C:\Projects\Genji\InstantServer\htdocs\genji\src\original\text16.html C:\Projects\Genji\InstantServer\htdocs\genji\src\original-20141119\text16.html
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<TITLE>関屋(大島本)</TITLE> <TITLE>関屋(大島本)</TITLE>
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First updated 9/20/1996(ver.1-1)<BR> First updated 9/20/1996(ver.1-1)<BR>
Last updated 9/21/2010(ver.2-3)<BR> Last updated 9/21/2010(ver.2-3)<BR>
渋谷栄一校訂(C)<BR> 渋谷栄一校訂(C)<BR>
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  <H3>関屋</H3>   <H3>関屋</H3>
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光る源氏の須磨明石離京時代から帰京後までの空蝉の物語<BR> 光る源氏の須磨明石離京時代から帰京後までの空蝉の物語<BR>
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 [主要登場人物]<BR>  [主要登場人物]<BR>
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<DT> 光る源氏<ひかるげんじ> <DT> 光る源氏<ひかるげんじ>
<DD>呼称---殿、二十九歳<BR> <DD>呼称---殿、二十九歳<BR>
<DT> 空蝉<うつせみ> <DT> 空蝉<うつせみ>
<DD>呼称---帚木・女君、伊予介の後妻<BR> <DD>呼称---帚木・女君、伊予介の後妻<BR>
<DT> 伊予介<いよのすけ> <DT> 伊予介<いよのすけ>
<DD>呼称---常陸・常陸守、空蝉の夫<BR> <DD>呼称---常陸・常陸守、空蝉の夫<BR>
<DT> 紀伊守<きいのかみ> <DT> 紀伊守<きいのかみ>
<DD>呼称---河内守・守、伊予介の子<BR> <DD>呼称---河内守・守、伊予介の子<BR>
<DT> 小君<こぎみ> <DT> 小君<こぎみ>
<DD>呼称---右衛門佐・佐、空蝉の弟<BR> <DD>呼称---右衛門佐・佐、空蝉の弟<BR>
</DL> </DL>
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第一章 空蝉の物語 逢坂関での再会の物語<BR> 第一章 空蝉の物語 逢坂関での再会の物語<BR>
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<LI>空蝉、夫と常陸国下向---<A HREF="#in11">伊予介といひしは、故院崩れさせたまひて</A> <LI>空蝉、夫と常陸国下向---<A HREF="#in11">伊予介といひしは、故院崩れさせたまひて</A>
<LI>源氏、石山寺参詣---<A HREF="#in12">関入る日しも、この殿、石山に御願果しに</A> <LI>源氏、石山寺参詣---<A HREF="#in12">関入る日しも、この殿、石山に御願果しに</A>
<LI>逢坂の関での再会---<A HREF="#in13">九月晦日なれば、紅葉の色々こきまぜ、霜枯れの草</A> <LI>逢坂の関での再会---<A HREF="#in13">九月晦日なれば、紅葉の色々こきまぜ、霜枯れの草</A>
</OL> </OL>
第二章 空蝉の物語 手紙を贈る<BR> 第二章 空蝉の物語 手紙を贈る<BR>
<OL> <OL>
<LI>昔の小君と紀伊守---<A HREF="#in21">石山より出でたまふ御迎へに右衛門佐参りてぞ</A> <LI>昔の小君と紀伊守---<A HREF="#in21">石山より出でたまふ御迎へに右衛門佐参りてぞ</A>
<LI>空蝉へ手紙を贈る---<A HREF="#in22">佐召し寄せて、御消息あり。「今は</A> <LI>空蝉へ手紙を贈る---<A HREF="#in22">佐召し寄せて、御消息あり。「今は</A>
</OL> </OL>
第三章 空蝉の物語 夫の死去後に出家<BR> 第三章 空蝉の物語 夫の死去後に出家<BR>
<OL> <OL>
<LI>夫常陸介死去---<A HREF="#in31">かかるほどに、この常陸守、老いの積もりにや</A> <LI>夫常陸介死去---<A HREF="#in31">かかるほどに、この常陸守、老いの積もりにや</A>
<LI>空蝉、出家す---<A HREF="#in32">しばしこそ、「さのたまひしものを」など</A> <LI>空蝉、出家す---<A HREF="#in32">しばしこそ、「さのたまひしものを」など</A>
</OL> </OL>
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<A HREF="#in41">【出典】</A><BR> <A HREF="#in41">【出典】</A><BR>
