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<TITLE>蛍(大島本)</TITLE> <TITLE>蛍(大島本)</TITLE>
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First updated 9/20/1996(ver.1-1)<BR> First updated 9/20/1996(ver.1-1)<BR>
Last updated 9/21/2010(ver.2-3)<BR> Last updated 9/21/2010(ver.2-3)<BR>
渋谷栄一校訂(C)<BR> 渋谷栄一校訂(C)<BR>
<P> <P>
  <H3></H3>   <H3></H3>
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光る源氏の太政大臣時代三十六歳の五月雨期の物語<BR> 光る源氏の太政大臣時代三十六歳の五月雨期の物語<BR>
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 [主要登場人物]<BR>  [主要登場人物]<BR>
<DL> <DL>
<DT> 光る源氏<ひかるげんじ><BR> <DT> 光る源氏<ひかるげんじ><BR>
<DD>呼称---大臣の君・大臣・殿、三十六歳<BR> <DD>呼称---大臣の君・大臣・殿、三十六歳<BR>
<DT> 夕霧<ゆうぎり><BR> <DT> 夕霧<ゆうぎり><BR>
<DD>呼称---中将・中将の君・君、光る源氏の長男<BR> <DD>呼称---中将・中将の君・君、光る源氏の長男<BR>
<DT> 紫の上<むらさきのうえ><BR> <DT> 紫の上<むらさきのうえ><BR>
<DD>呼称---紫の上・上・女君、源氏の正妻<BR> <DD>呼称---紫の上・上・女君、源氏の正妻<BR>
<DT> 玉鬘<たまかづら><BR> <DT> 玉鬘<たまかづら><BR>
<DD>呼称---対の姫君・姫君・西の対・対の御方・撫子・君・女、内大臣の娘<BR> <DD>呼称---対の姫君・姫君・西の対・対の御方・撫子・君・女、内大臣の娘<BR>
<DT> 内大臣<ないだいじん> <DT> 内大臣<ないだいじん>
<DD>呼称---内の大臣<BR> <DD>呼称---内の大臣<BR>
<DT> 蛍兵部卿宮<ほたるひょうぶきょうのみや><BR> <DT> 蛍兵部卿宮<ほたるひょうぶきょうのみや><BR>
<DD>呼称---兵部卿宮・宮・親王・君<BR> <DD>呼称---兵部卿宮・宮・親王・君<BR>
<DT> 柏木<かしわぎ><BR> <DT> 柏木<かしわぎ><BR>
<DD>呼称---右中将<BR> <DD>呼称---右中将<BR>
<DT> 明石御方<あかしのおほんかた><BR> <DT> 明石御方<あかしのおほんかた><BR>
<DD>呼称---明石御方<BR> <DD>呼称---明石御方<BR>
<DT> 明石姫君<あかしのひめぎみ><BR> <DT> 明石姫君<あかしのひめぎみ><BR>
<DD>呼称---姫君<BR> <DD>呼称---姫君<BR>
<DT> 鬚黒大将<ひげくろだいしょう><BR> <DT> 鬚黒大将<ひげくろだいしょう><BR>
<DD>呼称---右大将<BR> <DD>呼称---右大将<BR>
<DT> 秋好中宮<あきこのむちゅうぐう><BR> <DT> 秋好中宮<あきこのむちゅうぐう><BR>
<DD>呼称---中宮<BR> <DD>呼称---中宮<BR>
<DT> 花散里<はなちるさと><BR> <DT> 花散里<はなちるさと><BR>
<DD>呼称---夏の御方<BR> <DD>呼称---夏の御方<BR>
</DL> </DL>
<P> <P>
第一章 玉鬘の物語 蛍の光によって姿を見られる<BR> 第一章 玉鬘の物語 蛍の光によって姿を見られる<BR>
<OL> <OL>
<LI>玉鬘、養父の恋に悩む---<A HREF="#in11">今はかく重々しきほどに</A> <LI>玉鬘、養父の恋に悩む---<A HREF="#in11">今はかく重々しきほどに</A>
<LI>兵部卿宮、六条院に来訪---<A HREF="#in12">兵部卿宮などは、まめやかに</A> <LI>兵部卿宮、六条院に来訪---<A HREF="#in12">兵部卿宮などは、まめやかに</A>
<LI>玉鬘、夕闇時に母屋の端に出る---<A HREF="#in13">夕闇過ぎて、おぼつかなき空の</A> <LI>玉鬘、夕闇時に母屋の端に出る---<A HREF="#in13">夕闇過ぎて、おぼつかなき空の</A>
<LI>源氏、宮に蛍を放って玉鬘の姿を見せる---<A HREF="#in14">何くれと言長き御いらへ</A> <LI>源氏、宮に蛍を放って玉鬘の姿を見せる---<A HREF="#in14">何くれと言長き御いらへ</A>
<LI>兵部卿宮、玉鬘にますます執心す---<A HREF="#in15">宮は、人のおはするほど</A> <LI>兵部卿宮、玉鬘にますます執心す---<A HREF="#in15">宮は、人のおはするほど</A>
<LI>源氏、玉鬘への恋慕の情を自制す---<A HREF="#in16">姫君は、かくさすがなる御けしきを</A> <LI>源氏、玉鬘への恋慕の情を自制す---<A HREF="#in16">姫君は、かくさすがなる御けしきを</A>
</OL> </OL>
第二章 光る源氏の物語 夏の町の物語<BR> 第二章 光る源氏の物語 夏の町の物語<BR>
<OL> <OL>
<LI>五月五日端午の節句、源氏、玉鬘を訪問---<A HREF="#in21">五日には、馬場の御殿に出で</A> <LI>五月五日端午の節句、源氏、玉鬘を訪問---<A HREF="#in21">五日には、馬場の御殿に出で</A>
<LI>六条院馬場殿の騎射---<A HREF="#in22">殿は、東の御方にもさしのぞき</A> <LI>六条院馬場殿の騎射---<A HREF="#in22">殿は、東の御方にもさしのぞき</A>
<LI>源氏、花散里のもとに泊まる---<A HREF="#in23">大臣は、こなたに大殿籠もりぬ</A> <LI>源氏、花散里のもとに泊まる---<A HREF="#in23">大臣は、こなたに大殿籠もりぬ</A>
</OL> </OL>
第三章 光る源氏の物語 光る源氏の物語論<BR> 第三章 光る源氏の物語 光る源氏の物語論<BR>
<OL> <OL>
<LI>玉鬘ら六条院の女性たち、物語に熱中---<A HREF="#in31">長雨例の年よりもいたくして</A> <LI>玉鬘ら六条院の女性たち、物語に熱中---<A HREF="#in31">長雨例の年よりもいたくして</A>
<LI>源氏、玉鬘に物語について論じる---<A HREF="#in32">「その人の上とて、ありのままに</A> <LI>源氏、玉鬘に物語について論じる---<A HREF="#in32">「その人の上とて、ありのままに</A>
<LI>源氏、紫の上に物語について述べる---<A HREF="#in33">紫の上も、姫君の御あつらへにことつけて</A> <LI>源氏、紫の上に物語について述べる---<A HREF="#in33">紫の上も、姫君の御あつらへにことつけて</A>
<LI>源氏、子息夕霧を思う---<A HREF="#in34">中将の君を、こなたには気遠くもてなし</A> <LI>源氏、子息夕霧を思う---<A HREF="#in34">中将の君を、こなたには気遠くもてなし</A>
<LI>内大臣、娘たちを思う---<A HREF="#in35">内の大臣は、御子ども腹々いと多かるに</A> <LI>内大臣、娘たちを思う---<A HREF="#in35">内の大臣は、御子ども腹々いと多かるに</A>
</OL> </OL>
<P> <P>
<A HREF="#in41">【出典】</A><BR> <A HREF="#in41">【出典】</A><BR>
<A HREF="#in42">【校訂】</A><BR> <A HREF="#in42">【校訂】</A><BR>
<P> <P>
 <H4>第一章 玉鬘の物語 蛍の光によって姿を見られる</H4>  <H4>第一章 玉鬘の物語 蛍の光によって姿を見られる</H4>
 <A NAME="in11">[第一段 玉鬘、養父の恋に悩む]</A><BR>  <A NAME="in11">[第一段 玉鬘、養父の恋に悩む]</A><BR>
<P> <P>
 今はかく重々しきほどに、よろづのどやかに思ししづめたる御ありさまなれば、頼みきこえさせたまへる人びと、さまざまにつけて、皆思ふさまに定まり、ただよはしからで、あらまほしくて過ぐしたまふ。<BR>  今はかく重々しきほどに、よろづのどやかに思ししづめたる御ありさまなれば、頼みきこえさせたまへる人びと、さまざまにつけて、皆思ふさまに定まり、ただよはしからで、あらまほしくて過ぐしたまふ。<BR>
<P> 対の姫君こそ、いとほしく、思ひのほかなる思ひ添ひて、いかにせむと思し乱るめれ。かの監が憂かりしさまには、なずらふべきけはひならねど、かかる筋に、かけても人の思ひ寄りきこゆべきことならねば、心ひとつに思しつつ、「様ことに疎まし」と思ひきこえたまふ。<BR> <P> 対の姫君こそ、いとほしく、思ひのほかなる思ひ添ひて、いかにせむと思し乱るめれ。かの監が憂かりしさまには、なずらふべきけはひならねど、かかる筋に、かけても人の思ひ寄りきこゆべきことならねば、心ひとつに思しつつ、「様ことに疎まし」と思ひきこえたまふ。<BR>
