diffsrc/original/text30.htmlsrc/modified/text30.html
 1<HTML>⏎1 
 2<HEAD>⏎2 
 3<meta http-equiv="Content-Type" content="text/html; charset=UTF-8">⏎3 
 4<meta http-equiv="Content-Style-Type" content="text/css">⏎4 
 5<meta name="GENERATOR" content="IBM WebSphere Studio Homepage Builder Version 14.0.3.0 for Windows">⏎5 
 6<TITLE>藤袴(大島本)</TITLE>⏎6 
 7</HEAD>⏎7 
cd2:18-9<body background="wallppr063.gif">⏎
First updated 9/20/1996(ver.1-1)<BR>⏎
8<BODY>⏎
cd3:210-12Last updated 9/21/2010(ver.2-3)<BR>⏎
渋谷栄一校訂(C)<BR>⏎
<P
>⏎
9-10<ADDRESS>Last updated 9/21/2010(ver.2-3)<BR>⏎
渋谷栄一校訂(C)</ADDRESS>⏎
 13  <H3>藤袴</H3>⏎11 
d114<P>⏎
 15光る源氏の太政大臣時代三十七歳秋八月から九月の物語<BR>⏎12 
d116<P>⏎
 17 [主要登場人物]<BR>⏎13 
 18<DL>⏎14 
 19<DT> 光る源氏<ひかるげんじ><BR>⏎15 
 20<DD>呼称---六条の大臣・大臣・大殿・大臣の君・殿、三十六歳から三十七歳<BR>⏎16 
 21<DT> 夕霧<ゆうぎり><BR>⏎17 
 22<DD>呼称---宰相中将・中将・君、光る源氏の長男<BR>⏎18 
 23<DT> 玉鬘<たまかづら><BR>⏎19 
 24<DD>呼称---尚侍の君・女・君、内大臣の娘<BR>⏎20 
 25<DT> 内大臣<ないだいじん>⏎21 
 26<DD>呼称---父大臣・大臣・殿<BR>⏎22 
 27<DT> 柏木<かしわぎ><BR>⏎23 
 28<DD>呼称---頭中将・中将・君<BR>⏎24 
 29<DT> 紫の上<むらさきのうえ><BR>⏎25 
 30<DD>呼称---殿の上<BR>⏎26 
 31<DT> 弘徽殿女御<こきでんのにょうご><BR>⏎27 
 32<DD>呼称---弘徽殿・女御<BR>⏎28 
 33<DT> 冷泉帝<れいぜいてい><BR>⏎29 
 34<DD>呼称---主上・内裏<BR>⏎30 
 35<DT> 秋好中宮<あきこのむちゅうぐう><BR>⏎31 
 36<DD>呼称---中宮<BR>⏎32 
 37<DT> 鬚黒大将<ひげくろだいしょう><BR>⏎33 
 38<DD>呼称---大将・大将殿・君<BR>⏎34 
 39<DT> 蛍兵部卿宮<ほたるひょうぶきょうのみや><BR>⏎35 
 40<DD>呼称---兵部卿宮・宮<BR>⏎36 
 41<DT> 承香殿女御<しょうきょうでんのにょうご><BR>⏎37 
 42<DD>呼称---春宮の女御<BR>⏎38 
 43<DT> 鬚黒の北の方<ひげくろのきたのかた><BR>⏎39 
 44<DD>呼称---北の方・御大君<BR>⏎40 
 45</DL>⏎41 
d146<P>⏎
 47第一章 玉鬘の物語 玉鬘と夕霧との新関係<BR>⏎42 
 48<OL>⏎43 
 49<LI>玉鬘、内侍出仕前の不安---<A HREF="#in11">尚侍の御宮仕へのことを、誰も誰も</A>⏎44 
 50<LI>夕霧、源氏の使者として玉鬘を訪問---<A HREF="#in12">薄き鈍色の御衣、なつかしきほどにやつれて</A>⏎45 
 51<LI>夕霧、玉鬘に言い寄る---<A HREF="#in13">そら消息をつきづきしくとり続けて</A>⏎46 
 52<LI>夕霧、玉鬘と和歌を詠み交す---<A HREF="#in14">かかるついでにとや思ひ寄りけむ</A>⏎47 
 53<LI>夕霧、源氏に復命---<A HREF="#in15">「なかなかにもうち出でてけるかな」と</A>⏎48 
 54<LI>源氏の考え方---<A HREF="#in16">「かたしや。わが心ひとつなる人の上にもあらぬを</A>⏎49 
 55<LI>玉鬘の出仕を十月と決定---<A HREF="#in17">「うちうちにも、やむごとなきこれかれ</A>⏎50 
 56</OL>⏎51 
 57第二章 玉鬘の物語 玉鬘と柏木との新関係<BR>⏎52 
 58<OL>⏎53 
 59<LI>柏木、内大臣の使者として玉鬘を訪問---<A HREF="#in21">まことの御はらからの君達は、え寄り来ず</A>⏎54 
 60<LI>柏木、玉鬘と和歌を詠み交す---<A HREF="#in22">「参りたまはむほどの案内、詳しきさまもえ聞かぬを</A>⏎55 
 61</OL>⏎56 
 62第三章 玉鬘の物語 玉鬘と鬚黒大将<BR>⏎57 
 63<OL>⏎58 
 64<LI>鬚黒大将、熱心に言い寄る---<A HREF="#in31">大将は、この中将は同じ右の次将なれば</A>⏎59 
 65<LI>九月、多数の恋文が集まる---<A HREF="#in32">九月にもなりぬ。初霜むすぼほれ、艶なる朝に</A>⏎60 
 66</OL>⏎61 
d167<P>⏎
 68<A HREF="#in41">【出典】</A><BR>⏎62 
 69<A HREF="#in42">【校訂】</A><BR>⏎63 
d170<P>⏎