<A HREF="#in42">【校訂】</A><BR> <A HREF="#in42">【校訂】</A><BR>
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 <H4>第一章 空蝉の物語 逢坂関での再会の物語</H4>  <H4>第一章 空蝉の物語 逢坂関での再会の物語</H4>
 <A NAME="in11">[第一段 空蝉、夫と常陸国下向]</A><BR>  <A NAME="in11">[第一段 空蝉、夫と常陸国下向]</A><BR>
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 伊予介といひしは、故院崩れさせたまひて、またの年、常陸になりて下りしかば、かの帚木もいざなはれにけり。須磨の御旅居も遥かに聞きて、人知れず思ひやりきこえぬにしもあらざりしかど、伝へ聞こゆべきよすがだになくて、<A HREF="#no1">筑波嶺の山を吹き越す風</A><A NAME="te1"></A>、浮きたる心地して、いささかの伝へだになくて、年月かさなりにけり。限れることもなかりし御旅居なれど、京に帰り住みたまひて、またの年の秋ぞ、常陸は上りける。<BR>  伊予介といひしは、故院崩れさせたまひて、またの年、常陸になりて下りしかば、かの帚木もいざなはれにけり。須磨の御旅居も遥かに聞きて、人知れず思ひやりきこえぬにしもあらざりしかど、伝へ聞こゆべきよすがだになくて、<A HREF="#no1">筑波嶺の山を吹き越す風</A><A NAME="te1"></A>、浮きたる心地して、いささかの伝へだになくて、年月かさなりにけり。限れることもなかりし御旅居なれど、京に帰り住みたまひて、またの年の秋ぞ、常陸は上りける。<BR>
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 <A NAME="in12">[第二段 源氏、石山寺参詣]</A><BR>  <A NAME="in12">[第二段 源氏、石山寺参詣]</A><BR>
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 関入る日しも、この殿、石山に御願果しに詣でたまひけり。京より、かの紀伊守などいひし子ども、迎へに来たる人びと、「この殿かく詣でたまふべし」と告げければ、「道のほど騒がしかりなむものぞ」とて、まだ暁より急ぎけるを、女車多く、所狭うゆるぎ来るに、日たけぬ。<BR>  関入る日しも、この殿、石山に御願果しに詣でたまひけり。京より、かの紀伊守などいひし子ども、迎へに来たる人びと、「この殿かく詣でたまふべし」と告げければ、「道のほど騒がしかりなむものぞ」とて、まだ暁より急ぎけるを、女車多く、所狭うゆるぎ来るに、日たけぬ。<BR>
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 打出の浜来るほどに、「<A HREF="#k01">殿は</A><A NAME="t01"></A>粟田山越えたまひぬ」とて、御前の人びと、道もさりあへず来込みぬれば、関山に皆下りゐて、ここかしこの杉の下に車どもかき下ろし、木隠れに居かしこまりて過ぐしたてまつる。車など、かたへは後らかし、先に立てなどしたれど、なほ、類広く見ゆ。<BR>  打出の浜来るほどに、「<A HREF="#k01">殿は</A><A NAME="t01"></A>粟田山越えたまひぬ」とて、御前の人びと、道もさりあへず来込みぬれば、関山に皆下りゐて、ここかしこの杉の下に車どもかき下ろし、木隠れに居かしこまりて過ぐしたてまつる。車など、かたへは後らかし、先に立てなどしたれど、なほ、類広く見ゆ。<BR>
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 車十ばかりぞ、袖口、物の色あひなども、漏り出でて見えたる、田舎びず、よしありて、斎宮の御下りなにぞやうの折の物見車思し出でらる。殿も、かく世に栄え出でたまふめづらしさに、数もなき御前ども、皆目とどめたり。<BR>  車十ばかりぞ、袖口、物の色あひなども、漏り出でて見えたる、田舎びず、よしありて、斎宮の御下りなにぞやうの折の物見車思し出でらる。殿も、かく世に栄え出でたまふめづらしさに、数もなき御前ども、皆目とどめたり。<BR>
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 <A NAME="in13">[第三段 逢坂の関での再会]</A><BR>  <A NAME="in13">[第三段 逢坂の関での再会]</A><BR>
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 九月晦日なれば、紅葉の色々こきまぜ、霜枯れの草むらむらをかしう見えわたるに、関屋より、さとくづれ出でたる旅姿どもの、色々の襖のつきづきしき縫物、括り染めのさまも、さるかたにをかしう見ゆ。御車は簾下ろしたまひて、かの昔の小君、今、右衛門佐なる<A HREF="#k02">を召し</A><A NAME="t02"></A>せて、<BR>  九月晦日なれば、紅葉の色々こきまぜ、霜枯れの草むらむらをかしう見えわたるに、関屋より、さとくづれ出でたる旅姿どもの、色々の襖のつきづきしき縫物、括り染めのさまも、さるかたにをかしう見ゆ。御車は簾下ろしたまひて、かの昔の小君、今、右衛門佐なる<A HREF="#k02">を召し</A><A NAME="t02"></A>せて、<BR>