<P> <P>
 何ごとをも思し知りにたる御齢なれば、とざまかうざまに思し集めつつ、母君のおはせずなりにける口惜しさも、またとりかへし惜しく悲しくおぼゆ。<BR>  何ごとをも思し知りにたる御齢なれば、とざまかうざまに思し集めつつ、母君のおはせずなりにける口惜しさも、またとりかへし惜しく悲しくおぼゆ。<BR>
<P> <P>
 大臣も、うち出でそめたまひては、なかなか苦しく思せど、人目を憚りたまひつつ、はかなきことをもえ聞こえたまはず、苦しくも思さるるままに、しげく渡りたまひつつ、御前の人遠く、のどやかなる折は、ただならずけしきばみきこえたまふごとに、胸つぶれつつ、けざやかにはしたなく聞こゆべきにはあらねば、ただ見知らぬさまにもてなしきこえたまふ。<BR>  大臣も、うち出でそめたまひては、なかなか苦しく思せど、人目を憚りたまひつつ、はかなきことをもえ聞こえたまはず、苦しくも思さるるままに、しげく渡りたまひつつ、御前の人遠く、のどやかなる折は、ただならずけしきばみきこえたまふごとに、胸つぶれつつ、けざやかにはしたなく聞こゆべきにはあらねば、ただ見知らぬさまにもてなしきこえたまふ。<BR>
<P> <P>
 人ざまのわららかに、気近くものしたまへば、いたくまめだち、心したまへど、なほをかしく愛敬づきたるけはひのみ見えたまへり。<BR>  人ざまのわららかに、気近くものしたまへば、いたくまめだち、心したまへど、なほをかしく愛敬づきたるけはひのみ見えたまへり。<BR>
<P> <P>
 <A NAME="in12">[第二段 兵部卿宮、六条院に来訪]</A><BR>  <A NAME="in12">[第二段 兵部卿宮、六条院に来訪]</A><BR>
<P> <P>
 兵部卿宮などは、まめやかにせめきこえたまふ。御労のほどはいくばくならぬに、<A HREF="#no1">五月雨になりぬる愁へ</A><A NAME="te1"></A>したまひて、<BR>  兵部卿宮などは、まめやかにせめきこえたまふ。御労のほどはいくばくならぬに、<A HREF="#no1">五月雨になりぬる愁へ</A><A NAME="te1"></A>したまひて、<BR>
<P> <P>
 「すこし気近きほどをだに許したまはば、思ふことをも、片端はるけてしがな」<BR>  「すこし気近きほどをだに許したまはば、思ふことをも、片端はるけてしがな」<BR>
<P> <P>
 と、聞こえたまへるを、殿御覧じて、<BR>  と、聞こえたまへるを、殿御覧じて、<BR>
<P> <P>
 「なにかは。この君達の好きたまはむは、見所ありなむかし。もて離れてな聞こえたまひそ。御返り、時々聞こえたまへ」<BR>  「なにかは。この君達の好きたまはむは、見所ありなむかし。もて離れてな聞こえたまひそ。御返り、時々聞こえたまへ」<BR>
<P> <P>
 とて、教へて書かせたてまつりたまへど、いとどうたておぼえたまへば、「乱り心地悪し」とて、聞こえたまはず。<BR>  とて、教へて書かせたてまつりたまへど、いとどうたておぼえたまへば、「乱り心地悪し」とて、聞こえたまはず。<BR>
<P> <P>
 人びとも、ことにやむごとなく寄せ重きなども、をさをさなし。ただ、母君の御叔父なりける、宰相ばかりの人の娘にて、心ばせなど口惜しからぬが、世に衰へ残りたるを、尋ねとりたまへる、宰相の君とて、手などもよろしく書き、おほかたも大人びたる人なれば、さるべき折々の御返りなど書かせたまへば、召し出でて、言葉などのたまひて書かせたまふ。<BR>  人びとも、ことにやむごとなく寄せ重きなども、をさをさなし。ただ、母君の御叔父なりける、宰相ばかりの人の娘にて、心ばせなど口惜しからぬが、世に衰へ残りたるを、尋ねとりたまへる、宰相の君とて、手などもよろしく書き、おほかたも大人びたる人なれば、さるべき折々の御返りなど書かせたまへば、召し出でて、言葉などのたまひて書かせたまふ。<BR>
<P> <P>
 ものなどのたまふさまを、ゆかしと思すなるべし。<BR>  ものなどのたまふさまを、ゆかしと思すなるべし。<BR>
 正身は、かくうたてあるもの嘆かしさの後は、この宮などは、あはれげに聞こえたまふ時は、すこし見入れたまふ時もありけり。何かと<A HREF="#k01">思ふには</A><A NAME="t01"></A>らず、「かく心憂き御けしき見ぬわざもがな」と、さすがにされたるところつきて思しけり。<BR>  正身は、かくうたてあるもの嘆かしさの後は、この宮などは、あはれげに聞こえたまふ時は、すこし見入れたまふ時もありけり。何かと<A HREF="#k01">思ふには</A><A NAME="t01"></A>らず、「かく心憂き御けしき見ぬわざもがな」と、さすがにされたるところつきて思しけり。<BR>
<P> <P>
 殿は、あいなくおのれ心懸想して、宮を待ちきこえたまふも知りたまはで、よろしき御返りのあるをめづらしがりて、いと忍びやかにおはしましたり。<BR>  殿は、あいなくおのれ心懸想して、宮を待ちきこえたまふも知りたまはで、よろしき御返りのあるをめづらしがりて、いと忍びやかにおはしましたり。<BR>
 妻戸の間に御茵参らせて、御几帳ばかりを隔てにて、近きほどなり。<BR>  妻戸の間に御茵参らせて、御几帳ばかりを隔てにて、近きほどなり。<BR>
<P> <P>
 いといたう心して、空薫物心にくきほどに匂はして、つくろひおはするさま、親にはあらで、むつかしきさかしら人の、さすがにあはれに見えたまふ。宰相の君なども、人の御いらへ聞こえむこともおぼえず、恥づかしくてゐたるを、「埋もれたり」と、ひきつみたまへば、いとわりなし。<BR>  いといたう心して、空薫物心にくきほどに匂はして、つくろひおはするさま、親にはあらで、むつかしきさかしら人の、さすがにあはれに見えたまふ。宰相の君なども、人の御いらへ聞こえむこともおぼえず、恥づかしくてゐたるを、「埋もれたり」と、ひきつみたまへば、いとわりなし。<BR>
<P> <P>
 <A NAME="in13">[第三段 玉鬘、夕闇時に母屋の端に出る]</A><BR>  <A NAME="in13">[第三段 玉鬘、夕闇時に母屋の端に出る]</A><BR>
<P> <P>
 夕闇過ぎて、おぼつかなき空のけしきの曇らはしきに、うちしめりたる宮の御けはひも、いと艶なり。うちよりほのめく追風も、いとどしき御匂ひのたち添ひたれば、いと深く薫り満ちて、かねて<A HREF="#k02">思しし</A><A NAME="t02"></A>りもをかしき御けはひを、心とどめたまひけり。<BR>  夕闇過ぎて、おぼつかなき空のけしきの曇らはしきに、うちしめりたる宮の御けはひも、いと艶なり。うちよりほのめく追風も、いとどしき御匂ひのたち添ひたれば、いと深く薫り満ちて、かねて<A HREF="#k02">思しし</A><A NAME="t02"></A>りもをかしき御けはひを、心とどめたまひけり。<BR>
<P> <P>
 うち出でて、思ふ心のほどをのたまひ続けたる言の葉、おとなおとなしく、ひたぶるに好き好きしくはあらで、いとけはひことなり。大臣、いとをかしと、ほの聞きおはす<BR>  うち出でて、思ふ心のほどをのたまひ続けたる言の葉、おとなおとなしく、ひたぶるに好き好きしくはあらで、いとけはひことなり。大臣、いとをかしと、ほの聞きおはす<BR>
<P> <P>
 姫君は、東面に引き入りて大殿籠もりにけるを、宰相の君の御消息伝へに、ゐざり入りたるにつけて、<BR>  姫君は、東面に引き入りて大殿籠もりにけるを、宰相の君の御消息伝へに、ゐざり入りたるにつけて、<BR>
<P> <P>
 「いとあまり暑かはしき御もてなしなり。よろづのこと、さまに従ひてこそめやすけれ。ひたぶるに若びたまふべきさまにもあらず。この宮たちをさへ、さし放ちたる人伝てに聞こえたまふまじきことなりかし。御声こそ惜しみたまふとも、すこし気近くだにこそ」<BR>  「いとあまり暑かはしき御もてなしなり。よろづのこと、さまに従ひてこそめやすけれ。ひたぶるに若びたまふべきさまにもあらず。この宮たちをさへ、さし放ちたる人伝てに聞こえたまふまじきことなりかし。御声こそ惜しみたまふとも、すこし気近くだにこそ」<BR>
<P> <P>
 など、諌めきこえたまへど、いとわりなくて、ことづけてもはひ入りたまひぬべき御心ばへなれば、とざまかうざまにわびしければ、すべり出でて、母屋の際なる御几帳のもとに、かたはら臥したまへる。<BR>  など、諌めきこえたまへど、いとわりなくて、ことづけてもはひ入りたまひぬべき御心ばへなれば、とざまかうざまにわびしければ、すべり出でて、母屋の際なる御几帳のもとに、かたはら臥したまへる。<BR>
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 <A NAME="in14">[第四段 源氏、宮に蛍を放って玉鬘の姿を見せる]</A><BR>  <A NAME="in14">[第四段 源氏、宮に蛍を放って玉鬘の姿を見せる]</A><BR>
<P> <P>