text3071 <H4>第一章 玉鬘の物語 玉鬘と夕霧との新関係</H4>64 
text3072 <A NAME="in11">[第一段 玉鬘、内侍出仕前の不安]</A><BR>65 
d173<P>⏎
 74 尚侍の御宮仕へのことを、誰れも誰れもそそのかしたまふも、<BR>⏎66 
cd2:175-76 「いかならむ。親と思ひきこゆる人の御心だに、うちとくまじき世なりければ、ましてさやうの交じらひにつけて、心よりほかに便なきこともあらば、中宮も女御も、方がたにつけて心おきたまはば、はしたなからむに、わが身はかくはかなきさまにて、いづ方にも深く思ひとどめられたてまつれるほどもなく、浅きおぼえにて、ただならず思ひ言ひ、いかで人笑へなるさまに見聞きなさむとうけひたまふ人びとも多く、とかくにつけて、やすからぬことのみありぬべき」を、もの思し知るまじきほどにしあらねば、さまざまに思ほし乱れ、人知れずもの嘆かし。<BR>⏎
<P>⏎
67 「いかならむ。親と思ひきこゆる人の御心だに、うちとくまじき世なりければ、ましてさやうの交じらひにつけて、心よりほかに便なきこともあらば、中宮も女御も、方がたにつけて心おきたまはば、はしたなからむに、わが身はかくはかなきさまにて、いづ方にも深く思ひとどめられたてまつれるほどもなく、浅きおぼえにて、ただならず思ひ言ひ、いかで人笑へなるさまに見聞きなさむとうけひたまふ人びとも多く、とかくにつけて、やすからぬことのみありぬべき」を、もの思し知るまじきほどにしあらねば、さまざまに思ほし乱れ、人知れずもの嘆かし。<BR>⏎
 77 「さりとて、かかるありさまも悪しきことはなけれど、この大臣の御心ばへの、むつかしく心づきなきも、いかなるついでにかは、もて離れて、人の推し量るべかめる筋を、心きよくもあり果つべき。<BR>⏎68 
 78 まことの父大臣も、この殿の思さむところ、憚りたまひて、うけばりてとり放ち、けざやぎたまふべきことにもあらねば、なほとてもかくても、見苦しう、かけかけしきありさまにて、心を悩まし、人にもて騒がるべき身なめり」<BR>⏎69 
d179<P>⏎
cd4:280-83 となかなかこの親尋ねきこえたまひて後は、ことに憚りたまふけしきもなき大臣の君の御もてなしを取り加へつつ、人知れずなむ嘆かしかりける。<BR>⏎
<P>⏎
 思ふことを、まほならずとも、片端にてもうちかすめつべき<A HREF="#k01">女</A><A NAME="t01">親</A>もおはせず、いづ方もいづ方も、いと恥づかしげに、いとうるはしき御さまどもには、何ごとをかは、さなむかくなむとも聞こえ分きたまはむ。世の人に似ぬ身のありさまを、うち眺めつつ、夕暮の空のあはれげなるけしきを、端近うて見出だしたまへるさま、いとをかし。<BR>⏎
<P>⏎
70-71 となかなかこの親尋ねきこえたまひて後は、ことに憚りたまふけしきもなき大臣の君の御もてなしを取り加へつつ、人知れずなむ嘆かしかりける。<BR>⏎
 思ふことを、まほならずとも、片端にてもうちかすめつべき<A HREF="#k01">女</A><A NAME="t01">親</A>もおはせず、いづ方もいづ方も、いと恥づかしげに、いとうるはしき御さまどもには、何ごとをかは、さなむかくなむとも聞こえ分きたまはむ。世の人に似ぬ身のありさまを、うち眺めつつ、夕暮の空のあはれげなるけしきを、端近うて見出だしたまへるさま、いとをかし。<BR>⏎
text3084 <A NAME="in12">[第二段 夕霧、源氏の使者として玉鬘を訪問]</A><BR>72 
d185<P>⏎
 86 薄き鈍色の御衣、なつかしきほどにやつれて、例に変はりたる色あひにしも、容貌はいとはなやかにもてはやされておはするを、御前なる人びとは、うち笑みて見たてまつるに、宰相中将、同じ色の、今すこしこまやかなる直衣姿にて、纓巻きたまへる姿しも、またいと<A HREF="#k02">なまめかしく</A><A NAME="t02">き</A>よらにておはしたり。<BR>⏎73 
d187<P>⏎
cd2:188-89 初めより、ものまめやかに心寄せきこえたまへば、もて離れて疎々しきさまにはもてなしたまはざりしならひに、今、あらざりけりとて、こよなく変はらむもうたてあれば、なほ御簾に几帳添へたる御対面は、人伝てならでありけり。殿の御消息にて、内裏より仰せ言あるさま、やがてこの君のうけたまはりたまへるなりけり。<BR>⏎
<P>⏎
74 初めより、ものまめやかに心寄せきこえたまへば、もて離れて疎々しきさまにはもてなしたまはざりしならひに、今、あらざりけりとて、こよなく変はらむもうたてあれば、なほ御簾に几帳添へたる御対面は、人伝てならでありけり。殿の御消息にて、内裏より仰せ言あるさま、やがてこの君のうけたまはりたまへるなりけり。<BR>⏎
 90 御返り、おほどかなるものから、いとめやすく聞こえなしたまふけはひの、らうらうじくなつかしきにつけても、かの野分の朝の御朝顔は、心にかかりて恋しきを、うたてある筋に思ひし、聞き明らめて後は、なほもあらぬ心地添ひて、<BR>⏎75 
d191<P>⏎
cd2:192-93 「この宮仕ひを、おほかたにしも思し放たじかし。さばかり見所ある御あはひどもにて、をかしきさまなることのわづらはしき、はたかならず出で来なむかし」<BR>⏎
<P>⏎
76 「この宮仕ひを、おほかたにしも思し放たじかし。さばかり見所ある御あはひどもにて、をかしきさまなることのわづらはしき、はたかならず出で来なむかし」<BR>⏎
 94 と思ふに、ただならず、胸ふたがる心地すれど、つれなくすくよかにて、<BR>⏎77 
d195<P>⏎
 96 「人に聞かすまじとはべりつることを聞こえさせむに、いかがはべるべき」<BR>⏎78 
d197<P>⏎
