは、これはいとやすし。ともかくもしたてまつりたまひてむ。な思し屈ぜそ。<BR>⏎
<P>⏎
406 「何かかく思す。母おはせぬ人こそ、たづきなう悲しかるべけれ。よそのおぼえは、父なき人はいと口惜しけれど、さがなき継母に憎まれむよりは、これはいとやすし。ともかくもしたてまつりたまひてむ。な思し屈ぜそ。<BR>⏎
d1711<P>⏎
cd2:1712-713 と世をやすげに言ひゐたり。<BR>⏎
<P>⏎
408 と世をやすげに言ひゐたり。<BR>⏎
text50714 <A NAME="in46">[第六段 匂宮、宮中へ出向く]</A><BR>409 
d1715<P>⏎
d1717<P>⏎
d1719<P>⏎
d1721<P>⏎
d1723<P>⏎
d1725<P>⏎
cd2:1726-727 と乳母して聞こえたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
415 と乳母して聞こえたまふ。<BR>⏎
d1729<P>⏎
cd2:1730-731 と返り訪らひきこえたまへば、<BR>⏎
<P>⏎
417 と返り訪らひきこえたまへば、<BR>⏎
d1733<P>⏎
d1735<P>⏎
d1737<P>⏎
d1739<P>⏎
d1741<P>⏎
d1743<P>⏎
cd2:1744-745 わが身のありさまは、飽かぬこと多かる心地すれど、かくものはかなき目も見つべかりける身の、さははふれずなりにけるにこそ、げにめやすきなりけれ。今はただ、この憎き心添ひたまへる人の、なだらかにて思ひ離れなば、さらに何ごとも思ひ入れずなりなむ」<BR>⏎
<P>⏎
424 わが身のありさまは、飽かぬこと多かる心地すれど、かくものはかなき目も見つべかりける身の、さははふれずなりにけるにこそ、げにめやすきなりけれ。今はただ、この憎き心添ひたまへる人の、なだらかにて思ひ離れなば、さらに何ごとも思ひ入れずなりなむ」<BR>⏎
d1747<P>⏎
text50748 <A NAME="in47">[第七段 中君、浮舟を慰める]</A><BR>426 
d1749<P>⏎
d1751<P>⏎
d1753<P>⏎
cd2:1754-755 とせめてそそのかしたてて、こなたの障子のもとにて、<BR>⏎
<P>⏎
429 とせめてそそのかしたてて、こなたの障子のもとにて、<BR>⏎
d1757<P>⏎
d1759<P>⏎
d1761<P>⏎
cd2:1762-763 とて引き起こして参らせたてまつる。<BR>⏎
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433 とて引き起こして参らせたてまつる。<BR>⏎
d1765<P>⏎
d1767<P>⏎
cd2:1768-769 と二人ばかりぞ、御前にてえ恥ぢたまはねば、見ゐたりける。物語いとなつかしくしたまひて、<BR>⏎
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436 と二人ばかりぞ、御前にてえ恥ぢたまはねば、見ゐたりける。物語いとなつかしくしたまひて、<BR>⏎
d1771<P>⏎
d1773<P>⏎
d1775<P>⏎
cd2:1776-777 とばかりいと若びたる声にて言ふ。<BR>⏎
<P>⏎
440 とばかりいと若びたる声にて言ふ。<BR>⏎
text50778 <A NAME="in48">[第八段 浮舟と中君、物語絵を見ながら語らう]</A><BR>441 
d1779<P>⏎
d1781<P>⏎
cd2:1782-783 「いとあはれなる人の容貌かな。いかでかうしもありけるにかあらむ。故宮にいとよく似たてまつりたるなめりかし。故姫君は、宮の御方ざまに、我は母上に似たてまつりたるとこそは、古人ども言ふなりしか。げに似たる人はいみじきものなりけり」<BR>⏎
<P>⏎
443 「いとあはれなる人の容貌かな。いかでかうしもありけるにかあらむ。故宮にいとよく似たてまつりたるなめりかし。故姫君は、宮の御方ざまに、我は母上に似たてまつりたるとこそは、古人ども言ふなりしか。げに似たる人はいみじきものなりけり」<BR>⏎
d1785<P>⏎
cd6:3786-791 「かれは限りなくあてに気高きものから、なつかしうなよよかに、かたはなるまで、なよなよとたわみたるさまのしたまへりしにこそ。<BR>⏎
<P>⏎
 これはまたもてなしのうひうひしげに、よろづのことをつつましうのみ思ひたるけにや、見所多かるなまめかしさぞ劣りたる。ゆゑゆゑしきけはひだにもてつけたらば、大将の見たまはむにも、さらにかたはなるまじ」<BR>⏎
<P>⏎
 などこのかみ心に思ひ扱はれたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
445-447 「かれは限りなくあてに気高きものから、なつかしうなよよかに、かたはなるまで、なよなよとたわみたるさまのしたまへりしにこそ。<BR>⏎
 これはまたもてなしのうひうひしげに、よろづのことをつつましうのみ思ひたるけにや、見所多かるなまめかしさぞ劣りたる。ゆゑゆゑしきけはひだにもてつけたらば、大将の見たまはむにも、さらにかたはなるまじ」<BR>⏎
 などこのかみ心に思ひ扱はれたまふ。<BR>⏎
d1793<P>⏎
d1795<P>⏎
d1797<P>⏎
cd4:2798-801 「さもあらじ。かの御乳母の、ひき据ゑてすずろに語り愁へしけしき、もて離れてぞ言ひし。宮も、<A HREF="#no18">逢ひても逢はぬ</A><A NAME="te18">や</A>うなる心ばへにこそ、うちうそぶき口ずさびたまひしか」<BR>⏎
<P>⏎
 「いさや。ことさらにもやあらむ。そは知らずかし」<BR>⏎
<P>⏎
451-452 「さもあらじ。かの御乳母の、ひき据ゑてすずろに語り愁へしけしき、もて離れてぞ言ひし。宮も、<A HREF="#no18">逢ひても逢はぬ</A><A NAME="te18">や</A>うなる心ばへにこそ、うちうそぶき口ずさびたまひしか」<BR>⏎
 「いさや。ことさらにもやあらむ。そは知らずかし」<BR>⏎
d1803<P>⏎
cd2:1804-805 などうちささめきていとほしがる。<BR>⏎
<P>⏎
454 などうちささめきていとほしがる。<BR>⏎
text50806 <H4>第五章 浮舟の物語 浮舟、三条の隠れ家に身を寄せる</H4>455 
text50807 <A NAME="in51">[第一段 乳母の急報に浮舟の母、動転す]</A><BR>456 
d1808<P>⏎
d1810<P>⏎
d1812<P>⏎
d1814<P>⏎
d1816<P>⏎
d1818<P>⏎
d1820<P>⏎
d1822<P>⏎
cd2:1823-824 とてうち泣くもいといとほしくて、<BR>⏎
<P>⏎
464 とてうち泣くもいといとほしくて、<BR>⏎
d1826<P>⏎
d1828<P>⏎
cd4:2829-832 「さらに御心をば隔てありても思ひきこえさせはべらず。かたはらいたう許しなかりし筋は、何にかかけても聞こえさせはべらむ。その方ならで、思ほし放つまじき綱もはべるをなむ、とらへ所に頼みきこえさする」<BR>⏎
<P>⏎
 などおろかならず聞こえて、<BR>⏎
<P>⏎
467-468 「さらに御心をば隔てありても思ひきこえさせはべらず。かたはらいたう許しなかりし筋は、何にかかけても聞こえさせはべらむ。その方ならで、思ほし放つまじき綱もはべるをなむ、とらへ所に頼みきこえさする」<BR>⏎
 などおろかならず聞こえて、<BR>⏎
d1834<P>⏎
d1836<P>⏎
text50837 <A NAME="in52">[第二段 浮舟の母、娘を三条の隠れ家に移す]</A><BR>471 
d1838<P>⏎
d1840<P>⏎
cd2:1841-842 「あはれこの御身一つを、よろづにもて悩みきこゆるかな。心にかなはぬ世には、あり経まじきものにこそありけれ。みづからばかりは、ただひたぶるに品々しからず人げなう、たださる方にはひ籠もりて過ぐしつべし。このゆかりは、心憂しと思ひきこえしあたりを、睦びきこゆるに、便なきことも出で来なば、いと人笑へなるべし。あぢきなし。ことやうなりとも、ここを人にも知らせず、忍びておはせよ。おのづからともかくも仕うまつりてむ」<BR>⏎
<P>⏎
473 「あはれこの御身一つを、よろづにもて悩みきこゆるかな。心にかなはぬ世には、あり経まじきものにこそありけれ。みづからばかりは、ただひたぶるに品々しからず人げなう、たださる方にはひ籠もりて過ぐしつべし。このゆかりは、心憂しと思ひきこえしあたりを、睦びきこゆるに、便なきことも出で来なば、いと人笑へなるべし。あぢきなし。ことやうなりとも、ここを人にも知らせず、忍びておはせよ。おのづからともかくも仕うまつりてむ」<BR>⏎
d1844<P>⏎
d1846<P>⏎
cd4:2847-850 「ここはまたかくあばれて、危ふげなる所なめり。さる心したまへ。曹司曹司にある物ども、召し出でて使ひたまへ。宿直人のことなど言ひおきてはべるも、いとうしろめたけれど、かしこに腹立ち恨みらるるが、いと苦しければ」<BR>⏎
<P>⏎
 とうち泣きて帰る。<BR>⏎
<P>⏎
476-477 「ここはまたかくあばれて、危ふげなる所なめり。さる心したまへ。曹司曹司にある物ども、召し出でて使ひたまへ。宿直人のことなど言ひおきてはべるも、いとうしろめたけれど、かしこに腹立ち恨みらるるが、いと苦しければ」<BR>⏎
 とうち泣きて帰る。<BR>⏎
text50851 <A NAME="in53">[第三段 母、左近少将と和歌を贈答す]</A><BR>478 
d1852<P>⏎
d1854<P>⏎
d1856<P>⏎
d1858<P>⏎
d1860<P>⏎
cd4:2861-864 「兵部卿宮の萩の、なほことにおもしろくもあるかな。いかでさる種ありけむ。同じ枝さしなどのいと艶なるこそ。一日参りて、出でたまふほどなりしかば、え折らずなりにき。『<A HREF="#no19">ことだに惜しき</A><A NAME="te19">』</A>と、宮のうち誦じたまへりしを、若き人たちに見せたらましかば」<BR>⏎
<P>⏎
 とて我も歌詠みゐたり。<BR>⏎
<P>⏎
483-484 「兵部卿宮の萩の、なほことにおもしろくもあるかな。いかでさる種ありけむ。同じ枝さしなどのいと艶なるこそ。一日参りて、出でたまふほどなりしかば、え折らずなりにき。『<A HREF="#no19">ことだに惜しき</A><A NAME="te19">』</A>と、宮のうち誦じたまへりしを、若き人たちに見せたらましかば」<BR>⏎
 とて我も歌詠みゐたり。<BR>⏎
d1866<P>⏎
d1868<P>⏎
cd3:1869-871 「しめ結ひし小萩が上も迷はぬに<BR>⏎
  いかなる露に映る下葉ぞ」<BR>⏎
<P>⏎
487 「しめ結ひし小萩が上も迷はぬに<BR>  いかなる露に映る下葉ぞ」<BR>⏎
d1873<P>⏎
cd3:1874-876 「宮城野の小萩がもとと<A HREF="#k41">知らませ</A><A NAME="t41">ば</A><BR>⏎
  露も心を分かずぞあらまし<BR>⏎
<P>⏎
489 「宮城野の小萩がもとと<A HREF="#k41">知らませ</A><A NAME="t41">ば</A><BR>  露も心を分かずぞあらまし<BR>⏎
d1878<P>⏎
d1880<P>⏎
text50881 <A NAME="in54">[第四段 母、薫のことを思う]</A><BR>492 
d1882<P>⏎
d1884<P>⏎
cd4:2885-888 「この君は、さすがに尋ね思す心ばへのありながら、うちつけにも言ひかけたまはず、つれなし顔なるしもこそいたけれ、よろづにつけて<A HREF="#k42">思ひ出でらるれば、若き人は、ましてかくや思ひはて</A><A NAME="t42">き</A>こえたまふらむ。わがものにせむと、かく憎き人を思ひけむこそ、見苦しきことなべかりけれ」<BR>⏎
<P>⏎
 などただ心にかかりて、眺めのみせられて、とてやかくてやと、よろづによからむあらまし事を思ひ続くるに、いと難し。<BR>⏎
<P>⏎
494-495 「この君は、さすがに尋ね思す心ばへのありながら、うちつけにも言ひかけたまはず、つれなし顔なるしもこそいたけれ、よろづにつけて<A HREF="#k42">思ひ出でらるれば、若き人は、ましてかくや思ひはて</A><A NAME="t42">き</A>こえたまふらむ。わがものにせむと、かく憎き人を思ひけむこそ、見苦しきことなべかりけれ」<BR>⏎
 などただ心にかかりて、眺めのみせられて、とてやかくてやと、よろづによからむあらまし事を思ひ続くるに、いと難し。<BR>⏎
d1890<P>⏎
d1892<P>⏎
d1894<P>⏎
text50895 <A NAME="in55">[第五段 浮舟の三条のわび住まい]</A><BR>499 
d1896<P>⏎
d1898<P>⏎
d1900<P>⏎
d1902<P>⏎
d1904<P>⏎
d1906<P>⏎
d1908<P>⏎
d1910<P>⏎
cd10:4911-920  ひたぶるにうれしからまし世の中に<BR>⏎
 <A HREF="#no21">あらぬ所と</A><A NAME="te21">思</A>はましかば」<BR>⏎
<P>⏎
 と幼げに言ひたるを見るままに、ほろほろとうち泣きて、「かう惑はしはふるるやうにもてなすこと」と、いみじければ、<BR>⏎
<P>⏎
 「憂き世にはあらぬ所を求めても<BR>⏎
  君が盛りを見るよしもがな」<BR>⏎
<P>⏎
 となほなほしきことどもを言ひ交はしてなむ、心のべける。<BR>⏎
<P>⏎
507-510  ひたぶるにうれしからまし世の中に<BR>  <A HREF="#no21">あらぬ所と</A><A NAME="te21">思</A>はましかば」<BR>⏎
 と幼げに言ひたるを見るままに、ほろほろとうち泣きて、「かう惑はしはふるるやうにもてなすこと」と、いみじければ、<BR>⏎
 「憂き世にはあらぬ所を求めても<BR>  君が盛りを見るよしもがな」<BR>⏎
 となほなほしきことどもを言ひ交はしてなむ、心のべける。<BR>⏎
text50921 <H4>第六章 浮舟と薫の物語 薫、浮舟を伴って宇治へ行く</H4>511 
text50922 <A NAME="in61">[第一段 薫、宇治の御堂を見に出かける]</A><BR>512 
d1923<P>⏎
d1925<P>⏎
d1927<P>⏎
d1929<P>⏎
d1931<P>⏎
cd3:1932-934 「絶え果てぬ清水になどか亡き人の<BR>⏎
  面影をだにとどめざりけむ」<BR>⏎
<P>⏎
517 「絶え果てぬ清水になどか亡き人の<BR>  面影をだにとどめざりけむ」<BR>⏎
d1936<P>⏎
cd2:1937-938 「かの人は、さいつころ宮にと聞きしを、さすがにうひうひしくおぼえてこそ、訪れ寄らね。なほこれより伝へ果てたまへ」<BR>⏎
<P>⏎
519 「かの人は、さいつころ宮にと聞きしを、さすがにうひうひしくおぼえてこそ、訪れ寄らね。なほこれより伝へ果てたまへ」<BR>⏎
d1940<P>⏎
d1942<P>⏎
d1944<P>⏎
d1946<P>⏎
cd4:2947-950 とて例の、涙ぐみたまへり。<BR>⏎
<P>⏎
 「さらばその心やすからむ所に、消息したまへ。みづからやは、かしこに出でたまはぬ」<BR>⏎
<P>⏎
524-525 とて例の、涙ぐみたまへり。<BR>⏎
 「さらばその心やすからむ所に、消息したまへ。みづからやは、かしこに出でたまはぬ」<BR>⏎
d1952<P>⏎
d1954<P>⏎
d1956<P>⏎
text50957 <A NAME="in62">[第二段 薫、弁の尼に依頼して出る]</A><BR>529 
d1958<P>⏎
d1960<P>⏎
d1962<P>⏎
d1964<P>⏎
cd6:3965-970 と苦しげに思ひたれど、<BR>⏎
<P>⏎
 「なほよき折なるを」<BR>⏎
<P>⏎
 と例ならずしひて、<BR>⏎
<P>⏎
533-535 と苦しげに思ひたれど、<BR>⏎
 「なほよき折なるを」<BR>⏎
 と例ならずしひて、<BR>⏎
d1972<P>⏎
cd4:2973-976 とほほ笑みてのたまへば、わづらはしく、「いかに思すことならむ」と思へど、「奥なくあはあはしからぬ御心ざまなれば、おのづからわがためにも、人聞きなどは包みたまふらむ」と思ひて、<BR>⏎
<P>⏎
 「さらば承りぬ。近き<A HREF="#k46">ほどにこそ</A><A NAME="t46">。</A>御文などを見せさせたまへかし。ふりはへさかしらめきて、心しらひのやうに思はれはべらむも、今さらに伊賀専女にや、と慎ましくてなむ」<BR>⏎
<P>⏎
537-538 とほほ笑みてのたまへば、わづらはしく、「いかに思すことならむ」と思へど、「奥なくあはあはしからぬ御心ざまなれば、おのづからわがためにも、人聞きなどは包みたまふらむ」と思ひて、<BR>⏎
 「さらば承りぬ。近き<A HREF="#k46">ほどにこそ</A><A NAME="t46">。</A>御文などを見せさせたまへかし。ふりはへさかしらめきて、心しらひのやうに思はれはべらむも、今さらに伊賀専女にや、と慎ましくてなむ」<BR>⏎
d1978<P>⏎
d1980<P>⏎
d1982<P>⏎
d1984<P>⏎
text50985 <A NAME="in63">[第三段 弁の尼、三条の隠れ家を訪ねる]</A><BR>543 
d1986<P>⏎
d1988<P>⏎
d1990<P>⏎
d1992<P>⏎
d1994<P>⏎
cd2:1995-996 としるべの男して言はせたれば、初瀬の供にありし若人、出で来て降ろす。あやしき所を眺め暮らし明かすに、昔語りもしつべき人の来たれば、うれしくて呼び入れたまひて、親と聞こえける人の御あたりの人と思ふに、睦ましきなるべし。<BR>⏎
<P>⏎
548 としるべの男して言はせたれば、初瀬の供にありし若人、出で来て降ろす。あやしき所を眺め暮らし明かすに、昔語りもしつべき人の来たれば、うれしくて呼び入れたまひて、親と聞こえける人の御あたりの人と思ふに、睦ましきなるべし。<BR>⏎
d1998<P>⏎
d11000<P>⏎
text501001 <A NAME="in64">[第四段 薫、三条の隠れ家の浮舟と逢う]</A><BR>551 
d11002<P>⏎
d11004<P>⏎
d11006<P>⏎
cd2:11007-1008 とてこの近き御庄の預りの名のりをせさせたまへれば、戸口にゐざり出でたり。雨すこしうちそそくに、風はいと冷やかに吹き入りて、言ひ知らず薫り来れば、「かうなりけり」と、誰れも誰れも心ときめきしぬべき御けはひをかしければ、用意もなくあやしきに、まだ思ひあへぬほどなれば、心騷ぎて、<BR>⏎
<P>⏎
554 とてこの近き御庄の預りの名のりをせさせたまへれば、戸口にゐざり出でたり。雨すこしうちそそくに、風はいと冷やかに吹き入りて、言ひ知らず薫り来れば、「かうなりけり」と、誰れも誰れも心ときめきしぬべき御けはひをかしければ、用意もなくあやしきに、まだ思ひあへぬほどなれば、心騷ぎて、<BR>⏎
d11010<P>⏎
d11012<P>⏎
d11014<P>⏎
d11016<P>⏎
d11018<P>⏎
d11020<P>⏎
d11022<P>⏎
cd2:11023-1024 「うひうひしく。などてかさはあらむ。若き御どちもの聞こえ<A HREF="#k47">たまはむは</A><A NAME="t47">、</A>ふとしもしみつくべくもあらぬを。あやしきまで心のどかに、もの深うおはする君なれば、よも人の許しなくて、うちとけたまはじ」<BR>⏎
<P>⏎
562 「うひうひしく。などてかさはあらむ。若き御どちもの聞こえ<A HREF="#k47">たまはむは</A><A NAME="t47">、</A>ふとしもしみつくべくもあらぬを。あやしきまで心のどかに、もの深うおはする君なれば、よも人の許しなくて、うちとけたまはじ」<BR>⏎
d11026<P>⏎
cd2:11027-1028 「家の辰巳の隅の崩れ、いと危ふし。この人の御車入るべくは、引き入れて御門鎖してよ。かかる人の御供人こそ、心はうたてあれ」<BR>⏎
<P>⏎
564 「家の辰巳の隅の崩れ、いと危ふし。この人の御車入るべくは、引き入れて御門鎖してよ。かかる人の御供人こそ、心はうたてあれ」<BR>⏎
d11030<P>⏎
d11032<P>⏎
d11034<P>⏎
cd5:21035-1039 「さしとむる葎やしげき<A HREF="#no24">東屋の<BR>⏎
  あまりほど降る雨そそき</A><A NAME="te24">か</A>な」<BR>⏎
<P>⏎
 とうち払ひたまへる、追風、いとかたはなるまで、東の里人も驚きぬべし。<BR>⏎
<P>⏎
568-569 「さしとむる葎やしげき<A HREF="#no24">東屋の<BR>  あまりほど降る雨そそき</A><A NAME="te24">か</A>な」<BR>⏎
 とうち払ひたまへる、追風、いとかたはなるまで、東の里人も驚きぬべし。<BR>⏎
d11041<P>⏎
d11043<P>⏎
cd2:11044-1045 と愁へたまひて、いかがしたまひけむ、入りたまひぬ。かの人形の願ひものたまはで、ただ<BR>⏎
<P>⏎
572 と愁へたまひて、いかがしたまひけむ、入りたまひぬ。かの人形の願ひものたまはで、ただ<BR>⏎
d11047<P>⏎
d11049<P>⏎
text501050 <A NAME="in65">[第五段 薫と浮舟、宇治へ出発]</A><BR>575 
d11051<P>⏎
d11053<P>⏎
d11055<P>⏎
d11057<P>⏎
d11059<P>⏎
d11061<P>⏎
d11063<P>⏎
d11065<P>⏎
d11067<P>⏎
cd2:11068-1069 「それはのちにも罪さり申したまひてむ。かしこもしるべなくては、たづきなき所を」<BR>⏎
<P>⏎
584 「それはのちにも罪さり申したまひてむ。かしこもしるべなくては、たづきなき所を」<BR>⏎
d11071<P>⏎
d11073<P>⏎
d11075<P>⏎
text501076 <A NAME="in66">[第六段 薫と浮舟の宇治への道行き]</A><BR>588 
d11077<P>⏎
d11079<P>⏎
d11081<P>⏎
d11083<P>⏎
cd2:11084-1085 とて抱きたまへり。羅の細長を、車の中に引き隔てたれば、はなやかにさし出でたる朝日影に、尼君はいとはしたなくおぼゆるにつけて、「故姫君の御供にこそ、かやうにても見たてまつりつべかりしか。あり経れば、思ひかけぬことをも見るかな」と、悲しうおぼえて、包むとすれど、うちひそみつつ泣くを、侍従はいと憎く、「ものの初めに形異にて乗り添ひたるをだに思ふに、<A HREF="#k49">なぞ</A><A NAME="t49">、</A>かくいやめなる」と、憎くをこにも思ふ。老いたる者は、すずろに涙もろにあるものぞと、おろそかにうち思ふなりけり。<BR>⏎
<P>⏎
592 とて抱きたまへり。羅の細長を、車の中に引き隔てたれば、はなやかにさし出でたる朝日影に、尼君はいとはしたなくおぼゆるにつけて、「故姫君の御供にこそ、かやうにても見たてまつりつべかりしか。あり経れば、思ひかけぬことをも見るかな」と、悲しうおぼえて、包むとすれど、うちひそみつつ泣くを、侍従はいと憎く、「ものの初めに形異にて乗り添ひたるをだに思ふに、<A HREF="#k49">なぞ</A><A NAME="t49">、</A>かくいやめなる」と、憎くをこにも思ふ。老いたる者は、すずろに涙もろにあるものぞと、おろそかにうち思ふなりけり。<BR>⏎
d11087<P>⏎
cd5:21088-1092 「形見ぞと見るにつけては朝露の<BR>⏎
  ところせきまで濡るる袖かな」<BR>⏎
<P>⏎
 と心にもあらず一人ごちたまふを聞きて、いとどしぼるばかり、尼君の袖も泣き濡らすを、若き人、「あやしう見苦しき世かな」。心ゆく道に、いとむつかしきこと、添ひたる心地す。忍びがたげなる鼻すすりを聞きたまひて、我も忍びやかにうちかみて、「いかが思ふらむ」といとほしければ、<BR>⏎
<P>⏎
594-595 「形見ぞと見るにつけては朝露の<BR>  ところせきまで濡るる袖かな」<BR>⏎
 と心にもあらず一人ごちたまふを聞きて、いとどしぼるばかり、尼君の袖も泣き濡らすを、若き人、「あやしう見苦しき世かな」。心ゆく道に、いとむつかしきこと、添ひたる心地す。忍びがたげなる鼻すすりを聞きたまひて、我も忍びやかにうちかみて、「いかが思ふらむ」といとほしければ、<BR>⏎
d11094<P>⏎
cd2:11095-1096 としひてかき起こしたまへば、をかしきほどに、さし隠して、つつましげに見出だしたるまみなどは、いとよく思ひ出でらるれど、おいらかにあまりおほどき過ぎたるぞ、心もとなかめる。「いといたう児めいたるものから、用意の浅からずものしたまひしはや」と、なほ<A HREF="#no25">行く方なき</A><A NAME="te25">悲</A>しさは、むなしき空にも満ちぬべかめり。<BR>⏎
<P>⏎
597 としひてかき起こしたまへば、をかしきほどに、さし隠して、つつましげに見出だしたるまみなどは、いとよく思ひ出でらるれど、おいらかにあまりおほどき過ぎたるぞ、心もとなかめる。「いといたう児めいたるものから、用意の浅からずものしたまひしはや」と、なほ<A HREF="#no25">行く方なき</A><A NAME="te25">悲</A>しさは、むなしき空にも満ちぬべかめり。<BR>⏎
text501097 <A NAME="in67">[第七段 宇治に到着、薫、京に手紙を書く]</A><BR>598 
d11098<P>⏎
d11100<P>⏎
cd2:11101-1102 「あはれ亡き魂や宿りて見たまふらむ。誰によりて、かくすずろに惑ひありくものにもあらなくに」<BR>⏎
<P>⏎
600 「あはれ亡き魂や宿りて見たまふらむ。誰によりて、かくすずろに惑ひありくものにもあらなくに」<BR>⏎
d11104<P>⏎
d11106<P>⏎
d11108<P>⏎
d11110<P>⏎
d11112<P>⏎
cd2:11113-1114 など母宮にも姫宮にも聞こえたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
606 など母宮にも姫宮にも聞こえたまふ。<BR>⏎
text501115 <A NAME="in68">[第八段 薫、浮舟の今後を思案す]</A><BR>607 
d11116<P>⏎
d11118<P>⏎
d11120<P>⏎
cd4:21121-1124 と見たまふ。かつは<BR>⏎
<P
>⏎
 「この人をいかにもてなしてあらせむとすらむ。ただ今、ものものしげにて、かの宮に迎へ据ゑむも、音聞き便なかるべし。さりとて、これかれある列にて、おほぞうに交じらはせむは本意なからむ。しばしここに隠してあらむ」<BR>⏎
<P>⏎
610-611 と見たまふ。かつは<BR>⏎
 「この人をいかにもてなしてあらせむとすらむ。ただ今、ものものしげにて、かの宮に迎へ据ゑむも、音聞き便なかるべし。さりとて、これかれある列にて、おほぞうに交じらはせむは本意なからむ。しばしここに隠してあらむ」<BR>⏎
d11126<P>⏎
d11128<P>⏎
d11130<P>⏎
text501131 <A NAME="in69">[第九段 薫と浮舟、琴を調べて語らう]</A><BR>615 
d11132<P>⏎
d11134<P>⏎
d11136<P>⏎
cd2:11137-1138 とめづらしく我ながらおぼえて、いとなつかしくまさぐりつつ眺めたまふに、月さし出でぬ。<BR>⏎
<P>⏎
618 とめづらしく我ながらおぼえて、いとなつかしくまさぐりつつ眺めたまふに、月さし出でぬ。<BR>⏎
d11140<P>⏎
d11142<P>⏎
cd6:31143-1148 「昔誰れも誰れもおはせし世に、ここに生ひ出でたまへらましかば、今すこしあはれはまさりなまし。親王の御ありさまは、よその人だに、あはれに恋しくこそ、思ひ出でられたまへ。などてさる所には、年ごろ経たまひしぞ」<BR>⏎
<P>⏎
 とのたまへば、いと恥づかしくて、白き扇をまさぐりつつ、添ひ臥したるかたはらめ、いと隈なう白うて、なまめいたる額髪の隙など、いとよく思ひ出でられてあはれなり。まいて「かやうのこともつきなからず教へなさばや」と思して、<BR>⏎
<P>⏎
 「これはすこしほのめかいたまひたりや。あはれ吾が妻といふ琴は、さりとも手ならしたまひけむ」<BR>⏎
<P>⏎
621-623 「昔誰れも誰れもおはせし世に、ここに生ひ出でたまへらましかば、今すこしあはれはまさりなまし。親王の御ありさまは、よその人だに、あはれに恋しくこそ、思ひ出でられたまへ。などてさる所には、年ごろ経たまひしぞ」<BR>⏎
 とのたまへば、いと恥づかしくて、白き扇をまさぐりつつ、添ひ臥したるかたはらめ、いと隈なう白うて、なまめいたる額髪の隙など、いとよく思ひ出でられてあはれなり。まいて「かやうのこともつきなからず教へなさばや」と思して、<BR>⏎
 「これはすこしほのめかいたまひたりや。あはれ吾が妻といふ琴は、さりとも手ならしたまひけむ」<BR>⏎
d11150<P>⏎
cd2:11151-1152 「その大和言葉だに、つきなくならひにければ、ましてこれは」<BR>⏎
<P>⏎
625 「その大和言葉だに、つきなくならひにければ、ましてこれは」<BR>⏎
d11154<P>⏎
d11156<P>⏎
cd2:11157-1158 と誦じたまへるも、かの弓をのみ引くあたりにならひて、「いとめでたく、思ふやうなり」と、侍従も聞きゐたりけり。さるは扇の色も心おきつべき閨のいにしへをば知らねば、ひとへにめできこゆるぞ、後れたるなめるかし。「ことこそあれ、あやしくも、言ひつるかな」と思す。<BR>⏎
<P>⏎
628 と誦じたまへるも、かの弓をのみ引くあたりにならひて、「いとめでたく、思ふやうなり」と、侍従も聞きゐたりけり。さるは扇の色も心おきつべき閨のいにしへをば知らねば、ひとへにめできこゆるぞ、後れたるなめるかし。「ことこそあれ、あやしくも、言ひつるかな」と思す。<BR>⏎
d11160<P>⏎
cd3:11161-1163 「宿り木は色変はりぬる秋なれど<BR>⏎
  昔おぼえて澄める月かな」<BR>⏎
<P>⏎
630 「宿り木は色変はりぬる秋なれど<BR>  昔おぼえて澄める月かな」<BR>⏎
d11165<P>⏎
cd3:11166-1168 「里の名も昔ながらに見し人の<BR>⏎
  面変はりせる閨の月影」<BR>⏎
<P>⏎
632 「里の名も昔ながらに見し人の<BR>  面変はりせる閨の月影」<BR>⏎
d11170<P>⏎
text501171 <a name="in71">【出典】<BR>634 
c11172</a><A NAME="no1">出典1</A> 筑波山端山繁山繁けれど思ひ入るには障らざりけり(新古今集恋一-一〇一三 源重之)<A HREF="#te1">(戻)</A><BR>⏎
635<A NAME="no1">出典1</A> 筑波山端山繁山繁けれど思ひ入るには障らざりけり(新古今集恋一-一〇一三 源重之)<A HREF="#te1">(戻)</A><BR>⏎
c21179-1180<A NAME="no8">出典8</A> 大幣おほぬさの引く手あまたになりぬれば思へどえこそ頼まざりけれ(古今集恋四-七〇六 読人しらず)<A HREF="#te8">(戻)</A><BR>⏎
<A NAME="no9">出典9</A> 大幣おほぬさと名にこそ立てれ流れてもつひに寄る瀬はありてふものを(古今集恋四-七〇七 在原業平)<A HREF="#te9">(戻)</A><BR>⏎
642-643<A NAME="no8">出典8</A> <ruby><rb>大幣<rp>(<rt>おほぬさ<rp>)</ruby>の引く手あまたになりぬれば思へどえこそ頼まざりけれ(古今集恋四-七〇六 読人しらず)<A HREF="#te8">(戻)</A><BR>⏎
<A NAME="no9">出典9</A> <ruby><rb>大幣<rp>(<rt>おほぬさ<rp>)</ruby>と名にこそ立てれ流れてもつひに寄る瀬はありてふものを(古今集恋四-七〇七 在原業平)<A HREF="#te9">(戻)</A><BR>⏎
c11195<A NAME="no24">出典24</A> 東屋の 真屋のあまりの その 雨そそぎ 我立ち濡れぬ 殿戸開かせ 鎹かすがひも 錠とざしもあらばこそ その殿戸 我鎖さめ おし開いて来ませ 我や人妻(催馬楽-東屋)<A HREF="#te24">(戻)</A><BR>⏎
658<A NAME="no24">出典24</A> 東屋の 真屋のあまりの その 雨そそぎ 我立ち濡れぬ 殿戸開かせ <ruby><rb><rp>(<rt>かすがひ<rp>)</ruby>も <ruby><rb><rp>(<rt>とざし<rp>)</ruby>もあらばこそ その殿戸 我鎖さめ おし開いて来ませ 我や人妻(催馬楽-東屋)<A HREF="#te24">(戻)</A><BR>⏎
cd2:11197-1198<A NAME="no26">出典26</A> 班女閨中秋扇色 楚王台上夜琴声<班女が閨ねやの中の秋の扇の色 楚王が台うてなの上の夜の琴きんの声>(和漢朗詠集上-三八〇 尊敬)<A HREF="#te26">(戻)</A><BR>⏎

660<A NAME="no26">出典26</A> 班女閨中秋扇色 楚王台上夜琴声&lt;班女が<ruby><rb><rp>(<rt>ねや<rp>)</ruby>の中の秋の扇の色 楚王が<ruby><rb><rp>(<rt>うてな<rp>)</ruby>の上の夜の<ruby><rb><rp>(<rt>きん<rp>)</ruby>の声&gt;(和漢朗詠集上-三八〇 尊敬)<A HREF="#te26">(戻)</A><BR>⏎
text501199<p> <a name="in72">【校訂】<BR>661 
c11201</a><A NAME="k01">校訂1</A> よその--よそのの(の<後出>/#)<A HREF="#t01">(戻)</A><BR>⏎
663<A NAME="k01">校訂1</A> よその--よそのの(の<後出>/#)<A HREF="#t01">(戻)</A><BR>⏎
c11242<A NAME="k42">校訂42</A> 思ひ出でらるれば、若き人は、ましてかくや思ひはて--思は(は/=いイ)て(/+らるれはわかき人はましてかくや思はて<朱>)<A HREF="#t42">(戻)</A><BR>⏎
704<A NAME="k42">校訂42</A> 思ひ出でらるれば、若き人は、ましてかくや思ひはて--思は(は/=いイ)て(/+らるれはわかき人はましてかくや思はて<朱>)<A HREF="#t42">(戻)</A><BR>⏎
d11254</p>⏎
d11261</p>⏎
i0726
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cd2:18-9<body background="wallppr063.gif">⏎
<p>First updated 9/20/1996(ver.1-1)<BR>⏎
8<BODY>⏎
cd3:210-12Last updated 8/8/2011(ver.2-2)<BR>渋谷栄一校訂(C)</p>⏎
<P
>⏎

9-10<ADDRESS>Last updated 8/8/2011(ver.2-2)<BR>
渋谷栄一校訂(C)</ADDRESS>⏎
d114<P>⏎
d116<P>⏎
d156<P>⏎
c159<LI>匂宮、浮舟を追想し、中君を恨む---<A HREF="#in11">宮、なほかのほのかなりし夕べを思し忘るる世なし</A>⏎
54<LI>匂宮、浮舟を追想し、中君を恨む---<A HREF="#in11">宮、なほかのほのかなりし夕べを思し忘るる世なし</A>⏎
c170<LI>匂宮、馬で宇治へ赴く---<A HREF="#in22">御供に、昔もかしこの案内知れりし者、二三人</A>⏎
65<LI>匂宮、馬で宇治へ赴く---<A HREF="#in22">御供に、昔もかしこの案内知れりし者、二三人</A>⏎
c1112<LI>薫、帰邸の道中、思い乱れる---<A HREF="#in64">道すがら、「なほいと恐ろしく、隈なくおはする宮なりや</A>⏎
107<LI>薫、帰邸の道中、思い乱れる---<A HREF="#in64">道すがら、「なほいと恐ろしく、隈なくおはする宮なりや</A>⏎
c1120<LI>浮舟、死を決意して、文を処分す---<A HREF="#in72">君は、「げにただ今いと悪しくなりぬべき身なめり</A>⏎
115<LI>浮舟、死を決意して、文を処分す---<A HREF="#in72">君は、「げにただ今いと悪しくなりぬべき身なめり</A>⏎
d1128<P>⏎
d1131<P>⏎
text51132 <H4>第一章 匂宮の物語 匂宮、大内記から薫と浮舟の関係を聞き知る</H4>125 
text51133 <A NAME="in11">[第一段 匂宮、浮舟を追想し、中君を恨む]</A><BR>126 
d1134<P>⏎
cd6:3135-140 宮なほ、かのほのかなりし夕べを思し忘るる世なし。「ことことしきほどにはあるまじげなりしを、人柄のまめやかにをかしうもありしかな」と、いとあだなる御心は、「口惜しくてやみにしこと」と、ねたう思さるるままに、女君をも、<BR>⏎
<P>⏎
 「かうはかなきことゆゑ、あながちに、かかる筋のもの憎みしたまひけり。思はずに心憂し」<BR>⏎
<P>⏎
 と恥づかしめ怨みきこえたまふ折々は、いと苦しうて、「ありのままにや聞こえてまし」と思せど、<BR>⏎
<P>⏎
127-129 宮なほ、かのほのかなりし夕べを思し忘るる世なし。「ことことしきほどにはあるまじげなりしを、人柄のまめやかにをかしうもありしかな」と、いとあだなる御心は、「口惜しくてやみにしこと」と、ねたう思さるるままに、女君をも、<BR>⏎
 「かうはかなきことゆゑ、あながちに、かかる筋のもの憎みしたまひけり。思はずに心憂し」<BR>⏎
 と恥づかしめ怨みきこえたまふ折々は、いと苦しうて、「ありのままにや聞こえてまし」と思せど、<BR>⏎
d1142<P>⏎
d1144<P>⏎
d1146<P>⏎
d1148<P>⏎
text51149 <A NAME="in12">[第二段 薫、浮舟を宇治に放置]</A><BR>134 
d1150<P>⏎
cd6:3151-156 かの人はたとしへなくのどかに思しおきてて、「待ち遠なりと思ふらむ」と、心苦しうのみ思ひやりたまひながら、所狭き身のほどを、さるべきついでなくて、かやしく通ひたまふべき道ならねば、<A HREF="#no1">神のいさむる</A><A NAME="te1">よ</A>りもわりなし。されど<BR>⏎
<P
>⏎
 「今いとよくもてなさむ、とす。山里の慰めと思ひおきてし心あるを、すこし日数も経ぬべきことども作り出でて、のどやかに行きても見む。さてしばしは人の知るまじき住み所して、やうやうさる方に、かの心をものどめおき、わがためにも、人のもどきあるまじく、なのめにてこそよからめ。<BR>⏎
<P>⏎
 にはかに、何人ぞ、いつより、など聞きとがめられむも、もの騒がしく、初めの心に違ふべし。また宮の御方の聞き思さむことも、もとの所を際々しう率て離れ、昔を忘れ顔ならむ、いと本意なし」<BR>⏎
<P>⏎
135-137 かの人はたとしへなくのどかに思しおきてて、「待ち遠なりと思ふらむ」と、心苦しうのみ思ひやりたまひながら、所狭き身のほどを、さるべきついでなくて、かやしく通ひたまふべき道ならねば、<A HREF="#no1">神のいさむる</A><A NAME="te1">よ</A>りもわりなし。されど<BR>⏎
 「今いとよくもてなさむ、とす。山里の慰めと思ひおきてし心あるを、すこし日数も経ぬべきことども作り出でて、のどやかに行きても見む。さてしばしは人の知るまじき住み所して、やうやうさる方に、かの心をものどめおき、わがためにも、人のもどきあるまじく、なのめにてこそよからめ。<BR>⏎
 にはかに、何人ぞ、いつより、など聞きとがめられむも、もの騒がしく、初めの心に違ふべし。また宮の御方の聞き思さむことも、もとの所を際々しう率て離れ、昔を忘れ顔ならむ、いと本意なし」<BR>⏎
d1158<P>⏎
text51159 <A NAME="in13">[第三段 薫と中君の仲]</A><BR>139 
d1160<P>⏎
d1162<P>⏎
d1164<P>⏎
d1166<P>⏎
cd2:1167-168 と思す折々多くなむ。されど対面したまふことは難し。<BR>⏎
<P>⏎
143 と思す折々多くなむ。されど対面したまふことは難し。<BR>⏎
d1170<P>⏎
d1172<P>⏎
text51173 <A NAME="in14">[第四段 正月、宇治から京の中君への文]</A><BR>146 
d1174<P>⏎
cd4:2175-178 睦月の朔日過ぎたるころ渡りたまひて、若君の年まさりたまへるを、もて遊びうつくしみたまふ昼つ方、小さき童、緑の薄様なる包み文の大きやかなるに、小さき鬚籠を小松につけたる、またすくすくしき立文とり添へて、奥なく走り参る。女君にたてまつれば、宮、<BR>⏎
<P>⏎
 「それはいづくよりぞ」<BR>⏎
<P>⏎
147-148 睦月の朔日過ぎたるころ渡りたまひて、若君の年まさりたまへるを、もて遊びうつくしみたまふ昼つ方、小さき童、緑の薄様なる包み文の大きやかなるに、小さき鬚籠を小松につけたる、またすくすくしき立文とり添へて、奥なく走り参る。女君にたてまつれば、宮、<BR>⏎
 「それはいづくよりぞ」<BR>⏎
d1180<P>⏎
d1182<P>⏎
d1184<P>⏎
d1186<P>⏎
cd4:2187-190 と笑みて言ひ続くれば、宮も笑ひたまひて、<BR>⏎
<P>⏎
 「いで我ももてはやしてむ」<BR>⏎
<P>⏎
153-154 と笑みて言ひ続くれば、宮も笑ひたまひて、<BR>⏎
 「いで我ももてはやしてむ」<BR>⏎
d1192<P>⏎
d1194<P>⏎
d1196<P>⏎
d1198<P>⏎
d1200<P>⏎
d1202<P>⏎
cd2:1203-204 「見苦しう。何かはその女どちのなかに書き通はしたらむうちとけ文をば、御覧ぜむ」<BR>⏎
<P>⏎
161 「見苦しう。何かはその女どちのなかに書き通はしたらむうちとけ文をば、御覧ぜむ」<BR>⏎
d1206<P>⏎
cd2:1207-208 「さは見むよ。女の文書きは、いかがある」<BR>⏎
<P>⏎
163 「さは見むよ。女の文書きは、いかがある」<BR>⏎
d1210<P>⏎
d1212<P>⏎
cd2:1213-214 とて端に、<BR>⏎
<P>⏎
166 とて端に、<BR>⏎
d1216<P>⏎
d1218<P>⏎
text51219 <A NAME="in15">[第五段 匂宮、手紙の主を浮舟と察知す]</A><BR>169 
d1220<P>⏎
d1222<P>⏎
d1224<P>⏎
cd2:1225-226 ここには、いとめでたき御住まひの心深さを、なほふさはしからず見たてまつる。かくてのみ、つくづくと眺めさせたまふよりは、時々は渡り参らせたまひて、御心も慰めさせたまへ、と思ひはべるに、つつましく恐ろしきものに思しとりてなむ、もの憂きことに嘆かせたまふめる。<BR>⏎
<P>⏎
172 ここには、いとめでたき御住まひの心深さを、なほふさはしからず見たてまつる。かくてのみ、つくづくと眺めさせたまふよりは、時々は渡り参らせたまひて、御心も慰めさせたまへ、と思ひはべるに、つつましく恐ろしきものに思しとりてなむ、もの憂きことに嘆かせたまふめる。<BR>⏎
d1228<P>⏎
cd2:1229-230 とこまごまと言忌もえしあへず、もの嘆かしげなるさまのかたくなしげなるも、うち返しうち返し、あやしと御覧じて、<BR>⏎
<P>⏎
174 とこまごまと言忌もえしあへず、もの嘆かしげなるさまのかたくなしげなるも、うち返しうち返し、あやしと御覧じて、<BR>⏎
d1232<P>⏎
d1234<P>⏎
cd2:1235-236 「昔かの山里にありける人の娘の、さるやうありて、このころかしこにあるとなむ聞きはべりし」<BR>⏎
<P>⏎
177 「昔かの山里にありける人の娘の、さるやうありて、このころかしこにあるとなむ聞きはべりし」<BR>⏎
d1238<P>⏎
d1240<P>⏎
cd9:4241-249 「まだ古りぬ物にはあれど君がため<BR>⏎