 何くれと言長き御応へ聞こえたまふこともなく、思しやすらふに、寄りたまひて、御几帳の帷子を一重うちかけたまふにあはせて、さと光るもの。紙燭をさし出でたるかとあきれたり。<BR>  何くれと言長き御応へ聞こえたまふこともなく、思しやすらふに、寄りたまひて、御几帳の帷子を一重うちかけたまふにあはせて、さと光るもの。紙燭をさし出でたるかとあきれたり。<BR>
<P> <P>
 蛍を薄きかたに、この夕つ方いと多く包みおきて、光をつつみ隠したまへりけるを、さりげなく、とかくひきつくろふやうにて。<BR>  蛍を薄きかたに、この夕つ方いと多く包みおきて、光をつつみ隠したまへりけるを、さりげなく、とかくひきつくろふやうにて。<BR>
<P> <P>
 にはかにかく掲焉に光れるに、あさましくて、扇をさし隠したまへるかたはら目、いとをかしげなり。<BR>  にはかにかく掲焉に光れるに、あさましくて、扇をさし隠したまへるかたはら目、いとをかしげなり。<BR>
<P> <P>
 「おどろかしき光見えば、宮も覗きたまひなむ。わが女と思すばかりのおぼえに、かくまでのたまふなめり。人ざま容貌など、いとかくしも具したらむとは、え推し量りたまはじ。いとよく好きたまひぬべき心、惑はさむ」<BR>  「おどろかしき光見えば、宮も覗きたまひなむ。わが女と思すばかりのおぼえに、かくまでのたまふなめり。人ざま容貌など、いとかくしも具したらむとは、え推し量りたまはじ。いとよく好きたまひぬべき心、惑はさむ」<BR>
<P> <P>
 と、かまへありきたまふなりけり。まことのわが姫君をば、かくしも、もて騷ぎたまはじ、うたてある御心なりけり。<BR>  と、かまへありきたまふなりけり。まことのわが姫君をば、かくしも、もて騷ぎたまはじ、うたてある御心なりけり。<BR>
 こと方より、やをらすべり出でて、渡りたまひぬ。<BR>  こと方より、やをらすべり出でて、渡りたまひぬ。<BR>
<P> <P>
 <A NAME="in15">[第五段 兵部卿宮、玉鬘にますます執心す]</A><BR>  <A NAME="in15">[第五段 兵部卿宮、玉鬘にますます執心す]</A><BR>
<P> <P>
 宮は、人のおはするほど、さばかりと推し量りたまふが、すこし気近きけはひするに、御心ときめきせられたまひて、えならぬ羅の帷子の隙より見入れたまへるに、一間ばかり隔てたる見わたしに、かくおぼえなき光のうちほのめくを、をかしと見たまふ。<BR>  宮は、人のおはするほど、さばかりと推し量りたまふが、すこし気近きけはひするに、御心ときめきせられたまひて、えならぬ羅の帷子の隙より見入れたまへるに、一間ばかり隔てたる見わたしに、かくおぼえなき光のうちほのめくを、をかしと見たまふ。<BR>
<P> <P>
 ほどもなく紛らはして隠しつ。されどほのかなる光、艶なることのつまにもしつべく見ゆ。ほのかなれど、そびやかに臥したまへりつる様体のをかしかりつるを、飽かず思して、げに、このこと御心にしみにけり。<BR>  ほどもなく紛らはして隠しつ。されどほのかなる光、艶なることのつまにもしつべく見ゆ。ほのかなれど、そびやかに臥したまへりつる様体のをかしかりつるを、飽かず思して、げに、このこと御心にしみにけり。<BR>
<P> <P>
 「鳴く声も聞こえぬ虫の思ひだに<BR>  「鳴く声も聞こえぬ虫の思ひだに<BR>
  人の消つには消ゆるものかは<BR>   人の消つには消ゆるものかは<BR>
 思ひ知りたまひぬや」<BR>  思ひ知りたまひぬや」<BR>
<P> <P>
 と聞こえたまふ。かやうの御返しを、思ひまはさむも<A HREF="#k03">ねぢけ</A><A NAME="t03"></A>れば、疾きばかりをぞ。<BR>  と聞こえたまふ。かやうの御返しを、思ひまはさむも<A HREF="#k03">ねぢけ</A><A NAME="t03"></A>れば、疾きばかりをぞ。<BR>
<P> <P>
 「声はせで身をのみ焦がす蛍こそ<BR>  「声はせで身をのみ焦がす蛍こそ<BR>
  言ふよりまさる思ひなるらめ」<BR>   言ふよりまさる思ひなるらめ」<BR>
<P> <P>
 など、はかなく聞こえなして、御みづからは引き入りたまひにければ、いとはるかにもてなしたまふ愁はしさを、いみじく怨みきこえたまふ。<BR>  など、はかなく聞こえなして、御みづからは引き入りたまひにければ、いとはるかにもてなしたまふ愁はしさを、いみじく怨みきこえたまふ。<BR>
<P> <P>
 好き好きしきやうなれば、ゐたまひも明かさで、<A HREF="#no2">軒の雫も苦しさに</A><A NAME="te2"></A>濡れ濡れ夜深く出でたまひぬ。<A HREF="#no3">時鳥などかならずうち鳴き</A><A NAME="te3"></A>むかし。うるさければこそ聞きも止めね。<BR>  好き好きしきやうなれば、ゐたまひも明かさで、<A HREF="#no2">軒の雫も苦しさに</A><A NAME="te2"></A>濡れ濡れ夜深く出でたまひぬ。<A HREF="#no3">時鳥などかならずうち鳴き</A><A NAME="te3"></A>むかし。うるさければこそ聞きも止めね。<BR>
<P> <P>
 「御けはひなどのなまめかしさは、いとよく大臣の君に似たてまつりたまへり」と、人びともめできこえけり。昨夜、いと女親だちてつくろひたまひし御けはひを、うちうちは知らで、「あはれにかたじけなし」と皆言ふ。<BR>  「御けはひなどのなまめかしさは、いとよく大臣の君に似たてまつりたまへり」と、人びともめできこえけり。昨夜、いと女親だちてつくろひたまひし御けはひを、うちうちは知らで、「あはれにかたじけなし」と皆言ふ。<BR>
<P> <P>
 <A NAME="in16">[第六段 源氏、玉鬘への恋慕の情を自制す]</A><BR>  <A NAME="in16">[第六段 源氏、玉鬘への恋慕の情を自制す]</A><BR>
<P> <P>
 姫君は、かくさすがなる御けしきを、<BR>  姫君は、かくさすがなる御けしきを、<BR>
<P> <P>
 「わがみづからの憂さぞかし。親などに知られたてまつり、世の人めきたるさまにて、かやうなる御心ばへならましかば、などかはいと似げなくもあらまし。人に似ぬありさまこそ、つひに世語りにやならむ」<BR>  「わがみづからの憂さぞかし。親などに知られたてまつり、世の人めきたるさまにて、かやうなる御心ばへならましかば、などかはいと似げなくもあらまし。人に似ぬありさまこそ、つひに世語りにやならむ」<BR>
<P> <P>
 と、起き臥し思しなやむ。さるは、「まことにゆかしげなきさまにはもてなし果てじ」と、大臣は思しけり。なほ、さる御心癖なれば、中宮なども、いとうるはしくや思ひきこえたまへる、ことに触れつつ、ただならず<A HREF="#k04">聞こえ</A><A NAME="t04"></A>かしなどしたまへど、やむごとなき方の、およびなくわづらはしさに、おり立ちあらはし聞こえ寄りたまはぬを、この君は、人の御さまも、気近く今めきたるに、おのづから思ひ忍びがたきに、折々、人見たてまつりつけば疑ひ負ひぬべき御もてなしなどは、うち交じるわざなれど、ありがたく思し返しつつ、さすがなる御仲なりけり。<BR>  と、起き臥し思しなやむ。さるは、「まことにゆかしげなきさまにはもてなし果てじ」と、大臣は思しけり。なほ、さる御心癖なれば、中宮なども、いとうるはしくや思ひきこえたまへる、ことに触れつつ、ただならず<A HREF="#k04">聞こえ</A><A NAME="t04"></A>かしなどしたまへど、やむごとなき方の、およびなくわづらはしさに、おり立ちあらはし聞こえ寄りたまはぬを、この君は、人の御さまも、気近く今めきたるに、おのづから思ひ忍びがたきに、折々、人見たてまつりつけば疑ひ負ひぬべき御もてなしなどは、うち交じるわざなれど、ありがたく思し返しつつ、さすがなる御仲なりけり。<BR>
<P> <P>
 <H4>第二章 光る源氏の物語 夏の町の物語</H4>  <H4>第二章 光る源氏の物語 夏の町の物語</H4>
 <A NAME="in21">[第一段 五月五日端午の節句、源氏、玉鬘を訪問]</A><BR>  <A NAME="in21">[第一段 五月五日端午の節句、源氏、玉鬘を訪問]</A><BR>
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 五日には、馬場の御殿に出でたまひけるついでに、渡りたまへり。<BR>  五日には、馬場の御殿に出でたまひけるついでに、渡りたまへり。<BR>
<P> <P>
 「いかにぞや。宮は夜や更かしたまひし。いたくも馴らしきこえじ。わづらはしき気添ひたまへる人ぞや。人の心破り、ものの過ちすまじき人は、かたくこそありけれ」<BR>  「いかにぞや。宮は夜や更かしたまひし。いたくも馴らしきこえじ。わづらはしき気添ひたまへる人ぞや。人の心破り、ものの過ちすまじき人は、かたくこそありけれ」<BR>
<P> <P>
 など、活けみ殺しみ戒めおはする御さま、尽きせず若くきよげに見えたまふ。艶も色もこぼるばかりなる御衣に、直衣はかなく重なれるあはひも、いづこに加はれるきよらにかあらむ、この世の人の染め出だしたると見えず、常の色も変へぬ文目も、今日はめづらかに、をかしくおぼゆる薫りなども、「思ふことなくは、をかしかりぬべき御ありさまかな」と姫君思す。<BR>  など、活けみ殺しみ戒めおはする御さま、尽きせず若くきよげに見えたまふ。艶も色もこぼるばかりなる御衣に、直衣はかなく重なれるあはひも、いづこに加はれるきよらにかあらむ、この世の人の染め出だしたると見えず、常の色も変へぬ文目も、今日はめづらかに、をかしくおぼゆる薫りなども、「思ふことなくは、をかしかりぬべき御ありさまかな」と姫君思す。<BR>