 98 とけしき立てば、近くさぶらふ人も、すこし退きつつ、御几帳のうしろなどにそばみあへり。<BR>⏎79 
d199<P>⏎
text30100 <A NAME="in13">[第三段 夕霧、玉鬘に言い寄る]</A><BR>80 
d1101<P>⏎
 102 そら消息をつきづきしくとり続けて、こまやかに聞こえたまふ。主上の御けしきのただならぬ筋を、さる御心したまへ、などやうの筋なり。いらへたまはむ言もなくて、ただうち嘆きたまへるほど、忍びやかに、うつくしくいとなつかしきに、なほえ忍ぶまじく、<BR>⏎81 
d1103<P>⏎
 104 「御服も、この月には脱がせたまふべきを、日ついでなむ吉ろしからざりける。十三日に、河原へ出でさせたまふべきよし<A HREF="#k03">のたまはせつ</A><A NAME="t03">。</A>なにがしも御供にさぶらふべくなむ思ひたまふる」<BR>⏎82 
d1105<P>⏎
 106 と聞こえたまへば、<BR>⏎83 
d1107<P>⏎
 108 「たぐひたまはむもことことしきやうにやはべらむ。忍びやかにてこそよくはべらめ」<BR>⏎84 
d1109<P>⏎
 110 とのたまふ。この御服なんどの詳しきさまを、人にあまねく知らせじとおもむけたまへるけしき、いと労あり。中将も、<BR>⏎85 
d1111<P>⏎
cd2:1112-113 「漏らさじと、つつませたまふらむこそ、心憂けれ。忍びがたく思ひたまへらるる形見なれば、脱ぎ捨てはべらむことも、いともの憂くはべるものを。さてもあやしうもて離れぬことの、また心得がたきにこそはべれ。この御あらはし衣の色なくは、えこそ思ひたまへ分くまじかりけれ」<BR>⏎
<P>⏎
86 「漏らさじと、つつませたまふらむこそ、心憂けれ。忍びがたく思ひたまへらるる形見なれば、脱ぎ捨てはべらむことも、いともの憂くはべるものを。さてもあやしうもて離れぬことの、また心得がたきにこそはべれ。この御あらはし衣の色なくは、えこそ思ひたまへ分くまじかりけれ」<BR>⏎
 114 とのたまへば、<BR>⏎87 
d1115<P>⏎
 116 「何ごとも思ひ分かぬ心には、ましてともかくも思ひたまへたどられはべらねど、かかる色こそ、あやしく<A HREF="#k04">もの</A><A NAME="t04">あ</A>はれなるわざにはべりけれ」<BR>⏎88 
d1117<P>⏎
cd2:1118-119 とて例よりもしめりたる御けしき、いとらうたげにをかし。<BR>⏎
<P>⏎
89 とて例よりもしめりたる御けしき、いとらうたげにをかし。<BR>⏎
text30120 <A NAME="in14">[第四段 夕霧、玉鬘と和歌を詠み交す]</A><BR>90 
d1121<P>⏎
 122 かかるついでにとや思ひ寄りけむ、蘭の花のいとおもしろきを持たまへりけるを、御簾のつまよりさし入れて、<BR>⏎91 
d1123<P>⏎
 124 「これも御覧ずべきゆゑはありけり」<BR>⏎92 
d1125<P>⏎
cd5:2126-130 とてとみにも許さで持たまへれば、うつたへに思ひ寄らで取りたまふ御袖を、引き動かしたり。<BR>⏎
<P>⏎
 「同じ野の露にやつるる藤袴<BR>⏎
  あはれはかけよかことばかりも」<BR>⏎
<P>⏎
93-94 とてとみにも許さで持たまへれば、うつたへに思ひ寄らで取りたまふ御袖を、引き動かしたり。<BR>⏎
 「同じ野の露にやつるる藤袴<BR>  あはれはかけよかことばかりも」<BR>⏎
 131 「<A HREF="#no1">道の果てなる</A><A NAME="te1">」</A>とかや、いと心づきなくうたてなりぬれど、見知らぬさまに、やをら引き入りて、<BR>⏎95 
d1132<P>⏎
cd2:1133-134 「尋ぬるにはるけき野辺の露ならば<BR>⏎
  薄紫やかことならまし<BR>⏎
96 「尋ぬるにはるけき野辺の露ならば<BR>  薄紫やかことならまし<BR>⏎
 135 かやうにて聞こゆるより、深きゆゑはいかが」<BR>⏎97 
d1136<P>⏎
 137 とのたまへば、すこしうち笑ひて、<BR>⏎98 
d1138<P>⏎
 139 「浅きも深きも、思し分く方ははべりなむと思ひたまふる。まめやかには、いとかたじけなき筋を思ひ知りながら、えしづめはべらぬ心のうちを、いかでかしろしめさるべき。なかなか思し疎まむがわびしさに、いみじく籠めはべるを、<A HREF="#no2">今はた同じ</A><A NAME="te2">と</A>、思ひたまへわびてなむ。<BR>⏎99 
d1140<P>⏎
cd4:2141-144 頭中将のけしきは御覧じ知りきや。人の上に、なんど思ひはべりけむ。身にてこそ、いとをこがましく、かつは思ひたまへ知られけれ。なかなか、かの君は思ひさまして、つひに御あたり離るまじき頼みに、思ひ慰めたるけしきなど見はべるも、いとうらやましくねたきに、あはれとだに思しおけよ」<BR>⏎
<P>⏎
 など<A HREF="#k05">こまかに</A><A NAME="t05">聞</A>こえ知らせたまふこと多かれど、かたはらいたければ<A HREF="#k06">書かぬ</A><A NAME="t06">な</A>り。<BR>⏎
<P>⏎
100-101 頭中将のけしきは御覧じ知りきや。人の上に、なんど思ひはべりけむ。身にてこそ、いとをこがましく、かつは思ひたまへ知られけれ。なかなか、かの君は思ひさまして、つひに御あたり離るまじき頼みに、思ひ慰めたるけしきなど見はべるも、いとうらやましくねたきに、あはれとだに思しおけよ」<BR>⏎
 など<A HREF="#k05">こまかに</A><A NAME="t05">聞</A>こえ知らせたまふこと多かれど、かたはらいたければ<A HREF="#k06">書かぬ</A><A NAME="t06">な</A>り。<BR>⏎