  深き心に待つと知らなむ」<BR>⏎
<P>⏎
 とことなることなきを、「かの思ひわたる人のにや」と思し寄りぬるに、御目とまりて、<BR>⏎
<P>⏎
 「返り事したまへ。情けなし。隠いたまふべき文にもあらざめるを。など御けしきの悪しき。まかりなむよ」<BR>⏎
<P>⏎
 とて立ちたまひぬ。女君、少将などして、<BR>⏎
<P>⏎
180-183 「まだ古りぬ物にはあれど君がため<BR>  深き心に待つと知らなむ」<BR>⏎
 とことなることなきを、「かの思ひわたる人のにや」と思し寄りぬるに、御目とまりて、<BR>⏎
 「返り事したまへ。情けなし。隠いたまふべき文にもあらざめるを。など御けしきの悪しき。まかりなむよ」<BR>⏎
 とて立ちたまひぬ。女君、少将などして、<BR>⏎
d1251<P>⏎
cd4:2252-255 など忍びてのたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
 「見たまへましかば、いかでかは参らせまし。すべてこの子は心地なうさし過ぐしてはべり。生ひ先見えて、人は、おほどかなるこそをかしけれ」<BR>⏎
<P>⏎
185-186 など忍びてのたまふ。<BR>⏎
 「見たまへましかば、いかでかは参らせまし。すべてこの子は心地なうさし過ぐしてはべり。生ひ先見えて、人は、おほどかなるこそをかしけれ」<BR>⏎
d1257<P>⏎
d1259<P>⏎
d1261<P>⏎
text51262 <A NAME="in16">[第六段 匂宮、大内記から薫と浮舟の関係を知る]</A><BR>190 
d1263<P>⏎
d1265<P>⏎
d1267<P>⏎
d1269<P>⏎
d1271<P>⏎
d1273<P>⏎
d1275<P>⏎
d1277<P>⏎
d1279<P>⏎
d1281<P>⏎
d1283<P>⏎
text51284 <A NAME="in17">[第七段 匂宮、薫の噂を聞き知り喜ぶ]</A><BR>201 
d1285<P>⏎
d1287<P>⏎
d1289<P>⏎
d1291<P>⏎
d1293<P>⏎
cd6:3294-299 「をかしきことかな。何心ありて、いかなる人をかは、さて据ゑたまひつらむ。なほいとけしきありて、なべての人に似ぬ御心なりや。<BR>⏎
<P>⏎
 右の大臣など、『この人のあまりに道心に進みて、山寺に、夜さへともすれば泊りたまふなる、軽々し』ともどきたまふと聞きしを、げになどかさしも仏の道には忍びありくらむ。なほかの故里に心をとどめたると聞きし、かかること<A HREF="#k05">こそは</A><A NAME="t05">あ</A>りけれ。<BR>⏎
<P>⏎
 いづら人よりはまめなるとさかしがる人しも、ことに人の思ひいたるまじき隈ある構へよ」<BR>⏎
<P>⏎
206-208 「をかしきことかな。何心ありて、いかなる人をかは、さて据ゑたまひつらむ。なほいとけしきありて、なべての人に似ぬ御心なりや。<BR>⏎
 右の大臣など、『この人のあまりに道心に進みて、山寺に、夜さへともすれば泊りたまふなる、軽々し』ともどきたまふと聞きしを、げになどかさしも仏の道には忍びありくらむ。なほかの故里に心をとどめたると聞きし、かかること<A HREF="#k05">こそは</A><A NAME="t05">あ</A>りけれ。<BR>⏎
 いづら人よりはまめなるとさかしがる人しも、ことに人の思ひいたるまじき隈ある構へよ」<BR>⏎
d1301<P>⏎
d1303<P>⏎
text51304 <H4>第二章 浮舟と匂宮の物語 匂宮、薫の声をまねて浮舟の寝所に忍び込む</H4>211 
text51305 <A NAME="in21">[第一段 匂宮、宇治行きを大内記に相談]</A><BR>212 
d1306<P>⏎
d1308<P>⏎
d1310<P>⏎
d1312<P>⏎
cd6:3313-318 「いと便なきことなれど、かの宇治に住むらむ人は、はやうほのかに見し人の、行方も知らずなりにしが、大将に尋ね取られにける、と聞きあはすることこそあれ。たしかには知るべきやうもなきを、ただものより覗きなどして、それかあらぬかと見定めむ、となむ思ふ。いささか人に知るまじき構へは、いかがすべき」<BR>⏎
<P>⏎
 とのたまへば、「あなわづらはし」と思へど、<BR>⏎
<P>⏎
 「おはしまさむことは、いと荒き山越えになむはべれど、ことにほど遠くはさぶらはずなむ。夕つ方出でさせおはしまして、亥子の時にはおはしまし着きなむ。さて暁にこそは帰らせたまはめ。人の知りはべらむことは、ただ御供にさぶらひはべらむこそは。それも深き心はいかでか知りはべらむ」<BR>⏎
<P>⏎
216-218 「いと便なきことなれど、かの宇治に住むらむ人は、はやうほのかに見し人の、行方も知らずなりにしが、大将に尋ね取られにける、と聞きあはすることこそあれ。たしかには知るべきやうもなきを、ただものより覗きなどして、それかあらぬかと見定めむ、となむ思ふ。いささか人に知るまじき構へは、いかがすべき」<BR>⏎
 とのたまへば、「あなわづらはし」と思へど、<BR>⏎
 「おはしまさむことは、いと荒き山越えになむはべれど、ことにほど遠くはさぶらはずなむ。夕つ方出でさせおはしまして、亥子の時にはおはしまし着きなむ。さて暁にこそは帰らせたまはめ。人の知りはべらむことは、ただ御供にさぶらひはべらむこそは。それも深き心はいかでか知りはべらむ」<BR>⏎
d1320<P>⏎
cd4:2321-324 「さかし。昔も一度二度、通ひし道なり。軽々しきもどき負ひぬべきが、ものの聞こえのつつましきなり」<BR>⏎
<P>⏎
 とて返す返すあるまじきことに、わが御心にも思せど、かうまでうち出でたまへれば、え思ひとどめたまはず。<BR>⏎
<P>⏎
220-221 「さかし。昔も一度二度、通ひし道なり。軽々しきもどき負ひぬべきが、ものの聞こえのつつましきなり」<BR>⏎
 とて返す返すあるまじきことに、わが御心にも思せど、かうまでうち出でたまへれば、え思ひとどめたまはず。<BR>⏎
text51325 <A NAME="in22">[第二段 宮、馬で宇治へ赴く]</A><BR>222 
d1326<P>⏎
cd2:1327-328 御供に、昔もかしこの案内知れりし者、二三人、この内記、さては御乳母子の蔵人よりかうぶり得たる若き人、睦ましき限りを選りたまひて、「大将、今日明日よにおはせじ」など、内記によく案内聞きたまひて、出で立ちたまふにつけても、いにしへを思し出づ。<BR>⏎
<P>⏎
223 御供に、昔もかしこの案内知れりし者、二三人、この内記、さては御乳母子の蔵人よりかうぶり得たる若き人、睦ましき限りを選りたまひて、「大将、今日明日よにおはせじ」など、内記によく案内聞きたまひて、出で立ちたまふにつけても、いにしへを思し出づ。<BR>⏎
d1330<P>⏎
d1332<P>⏎
d1334<P>⏎
cd4:2335-338 「まだ人は起きてはべるべし。ただこれよりおはしまさむ」<BR>⏎
<P>⏎
 としるべして入れたてまつる。<BR>⏎
<P>⏎
227-228 「まだ人は起きてはべるべし。ただこれよりおはしまさむ」<BR>⏎
 としるべして入れたてまつる。<BR>⏎
text51339 <A NAME="in23">[第三段 匂宮、浮舟とその女房らを覗き見る]</A><BR>229 
d1340<P>⏎
d1342<P>⏎
cd2:1343-344 火明う灯して、もの縫ふ人、三四人居たり。童のをかしげなる、糸をぞ縒る。これが顔、まづかの火影に見たまひしそれなり。うちつけ目かと、なほ疑はしきに、右近と名のりし若き人もあり。君は、腕を枕にて、火を眺めたるまみ、髪のこぼれかかりたる額つき、いとあてやかになまめきて、対の御方にいとようおぼえたり。<BR>⏎
<P>⏎
231 火明う灯して、もの縫ふ人、三四人居たり。童のをかしげなる、糸をぞ縒る。これが顔、まづかの火影に見たまひしそれなり。うちつけ目かと、なほ疑はしきに、右近と名のりし若き人もあり。君は、腕を枕にて、火を眺めたるまみ、髪のこぼれかかりたる額つき、いとあてやかになまめきて、対の御方にいとようおぼえたり。<BR>⏎
d1346<P>⏎
d1348<P>⏎
d1350<P>⏎
d1352<P>⏎
d1354<P>⏎
cd2:1355-356 「それはかくなむ渡りぬると、御消息聞こえさせたまへらむこそよからめ。軽々しう、いかでかは音なくては、はひ隠れさせたまはむ。御物詣での後は、やがて渡りおはしましねかし。かくて心細きやうなれど、心にまかせてやすらかなる御住まひにならひて、なかなか旅心地すべしや」<BR>⏎
<P>⏎
237 「それはかくなむ渡りぬると、御消息聞こえさせたまへらむこそよからめ。軽々しう、いかでかは音なくては、はひ隠れさせたまはむ。御物詣での後は、やがて渡りおはしましねかし。かくて心細きやうなれど、心にまかせてやすらかなる御住まひにならひて、なかなか旅心地すべしや」<BR>⏎
d1358<P>⏎
cd2:1359-360 「なほしばし、かくて待ちきこえさせたまはむぞ、のどやかにさまよかるべき。京へなど迎へたてまつらせたまへらむ後、おだしくて親にも見えたてまつらせたまへかし。このおとどの、いと急にものしたまひて、にはかにかう聞こえなしたまふなめりかし。昔も今も、もの念じしてのどかなる人こそ、幸ひは見果てたまふなれ」<BR>⏎
<P>⏎
239 「なほしばし、かくて待ちきこえさせたまはむぞ、のどやかにさまよかるべき。京へなど迎へたてまつらせたまへらむ後、おだしくて親にも見えたてまつらせたまへかし。このおとどの、いと急にものしたまひて、にはかにかう聞こえなしたまふなめりかし。昔も今も、もの念じしてのどかなる人こそ、幸ひは見果てたまふなれ」<BR>⏎
d1362<P>⏎
cd4:2363-366 「などてこの乳母をとどめたてまつらずなりにけむ。老いぬる人は、むつかしき心のあるにこそ」<BR>⏎
<P>⏎
 と憎むは、乳母やうの人をそしるなめり。「げに憎き者ありかし」と思し出づるも、夢の心地ぞする。かたはらいたきまで、うちとけたることどもを言ひて、<BR>⏎
<P>⏎
241-242 「などてこの乳母をとどめたてまつらずなりにけむ。老いぬる人は、むつかしき心のあるにこそ」<BR>⏎
 と憎むは、乳母やうの人をそしるなめり。「げに憎き者ありかし」と思し出づるも、夢の心地ぞする。かたはらいたきまで、うちとけたることどもを言ひて、<BR>⏎
d1368<P>⏎
d1370<P>⏎
d1372<P>⏎
d1374<P>⏎
d1376<P>⏎
d1378<P>⏎
text51379 <A NAME="in24">[第四段 匂宮、薫の声をまねて浮舟の寝所に忍び込む]</A><BR>249 
d1380<P>⏎
d1382<P>⏎
d1384<P>⏎
cd2:1385-386 と言ひてしさしたるものどもとり具して、几帳にうち掛けなどしつつ、うたた寝のさまに寄り臥しぬ。君もすこし奥に入りて臥す。右近は北表に行きて、しばしありてぞ来たる。君のあと近く臥しぬ。<BR>⏎
<P>⏎
252 と言ひてしさしたるものどもとり具して、几帳にうち掛けなどしつつ、うたた寝のさまに寄り臥しぬ。君もすこし奥に入りて臥す。右近は北表に行きて、しばしありてぞ来たる。君のあと近く臥しぬ。<BR>⏎
d1388<P>⏎
d1390<P>⏎
d1392<P>⏎
cd2:1393-394 「まづこれ開けよ」<BR>⏎
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256 「まづこれ開けよ」<BR>⏎
d1396<P>⏎
d1398<P>⏎
d1400<P>⏎
d1402<P>⏎
d1404<P>⏎
d1406<P>⏎
d1408<P>⏎
cd2:1409-410 「あないみじ」<BR>⏎
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264 「あないみじ」<BR>⏎
d1412<P>⏎
cd4:2413-416 「我人に見すなよ。来たりとて、人驚かすな」<BR>⏎
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 といとらうらうじき御心にて、もとよりもほのかに似たる御声を、ただかの御けはひにまねびて入りたまふ。「ゆゆしきことのさまとのたまひつる、いかなる御姿ならむ」といとほしくて、我も隠ろへて見たてまつる。<BR>⏎
<P>⏎
266-267 「我人に見すなよ。来たりとて、人驚かすな」<BR>⏎
 といとらうらうじき御心にて、もとよりもほのかに似たる御声を、ただかの御けはひにまねびて入りたまふ。「ゆゆしきことのさまとのたまひつる、いかなる御姿ならむ」といとほしくて、我も隠ろへて見たてまつる。<BR>⏎
d1418<P>⏎
d1420<P>⏎
d1422<P>⏎
d1424<P>⏎
d1426<P>⏎
cd4:2427-430 などさかしらがる人もあれど、<BR>⏎
<P>⏎
 「あなかまたまへ。夜声は、ささめくしもぞ、かしかましき」<BR>⏎
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273-274 などさかしらがる人もあれど、<BR>⏎
 「あなかまたまへ。夜声は、ささめくしもぞ、かしかましき」<BR>⏎
d1432<P>⏎
d1434<P>⏎
d1436<P>⏎
text51437 <A NAME="in25">[第五段 翌朝、匂宮、京へ帰らず居座る]</A><BR>278 
d1438<P>⏎
d1440<P>⏎
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d1444<P>⏎
d1446<P>⏎
d1448<P>⏎
cd2:1449-450 「今日、御迎へにとはべりしを、いかにせさせたまはむとする御ことにか。かう逃れきこえさせたまふまじかりける御宿世は、いと聞こえさせはべらむ方なし。折こそいとわりなくはべれ。なほ今日は出でおはしまして、御心ざしはべらば、のどかにも」<BR>⏎
<P>⏎
284 「今日、御迎へにとはべりしを、いかにせさせたまはむとする御ことにか。かう逃れきこえさせたまふまじかりける御宿世は、いと聞こえさせはべらむ方なし。折こそいとわりなくはべれ。なほ今日は出でおはしまして、御心ざしはべらば、のどかにも」<BR>⏎
d1452<P>⏎
d1454<P>⏎
cd2:1455-456 とのたまひてこの人の、世に知らずあはれに思さるるままに、よろづのそしりも忘れたまひぬべし。<BR>⏎
<P>⏎
287 とのたまひてこの人の、世に知らずあはれに思さるるままに、よろづのそしりも忘れたまひぬべし。<BR>⏎
text51457 <A NAME="in26">[第六段 右近、匂宮と浮舟の密事を隠蔽す]</A><BR>288 
d1458<P>⏎
d1460<P>⏎
cd4:2461-464 「かくなむのたまはするを、なほいとかたはならむ、とを申させたまへ。あさましうめづらかなる御ありさまは、さ思しめすとも、かかる御供人どもの御心にこそあらめ。いかでかう心幼うは率てたてまつりたまふこそ。なめげなることを聞こえさする山賤などもはべらましかば、いかならまし」<BR>⏎
<P>⏎
 と言ふ。内記は、「げにいとわづらはしくもあるかな」と思ひ立てり。<BR>⏎
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290-291 「かくなむのたまはするを、なほいとかたはならむ、とを申させたまへ。あさましうめづらかなる御ありさまは、さ思しめすとも、かかる御供人どもの御心にこそあらめ。いかでかう心幼うは率てたてまつりたまふこそ。なめげなることを聞こえさする山賤などもはべらましかば、いかならまし」<BR>⏎
 と言ふ。内記は、「げにいとわづらはしくもあるかな」と思ひ立てり。<BR>⏎
d1466<P>⏎
d1468<P>⏎
d1470<P>⏎
d1472<P>⏎
d1474<P>⏎
d1476<P>⏎
d1478<P>⏎
cd2:1479-480 「あなむくつけや。木幡山は、いと恐ろしかなる山ぞかし。例の、御前駆も追はせたまはず、やつれておはしましけむに、あないみじや」<BR>⏎
<P>⏎
299 「あなむくつけや。木幡山は、いと恐ろしかなる山ぞかし。例の、御前駆も追はせたまはず、やつれておはしましけむに、あないみじや」<BR>⏎
d1482<P>⏎
d1484<P>⏎
d1486<P>⏎
d1488<P>⏎
cd2:1489-490 と大願をぞ立てける。<BR>⏎
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304 と大願をぞ立てける。<BR>⏎
d1492<P>⏎
cd2:1493-494 「さらば今日は、え渡らせたまふまじきなめり。いと口惜しきこと」<BR>⏎
<P>⏎
306 「さらば今日は、え渡らせたまふまじきなめり。いと口惜しきこと」<BR>⏎
d1496<P>⏎
text51497 <A NAME="in27">[第七段 右近、浮舟の母の使者の迎えを断わる]</A><BR>308 
d1498<P>⏎
d1500<P>⏎
d1502<P>⏎
d1504<P>⏎
cd6:3505-510 「知らぬを、返す返すいと心憂し。なほあらむままにのたまへ。いみじき下衆といふとも、いよいよなむあはれなるべき」<BR>⏎
<P>⏎
 とわりなう問ひたまへど、その御いらへは絶えてせず。異事は、いとをかしくけぢかきさまにいらへきこえなどして、なびきたるを、いと限りなうらうたしとのみ見たまふ。<BR>⏎
<P>⏎
 日高くなるほどに、迎への人来たり。車二つ、馬なる人びとの、例の、荒らかなる七八人。男ども多く、例の、品々しからぬけはひ、さへづりつつ入り来たれば、人びとかたはらいたがりつつ、<BR>⏎
<P>⏎
312-314 「知らぬを、返す返すいと心憂し。なほあらむままにのたまへ。いみじき下衆といふとも、いよいよなむあはれなるべき」<BR>⏎
 とわりなう問ひたまへど、その御いらへは絶えてせず。異事は、いとをかしくけぢかきさまにいらへきこえなどして、なびきたるを、いと限りなうらうたしとのみ見たまふ。<BR>⏎
 日高くなるほどに、迎への人来たり。車二つ、馬なる人びとの、例の、荒らかなる七八人。男ども多く、例の、品々しからぬけはひ、さへづりつつ入り来たれば、人びとかたはらいたがりつつ、<BR>⏎
d1512<P>⏎
d1514<P>⏎
d1516<P>⏎
d1518<P>⏎
d1520<P>⏎
d1522<P>⏎
text51523 <A NAME="in28">[第八段 匂宮と浮舟、一日仲睦まじく過ごす]</A><BR>321 
d1524<P>⏎
d1526<P>⏎
cd2:1527-528 さるはかの対の御方には似劣りなり。大殿の君の盛りに匂ひたまへるあたりにては、こよなかるべきほどの人を、たぐひなう思さるるほどなれば、「また知らずをかし」とのみ見たまふ。<BR>⏎
<P>⏎
323 さるはかの対の御方には似劣りなり。大殿の君の盛りに匂ひたまへるあたりにては、こよなかるべきほどの人を、たぐひなう思さるるほどなれば、「また知らずをかし」とのみ見たまふ。<BR>⏎
d1530<P>⏎
d1532<P>⏎
d1534<P>⏎
cd2:1535-536 とていとをかしげなる男女、もろともに添ひ臥したる画を描きたまひて、<BR>⏎
<P>⏎
327 とていとをかしげなる男女、もろともに添ひ臥したる画を描きたまひて、<BR>⏎
d1538<P>⏎
d1540<P>⏎
cd3:1541-543 「長き世を頼めてもなほ悲しきは<BR>⏎
  ただ明日知らぬ命なりけり<BR>⏎
<P>⏎
330 「長き世を頼めてもなほ悲しきは<BR>  ただ明日知らぬ命なりけり<BR>⏎
d1545<P>⏎
d1547<P>⏎
cd3:1548-550 「心をば嘆かざらまし命のみ<BR>⏎
  定めなき世と思はましかば」<BR>⏎
<P>⏎
333 「心をば嘆かざらまし命のみ<BR>  定めなき世と思はましかば」<BR>⏎
d1552<P>⏎
d1554<P>⏎
cd2:1555-556 などほほ笑みて、大将のここに渡し初めたまひけむほどを、返す返すゆかしがりたまひて、問ひたまふを、苦しがりて、<BR>⏎
<P>⏎
336 などほほ笑みて、大将のここに渡し初めたまひけむほどを、返す返すゆかしがりたまひて、問ひたまふを、苦しがりて、<BR>⏎
d1558<P>⏎
cd2:1559-560 とうち怨じたるさまも、若びたり。おのづからそれは聞き出でてむ、と思すものから、言はせまほしきぞわりなきや。<BR>⏎
<P>⏎
338 とうち怨じたるさまも、若びたり。おのづからそれは聞き出でてむ、と思すものから、言はせまほしきぞわりなきや。<BR>⏎
text51561 <A NAME="in29">[第九段 翌朝、匂宮、京へ帰る]</A><BR>339 
d1562<P>⏎
d1564<P>⏎
cd2:1565-566 「后の宮よりも御使参りて、右の大殿もむつかりきこえさせたまひて、『人に知られさせたまはぬ御ありきは、いと軽々しく、なめげなることもあるを、すべて内裏などに聞こし召さむことも、身のためなむいとからき』といみじく申させたまひけり。東山に聖御覧じにとなむ、人にはものしはべりつる」<BR>⏎
<P>⏎
341 「后の宮よりも御使参りて、右の大殿もむつかりきこえさせたまひて、『人に知られさせたまはぬ御ありきは、いと軽々しく、なめげなることもあるを、すべて内裏などに聞こし召さむことも、身のためなむいとからき』といみじく申させたまひけり。東山に聖御覧じにとなむ、人にはものしはべりつる」<BR>⏎
d1568<P>⏎
d1570<P>⏎
d1572<P>⏎
cd6:3573-578 「聖の名をさへつけきこえさせたまひてければ、いとよし。私の罪も、それにて滅ぼしたまふらむ。まことに、いとあやしき御心の、げにいかでならはせたまひけむ。かねてかうおはしますべしと承らましにも、いとかたじけなければ、たばかりきこえさせてましものを。奥なき御ありきにこそは」<BR>⏎
<P>⏎
 と扱ひきこゆ。<BR>⏎
<P>⏎
 参りて、「さなむ」とまねびきこゆれば、「げにいかならむ」と、思しやるに、<BR>⏎
<P>⏎
345-347 「聖の名をさへつけきこえさせたまひてければ、いとよし。私の罪も、それにて滅ぼしたまふらむ。まことに、いとあやしき御心の、げにいかでならはせたまひけむ。かねてかうおはしますべしと承らましにも、いとかたじけなければ、たばかりきこえさせてましものを。奥なき御ありきにこそは」<BR>⏎
 と扱ひきこゆ。<BR>⏎
 参りて、「さなむ」とまねびきこゆれば、「げにいかならむ」と、思しやるに、<BR>⏎
d1580<P>⏎
d1582<P>⏎
d1584<P>⏎
d1586<P>⏎
d1588<P>⏎
cd3:1589-591 「世に知らず惑ふべきかな先に立つ<BR>⏎
  涙も道をかきくらしつつ」<BR>⏎
<P>⏎
353 「世に知らず惑ふべきかな先に立つ<BR>  涙も道をかきくらしつつ」<BR>⏎
d1593<P>⏎
cd3:1594-596 「涙をもほどなき袖にせきかねて<BR>⏎
  いかに別れをとどむべき身ぞ」<BR>⏎
<P>⏎
355 「涙をもほどなき袖にせきかねて<BR>  いかに別れをとどむべき身ぞ」<BR>⏎
d1598<P>⏎
d1600<P>⏎
text51601 <H4>第三章 浮舟と薫の物語 薫と浮舟、宇治橋の和歌を詠み交す</H4>358 
text51602 <A NAME="in31">[第一段 匂宮、二条院に帰邸し、中君を責める]</A><BR>359 
d1603<P>⏎
d1605<P>⏎
d1607<P>⏎
cd2:1608-609 「心地こそいと悪しけれ。いかならむとするにかと、心細くなむある。まろはいみじくあはれと見置いたてまつるとも、御ありさまはいととく変はりなむかし。人の本意は、かならずかなふなれば」<BR>⏎
<P>⏎
362 「心地こそいと悪しけれ。いかならむとするにかと、心細くなむある。まろはいみじくあはれと見置いたてまつるとも、御ありさまはいととく変はりなむかし。人の本意は、かならずかなふなれば」<BR>⏎
d1611<P>⏎
d1613<P>⏎
cd4:2614-617 とて背きたまへり。宮も、まめだちたまひて、<BR>⏎
<P>⏎
 「まことにつらしと思ひきこゆることもあらむは、いかが思さるべき。まろは御ためにおろかなる人かは。人も、ありがたしなど、とがむるまでこそあれ。人にはこよなう思ひ落としたまふべかめり。誰れもさべきにこそはと、ことわらるるを、隔てたまふ御心の深きなむ、いと心憂き」<BR>⏎
<P>⏎
365-366 とて背きたまへり。宮も、まめだちたまひて、<BR>⏎
 「まことにつらしと思ひきこゆることもあらむは、いかが思さるべき。まろは御ためにおろかなる人かは。人も、ありがたしなど、とがむるまでこそあれ。人にはこよなう思ひ落としたまふべかめり。誰れもさべきにこそはと、ことわらるるを、隔てたまふ御心の深きなむ、いと心憂き」<BR>⏎
d1619<P>⏎
d1621<P>⏎
d1623<P>⏎
text51624 <A NAME="in32">[第二段 明石中宮からと薫の見舞い]</A><BR>370 
d1625<P>⏎
d1627<P>⏎
d1629<P>⏎
d1631<P>⏎
d1633<P>⏎
d1635<P>⏎
cd2:1636-637 とてうちとけながら対面したまへり。<BR>⏎
<P>⏎
376 とてうちとけながら対面したまへり。<BR>⏎
d1639<P>⏎
d1641<P>⏎
cd2:1642-643 例は、さしもあらぬことのついでにだに、我はまめ人ともてなし名のりたまふを、ねたがりたまひて、よろづにのたまひ破るを、かかること見表はいたるを、いかにのたまはまし。されどさやうの戯れ事もかけたまはず、いと苦しげに見えたまへば、<BR>⏎
<P>⏎
379 例は、さしもあらぬことのついでにだに、我はまめ人ともてなし名のりたまふを、ねたがりたまひて、よろづにのたまひ破るを、かかること見表はいたるを、いかにのたまはまし。されどさやうの戯れ事もかけたまはず、いと苦しげに見えたまへば、<BR>⏎
d1645<P>⏎
cd2:1646-647 などまめやかに聞こえおきて出でたまひぬ。「恥づかしげなる人なりかし。わがありさまを、いかに思ひ比べけむ」など、さまざまなることにつけつつも、ただこの人を、時の間忘れず思し出づ。<BR>⏎
<P>⏎
381 などまめやかに聞こえおきて出でたまひぬ。「恥づかしげなる人なりかし。わがありさまを、いかに思ひ比べけむ」など、さまざまなることにつけつつも、ただこの人を、時の間忘れず思し出づ。<BR>⏎
d1649<P>⏎
d1651<P>⏎
cd2:1652-653 と友達には言ひ聞かせたり。よろづ右近ぞ、虚言しならひける。<BR>⏎
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384 と友達には言ひ聞かせたり。よろづ右近ぞ、虚言しならひける。<BR>⏎
text51654 <A NAME="in33">[第三段 二月上旬、薫、宇治へ行く]</A><BR>385 
d1655<P>⏎
d1657<P>⏎
d1659<P>⏎
cd4:2660-663 女いかで見えたてまつらむとすらむと、空さへ恥づかしく恐ろしきに、あながちなりし人の御ありさま、うち思ひ出でらるるに、またこの人に見えたてまつらむを思ひやるなむ、いみじう心憂き。<BR>⏎
<P>⏎
 「『われは年ごろ見る人をも、皆思ひ変はりぬべき心地なむする』とのたまひしを、げにそののち御心地苦しとて、いづくにもいづくにも、例の御ありさまならで、御修法など騒ぐなるを聞くに、またいかに聞きて思さむ」と思ふもいと苦し。<BR>⏎
<P>⏎
388-389 女いかで見えたてまつらむとすらむと、空さへ恥づかしく恐ろしきに、あながちなりし人の御ありさま、うち思ひ出でらるるに、またこの人に見えたてまつらむを思ひやるなむ、いみじう心憂き。<BR>⏎
 「『われは年ごろ見る人をも、皆思ひ変はりぬべき心地なむする』とのたまひしを、げにそののち御心地苦しとて、いづくにもいづくにも、例の御ありさまならで、御修法など騒ぐなるを聞くに、またいかに聞きて思さむ」と 思ふもいと苦し。<BR>⏎
d1665<P>⏎
d1667<P>⏎
text51668 <A NAME="in34">[第四段 薫と浮舟、それぞれの思い]</A><BR>392 
d1669<P>⏎
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d1673<P>⏎
d1675<P>⏎
cd2:1676-677 など朔日ごろの夕月夜に、すこし端近く臥して眺め出だしたまへり。男は、過ぎにし方のあはれをも思し出で、女は、今より添ひたる身の憂さを嘆き加へて、かたみにもの思はし。<BR>⏎
<P>⏎
396 など朔日ごろの夕月夜に、すこし端近く臥して眺め出だしたまへり。男は、過ぎにし方のあはれをも思し出で、女は、今より添ひたる身の憂さを嘆き加へて、かたみにもの思はし。<BR>⏎
text51678 <A NAME="in35">[第五段 薫と浮舟、宇治橋の和歌を詠み交す]</A><BR>397 
d1679<P>⏎
d1681<P>⏎
cd5:2682-686 まいて<A HREF="#k10">恋しき人に</A><A NAME="t10">よ</A>そへられたるもこよなからず、やうやうものの心知り、都馴れゆくありさまのをかしきも、こよなく見まさりしたる心地したまふに、女は、かき集めたる心のうちに、催さるる涙、ともすれば出でたつを、慰めかねたまひつつ、<BR>⏎
<P>⏎
 「宇治橋の長き契りは朽ちせじを<BR>⏎
  危ぶむ方に心騒ぐな<BR>⏎
<P>⏎
399-400 まいて<A HREF="#k10">恋しき人に</A><A NAME="t10">よ</A>そへられたるもこよなからず、やうやうものの心知り、都馴れゆくありさまのをかしきも、こよなく見まさりしたる心地したまふに、女は、かき集めたる心のうちに、催さるる涙、ともすれば出でたつを、慰めかねたまひつつ、<BR>⏎
 「宇治橋の長き契りは朽ちせじを<BR>  危ぶむ方に心騒ぐな<BR>⏎
d1688<P>⏎
d1690<P>⏎
cd3:1691-693 「絶え間のみ世には危ふき宇治橋を<BR>⏎
  朽ちせぬものとなほ頼めとや」<BR>⏎
<P>⏎
403 「絶え間のみ世には危ふき宇治橋を<BR>  朽ちせぬものとなほ頼めとや」<BR>⏎
d1695<P>⏎
text51696 <H4>第四章 浮舟と匂宮の物語 匂宮と浮舟、橘の小島の和歌を詠み交す</H4>405 
text51697 <A NAME="in41">[第一段 二月十日、宮中の詩会催される]</A><BR>406 
d1698<P>⏎
d1700<P>⏎
d1702<P>⏎
d1704<P>⏎
d1706<P>⏎
cd2:1707-708 とうち誦じたまへるも、はかなきことを口ずさびにのたまへるも、あやしくあはれなるけしき添へる人ざまにて、いともの深げなり。<BR>⏎
<P>⏎
411 とうち誦じたまへるも、はかなきことを口ずさびにのたまへるも、あやしくあはれなるけしき添へる人ざまにて、いともの深げなり。<BR>⏎
d1710<P>⏎
d1712<P>⏎
d1714<P>⏎
cd2:1715-716 明朝、雪のいと高う積もりたるに、文たてまつりたまはむとて、御前に参りたまへる御容貌、このころいみじく盛りにきよげなり。かの君も同じほどにて、今二つ三つまさるけぢめにや、すこしねびまさるけしき用意などぞ、ことさらにも作りたらむ、あてなる男の本にしつべくものしたまふ。「帝の御婿にて飽かぬことなし」とぞ、世人もことわりける。才なども、おほやけおほやけしき方も、後れずぞおはすべき。<BR>⏎
<P>⏎
415 明朝、雪のいと高う積もりたるに、文たてまつりたまはむとて、御前に参りたまへる御容貌、このころいみじく盛りにきよげなり。かの君も同じほどにて、今二つ三つまさるけぢめにや、すこしねびまさるけしき用意などぞ、ことさらにも作りたらむ、あてなる男の本にしつべくものしたまふ。「帝の御婿にて飽かぬことなし」とぞ、世人もことわりける。才なども、おほやけおほやけしき方も、後れずぞおはすべき。<BR>⏎
d1718<P>⏎
text51719 <A NAME="in42">[第二段 匂宮、雪の山道の宇治へ行く]</A><BR>417 
d1720<P>⏎
d1722<P>⏎
d1724<P>⏎
d1726<P>⏎
d1728<P>⏎
d1730<P>⏎
text51731 <A NAME="in43">[第三段 宮と浮舟、橘の小島の和歌を詠み交す]</A><BR>423 
d1732<P>⏎
d1734<P>⏎
d1736<P>⏎
cd2:1737-738 と申さす。「こはいかにしたまふことにか」と、右近もいと心あわたたしければ、寝おびれて起きたる心地も、わななかれて、あやし。童べの雪遊びしたるけはひのやうにぞ、震ひ上がりにける。<BR>⏎
<P>⏎
426 と申さす。「こはいかにしたまふことにか」と、右近もいと心あわたたしければ、寝おびれて起きたる心地も、わななかれて、あやし。童べの雪遊びしたるけはひのやうにぞ、震ひ上がりにける。<BR>⏎
d1740<P>⏎
d1742<P>⏎
d1744<P>⏎
d1746<P>⏎
cd2:1747-748 「これなむ<A HREF="#no13">橘の小島</A><A NAME="te13">」</A><BR>⏎
<P>⏎
431 「これなむ<A HREF="#no13">橘の小島</A><A NAME="te13">」</A><BR>⏎
d1750<P>⏎
d1752<P>⏎
d1754<P>⏎
cd3:1755-757 「年経とも変はらむものか橘の<BR>⏎
  小島の崎に契る心は」<BR>⏎
<P>⏎
435 「年経とも変はらむものか橘の<BR>  小島の崎に契る心は」<BR>⏎
d1759<P>⏎
cd3:1760-762 「橘の小島の色は変はらじを<BR>⏎
  この浮舟ぞ行方知られぬ」<BR>⏎
<P>⏎
437 「橘の小島の色は変はらじを<BR>  この浮舟ぞ行方知られぬ」<BR>⏎
d1764<P>⏎
d1766<P>⏎
d1768<P>⏎
text51769 <A NAME="in44">[第四段 匂宮、浮舟に心奪われる]</A><BR>441 
d1770<P>⏎
d1772<P>⏎
cd2:1773-774 なつかしきほどなる白き限りを五つばかり、袖口裾のほどまでなまめかしく、色々にあまた重ねたらむよりも、をかしう着なしたり。常に見たまふ人とても、かくまでうちとけたる姿などは見ならひたまはぬを、かかるさへぞ、なほめづらかにをかしう思されける。<BR>⏎
<P>⏎
443 なつかしきほどなる白き限りを五つばかり、袖口裾のほどまでなまめかしく、色々にあまた重ねたらむよりも、をかしう着なしたり。常に見たまふ人とても、かくまでうちとけたる姿などは見ならひたまはぬを、かかるさへぞ、なほめづらかにをかしう思されける。<BR>⏎
d1776<P>⏎
d1778<P>⏎
d1780<P>⏎
d1782<P>⏎
d1784<P>⏎
text51785 <A NAME="in45">[第五段 匂宮、浮舟と一日を過ごす]</A><BR>449 
d1786<P>⏎
d1788<P>⏎
d1790<P>⏎
d1792<P>⏎
d1794<P>⏎
d1796<P>⏎
cd3:1797-799 「峰の雪みぎはの氷踏み分けて<BR>⏎
  君にぞ惑ふ道は惑はず<BR>⏎
<P>⏎
455 「峰の雪みぎはの氷踏み分けて<BR>  君にぞ惑ふ道は惑はず<BR>⏎
d1801<P>⏎
cd7:3802-808 などあやしき硯召し出でて、手習ひたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
 「降り乱れみぎはに凍る雪よりも<BR>⏎
  中空にてぞ我は消ぬべき」<BR>⏎
<P>⏎
 と書き消ちたり。この「中空」をとがめたまふ。「げに憎くも書きてけるかな」と、恥づかしくて引き破りつ。さらでだに見るかひある御ありさまを、いよいよあはれにいみじと、人の心にしめられむと、尽くしたまふ言の葉けしき、言はむ方なし。<BR>⏎
<P>⏎
457-459 などあやしき硯召し出でて、手習ひたまふ。<BR>⏎
 「降り乱れみぎはに凍る雪よりも<BR>  中空にてぞ我は消ぬべき」<BR>⏎
 と書き消ちたり。この「中空」をとがめたまふ。「げに憎くも書きてけるかな」と、恥づかしくて引き破りつ。さらでだに見るかひある御ありさまを、いよいよあはれにいみじと、人の心にしめられむと、尽くしたまふ言の葉けしき、言はむ方なし。<BR>⏎
text51809 <A NAME="in46">[第六段 匂宮、京へ帰り立つ]</A><BR>460 
d1810<P>⏎
d1812<P>⏎
d1814<P>⏎
d1816<P>⏎
cd4:2817-820 「いみじく思すめる人は、かうはよもあらじよ。見知りたまひたりや」<BR>⏎
<P>⏎
 とのたまへば、げにと思ひて、うなづきて居たる、いとらうたげなり。右近、妻戸放ちて入れたてまつる。やがてこれより別れて出でたまふも、飽かずいみじと思さる。<BR>⏎
<P>⏎
464-465 「いみじく思すめる人は、かうはよもあらじよ。見知りたまひたりや」<BR>⏎
 とのたまへば、げにと思ひて、うなづきて居たる、いとらうたげなり。右近、妻戸放ちて入れたてまつる。やがてこれより別れて出でたまふも、飽かずいみじと思さる。<BR>⏎
text51821 <A NAME="in47">[第七段 匂宮、二条院に帰邸後、病に臥す]</A><BR>466 
d1822<P>⏎
d1824<P>⏎
d1826<P>⏎
d1828<P>⏎
text51829 <H4>第五章 浮舟の物語 浮舟、恋の板ばさみに、入水を思う</H4>470 
text51830 <A NAME="in51">[第一段 春雨の続く頃、匂宮から手紙が届く]</A><BR>471 
d1831<P>⏎
d1833<P>⏎
cd3:1834-836 「眺めやるそなたの雲も見えぬまで<BR>⏎
  空さへ暮るるころのわびしさ」<BR>⏎
<P>⏎
473 「眺めやるそなたの雲も見えぬまで<BR>  空さへ暮るるころのわびしさ」<BR>⏎
d1838<P>⏎
cd6:3839-844 「いとかかる心を思ひもまさりぬべけれど、初めより契りたまひしさまも、さすがに、かれはなほいともの深う、人柄のめでたきなども、世の中を知りにし初め<A HREF="#k17">なればにや</A><A NAME="t17">、</A>かかる憂きこと聞きつけて、思ひ疎みたまひなむ世には、いかでかあらむ。<BR>⏎
<P>⏎
 いつしかと思ひ惑ふ親にも、思はずに、心づきなしとこそは、もてわづらはれめ。かく心焦られしたまふ人、はたいとあだなる御心本性とのみ聞きしかば、かかるほどこそあらめ、またかうながらも、京にも隠し据ゑたまひ、ながらへても思し数まへむにつけては、かの上の思さむこと。よろづ隠れなき世なりければ、あやしかりし夕暮のしるべばかりにだに、かう尋ね出でたまふめり。<BR>⏎
<P>⏎
 ましてわがありさまのともかくもあらむを、聞きたまはぬやうはありなむや」<BR>⏎
<P>⏎
475-477 「いとかかる心を思ひもまさりぬべけれど、初めより契りたまひしさまも、さすがに、かれはなほいともの深う、人柄のめでたきなども、世の中を知りにし初め<A HREF="#k17">なればにや</A><A NAME="t17">、</A>かかる憂きこと聞きつけて、思ひ疎みたまひなむ世には、いかでかあらむ。<BR>⏎
 いつしかと思ひ惑ふ親にも、思はずに、心づきなしとこそは、もてわづらはれめ。かく心焦られしたまふ人、はたいとあだなる御心本性とのみ聞きしかば、かかるほどこそあらめ、またかうながらも、京にも隠し据ゑたまひ、ながらへても思し数まへむにつけては、かの上の思さむこと。よろづ隠れなき世なりければ、あやしかりし夕暮のしるべばかりにだに、かう尋ね出でたまふめり。<BR>⏎
 ましてわがありさまのともかくもあらむを、聞きたまはぬやうはありなむや」<BR>⏎
d1846<P>⏎
text51847 <A NAME="in52">[第二段 その同じ頃、薫からも手紙が届く]</A><BR>479 
d1848<P>⏎
d1850<P>⏎
cd4:2851-854 「なほ移りにけり」<BR>⏎
<P>⏎
 など言はぬやうにて言ふ。<BR>⏎
<P>⏎
481-482 「なほ移りにけり」<BR>⏎
 など言はぬやうにて言ふ。<BR>⏎
d1856<P>⏎
d1858<P>⏎
cd4:2859-862 「<A HREF="#k18">うしろめた</A><A NAME="t18">の</A>御心のほどや。殿の御ありさまにまさりたまふ人は、誰れかあらむ。容貌などは知らず、御心ばへけはひなどよ。なほこの御ことは、いと見苦しきわざかな。いかがならせたまはむとすらむ」<BR>⏎
<P>⏎
 と二人して語らふ。心一つに思ひしよりは、虚言もたより出で来にけり。<BR>⏎
<P>⏎
485-486 「<A HREF="#k18">うしろめた</A><A NAME="t18">の</A>御心のほどや。殿の御ありさまにまさりたまふ人は、誰れかあらむ。容貌などは知らず、御心ばへけはひなどよ。なほこの御ことは、いと見苦しきわざかな。いかがならせたまはむとすらむ」<BR>⏎
 と二人して語らふ。心一つに思ひしよりは、虚言もたより出で来にけり。<BR>⏎
d1864<P>⏎
d1866<P>⏎
cd5:2867-871 など端書きに、<BR>⏎
<P>⏎
 「水まさる遠方の里人いかならむ<BR>⏎
  晴れぬ長雨にかき暮らすころ<BR>⏎
<P>⏎
489-490 など端書きに、<BR>⏎
 「水まさる遠方の里人いかならむ<BR>  晴れぬ長雨にかき暮らすころ<BR>⏎
d1873<P>⏎
cd4:2874-877 と白き色紙にて立文なり。御手もこまかにをかしげならねど、書きざまゆゑゆゑしく見ゆ。宮は、いと多かるを、小さく結びなしたまへる、さまざまをかし。<BR>⏎
<P>⏎
 「まづかれを、人見ぬほどに」<BR>⏎
<P>⏎
492-493 と白き色紙にて立文なり。御手もこまかにをかしげならねど、書きざまゆゑゆゑしく見ゆ。宮は、いと多かるを、小さく結びなしたまへる、さまざまをかし。<BR>⏎
 「まづかれを、人見ぬほどに」<BR>⏎
d1879<P>⏎
d1881<P>⏎
d1883<P>⏎
cd3:1884-886 「里の名をわが身に知れば山城の<BR>⏎
  宇治のわたりぞいとど住み憂き」<BR>⏎
<P>⏎
497 「里の名をわが身に知れば山城の<BR>  宇治のわたりぞいとど住み憂き」<BR>⏎
d1888<P>⏎
cd2:1889-890 「かき暮らし晴れせぬ峰の雨雲に<BR>⏎
  浮きて世をふる身をもなさばや<BR>⏎
499 「かき暮らし晴れせぬ峰の雨雲に<BR>  浮きて世をふる身をもなさばや<BR>⏎
d1892<P>⏎
d1894<P>⏎
cd5:2895-899 まめ人は、のどかに見たまひつつ、「あはれいかに眺むらむ」と思ひやりて、いと恋し。<BR>⏎
<P>⏎
 「<A HREF="#no21">つれづれと身を知る雨</A><A NAME="te21">の</A>小止まねば<BR>⏎
  袖さへいとどみかさまさりて」<BR>⏎
<P>⏎
502-503 まめ人は、のどかに見たまひつつ、「あはれいかに眺むらむ」と思ひやりて、いと恋し。<BR>⏎
 「<A HREF="#no21">つれづれと身を知る雨</A><A NAME="te21">の</A>小止まねば<BR>  袖さへいとどみかさまさりて」<BR>⏎
d1901<P>⏎
text51902 <A NAME="in53">[第三段 匂宮、薫の浮舟を新築邸に移すことを知る]</A><BR>505 
d1903<P>⏎
d1905<P>⏎
d1907<P>⏎
cd2:1908-909 と聞こえたまへば、<BR>⏎
<P>⏎
508 と聞こえたまへば、<BR>⏎
d1911<P>⏎
cd4:2912-915 といらへたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
 「内裏になど、悪しざまに聞こし召さする人やはべらむ。世の人のもの言ひぞ、いとあぢきなくけしからずはべるや。されどそれは、さばかりの数にだにはべるまじ」<BR>⏎
<P>⏎
510-511 といらへたまふ。<BR>⏎
 「内裏になど、悪しざまに聞こし召さする人やはべらむ。世の人のもの言ひぞ、いとあぢきなくけしからずはべるや。されどそれは、さばかりの数にだにはべるまじ」<BR>⏎
d1917<P>⏎
d1919<P>⏎
d1921<P>⏎