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 「今日の御関迎へは、え思ひ捨てたまはじ」<BR>  「今日の御関迎へは、え思ひ捨てたまはじ」<BR>
 などのたまふ御心のうち、いとあはれに思し出づること多かれど、おほぞうにてかひなし。女も、人知れず昔のこと忘れねば、とりかへして、ものあはれなり。<BR>  などのたまふ御心のうち、いとあはれに思し出づること多かれど、おほぞうにてかひなし。女も、人知れず昔のこと忘れねば、とりかへして、ものあはれなり。<BR>
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 「行くと来とせき止めがたき涙をや<BR>  「行くと来とせき止めがたき涙をや<BR>
  絶えぬ清水と人は見るらむ<BR>   絶えぬ清水と人は見るらむ<BR>
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 え知りたまはじかし」と思ふに、いとかひなし。<BR>  え知りたまはじかし」と思ふに、いとかひなし。<BR>
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 <H4>第二章 空蝉の物語 手紙を贈る</H4>  <H4>第二章 空蝉の物語 手紙を贈る</H4>
 <A NAME="in21">[第一段 昔の小君と紀伊守]</A><BR>  <A NAME="in21">[第一段 昔の小君と紀伊守]</A><BR>
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 石山より出でたまふ御迎へに右衛門佐参りてぞ、まかり過ぎしかしこまりなど申す。昔、童にて、いとむつましうらうたきものにしたまひしかば、かうぶりなど得しまで、この御徳に隠れたりしを、おぼえぬ世の騷ぎありしころ、ものの聞こえに憚りて、常陸に下りしをぞ、すこし心置きて年ごろは思しけれど、色にも出だしたまはず、昔のやうにこそあらねど、なほ親しき家人のうちには数へたまひけり。<BR>  石山より出でたまふ御迎へに右衛門佐参りてぞ、まかり過ぎしかしこまりなど申す。昔、童にて、いとむつましうらうたきものにしたまひしかば、かうぶりなど得しまで、この御徳に隠れたりしを、おぼえぬ世の騷ぎありしころ、ものの聞こえに憚りて、常陸に下りしをぞ、すこし心置きて年ごろは思しけれど、色にも出だしたまはず、昔のやうにこそあらねど、なほ親しき家人のうちには数へたまひけり。<BR>
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 紀伊守といひしも、今は河内守にぞなりにける。その<A HREF="#k03"></A><A NAME="t03"></A>右近将監解けて御供に<A HREF="#k04">下りし</A><A NAME="t04"></A>ぞ、とりわきてなし出でたまひければ、それにぞ誰も思ひ知りて、「などてすこしも、世に従ふ心をつかひけむ」など、思ひ出でける。<BR>  紀伊守といひしも、今は河内守にぞなりにける。その<A HREF="#k03"></A><A NAME="t03"></A>右近将監解けて御供に<A HREF="#k04">下りし</A><A NAME="t04"></A>ぞ、とりわきてなし出でたまひければ、それにぞ誰も思ひ知りて、「などてすこしも、世に従ふ心をつかひけむ」など、思ひ出でける。<BR>
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 <A NAME="in22">[第二段 空蝉へ手紙を贈る]</A><BR>  <A NAME="in22">[第二段 空蝉へ手紙を贈る]</A><BR>
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 佐召し寄せて、御消息あり。「今は思し忘れぬべきことを、心長くもおはするかな」と思ひゐたり。<BR>  佐召し寄せて、御消息あり。「今は思し忘れぬべきことを、心長くもおはするかな」と思ひゐたり。<BR>
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 「一日は、契り知られしを、さは思し知りけむや。<BR>  「一日は、契り知られしを、さは思し知りけむや。<BR>
  わくらばに行き逢ふ道を頼みしも<BR>   わくらばに行き逢ふ道を頼みしも<BR>
  なほかひなしや<A HREF="#no2">潮ならぬ海</A><A NAME="te2"><BR>   なほかひなしや<A HREF="#no2">潮ならぬ海</A><A NAME="te2"><BR>
 関</A>守の、さもうらやましく、めざましかりしかな」<BR>  関</A>守の、さもうらやましく、めざましかりしかな」<BR>
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 とあり。<BR>  とあり。<BR>