 145 尚侍の君、やうやう引き入りつつ、むつかしと思したれば、<BR>⏎102 
d1146<P>⏎
 147 「心憂き御けしきかな。過ちすまじき心のほどは、おのづから御覧じ知らるるやうもはべらむものを」<BR>⏎103 
d1148<P>⏎
cd2:1149-150 とてかかるついでに、今すこし漏らさまほしけれど、<BR>⏎
<P>⏎
104 とてかかるついでに、今すこし漏らさまほしけれど、<BR>⏎
 151 「あやしくなやましくなむ」<BR>⏎105 
d1152<P>⏎
cd2:1153-154 とて入り果てたまひぬれば、いといたくうち<A HREF="#k07">嘆きて</A><A NAME="t07">立</A>ちたまひぬ。<BR>⏎
<P>⏎
106 とて入り果てたまひぬれば、いといたくうち<A HREF="#k07">嘆きて</A><A NAME="t07">立</A>ちたまひぬ。<BR>⏎
text30155 <A NAME="in15">[第五段 夕霧、源氏に復命]</A><BR>107 
d1156<P>⏎
cd2:1157-158 「なかなかにもうち出でてけるかな」と、口惜しきにつけても、かの今すこし身にしみておぼえし御けはひを、かばかりの物越しにても、「ほのかに御声をだに、いかならむついでにか聞かむ」と、やすからず思ひつつ、御前に参りたまへれば、出でたまひて、御返りなど聞こえたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
108 「なかなかにもうち出でてけるかな」と、口惜しきにつけても、かの今すこし身にしみておぼえし御けはひを、かばかりの物越しにても、「ほのかに御声をだに、いかならむついでにか聞かむ」と、やすからず思ひつつ、御前に参りたまへれば、出でたまひて、御返りなど聞こえたまふ。<BR>⏎
 159 「この宮仕へを、しぶげにこそ思ひたまへれ。宮などの、練じたまへる人にて、いと心深きあはれを尽くし、言ひ悩ましたまふになむ、心やしみたまふらむと思ふになむ、心苦しき。<BR>⏎109 
d1160<P>⏎
cd2:1161-162 されど大原野の行幸に、主上を見たてまつりたまひては、いとめでたくおはしけり、と思ひたまへりき。若き人は、ほのかにも見たてまつりて、えしも宮仕への筋もて離れじ。さ思ひてなむ、このこともかくものせし」<BR>⏎
<P>⏎
110 されど大原野の行幸に、主上を見たてまつりたまひては、いとめでたくおはしけり、と思ひたまへりき。若き人は、ほのかにも見たてまつりて、えしも宮仕への筋もて離れじ。さ思ひてなむ、このこともかくものせし」<BR>⏎
 163 などのたまへば、<BR>⏎111 
cd6:3164-169<P> 「さても人ざまは、いづ方につけてかは、たぐひてものしたまふらむ。中宮、かく並びなき筋にておはしまし、また弘徽殿、やむごとなく、おぼえことにてものしたまへば、いみじき御思ひありとも、立ち並びたまふこと、かたくこそはべらめ。<BR>⏎
<P>⏎
 宮は、いとねむごろに思したなるを、わざとさる筋の御宮仕へにもあらぬものから、ひき違へたらむさまに御心おきたまはむも、さる御仲らひにては、いといとほしくなむ聞きたまふる」<BR>⏎
<P>⏎
 とおとなおとなしく申したまふ。<BR>⏎
<P>⏎
112-114 「さても人ざまは、いづ方につけてかは、たぐひてものしたまふらむ。中宮、かく並びなき筋にておはしまし、また弘徽殿、やむごとなく、おぼえことにてものしたまへば、いみじき御思ひありとも、立ち並びたまふこと、かたくこそはべらめ。<BR>⏎
 宮は、いとねむごろに思したなるを、わざとさる筋の御宮仕へにもあらぬものから、ひき違へたらむさまに御心おきたまはむも、さる御仲らひにては、いといとほしくなむ聞きたまふる」<BR>⏎
 とおとなおとなしく申したまふ。<BR>⏎
text30170 <A NAME="in16">[第六段 源氏の考え方]</A><BR>115 
d1171<P>⏎
cd4:2172-175 「かたしや。わが心ひとつなる人の上にもあらぬを、大将さへ、我をこそ恨むなれ。すべてかかることの心苦しさを見過ぐさで、あやなき人の恨み負ふ、かへりては軽々しきわざなりけり。かの母君の、あはれに言ひおきしことの忘れざりしかば、心細き山里になど聞きしを、かの大臣、はた聞き入れたまふべくもあらずと<A HREF="#k08">愁へし</A><A NAME="t08">に</A>、いとほしくて、かく渡しはじめたるなり。ここにかくものめかすとて、かの大臣も人めかいたまふなめり」<BR>⏎
<P>⏎
 とつきづきしくのたまひなす。<BR>⏎
<P>⏎
116-117 「かたしや。わが心ひとつなる人の上にもあらぬを、大将さへ、我をこそ恨むなれ。すべてかかることの心苦しさを見過ぐさで、あやなき人の恨み負ふ、かへりては軽々しきわざなりけり。かの母君の、あはれに言ひおきしことの忘れざりしかば、心細き山里になど聞きしを、かの大臣、はた聞き入れたまふべくもあらずと<A HREF="#k08">愁へし</A><A NAME="t08">に</A>、いとほしくて、かく渡しはじめたるなり。ここにかくものめかすとて、かの大臣も人めかいたまふなめり」<BR>⏎
 とつきづきしくのたまひなす。<BR>⏎
 176 「人柄は、宮の御人にていとよかるべし。今めかしく、いとなまめきたるさまして、さすがにかしこく、過ちすまじくなどして、あはひはめやすからむ。さてまた、宮仕へにも、いとよく足らひたらむかし。容貌よく、らうらうじきものの、公事などにもおぼめかしからず、はかばかしくて、主上の常に願はせたまふ御心には、違ふまじ」<BR>⏎118 
d1177<P>⏎