d1923<P>⏎
d1925<P>⏎
cd2:1926-927 と語らひたまひければ、「いかなる人にかは」と思へど、大事と思したるに、かたじけなければ、「さらば」と聞こえけり。これをまうけたまひて、すこし御心のどめたまふ。この月の晦日方に、下るべければ、「やがてその日渡さむ」と思し構ふ。<BR>⏎
<P>⏎
517 と語らひたまひければ、「いかなる人にかは」と思へど、大事と思したるに、かたじけなければ、「さらば」と聞こえけり。これをまうけたまひて、すこし御心のどめたまふ。この月の晦日方に、下るべければ、「やがてその日渡さむ」と思し構ふ。<BR>⏎
d1929<P>⏎
d1931<P>⏎
text51932 <A NAME="in54">[第四段 浮舟の母、京から宇治に来る]</A><BR>520 
d1933<P>⏎
cd2:1934-935 大将殿は、卯月の十日となむ定めたまへりける。「<A HREF="#no22">誘ふ水あらば</A><A NAME="te22">」</A>とは思はず、いとあやしく、「いかにしなすべき身にかあらむ」と浮きたる心地のみすれば、「母の御もとにしばし渡りて、思ひめぐらすほどあらむ」と思せど、少将の妻、子産むべきほど近くなりぬとて、修法読経など、隙なく騒げば、石山にもえ出で立つまじ、母ぞこち渡りたまへる。乳母出で来て、<BR>⏎
<P>⏎
521 大将殿は、卯月の十日となむ定めたまへりける。「<A HREF="#no22">誘ふ水あらば</A><A NAME="te22">」</A>とは思はず、いとあやしく、「いかにしなすべき身にかあらむ」と浮きたる心地のみすれば、「母の御もとにしばし渡りて、思ひめぐらすほどあらむ」と思せど、少将の妻、子産むべきほど近くなりぬとて、修法読経など、隙なく騒げば、石山にもえ出で立つまじ、母ぞこち渡りたまへる。乳母出で来て、<BR>⏎
d1937<P>⏎
d1939<P>⏎
cd6:3940-945 「けしからぬことどもの出で来て、人笑へならば、誰れも誰れもいかに思はむ。あやにくにのたまふ人、はた<A HREF="#no23">八重立つ山</A><A NAME="te23">に</A>籠もるとも、かならず尋ねて、我も人もいたづらになりぬべし。なほ心やすく<A HREF="#k20">隠れ</A><A NAME="t20">な</A>むことを思へと、今日ものたまへるを、いかにせむ」<BR>⏎
<P>⏎
 と心地悪しくて臥したまへり。<BR>⏎
<P>⏎
 「などかかく例ならず、いたく青み痩せたまへる」<BR>⏎
<P>⏎
524-526 「けしからぬことどもの出で来て、人笑へならば、誰れも誰れもいかに思はむ。あやにくにのたまふ人、はた<A HREF="#no23">八重立つ山</A><A NAME="te23">に</A>籠もるとも、かならず尋ねて、我も人もいたづらになりぬべし。なほ心やすく<A HREF="#k20">隠れ</A><A NAME="t20">な</A>むことを思へと、今日ものたまへるを、いかにせむ」<BR>⏎
 と心地悪しくて臥したまへり。<BR>⏎
 「などかかく例ならず、いたく青み痩せたまへる」<BR>⏎
d1947<P>⏎
d1949<P>⏎
d1951<P>⏎
d1953<P>⏎
d1955<P>⏎
text51956 <A NAME="in55">[第五段 浮舟、母と尼の話から、入水を思う]</A><BR>532 
d1957<P>⏎
d1959<P>⏎
d1961<P>⏎
d1963<P>⏎
d1965<P>⏎
d1967<P>⏎
d1969<P>⏎
d1971<P>⏎
d1973<P>⏎
d1975<P>⏎
d1977<P>⏎
cd2:1978-979 と言ふにも、「さりやまして」と、君は聞き臥したまへり。<BR>⏎
<P>⏎
543 と言ふにも、「さりやまして」と、君は聞き臥したまへり。<BR>⏎
text51980 <A NAME="in56">[第六段 浮舟、母と尼の話から、入水を思う]</A><BR>544 
d1981<P>⏎
cd4:2982-985 「あなむくつけや。帝の御女を持ちたてまつりたまへる人なれど、よそよそにて、悪しくも善くもあらむは、いかがはせむと、おほけなく思ひなしはべる。よからぬことをひき出でたまへらましかば、すべて身には悲しくいみじと思ひきこゆとも、また見たてまつらざらまし」<BR>⏎
<P>⏎
 など言ひ交はすことどもに、いとど心肝もつぶれぬ。「なほわが身を失ひてばや。つひに聞きにくきことは出で来なむ」と思ひ続くるに、この水の音の恐ろしげに響きて行くを、<BR>⏎
<P>⏎
545-546 「あなむくつけや。帝の御女を持ちたてまつりたまへる人なれど、よそよそにて、悪しくも善くもあらむは、いかがはせむと、おほけなく思ひなしはべる。よからぬことをひき出でたまへらましかば、すべて身には悲しくいみじと思ひきこゆとも、また見たてまつらざらまし」<BR>⏎
 など言ひ交はすことどもに、いとど心肝もつぶれぬ。「なほわが身を失ひてばや。つひに聞きにくきことは出で来なむ」と思ひ続くるに、この水の音の恐ろしげに響きて行くを、<BR>⏎
d1987<P>⏎
cd2:1988-989 など母君したり顔に言ひゐたり。昔よりこの川の早く恐ろしきことを言ひて、<BR>⏎
<P>⏎
548 など母君したり顔に言ひゐたり。昔よりこの川の早く恐ろしきことを言ひて、<BR>⏎
d1991<P>⏎
cd6:3992-997 と人びとも言ひあへり。君は、<BR>⏎
<P>⏎
 「さてもわが身行方も知らずなりなば、誰れも誰れも、あへなくいみじと、しばしこそ思うたまはめながらへて人笑へに憂きこともあらむは、いつかそのもの思ひの絶えむとする」<BR>⏎
<P>⏎
 と思ひかくるには、障りどころもあるまじく、さはやかによろづ思ひなさるれど、うち返しいと悲し。親のよろづに思ひ言ふありさまを、寝たるやうにてつくづくと思ひ乱る。<BR>⏎
<P>⏎
550-552 と人びとも言ひあへり。君は、<BR>⏎
 「さてもわが身行方も知らずなりなば、誰れも誰れも、あへなくいみじと、しばしこそ思うたまはめ. ながらへて人笑へに憂きこともあらむは、いつかそのもの思ひの絶えむとする」<BR>⏎
 と思ひかくるには、障りどころもあるまじく、さはやかによろづ思ひなさるれど、うち返しいと悲し。親のよろづに思ひ言ふありさまを、寝たるやうにてつくづくと思ひ乱る。<BR>⏎
text51998 <A NAME="in57">[第七段 浮舟の母、帰京す]</A><BR>553 
d1999<P>⏎
d11001<P>⏎
d11003<P>⏎
d11005<P>⏎
cd4:21006-1009 「人少ななめり。よく<A HREF="#k22">さるべからむ</A><A NAME="t22">あ</A>たりを訪ねて。今参りはとどめたまへ。やむごとなき御仲らひは、正身こそ何事も<A HREF="#k23">おいらか</A><A NAME="t23">に</A>思さめ、好からぬ仲となりぬるあたりは、わづらはしきこともありぬべし。隠し密めて、さる心したまへ」<BR>⏎
<P>⏎
 など思ひいたらぬことなく言ひおきて、<BR>⏎
<P>⏎
557-558 「人少ななめり。よく<A HREF="#k22">さるべからむ</A><A NAME="t22">あ</A>たりを訪ねて。今参りはとどめたまへ。やむごとなき御仲らひは、正身こそ何事も<A HREF="#k23">おいらか</A><A NAME="t23">に</A>思さめ、好からぬ仲となりぬるあたりは、わづらはしきこともありぬべし。隠し密めて、さる心したまへ」<BR>⏎
 など思ひいたらぬことなく言ひおきて、<BR>⏎
d11011<P>⏎
d11013<P>⏎
d11015<P>⏎
d11017<P>⏎
d11019<P>⏎
cd2:11020-1021 などうち泣きつつのたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
564 などうち泣きつつのたまふ。<BR>⏎
text511022 <H4>第六章 浮舟と薫の物語 浮舟、右近の姉の悲話から死を願う</H4>565 
text511023 <A NAME="in61">[第一段 薫と匂宮の使者同士出くわす]</A><BR>566 
d11024<P>⏎
d11026<P>⏎
d11028<P>⏎
d11030<P>⏎
d11032<P>⏎
cd2:11033-1034 などこれは多く書きたまへり。<BR>⏎
<P>⏎
571 などこれは多く書きたまへり。<BR>⏎
d11036<P>⏎
d11038<P>⏎
d11040<P>⏎
d11042<P>⏎
d11044<P>⏎
d11046<P>⏎
d11048<P>⏎
d11050<P>⏎
d11052<P>⏎
text511053 <A NAME="in62">[第二段 薫、匂宮が女からの文を読んでいるのを見る]</A><BR>581 
d11054<P>⏎
d11056<P>⏎
d11058<P>⏎
d11060<P>⏎
d11062<P>⏎
d11064<P>⏎
d11066<P>⏎
d11068<P>⏎
d11070<P>⏎
d11072<P>⏎
d11074<P>⏎
d11076<P>⏎
cd2:11077-1078 かの内記は政官なれば、遅れてぞ参れる。この御文もたてまつるを、宮、台盤所におはしまして、戸口に召し寄せて取りたまふを、大将、御前の方より立ち出でたまふ、側目に見通したまひて、「せちにも思すべかめる文のけしきかな」と、をかしさに立ちとまりたまへり。<BR>⏎
<P>⏎
593 かの内記は政官なれば、遅れてぞ参れる。この御文もたてまつるを、宮、台盤所におはしまして、戸口に召し寄せて取りたまふを、大将、御前の方より立ち出でたまふ、側目に見通したまひて、「せちにも思すべかめる文のけしきかな」と、をかしさに立ちとまりたまへり。<BR>⏎
d11080<P>⏎
d11082<P>⏎
d11084<P>⏎
cd2:11085-1086 と急がしげにて立ちたまひぬ。<BR>⏎
<P>⏎
597 と急がしげにて立ちたまひぬ。<BR>⏎
text511087 <A NAME="in63">[第三段 薫、随身から匂宮と浮舟の関係を知らされる]</A><BR>598 
d11088<P>⏎
d11090<P>⏎
d11092<P>⏎
d11094<P>⏎
d11096<P>⏎
cd2:11097-1098 「今朝、かの宇治に、出雲権守時方朝臣のもとにはべる男の、紫の薄様にて、桜につけたる文を、西の妻戸に寄りて、女房に取らせはべりつる。見たまへつけて、しかしか問ひはべりつれば、言違へつつ、虚言のやうに申しはべりつるを、いかに申すぞ、とて童べして見せはべりつれば、兵部卿宮に参りはべりて、式部少輔道定朝臣になむ、その返り事は取らせはべりける」<BR>⏎
<P>⏎
603 「今朝、かの宇治に、出雲権守時方朝臣のもとにはべる男の、紫の薄様にて、桜につけたる文を、西の妻戸に寄りて、女房に取らせはべりつる。見たまへつけて、しかしか問ひはべりつれば、言違へつつ、虚言のやうに申しはべりつるを、いかに申すぞ、とて童べして見せはべりつれば、兵部卿宮に参りはべりて、式部少輔道定朝臣になむ、その返り事は取らせはべりける」<BR>⏎
d11100<P>⏎
d11102<P>⏎
d11104<P>⏎
d11106<P>⏎
text511107 <A NAME="in64">[第四段 薫、帰邸の道中、思い乱れる]</A><BR>608 
d11108<P>⏎
cd2:11109-1110 道すがら、「なほいと恐ろしく、隈なくおはする宮なりや。いかなりけむついでに、さる人ありと聞きたまひけむ。いかで言ひ寄りたまひけむ。田舎びたるあたりにて、かうやうの筋の紛れは、えしもあらじ、と思ひけるこそ幼けれ。さても知らぬあたりにこそ、さる好きごとをものたまはめ、昔より隔てなくて、あやしきまでしるべして、率てありきたてまつりし身にしも、うしろめたく思し寄るべしや」<BR>⏎
<P>⏎
609 道すがら、「なほいと恐ろしく、隈なくおはする宮なりや。いかなりけむついでに、さる人ありと聞きたまひけむ。いかで言ひ寄りたまひけむ。田舎びたるあたりにて、かうやうの筋の紛れは、えしもあらじ、と思ひけるこそ幼けれ。さても知らぬあたりにこそ、さる好きごとをものたまはめ、昔より隔てなくて、あやしきまでしるべして、率てありきたてまつりし身にしも、うしろめたく思し寄るべしや」<BR>⏎
d11112<P>⏎
cd2:11113-1114 「対の御方の御ことを、いみじく思ひつつ、年ごろ過ぐすは、わが心の重さ、こよなかりけり。さるはそれは、今初めてさま悪しかるべきほどにもあらず。もとよりのたよりにもよれるを、ただ心のうちの隈あらむが、わがためも苦しかるべきによりこそ、思ひ憚るもをこなるわざ<A HREF="#k25">なりけれ</A><A NAME="t25">。</A><BR>⏎
<P>⏎
611 「対の御方の御ことを、いみじく思ひつつ、年ごろ過ぐすは、わが心の重さ、こよなかりけり。さるはそれは、今初めてさま悪しかるべきほどにもあらず。もとよりのたよりにもよれるを、ただ心のうちの隈あらむが、わがためも苦しかるべきによりこそ、思ひ憚るもをこなるわざ<A HREF="#k25">なりけれ</A><A NAME="t25">。</A><BR>⏎
d11116<P>⏎
cd2:11117-1118 とつくづくと思ふに、女のいたくもの思ひたるさまなりしも、片端心得そめたまひては、よろづ思し合はするに、いと憂し。<BR>⏎
<P>⏎
613 とつくづくと思ふに、女のいたくもの思ひたるさまなりしも、片端心得そめたまひては、よろづ思し合はするに、いと憂し。<BR>⏎
d11120<P>⏎
d11122<P>⏎
cd2:11123-1124 「やむごとなく思ひそめ始めし人ならばこそあらめ、なほさるものにて置きたらむ。今はとて見ざらむ、はた恋しかるべし」<BR>⏎
<P>⏎
616 「やむごとなく思ひそめ始めし人ならばこそあらめ、なほさるものにて置きたらむ。今はとて見ざらむ、はた恋しかるべし」<BR>⏎
d11126<P>⏎
text511127 <A NAME="in65">[第五段 薫、宇治へ随身を遣わす]</A><BR>618 
d11128<P>⏎
cd4:21129-1132 「我すさまじく思ひなりて、捨て置きたらば、かならず、かの宮、呼び取りたまひてむ。人のため、後のいとほしさをも、ことにたどりたまふまじ。さやうに思す人こそ、一品宮の御方に人、二三人参らせたまひたなれ。さて出で立ちたらむを見聞かむ、いとほしく」<BR>⏎
<P>⏎
 などなほ捨てがたく、けしき見まほしくて、御文遣はす。例の随身召して、御手づから人間に召し寄せたり。<BR>⏎
<P>⏎
619-620 「我すさまじく思ひなりて、捨て置きたらば、かならず、かの宮、呼び取りたまひてむ。人のため、後のいとほしさをも、ことにたどりたまふまじ。さやうに思す人こそ、一品宮の御方に人、二三人参らせたまひたなれ。さて出で立ちたらむを見聞かむ、いとほしく」<BR>⏎
 などなほ捨てがたく、けしき見まほしくて、御文遣はす。例の随身召して、御手づから人間に召し寄せたり。<BR>⏎
d11134<P>⏎
d11136<P>⏎
d11138<P>⏎
cd2:11139-1140 とうちうめきたまひて、<BR>⏎
<P>⏎
624 とうちうめきたまひて、<BR>⏎
d11142<P>⏎
d11144<P>⏎
d11146<P>⏎
cd3:11147-1149 「<A HREF="#no27">波越ゆる</A><A NAME="te27">こ</A>ろとも知らず末の松<BR>⏎
  待つらむとのみ思ひけるかな<BR>⏎
<P>⏎
628 「<A HREF="#no27">波越ゆる</A><A NAME="te27">こ</A>ろとも知らず末の松<BR>  待つらむとのみ思ひけるかな<BR>⏎
d11151<P>⏎
d11153<P>⏎
d11155<P>⏎
d11157<P>⏎
d11159<P>⏎
d11161<P>⏎
text511162 <A NAME="in66">[第六段 右近と侍従、右近の姉の悲話を語る]</A><BR>635 
d11163<P>⏎
d11165<P>⏎
d11167<P>⏎
d11169<P>⏎
d11171<P>⏎
cd2:11172-1173 「あないとほし。苦しき御ことどもにこそはべれ。殿はもののけしき御覧じたるべし」<BR>⏎
<P>⏎
640 「あないとほし。苦しき御ことどもにこそはべれ。殿はもののけしき御覧じたるべし」<BR>⏎
d11175<P>⏎
d11177<P>⏎
d11179<P>⏎
d11181<P>⏎
cd2:11182-1183 さて我も住みはべらずなりにき。国にも、いみじきあたら兵一人失ひつ。またこの過ちたるも、よき郎等なれど、かかる過ちしたる者を、いかでかは使はむ、とて国の内をも追ひ払はれ、すべて女のたいだいしきぞとて、館の内にも置いたまへらざりしかば、東の人になりて、乳母も、今に恋ひ泣きはべるは、罪深くこそ見たまふれ。<BR>⏎
<P>⏎
645 さて我も住みはべらずなりにき。国にも、いみじきあたら兵一人失ひつ。またこの過ちたるも、よき郎等なれど、かかる過ちしたる者を、いかでかは使はむ、とて国の内をも追ひ払はれ、すべて女のたいだいしきぞとて、館の内にも置いたまへらざりしかば、東の人になりて、乳母も、今に恋ひ泣きはべるは、罪深くこそ見たまふれ。<BR>⏎
d11185<P>⏎
d11187<P>⏎
d11189<P>⏎
cd4:21190-1193 「うたて恐ろしきまでな聞こえさせたまひそ。何ごとも御宿世にこそあらめ。ただ御心のうちに、すこし思しなびかむ方を、さるべきに思しならせたまへ。いでやいとかたじけなく、いみじき御けしきなりしかば、人のかく思しいそぐめりし方にも御心も寄らず。しばしは隠ろへても、御思ひのまさらせたまはむに寄らせたまひね、とぞ思ひえはべる」<BR>⏎
<P>⏎
 と宮をいみじくめできこゆる心なれば、ひたみちに言ふ。<BR>⏎
<P>⏎
649-650 「うたて恐ろしきまでな聞こえさせたまひそ。何ごとも御宿世にこそあらめ。ただ御心のうちに、すこし思しなびかむ方を、さるべきに思しならせたまへ。いでやいとかたじけなく、いみじき御けしきなりしかば、人のかく思しいそぐめりし方にも御心も寄らず。しばしは隠ろへても、御思ひのまさらせたまはむに寄らせたまひね、とぞ思ひえはべる」<BR>⏎
 と宮をいみじくめできこゆる心なれば、ひたみちに言ふ。<BR>⏎
text511194 <A NAME="in67">[第七段 浮舟、右近の姉の悲話から死を願う]</A><BR>651 
d11195<P>⏎
d11197<P>⏎
d11199<P>⏎
d11201<P>⏎
cd6:31202-1207 と言ひ続くるを、君、「なほ我を、宮に心寄せたてまつりたると思ひて、この人びとの言ふ。いと恥づかしく、心地にはいづれとも思はず。ただ夢のやうにあきれて、いみじく焦られたまふをば、などかくしも、とばかり思へど、頼みきこえて年ごろになりぬる人を、今はともて離れむと思はぬによりこそ、かくいみじとものも思ひ乱るれ。げによからぬことも出で来たらむ時」と、つくづくと思ひゐたり。<BR>⏎
<P>⏎
 「まろはいかで死なばや。世づかず心憂かりける身かな。かく憂きことあるためしは、下衆などの中にだに多くやはあなる」<BR>⏎
<P>⏎
 とてうつぶし臥したまへば、<BR>⏎
<P>⏎
655-657 と言ひ続くるを、君、「なほ我を、宮に心寄せたてまつりたると思ひて、この人びとの言ふ。いと恥づかしく、心地にはいづれとも思はず。ただ夢のやうにあきれて、いみじく焦られたまふをば、などかくしも、とばかり思へど、頼みきこえて年ごろになりぬる人を、今はともて離れむと思はぬによりこそ、かくいみじとものも思ひ乱るれ。げによからぬことも出で来たらむ時」と、つくづくと思ひゐたり。<BR>⏎
 「まろはいかで死なばや。世づかず心憂かりける身かな。かく憂きことあるためしは、下衆などの中にだに多くやはあなる」<BR>⏎
 とてうつぶし臥したまへば、<BR>⏎
d11209<P>⏎
cd2:11210-1211 と心知りたる限りは、皆かく思ひ乱れ騒ぐに、乳母、おのが心をやりて、物染めいとなみゐたり。今参り童などのめやすきを呼び取りつつ、<BR>⏎
<P>⏎
659 と心知りたる限りは、皆かく思ひ乱れ騒ぐに、乳母、おのが心をやりて、物染めいとなみゐたり。今参り童などのめやすきを呼び取りつつ、<BR>⏎
d11213<P>⏎
text511214 <H4>第七章 浮舟の物語 浮舟、匂宮にも逢わず、母へ告別の和歌を詠み残す</H4>661 
text511215 <A NAME="in71">[第一段 内舎人、薫の伝言を右近に伝える]</A><BR>662 
d11216<P>⏎
cd2:11217-1218 殿よりは、かのありし返り事をだにのたまはで、日ごろ経ぬ。この脅しし内舎人といふ者ぞ来たる。げにいと荒々しく、ふつつかなるさましたる翁の、声かれ、さすがにけしきある、<BR>⏎
<P>⏎
663 殿よりは、かのありし返り事をだにのたまはで、日ごろ経ぬ。この脅しし内舎人といふ者ぞ来たる。げにいと荒々しく、ふつつかなるさましたる翁の、声かれ、さすがにけしきある、<BR>⏎
d11220<P>⏎
d11222<P>⏎
d11224<P>⏎
d11226<P>⏎
d11228<P>⏎
d11230<P>⏎
cd2:11231-1232 となむ申させはべりつる。用意してさぶらへ。便なきこともあらば、重く勘当せしめたまふべきよしなむ仰せ言はべりつれば、いかなる仰せ言にかと、恐れ申しはんべる」<BR>⏎
<P>⏎
670 となむ申させはべりつる。用意してさぶらへ。便なきこともあらば、重く勘当せしめたまふべきよしなむ仰せ言はべりつれば、いかなる仰せ言にかと、恐れ申しはんべる」<BR>⏎
d11234<P>⏎
d11236<P>⏎
d11238<P>⏎
cd2:11239-1240 「いとうれしく仰せられたり。盗人多かんなるわたりに、宿直人も初めのやうにもあらず。皆身の代はりぞと言ひつつ、あやしき下衆をのみ参らすれば、夜行をだにえせぬに」と喜ぶ。<BR>⏎
<P>⏎
674 「いとうれしく仰せられたり。盗人多かんなるわたりに、宿直人も初めのやうにもあらず。皆身の代はりぞと言ひつつ、あやしき下衆をのみ参らすれば、夜行をだにえせぬに」と喜ぶ。<BR>⏎
text511241 <A NAME="in72">[第二段 浮舟、死を決意して、文を処分す]</A><BR>675 
d11242<P>⏎
cd6:31243-1248 君は、「げにただ今いと悪しくなりぬべき身なめり」と思すに、宮よりは、<BR>⏎
<P>⏎
 「いかにいかに」<BR>⏎
<P>⏎
 と<A HREF="#no28">苔の乱るる</A><A NAME="te28">わ</A>りなさをのたまふ、いとわづらはしくてなむ。<BR>⏎
<P>⏎
676-678 君は、「げにただ今いと悪しくなりぬべき身なめり」と思すに、宮よりは、<BR>⏎
 「いかにいかに」<BR>⏎
 と<A HREF="#no28">苔の乱るる</A><A NAME="te28">わ</A>りなさをのたまふ、いとわづらはしくてなむ。<BR>⏎
d11250<P>⏎
cd2:11251-1252 など思ひなる。児めきおほどかに、たをたをと見ゆれど、気高う世のありさまをも知る方すくなくて思し立てたる<A HREF="#k29">人に</A><A NAME="t29">し</A>あれば、すこし<A HREF="#k30">おずかる</A><A NAME="t30">べ</A>きことを、思ひ寄るなりけむかし。<BR>⏎
<P>⏎
680 など思ひなる。児めきおほどかに、たをたをと見ゆれど、気高う世のありさまをも知る方すくなくて思し立てたる<A HREF="#k29">人に</A><A NAME="t29">し</A>あれば、すこし<A HREF="#k30">おずかる</A><A NAME="t30">べ</A>きことを、思ひ寄るなりけむかし。<BR>⏎
d11254<P>⏎
cd2:11255-1256 「などかくはせさせたまふ。あはれなる御仲に、心とどめて書き交はしたまへる文は、人にこそ見せさせたまはざらめ、ものの底に置かせたまひて御覧ずるなむ、ほどほどにつけては、いとあはれにはべる。さばかりめでたき御紙使ひ、かたじけなき御言の葉を尽くさせたまへるを、かくのみ破らせたまふ、情けなきこと」<BR>⏎
<P>⏎
682 「などかくはせさせたまふ。あはれなる御仲に、心とどめて書き交はしたまへる文は、人にこそ見せさせたまはざらめ、ものの底に置かせたまひて御覧ずるなむ、ほどほどにつけては、いとあはれにはべる。さばかりめでたき御紙使ひ、かたじけなき御言の葉を尽くさせたまへるを、かくのみ破らせたまふ、情けなきこと」<BR>⏎
d11258<P>⏎
d11260<P>⏎
cd2:11261-1262 などのたまふ。心細きことを思ひもてゆくには、またえ思ひ立つまじきわざなりけり。親をおきて亡くなる人は、いと罪深かなるものをなど、さすがにほの聞きたることをも思ふ。<BR>⏎
<P>⏎
685 などのたまふ。心細きことを思ひもてゆくには、またえ思ひ立つまじきわざなりけり。親をおきて亡くなる人は、いと罪深かなるものをなど、さすがにほの聞きたることをも思ふ。<BR>⏎
text511263 <A NAME="in73">[第三段 三月二十日過ぎ、浮舟、匂宮を思い泣く]</A><BR>686 
d11264<P>⏎
d11266<P>⏎
d11268<P>⏎
cd2:11269-1270 などのたまふ。「さてあるまじきさまにておはしたらむに、今一度ものをもえ聞こえず、おぼつかなくて返したてまつらむことよ。また時の間にても、いかでかここには寄せたてまつらむとする。かひなく怨みて帰りたまはむ」さまなどを思ひやるに、例の、面影離れず、堪へず悲しくて、この御文を顔におし当てて、しばしはつつめども、いといみじく泣きたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
689 などのたまふ。「さてあるまじきさまにておはしたらむに、今一度ものをもえ聞こえず、おぼつかなくて返したてまつらむことよ。また時の間にても、いかでかここには寄せたてまつらむとする。かひなく怨みて帰りたまはむ」さまなどを思ひやるに、例の、面影離れず、堪へず悲しくて、この御文を顔におし当てて、しばしはつつめども、いといみじく泣きたまふ。<BR>⏎
d11272<P>⏎
d11274<P>⏎
d11276<P>⏎
d11278<P>⏎
cd2:11279-1280 とて返り事も聞こえたまはずなりぬ。<BR>⏎
<P>⏎
694 とて返り事も聞こえたまはずなりぬ。<BR>⏎
text511281 <A NAME="in74">[第四段 匂宮、宇治へ行く]</A><BR>695 
d11282<P>⏎
d11284<P>⏎
d11286<P>⏎
d11288<P>⏎
d11290<P>⏎
cd2:11291-1292 「あれは誰そ」<BR>⏎
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700 「あれは誰そ」<BR>⏎
d11294<P>⏎
d11296<P>⏎
d11298<P>⏎
cd6:31299-1304 「さらに今宵は不用なり。いみじくかたじけなきこと」<BR>⏎
<P>⏎
 と言はせたり。宮、「などかくもて離るらむ」と思すに、わりなくて、<BR>⏎
<P>⏎
 「まづ時方入りて、侍従に会ひて、さるべきさまにたばかれ」<BR>⏎
<P>⏎
704-706 「さらに今宵は不用なり。いみじくかたじけなきこと」<BR>⏎
 と言はせたり。宮、「などかくもて離るらむ」と思すに、わりなくて、<BR>⏎
 「まづ時方入りて、侍従に会ひて、さるべきさまにたばかれ」<BR>⏎
d11306<P>⏎
cd2:11307-1308 「いかなるにかあらむ。かの殿ののたまはすることありとて、宿直にある者どもの、さかしがりだちたるころにて、いとわりなきなり。御前にも、ものをのみいみじく思しためるは、かかる御ことのかたじけなきを、思し乱るるにこそ、と心苦しくなむ見たてまつる。さらに今宵は。人けしき見はべりなば、なかなかにいと悪しかりなむ。やがてさも御心づかひせさせたまひつべからむ夜、ここにも人知れず思ひ構へてなむ、聞こえさすべかめる」<BR>⏎
<P>⏎
708 「いかなるにかあらむ。かの殿ののたまはすることありとて、宿直にある者どもの、さかしがりだちたるころにて、いとわりなきなり。御前にも、ものをのみいみじく思しためるは、かかる御ことのかたじけなきを、思し乱るるにこそ、と心苦しくなむ見たてまつる。さらに今宵は。人けしき見はべりなば、なかなかにいと悪しかりなむ。やがてさも御心づかひせさせたまひつべからむ夜、ここにも人知れず思ひ構へてなむ、聞こえさすべかめる」<BR>⏎
d11310<P>⏎
cd2:11311-1312 「おはします道のおぼろけならず、あながちなる御けしきに、あへなく聞こえさせむなむ、たいだいしき。さらばいざたまへ。ともに詳しく聞こえさせたまへ」といざなふ。<BR>⏎
<P>⏎
710 「おはします道のおぼろけならず、あながちなる御けしきに、あへなく聞こえさせむなむ、たいだいしき。さらばいざたまへ。ともに詳しく聞こえさせたまへ」といざなふ。<BR>⏎
d11314<P>⏎
d11316<P>⏎
text511317 <A NAME="in75">[第五段 匂宮、浮舟に逢えず帰京す]</A><BR>713 
d11318<P>⏎
d11320<P>⏎
cd4:21321-1324 「なほとくとく参りなむ」<BR>⏎
<P>⏎
 と言ひ騒がして、この侍従を率て参る。髪脇より<A HREF="#k32">掻い越して</A><A NAME="t32">、</A>様体いとをかしき人なり。馬に乗せむとすれど、さらに聞かねば、衣の裾をとりて、立ち添ひて行く。わが沓を履かせて、みづからは供なる人のあやしき物を履きたり。<BR>⏎
<P>⏎
715-716 「なほとくとく参りなむ」<BR>⏎
 と言ひ騒がして、この侍従を率て参る。髪脇より<A HREF="#k32">掻い越して</A><A NAME="t32">、</A>様体いとをかしき人なり。馬に乗せむとすれど、さらに聞かねば、衣の裾をとりて、立ち添ひて行く。わが沓を履かせて、みづからは供なる人のあやしき物を履きたり。<BR>⏎
d11326<P>⏎
d11328<P>⏎
cd2:11329-1330 「ただ一言もえ聞こえさすまじきか。いかなれば今さらにかかるぞ。なほ人びとの言ひなしたるやうあるべし」<BR>⏎
<P>⏎
719 「ただ一言もえ聞こえさすまじきか。いかなれば今さらにかかるぞ。なほ人びとの言ひなしたるやうあるべし」<BR>⏎
d11332<P>⏎
cd2:11333-1334 「やがてさ思し召さむ日を、かねては散るまじきさまに、たばからせたまへ。かくかたじけなきことどもを見たてまつりはべれば、身を捨てても思うたまへたばかりはべらむ」<BR>⏎
<P>⏎
721 「やがてさ思し召さむ日を、かねては散るまじきさまに、たばからせたまへ。かくかたじけなきことどもを見たてまつりはべれば、身を捨てても思うたまへたばかりはべらむ」<BR>⏎
d11336<P>⏎
d11338<P>⏎
d11340<P>⏎
d11342<P>⏎
cd6:31343-1348 「<A HREF="#no32">いづくにか身をば</A><A NAME="te32">捨</A>てむと白雲の<BR>⏎
  かからぬ山も泣く泣くぞ行く<BR>⏎
 さらばはや」<BR>⏎
<P>⏎
 とてこの人を帰したまふ。御けしきなまめかしくあはれに、夜深き露にしめりたる<A HREF="#k33">御香</A><A NAME="t33">の</A>香うばしさなど、たとへむ方なし。泣く泣くぞ帰り来たる。<BR>⏎
<P>⏎
726-728 「<A HREF="#no32">いづくにか身をば</A><A NAME="te32">捨</A>てむと白雲の<BR>  かからぬ山も泣く泣くぞ行く<BR>⏎
 さらばはや」<BR>⏎
 とてこの人を帰したまふ。御けしきなまめかしくあはれに、夜深き露にしめりたる<A HREF="#k33">御香</A><A NAME="t33">の</A>香うばしさなど、たとへむ方なし。泣く泣くぞ帰り来たる。<BR>⏎
text511349 <A NAME="in76">[第六段 浮舟の今生の思い]</A><BR>729 
d11350<P>⏎
d11352<P>⏎
cd2:11353-1354 ありし絵を取り出でて見て、描きたまひし手つき、顔の匂ひなどの、向かひきこえたらむやうにおぼゆれば、昨夜、一言をだに聞こえずなりにしは、なほ今ひとへまさりて、いみじと思ふ。「かの心のどかなるさまにて見む、と行く末遠かるべきことをのたまひわたる人も、いかが思さむ」といとほし。<BR>⏎
<P>⏎
731 ありし絵を取り出でて見て、描きたまひし手つき、顔の匂ひなどの、向かひきこえたらむやうにおぼゆれば、昨夜、一言をだに聞こえずなりにしは、なほ今ひとへまさりて、いみじと思ふ。「かの心のどかなるさまにて見む、と行く末遠かるべきことをのたまひわたる人も、いかが思さむ」といとほし。<BR>⏎
d11356<P>⏎
cd3:11357-1359 「嘆きわび身をば捨つとも亡き影に<BR>⏎
  憂き名流さむことをこそ思へ」<BR>⏎
<P>⏎
733 「嘆きわび身をば捨つとも亡き影に<BR>  憂き名流さむことをこそ思へ」<BR>⏎
d11361<P>⏎
text511362 <A NAME="in77">[第七段 京から母の手紙が届く]</A><BR>735 
d11363<P>⏎
d11365<P>⏎
cd5:21366-1370 「<A HREF="#no34">からをだに憂き世の中にとどめずは<BR>⏎
  いづこをはかと君</A><A NAME="te34">も</A>恨みむ」<BR>⏎
<P>⏎
 とのみ書きて出だしつ。「かの殿にも、今はのけしき見せたてまつらまほしけれど、所々に書きおきて、離れぬ御仲なれば、つひに聞きあはせたまはむこと、いと憂かるべし。すべていかになりけむと、<A HREF="#k34">誰れにもおぼつかなくてやみなむ」と</A><A NAME="t34">思</A>ひ返す。<BR>⏎
<P>⏎
737-738 「<A HREF="#no34">からをだに憂き世の中にとどめずは<BR>  いづこをはかと君</A><A NAME="te34">も</A>恨みむ」<BR>⏎
 とのみ書きて出だしつ。「かの殿にも、今はのけしき見せたてまつらまほしけれど、所々に書きおきて、離れぬ御仲なれば、つひに聞きあはせたまはむこと、いと憂かるべし。すべていかになりけむと、<A HREF="#k34">誰れにもおぼつかなくてやみなむ」と</A><A NAME="t34">思</A>ひ返す。<BR>⏎
d11372<P>⏎
cd2:11373-1374 「<A HREF="#no35">寝ぬる夜の夢</A><A NAME="te35">に</A>、いと騒がしくて見えたまひつれば、誦経所々せさせなどしはべるを、やがてその夢の後、寝られざりつるけにや、ただ今、昼寝してはべる夢に、人の忌むといふことなむ、見えたまひつれば、驚きながらたてまつる。よく慎ませたまへ。<BR>⏎
<P>⏎
740 「<A HREF="#no35">寝ぬる夜の夢</A><A NAME="te35">に</A>、いと騒がしくて見えたまひつれば、誦経所々せさせなどしはべるを、やがてその夢の後、寝られざりつるけにや、ただ今、昼寝してはべる夢に、人の忌むといふことなむ、見えたまひつれば、驚きながらたてまつる。よく慎ませたまへ。<BR>⏎
d11376<P>⏎
cd4:21377-1380 参り来まほしきを、少将の方の、なほいと心もとなげに、もののけだちて悩みはべれば、片時も立ち去ること、といみじく言はれはべりてなむ。その近き寺にも御誦経せさせたまへ」<BR>⏎
<P>⏎
 とてその料の物、文など書き添へて、持て来たり。限りと思ふ命のほどを知らで、かく言ひ続けたまへるも、いと悲しと思ふ。<BR>⏎
<P>⏎
742-743 参り来まほしきを、少将の方の、なほいと心もとなげに、もののけだちて悩みはべれば、片時も立ち去ること、といみじく言はれはべりてなむ。その近き寺にも御誦経せさせたまへ」<BR>⏎
 とてその料の物、文など書き添へて、持て来たり。限りと思ふ命のほどを知らで、かく言ひ続けたまへるも、いと悲しと思ふ。<BR>⏎
text511381 <A NAME="in78">[第八段 浮舟、母への告別の和歌を詠み残す]</A><BR>744 
d11382<P>⏎
cd5:21383-1387 寺へ人遣りたるほど、返り事書く。言はまほしきこと多かれど、つつましくて、ただ<BR>⏎
<P
>⏎
 「後にまたあひ見むことを思はなむ<BR>⏎
  この世の夢に心惑はで」<BR>⏎
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745-746 寺へ人遣りたるほど、返り事書く。言はまほしきこと多かれど、つつましくて、ただ<BR>⏎
 「後にまたあひ見むことを思はなむ<BR>  この世の夢に心惑はで」<BR>⏎
d11389<P>⏎
cd3:11390-1392 「鐘の音の絶ゆる響きに音を添へて<BR>⏎
  わが世尽きぬと君に伝へよ」<BR>⏎
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748 「鐘の音の絶ゆる響きに音を添へて<BR>  わが世尽きぬと君に伝へよ」<BR>⏎
d11394<P>⏎
d11396<P>⏎
d11398<P>⏎
d11400<P>⏎
d11402<P>⏎
d11404<P>⏎
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d11410<P>⏎
text511411 <a name="in81">【出典】<BR>758 
c11412</a><A NAME="no1">出典1</A> 恋しくは来てもみよかし千早振る神のいさむる道ならなくに(伊勢物語-一三一)<A HREF="#te1">(戻)</A><BR>⏎
759<A NAME="no1">出典1</A> 恋しくは来てもみよかし千早振る神のいさむる道ならなくに(伊勢物語-一三一)<A HREF="#te1">(戻)</A><BR>⏎
c11419<A NAME="no8">出典8</A> 蒼茫霧雨之霽初 寒汀鷺立 重畳煙嵐之断処 晩寺帰僧<蒼茫たる霧雨うぶの霽はれの初めに 寒汀に鷺立てり 重畳せる煙嵐の断えたる処に 晩寺に僧帰る>(和漢朗詠集下-六〇四 張読)<A HREF="#te8">(戻)</A><BR>⏎
766<A NAME="no8">出典8</A> 蒼茫霧雨之霽初 寒汀鷺立 重畳煙嵐之断処 晩寺帰僧&lt;蒼茫たる<ruby><rb>霧雨<rp>(<rt>うぶ<rp>)</ruby><ruby><rb><rp>(<rt>はれ<rp>)</ruby>の初めに 寒汀に鷺立てり 重畳せる煙嵐の断えたる処に 晩寺に僧帰る&gt;(和漢朗詠集下-六〇四 張読)<A HREF="#te8">(戻)</A><BR>⏎
c11426<A NAME="no15">出典15</A> 山科の木幡の里に馬はあれど徒歩かちよりぞ来る君を思へば(拾遺集雑恋-一二四三 柿本人麿)<A HREF="#te15">(戻)</A><BR>⏎
773<A NAME="no15">出典15</A> 山科の木幡の里に馬はあれど<ruby><rb>徒歩<rp>(<rt>かち<rp>)</ruby>よりぞ来る君を思へば(拾遺集雑恋-一二四三 柿本人麿)<A HREF="#te15">(戻)</A><BR>⏎
c11428<A NAME="no17">出典17</A> 思ひつつ寝ればや人の見えつらむ夢と知りせば覚めざらましを(古今集恋二-五五二 小野小町)<A HREF="#te17">(戻)</A><BR>⏎
775<A NAME="no17">出典17</A> 思ひつつ<ruby><rb><rp>(<rt><rp>)</ruby>ればや人の見えつらむ夢と知りせば覚めざらましを(古今集恋二-五五二 小野小町)<A HREF="#te17">(戻)</A><BR>⏎
c11430<A NAME="no19">出典19</A> たらちねの親のかふ蚕の繭ごもりいぶせくもあるかな妹いもに逢はずて(拾遺集恋四-八九五 柿本人麿)<A HREF="#te19">(戻)</A><BR>⏎
777<A NAME="no19">出典19</A> たらちねの親のかふ<ruby><rb><rp>(<rt><rp>)</ruby>の繭ごもりいぶせくもあるかな<ruby><rb><rp>(<rt>いも<rp>)</ruby>に逢はずて(拾遺集恋四-八九五 柿本人麿)<A HREF="#te19">(戻)</A><BR>⏎
c21436-1437<A NAME="no25">出典25</A> 道の口 武府の国府こふに 我ありと 親には申したべ 心あひの風や さきむだちや(催馬楽-道の口)<A HREF="#te25">(戻)</A><BR>⏎
<A NAME="no26">出典26</A> 須磨の海人あまの塩焼く煙風をいたみ思はぬ方にたなびきにけり(古今集恋四-七〇八 読人しらず)<A HREF="#te26">(戻)</A><BR>⏎
783-784<A NAME="no25">出典25</A> 道の口 武府の<ruby><rb>国府<rp>(<rt>こふ<rp>)</ruby>に 我ありと 親には申したべ 心あひの風や さきむだちや(催馬楽-道の口)<A HREF="#te25">(戻)</A><BR>⏎
<A NAME="no26">出典26</A> 須磨の<ruby><rb>海人<rp>(<rt>あま<rp>)</ruby>の塩焼く煙風をいたみ思はぬ方にたなびきにけり(古今集恋四-七〇八 読人しらず)<A HREF="#te26">(戻)</A><BR>⏎
c11442<A NAME="no31">出典31</A> 守家一犬迎人吠 放野群牛引犢休<家を守る犬は人を迎へて吠ゆ 野に放てる群牛は犢こうしを引いて休む>(和漢朗詠集下-五六六 都良香)<A HREF="#te31">(戻)</A><BR>⏎
789<A NAME="no31">出典31</A> 守家一犬迎人吠 放野群牛引犢休&lt;家を守る犬は人を迎へて吠ゆ 野に放てる群牛は<ruby><rb><rp>(<rt>こうし<rp>)</ruby>を引いて休む&gt;(和漢朗詠集下-五六六 都良香)<A HREF="#te31">(戻)</A><BR>⏎
c11444<A NAME="no33">出典33</A> 如因趣市歩歩近死地 如牽牛羊詣於屠所<因の市に趣きて歩歩死地に近づくが如く 牛羊を牽いて屠所に詣いたるが如し>(涅槃経)けふもまたむまのかひこそふきつなれ羊の歩み近づきぬらむ(千載集雑下-一二〇〇 赤染衛門)<A HREF="#te33">(戻)</A><BR>⏎
791<A NAME="no33">出典33</A> 如因趣市歩歩近死地 如牽牛羊詣於屠所&lt;因の市に趣きて歩歩死地に近づくが如く 牛羊を牽いて屠所に<ruby><rb><rp>(<rt>いた<rp>)</ruby>るが如し&gt;(涅槃経)けふもまたむまのかひこそふきつなれ羊の歩み近づきぬらむ(千載集雑下-一二〇〇 赤染衛門)<A HREF="#te33">(戻)</A><BR>⏎
d11448
text511449<p> <a name="in82">【校訂】<BR>795 
c11451</a><A NAME="k01">校訂1</A> 御本性--(/+御)本正<A HREF="#t01">(戻)</A><BR>⏎
797<A NAME="k01">校訂1</A> 御本性--(/+御)本正<A HREF="#t01">(戻)</A><BR>⏎
d11487</p>⏎
d11494</p>⏎
i0843
diffsrc/original/text52.htmlsrc/modified/text52.html
cd2:18-9<body background="wallppr063.gif">⏎
<p>First updated 9/20/1996(ver.1-1)<br>⏎
8<BODY>⏎
cd3:210-12Last updated 8/29/2011(ver.2-2)<br>渋谷栄一校訂(C)</p>⏎
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9-10<ADDRESS>Last updated 8/29/2011(ver.2-2)<BR>