<P> <P>
 宮より御文あり。白き薄様にて、御手はいとよしありて書きなしたまへり。見るほどこそをかしけれ、まねび出づれば、ことなることなしや。<BR>  宮より御文あり。白き薄様にて、御手はいとよしありて書きなしたまへり。見るほどこそをかしけれ、まねび出づれば、ことなることなしや。<BR>
<P> <P>
 「今日さへや引く人もなき水隠れに<BR>  「今日さへや引く人もなき水隠れに<BR>
  生ふる菖蒲の根のみ泣かれむ」<BR>   生ふる菖蒲の根のみ泣かれむ」<BR>
<P> <P>
 <A HREF="#no4">例にも引き出で</A><A NAME="te4"></A>べき<A HREF="#k05">根に</A><A NAME="t05"></A>びつけたまへれば、「今日の御返り」などそそのかしおきて、出でたまひぬ。これかれも、「なほ」と聞こゆれば、御心にもいかが思しけむ、<BR>  <A HREF="#no4">例にも引き出で</A><A NAME="te4"></A>べき<A HREF="#k05">根に</A><A NAME="t05"></A>びつけたまへれば、「今日の御返り」などそそのかしおきて、出でたまひぬ。これかれも、「なほ」と聞こゆれば、御心にもいかが思しけむ、<BR>
<P> <P>
 「あらはれていとど浅くも見ゆるかな<BR>  「あらはれていとど浅くも見ゆるかな<BR>
  菖蒲もわかず泣かれける根の<BR>   菖蒲もわかず泣かれける根の<BR>
 若々しく」<BR>  若々しく」<BR>
<P> <P>
 とばかり、ほのかにぞあめる。「手を今すこしゆゑづけたらば」と、宮は好ましき御心に、いささか飽かぬことと見たまひけむかし。<BR>  とばかり、ほのかにぞあめる。「手を今すこしゆゑづけたらば」と、宮は好ましき御心に、いささか飽かぬことと見たまひけむかし。<BR>
<P> <P>
 楽玉など、えならぬさまにて、所々より多かり。思し沈みつる年ごろの名残なき御ありさまにて、心ゆるびたまふことも多かるに、「同じくは、人の疵つくばかりのことなくてもやみにしがな」と、いかが思さざらむ。<BR>  楽玉など、えならぬさまにて、所々より多かり。思し沈みつる年ごろの名残なき御ありさまにて、心ゆるびたまふことも多かるに、「同じくは、人の疵つくばかりのことなくてもやみにしがな」と、いかが思さざらむ。<BR>
<P> <P>
 <A NAME="in22">[第二段 六条院馬場殿の騎射]</A><BR>  <A NAME="in22">[第二段 六条院馬場殿の騎射]</A><BR>
<P> <P>
 殿は、東の御方にもさしのぞきたまひて、<BR>  殿は、東の御方にもさしのぞきたまひて、<BR>
<P> <P>
 「中将の、今日の司の手結ひのついでに、男ども引き連れてものすべきさまに言ひしを、さる心したまへ。まだ明きほどに来なむものぞ。あやしく、ここにはわざとならず忍ぶることをも、この親王たちの聞きつけて、訪らひものしたまへば、おのづからことことしくなむあるを、用意したまへ」<BR>  「中将の、今日の司の手結ひのついでに、男ども引き連れてものすべきさまに言ひしを、さる心したまへ。まだ明きほどに来なむものぞ。あやしく、ここにはわざとならず忍ぶることをも、この親王たちの聞きつけて、訪らひものしたまへば、おのづからことことしくなむあるを、用意したまへ」<BR>
<P> <P>
 など聞こえたまふ。<BR>  など聞こえたまふ。<BR>
 馬場の御殿は、こなたの廊より見通すほど遠からず。<BR>  馬場の御殿は、こなたの廊より見通すほど遠からず。<BR>
<P> <P>
 「若き人びと、渡殿の戸開けて物見よや。左の司に、いとよしある官人多かるころなり。少々の殿上人に劣るまじ」<BR>  「若き人びと、渡殿の戸開けて物見よや。左の司に、いとよしある官人多かるころなり。少々の殿上人に劣るまじ」<BR>
<P> <P>
 とのたまへば、物見むことをいとをかしと思へり。<BR>  とのたまへば、物見むことをいとをかしと思へり。<BR>
<P> <P>
 対の御方よりも、童女など、物見に渡り来て、廊の戸口に御簾青やかに掛けわたして、今めきたる裾濃の御几帳ども立てわたし、童、下仕へなどさまよふ。菖蒲襲の衵、二藍の羅の汗衫着たる童女ぞ、西の対のなめる。<BR>  対の御方よりも、童女など、物見に渡り来て、廊の戸口に御簾青やかに掛けわたして、今めきたる裾濃の御几帳ども立てわたし、童、下仕へなどさまよふ。菖蒲襲の衵、二藍の羅の汗衫着たる童女ぞ、西の対のなめる。<BR>
 好ましく馴れたる限り四人、下仕へは、楝の裾濃の裳、撫子の若葉の色したる唐衣、今日のよそひどもなり。<BR>  好ましく馴れたる限り四人、下仕へは、楝の裾濃の裳、撫子の若葉の色したる唐衣、今日のよそひどもなり。<BR>
<P> <P>
 <A HREF="#k06">こなたのは</A><A NAME="t06"></A>濃き一襲に、撫子襲の汗衫などおほどかにて、おのおの挑み顔なるもてなし、見所あり。<BR>  <A HREF="#k06">こなたのは</A><A NAME="t06"></A>濃き一襲に、撫子襲の汗衫などおほどかにて、おのおの挑み顔なるもてなし、見所あり。<BR>
<P> <P>
 若やかなる殿上人などは、目をたててけしきばむ。未の時に、馬場の御殿に出でたまひて、げに親王たちおはし集ひたり。手結ひの公事にはさま変りて、次将たちかき連れ参りて、さまことに今めかしく遊び暮らしたまふ。<BR>  若やかなる殿上人などは、目をたててけしきばむ。未の時に、馬場の御殿に出でたまひて、げに親王たちおはし集ひたり。手結ひの公事にはさま変りて、次将たちかき連れ参りて、さまことに今めかしく遊び暮らしたまふ。<BR>
<P> <P>
 女は、何のあやめも知らぬことなれど、舎人どもさへ艶なる装束を尽くして、身を投げたる手まどはしなどを見るぞ、をかしかりける。<BR>  女は、何のあやめも知らぬことなれど、舎人どもさへ艶なる装束を尽くして、身を投げたる手まどはしなどを見るぞ、をかしかりける。<BR>
<P> 南の町も通して、はるばるとあれば、あなたにもかやうの若き人どもは見けり。「打毬楽」「落蹲」など遊びて、勝ち負けの乱声どもののしるも、夜に入り果てて、何事も見えずなり果てぬ。舎人どもの禄、品々賜はる。いたく更けて、人びと皆あかれたまひぬ。<BR> <P> 南の町も通して、はるばるとあれば、あなたにもかやうの若き人どもは見けり。「打毬楽」「落蹲」など遊びて、勝ち負けの乱声どもののしるも、夜に入り果てて、何事も見えずなり果てぬ。舎人どもの禄、品々賜はる。いたく更けて、人びと皆あかれたまひぬ。<BR>
<P> <P>
 <A NAME="in23">[第三段 源氏、花散里のもとに泊まる]</A><BR>  <A NAME="in23">[第三段 源氏、花散里のもとに泊まる]</A><BR>
<P> <P>
 大臣は、こなたに大殿籠もりぬ。物語など聞こえたまひて、<BR>  大臣は、こなたに大殿籠もりぬ。物語など聞こえたまひて、<BR>
<P> <P>
 「兵部卿宮の、人よりはこよなくものしたまふかな。容貌などはすぐれねど、用意けしきなど、よしあり、愛敬づきたる君なり。忍びて見たまひつや。よしといへど、なほこそあれ」<BR>  「兵部卿宮の、人よりはこよなくものしたまふかな。容貌などはすぐれねど、用意けしきなど、よしあり、愛敬づきたる君なり。忍びて見たまひつや。よしといへど、なほこそあれ」<BR>
<P> <P>
 とのたまふ。<BR>  とのたまふ。<BR>
<P> <P>
 「御弟にこそものしたまへど、ねびまさりてぞ見えたまひける。年ごろ、かく折過ぐさず渡り、睦びきこえたまふと聞きはべれど、昔の内裏わたりにてほの見たてまつりしのち、おぼつかなしかし。いとよくこそ、容貌などねびまさりたまひにけれ。帥の親王よくものしたまふめれど、けはひ劣りて、大君けしきにぞものしたまひける」<BR>  「御弟にこそものしたまへど、ねびまさりてぞ見えたまひける。年ごろ、かく折過ぐさず渡り、睦びきこえたまふと聞きはべれど、昔の内裏わたりにてほの見たてまつりしのち、おぼつかなしかし。いとよくこそ、容貌などねびまさりたまひにけれ。帥の親王よくものしたまふめれど、けはひ劣りて、大君けしきにぞものしたまひける」<BR>
<P> <P>
 とのたまへば、「ふと見知りたまひにけり」と思せど、ほほ笑みて、なほあるを、良しとも悪しともかけたまはず。<BR>  とのたまへば、「ふと見知りたまひにけり」と思せど、ほほ笑みて、なほあるを、良しとも悪しともかけたまはず。<BR>
<P> <P>
 人の上を難つけ、落としめざまのこと言ふ人をば、いとほしきものにしたまへば、<BR>  人の上を難つけ、落としめざまのこと言ふ人をば、いとほしきものにしたまへば、<BR>
 「右大将などをだに、心にくき人にすめるを、何ばかりかはある。近きよすがにて見むは、飽かぬことにやあらむ」<BR>  「右大将などをだに、心にくき人にすめるを、何ばかりかはある。近きよすがにて見むは、飽かぬことにやあらむ」<BR>
 と、見たまへど、言に表はしてものたまはず。<BR>  と、見たまへど、言に表はしてものたまはず。<BR>
<P> <P>