 178 などのたまふけしきの見まほしければ、<BR>⏎119 
d1179<P>⏎
 180 「年ごろかくて育みきこえたまひける御心ざしを、ひがざまにこそ人は申すなれ。かの大臣も、さやうになむおもむけて、大将の、あなたざまのたよりにけしきばみたりけるにも、応へける」<BR>⏎120 
d1181<P>⏎
 182 と聞こえたまへば、うち笑ひて、<BR>⏎121 
d1183<P>⏎
cd2:1184-185 「かたがたいと似げなきことかな。なほ宮仕へをも、御心許して、かくなむと思されむさまにぞ従ふべき。<A HREF="#no3">女は三つに従ふ</A><A NAME="te3">も</A>のにこそあなれど、ついでを違へて、おのが心にまかせむことは、あるまじきことなり」<BR>⏎
<P>⏎
122 「かたがたいと似げなきことかな。なほ宮仕へをも、御心許して、かくなむと思されむさまにぞ従ふべき。<A HREF="#no3">女は三つに従ふ</A><A NAME="te3">も</A>のにこそあなれど、ついでを違へて、おのが心にまかせむことは、あるまじきことなり」<BR>⏎
 186 とのたまふ。<BR>⏎123 
d1187<P>⏎
text30188 <A NAME="in17">[第七段 玉鬘の出仕を十月と決定]</A><BR>124 
d1189<P>⏎
 190 「うちうちにも、やむごとなきこれかれ、年ごろを経てものしたまへば、えその筋の人数にはものしたまはで、捨てがてらにかく譲りつけ、おほぞうの宮仕への筋に、領ぜむと思しおきつる、いとかしこくかどあることなりとなむ、よろこび申されけると、たしかに人の語り申しはべりしなり」<BR>⏎125 
d1191<P>⏎
cd2:1192-193 といとうるはしきさまに語り申したまへば、「げにさは思ひたまふらむかし」と思すに、いとほしくて、<BR>⏎
<P>⏎
126 といとうるはしきさまに語り申したまへば、「げにさは思ひたまふらむかし」と思すに、いとほしくて、<BR>⏎
 194 「いとまがまがしき筋にも思ひ寄りたまひけるかな。いたり深き御心ならひならむかし。今おのづから、いづ方につけても、あらはなることありなむ。思ひ隈なしや」<BR>⏎127 
d1195<P>⏎
cd6:3196-201 と笑ひたまふ。御けしきはけざやかなれど、なほ疑ひは置かる。大臣も、<BR>⏎
<P>⏎
 「さりや。かく人の推し量る、案に落つることもあらましかば、いと口惜しくねぢけたらまし。かの大臣に、いかでかく心清きさまを知らせたてまつらむ」<BR>⏎
<P>⏎
 と思すにぞ、「げに宮仕への筋にて、けざやかなるまじく紛れたるおぼえを、かしこくも思ひ寄りたまひけるかな」と、むくつけく思さる。<BR>⏎
<P>⏎
128-130 と笑ひたまふ。御けしきはけざやかなれど、なほ疑ひは置かる。大臣も、<BR>⏎
 「さりや。かく人の推し量る、案に落つることもあらましかば、いと口惜しくねぢけたらまし。かの大臣に、いかでかく心清きさまを知らせたてまつらむ」<BR>⏎
 と思すにぞ、「げに宮仕への筋にて、けざやかなるまじく紛れたるおぼえを、かしこくも思ひ寄りたまひけるかな」と、むくつけく思さる。<BR>⏎
 202 かくて御服など脱ぎたまひて、<BR>⏎131 
d1203<P>⏎
 204 「月立たば、なほ<A HREF="#k10">参り</A><A NAME="t10">た</A>まはむこと忌あるべし。十月ばかりに」<BR>⏎132 
d1205<P>⏎
 206 と思しのたまふを、内裏にも心もとなく聞こし召し、聞こえたまふ人びとは、誰も誰も、いと口惜しくて、この御参りの先にと、心寄せのよすがよすがに責めわびたまへど、<BR>⏎133 
d1207<P>⏎
 208 「<A HREF="#no4">吉野の滝を堰かむ</A><A NAME="te4">よ</A>りも難きことなれば、いとわりなし」<BR>⏎134 
d1209<P>⏎
cd2:1210-211 とおのおの応ふ。<BR>⏎
<P>⏎
135 とおのおの応ふ。<BR>⏎
 212 中将も、なかなかなることをうち出でて、「いかに思すらむ」と苦しきままに、駆けりありきて、いとねむごろに、おほかたの御後見を思ひあつかひたるさまにて、追従しありきたまふ。たはやすく、軽らかにうち出でては聞こえかかりたまはず、<A HREF="#k11">めやすく</A><A NAME="t11">も</A>てしづめたまへり。<BR>⏎136 
d1213<P>⏎
text30214 <H4>第二章 玉鬘の物語 玉鬘と柏木との新関係</H4>137 
text30215 <A NAME="in21">[第一段 柏木、内大臣の使者として玉鬘を訪問]</A><BR>138 
d1216<P>⏎
 217 まことの御はらからの君たちは、え寄り来ず、「宮仕へのほどの御後見を」と、おのおの心もとなくぞ思ひける。<BR>⏎139 
d1218<P>⏎
 219 頭中将、心を尽くしわびしことは、かき絶えにたるを、「うちつけなりける御心かな」と、人びとはをかしがるに、殿の御使にておはしたり。なほもて出でず、忍びやかに御消息なども聞こえ交はしたまひければ、月の明かき夜、桂の蔭に隠れてものしたまへり。見聞き入るべくもあらざりしを、名残なく南の御簾の前に据ゑたてまつる。<BR>⏎140 
d1220<P>⏎
 221 みづから聞こえたまはむことはしも、なほつつましければ、宰相の君して応へ聞こえたまふ。<BR>⏎141 
d1222<P>⏎
 223 「なにがしらを選びてたてまつりたまへるは、人伝てならぬ御消息にこそはべらめ。かくもの遠くては、いかが聞こえさすべからむ。みづからこそ、数にもはべらねど、絶えぬたとひもはべなるは。いかにぞや、古代のことなれど、頼もしくぞ思ひたまへける」<BR>⏎142 