渋谷栄一校訂(C)</ADDRESS>⏎
d114<P>⏎
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d158<P>⏎
c272-73<LI>薫の後悔---<A HREF="#in22">殿は、なほいとあへなくいみじと聞きたまふにも</A>⏎
<LI>匂宮悲しみに籠もる---<A HREF="#in23">かの宮はた、まして三日はものもおぼえたまはず</A>⏎
67-68<LI>薫の後悔---<A HREF="#in22">殿は、なほいとあへなくいみじと聞きたまふにも</A>⏎
<LI>匂宮悲しみに籠もる---<A HREF="#in23">かの宮はた、まして三日はものもおぼえたまはず</A>⏎
c281-82<LI>匂宮、右近を迎えに時方派遣---<A HREF="#in32">いと夢のやうにのみ、なほ「いかで</A>⏎
<LI>時方、侍従と語る---<A HREF="#in33">大夫も泣きて、「さらにこの御仲のこと</A>⏎
76-77<LI>匂宮、右近を迎えに時方派遣---<A HREF="#in32">いと夢のやうにのみ、なほ「いかで</A>⏎
<LI>時方、侍従と語る---<A HREF="#in33">大夫も泣きて、「さらにこの御仲のこと</A>⏎
c188<LI>薫、宇治を訪問---<A HREF="#in41">大将殿も、なほいとおぼつかなきに</A>⏎
83<LI>薫、宇治を訪問---<A HREF="#in41">大将殿も、なほいとおぼつかなきに</A>⏎
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d1122<P>⏎
text52123 <H4>第一章 浮舟の物語 浮舟失踪後の人びとの動転</H4>116 
text52124 <A NAME="in11">[第一段 宇治の浮舟失踪]</A><BR>117 
d1125<P>⏎
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cd2:1128-129 「まだ鶏の鳴くになむ、出だし立てさせたまへる」<BR>⏎
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119 「まだ鶏の鳴くになむ、出だし立てさせたまへる」<BR>⏎
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d1137<P>⏎
d1139<P>⏎
cd4:2140-143 と思ふに、足摺りといふことをして泣くさま、若き子どものやうなり。いみじく思したる御けしきは、見たてまつりわたれど、かけてもかくなべてならずおどろおどろしきこと、思し寄らむものとは見えざりつる人の御心ざまを、「なほいかにしつることにか」とおぼつかなくいみじ。<BR>⏎
<P>⏎
 乳母は、なかなかものもおぼえで、ただ「いかさまにせむ。いかさまにせむ」とぞ言はれける。<BR>⏎
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125-126 と思ふに、足摺りといふことをして泣くさま、若き子どものやうなり。いみじく思したる御けしきは、見たてまつりわたれど、かけてもかくなべてならずおどろおどろしきこと、思し寄らむものとは見えざりつる人の御心ざまを、「なほいかにしつることにか」とおぼつかなくいみじ。<BR>⏎
 乳母は、なかなかものもおぼえで、ただ「いかさまにせむ。いかさまにせむ」とぞ言はれける。<BR>⏎
text52144 <A NAME="in12">[第二段 匂宮から宇治へ使者派遣]</A><BR>127 
d1145<P>⏎
cd2:1146-147 宮にも、いと例ならぬけしきありし御返り、「いかに思ふならむ。我をさすがにあひ思ひたるさまながら、あだなる心なりとのみ、深く疑ひたれば、他へ行き隠れむとにやあらむ」と思し騷ぎ、御使あり。<BR>⏎
<P>⏎
128 宮にも、いと例ならぬけしきありし御返り、「いかに思ふならむ。我をさすがにあひ思ひたるさまながら、あだなる心なりとのみ、深く疑ひたれば、他へ行き隠れむとにやあらむ」と思し騷ぎ、御使あり。<BR>⏎
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cd2:1162-163 と思しやる方なければ、<BR>⏎
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136 と思しやる方なければ、<BR>⏎
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d1167<P>⏎
cd4:2168-171 「かの大将殿、いかなることか、聞きたまふことはべりけむ、宿直する者おろかなり、など戒め仰せらるるとて、下人のまかり出づるをも、<A HREF="#k01">見とがめ</A><A NAME="t01">問</A>ひはべるなれば、ことづくることなくて、<A HREF="#k02">時方</A><A NAME="t02">ま</A>かりたらむを、ものの聞こえはべらば、思し合はすることなどやはべらむ。さてにはかに人の亡せたまへらむ所は、論なう騒がしう、人しげくはべらむを」と聞こゆ。<BR>⏎
<P>⏎
 「さりとては、いとおぼつかなくてやあらむ。なほとかくさるべきさまに構へて、例の、心知れる侍従などに会ひて、いかなることをかく言ふぞ、と案内せよ。下衆はひがことも言ふなり」<BR>⏎
<P>⏎
139-140 「かの大将殿、いかなることか、聞きたまふことはべりけむ、宿直する者おろかなり、など戒め仰せらるるとて、下人のまかり出づるをも、<A HREF="#k01">見とがめ</A><A NAME="t01">問</A>ひはべるなれば、ことづくることなくて、<A HREF="#k02">時方</A><A NAME="t02">ま</A>かりたらむを、ものの聞こえはべらば、思し合はすることなどやはべらむ。さてにはかに人の亡せたまへらむ所は、論なう騒がしう、人しげくはべらむを」と聞こゆ。<BR>⏎
 「さりとては、いとおぼつかなくてやあらむ。なほとかくさるべきさまに構へて、例の、心知れる侍従などに会ひて、いかなることをかく言ふぞ、と案内せよ。下衆はひがことも言ふなり」<BR>⏎
d1173<P>⏎
text52174 <A NAME="in13">[第三段 時方、宇治に到着]</A><BR>142 
d1175<P>⏎
d1177<P>⏎
d1179<P>⏎
d1181<P>⏎
cd2:1182-183 「ただ今、ものおぼえず。起き上がらむ心地もせでなむ。さるは今宵ばかり<A HREF="#k03">こそ</A><A NAME="t03">、</A>かくも立ち寄りたまはめ、え聞こえぬこと」<BR>⏎
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146 「ただ今、ものおぼえず。起き上がらむ心地もせでなむ。さるは今宵ばかり<A HREF="#k03">こそ</A><A NAME="t03">、</A>かくも立ち寄りたまはめ、え聞こえぬこと」<BR>⏎
d1185<P>⏎
d1187<P>⏎
d1189<P>⏎
d1191<P>⏎
cd2:1192-193 と言ひて泣くこといといみじ。<BR>⏎
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151 と言ひて泣くこといといみじ。<BR>⏎
text52194 <A NAME="in14">[第四段 乳母、悲嘆に暮れる]</A><BR>152 
d1195<P>⏎
d1197<P>⏎
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d1201<P>⏎
d1203<P>⏎
cd8:4204-211 「なほのたまへ。もし人の隠しきこえたまへるか。たしかに聞こし召さむと、御身の代はりに出だし立てさせたまへる御使なり。今は、とてもかくてもかひなきことなれど、後にも聞こし召し合はすることのはべらむに、違ふこと混じらば、参りたらむ御使の罪なるべし。<BR>⏎
<P>⏎
 またさりともと頼ませたまひて、『君たちに対面せよ』と仰せられつる御心ばへも、かたじけなしとは思されずや。女の道に惑ひたまふことは、人の朝廷にも、古き例どもありけれど、またかかること、この世にはあらじ、となむ見たてまつる」<BR>⏎
<P>⏎
 と言ふに、「げにいとあはれなる御使にこそあれ。隠すとすとも、かくて例ならぬことのさま、おのづから聞こえなむ」と思ひて、<BR>⏎
<P>⏎
 「などかいささかにても、人や隠いたてまつりたまふらむ、と思ひ寄るべきことあらむには、かくしもある限り惑ひはべらむ。日ごろ、いといみじくものを思し入るめりしかば、かの殿の、わづらはしげに、ほのめかし聞こえたまふことなどもありき。<BR>⏎
<P>⏎
157-160 「なほのたまへ。もし人の隠しきこえたまへるか。たしかに聞こし召さむと、御身の代はりに出だし立てさせたまへる御使なり。今は、とてもかくてもかひなきことなれど、後にも聞こし召し合はすることのはべらむに、違ふこと混じらば、参りたらむ御使の罪なるべし。<BR>⏎
 またさりともと頼ませたまひて、『君たちに対面せよ』と仰せられつる御心ばへも、かたじけなしとは思されずや。女の道に惑ひたまふことは、人の朝廷にも、古き例どもありけれど、またかかること、この世にはあらじ、となむ見たてまつる」<BR>⏎
 と言ふに、「げにいとあはれなる御使にこそあれ。隠すとすとも、かくて例ならぬことのさま、おのづから聞こえなむ」と思ひて、<BR>⏎
 「などかいささかにても、人や隠いたてまつりたまふらむ、と思ひ寄るべきことあらむには、かくしもある限り惑ひはべらむ。日ごろ、いといみじくものを思し入るめりしかば、かの殿の、わづらはしげに、ほのめかし聞こえたまふことなどもありき。<BR>⏎
d1213<P>⏎
cd4:2214-217 とさすがに、まほならずほのめかす。心得がたくおぼえて、<BR>⏎
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 「さらばのどかに参らむ。立ちながらはべるも、いとことそぎたるやうなり。今御みづからもおはしましなむ」<BR>⏎
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162-163 とさすがに、まほならずほのめかす。心得がたくおぼえて、<BR>⏎
 「さらばのどかに参らむ。立ちながらはべるも、いとことそぎたるやうなり。今御みづからもおはしましなむ」<BR>⏎
d1219<P>⏎
cd2:1220-221 「あなかたじけな。今さら、人の知りきこえさせむも、亡き御ためは、なかなかめでたき御宿世見ゆべきことなれど、忍びたまひしことなれば、また漏らさせたまはで、止ませたまはむなむ、御心ざしにはべるべき」<BR>⏎
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165 「あなかたじけな。今さら、人の知りきこえさせむも、亡き御ためは、なかなかめでたき御宿世見ゆべきことなれど、忍びたまひしことなれば、また漏らさせたまはで、止ませたまはむなむ、御心ざしにはべるべき」<BR>⏎
d1223<P>⏎
text52224 <A NAME="in15">[第五段 浮舟の母、宇治に到着]</A><BR>167 
d1225<P>⏎
d1227<P>⏎
cd2:1228-229 「目の前に亡くなしたらむ悲しさは、いみじうとも、世の常にて、たぐひあることなり。これはいかにしつることぞ」<BR>⏎
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169 「目の前に亡くなしたらむ悲しさは、いみじうとも、世の常にて、たぐひあることなり。これはいかにしつることぞ」<BR>⏎
d1231<P>⏎
d1233<P>⏎
d1235<P>⏎
cd4:2236-239 「さてはかの恐ろしと思ひきこゆるあたりに、心など悪しき御乳母やうの者や、かう迎へたまふべしと聞きて、めざましがりて、たばかりたる人もやあらむ」<BR>⏎
<P>⏎
 と下衆などを疑ひ、<BR>⏎
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173-174 「さてはかの恐ろしと思ひきこゆるあたりに、心など悪しき御乳母やうの者や、かう迎へたまふべしと聞きて、めざましがりて、たばかりたる人もやあらむ」<BR>⏎
 と下衆などを疑ひ、<BR>⏎
d1241<P>⏎
d1243<P>⏎
cd4:2244-247 「いと世離れたりとて、ありならはぬ人は、ここにてはかなきこともえせず、今とく参らむ、と言ひてなむ、皆そのいそぐべきものどもなど取り具しつつ、帰り出ではべりにし」<BR>⏎
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 とてもとよりある人だに、片へはなくて、いと人少ななる折になむありける。<BR>⏎
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177-178 「いと世離れたりとて、ありならはぬ人は、ここにてはかなきこともえせず、今とく参らむ、と言ひてなむ、皆そのいそぐべきものどもなど取り具しつつ、帰り出ではべりにし」<BR>⏎
 とてもとよりある人だに、片へはなくて、いと人少ななる折になむありける。<BR>⏎
text52248 <A NAME="in16">[第六段 侍従ら浮舟の葬儀を営む]</A><BR>179 
d1249<P>⏎
d1251<P>⏎
cd2:1252-253 「さて亡せたまひけむ人を、とかく言ひ騷ぎて、いづくにもいづくにも、いかなる方になりたまひにけむ、と思し疑はむも、いとほしきこと」<BR>⏎
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181 「さて亡せたまひけむ人を、とかく言ひ騷ぎて、いづくにもいづくにも、いかなる方になりたまひにけむ、と思し疑はむも、いとほしきこと」<BR>⏎
d1255<P>⏎
cd4:2256-259 「忍びたる事とても、御心より起こりてありしことならず。親にて、亡き後に聞きたまへりとも、いとやさしきほどならぬを、ありのままに聞こえて、かくいみじくおぼつかなきことどもをさへ、かたがた思ひ惑ひたまふさまは、すこし明らめさせたてまつらむ。亡くなりたまへる人とても、骸を置きてもて扱ふこそ、世の常なれ、世づかぬけしきにて日ごろも経ば、さらに隠れあらじ。なほ聞こえて、今は世の聞こえをだにつくろはむ」<BR>⏎
<P>⏎
 と語らひて、忍びてありしさまを聞こゆるに、言ふ人も消え入り、え言ひやらず、聞く心地も惑ひつつ、「さはこのいと荒ましと思ふ川に、流れ亡せたまひにけり」と思ふに、いとど我も落ち入りぬべき心地して、<BR>⏎
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183-184 「忍びたる事とても、御心より起こりてありしことならず。親にて、亡き後に聞きたまへりとも、いとやさしきほどならぬを、ありのままに聞こえて、かくいみじくおぼつかなきことどもをさへ、かたがた思ひ惑ひたまふさまは、すこし明らめさせたてまつらむ。亡くなりたまへる人とても、骸を置きてもて扱ふこそ、世の常なれ、世づかぬけしきにて日ごろも経ば、さらに隠れあらじ。なほ聞こえて、今は世の聞こえをだにつくろはむ」<BR>⏎
 と語らひて、忍びてありしさまを聞こゆるに、言ふ人も消え入り、え言ひやらず、聞く心地も惑ひつつ、「さはこのいと荒ましと思ふ川に、流れ亡せたまひにけり」と思ふに、いとど我も落ち入りぬべき心地して、<BR>⏎
d1261<P>⏎
d1263<P>⏎
d1265<P>⏎
d1267<P>⏎
text52268 <A NAME="in17">[第七段 侍従ら真相を隠す]</A><BR>189 
d1269<P>⏎
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d1273<P>⏎
d1275<P>⏎
d1277<P>⏎
cd2:1278-279 とてこの車を、向かひの山の前なる原にやりて、人も近うも寄せず、この案内知りたる法師の限りして焼かす。いとはかなくて、煙は果てぬ。田舎人どもは、なかなか、かかることをことことしくしなし、言忌みなど深くするものなりければ、<BR>⏎
<P>⏎
194 とてこの車を、向かひの山の前なる原にやりて、人も近うも寄せず、この案内知りたる法師の限りして焼かす。いとはかなくて、煙は果てぬ。田舎人どもは、なかなか、かかることをことことしくしなし、言忌みなど深くするものなりければ、<BR>⏎
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d1285<P>⏎
cd6:3286-291 などぞさまざまになむやすからず言ひける。<BR>⏎
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 「かかる人どもの言ひ思ふことだに慎ましきを、ましてものの聞こえ隠れなき世の中に、大将殿わたりに、骸もなく亡せたまひにけり、と聞かせたまはば、かならず思ほし疑ふこともあらむを、宮はた、同じ御仲らひにて、さる人のおはしおはせず、しばしこそ忍ぶとも思さめ、つひには隠れあらじ。<BR>⏎
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 また定めて宮をしも疑ひきこえたまはじ。いかなる人か率て隠しけむなどぞ、思し寄せむかし。生きたまひての御宿世は、いと気高くおはせし人の、げに亡き影に、いみじきことをや疑はれたまはむ」<BR>⏎
<P>⏎
198-200 などぞさまざまになむやすからず言ひける。<BR>⏎
 「かかる人どもの言ひ思ふことだに慎ましきを、ましてものの聞こえ隠れなき世の中に、大将殿わたりに、骸もなく亡せたまひにけり、と聞かせたまはば、かならず思ほし疑ふこともあらむを、宮はた、同じ御仲らひにて、さる人のおはしおはせず、しばしこそ忍ぶとも思さめ、つひには隠れあらじ。<BR>⏎
 また定めて宮をしも疑ひきこえたまはじ。いかなる人か率て隠しけむなどぞ、思し寄せむかし。生きたまひての御宿世は、いと気高くおはせし人の、げに亡き影に、いみじきことをや疑はれたまはむ」<BR>⏎
d1293<P>⏎
d1295<P>⏎
cd2:1296-297 とこの人二人ぞ、深く心の鬼添ひたれば、もて隠しける。<BR>⏎
<P>⏎
203 とこの人二人ぞ、深く心の鬼添ひたれば、もて隠しける。<BR>⏎
text52298 <H4>第二章 浮舟の物語 浮舟失踪と薫、匂宮</H4>204 
text52299 <A NAME="in21">[第一段 薫、石山寺で浮舟失踪の報に接す]</A><BR>205 
d1300<P>⏎
cd6:3301-306 大将殿は、入道の宮の悩みたまひければ、石山に籠もりたまひて、騷ぎたまふころなりけり。さていとどかしこをおぼつかなう思しけれど、はかばかしう、「さなむ」と言ふ人はなかりければ、かかるいみじきことにも、まづ御使のなきを、人目も心憂しと思ふに、御荘の人なむ参りて、「しかしか」と申させければ、あさましき心地したまひて、御使、そのまたの日、まだつとめて参りたり。<BR>⏎
<P>⏎
 「いみじきことは、聞くままにみづからもすべきに、かく悩みたまふ御ことにより、慎みて、かかる所に日を限りて籠もりたればなむ。昨夜のことは、などかここに消息して、日を延べてもさることはするものを、いと軽らかなるさまにて、急ぎせられにける。とてもかくても、同じ言ふかひなさなれど、とぢめのことをしも、山賤の誹りをさへ負ふなむ、ここのためもからき」<BR>⏎
<P>⏎
 などかの睦ましき大蔵大輔してのたまへり。御使の来たるにつけても、いとどいみじきに、聞こえむ方なきことどもなれば、ただ涙におぼほれたるばかりをかことにて、はかばかしうもいらへやらずなりぬ。<BR>⏎
<P>⏎
206-208 大将殿は、入道の宮の悩みたまひければ、石山に籠もりたまひて、騷ぎたまふころなりけり。さていとどかしこをおぼつかなう思しけれど、はかばかしう、「さなむ」と言ふ人はなかりければ、かかるいみじきことにも、まづ御使のなきを、人目も心憂しと思ふに、御荘の人なむ参りて、「しかしか」と申させければ、あさましき心地したまひて、御使、そのまたの日、まだつとめて参りたり。<BR>⏎
 「いみじきことは、聞くままにみづからもすべきに、かく悩みたまふ御ことにより、慎みて、かかる所に日を限りて籠もりたればなむ。昨夜のことは、などかここに消息して、日を延べてもさることはするものを、いと軽らかなるさまにて、急ぎせられにける。とてもかくても、同じ言ふかひなさなれど、とぢめのことをしも、山賤の誹りをさへ負ふなむ、ここのためもからき」<BR>⏎
 などかの睦ましき大蔵大輔してのたまへり。御使の来たるにつけても、いとどいみじきに、聞こえむ方なきことどもなれば、ただ涙におぼほれたるばかりをかことにて、はかばかしうもいらへやらずなりぬ。<BR>⏎
text52307 <A NAME="in22">[第二段 薫の後悔]</A><BR>209 
d1308<P>⏎
cd4:2309-312 殿は、なほいとあへなくいみじと聞きたまふにも、<BR>⏎
<P>⏎
 「心憂かりける所かな。鬼などや住むらむ。などて今までさる所に据ゑたりつらむ。思はずなる筋の紛れあるやうなりしも、かく放ち置きたるに、心やすくて、人も言ひ犯したまふなりけむかし」<BR>⏎
<P>⏎
210-211 殿は、なほいとあへなくいみじと聞きたまふにも、<BR>⏎
 「心憂かりける所かな。鬼などや住むらむ。などて今までさる所に据ゑたりつらむ。思はずなる筋の紛れあるやうなりしも、かく放ち置きたるに、心やすくて、人も言ひ犯したまふなりけむかし」<BR>⏎
d1314<P>⏎
d1316<P>⏎
d1318<P>⏎
d1320<P>⏎
d1322<P>⏎
d1324<P>⏎
text52325 <A NAME="in23">[第三段 匂宮悲しみに籠もる]</A><BR>218 
d1326<P>⏎
cd2:1327-328 かの宮はた、まして三日はものもおぼえたまはず、うつし心もなきさまにて、「いかなる御もののけならむ」など騒ぐに、やうやう涙尽くしたまひて、思し静まるにしもぞ、ありしさまは恋しういみじく思ひ出でられたまひける。人には、ただ御病の重きさまをのみ見せて、「かくすぞろなるいやめのけしき知らせじ」と、かしこくもて隠すと思しけれど、おのづからいとしるかりければ、<BR>⏎
<P>⏎
219 かの宮はた、まして三日はものもおぼえたまはず、うつし心もなきさまにて、「いかなる御もののけならむ」など騒ぐに、やうやう涙尽くしたまひて、思し静まるにしもぞ、ありしさまは恋しういみじく思ひ出でられたまひける。人には、ただ御病の重きさまをのみ見せて、「かくすぞろなるいやめのけしき知らせじ」と、かしこくもて隠すと思しけれど、おのづからいとしるかりければ、<BR>⏎
d1330<P>⏎
cd2:1331-332 と言ふ人もありければ、かの殿にも、いとよくこの御けしきを聞きたまふに、「さればよ。なほよその文通はしのみにはあらぬなりけり。見たまひては、かならずさ思しぬべかりし人ぞかし。ながらへましかば、ただなるよりぞ、わがためにをこなることも出で来なまし」と思すになむ、焦がるる胸もすこし冷むる心地したまひける。<BR>⏎
<P>⏎
221 と言ふ人もありければ、かの殿にも、いとよくこの御けしきを聞きたまふに、「さればよ。なほよその文通はしのみにはあらぬなりけり。見たまひては、かならずさ思しぬべかりし人ぞかし。ながらへましかば、ただなるよりぞ、わがためにをこなることも出で来なまし」と思すになむ、焦がるる胸もすこし冷むる心地したまひける。<BR>⏎
text52333 <A NAME="in24">[第四段 薫、匂宮を訪問]</A><BR>222 
d1334<P>⏎
d1336<P>⏎
d1338<P>⏎
d1340<P>⏎
cd4:2341-344 「おどろおどろしき心地にもはべらぬを、皆人、慎むべき病のさまなり、とのみものすれば、内裏にも宮にも思し騒ぐがいと苦しく、げに世の中の常なきをも、心細く思ひはべる」<BR>⏎
<P>⏎
 とのたまひておし拭ひ紛らはしたまふと思す涙の、やがてとどこほらずふり落つれば、いとはしたなけれど、「かならずしもいかでか心得む。ただめめしく心弱きとや見ゆらむ」と思すも、「さりや。ただこのことをのみ思すなりけり。いつよりなりけむ。我をいかにをかしと、もの笑ひしたまふ心地に、月ごろ思しわたりつらむ」<BR>⏎
<P>⏎
226-227 「おどろおどろしき心地にもはべらぬを、皆人、慎むべき病のさまなり、とのみものすれば、内裏にも宮にも思し騒ぐがいと苦しく、げに世の中の常なきをも、心細く思ひはべる」<BR>⏎
 とのたまひておし拭ひ紛らはしたまふと思す涙の、やがてとどこほらずふり落つれば、いとはしたなけれど、「かならずしもいかでか心得む。ただめめしく心弱きとや見ゆらむ」と思すも、「さりや。ただこのことをのみ思すなりけり。いつよりなりけむ。我をいかにをかしと、もの笑ひしたまふ心地に、月ごろ思しわたりつらむ」<BR>⏎
d1346<P>⏎
cd4:2347-350 「こよなくも、おろかなるかな。ものの切におぼゆる時は、いとかからぬことにつけてだに、空飛ぶ鳥の鳴き渡るにも、もよほされてこそ悲しけれ。わがかくすぞろに心弱きにつけても、もし心得たらむにさ言ふばかりもののあはれも知らぬ人にもあらず。世の中の常なきこと惜しみて思へる人しもつれなき」<BR>⏎
<P>⏎
 とうらやましくも心にくくも思さるるものから、<A HREF="#no1">真木柱はあはれなり</A><A NAME="te1">。</A>これに向かひたらむさまも思しやるに、「形見ぞかし」とも、うちまもりたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
229-230 「こよなくも、おろかなるかな。ものの切におぼゆる時は、いとかからぬことにつけてだに、空飛ぶ鳥の鳴き渡るにも、もよほされてこそ悲しけれ。わがかくすぞろに心弱きにつけても、もし心得たらむにさ言ふばかりもののあはれも知らぬ人にもあらず。世の中の常なきこと惜しみて思へる人しもつれなき」<BR>⏎
 とうらやましくも心にくくも思さるるものから、<A HREF="#no1">真木柱はあはれなり</A><A NAME="te1">。</A>これに向かひたらむさまも思しやるに、「形見ぞかし」とも、うちまもりたまふ。<BR>⏎
text52351 <A NAME="in25">[第五段 薫、匂宮と語り合う]</A><BR>231 
d1352<P>⏎
d1354<P>⏎
cd8:4355-362 「昔より、心に籠めてしばしも聞こえさせぬこと残しはべる限りは、いといぶせくのみ思ひたまへられしを、今は、なかなか上臈になりにてはべり。まして御暇なき御ありさまにて、心のどかにおはします折もはべらねば、宿直などに、そのこととなくてはえさぶらはず、そこはかとなくて過ぐしはべるをなむ。<BR>⏎
<P>⏎
 昔御覧ぜし山里に、はかなくて亡せはべりにし人の、同じゆかりなる人、おぼえぬ所にはべりと聞きつけはべりて、時々さて見つべくや、と思ひたまへしに、あいなく人の誹りもはべりぬべかりし折なりしかば、このあやしき所に置きてはべりしを、をさをさまかりて見ることもなく、またかれも、なにがし一人をあひ頼む心もことになくてやありけむ、とは見たまひつれど、やむごとなくものものしき筋に思ひたまへばこそあらめ、見るにはた、ことなる咎もはべらずなどして、心やすくらうたしと思ひたまへつる人の、いとはかなくて亡くなりはべりにける。なべて世のありさまを思ひたまへ続けはべるに、悲しくなむ。聞こし召すやうもはべらむかし」<BR>⏎
<P>⏎
 とて今ぞ泣きたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
 これも「いとかうは見えたてまつらじ。をこなり」と思ひつれど、こぼれそめてはいと止めがたし。けしきのいささか乱り顔なるを、「あやしく、いとほし」と思せど、つれなくて、<BR>⏎
<P>⏎
233-236 「昔より、心に籠めてしばしも聞こえさせぬこと残しはべる限りは、いといぶせくのみ思ひたまへられしを、今は、なかなか上臈になりにてはべり。まして御暇なき御ありさまにて、心のどかにおはします折もはべらねば、宿直などに、そのこととなくてはえさぶらはず、そこはかとなくて過ぐしはべるをなむ。<BR>⏎
 昔御覧ぜし山里に、はかなくて亡せはべりにし人の、同じゆかりなる人、おぼえぬ所にはべりと聞きつけはべりて、時々さて見つべくや、と思ひたまへしに、あいなく人の誹りもはべりぬべかりし折なりしかば、このあやしき所に置きてはべりしを、をさをさまかりて見ることもなく、またかれも、なにがし一人をあひ頼む心もことになくてやありけむ、とは見たまひつれど、やむごとなくものものしき筋に思ひたまへばこそあらめ、見るにはた、ことなる咎もはべらずなどして、心やすくらうたしと思ひたまへつる人の、いとはかなくて亡くなりはべりにける。なべて世のありさまを思ひたまへ続けはべるに、悲しくなむ。聞こし召すやうもはべらむかし」<BR>⏎
 とて今ぞ泣きたまふ。<BR>⏎
 これも「いとかうは見えたてまつらじ。をこなり」と思ひつれど、こぼれそめてはいと止めがたし。けしきのいささか乱り顔なるを、「あやしく、いとほし」と思せど、つれなくて、<BR>⏎
d1364<P>⏎
cd2:1365-366 とつれなくのたまへど、いと堪へがたければ、言少なにておはします。<BR>⏎
<P>⏎
238 とつれなくのたまへど、いと堪へがたければ、言少なにておはします。<BR>⏎
d1368<P>⏎
cd2:1369-370 などすこしづつけしきばみて、<BR>⏎
<P>⏎
240 などすこしづつけしきばみて、<BR>⏎
d1372<P>⏎
cd2:1373-374 など聞こえ置きて、出でたまひぬ。<BR>⏎
<P>⏎
242 など聞こえ置きて、出でたまひぬ。<BR>⏎
text52375 <A NAME="in26">[第六段 人は非情の者に非ず]</A><BR>243 
d1376<P>⏎
d1378<P>⏎
cd2:1379-380 我も、かばかりの身にて、時の帝の御女を持ちたてまつりながら、この人のらうたくおぼゆる方は、劣りやはしつる。まして今はとおぼゆるには、心をのどめむ方なくもあるかな。さるはをこなり、かからじ」<BR>⏎
<P>⏎
245 我も、かばかりの身にて、時の帝の御女を持ちたてまつりながら、この人のらうたくおぼゆる方は、劣りやはしつる。まして今はとおぼゆるには、心をのどめむ方なくもあるかな。さるはをこなり、かからじ」<BR>⏎
d1382<P>⏎
d1384<P>⏎
cd2:1385-386 とうち誦じて臥したまへり。<BR>⏎
<P>⏎
248 とうち誦じて臥したまへり。<BR>⏎
d1388<P>⏎
d1390<P>⏎
text52391 <H4>第三章 匂宮の物語 匂宮、侍従を迎えて語り合う</H4>251 
text52392 <A NAME="in31">[第一段 四月、薫と匂宮、和歌を贈答]</A><BR>252 
d1393<P>⏎
d1395<P>⏎
cd3:1396-398 「忍び音や君も泣くらむかひもなき<BR>⏎
  <A HREF="#no4">死出の田長</A><A NAME="te4">に</A>心通はば」<BR>⏎
<P>⏎
254 「忍び音や君も泣くらむかひもなき<BR>  <A HREF="#no4">死出の田長</A><A NAME="te4">に</A>心通はば」<BR>⏎
d1400<P>⏎
cd2:1401-402 「<A HREF="#no5">橘の薫る</A><A NAME="te5">あ</A>たりはほととぎす<BR>⏎
  心してこそ鳴くべかりけれ<BR>⏎
256 「<A HREF="#no5">橘の薫る</A><A NAME="te5">あ</A>たりはほととぎす<BR>  心してこそ鳴くべかりけれ<BR>⏎
d1404<P>⏎
d1406<P>⏎
d1408<P>⏎
d1410<P>⏎
cd2:1411-412 など泣きみ笑ひみ聞こえたまふにも、異人よりは睦ましくあはれなり。ことことしくうるはしくて、例ならぬ御ことのさまも、おどろき惑ひたまふ所にては、御訪らひの人しげく、父大臣、兄の君たち隙なきも、いとうるさきに、ここはいと心やすくて、なつかしくぞ思されける。<BR>⏎
<P>⏎
261 など泣きみ笑ひみ聞こえたまふにも、異人よりは睦ましくあはれなり。ことことしくうるはしくて、例ならぬ御ことのさまも、おどろき惑ひたまふ所にては、御訪らひの人しげく、父大臣、兄の君たち隙なきも、いとうるさきに、ここはいと心やすくて、なつかしくぞ思されける。<BR>⏎
text52413 <A NAME="in32">[第二段 匂宮、右近を迎えに時方派遣]</A><BR>262 
d1414<P>⏎
cd2:1415-416 いと夢のやうにのみ、なほ「いかで、いとにはかなりけることにかは」とのみいぶせければ、例の人びと召して、右近を迎へに遣はす。母君も、さらにこの水の音けはひを聞くに、我もまろび入りぬべく、悲しく心憂きことのどまるべくもあらねば、いとわびしうて帰りたまひにけり。<BR>⏎
<P>⏎
263 いと夢のやうにのみ、なほ「いかで、いとにはかなりけることにかは」とのみいぶせければ、例の人びと召して、右近を迎へに遣はす。母君も、さらにこの水の音けはひを聞くに、我もまろび入りぬべく、悲しく心憂きことのどまるべくもあらねば、いとわびしうて帰りたまひにけり。<BR>⏎
d1418<P>⏎
d1420<P>⏎
d1422<P>⏎
d1424<P>⏎
d1426<P>⏎
cd2:1427-428 と言ひて今日は動くべくもあらず。<BR>⏎
<P>⏎
269 と言ひて今日は動くべくもあらず。<BR>⏎
text52429 <A NAME="in33">[第三段 時方、侍従と語る]</A><BR>270 
d1430<P>⏎
d1432<P>⏎
cd2:1433-434 「さらにこの御仲のこと、こまかに知りきこえさせはべらず。物の心知りはべらずながら、たぐひなき御心ざしを見たてまつりはべりしかば、君たちをも、何かは急ぎてしも聞こえ承らむ。つひには仕うまつるべきあたりにこそ、と思ひたまへしを、言ふかひなく悲しき御ことの後は、私の御心ざしも、なかなか深さまさりてなむ」<BR>⏎
<P>⏎
272 「さらにこの御仲のこと、こまかに知りきこえさせはべらず。物の心知りはべらずながら、たぐひなき御心ざしを見たてまつりはべりしかば、君たちをも、何かは急ぎてしも聞こえ承らむ。つひには仕うまつるべきあたりにこそ、と思ひたまへしを、言ふかひなく悲しき御ことの後は、私の御心ざしも、なかなか深さまさりてなむ」<BR>⏎
d1436<P>⏎
d1438<P>⏎
d1440<P>⏎
cd2:1441-442 「さは参りたまへ」<BR>⏎
<P>⏎
276 「さは参りたまへ」<BR>⏎
d1444<P>⏎
cd2:1445-446 「まして何事をかは聞こえさせむ。さてもなほこの御忌のほどにはいかでか。忌ませ<A HREF="#k12">たまはぬ</A><A NAME="t12">か</A>」<BR>⏎
<P>⏎
278 「まして何事をかは聞こえさせむ。さてもなほこの御忌のほどにはいかでか。忌ませ<A HREF="#k12">たまはぬ</A><A NAME="t12">か</A>」<BR>⏎
d1448<P>⏎
cd2:1449-450 「悩ませたまふ御響きに、さまざまの御慎みどもはべめれど、忌みあへさせたまふまじき御けしきになむ。またかく深き御契りにては、籠もらせたまひてもこそおはしまさめ。残りの日いくばくならず。なほ一所参りたまへ」<BR>⏎
<P>⏎
280 「悩ませたまふ御響きに、さまざまの御慎みどもはべめれど、忌みあへさせたまふまじき御けしきになむ。またかく深き御契りにては、籠もらせたまひてもこそおはしまさめ。残りの日いくばくならず。なほ一所参りたまへ」<BR>⏎
d1452<P>⏎
text52453 <A NAME="in34">[第四段 侍従、京の匂宮邸へ]</A><BR>282 
d1454<P>⏎
d1456<P>⏎
d1458<P>⏎
d1460<P>⏎
d1462<P>⏎
cd2:1463-464 など詳しう聞こゆれば、ましていといみじう、「さるべきにても、ともかくもあらましよりも、いかばかりものを思ひ立ちて、さる水に溺れけむ」と思しやるに、「これを見つけて堰きとめたらましかば」と、湧きかへる心地したまへど、かひなし。<BR>⏎
<P>⏎
287 など詳しう聞こゆれば、ましていといみじう、「さるべきにても、ともかくもあらましよりも、いかばかりものを思ひ立ちて、さる水に溺れけむ」と思しやるに、「これを見つけて堰きとめたらましかば」と、湧きかへる心地したまへど、かひなし。<BR>⏎
d1466<P>⏎
cd2:1467-468 など夜一夜語らひたまふに、聞こえ明かす。かの巻数に書きつけたまへりし、母君の返り事などを聞こゆ。<BR>⏎
<P>⏎
289 など夜一夜語らひたまふに、聞こえ明かす。かの巻数に書きつけたまへりし、母君の返り事などを聞こゆ。<BR>⏎
text52469 <A NAME="in35">[第五段 侍従、宇治へ帰る]</A><BR>290 
d1470<P>⏎
d1472<P>⏎
d1474<P>⏎
d1476<P>⏎
cd2:1477-478 「さてさぶらはむにつけても、もののみ悲しからむを思ひたまへれば、今この御果てなど過ぐして」<BR>⏎
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294 「さてさぶらはむにつけても、もののみ悲しからむを思ひたまへれば、今この御果てなど過ぐして」<BR>⏎
d1480<P>⏎
d1482<P>⏎
d1484<P>⏎
d1486<P>⏎
d1488<P>⏎
d1490<P>⏎
cd2:1491-492 などもてわづらひける。<BR>⏎
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301 などもてわづらひける。<BR>⏎
text52493 <H4>第四章 薫の物語 薫、浮舟の法事を営む</H4>302 
text52494 <A NAME="in41">[第一段 薫、宇治を訪問]</A><BR>303 
d1495<P>⏎
cd2:1496-497 大将殿も、なほいとおぼつかなきに、思し余りておはしたり。道のほどより、昔の事どもかき集めつつ、<BR>⏎
<P>⏎
304 大将殿も、なほいとおぼつかなきに、思し余りておはしたり。道のほどより、昔の事どもかき集めつつ、<BR>⏎
d1499<P>⏎
d1501<P>⏎
cd4:2502-505 「ありけむさまもはかばかしう聞かず、なほ尽きせずあさましう、はかなければ、忌の残りもすくなくなりぬ。過ぐして、と思ひつれど、静めあへずものしつるなり。いかなる心地にてか、はかなくなりたまひにし」<BR>⏎
<P>⏎
 と問ひたまふに、「尼君なども、けしきは見てければ、つひに聞きあはせたまはむを、なかなか隠しても、こと違ひて聞こえむに、そこなはれぬべし。あやしきことの筋にこそ、虚言も思ひめぐらしつつならひしかかくまめやかなる御けしきにさし向かひきこえては、かねてと言はむかく言はむと、まうけし言葉をも忘れ、わづらはしう」おぼえければ、ありしさまのことどもを聞こえつ。<BR>⏎
<P>⏎
307-308 「ありけむさまもはかばかしう聞かず、なほ尽きせずあさましう、はかなければ、忌の残りもすくなくなりぬ。過ぐして、と思ひつれど、静めあへずものしつるなり。いかなる心地にてか、はかなくなりたまひにし」<BR>⏎
 と問ひたまふに、「尼君なども、けしきは見てければ、つひに聞きあはせたまはむを、なかなか隠しても、こと違ひて聞こえむに、そこなはれぬべし。あやしきことの筋にこそ、虚言も思ひめぐらしつつならひしか. かくまめやかなる御けしきにさし向かひきこえては、かねてと言はむかく言はむと、まうけし言葉をも忘れ、わづらはしう」おぼえければ、ありしさまのことどもを聞こえつ。<BR>⏎
text52506 <A NAME="in42">[第二段 薫、真相を聞きただす]</A><BR>309 
d1507<P>⏎
d1509<P>⏎
d1511<P>⏎
d1513<P>⏎
cd2:1514-515 「御供に具して失せたる人やある。なほありけむさまをたしかに言へ。我をおろかに思ひて背きたまふことは、よもあらじとなむ思ふ。いかやうなる、たちまちに、言ひ知らぬことありてか、さるわざはしたまはむ。我なむえ信ずまじき」<BR>⏎
<P>⏎
313 「御供に具して失せたる人やある。なほありけむさまをたしかに言へ。我をおろかに思ひて背きたまふことは、よもあらじとなむ思ふ。いかやうなる、たちまちに、言ひ知らぬことありてか、さるわざはしたまはむ。我なむえ信ずまじき」<BR>⏎
d1517<P>⏎
cd2:1518-519 「おのづから聞こし召しけむ。もとより思すさまならで生ひ出でたまへりし人の、世離れたる御住まひの後は、いつとなくものをのみ思すめりしかど、たまさかにもかく渡りおはしますを、待ちきこえさせたまふに、もとよりの御身の嘆きをさへ慰めたまひつつ、心のどかなるさまにて、時々も見たてまつらせたまふべきやうには、いつしかとのみ、言に出でてはのたまはねど、思しわたるめりしを、その御本意かなふべきさまに承ることどもはべりしに、かくてさぶらふ人どもも、うれしきことに思ひたまへいそぎ、かの筑波山も、からうして心ゆきたるけしきにて、渡らせたまはむことをいとなみ思ひたまへしに、心得ぬ御消息はべりけるに、この宿直仕うまつる者どもも、女房たちらうがはしかなり、など戒め仰せらるることなど申して、ものの心得ず荒々しきは田舎人どもの、あやしきさまにとりなしきこゆることどもはべりしを、その後、久しう御消息などもはべらざりしに、心憂き身なりとのみ、いはけなかりしほどより思ひ知るを、人数にいかで見なさむとのみ、よろづに思ひ扱ひたまふ母君の、なかなかなることの、人笑はれになりては、いかに思ひ嘆かむ、などおもむけてなむ、常に嘆きたまひし。<BR>⏎
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315 「おのづから聞こし召しけむ。もとより思すさまならで生ひ出でたまへりし人の、世離れたる御住まひの後は、いつとなくものをのみ思すめりしかど、たまさかにもかく渡りおはしますを、待ちきこえさせたまふに、もとよりの御身の嘆きをさへ慰めたまひつつ、心のどかなるさまにて、時々も見たてまつらせたまふべきやうには、いつしかとのみ、言に出でてはのたまはねど、思しわたるめりしを、その御本意かなふべきさまに承ることどもはべりしに、かくてさぶらふ人どもも、うれしきことに思ひたまへいそぎ、かの筑波山も、からうして心ゆきたるけしきにて、渡らせたまはむことをいとなみ思ひたまへしに、心得ぬ御消息はべりけるに、この宿直仕うまつる者どもも、女房たちらうがはしかなり、など戒め仰せらるることなど申して、ものの心得ず荒々しきは田舎人どもの、あやしきさまにとりなしきこゆることどもはべりしを、その後、久しう御消息などもはべらざりしに、心憂き身なりとのみ、いはけなかりしほどより思ひ知るを、人数にいかで見なさむとのみ、よろづに思ひ扱ひたまふ母君の、なかなかなることの、人笑はれになりては、いかに思ひ嘆かむ、などおもむけてなむ、常に嘆きたまひし。<BR>⏎
d1521<P>⏎
cd2:1522-523 とて泣くさまもいみじければ、「いかなることにか」と紛れつる御心も失せて、せきあへたまはず。<BR>⏎
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317 とて泣くさまもいみじければ、「いかなることにか」と紛れつる御心も失せて、せきあへたまはず。<BR>⏎
text52524 <A NAME="in43">[第三段 薫、匂宮と浮舟の関係を知る]</A><BR>318 
d1525<P>⏎
d1527<P>⏎
cd2:1528-529 今は、かくだに言はじと思へど、また人の聞かばこそあらめ。宮の御ことよ。いつよりありそめけむ。さやうなるにつけてや、いとかたはに、人の心を惑はしたまふ宮なれば、常にあひ見たてまつらぬ嘆きに、身をも失ひたまへる、となむ思ふ。なほ言へ。我には、さらにな隠しそ」<BR>⏎