 今はただおほかたの御睦びにて、御座なども異々にて大殿籠もる。「などてかく離れそめしぞ」と、殿は苦しがりたまふ。おほかた、何やかやともそばみきこえたまはで、年ごろかく折ふしにつけたる御遊びどもを、人伝てに見聞きたまひけるに、今日めづらしかりつることばかりをぞ、この町のおぼえきらきらしと思したる。<BR>  今はただおほかたの御睦びにて、御座なども異々にて大殿籠もる。「などてかく離れそめしぞ」と、殿は苦しがりたまふ。おほかた、何やかやともそばみきこえたまはで、年ごろかく折ふしにつけたる御遊びどもを、人伝てに見聞きたまひけるに、今日めづらしかりつることばかりをぞ、この町のおぼえきらきらしと思したる。<BR>
<P> <P>
 「その<A HREF="#no5">駒もすさめぬ草</A><A NAME="te5"></A>名に立てる<BR>  「その<A HREF="#no5">駒もすさめぬ草</A><A NAME="te5"></A>名に立てる<BR>
  汀の菖蒲今日や引きつる」<BR>   汀の菖蒲今日や引きつる」<BR>
<P> <P>
 とおほどかに聞こえたまふ。何ばかりのことにもあらねど、あはれと思したり。<BR>  とおほどかに聞こえたまふ。何ばかりのことにもあらねど、あはれと思したり。<BR>
<P> <P>
 「鳰鳥に影をならぶる<A HREF="#no6">若駒</A><A NAME="te6"></A><BR>  「鳰鳥に影をならぶる<A HREF="#no6">若駒</A><A NAME="te6"></A><BR>
  いつか菖蒲に引き別るべき」<BR>   いつか菖蒲に引き別るべき」<BR>
<P> <P>
 あいだちなき御ことどもなりや。<BR>  あいだちなき御ことどもなりや。<BR>
<P> <P>
 「朝夕の隔てあるやうなれど、かくて見たてまつるは、心やすくこそあれ」<BR>  「朝夕の隔てあるやうなれど、かくて見たてまつるは、心やすくこそあれ」<BR>
<P> <P>
 戯れごとなれど、のどやかにおはする人ざまなれば、静まりて聞こえなしたまふ。<BR>  戯れごとなれど、のどやかにおはする人ざまなれば、静まりて聞こえなしたまふ。<BR>
 床をば譲りきこえたまひて、御几帳引き隔てて大殿籠もる。気近くなどあらむ筋をば、いと似げなかるべき筋に、思ひ離れ果てきこえたまへれば、あながちにも聞こえたまはず。<BR>  床をば譲りきこえたまひて、御几帳引き隔てて大殿籠もる。気近くなどあらむ筋をば、いと似げなかるべき筋に、思ひ離れ果てきこえたまへれば、あながちにも聞こえたまはず。<BR>
<P> <P>
 <H4>第三章 光る源氏の物語 光る源氏の物語論</H4>  <H4>第三章 光る源氏の物語 光る源氏の物語論</H4>
 <A NAME="in31">[第一段 玉鬘ら六条院の女性たち、物語に熱中]</A><BR>  <A NAME="in31">[第一段 玉鬘ら六条院の女性たち、物語に熱中]</A><BR>
<P> <P>
 長雨例の年よりもいたくして、晴るる方なくつれづれなれば、御方々、絵物語などのすさびにて、明かし暮らしたまふ。明石の御方は、さやうのことをもよしありてしなしたまひて、姫君の御方にたてまつりたまふ。<BR>  長雨例の年よりもいたくして、晴るる方なくつれづれなれば、御方々、絵物語などのすさびにて、明かし暮らしたまふ。明石の御方は、さやうのことをもよしありてしなしたまひて、姫君の御方にたてまつりたまふ。<BR>
<P> <P>
 西の対には、ましてめづらしくおぼえたまふことの筋なれば、明け暮れ書き読みいとなみおはす。つきなからぬ若人あまたあり。さまざまにめづらかなる人の上などを、真にや偽りにや、言ひ集めたるなかにも、「わがありさまのやうなるはなかりけり」と見たまふ。<BR>  西の対には、ましてめづらしくおぼえたまふことの筋なれば、明け暮れ書き読みいとなみおはす。つきなからぬ若人あまたあり。さまざまにめづらかなる人の上などを、真にや偽りにや、言ひ集めたるなかにも、「わがありさまのやうなるはなかりけり」と見たまふ。<BR>
<P> <P>
 『住吉』の姫君の、さしあたりけむ折はさるものにて、今の世のおぼえもなほ心ことなめるに、主計頭が、ほとほとしかりけむなどぞ、かの監がゆゆしさを思しなずらへたまふ。<BR>  『住吉』の姫君の、さしあたりけむ折はさるものにて、今の世のおぼえもなほ心ことなめるに、主計頭が、ほとほとしかりけむなどぞ、かの監がゆゆしさを思しなずらへたまふ。<BR>
<P> <P>
 殿も、こなたかなたにかかるものどもの散りつつ、御目に離れねば、<BR>  殿も、こなたかなたにかかるものどもの散りつつ、御目に離れねば、<BR>
<P> <P>
 「あな、むつかし。女こそ、ものうるさがらず、人に欺かれむと生まれたるものなれ。ここらのなかに、真はいと少なからむを、かつ知る知る、かかるすずろごとに心を移し、はかられたまひて、暑かはしき<A HREF="#no7">五月雨の、髪の乱るる</A><A NAME="te7"></A>知らで、書きたまふよ」<BR>  「あな、むつかし。女こそ、ものうるさがらず、人に欺かれむと生まれたるものなれ。ここらのなかに、真はいと少なからむを、かつ知る知る、かかるすずろごとに心を移し、はかられたまひて、暑かはしき<A HREF="#no7">五月雨の、髪の乱るる</A><A NAME="te7"></A>知らで、書きたまふよ」<BR>
<P> <P>
 とて、笑ひたまふものから、また、<BR>  とて、笑ひたまふものから、また、<BR>
<P> <P>
 「かかる世の古言ならでは、げに、何をか紛るることなきつれづれを慰めまし。さても、この偽りどものなかに、げにさもあらむとあはれを見せ、つきづきしく続けたる、はた、はかなしごとと知りながら、いたづらに心動き、らうたげなる姫君のもの思へる見るに、かた心つくかし。<BR>  「かかる世の古言ならでは、げに、何をか紛るることなきつれづれを慰めまし。さても、この偽りどものなかに、げにさもあらむとあはれを見せ、つきづきしく続けたる、はた、はかなしごとと知りながら、いたづらに心動き、らうたげなる姫君のもの思へる見るに、かた心つくかし。<BR>
<P> <P>
 また、いとあるまじきことかなと見る見る、おどろおどろしくとりなしけるが目おどろきて、静かにまた聞くたびぞ、憎けれど、ふとをかしき節、あらはなるなどもあるべし。<BR>  また、いとあるまじきことかなと見る見る、おどろおどろしくとりなしけるが目おどろきて、静かにまた聞くたびぞ、憎けれど、ふとをかしき節、あらはなるなどもあるべし。<BR>
<P> <P>
 このころ、幼き人の女房などに時々読まするを立ち聞けば、ものよく言ふものの世にあるべきかな。虚言をよくしなれたる口つきよりぞ言ひ出だすらむとおぼゆれど、さしもあらじや」<BR>  このころ、幼き人の女房などに時々読まするを立ち聞けば、ものよく言ふものの世にあるべきかな。虚言をよくしなれたる口つきよりぞ言ひ出だすらむとおぼゆれど、さしもあらじや」<BR>
<P> <P>
 とのたまへば、<BR>  とのたまへば、<BR>
<P> <P>
 「げに、偽り馴れたる人や、さまざまにさも汲みはべらむ。ただ<A HREF="#k07">いと</A><A NAME="t07"></A>のこととこそ思うたまへられけれ」<BR>  「げに、偽り馴れたる人や、さまざまにさも汲みはべらむ。ただ<A HREF="#k07">いと</A><A NAME="t07"></A>のこととこそ思うたまへられけれ」<BR>
<P> <P>
 とて、硯をおしやりたまへば、<BR>  とて、硯をおしやりたまへば、<BR>
<P> <P>
 「こちなくも聞こえ落としてけるかな。神代より世にあることを、記しおきけるななり。『日本紀』などは、ただかたそばぞかし。これらにこそ道々しく詳しきことはあらめ」<BR>  「こちなくも聞こえ落としてけるかな。神代より世にあることを、記しおきけるななり。『日本紀』などは、ただかたそばぞかし。これらにこそ道々しく詳しきことはあらめ」<BR>
<P> <P>
 とて、笑ひたまふ。<BR>  とて、笑ひたまふ。<BR>
<P> <P>
 <A NAME="in32">[第二段 源氏、玉鬘に物語について論じる]</A><BR>  <A NAME="in32">[第二段 源氏、玉鬘に物語について論じる]</A><BR>
<P> <P>
 「その人の上とて、ありのままに言ひ出づることこそなけれ、善きも悪しきも、世に経る人のありさまの、見るにも飽かず、聞くにもあまることを、後の世にも言ひ伝へさせまほしき節々を、心に籠めがたくて、言ひおき始めたるなり。善きさまに言ふとては、善きことの限り選り出でて、人に従はむとては、また悪しきさまの珍しきことを取り集めたる、皆かたがたにつけたる、この世の他のことならずかし。<BR>  「その人の上とて、ありのままに言ひ出づることこそなけれ、善きも悪しきも、世に経る人のありさまの、見るにも飽かず、聞くにもあまることを、後の世にも言ひ伝へさせまほしき節々を、心に籠めがたくて、言ひおき始めたるなり。善きさまに言ふとては、善きことの限り選り出でて、人に従はむとては、また悪しきさまの珍しきことを取り集めたる、皆かたがたにつけたる、この世の他のことならずかし。<BR>
<P> <P>