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 「年ごろのとだえも、うひうひしくなりにけれど、心にはいつとなく、ただ今の心地するならひになむ。好き好きしう、いとど憎まれむや」<BR>  「年ごろのとだえも、うひうひしくなりにけれど、心にはいつとなく、ただ今の心地するならひになむ。好き好きしう、いとど憎まれむや」<BR>
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 とて、賜へれば、かたじけなくて持て行きて、<BR>  とて、賜へれば、かたじけなくて持て行きて、<BR>
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 「なほ、聞こえたまへ。昔にはすこし思しのくことあらむと思ひたまふるに、同じやうなる御心のなつかしさなむ、いとどありがたき。すさびごとぞ用なきことと思へど、えこそすくよかに聞こえ返さね。女にては、負けきこえたまへらむに、罪ゆるされぬべし」<BR>  「なほ、聞こえたまへ。昔にはすこし思しのくことあらむと思ひたまふるに、同じやうなる御心のなつかしさなむ、いとどありがたき。すさびごとぞ用なきことと思へど、えこそすくよかに聞こえ返さね。女にては、負けきこえたまへらむに、罪ゆるされぬべし」<BR>
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 など言ふ。今は、ましていと恥づかしう、よろづのこと、うひうひしき心地すれど、めづらしきにや、え忍ばれざりけむ、<BR>  など言ふ。今は、ましていと恥づかしう、よろづのこと、うひうひしき心地すれど、めづらしきにや、え忍ばれざりけむ、<BR>
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 「逢坂の関やいかなる関なれば<BR>  「逢坂の関やいかなる関なれば<BR>
  しげき嘆きの仲を分くらむ<BR>   しげき嘆きの仲を分くらむ<BR>
 夢のやうになむ」<BR>  夢のやうになむ」<BR>
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 と聞こえたり。あはれもつらさも、忘れぬふしと思し置かれたる人なれば、折々は、なほ、のたまひ動かしけり。<BR>  と聞こえたり。あはれもつらさも、忘れぬふしと思し置かれたる人なれば、折々は、なほ、のたまひ動かしけり。<BR>
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 <H4>第三章 空蝉の物語 夫の死去後に出家</H4>  <H4>第三章 空蝉の物語 夫の死去後に出家</H4>
 <A NAME="in31">[第一段 夫常陸介死去]</A><BR>  <A NAME="in31">[第一段 夫常陸介死去]</A><BR>
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 かかるほどに、この常陸守、老いの積もりにや、悩ましくのみして、もの心細かりければ、子どもに、ただこの君の御ことをのみ言ひ置きて、<BR>  かかるほどに、この常陸守、老いの積もりにや、悩ましくのみして、もの心細かりければ、子どもに、ただこの君の御ことをのみ言ひ置きて、<BR>
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 「よろづのこと、ただこの御心にのみ任せて、ありつる世に変はらで仕うまつれ」<BR>  「よろづのこと、ただこの御心にのみ任せて、ありつる世に変はらで仕うまつれ」<BR>
<P> <P>
 とのみ、明け暮れ言ひけり。<BR>  とのみ、明け暮れ言ひけり。<BR>
 女君、「心憂き宿世ありて、この人にさへ後れて、いかなるさまにはふれ惑ふべきにかあらむ」と思ひ嘆きたまふを見るに、<BR>  女君、「心憂き宿世ありて、この人にさへ後れて、いかなるさまにはふれ惑ふべきにかあらむ」と思ひ嘆きたまふを見るに、<BR>
<P> <P>
 「命の限りあるものなれば、惜しみ止むべき方もなし。いかでか、この人の御ために残し置く魂もがな。わが子どもの心も知らぬを」<BR>  「命の限りあるものなれば、惜しみ止むべき方もなし。いかでか、この人の御ために残し置く魂もがな。わが子どもの心も知らぬを」<BR>
<P> <P>
 と、うしろめたう悲しきことに、言ひ思へど、心にえ止めぬものにて、亡せぬ。<BR>  と、うしろめたう悲しきことに、言ひ思へど、心にえ止めぬものにて、亡せぬ。<BR>
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 <A NAME="in32">[第二段 空蝉、出家す]</A><BR>  <A NAME="in32">[第二段 空蝉、出家す]</A><BR>
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 しばしこそ、「さのたまひしものを」など、情けつくれど、うはべこそあれ、つらきこと多かり。とあるもかかるも世の道理なれば、身一つの憂きことにて、嘆き明かし暮らす。ただ、この河内守のみぞ、昔より好き心ありて、すこし情けがりける。<BR>  しばしこそ、「さのたまひしものを」など、情けつくれど、うはべこそあれ、つらきこと多かり。とあるもかかるも世の道理なれば、身一つの憂きことにて、嘆き明かし暮らす。ただ、この河内守のみぞ、昔より好き心ありて、すこし情けがりける。<BR>