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320 今は、かくだに言はじと思へど、また人の聞かばこそあらめ。宮の御ことよ。いつよりありそめけむ。さやうなるにつけてや、いとかたはに、人の心を惑はしたまふ宮なれば、常にあひ見たてまつらぬ嘆きに、身をも失ひたまへる、となむ思ふ。なほ言へ。我には、さらにな隠しそ」<BR>⏎
d1531<P>⏎
d1533<P>⏎
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d1537<P>⏎
cd2:1538-539 その後、音にも聞こえじ、と思してやみにしを、いかでか聞かせたまひけむ。ただこの如月ばかりより、訪れきこえたまふべし。御文は、いとたびたびはべりしかど、御覧じ入るることもはべらざりき。いとかたじけなく、<A HREF="#k15">うたて</A><A NAME="t15">あ</A>るやうになどぞ、右近など聞こえさせしかば、一度二度や聞こえさせたまひけむ。それより他のことは見たまへず」<BR>⏎
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325 その後、音にも聞こえじ、と思してやみにしを、いかでか聞かせたまひけむ。ただこの如月ばかりより、訪れきこえたまふべし。御文は、いとたびたびはべりしかど、御覧じ入るることもはべらざりき。いとかたじけなく、<A HREF="#k15">うたて</A><A NAME="t15">あ</A>るやうになどぞ、右近など聞こえさせしかば、一度二度や聞こえさせたまひけむ。それより他のことは見たまへず」<BR>⏎
d1541<P>⏎
d1543<P>⏎
cd4:2544-547 「宮をめづらしくあはれと思ひきこえても、わが方をさすがにおろかに思はざりけるほどに、いと明らむるところなく、はかなげなりし心にて、この水の近きをたよりにて、思ひ寄るなりけむかし。わがここにさし放ち据ゑざらましかば、いみじく憂き世に経とも、いかでかかならず<A HREF="#no6">深き谷をも求め</A><A NAME="te6">出</A>でまし」<BR>⏎
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 と「いみじう憂き水の契りかな」と、この川の疎ましう思さるること、いと深し。年ごろ、あはれと思ひそめたりし方にて、荒き山路を行き帰りしも、今は、また心憂くて、この里の名をだにえ聞くまじき心地したまふ。<BR>⏎
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328-329 「宮をめづらしくあはれと思ひきこえても、わが方をさすがにおろかに思はざりけるほどに、いと明らむるところなく、はかなげなりし心にて、この水の近きをたよりにて、思ひ寄るなりけむかし。わがここにさし放ち据ゑざらましかば、いみじく憂き世に経とも、いかでかかならず<A HREF="#no6">深き谷をも求め</A><A NAME="te6">出</A>でまし」<BR>⏎
 と「いみじう憂き水の契りかな」と、この川の疎ましう思さるること、いと深し。年ごろ、あはれと思ひそめたりし方にて、荒き山路を行き帰りしも、今は、また心憂くて、この里の名をだにえ聞くまじき心地したまふ。<BR>⏎
text52548 <A NAME="in44">[第四段 薫、宇治の過去を追懐す]</A><BR>330 
d1549<P>⏎
cd2:1550-551 「宮の上の、のたまひ始めし、人形とつけそめたりしさへゆゆしう、ただわが過ちに失ひつる人なり」と思ひもてゆくには、「母のなほ軽びたるほどにて、後の後見もいとあやしく、ことそぎてしなしけるなめり」と心ゆかず思ひつるを、詳しう聞きたまふになむ、<BR>⏎
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331 「宮の上の、のたまひ始めし、人形とつけそめたりしさへゆゆしう、ただわが過ちに失ひつる人なり」と思ひもてゆくには、「母のなほ軽びたるほどにて、後の後見もいとあやしく、ことそぎてしなしけるなめり」と心ゆかず思ひつるを、詳しう聞きたまふになむ、<BR>⏎
d1553<P>⏎
cd5:2554-558 などよろづにいとほしく思す。穢らひといふことはあるまじけれど、御供の人目もあれば、昇りたまはで、御車の榻を召して、妻戸の前にぞゐたまひけるも、見苦しければ、いと茂き木の下に、苔を御座にて、とばかり居たまへり。「今はここを来て見むことも心憂かるべし」とのみ、<A HREF="#k16">見めぐらし</A><A NAME="t16">た</A>まひて、<BR>⏎
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 「我もまた憂き古里を荒れはてば<BR>⏎
  誰れ宿り木の蔭をしのばむ」<BR>⏎
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333-334 などよろづにいとほしく思す。穢らひといふことはあるまじけれど、御供の人目もあれば、昇りたまはで、御車の榻を召して、妻戸の前にぞゐたまひけるも、見苦しければ、いと茂き木の下に、苔を御座にて、とばかり居たまへり。「今はここを来て見むことも心憂かるべし」とのみ、<A HREF="#k16">見めぐらし</A><A NAME="t16">た</A>まひて、<BR>⏎
 「我もまた憂き古里を荒れはてば<BR>  誰れ宿り木の蔭をしのばむ」<BR>⏎
d1560<P>⏎
d1562<P>⏎
d1564<P>⏎
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d1568<P>⏎
text52569 <A NAME="in45">[第五段 薫、浮舟の母に手紙す]</A><BR>340 
d1570<P>⏎
cd2:1571-572 かの母君は、京に子産むべき娘のことにより、慎み騒げば、例の家にもえ行かず、すずろなる旅居のみして、思ひ慰む折もなきに、「またこれもいかならむ」と思へど、平らかに産みてけり。ゆゆしければ、え寄らず、残りの人びとの上もおぼえず、ほれ惑ひて過ぐすに、大将殿より御使忍びてあり。ものおぼえぬ心地にも、いとうれしくあはれなり。<BR>⏎
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341 かの母君は、京に子産むべき娘のことにより、慎み騒げば、例の家にもえ行かず、すずろなる旅居のみして、思ひ慰む折もなきに、「またこれもいかならむ」と思へど、平らかに産みてけり。ゆゆしければ、え寄らず、残りの人びとの上もおぼえず、ほれ惑ひて過ぐすに、大将殿より御使忍びてあり。ものおぼえぬ心地にも、いとうれしくあはれなり。<BR>⏎
d1574<P>⏎
cd6:3575-580 などこまかに書きたまひて、御使には、かの大蔵大輔をぞ賜へりける。<BR>⏎
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 「心のどかによろづを思ひつつ、年ごろにさへなりにけるほど、かならずしも心ざしあるやうには見たまはざりけむ。されど今より後、何ごとにつけても、かならず忘れきこえじ。またさやうにを人知れず思ひ置きたまへ。幼き人どももあなるを、朝廷に仕うまつらむにも、かならず後見思ふべくなむ」<BR>⏎
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 など<A HREF="#k18">言葉に</A><A NAME="t18">も</A>のたまへり。<BR>⏎
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343-345 などこまかに書きたまひて、御使には、かの大蔵大輔をぞ賜へりける。<BR>⏎
 「心のどかによろづを思ひつつ、年ごろにさへなりにけるほど、かならずしも心ざしあるやうには見たまはざりけむ。されど今より後、何ごとにつけても、かならず忘れきこえじ。またさやうにを人知れず思ひ置きたまへ。幼き人どももあなるを、朝廷に仕うまつらむにも、かならず後見思ふべくなむ」<BR>⏎
 など<A HREF="#k18">言葉に</A><A NAME="t18">も</A>のたまへり。<BR>⏎
text52581 <A NAME="in46">[第六段 浮舟の母からの返書]</A><BR>346 
d1582<P>⏎
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d1588<P>⏎
cd2:1589-590 さまざまにうれしき仰せ言に、命延びはべりて、今しばしながらへはべらば、なほ頼みきこえはべるべきにこそ、と思ひたまふるにつけても、目の前の涙にくれて、え聞こえさせやらずなむ」<BR>⏎
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350 さまざまにうれしき仰せ言に、命延びはべりて、今しばしながらへはべらば、なほ頼みきこえはべるべきにこそ、と思ひたまふるにつけても、目の前の涙にくれて、え聞こえさせやらずなむ」<BR>⏎
d1592<P>⏎
d1594<P>⏎
cd2:1595-596 とて贈らせてけり。<BR>⏎
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353 とて贈らせてけり。<BR>⏎
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d1600<P>⏎
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cd2:1607-608 「げにことなることなきゆかり睦びにぞあるべけれど、帝にも、さばかりの人の娘たてまつらずやはある。それにさるべきにて、時めかし思さむは、人の誹るべきことかは。ただ人、はたあやしき女、世に古りにたるなどを持ちゐるたぐひ多かり。<BR>⏎
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359 「げにことなることなきゆかり睦びにぞあるべけれど、帝にも、さばかりの人の娘たてまつらずやはある。それにさるべきにて、時めかし思さむは、人の誹るべきことかは。ただ人、はたあやしき女、世に古りにたるなどを持ちゐるたぐひ多かり。<BR>⏎
d1610<P>⏎
text52611 <A NAME="in47">[第七段 常陸介、浮舟の死を悼む]</A><BR>361 
d1612<P>⏎
d1614<P>⏎
d1616<P>⏎
d1618<P>⏎
cd4:2619-622 など喜ぶを見るにも、「ましておはせましかば」と思ふに、臥しまろびて泣かる。<BR>⏎
<P>⏎
 守も今なむうち泣きける。さるはおはせし世には、なかなか、かかるたぐひの人しも、尋ねたまふべきにしもあらずかし。「わが過ちにて失ひつるもいとほし。慰めむ」と思すよりなむ、「人の誹り、ねむごろに尋ねじ」と思しける。<BR>⏎
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365-366 など喜ぶを見るにも、「ましておはせましかば」と思ふに、臥しまろびて泣かる。<BR>⏎
 守も今なむうち泣きける。さるはおはせし世には、なかなか、かかるたぐひの人しも、尋ねたまふべきにしもあらずかし。「わが過ちにて失ひつるもいとほし。慰めむ」と思すよりなむ、「人の誹り、ねむごろに尋ねじ」と思しける。<BR>⏎
text52623 <A NAME="in48">[第八段 浮舟四十九日忌の法事]</A><BR>367 
d1624<P>⏎
d1626<P>⏎
cd2:1627-628 宮よりは、右近がもとに、白銀の壺に黄金入れて賜へり。人見とがむばかり大きなるわざは、えしたまはず、右近が心ざしにてしたりければ、心知らぬ人は、「いかでかくなむ」など言ひける。殿の人ども、睦ましき限りあまた賜へり。<BR>⏎
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369 宮よりは、右近がもとに、白銀の壺に黄金入れて賜へり。人見とがむばかり大きなるわざは、えしたまはず、右近が心ざしにてしたりければ、心知らぬ人は、「いかでかくなむ」など言ひける。殿の人ども、睦ましき限りあまた賜へり。<BR>⏎
d1630<P>⏎
cd2:1631-632 と今おどろく人のみ多かるに、常陸守来て、主人がり居るなむ、あやしと人びと見ける。少将の子産ませて、いかめしきことせさせむとまどひ、家の内になきものはすくなく、唐土新羅の飾りをもしつべきに、限りあれば、いとあやしかりけり。この御法事の、忍びたるやうに思したれど、けはひこよなきを見るに、「生きたらましかば、わが身を並ぶべくもあらぬ人の御宿世なりけり」と思ふ。<BR>⏎
<P>⏎
371 と今おどろく人のみ多かるに、常陸守来て、主人がり居るなむ、あやしと人びと見ける。少将の子産ませて、いかめしきことせさせむとまどひ、家の内になきものはすくなく、唐土新羅の飾りをもしつべきに、限りあれば、いとあやしかりけり。この御法事の、忍びたるやうに思したれど、けはひこよなきを見るに、「生きたらましかば、わが身を並ぶべくもあらぬ人の御宿世なりけり」と思ふ。<BR>⏎
d1634<P>⏎
d1636<P>⏎
cd2:1637-638 かの殿は、かくとりもちて、何やかやと思して、残りの人を育ませたまひても、なほいふかひなきことを、忘れがたく思す。<BR>⏎
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374 かの殿は、かくとりもちて、何やかやと思して、残りの人を育ませたまひても、なほいふかひなきことを、忘れがたく思す。<BR>⏎
text52639 <H4>第五章 薫の物語 明石中宮の女宮たち</H4>375 
text52640 <A NAME="in51">[第一段 薫と小宰相の君の関係]</A><BR>376 
d1641<P>⏎
d1643<P>⏎
d1645<P>⏎
cd4:2646-649 この宮も、年ごろ、いといたきものにしたまひて、例の、言ひ破りたまへど、「などかさしもめづらしげなくはあらむ」と、<A HREF="#k21">心強く</A><A NAME="t21">ね</A>たきさまなるを、まめ人は、「すこし人よりことなり」と思すになむありける。かくもの思したるも見知りければ、忍びあまりて聞こえたり。<BR>⏎
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 「あはれ知る心は人におくれねど<BR>⏎
  数ならぬ身に消えつつぞ経る<BR>⏎
379-380 この宮も、年ごろ、いといたきものにしたまひて、例の、言ひ破りたまへど、「などかさしもめづらしげなくはあらむ」と、<A HREF="#k21">心強く</A><A NAME="t21">ね</A>たきさまなるを、まめ人は、「すこし人よりことなり」と思すになむありける。かくもの思したるも見知りければ、忍びあまりて聞こえたり。<BR>⏎
 「あはれ知る心は人におくれねど<BR>  数ならぬ身に消えつつぞ経る<BR>⏎
d1651<P>⏎
cd5:2652-656 とゆゑある紙に書きたり。ものあはれなる夕暮、しめやかなるほどを、いとよく推し量りて言ひたるも、憎からず。<BR>⏎
<P>⏎
 「常なしとここら世を見る憂き身だに<BR>⏎
  人の知るまで嘆きやはする<BR>⏎
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382-383 とゆゑある紙に書きたり。ものあはれなる夕暮、しめやかなるほどを、いとよく推し量りて言ひたるも、憎からず。<BR>⏎
 「常なしとここら世を見る憂き身だに<BR>  人の知るまで嘆きやはする<BR>⏎
d1658<P>⏎
d1660<P>⏎
cd2:1661-662 「<A HREF="#k22">見し</A><A NAME="t22">人</A>よりも、これは心にくきけ添ひてもあるかな。などてかく出で立ちけむ。さるものにて、我も置いたらましものを」<BR>⏎
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386 「<A HREF="#k22">見し</A><A NAME="t22">人</A>よりも、これは心にくきけ添ひてもあるかな。などてかく出で立ちけむ。さるものにて、我も置いたらましものを」<BR>⏎
d1664<P>⏎
text52665 <A NAME="in52">[第二段 六条院の法華八講]</A><BR>388 
d1666<P>⏎
d1668<P>⏎
d1670<P>⏎
d1672<P>⏎
d1674<P>⏎
cd6:3675-680 いと暑さの堪へがたき日なれば、こちたき御髪の、苦しう思さるるにやあらむ、すこしこなたに靡かして引かれたるほど、たとへむものなし。「ここらよき人を見集むれど、似るべくもあらざりけり」とおぼゆ。御前なる人は、まことに土などの心地ぞするを、思ひ静めて見れば、黄なる生絹の単衣薄色なる裳着たる人の、扇うち使ひたるなど、「用意あらむはや」と、ふと見えて、<BR>⏎
<P>⏎
 「なかなか、もの扱ひに、いと苦しげなり。たださながら見たまへかし」<BR>⏎
<P>⏎
 とて笑ひたるまみ、愛敬づきたり。声聞くにぞ、この心ざしの人とは知りぬる。<BR>⏎
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393-395 いと暑さの堪へがたき日なれば、こちたき御髪の、苦しう思さるるにやあらむ、すこしこなたに靡かして引かれたるほど、たとへむものなし。「ここらよき人を見集むれど、似るべくもあらざりけり」とおぼゆ。御前なる人は、まことに土などの心地ぞするを、思ひ静めて見れば、黄なる生絹の単衣薄色なる裳着たる人の、扇うち使ひたるなど、「用意あらむはや」と、ふと見えて、<BR>⏎
 「なかなか、もの扱ひに、いと苦しげなり。たださながら見たまへかし」<BR>⏎
 とて笑ひたるまみ、愛敬づきたり。声聞くにぞ、この心ざしの人とは知りぬる。<BR>⏎
text52681 <A NAME="in53">[第三段 小宰相の君、氷を弄ぶ]</A><BR>396 
d1682<P>⏎
d1684<P>⏎
cd2:1685-686 「いな持たらじ。雫むつかし」<BR>⏎
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398 「いな持たらじ。雫むつかし」<BR>⏎
d1688<P>⏎
cd2:1689-690 とかつは静心なくて、まもり立ちたるほどに、こなたの対の北面に住みける下臈女房の、この<A HREF="#k25">障子</A><A NAME="t25">は</A>、とみのことにて、開けながら下りにけるを思ひ出でて、「人もこそ見つけて騒がるれ」と思ひければ、惑ひ入る。<BR>⏎
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400 とかつは静心なくて、まもり立ちたるほどに、こなたの対の北面に住みける下臈女房の、この<A HREF="#k25">障子</A><A NAME="t25">は</A>、とみのことにて、開けながら下りにけるを思ひ出でて、「人もこそ見つけて騒がるれ」と思ひければ、惑ひ入る。<BR>⏎
d1692<P>⏎
d1694<P>⏎
cd2:1695-696 「いみじきわざかな。御几帳をさへあらはに引きなしてけるよ。<A HREF="#k27">右の大殿</A><A NAME="t27">の</A>君たちならむ。疎き人、はたここまで来べきにもあらず。ものの聞こえあらば、誰れか<A HREF="#k28">障子</A><A NAME="t28">は</A>開けたりしと、かならず出で来なむ。単衣も袴も、生絹なめりと見えつる人の御姿なれば、え人も聞きつけたまはぬならむかし」<BR>⏎
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403 「いみじきわざかな。御几帳をさへあらはに引きなしてけるよ。<A HREF="#k27">右の大殿</A><A NAME="t27">の</A>君たちならむ。疎き人、はたここまで来べきにもあらず。ものの聞こえあらば、誰れか<A HREF="#k28">障子</A><A NAME="t28">は</A>開けたりしと、かならず出で来なむ。単衣も袴も、生絹なめりと見えつる人の御姿なれば、え人も聞きつけたまはぬならむかし」<BR>⏎
d1698<P>⏎
cd2:1699-700 かの人は「やうやう聖になりし心を、ひとふし違へそめて、さまざまなるもの思ふ人ともなるかな。そのかみ世を背きなましかば、今は深き山に住み果てて、かく心乱れましやは」など思し続くるも、やすからず。「などて年ごろ、見たてまつらばやと思ひつらむ。なかなか苦しう、かひなかるべきわざにこそ」と思ふ。<BR>⏎
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405 かの人は「やうやう聖になりし心を、ひとふし違へそめて、さまざまなるもの思ふ人ともなるかな。そのかみ世を背きなましかば、今は深き山に住み果てて、かく心乱れましやは」など思し続くるも、やすからず。「などて年ごろ、見たてまつらばやと思ひつらむ。なかなか苦しう、かひなかるべきわざにこそ」と思ふ。<BR>⏎
text52701 <A NAME="in54">[第四段 薫と女二宮との夫婦仲]</A><BR>406 
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cd4:2711-714 「なぞこは奉らぬ。人多く見る時なむ、透きたる物着るは、ばうぞくにおぼゆる。ただ今はあへはべりなむ」<BR>⏎
<P>⏎
 とて手づから着せ奉りたまふ。御袴も昨日の同じ紅なり。御髪の多さ、裾などは劣りたまはねど、なほさまざまなるにや、似るべくもあらず。氷召して、人びとに割らせたまふ。取りて一つ奉りなどしたまふ、心のうちもをかし。<BR>⏎
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411-412 「なぞこは奉らぬ。人多く見る時なむ、透きたる物着るは、ばうぞくにおぼゆる。ただ今はあへはべりなむ」<BR>⏎
 とて手づから着せ奉りたまふ。御袴も昨日の同じ紅なり。御髪の多さ、裾などは劣りたまはねど、なほさまざまなるにや、似るべくもあらず。氷召して、人びとに割らせたまふ。取りて一つ奉りなどしたまふ、心のうちもをかし。<BR>⏎
d1716<P>⏎
d1718<P>⏎
d1720<P>⏎
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text52737 <A NAME="in55">[第五段 薫、明石中宮に対面]</A><BR>424 
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d1744<P>⏎
cd2:1745-746 「この里にものしたまふ皇女の、雲の上離れて、思ひ屈したまへるこそ、いとほしう見たまふれ。姫宮の御方より、御消息もはべらぬを、かく品定まりたまへるに、思し捨てさせたまへるやうに思ひて、心ゆかぬけしきのみはべるを、かやうのもの、時々<A HREF="#k29">ものせさせたまはなむ</A><A NAME="t29">。</A>なにがしがおろして持てまからむはた、見るかひもはべらじかし」<BR>⏎
<P>⏎
428 「この里にものしたまふ皇女の、雲の上離れて、思ひ屈したまへるこそ、いとほしう見たまふれ。姫宮の御方より、御消息もはべらぬを、かく品定まりたまへるに、思し捨てさせたまへるやうに思ひて、心ゆかぬけしきのみはべるを、かやうのもの、時々<A HREF="#k29">ものせさせたまはなむ</A><A NAME="t29">。</A>なにがしがおろして持てまからむはた、見るかひもはべらじかし」<BR>⏎
d1748<P>⏎
d1750<P>⏎
d1752<P>⏎
cd2:1753-754 「かれよりは、いかでかは。もとより<A HREF="#k30">数まへさせ</A><A NAME="t30">た</A>まはざらむをも、かく親しくてさぶらふべきゆかりに寄せて、思し召し数まへさせたまはむをこそ、うれしくははべるべけれ。ましてさも聞こえ馴れたまひにけむを、今捨てさせたまはむは、からきことにはべり」<BR>⏎
<P>⏎
432 「かれよりは、いかでかは。もとより<A HREF="#k30">数まへさせ</A><A NAME="t30">た</A>まはざらむをも、かく親しくてさぶらふべきゆかりに寄せて、思し召し数まへさせたまはむをこそ、うれしくははべるべけれ。ましてさも聞こえ馴れたまひにけむを、今捨てさせたまはむは、からきことにはべり」<BR>⏎
d1756<P>⏎
cd2:1757-758 立ち出でて、「一夜の心ざしの人に会はむ。ありし渡殿も慰めに見むかし」と思して、御前を歩み渡りて、西ざまにおはするを、御簾の内の人は心ことに用意す。げにいと様よく限りなきもてなしにて、渡殿の方は、左の大殿の君たちなど居て、物言ふけはひすれば、妻戸の前に居たまひて、<BR>⏎
<P>⏎
434 立ち出でて、「一夜の心ざしの人に会はむ。ありし渡殿も慰めに見むかし」と思して、御前を歩み渡りて、西ざまにおはするを、御簾の内の人は心ことに用意す。げにいと様よく限りなきもてなしにて、渡殿の方は、左の大殿の君たちなど居て、物言ふけはひすれば、妻戸の前に居たまひて、<BR>⏎
d1760<P>⏎
cd2:1761-762 と<A HREF="#k31">甥の君たち</A><A NAME="t31">の</A>方を見やりたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
436 と<A HREF="#k31">甥の君たち</A><A NAME="t31">の</A>方を見やりたまふ。<BR>⏎
d1764<P>⏎
cd2:1765-766 などはかなきことを言ふ人びとのけはひも、あやしうみやびかに、をかしき御方のありさまにぞある。そのこととなけれど、世の中の物語などしつつ、しめやかに、例よりは居たまへり。<BR>⏎
<P>⏎
438 などはかなきことを言ふ人びとのけはひも、あやしうみやびかに、をかしき御方のありさまにぞある。そのこととなけれど、世の中の物語などしつつ、しめやかに、例よりは居たまへり。<BR>⏎
text52767 <A NAME="in56">[第六段 明石中宮、薫と小宰相の君の関係を聞く]</A><BR>439 
d1768<P>⏎
d1770<P>⏎
d1772<P>⏎
d1774<P>⏎
d1776<P>⏎
d1778<P>⏎
d1780<P>⏎
cd2:1781-782 とのたまひて御姉弟なれど、この君をば、なほ恥づかしく、「人も用意なくて見えざらむかし」と思いたり。<BR>⏎
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446 とのたまひて御姉弟なれど、この君をば、なほ恥づかしく、「人も用意なくて見えざらむかし」と思いたり。<BR>⏎
d1784<P>⏎
d1786<P>⏎
cd2:1787-788 「いと見苦しき御さまを、思ひ知るこそをかしけれ。いかでかかる御癖やめたてまつらむ。恥づかしや、この人びとも」<BR>⏎
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449 「いと見苦しき御さまを、思ひ知るこそをかしけれ。いかでかかる御癖やめたてまつらむ。恥づかしや、この人びとも」<BR>⏎
d1790<P>⏎
text52791 <A NAME="in57">[第七段 明石中宮、薫の三角関係を知る]</A><BR>451 
d1792<P>⏎
d1794<P>⏎
d1796<P>⏎
d1798<P>⏎
d1800<P>⏎
d1802<P>⏎
d1804<P>⏎
cd2:1805-806 「いさや下衆は、たしかならぬことをも言ひはべるものを、と思ひはべれど、かしこにはべりける下童の、ただこのころ、宰相が里に出でまうできて、たしかなるやうにこそ言ひはべりけれ。かくあやしうて亡せたまへること、人に聞かせじ。おどろおどろしく、おぞきやうなりとて、いみじく隠しけることどもとて。さて詳しくは聞かせたてまつらぬにやありけむ」<BR>⏎
<P>⏎
458 「いさや下衆は、たしかならぬことをも言ひはべるものを、と思ひはべれど、かしこにはべりける下童の、ただこのころ、宰相が里に出でまうできて、たしかなるやうにこそ言ひはべりけれ。かくあやしうて亡せたまへること、人に聞かせじ。おどろおどろしく、おぞきやうなりとて、いみじく隠しけることどもとて。さて詳しくは聞かせたてまつらぬにやありけむ」<BR>⏎
d1808<P>⏎
cd2:1809-810 「さらにかかること、またまねぶな、と言はせよ。かかる筋に、御身をももてそこなひ、人に軽く心づきなきものに思はれぬべきなめり」<BR>⏎
<P>⏎
460 「さらにかかること、またまねぶな、と言はせよ。かかる筋に、御身をももてそこなひ、人に軽く心づきなきものに思はれぬべきなめり」<BR>⏎
d1812<P>⏎
text52813 <H4>第六章 薫の物語 薫、断腸の秋の思い</H4>462 
text52814 <A NAME="in61">[第一段 女一の宮から妹二の宮への手紙]</A><BR>463 
d1815<P>⏎
d1817<P>⏎
d1819<P>⏎
cd3:1820-822 「荻の葉に露吹き結ぶ秋風も<BR>⏎
  夕べぞわきて身にはしみける」<BR>⏎
<P>⏎
466 「荻の葉に露吹き結ぶ秋風も<BR>  夕べぞわきて身にはしみける」<BR>⏎
d1824<P>⏎
d1826<P>⏎
cd2:1827-828 時の帝の御女を賜ふとも、得たてまつらざらまし。<A HREF="#k35">また</A><A NAME="t35"></A>さ思ふ人ありと聞こし召しながらは、かかることもなからましを、なほ心憂く、わが心乱りたまひける橋姫かな」<BR>⏎
<P>⏎
469 時の帝の御女を賜ふとも、得たてまつらざらまし。<A HREF="#k35">また</A><A NAME="t35"></A>さ思ふ人ありと聞こし召しながらは、かかることもなからましを、なほ心憂く、わが心乱りたまひける橋姫かな」<BR>⏎
d1830<P>⏎
d1832<P>⏎
cd2:1833-834 など眺め入りたまふ時々多かり。<BR>⏎
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472 など眺め入りたまふ時々多かり。<BR>⏎
text52835 <A NAME="in62">[第二段 侍従、明石中宮に出仕す]</A><BR>473 
d1836<P>⏎
cd2:1837-838 心のどかに、さまよくおはする人だに、かかる筋には、身も苦しきことおのづから混じるを、宮はまして慰めかねつつ、かの形見に、飽かぬ悲しさをものたまひ出づべき人さへなきを、対の御方ばかりこそは、「あはれ」などのたまへど、深くも見馴れたまはざりける、うちつけの睦びなれば、いと深くしもいかでかはあらむ。また思すままに、「恋しや、<A HREF="#k36">いみじや</A><A NAME="t36">」</A>などのたまはむには、かたはらいたければ、かしこにありし侍従をぞ、例の、迎へさせたまひける。<BR>⏎
<P>⏎
474 心のどかに、さまよくおはする人だに、かかる筋には、身も苦しきことおのづから混じるを、宮はまして慰めかねつつ、かの形見に、飽かぬ悲しさをものたまひ出づべき人さへなきを、対の御方ばかりこそは、「あはれ」などのたまへど、深くも見馴れたまはざりける、うちつけの睦びなれば、いと深くしもいかでかはあらむ。また思すままに、「恋しや、<A HREF="#k36">いみじや</A><A NAME="t36">」</A>などのたまはむには、かたはらいたければ、かしこにありし侍従をぞ、例の、迎へさせたまひける。<BR>⏎
d1840<P>⏎
d1842<P>⏎
d1844<P>⏎
d1846<P>⏎
d1848<P>⏎
text52849 <A NAME="in63">[第三段 匂宮、宮の君を浮舟によそえて思う]</A><BR>480 
d1850<P>⏎
d1852<P>⏎
d1854<P>⏎
d1856<P>⏎
d1858<P>⏎
cd2:1859-860 など御兄の侍従も言ひて、このころ迎へ取らせたまひてけり。姫宮の御具にて、いとこよなからぬ御ほどの人なれば、やむごとなく心ことにてさぶらひたまふ。限りあれば、宮の君などうち言ひて、裳ばかりひきかけたまふぞ、いとあはれなりける。<BR>⏎
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485 など御兄の侍従も言ひて、このころ迎へ取らせたまひてけり。姫宮の御具にて、いとこよなからぬ御ほどの人なれば、やむごとなく心ことにてさぶらひたまふ。限りあれば、宮の君などうち言ひて、裳ばかりひきかけたまふぞ、いとあはれなりける。<BR>⏎
d1862<P>⏎
d1864<P>⏎
d1866<P>⏎
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d1870<P>⏎
text52871 <A NAME="in64">[第四段 侍従、薫と匂宮を覗く]</A><BR>491 
d1872<P>⏎
d1874<P>⏎
d1876<P>⏎
cd2:1877-878 など若き人びとは口惜しがりて、皆参り集ひたるころなり。水に馴れ月をめでて、御遊び絶えず、常よりも今めかしければ、この宮ぞ、かかる筋はいとこよなくもてはやしたまふ。朝夕目馴れても、なほ今見む初花のさましたまへるに、大将の君は、いとさしも入り立ちなどしたまはぬほどにて、恥づかしう心ゆるびなきものに、皆思ひたり。<BR>⏎
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494 など若き人びとは口惜しがりて、皆参り集ひたるころなり。水に馴れ月をめでて、御遊び絶えず、常よりも今めかしければ、この宮ぞ、かかる筋はいとこよなくもてはやしたまふ。朝夕目馴れても、なほ今見む初花のさましたまへるに、大将の君は、いとさしも入り立ちなどしたまはぬほどにて、恥づかしう心ゆるびなきものに、皆思ひたり。<BR>⏎
d1880<P>⏎
d1882<P>⏎
cd2:1883-884 など人には、そのわたりのこと、かけて知り顔にも言はぬことなれば、心一つに飽かず胸いたく思ふ。宮は、内裏の御物語など、こまやかに聞こえさせたまへば、いま一所は立ち出でたまふ。「見つけられたてまつらじ。しばし御果てをも過ぐさず心浅し、と見えたてまつらじ」と思へば、隠れぬ。<BR>⏎
<P>⏎
497 など人には、そのわたりのこと、かけて知り顔にも言はぬことなれば、心一つに飽かず胸いたく思ふ。宮は、内裏の御物語など、こまやかに聞こえさせたまへば、いま一所は立ち出でたまふ。「見つけられたてまつらじ。しばし御果てをも過ぐさず心浅し、と見えたてまつらじ」と思へば、隠れぬ。<BR>⏎
text52885 <A NAME="in65">[第五段 薫、弁の御許らと和歌を詠み合う]</A><BR>498 
d1886<P>⏎
d1888<P>⏎
d1890<P>⏎
d1892<P>⏎
d1894<P>⏎
d1896<P>⏎
d1898<P>⏎
cd4:2899-902 などのたまひつつ見れば、唐衣は脱ぎすべし押しやり、うちとけて手習しけるなるべし、硯の蓋に据ゑて、心もとなき花の末手折りて、弄びけり、と見ゆ。かたへは几帳のあるにすべり隠れ、あるはうち背き、押し開けたる戸の方に、紛らはしつつゐたる、頭つきどもも、をかしと見わたしたまひて、硯ひき寄せて、<BR>⏎
<P>⏎
 「女郎花乱るる野辺に混じるとも<BR>⏎
  露の<A HREF="#no9">あだ名を</A><A NAME="te9">我</A>にかけめや<BR>⏎
505-506 などのたまひつつ見れば、唐衣は脱ぎすべし押しやり、うちとけて手習しけるなるべし、硯の蓋に据ゑて、心もとなき花の末手折りて、弄びけり、と見ゆ。かたへは几帳のあるにすべり隠れ、あるはうち背き、押し開けたる戸の方に、紛らはしつつゐたる、頭つきどもも、をかしと見わたしたまひて、硯ひき寄せて、<BR>⏎
 「女郎花乱るる野辺に混じるとも<BR>  露の<A HREF="#no9">あだ名を</A><A NAME="te9">我</A>にかけめや<BR>⏎
d1904<P>⏎
cd5:2905-909 とただこの障子にうしろしたる人に見せたまへば、うちみじろきなどもせず、のどやかに、いととく、<BR>⏎
<P>⏎
 「花といへば名こそあだなれ女郎花<BR>⏎
  なべての露に乱れやはする」<BR>⏎
<P>⏎
508-509 とただこの障子にうしろしたる人に見せたまへば、うちみじろきなどもせず、のどやかに、いととく、<BR>⏎
 「花といへば名こそあだなれ女郎花<BR>  なべての露に乱れやはする」<BR>⏎
d1911<P>⏎
d1913<P>⏎
cd3:1914-916 「旅寝してなほこころみよ女郎花<BR>⏎
  盛りの色に移り移らず<BR>⏎
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512 「旅寝してなほこころみよ女郎花<BR>  盛りの色に移り移らず<BR>⏎
d1918<P>⏎
d1920<P>⏎
cd3:1921-923 「宿貸さば一夜は寝なむおほかたの<BR>⏎
  花に移らぬ心なりとも」<BR>⏎
<P>⏎
515 「宿貸さば一夜は寝なむおほかたの<BR>  花に移らぬ心なりとも」<BR>⏎
d1925<P>⏎
cd2:1926-927 「何か恥づかしめさせたまふ。おほかたの野辺のさかしらをこそ聞こえさすれ」<BR>⏎
<P>⏎
517 「何か恥づかしめさせたまふ。おほかたの野辺のさかしらをこそ聞こえさすれ」<BR>⏎
d1929<P>⏎
d1931<P>⏎
cd2:1932-933 とて立ち出でたまへば、「おしなべてかく残りなからむ、と思ひやりたまふこそ心憂けれ」と思へる人もあり。<BR>⏎
<P>⏎
520 とて立ち出でたまへば、「おしなべてかく残りなからむ、と思ひやりたまふこそ心憂けれ」と思へる人もあり。<BR>⏎
text52934 <A NAME="in66">[第六段 薫、断腸の秋の思い]</A><BR>521 
d1935<P>⏎
d1937<P>⏎
d1939<P>⏎
d1941<P>⏎
d1943<P>⏎
d1945<P>⏎
cd4:2946-949 「なほあやしのわざや。誰れにかと、かりそめにもうち思ふ人に、やがてかくゆかしげなく聞こゆる名ざしよ」と、いとほしく、この宮には、皆目馴れてのみおぼえたてまつるべかめるも口惜し。<BR>⏎
<P>⏎
 「おりたちてあながちなる御もてなしに、女はさもこそ負けたてまつらめ。わがさも口惜しう、この御ゆかりには、ねたく心憂くのみあるかな。いかでこのわたりにも、めづらしからむ人の、例の心入れて騷ぎたまはむを語らひ取りて、わが思ひしやうに、やすからずとだにも思はせたてまつらむ。まことに心ばせあらむ人は、わが方にぞ寄るべきや。されど難いものかな。人の心は」<BR>⏎
<P>⏎
527-528 「なほあやしのわざや。誰れにかと、かりそめにもうち思ふ人に、やがてかくゆかしげなく聞こゆる名ざしよ」と、いとほしく、この宮には、皆目馴れてのみおぼえたてまつるべかめるも口惜し。<BR>⏎
 「おりたちてあながちなる御もてなしに、女はさもこそ負けたてまつらめ。わがさも口惜しう、この御ゆかりには、ねたく心憂くのみあるかな。いかでこのわたりにも、めづらしからむ人の、例の心入れて騷ぎたまはむを語らひ取りて、わが思ひしやうに、やすからずとだにも思はせたてまつらむ。まことに心ばせあらむ人は、わが方にぞ寄るべきや。されど難いものかな。人の心は」<BR>⏎
d1951<P>⏎
d1953<P>⏎
d1955<P>⏎
text52956 <A NAME="in67">[第七段 薫と中将の御許、遊仙窟の問答]</A><BR>532 
d1957<P>⏎
d1959<P>⏎
cd2:1960-961 「などかく<A HREF="#no11">ねたまし顔にかき鳴らし</A><A NAME="te11">た</A>まふ」<BR>⏎
<P>⏎
534 「などかく<A HREF="#no11">ねたまし顔にかき鳴らし</A><A NAME="te11">た</A>まふ」<BR>⏎
d1963<P>⏎
d1965<P>⏎
d1967<P>⏎
d1969<P>⏎
cd2:1970-971 とはかなきことをのたまひて、<BR>⏎
<P>⏎
539 とはかなきことをのたまひて、<BR>⏎
d1973<P>⏎
cd4:2974-977 などあぢきなく問ひたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
 「いづくにても、何事をかは。ただかやうにてこそは過ぐさせたまふめれ」<BR>⏎
<P>⏎
541-542 などあぢきなく問ひたまふ。<BR>⏎
 「いづくにても、何事をかは。ただかやうにてこそは過ぐさせたまふめれ」<BR>⏎
d1979<P>⏎
cd2:1980-981 「わが母宮も劣りたまふべき人かは。后腹と聞こゆばかりの隔てこそあれ、帝々の思しかしづきたるさま、異事ならざりけるを。なほこの御あたりは、いとことなりけるこそあやしけれ。明石の浦は心にくかりける所かな」など思ひ続くることどもに、「わが宿世は、いとやむごとなしかし。まして並べて持ちたてまつらば」と思ふぞ、いと難きや。<BR>⏎
<P>⏎
544 「わが母宮も劣りたまふべき人かは。后腹と聞こゆばかりの隔てこそあれ、帝々の思しかしづきたるさま、異事ならざりけるを。なほこの御あたりは、いとことなりけるこそあやしけれ。明石の浦は心にくかりける所かな」など思ひ続くることどもに、「わが宿世は、いとやむごとなしかし。まして並べて持ちたてまつらば」と思ふぞ、いと難きや。<BR>⏎
text52982 <A NAME="in68">[第八段 薫、宮の君を訪ねる]</A><BR>545 
d1983<P>⏎
d1985<P>⏎
cd4:2986-989 「いであはれ、これもまた同じ人ぞかし」<BR>⏎
<P>⏎
 と思ひ出できこえて、「親王の、昔心寄せたまひしものを」と言ひなして、そなたへおはしぬ。童の、をかしき宿直姿にて、二三人出でて歩きなどしけり。見つけて入るさまども、かかやかし。これぞ世の常と思ふ。<BR>⏎
<P>⏎
547-548 「いであはれ、これもまた同じ人ぞかし」<BR>⏎
 と思ひ出できこえて、「親王の、昔心寄せたまひしものを」と言ひなして、そなたへおはしぬ。童の、をかしき宿直姿にて、二三人出でて歩きなどしけり。見つけて入るさまども、かかやかし。これぞ世の常と思ふ。<BR>⏎
d1991<P>⏎
d1993<P>⏎
d1995<P>⏎
cd2:1996-997 「いと思ほしかけざりし御ありさまにつけても、故宮の思ひきこえさせたまへりしことなど、思ひたまへ出でられてなむ。かくのみ折々聞こえさせたまふなり。御後言をも、よろこびきこえたまふめる」<BR>⏎
<P>⏎
552 「いと思ほしかけざりし御ありさまにつけても、故宮の思ひきこえさせたまへりしことなど、思ひたまへ出でられてなむ。かくのみ折々聞こえさせたまふなり。御後言をも、よろこびきこえたまふめる」<BR>⏎
d1999<P>⏎
text521000 <A NAME="in69">[第九段 薫、宇治の三姉妹の運命を思う]</A><BR>554 
d11001<P>⏎
d11003<P>⏎
d11005<P>⏎
d11007<P>⏎
d11009<P>⏎
cd8:41010-1017 と人伝てともなく<A HREF="#k38">言ひなし</A><A NAME="t38">た</A>まへる声、いと若やかに愛敬づき、やさしきところ添ひたり。「ただなべてのかかる住処の人と思はば、いとをかしかるべきを、ただ今は、いかでかばかりも、人に声聞かすべきものとならひたまひけむ」と、なまうしろめたし。「容貌もいとなまめかしからむかし」と、見まほしきけはひのしたるを、「この人ぞ、また例の、かの御心乱るべきつまなめると、をかしうも、ありがたの世や」と<A HREF="#k39">思ひゐたまへり</A><A NAME="t39">。</A><BR>⏎
<P>⏎