 人の朝廷の才、作りやう変はる、同じ大和の国のことなれば、昔今のに変はるべし、深きこと浅きことのけぢめこそあらめ、ひたぶるに虚言と言ひ果てむも、ことの心違ひてなむありける。<BR>  人の朝廷の才、作りやう変はる、同じ大和の国のことなれば、昔今のに変はるべし、深きこと浅きことのけぢめこそあらめ、ひたぶるに虚言と言ひ果てむも、ことの心違ひてなむありける。<BR>
<P> <P>
 仏の、いとうるはしき心にて説きおきたまへる御法も、方便といふことありて、悟りなきものは、ここかしこ違ふ疑ひを置きつべくなむ。『方等経』の中に多かれど、言ひもてゆけば、ひとつ旨にありて、菩提と煩悩との隔たりなむ、この、人の善き悪しきばかりのことは変はりける。<BR>  仏の、いとうるはしき心にて説きおきたまへる御法も、方便といふことありて、悟りなきものは、ここかしこ違ふ疑ひを置きつべくなむ。『方等経』の中に多かれど、言ひもてゆけば、ひとつ旨にありて、菩提と煩悩との隔たりなむ、この、人の善き悪しきばかりのことは変はりける。<BR>
 よく言へば、すべて何ごとも空しからずなりぬや」<BR>  よく言へば、すべて何ごとも空しからずなりぬや」<BR>
<P> <P>
 と、物語をいとわざとのことにのたまひなしつ。<BR>  と、物語をいとわざとのことにのたまひなしつ。<BR>
<P> <P>
 「さて、かかる古言の中に、まろがやうに実法なる痴者の物語はありや。いみじく気遠きものの姫君も、御心のやうにつれなく、<A HREF="#k08">そらおぼめき</A><A NAME="t08"></A>たるは世にあらじな。いざ、たぐひなき物語にして、世に伝へさせむ」<BR>  「さて、かかる古言の中に、まろがやうに実法なる痴者の物語はありや。いみじく気遠きものの姫君も、御心のやうにつれなく、<A HREF="#k08">そらおぼめき</A><A NAME="t08"></A>たるは世にあらじな。いざ、たぐひなき物語にして、世に伝へさせむ」<BR>
<P> <P>
 と、さし寄りて聞こえたまへば、顔を引き入れて、<BR>  と、さし寄りて聞こえたまへば、顔を引き入れて、<BR>
<P> <P>
 「さらずとも、かく珍かなることは、世語りにこそはなりはべりぬべかめれ」<BR>  「さらずとも、かく珍かなることは、世語りにこそはなりはべりぬべかめれ」<BR>
<P> <P>
 とのたまへば、<BR>  とのたまへば、<BR>
<P> <P>
 「珍かにやおぼえたまふ。げにこそ、またなき心地すれ」<BR>  「珍かにやおぼえたまふ。げにこそ、またなき心地すれ」<BR>
<P> <P>
 とて、寄りゐたまへるさま、いとあざれたり。<BR>  とて、寄りゐたまへるさま、いとあざれたり。<BR>
<P> <P>
 「思ひあまり昔の跡を訪ぬれど<BR>  「思ひあまり昔の跡を訪ぬれど<BR>
  親に背ける子ぞたぐひなき<BR>   親に背ける子ぞたぐひなき<BR>
<P> <P>
 不孝なるは、仏の道にもいみじくこそ言ひたれ」<BR>  不孝なるは、仏の道にもいみじくこそ言ひたれ」<BR>
<P> <P>
 とのたまへど、顔ももたげたまはねば、御髪をかきやりつつ、いみじく怨みたまへば、からうして、<BR>  とのたまへど、顔ももたげたまはねば、御髪をかきやりつつ、いみじく怨みたまへば、からうして、<BR>
<P> <P>
 「古き跡を訪ぬれどげになかりけり<BR>  「古き跡を訪ぬれどげになかりけり<BR>
  この世にかかる親の心は」<BR>   この世にかかる親の心は」<BR>
<P> <P>
 と聞こえたまふも、心恥づかしければ、いといたくも乱れたまはず。<BR>  と聞こえたまふも、心恥づかしければ、いといたくも乱れたまはず。<BR>
 かくして、いかなるべき御ありさまならむ。<BR>  かくして、いかなるべき御ありさまならむ。<BR>
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 <A NAME="in33">[第三段 源氏、紫の上に物語について述べる]</A><BR>  <A NAME="in33">[第三段 源氏、紫の上に物語について述べる]</A><BR>
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 紫の上も、姫君の御あつらへにことつけて、物語は捨てがたく思したり。『くまのの物語』の絵にてあるを、<BR>  紫の上も、姫君の御あつらへにことつけて、物語は捨てがたく思したり。『くまのの物語』の絵にてあるを、<BR>
 「いとよく描きたる絵かな」<BR>  「いとよく描きたる絵かな」<BR>
 とて御覧ず。小さき女君の、何心もなくて昼寝したまへるところを、昔のありさま思し出でて、女君は見たまふ。<BR>  とて御覧ず。小さき女君の、何心もなくて昼寝したまへるところを、昔のありさま思し出でて、女君は見たまふ。<BR>
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 「かかる童どちだに、いかにされたりけり。まろこそ、なほ例にしつべく、心のどけさは人に似ざりけれ」<BR>  「かかる童どちだに、いかにされたりけり。まろこそ、なほ例にしつべく、心のどけさは人に似ざりけれ」<BR>
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 と聞こえ出でたまへり。げに、たぐひ多からぬことどもは、好み集めたまへりけりかし。<BR>  と聞こえ出でたまへり。げに、たぐひ多からぬことどもは、好み集めたまへりけりかし。<BR>
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 「姫君の御前にて、この世馴れたる物語など、な読み聞かせたまひそ。みそか心つきたるものの娘などは、をかしとにはあらねど、かかること世にはありけりと、見馴れたまはむぞ、ゆゆしきや」<BR>  「姫君の御前にて、この世馴れたる物語など、な読み聞かせたまひそ。みそか心つきたるものの娘などは、をかしとにはあらねど、かかること世にはありけりと、見馴れたまはむぞ、ゆゆしきや」<BR>
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 とのたまふも、こよなしと、対の御方聞きたまはば、心置きたまひつべくなむ。<BR>  とのたまふも、こよなしと、対の御方聞きたまはば、心置きたまひつべくなむ。<BR>
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 上、<BR>  上、<BR>
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 「心浅げなる人まねどもは、見るにもかたはらいたくこそ。『宇津保』の藤原君の女こそ、いと重りかにはかばかしき人にて、過ちなかめれど、すくよかに言ひ出でたる<A HREF="#k09">ことも</A><A NAME="t09"></A>わざも、女しきところなかめるぞ、一様なめる」<BR>  「心浅げなる人まねどもは、見るにもかたはらいたくこそ。『宇津保』の藤原君の女こそ、いと重りかにはかばかしき人にて、過ちなかめれど、すくよかに言ひ出でたる<A HREF="#k09">ことも</A><A NAME="t09"></A>わざも、女しきところなかめるぞ、一様なめる」<BR>
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 とのたまへば、<BR>  とのたまへば、<BR>
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 「うつつの人も、さぞあるべかめる。人びとしく立てたる趣きことにて、よきほどにかまへぬや。よしなからぬ親の、心とどめて生ほしたてたる人の、子めかしきを生けるしるしにて、後れたること多かるは、何わざしてかしづきしぞと、親のしわざさへ思ひやらるるこそ、いとほしけれ。<BR>  「うつつの人も、さぞあるべかめる。人びとしく立てたる趣きことにて、よきほどにかまへぬや。よしなからぬ親の、心とどめて生ほしたてたる人の、子めかしきを生けるしるしにて、後れたること多かるは、何わざしてかしづきしぞと、親のしわざさへ思ひやらるるこそ、いとほしけれ。<BR>
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 げに、さいへど、その人のけはひよと見えたるは、かひあり、おもだたしかし。言葉の限りまばゆくほめおきたるに、し出でたるわざ、言ひ出でたることのなかに、げにと見え聞こゆることなき、いと見劣りするわざなり。<BR>  げに、さいへど、その人のけはひよと見えたるは、かひあり、おもだたしかし。言葉の限りまばゆくほめおきたるに、し出でたるわざ、言ひ出でたることのなかに、げにと見え聞こゆることなき、いと見劣りするわざなり。<BR>
 すべて、善からぬ人に、いかで人ほめさせじ」<BR>  すべて、善からぬ人に、いかで人ほめさせじ」<BR>
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 など、ただ「この姫君の、点つかれたまふまじく」と、よろづに思しのたまふ。<BR>  など、ただ「この姫君の、点つかれたまふまじく」と、よろづに思しのたまふ。<BR>