d1224<P>⏎
cd10:5225-234 とてものしと思ひたまへり。<BR>⏎
<P>⏎
 「げに年ごろの積もりも取り添へて、聞こえまほしけれど、日ごろあやしく悩ましくはべれば、起き上がりなどもえしはべらでなむ。かくまでとがめたまふも、なかなか疎々しき心地なむしはべりける」<BR>⏎
<P>⏎
 といとまめだちて聞こえ出だしたまへり。<BR>⏎
<P>⏎
 「悩ましく思さるらむ御几帳のもとをば、許させたまふまじくや。よしよし。げに聞こえさするも、心地なかりけり」<BR>⏎
<P>⏎
 とて大臣の御消息ども忍びやかに聞こえたまふ用意など、人には劣りたまはず、いとめやすし。<BR>⏎
<P>⏎
143-147 とてものしと思ひたまへり。<BR>⏎
 「げに年ごろの積もりも取り添へて、聞こえまほしけれど、日ごろあやしく悩ましくはべれば、起き上がりなどもえしはべらでなむ。かくまでとがめたまふも、なかなか疎々しき心地なむしはべりける」<BR>⏎
 といとまめだちて聞こえ出だしたまへり。<BR>⏎
 「悩ましく思さるらむ御几帳のもとをば、許させたまふまじくや。よしよし。げに聞こえさするも、心地なかりけり」<BR>⏎
 とて大臣の御消息ども忍びやかに聞こえたまふ用意など、人には劣りたまはず、いとめやすし。<BR>⏎
text30235 <A NAME="in22">[第二段 柏木、玉鬘と和歌を詠み交す]</A><BR>148 
d1236<P>⏎
 237 「参りたまはむほどの案内、詳しきさまもえ聞かぬを、うちうちにのたまはむなむよからむ。何ごとも人目に憚りて、え参り来ず、聞こえぬことをなむ、なかなかいぶせく思したる」<BR>⏎149 
d1238<P>⏎
cd12:6239-250 など語りきこえたまふついでに、<BR>⏎
<P>⏎
 「いでやをこがましきことも、えぞ聞こえさせぬや。いづ方につけても、あはれをば御覧じ過ぐすべくやはありけると、いよいよ恨めしさも添ひはべるかな。まづは今宵などの御もてなしよ。北面だつ方に召し入れて、君達こそめざましくも思し召さめ、下仕へなどやうの人びととだに、うち語らはばや。またかかるやうはあらじかし。さまざまにめづらしき世なりかし」<BR>⏎
<P>⏎
 とうち傾きつつ、恨み続けたるもをかしければ、かくなむと聞こゆ。<BR>⏎
<P>⏎
 「げに人聞きを、うちつけなるやうにやと憚りはべるほどに、年ごろの埋れいたさをも、あきらめはべらぬは、いとなかなかなること多くなむ」<BR>⏎
<P>⏎
 とただすくよかに聞こえなしたまふに、まばゆくて、よろづおしこめたり。<BR>⏎
<P>⏎
 「妹背山深き道をば尋ねずて<BR>⏎
  緒絶の橋に踏み迷ひける<BR>⏎
150-155 など語りきこえたまふついでに、<BR>⏎
 「いでやをこがましきことも、えぞ聞こえさせぬや。いづ方につけても、あはれをば御覧じ過ぐすべくやはありけると、いよいよ恨めしさも添ひはべるかな。まづは今宵などの御もてなしよ。北面だつ方に召し入れて、君達こそめざましくも思し召さめ、下仕へなどやうの人びととだに、うち語らはばや。またかかるやうはあらじかし。さまざまにめづらしき世なりかし」<BR>⏎
 とうち傾きつつ、恨み続けたるもをかしければ、かくなむと聞こゆ。<BR>⏎
 「げに人聞きを、うちつけなるやうにやと憚りはべるほどに、年ごろの埋れいたさをも、あきらめはべらぬは、いとなかなかなること多くなむ」<BR>⏎
 とただすくよかに聞こえなしたまふに、まばゆくて、よろづおしこめたり。<BR>⏎
 「妹背山深き道をば尋ねずて<BR>  緒絶の橋に踏み迷ひける<BR>⏎
 251 よ」<BR>⏎156 
d1252<P>⏎
 253 と恨むるも、人やりならず。<BR>⏎157 
d1254<P>⏎
cd3:1255-257 「<A HREF="#k12">惑ひ</A><A NAME="t12">け</A>る道をば知らず妹背山<BR>⏎
  たどたどしくぞ誰も踏み見し」<BR>⏎
<P>⏎
158 「<A HREF="#k12">惑ひ</A><A NAME="t12">け</A>る道をば知らず妹背山<BR>  たどたどしくぞ誰も踏み見し」<BR>⏎
 258 「いづ方のゆゑとなむ、え思し分かざめりし。何ごとも、わりなきまで、おほかたの世を憚らせたまふめれば、え聞こえさせたまはぬになむ。おのづからかくのみもはべらじ」<BR>⏎159 
d1259<P>⏎
 260 と聞こゆるも、さることなれば、<BR>⏎160 
d1261<P>⏎
cd3:2262-264 「よし長居しはべらむも、すさまじきほどなり。やうやう労積もりてこそは、<A HREF="#k13">かことをも</A><A NAME="t13">」</A><BR>⏎
 <A HREF="#k14">とて</A><A NAME="t14"></A>立ちたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
161-162 「よし長居しはべらむも、すさまじきほどなり。やうやう労積もりてこそは、<A HREF="#k13">かことをも</A><A NAME="t13">」</A><BR>⏎
 <A HREF="#k14">とて</A><A NAME="t14"></A>立ちたまふ。<BR>⏎
 265 月隈なくさし上がりて、空のけしきも艶なるに、いとあてやかにきよげなる容貌して、御直衣の姿、好ましくはなやかにて、いとをかし。<BR>⏎163 
d1266<P>⏎
cd2:1267-268 宰相中将のけはひありさまには、え並びたまはねど、これもをかしかめるは、「いかでかかる御仲らひなりけむ」と、若き人びとは、例のさるまじきことをも取り立ててめであへり。<BR>⏎
<P>⏎