 「これこそは、限りなき人のかしづき生ほしたてたまへる姫君。またかばかりぞ多くはあるべき。あやしかりけることは、さる聖の御あたりに、山のふところより出で来たる人びとの、かたほなるはなかりけるこそ。このはかなしや、軽々しや、など思ひなす人も、かやうのうち見るけしきは、いみじうこそをかしかりしか」<BR>⏎
<P>⏎
 と何事につけても、ただかの一つゆかりをぞ思ひ出でたまひける。あやしう、つらかりける契りどもを、つくづくと思ひ続け眺めたまふ夕暮、蜻蛉のものはかなげに飛びちがふを、<BR>⏎
<P>⏎
 「<A HREF="#no16">ありと見て手にはとられず</A><A NAME="te16">見</A>ればまた<BR>⏎
  行方も知らず消えし蜻蛉<BR>⏎
559-562 と人伝てともなく<A HREF="#k38">言ひなし</A><A NAME="t38">た</A>まへる声、いと若やかに愛敬づき、やさしきところ添ひたり。「ただなべてのかかる住処の人と思はば、いとをかしかるべきを、ただ今は、いかでかばかりも、人に声聞かすべきものとならひたまひけむ」と、なまうしろめたし。「容貌もいとなまめかしからむかし」と、見まほしきけはひのしたるを、「この人ぞ、また例の、かの御心乱るべきつまなめると、をかしうも、ありがたの世や」と<A HREF="#k39">思ひゐたまへり</A><A NAME="t39">。</A><BR>⏎
 「これこそは、限りなき人のかしづき生ほしたてたまへる姫君。またかばかりぞ多くはあるべき。あやしかりけることは、さる聖の御あたりに、山のふところより出で来たる人びとの、かたほなるはなかりけるこそ。このはかなしや、軽々しや、など思ひなす人も、かやうのうち見るけしきは、いみじうこそをかしかりしか」<BR>⏎
 と何事につけても、ただかの一つゆかりをぞ思ひ出でたまひける。あやしう、つらかりける契りどもを、つくづくと思ひ続け眺めたまふ夕暮、蜻蛉のものはかなげに飛びちがふを、<BR>⏎
 「<A HREF="#no16">ありと見て手にはとられず</A><A NAME="te16">見</A>ればまた<BR>  行方も知らず消えし蜻蛉<BR>⏎
d11019<P>⏎
cd2:11020-1021 と例の、独りごちたまふ、とかや。<BR>⏎
<P>⏎
564 と例の、独りごちたまふ、とかや。<BR>⏎
text521022 <a name="in71">【出典】<BR>565 
c11023</a><A NAME="no1">出典1</A> わぎもこが来ても寄り立つ真木柱そも睦ましやゆかりと思へば(源氏釈所引-出典未詳)<A HREF="#te1">(戻)</A><BR>⏎
566<A NAME="no1">出典1</A> わぎもこが来ても寄り立つ真木柱そも睦ましやゆかりと思へば(源氏釈所引-出典未詳)<A HREF="#te1">(戻)</A><BR>⏎
cd2:11032-1033<A NAME="no10">出典10</A> 大抵四時心惣苦 就中腸断是秋天<大抵おおむね四時心惣すべて苦し 中に就いて腸はらわた断ゆるは是れ秋の天>(白氏文集巻十四-⏎
七九〇 暮立)<A HREF="#te10">(戻)</A><BR>⏎
575<A NAME="no10">出典10</A> 大抵四時心惣苦 就中腸断是秋天&lt;<ruby><rb>大抵<rp>(<rt>おおむね<rp>)</ruby>四時心<ruby><rb><rp>(<rt>すべ<rp>)</ruby>て苦し 中に就いて<ruby><rb><rp>(<rt>はらわた<rp>)</ruby>断ゆるは是れ秋の天&gt;(白氏文集巻十四-七九〇 暮立)<A HREF="#te10">(戻)</A><BR>⏎
d11041
text521042<p> <a name="in72">【校訂】<BR>583 
c11044</a><A NAME="k01">校訂1</A> 見とがめ--見とり(り/#か)め<A HREF="#t01">(戻)</A><BR>⏎
585<A NAME="k01">校訂1</A> 見とがめ--見とり(り/#か)め<A HREF="#t01">(戻)</A><BR>⏎
d11083</p>⏎
d11090</p>⏎
i0634
diffsrc/original/text53.htmlsrc/modified/text53.html
cd2:18-9<body background="wallppr063.gif">⏎
<p>First updated 9/20/1996(ver.1-1)<br>⏎
8<BODY>⏎
cd3:210-12Last updated 9/27/2011(ver.2-2)<br>渋谷栄一校訂(C)</p>⏎
<P
>⏎

9-10<ADDRESS>Last updated 9/27/2011(ver.2-2)<BR>
渋谷栄一校訂(C)</ADDRESS>⏎
d114<P>⏎
d116<P>⏎
d154<P>⏎
c167<LI>僧都、小野山荘へ下山---<A HREF="#in21">うちはへかく扱ふほどに、四五月も過ぎぬ</A>⏎
62<LI>僧都、小野山荘へ下山---<A HREF="#in21">うちはへかく扱ふほどに、四五月も過ぎぬ</A>⏎
c1104<LI>僧都、女一宮に伺候---<A HREF="#in54">一品の宮の御悩み、げにかの弟子の言ひしもしるく</A>⏎
99<LI>僧都、女一宮に伺候---<A HREF="#in54">一品の宮の御悩み、げにかの弟子の言ひしもしるく</A>⏎
d1120<P>⏎
d1123<P>⏎
text53124 <H4>第一章 浮舟の物語 浮舟、入水未遂、横川僧都らに助けられる</H4>117 
text53125 <A NAME="in11">[第一段 横川僧都の母、初瀬詣での帰途に急病]</A><BR>118 
d1126<P>⏎
d1128<P>⏎
d1130<P>⏎
d1132<P>⏎
d1134<P>⏎
cd2:1135-136 とうしろめたげに思ひて言ひければ、さも言ふべきことぞ、いとほしう思ひて、いと狭くむつかしうもあれば、やうやう率てたてまつるべきに、中神塞がりて、例住みたまふ方は忌むべかりければ、「故朱雀院の御領にて、宇治の院と言ひし所、このわたりならむ」と思ひ出でて、院守、僧都知りたまへりければ、「一二日宿らむ」と言ひにやりたまへりければ、<BR>⏎
<P>⏎
123 とうしろめたげに思ひて言ひければ、さも言ふべきことぞ、いとほしう思ひて、いと狭くむつかしうもあれば、やうやう率てたてまつるべきに、中神塞がりて、例住みたまふ方は忌むべかりければ、「故朱雀院の御領にて、宇治の院と言ひし所、このわたりならむ」と思ひ出でて、院守、僧都知りたまへりければ、「一二日宿らむ」と言ひにやりたまへりければ、<BR>⏎
d1138<P>⏎
cd2:1139-140 とていとあやしき宿守の翁を呼びて率て来たり。<BR>⏎
<P>⏎
125 とていとあやしき宿守の翁を呼びて率て来たり。<BR>⏎
d1142<P>⏎
d1144<P>⏎
d1146<P>⏎
cd2:1147-148 とて見せにやりたまふ。この翁、例もかく宿る人を見ならひたりければ、おろそかなるしつらひなどして来たり。<BR>⏎
<P>⏎
129 とて見せにやりたまふ。この翁、例もかく宿る人を見ならひたりければ、おろそかなるしつらひなどして来たり。<BR>⏎
text53149 <A NAME="in12">[第二段 僧都、宇治の院の森で妖しい物に出会う]</A><BR>130 
d1150<P>⏎
cd2:1151-152 まづ僧都渡りたまふ。「いといたく荒れて、恐ろしげなる所かな」と見たまふ。<BR>⏎
<P>⏎
131 まづ僧都渡りたまふ。「いといたく荒れて、恐ろしげなる所かな」と見たまふ。<BR>⏎
d1154<P>⏎
d1156<P>⏎
cd4:2157-160 「かれは何ぞ」<BR>⏎
<P>⏎
 と立ち止まりて、火を明くなして見れば、物の居たる姿なり。<BR>⏎
<P>⏎
134-135 「かれは何ぞ」<BR>⏎
 と立ち止まりて、火を明くなして見れば、物の居たる姿なり。<BR>⏎
d1162<P>⏎
cd6:3163-168 とて一人は今すこし歩み寄る。今一人は、<BR>⏎
<P>⏎
 「あな用な。よからぬ物ならむ」<BR>⏎
<P>⏎
 と言ひてさやうの物退くべき印を作りつつ、さすがになほまもる。頭の髪あらば太りぬべき心地するに、この火ともしたる大徳、憚りもなく、奥なきさまにて、近く寄りてそのさまを見れば、髪は長くつやつやとして、大きなる木のいと荒々しきに寄りゐて、いみじう泣く。<BR>⏎
<P>⏎
137-139 とて一人は今すこし歩み寄る。今一人は、<BR>⏎
 「あな用な。よからぬ物ならむ」<BR>⏎
 と言ひてさやうの物退くべき印を作りつつ、さすがになほまもる。頭の髪あらば太りぬべき心地するに、この火ともしたる大徳、憚りもなく、奥なきさまにて、近く寄りてそのさまを見れば、髪は長くつやつやとして、大きなる木のいと荒々しきに寄りゐて、いみじう泣く。<BR>⏎
d1170<P>⏎
d1172<P>⏎
cd4:2173-176 「げに妖しき事なり」<BR>⏎
<P>⏎
 とて一人はまうでて、「かかることなむ」と申す。<BR>⏎
<P>⏎
142-143 「げに妖しき事なり」<BR>⏎
 とて一人はまうでて、「かかることなむ」と申す。<BR>⏎
d1178<P>⏎
cd4:2179-182 とてわざと下りておはす。<BR>⏎
<P>⏎
 かの渡りたまはむとすることによりて、下衆ども、皆はかばかしきは、<A HREF="#k01">御厨子所</A><A NAME="t01">な</A>ど、あるべかしきことどもを、かかるわたりには急ぐものなりければ、ゐ静まりなどしたるに、ただ四五人して、ここなる物を見るに、変はることもなし。<BR>⏎
<P>⏎
145-146 とてわざと下りておはす。<BR>⏎
 かの渡りたまはむとすることによりて、下衆ども、皆はかばかしきは、<A HREF="#k01">御厨子所</A><A NAME="t01">な</A>ど、あるべかしきことどもを、かかるわたりには急ぐものなりければ、ゐ静まりなどしたるに、ただ四五人して、ここなる物を見るに、変はることもなし。<BR>⏎
d1184<P>⏎
cd2:1185-186 「これは人なり。さらに非常のけしからぬ物にあらず。寄りて問へ。亡くなりたる人にはあらぬにこそあめれ。もし死にたりける人を捨てたりけるが、蘇りたるか」<BR>⏎
<P>⏎
148 「これは人なり。さらに非常のけしからぬ物にあらず。寄りて問へ。亡くなりたる人にはあらぬにこそあめれ。もし死にたりける人を捨てたりけるが、蘇りたるか」<BR>⏎
d1188<P>⏎
cd4:2189-192 「何のさる人をか、この院の内に捨てはべらむ。たとひ真に人なりとも、狐木霊やうの物の、欺きて取りもて来たるにこそはべらめと、不便にもはべりけるかな。穢らひあるべき所にこそはべめれ」<BR>⏎
<P>⏎
 と言ひてありつる宿守の男を呼ぶ。山彦の答ふるも、いと恐ろし。<BR>⏎
<P>⏎
150-151 「何のさる人をか、この院の内に捨てはべらむ。たとひ真に人なりとも、狐木霊やうの物の、欺きて取りもて来たるにこそはべらめと、不便にもはべりけるかな。穢らひあるべき所にこそはべめれ」<BR>⏎
 と言ひてありつる宿守の男を呼ぶ。山彦の答ふるも、いと恐ろし。<BR>⏎
text53193 <A NAME="in13">[第三段 若い女であることを確認し、救出する]</A><BR>152 
d1194<P>⏎
d1196<P>⏎
d1198<P>⏎
d1200<P>⏎
d1202<P>⏎
cd2:1203-204 「さてその稚児は死にやしにし」<BR>⏎
<P>⏎
157 「さてその稚児は死にやしにし」<BR>⏎
d1206<P>⏎
d1208<P>⏎
d1210<P>⏎
cd4:2211-214 「さらばさやうの物のしたるわざか。なほよく見よ」<BR>⏎
<P>⏎
 とてこのもの懼ぢせぬ法師を寄せたれば、<BR>⏎
<P>⏎
161-162 「さらばさやうの物のしたるわざか。なほよく見よ」<BR>⏎
 とてこのもの懼ぢせぬ法師を寄せたれば、<BR>⏎
d1216<P>⏎
cd4:2217-220 と衣を取りて引けば、顔をひき入れていよいよ泣く。<BR>⏎
<P>⏎
 「いであな、さがなの木霊の鬼や。まさに隠れなむや」<BR>⏎
<P>⏎
164-165 と衣を取りて引けば、顔をひき入れていよいよ泣く。<BR>⏎
 「いであな、さがなの木霊の鬼や。まさに隠れなむや」<BR>⏎
d1222<P>⏎
cd4:2223-226 「何にまれ、かく妖しきこと、なべて世にあらじ」<BR>⏎
<P>⏎
 とて見果てむと思ふに、<BR>⏎
<P>⏎
167-168 「何にまれ、かく妖しきこと、なべて世にあらじ」<BR>⏎
 とて見果てむと思ふに、<BR>⏎
d1228<P>⏎
d1230<P>⏎
cd6:3231-236 「まことの人の形なり。その命絶えぬを見る見る捨てむこと、いといみじきことなり。池に泳ぐ魚、山に鳴く鹿をだに、人に捕へられて死なむとするを見て、助けざらむは、いと悲しかるべし。人の命久しかるまじきものなれど、残りの命、一二日をも惜しまずはあるべからず。鬼にも神にも、領ぜられ、人に逐はれ、人に謀りごたれても、これ横様の死にをすべきものにこそあんめれ、仏のかならず救ひたまふべき際なり。<BR>⏎
<P>⏎
 なほ試みに、しばし湯を飲ませなどして、助け試みむ。つひに死なば、言ふ限りにあらず」<BR>⏎
<P>⏎
 とのたまひてこの大徳して抱き入れさせたまふを、弟子ども、<BR>⏎
<P>⏎
171-173 「まことの人の形なり。その命絶えぬを見る見る捨てむこと、いといみじきことなり。池に泳ぐ魚、山に鳴く鹿をだに、人に捕へられて死なむとするを見て、助けざらむは、いと悲しかるべし。人の命久しかるまじきものなれど、残りの命、一二日をも惜しまずはあるべからず。鬼にも神にも、領ぜられ、人に逐はれ、人に謀りごたれても、これ横様の死にをすべきものにこそあんめれ、仏のかならず救ひたまふべき際なり。<BR>⏎
 なほ試みに、しばし湯を飲ませなどして、助け試みむ。つひに死なば、言ふ限りにあらず」<BR>⏎
 とのたまひてこの大徳して抱き入れさせたまふを、弟子ども、<BR>⏎
d1238<P>⏎
cd2:1239-240 ともどくもあり。また<BR>⏎
<P>⏎
175 ともどくもあり。また<BR>⏎
d1242<P>⏎
cd2:1243-244 など心々に言ふ。下衆などは、いと騒がしく、物をうたて言ひなすものなれば、人騒がしからぬ隠れの方になむ臥せたりける。<BR>⏎
<P>⏎
177 など心々に言ふ。下衆などは、いと騒がしく、物をうたて言ひなすものなれば、人騒がしからぬ隠れの方になむ臥せたりける。<BR>⏎
text53245 <A NAME="in14">[第四段 妹尼、若い女を介抱す]</A><BR>178 
d1246<P>⏎
d1248<P>⏎
d1250<P>⏎
d1252<P>⏎
d1254<P>⏎
d1256<P>⏎
d1258<P>⏎
d1260<P>⏎
d1262<P>⏎
d1264<P>⏎
d1266<P>⏎
d1268<P>⏎
d1270<P>⏎
d1272<P>⏎
cd6:3273-278 「ただわが恋ひ悲しむ娘の、帰りおはしたるなめり」<BR>⏎
<P>⏎
 とて泣く泣く御達を出だして、抱き入れさす。いかなりつらむとも、ありさま見ぬ人は、恐ろしがらで抱き入れつ。生けるやうにもあらで、さすがに目をほのかに<A HREF="#k03">見開けたるに</A><A NAME="t03">、</A><BR>⏎
<P>⏎
 「もののたまへや。いかなる人か、かくてはものしたまへる」<BR>⏎
<P>⏎
192-194 「ただわが恋ひ悲しむ娘の、帰りおはしたるなめり」<BR>⏎
 とて泣く泣く御達を出だして、抱き入れさす。いかなりつらむとも、ありさま見ぬ人は、恐ろしがらで抱き入れつ。生けるやうにもあらで、さすがに目をほのかに<A HREF="#k03">見開けたるに</A><A NAME="t03">、</A><BR>⏎
 「もののたまへや。いかなる人か、かくてはものしたまへる」<BR>⏎
d1280<P>⏎
d1282<P>⏎
cd2:1283-284 と験者の阿闍梨に言ふ。<BR>⏎
<P>⏎
197 と験者の阿闍梨に言ふ。<BR>⏎
d1286<P>⏎
d1288<P>⏎
text53289 <A NAME="in15">[第五段 若い女生き返るが、死を望む]</A><BR>200 
d1290<P>⏎
d1292<P>⏎
d1294<P>⏎
d1296<P>⏎
d1298<P>⏎
d1300<P>⏎
d1302<P>⏎
d1304<P>⏎
d1306<P>⏎
cd2:1307-308 「あな心憂や。いみじく悲しと思ふ人の代はりに、仏の導きたまへると思ひきこゆるを。かひなくなりたまはば、なかなかなることをや思はむ。さるべき契りにてこそ、かく見たてまつらめ。なほいささかもののたまへ」<BR>⏎
<P>⏎
209 「あな心憂や。いみじく悲しと思ふ人の代はりに、仏の導きたまへると思ひきこゆるを。かひなくなりたまはば、なかなかなることをや思はむ。さるべき契りにてこそ、かく見たてまつらめ。なほいささかもののたまへ」<BR>⏎
d1310<P>⏎
d1312<P>⏎
cd4:2313-316 と息の下に言ふ。<BR>⏎
<P>⏎
 「まれまれ物のたまふをうれしと思ふに、あないみじや。いかなればかくはのたまふぞ。いかにしてさる所にはおはしつるぞ」<BR>⏎
<P>⏎
212-213 と息の下に言ふ。<BR>⏎
 「まれまれ物のたまふをうれしと思ふに、あないみじや。いかなればかくはのたまふぞ。いかにしてさる所にはおはしつるぞ」<BR>⏎
d1318<P>⏎
text53319 <A NAME="in16">[第六段 宇治の里人、僧都に葬送のことを語る]</A><BR>215 
d1320<P>⏎
d1322<P>⏎
d1324<P>⏎
d1326<P>⏎
d1328<P>⏎
d1330<P>⏎
d1332<P>⏎
d1334<P>⏎
d1336<P>⏎
d1338<P>⏎
text53339 <A NAME="in17">[第七段 尼君ら一行、小野に帰る]</A><BR>225 
d1340<P>⏎
d1342<P>⏎
d1344<P>⏎
d1346<P>⏎
d1348<P>⏎
d1350<P>⏎
d1352<P>⏎
d1354<P>⏎
cd2:1355-356 「かかる人なむ率て来たる」など、法師のあたりにはよからぬことなれば、見ざりし人にはまねばず。尼君も、皆口固めさせつつ、「もし尋ね来る人もやある」と思ふも、静心なし。「いかでさる田舎人の住むあたりに、かかる人落ちあふれけむ。物詣でなどしたりける人の、心地などわづらひけむを、継母などやうの人の、たばかりて置かせたるにや」などぞ思ひ寄りける。<BR>⏎
<P>⏎
233 「かかる人なむ率て来たる」など、法師のあたりにはよからぬことなれば、見ざりし人にはまねばず。尼君も、皆口固めさせつつ、「もし尋ね来る人もやある」と思ふも、静心なし。「いかでさる田舎人の住むあたりに、かかる人落ちあふれけむ。物詣でなどしたりける人の、心地などわづらひけむを、継母などやうの人の、たばかりて置かせたるにや」などぞ思ひ寄りける。<BR>⏎
d1358<P>⏎
text53359 <H4>第二章 浮舟の物語 浮舟の小野山荘での生活</H4>235 
text53360 <A NAME="in21">[第一段 僧都、小野山荘へ下山]</A><BR>236 
d1361<P>⏎
cd2:1362-363 うちはへかく扱ふほどに、四五月も過ぎぬ。いとわびしうかひなきことを思ひわびて、僧都の御もとに、<BR>⏎
<P>⏎
237 うちはへかく扱ふほどに、四五月も過ぎぬ。いとわびしうかひなきことを思ひわびて、僧都の御もとに、<BR>⏎
d1365<P>⏎
cd2:1366-367 などいみじきことを書き続けて、奉りたまへれば、<BR>⏎
<P>⏎
239 などいみじきことを書き続けて、奉りたまへれば、<BR>⏎
d1369<P>⏎
cd2:1370-371 とて下りたまひけり。<BR>⏎
<P>⏎
241 とて下りたまひけり。<BR>⏎
d1373<P>⏎
d1375<P>⏎
cd2:1376-377 などおほなおほな泣く泣くのたまへば、<BR>⏎
<P>⏎
244 などおほなおほな泣く泣くのたまへば、<BR>⏎
d1379<P>⏎
cd4:2380-383 とてさしのぞきて見たまひて、<BR>⏎
<P>⏎
 「げにいと警策なりける人の御容面かな。功徳の報いにこそ、かかる容貌にも生ひ出でたまひけめ。いかなる違ひめにて、損はれたまひけむ。もしさにや、と聞き合はせらるることもなしや」<BR>⏎
<P>⏎
246-247 とてさしのぞきて見たまひて、<BR>⏎
 「げにいと警策なりける人の御容面かな。功徳の報いにこそ、かかる容貌にも生ひ出でたまひけめ。いかなる違ひめにて、損はれたまひけむ。もしさにや、と聞き合はせらるることもなしや」<BR>⏎
d1385<P>⏎
d1387<P>⏎
d1389<P>⏎
d1391<P>⏎
cd2:1392-393 などのたまふが、あやしがりたまひて、修法始めたり。<BR>⏎
<P>⏎
252 などのたまふが、あやしがりたまひて、修法始めたり。<BR>⏎
text53394 <A NAME="in22">[第二段 もののけ出現]</A><BR>253 
d1395<P>⏎
d1397<P>⏎
cd2:1398-399 「いであなかま。大徳たち。われ無慚の法師にて、忌むことの中に、破る戒は多からめど、女の筋につけて、まだ誹りとらず、過つことなし。六十に余りて、今さらに人のもどき負はむは、さるべきにこそはあらめ」<BR>⏎
<P>⏎
255 「いであなかま。大徳たち。われ無慚の法師にて、忌むことの中に、破る戒は多からめど、女の筋につけて、まだ誹りとらず、過つことなし。六十に余りて、今さらに人のもどき負はむは、さるべきにこそはあらめ」<BR>⏎
d1401<P>⏎
d1403<P>⏎
cd2:1404-405 と心よからず思ひて言ふ。<BR>⏎
<P>⏎
258 と心よからず思ひて言ふ。<BR>⏎
d1407<P>⏎
cd4:2408-411 といみじきことどもを誓ひたまひて、夜一夜加持したまへる暁に、人に駆り移して、「何やうのもの、かく人を惑はしたるぞ」と、ありさまばかり言はせまほしうて、弟子の阿闍梨、とりどりに加持したまふ。月ごろ、いささかも現はれざりつるもののけ、調ぜられて、<BR>⏎
<P>⏎
 「おのれは、ここまで参うで来て、かく調ぜられたてまつるべき身にもあらず。昔は行ひせし法師の、いささかなる世に恨みをとどめて、漂ひありきしほどに、よき女のあまた住みたまひし所に住みつきて、かたへは失ひてしに、この人は、心と世を恨みたまひて、我いかで死なむ、と言ふことを、夜昼のたまひしにたよりを得て、いと暗き夜、独りものしたまひしを取りてしなり。されど観音とざまかうざまにはぐくみたまひければ、この僧都に負けたてまつりぬ。今は、まかりなむ」<BR>⏎
<P>⏎
260-261 といみじきことどもを誓ひたまひて、夜一夜加持したまへる暁に、人に駆り移して、「何やうのもの、かく人を惑はしたるぞ」と、ありさまばかり言はせまほしうて、弟子の阿闍梨、とりどりに加持したまふ。月ごろ、いささかも現はれざりつるもののけ、調ぜられて、<BR>⏎
 「おのれは、ここまで参うで来て、かく調ぜられたてまつるべき身にもあらず。昔は行ひせし法師の、いささかなる世に恨みをとどめて、漂ひありきしほどに、よき女のあまた住みたまひし所に住みつきて、かたへは失ひてしに、この人は、心と世を恨みたまひて、我いかで死なむ、と言ふことを、夜昼のたまひしにたよりを得て、いと暗き夜、独りものしたまひしを取りてしなり。されど観音とざまかうざまにはぐくみたまひければ、この僧都に負けたてまつりぬ。今は、まかりなむ」<BR>⏎
d1413<P>⏎
d1415<P>⏎
d1417<P>⏎
text53418 <A NAME="in23">[第三段 浮舟、意識を回復]</A><BR>265 
d1419<P>⏎
cd4:2420-423 正身の心地はさはやかに、いささかものおぼえて<A HREF="#k07">見回し</A><A NAME="t07">た</A>れば、一人見し人の顔はなくて、皆老法師ゆがみ衰へたる者のみ多かれば、知らぬ国に来にける心地して、いと悲し。<BR>⏎
<P>⏎
 ありし世のこと思ひ出づれど、住みけむ所、誰れと言ひし人とだに、たしかにはかばかしうもおぼえず。ただ<BR>⏎
<P>⏎
266-267 正身の心地はさはやかに、いささかものおぼえて<A HREF="#k07">見回し</A><A NAME="t07">た</A>れば、一人見し人の顔はなくて、皆老法師ゆがみ衰へたる者のみ多かれば、知らぬ国に来にける心地して、いと悲し。<BR>⏎
 ありし世のこと思ひ出づれど、住みけむ所、誰れと言ひし人とだに、たしかにはかばかしうもおぼえず。ただ<BR>⏎
d1425<P>⏎
d1427<P>⏎
d1429<P>⏎
d1431<P>⏎
text53432 <A NAME="in24">[第四段 浮舟、五戒を受く]</A><BR>272 
d1433<P>⏎
cd4:2434-437 「<A HREF="#k08">いかなれば</A><A NAME="t08"></A>かく頼もしげなくのみはおはするぞ。うちはへぬるみなどしたまへることは冷めたまひて、さはやかに見えたまへば、うれしう思ひきこゆるを」<BR>⏎
<P>⏎
 と泣く泣く、たゆむ折なく添ひゐて扱ひきこえたまふ。ある人びとも、あたらしき御さま容貌を見れば、心を尽くしてぞ惜しみまもりける。心には、「なほいかで死なむ」とぞ思ひわたりたまへど、さばかりにて、生き止まりたる人の命なれば、いと執念くて、やうやう頭もたげたまへば、もの参りなどしたまふにぞ、なかなか面痩せもていく。いつしかとうれしう思ひきこゆるに、<BR>⏎
<P>⏎
273-274 「<A HREF="#k08">いかなれば</A><A NAME="t08"></A>かく頼もしげなくのみはおはするぞ。うちはへぬるみなどしたまへることは冷めたまひて、さはやかに見えたまへば、うれしう思ひきこゆるを」<BR>⏎
 と泣く泣く、たゆむ折なく添ひゐて扱ひきこえたまふ。ある人びとも、あたらしき御さま容貌を見れば、心を尽くしてぞ惜しみまもりける。心には、「なほいかで死なむ」とぞ思ひわたりたまへど、さばかりにて、生き止まりたる人の命なれば、いと執念くて、やうやう頭もたげたまへば、もの参りなどしたまふにぞ、なかなか面痩せもていく。いつしかとうれしう思ひきこゆるに、<BR>⏎
d1439<P>⏎
d1441<P>⏎
cd4:2442-445 「いとほしげなる御さまを。いかでかさはなしたてまつらむ」<BR>⏎
<P>⏎
 とてただ頂ばかりを削ぎ、五戒ばかりを受けさせたてまつる。心もとなけれど、もとよりおれおれしき人の心にて、えさかしく強ひてものたまはず。僧都は、<BR>⏎
<P>⏎
277-278 「いとほしげなる御さまを。いかでかさはなしたてまつらむ」<BR>⏎
 とてただ頂ばかりを削ぎ、五戒ばかりを受けさせたてまつる。心もとなけれど、もとよりおれおれしき人の心にて、えさかしく強ひてものたまはず。僧都は、<BR>⏎
d1447<P>⏎
d1449<P>⏎
text53450 <A NAME="in25">[第五段 浮舟、素性を隠す]</A><BR>281 
d1451<P>⏎
d1453<P>⏎
cd8:4454-461 「などかいと心憂く、かばかりいみじく思ひきこゆるに、御心を立てては見えたまふ。いづくに誰れと聞こえし人の、さる所にはいかでおはせしぞ」<BR>⏎
<P>⏎
 とせめて問ふを、いと恥づかしと思ひて、<BR>⏎
<P>⏎
 「あやしかりしほどに、皆忘れたるにやあらむ、ありけむさまなどもさらにおぼえはべらず。ただほのかに思ひ出づることとては、ただいかでこの世にあらじと思ひつつ、夕暮ごとに端近くて眺めしほどに、前近く大きなる木のありし下より、人の出で来て、率て行く心地なむせし。それより他のことは、我ながら、誰れともえ思ひ出でられはべらず」<BR>⏎
<P>⏎
 といとらうたげに言ひなして、<BR>⏎
<P>⏎
283-286 「などかいと心憂く、かばかりいみじく思ひきこゆるに、御心を立てては見えたまふ。いづくに誰れと聞こえし人の、さる所にはいかでおはせしぞ」<BR>⏎
 とせめて問ふを、いと恥づかしと思ひて、<BR>⏎
 「あやしかりしほどに、皆忘れたるにやあらむ、ありけむさまなどもさらにおぼえはべらず。ただほのかに思ひ出づることとては、ただいかでこの世にあらじと思ひつつ、夕暮ごとに端近くて眺めしほどに、前近く大きなる木のありし下より、人の出で来て、率て行く心地なむせし。それより他のことは、我ながら、誰れともえ思ひ出でられはべらず」<BR>⏎
 といとらうたげに言ひなして、<BR>⏎
d1463<P>⏎
d1465<P>⏎
text53466 <A NAME="in26">[第六段 小野山荘の風情]</A><BR>289 
d1467<P>⏎
cd4:2468-471 この主人もあてなる人なりけり。娘の尼君は、上達部の北の方にてありけるが、その人亡くなりたまひてのち、娘ただ一人をいみじくかしづきて、よき君達を婿にして思ひ扱ひけるを、その娘の君の亡くなりにければ、心憂しいみじ、と思ひ入りて、形をも変へ、かかる山里には住み始めたりけるなり。<BR>⏎
<P>⏎
 「世とともに恋ひわたる人の形見にも、思ひよそへつべからむ人をだに見出でてしがな」、つれづれも心細きままに思ひ嘆きけるを、かくおぼえぬ人の、容貌けはひもまさりざまなるを得たれば、うつつのことともおぼえず、あやしき心地しながら、うれしと思ふ。ねびにたれど、いときよげによしありて、ありさまもあてはかなり。<BR>⏎
<P>⏎
290-291 この主人もあてなる人なりけり。娘の尼君は、上達部の北の方にてありけるが、その人亡くなりたまひてのち、娘ただ一人をいみじくかしづきて、よき君達を婿にして思ひ扱ひけるを、その娘の君の亡くなりにければ、心憂しいみじ、と思ひ入りて、形をも変へ、かかる山里には住み始めたりけるなり。<BR>⏎
 「世とともに恋ひわたる人の形見にも、思ひよそへつべからむ人をだに見出でてしがな」、つれづれも心細きままに思ひ嘆きけるを、かくおぼえぬ人の、容貌けはひもまさりざまなるを得たれば、うつつのことともおぼえず、あやしき心地しながら、うれしと思ふ。ねびにたれど、いときよげによしありて、ありさまもあてはかなり。<BR>⏎
d1473<P>⏎
d1475<P>⏎
text53476 <A NAME="in27">[第七段 浮舟、手習して述懐]</A><BR>294 
d1477<P>⏎
d1479<P>⏎
d1481<P>⏎
d1483<P>⏎
cd3:1484-486 「身を投げし涙の川の早き瀬を<BR>⏎
  しがらみかけて誰れか止めし」<BR>⏎
<P>⏎
298 「身を投げし涙の川の早き瀬を<BR>  しがらみかけて誰れか止めし」<BR>⏎
d1488<P>⏎
d1490<P>⏎
cd7:3491-497 「我かくて憂き世の中にめぐるとも<BR>⏎
  誰れかは知らむ月の都に」<BR>⏎
<P>⏎
 今は限りと思ひしほどは、恋しき人多かりしかど、こと人びとはさしも思ひ出でられず、ただ<BR>⏎
<P
>⏎
 「親いかに惑ひたまひけむ。乳母、よろづに、いかで人なみなみになさむと思ひ焦られしを、いかにあへなき心地しけむ。いづくにあらむ。我世にあるものとはいかでか知らむ」<BR>⏎
<P>⏎
301-303 「我かくて憂き世の中にめぐるとも<BR>  誰れかは知らむ月の都に」<BR>⏎
 今は限りと思ひしほどは、恋しき人多かりしかど、こと人びとはさしも思ひ出でられず、ただ<BR>⏎
 「親いかに惑ひたまひけむ。乳母、よろづに、いかで人なみなみになさむと思ひ焦られしを、いかにあへなき心地しけむ。いづくにあらむ。我世にあるものとはいかでか知らむ」<BR>⏎
d1499<P>⏎
text53500 <A NAME="in28">[第八段 浮舟の日常生活]</A><BR>305 
d1501<P>⏎
cd2:1502-503 若き人の、かかる<A HREF="#no2">山里に、今はと思ひ絶え籠もる</A><A NAME="te2">は</A>、難きわざなりければ、ただいたく年経にける尼、七八人ぞ、常の人にてはありける。それらが娘孫やうの者ども、京に宮仕へするも、異ざまにてあるも、時々ぞ来通ひける。<BR>⏎
<P>⏎
306 若き人の、かかる<A HREF="#no2">山里に、今はと思ひ絶え籠もる</A><A NAME="te2">は</A>、難きわざなりければ、ただいたく年経にける尼、七八人ぞ、常の人にてはありける。それらが娘孫やうの者ども、京に宮仕へするも、異ざまにてあるも、時々ぞ来通ひける。<BR>⏎
d1505<P>⏎
cd2:1506-507 など思ひやり世づかずあやしかるべきを思へば、かかる人びとに、かけても見えず。ただ侍従、こもきとて、尼君のわが人にしたりける二人をのみぞ、この御方に言ひ分けたりける。みめも心ざまも、昔見し<A HREF="#no3">都鳥</A><A NAME="te3">に</A>似たるはなし。何事につけても、「<A HREF="#no4">世の中にあらぬ所</A><A NAME="te4">は</A>これにや」とぞ、かつは思ひなされける。<BR>⏎
<P>⏎
308 など思ひやり世づかずあやしかるべきを思へば、かかる人びとに、かけても見えず。ただ侍従、こもきとて、尼君のわが人にしたりける二人をのみぞ、この御方に言ひ分けたりける。みめも心ざまも、昔見し<A HREF="#no3">都鳥</A><A NAME="te3">に</A>似たるはなし。何事につけても、「<A HREF="#no4">世の中にあらぬ所</A><A NAME="te4">は</A>これにや」とぞ、かつは思ひなされける。<BR>⏎
d1509<P>⏎
text53510 <H4>第三章 浮舟の物語 中将、浮舟に和歌を贈る</H4>310 
text53511 <A NAME="in31">[第一段 尼君の亡き娘の婿君、山荘を訪問]</A><BR>311 
d1512<P>⏎
d1514<P>⏎
d1516<P>⏎
cd2:1517-518 これもいと心細き住まひのつれづれなれど、住みつきたる人びとは、ものきよげにをかしうしなして、垣ほに植ゑたる撫子もおもしろく、女郎花、桔梗など咲き始めたるに、色々の狩衣姿の男どもの若きあまたして、君も同じ装束にて、南面に呼び据ゑたれば、うち眺めてゐたり。年二十七八のほどにて、ねびととのひ、心地なからぬさまもてつけたり。<BR>⏎
<P>⏎
314 これもいと心細き住まひのつれづれなれど、住みつきたる人びとは、ものきよげにをかしうしなして、垣ほに植ゑたる撫子もおもしろく、女郎花、桔梗など咲き始めたるに、色々の狩衣姿の男どもの若きあまたして、君も同じ装束にて、南面に呼び据ゑたれば、うち眺めてゐたり。年二十七八のほどにて、ねびととのひ、心地なからぬさまもてつけたり。<BR>⏎
d1520<P>⏎
d1522<P>⏎
d1524<P>⏎
d1526<P>⏎
d1528<P>⏎
d1530<P>⏎
d1532<P>⏎
text53533 <A NAME="in32">[第二段 浮舟の思い]</A><BR>322 
d1534<P>⏎
d1536<P>⏎
cd4:2537-540 「言ふかひなくなりにし人よりも、この君の御心ばへなどの、いと思ふやうなりしを、よそのものに思ひなしたるなむ、いと悲しき。など忘れ形見をだに留めたまはずなりにけむ」<BR>⏎
<P>⏎
 と恋ひ偲ぶ心なりければ、たまさかにかくものしたまへるにつけても、珍しくあはれにおぼゆべかめる問はず語りもし出でつべし。<BR>⏎
<P>⏎
324-325 「言ふかひなくなりにし人よりも、この君の御心ばへなどの、いと思ふやうなりしを、よそのものに思ひなしたるなむ、いと悲しき。など忘れ形見をだに留めたまはずなりにけむ」<BR>⏎
 と恋ひ偲ぶ心なりければ、たまさかにかくものしたまへるにつけても、珍しくあはれにおぼゆべかめる問はず語りもし出でつべし。<BR>⏎
d1542<P>⏎
d1544<P>⏎
d1546<P>⏎
cd2:1547-548 「あないみじや。世にありて、いかにもいかにも、人に見えむこそ。それにつけてぞ昔のこと思ひ出でらるべき。さやうの筋は、思ひ絶えて忘れなむ」と思ふ。<BR>⏎
<P>⏎
329 「あないみじや。世にありて、いかにもいかにも、人に見えむこそ。それにつけてぞ昔のこと思ひ出でらるべき。さやうの筋は、思ひ絶えて忘れなむ」と思ふ。<BR>⏎
text53549 <A NAME="in33">[第三段 中将、浮舟を垣間見る]</A><BR>330 
d1550<P>⏎
d1552<P>⏎
d1554<P>⏎
d1556<P>⏎
d1558<P>⏎
d1560<P>⏎
d1562<P>⏎
cd2:1563-564 と言ふ。「かかることこそはありけれ」とをかしくて、「何人ならむ。げにいとをかしかりつ」と、ほのかなりつるを、なかなか思ひ出づ。こまかに問へど、そのままにも言はず、<BR>⏎
<P>⏎
337 と言ふ。「かかることこそはありけれ」とをかしくて、「何人ならむ。げにいとをかしかりつ」と、ほのかなりつるを、なかなか思ひ出づ。こまかに問へど、そのままにも言はず、<BR>⏎
d1566<P>⏎
d1568<P>⏎
d1570<P>⏎
d1572<P>⏎
text53573 <A NAME="in34">[第四段 中将、横川の僧都と語る]</A><BR>342 
d1574<P>⏎
d1576<P>⏎
d1578<P>⏎
cd2:1579-580 など古代の人どもは、ものめでをしあへり。<BR>⏎
<P>⏎
345 など古代の人どもは、ものめでをしあへり。<BR>⏎
d1582<P>⏎
d1584<P>⏎
cd4:2585-588 と尼君ものたまひて、<BR>⏎
<P>⏎
 「心憂く、ものをのみ思し隔てたるなむ、いとつらき。今は、なほさるべきなめりと思しなして、晴れ晴れしくもてなしたまへ。この五年、六年、時の間も忘れず、恋しく悲しと思ひつる人の上も、かく見たてまつりて後よりは、こよなく思ひ忘られにてはべる。思ひきこえたまふべき人びと世におはすとも、今は世に亡きものにこそ、やうやう思しなりぬらめ。よろづのこと、さし当たりたるやうには、えしもあらぬわざになむ」<BR>⏎
<P>⏎
348-349 と尼君ものたまひて、<BR>⏎
 「心憂く、ものをのみ思し隔てたるなむ、いとつらき。今は、なほさるべきなめりと思しなして、晴れ晴れしくもてなしたまへ。この五年、六年、時の間も忘れず、恋しく悲しと思ひつる人の上も、かく見たてまつりて後よりは、こよなく思ひ忘られにてはべる。思ひきこえたまふべき人びと世におはすとも、今は世に亡きものにこそ、やうやう思しなりぬらめ。よろづのこと、さし当たりたるやうには、えしもあらぬわざになむ」<BR>⏎
d1590<P>⏎
d1592<P>⏎
cd2:1593-594 とのたまふさまも、げに何心なくうつくしく、うち笑みてぞまもりゐたまへる。<BR>⏎
<P>⏎
352 とのたまふさまも、げに何心なくうつくしく、うち笑みてぞまもりゐたまへる。<BR>⏎
d1596<P>⏎
d1598<P>⏎
d1600<P>⏎
cd2:1601-602 「風の吹き開けたりつる隙より、髪いと長くをかしげなる人こそ見えつれ。あらはなりとや思ひつらむ、立ちてあなたに入りつるうしろで、なべての人とは見えざりつ。さやうの所に、よき女は置きたるまじきものにこそあめれ。明け暮れ見るものは法師なり。おのづから目馴れておぼゆらむ。不便なることぞかし」<BR>⏎
<P>⏎
356 「風の吹き開けたりつる隙より、髪いと長く をかしげなる人こそ見えつれ。あらはなりとや思ひつらむ、立ちてあなたに入りつるうしろで、なべての人とは見えざりつ。さやうの所に、よき女は置きたるまじきものにこそあめれ。明け暮れ見るものは法師なり。おのづから目馴れておぼゆらむ。不便なることぞかし」<BR>⏎
d1604<P>⏎
d1606<P>⏎
cd2:1607-608 とて見ぬことなれば、こまかには言はず。<BR>⏎
<P>⏎
359 とて見ぬことなれば、こまかには言はず。<BR>⏎
d1610<P>⏎
d1612<P>⏎
text53613 <A NAME="in35">[第五段 中将、帰途に浮舟に和歌を贈る]</A><BR>362 
d1614<P>⏎
d1616<P>⏎
d1618<P>⏎
d1620<P>⏎
d1622<P>⏎
d1624<P>⏎
cd4:2625-628 「うちつけ心ありて参り来むにだに、山深き道のかことは聞こえつべし。まして思しよそふらむ方につけては、ことことに隔てたまふまじきことにこそは。いかなる筋に世を恨みたまふ人にか。慰めきこえばや」<BR>⏎
<P>⏎
 などゆかしげにのたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
368-369 「うちつけ心ありて参り来むにだに、山深き道のかことは聞こえつべし。まして思しよそふらむ方につけては、ことことに隔てたまふまじきことにこそは。いかなる筋に世を恨みたまふ人にか。慰めきこえばや」<BR>⏎
 などゆかしげにのたまふ。<BR>⏎
d1630<P>⏎
cd3:1631-633 「あだし野の風になびくな女郎花<BR>⏎
  我しめ結はむ道遠くとも」<BR>⏎
<P>⏎
371 「あだし野の風になびくな女郎花<BR>  我しめ結はむ道遠くとも」<BR>⏎
d1635<P>⏎
d1637<P>⏎
d1639<P>⏎
d1641<P>⏎
cd2:1642-643 とてさらに聞きたまはねば、<BR>⏎
<P>⏎
376 とてさらに聞きたまはねば、<BR>⏎
d1645<P>⏎
cd2:1646-647 とて尼君、<BR>⏎
<P>⏎
378 とて尼君、<BR>⏎
d1649<P>⏎
cd5:2650-654  <A HREF="#no8">移し植ゑて</A><A NAME="te8">思</A>ひ乱れぬ女郎花<BR>⏎
  憂き世を背く草の庵に」<BR>⏎
<P>⏎
 とあり。「こたみはさもありぬべし」と、思ひ許して帰りぬ。<BR>⏎
<P>⏎
380-381  <A HREF="#no8">移し植ゑて</A><A NAME="te8">思</A>ひ乱れぬ女郎花<BR>  憂き世を背く草の庵に」<BR>⏎
 とあり。「こたみはさもありぬべし」と、思ひ許して帰りぬ。<BR>⏎
text53655 <A NAME="in36">[第六段 中将、三度山荘を訪問]</A><BR>382 
d1656<P>⏎
cd2:1657-658 文などわざとやらむは、さすがにうひうひしう、ほのかに見しさまは忘れず、もの思ふらむ筋何ごとと知らねど、あはれなれば、八月十余日のほどに、小鷹狩のついでにおはしたり。例の、尼呼び出でて、<BR>⏎
<P>⏎
383 文などわざとやらむは、さすがにうひうひしう、ほのかに見しさまは忘れず、もの思ふらむ筋何ごとと知らねど、あはれなれば、八月十余日のほどに、小鷹狩のついでにおはしたり。例の、尼呼び出でて、<BR>⏎
d1660<P>⏎
d1662<P>⏎
d1664<P>⏎
d1666<P>⏎
d1668<P>⏎
cd2:1669-670 などいと心とどめたるさまに語らひたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
389 などいと心とどめたるさまに語らひたまふ。<BR>⏎
d1672<P>⏎
cd6:3673-678 と親がりて言ふ。入りても、<BR>⏎
<P>⏎
 「情けなし。なほいささかにても聞こえたまへ。かかる御住まひは、すずろなることも、あはれ知るこそ世の常のことなれ」<BR>⏎
<P>⏎
 などこしらへても言へど、<BR>⏎
<P>⏎
391-393 と親がりて言ふ。入りても、<BR>⏎
 「情けなし。なほいささかにても聞こえたまへ。かかる御住まひは、すずろなることも、あはれ知るこそ世の常のことなれ」<BR>⏎
 などこしらへても言へど、<BR>⏎
d1680<P>⏎
cd2:1681-682 といとつれなくて臥したまへり。<BR>⏎
<P>⏎
395 といとつれなくて臥したまへり。<BR>⏎
d1684<P>⏎
cd16:7685-700 「いづら。あな心憂。秋を契れるは、すかしたまふにこそありけれ」<BR>⏎
<P>⏎
 など恨みつつ、<BR>⏎
<P>⏎
 「松虫の声を訪ねて来つれども<BR>⏎
  また萩原の露に惑ひぬ」<BR>⏎
<P>⏎
 「あないとほし。これをだに」<BR>⏎
<P>⏎
 など責むれば、さやうに世づいたらむこと言ひ出でむもいと心憂く、また言ひそめては、かやうの折々に責められむも、むつかしうおぼゆれば、いらへをだにしたまはねば、あまりいふかひなく思ひあへり。尼君、早うは今めきたる人にぞありける名残なるべし。<BR>⏎