 継母の腹ぎたなき昔物語も多かるを、<A HREF="#k10">このころ</A><A NAME="t10"></A>「心見えに心づきなし」と思せば、いみじく選りつつなむ、書きととのへさせ、絵などにも描かせたまひける。<BR>  継母の腹ぎたなき昔物語も多かるを、<A HREF="#k10">このころ</A><A NAME="t10"></A>「心見えに心づきなし」と思せば、いみじく選りつつなむ、書きととのへさせ、絵などにも描かせたまひける。<BR>
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 <A NAME="in34">[第四段 源氏、子息夕霧を思う]</A><BR>  <A NAME="in34">[第四段 源氏、子息夕霧を思う]</A><BR>
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 中将の君を、こなたには気遠くもてなしきこえたまへれど、姫君の御方には、さしもさし放ちきこえたまはずならはしたまふ。<BR>  中将の君を、こなたには気遠くもてなしきこえたまへれど、姫君の御方には、さしもさし放ちきこえたまはずならはしたまふ。<BR>
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 「わが世のほどは、とてもかくても同じことなれど、なからむ世を思ひやるに、なほ見つき、思ひしみぬることどもこそ、取り分きてはおぼゆべけれ」<BR>  「わが世のほどは、とてもかくても同じことなれど、なからむ世を思ひやるに、なほ見つき、思ひしみぬることどもこそ、取り分きてはおぼゆべけれ」<BR>
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 とて、南面の御簾の内は許したまへり。台盤所、女房のなかは許したまはず。あまたおはせぬ御仲らひにて、いとやむごとなくかしづききこえたまへり。<BR>  とて、南面の御簾の内は許したまへり。台盤所、女房のなかは許したまはず。あまたおはせぬ御仲らひにて、いとやむごとなくかしづききこえたまへり。<BR>
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 おほかたの心もちゐなども、いとものものしく、まめやかにものしたまふ君なれば、うしろやすく思し譲れり。まだいはけたる御雛遊びなどのけはひの見ゆれば、かの人の、もろともに遊びて過ぐしし年月の、まづ思ひ出でらるれば、雛の殿の宮仕へ、いとよくしたまひて、折々にうちしほたれたまひけり。<BR>  おほかたの心もちゐなども、いとものものしく、まめやかにものしたまふ君なれば、うしろやすく思し譲れり。まだいはけたる御雛遊びなどのけはひの見ゆれば、かの人の、もろともに遊びて過ぐしし年月の、まづ思ひ出でらるれば、雛の殿の宮仕へ、いとよくしたまひて、折々にうちしほたれたまひけり。<BR>
<P> <P>
 さもありぬべきあたりには、はかなしごとものたまひ触るるはあまたあれど、頼みかくべくもしなさず。さる方になどかは見ざらむと、心とまりぬべきをも、強ひてなほざりごとにしなして、なほ「かの、緑の袖を見え直してしがな」と思ふ心のみぞ、やむごとなき節にはとまりける。<BR>  さもありぬべきあたりには、はかなしごとものたまひ触るるはあまたあれど、頼みかくべくもしなさず。さる方になどかは見ざらむと、心とまりぬべきをも、強ひてなほざりごとにしなして、なほ「かの、緑の袖を見え直してしがな」と思ふ心のみぞ、やむごとなき節にはとまりける。<BR>
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 あながちになどかかづらひまどはば、倒ふるる方に許したまひもしつべかめれど、「つらしと思ひし折々、いかで人にもことわらせたてまつらむ」と思ひおきし、忘れがたくて、正身ばかりには、おろかならぬあはれを尽くし見せて、おほかたには焦られ思へらず。<BR>  あながちになどかかづらひまどはば、倒ふるる方に許したまひもしつべかめれど、「つらしと思ひし折々、いかで人にもことわらせたてまつらむ」と思ひおきし、忘れがたくて、正身ばかりには、おろかならぬあはれを尽くし見せて、おほかたには焦られ思へらず。<BR>
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 兄の君達なども、なまねたしなどのみ思ふこと多かり。対の姫君の御ありさまを、右中将は、いと深く思ひしみて、言ひ寄るたよりもいとはかなければ、この君をぞかこち寄りけれど、<BR>  兄の君達なども、なまねたしなどのみ思ふこと多かり。対の姫君の御ありさまを、右中将は、いと深く思ひしみて、言ひ寄るたよりもいとはかなければ、この君をぞかこち寄りけれど、<BR>
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 「人の上にては、もどかしきわざなりけり」<BR>  「人の上にては、もどかしきわざなりけり」<BR>
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 と、つれなく応へてぞものしたまひける。昔の父大臣たちの御仲らひに似たり。<BR>  と、つれなく応へてぞものしたまひける。昔の父大臣たちの御仲らひに似たり。<BR>
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 <A NAME="in35">[第五段 内大臣、娘たちを思う]</A><BR>  <A NAME="in35">[第五段 内大臣、娘たちを思う]</A><BR>
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 内の大臣は、御子ども腹々いと多かるに、その生ひ出でたるおぼえ、人柄に従ひつつ、心にまかせたるやうなるおぼえ、<A HREF="#k11">御勢</A><A NAME="t11"></A>て、皆なし立てたまふ。女はあまたもおはせぬを、女御も、かく思ししことのとどこほりたまひ、姫君も、かくこと違ふさまにてものしたまへば、いと口惜しと思す。<BR>  内の大臣は、御子ども腹々いと多かるに、その生ひ出でたるおぼえ、人柄に従ひつつ、心にまかせたるやうなるおぼえ、<A HREF="#k11">御勢</A><A NAME="t11"></A>て、皆なし立てたまふ。女はあまたもおはせぬを、女御も、かく思ししことのとどこほりたまひ、姫君も、かくこと違ふさまにてものしたまへば、いと口惜しと思す。<BR>
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 かの撫子を忘れたまはず、ものの折にも語り出でたまひしことなれば、<BR>  かの撫子を忘れたまはず、ものの折にも語り出でたまひしことなれば、<BR>
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 「いかになりにけむ。ものはかなかりける親の心に引かれて、らうたげなりし人を、行方知らず<A HREF="#k12">なりに</A><A NAME="t12"></A>ること。すべて女子といはむものなむ、いかにもいかにも目放つまじかりける。さかしらにわが子と言ひて、あやしきさまにてはふれやすらむ。とてもかくても、聞こえ出で来ば」<BR>  「いかになりにけむ。ものはかなかりける親の心に引かれて、らうたげなりし人を、行方知らず<A HREF="#k12">なりに</A><A NAME="t12"></A>ること。すべて女子といはむものなむ、いかにもいかにも目放つまじかりける。さかしらにわが子と言ひて、あやしきさまにてはふれやすらむ。とてもかくても、聞こえ出で来ば」<BR>
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 と、あはれに思しわたる。君達にも、<BR>  と、あはれに思しわたる。君達にも、<BR>
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 「もし、さやうなる名のりする人あらば、耳とどめよ。心のすさびにまかせて、さるまじきことも多かりしなかに、これは、いとしか、おしなべての際にも思はざりし人の、はかなきもの倦むじをして、かく少なかりけるもののくさはひ一つを、失ひたることの口惜しきこと」<BR>  「もし、さやうなる名のりする人あらば、耳とどめよ。心のすさびにまかせて、さるまじきことも多かりしなかに、これは、いとしか、おしなべての際にも思はざりし人の、はかなきもの倦むじをして、かく少なかりけるもののくさはひ一つを、失ひたることの口惜しきこと」<BR>
<P> <P>
 と、常にのたまひ出づ。中ごろなどはさしもあらず、うち忘れたまひけるを、人の、さまざまにつけて、女子かしづきたまへるたぐひどもに、わが思ほすにしもかなはぬが、いと心憂く、本意なく思すなりけり。<BR>  と、常にのたまひ出づ。中ごろなどはさしもあらず、うち忘れたまひけるを、人の、さまざまにつけて、女子かしづきたまへるたぐひどもに、わが思ほすにしもかなはぬが、いと心憂く、本意なく思すなりけり。<BR>
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 夢見たまひて、いとよく合はする者召して、合はせたまひけるに、<BR>  夢見たまひて、いとよく合はする者召して、合はせたまひけるに、<BR>