164 宰相中将のけはひありさまには、え並びたまはねど、これもをかしかめるは、「いかでかかる御仲らひなりけむ」と、若き人びとは、例のさるまじきことをも取り立ててめであへり。<BR>⏎
text30269 <H4>第三章 玉鬘の物語 玉鬘と鬚黒大将</H4>165 
text30270 <A NAME="in31">[第一段 鬚黒大将、熱心に言い寄る]</A><BR>166 
d1271<P>⏎
 272 大将は、この中将は同じ右の次将なれば、常に呼び取りつつ、ねむごろに語らひ、大臣にも申させたまひけり。人柄もいとよく、朝廷の御後見となるべかめる下形なるを、「など<A HREF="#k15">かは</A><A NAME="t15">あ</A>らむ」と思しながら、「かの大臣のかくしたまへることを、いかがは聞こえ返すべからむ。さるやうあることにこそ」と、心得たまへる筋さへあれば、任せきこえたまへり。<BR>⏎167 
d1273<P>⏎
 274 この大将は、春宮の女御の御はらからにぞおはしける。大臣たちをおきたてまつりて、さしつぎの御おぼえ、いとやむごとなき君なり。年三十二三のほどにものしたまふ。<BR>⏎168 
d1275<P>⏎
 276 北の方は、紫の上の御姉ぞかし。式部卿宮の御大君よ。年のほど三つ<A HREF="#k16">四つ</A><A NAME="t16">が</A>このかみは、ことなるかたはにもあらぬを、人柄やいかがおはしけむ、「<A HREF="#k17">嫗」と</A><A NAME="t17">つ</A>けて心にも入れず、いかで背きなむと思へり。<BR>⏎169 
d1277<P>⏎
 278 その筋により、六条の大臣は、大将の御ことは、「似げなくいとほしからむ」と思したるなめり。色めかしくうち乱れたるところなきさまながら、いみじくぞ心を尽くしありきたまひける。<BR>⏎170 
d1279<P>⏎
 280 「かの大臣も、もて離れても思したらざなり。女は、宮仕へをもの憂げに思いたなり」と、うちうちのけしきも、さる詳しきたよりあれば、漏り聞きて、<BR>⏎171 
d1281<P>⏎
 282 「ただ大殿の御おもむけの異なるにこそはあなれ。まことの親の御心だに違はずは」<BR>⏎172 
d1283<P>⏎
cd2:1284-285 とこの弁の御許にも責ためたまふ。<BR>⏎
<P>⏎
173 とこの弁の御許にも責ためたまふ。<BR>⏎
text30286 <A NAME="in32">[第二段 九月、多数の恋文が集まる]</A><BR>174 
d1287<P>⏎
 288 九月にもなりぬ。初霜むすぼほれ、艶なる朝に、例の、とりどりなる御後見どもの、引きそばみつつ持て参る御文どもを、見たまふこともなくて、読みきこゆるばかりを聞きたまふ。大将殿のには、<BR>⏎175 
d1289<P>⏎
cd5:2290-294 「なほ頼み来しも、過ぎゆく空のけしきこそ心尽くしに、<BR>⏎
<P>⏎
  数ならば厭ひもせまし長月に<BR>⏎
  命をかくるほどぞはかなき」<BR>⏎
<P>⏎
176-177 「なほ頼み来しも、過ぎゆく空のけしきこそ心尽くしに、<BR>⏎
  数ならば厭ひもせまし長月に<BR>  命をかくるほどぞはかなき」<BR>⏎
 295 「月たたば」とある定めを、いとよく聞きたまふなめり。<BR>⏎178 
d1296<P>⏎
 297 兵部卿宮は、<BR>⏎179 
d1298<P>⏎
 299 「いふかひなき世は、聞こえむ方なきを、<BR>⏎180 
d1300<P>⏎
cd3:1301-303  <A HREF="#no5">朝日さす光を見ても玉笹</A><A NAME="te5">の</A><BR>⏎
  葉分けの霜を消たずもあらなむ<BR>⏎
<P>⏎
181  <A HREF="#no5">朝日さす光を見ても玉笹</A><A NAME="te5">の</A><BR>  葉分けの霜を消たずもあらなむ<BR>⏎
 304 思しだに知らば、慰む方もありぬべくなむ」<BR>⏎182 
d1305<P>⏎
cd2:1306-307 とていとかしけたる下折れの霜も落とさず持て参れる御使さへぞ、うちあひたるや。<BR>⏎
<P>⏎
183 とていとかしけたる下折れの霜も落とさず持て参れる御使さへぞ、うちあひたるや。<BR>⏎
 308 式部卿宮の左兵衛督は、殿の上の御はらからぞかし。親しく参りなどしたまふ君なれば、おのづからいとよくものの案内も聞きて、いみじくぞ思ひわびける。いと多く怨み続けて、<BR>⏎184 
d1309<P>⏎
cd3:1310-312 「忘れなむと思ふもものの悲しきを<BR>⏎
  いかさまにしていかさまにせむ」<BR>⏎
<P>⏎
185 「忘れなむと思ふもものの悲しきを<BR>  いかさまにしていかさまにせむ」<BR>⏎
 313 紙の色、墨つき、しめたる匂ひも、さまざまなるを、人びとも皆、<BR>⏎186 
 314 「思し絶えぬべかめるこそ、さうざうしけれ」<BR>⏎187 
 315 など言ふ。<BR>⏎188 
d1316<P>⏎
 317 宮の御返りをぞ、いかが思すらむ、ただいささかにて、<BR>⏎189 
d1318<P>⏎
cd3:1319-321 「心もて光に向かふ葵だに<BR>⏎
  朝おく霜をおのれやは消つ」<BR>⏎
<P>⏎
190 「心もて光に向かふ葵だに<BR>  朝おく霜をおのれやは消つ」<BR>⏎
 322 とほのかなるを、いとめづらしと見たまふに、みづからはあはれを知りぬべき御けしきにかけたまひつれば、つゆばかりなれど、いとうれしかりけり。<BR>⏎191 
 323<P> かやうに何となけれど、さまざまなる人びとの、御わびごとも多かり。<BR>⏎192 
 324 女の御心ばへは、この君をなむ本にすべきと、大臣たち定めきこえたまひけりとや。<BR>⏎193 