<P>⏎
 「秋の野の露分け来たる狩衣<BR>⏎
  葎茂れる宿にかこつな<BR>⏎
<P>⏎
 となむわづらはしがりきこえたまふめる」<BR>⏎
<P>⏎
397-403 「いづら。あな心憂。秋を契れるは、すかしたまふにこそありけれ」<BR>⏎
 など恨みつつ、<BR>⏎
 「松虫の声を訪ねて来つれども<BR>  また萩原の露に惑ひぬ」<BR>⏎
 「あないとほし。これをだに」<BR>⏎
 など責むれば、さやうに世づいたらむこと言ひ出でむもいと心憂く、また言ひそめては、かやうの折々に責められむも、むつかしうおぼゆれば、いらへをだにしたまはねば、あまりいふかひなく思ひあへり。尼君、早うは今めきたる人にぞありける名残なるべし。<BR>⏎
 「秋の野の露分け来たる狩衣<BR>  葎茂れる宿にかこつな<BR>⏎
 となむわづらはしがりきこえたまふめる」<BR>⏎
d1702<P>⏎
cd4:2703-706 「かくはかなきついでにも、うち語らひきこえたまはむに、心より外に、よにうしろめたくは見えたまはぬものを。世の常なる筋には思しかけずとも、情けなからぬほどに、御いらへばかりは聞こえたまへかし」<BR>⏎
<P>⏎
 などひき動かしつべく言ふ。<BR>⏎
<P>⏎
405-406 「かくはかなきついでにも、うち語らひきこえたまはむに、心より外に、よにうしろめたくは見えたまはぬものを。世の常なる筋には思しかけずとも、情けなからぬほどに、御いらへばかりは聞こえたまへかし」<BR>⏎
 などひき動かしつべく言ふ。<BR>⏎
text53707 <A NAME="in37">[第七段 尼君、中将を引き留める]</A><BR>407 
d1708<P>⏎
d1710<P>⏎
d1712<P>⏎
d1714<P>⏎
d1716<P>⏎
d1718<P>⏎
d1720<P>⏎
cd6:3721-726 と恨めしげにて出でなむとするに、尼君、<BR>⏎
<P>⏎
 「など<A HREF="#no13">あたら夜を</A><A NAME="te13">御</A>覧じさしつる」<BR>⏎
<P>⏎
 とてゐざり出でたまへり。<BR>⏎
<P>⏎
414-416 と恨めしげにて出でなむとするに、尼君、<BR>⏎
 「など<A HREF="#no13">あたら夜を</A><A NAME="te13">御</A>覧じさしつる」<BR>⏎
 とてゐざり出でたまへり。<BR>⏎
d1728<P>⏎
d1730<P>⏎
cd7:3731-737 「深き夜の月をあはれと見ぬ人や<BR>⏎
  山の端近き宿に泊らぬ」<BR>⏎
<P>⏎
 となまかたはなることを、<BR>⏎
<P>⏎
 「かくなむ聞こえたまふ」<BR>⏎
<P>⏎
419-421 「深き夜の月をあはれと見ぬ人や<BR>  山の端近き宿に泊らぬ」<BR>⏎
 となまかたはなることを、<BR>⏎
 「かくなむ聞こえたまふ」<BR>⏎
d1739<P>⏎
cd3:1740-742 「山の端に入るまで月を眺め見む<BR>⏎
  閨の板間もしるしありやと」<BR>⏎
<P>⏎
423 「山の端に入るまで月を眺め見む<BR>  閨の板間もしるしありやと」<BR>⏎
d1744<P>⏎
d1746<P>⏎
cd2:1747-748 「いでその琴の琴弾きたまへ。横笛は、月にはいとをかしきものぞかし。いづら御達。琴とりて参れ」<BR>⏎
<P>⏎
426 「いでその琴の琴弾きたまへ。横笛は、月にはいとをかしきものぞかし。いづら御達。琴とりて参れ」<BR>⏎
d1750<P>⏎
cd2:1751-752 「いづらさらば」<BR>⏎
<P>⏎
428 「いづらさらば」<BR>⏎
d1754<P>⏎
d1756<P>⏎
cd2:1757-758 「昔聞きはべりしよりも、こよなくおぼえはべるは、山風をのみ聞き馴れはべりにける耳からにや」とて、「いでやこれもひがことになりてはべらむ」<BR>⏎
<P>⏎
431 「昔聞きはべりしよりも、こよなくおぼえはべるは、山風をのみ聞き馴れはべりにける耳からにや」とて、「いでやこれもひがことになりてはべらむ」<BR>⏎
d1760<P>⏎
text53761 <A NAME="in38">[第八段 母尼君、琴を弾く]</A><BR>433 
d1762<P>⏎
cd2:1763-764 「女は、昔は、東琴をこそは、こともなく<A HREF="#k16">弾きはべりしか</A><A NAME="t16">ど</A>、今の世には、変はりにたるにやあらむ。この僧都の『聞きにくし。念仏より他のあだわざなせそ』とはしたなめられしかば、何かは、とて弾きはべらぬなり。さるはいとよく鳴る琴もはべり」<BR>⏎
<P>⏎
434 「女は、昔は、東琴をこそは、こともなく<A HREF="#k16">弾きはべりしか</A><A NAME="t16">ど</A>、今の世には、変はりにたるにやあらむ。この僧都の『聞きにくし。念仏より他のあだわざなせそ』とはしたなめられしかば、何かは、とて弾きはべらぬなり。さるはいとよく鳴る琴もはべり」<BR>⏎
d1766<P>⏎
d1768<P>⏎
d1770<P>⏎
cd2:1771-772 「いで主殿のくそ、東取りて」<BR>⏎
<P>⏎
438 「いで主殿のくそ、東取りて」<BR>⏎
d1774<P>⏎
cd4:2775-778 「たけふちちりちちり、たりたむな」<BR>⏎
<P>⏎
 など掻き返し、はやりかに弾きたる、言葉ども、わりなく古めきたり。<BR>⏎
<P>⏎
440-441 「たけふちちりちちり、たりたむな」<BR>⏎
 など掻き返し、はやりかに弾きたる、言葉ども、わりなく古めきたり。<BR>⏎
d1780<P>⏎
d1782<P>⏎
cd4:2783-786 「今様の若き人は、かやうなることをぞ好まれざりける。ここに月ごろものしたまふめる姫君、容貌いとけうらにものしたまふめれど、もはらかやうなるあだわざなどしたまはず、埋れてなむ、ものしたまふめる」<BR>⏎
<P>⏎
 と我かしこにうちあざ笑ひて語るを、尼君などは、かたはらいたしと思す。<BR>⏎
<P>⏎
444-445 「今様の若き人は、かやうなることをぞ好まれざりける。ここに月ごろものしたまふめる姫君、容貌いとけうらにものしたまふめれど、もはらかやうなるあだわざなどしたまはず、埋れてなむ、ものしたまふめる」<BR>⏎
 と我かしこにうちあざ笑ひて語るを、尼君などは、かたはらいたしと思す。<BR>⏎
text53787 <A NAME="in39">[第九段 翌朝、中将から和歌が贈られる]</A><BR>446 
d1788<P>⏎
d1790<P>⏎
d1792<P>⏎
cd5:2793-797  忘られぬ昔のことも笛竹の<BR>⏎
  つらきふしにも音ぞ泣かれける<BR>⏎
<P>⏎
 なほすこし思し知るばかり教へなさせたまへ。忍ばれぬべくは、好き好きしきまでも、何かは」<BR>⏎
<P>⏎
449-450  忘られぬ昔のことも笛竹の<BR>  つらきふしにも音ぞ泣かれける<BR>⏎
 なほすこし思し知るばかり教へなさせたまへ。忍ばれぬべくは、好き好きしきまでも、何かは」<BR>⏎
d1799<P>⏎
cd3:1800-802 「笛の音に昔のことも偲ばれて<BR>⏎
  帰りしほども袖ぞ濡れにし<BR>⏎
<P>⏎
452 「笛の音に昔のことも偲ばれて<BR>  帰りしほども袖ぞ濡れにし<BR>⏎
d1804<P>⏎
d1806<P>⏎
d1808<P>⏎
cd4:2809-812 「なほかかる筋のこと、人にも思ひ放たすべきさまに、疾くなしたまひてよ」<BR>⏎
<P>⏎
 とて経習ひて読みたまふ。心の内にも念じたまへり。かくよろづにつけて世の中を思ひ捨つれば、「若き人とてをかしやかなることもことになく、結ぼほれたる本性なめり」と思ふ。容貌の見るかひあり、うつくしきに、よろづの咎見許して、明け暮れの見物にしたり。すこしうち笑ひたまふ折は、珍しくめでたきものに思へり。<BR>⏎
<P>⏎
456-457 「なほかかる筋のこと、人にも思ひ放たすべきさまに、疾くなしたまひてよ」<BR>⏎
 とて経習ひて読みたまふ。心の内にも念じたまへり。かくよろづにつけて世の中を思ひ捨つれば、「若き人とてをかしやかなることもことになく、結ぼほれたる本性なめり」と思ふ。容貌の見るかひあり、うつくしきに、よろづの咎見許して、明け暮れの見物にしたり。すこしうち笑ひたまふ折は、珍しくめでたきものに思へり。<BR>⏎
text53813 <H4>第四章 浮舟の物語 浮舟、尼君留守中に出家す</H4>458 
text53814 <A NAME="in41">[第一段 九月、尼君、再度初瀬に詣でる]</A><BR>459 
d1815<P>⏎
d1817<P>⏎
cd4:2818-821 「いざたまへ。人やは知らむとする。同じ仏なれど、さやうの所に行ひたるなむ、験ありてよき例多かる」<BR>⏎
<P>⏎
 と言ひてそそのかしたつれど、「昔母君乳母などの、かやうに言ひ知らせつつ、たびたび詣でさせしを、かひなきにこそあめれ。命さへ心にかなはず、たぐひなきいみじきめを見るは」と、いと心憂きうちにも、「知らぬ人に具して、さる道のありきをしたらむよ」と、そら恐ろしくおぼゆ。<BR>⏎
<P>⏎
461-462 「いざたまへ。人やは知らむとする。同じ仏なれど、さやうの所に行ひたるなむ、験ありてよき例多かる」<BR>⏎
 と言ひてそそのかしたつれど、「昔母君乳母などの、かやうに言ひ知らせつつ、たびたび詣でさせしを、かひなきにこそあめれ。命さへ心にかなはず、たぐひなきいみじきめを見るは」と、いと心憂きうちにも、「知らぬ人に具して、さる道のありきをしたらむよ」と、そら恐ろしくおぼゆ。<BR>⏎
d1823<P>⏎
d1825<P>⏎
d1827<P>⏎
cd3:1828-830 「はかなくて世に古川の憂き瀬には<BR>⏎
  尋ねも行かじ<A HREF="#no17">二本の杉</A><A NAME="te17">」</A><BR>⏎
<P>⏎
466 「はかなくて世に古川の憂き瀬には<BR>  尋ねも行かじ<A HREF="#no17">二本の杉</A><A NAME="te17">」</A><BR>⏎
d1832<P>⏎
d1834<P>⏎
cd7:3835-841 と戯れごとを言ひ当てたるに、胸つぶれて、面赤めたまへる、いと愛敬づきうつくしげなり。<BR>⏎
<P>⏎
 「古川の杉のもとだち知らねども<BR>⏎
  過ぎにし人によそへてぞ見る」<BR>⏎
<P>⏎
 ことなることなきいらへを口疾く言ふ。忍びてと言へど、皆人慕ひつつ、ここには人少なにておはせむを心苦しがりて、心ばせある少将の尼、左衛門とてある大人しき人、童ばかりぞ留めたりける。<BR>⏎
<P>⏎
469-471 と戯れごとを言ひ当てたるに、胸つぶれて、面赤めたまへる、いと愛敬づきうつくしげなり。<BR>⏎
 「古川の杉のもとだち知らねども<BR>  過ぎにし人によそへてぞ見る」<BR>⏎
 ことなることなきいらへを口疾く言ふ。忍びてと言へど、皆人慕ひつつ、ここには人少なにておはせむを心苦しがりて、心ばせある少将の尼、左衛門とてある大人しき人、童ばかりぞ留めたりける。<BR>⏎
text53842 <A NAME="in42">[第二段 浮舟、少将の尼と碁を打つ]</A><BR>472 
d1843<P>⏎
d1845<P>⏎
d1847<P>⏎
d1849<P>⏎
d1851<P>⏎
d1853<P>⏎
d1855<P>⏎
cd2:1856-857 「尼上疾う帰らせたまはなむ。この御碁見せたてまつらむ。かの御碁ぞ、いと強かりし。僧都の君、早うよりいみじう好ませたまひて、けしうはあらずと思したりしを、いと棋聖大徳になりて、『さし出でてこそ打たざらめ、御碁には負けじかし』と聞こえたまひしに、つひに僧都なむ二つ負けたまひし。棋聖が碁には勝らせたまふべきなめり。あないみじ」<BR>⏎
<P>⏎
479 「尼上疾う帰らせたまはなむ。この御碁見せたてまつらむ。かの御碁ぞ、いと強かりし。僧都の君、早うよりいみじう好ませたまひて、けしうはあらずと思したりしを、いと棋聖大徳になりて、『さし出でてこそ打たざらめ、御碁には負けじかし』と聞こえたまひしに、つひに僧都なむ二つ負けたまひし。棋聖が碁には勝らせたまふべきなめり。あないみじ」<BR>⏎
d1859<P>⏎
d1861<P>⏎
d1863<P>⏎
cd3:1864-866 「心には秋の夕べを分かねども<BR>⏎
  眺むる袖に露ぞ乱るる」<BR>⏎
<P>⏎
483 「心には秋の夕べを分かねども<BR>  眺むる袖に露ぞ乱るる」<BR>⏎
text53867 <A NAME="in43">[第三段 中将来訪、浮舟別室に逃げ込む]</A><BR>484 
d1868<P>⏎
cd4:2869-872 月さし出でてをかしきほどに、昼文ありつる中将おはしたり。「あなうたて。こはなにぞ」とおぼえたまへば、奥深く入りたまふを、<BR>⏎
<P>⏎
 「さもあまりにもおはしますものかな。御心ざしのほども、あはれまさる折にこそはべるめれ。ほのかにも聞こえたまはむことも聞かせたまへ。しみつかむことのやうに思し召したるこそ」<BR>⏎
<P>⏎
485-486 月さし出でてをかしきほどに、昼文ありつる中将おはしたり。「あなうたて。こはなにぞ」とおぼえたまへば、奥深く入りたまふを、<BR>⏎
 「さもあまりにもおはしますものかな。御心ざしのほども、あはれまさる折にこそはべるめれ。ほのかにも聞こえたまはむことも聞かせたまへ。しみつかむことのやうに思し召したるこそ」<BR>⏎
d1874<P>⏎
cd4:2875-878 「御声も聞きはべらじ。ただ気近くて聞こえむことを、聞きにくしともいかにとも、思しことわれ」<BR>⏎
<P>⏎
 とよろづに言ひわびて、<BR>⏎
<P>⏎
488-489 「御声も聞きはべらじ。ただ気近くて聞こえむことを、聞きにくしともいかにとも、思しことわれ」<BR>⏎
 とよろづに言ひわびて、<BR>⏎
d1880<P>⏎
cd5:2881-885 などあはめつつ、<BR>⏎
<P>⏎
 「山里の秋の夜深きあはれをも<BR>⏎
  もの思ふ人は思ひこそ知れ<BR>⏎
<P>⏎
491-492 などあはめつつ、<BR>⏎
 「山里の秋の夜深きあはれをも<BR>  もの思ふ人は思ひこそ知れ<BR>⏎
d1887<P>⏎
d1889<P>⏎
d1891<P>⏎
d1893<P>⏎
cd3:1894-896 「憂きものと思ひも知らで過ぐす身を<BR>⏎
  もの思ふ人と人は知りけり」<BR>⏎
<P>⏎
497 「憂きものと思ひも知らで過ぐす身を<BR>  もの思ふ人と人は知りけり」<BR>⏎
d1898<P>⏎
cd4:2899-902 「なほただいささか出でたまへ、と聞こえ動かせ」<BR>⏎
<P>⏎
 とこの人びとをわりなきまで恨みたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
499-500 「なほただいささか出でたまへ、と聞こえ動かせ」<BR>⏎
 とこの人びとをわりなきまで恨みたまふ。<BR>⏎
d1904<P>⏎
cd6:3905-910 とて入りて見れば、例はかりそめにもさしのぞきたまはぬ老い人の御方に入りたまひにけり。あさましう思ひて、「かくなむ」と<A HREF="#k19">聞こゆれば</A><A NAME="t19">、</A><BR>⏎
<P>⏎
 「かかる所に眺めたまふらむ心の内のあはれに、おほかたのありさまなども、情けなかるまじき人の、いとあまり思ひ知らぬ人よりも、けにもてなしたまふめるこそ。それ物懲りしたまへるか。なほいかなるさまに世を恨みて、いつまでおはすべき人ぞ」<BR>⏎
<P>⏎
 などありさま問ひて、いとゆかしげにのみ思いたれど、こまかなることは、いかでかは言ひ聞かせむ。ただ<BR>⏎
<P>⏎
502-504 とて入りて見れば、例はかりそめにもさしのぞきたまはぬ老い人の御方に入りたまひにけり。あさましう思ひて、「かくなむ」と<A HREF="#k19">聞こゆれば</A><A NAME="t19">、</A><BR>⏎
 「かかる所に眺めたまふらむ心の内のあはれに、おほかたのありさまなども、情けなかるまじき人の、いとあまり思ひ知らぬ人よりも、けにもてなしたまふめるこそ。それ物懲りしたまへるか。なほいかなるさまに世を恨みて、いつまでおはすべき人ぞ」<BR>⏎
 などありさま問ひて、いとゆかしげにのみ思いたれど、こまかなることは、いかでかは言ひ聞かせむ。ただ<BR>⏎
d1912<P>⏎
d1914<P>⏎
text53915 <A NAME="in44">[第四段 老尼君たちのいびき]</A><BR>507 
d1916<P>⏎
d1918<P>⏎
cd2:1919-920 こもき供に率ておはしつれど、色めきて、このめづらしき男の艶だちゐたる方に帰り去にけり。「今や来る、今や来る」と待ちゐたまへれど、いとはかなき頼もし人なりや。中将、<A HREF="#k20">言ひ</A><A NAME="t20">わ</A>づらひて帰りにければ、<BR>⏎
<P>⏎
509 こもき供に率ておはしつれど、色めきて、このめづらしき男の艶だちゐたる方に帰り去にけり。「今や来る、今や来る」と待ちゐたまへれど、いとはかなき頼もし人なりや。中将、<A HREF="#k20">言ひ</A><A NAME="t20">わ</A>づらひて帰りにければ、<BR>⏎
d1922<P>⏎
d1924<P>⏎
d1926<P>⏎
cd4:2927-930 「あやし。これは誰れぞ」<BR>⏎
<P>⏎
 と執念げなる声にて見おこせたる、さらに「ただ今食ひてむとする」とぞおぼゆる。鬼の取りもて来けむほどは、物のおぼえざりければ、なかなか心やすし。「いかさまにせむ」とおぼゆるむつかしさにも、「いみじきさまにて生き返り、人になりて、またありしいろいろの憂きことを思ひ乱れ、むつかしとも恐ろしとも、ものを思ふよ。死なましかば、これよりも恐ろしげなる者の中にこそはあらましか」と思ひやらる。<BR>⏎
<P>⏎
513-514 「あやし。これは誰れぞ」<BR>⏎
 と執念げなる声にて見おこせたる、さらに「ただ今食ひてむとする」とぞおぼゆる。鬼の取りもて来けむほどは、物のおぼえざりければ、なかなか心やすし。「いかさまにせむ」とおぼゆるむつかしさにも、「いみじきさまにて生き返り、人になりて、またありしいろいろの憂きことを思ひ乱れ、むつかしとも恐ろしとも、ものを思ふよ。死なましかば、これよりも恐ろしげなる者の中にこそはあらましか」と思ひやらる。<BR>⏎
text53931 <A NAME="in45">[第五段 浮舟、悲運のわが身を思う]</A><BR>515 
d1932<P>⏎
d1934<P>⏎
cd4:2935-938 「いと心憂く、親と聞こえけむ人の御容貌も見たてまつらず、遥かなる東を返る返る年月をゆきて、たまさかに尋ね寄りて、うれし頼もしと思ひきこえし姉妹の御あたりをも、思はずにて絶え過ぎ、さる方に思ひ定めたまひし人につけて、やうやう身の憂さをも慰めつべききはめに、あさましうもてそこなひたる身を思ひもてゆけば、宮を、すこしもあはれと思ひきこえけむ心ぞ、いとけしからぬ。ただこの人の御ゆかりにさすらへぬるぞ」<BR>⏎
<P>⏎
 と思へば、「小島の色をためしに契りたまひしを、などてをかしと思ひきこえけむ」と、こよなく飽きにたる心地す。初めより、薄きながらものどやかにものしたまひし人は、この折かの折など、思ひ出づるぞこよなかりける。「かくてこそありけれ」と、聞きつけられたてまつらむ恥づかしさは、人よりまさりぬべし。さすがに、「この世には、ありし御さまを、よそながらだにいつか見むずる、とうち思ふ、なほ悪ろの心や。かくだに思はじ」など、心一つをかへさふ。<BR>⏎
<P>⏎
517-518 「いと心憂く、親と聞こえけむ人の御容貌も見たてまつらず、遥かなる東を返る返る年月をゆきて、たまさかに尋ね寄りて、うれし頼もしと思ひきこえし姉妹の御あたりをも、思はずにて絶え過ぎ、さる方に思ひ定めたまひし人につけて、やうやう身の憂さをも慰めつべききはめに、あさましうもてそこなひたる身を思ひもてゆけば、宮を、すこしもあはれと思ひきこえけむ心ぞ、いとけしからぬ。ただこの人の御ゆかりにさすらへぬるぞ」<BR>⏎
 と思へば、「小島の色をためしに契りたまひしを、などてをかしと思ひきこえけむ」と、こよなく飽きにたる心地す。初めより、薄きながらものどやかにものしたまひし人は、この折かの折など、思ひ出づるぞこよなかりける。「かくてこそありけれ」と、聞きつけられたてまつらむ恥づかしさは、人よりまさりぬべし。さすがに、「この世には、ありし御さまを、よそながらだにいつか見むずる、とうち思ふ、なほ悪ろの心や。かくだに思はじ」など、心一つをかへさふ。<BR>⏎
d1940<P>⏎
d1942<P>⏎
d1944<P>⏎
d1946<P>⏎
cd2:1947-948 とことなしびたまふを、しひて言ふもいとこちなし。<BR>⏎
<P>⏎
523 とことなしびたまふを、しひて言ふもいとこちなし。<BR>⏎
text53949 <A NAME="in46">[第六段 僧都、宮中へ行く途中に立ち寄る]</A><BR>524 
d1950<P>⏎
d1952<P>⏎
d1954<P>⏎
d1956<P>⏎
d1958<P>⏎
cd4:2959-962 「一品の宮の、御もののけに悩ませたまひける、山の座主、御修法仕まつらせたまへど、なほ僧都参らせたまはでは験なしとて、昨日、二度なむ召しはべりし。右大臣殿の四位少将、昨夜、夜更けてなむ登りおはしまして、后の宮の御文などはべりければ、下りさせたまふなり」<BR>⏎
<P>⏎
 などいとはなやかに言ひなす。「恥づかしうとも、会ひて、尼になしたまひてよ、と言はむ。さかしら人少なくて、よき折にこそ」と思へば、起きて、<BR>⏎
<P>⏎
529-530 「一品の宮の、御もののけに悩ませたまひける、山の座主、御修法仕まつらせたまへど、なほ僧都参らせたまはでは験なしとて、昨日、二度なむ召しはべりし。右大臣殿の四位少将、昨夜、夜更けてなむ登りおはしまして、后の宮の御文などはべりければ、下りさせたまふなり」<BR>⏎
 などいとはなやかに言ひなす。「恥づかしうとも、会ひて、尼になしたまひてよ、と言はむ。さかしら人少なくて、よき折にこそ」と思へば、起きて、<BR>⏎
d1964<P>⏎
d1966<P>⏎
cd2:1967-968 例の方におはして、髪は尼君のみ削りたまふを、異人に手触れさせむもうたておぼゆるに、手づからはた、えせぬことなれば、ただすこし解き下して、親に今一度かうながらのさまを見えずなりなむこそ、人やりならず、いと悲しけれ。いたうわづらひしけにや、髪もすこし落ち細りたる心地すれど、何ばかりも衰へず、いと多くて、六尺ばかりなる末などぞ、いとうつくしかりける。筋などもいとこまかにうつくしげなり。<BR>⏎
<P>⏎
533 例の方におはして、髪は尼君のみ削りたまふを、異人に手触れさせむもうたておぼゆるに、手づからはた、えせぬことなれば、ただすこし解き下して、親に今一度かうながらのさまを見えずなりなむこそ、人やりならず、いと悲しけれ。いたうわづらひしけにや、髪もすこし落ち細りたる心地すれど、何ばかりも衰へず、いと多くて、六尺ばかりなる末などぞ、いとうつくしかりける。筋などもいとこまかにうつくしげなり。<BR>⏎
d1970<P>⏎
cd2:1971-972 と独りごちゐたまへり。<BR>⏎
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535 と独りごちゐたまへり。<BR>⏎
d1974<P>⏎
d1976<P>⏎
d1978<P>⏎
d1980<P>⏎
d1982<P>⏎
d1984<P>⏎
d1986<P>⏎
text53987 <A NAME="in47">[第七段 浮舟、僧都に出家を懇願]</A><BR>543 
d1988<P>⏎
cd2:1989-990 立ちてこなたにいまして、「ここにやおはします」とて、几帳のもとについゐたまへば、つつましけれど、ゐざり寄りて、いらへしたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
544 立ちてこなたにいまして、「ここにやおはします」とて、几帳のもとについゐたまへば、つつましけれど、ゐざり寄りて、いらへしたまふ。<BR>⏎
d1992<P>⏎
d1994<P>⏎
cd2:1995-996 「世の中にはべらじと思ひ立ちはべりし身の、いとあやしくて今まではべりつるを、心憂しと思ひはべるものから、よろづにせさせたまひける御心ばへをなむ、いふかひなき心地にも、思ひたまへ知らるるを、なほ世づかずのみ、つひにえ止まるまじく思ひたまへらるるを、尼になさせたまひてよ。世の中にはべるとも、例の人にてながらふべくもはべらぬ身になむ」<BR>⏎
<P>⏎
547 「世の中にはべらじと思ひ立ちはべりし身の、いとあやしくて今まではべりつるを、心憂しと思ひはべるものから、よろづにせさせたまひける御心ばへをなむ、いふかひなき心地にも、思ひたまへ知らるるを、なほ世づかずのみ、つひにえ止まるまじく思ひたまへらるるを、尼になさせたまひてよ。世の中にはべるとも、例の人にてながらふべくもはべらぬ身になむ」<BR>⏎
d1998<P>⏎
cd2:1999-1000 「まだいと行く先遠げなる御ほどに、いかでかひたみちにしかば、思し立たむ。かへりて罪あることなり。思ひ立ちて、心を起こしたまふほどは強く思せど、年月経れば、女の御身といふもの、いとたいだいしきものになむ」<BR>⏎
<P>⏎
549 「まだいと行く先遠げなる御ほどに、いかでかひたみちにしかば、思し立たむ。かへりて罪あることなり。思ひ立ちて、心を起こしたまふほどは強く思せど、年月経れば、女の御身といふもの、いとたいだいしきものになむ」<BR>⏎
d11002<P>⏎
cd4:21003-1006 「幼くはべりしほどより、ものをのみ思ふべきありさまにて、<A HREF="#k21">親なども、尼になしてや見まし、など</A><A NAME="t21">な</A>む思ひのたまひし。ましてすこしもの思ひ知りて後は、例の人ざまならで、後の世をだに、と思ふ心深かりしを、亡くなるべきほどのやうやう近くなりはべるにや、心地のいと弱くのみなりはべるを、なほいかで」<BR>⏎
<P>⏎
 とてうち泣きつつのたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
551-552 「幼くはべりしほどより、ものをのみ思ふべきありさまにて、<A HREF="#k21">親なども、尼になしてや見まし、など</A><A NAME="t21">な</A>む思ひのたまひし。ましてすこしもの思ひ知りて後は、例の人ざまならで、後の世をだに、と思ふ心深かりしを、亡くなるべきほどのやうやう近くなりはべるにや、心地のいと弱くのみなりはべるを、なほいかで」<BR>⏎
 とてうち泣きつつのたまふ。<BR>⏎
text531007 <A NAME="in48">[第八段 浮舟、出家す]</A><BR>553 
d11008<P>⏎
d11010<P>⏎
cd2:11011-1012 「とまれかくまれ、思し立ちてのたまふを、三宝のいとかしこく誉めたまふことなり。法師にて聞こえ返すべきことにあらず。御忌むことは、いとやすく授けたてまつるべきを、急なることにまかんでたれば、今宵、かの宮に参るべくはべり。明日よりや、御修法始まるべくはべらむ。七日果ててまかでむに、仕まつらむ」<BR>⏎
<P>⏎
555 「とまれかくまれ、思し立ちてのたまふを、三宝のいとかしこく誉めたまふことなり。法師にて聞こえ返すべきことにあらず。御忌むことは、いとやすく授けたてまつるべきを、急なることにまかんでたれば、今宵、かの宮に参るべくはべり。明日よりや、御修法始まるべくはべらむ。七日果ててまかでむに、仕まつらむ」<BR>⏎
d11014<P>⏎
cd4:21015-1018 「乱り心地の悪しかりしほどに見たるやうにて、いと苦しうはべれば、重くならば、忌むことかひなくやはべらむ。なほ今日はうれしき折とこそ思ひはべれ」<BR>⏎
<P>⏎
 とていみじう泣きたまへば、聖心にいといとほしく思ひて、<BR>⏎
<P>⏎
557-558 「乱り心地の悪しかりしほどに見たるやうにて、いと苦しうはべれば、重くならば、忌むことかひなくやはべらむ。なほ今日はうれしき折とこそ思ひはべれ」<BR>⏎
 とていみじう泣きたまへば、聖心にいといとほしく思ひて、<BR>⏎
d11020<P>⏎
d11022<P>⏎
d11024<P>⏎
cd2:11025-1026 「いづら大徳たち。ここに」<BR>⏎
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562 「いづら大徳たち。ここに」<BR>⏎
d11028<P>⏎
d11030<P>⏎
cd2:11031-1032 と言ふ。げにいみじかりし人の御ありさまなれば、「うつし人にては、世におはせむもうたてこそあらめ」と、この阿闍梨もことわりに思ふに、几帳の帷子のほころびより、御髪をかき出だしたまひつるが、いとあたらしくをかしげなるになむ、しばし鋏をもてやすらひける。<BR>⏎
<P>⏎
565 と言ふ。げにいみじかりし人の御ありさまなれば、「うつし人にては、世におはせむもうたてこそあらめ」と、この阿闍梨もことわりに思ふに、几帳の帷子のほころびより、御髪をかき出だしたまひつるが、いとあたらしくをかしげなるになむ、しばし鋏をもてやすらひける。<BR>⏎
text531033 <H4>第五章 浮舟の物語 浮舟、出家後の物語</H4>566 
text531034 <A NAME="in51">[第一段 少将の尼、浮舟の出家に気も動転]</A><BR>567 
d11035<P>⏎
d11037<P>⏎
d11039<P>⏎
d11041<P>⏎
cd2:11042-1043 「あなあさましや。などかく奥なきわざはせさせたまふ。上、帰りおはしては、いかなることをのたまはせむ」<BR>⏎
<P>⏎
571 「あなあさましや。などかく奥なきわざはせさせたまふ。上、帰りおはしては、いかなることをのたまはせむ」<BR>⏎
d11045<P>⏎
d11047<P>⏎
d11049<P>⏎
d11051<P>⏎
d11053<P>⏎
d11055<P>⏎
cd2:11056-1057 など尊きことども説き聞かせたまふ。「とみにせさすべくもあらず、皆言ひ知らせたまへることを、うれしくもしつるかな」と、これのみぞ仏は生けるしるしありてとおぼえたまひける。<BR>⏎
<P>⏎
578 など尊きことども説き聞かせたまふ。「とみにせさすべくもあらず、皆言ひ知らせたまへることを、うれしくもしつるかな」と、これのみぞ仏は生けるしるしありてとおぼえたまひける。<BR>⏎
text531058 <A NAME="in52">[第二段 浮舟、手習に心を託す]</A><BR>579 
d11059<P>⏎
d11061<P>⏎
d11063<P>⏎
cd2:11064-1065 と言ひ知らすれど、「なほただ今は、心やすくうれし。世に経べきものとは、思ひかけずなりぬるこそは、いとめでたきことなれ」と、胸のあきたる心地ぞしたまひける。<BR>⏎
<P>⏎
582 と言ひ知らすれど、「なほただ今は、心やすくうれし。世に経べきものとは、思ひかけずなりぬるこそは、いとめでたきことなれ」と、胸のあきたる心地ぞしたまひける。<BR>⏎
d11067<P>⏎
cd3:11068-1070 「なきものに身をも人をも思ひつつ<BR>⏎
  捨ててし世をぞさらに捨てつる<BR>⏎
<P>⏎
584 「なきものに身をも人をも思ひつつ<BR>  捨ててし世をぞさらに捨てつる<BR>⏎
d11072<P>⏎
cd5:21073-1077 と書きても、なほみづからいとあはれと見たまふ。<BR>⏎
<P>⏎
 「限りぞと思ひなりにし世の中を<BR>⏎
  返す返すも背きぬるかな」<BR>⏎
<P>⏎
586-587 と書きても、なほみづからいとあはれと見たまふ。<BR>⏎
 「限りぞと思ひなりにし世の中を<BR>  返す返すも背きぬるかな」<BR>⏎
text531078 <A NAME="in53">[第三段 中将からの和歌に返歌す]</A><BR>588 
d11079<P>⏎
d11081<P>⏎
d11083<P>⏎
cd2:11084-1085 といと口惜しうて、立ち返り、<BR>⏎
<P>⏎
591 といと口惜しうて、立ち返り、<BR>⏎
d11087<P>⏎
cd3:11088-1090  岸遠く漕ぎ離るらむ海人舟に<BR>⏎
  乗り遅れじと急がるるかな」<BR>⏎
<P>⏎
593  岸遠く漕ぎ離るらむ海人舟に<BR>  乗り遅れじと急がるるかな」<BR>⏎
d11092<P>⏎
cd5:21093-1097 「心こそ憂き世の岸を離るれど<BR>⏎
  行方も知らぬ海人の浮木を」<BR>⏎
<P>⏎
 と例の、手習にしたまへるを、包みてたてまつる。<BR>⏎
<P>⏎
595-596 「心こそ憂き世の岸を離るれど<BR>  行方も知らぬ海人の浮木を」<BR>⏎
 と例の、手習にしたまへるを、包みてたてまつる。<BR>⏎
d11099<P>⏎
d11101<P>⏎
d11103<P>⏎
d11105<P>⏎
d11107<P>⏎
cd4:21108-1111 「かかる身にては、勧めきこえむこそは、と思ひなしはべれど、残り多かる御身を、いかで経たまはむとすらむ。おのれは世にはべらむこと、今日、明日とも知りがたきに、いかでうしろやすく見たてまつらむと、よろづに思ひたまへてこそ、仏にも祈りきこえつれ」<BR>⏎
<P>⏎
 と伏しまろびつつ、いといみじげに思ひたまへるに、まことの親の、やがて骸もなきものと、思ひ惑ひたまひけむほど推し量るるぞ、まづいと悲しかりける。例の、いらへもせで背きゐたまへるさま、いと若くうつくしげなれば、「いとものはかなくぞおはしける御心なれ」と、泣く泣く御衣のことなど急ぎたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
602-603 「かかる身にては、勧めきこえむこそは、と思ひなしはべれど、残り多かる御身を、いかで経たまはむとすらむ。おのれは世にはべらむこと、今日、明日とも知りがたきに、いかでうしろやすく見たてまつらむと、よろづに思ひたまへてこそ、仏にも祈りきこえつれ」<BR>⏎
 と伏しまろびつつ、いといみじげに思ひたまへるに、まことの親の、やがて骸もなきものと、思ひ惑ひたまひけむほど推し量るるぞ、まづいと悲しかりける。例の、いらへもせで背きゐたまへるさま、いと若くうつくしげなれば、「いとものはかなくぞおはしける御心なれ」と、泣く泣く御衣のことなど急ぎたまふ。<BR>⏎
d11113<P>⏎
cd2:11114-1115 とあたらしがりつつ、僧都を恨み誹りけり。<BR>⏎
<P>⏎
605 とあたらしがりつつ、僧都を恨み誹りけり。<BR>⏎
text531116 <A NAME="in54">[第四段 僧都、女一宮に伺候]</A><BR>606 
d11117<P>⏎
cd2:11118-1119 一品の宮の御悩み、げにかの弟子の言ひしもしるく、いちじるきことどもありて、おこたらせたまひにければ、いよいよいと尊きものに言ひののしる。名残も恐ろしとて、御修法延べさせたまへば、とみにもえ帰り入らでさぶらひたまふに、雨など降りてしめやかなる夜、召して、夜居にさぶらはせたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
607 一品の宮の御悩み、げにかの弟子の言ひしもしるく、いちじるきことどもありて、おこたらせたまひにければ、いよいよいと尊きものに言ひののしる。名残も恐ろしとて、御修法延べさせたまへば、とみにもえ帰り入らでさぶらひたまふに、雨など降りてしめやかなる夜、召して、夜居にさぶらはせたまふ。<BR>⏎
d11121<P>⏎
cd2:11122-1123 「昔より頼ませたまふなかにも、このたびなむ、いよいよ後の世もかくこそはと、頼もしきことまさりぬる」<BR>⏎
<P>⏎
609 「昔より頼ませたまふなかにも、このたびなむ、いよいよ後の世もかくこそはと、頼もしきことまさりぬる」<BR>⏎
d11125<P>⏎
d11127<P>⏎
d11129<P>⏎
text531130 <A NAME="in55">[第五段 僧都、女一宮に宇治の出来事を語る]</A><BR>613 
d11131<P>⏎
d11133<P>⏎
d11135<P>⏎
cd18:91136-1153 とてかの見つけたりしことどもを語りきこえたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
 「げにいとめづらかなることかな」<BR>⏎
<P>⏎
 とて近くさぶらふ人びと皆寝入りたるを、恐ろしく思されて、おどろかさせたまふ。大将の語らひたまふ宰相の君しも、このことを聞きけり。おどろかさせたまふ人びとは、何とも聞かず。僧都、懼ぢさせたまへる御けしきを、「心もなきこと啓してけり」と思ひて、詳しくもそのほどのことをば言ひさしつ。<BR>⏎
<P>⏎
 「その女人、このたびまかり出ではべりつるたよりに、小野にはべりつる尼どもあひ訪ひはべらむとて、まかり寄りたりしに、泣く泣く出家の志し深きよし、ねむごろに語らひはべりしかば、頭下ろしはべりにき。<BR>⏎
<P>⏎
 なにがしが妹、故衛門督の妻にはべりし尼なむ、亡せにし女子の代りにと、思ひ喜びはべりて、随分に労りかしづきはべりけるを、かくなりたれば、恨みはべるなり。げにぞ容貌はいとうるはしくけうらにて、行ひやつれむもいとほしげになむはべりし。何人にかはべりけむ」<BR>⏎
<P>⏎
 とものよく言ふ僧都にて、語り続け申したまへば、<BR>⏎
<P>⏎
 「いかでさる所に、よき人をしも取りもて行きけむ。さりとも、今は知られぬらむ」<BR>⏎
<P>⏎
 などこの宰相の君ぞ問ふ。<BR>⏎
<P>⏎
 「知らず。さもや語らひたまふらむ。まことにやむごとなき人ならば、何か隠れもはべらじをや。田舎人の娘も、さるさましたる<A HREF="#k24">こそは</A><A NAME="t24">は</A>べらめ。龍の中より、仏生まれたまはずはこそはべらめ。ただ人にては、いと罪軽きさまの人になむはべりける」<BR>⏎
<P>⏎
616-624 とてかの見つけたりしことどもを語りきこえたまふ。<BR>⏎
 「げにいとめづらかなることかな」<BR>⏎
 とて近くさぶらふ人びと皆寝入りたるを、恐ろしく思されて、おどろかさせたまふ。大将の語らひたまふ宰相の君しも、このことを聞きけり。おどろかさせたまふ人びとは、何とも聞かず。僧都、懼ぢさせたまへる御けしきを、「心もなきこと啓してけり」と思ひて、詳しくもそのほどのことをば言ひさしつ。<BR>⏎
 「その女人、このたびまかり出ではべりつるたよりに、小野にはべりつる尼どもあひ訪ひはべらむとて、まかり寄りたりしに、泣く泣く出家の志し深きよし、ねむごろに語らひはべりしかば、頭下ろしはべりにき。<BR>⏎
 なにがしが妹、故衛門督の妻にはべりし尼なむ、亡せにし女子の代りにと、思ひ喜びはべりて、随分に労りかしづきはべりけるを、かくなりたれば、恨みはべるなり。げにぞ容貌はいとうるはしくけうらにて、行ひやつれむもいとほしげになむはべりし。何人にかはべりけむ」<BR>⏎
 とものよく言ふ僧都にて、語り続け申したまへば、<BR>⏎
 「いかでさる所に、よき人をしも取りもて行きけむ。さりとも、今は知られぬらむ」<BR>⏎
 などこの宰相の君ぞ問ふ。<BR>⏎
 「知らず。さもや語らひたまふらむ。まことにやむごとなき人ならば、何か隠れもはべらじをや。田舎人の娘も、さるさましたる<A HREF="#k24">こそは</A><A NAME="t24">は</A>べらめ。龍の中より、仏生まれたまはずはこそはべらめ。ただ人にては、いと罪軽きさまの人になむはべりける」<BR>⏎
d11155<P>⏎
d11157<P>⏎
d11159<P>⏎
cd2:11160-1161 となま隠すけしきなれば、人にも語らず。宮は、<BR>⏎
<P>⏎
628 となま隠すけしきなれば、人にも語らず。宮は、<BR>⏎
d11163<P>⏎
cd2:11164-1165 とこの人にぞのたまはすれど、いづ方にも隠すべきことを、定めてさならむとも知らずながら、恥づかしげなる人に、うち出でのたまはせむもつつましく思して、やみにけり。<BR>⏎
<P>⏎
630 とこの人にぞのたまはすれど、いづ方にも隠すべきことを、定めてさならむとも知らずながら、恥づかしげなる人に、うち出でのたまはせむもつつましく思して、やみにけり。<BR>⏎
text531166 <A NAME="in56">[第六段 僧都、山荘に立ち寄り山へ帰る]</A><BR>631 
d11167<P>⏎
d11169<P>⏎
d11171<P>⏎
d11173<P>⏎
d11175<P>⏎
d11177<P>⏎
d11179<P>⏎
cd2:11180-1181 とて綾、羅、絹などいふもの、たてまつりおきたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
638 とて綾、羅、絹などいふもの、たてまつりおきたまふ。<BR>⏎
d11183<P>⏎
d11185<P>⏎
d11187<P>⏎
cd2:11188-1189 と法師なれど、いとよしよししく恥づかしげなるさまにてのたまふことどもを、「思ふやうにも言ひ聞かせたまふかな」と聞きゐたり。<BR>⏎
<P>⏎
642 と法師なれど、いとよしよししく恥づかしげなるさまにてのたまふことどもを、「思ふやうにも言ひ聞かせたまふかな」と聞きゐたり。<BR>⏎
text531190 <A NAME="in57">[第七段 中将、小野山荘に来訪]</A><BR>643 
d11191<P>⏎
d11193<P>⏎
cd2:11194-1195 「あはれ山伏は、かかる日にぞ、音は泣かるなるかし」<BR>⏎
<P>⏎
645 「あはれ山伏は、かかる日にぞ、音は泣かるなるかし」<BR>⏎
d11197<P>⏎
cd9:41198-1206 かひなきことも言はむとてものしたりけるを、紅葉の<A HREF="#k27">いとおもしろく</A><A NAME="t27">、</A>他の紅に染めましたる色々なれば、入り来るよりぞものあはれなりける。「ここにいと心地よげなる人を見つけたらば、あやしくぞおぼゆべき」など思ひて、<BR>⏎
<P>⏎
 「暇ありて、つれづれなる心地しはべるに、紅葉もいかにと思ひたまへてなむ。なほ立ち返りて旅寝もしつべき木の下にこそ」<BR>⏎
<P>⏎
 とて見出だしたまへり。尼君、例の、涙もろにて、<BR>⏎
<P>⏎
 「木枯らしの吹きにし山の麓には<BR>⏎
  立ち隠すべき蔭だにぞなき」<BR>⏎
<P>⏎
647-650 かひなきことも言はむとてものしたりけるを、紅葉の<A HREF="#k27">いとおもしろく</A><A NAME="t27">、</A>他の紅に染めましたる色々なれば、入り来るよりぞものあはれなりける。「ここにいと心地よげなる人を見つけたらば、あやしくぞおぼゆべき」など思ひて、<BR>⏎
 「暇ありて、つれづれなる心地しはべるに、紅葉もいかにと思ひたまへてなむ。なほ立ち返りて旅寝もしつべき木の下にこそ」<BR>⏎
 とて見出だしたまへり。尼君、例の、涙もろにて、<BR>⏎
 「木枯らしの吹きにし山の麓には<BR>  立ち隠すべき蔭だにぞなき」<BR>⏎
d11208<P>⏎
cd3:11209-1211 「待つ人もあらじと思ふ山里の<BR>⏎
  梢を見つつなほぞ過ぎ憂き」<BR>⏎
<P>⏎
652 「待つ人もあらじと思ふ山里の<BR>  梢を見つつなほぞ過ぎ憂き」<BR>⏎
d11213<P>⏎
d11215<P>⏎
cd2:11216-1217 と少将の尼にのたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
655 と少将の尼にのたまふ。<BR>⏎
d11219<P>⏎
d11221<P>⏎
d11223<P>⏎
d11225<P>⏎
d11227<P>⏎
text531228 <A NAME="in58">[第八段 中将、浮舟に和歌を贈って帰る]</A><BR>661 
d11229<P>⏎
cd2:11230-1231 「かばかりのさましたる人を失ひて、尋ねぬ人ありけむや。またその人かの人の娘なむ、行方も知らず隠れにたる、もしはもの怨じして、世を背きにけるなど、おのづから隠れなかるべきを」など、あやしう返す返す思ふ。<BR>⏎
<P>⏎
662 「かばかりのさましたる人を失ひて、尋ねぬ人ありけむや。またその人かの人の娘なむ、行方も知らず隠れにたる、もしはもの怨じして、世を背きにけるなど、おのづから隠れなかるべきを」など、あやしう返す返す思ふ。<BR>⏎