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 「もし、年ごろ御心に知られたまはぬ御子を、人のものになして、聞こしめし出づることや」<BR>  「もし、年ごろ御心に知られたまはぬ御子を、人のものになして、聞こしめし出づることや」<BR>
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 と聞こえたりければ、<BR>  と聞こえたりければ、<BR>
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 「女子の人の子になることは、をさをさなしかし。いかなることにかあらむ」<BR>  「女子の人の子になることは、をさをさなしかし。いかなることにかあらむ」<BR>
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 など、このころぞ、思しのたまふべかめる。<BR>  など、このころぞ、思しのたまふべかめる。<BR>
   
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 <a name="in41">【出典】<BR>  <a name="in41">【出典】<BR>
</a><A NAME="no1">出典1</A> 神代より忌むといふなる五月雨のこなたに人を見るよしもがな(信明集-五六)侘びつつも頼む月日はあるものを五月雨にさへなりにけるかな(花鳥余情所引-出典未詳)<A HREF="#te1">(戻)</A><BR> </a><A NAME="no1">出典1</A> 神代より忌むといふなる五月雨のこなたに人を見るよしもがな(信明集-五六)侘びつつも頼む月日はあるものを五月雨にさへなりにけるかな(花鳥余情所引-出典未詳)<A HREF="#te1">(戻)</A><BR>
<A NAME="no2">出典2</A> 眺めつつ我が思ふことは日暮らしに軒の雫の絶ゆる世もなし(新古今集雑下-一八〇一 具平親王)<A HREF="#te2">(戻)</A><BR> <A NAME="no2">出典2</A> 眺めつつ我が思ふことは日暮らしに軒の雫の絶ゆる世もなし(新古今集雑下-一八〇一 具平親王)<A HREF="#te2">(戻)</A><BR>
<A NAME="no3">出典3</A> 五月雨に物思ひ居ればほととぎす夜深く鳴きていづち行くらむ(古今集夏-一五三 紀友則)<A HREF="#te3">(戻)</A><BR> <A NAME="no3">出典3</A> 五月雨に物思ひ居ればほととぎす夜深く鳴きていづち行くらむ(古今集夏-一五三 紀友則)<A HREF="#te3">(戻)</A><BR>
<A NAME="no4">出典4</A> 水隠れて生ふる五月のあやめ草長きためしに人は引かなむ(続古今集夏-二二九 紀貫之)<A HREF="#te4">(戻)</A><BR> <A NAME="no4">出典4</A> 水隠れて生ふる五月のあやめ草長きためしに人は引かなむ(続古今集夏-二二九 紀貫之)<A HREF="#te4">(戻)</A><BR>
<A NAME="no5">出典5</A> 香を求めて訪ふ人あるをあやめ草あやしく駒のすさめざりける(後拾遺集夏-二一〇 恵慶)<A HREF="#te5">(戻)</A><BR> <A NAME="no5">出典5</A> 香を求めて訪ふ人あるをあやめ草あやしく駒のすさめざりける(後拾遺集夏-二一〇 恵慶)<A HREF="#te5">(戻)</A><BR>
<A NAME="no6">出典6</A> 若駒と今日に逢ひくるあやめ草おひおくるるや負くるなるらむ(頼基集-三〇)<A HREF="#te6">(戻)</A><BR> <A NAME="no6">出典6</A> 若駒と今日に逢ひくるあやめ草おひおくるるや負くるなるらむ(頼基集-三〇)<A HREF="#te6">(戻)</A><BR>
<A NAME="no7">出典7</A> ほととぎすをち返り鳴けうなゐ子がうち垂れ髪の五月雨の空(拾遺集夏-一一六 凡河内躬恒)<A HREF="#te7">(戻)</A><BR> <A NAME="no7">出典7</A> ほととぎすをち返り鳴けうなゐ子がうち垂れ髪の五月雨の空(拾遺集夏-一一六 凡河内躬恒)<A HREF="#te7">(戻)</A><BR>
   
<p> <a name="in42">【校訂】<BR> <p> <a name="in42">【校訂】<BR>
備考--/) ミセケチ--$ 抹消--# 補入--+ 傍書--= ナゾリ--& 独自異文等--* 朱筆--<> 不明--<BR> 備考--/) ミセケチ--$ 抹消--# 補入--+ 傍書--= ナゾリ--& 独自異文等--* 朱筆--<> 不明--<BR>
</a><A NAME="k01">校訂1</A> 思ふには--おもふに(に/+は)<A HREF="#t01">(戻)</A><BR> </a><A NAME="k01">校訂1</A> 思ふには--おもふに(に/+は)<A HREF="#t01">(戻)</A><BR>
<A NAME="k02">校訂2</A> 思しし--おほし(し/+し)<A HREF="#t02">(戻)</A><BR> <A NAME="k02">校訂2</A> 思しし--おほし(し/+し)<A HREF="#t02">(戻)</A><BR>
<A NAME="k03">校訂3</A> ねぢけ--*ねちき<A HREF="#t03">(戻)</A><BR> <A NAME="k03">校訂3</A> ねぢけ--*ねちき<A HREF="#t03">(戻)</A><BR>
<A NAME="k04">校訂4</A> 聞こえ--き(き/+こ)え<A HREF="#t04">(戻)</A><BR> <A NAME="k04">校訂4</A> 聞こえ--き(き/+こ)え<A HREF="#t04">(戻)</A><BR>
<A NAME="k05">校訂5</A> 根に--/+ね)に<A HREF="#t05">(戻)</A><BR> <A NAME="k05">校訂5</A> 根に--/+ね)に<A HREF="#t05">(戻)</A><BR>
<A NAME="k06">校訂6</A> こなたのは--こなたの(の/+<><A HREF="#t06">(戻)</A><BR> <A NAME="k06">校訂6</A> こなたのは--こなたの(の/+<><A HREF="#t06">(戻)</A><BR>
<A NAME="k07">校訂7</A> いと--/+いと)<A HREF="#t07">(戻)</A><BR> <A NAME="k07">校訂7</A> いと--/+いと)<A HREF="#t07">(戻)</A><BR>
<A NAME="k08">校訂8</A> そらおぼめき--そ(そ/+ら)おほめき<A HREF="#t08">(戻)</A><BR> <A NAME="k08">校訂8</A> そらおぼめき--そ(そ/+ら)おほめき<A HREF="#t08">(戻)</A><BR>
<A NAME="k09">校訂9</A> ことも--/+事も<><A HREF="#t09">(戻)</A><BR> <A NAME="k09">校訂9</A> ことも--/+事も<><A HREF="#t09">(戻)</A><BR>
<A NAME="k10">校訂10</A> このころ--/+此比<><A HREF="#t10">(戻)</A><BR> <A NAME="k10">校訂10</A> このころ--/+此比<><A HREF="#t10">(戻)</A><BR>
<A NAME="k11">校訂11</A> 御勢--/+<>)いきほひ<A HREF="#t11">(戻)</A><BR> <A NAME="k11">校訂11</A> 御勢--/+<>)いきほひ<A HREF="#t11">(戻)</A><BR>
<A NAME="k12">校訂12</A> なりに--なり(り/+に)<A HREF="#t12">(戻)</A><BR> <A NAME="k12">校訂12</A> なりに--なり(り/+に)<A HREF="#t12">(戻)</A><BR>
</p> </p>
<p><a href="index.html">源氏物語の世界ヘ</a><BR> <p><a href="index.html">源氏物語の世界ヘ</a><BR>
<a href="roman25.html">ローマ字版 </a><BR> <a href="roman25.html">ローマ字版 </a><BR>
<a href="version25.html">現代語訳 </a><BR> <a href="version25.html">現代語訳 </a><BR>
<a href="note25.html">注釈</a><BR> <a href="note25.html">注釈</a><BR>
<a href="data25.html">大島本</a><BR> <a href="data25.html">大島本</a><BR>
</p> </p>
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