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 「あはれにのたまひ置きし、数ならずとも、思し疎までのたまはせよ」<BR>  「あはれにのたまひ置きし、数ならずとも、思し疎までのたまはせよ」<BR>
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 など追従し寄りて、いとあさましき心の見えければ、<BR>  など追従し寄りて、いとあさましき心の見えければ、<BR>
 「憂き宿世ある身にて、かく生きとまりて、果て果ては、めづらしきことどもを聞き添ふるかな」と、人知れず思ひ知りて、人にさなむとも知らせで、尼になりにけり。<BR>  「憂き宿世ある身にて、かく生きとまりて、果て果ては、めづらしきことどもを聞き添ふるかな」と、人知れず思ひ知りて、人にさなむとも知らせで、尼になりにけり。<BR>
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 ある人びと、いふかひなしと、思ひ嘆く。守も、いとつらう、<BR>  ある人びと、いふかひなしと、思ひ嘆く。守も、いとつらう、<BR>
 「おのれを厭ひたまふほどに。残りの御齢は多くものしたまふらむ。いかでか過ぐしたまふべき」<BR>  「おのれを厭ひたまふほどに。残りの御齢は多くものしたまふらむ。いかでか過ぐしたまふべき」<BR>
 などぞ、あいなのさかしらやなどぞ、はべるめる。<BR>  などぞ、あいなのさかしらやなどぞ、はべるめる。<BR>
   
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 <a name="in41">【出典】<BR>  <a name="in41">【出典】<BR>
</a><A NAME="no1">出典1</A> 甲斐が嶺を嶺越し山越し吹く風に人にもがもやことづてやらむ(古今集東歌-一〇九八 甲斐歌)<A HREF="#te1">(戻)</A><BR> </a><A NAME="no1">出典1</A> 甲斐が嶺を嶺越し山越し吹く風に人にもがもやことづてやらむ(古今集東歌-一〇九八 甲斐歌)<A HREF="#te1">(戻)</A><BR>
<A NAME="no2">出典2</A> 潮満たぬ海と聞けばや世とともにみるめなくして年の経ぬらむ(後撰集恋一-五二八 読人しらず)<A HREF="#te2">(戻)</A><BR> <A NAME="no2">出典2</A> 潮満たぬ海と聞けばや世とともにみるめなくして年の経ぬらむ(後撰集恋一-五二八 読人しらず)<A HREF="#te2">(戻)</A><BR>
   
<p> <a name="in42">【校訂】<BR> <p> <a name="in42">【校訂】<BR>
備考--/) ミセケチ--$ 抹消--# 補入--+ 傍書--= ナゾリ--& 独自異文等--* 朱筆--<> 不明--<BR> 備考--/) ミセケチ--$ 抹消--# 補入--+ 傍書--= ナゾリ--& 独自異文等--* 朱筆--<> 不明--<BR>
</a><A NAME="k01">校訂1</A> 殿は--との(の/+は)<A HREF="#t01">(戻)</A><BR> </a><A NAME="k01">校訂1</A> 殿は--との(の/+は)<A HREF="#t01">(戻)</A><BR>
<A NAME="k02">校訂2</A> を召し--をし(し/<>)めし<A HREF="#t02">(戻)</A><BR> <A NAME="k02">校訂2</A> を召し--をし(し/<>)めし<A HREF="#t02">(戻)</A><BR>
<A NAME="k03">校訂3</A> 弟--を(を/+<>)うと<A HREF="#t03">(戻)</A><BR> <A NAME="k03">校訂3</A> 弟--を(を/+<>)うと<A HREF="#t03">(戻)</A><BR>
<A NAME="k04">校訂4</A> 下りし--くたり(り/+<><A HREF="#t04">(戻)</A><BR> <A NAME="k04">校訂4</A> 下りし--くたり(り/+<><A HREF="#t04">(戻)</A><BR>
</p> </p>
<p><a href="index.html">源氏物語の世界ヘ</a><BR> <p><a href="index.html">源氏物語の世界ヘ</a><BR>
<a href="roman16.html">ローマ字版 </a><BR> <a href="roman16.html">ローマ字版 </a><BR>
<a href="version16.html">現代語訳 </a><BR> <a href="version16.html">現代語訳 </a><BR>
<a href="note16.html">注釈</a><BR> <a href="note16.html">注釈</a><BR>
<a href="data16.html">大島本</a><BR> <a href="data16.html">大島本</a><BR>
<a href="okuiri16.html">自筆本奥入</a><BR> <a href="okuiri16.html">自筆本奥入</a><BR>
</p> </p>
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