d11233<P>⏎
cd2:11234-1235 「世の常のさまには思し憚ることもありけむを、かかるさまになりたまひにたるなむ、心やすう聞こえつべくはべる。さやうに教へきこえたまへ。来し方の忘れがたくて、かやうに参り来るに、また今一つ心ざしを添へてこそ」<BR>⏎
<P>⏎
664 「世の常のさまには思し憚ることもありけむを、かかるさまになりたまひにたるなむ、心やすう聞こえつべくはべる。さやうに教へきこえたまへ。来し方の忘れがたくて、かやうに参り来るに、また今一つ心ざしを添へてこそ」<BR>⏎
d11237<P>⏎
d11239<P>⏎
cd2:11240-1241 とて泣きたまふに、「この尼君も離れぬ人なるべし。誰れならむ」と心得がたし。<BR>⏎
<P>⏎
667 とて泣きたまふに、「この尼君も離れぬ人なるべし。誰れならむ」と心得がたし。<BR>⏎
d11243<P>⏎
d11245<P>⏎
d11247<P>⏎
d11249<P>⏎
d11251<P>⏎
cd3:11252-1254 「おほかたの世を背きける君なれど<BR>⏎
  厭ふによせて身こそつらけれ」<BR>⏎
<P>⏎
673 「おほかたの世を背きける君なれど<BR>  厭ふによせて身こそつらけれ」<BR>⏎
d11256<P>⏎
d11258<P>⏎
d11260<P>⏎
d11262<P>⏎
d11264<P>⏎
cd2:11265-1266 されば月ごろたゆみなく結ぼほれ、ものをのみ思したりしも、この本意のことしたまひてより、後すこし晴れ晴れしうなりて、尼君とはかなく戯れもし交はし、碁打ちなどしてぞ、明かし暮らしたまふ。行ひもいとよくして、法華経はさらなり。異法文なども、いと多く読みたまふ。<A HREF="#no23">雪深く降り積み、人目絶え</A><A NAME="te23">た</A>るころぞ、げに思ひやる方なかりける。<BR>⏎
<P>⏎
679 されば月ごろたゆみなく結ぼほれ、ものをのみ思したりしも、この本意のことしたまひてより、後すこし晴れ晴れしうなりて、尼君とはかなく戯れもし交はし、碁打ちなどしてぞ、明かし暮らしたまふ。行ひもいとよくして、法華経はさらなり。異法文なども、いと多く読みたまふ。<A HREF="#no23">雪深く降り積み、人目絶え</A><A NAME="te23">た</A>るころぞ、げに思ひやる方なかりける。<BR>⏎
text531267 <H4>第六章 浮舟の物語 薫、浮舟生存を聞き知る</H4>680 
text531268 <A NAME="in61">[第一段 新年、浮舟と尼君、和歌を詠み交す]</A><BR>681 
d11269<P>⏎
d11271<P>⏎
cd13:51272-1284 「かきくらす野山の雪を眺めても<BR>⏎
  降りにしことぞ今日も悲しき」<BR>⏎
<P>⏎
 など例の、慰めの手習を、行ひの隙にはしたまふ。「我世になくて年隔たりぬるを、思ひ出づる人もあらむかし」など、思ひ出づる時も多かり。若菜をおろそかなる籠に入れて、人の持て来たりけるを、尼君見て、<BR>⏎
<P>⏎
 「山里の雪間の若菜摘みはやし<BR>⏎
  なほ生ひ先の頼まるるかな」<BR>⏎
<P>⏎
 とてこなたにたてまつれたまへりければ、<BR>⏎
<P>⏎
 「雪深き野辺の若菜も今よりは<BR>⏎
  <A HREF="#no24">君がためにぞ年も摘む</A><A NAME="te24">べ</A>き」<BR>⏎
<P>⏎
683-687 「かきくらす野山の雪を眺めても<BR>  降りにしことぞ今日も悲しき」<BR>⏎
 など例の、慰めの手習を、行ひの隙にはしたまふ。「我世になくて年隔たりぬるを、思ひ出づる人もあらむかし」など、思ひ出づる時も多かり。若菜をおろそかなる籠に入れて、人の持て来たりけるを、尼君見て、<BR>⏎
 「山里の雪間の若菜摘みはやし<BR>  なほ生ひ先の頼まるるかな」<BR>⏎
 とてこなたにたてまつれたまへりければ、<BR>⏎
 「雪深き野辺の若菜も今よりは<BR>  <A HREF="#no24">君がためにぞ年も摘む</A><A NAME="te24">べ</A>き」<BR>⏎
d11286<P>⏎
d11288<P>⏎
cd3:11289-1291 「<A HREF="#no27">袖触れし</A><A NAME="te27">人</A>こそ見えね花の香の<BR>⏎
  それかと匂ふ春のあけぼの」<BR>⏎
<P>⏎
690 「<A HREF="#no27">袖触れし</A><A NAME="te27">人</A>こそ見えね花の香の<BR>  それかと匂ふ春のあけぼの」<BR>⏎
text531292 <A NAME="in62">[第二段 大尼君の孫、紀伊守、山荘に来訪]</A><BR>691 
d11293<P>⏎
d11295<P>⏎
d11297<P>⏎
d11299<P>⏎
d11301<P>⏎
d11303<P>⏎
d11305<P>⏎
d11307<P>⏎
d11309<P>⏎
d11311<P>⏎
d11313<P>⏎
d11315<P>⏎
d11317<P>⏎
d11319<P>⏎
d11321<P>⏎
text531322 <A NAME="in63">[第三段 浮舟、薫の噂など漏れ聞く]</A><BR>706 
d11323<P>⏎
d11325<P>⏎
d11327<P>⏎
cd5:21328-1332  見し人は影も止まらぬ水の上に<BR>⏎
  落ち添ふ涙いとどせきあへず<BR>⏎
<P>⏎
 となむはべりし。言に表はしてのたまふことは少なけれど、ただけしきには、いとあはれなる御さまになむ見えたまひし。女は、いみじくめでたてまつりぬべくなむ。若くはべりし時より、優におはしますと見たてまつりしみにしかば、世の中の一の所も、何とも思ひはべらず、ただこの殿を頼みきこえてなむ、過ぐしはべりぬる」<BR>⏎
<P>⏎
709-710  見し人は影も止まらぬ水の上に<BR>  落ち添ふ涙いとどせきあへず<BR>⏎
 となむはべりし。言に表はしてのたまふことは少なけれど、ただけしきには、いとあはれなる御さまになむ見えたまひし。女は、いみじくめでたてまつりぬべくなむ。若くはべりし時より、優におはしますと見たてまつりしみにしかば、世の中の一の所も、何とも思ひはべらず、ただこの殿を頼みきこえてなむ、過ぐしはべりぬる」<BR>⏎
d11334<P>⏎
d11336<P>⏎
d11338<P>⏎
cd4:21339-1342 「それは容貌もいとうるはしうけうらに、宿徳にて、際ことなるさまぞしたまへる。兵部卿宮ぞ、いといみじうおはするや。女にて馴れ仕うまつらばや、となむおぼえはべる」<BR>⏎
<P>⏎
 など教へたらむやうに言ひ続く。あはれにもをかしくも聞くに、身の上もこの世のことともおぼえず。とどこほることなく語りおきて出でぬ。<BR>⏎
<P>⏎
714-715 「それは容貌もいとうるはしうけうらに、宿徳にて、際ことなるさまぞしたまへる。兵部卿宮ぞ、いといみじうおはするや。女にて馴れ仕うまつらばや、となむおぼえはべる」<BR>⏎
 など教へたらむやうに言ひ続く。あはれにもをかしくも聞くに、身の上もこの世のことともおぼえず。とどこほることなく語りおきて出でぬ。<BR>⏎
text531343 <A NAME="in64">[第四段 浮舟、尼君と語り交す]</A><BR>716 
d11344<P>⏎
d11346<P>⏎
d11348<P>⏎
cd2:11349-1350 とて小袿の単衣たてまつるを、うたておぼゆれば、「心地悪し」とて、手も触れず臥したまへり。尼君、急ぐことをうち捨てて、「いかが思さるる」など思ひ乱れたまふ。紅に桜の織物の袿重ねて、<BR>⏎
<P>⏎
719 とて小袿の単衣たてまつるを、うたておぼゆれば、「心地悪し」とて、手も触れず臥したまへり。尼君、急ぐことをうち捨てて、「いかが思さるる」など思ひ乱れたまふ。紅に桜の織物の袿重ねて、<BR>⏎
d11352<P>⏎
d11354<P>⏎
cd3:11355-1357 「尼衣変はれる身にやありし世の<BR>⏎
  形見に袖をかけて偲ばむ」<BR>⏎
<P>⏎
722 「尼衣変はれる身にやありし世の<BR>  形見に袖をかけて偲ばむ」<BR>⏎
d11359<P>⏎
d11361<P>⏎
d11363<P>⏎
cd2:11364-1365 「さりとも、思し出づることは多からむを、尽きせず<A HREF="#k32">隔てたまふ</A><A NAME="t32">こ</A>そ心憂けれ。身には、かかる世の常の色あひなど、久しく忘れにければ、なほなほしくはべるにつけても、昔の人あらましかば、など思ひ出ではべる。しか扱ひきこえたまひけむ人、世におはすらむ。やがて亡くなして見はべりしだに、なほいづこにあらむ、そことだに尋ね聞かまほしくおぼえはべるを、行方知らで、思ひきこえたまふ人びとはべるらむかし」<BR>⏎
<P>⏎
726 「さりとも、思し出づることは多からむを、尽きせず<A HREF="#k32">隔てたまふ</A><A NAME="t32">こ</A>そ心憂けれ。身には、かかる世の常の色あひなど、久しく忘れにければ、なほなほしくはべるにつけても、昔の人あらましかば、など思ひ出ではべる。しか扱ひきこえたまひけむ人、世におはすらむ。やがて亡くなして見はべりしだに、なほいづこにあらむ、そことだに尋ね聞かまほしくおぼえはべるを、行方知らで、思ひきこえたまふ人びとはべるらむかし」<BR>⏎
d11367<P>⏎
d11369<P>⏎
cd2:11370-1371 とて涙の落つるを紛らはして、<BR>⏎
<P>⏎
729 とて涙の落つるを紛らはして、<BR>⏎
d11373<P>⏎
cd2:11374-1375 と言少なにのたまひなしつ。<BR>⏎
<P>⏎
731 と言少なにのたまひなしつ。<BR>⏎
text531376 <A NAME="in65">[第五段 薫、明石中宮のもとに参上]</A><BR>732 
d11377<P>⏎
d11379<P>⏎
d11381<P>⏎
d11383<P>⏎
d11385<P>⏎
d11387<P>⏎
cd2:11388-1389 と問はせたまふを、「なほ続きを思し寄る方」と思ひて、<BR>⏎
<P>⏎
738 と問はせたまふを、「なほ続きを思し寄る方」と思ひて、<BR>⏎
d11391<P>⏎
cd2:11392-1393 とて詳しくは聞こえたまはず。「なほかく忍ぶる筋を、聞きあらはしけり」と思ひたまはむが、いとほしく思され、宮の、ものをのみ思して、そのころは病になりたまひしを、思し合はするにも、さすがに心苦しうて、「かたがたに口入れにくき人の上」と思し止めつ。<BR>⏎
<P>⏎
740 とて詳しくは聞こえたまはず。「なほかく忍ぶる筋を、聞きあらはしけり」と思ひたまはむが、いとほしく思され、宮の、ものをのみ思して、そのころは病になりたまひしを、思し合はするにも、さすがに心苦しうて、「かたがたに口入れにくき人の上」と思し止めつ。<BR>⏎
d11395<P>⏎
d11397<P>⏎
d11399<P>⏎
cd2:11400-1401 「御前にだにつつませたまはむことを、まして異人はいかでか」<BR>⏎
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744 「御前にだにつつませたまはむことを、まして異人はいかでか」<BR>⏎
d11403<P>⏎
cd2:11404-1405 「さまざまなることにこそ。またまろはいとほしきことぞあるや」<BR>⏎
<P>⏎
746 「さまざまなることにこそ。またまろはいとほしきことぞあるや」<BR>⏎
d11407<P>⏎
text531408 <A NAME="in66">[第六段 小宰相、薫に僧都の話を語る]</A><BR>748 
d11409<P>⏎
cd2:11410-1411 立ち寄りて物語などしたまふついでに、言ひ出でたり。珍かにあやしと、いかでか驚かれたまはざらむ。「宮の問はせたまひしも、かかることを、ほの思し寄りてなりけり。などかのたまはせ果つまじき」とつらけれど、<BR>⏎
<P>⏎
749 立ち寄りて物語などしたまふついでに、言ひ出でたり。珍かにあやしと、いかでか驚かれたまはざらむ。「宮の問はせたまひしも、かかることを、ほの思し寄りてなりけり。などかのたまはせ果つまじき」とつらけれど、<BR>⏎
d11413<P>⏎
d11415<P>⏎
cd2:11416-1417 「なほあやしと思ひし人のことに、似てもありける人のありさまかな。さてその人は、なほあらむや」<BR>⏎
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752 「なほあやしと思ひし人のことに、似てもありける人のありさまかな。さてその人は、なほあらむや」<BR>⏎
d11419<P>⏎
d11421<P>⏎
d11423<P>⏎
cd4:21424-1427 「まことにそれと尋ね出でたらむ、いとあさましき心地もすべきかな。いかでかは、たしかに聞くべき。下り立ちて尋ねありかむも、かたくなしなどや人言ひなさむ。またかの宮も聞きつけたまへらむには、かならず思し出でて、思ひ入りにけむ道も妨げたまひてむかし。<BR>⏎
<P>⏎
 さて『さなのたまひそ』など聞こえおきたまひければや、我には、さることなむ聞きしと、さる珍しきことを聞こし召しながら、のたまはせぬにやありけむ。宮もかかづらひたまふにては、いみじうあはれと思ひながらも、さらにやがて亡せにしものと思ひなしてを止みなむ。<BR>⏎
<P>⏎
756-757 「まことにそれと尋ね出でたらむ、いとあさましき心地もすべきかな。いかでかは、たしかに聞くべき。下り立ちて尋ねありかむも、かたくなしなどや人言ひなさむ。またかの宮も聞きつけたまへらむには、かならず思し出でて、思ひ入りにけむ道も妨げたまひてむかし。<BR>⏎
 さて『さなのたまひそ』など聞こえおきたまひければや、我には、さることなむ聞きしと、さる珍しきことを聞こし召しながら、のたまはせぬにやありけむ。宮もかかづらひたまふにては、いみじうあはれと思ひながらも、さらにやがて亡せにしものと思ひなしてを止みなむ。<BR>⏎
d11429<P>⏎
cd2:11430-1431 など思ひ乱れて、「なほのたまはずやあらむ」とおぼゆれど、御けしきのゆかしければ、大宮に、さるべきついで作り出だしてぞ、啓したまふ。<BR>⏎
<P>⏎
759 など思ひ乱れて、「なほのたまはずやあらむ」とおぼゆれど、御けしきのゆかしければ、大宮に、さるべきついで作り出だしてぞ、啓したまふ。<BR>⏎
text531432 <A NAME="in67">[第七段 薫、明石中宮に対面し、横川に赴く]</A><BR>760 
cd6:31433-1438<P> 「あさましうて、失ひはべりぬと思ひたまへし人、世に落ちあぶれてあるやうに、人のまねびはべりしかな。いかでかさることははべらむ、と思ひたまふれど、心とおどろおどろしう、もて離るることははべらずや、と思ひわたりはべる人のありさまにはべれば、人の語りはべしやうにては、さるやうもやはべらむと、似つかはしく思ひたまへらるる」<BR>⏎
<P>⏎
 とて今すこし聞こえ出でたまふ。宮の御ことを、いと恥づかしげに、さすがに恨みたるさまには言ひなしたまはで、<BR>⏎
<P>⏎
 「かのこと、またさなむと聞きつけたまへらば、かたくなに好き好きしうも思されぬべし。さらに<A HREF="#k34">さて</A><A NAME="t34">あ</A>りけりとも、知らず顔にて過ぐしはべりなむ」<BR>⏎
<P>⏎
761-763 「あさましうて、失ひはべりぬと思ひたまへし人、世に落ちあぶれてあるやうに、人のまねびはべりしかな。いかでかさることははべらむ、と思ひたまふれど、心とおどろおどろしう、もて離るることははべらずや、と思ひわたりはべる人のありさまにはべれば、人の語りはべしやうにては、さるやうもやはべらむと、似つかはしく思ひたまへらるる」<BR>⏎
 とて今すこし聞こえ出でたまふ。宮の御ことを、いと恥づかしげに、さすがに恨みたるさまには言ひなしたまはで、<BR>⏎
 「かのこと、またさなむと聞きつけたまへらば、かたくなに好き好きしうも思されぬべし。さらに<A HREF="#k34">さて</A><A NAME="t34">あ</A>りけりとも、知らず顔にて過ぐしはべりなむ」<BR>⏎
d11440<P>⏎
d11442<P>⏎
d11444<P>⏎
cd2:11445-1446 「住むらむ山里はいづこにかはあらむ。いかにして、さま悪しからず尋ね寄らむ。僧都に会ひてこそは、たしかなるありさまも聞き合はせなどして、ともかくも問ふべかめれ」など、ただこのことを起き臥し思す。<BR>⏎
<P>⏎
767 「住むらむ山里はいづこにかはあらむ。いかにして、さま悪しからず尋ね寄らむ。僧都に会ひてこそは、たしかなるありさまも聞き合はせなどして、ともかくも問ふべかめれ」など、ただこのことを起き臥し思す。<BR>⏎
d21448-1449
<P>⏎
text531450 <a name="in71">【出典】<BR>769 
c11451</a><A NAME="no1">出典1</A> 百年ももとせに一年ひととせ足らぬ九十九つくも髪我を恋ふらし面影に見ゆ(伊勢物語-一一四)<A HREF="#te1">(戻)</A><BR>⏎
770<A NAME="no1">出典1</A> <ruby><rb>百年<rp>(<rt>ももとせ<rp>)</ruby><ruby><rb>一年<rp>(<rt>ひととせ<rp>)</ruby>足らぬ<ruby><rb>九十九<rp>(<rt>つくも<rp>)</ruby>髪我を恋ふらし面影に見ゆ(伊勢物語-一一四)<A HREF="#te1">(戻)</A><BR>⏎
c11464<A NAME="no14">出典14</A> ここにまた我が飽かぬ月を山の端の遠方をちの里には遅しとや待つ(古今六帖一-一七四)<A HREF="#te14">(戻)</A><BR>⏎
783<A NAME="no14">出典14</A> ここにまた我が飽かぬ月を山の端の<ruby><rb>遠方<rp>(<rt>をち<rp>)</ruby>の里には遅しとや待つ(古今六帖一-一七四)<A HREF="#te14">(戻)</A><BR>⏎
c11471<A NAME="no21">出典21</A> 顔色如花命如葉 命如葉薄将奈何<顔色は花の如く命は葉の如し 命は葉の如く薄し、将に奈何いかむせむ>(白氏文集巻四-一六一「陵園妻」)<A HREF="#te21">(戻)</A><BR>⏎
790<A NAME="no21">出典21</A> 顔色如花命如葉 命如葉薄将奈何&lt;顔色は花の如く命は葉の如し 命は葉の如く薄し、将に<ruby><rb>奈何<rp>(<rt>いかむ<rp>)</ruby>せむ&gt;(白氏文集巻四-一六一「陵園妻」)<A HREF="#te21">(戻)</A><BR>⏎
d11478
text531479<p> <a name="in72">【校訂】<BR>797 
c11481</a><A NAME="k01">校訂1</A> 御厨子所--みつゝ(ゝ/$し<朱>)所<A HREF="#t01">(戻)</A><BR>⏎
799<A NAME="k01">校訂1</A> 御厨子所--みつゝ(ゝ/$し<朱>)所<A HREF="#t01">(戻)</A><BR>⏎
d11516</p>⏎
d11523</p>⏎
i0844
diffsrc/original/text54.htmlsrc/modified/text54.html
cd2:18-9<body background="wallppr063.gif">⏎
<p>First updated 9/20/1996(ver.1-1)<br>⏎
8<BODY>⏎
cd4:210-13Last updated 9/29/2011(ver.2-2)<br>⏎
渋谷栄一校訂(C)</p>⏎
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9-10<ADDRESS>Last updated 9/29/2011(ver.2-2)<BR>⏎
渋谷栄一校訂(C)</ADDRESS>⏎
d115<P>⏎
d117<P>⏎
d137<P>⏎
c149<LI>小君、小野山荘の浮舟を訪問---<A HREF="#in22">あやしけれど、「これこそは、さは確かなる</A>⏎
43<LI>小君、小野山荘の浮舟を訪問---<A HREF="#in22">あやしけれど、「これこそは、さは確かなる</A>⏎
d155<P>⏎
d158<P>⏎
text5459 <H4>第一章 薫の物語 横川僧都、薫の依頼を受け浮舟への手紙を書く</H4>51 
text5460 <A NAME="in11">[第一段 薫、横川に出向く]</A><BR>52 
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cd2:170-71 と問ひたまへば、<BR>⏎
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57 と問ひたまへば、<BR>⏎
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cd2:180-81 「いと浮きたる心地もしはべる、また尋ねきこえむにつけては、いかなりけることにかと、心得ず思されぬべきに、かたがた、憚られはべれど、かの山里に、知るべき人の隠ろへてはべるやうに聞きはべりしを。確かにてこそは、いかなるさまにて、なども漏らしきこえめ、など思ひたまふるほどに、御弟子になりて、忌むことなど授けたまひてけり、と聞きはべるは、まことか。まだ年も若く、親などもありし人なれば、ここに失ひたるやうに、かことかくる人なむはべるを」<BR>⏎
<P>⏎
62 「いと浮きたる心地もしはべる、また尋ねきこえむにつけては、いかなりけることにかと、心得ず思されぬべきに、かたがた、憚られはべれど、かの山里に、知るべき人の隠ろへてはべるやうに聞きはべりしを。確かにてこそは、いかなるさまにて、なども漏らしきこえめ、など思ひたまふるほどに、御弟子になりて、忌むことなど授けたまひてけり、と聞きはべるは、まことか。まだ年も若く、親などもありし人なれば、ここに失ひたるやうに、かことかくる人なむはべるを」<BR>⏎
d183<P>⏎
text5484 <A NAME="in12">[第二段 僧都、薫に宇治での出来事を語る]</A><BR>64 
d185<P>⏎
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d1103<P>⏎
cd2:1104-105 さらにしろしめすべきこととは、いかでかそらにさとりはべらむ。珍しきことのさまにもあるを、世語りにもしはべりぬべかりしかど、聞こえありて、わづらはしかるべきことにもこそと、この老い人どものとかく申して、この月ごろ、音なくてはべりつるになむ」<BR>⏎
<P>⏎
74 さらにしろしめすべきこととは、いかでかそらにさとりはべらむ。珍しきことのさまにもあるを、世語りにもしはべりぬべかりしかど、聞こえありて、わづらはしかるべきことにもこそと、この老い人どものとかく申して、この月ごろ、音なくてはべりつるになむ」<BR>⏎
d1107<P>⏎
text54108 <A NAME="in13">[第三段 薫、僧都に浮舟との面会を依頼]</A><BR>76 
d1109<P>⏎
cd2:1110-111 「さてこそあなれ」と、<A HREF="#k05">ほの聞きて</A><A NAME="t05">、</A>かくまでも問ひ出でたまへることなれど、「むげに亡き人と思ひ果てにし人を、さはまことにあるにこそは」と思すほど、夢の心地してあさましければ、つつみもあへず涙ぐまれたまひぬるを、僧都の恥づかしげなるに、「かくまで見ゆべきことかは」と思ひ返して、つれなくもてなしたまへど、「かく思しけることを、この世には亡き人と同じやうになしたること」と、過ちしたる心地して、罪深ければ、<BR>⏎
<P>⏎
77 「さてこそあなれ」と、<A HREF="#k05">ほの聞きて</A><A NAME="t05">、</A>かくまでも問ひ出でたまへることなれど、「むげに亡き人と思ひ果てにし人を、さはまことにあるにこそは」と思すほど、夢の心地してあさましければ、つつみもあへず涙ぐまれたまひぬるを、僧都の恥づかしげなるに、「かくまで見ゆべきことかは」と思ひ返して、つれなくもてなしたまへど、「かく思しけることを、この世には亡き人と同じやうになしたること」と、過ちしたる心地して、罪深ければ、<BR>⏎
d1113<P>⏎
cd4:2114-117 と問ひ申したまへば、<BR>⏎
<P>⏎
 「なま王家流などいふべき筋にやありけむ。ここにも、もとよりわざと思ひしことにもはべらず。ものはかなくて見つけそめてははべりしかど、またいとかくまで落ちあふるべき際と思ひたまへざりしを。珍かに、跡もなく消え失せにしかば、身を投げたるにやなど、さまざまに疑ひ多くて、確かなることは、え聞きはべらざりつるになむ。<BR>⏎
<P>⏎
79-80 と問ひ申したまへば、<BR>⏎
 「なま王家流などいふべき筋にやありけむ。ここにも、もとよりわざと思ひしことにもはべらず。ものはかなくて見つけそめてははべりしかど、またいとかくまで落ちあふるべき際と思ひたまへざりしを。珍かに、跡もなく消え失せにしかば、身を投げたるにやなど、さまざまに疑ひ多くて、確かなることは、え聞きはべらざりつるになむ。<BR>⏎
d1119<P>⏎
cd2:1120-121 などのたまひて、さて<BR>⏎
<P>⏎
82 などのたまひて、さて<BR>⏎
d1123<P>⏎
d1125<P>⏎
cd4:2126-129 「容貌を変へ、世を背きにきとおぼえたれど、髪鬚を剃りたる法師だに、あやしき心は失せぬもあなり。まして女の御身はいかがあらむ。いとほしう、罪得ぬべきわざにもあるべきかな」<BR>⏎
<P>⏎
 とあぢきなく心乱れぬ。<BR>⏎
<P>⏎
85-86 「容貌を変へ、世を背きにきとおぼえたれど、髪鬚を剃りたる法師だに、あやしき心は失せぬもあなり。まして女の御身はいかがあらむ。いとほしう、罪得ぬべきわざにもあるべきかな」<BR>⏎
 とあぢきなく心乱れぬ。<BR>⏎
d1131<P>⏎
cd2:1132-133 と申したまふ。いと心もとなけれど、「なほなほ」と、うちつけに焦られむも、さま悪しければ、「さらば」とて、帰りたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
88 と申したまふ。いと心もとなけれど、「なほなほ」と、うちつけに焦られむも、さま悪しければ、「さらば」とて、帰りたまふ。<BR>⏎
text54134 <A NAME="in14">[第四段 僧都、浮舟への手紙を書く]</A><BR>89 
d1135<P>⏎
d1137<P>⏎
cd2:1138-139 「これなむ、その人の近きゆかりなるを、これをかつがつものせむ。御文一行賜へ。その人とはなくて、ただ尋ねきこゆる人なむある、とばかりの心を知らせたまへ」<BR>⏎
<P>⏎
91 「これなむ、その人の近きゆかりなるを、これをかつがつものせむ。御文一行賜へ。その人とはなくて、ただ尋ねきこゆる人なむある、とばかりの心を知らせたまへ」<BR>⏎
d1141<P>⏎
d1143<P>⏎
d1145<P>⏎
d1147<P>⏎
d1149<P>⏎
cd6:3150-155 ましていとはかなきことにつけてしも、重き罪得べきことは、などてか思ひたまへむ。さらにあるまじきことにはべり。疑ひ思すまじ。ただいとほしき親の思ひなどを、聞きあきらめはべらむばかりなむ、うれしう心やすかるべき」<BR>⏎
<P>⏎
 など昔より深かりし方の心を語りたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
 僧都も、げにとうなづきて、<BR>⏎
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97-99 ましていとはかなきことにつけてしも、重き罪得べきことは、などてか思ひたまへむ。さらにあるまじきことにはべり。疑ひ思すまじ。ただいとほしき親の思ひなどを、聞きあきらめはべらむばかりなむ、うれしう心やすかるべき」<BR>⏎
 など昔より深かりし方の心を語りたまふ。<BR>⏎
 僧都も、げにとうなづきて、<BR>⏎
d1157<P>⏎
d1159<P>⏎
d1161<P>⏎
cd2:1162-163 と思ひわづらひて帰りたまふに、この弟の童を、僧都、目止めてほめたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
103 と思ひわづらひて帰りたまふに、この弟の童を、僧都、目止めてほめたまふ。<BR>⏎
d1165<P>⏎
d1167<P>⏎
d1169<P>⏎
cd2:1170-171 とうち語らひたまふ。この子は心も得ねど、文取りて御供に出づ。坂本になれば、御前の人びとすこし立ちあかれて、「忍びやかにを」とのたまふ。<BR>⏎
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107 とうち語らひたまふ。この子は心も得ねど、文取りて御供に出づ。坂本になれば、御前の人びとすこし立ちあかれて、「忍びやかにを」とのたまふ。<BR>⏎
text54172 <A NAME="in15">[第五段 浮舟、薫らの帰りを見る]</A><BR>108 
d1173<P>⏎
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d1183<P>⏎
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text54186 <H4>第二章 浮舟の物語 浮舟、小君との面会を拒み、返事も書かない</H4>115 
text54187 <A NAME="in21">[第一段 薫、浮舟のもとに小君を遣わす]</A><BR>116 
d1188<P>⏎
cd2:1189-190 かの殿は、「この子をやがてやらむ」と思しけれど、人目多くて便なければ、殿に帰りたまひて、またの日、ことさらにぞ出だし立てたまふ。睦ましく思す人の、ことことしからぬ二三人、送りにて、昔も常に遣はしし随身添へたまへり。人聞かぬ間に呼び寄せたまひて、<BR>⏎
<P>⏎
117 かの殿は、「この子をやがてやらむ」と思しけれど、人目多くて便なければ、殿に帰りたまひて、またの日、ことさらにぞ出だし立てたまふ。睦ましく思す人の、ことことしからぬ二三人、送りにて、昔も常に遣はしし随身添へたまへり。人聞かぬ間に呼び寄せたまひて、<BR>⏎
d1192<P>⏎
cd4:2193-196 とまだきにいと口固めたまふを、幼き心地にも、姉弟は多かれど、この君の容貌をば、似るものなしと思ひしみたりしに、亡せたまひにけりと聞きて、いと悲しと思ひわたるに、かくのたまへば、うれしきにも涙の落つるを、恥づかしと思ひて、<BR>⏎
<P>⏎
 「をを」<BR>⏎
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119-120 とまだきにいと口固めたまふを、幼き心地にも、姉弟は多かれど、この君の容貌をば、似るものなしと思ひしみたりしに、亡せたまひにけりと聞きて、いと悲しと思ひわたるに、かくのたまへば、うれしきにも涙の落つるを、恥づかしと思ひて、<BR>⏎
 「をを」<BR>⏎
d1198<P>⏎
d1200<P>⏎
d1202<P>⏎
d1204<P>⏎
cd4:2205-208 「なほのたまはせよ。心憂く思し隔つること」<BR>⏎
<P>⏎
 といみじく恨みて、ことの心を知らねば、あわたたしきまで思ひたるほどに、<BR>⏎
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125-126 「なほのたまはせよ。心憂く思し隔つること」<BR>⏎
 といみじく恨みて、ことの心を知らねば、あわたたしきまで思ひたるほどに、<BR>⏎
d1210<P>⏎
d1212<P>⏎
text54213 <A NAME="in22">[第二段 小君、小野山荘の浮舟を訪問]</A><BR>129 
d1214<P>⏎
cd2:1215-216 あやしけれど、「これこそは、さは確かなる御消息ならめ」とて、<BR>⏎
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130 あやしけれど、「これこそは、さは確かなる御消息ならめ」とて、<BR>⏎
d1218<P>⏎
d1220<P>⏎
d1222<P>⏎
d1224<P>⏎
d1226<P>⏎
cd2:1227-228 とて名書きたまへり。あらじなど、あらがふべきやうもなし。<BR>⏎
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136 とて名書きたまへり。あらじなど、あらがふべきやうもなし。<BR>⏎
d1230<P>⏎
d1232<P>⏎
d1234<P>⏎
d1236<P>⏎
d1238<P>⏎
d1240<P>⏎
text54241 <A NAME="in23">[第三段 浮舟、小君との面会を拒む]</A><BR>143 
d1242<P>⏎
d1244<P>⏎
cd6:3245-250 「この君は、誰れにかおはすらむ。なほいと心憂し。今さへ、かくあながちに隔てさせたまふ」<BR>⏎
<P>⏎
 と責められて、すこし外ざまに向きて見たまへば、この子は今はと世を思ひなりし夕暮れに、いと恋しと思ひし人なりけり。同じ所にて見しほどは、いと性なく、あやにくにおごりて憎かりしかど、母のいとかなしくして、宇治にも時々率ておはせしかば、すこしおよすけしままに、かたみに思へり。<BR>⏎
<P>⏎
 童心を思ひ出づるにも、夢のやうなり。まづ母のありさま、いと問はまほしく、「異人びとの上は、おのづからやうやうと聞けど、親のおはすらむやうは、ほのかにもえ聞かずかし」と、なかなかこれを見るに、いと悲しくて、ほろほろと泣かれぬ。<BR>⏎
<P>⏎
145-147 「この君は、誰れにかおはすらむ。なほいと心憂し。今さへ、かくあながちに隔てさせたまふ」<BR>⏎
 と責められて、すこし外ざまに向きて見たまへば、この子は今はと世を思ひなりし夕暮れに、いと恋しと思ひし人なりけり。同じ所にて見しほどは、いと性なく、あやにくにおごりて憎かりしかど、母のいとかなしくして、宇治にも時々率ておはせしかば、すこしおよすけしままに、かたみに思へり。<BR>⏎
 童心を思ひ出づるにも、夢のやうなり。まづ母のありさま、いと問はまほしく、「異人びとの上は、おのづからやうやうと聞けど、親のおはすらむやうは、ほのかにもえ聞かずかし」と、なかなかこれを見るに、いと悲しくて、ほろほろと泣かれぬ。<BR>⏎
d1252<P>⏎
d1254<P>⏎
cd4:2255-258 と言ふを、「何か今は世にあるものとも思はざらむに、あやしきさまに面変りして、ふと見えむも恥づかし」と思へば、とばかりためらひて、<BR>⏎
<P>⏎
 「げに隔てありと、思しなすらむが苦しさに、ものも言はれでなむ。あさましかりけむありさまは、珍かなることと見たまひてけむを、うつし心も失せ、魂などいふらむものも、あらぬさまになりにけるにやあらむ。いかにもいかにも、過ぎにし方のことを、我ながらさらにえ思ひ出でぬに、紀伊守とかありし人の、世の物語すめりし中になむ、見しあたりのことにやと、ほのかに思ひ出でらるることある心地せし。<BR>⏎
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150-151 と言ふを、「何か今は世にあるものとも思はざらむに、あやしきさまに面変りして、ふと見えむも恥づかし」と思へば、とばかりためらひて、<BR>⏎
 「げに隔てありと、思しなすらむが苦しさに、ものも言はれでなむ。あさましかりけむありさまは、珍かなることと見たまひてけむを、うつし心も失せ、魂などいふらむものも、あらぬさまになりにけるにやあらむ。いかにもいかにも、過ぎにし方のことを、我ながらさらにえ思ひ出でぬに、紀伊守とかありし人の、世の物語すめりし中になむ、見しあたりのことにやと、ほのかに思ひ出でらるることある心地せし。<BR>⏎
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cd2:1271-272 と皆言ひ合はせて、母屋の際に几帳立てて入れたり。<BR>⏎
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158 と皆言ひ合はせて、母屋の際に几帳立てて入れたり。<BR>⏎
text54273 <A NAME="in24">[第四段 小君、薫からの手紙を渡す]</A><BR>159 
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cd4:2279-282 と伏目にて言へば、<BR>⏎
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 「そそや。あなうつくし」<BR>⏎
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162-163 と伏目にて言へば、<BR>⏎
 「そそや。あなうつくし」<BR>⏎
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cd2:1289-290 「思し隔てて、おぼおぼしくもてなさせたまふには、何事をか聞こえはべらむ。疎く思しなりにければ、聞こゆべきこともはべらず。ただこの御文を、人伝てならで奉れ、とてはべりつる、いかでたてまつらむ」<BR>⏎
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167 「思し隔てて、おぼおぼしくもてなさせたまふには、何事をか聞こえはべらむ。疎く思しなりにければ、聞こゆべきこともはべらず。ただこの御文を、人伝てならで奉れ、とてはべりつる、いかでたてまつらむ」<BR>⏎
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cd2:1293-294 「いとことわりなり。なほいとかくうたてなおはせそ。さすがにむくつけき御心にこそ」<BR>⏎
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169 「いとことわりなり。なほいとかくうたてなおはせそ。さすがにむくつけき御心にこそ」<BR>⏎
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cd2:1299-300 とかく疎々しきを、心憂しと思ひて急ぐ。<BR>⏎
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172 とかく疎々しきを、心憂しと思ひて急ぐ。<BR>⏎
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cd11:5303-313 「さらに聞こえむ方なく、さまざまに罪重き御心をば、僧都に思ひ許しきこえて、今はいかで、あさましかりし世の夢語りをだに、と急がるる心の、我ながらもどかしきになむ。まして人目はいかに」<BR>⏎
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 と書きもやりたまはず。<BR>⏎
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 「法の師と尋ぬる道をしるべにて<BR>⏎
  思はぬ山に踏み惑ふかな<BR>⏎
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 この人は見や忘れたまひぬらむ。ここには、行方なき御形見に見る物にてなむ」<BR>⏎
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 などこまやかなり。<BR>⏎
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174-178 「さらに聞こえむ方なく、さまざまに罪重き御心をば、僧都に思ひ許しきこえて、今はいかで、あさましかりし世の夢語りをだに、と急がるる心の、我ながらもどかしきになむ。まして人目はいかに」<BR>⏎
 と書きもやりたまはず。<BR>⏎
 「法の師と尋ぬる道をしるべにて<BR>  思はぬ山に踏み惑ふかな<BR>⏎
 この人は見や忘れたまひぬらむ。ここには、行方なき御形見に見る物にてなむ」<BR>⏎
 などこまやかなり。<BR>⏎
text54314 <A NAME="in25">[第五段 浮舟、薫への返事を拒む]</A><BR>179 
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cd2:1326-327 とて広げながら、尼君にさしやりたまへれば、<BR>⏎
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185 とて広げながら、尼君にさしやりたまへれば、<BR>⏎
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cd2:1334-335 「もののけにやおはすらむ。例のさまに見えたまふ折なく、悩みわたりたまひて、御容貌も異になりたまへるを、尋ねきこえたまふ人あらば、いとわづらはしかるべきこと、と見たてまつり嘆きはべりしも、しるくかくいとあはれに、心苦しき御ことどもはべりけるを、今なむ、いとかたじけなく思ひはべる。<BR>⏎
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189 「もののけにやおはすらむ。例のさまに見えたまふ折なく、悩みわたりたまひて、御容貌も異になりたまへるを、尋ねきこえたまふ人あらば、いとわづらはしかるべきこと、と見たてまつり嘆きはべりしも、しるくかくいとあはれに、心苦しき御ことどもはべりけるを、今なむ、いとかたじけなく思ひはべる。<BR>⏎
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text54340 <A NAME="in26">[第六段 小君、空しく帰り来る]</A><BR>192 
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cd2:1352-353 「ただかく、おぼつかなき御ありさまを聞こえさせたまふべきなめり。<A HREF="#no1">雲の遥かに</A><A NAME="te1">隔</A>たらぬほどにもはべるめるを、山風吹くとも、またもかならず立ち寄らせたまひなむかし」<BR>⏎
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198 「ただかく、おぼつかなき御ありさまを聞こえさせたまふべきなめり。<A HREF="#no1">雲の遥かに</A><A NAME="te1">隔</A>たらぬほどにもはべるめるを、山風吹くとも、またもかならず立ち寄らせたまひなむかし」<BR>⏎
d1355<P>⏎
d2357-358
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text54359 <a name="in31">【出典】<BR>201 
cd2:1360-361</a><A NAME="no1">出典1</A> 逢ふことは雲居遥かに鳴る神の音に聞きつつ恋ひわたるかな(古今集恋一-四八二 紀貫之)<A HREF="#te1">(戻)</A><BR>⏎

202<A NAME="no1">出典1</A> 逢ふことは雲居遥かに鳴る神の音に聞きつつ恋ひわたるかな(古今集恋一-四八二 紀貫之)<A HREF="#te1">(戻)</A><BR>⏎
text54362<p> <a name="in32">【校訂】<BR>203 
c1364</a><A NAME="k01">校訂1</A> 加へたまひ--くはへ(へ/+給<朱>)<A HREF="#t01">(戻)</A><BR>⏎
205<A NAME="k01">校訂1</A> 加へたまひ--くはへ(へ/+給<朱>)<A HREF="#t01">(戻)</A><BR>⏎
d1371</p>⏎
d1378</p>⏎
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