d2325-326
<P>⏎
text30327 <a name="in41">【出典】<BR>194 
c1328</a><A NAME="no1">出典1</A> 東路の道の果てなる常陸帯のかごとばかりも逢ひ見てしがな(古今六帖五二-三三六〇)<A HREF="#te1">(戻)</A><BR>⏎
195<A NAME="no1">出典1</A> 東路の道の果てなる常陸帯のかごとばかりも逢ひ見てしがな(古今六帖五二-三三六〇)<A HREF="#te1">(戻)</A><BR>⏎
 329<A NAME="no2">出典2</A> 侘びぬれば今はた同じ難波なる身を尽くしても逢はむとぞ思ふ(後撰集恋五-九六〇 元良親王)<A HREF="#te2">(戻)</A><BR>⏎196 
 330<A NAME="no3">出典3</A> 婦人有三従之義。無専用之道。故未嫁従父。既嫁従夫。夫死従子。(儀礼-喪服篇)<A HREF="#te3">(戻)</A><BR>⏎197 
 331<A NAME="no4">出典4</A> 手を障へて吉野の滝は堰きつとも人の心をいかが頼まむ(古今六帖四-二二三三 凡河内躬恒)<A HREF="#te4">(戻)</A><BR>⏎198 
 332<A NAME="no5">出典5</A> 玉笹の葉分きに置ける白露の今いく夜経む我ならなくに(古今六帖六-三九五〇)<A HREF="#te5">(戻)</A><BR>⏎199 
d1333
text30334<p> <a name="in42">【校訂】<BR>200 
 335備考--(/) ミセケチ--$ 抹消--# 補入--+ 傍書--= ナゾリ--& 独自異文等--* 朱筆--<朱> 不明--△<BR>⏎201 
c1336</a><A NAME="k01">校訂1</A> 女--*をなん<A HREF="#t01">(戻)</A><BR>⏎
202<A NAME="k01">校訂1</A> 女--*をなん<A HREF="#t01">(戻)</A><BR>⏎
 337<A NAME="k02">校訂2</A> なまめかしく--なまめかし(し/+く<朱>)<A HREF="#t02">(戻)</A><BR>⏎203 
 338<A NAME="k03">校訂3</A> のたまはせつ--の給はせ(せ/+つ<朱>)<A HREF="#t03">(戻)</A><BR>⏎204 
 339<A NAME="k04">校訂4</A> もの--も(も/+の<朱>)<A HREF="#t04">(戻)</A><BR>⏎205 
 340<A NAME="k05">校訂5</A> こまかに--こまや(や/#<朱>)かに<A HREF="#t05">(戻)</A><BR>⏎206 
 341<A NAME="k06">校訂6</A> 書かぬ--から(ら/$か<朱>)ぬ<A HREF="#t06">(戻)</A><BR>⏎207 
 342<A NAME="k07">校訂7</A> 嘆きて--なゝ(ゝ/$<朱>)けきて<A HREF="#t07">(戻)</A><BR>⏎208 
 343<A NAME="k08">校訂8</A> 愁へし--うれ(れ/+へ)し<A HREF="#t08">(戻)</A><BR>⏎209 
 344<A NAME="k09">校訂9</A> 三に--三従(従/#)に<A HREF="#t09">(戻)</A><BR>⏎210 
 345<A NAME="k10">校訂10</A> 参り--おほしの給を(おほしの給を/$<朱>)まいり<A HREF="#t10">(戻)</A><BR>⏎211 
 346<A NAME="k11">校訂11</A> めやすく--(/+め)やすく<A HREF="#t11">(戻)</A><BR>⏎212 
 347<A NAME="k12">校訂12</A> 惑ひ--まよ(よ/$と<朱>)ひ<A HREF="#t12">(戻)</A><BR>⏎213 
 348<A NAME="k13">校訂13</A> かことをも--かことをも(かことをも/&かことをも、=くこんイ<朱>)<A HREF="#t13">(戻)</A><BR>⏎214 
 349<A NAME="k14">校訂14</A> とて--とてをもとて(をもとて/$)<A HREF="#t14">(戻)</A><BR>⏎215 
 350<A NAME="k15">校訂15</A> かは--*かい<A HREF="#t15">(戻)</A><BR>⏎216 
 351<A NAME="k16">校訂16</A> 四つ--よへ(へ/$つ<朱>)<A HREF="#t16">(戻)</A><BR>⏎217 
 352<A NAME="k17">校訂17</A> 嫗と--おん(ん/$う)な(/な+と)<A HREF="#t17">(戻)</A><BR>⏎218 
d1353</p>⏎
 354<p><a href="index.html">源氏物語の世界ヘ</a><BR>⏎219 
 355<a href="roman30.html">ローマ字版 </a><BR>⏎220 
 356<a href="version30.html">現代語訳 </a><BR>⏎221 
 357<a href="note30.html">注釈</a><BR>⏎222 
 358<a href="data30.html">大島本</a><BR>⏎223 
 359<a href="okuiri30.html">自筆本奥入</a><BR>⏎224 
d1360</p>⏎
 361<hr size="4">⏎225 
 362</body>⏎226 
 363</HTML>⏎227 
i0229